第7回総会 議事録
平成9年11月7日開催
〇加藤会長
それでは、ただいまから税制調査会の第7回総会を開催します。
本日の議題については、最初に、法人課税改革の具体案について、事務局から説明を受けて、皆さま方から御意見をいただきたいと思っています。
第2に、納税者番号制度について、事務局から説明を受けて、御意見をいただきたいと思います。
最後に、金融課税小委員会の第9回から11回の審議状況及び今後の予定について、また税の競争に関するOECDプロジェクトの検討状況について、報告を受けます。
[法人課税改革]
そこで、最初の審議ですが、法人課税の問題について、前々回、第5回総会において、基本的な考え方や各国の比較など法人課税小委員会での議論のおさらいをし、委員の皆さまから御意見を賜りました。今年度の税制改正においては、本格的な法人課税の見直しを検討しているところですが、本日は課税ベースの各項目に関する具体的な見直しの考え方について、事務局から説明を受けて、議論をしたいと考えています。その際、地方の法人課税についても事務局より説明を受けたいと思います。
それでは、伏見税制第一課長と石田府県税課長、それぞれよろしくお願いします。
〇伏見税制第一課長
『法人課税関係資料(その1)』(資料1)と、『法人課税関係資料(その2)』(資料2)、それから『参考資料』(資料3)があります。それに従って御説明します。
法人課税の見直しの問題については、一昨年、政府税調、この税調の法人課税小委員会で御議論を開始していただきました。昨年の秋の段階で小委員会としてのとりまとめをしていただきましたが、昨年は残念ながら時間も余裕がなかったということで、見直しそのものは見送りになっていましたが、その後、各方面にも私どもも御説明をし、議論も深めていただきました。是非とも、10年度改正で実現をするべきだと思っています。今後、年末までの間にさらに詰めていく際には、各項目非常に広範囲にわたっていますが、それぞれについて具体的なものに即して、各項目を詰めていく、その結果として全体像をまた示していくという必要があると思います。そういう観点から、お手許にある『法人課税関係資料(その1)』のような形で、各項目についての一つのたたき台としての材料というものを出させていただいたわけです。非常に多岐にわたっているので、まず、(その1)という資料でざっと全体像を御説明して、中には非常にわかりにくいものもあるので、『参考資料』で、それに続いて改めて御説明をさせていただきたいと思います。
それでは、(その1)の資料、1ページから御覧下さい。
まず最初に、引当金関係です。現行、税法上6つの引当金がありますが、そのうちの5つの引当金について、そこにあるような形での見直しを図ってはどうかということを考えています。
まず、それぞれの引当金について、「所要の経過措置を講じた上・・を・・・する。」と記載しております。この経過措置はすべての各項目の具体的な姿がまとまってきた段階で、さらに詰めた議論が必要ですが、ここでは省略します。貸倒引当金については、法定繰入率を廃止してはどうかと考えています。
それから、その次のポイントですが、現在、この貸倒引当金に非常に関連したものとして、実務上、債権償却特別勘定というのが認められています。あとでまた御説明しますが、この債権償却特別勘定を貸倒引当金制度に含めるという形の見直しをしてはどうか。具体的に申し上げると、貸倒引当金の繰入限度額を、期末貸金を個別に評価する貸金、その一部が回収不能になっているという貸金のグループと、それから一括して評価するその他の貸金というのに区分をして、個別に評価する貸金については、現行の債権償却特別勘定の繰入基準に相当する基準で回収不能見込額を計算していく。一方、一括して評価する貸金については、現在もある貸倒実績率をベースとして貸倒見込額を計算します。両方合わせたところで貸倒引当金として、損金に算入できるという形の見直しをしてはどうかということです。
それから、賞与引当金については、廃止をしてはどうかと。具体的に税務上の処理としては、その賞与について、その支払いをする日の属する事業年度の損金の額に算入をする。ただし、事業年度末までに支給する賞与の額が受給者に通知されていて、その後すみやかに───例えば1か月以内ということになりますが───支払われるものであること等の要件に該当するものについては、未払費用として損金の額に算入できるという取扱いにしてはどうかと思っています。
それから、退職給与引当金については、累積限度額を引き下げてはどうか。括弧の中ですが、この累積限度額について、勤続25年以上の従業員に対する退職金の現在価値に相当する水準を限度とするとした場合に、一定の計算をしていくと、現行の4割ではなくて、30%の限度でいいのではないかということになります。
それから、製品保証等引当金については、廃止をしてはどうか。
特別修繕引当金についても廃止をしてはどうかと考えています。
減価償却制度の方ですが、新規に取得する建物、構築物のうち、括弧の中に、耐用年数25年以下の構築物等を除くと書いていますが、逆から言うと、耐用年数で25年を超えるような構築物については、現行の定率法と定額法の選択を改めて、定額法に一本化してはどうかというものです。
同時に、建物及び構築物については、耐用年数をおおむね10%から20%程度短縮してはどうかというものです。現行、建物については、最長の耐用年数が65年、構築物については80年というものがありますが、いずれもいささか長いのではないかということで、最長でも50年という形で改めてはどうかと思っています。
それから、少額減価償却資産の制度があります。これは減価償却資産であっても20万円未満のものについては、一々減価償却しなくても即時に償却できるという制度です。これについて、制度の濫用等も言われているところなので、これを20万円未満から10万円未満に引き下げるというふうに考えてはどうかというものです。ただし、次のページですが、10万円以上20万円未満の資産については、事務の簡素化という点にも配慮して、事業年度ごとに一括して5年間で償却できるという方法の選択性を設けてはどうかと思っています。
それから、2分の1簡便償却という制度があります。これは減価償却資産を年度の途中で購入した場合、本来期間損益を適切に計算していくためには、年度のいつ購入したのか、その年度中に計上すべき減価償却が幾らかということについて、月割りで計算するということになる筈ですが、現行、極めて簡単な方法として、年度中に購入したものは、すべてその年央に購入したものとしてもいいという措置です。これについても、制度の濫用等の指摘もあるので、取得価額で100万円未満のものについては簡便償却を認めるが、他のものは原則に従った償却をしていただきたいというものです。
それから、営業権の償却方法ですが、これはやや制度の不備的なもので、現行法、任意償却が税法上は認められています。企業会計よりもむしろ甘い扱いになっていて、これを5年間の均等償却に改めてはどうかというものです。
それから、資産の評価の項目の中で、上場有価証券の評価です。後ほど御説明しますが、現行、原価法と低価法、さらに低価法の中で切放し低価法と洗替え低価法が認められています。このうちの切放し低価法については、廃止をしてはどうかというものです。内容についてはあとで御説明します。
それから、収益及び費用の関係で、工事収益等のところですが、工事期間が2年以上の長期請負工事(製造を含む)については、工事進行基準によって、各事業年度の益金の額及び損金の額を計算してはどうか。この工事収益の問題については、現行、完成基準とこの進行基準、どちらでも選択していいということになっていますが、一定の長期の工事については、工事進行基準によってはどうかというものです。
その次の欄は、念のために書いてあるもので、長期請負工事以外の請負工事については、現行と同様選択をしていいというものです。
それから、割賦販売等に係る商品の販売収益等、これはいわゆる割賦販売が行われている場合、現行の税法上の取扱いは、割賦基準というものと実際の販売した時点と、どちらかの選択が認められています。これについて、割賦基準により収益の額及び費用の額を計算する選択制度を廃止して、割賦販売等に係る商品の販売収益等については、金利相当部分を除いて、商品の販売等を行った事業年度の益金の額に算入するという方式にしてはどうか。「金利相当部分を除き」としているのは、割賦販売をした場合には、その商品の販売時に、販売した商品の利益の部分と、それから必ず金融サービスを受けている分、いわば金利を払っていく部分と両方が一緒になっています。この金利相当部分については、当然、期間に対応して計上されていくということは当たり前だろうと思いますが、そういう点を考慮して、「金利相当部分を除いては」ということにしています。ただし書きがありますが、賦払期間が2年以上であるといった一定の要件を満たすものについては、現行の延払基準によって計上してもいいのではないかということです。
それから、長期金融商品に係る収益等、いわゆる収益の分配が各年行われませんで、実際上収益が出ているわけですが、最終満期等の時点において一挙に顕在化するといった商品が最近出てきています。これは金融商品あるいは保険商品等にもあります。一方、これらについて、例えば借金をして、金融商品に対する投資をしたといった場合には、支払金利は毎期損金計上できることから、一種の課税の繰延べ的な行為が可能になっています。そういった点で見直しをしてはどうかというものです。内容については、あとでまた若干図で御覧いただければと思います。
それから、次の3ページですが、寄付金についてです。現行税法上、一般の寄付金という概念があります。法人の場合、資本等の金額及び所得金額をベースにして算出した一定の限度額内については、その金額を損金に算入される規定になっています。これについてもいろいろな議論があるので、損金算入限度内の寄付金であっても、支出額の50%相当額は損金の額に算入しないという措置をとってはどうかと考えています。
それから、交際費ですが、御案内のように、大法人については、全額が損金不算入になっています。中小企業について、定額控除が設けられていますが、現行、この定額控除の中で10%につきましては損金不算入という措置になっています。これについてもいろいろな御議論がありますので、例えば、損金不算入割合を30%に引き上げるという措置を講じてはどうかということです。
それから、福利厚生費の関係ですが、福利厚生費の支出について、これは法定外の福利厚生費ですが、従業員1人当たり年50万円を超える部分の金額については、損金の額に算入しないという措置を講じてはどうかということです。この50万円という基準ですが、労働省の統計等で見ると、例えば従業員1,000人以上の企業をみると、法定外の福利厚生費の平均というのは、約25万円程度です。なかなか絶対的な基準というのが難しいのですが、例えばその倍といったところを目安にしてはどうかというものです。
それから、役員報酬等ですが、役員の親族である使用人に対する過大な給与については、損金の額に算入しないこととする規定を設ける等のことが書いてあります。これはやや規定の整備的なところで、現行、例えば役員の親族である役員については、過大な給与についての損金の不算入規定というのがあります。例えば、家族を従業員として使っている場合、かなり多額の給与等の支払いが行われているケースがあるようです。現行法制上そういう規定がないので、一定の規定の整備をお願いできればというものです。こういったものは、実は、前々から議論があるところですが、なかなか全体の見直しの機会がなかったので、そのままになっていたというものです。
それから、外国の罰金の関係ですが、現行の税法上、国内における罰金あるいは科料等については、当然ながら損金不算入という規定が書いてあります。この規定の制定時には、外国から罰金を受けるといったことが余り想定されていなかったことだと思いますが、現行規定がありません。そういった点で、この機会に規定の整備が図れないかというものです。
それから、短期前払費用ですが、家賃・リース料等の前払費用については、原則として期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、1か月分の前払いについては、支出時に損金の額に算入できる。これは、例えば期末に、3月決算の法人ですと、3月ぎりぎりになって、例えば、収益が上がりそうな時に、向こう1年分の家賃を前払いにするといったケースがあります。そういったものについて、おのずと一定の限度があるのではないかという考え方による措置です。
