第5回総会 議事録

平成9年9月19日開催

加藤会長

ただいまから、税制調査会の第5回総会を開催します。

これから、本格的な審議に入りたいと思いますが、若干私の方から、現在の問題を少し申し上げておこうかと思っています。

[「6つの改革と税制」]

現在、政府が「6つの改革」に取り組んで、様々な制度改革が動き始めている状況の中で、税制をいかに位置づけるかということは重要なことです。お手許のフローチャート(資料1)を適宜御参照していただきたいのですが、現在の状況は、少子・高齢化の一層の進展、経済のグローバル化、ボーダーレス化、情報化など、我が国に変化が起こっていることは御承知のことです。

そこで、「6つの改革」ということになると、何となく、「税制改革」がどうしてこの中に入っていないのかという御疑問をお持ちの方もいると思いますが、税制については、現在まで何度となく改革を続けてまいりました。同時に、今行っている「6つの改革」ということから眺めると、それぞれの改革の中に税制問題は全部含まれています。「6つの改革」というのは、そのフローチャートで御覧いただくと、行政改革、財政構造改革、社会保障構造改革、経済構造改革、金融システム改革、教育改革となっていますが、これらには全部税制が絡んでいます。しかも、税制については御承知のとおり、既にいろいろと抜本的な改革が行われていることは、フローチャートの左の方に出ています。

同時に、構造改革の必要性については、『これからの税制を考える』をこの1月24日に皆さま方の御協力により出しましたが、その『これからの税制を考える』の中に、制度改革は必要であるということをめぐって、税制はどうすべきかということについて論じました。したがって、現在、私たちはその意味で税制改革を進めており、これは、「6つの改革」の一番底に流れている一つの改革だと、申し上げてもいいかと思っています。

その税制の抜本改革について細かいことは省略しますが、所得課税については、税率の累進性が緩和されて、所得税は15の段階から5段階になりました。住民税は14段階から3段階に変更されています。最高税率も所得税は70%から50%に、住民税は18%から15%に引き下げられました。また、法人課税についても、法人税の税率が42%から37.5%に引き下げられました。さらに、消費税が創設されたと同時に、税率が当時3%でしたが、現在5%に引き上げられ、地方消費税も創設されたところです。

こういうわけで、いろいろな変革が既に税制では行われています。これからも税制上いかに「6つの改革」に対応していくかということが問題となるが、何と言っても一番我々が当面にぶつかっている課題は、「ビッグバン」です。その「ビッグバン」に向けて、金融システムの改革をどうしたらいいのかという大きな問題が起こっています。また、経済構造改革ということになると、法人課税の見直し、あるいは、社会保障構造改革に関連しては、年金課税をどうするかといったことが議論として上がってまいります。

税制調査会においては、こうした変化の中で、常に公平・中立・簡素という租税原則を考える必要があります。例えば、「ビッグバン」については、「ビッグバン」を扱っている金融関係の審議会から、要望が出てまいります。しかし、その要望を、今度は税体系の中でどう受けとめるかということを考えなければなりません。その意味では、常にいろいろな要望があるのを、どういうふうに税制の体系の中でうまく処理することができるか、ということが私たち税制調査会の大きな課題ではないかと考えています。

とりわけ今度の10年度の税制改正に向けて、有価証券取引税や株式等譲渡益課税、それから、SPCなどを利用した不良債権や担保不動産の証券化に係る税制などについて、年末には結論を出さなければならないという条件が出てきています。現在、こうした金融課税の問題については、金融課税小委員会で時機を失することなく検討を進めているところです。

また、法人課税の改革については、課税ベースの拡大の余地があるならば、法人税の基本税率を引き下げるという方向で、昨年から提案がなされていますが、今後、総会においても、本格的な検討に入ることになると思っています。さっそく本日の総会で御審議をいただくことになります。

そういう意味で、今後の税制を考えると、当面のそういう問題を含めて、さらに将来的な展望が必要でして、これから税制を、経済構造改革とか、あるいは財政構造改革とか、「6つの改革」の進捗状況を十分に見ながら、考えていかなければなりません。

税体系をどういうふうに見直したらいいのか。例えば、所得課税の中でも法人課税の中期的な課題がもちろんあります。当面は、一応法人課税の課税ベース拡大による法人税率の引下げがありますが、中長期的にはどう考えるか。それから、所得税の最高税率は今50%になっていますが、これについてもっと考えるのか、考えないのか、という問題があります。また、消費課税とか資産課税の見直しもしなければなりません。さらに、全体を通じて、納税者番号制度を導入することについて、どういうふうに私たちはこれから考えたらいいか、ということも課題となってきています。

そういうことで、問題は多岐にわたりますが、皆さま方に是非貴重な御意見をいただいて、この問題の解決に入っていきたいと考えているところです。

[本日の進め方]

そこで、今日の審議に入ります。本日は最初にまず金融課税小委員会の、これまでの第4回、第5回の審議状況について御報告をいただいて、皆さま方の御意見をいただきたいと思います。

