第6回総会 議事録

平成9年10月21日開催

加藤会長

ただいまから税制調査会の第6回総会を開催します。

[本日の進め方]

今日は、議事のことについてまず申し上げておくと、財政構造改革の法案が今出ていますが、その基本的な考え方、計数的な裏付けなどについて、主計局から説明を受けて、それから皆さま方の御意見を承ります。

次に土地税制について事務局から説明を受けて、御意見をいただきたいと思います。

最後に、金融課税小委員会の第6回から第8回までの審議状況について、さらに、先月14日から25日にかけて行われた海外調査についての報告を受けたいと思います。

[財政構造改革に係る財政事情の試算]

それでは、最初の審議に入りたいと思います。

財政構造改革については、本年6月に財政構造改革会議において推進方策が決定され、今後6年間の財政健全化目標を定め、今世紀中の3年間を「集中改革期間」として強力に改革を推進することとし、具体的な歳出削減目標が決定されました。また、これに沿って「財政構造改革法案」が策定され、今、臨時国会に提出されているところであります。

税調でも、これまでの議論の中で、徹底した行財政改革・効率化の必要性を強調してまいりました。また、今後の税制の議論の前提として、財政構造改革の全体像を把握していただくため、その基本的な考え方並びにその計数的な裏付けについて、主計局細川次長から説明を受けたいと思います。

それでは、細川次長、よろしくお願いします。

細川主計局次長

ただいま会長からお話があったように、本年の6月3日に財政構造改革会議の決定、さらにそれを受けた閣議決定によって、財政構造改革の推進を強力に行っていくということが決まって、ただいま申されたように、それを「財政構造改革の推進に関する特別措置法案」という形で今国会で御審議いただいているところです。

さっそくですが、お手許に『財政事情の試算』(資料1)というものをお配りしています。2枚紙ですが、これは今申し上げた閣議決定及び財政構造改革法案の内容を踏まえて、10月1日の財政構造改革会議企画委員会に提出した試算です。これについて御説明したいと思います。

財政構造改革の当面の目標は、2003年度(平成15年度)までに、国及び地方の財政赤字を対GDP比を3%以下とすること、及び国の一般会計においては、2003年度までに特例公債依存から脱却すること等が内容となっていますが、これを踏まえて、2003年度までの財政事情を一定の仮定のもとに機械的に試算したものです。

試算の前提あるいは算出要領について、まず申し上げたいと思います。この表は歳出と歳入、それから歳出入ギャップというものを示していて、10年度以降、15年度(2003年度)までの試算を行った表になっています。上の方が歳出、下が歳入です。

まず、10年度については、現在の政府の経済計画における名目成長率、すなわち構造改革が進展しなかった場合の1.75%と、進展する場合の3.5%、これを前提にしています。波(~)を打っていて、左側が1.75%の場合、右側が3.5%の場合です。税収率経済成長率等に応じて変化する項目については、それに基づいて推計しております。一般歳出、公債金収入については、一定の仮定を置いて機械的に計算しています。

具体的に申し上げると、集中改革期間の初年度である10年度の一般歳出については、既に決定されたそれぞれの量的目標に基づいて概算要求が行われていて、それをベースにして見ると、一般歳出の欄ですが、対前年3,200億円の減ということで、44.8兆円で仮置きしています。集中改革期間中である11年度、12年度、それぞれ具体的な目標が決まっているものもありますが、まだ決まっていないものもあるので、とりあえず44.8兆円と仮置きして、それに±α、±βとしています。

なお、集中改革期間中以降の13年度以降については、伸び0%、1%、2%ということを仮置きして等率で伸ばしたものです。

続いて、下の欄の公債金収入ですが、10年度は、2003年までに特例公債依存から脱却するという目標を踏まえて、機械的に割り算した1兆2,500億円減額した額を仮置きします。また、建設国債については、公共投資が量的目標で7%減とされています。それに基づいて出された概算要求を踏まえて、建設国債については7億減額した額を仮置きしています。

11年度以降の公債金収入については、11年度、12年度、公共投資の水準の引下げを図ることは決定していますが、どの程度引き下げるかについてはまだ決定されてないので、建設国債について、特定の発行額を仮置きすることは現在のところ難しいと考えられます。したがって、内訳を設けずに2003年度までに赤字国債から脱却するということを仮定し、10年度から1兆2,500億円ずつ機械的に均等に減額した額を仮置きしています。

以上が大まかな試算の算出要領ですが、国債費、地方交付税、一般歳出の合計が歳出の計の欄に示し、税収、その他収入、公債金収入の合計が歳入欄に示されています。この両者のギャップを要調整額ということで示していますが、試算における公債減額を実現するためには、歳入歳出の各項目において、さらに努力が必要であるという金額です。

なお、一番下の欄に、今年の予算編成でも大きな問題であり、財政構造改革企画委員会でも議論を進めようということもあって、試算の一番下の欄に、国鉄長期債務の処理の問題と林野特会の債務処理の改革のための経費について、それぞれ運輸省、農水省から要求が出ているので、それを仮に要求どおりに処理した場合の金額で、要調整額に追加される額を備考として示しています。10年度は、国鉄については約0.7兆円、国有林野については約0.1兆円という額が、要調整額に追加される額です。これが11年度以降、平年度化すると、それぞれ約1.4兆円、約0.3兆円で、計約1.7兆円の要調整額が出てくるという姿です。

次に、特に10年度の財政事情について絞って申し上げたいと思います。先程、申し上げた前提を踏まえると、要調整額が2.1兆円から2.9兆円という大きなものが存在するという試算結果になっています。この要調整額の解消はなかなか容易ではない、と思われますが、まずはさらに一般歳出の一段の削減努力が必要であると考えています。

なお、その他収入については、10年度は1.9兆円と仮置きしていますが、ここについても最大限の努力をしていかなければならないと考えています。

また、地方交付税についても、地方の状況は大変厳しい状況ではありますが、また現在のところ10年度の地方財政収支が見通せる段階にないので、これが見通せる段階でないと確定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、今後、地方財政の状況を見きわめながら、自治省とも協議して努力を重ねていかなければならないと考えています。

10年度については、今申し上げたように、まず一般歳出、その他収入の確保、地方財政面での努力等々を一生懸命やらなければならないと思っています。税収動向次第ですが、何とか要調整額を解消すべくぎりぎりの努力を行っていきたいと思っています。

11年度以降の財政事情は、ここに示したとおりですが、例えば11年度について見ると、要調整額がなお3.2兆円から4兆円、税収動向もありますが、ここも歳出歳入あらゆる項目について、最大限の努力を行っていく必要があると考えています。

なお、真ん中から下のところに(参考)ということで、国及び、地方の財政赤字の対GDP比を示しております。9年度は5.4%ですが、これを2003年度に向けて3%以下にしていくという目標があります。この要調整額を解消し、ここにあるような公債の減額が実現できた場合の仮定計算です。これで見ていただくと、大変な努力が必要なことはもちろんありますが、この公債減額が実現できた場合には、2003年度の欄を見ていただくと、3%以下という姿が出ていて、何とか目標達成の軌道に乗っていくのではないかと考えています。

以上が今日の御説明でして、これをややビジュアルにしたものが次の1枚、『要調整額の推移』というものです。これは、今申し上げた要調整額について、1.75%の場合が上、3.5%の場合が下です。一番上にある点線で示しているのは、国鉄長期債務あるいは林野特会債務の処理が要求どおり処理されると、これだけ伸びるという図です。

加藤会長

それでは、ただいまの説明について御質問などがあったら、どうぞお願いします。

竹内委員

10年度以降の要調整額の処理の方法をめぐって、一番下の国鉄債務については「仮に要求通りに」という文面が入っていますが、この「要求通りに」という内容の中身がどうなっているのか、あるいはこの要調整額の8,000億円、ないしはその後の1兆7,000億円というこの債務についての要調整額に対応する方法について、どのように考えていますか。

細川主計局次長

まず、要求の内容を概略申し上げると、国鉄債務については、10年10月に国鉄長期債務整理特別会計というものを設置して、有利子債務約19.5兆円、無利子債務8.3兆円をその特別会計に承継するということになっています。これを簡単に申し上げると、国債費で処理してほしいという形になっています。

それから、国有林野特会についても、累積債務は、3.8兆円ですが、この5,000億円のみを特別会計に残して、あと3.3兆円については、一般会計に承継して国債費で元利償還してほしいという内容になっています。

この処理については、ただいま財政構造改革会議でもいろいろな方策が出されていて、あらゆる方策について、基本的には安易に負担を先送りしないようにという原則に立って検討を進めるようにということになっています。既に国鉄については、企画委員会の方で回を重ねていま検討しているし、これから林野についてもそこで検討していただくという段階です。

竹内委員

その点について、国債の発行につき、何らかの相続税など税控除をつけるというような法案があるかに伺ったのですが、それについての御説明をいただけますか。

細川主計局次長

財政構造改革会議では、10項目ぐらいの処理方策が掲げられていて、それらを含むものという中に、相続税軽減等の特典をつけた無利子国債の発行ということも一つとして挙げられていますが、それについては主税局の方も企画委員会の方に出られて御意見を述べられていると思います。

大武審議官

10項目の中で4項目が税金に関係していて、その一つに今竹内委員の言われた相続税軽減等の特典を付した無利子国債の発行があります。それ以外に、償還財源として新たな税負担を求める方策として、JR利用税だとか、総合交通税だとか、増税による国民負担というような3項目が並んで、全体でそれ以外の、いわば歳出に係るものも含めて10項目が載っているということです。

その中で、相続税の軽減等の特典を付した無利子国債の発行というのは、国鉄の長期債務として、いわゆる財投等からの有利子債務にかえて、無利子の国債を発行する。その購入者に対して、例えば、その無利子の国債を相続税の課税資産から除外することを認めるというようなもののようです。

ただ、運輸省の10年度税制改正要望では、むしろ所得税、法人税での税優遇措置を要望ということになっていて、このあたりは運輸省の要望とは必ずしも同じではないという形になっています。

石特別委員

今、国会で審議されていると思いますが、「財政構造改革法案」というのは、どのぐらいの範囲をカバーするのですか。つまり今日試算を見せていただいたわけですが、おそらくこの試算の背後には、俗に言われるキャップというものがかかって、大分歳出を抑えた。そういう経緯だと思いますが、今ここに行われている、「財政構造改革法」というものは、単に2003年までにどうするとか、大きなことを2つ、3つ決めるだけの法案なのか、それとも具体的なキャップの、例えば、公共事業を7%削減するとかなどがあります。どこのところまでをもって特別法案の中身に今しようとしているのでしょうか。その辺をちょっと教えていただけますか。つまり、この表自体が法案ではないですよね。

細川主計局次長

まず一番大きいのは、ここにある2003年度までに国及び地方の財政赤字を3%以下にする、あわせて特例公債から脱却すること等が、当面の目標として法律に書かれています。それが大きな網です。

それから、各分野について、財政構造改革会議で、いわゆるキャップといいますが、象徴的なのは公共投資を10年度は7%カットする、そのあとも引き下げていくという、その量的目標が全部法律に書かれています。