繰延資産等のところは、やや規定の整備的なところです。
それから、リース取引ですが、資産の売買取引として取り扱うリース取引の範囲に、課税上弊害がある取引を追加する等、リース取引に関する規定の整備を行うものです。これは、あとで図で若干の御説明をします。
それから、租税特別措置等の関係ですが、4ページ、これは徹底した見直しを行うということで、今回のものには具体的なものは触れていません。また、今後の年度改正作業の中でさらに具体的な姿を出してみたいと思っていますが、この段階ではこの文章だけです。
それから、その他のところですが、受取配当等の益金不算入の規定です。これもあとで図で御説明をしたいと思いますが、子会社から受け取る配当については、負債の利子の控除を要しないこととしてはどうか。その他の受取配当に係る負債利子控除については、原則として、すべての負債の利子を控除対象とする。これは、法人間で配当が行われた場合、一旦法人税が課せられたものについて配当が行われるということが当然あり得るわけでして、法人税の一種の二重課税の調整、それに関連した規定があるわけです。これが極めて複雑な規定になっていることから、一定の整理をしてはどうかというものです。これも大変わかりにくくなっているので、あとで図でまた御説明したいと思います。
それから、現物出資の規定ですが、特定の現物出資の課税の特例制度の適用要件として、内国法人の株式その他国内にある資産を現物出資して、海外子会社を設置するものでないこと等の要件を追加するというものです。これもあとで図で御覧いただきたいと思いますが、現物出資をした場合、一定の条件のもとで圧縮記帳等により課税の繰延べが認められています。国内でそういった行為が行われている限りは、どこかの時点で含み益が顕在化するという機会がありますが、海外子会社を設立するといったケースでは、その機会が永久に失われてしまう可能性があります。これも規定をつくった際には余り想定されなかった事態が起きているということだと思います。あとでまた御覧いただきます。
それから、その他の中で、公益法人等の収益事業の関係です。現行は33の収益事業について課税するという形になっています。これまで、いろいろな機会にこの収益事業の範囲の見直しをしてきましたが、いわゆるポジリストと申しますか、個別に事業を掲名するという方式は限界に来ているのではないかということで、この33の収益事業に加えて、継続的に対価を得て行う事業は、収益事業に該当するという規定を設けてはどうかというものです。ただし、法令の規定に基づき、国からの委託を受けて行う事業等、一定のものは除外することとします。この33の収益事業、いわばポジリストに加えて、一種のネガリスト的な規定を設けてはどうかということです。
それから、その他の最後のところに、「その他所要の規定の整備を行う」というふうにありますが、これ以外にもこの機会にいろいろ見直しをした方がいいかなというものがあります。ただ、非常に技術的あるいは細かな規定になるので、いずれまた御覧いただければと思いますが、とりあえず全体としての法人税の見直しの骨格部分ということになるので、それは除いています。
それから、5ページですが、その他検討を要する事項として、赤字法人に関する事項があります。赤字法人等に対し、法人としての一定の税負担を求めることとする場合には、各事業年度の最低限の法人課税として、支払給与総額に一定の税率、1%未満の低税率を乗じて得た金額の納付を求めることが考えられるというものです。括弧の中ですが、その税額は各事業年度の所得に対して課される法人税の額から控除することとしています。これは、仮にこういった形で赤字法人課税を行って、その後、当該法人が黒字に転換したという場合には、いわば赤字法人課税を行った分は、黒字になると本来の法人税額が出てきますから、そこから控除するというような措置をとってはどうかというものです。これは、フランスに似たような制度があることから、それを参考にしています。フランスの制度等については、あとで御説明したいと思います。
それから、今後の検討課題とすべき事項ですが、法人課税小委員会では、非常に多岐にわたって御検討いただきました。その中には、国際課税や、金融派生商品等の問題も取り上げられていたわけですが、小委員会報告の中にもあるように、例えば企業会計の分野で今さらに検討が続けられているとか、あるいは国際協調の場でのいろいろな議論が続いているというようなものもあります。こういったものについては、今回の平成10年度改正事項にはならないと思いますが、今後のいろいろな条件の整備状況等を見て、また改めてお諮りするという事項になろうかと思います。
それでは、『法人課税関係資料(その2)』の方を御覧いただければと思います。
1ページ、法人課税の見直しについて、全体としての頭の整理ということで、経済構造の変化に応じて、課税ベースの見直しの要請と、同時に税率の見直しの議論が起きているところを整理したものです。
2ページですが、これも何回も御覧いただいていますが、法人所得課税の表面税率の国際比較です。(調整後)とあるのは、例えば、日本の場合法人事業税は、国税である法人税法上、損金に算入されるので、これを調整したものです。現行を見ると、日本の場合、地方税を含めて49.98%になっています。各国を見ていくと、ドイツが付加税を含めて現在52.35%になっています。ドイツの中でも税制改革の議論が出ていましたが、与野党協議が整わないということで、当面は見送りになっています。
それから、次の3ページを御覧いただきたいと思います。3ページは2ページのバックデータになるようなものですが、国税、地方税それぞれに分けて、現行の法人税の基本税率を一覧表にしたものです。日本の場合、法人税は37.5%、アメリカが35%、イギリスが31%となっています。
それから、4ページ、法人税の基本税率の推移を示したものです。戦後すぐは35%でしたが、昭和27年に42%になりました。その後35%まで下がりました。上に若干の注をつけていますが、昭和45年度以降、所得税減税に伴う財源確保等の観点から、ピーク時において、43.3%まで引き上げられています。この43.3%の暫定税率が終了してからは、42%に戻って、40%、37.5%と2段階で引き下げられていますが、これは平成元年の消費税導入時、全体の税制改革の中で引下げが行われたものです。
それから、5ページですが、法人税率の引下げということで、これも前々から御覧いただいていますが、財源の選択肢として、頭の整理として一体どういうものがあるかというものを整理したものです。当面、直ちに取りかかり得るものとしては、この課税ベースの拡大・適正化だろうと思います。
それから、次の6ページ、これは法人課税小委員会で取り上げられた、いわゆる38項目を並べたものです。
それから、次の7ページですが、課税ベースの拡大・適正化と税率の引下げというものの意義として考え得るものをまとめてみたものです。特に、今のように経済構造の変化してきた、あるいは、さらにしているという時代であるから、経済活動に対する税の中立性の確保、あるいは産業間・企業間の負担の不均衡の是正といった観点が特に重要ではないかと思います。結果的に資源配分の適正化であるとか、あるいは新規産業の創出、企業活力の発揮なり、対内投資の拡大といったものが期待できるのではないかということです。当面、問題になっている経済構造改革においても、一つの大きな柱になるのではないかと思っています。
次の8ページですが、例えば、特に大きな項目である引当金について、資本金階級別の利用法人割合を主な引当金について並べたものです。御説明は省略します。
9ページは、残高についての資本金階級別の割合です。
それから、10ページですが、この課税ベースの見直しの中では、大きく分けて2つのものがあろうかと思います。1つは期間損益について影響が出てくるものと、恒久的ないわば将来の財源になり得るものとがあろうかと思います。10ページはそれをわかりやすくするために、例えば、退職給与引当金の累積限度額について見直しをしたケースを考えたものですが、財政構造改革期間が6年ですので、経過措置を6年ということにして、残高を6分の1ずつ落としていくといった経過措置をつけたとします。例えば、当期の期末残高が60単位あったとすると、6分の1取り崩していきますので、1期目にはこれが50になるということで、1期目と前期との差は10単位、これがいわば収益として上がってくるという形になります。漸次、これを続けると、当面6年間については一定の財源が得られる。当然、その一定限度に達すると、そのあとは財源措置というものはなくなるということになります。
次の11ページですが、今、口頭で申し上げたようなところを、税率の引下げとあわせて図の形にしたものです。水平線から上が、例えば課税ベースの拡大等による増収効果だとすると、その中には、上の方の引当金の廃止などによる期間損益による増収分と、恒久的な増収に結びつくようなものがあります。経過措置が終了すると、期間損益に係る増収分はなくなってしまいますが、恒久的な増収分については、その後も財源になります。
一方、税率の方ですが、税率の引下げということで、いわば水平線の下の方、これが減収だというイメージで書いています。経過措置が終了して財源がなくなった時点で税率を上げるということをすれば、こういった図にあるように、下にずっと黒くなっているということはないわけですが、常識的に一旦税率を下げたものを、現在の諸情勢から見ると、経過措置期間が終わっても、もとへ戻ることはないと思いますので、基本的には減収の効果は続くことになります。一方、増収の効果は、一定の期間損益の分が終わるとなくなるので、経過措置期間が終了すると、実質減税が顕現化してくるということです。
下のところにあるように、現在、ちょうど衆議院での審議が終わって、参議院に入っていますが、財政構造改革法の期間というのが、2003年、平成15年度までの6年間になっています。
12ページは、昨年の税調の答申を掲げています。
それから、次の13ページは、『これからの税制を考える』の中の該当部分を抜き出しています。
15ページは、今年の臨時国会、総理の所信表明演説の中のこの法人課税の見直し等についての該当部分です。
16ページ、貸倒引当金のところですが、これは現行の姿、法定繰入率と実績率の選択になっているという姿を示しています。
それから、17ページのところで、債権償却特別勘定制度の概要というものがあります。これは1)2)と2つのものがありますが、1)が形式基準と言っているものです。例えば、会社更生法の規定による更生手続の開始の申立てがあった場合には、その債権の中から回収見込額を控除した残額の50%以内で、この債権償却特別勘定に繰り入れることができるということになっています。
それから、もう一つ、2)の方ですが、債務超過の状態が相当継続している等々、一定の条件のもとで貸金の回収の見込みが相当程度なくなった場合には、その相当部分について、この債権償却特別勘定に繰り入れられるという措置があります。これは実務上の認められている措置ですが、例えば2)の方は、運用上、回収見込額の範囲が全体の貸金の中で4割以上という場合に債権償却特別勘定に繰入れを認めているという状況にあります。また同時に、括弧の中ですが、あらかじめ税務署長または国税局長の認定が必要という運用になっています。
次の18ページが、現行制度と今回御覧いただいた案を対比させたものです。現行制度ですが、今、申し上げたように、債権償却特別勘定と一般の貸倒引当金制度というのが、それぞれに存在しています。両方を結びつけているのは、真ん中のところ、「貸金総額-債権償却特別勘定繰入額」というのがありますが、債権償却特別勘定に繰り入れたものを除いて、貸金の全体に実績率あるいは法定率を乗じた貸倒引当金額を算定しています。
今回の案では、一部回収不能見込みの貸金については、個別評価をして回収不能見込額を出しますが、今、口頭で申し上げた、現状の4割以上というような基準は、もう撤廃してもいいのではないか、それが、例えば3割なり2割だとしても、回収不能だということがはっきりしてきたならば、それは3割以上なり2割以上の範囲で、この回収不能見込額として貸倒引当金に繰り入れるというものです。その他の貸金については、実績率を用いて、回収不能見込額を算定していただくという方式に改めてはどうかというものです。