次に、今、当面の課題になっている、今度の臨時国会に提出される予定ですが、資料情報制度などの法案について、事務局から説明を受けたいと思っています。

第3番目ですが、地方の税収動向について、事務局から説明を受けます。

第4番目には、先日、米国との協議が行われたWTOの酒税問題の最近の状況について、事務局から説明を受けたいと思います。

最後に、法人課税の考え方について事務局から説明を受けて、皆さま方から御意見を承りたいと考えています。

[金融課税小委員会の審議状況]

そこで、まず第1の議題ですが、金融関係税制の審議に入りたいと思います。金融課税小委員会は、夏休み前の審議に引き続き、先週まで5回の審議を終えたところです。

第1回から第3回までの審議においては、今後検討すべき事項が整理されました。大まかに申しますと、「資料情報制度」と「民間国外債に係る本人確認制度」、これは臨時国会に提出する予定ですので、私たちとしてもそれに対応していかなければなりません。

それから、2番目には、有取税など、10年度改正において検討すべき項目を中心に具体的な審議が進められ、その他の問題も同時並行的に審議を進めていきたいと考えています。10年度改正における議論の過程で、結論の得られないものは、来年も引き続き審議されることになりました。

こうした審議内容を、今後の進め方については、既に7月11日の総会で御報告をいただいています。

本日は、第4回の審議状況、それから第5回の会合で行われた金融関係者からのヒアリングの模様、さらには、今後の予定などについて御報告をいただいて、皆さま方から御意見をいただきたいと思っています。

水野(忠)小委員長代理

それでは、金融課税小委員会の今までの審議について、私の方から御説明させていただきます。

具体的には、お配りしている資料、「金融課税小委員会のその後の審議状況」(資料2)というものを御覧いただきたいと思います。

今、会長からお話があったように、7月まで3回金融課税小委員会を開催しまして、それについて、7月の総会でも御報告しましたが、ここでは9月5日と12日に2回開かれたので、そのことについて御報告したいと思います。

これまでの審議の状況について、まず9月5日については、事務局の方から、金融課税に関するOECDにおける議論、これは金融課税について、OECDの租税委員会の中でいろいろ検討がなされたというお話をしていただきました。もう一つは、諸外国ではどうなっているか。具体的には、金融システム改革がイギリスをはじめ進んできているが、それと金融関連税制の方がどういう対応になっているか。こういったことについて御説明いただいています。それから、金融課税についての基本的な考え方の整理について、検討がなされています。

金融課税についての基本的な考え方については、まず、平成4年の「利子・株式等譲渡益課税小委員会」の報告書では、1つには、「包括的所得税」、「総合課税」といった立場、他方で投資課税を基本的に課税しない「支出税」といったような立場、さらには、「分類所得税」、「最適課税論」といった3つの課税論というものがあるということが、触れられています。

もう一つは、平成9年の1月に出た『これからの税制を考える』という冊子ですが、その中において、所得・消費・資産に対する課税のメリット・デメリットを勘案する必要があり、その適正な組み合わせを考えていくことが大切である。こういうような指摘がなされています。

また、9月5日に、東大の井堀教授をお呼びして、御報告いただき、それについての検討が加えられています。「審議状況」(資料2)の中に簡単に書いていますが、「最適課税論」の立場からモデルによる分析を行って、それに基づいて資本所得課税、それと労働所得課税、これを対比した場合にどうなるであろうか、ということが検討されています。「最適課税論」の立場は、所得の性格に応じた課税をすべきであるというようなことになりますが、その場合に、今問題となっている金融課税について、金融所得といったいわゆる資本所得課税、これが労働所得課税と対応させてどういうふうに扱われるべきであるか。こういうことについて、モデルを使った、かなり高度な抽象的な議論がなされています。

それに対する委員会の反応については、1ページ目を見ていただきたいと思います。多少専門的なお話ですが、ちょっと例を挙げて御説明いたしますと、

  • 開放経済になっていく中で、国際的な資金移動が自由に行われるようになりますが、それと各国の経済的な環境の違い、これをどういうふうに考えていったらいいのだろうか
  • 金融課税、これは資本所得として括られるわけですが、その中で多様化していく金融資産、その間での中立性はどう考えていくのだろうか。
  • 取引に課税していくのだろうか、あるいは金融取引の所得、といったものに課税していくのか、こういった観点からも検討する必要があるのではないか。

さらにつけ加えると、

  • 資本所得と労働所得、いわゆる金融所得と労働所得とのバランスを考える場合に、経済成長への影響だけではなくて、いわゆる所得配分の視点、こういったものも考えていく必要があるのではないか。

このような議論がなされています。これが9月5日の審議状況です。

9月12日には、2ページ目を見ていただきますと、金融関係者からのヒアリングを行っています。特に、この点について細かくお話しした方がよろしいかと思いますが、御覧いただいたように、金融制度調査会から西崎さん、外為審議会からは大場さん、証券取引審議会から蝋山教授、保険審議会から倉澤教授、さらに実務家としてメリルリンチの会長守屋さん、この5人の方のヒアリングを行っています。

そこで出されたいろいろな御意見、特にこれは金融関係者で、金融課税小委員会に対してどういう御要望があるかということで、税制に焦点を当ててお話を伺うということであったので、2ページ目に主な要望事項ということで、事務局の方で整理していただいています。