石特別委員

それは2003年までぐらいを見通しているのですか。

細川主計局次長

2003年度まで、この前、財政構造改革会議で決めたものをそのまま法律にしていくと。

石特別委員

そうすると、それを決めてしまうと、2001年以降、1%、2%、0%、こういう一般歳出の枠はおのずと決まってきてしまうのではないですか。

細川主計局次長

2003年度ではなくて2000年度までです。集中改革期間の話です。

石特別委員

でしょうね。そうすると、あと3年というのは、まだフリーハンドに残しておくと。ただ、縛りとして特例国債脱却、それから3%があると、その程度ですか。

細川主計局次長

はい。

石特別委員

いずれにしても、2000年までについては、各論の中に少し立ち入ったということですね。

細川主計局次長

そうです。要するに、財政構造改革会議で決めた量的目標を、そのまま法律に──書き方はいろいろあると思うのですが──法律の書きようによって縛りをつけたということです。

松尾委員

先程の国鉄の長期債務の処理に関するいろいろなアイデアとして、無利子国債があるというお話でしたが、これはやはり政府税調としても重大な関心を持たざるを得ないと思うのです。結局、税金を免れる、そういうメリットがある人しか買わないということですね。ですから、税収が間違いなく落ち込むということだと思うのです。相続税免除付きあるいは法人税所得税免除付きか知りませんが、そういった無利子国債を発行するのは、財政構造改革の趣旨に全く反すると思うのです。まことに姑息な手段としか言いようがない。

財政がかえって見にくくなってしまうということで、こういった処理の仕方には非常に問題があると言わざるを得ないと思います。こういう形で税制にしわ寄せするということは、歳入面に穴をあけるということだから、財政構造改革の趣旨に反してはならないということを厳に守っていただきたいと思います。

水野(勝)委員

今の国鉄債務の件ですが、昭和56年から始まった当時の財政再建で行政改革、あの当時の空気からすると、とにかく財政再建を含めた行政改革、これは「増税なき財政再建」というのが非常に大きな眼目として掲げられていたと思います。その時に、この国鉄の問題は、結局、今思えば先延ばしされたということですが、その時の「増税なき財政再建」の中でのあの処理は、どういう雰囲気であったのか。

「増税なき」だから、やはり増税して処理をするという、当時の空気からすると、そういう方向ではなかったと、今思えばそうではないかと思うのですが、その点は先送りした場合に、そこに大きな原則なり方向なりがあったのかどうか。そこらについては、私どもも記憶が定かでない。そのあたりの事情について、何かお聞かせいただけることがありますかどうか。

細川主計局次長

私、今、その時のことについての知識を持ち合わせていませんが、財政構造改革会議の中でも、いろいろな議論があった中で、情報の公開あるいは債務増大の原因の分析をきちっと行いなさいということが言われていて、この前も会長においでいただいて、当時のこともお話しいただいたのではないかと思っています。失礼ですが、その程度ぐらいしかありません。

加藤会長

簡単に申しますと、負債総額を全部計算して、年金も含めて出して、それを国鉄が努力によってJRになって解決をする分が幾ら、それから、清算事業団が土地を売って解決する分が幾ら、さらに人員を28万人から20万人に減らすから、そのことによって生ずるリストラ、そういうものを含めます。しかし、それでも最後にどうしても13.8兆円の国民負担が残ります。その13.8兆円の国民負担は、絶対に増やさないようにしてやってほしいということが一つ条件としてあるのです。

あるのですが、実はその時私どもの頭の中では、土地が非常に高く売れることを考えていたので、そこでその土地を一斉に売れば、──つまり土地の価格が上がっていた時ですから、── その時に一斉に売れば、土地の価格を下げると同時に、あるいは冷やすと同時に、全体としておそらく20兆円ぐらいの収入はあると考えられたので、したがって、もう負債はなくなると、こういうある楽観的な気持ちが背景にはありました。

ただし、それは実現できなかったとしても、13.8兆円は必ず国民負担として解決することになるということであったのですが、しかし、国鉄再建税というようなものをつくることに関しては、増税をしないということがその時前提になっていたから、これはできない。したがって、政府としては、これを将来どうするかということについては、政府が考えなければいけないことになるのだということだけは指摘しておきました。

それはしかし、実は、私から考えると、大したことではないのでして、重要なことは、そのあと、13.8兆円が20兆円に増えるわけです。この増えていくところに財投などを投入したわけです。このやり方が明らかに間違っていた。そういうやり方を我々は否定していたのですが、それを実際には政治がやってしまった。バブルがあったものですから、そういう意味では非常に楽観的な気持ちがあったのだと思いますが、それをやってしまった。結果的にそれが今膨らんでしまったから、私の考え方では、根雪である13.8兆円は、財政全体で解決することですが、その上に乗っかってしまった新雪である部分については、これはもうこれから増やさない形でもって、この解決をまずやらなければならない。

そのためには、重量税の転換──重量税は一般会計に入っていますが──これは目的税であると言う人と、目的税でないと言う人がいます。今でもその議論が残っていて、それが結果的に私どもとしては非常に突破しにくいところであります。

しかし、これは断固として頑張れば、重量税だけは目的税ではないということは明らかで、一般会計に入っているから、このお金を回せば、その新雪の利子の部分は当然解決できるはずです。さらに進んで揮発油税とか、あるいは整備新幹線などについても、ある程度の削減をすることができれば、国鉄の負債問題は将来に禍根を残さずに解決できるはずであります。

このためには、やはり運輸省だけではなくて、大蔵省ももちろん、建設省あるいは運輸省など全部がひっくるめてやらなければいけない問題ですね。そういう垣根をとっぱらうことが、私は財政構造改革の基本的な精神だと思いますが、その精神がこの財政構造改革法案の中では少し薄れているのではないかということが気になります。気になりますが、とにかくそれをこれからもやってほしいということを我々は要求していかざるを得ないのではないか。

こういうようなことを、──これは全く私の個人的な見解ですが──ちょっと申し上げさせていただきます。

佐野特別委員

この『財政事情の試算』という表を見て1つ質問したいのですが、2000年度に介護保険というのが導入される。そういう計画で物事が進んでいる。約2兆円の保険料収入がある。あるいは年金改革というものが1999年度に予定されている。あるいは医療改革、高齢者医療保険の創設等々、これが2001年度。いずれも、これは財政構造改革法案に入っていることで、既にスケジュールに載っているわけです。これとこの財政事情の試算の表とどう関係するのか、あるいはそういうことが実際に行われることになった場合、このテーブルが、全面的というか、かなり大幅な修正を迫られるのか、そこら辺をちょっと聞かせてください。

細川主計局次長

社会保障については、量的目標で10年度は約3,000億円、それから12年度までについては、高齢者の数の伸びを勘案しておおむね2%程度で抑えるということがキャップとしては決まっています。それをどういうふうな形で制度改正で実現していくかということについては、決まっていません。

佐野特別委員

決まっていないのはわかりますが、つまりこの表だと、国民負担全体のイメージというのが少しはっきりしないというところなので、税だけあるのですが、今後、社会保険料という問題がかなり大きくなってくるわけで、財政の将来展望という場合、国民負担という社会保険を含めた将来像をお示し願いたいということです。

細川主計局次長

その点は、いま申し上げたようなことで、制度改正そのものについての議論が行われていないので、今それをお示しすることは困難だと思います。

橋本特別委員

『財政事情の試算』のこの表に対する質問ですが、1つは、税収の伸びが名目成長率×弾性値1.1という計算であるのに対して、地方交付税の法定率分の計算は、名目成長率×弾性値1.2 となっている。これは、なぜそのように計算をするのかということが第1点。

それから、赤字公債を減らしていくわけですが、国債費というのは余り減らない。それは、いわゆる建設公債がこの間増えていくことによるものかどうか、ということが第2点。

それから、要調整額の金額は、ほぼ一般歳出の1割見当というような金額になっているわけですが、この場合、一般歳出を1割カットで切り込んだとしたら、この要調整額というのはほとんど解消していくものなのかどうか。

その3点をちょっと質問したいのですが。

細川主計局次長

弾性値については、主税局ともよくお話して、1.1と1.2の大まかな違いは、1.1は税全体についての弾性値でして、地方交付税については、感度の高い所得税とか法人税が大きな割合を示しているので、1.2ということで置かさせていただいています。

それから、国債費については、過去の利払いももちろん計算し、それから、今後こういう形で公債金収入をやっていけばこうなるということで、ある意味では機械的に計算されるものです。

それから、一般歳出の1割をもしカットできればということですが、それは毎年その分ずつ減っていくことから、歳出の欄がそれだけ減れば要調整額が減るという計算にはなります。

竹内委員

この試算の表を見た素人的な印象ですが、今財政構造改革は非常に国民の中心的な課題ですが、それを議論する際の資料として、この表は非常にわかりにくいように思います。専門家はわかると思うのですが。

まず、歳入の中で公債金が決まっていて、これは理想的なケース。なおかつ要調整額がこれだけあります。しかし、また国鉄債務の処理によってはこれだけ増えるということで、何をどう努力すればいいのか。つまり、先程言ったように、歳出削減でカバーできる範囲というのはどのくらいで、なおかつ、今会長からお話があったように、税の体系として、重量税だとか道路財源等々の形で議論しなければいけない点は何か。それが、この税調の議論の中心ポイントであって、そのポイントがよくわからない。もし国鉄債務の問題を税の問題として取り上げるのであれば、また別の形できちんと、一般財源の中で処理すべきなのか、あるいは特定財源の体系と含めて考えるのか検討すべき。

これが議論されないままに、いろいろな形で話が進んでいいものかどうかはっきりしない。今後、持ち越されるかもしれないこの債務拡大の問題に関して、歳入の面でどういうことが考えられるのか。それを、棚上げしておいて、この要調整額が自然に消えるものなのかどうか。そこが具体性がないと、何か議論している感じにならない。是非きちっとした議論をお願いしたいと思います。

細川主計局次長

直接のお答えになるかどうかわからないのですが、今回の財政構造改革、今年の初めからずっと会議が行われてきた背景というか、議論の流れとしては、1つは、諸外国で懸命な財政健全化努力を行ってきています──これは石先生が大変お詳しいと思いますが。日本の場合は最悪の財政状況になって、改革努力も遅れているのではないかという議論の中から、いろいろな諸外国の経験も踏まえて、2003年度までに3%以下にするという目標を設定し、また先程も言ったように、赤字国債から脱却するという、そういう大きな目標をつくりました。

それに向けて、例えば、アメリカでは最初グラム・ラドマン法でそういう大まかな財政赤字縮減を目標にしてやったのですが、やはり個別の歳出項目それぞれについて個別にきちっと議論して、ここは削減するのだという、今回のOBRAがそういう形になっているわけですが、その経験も踏まえて、3月18日に総理から5原則というのが示されて、その中の大きな柱として、主要経費別の大きなものについては、──マスコミではキャップと言われていますが──そういうものをかけると。