なお、もちろんですが、現行の法定繰入率については、経過措置をつけて徐々に廃止をするという扱いになろうかと思います。
19ページは、現行の法定繰入率と実績率の比較です。
20ページは、賞与引当金制度の概要ですが、時間の関係もありますので、省略します。
21ページ、退職給与引当金制度の概要です。これも内容は省略します。
22ページ、表がありますが、累積限度割合を30%に引き下げるということはどういうことかを申し上げましたが、これがそのベースとなったデータです。現行の退職給与引当金制度の累積限度割合は、全勤務者が一斉に退職をしたという想定のもとで、それを現在価値に割り戻した場合には、4割程度で十分という計算になっているわけです。それを現行の賃金体系なり退職金制度というものを考慮すると、勤続年数の長い者がかなり大宗を占めて対象になりますので、勤続25年以上の者だけを対象として、一定の基準で現在価値を割り戻してみると、大体3割程度で十分ではないかということです。
それから、23ページは製品保証等引当金、24ページは特別修繕引当金の現状です。
25ページ、減価償却制度の概要です。これも省略します。
それから、26ページ、有価証券の評価方法のところで、切放し低価法廃止という文章になっていて、その内容が一体どういうものかというものを図にしたものです。有価証券の期末の評価方法ですが、左の囲みにあるように、上場有価証券については、現在、原価法と低価法の2つの方法が認められています。さらに低価法の中には、右下の表にあるように、切放し低価法と洗替え低価法、2つの評価方法が認められています。
このうち、切放し低価法がどういうものかを、上に図の形に示しています。例えば、取得価格が100円の有価証券Bがあったとします。これが第1期期末には、80に低落をしたという場合には、この100と80の差の20が評価損として計上できるわけです。ところが、第2期に80の有価証券が90に値を上げたとしても、現在の切放し低価法では、評価増10を出す必要がありません。
さらに、第3期にこの有価証券の価格が70に低価したということになると、帳簿上、現在価値が80ですから、さらに10の評価減を立てられるということです。その後、第4期にまた上がっても、今度は評価増を出す必要がないということで、常に評価減だけが立てられるというのが、この切放し低価法です。そういった観点から、低価法のうち、この切放し低価法については、廃止してはどうかということです。
それから、27ページは、工事完成基準と工事進行基準の違いの概念図です。御説明は省略します。
それから、28ページ、割賦基準ですが、その考え方を簡単に図示をしたものです。現行、割賦基準と商品の引渡し時に利益を計上する方法の2種類あります。具体的に収益として入ってくるのは、概念的には商品の原価と販売価格との差の利益の部分と、金融サービスを提供したということに伴う利息収入があります。この利息金利収入については、まさに期間の経過に伴って出てくるものですから、第1期、第2期、下の図にあるように、それぞれに計上するのが適当だろうと思いますが、一方、商品の販売益そのものについては、原則として、この商品の引渡し時、または役務の提供時に計上していただくのが妥当かなということです。
それから、29ページ、長期金融商品に係る収益等という文章がありますが、次の30ページを御覧いただければと思います。いろいろな商品があります。個々に様々ですが、1つの共通の要素というのは、図にあるように、金融商品の収益というものが各期途中段階では分配をされないで、最終段階で具体的な分配がされます。ただ、実際は、各投資家には各期ごとの投資収益の報告が来ていますが、現実の収益金の分配は最後になっています。これに対して、この商品を借金して投資した場合には、下の図のように、利子費用は、各期計上ができることになります。そういった点から、一定の見直しが必要ではないかと考えた次第です。
31ページ、細かくなりますが、保険についての規定です。
それから、32ページ、寄付金の関係、現行税制の概要がありますが、次の33ページの図の方を御覧いただければと思います。一番上のところに、現行の寄付金制度を図にしたものがあります。一番左側に、一般の寄付金というのがありますが、一般寄付金は資本等の金額及び所得金額を基準とした一定限度内では、その金額が損金算入を認められています。これと同じ大きさの枠で、特定公益増進法人に対する寄付金の枠があります。さらに、これとはまた別に、国等に対する寄付金あるいは指定寄付金があり、これについては、限度なく支出額全額が損金算入できるという制度になっています。
そこで、例えば下の2つですが、まず現行の欄を御覧いただくと、この特定公益増進法人に対する寄付金は、一般の寄付金の枠を消化できるという形になっているので、仮にその寄付金が非常に多い場合には、一般の寄付金の枠を超えて損金算入が可能です。一方、一般の寄付金については、一般寄付金の枠を超えた部分があれば、その分は損金不算入になりますが、その範囲内であれば損金算入ということになります。
この寄付金についてもいろいろな御議論があるところですので、例えばそこの(案)にあるように、一般の寄付金枠の中で支出額の半分は損金不算入にするという扱いにしてはどうかというものです。
それから、34ページは交際費課税制度の現状をお示ししたものです。中小企業の場合、定額控除の枠が資本金1,000万円以下の場合は年400万円、5,000万円以下の場合は年300万円認められています。このうち10%相当額までについては、損金不算入になっているということです。
35ページは交際費の支出額の状況ですが、時間の関係もあるので、省略します。
36ページ、37ページ、法定外福利厚生費としてどういうものが含まれるかという一覧ですが、これも御説明は省略します。
38ページですが、先ほど従業員1人当たり50万円という基準を御覧いただきましたが、そのベースとなる統計です。労働省の統計に法定外福利費という欄がありまして、真ん中を囲っていますが、従業員5,000人以上だと、1人1か月平均ですが、2万3,000円余、それから1,000人から5,000人未満のところで1万7,000円余です。例えば、この1,000人以上といったところをみると、年間約25万円程度かなと思います。そういったところから、例えば50万円という基準があるのではないかというものです。
それから、39ページのところ、これは規定の整備ですので、御説明は省略します。
40ページも同様です。
41ページが罰金に関する現行の規定です。法人税法の第38条の2項に、「内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」とありますが、この中の第五号、ここに「罰金及び科料並びに過料」とありますが、この解釈としては、まさに国内における罰金としか読めないということになるわけです。そこで、一定の規定の整備を図らせていただくのはどうかということです。
42ページは省略します。
43ページもやや技術的になるので、省略をします。
44ページ、リース取引ですが、現在の法人税の取扱いを図の形にしたものです。リース事業というのは、比較的新しい取引形態でして、現行の法人税法上必ずしもきちっとした規定ができていませんが、実務上の取扱い等では、そこの図にあるように、リースの中でオペレーティング・リースというものとファイナンス・リースと2つのタイプに分けて考えています。このファイナンス・リースの中で一定の条件のものについては、賃貸借でなく売買取引だという形での税務上の処理が行われています。これまでも、何回か制度の整備をしてきているわけですが、さらに新しい取引形態といいますか、結果的に節税メリットを生かした取引が行われているものがあります。そういったものについて、一定の見直しが必要ではないかという問題意識から一文が入っているわけです。
45ページ、その例としてレバレッジド・リースの仕組みがありますが、時間の関係もありますので、省略します。
それから、46ページは、受取配当等の益金不算入制度に関する、現行制度の概要です。これもわかりにくいので、次の47ページを御覧いただきたいと思います。現行の受取配当の課税関係ですが、先ほど申し上げたように、法人間で配当が行われた場合、これについて一定の調整が必要だろうということで、「国内子会社」以下「その他の海外会社」まで、分類として益金不算入割合とか、あるいは負債利子控除等の制度が定められています。
この負債利子控除が一体何かということですが、次の48ページを御覧いただきたいと思います。48ページに負債利子控除の必要性があります。例えば、自己資金で株式を購入したとします。企業会計上、受取配当を100の単位で受け取った場合、自己資金ですから、支払利子はありませんので、企業会計上の利益あるいは所得は100になります。この受取配当について、法人税法上は益金に算入しないとすると、この利益は、アンダーラインがあるように、ゼロになるわけです。したがって、法人税法上は利益は生じないということになります。
ところが、同様のケースで、これを借入れをして株式を購入したというケースを考えてみます。その場合には、企業会計上、受取配当100の利益が出てきますが、借金をしたので、支払利子が100あったとすると、企業会計上は利益がないということになります。ところが、法人税法上、この受取配当を益金不算入という扱いにすると、この利益100がゼロになるので、支払利子の損だけが立つことになります。結果的に、他の所得を減らす要因が出てくるということです。したがって、この一定の負債利子については、控除する必要があるだろうということです。
49ページは、さらに仕組みを御説明するための図ですが、御説明は省略します。
50ページ、大まかにどんなイメージか、御覧いただければと思います。現行制度は、子会社からの受取配当とその他の受取配当を分けて、それぞれ配当の中から、「支払利子のうち子会社株式に対応するもの」と「その他の株式に対応するもの」に分けて控除して益金不算入額を求めています。これを、今回の案では、全体が極めて複雑になっているので、子会社からの受取配当については、この負債利子控除を一切せず、すべてを益金不算入としてはどうか。その他の受取配当については、「支払利子のうちその他の株式に対応するもの」を控除するという形にしてはどうかというものです。
それから、51ページ、現物出資についての項目が先ほどありました。その関係ですが、52ページを御覧いただきたいと思います。「現物出資による海外子会社の設立(概念図)」とありますが、国内で子会社を現物出資によって設立した場合、その現物出資したものが資産であるか、あるいは株式等の場合、いろいろあると思いますが、あくまでも国内にとどまっている場合には、将来、現物出資された資産とか株式が譲渡された場合には、譲渡益に対して課税することは可能です。ところが、海外で子会社を設立した場合には、株式の譲渡益に対する課税は可能ですが、資産の譲渡をした場合、残念ながら日本のエリアを離れてしまうということから、その譲渡益に対する日本での課税は行われなくなるということになります。こういったことから、規定の整備をする必要があるのではないかというものです。
53ページですが、公益法人等に対する課税の現行の概要を示しています。課税対象は、普通法人はすべての所得に対して課税となりますが、公益法人等については、収益事業により生じた所得に限り課税ということになっています。
具体的には、次の54ページですが、33の収益事業が定められています。また、右下にあるように、昭和32年度以降、この収益事業の範囲は徐々に拡大をしてきていますが、こうした個別掲名の方式にはかなり限界が来ているのではないかということで、公益法人についてはまたいろいろな議論もされているところでもあるので、この33事業に加えて、一定のネガリスト的な規定の整備をしてはどうかというものです。
それから、55ページのところは、いわゆる赤字法人の関係で、フランスの制度があるということを申し上げましたが、そのフランスの制度がどういうものかというものを簡単に御説明したものです。フランスでは、1974年に法人税を納めない企業に対処するために概算課税制度が設けられています。これは、法人の売上高に応じた税額を法人税とは別に納付するという制度です。また、この税額については、その後、法人税額が黒字になって支払われるという場合には、一定の期間の中で、その法人税額から控除をするという形になっているようです。
国税関係は以上です。
〇石田府県税課長