簡単に、要望事項を御紹介すると、有価証券取引税、取引所税、これを廃止してもらいたいということから始まり、専門的な話になるが、ストックオプションのための税制だとか、債権流動化のために、特別目的会社、SPCといったものの制度を導入した場合に、法人税の特例を認めてもらいたい。あるいは、金融持株会社の解禁に伴って、金融持株会社の議論がなされていますが、それに伴って、税制に対する特別措置というものを入れてもらいたいといったようなお話。さらに、技術的ですが、短期国債については、居住者、非居住者ともに源泉徴収というものを廃止してもらいたいとか、中長期の国債についても、非居住者については源泉徴収を廃止してもらいたい。こういった御要望がいろいろ出されています。

それをもとにして、小委員会のほうでも、ヒアリングの当事者に対して質問などを行い、また、ヒアリングが一通り終わった後、意見を出し合っています。それをまとめたものが3ページ目に出ています。

まず、主な意見を御紹介すると、

  • 全体として、いろいろ金融関係者から減税要望という形で出てくるわけですが、その場合の代替財源はどういうふうに考えたらいいのか。

こういうことは、特にお一人お一人の意見表明者に対して行って、代替財源についてどう考えたらいいのか、御意見などを伺うようなことをしました。

それから、

  • 有価証券取引税の廃止論が特にビッグバンとの関係で象徴的に言われていますが、有価証券取引税の本来の目的、それが取引コストとしてどれだけの影響があるのか、これをきちんと検討する必要があるのではないか。
  • 有価証券取引税というものを廃止する場合の対応として、キャピタルゲイン課税というものをきちんとやらなければならなくなる。そういったことも考える必要があるのではないか。

一方で有価証券取引税を廃止してもらいたい、他方で株式等の譲渡益、これは分離課税を続けてもらいたい、こういう要望がありました。通常、有価証券取引税は、株式等譲渡益に対する課税を補完する目的があるということで、これ(有価証券取引税)を廃止する場合には、株式等譲渡益課税の方は「総合課税」という考えになるのですが、そちら(株式等譲渡益課税)の方も分離課税でいってもらいたいというような御意見も出ました。 これに対しては、結局、

  • 株式等譲渡益課税が、有価証券取引税に近い取引コストになってしまうのではないか。

こういうような指摘が、委員の方から出ました。

それから、

  • 債権流動化のためにいわゆるSPCと言われている制度を日本に導入する。こういう要望が強いわけですが、それが本当に日本の金融界のニーズとして出てきているものなのかどうか。
  • 源泉徴収の関係で、国債に関して、短期国債、中長期国債について、いずれも利子に対する源泉徴収の廃止といった御要望が出ていますが、こういったものに対して、特にヒアリングで言われたことでは、いわゆる円の国際化ということを強調された方があったわけです。円の国際化と税制とが、一体どう関連するのか、あるいは国債に対する源泉徴収を廃止した場合に、他の一般債券いわゆる社債とかその他の投資信託といったようなものがありますが、こういったものに対する影響はどうなるのであろうか。そもそも理論的に源泉徴収を廃止することは、我が国の課税権を放棄することになりますが、こういったことについてはどう考えるのか。

こうした観点からいろいろ御意見が委員の中から出ています。

また、付け加えますと、保険審議会関係では、

  • 保険でも貯蓄性の高い保険、他方でリスクを分散するといいますか、従来の危険をカバーする保険、などいろいろ多様なものが出てまいりますが、保険商品と他の金融商品との中立性も考える必要があるのではないか。

こういう意見が委員の中から出されています。

最後に、これは先週9月12日の委員会で小委員長がまとめられたところですが、金融課税を考えていく場合に、「中立性」が大事になってくるが、「中立性」の意味はいろいろあると。具体的に申しますと、1つには国内と国外との「中立性」。2番目には商品間の「中立性」。それぞれ商品についてはリスクとリターンが違ってくるわけですが、この「中立性」をどう持っていくのか。それから、もう一つは期間の相違における「中立性」。つまり、課税を繰り延べられる場合と、当期に課税される場合、いわゆる期間の相違における「中立性」の問題といったものがあります。さらに、こちらに書いてありますように、金融機関相互の間、それから個人の間での「中立性」、最後に税収の「中立性」、これは法人課税で問題になっていますが、いわゆる歳入中立性の中での議論、こういったいろいろな「中立性」の観点がありますので、その中で議論することが非常に難しいということをお話しされたわけです。

以上が、9月5日、12日における金融課税小委員会の審議状況です。これからどういうふうにしていくかということについては、先ほど会長からもお話があったように、9月の早い時期、資料情報制度等、これは臨時国会との関係で早くまとめなければいけない。それから、10年度改正に向けて考えていかなければならない項目、さらに3つ目には、引き続きそれ以外の項目についても並行的に審議をしていきたいということです。

具体的には、総会のある週を除いて、これから10月まで原則として週一度のペースで金融課税小委員会が開かれるという見込みであります。

それから、先ほど9月12日のヒアリングのお話をしましたが、来週26日には、さらにお一方、具体的に申し上げますと、シティバンク代表の方をお呼びして、今度は外資系銀行ということでヒアリングを行いたいと考えています。さらに、12日のヒアリングで十分に尽くせなかったということで、税制について保険業界がどう考えているかということ、さらには、東京市場の活性化をどう考えるということ、これらについても補足的に議論を伺いたいと考えています。