これは数量的なものですが、構造改革の議論も、特に社会保障はなかなか大変な議論もあったわけですが、そういう形で個別にきちっとやっていくと。それの中のとりわけ3年間の集中改革期間については、それぞれの数量目標を決めるということで、まず一般歳出について何ができるかということを議論として集約したというのが今回の姿です。

今まで我々は、こういうものをお示しする時には、中期展望というのをお出しして、現在の制度をそのまま投影するとどうなるか、ということをこれでお示してきたのですが、そこのところについて、少なくとも10年度、11、12年度については、ここまでの努力ができているのですよ、ということをお示しできたのではないかと思っています。

石特別委員

簡単な質問です。2003年までにGDP3%というのは、国も地方も合わせたものですね。国に関しては、その裏付けになるような試算をしてもらった。これは昔から議論になるのですが、地方に関しては約3,300あるから、多分できないだろうということで、ここの裏付けはとにかく機械的に落として、国と合わせたということだけだと思うのです。

しかし、何か担保するような、つまりプロセスを示すような制度的な変革なり歳出の切り込み方なりというのは、議論はできればすべきなのでしょうが、実際それはノータッチになっているのですか。これは自治省にお聞きしたい。

細川主計局次長

ここの計算は機械的にプロラタでやっているわけですが、現在の5.4%の国、地方の内訳についてそのまま伸ばしているという格好になっています。今、石先生がおっしゃった議論としては、少なくとも今までは、国、地方を通じての目標という形で、GDP比でそういうふうに抑えてはいなかったわけです。それが、どれぐらいの縛りになるかという御議論はおありかと思いますが、そこは一つ今までとは違ったところではないかと思います。

湊税務局長

財政局が来てませんので、私の方からちょっと御説明したいと思いますが、かつてから中期的なものを何度か御議論ありまして、試算して出したこともあったが、結果として地方の歳出の大体半分ぐらいが国の補助金に関係した歳出になっているようなこともありました。結果として、国の財政事情の今後の見込みを立てる際に、その辺が一体どういうふうになるのかというようなことがなかなか出しにくいということもあって、仮定の上にさらに仮定をつくった上の試算になるということで、なかなか議論に耐え得るものになりがたいということで、今回も国の方に合わせたような15年までの試算値は出ていません。

しかし、全体としての考え方の哲学は、今回の「財政構造改革法案」あるいはその前にあった閣議決定の中で、国、地方を通ずる行政改革を行うことや、全体として地方の歳出の計上も、来年度についていうと、一般歳出をマイナスにする、あるいは地方単独事業の削減を行う。主要な事項については、地方財政についても、幾つかのポイントの部分について、キャップも完全にはめられていて、また11年度以降についても、再建目標期間中を通じて、地方の一般歳出の伸び率を国と同一基調で抑制を図るということにしています。

本来いえば、結果としては個々の団体の決算でいろいろな数字が出てくるわけですが、御承知のように、全体としては地方財政計画という理論値計算の上で、毎年地方財政の対策、大枠を決めているので、そういった中で、こういった今の閣議決定や、あるいは今回の法律の中身に即した調整が、国と合わせて行っていけるものと考えているし、またそうすべきものだと我々も認識しています。個々に長期的な数字はお出しできませんが、また年度改正の大詰め段階になると、来年度の収支見込み等を含めた、──断片的な形にはなりますが──そういう形でこの場でも御議論を頂戴したいと思っています。

平田委員

今の竹内委員の御質問と同じことになるかもしれませんが、これは今度の「財政構造改革法」で、歳出の項目について前年の何%にするというような決め方でやっていくにしても、その部分に要調整額があることだと思います。ですから、10年度の一般歳出の44兆8,000億円は決めておいて、11と12年度、すなわち99年と2000年のところは、±α、±βになっているから、ここのところでそれぞれ調整をする。その調整は、大変大きい金額になるということを我々が理解をしなさいということだと思います。

ですから、税制調査会として歳入をどうしようというところは、この表には出てこないわけです。1つ出てきたのが、ただいまのお話の国債を相続税の時には課税標準から外すというような、すごい話しか出てこないということであって、実務家の目から見ると、国債を相続税から外して考えるという話は、これは本当に不可能な話をしているわけですその辺は専門の方がたくさんおられますから、当然これは問題外の議論であると私は思っています。

今野委員

この歳出の部分で、私なんかは、行革の効果が劇的に出るみたいなイメージを期待しているわけなのですが、そういうことはこういう表には全く表れないものなのでしょうか。

細川主計局次長

行革の議論がどういう形に今後なるのかということですが、行革がどうあるかということを前提にして議論しているものではありません。

加藤会長

そろそろ終わりたいと思いますが、私なんかは、要調整額というと、要するにこんなに苦しくなるから、したがって、それをこれから主計局は大いに頑張ってなくすのだと、こういう意欲を表明しているのだと思っています。したがって、この要調整額がこのままずっと続くようなことであっては、主計局の存在価値が問われるわけでして、例えば、先程出た重量税もそうですが、──あれをどういうふうに使うかということは我々の言うことではないのですが──新しい税をつくるときは我々も議論しなければいけません。

例えば、相続税を免除するような国債発行などとなると、これは我々が議論しなければいけないと思いますが、そうではなくて、既に決まっている税制について収入があった時、それをどう使うかというのは主計局の考え方です。したがって、私は大いに主計局にエールを送りたいのは、頑張って、そういう変な歳出をカットしていただいて、そして要調整額をなるべく小さくしてもらうということが、税調委員のみんなの気持ちだろうと私は思うので、どうかこれからも頑張っていただきたいと思います。

細川主計局次長

全身全霊を傾けて頑張りたいと思います。

[土地税制]

加藤会長

続いて、土地税制の審議に入りたいと思います。

土地税制の問題は、現在の景気対策も含めて、来年度税制改正の重要課題の1つになっています。そこで、委員の皆さま方の共通の議論の土台をつくるという意味で、土地をめぐる状況や土地課税の基本的な考え方について、事務局より説明を受けたいと思います。

それでは、西原税制第三課長、それから片山固定資産税課長、それぞれよろしくお願いします。

西原税制第三課長

それでは、お手許の資料、土地税制に関しては、横に(説明資料)と書いてあるもの(資料2)で御説明します。そのほか(参考資料)というもの(資料3)もお配りしていますが、これは後程御覧いただければと思います。

土地税制に関しては、最近いろいろと賑わしていますが、今日は、当税制調査会において、新しいメンバーになられてから初めての御説明という機会でもあるので、やや基本的なことから若干説明したいと思います。

1ページ目です。土地に対する課税としては、御覧のとおり、土地の流れによって、それぞれの段階でいろいろな形での課税が行われています。いわゆる取得の段階、保有している段階、譲渡される段階、そういう段階でそれぞれ課税が行われるわけでして、個人、法人、それぞれに御覧のような税がかけられています。また、国税のみならず地方税においても、御覧のような税がかかるわけです。例えば、個人の欄を見ていただくと、取得に際しては、取得の登記をする際に登録免許税、それから、保有をしていると、これはすべてにかかるわけではありませんが、地価税というものがかかる可能性がある。それから譲渡の段階では、所得税、譲渡益課税という形のものがかかってまいるわけです。

次のページを御覧いただきたいと思いますが、それでは、現在土地をめぐる状況はどうなっているか、あるいは現在の制度に至る過程において、いわゆる「土地基本法」というようなものができて、現在の制度に至っているわけですが、そういった過程がどうなっていたかということを若干振り返ってみたいと思います。左側の方で点線で囲った枠の中を御覧いただきたいと思いますが、戦後3回目の地価の高騰というのが昭和61年から平成2年にかけて起こった。いわゆるバブルです。戦後、過去3回目ということですが、1回目は35年から36年にかけて、やはり高度成長の波の中で起こった。それから、第2回目は47年から48年、いわゆる列島改造ブームの際に起こったということですが、3度目の高騰がいわゆるバブルだったわけです。

こういったものが起こって、土地問題としてクローズアップされたのが、いわゆる土地を保有している人、保有していない人の間の資産の格差、──そこに四角で囲んでありますが──そういった問題。それから、資産として土地が非常に有利性が高いという認識、いわゆる土地選好が強いという状況。それから、どんどん土地の価格が上がると、内外価格差の問題、あるいは高コストの構造の問題。こういったことがクローズアップされてきたわけです。

それと同時に、高くどんどん値が上がるということになると、利用せずして保有するという状況、すなわち低未利用地の存在ということがやはり問題になってきたわけです。こういったことを背景として、「土地基本法」というものが平成元年の12月に制定されたわけです。

そこの基本的な4つの理念というのを挙げてますが、「土地基本法」の第2条に、土地についての公共の福祉優先、土地の公共性を唱ってます。すなわち、土地というのは、限られた貴重な資源であるという位置付けから、そういったものを優先するのだという考え方が表されています。それから、第3条に、適正かつ計画に従った利用ということで、土地というのは、保有をするということではなくて、保有には利用の責務が伴うのだということが唱われています。第3点目としては、投機的取引の抑制。第4点目が、利益に応じた適切な負担を求めるという考え方が第5条に示されています。この適切な負担ということは、すなわち、土地の譲渡益というのは、外部経済的ないわゆる周りの開発利益、この反射的な利益が譲渡益を生むということもあるものだから、そういったものについては、適切な負担を求めるべきであるという考え方です。

この4つの基本理念をもとにして、現在の土地税制というものが構築されているわけです。この「土地基本法」の考え方に則って、平成3年の1月に「総合土地政策推進要綱」というものができて、その当時、土地政策の目標として3つ掲げられています。それがここにあるような土地神話の打破、すなわち、二度と地価高騰を招来することがないように、土地が最も有利な資産であるという状況をつくり出してきた要因の除去に努めるということが一つ唱われたわけです。次の第2点目で、適正な地価水準の実現、地価の抑制ということが唱われたわけですが、土地の利用価値に相応した適正な水準まで引き下げることを目標とするということです。第3点として、適正かつ合理的な土地利用の確保、いわゆる有効利用ということですが、計画に従った適正かつ合理的な土地利用を確保するということが唱われたわけです。

それからしばらく経って、現在に至るわけですが、いわゆるバブルの崩壊ということで、地価が相当大きな下落をしているという状況です。右の方の点線の枠の中を御覧いただくと、現在、バブルの部分はほぼ大都市について解消しているという状況ですが、住宅地はほぼ横ばいの状況、商業地については7年連続で下落。

しかし、最近については下落幅は縮小傾向にあるということですが、よくよく見ると、大都市圏の商業地では地価の動向が二極化しているというふうな形でいわれます。すなわち、立地条件の良いところ、利用価値の高いところ、こういったところについては、最近は非常に取引も進み、高値で売れるというような状況も出てきていますが、それ以外の土地、虫食い地だとか、利用し勝手の悪いところ、これについては、ますます下落しているというような二極化の動きがあります。