それでは、地方税関係について御説明します。
56ページ、引き続き、お願いいたしたいと思います。まず法人住民税の概要ですが、課税団体は都道府県及び市町村です。
均等割というのがありまして、都道府県、市町村、そこに書いているような金額で課税しています。
法人税割ですが、課税標準は法人税法等の規定によって計算した法人税額となっているので、ただいま御議論のある法人税額の動向によって税額が定まるということになる。
税収額を5)で掲げています。右の隅、道府県と市町村合わせて3兆円ちょっとですが、うち均等割分が5,000億弱あるということです。平成8年度の決算見込額では若干下に掲げています。
それから、次のページをお願いしたいと思いますが、過去の均等割の税率の推移を挙げていて、近年では平成6年に、例えば道府県民税でいうと、下の方から1万円、2万円、3万円、4万円、5万円と上げてきた。市町村民税については、50人以下の従業員の部分について、1万円ずつ上げる改正を行っているということです。
次のページをお願いしたいと思いますが、これまでの法人住民税の法人税割の税率の推移です。下の方が道府県民税の法人税割、真ん中の欄が市町村民税の法人税割で、合計したものが二重線で出ています。小さい字で恐縮ですが、従来、49年を除いて、基本的には法人税の減税に伴う減収を防ぐということで引き上げてきた経緯があります。
おめくりいただきいて、法人事業税の概要について御説明したいと思います。課税標準ですが、基本的には、法人税の計算と同じ所得及び清算所得ということですが、ここに掲げている4つの事業については、各事業年度の収入金額によって課税しています。基本税率は6、9、12ということですが、収入金額課税法人については1.5%ということになっています。
(注)の4ですが、公益法人等については、収益事業については特に軽減税率は設けていません。非収益事業については、非課税ということですが、収益事業の範囲については、基本的に国税と同じです。
下の段の「法人税の見直しに係る対応」という欄がありますが、先ほど御説明いしたとおり、法人事業税の課税ベースは、基本的に法人税と同じなので、国の法人税の課税ベースの適正化が行われる場合には、税率の見直しについて検討する必要があると考えています。
次のページが、昨年行われた当税制調査会の法人課税小委員会における御報告ですが、時間の関係で省略します。
次に、5ですが、従来からの懸案でございます法人事業税の外形標準課税について、若干御説明させていただきたいと思います。そこに枠で囲っていますが、法人事業税の外形標準課税の考え方です。事業税の性格ですが、事業税というのは、そもそも事業がその活動を行うに当たって、地方団体の各種の行政サービスを受ける。これらのために、必要な経費を分担していただくという考え方に基づいて課税しているものです。したがって、事業税の課税標準というのは、本来所得ではなくて、事業の規模ないし活動量、あるいは、収益活動を通じて実現される担税力をあらわす何らかの基準、───これを外形基準と呼んでいますが───課税するべきものであると考えられているということです。
1)のところに、外形標準課税の検討の経緯等を載せています。昭和25年、26年に道府県税として付加価値税を創設するということになっていましたが、これは29年に実施されないまま廃止されたという経緯があります。39年には、当税制調査会において、事業税については外形標準課税が適当と、括弧に出ているとおり、所得以外の基準については加算法の付加価値によることが適当ではないかという答申がありました。すべてを外形に変えるということではなくて、所得も併用するという答申であったわけです。
43年には、もう一度政府税制調査会において、事業税の外形標準課税の仮案が答申され、この答申においても、所得金額と加算法による付加価値額の併用案が答申されたということです。
昨年、当税制調査会に設けられた法人課税小委員会でも、ここに掲げているとおり、事業税に外形標準課税を導入することは、事業に対する応益課税としての税の性格の明確化に加え、道府県の税収の安定的確保や赤字法人に対する課税の適正化にも資するということから、考えられると。さらには、外形基準については、これまでの検討経緯等から、加算法による所得型付加価値を検討の中心とすべきではないかという答申があったということです。
ここでよく出ている付加価値については、後ほどもう一度御説明します。
1枚おめくりいただいて、外形基準を課税標準に導入することの意義があります。私ども考えているのは、5点ほどです。
まず、税の性格の明確化ということですが、事業税は先ほど御説明申し上げたとおり、事業はその活動を行うに当たり、地方団体の各種の行政サービスを受けている。これらのための必要な経費を分担していただきたいということなので、事業の規模ないし活動量等をあらわす何らかの外形基準を導入することで、税の性格の明確化が図られると考えています。さらには、外形基準を入れることにより、利益の有無にかかわらず、事業者に一定の御負担をいただくということになるので、結果として、赤字法人に対する課税の適正化に資するものと考えています。さらには、課税標準に所得以外の外形基準が導入され、課税ベースが拡大するので、赤字法人も含めて広く御負担をいただくということで、所得に対する税負担が軽減されると考えています。さらには、税収の安定化、あるいは租税回避の減少等につながるのではないかと考えています。
1ページおめくりをいただいて、これまで外形基準として実施または検討された基準を一覧に掲げています。明治29年には営業税法というのが公布されて、この時の課税標準というのは、業種別にここに掲げているような売上金額だとか建物の賃貸価格等とされており、外形で課税をされたという経緯があります。
昭和25年の附加価値税ですが、これは控除法による付加価値を課税標準とする。具体的には、総売上金額から特定の支出金額を控除したものというふうにされていたわけです。
26年に改正がありまして、右に書いているとおり、控除法による付加価値と、さらには加算法による付加価値、具体的には所得、給与、利子、地代等の合計額の加算法による付加価値との選択ができることにされたということですが、両案とも実施されないまま廃止されたということです。
39年、43年には、先ほどの政府税制調査会の答申をいただいたということですが、昭和52年には全国知事会の方で、独自に外形標準課税の案をつくったわけですが、この時にも、所得金額と加算法による付加価値額との併用という案であったわけです。
参考で、地方税法第72条の19、下にまた小さな字で掲げていますが、現行法でも、ここに書いているとおり、外形的なものを課税標準にすることが、地方団体の条例でできるという道が開かれているが、現在、都道府県でこのような形で実施しているところはありません。
その次のページで、付加価値の意義について若干御説明したいと思います。枠で囲っていますが、付加価値というのは、企業が事業活動によって生み出された価値ということでして、これは事業活動に参与した者に配分されるということになるわけです。この付加価値が、従来から事業活動の規模を最も適正にあらわすと言われているわけです。御承知のとおり、企業というのは原材料等を仕入れて、これに資金、労働、土地等を投入して、───つまり事業活動行うということですが、───付加価値を生み出して、得られた付加価値を事業活動への参与者に配分をするということです。下の方にイメージ図で出ていますが、企業は機械設備を取得したり、あるいは土地・建物等を借りたりして、労働力を投入して、仕入れた原材料や商品等を加工して付加価値を生み出している。この生み出された付加価値というのは、右に枠で囲っていますが、利潤、利子等、あるいは賃借料、給与に分解できると言われています。利潤というのは、出資をした株主等への配分になる。利子等というのは、資金を貸していただいた人への配分をされる。あるいは賃借料というのは、土地等を貸した方へ配分され、給与というのは、労働を提供したことに配分されるということで、付加価値というのは4つに分解されると言われているわけで、つまりは下の方に出ているとおり、加算法による付加価値というのは、この4つを合計したものになるわけです。
一方、この付加価値の計算では、総売上高から固定資産、あるいは原材料、商品等を購入することによって、控除法の考え方でできるという案もありますが、これは総売上高に何を入れるかとか、あるいはどのようなものを控除するか、帳簿をしっかりつけておく必要があり、かなり手間がかかると言われています。
その次のページに、昨年の法人課税小委員会の報告をつけていますが、先ほど御説明したとおり、法人事業税の外形標準課税については、ここに書いてあるとおり、様々な形での適正化に資するというふうに考えられる。
次のページの 3ですが、外形基準については、これまでの検討経緯や事業の人的・物的活動量を的確にあらわすことから、今後とも加算法による所得型付加価値を検討の中心としながら、引き続き幅広く検討することが必要であるということで、その他いろいろ2)に掲げているような検討課題について、さらに検討を深めるよう御提言があったということです。
〇加藤会長
それでは、皆さま方から御意見や御質問をいただきたいのですが、この問題については、非常に問題がたくさんありますので、まだ何回となく取り上げることになります。
〇森下委員
法人税の方ですが、今まで論議されている中で、課税ベースの適正化ということで、いろいろ今日、項目別に内容が披瀝されましたが、これを具体的に数値化していくことをしないと、なかなかイメージが出てこないのではないかと思います。同時に、法人税率を下げるターゲットを、あわせて論議していかないと、これだけではなかなか理解しにくい。それともう少し法人税全体で10%、国税で5%とか、どういうパーセンテージにするかということをセットで論議をしていかないと、かみ合わないのではないかということが1点です。
もう1点は、財政改革との関係で、一応これは6年ということが示されていますが、6年というのは少し長い。やはり21世紀の初頭を狙って、大体4年間くらいで思い切った改革をしてくべきだと思う。せっかく課税ベースの適正化とか、また税率を下げるという改革の機会なので、実効税率を下げるのに6年というと、世の中が国際的にも余りに変わりすぎることが予想されます。実効税率低減の効果を出すという意味においても、もう少し期間は短い方がいいのではないかと思います。
〇今井委員
今、森下さんがおっしゃったのと一部重複しますが、私どもは国際比較から見て、10%の実効税率の引下げを申し入れていて、少なくとも第一段階として、法人課税で5%を実現したいと思っているわけです。今回、課税ベースの見直し案というのは、議論の出発点ということになると思うので、これは歓迎しますが、今、御指摘があったように、一体これによって税収にどの程度影響があるのか、その積算根拠、それによって何%実効税率が引き下げられるのかというようなことを、明確にお示しいただきたいと思うわけです。そういう積算根拠を示していただいた上で、私ども経済界として真剣に議論したい。その際に、公平・中立・簡素に加えて、国際整合性という観点から、一つ一つの項目について、これは受け入れられる、これは受け入れられない、あるいはもっと踏み込んで見直してもいいのではないか、というようなことを具体的に議論していきたいと考えている次第です。
それから、受取配当金の益金不算入制度における負債利子控除の拡大、これは実質増税でして、こういったものについては、一見して私ども受け入れられないと考えます。
それから、赤字法人課税というのは、非常に重要な問題だと思いますが、国税で対応するのか、あるいは地方税の住民税均等割で対応するのか、この辺のことは総合的に考える必要があると思います。国税で先にやって、また地方税でということになると、地価税の二の舞いになります。
もう一つは、次回出られないので、事業税ですが、外形標準は実質減税にならないばかりか、私どもはむしろ事業税の外形標準というのは、変動費の固定費化であるということで、経営の立場からずっと反対しているわけです。ただ、地方税というのは、諸井さんいらっしゃいますが、今度、地方分権に伴ってかなり抜本的に検討しなければいけない問題だと思うので、次回以降、地方税については、何か全部をひっくるめた議論を集中的にやるような場を設けていただいて、そしてそこの中で議論できれば、これは非常に実りがあるのではないかと考えている次第です。