こういったヒアリングを踏まえて、10月いっぱいをかけて、小委員会の中の専門委員の個別のレポートも交えながら、一通り網羅的に金融課税の問題点について検討していきたいと予定しています。11月に入ってからは、主要な論点を絞り込んで、特定の項目について議論を進めていく。場合によっては、特に最重要課題については、週2回のペースで検討していきたい。このような予定でいます。

加藤会長

経過報告ですから、まだ煮詰まったところではありません。

それでは、この問題はこれで御報告ということにします。

[「資料情報制度」「民間国外債に係る本人確認制度」の法案の概要説明]

次に、今、水野(忠)さんからもお話がありましたが、「資料情報制度」と「民間国外債に係る本人確認制度」については、これまでの金融課税小委員会においても既に議論を重ねています。一定の方向が示されているように思いますが、総会においても、前回、金融課税小委員会での検討状況についての報告を受けて、基本的な方向についてのコンセンサスが出来てきていると思います。本日は、したがって臨時国会に提出する予定の法案の概要について、事務局より報告を受けて、そして皆さま方からまた御意見をいただこうかと思っています。

それでは、伏見税制第一課長、谷口国際租税課長、よろしくお願いいたします。

伏見税制第一課長 資料説明(資料3)

前々から何回か御説明をした「資料情報制度」ですが、関係方面との詰めがかなり進んだ状況にあります。また、法制局においては、その法文の詰めなども最終段階になっていますので、現段階でのいわば制度のエッセンス―おそらく臨時国会で審議をされるその制度のエッセンスを―念のためにご説明します。

なお、法律の名前は大変長い名前ですが、資料にもあるように、「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律案」ということになろうかと思います。

制度の内容ですが、横紙で「概要案」というのがありまして、その後ろに図をちょっとつくってみましたので、そちらで御覧いただければと思います。

「資料情報制度」というタイトルの図があります。真ん中に四角があって、そこに「銀行・郵便局」と簡単に書いてますが、為替業務を行い得る金融機関も含めた意味で書いています。

その四角の中に丸で囲った「口座」というのと「窓口」というのがありますが、これはまた後で御説明いたします。

左側に「顧客」というのがありますが、例えば、送金の場合、顧客からの依頼を受けて、金融機関が海外に送金をする。あるいは、海外から、逆に、国内に送金が行われてくるということです。その場合に、真ん中のところで、点線状態で縦に流れていて、実線で下の「税務署」と書いてますが、現在考えている制度では、この送金、あるいは、入金の金額が1件当たり200万円を超えるものについては、調書を提出していただくということです。

この場合、括弧の中で「以下の送金は除く」というのがありますが、前々から御説明しているように、送金情報というものがなくても、その根っこにある輸出入取引に関する荷為替手形といったものから、ある意味で取引がフォローできるようなものとか、さらに実務的に検討したところ、銀行名義での取引とか、あるいは証券会社を通じた対外証券取引といったものは、場合により、その情報としての意味が必ずしも十分でないものとか、あるいは本来業務になるものだから、一々情報としてとるまでもないというようなものは除く、という処理をしたいと思っています。

それから、左側の「顧客」のところで、上と下に分かれてます。それから、四角の中が丸で囲った「口座」と「窓口」に分かれてますが、そこの関係を御説明したいと思います。この調書の情報ですが、1つ非常に大事なところは、どこの誰が、あるいはどういう会社が、そういった行為をしたか、ということになります。したがって、そこが全くの虚偽であったりすると、いろいろな情報を出していただいても、全く意味がないということになります。

したがって、まず、左の下の方の丸から御説明すると、例えば、顧客がキャッシュを銀行あるいは郵便局等の窓口に持ち込んで送金をするといったケースを考えると、まず、お客さんの方から告知書を出していただきます。告知書というと何か仰々しいようですが、実際には、送金の時に必ず書いていただくような送金依頼書です。この中には、まさに本人の名前等も含めたものが書いてあるわけです。その場合に、それが真正でないと全く意味がないので、個人であれば住民票とか、企業であれば法人の登記簿といった一定の書類によって本人確認をしていただいた上で、あとはその金額の基準とか取引の内容の基準というのがありまして、その基準に当てはまるものについては、情報として税務署に出していただく、ということになります。

ただ、この場合、常に継続的に取引を行っているような方の場合に、一々住民票を持っていかなければ送金ができないというのは、大変不便なことだし、実際上はおそらく、一つとは限らないかもしれませんが、前々から開設されている幾つかの口座を常に使われるというのが普通であろうと思います。それが、上の方の丸のケースでして、この場合には、その口座について顧客の本人確認が済んでおれば、一々告知書の提出を求めることもしないし、本人確認の必要もないだろうということになるわけです。したがって、既存の口座を利用する場合には、そういった手続は要らない。法律の書き方からいくと、下側の丸から始まりますが、一般的には、おそらくその上の丸の形で、実際には行われるだろうということです。