それから、そういう状況のもとで、それでは土地問題についてはどういう流れになっているかということですが、資産価格あるいは資産としての有利性、あるいは内外価格差、高コスト構造、これはまだ少し残るにしても、総体的にはだんだん縮小傾向にあると言えようかと思います。しかしながら、低未利用地の存在、これはまだ残っているし、あるいは新たに経済構造改革の中で土地というものをどう考えていったらいいのか、あるいは土地本位的な経済システム、これをどう考えていくのかというような問題、あるいはバブルの崩壊に伴う不良債権の問題ということが新たに伴ってきたわけです。

そういった中で、この「土地基本法」というものの基本理念は、そのままもちろん継続していますが、それを実施にいろいろ移していく際の考え方として、今年の2月に「新総合土地政策推進要綱」が決定されたわけです。そこでは、御覧のとおり、地価抑制というようなことから土地の有効利用へと、いわゆる所有から利用へというウエイト付け、こういうような提言がなされていて、こういったいろいろな現在の状況を踏まえて、土地税制はどうあるべきかということを検討していかなければならないと思うわけです。

続いて、次のページを御覧いただくと、当調査会において、『これからの税制を考える』ということで、本年の1月にお出しいただいたものの中で、土地をめぐる諸問題としていろいろな点が指摘されています。ここをちょっと御覧いただくと、最近の動きとしては、[2]のイというところの3行目あたりを読むと、「『土地神話』に代表されるような国民の意識やこれまでの土地本位的な経済システムにも変化の兆しが見られます。」という状況変化が唱われています。

次のページを御覧いただくと、4ページの上の方では、「今後は、土地は有限で公共的な性格を有する『資源』との意識を皆で共有していくことが重要です。その上に立って、『所有から利用へ』という土地基本法の基本理念に沿って、土地を『資源』として有効に利用していくことが、利用価値に相応した適正な地価の形成をもたらし、高コスト構造を是正していくことになると考えられます。」という観点からの認識がここで示されています。

続いて、そういう土地の状況あるいは認識のもとで、現在の税制がどうなっているかという観点から御説明します。5ページ目です。この「土地基本法」に基づいて、それによる「土地答申」がそのあと出されましたが、それに基づいて地価税というものが新たに導入されています。すなわち、土地の資産としての有利性を縮減するということが必要であるという認識から、土地の資産価値が高まれば保有コストも高まるような仕組み、これが非常に有効であるという認識からこの地価税というものが導入されたわけです。

すなわち、土地の公共性に着目して、一定以上の高価な土地をお持ちの方、その値段とともにまた一定量以上お持ちの方、こういった方に課税を行う。すなわち、広大でかつ高価な土地を排他的に自分で保有することが可能な方、そういう方に負担をいただきたいという考え方です。

したがって、右側の非課税のところを御覧いただくと、非課税の中の2つ目のポツ、いわゆる居住用の土地については、1,000平方メートル以下のものについては課税の対象外ということになります。それから、その次のポツを見ていただくと、平方メートル当たり3万円以下の土地、これは幾ら保有しても対象外。すなわち、ある一定以上高価な土地を持っている方にかかるという税です。しかも、左側に基礎控除というものがありますが、このような基礎控除の枠があって、一定以上高価な土地を持っている方以外は、この基礎控除で外れてくるというような仕組みになっています。

税率は、導入当初が0.2%で、それ以降0.3%でしたが、平成8年にその半分にしています。右側にグラフが出ていますが、折れ線グラフを見ていただくと、地価公示価格は、御覧のとおり、下がってくるに従って税収も下がってくるという、まさに資産価格が上がれば保有コストも上がる、あるいは下がれば保有コストも下がる。こういう仕組みになっているわけです。

続いて、今度は譲渡益課税の考え方です。6ページですが、土地譲渡益課税の制度の概要を示しています。土地の譲渡益というのは何かと申しますと、土地の譲渡価格ではありません。譲渡した時の売買価格、これから取得した時の価格、取得費用を差引き、さらに譲渡費用ということで、例えば立退き料とか仲介手数料とか、諸々の経費を引いた残りが譲渡益ということになるわけです。

それでは、その譲渡益がすぐ課税になるかというと、そうではなくて、下の欄に特別控除という欄がありますが、ここにあるように、個人、法人、いろいろな特別控除があります。例えば、収用に絡むものについては5,000万円、あるいは居住用財産の譲渡に当たっては3,000万円、こういうような形で特別控除で差し引かれる。その残りが、いわゆる課税される譲渡所得金額となるわけです。

そういったものにいろいろな税率が適用されますが、まず一番左の欄を見ていただくと、その年の1月1日における所有期間として2年以内、あるいは2年から5年以内、5年を超える保有期間、それに応じて税制が違っています。2年以内というのが超短期、2年から5年の間が短期、5年超が長期というふうに呼ばれますが、御覧のとおりとなります。また、これがさらに、優良な譲渡と一般の譲渡に分かれています。優良な譲渡と申すのは、公共用地あるいは優良な宅地供給云々というようなことで、そういうものに譲渡するような形のものについては、長期保有の5年超のものについては軽減税率を適用するような仕組みが個人ではできています。さらに、法人については、そういった優良な譲渡に関しては、追加課税の適用が除外されています。

これらについては、7ページですが、個人の譲渡益課税の変遷をここで示しています。これは長期の譲渡所得ですが、平成元年からという上に棒グラフのようなものが出ていますが、これがいわゆる土地税制改革以前の姿です。それから3年から6年、これが土地税制改革以後の姿です。

この際に議論されたのは、譲渡所得については、いわゆる外部経済の影響等もあり、勤労所得よりはその譲渡益に対しては、少し重くしていいではないかという議論、そういうことから一般の譲渡に対しては39%という税率を置いています。一方、メリハリをつけて、優良な譲渡は有効利用促進の観点から20%というふうに置いたわけです。

7年度改正に関しては、いわゆる消費税の税率引上げ、それに伴い所得税で、中堅所得者層のいわゆる負担軽減というようなことを行って、その中堅所得に該当しそうなところまでについて、32.5%が適用されるように改正したということです。

8年度に至って、全面的な見直しが行われ、その時の土地の状況等にかんがみて、御覧いただくような形になってきたわけです。左端と右端を除いては、この土地税制改革以前の姿、一番上の姿にほとんど戻っている状況です。それから、その下の方に、譲渡所得について個人はどのような課税の形になっているか、譲渡益に対してどのような課税になっているかということですが、14.8兆円の譲渡益のうち9.2兆円、すなわち62%が特別控除などの対象になっている。それから、一般課税の対象になっているのは24%程度という状況です。

続いて、法人の方ですが、法人の土地の譲渡益の追加課税の仕組みの変遷をここでお示ししています。右側には、その保有の期間、短期、超短期というような形での分類、それから上から下には時系列で追っていますが、御覧のような形で追加課税が変遷をしています。ここで、平成4年1月1日を境にして、上と下がいわゆる土地税制改革以前と以後ということになります。

平成4年1月1日以後を見ていただくと、超短期については、30%の分離課税というものが導入されています。追加課税というのは、土地譲渡益に対して通常の法人税にプラスされて課税されるのですが、赤字法人の場合には法人税がかかりませんので、この追加課税の例えば20%とか10%だけが課税されます。この30%分離課税というのは、土地譲渡益に対して赤字法人でも通常の法人税率37.5%に30%上乗せして課税されるということです。しかし、平成8年に大幅な見直しが行われ、分離課税が廃止され、追加課税の税率も半分とされました。

御覧いただくように、土地税制改革以前よりも税率としては短期、超短期については下がっている状況が現出しています。先程御説明したように、優良な譲渡については、この追加課税の適用は除外されているということです。

続いて9ページです。事業用資産の買換え特例制度、最近かなりいろいろ議論になっているので、挙げさせていただきました。ここにあるように、いわゆる土地を持っている方が売却した場合に譲渡益が出る。本来であればそれに課税をすべきところですが、国土の開発あるいは土地利用政策、国土政策、そういったものを推進する観点から、いわば地方移転の促進というような観点などを踏まえて、そういった場合には特別に譲渡益の課税を繰り延べるという制度です。

「圧縮記帳の仕組み」という欄を御覧いただきたいと思います。いわゆる譲渡資産を売ります。そうすると譲渡益が出る。本来であれば、それが全部課税になってしまって、課税後の金額しか再投資できないわけですが、これについて、御覧のとおり圧縮損という形で、そこの部分は課税しない。残りの差の部分だけ課税を行うという形にするわけです。

そうすることによって、買換資産を買いやすい仕組みをつくったということです。それで、買換資産がどういうものに対してであればこれが適用できるかというと、右側に対象がいろいろ出ています。1からずっと出ていますが、基本的には追い出しというか、地方移転促進、あるいはどこかに誘致をすることを促進するという観点からの考え方です。

それから、8より下のところに書いているのが、いわば新しい土地に買い換えるということではなくて、新しく建物を建てたり設備投資をするというようなことにも使われています。そういうような形で、いわば設備投資を促進するといった経済対策的な観点から設けられた制度になっています。右側のパーセンテージが圧縮率、繰延割合です。

続いて10ページです。最近また議論になっているものとして、新規土地取得に係る負債の利子の課税の特例というものがあります。これは、法人が土地を取得する場合に借金をする。その場合の負債利子を損金として扱うかどうかという問題です。これについては、いわば黒字が出そうだという際に、借金をして土地を取得して、その負債利子を損金に算入することで、法人税を軽減するというような租税回避の問題点、また、そうして土地取得がどんどん進むと、仮需要を生んでしまうというような問題点があり、4年間は損金算入を認めないという制度です。なお、その損金不算入額は、4年後から均等に損金算入されます。

また、その土地が恒久的な建物の敷地の用に供された場合には、損金不算入とされた利子について損金算入されます。

それから、次の11ページです。登録免許税については、国による登記等について、それらの背後にある担税力に着目して課税されるものです。土地に係る登免税について、下に少し図を書いてますが、この課税の仕組みは、いわゆる固定資産税評価額に対して税率をかけるという仕組みになっています。

しかしながら、固定資産税評価額というのが平成6年の見直しの際に、左の方の図にあるように、地価公示価格の7割という形に改定されたものだから、その際にかなり大幅な引上げが行われたということで、この影響を緩和する意味で、平成6年から8年にわたって、6割カットしたものを課税標準とするということを登免税についてはしていたわけです。平成9年に固定資産税の評価額の見直しの時期がまいったわけですが、その際にも同じように継続して6割カットを継続したということです。固定資産税評価額が、平成6年に比べ平成9年は、全国平均すると25%程度落ちているので、登免税については実質的な減税効果を生んでいるということです。

続いて、次の12ページですが、担保不動産の証券化、SPCという問題です。これについては、担保不動産の流動化総合対策ということで、今年の3月31日に総合対策が出たわけですが、その中で唱われているものです。これのスキームはまだ現在どういう形になるか決まっておるわけではないのですが、そのイメージは次のとおりです。