〇松浦委員
赤字法人課税に関して、国の法人税で給与に課税するというような案が、今、検討事項として示されたわけですが、私はこの案は問題が多いのではないかと思っています。というのは、私ども市をはじめとする地方団体は、あらゆる法人に対して、道路を整備したり、またゴミの収集だとか、上下水道の整備とか、そういった行政サービスを提供しており、それゆえに法人から地方税の負担をいただいているわけでして、これは黒字の法人であろうが、赤字の法人であろうが、同じことだと思っています。赤字法人課税ということをおっしゃるのであれば、それはむしろ地方税こそが、私はなじむのではないかと思っています。
〇津田委員
公益法人等の収益課税に関連する問題ですが、今、行革で言われている郵政三事業などにも、所得課税を考えてもいいのではないかと思います。消費税では御承知のとおり、この席上の政府の資料でも消費税がかかる。従来は税の性格から、間接税と物税、所得課税は違うという考え方だが、考え方を改めて、消費税で課税ベースが広がっているようなものには、物税あるいは所得課税においても課税対象として考えてしかるべきではないか。
〇堺屋委員
まず第1点ですが、寄付に対する課税の強化はやめた方がいいと思います。これから、各地方団体あるいは公益法人、NGO等が活発になる時に、やはり企業の寄付に対しては、企業の判断によって行動できる範囲を認めるべきだと思います。
2番目に、罰金ですが、これは知的所有権等の問題があり、罰金の範囲というのを、犯罪的な罰金なのか、民法的な措置で起こるものなのか、よく研究する必要があるのではないかという感じがします。
3番目に、公益法人等ですが、これはいろいろな法人がこれから出てくる。今も宗教法人、医療法人、学校法人等もありますが、民法法人の財団・社団だけではなくして、これから農業法人とかいろいろなものが出てくる可能性があり、一括して、すべての法人について同じ課税率とする。そして、逆に特定の活動について、法人側が証明したものを減税するようにする。もう一歩進めていただいて、宗教法人なら、これは宗教活動にのみ使っている施設であれば、今は固定資産税が減免されているが、減免を続ける。そういう活動を、法人側が証明するようにした方がいいと思うのです。このネガリストをもう一歩進めていただいて、挙証責任を相手に持たせて、その範囲でそれぞれ、宗教活動はどれぐらい、民法活動はどれぐらい、学校活動はこれぐらい……。これから自由化していくと、今までなかったような分野、例えば農業法人なんかもどんどん出てくるでしょうし、それから株式会社の医療機関、医療法人の医療機関というものの混在などの問題があるから、そういう活動基準にした方がいいのではないかと思います。
それから、赤字法人については、先ほどおっしゃったように、やはり地方税にした方がいいと思います。地方税にして、翌年利益の出た時に返す必要があるかどうか。地方税だと、考え方として、その年、その地域の便益を受けてしまっているわけだから、翌年の赤字で返す必要があるのかどうか。国税だからその議論があるのですが、おそらくここにある外形標準程度の基準、従業員の支払給与の1%程度だと、地方税として払い切りにしていいのではないか。もちろん、儲かっている時は経費にはなりますが、繰送りまでする必要があるのか、その辺は疑問だと思います。
そういうことを合わせて、法人課税のベースを広げるとともに、先ほどから出ているように、地方税・国税を合わせて5%程度の減税は不可避だと思います。
〇河野特別委員
赤字法人の税金について、一言感想を述べます。
もう亡くなったが、吉國さんという先輩がいらっしゃって、これは何遍もここで議論したことがあるんです。単発的にですよ。ただ、大蔵省がこういう形で明快に問題提起したことは、僕の経験では初めてだと思うのです。それはそれなりの理由があってのことだと思うのだが、今までの議論の経過では、吉國さんは、───ここに「最低限の法人課税」と書いてありますが───所得のないところに税金をかけるというのは、やはり税の体系論からいったらおかしいのではないかということを、確か生前述べられたと思うんですよ。ただ、そんなことを言っていられない、フランスの概算課税制度もあるという話で、ああ、こんなものがあるのかと思って今初めて頭へ入れたが、これはしかし税調というのは、税を理論的に裁くところだから、赤字法人を法人税の課税の対象にするというのは、頭にすっきり入らないところもあります。赤字法人の中には、明らかに経理操作で、本来は黒字になってしかるべき人がそうでない人も幾らかはいるのでしょう。根っから赤字の人もいると思うが。黒字とみなしてかけるのなら、これもみなし課税みたいな話だと思うが、いずれにしても、この議論を税調で税の理論体系のもとに堂々と議論するのは、随分厄介な話だなと思います。堺屋さんもおっしゃったし、他の方もおっしゃったが、今日はたまたま法人事業税絡みの説明も簡単にあったので、それは次回だと会長がおっしゃったから、次回にしますが、考えてみれば、それと深く深く関連のある話なんです。だから、本来、そう簡単に今日結論が出る話ではないと思います。ちょっといろいろな問題がありすぎるなという気がします。
〇加藤会長
今の御意見は、地方税としては考えられるかという意味ですか。
〇河野特別委員
外形基準でやれば、当然、結果として赤字法人にいく。意図的にそれを狙い打ちするわけではないが、というロジックが立つ。
〇水野(勝)委員
大きくは2点について申し上げたいと思います。
1つは、今日も資料で御説明があった引当金、減価償却、そういったものも同じですが、収益の計上時期をいろいろ変えることによる増収額というのは、本来であれば、恒久的財源ではないわけですが、しかし、こういった引当金の見直し等によって財源を確保し、税率を取り上げるということになろうかと思いますが、その時には、実質的にこれは実質減税であるという点をもう少しはっきり御説明いただいてもいいのではないか。
先ほどの表だと、6年経ったらなくなってしまうということですが、収益計上時期の問題であれば、引当金であれ、ほかのものであれ、皆そういうことですので、そこは胸を張って実質減税であるということを強調される面があってもいいのではないかなと思うわけです。これが1点。
それから、2点目は、今もお話のあった赤字法人課税ですが、やはり所得課税である法人税において、こういう問題というのは、ややそぐわないというニュアンスもあります。しかし、そういうことを言ってはおれないということで、ここで登場してきたのではないかと思うわけでして、こうした考え方も、一つの今後の具体的な方向として検討されていいのではないかと思うわけですが、やはりひっかかるという点もある。
そういった意味において、私はむしろはっきりと法人についても、例えば同族法人、あるいは普通の法人であっても、代表役員、代表取締役、社長、副社長、専務とか、代表権のある人、こういった役員の方の報酬については、これは損金に算入しない。今、賞与はそうなっているが、賞与でも使用人兼務役員の部分は損金になったり、そうでない場合は損金にならなかったり、いろいろ取扱いがされている。それと同じように、代表役員については、報酬も損金不算入で扱っていいのではないか。というのは、現在は賞与というのはほとんど給与の何か月分ということで、ある意味では賞与だって固定的に規定されている面が大きいわけだから、代表役員については、賞与も報酬も含めて損金に不算入扱いにする。全部を一気にやるのが余りドラスティックであるとすれば、例えば半分とか、今日も寄付金に出ていますが、半分だけ損金にし半分は益金にするとか、そういったことでの検討の方向も、5ページの検討事項の中の1%課税というものもいいと思いますが、そういった方向もまた考えられるのではないかなという感じがします。
それに関連して、これは法人税ではありませんが、そういう代表役員なり、あるいは役員、この方々は──一般社員は雇用契約ですが──この役員の方はいわば委任契約ですから、独立的労働と言える面もある。そういった人たちについては、給与所得控除の取扱いも少し見直してもいいのではないか。それによってある程度の増収も期待できるのではないか。そんな気もします。
〇大田委員
次回の会合に向けてお願いをしたいと思います。この前、通産省の委員会に出たら、課税ベースを拡大して、税率を減らすという試算が出されて、それはもう少し大蔵省の出した案より減税が大きかったのですが、両方を比較すると、通産省は移行期間を4年にしていて、大蔵省は6年にしている。もっとほかの違いもあるのでしょうが、一番大きい違いはそこにありまして、先ほど森下委員でしたか、おっしゃいましたが、私も財政構造改革期間が6年だからといって、それはそれほど絶対的なものではないと思うので、4年の案と6年の案と両方出して、この場で検討させていただければと思います。
それから、課税ベースの拡大で法人事業税も下がるはずなので、それもこの次お示しいただければと思います。
それから、赤字法人の件ですが、赤字法人に何らかの負担を求めるというのは私も賛成ですが、ここに出ているフランスのはやはり性格がはっきりしない税だと思います。私は地方税で赤字法人に負担を求めるほうが理屈にかなっていると思います。
〇和田委員
法人税の課税ベースの拡大の資料をずっと御説明を伺いましたが、今までお話があったように、当然、法人税の税率の引下げということとセットで考えなければならないわけですが、私どもの周りで話している限りで申し上げると、やはり課税ベースを拡大して、そして法人税の税率のところは、増減税のニュートラルということでなければ、とても納得が得られないという感じがしています。
そして、税率の引下げの財源の選択肢、今日の資料の中にも出ていますが、やはり赤字公債はもうするべきことではないし、一体財源をどこに求めてくるのかということになると、今までの税調の議論の中で、やはり間接税にもう少し負担を求めたらどうか。一番はっきりしているのは消費税というようなニュアンスがその中でも伺われていましたが、現在、消費税の引上げによって、個人消費が非常に停滞している。これは、将来に対する不安とかいろいろなことが重なっていますが、財源を考えた時に、消費税ということが見え隠れされているような中では、やはり私としては、増減税ニュートラルということで、基本的な考え方をそこに置いていただきたいと考えています。
それから、赤字法人については、議論を伺っていると、大変いろいろな難しい議論やら、考えなければならないことがたくさんあるとは思いますが、それなりの行政サービスを受けているということを考えると、やはり赤字法人だからといって──外形標準にするのか、その外形標準もどういうふうにするのかということは、さらに議論が必要だとは思いますが、全くの素人の人たちが話している中では、赤字だからといって、行政サービスを受けているのに免れるというのはおかしいのではないかという話が出ています。
〇平田委員
質問します。(資料1)の中の少額な減価償却資産の改正案については、制度の濫用が見られるからという理由になっていますが、制度の濫用というのはどういう意味ですか。
それから、もう一つは、役員報酬については必ず損金経理が必要であるということを明らかにするとなっていますが、何かこのようなことが必要であったかよく理解できません。
それから、課税ベースを広げるお話がたくさん出てきていますが、今までの税制の中で、例えば土地の新規取得についての支払利子の損金不算入の制度がそのまま残っていますが、この制度は、初期の目的は達したので今回含めて直していただきたい。
それから、税率の引下げの議論の中でいろいろな引当金がなくなる、ないしは小さくなっていく話がありますが、実は一番影響を受けるのが資本金1億円以下の中小法人の課税所得であって、この部分の配慮をどのように見ていくのか。何か新聞の論調で、自由民主党の税調では、そういう中小法人に配慮するという1項目が入っていたと思いますが、1億円以下の中小法人の軽減税率の定額 800万円の部分を、倍ぐらいにしておかないと、逆に中小法人は増税になっていくと思われます。
〇加藤会長
御質問点がありましたが、今答えますか、それともあとで……。
〇伏見税制第一課長