以上が「資料情報制度」、現在準備中の法案のエッセンスでございます。

谷口国際租税課長 資料説明(資料4)

続いて、「民間国外債に係る本人確認制度」の導入に関して御説明します。

お配りした資料としては、「民間国外債の利子非課税制度-本人確認制度の導入-」が制度の概要を示した絵、「租税特別措置法の一部を改正する法律案の概要」、それから、「租税特別措置法の一部を改正する法律案要綱」という形でお配りしています。

簡単に、まず絵で説明して、概要をざっと御覧いただきたいと思います。前回御説明したように、民間国外債の非課税制度と申しますと、絵でいくと、一番左端にある太線が、すなわち内国法人が国外で債券を発行し、それを非居住者に売った時に、その利子が非課税になっているという制度です。来年4月からの外為法改正に伴って、居住者が国外で口座を持つことができますが、そうすると、国外で受け取った時に、居住者が受け取っているのか、非居住者が受け取っているのか、居住者が受け取れば当然課税なので、この非課税と課税を区別する必要があるということで、いろいろ諸外国の例なども参考にして、本人確認制度を導入する必要があるということになったわけです。

具体的にどういうことをやって、これをやるかというのが、今回の法律の概要なので、概要を御覧になりながら、その次のページにある絵で若干補足しながら説明したいと思います。

まず、1番に「非居住者・外国法人に対する本人確認制度の導入」とあって、イとロに分かれてますが、イは、税法上の本人確認制度の原則です。実際には、マーケットではあまり使われないと思いますが、この原則はどういうことになっているかと言うと、受け取る非居住者本人が、その氏名、住所等を申告して、まさに本人確認そのものをやっていただくというのがイでございます。

これは、絵で御説明すると、2枚目の絵ですが、一番上のラインになります。非居住者本人が発行体あるいは発行体の支払い代理人のところまで、本人確認を直接する。その場合に、利子を非課税で受け取れるという線です。

次に、ロですが、これはユーロ市場の特例になっていて、本人自身ではなくて、本人に代わって、本人の債券を保護預かりしている金融機関による非居住者性の確認と言われているものです。

これは、絵で御説明すると、2 枚目の真ん中のラインになりますが、非居住者が金融機関に債券保護預かりしていて、金融機関自身はその非居住者がどのような人かということはわかっているわけですが、その氏名とか住所を情報として流すのではなくて、非居住者であるかどうかという抽象的な情報だけを流していく。この場合に、さらにユーロ市場の慣行に従った特例があって、その情報が国際決済機構、ユーロクリアとかセデルと呼ばれているものですが、そういう国際決済機構を通じて流れていくわけです。その国際決済機構には、債券の発行後40日目に保有者が誰かということを確認する仕組みがあるので、その仕組みに乗せるために、この非居住者かどうかという確認の情報を、40日目から流してよろしいという仕組みを入れたいと思っています。

さらに、手続の簡素化等の観点から、1回そういう確認がとれた場合には、非居住者がお客さんである限りは、2回目以降の通知は要らない。ただし、居住者が混ざった場合には、居住者の比率情報を出してもらう。これによって居住者が混ざった時の牽制が続くということになります。

それから、非居住者であることの証明が出せないということは、結局、買った人は居住者であるということになるので、外で買った居住者に対しては、発行体段階での源泉徴収が行われることとしています。また、還流してきた債券を国内の金融機関を通じて買った居住者については、これは今まで通りですが、この場合には水際源泉徴収で対応するということになっています。

大体以上でございます。

加藤会長

それでは、この2つの法案が臨時国会に提出されることになるので、何か御質問があれば、どうぞお願いいたします。

松尾委員

今、御説明いただいたことについては、いずれも「抜け穴」があるのか、ないのか、その辺に最大の関心があるわけです。200万円を超える送金について調書を提出する。「超」という条件がついていますが、当然、分割すれば調書を提出する義務がないということになります。そうすると、どうでしょう、200万円超という条件は、今後状況によっては、変化に対応して改めるということも必要になるように思いますが、その点はどのようにお考えになっていますか。

伏見税制第一課長

この制度については、今年の初めから御説明をしている骨格をベースにして法律案を出そうと思っていますが、今、御指摘のあった金額の基準のところは、当初、具体的な金額のめどがないと、関係方面との議論もできないので、例えば100万円ということで、いろいろなところと議論をしてまいりました。この100万円というめどは、海外で同じような金額の基準がつけられているような制度を見ると海外の制度はまた微妙にいろいろと違っておりますが例えば1万ドルという基準があったり、あるいは5万フランという基準があったりしたものですから、一つのめどとして考えていたわけです。

その後、議論の積み重ねの過程で、いろいろな論点があると思いますが、ここは要するに御指摘あったように、まさに分割をすれば、幾らでもくぐれるではないかという懸念が一方であります。他方、これをあまり小さいところまで拾うことになると、何となくうっとうしいというような感じもありまして、一般の方が、例えば非常に小口の送金が何らかの事情で必要になった場合、そういったものまで一々報告が出るのか、というような議論もありました。ですから、どこかで一定の線を引かなければいけない、どこで引いても同じような問題がつきまとうと思います。