すなわち、ここで債権者として銀行等がある。債務者がそこからお金を借り、不動産を担保として提供している。担保不動産の所有者として債務者がおりますが、返済がなかなか思うようにいかない。そうすると、担保不動産A、B、Cの土地をどういうふうにしたらいいのかということになりますが、これらを一まとめにして、SPC、いわゆる特別目的会社を創設して、譲渡する。SPCはその購入代金を投資家から調達する。すなわち、ABS、資産担保証券を発行し、そこで調達したお金でこの購入代金を支払う。債務者は、支払いを受けた譲渡代金で債権者、銀行等に支払うということになるわけです。

そこで、その仕組みの中で、果たしてABSを投資家が買ってくれるかどうかという問題がありますが、そこでSPCが担保不動産の土地を集めて、サービサー、──不動産管理会社のようなものですが──に運営、管理、あるいは開発を委託することで、不動産収入を得るのです。その不動産収入がABSの元利支払いにあてられるというようなスキームを作るのです。

したがって、投資家としては、このプロジェクトがどの程度の利回りになるのかというようなことを勘案して投資を行うということになるわけです。投資家にとってみれば、これが魅力ある投資商品であれば投資を行う。それから、この開発プロジェクトが多額の資金が要るということになると、たくさんの投資家から証券を小口にして資金を集めるということもできるのです。

このSPCですが、これは今後いろいろと検討していかなければいけない問題点も多々抱えています。すなわち、このSPCの仕組みをどうするか、あるいは証化の対象の資産をどうするか、業務範囲をどうするか、あるいは収益の分配の方式をどうするか、その他投資家の保護策をどうするか、ディスクロージャーをどうするか、それから、設立に関して、商法の適用を受けると、設立の資本金や発起人の問題など、いろいろな問題があるのです。これらについては、現在検討中の状況であります。

次の13ページですが、そのスキームの中で課税でいろいろ関係してくる問題点があります。設立の段階においては、SPCにその不動産などを移転する、譲渡する。その段階では、ここにいわゆる登録免許税とか、そういった取得課税がかかってくる。それについてどう考えるかという問題。それから運用の段階においては、このSPCには不動産の賃料だとか、譲渡益だとか、いろいろなものが収益として入ってくる。それをもとに投資家に対して利払いを行ったり、あるいは利益配分として配当を行ったりという形になるわけですが、ストレートにすべて、導管的な役割としてSPCに何も残らず投資家にすべて流れていくのであれば、投資家の段階で課税するということになりますが、分配されずに留保されるような場合にはどうするかというような問題も検討していかなければいけない。したがって、このSPC、これからしっかり議論されて、構造が決まってから、このような課税関係についてどうするかというものをさらに検討していかなければならないと思っています。

[固定資産税]

片山固定資産税課長

それでは、固定資産税を中心にした地方の土地税制についてお話をしたいと思いますが、固定資産税については、9年度の改正において、抜本的な改革に着手したところであります。現在、次の改革である12年に向けて検討も開始をしているので、そのことも含めて現状について御説明をしたいと思います。

少し資料(資料4)が多めにしてあるので、ある程度かいつまんでお話をします。

1ページは、固定資産税と都市計画税の概要でして、よくこの場でも御説明をしたものですので、省略をします。

2ページは、今年度、宅地の評価替えをして、全国平均すると、右から2列目の一番下にあるように約25%、これは加重平均でして、下落をしています。もちろん、それぞれの土地によって事情が異なっていて、上がったものもあれば下がったものもあります。県単位でここではくくっていますが、三角の黒塗りのついているのが県平均で下がったところ、ついていないところは県平均ではむしろ上がったところ、これらを加重平均すると、-24.9%になるということであります。

3ページ、その評価替えの結果、固定資産税の評価額と実際の税負担の水準を表す課税標準とがどういう関係になっているのかというのを、イメージ図で3つの類型に分けて見ていただきたいと思ってつくったものです。一番左は、負担水準が高い土地と書いてますが、このグラフは一番大きな山なりのところが地価公示価格であります。それから、破線で途中台形になっているようなところが固定資産税の評価額であります。それから、一番下の実線で少しずつ右肩上がりになっているのが固定資産税の課税標準額を表しています。

一番左の土地は、固定資産税の新しい評価額、これがD、それに対して前年の固定資産税の課税標準額、すなわち平成8年の固定資産税の課税標準額はE、このEとDの関係がかなり近くなっています。場合によっては、Dの方がEよりも下がる土地もある程度ありました。いずれにしても、D分のEというもので負担水準を表すことにしたわけですが、この土地についてはかなり接近しているので、負担水準が高い土地ということになります。それから、真ん中にあるのは、平均的というか、こういう土地が多いのですが、DとEの関係がある程度離れている。それから、一番右は負担水準の低い土地ですが、DとEがかなり離れている。まだ評価額の方が課税標準よりも相当高い。類型化するとこんなふうに分かれます。

これはどうしてこういうことになるのかというと、まず出だしのところ、昭和50年代のところで、評価額と地価公示がどういう関係にあったのか。一番左の方は、かなり地価公示と評価額とが接近しています。出だしのところでかなり評価額が高い。それから、一番右の方は、出だしのところで、地価公示と評価額を比べると、かなり評価水準が低い。評価をさぼっていたというか、余り適正にやっていなかったということもいえるかと思います。ここでこの差が最後まで響くということがあるし、それからもう一つは、地価の変動で下落の状況がどうかということ。下落の幅が大きいと、DとEはどうしても接近するようになります。下落が小さいと接近しなくなります。今、申し上げた出だしのところと下落の動向によって、DとEの関係は決まってくる。大雑把にいうと、そういう類型化ができるだろうと思います。ここでは3つだけ示していますが、いろいろなタイプの土地があります。

それらを4ページで棒グラフで表すと、上のグラフのような分布になります。先程の負担水準が高い土地というのが右寄りのグラフでして、負担水準の低い土地というのが左の方に分布しているものであります。今回の平成9年度の改正がない時には、実はこのような状況になっていたわけであります。従来、固定資産税はこのような状況の時に、すべての土地を右の方にシフトさせる。これがいわゆる負担調整でした。すべてが何年間かで右の方に少しずつ寄っていく。これが負担調整でしたが、今回の平成9年度の改正では、従前のやり方をやめて、これが改正適用後の下ですが、とりあえず負担水準の高い土地については、0.8まで引き下げる。0.8を超えるものは作らない。すなわち、評価額の8割で課税標準を打ち止めにするということにしたわけであります。下の方は、しかし低いものは少しずつ上げていく。これは、従来とやや似た負担調整になるかと思いますが、下の方は少しずつ上げていく。しかし、上のほうは下げる。こういう改革に着手したわけであります。

本来ならば、固定資産税は資産価値に応じて課税する税だから、このような分布がなくなって、どこかに一本のグラフで収斂するということが一番望ましいわけですが、そのためには非常に税額の激変が生じます。そこで、とりあえず上を少し下げ、下を少しずつ上げていくという改革に着手したわけであります。

5ページを見ていただくと、これは各土地についてどのような税額計算を行うのかということの物差しのようなものであります。左側のグラフが商業地等、いわゆる非住宅の宅地ですが、評価額に対して前年の課税標準額が既に8割を超えているものについては、8割まで下げる。それから、6割未満のところについては、その状況に応じて少しずつ負担を上げていくという物差しであります。右側は小規模住宅用地ですが、200平方メートルまでは6分の1を課税の上限にしているので、もともとかなり低い水準ですが、これについても、それぞれ負担水準の状況によって据え置きのグループをつくったり、少しずつ上げていくというグループに分けています。そういう課税の仕組みを行っています。

6ページですが、現在、以上のような仕組みでスタートした平成9年度に負担水準がどのようになっているのか。これはそれぞれの土地ごとによって違うし、市町村単位の平均をするともっと違いますが、とりあえず各県別にその負担水準というものを平均化したグラフであります。高いところもあれば低いところもある。例えば、東京、大阪、山口県、こういうところはグラフがかなり高めに出ています。こういうところは、負担水準の高い土地が比較的多く分布している県であります。それから、東京の一つ左の千葉県とか、福井県とか、鳥取県とか、徳島県とか、一番右の沖縄県とか、こういうところは負担水準の低い土地が多く分布している結果、県別にくくったときもグラフがかなり低く出ています。こういう県別にそれぞれ加重平均をしてみても、かなり現状では不公平というか、ばらつきがあるということが言えると思います。これをいかにして今後解消していくのか、平成12年度の時にどこまで解消できるか、ということが今後の大きな課題だろうと思います。

そのことは、7ページを見ていただくと、今年の2月に「新総合土地政策推進要綱」というものができて、その中で固定資産税のことを書いたくだりがあります。抜粋をしていますが、「平成12年度以降の固定資産税の税負担については、同年度の評価替えの動向及び負担水準の状況や市町村財政の状況等を踏まえた上、さらに負担の均衡化・適正化を進める措置を講ずることとする。」ということを決めています。したがって、平成12年度の時には、先程0.8から0.2未満まで棒グラフがばらついていたと思いますが、これをさらにどこまで、どの程度のピッチで収斂できるか、これが一番の課題だろうと思って、現在その検討を進めているところであります。

それから、8ページは、当面の問題ですが、今年度の改正で、従来は固定資産税は3年に一度の評価替えでしたから、3年に一回評価替えをすると、その価格が次の年、その次の年とそのまま継続されたわけです。ところが、昨今のように地価が下落している状況があると、最初の年に値付けをした価格よりも地価が下がるケースがあります。それは納税者に不利になります。そこで、特例として、地価が下がっている状況があれば、いわゆる据置年度であっても、下がった分を固定資産税の評価額に反映をさせる。私ども下落修正と言っていますが、そういう措置をとることにしました。それならば、上がっているところはどうするのかという問題がありますが、それはやはり3年に一度の評価替えの時に見直すことにして、上がっているところは当面は手をつけない。しかし、下がっているところだけは、納税者に少なくとも不利にならないように下げようと。ただし、余りこのことにお金をかけて綿密にやるというわけにいかないから、ある程度大雑把に、少し広い単位のエリアでくくって、大ぐくりでその作業をやろうということで、現在作業をしています。

基本的には、7月1日に地価調査というものを全国一斉にやっているので、その状況を睨みながら下がっているところは下げるということにしています。このことにより、固定資産税の課税についても、評価額が適正になるということがもちろんありますが、副次的には、登録免許税だとか、不動産取得税についても、下がったところは下がった評価額が使われるので、両税についても、より適切な課税が行えるだろうと思っています。

参考までに、9ページに地価調査、これは今年の7月1日の地価調査ですが、国土庁でまとめた地価調査の資料で、各県の基準値の価格の変動率を平均した資料をつけています。これは基準値の平均ですから、このとおりになるかどうかわかりませんが、少なくともこういう傾向を反映して、固定資産税の評価額は、来年度引き下がるところは引き下がるだろうと予想しています。現在作業中であります。