少額減価償却資産の関係で御指摘がありましたが、『法人課税関係資料(その1)』(資料1)の1ページの一番下のところにあります。これは特に私ども、現場の声というのも、法人税の見直しの時に当然大事になりますので、いろいろな意見を聞いたのですが、1つ出てきたのは、収益の観点で、期末になって相当余裕がありそうだという時に、この少額減価償却資産の特例をまさにうまく活用して、20万円以下のものを大量に買い込まれるというようなケースもあると聞いています。また、いわゆる中小法人だけではなく、大法人でも、まさにこういったものを大量に買うと、多くの単位でそういった一種の収益調整ができるというケースもあると聞いています。
それから、もう一つ、役員報酬等のところ、これは3ページのなお書きのところで、「役員報酬の損金算入は、損金経理が必要であることを明らかにする。」というところです。先ほど御説明を省略したかと思いますが、この関係は、例えばこういうケースがあるようです。簿外の資金というものが調査の結果出てきた。しかし、その使途が一体どういうところにあるのかと調べると、結果的に役員報酬になっているというようなケースがあるようです。この役員報酬については、過大な場合には否認するという規定がありますが、簿外の資金であっても、一つ一つ見ていくと、決して過大とはなかなか言えない。もちろん過大だという認定は非常に難しいわけです。簿外の資金が出てきても、結果的に役員報酬として損金に算入されてしまう。どうもおかしいな、ということです。したがって、たまたま現行規定上、損金経理というのが要件になっていませんので、これは一種の規定の不備ではないかということで、全体としての見直しをする際に、こういった規定の整備をさせていただけないかということです。
それから、もう1点は負債利子控除の御指摘だったと思いますが、この問題はまた土地税制の問題として、むしろいろいろな観点からの御議論をいただくべきことかということで、今回は特に取り上げていません。
〇吉永委員
課税ベースを拡大することには非常に賛成ですが、寄付金に関する税制に関してだけ、課税強化はちょっと考えていただきたいなと思うのです。福祉団体とかボランティアの団体とかを取材すると、やはり民間が非常に援助をして、公的なものが、今、得られない状況で、寄付をしたいけれども、税制の援助がなくてできないということをたくさん聞きます。ですから、公益性の高い寄付金というところに、国や地方団体に対する寄付金とか指定寄付金、大蔵大臣が指定したものとか特定公益増進法人ですか、こういうところをもう少しきめ細かにして、本来なら税金が流れるところに民間が寄付をした場合に、やはり税制のきめ細かな手当てが必要かなと思います。
〇佐野特別委員
この議論を伺っていて感じるのは、増減税中立ということが、あたかもすでに所与のものであるかのごとく印象を受けるわけですが、もともと法人税率の引下げというのは、歳出を削り、その分企業の負担を軽くし、企業の活力を導くということで、どうも議論の中で歳出の削減というのが、いつの間にか影が薄くなっているような、そういう印象があります。あくまでも歳出を削って、その分企業の負担を減らすということが構造改革ではないかと。
というのは、二十何項目か今日示されたわけですが、どうも財源の捻出ということが、これは大きい目的ではあるのですが、どうもそこに取りかかりすぎているということで、それぞれ各項目ともこれまで存在意義があるわけなので、余り金目の話に深入りしすぎると、実際に税の理論から見てどうなのかという、ちょっと議論が歪んだ方向にいく懸念もある。この中には、それぞれ存在価値があるものもかなりあるわけで、金を絞り出すために、存在価値があるものまで傷つけるということになってはいけない。
〇本間委員
法人税本体の問題について意見を述べます。
今、御発言の中にありましたが、課税ベースの見直しというのは、実は財源探しのためではないということは、私は強調したいと思います。各国ともこの課税ベースの見直しが、今までランダムに与えてきた課税ベースの侵食というものが非常に非中立的であったということを前提にして、これを手直しをするというのが実態ですので、その手直しと同時に税率を引き下げていくということが、産業間、規模間の実効税率の乖離を埋めていくことで活性化が図られるという、こういうことが哲学として私はあると思うので、是非このアプローチは継続して行っていただきたいという具合に考えます。
そして、それと同時に、法人税の場合に基本とするのは、日本の場合は、実質的には私は高くないと考えています。高いのは、49.98%を払っている0.6%の法人が高いのであり、中小の企業も含めて、実は国際並みあるいは国際並み以下の状況にある。そのことが、実は優良企業をして外に走らせ、そして赤字法人を65%国内に滞留させるという意味で、日本の生産性を低めているという、こういうディストーティブな税制というものをどういう形で是正していくかということが、構造改革の最も重要なテーマとして、我々が突きつけられている課題なのだと、こういうことを銘記した上で、結果として赤字法人等の問題は、その上で議論をしなければならない問題だろうと思います。社会的弱者的な発想の中で法人税をいじるということが、結果として社会的弱者にも厚くならない手当てになっているし、資源配分上あるいは産業構造の改革の上でも、非常にマイナスになっている。
これは、是非、私は基本的な税率を引き下げるという方向で議論をしていただきたいと考えます。課税ベースを拡大し、税率を引き下げるということは、中小零細に結果として税負担を重くすることになるかも分かりませんが、そのことが結果として我々の産業構造を高度化することになるということは、十分に我々専門家としては認識しておく必要があるのだろうと考えています。
その上で、事業税の問題と赤字法人の問題ですが、この赤字法人の問題は唐突に国税のレベルで出てきたのは、御議論があったように、大蔵省の提案としては筋が悪いのではないかと考えています。財源を見つけたいという気持ちは分かりますが、法人税の中においてこういうような扱いをするということは、決して望ましいことではありませんし、河野委員がおっしゃったとおり、公共サービスの対価として求めるのであれば、これは外形標準的な形で地方事業税をコストとして、公共投資の対価として入れるという形で対処するというのが本筋であろうと思いますので、是非そのような形で、法人事業税の問題、これは古くて新しい問題ですが、是非税調で本格的に議論をしていただきたい。
〇松尾委員
先ほどの自治省の御説明の中で1点質問があります。法人事業税の課税標準についてのことですが、63ページ(資料2)に地方税法第72条の19とありまして、「資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地籍若しくは価格、従業員数等を課税標準とし、又は所得及び清算所得とこれらの課税標準とをあわせ用いることができる。」とあります。この規定が実際には適用した例がないという御説明だったと思いますが、この理由を御説明いただけますか。
〇石田府県税課長
63ページ下の地方税法第72条の19の御質問だと思いますが、これは外形標準課税というのがなくなった時に入った条文だと聞いています。基本的に、現在適用していないのは、もしこれを分割法人というか、各都道府県に事務所がある法人に、ある県では外形、ある県では所得というふうに適用すると、いろいろ法人の方で混乱が起こるということで、一斉にやらない限り難しいということから適用されないと理解しています。
〇加藤会長
それでは、議論はまだ尽きませんが、次回に続けたいと思います。
〇尾原審議官
今日、課税ベースに関連して、増収額がどのくらいかとか、いろいろ御注文がありました。実は、私ども、まさに個別の案が出ないと、具体的な議論が進まないということでたたき台を出したわけでして、個別の案がだんだんと固まっていく過程で、数字をお示ししようかと考えていたところです。いずれにしても、相当大胆な仮定を置いていかなければならないわけで、いつまでなら出せるというふうには、この段階で申し上げられないが、努力をしてみたいと思っています。
なお、法人税1%引下げのため、大体4,000億円財源が要るということです。
それから、引当金のいわゆる期間損益に関する問題について一言申し上げたいと思っています。実は、引当金等の期間損益を直しても、財源は一過性のものです。したがって、私ども、財政も扱っている立場からすると、なるべく経過期間は長い方がいい。今日、6年とお話ししましたが、10年、20年である方が、実は財政だけ考えれば、望ましいわけです。しかし、そうすると、一定量の財源を経過年数で割ったのが、おそらく財源的に見た法人税の引下げ幅になるわけでして、10年、20年ということになると、本当に小さなものになってしまう。
そこで、財政との関係でいえば、6年というのが今までの政府の考え方と最も整合的なぎりぎりのところではないかということで、6年ということを申し上げました。4年ということになると、あるいは6年でもそうなのかもしれませんが、4年後の財源を、ではどうするのかという問題もありそうな気もします。一言だけつけ加えさせていただきました。
[納税者番号制度]
〇加藤会長
次の議題として納税者番号制度に入りますが、納税者番号については、金融課税小委員会において審議が行われており、第5回総会での整理においても、今後の税制のあり方の主要なテーマとなっています。そこで、納税者番号制度について、総括的な説明を事務局から受けてから議論をしたいと思っていますが、なるべく説明の方を5分ぐらい短縮してお願いします。
〇鈴木調査課長
お手許の資料、『納税者番号制度関係資料〔説明資料〕』(資料4)を開けていただきたいと思います。ここで、最近の納番をめぐる環境の変化等について御説明したいと思います。
まず、イメージをはっきりさせるために、1ページですが、番号の定義を書いています。「納税者に広く番号を付与する」と。これは生涯不変、全国一連、一人一番号というのが原則でして、各種の取引を行う際に、取引相手にこれを告知するということが第1点。それから、納税者とその相手方が、税務当局に提出すべき各種の書類に、この番号を記載することを義務づけるシステムをつくるということでして、それによってその番号の付した課税資料を、その番号をキーとしてマッチングする、管理するということが言えるかと思います。専門委員である金子さんの定義もそこに掲げています。
2ページに、そのイメージ図を書いています。左の方に、個人、法人、真ん中に付番機関、税務当局と書いてありますが、まず付番機関が番号を付与するということで、個人、法人に与える。それを、付番機関は税務当局に、この番号はこういうものであるということを提供する。個人・法人はその番号を使って、あるいは金融機関での口座取引等において、確認をしつつ番号を知らせる。その情報を税務当局に知らせるということで、例えば利子が支払われれば、それは幾らということで、この番号の方に支払ったという情報を出す。それから、個人はまた別途その番号付きの納税申告書を出す。これによってマッチングができるということになろうかと思います。
3ページを御覧いただくと、これまでこういった納税者番号制度に対する論点が去年の答申でも挙がっています。従来から指摘されてきた課題ですが、目的と効果については、税務行政の機械化・効率化に資する観点から、また一定の限界があるものの、納税者の所得等の把握によって所得・資産課税の適正化に資するということから、多角的に検討を進めたらどうかということです。さらに、適正・公平な課 税のためには、できるだけ広い範囲の法定資料を集める必要があるということで、3つの類型として、税務行政に対する効率化の観点からのアプローチ、あるいは総合課税からのアプローチ、そして相続税等の資産課税の利用といった点からのアプローチがあったわけです。
この番号の付与の方式としては、いわゆるアメリカ型の年金番号を活用するもの、それから、北欧型の住民基本台帳を利用するもの等があります。イタリアでは課税当局が独自に持つという、こういった類型があります。この際、民間及び行政のコストについてどう考えるか、評価するか。それから、資金シフト等の経済取引への影響があるであろうということで、これも考慮する。それから、プライバシーの問題、こういった問題をどう考えるかといった点が列挙されているわけです。
最後に、これは、いろいろな国民の受けとめ方が重要ですので、この理解が深められて活発な議論が重要であるということでして、実はアンケート調査をやっていまして、(資料5)の9ページをお開きいただきたいと思います。これは8年の3月に、個人であれば2,500人、また金融機関、企業でアンケートをとったものです。