夏の間、最終段階で、手掛かりが何かないと議論もできないので、実は既存の統計には何もないので、具体的な幾つかの金融機関に依頼をして、サンプルをとってみました。そこで、現状の送金を件数ベースで見て、どれぐらいのカバレッジになっているのか。100万円とか200万円、あるいはそれ以上というところで、幾つか当たってみて、データのチェックをいたしました。一方で、データが集まったときの国税庁サイドの事務処理体制というようなこともあります。

そういったものを総合勘案して見たところ、200万円というレベルであると、いろいろな意味で、一定のぎりぎりの調和点ということになるかと思います。片方では、課税の公平・適正をも徹底的に追求するという観点からは、例えばこの金額基準はそもそも要らないという議論も成り立ち得ると思います。一方では、外為法改正の趣旨ということからいくと、租税回避の意図がない方には何らの障害にならないものだと思いますが、何となく報告が出てしまうのはうっとうしい。そういう方からすると、この金額の基準は高ければ高いほどいいのではないかというような御意見もあります。そこのぎりぎりのところとして、こういったところのレベルなのかなと思っています。

問題は、外為法の改正というのがまさに新しい時代に入ってまいりますから、どういうことが起きるかというのは、想定は今いろいろな議論がありますが、実際には、まさにやってみなければわからないということなのだろうと思います。そういう意味では、私どもも当面の法案に織り込むものとしては、これが適当ではないかと思っていますが、現実に一体どういうことが起きてくるのかというあたりは、当然、十分にこれからフォローが要る事柄だろうと思っています。

岩瀬特別委員

今、いただいた本人確認のデータで、2枚目の図解されたものですが、この図は大変すっきりした図解をされていますが、おそらくユーロの取引の実態というのは、かなり込み入っていて、決済機関、金融機関、非居住者というものが、もう少し重層化されていたり、かなり込み入っているのが実態ではないかと思います。かつ、転々流通して所有者の移動が大変あるというときに、向こうの青い目の関係者が、本人確認にあくまで協力するということが担保されているのかどうか。結果としては、発行体が納税義務者として義務を負うわけでございますから、責任が発行体に来るという議論が大変問題になったわけで、その点はいかがなのでしょうか。

谷口国際租税課長

この民間国外債の本人確認の関係では、かなり前から、内外の市場関係者の方々と意見交換をしながら案を作ってきていまして、今、委員から御指摘のあったような懸念というのは、いろいろなところから前からも出ていますが、そういうことを踏まえながらいまの案を作っています。しかも、海外の金融機関に直接、税法上の義務を課しているわけではないので、あくまでも税法上問題になるのは、発行体と、日本の国内源泉所得を受け取る非居住者であります。したがって、先ほど御説明したように、税法上の原則は、非居住者本人からの本人確認の情報をとるということです。ただ、これはマーケットではほとんど使われません。

それで、その次のユーロ市場における特例というのは、お客さん本人のことを知っている金融機関を通じて情報を流してもらう。しかも、これは本人の住所、氏名等ではなくて、非居住者ということですので、例えば、これも前に申し上げたが、「スミスさん」から「ブラウンさん」に転々流通して、さらにどんどん名前が変わっても、非居住者であるということが変わっていなければ、一番初めに出していただいた情報はそのまま使えるということになっています。そういう利払日基準とか40日目の基準というようなことなので、むしろ先ほどの濫用ということからいけば、途中に居住者がまざったらどうするのだという話もありますが、そこはあえて、マーケットの中でそういう期間按分のメカニズムもないので、一番初めに出していただいた情報が非居住者ということであれば、それが利払日において非居住者であることが続いていれば、その通知が2回目からは要らなくなるというようなことで、事務の簡素化、マーケットにおける手続の簡素化に配慮しています。

さらに、40日目の確認というのは、現在のユーロクリアがかなり厳格に守っている本人確認の方式でして、この40日目の確認がとれない場合には、その段階で確認が来なかった債券の取引がブロックされてしまうといったようなペナルティー、それからアメリカの場合には、その40日目の確認がとれなければ、そもそも発行した債券の利子が損金算入から否認される。そういうペナルティーのついた確認義務を負っている40日ですので、この40日目の手続に日本の制度が乗れば、非居住者確認もかなり現在の慣行の中でとれるのではないかと我々は考えています。

法案としてはだいぶ固まってまいりましたが、まさにマーケットの慣行に配慮しながら制度をつくっていくという意味では、今後、政省令等でも引き続き意見交換が必要だと考えていますので、その辺も付言させていただきます。

岩瀬特別委員

この問題は、日本の事業法人等が海外で起債するのをディスターブすることにならないのか。転々流通する中でもって、居住者にいっているのに、それが本人確認されないままその尻が発行体に来て、徴税義務者である発行体が、徴税義務違反を問われるのであったら、これから落ち着いて海外で起債ができないということが、日本のこれはというような発行企業から大変心配された制度なのですが、是非そういうことがないようにお願いしたいと思います。

[地方の税収動向]

加藤会長

引き続き、地方税の平成8年度決算見込額について、自治省税務局、桑原企画課長から説明をお願いいたします。

桑原企画課長 資料説明(資料5)