それから、10ページは、特別土地保有税の概要を書いていますが、これは制度の概要ですから、省略します。

11ページは、この特別土地保有税の最近の主な改正の資料をつけていますが、これも土地政策の観点からの政策税制でして、その時々の政策の状況により、課税を強化したり、また緩和したりという変遷をたどっています。例えば、昭和57年度は、ミニ保有税というものをつくって、かなり小規模の土地まで課税を追求していくということをやりましたが、これは下から2つ目、4のところで、平成6年度でミニ保有税を廃止というように、強化をしたり、廃止をしたり、そういう歴史をたどっています。

平成3年度には、バブル対策の一環として、例えば、・にあるように、三大都市圏の特定市に限ってですが、免税点を時限的に1,000平方メートルまで引き下げる。2,000平方メートルのところを1,000平方メートルまで引き下げる。こういうような措置をやったりしています。最近の主な改正だけここに書いています。

それから、12ページは、土地譲渡益の課税制度ですが、これは国税の方で御説明があったので、住民税の方は省略します。

同じく13ページも省略します。

14ページは不動産取得税の概要でして、14ページには課税の仕組みと、下の方には税収の推移を載せています。

15ページの方に、これも先程登録免許税の方で御説明がありましたが、固定資産税の課税標準額を使っている関係で、平成6年の評価替えで固定資産税の評価額に大きな変動があったので、それ以後不動産取得税の場合には2分の1課税をし、平成7年度には3分の2になりましたが、平成8年に2分の1をし、それから、平成9年に固定資産税の課税標準額が全国平均で約25%下がりましたが、そのまま2分の1の課税標準の特例を継続しているという状況を示しています。

16ページからは参考資料ですので、省略します。

加藤会長

それでは、時間の間、若干御質問あるいは御意見があったら、どうぞ。

今井委員

いろいろありますが、私、固定資産税のことだけ申し上げたいと思います。地価税は、東京都のような地方自治体がなかなか固定資産税を上げられないので、導入されたというようないきさつがあったように思うのですが、その後、自治省の通達で、今の固定資産税の評価額を公示価格の70%まで引き上げたと。

その影響について、私どもの会社の例を申し上げると、私どもの会社は配当が今は年間約200億円なのですが、土地に関する納税額は、平成2年度で216億円だったのが平成8年度で272億円ということで、60億円、約30%この間に上がっているわけです。このうち固定資産税のアップが約40億円でして、固定資産税は応益税ということを考えると、応益がほとんど増えていないのに税だけ上がったという形です。

さっきお話があった昨年の見直しについては、私ども、これは評価しています。その結果、大体60億円上がったものが20億円ほど減って、しかし、まだ40億円、平成2年度よりは負担が増えているわけです。

昨年度の措置は、臨時の措置ですから、根本的な改正ではないと私了解していて、平成12年度以降、さらに再検討するという閣議決定があるわけですが、私、今の土地の流動化がなかなか起こらないという原因は、不良資産の処理が十分行われていなくて、したがって、いろいろな会社がさらに評価額を下げるのが嫌だというような、そういう民間の問題もあるかとも思います。

しかし、一方では固定資産税というのが、さっきの表にもあったように、この調整措置ではまだまだこれから上がっていく。ということで、新しく土地を取得して事業を始めるというところが、やはりプロジェクトの採算が合わないでためらっているというものがたくさんあると思うのです。したがって、ここのところをもう少し恒久的な考え方で処理しなければいけない。

かつて固定資産税の実効税率というのは大体0.4%ぐらいだったのですが、今0.7%になっています。例えば、私ども、世界の同業者と比べると、土地に係る負担は大体各国の10倍になっています。競争力からいくと非常に問題がある。そういうことであるから、ひとつ固定資産税についても、これが応益税であるという原点に戻って、そして、さっきいろいろ御説明がありましたが、用途によって非常に大きな負担水準の差がある、あるいは地方によっても非常に大きな負担水準の差があるというような、非常に不公平な点があります。そういった点を改めながら、実質的な実効税率をかつてのように0.4%ぐらいにおさめるという基本的なものの考え方を、この際、土地税制を議論する時に是非一緒に御議論いただきたいと思っています。

中西委員

『土地税制』の参考資料の12ページですが、これは非常におもしろい資料で、国民の意識の動向ということで、中長期的な地価動向に対する国民の希望が出ています。これを見ると、平成5年あたりは、もっと地価が下落した方が望ましいという声が圧倒的に多かったようですが、6年、7年、8年と経過して、8年が最後ですが、地価下落が望ましいというパーセントは、この表を見るとずっと減ってきている。おそらく平成9年度あたりは、もっと減っているのではないかと思います。現在の地価水準で移動することが望ましいというのが非常に多くなっているということ。

この調査の現実を踏まえて、私は何が言いたいかというと、そもそもこれはさっきの説明にもあったように、平成元年に地価の狂騰を抑えるために「土地基本法」ができて、それに伴って地価税が創設されたのですが、これは、ずばり言って、もう役目が終わっているのではないかということです。

それと、政府税調の委員会で景気対策の話をするのはいかがなものかと思うのですが、今自民党でやはり景気対策は緊急に取り上げねばならぬという声が上がっている。その中には土地の流動化・活性化が大きなテーマに取り上げられているわけだから、私はやはり税調で土地税制を論じる場合に、当然、この問題に着目して──いつも私が言っているのですが、この不況の原因は学者先生はいろいろな分析があるのでしょうが、1つは消費税がアップしたり、社会保障費が上がったり、特別減税がなくなったという、フローで9兆円ぐらい家計の赤字、圧迫しているから、これはこれでフローの面ではあるのでしょうが、最大のものはやはり資産デフレで、中小企業なんかも皆工場の土地を持っていて、それで土地を銀行の担保で借りておった。ここへ来て資産デフレでドンと下がっているから、もうこれ以上下がるのは望ましくないという声が圧倒的に多いわけです。

逆に、金融の方は、早期是正措置の春からの施行で、各金融機関が全部自己資本比率の調整のために、貸し渋りをやるという声が会議所あたりのアンケートでも相当出てきているんです。担保をオーバーして貸しているものは返せという声と、当然返さないという声で、とてもじゃないが──不況期から脱却する時に、そもそも先行指標がいつの場合も、不況を経験すると低金利だから、当然、中小企業の設備投資の方が先行指標になるようですが、今回はさっぱり出てこない。これはやはり土地のせいではないか。

だから、やはりここで政府は、土地に対して流動化・活性化をさすためのシグナルを思い切って送る必要があるのではないか。となると、この地価税の税収金額は2,000億円を切っているのではないでしょうか。そうすると、云10兆円の税収の中で、そういうものは大蔵省は歳入歳出に責任があるから、そういうことを言うと失礼かもわからないですが、ここで軽減なんていうしみったれたことは言わないで、やはり凍結か廃止か、そういうシグナルを税調が出すということが、やはり私は土地の活性化・流動化につながって、景気への刺激策になるのではないかと。景気対策は、私が申すまでもなく手詰まりですから、超低金利で財政出動はできないとなると、やはりこういう土地の流動化への刺激を税制面から思い切って出すということを、是非この席で私はお願いしたいと思うのです。

松本(作)委員

土地税制の問題は、この税調でも随分長いこと議論していて、その都度の局面に応じて議論の内容も変わってくるのは当然だと思いますが、やはり「土地基本法」をつくったときには、日本の土地資源の状況というものと、日本の経済活動規模というものと比較してみて、今後とも限られた資源に対する日本の強大な経済力から出てくる投資能力というものが、一般的に上回っていくだろう。したがって、地価というものは、現実に諸外国に比べて何十倍というような高さになっておるような基本的な条件というものは、今後も変わっていかないのではないか。

ちょっと気を緩めると、やはりこうした状況が今後とも再発する危険性があるのではないかという基本的な認識があったと私は思っています。その証拠に、戦後でも3回のバブルを経験していて、その都度そういった議論をするにもかかわらず、少し時期が経つと、また土地は動かした方がいい、土地に投資しやすくした方がいいというような意見が強くなってくる点は、私どもは警戒すべきだという気持ちを強く持っています。

特に、既に土地税制については、近年地価税を下げ、それから土地譲渡課税を軽減させて、景気対策としてやってきたわけですが、それがどれだけ景気に影響したのかということについての分析をすべきではないかと思うのです。地価税が半分になったことによって、どれだけ日本の景気がよくなってきたのか、譲渡税が軽減されたことによって、どれだけよくなってきたのかということだと思いますが、私はやはりいまの土地問題というのは、バブル期の調整期間におけるいわゆる調整過程の問題であって、それ自体は大事なことだと思うので、そのことについては、税制上の特例というのもあっていいと思いますが、そのことが一般的に土地を流動化させて、ともすれば投機の対象になるような傾向というものにはならないようにしていかなければならないと思うので、いわゆるバブル期の後始末としての土地対策としての流動化という話と、一般的な土地税制というものは分けて考えるべきではないかと考えています。

それから、もう一つ、自治省の方へ、固定資産税の問題がいろいろ出ていますが、確かに図を見てもわかるように、わずか2~3年の間に、実際の地価以上の評価をして、それで固定資産税の収益を上げてしまっているわけです。それは本来であれば、所有者にとっては何の価値の増加もないところに税金だけが高くなったという欠陥があったわけだから、それは所有者としては取り戻してくれと言いたいぐらいのことがあろうと思うのですが、今後そういうことが起こらないようにするためには、やはりこうした絶えず変動していく評価額に追従していくということではなくて、応益的な課税であるならば、評価の仕方というものをもっと安定した形にする。絶えず後追いで調整をする、ということではなくて、評価のあり方というものをもう一度考えて、絶えず地価評価の7割でなければいけないということではなくて、固定資産税の評価というものはこういう安定的な評価にするということを、もちろん地価評価との関係ですが、もう一度はっきりさせる必要があるのではないかという感じがします。

森田委員

この土地税制の問題というのは、ずっと長く論議されてきて、土地の流動化という表現よりも、むしろ不良債権の担保不動産の流動化と言った方が、より性格がはっきりすると思うのですが、バブルでの資産デフレによって、企業、金融機関のバランスシートが悪化して、それを調整しなければならない。そういう状況が続いているにもかかわらず、なかなかできない。これを何とかしなければいけないということですが、この税調でも私も何度も発言したのですが、公的資金の導入を含めて、躊躇して大胆なことはできない。そのために、税金がそれに注ぎ込まれているわけですが、額が小さいということの反面、例えば預金だとか年金だとか、そういうものの利息だとか運用益というものが、かなり縮小していて、去年の試算だと、8兆円ぐらいが銀行の業務純益の中に繰り込まれている。そういう犠牲を伴って先送りしているということは、忘れてはいけないと思うのです。

この問題は、1つが担保不動産の流動化という問題と、担保不動産の証券化、不良債権の証券化という2つの問題があって、アメリカの経験だと、80年代の後半にこういう状況があって、アメリカではかなり思い切った手段をとって、不良債権を整理する公社、RTCというものを設立して、これは89年ですが、その整理が済んで91年頃からアメリカの景気が回復のスタートを切る。それからずっと今の景気の好況局面というのが続いているわけですが、やはりこれが日本経済を回復させる最大のポイントであるということを、我々は認識しなければならない。そういう認識は高まってきたと思うのですが、これは税調で是非確認していただきたい。