10ページを開くと、納税者番号自体を御存じかということなのですが、4割の方が知っておられまして、残りの6割はまだ詳しく御存じない。実は、この御存じないウエイトは、4年前に調査した時には8割でした。これが、去年だと6割に下がってきています。
それから、11ページを御覧いただくと、納税者番号についてどういう効果を期待するかということで、税務行政の機械化・効率化。つまり、今、氏名・住所でマッチングしているが、これが番号で行われると迅速かつ効率的になるだろうということです。
それから、12ページは、その番号の候補についてのアンケートの結果が書いてあります。
それから、13ページは、プライバシーの問題でどういう点が一番気になるのかという点については、この情報が外部に漏れたり税務以外の目的に多目的に利用される観点、こういうことを挙げられる方が多くおられます。
それから、14ページを御覧いただくと、コストについてどう考えるかという点で、真ん中の黒いところが金融機関の回答ですが、8割近くの方が法定資料の作成コストがかかると。それから、確定申告をどうするかという点がもう一つあるわけですが、確定申告が必要になるのではないか、こういうことで煩わしさが増えるという答えの方が多くありました。
それから、15ページ、コストが大きいという方が約5割ほどございますし、それから、16ページ、資金シフトについては、余り生じないという方もおられますし、広くなれば生じない、あるいは避けられないという方、半々です。
17ページが、金融課税小委でも注目されたところですが、個人について言えば、「賛成である」「どちらかと言えば賛成である」の方が4割おられまして、「反対」の方が35%。金融機関の方はその逆です。企業の方が大体同じぐらいということです。
それから、20ページを御覧いただきます。今後、どういう検討が必要かということですが、「活発な議論が必要である」という方が多ございます。それに続いて、「慎重に検討すべきだ」という御議論をされる方もおられます。
(資料4)に戻っていただきたいと思いますが、4ページを開けていただくと、最近の納番をめぐる状況の変化です。
まず第1点は、経済活動のボーダーレス化、内外資本取引等の自由化により、とにかく資金が外に出ていってしまう。こういった観点から、課税の適正・公平を確保する観点から検討が必要ではないか。国際的な金融把握だとか情報確保の観点、公平確保の観点があります。
2番目に、まさに今、金融課税小委で御議論いただいていますが、金融課税に関する論議から、金融商品・取引に対する中立性、執行体制と税制ということが結びついているわけですが、それとグローバル・スタンダードの関係をも考えながら、大量性、多様性、「足が速い」金融取引がいろいろ動いてしまう、残ったものは賃金とか消費に相対的に負担が重くなる可能性があるということで、そういったものについても把握体制を検討する必要があるということです。
それから、3番目に、番号の整備が進んできています。平成4年あるいは63年について、納番小委で検討された時には、具体的な番号がなかったのですが、この1月から基礎年金番号ができています。同時に、社会保険庁からヒアリングしました。約1億の付番がなされており、かつプライバシーについては、今、個人情報保護法の適用を受けて、手厚い手当てがなされており、実際には問題ないという報告がありました。
それから、住民票コード、これは住民基本台帳法の一部改正試案、自治省から本年6月に公表されました。現在、法案作成に向けて準備中であるという報告がなされており、プライバシーの観点については、万全を期するという説明がありました。
次の5ページ、6ページ、7ページ、一応イメージを掲げています。時間の関係上省略します。いろいろなパターンがあろうかと思いますが、そういったイメージです。
諸外国の状況等について眺めたいと思います。8ページを御覧いただきます。どういう資料をどのようにマッチングさせるかということが大事な問題ですが、現在、どのような法定資料が出されているかというのを、○△×で書いたものです。例えば、日本であれば、給与の受取り、これはもちろん法定資料があるわけですが、利子のところが△と書いてあります。これは、法人に支払う利子に対する支払調書は出るのですが、個人については、資料が膨大であるその他の理由で、現在租特で提出の必要がないということになっています。それから、配当受取は○、譲渡についても△、これは源泉分離の場合には支払調書が出ていないということです。ストック関係についてはありません。
一方、アメリカについては、納番が入っているわけですが、収集枚数を御覧いただくと、驚くほど多いわけです。日本が7,700万枚、アメリカは10億枚あります。これは、フローについてはほとんどすべてカバーされているということでして、ストックについてはありませんが、フローの変動によれば、ストックの動きも大体分かるわけです。それから、イギリスは納番はありませんが、こういった法定資料があります。ドイツについては、こういう法定資料制度はありません。フランスは納番はありませんが、法定資料制度があります。それから、スウェーデンですが、納番制度はあります。しかし、法定資料がわりと少ないということで、どのようにカバーするかということも、今後の議論になろうかと思います。
それから、10ページを開けていただくと、納番の制度の概要が書いてあります。各国、アメリカ、カナダは社会保障番号、アメリカであれば、社会保険番号が1936年ですが、62年にケネディ大統領の時に入りまして、そういった番号、それから、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーは住民基本台帳が1970年前後にできております。イタリア、オーストラリアについては、税務当局による番号です。韓国、シンガポールについても番号がありまして、活用されているということです。
それから、コストのイメージですが、11ページにありますが、付番機関はもちろんあるのですが、税務当局についても、マッチングデータの入力その他あります。民間のコストについては、口座開設者であれば、番号を告知して窓口に行って本人確認するという煩わしさがあろうかと思いますし、金融機関であれば、本人確認、データ入力その他のコストがあろうかと思います。
それから、12ページですが、プライバシーの問題があろうかと思います。現在でも、いろいろな申告書その他については、税務当局がその限りにおいて情報があるわけでして、普通の公務員よりも重い守秘義務が税務職員には課されているわけでして、そういったことで保護されているわけですが、番号ができると、それぞれの段階でプライバシーに対する保護という問題が出てきます。特に、先ほどのアンケートでありましたように、税務当局から外に出てしまうのか、あるいは付番機関からどう行くのか、あるいは税務当局から他行政機関との関係はどうなるのか、あるいは民間での利用はどうするのか、といったようなことがそれぞれ問題になっています。個人情報保護の関係で言えば、2つの流れがありまして、例えばアメリカ、カナダ、日本であれば、セグメント、つまりいろいろな場面での保護を行っている。一般的な欧州体系であると、オムニバスということで、一括でデータ保護ということを課している流れがあります。どのように課していくのかといった観点です。
それから、13ページは、海外出張報告において、アメリカ、イギリス等についての観点です。アメリカは金融機関の反対を押して導入したが、コストのかかるものではないという報告を受けています。イギリス、ヨーロッパ諸国では、プライバシーの問題が微妙であるということです。
納税者番号については、総合課税あるいは源泉徴収、あるいは源泉分離課税、その他分離課税との関係があろうかと思いますが、この関係が14ページに書いてあります。1つ注目すべきところは、イギリスですが、納税者番号制度がないのですが、15ページを御覧いただくと、実は国民保険番号が全国一律で付番が振ってあります。これについて、非課税貯蓄がここにあるわけですが、その番号を提示ということで、言ってみれば、限定的に番号を活用して限度管理等が行われているということですし、当然のことながら、税務当局の内部であれば、フランス、ドイツにおいても、番号を税務当局内部で活用して、それぞれ県別、州別に整理をしているという実情になっています。
なお、国税税務当局からは、やはりこういった納番については、所得把握の向上と納税者の意識の向上といった点等、それから機械化・効率化の観点から、基本的に有効であるというような報告がなされています。
〇加藤会長
御質問はあとで伺いますので、その前に、金融課税小委員会の御報告を本間小委員長からお願いします。
〇本間委員
ただいま御説明をいただいた納税者番号制度と密接に関係しているので、私の方から、金融課税小委員会の審議状況について、簡単に御説明をしたいと思います。
前回、10月21日の総会以降、9、10、11回と金融課税小委員会が開かれました。この間、これまで議論がなされてきた各個別項目の整理及び総論としての金融課税の問題の整理を、事務局にまとめていただき、それに基づいて包括的に議論をしてきたというのがこの3回の審議状況です。今後、11月中に当面、来年度税制改正にのせられ得る問題について、中間報告をまとめて総会に御報告させていただきたく、現在努力をしているというところです。水野小委員長代理をヘッドにして、若手の学者の方々にサポートをしていただき、その内容についてたたき台をつくる作業に入りたいと考えています。
審議の内容ですが、現在、非常に金融課税小委員会の中で議論が対立をしています。と申しますのは、1つの問題は、有取税に代表される取引税と所得税制の関係をどのように仕分けをするかという問題。これは、これまで税調等においてもセットになって議論されることがあります。有取税というものを譲渡所得課税の補完的な存在として位置づけるということが、これまで行われてきていました。しかし、議論をしている中で、取引税と所得税というものは、論理的には少なくとも分けて議論するのが望ましいのではないかという形で整理を今しつつあるということです。これは、具体的には、譲渡所得課税の方式をどのように所得税の中で位置づけるかという問題があるということです。
2番目には、これは総合課税か、分離課税なのかという、納税者番号にもかかわる問題ですが、勤労所得税は御承知のとおり、地方税も入れて65%になっているのに対して、金融課税は、それぞれの金融商品に対してアドホック・ベースで課税を分離課税方式を中心にしながらやっている。これを納番制の導入状況いかんとの関連において、総合課税に移行するのか、それともどのような考え方を分離課税としてとり得るのか、こういうことが2番目の設定です。
3番目は、もう一つ、金融課税商品の中で、今までかなりアドホック・ベースに利子・配当、株式譲渡益、雑所得、一時所得と、様々な形で金融商品というものを別立てで課税をしてきたというのが実際です。9回目の審議において、水野小委員長代理から、これまでアドホック・ベースに別々に議論してきたものの延長線で処理せざるを得ないという御提案があったわけですが、それと同時に、金融商品、金融所得というコンセプトの中で、これを包括的に扱うべきではないかという御議論も出されており、このような問題について、今、論点を整理をしているというのが実際です。
今、3つの状況において、それぞれ論点を詰めながら、報告書というものをまとめていく段階にある、ということを御理解をいただきたいと思います。今後、10年度に対応し得るものと、来年度以降、納番制度との関連において、引き続き検討しなければならないものを見極めながら、中間報告の中ではできるだけ中長期的な改革と矛盾しない形で報告をまとめていきたいと、鋭意努力をしているというのが現状です。
以上、御報告を終わります。
〇加藤会長
金融課税小委員会は、現在まですでに11回の審議が終わっています。そして、時間も大体2時間半の予定ですが、議論が非常に紛糾するので、3時間かかって各回やっています。大変御苦労をかけていますが、是非よろしくお願いいたします。
続いて、前回の総会で時間の都合で繰越しとなっている税の競争について、事務局から御説明をしていただけるということですから、どうぞお願いします。
〇谷口国際租税課長
お手許に『OECDにおける租税競争の議論』(資料6)という資料があるので、それをもとに説明します。御存じのように、現在、国際課税がグローバルになっています。経済活動がグローバルになっているので、世界中にいろいろな税制がありますが、その税率に着目して、税の低い国の方に取引が流れたり、いろいろな企業が動いていくということが言われています。ある程度はやむを得ない経済活動だと思いますが、これが行き過ぎるといろいろな問題が生じるということに対応するために始まったOECDのプロジェクトです。