それでは、資料5に基づいて平成8年度の地方税収の決算見込額について御説明します。

1ページ目の上の方の表は、これまでの地方税収の推移をグラフにしています。右から2番目の平成8年度の税収見込34兆5,000億、正確には34兆4,590億円で、対前年度比3.9%の増となる見込みです。御覧いただきますと地方税収のピークは平成3年度で、それ以降少しずつ税収が落ち込んできましたが、7年度に若干増加に転じて、8年度はほぼピーク時の平成3年度に並ぶ税収となったところです。下の方に年度当初の地方財政計画額Aとの比較をしています。一番右の欄のBマイナスAで年度当初の見込みに比べると6,775億円多かったということです。

2ぺージ目で内訳について簡単に御説明しますと、上の方が地方税のうち道府県税で、道府県税計アという一番下の欄ですが、右から4列目が決算見込額の合計額で、14兆3,088億円ということで対前年度伸び率、右から2列目ですが4.4%増ということになっています。

道府県税の個別の税目でみると、法人関係税ですが、道府県民税の一番上の行の法人というところでは、対前年度伸び率18.2%増と大変大きく伸びています。その下の事業税についても法人事業税が対前年度比20.1%増ということになっています。それから道府県税の下の方の自動車関係税ですが、自動車税が3.9%増、特に自動車取得税については消費税の税率アップを前にした駆込み需要等によって7.4%増といった伸びになっています。

下の方が市町村税で、市町村税の計が下から2行目にありますが20兆1,502億円、前年度に比べると3.5%増になっています。このうち市町村民税については、個人は前年度比で御覧いただきますと98.1%ということで平成7年度を若干下回っています。これは平成7年度から実施された制度減税のうち、住民税は前年の所得に課税するという制度になっていますから、その関係で平成8年度にその影響がずれ込んだものがあるといったことからマイナスになっています。法人市町村民税については道府県税と同様に17.8%といった大きな伸びになっています。

それから固定資産税、あるいはそのずっと下の都市計画税、これらは平成7年中の家屋の新築の増加があったことなどによって、固定資産税で4.5%増、都市計画税で5.0%増といった伸びになっています。これを合計して地方税で34兆4,590億円、3.9%増というのが平成8年度の決算です。

なお、平成9年度に入ってから法人関係税、あるいは自動車関係税などの主要税目の税収が8年度を下回るという状況がずっと続いていまして、今後の進捗にもよりますが、現在の時点ではちょっと今年度の税収、少し心配な状況にあるところです。

いずれにしても今年度の税収については、また別の機会に改めて御報告をしたいと思います。簡単ですが平成8年度の地方税決算見込額の説明については以上です。

[WTO報告]

加藤会長

それでは、次に、WTOの御報告をしていただきたいと思いますが、御承知のように、9年度改正で、WTO勧告に対応するために大幅な酒税の税率の変更を行っています。ヨーロッパは納得をしているようですが、アメリカとの間がまだうまくいっていません。そこで、先日、薄井主税局長がジュネーブでの協議に出席をされていますので、その状況について御報告をいただきたいと思います。

薄井主税局長 資料説明(資料6)

お配りしてある資料の「酒税関係資料」という横の資料でございます。今、御紹介いただきましたように、今週の月曜日と火曜日に、ジュネーブにおいて、アメリカのカトラーさんというUSTR担当局長と折衝してまいりました。

この酒税の話は長い経緯があって、今回、新しく委員になられた方には御説明が不十分かと思いますので、簡単に全貌を御説明した上で、今何をやっているかだけを御報告申し上げたいと思っています。

資料は3枚ありますが、1枚目に、これまでの経緯がまとめてあります。上から4行目ほどに、平成7年6月23日というところがありますが、EUから、日本の焼酎とウイスキーの税率格差がウイスキーの対日輸出の障害になっているということで、WTOに対する提訴があったわけです。引き続いて、7月には、米国、カナダから協議要請があり、EU、米国、カナダから提訴され、その後、WTOの場でパネル及び上級委員会において議論を重ねてまいりました。結論的には、日本の主張が通らなくて、両者の税率をデ・ミニマス、つまり最小限に近づけることが必要であるという勧告の採択が去年の11月1日にあったわけです。

次のページを御覧いただきます。ちょっと見にくい絵ですが、去年の11月1日の採択を受けて、酒税法を改正することに決断しました。それまでWTOの場において、私どもは、当時の酒税制度は、日本における焼酎の特殊性ということから、理由があるということを主張してまいったわけですが、WTOの一員として我が国がこれに参加している以上、WTOの勧告には従おうということで、酒税法の改正に踏み切ることにしたわけです。

改正後の内容を簡単に申し上げると、一番右の欄のウイスキー類については、1キロリットル当たり2万4,558 円の税金だったわけですが、これを6割軽減しまして、1万225 円にする。そして、一番左側に焼酎乙類とありますが、これは、多くが沖縄や九州で生産されているいわゆる地酒の焼酎です。1キロリットル当たり4,084 円であったものを、9,924 円、つまり2.43倍にしたということです。その他の焼酎甲類とかリキュール類、スピリッツ類についても、ウイスキー類の水準に近づけていって、結果的には、ウイスキー類と焼酎との税率格差を3%にしたのです。「デ・ミニマス」と書いてありますが、最小限にしたということです。