それで、この流動化に当たって、いろいろな、税制の問題だけではなくて、今度の自民党の方でも規制緩和といろいろありますが、その他、ノンリコースローンというような、要するに担保額を超えた債権額の債権者に対して、債権を請求する権利がないというような、アメリカで適用されているものが日本にはないものだから、そういう多重債務についてはどうも身動きがとれなくなってくる。そういうものも何とか打開の道を見つけなければならないでしょうし、その他、いろいろな問題にこれから取り組んでいかなければならないと思うのです。

税制でいうと、やはり流通税の登免税だとか不動産取得税みたいなものは、この際思い切って軽減しなければダメだと思うのです。

それから、金融不良債権の証券化した場合の譲渡益課税というのは、一体どうするのかという問題が、今スキームをつくるときで議論になると思うのですが、やはりこれも不動産の譲渡益の重課を軽減すると同じように、なるべくなくしていかなければならないと思うのです。そのことによって、不良債権の証券化されたものに対する需要者というのは、海外を含めてかなり潜在的にあると思うのですが、この譲渡益課税というものがあるために、取引を阻害している。お金と土地を全部動かすということが、今最も緊急な課題だと思うので、是非ともそこを一種の突破口の感じで、税金という損得勘定で考えるというよりも、むしろそこを突破することによって、日本経済全体を良くしていく。こういう観点で取り組んでほしいと思います。

水野(勝)委員

土地税制については、極めて政策的、個別的なものと、基本的なものとがあるのではないかと思います。バブルの頃の1つの土地対策としてのいろいろな施策が講じられています。それは、先程お話があったように、第1回目、第2回目の地価高騰期でもそうだったと思いますが、現時点のように、土地が沈静化しているという時期においては、個別的、政策的なものは極力整理しておく。そしてまた、何か緊急的な事態が生じた場合には、またそれでもって対応していくという、そういうことのためにも沈静化している時には、個別的・政策的なものは思い切って整理しておくのがいいのではないか。所得税なり法人税の面でいろいろな特例措置が講じられている。それは差し支えない範囲において整理していくということでどうかと思うわけです。

一方、基本的な部分については、やはり土地の性格に根ざした税制として、安定的に確保していっていいのではないか。それは固定資産税であり地価税であろうかと思うわけです。地価税は一体恒久税制なのか、政策税制なのかということは、当時から議論されたと聞いていますが、やはり政策的な要素はあるにしても、恒久的な税制だったのだろうと思うわけです。先程御説明あったように、固定資産税の負担水準は目標とされている水準にかなりまだ到達していない面もあるし、また地域的にもいろいろアンバランスがある。

そうした状況のもとにおいては、地価税に期待されている役割というのは、まだまだ大きいし、そもそも固定資産税の問題が生じたのも、地価税が一つの契機になったのではないかと思うわけでして、そういう意味において、まだ固定資産税がバランスのとれたものに遠いということであれば、地価税も恒久税制の一環として育てていくというか、維持していくのがいいのではないか。その間において、固定資産税は安定的で負担水準の斉一性のとれた税制にしていく努力をしておくべき、今はその時期ではないかと思います。

石特別委員

過去三度大きな地価高騰があって、税制を強化してということをやって、また景気が悪くなったり地価が落ちると、すぐ元の木阿弥的に直すという歴史の繰り返しなんです。今回もまたちょっと景気が悪いということで──ちょっとじゃない、かなり悪いと言う人もいますが──また税制を緩和するべきだという話が出ているわけです。土地の流動化、景気刺激というその絡みも明確ではありませんし、いま森田さんが言った点が一番重要だと思いますが、土地の流動化というのは担保不動産、いわゆる不良化した土地の流動化こそやるべきで、これは税制では余り効果がない。これはまさにSPCみたいな別な道具建てでやるべきものでして、この際、日頃負担が重いといったことに、便乗といっては言い方が悪いかもしれませんが、それで一挙に景気にかこつけて税制を緩和というのは、ちょっとどうかなという気もしないではない。

そこで、あえて税制のほうで土地と絡めていうならば、やはり地価税は保有税ですから、保有税というのは、それなりに地価に対してコストを与え、かつ価値に負担を与える。幾つか資料が出ていたように、まだまだ日本というのは、対GDP比で見ても土地資産額は高いし、土地資産格差のジニ係数を並べると、やはりかなり資産格差というのはついているんです。そういう意味では、「土地基本法」の精神にものっとって、地価税というのは意味がある。今の税率を下げる余地がもう一段あるのかどうかは別にして、廃止・凍結というような格好で一回葬り去ってしまうと、再度何か来たときに大変な労力が要ると思います。

そういう意味で、もし担保不動産のあとで土地の売買という点をいうなら、キャピタルゲインの方を見直すという形で、やるならそっちだと思います。つまり、流動化ということを狙うならば、キャピタルゲインでも何か少し工夫があるのかなという気がしないでもない。そういう意味で、私は固定資産税の今の形との絡みで、固定資産税に余り過度に保有コストを求めるような、保有税としての役割を担わせるということは、過去数年の間の、いうなれば非常に酷な状態に陥ったということもあります。

固定資産税はもういろいろ変化しているから、これからもう一段いろいろな形で変化するかと思いますが、少なくとも3年ごとに見直して調整をやり、地価公示の70%という形にしている。下落修正みたいなことをやっていくというようなやり方は、過去の経緯もあるから、一挙には直せないかもしれませんけど、もう抜本的な見直しがおそらくあるべきではないかなと。3年毎に必ずこの問題は出るのですが、どうしてもやり方がわからないということで、先延ばしになっていると思いますが、下落修正なんていうのが年間で始まったということを見れば、何も3年毎に区切ってやる評価の見直しの必要もないかもしれないし、大まかな修正比率でもいいということならば、そういうのを今後参考にすべきであろうと思います。

そういう意味で、地価税、キャピタルゲイン税、あるいは固定資産税、いろいろな絡みで申すが、やはり、そう短兵急に景気刺激、土地流動化といったところと極端に結びつけて議論すると、税制の根幹が大きく崩れるのではないかという心配しています。

吉田特別委員

自治省に確認をしておきたいと思うのですが、都市計画税は地方税法の中に規定されていますが、全く市町村の独自の裁量で、自由に条例によって内容を決めることができるのか。それに対して全く自治省としてはいろいろな制約を加えていないのか。これをまず伺っておきたい。

それから、固定資産税ですが、この資料を見ていて、『固定資産税等関係資料』(資料4)の中の4ページです。これは改正適用前、改正後ということで、随分自治省は努力されて、負担水準を高過ぎるものは是正をしたという数字になっていますが、それでもなおこれを見ると、やはり低かった方は高い方へ漸増しているわけです。これは疑いのない事実です。同時にこれは全国の負担水準ですから、東京の場合は一体どうなっているのか。特に大都市の方が極端な評価替えによっての負担増になったわけです。それが調整措置を講じられた努力は買うのですが、なお東京都心5区のごときは、この11月5日に固定資産税の反対決起大会というのでしょうか、減税決起大会をやるなんてまだ言っておるわけです。

ですから、やはり固定資産税というものは、本質的に各市町村のサービスに応じた受益者負担という意味から見ると、余りにも受益が変わっていないのに、負担増だけが相変わらず続いていくということ、それも調整はされてもなお続いていくということ、これに対してやはり納税者側の理解はまだ得られていないということを、自治省は考えておくべきだと思います。

そういう意味合いから見ると、問題点が2つあるように思うのですが、まず1つは、固定資産税というものは、申告納税ではなく賦課徴収ですから、どうしても納税者側が、周囲が一体どうなっておるのかなかなかわかり切らない。それともう一つは、税計算の調整措置が余りにも多過ぎて、よくわからない。そこに納税者の不満が増しつつある。それと同時に、下落しておるとはいいながらも、負担増は相変わらず続いている。都心部はなおまだ高過ぎる。この辺を一体どのように自治省はお考えになるのか。

それから、もう一つは地方分権ということが進んできた時に、一体この固定資産税はどこが課税権を持ち、どこがそれぞれ主権者となるのか。この辺の地方分権と絡みで、一体自治省はどのように考えておられるのか、ということを聞いておきたいと思います。

片山固定資産税課長

吉田委員の御質問にとりあえず私の方からお答えをします。

都市計画税の問題ですが、制約がなくて条例で自由に決められるのかということですが、幾つか制約があります。例えば、都市計画税は制限税率制度をとっていて、0.3%を超えてはいけない。したがって、0.3%の範囲内であれば、自由に設定できます。これは課税してもしなくてもいい。課税する場合は0.3 の範囲内、こういう仕組みです。

それから、もう一つ、多分委員の御質問の背後には、例えば税率を下げた場合に、何か財政上の他の局面からのペナルティーがあるのかどうかというようなことも含まれているのではないかと思いますが、都市計画税にはそういうことは一切ありません。0.3%の範囲内であれば自由にできます。 それから、固定資産税の東京都の負担水準の資料、今つけていませんが、これはつくろうと思えばつくれるので、また次の機会にでも東京都の負担水準の分布表がお出しできると思います。

それから、固定資産税の周りの水準がわからないというのは、これは確かにそういう面があります。課税台帳の縦覧というのをやっていますが、現行の運用は、最高裁判所の判例もあって、自分のところしか見せないということになっているので、隣近所をぱらぱら見ることが守秘義務との関係でできないわけです。そこで、便法として、数年前から路線価の全面公開というのに踏み切っていて、今年度は全国の路線価、これは数百万ユニットありましたが、これをすべて全国で公開をしています。したがって、それぞれ隣の土地が幾らかというのは、これは正確にはわかりませんが、おおむね自分の土地がある道路に面接しているところは幾らぐらいか、その次の道路は幾らぐらいか、というのはわかる仕組みになっているから、かなり公開度が高くなったのではないかと思います。

それから、税額計算の仕組みがわからないということですが、私どもとしては、過去から携わっておる者にとっては、今年の改正でかなりわかりやすくなったのです。これは現場の窓口の担当者もそう言っています。ただ、絶対水準で本当に簡単になったかというと、まだ難しいと思います。ただ、先ほどの資料で5ページを見ていただくと、特に商業地等と書いてますが、非住宅用地の場合だと、評価額に対して前年度の課税標準がどの水準に位置しているのか、それによって比較的簡単にわかるようになっています。地価が下がったのに、なぜ上がるのかという疑問は、まだあります。それは、例えば、負担水準の低い、ここで言うと黒塗りの領域に入る人たちです。このグループは、やはり平均に比べると負担水準が低いわけだから、公平の観点から低いものは上げさせてもらいます。そのかわり高いものは8割のところまで下がります。6割から8割のところは据え置きになります。こういうことだから、従前に比べると比較的わかりやすくなったのではないかなと、私どもは思っています。