まず、税の競争の問題点として挙げられるのは、そういう税率の差によって可動性の高い活動が動きます。そうすると、可動性の高い活動に対しては、本国でも課税できないし、行った先でも、もちろん課税しないからこそそこに行くわけだから、要するに、どこの国も税金がとれないということになります。そうすると、極端な話には、そのしわ寄せが可動性の低い課税ベースに行くことになります。先ほど金融課税小委のところでもありましたが、例えば勤労所得に対する課税が重くなっていく、あるいは消費税に対する課税が重くなっていく、といったようなことが起こり得るのではないかと。
この点は、例えばすでに国境がほとんどなくなっているEUでは、すでに現実のものになっていると言われています。このように、税の公平性・中立性が損なわれるのではないかというおそれのほかに、これもEUで指摘されていますが、通貨が統合の基準としての財政赤字が各国でなかなかうまくクリアできないというのも、この税の競争のせいではないかと言われています。また、経済学的な議論としても、税を下げたから、そこにたまたま投資するという立地が、本当に経済合理性のある立地なのかといったような問題があります。
次のページに移りまして、では、そういう問題があるのでどうするかということで、OECDで議論していますが、議論は2つのポイントがあります。1つは、そういう有害な税制について、判定基準が要るのではないかということです。判定基準は現在大きく分けて3つ議論されています。1つは、まさに税金が安い、あるいはほとんどない、特に可動性の高い経済活動や非居住者を対象にした活動、オフショアセンターのような形で仕組んで、そこに来た外国の銀行は税率をなしにするといったようなものが典型的です。
それから、不透明な税制、情報交換の不備と2つ並んでいますが、これらはいずれもそういう可動性の高い経済活動に対するさらなるインセンティブとして、そもそも租税回避的なインセンティブを与えてしまうということです。
その次のページをめくっていただいて、では、そうやって判定した有害税制に対して、どういう対抗措置をとるか。これは、一種の囚人のジレンマゲームのようなものがあり、一人だけで対応しようと思っても、かえってバカを見るということがあるので、みんなで協調してやらないとダメだと。
その中で3つの分野があって、1つは、国内法上各国がとる措置です。やり方としては、タックスヘイブンに逃げ込んだ所得を親会社の所得とみなして合算して課税してしまうといったようなやり方、あるいは、今、国会に提案しているが、海外資料情報制度のようなものを強化していくというやり方があります。
それから、2つ目の租税条約上の措置としては、2国間のものですが、情報交換を強化していく、あるいは相手の国にそういうオフショアセンターのようなものができた時には、そこの部分について適用除外にしていく。それによって、条約は基本的に二重課税の防止ですが、税の空白が生じないようにする。相手の国が余りひどくて、情報交換等をしないようであれば、場合によっては破棄をしてしまう。実際にこういう対抗措置をとっている国があります。
それから、OECDの中で今具体的に検討が進められているのがガイドラインの策定でして、OECDというのは、基本的には法的拘束力のない協議機関なので、WTOとは違うが、みんなである程度決めていこう、牽制していこうという考え方です。具体的には、まず有害な優遇税制を新規に導入するのはお互いにやめましょう。それから、もし自分がすでにそういうものを持っていた場合には、何年かかけてそれを縮減・廃止していきましょう。それから、正直者がバカを見ないように、加盟国間で相互にレビューしましょう。こういう3点セットでみんなでコミットをして、租税競争による弊害を減らして行こうという考え方です。
〇加藤会長
時間がもう来ましたが、もし先ほどの納番について、御質問などがあったら、若干時間をオーバーしてやりたいと思います。
〇堺屋委員
納番は、昔は名寄せが主たる目的だったと思うのですが、次第にフラット税制が普及してきたので、今や徴税・納税効率化というのが非常に重要なポイントになっていると思います。それで、これによって納税の、もしくは徴税の効率化がどの程度になるものか、これはやはり出していただきたいと思っています。
第2番目、プライバシーですが、守秘義務違反によって処罰された税務署員がほとんどいません。過去10年間で、ゼロではないかと思います。確か報告を受けた時にそうなのですが、これはまことに困ったことでして、これについて、どのような処分法規、調査方法、監督方法を新たにつくるか、これを明確にしてもらわないと、おそらくプライバシーの保護の観点で納得されないだろうと思います。
3番目に、徴税一元化の問題でして、国税庁を云々ということは言いませんが、資料をあちこちに出すとか、あちこちに納税することがないように、これによって納税の一元化がどの程度進むのか、そういうような周辺の効率、これによる効果について、ある程度明らかにしていただきたい。そうすれば、非常に納得を得やすい条件が整うのではないかと思います。
〇加藤会長
鈴木課長さん、今のはこの次でよろしゅうございますか。何かお答えすることがありますか。
〇鈴木調査課長
大変難しい問題が多くあって、効果については、かなり定量的にできる部分とできない部分、いろいろあろうかと思います。どういうものができるか、検討したいと思います。
それから、プライバシーについて、この納番制度を構築する時に、どういった保護があるかという点については、先ほども御説明したように、外に出る、あるいは内部管理の問題、例えば基礎年金番号であれば、どういうことをなされているかというと、まず個人情報保護法というのがあります。同時に事業主に対して省令で規定してあります。それから、内部管理規定を設けています。そういったこともひっくるめてワンセットでやらなければいけないので、御議論がなされていく過程において、どういったものをすべきだという議論を深めていただきたいと思っています。
〇堺屋委員
今おっしゃった内部監督なんかを、もっと公開する必要がありますね。やはり徴税をする側は供給者だから、情報公開をして、こういう調査をして、これだけなかったということをはっきりする必要があり、今まで税金を納める側の調査は発表されますが、とっている側の調査が発表されたことがない。これは、毎年こういうふうにやるのだ、そして、こういう刑事罰をつけるのだということを、あわせて法整備を考えていただきたいと思います。
〇諸井委員
納番は私は昔から賛成なので、是非進める方向で……。ただ、橋本さん(さくら銀行相談役)がおられますが、やはりコストを余りかけないような何か工夫をしなければいけないのではないかと思うのです。
それから、次回に私出られないものだから、地方税の関連で、この前の地方分権委員会の第二次勧告の中で、今後、なるべく地方の税収と支出の乖離を縮めるとか、あるいは補助金をだんだん減らしていくとか、そういうプロセスで地方税を充実する場合に、できるだけ偏在性が少なくて安定性の高いものにしてくれというふうに唱っていますが、加えて本日出た外形標準課税については、積極的に評価をしているので、その点だけ申し上げておきます。
〇河野特別委員
提案だけしておくと、納番論議というのは、私の経験では右に行ったり、左に行ったり、小田原評定を長くやっていた。税調の雰囲気も右に流れたり、左に流れたり、私個人もそうですけど、海外調査を含めて。しかし、最近の状況と、それから世論の変化、それからビッグバン関係の事態の進展ということを考えてみると、今、堺屋さんがいろいろ具体的な注文をつけられたが、そういうことをまた何年かがかりでやるという時期では僕はないと思うのです。決定的に導入の方向で、とにかく具体的な問題を詰める。今まだ詰めていないのだから。今日はまだほかの人たちが皆発言していないから、分からないが、そういうことについて年末に合意ができれば、年末答申に納番の導入について、今よりももっとしっかりと踏み込んだ、年限を限って、いつまでに結論を出そうではないかと。出ないかもしれませんよ、しかし努力目標としてどこかに目標を掲げた検討を始めるというぐらいのことでやらないと、またこれ、ああでもあってこうでもあるという小田原評定の繰り返しになってしまうおそれが僕はあると思う。だから、提案ですが、皆さんの意見を聞いて、できればそういう方向で、具体的な検討を動き出したらどうかと思います。
〇和田委員
お話も出ているように、納番制度というのは、総合課税との関連が一番もとになっているわけですが、100%全部の所得をというのはこれは無理な話で、本当に総合課税をする時にどこまでやるのかという、ニワトリと卵とどっちが先かということにもなるかもしれませんが、どこまでやるのかというそこら辺のところがまず必要ではないのか。どこまでやるために付番が必要なのか、今でもコンピュータで相当な名寄せができているというような情報もあるし、その辺のところが必要ではないか。
それから、それだけのことをするために、過去の税調で示されたこともあるが、イニシャルコストがどれだけで、ランニングコストがどれだけかかるというようなことが定義されるのが必要ではないかなと思っています。
それから、アンケートの調査結果、これは昨年拝見して、どういう調査票をおつけになったのかということを伺って、それを私は拝見したのですが、アンケートの調査結果を見ると、前回よりはずっと「聞いたことがある」といういわゆる理解度は深まっているとは思いますが、まだまだ回収率が個人が62%、金融が32%、企業が18%ですか、こういう回収率で、そして検討の進め方について、「諸問題について今後とも慎重に検討を続ける」とか、「理解が深まって活発な議論が行われる必要がある」というような議論が非常に多いということは、やはりそれなりの意味というものを考えていかなければならないなと思います。
それと、私どもの周りで、アンケートから外れて、相当納税者番号ということは関心は持っている。ただ、いろいろ人が話しているのを聞くと、それぞれ頭の中に入っている納番というのが、必ずしも共通のものになっていない。だから、もっと議論を深めていくためには、そこのところをもっときちんと示していかなければ──共通のことについてみんなで議論をするということにならなければいけないと思うのです。
それで、このアンケートの調査票を見ると、あくまでも課税目的にだけ使われる限定番号というふうに、アンケートに記入する人は受けとめていると思うのです。ただ、今までの議論なんかを見ても、他の行政機関でいろいろこういうことにも使う、そういうことに使わなければコストが合わないのではないかというようなお話も出ていたようにも記憶しているので、やはりそこのところはきちんと分けて考えないと、議論が行ったり来たりで、本当の議論なり理解というものになっていかないのではないか。あくまでも課税目的の限定番号なのか、それとも将来共通番号として使う可能性、これは前の任期の税制調査会で税務と行政分野における共通番号制度に関する関連省庁連絡検討会議ですか、この御報告なんかを伺っているので、一般の人々はそこのところまで広げて頭にある人と、あくまでも課税だけなのだと受けとめている人があるということだけ申し上げておきたいと思います。
それから、プライバシーの問題に関しては、自分の税務情報にアクセスできる権利というのは、どうしても必要だと思います。そして、そこのある情報がもしも誤りがあったり、自分が納得できない時には、それを修正できるというところまで踏み込んだ、自分の情報だから、その辺のところがどうなのかということを示していただく必要があるのではないかと考えています。
〇加藤会長
まだこの議論はやる時間もあると思うので、鈴木さんの方でも是非検討していただいて、今出た質問などもいろいろあったから、それにお答えをしていただきたいと思っています。何かございますか。
〇鈴木調査課長
極めて重い、重要な問題ばかりでして、時間的にはかなりかかるかもしれませんが、いろいろ工夫して皆さんの御審議の参考になるようなものを、できるだけ提供させていただくように心がけたいと思っています。
〇加藤会長
よろしくお願いします。
それでは、今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。
〔閉会〕