最後の課税権というのが、ちょっと私よく理解しかねたのですが、例えば税率とかそういうことの決定権はどこにあるのかという意味でしょうか。

吉田特別委員

将来的に。

片山固定資産税課長

それは、固定資産税に限らないと思うのですが、地方分権の議論の中で、現在、標準税率を下回った場合には、起債が原則としてできないような仕組みになっています。これは税法とは違う分野ですが、そこのところが余りにもリジッドなので、少し緩和をして、行政サービスと税率とが少し連動して、行政サービスを下げるのであれば税率も少し下げられるような、そういう少し緩やか制度にしたらどうかという分権の中での議論もあって、将来的にはそういう方向にいくのではないかと私は思っています。

河野特別委員

土地税制が短期景気政策絡みで議論になっているわけです。どう考えたらいいかということで、僕は2つあると思うんです。1つは、今日の大蔵省提示のデータを見ても、新規のものはSPC方式だけなんです。これが新しいアイデアなんですよ。さっき森田さんが言ってたが、アメリカは随分有効だったかもしれないと言われている。これはやり方によっては、かなりおもしろいことになるかもしれないと言われているし、逆に、そうはいっても簡単にいかないぞという専門家もいるし、私はよくわからない。しかし、いずれにしてもこの話は、どの辺まで話が膨らんでいって、どの程度の効果を期待できるかということについて、今日の説明は全く入り口の基本的な説明だけだったから、この次にはもうちょっと話が詰まってくるでしょう、関係省庁を全部巻き込んで。それならば、その時にどの程度のことなのかということについて、話をもう一度してもらいたい。これにどの程度期待を寄せたらいいかわからないから。

第2は、既存の土地関連税制をどうするか。さっき水野さんが言ったことが頭の整理で一番役に立ったと思ったのだが、我々の経験からすれば、過去の土地税制の変化というのは、まず土地にいろいろな問題が生じたときに、マスコミが騒ぎ出す、政治家がそれに乗っかってくる、関係各省もそれに何か手を打たざるを得ない、アイデアを出してくる。そして、1年か2年遅れて税調が動く。つまり時差があって、若干の遅れがあって対策が出てくるんです。今度も2、3年前から土地税制はいろいろなことを言われていたのだけれども、今状況は、かつての第三次バブルの興隆期と違っているところもあるので、ただ単に防衛線だけ引いて、1億でも減税額が小さければいいやというだけの話でやっていると、よくないと思うんです。ここは割り切ってきちっとやる。

しかし、これはロジックがあって既存のことを守る、というふうなメリハリの効いた議論をやらないと、基本的に土地税制のあり方論なんていう抽象論をやっても始まらない。さっき水野先生が言ったみたいに、政策税制的に動いたものはかなり動かしていい、しかし、基本税制絡みのものはそうはいかないかもしれない。ただ、地価税が基本か政策かということは、議論が全く分かれるんです。いろいろな人がいろいろなことを言っている。ここはなかなか悩ましい話ではあるけども、もっと政策税制的には柔軟に。だからSPCについては、本当に実効のあるように仕組めるなら仕組んでもらいたい。とにかく新しいアイデアを。ということで宿題を与えておいて、あとで話を聞きたいということです。

橋本特別委員

担保不動産の処理については、今は任意売却と強制競売という、大まかに言うとその2つの方法しかないわけでして、どちらも不動産がなかなか流動化しないという現状のもとにおいては、たとえ競売にかけても、1年とか2年とかかかってしまって、しかもそれもなかなか落札しないというのが現状であるわけです。

それで、アメリカにおいて、アメリカのバブル収束の時に、不動産を処理する際に、このSPCという方式がとられて、これが非常に効果を上げた。SPCという目的会社をつくって、そこが証券を発行して、その証券を広く投資家に販売することによって、大量の資本を土地に流入させるという仕組みであるから、不動産の担保の流動化ということについて、非常に大きなスキームになると思うのです。課税上の問題というのは、このSPCというのは、そういう方式でいくと、単なる導管的機能を果たすにすぎない。最終のユーザーがいろいろな税負担をするということになるわけだから、SPCにいろいろな課税がされると、二重課税の問題を生ずるというところから、このSPCに対する課税を考慮してほしいということを申し上げておるわけです。

それで、一般的に現在の土地税制の問題点というのは、先程からお話が出ているとおり、地価の下落が非常に長期間続いている。6年も続いている。が、いまだに地価高騰時の税体系というものを引きずっているというところにあるのではないかと思うわけです。平成3年に総合的な土地税制改革が行われましたが、当時の考え方というのは、地価抑制を図るというバブル対策上の観点と、土地の有効利用を図るという土地政策的な観点が混在していて、その結果、保有と譲渡の両面において、いろいろな形で課税強化が行われた。

しかしながら、今土地デフレと言われる現状からすると、やはり地価抑制を目的とした土地税制というのは、どうしても見直しをしないといけないのではないか。今、土地の保有税を強化して、供給を促すというやり方は、土地デフレと言われる現在の状況では、かえって需給関係を悪化させるだけであって、税の中立性という観点から見ても、問題があると思うので、先程からお話が出ているとおり、地価税については、固定資産税と今ダブルで保有税がかかっているわけだから、地価税の廃止ないしは凍結ということが必要なのではないかと。

それから、法人の土地譲渡益については、通常の法人税に上乗せして課せられる重課の問題があるわけです。重課のような税制は、本来投機という一種の熱を冷ますための解熱剤のようなものであるから、現在のような環境でこれを継続するというのは、有効活用されるべき土地の取引を抑え込むという懸念があるので、かえって弊害が大きいのではないかと思います。

松尾委員

地価税については、導入した時の原点に立ち返って考えてみる必要があると思うのです。あの時の考え方では、短期的な地価抑制を目的とするものではありませんでした。やはり土地の有効利用の促進を図る、これがあくまでも重点でした。したがって、単なる火消しの役割を求めたものではないし、やはり長期的な措置、構造的な措置であったということであります。ですから、今の時点で地価税を凍結ないし廃止すると、どういうことが起きるかと考えてみると、土地を有効利用できないものに売却する、そういう道を開くことになるのではないか。既に好立地の土地では、地価が上昇に転じたところもあるということであって、今の時点で廃止ないし凍結すると、土地投機の再燃を促すおそれすらあるのではないかと思います。ですから、土地の有効利用の観点からやはり地価税を維持して、安定的な税に育てるのが重要であると思います。

加藤会長

まだ御議論があると思いますが、この問題、いずれまた集中的に議論しなければなりませんので、今日はこのくらいにするが、あと、申しわけありませんが、お手許に3つばかり資料がありまして、1つは金融課税小委員会の報告(資料5)、それから税調委員の海外調査報告(資料6)、それから税の競争に関するOECDのプロジェクト(資料7)というのがあります。時間がありませんので、大変恐縮ですが、金融課税小委員会はどうしても話を聞いておかないと、並行しているので、皆さま方にも是非お聞きをいただきたいと思います。これは大体3分ぐらいでお願いします。それから、海外調査報告の方は、一言でお願いします。税の競争の方は、今日は省略ということでして、よろしくお願いします。

[金融課税小委員会の審議状況]

水野(忠)委員

それでは、私の方から、金融課税小委員会の審議についてお話しします。金融課税小委員会委員長は本間先生ですが、今日は御都合で出られませんので、代理として報告します。

今、会長からお話があったように、総会のたび毎に、それまでの金融課税小委員会の審議をまとめて御報告しています。本日は9月19日の総会以降ということになるので、9月26日、10月7日、10月17日の3回についてお話しします。

詳しくは、お手許の資料に、金融課税小委員会のその後の審議状況ということでまとめているので、それぞれ3回について、一言ずつ御説明します。

まず、9月26日、金融関係者からのヒアリングですが、これはシティバンク代表の八城さんにお願いしてありました。それから、委員の希望によって、生命保険協会、損害保険協会の方から、保険税制についてのいわゆる税制改正要望といったことでお話をいただいたわけです。その中で、議論は省略しますが、2ページ目を見ていただくと、いわゆる金融市場のグローバル化、クロスボーダーの取引が増加する。この中でどういう対応をしたらよろしいかというようなことで、中に納税者番号制度のことなども触れられています。

それから、4ページ、10月7日ですが、これは最初に、あとで報告いただく石委員から海外調査報告があって、この時は小委員会の委員で金融論の観点から吉野委員に御報告をいただいて、特に有価証券取引税等、税制が取引等に与える影響について、経済的な分析をいただいたわけです。一言で申しますと、4ページ目の最後に書いてあります。丸がついています。個人の資産選択が預貯金中心ですが、これは主として金融機関の利便性によっているのではないかという御報告がありました。もう1点は、有価証券取引税が金融取引にどういう影響を与えるかということですが、これについては、金融論の先生の分析ですが、はっきりした結論は出なかったということであります。

それから、もう1点、5ページですが、横山委員から、東京市場の活性化のためにどういう対応をしたらよろしいかと。多様な相場観を持ったいろいろなプレーヤーがいる。こういうものを踏まえて、東京市場活性化について、どういうふうにしたらよろしいかということについて御報告をいただいたわけです。

それから、17日は6ページ目になりますが、金融取引と税務執行です。ここにおいては、まず国税庁、事務局から金融関係税制に関する執行の状況について御説明をいただきました。特に納税者番号制度について国税庁側の観点、それから事務局からこれまでの税制調査会の経緯等についてお話をいただきました。

それと、もう1点は、金融取引に対する課税ということで、小委員会の委員の中里委員からレポートをいただいて、金融取引に対する課税ということで、デリバティブその他新しい商品が展開される中で、どのようにしていったらいいか、特に税務執行の観点から、事前に確認する制度あるいはルーリングといったものが必要なのではないかということをお話しいただいたわけです。委員の質疑の中で、特に有価証券取引税について、その課税の根拠といったことが議論になったわけですが、有価証券取引税、それから株式等譲渡益課税の問題、これは証券税制全体の中で議論していくべきではないかという方向で議論がなされました。

以上が、本当にごく簡単ですが、金融課税小委員会3回の御報告でした。

今後の日程については、前にもお話ししたとおりですが、10月いっぱいで一通り各項目について総花的に議論を行って、11月からは主要な論点について議論を詰めていくということです。次回は今週の金曜日、24日ですが、金融商品課税のあり方──金融商品はそれぞれありますが、どういうふうに課税したらいいかということについて、私の方からレポートを行い、また事務局の方から源泉徴収制度についての御説明をいただく。こういう予定です。

[海外調査の報告]

加藤会長

それでは、石さん、どうぞ一言で。

石特別委員

調査報告が別添で出ているので、これはお読みいただければわかるように書いてます。と同時に、今水野(忠)さんが出された資料(資料5)の4ページ目に、私が小委員会で報告したものがまた記録として残っていますので、あわせてお読みいただければ、一目瞭然とは言いませんが、よくおわかりいただけると思います。一言いうと、各国さまざまなことをやっているから、一様にユニフォームされたような結論は得がたい。グローバル・スタンダードなどというものは、統一的にはないだろうということだけ結論として申しておきます。

加藤会長

どうも今日はありがとうございました。

〔閉会〕