ただこの税率改正は、消費者あるいは生産者に多大な影響を与えることになりますから経過措置をつけました。この改正案については、国会等で事情を十分説明し、この3月に国会を通りました。

この改正については、EUとは完全に合意に達していますが、アメリカ、カナダが納得していない点があります。それは何かと言うと、次のページです。先ほど説明したように、焼酎乙類については実に2.4倍に税率を上げる、それからウイスキーは6割もカットするということの衝撃が、いろいろな意味で大きいものだから、経過措置を講じて徐々に目的地に着陸することとしたわけですが、この経過措置について、納得していないというのが現状です。

ウイスキーは一番上の欄ですが、一番上の高いところから6割さげるのですが、今年の10月1日にはその4分の3を下げます。全体の下げ幅のうちの4分の3を下げて、残りの4分の1は来年の10月1日に下げます。そのことによって、2年間で目的のレベルに到達する。それから、焼酎甲類については、上げていかなければならないのですが、上げなければならない分の半分を今年の10月1日に上げて、来年の10月1日に残りを上げて、来年の10月1日で完全にします。去年の11月1日の勧告から計算して2年足らずで劇的な改正を終了するということです。これが3月に通った法律の内容です。

なお、焼酎乙類については、その特殊性から3段階に分けて目的のレベルに到達することにしました。今年の10月1日、来年の10月1日、それから2001年の10月1日に全体の上げ幅の3分の1づつ税率が上がることになっています。

再三申し上げますが、アメリカは、率についても3%の差があることについてまだすっきりと納得したとは言っておりませんが、主に経過期間についてもっと短くするべきであると、端的に言うと来年の2月には完了すべきであると強く主張をしてきています。

今後、これをどうするかということになりますが、来年度改正で手当てをしなければならないことになるとすれば、この秋にアメリカとの協議を終えなければならないということで、6月からハイレベルの協議を開始したということです。

以上、今週の月、火にアメリカと折衝してきた酒税の関係について御説明しました。結論的に申し上げると、税率水準については劇的な改正を既に終えていますが、それをどの時期までに完全に実現するかというところで、問題が残っているということです。

橋本特別委員

この結果(ウイスキーと焼酎等との税率格差を3%に縮小する9年度の酒税法改正の結果)、酒税の税収というのは、どのような影響を受けるのでしょうか。

薄井主税局長

細かい点については、やってみないとわかりませんが、これによって今より売れにくくなるお酒と、売れるようになるお酒があるので、両方の差をどう計算するかということになります。今、推測しているところでは、両方差し引いて数百億円のマイナスになるだろう、減収にはなるだろうと思っています。ただし、これはやってみないとわかりません。

私どもは税収面もさることながら、日本ではウイスキーと焼酎は違うものであるという論争をWTOの場でやってきました。結局、ウイスキーと焼酎の税率をほとんど同水準にすることとしましたが、影響が大きすぎて急にはそこにもっていけないというところで争いが残っています。

[法人課税の考え方]

加藤会長

次は、法人課税ですが、10年度税制改正の大きなテーマの一つです。今後の審議に向けて、委員の皆さま方の共通の議論の土台をつくることが必要なので、本日はこれまでの経緯や各国税制の比較などをまじえながら、法人課税の基本的な考え方について、事務局より説明を受けたいと思います。

伏見税制第一課長 資料説明(資料7)

1ページですが、「法人課税の見直し」という図のようなものがあります。法人課税と言っているのは、国税の法人税と、(注)にあるように、地方税の法人住民税、法人事業税があるので、法人課税という言葉を使っています。

これについては、税制調査会では、この数年間いろいろな御議論をいただいてきています。

法人税の現行の制度というのは、昭和40年に全文改正をして、基本的な骨格というのは、それが現在も維持されています。もちろん、毎年毎年いろいろな改正は行われていますが、基本的なベースは変わらずにきていました。税制の場合には、ある時点では経済実態に即したものであっても、その後、課税対象となる経済実態自体がいろいろな意味で動いてまいりますので、一定の期間を過ぎると、どうしても一定の見直しが必要になるという基本的な問題があるのだろうと思います。特に、近年の経済社会の変化なり経済の国際化等というものを踏まえた面での見直しが、法人税そのものの議論としてあるのではないか、という問題意識があります。

最近の状況を踏まえると、国民の税をみる眼も厳しくなっており、公正、中立、透明性という観点から、あらためて見直しをして、課税ベースを議論しようという問題意識がありました。

経済構造が今大幅に変化しようとしているし、また、変化しなければならない事態に入っているかと思いますが、以前にも増して、産業間あるいは企業間の中立性を確保しておくことが税制にとって求められているのではないか。あるいは、新規産業や新規企業の振興という観点も、非常に大きな要素として挙げられてきているのではないか、ということだろうと思います。そちらの方からも、課税ベースについて、中立性確保という観点なりから見た場合に、適当なものになっているかどうかという論点があろうと思います。また、かつては日本の法人課税の税率は、国際的に見まして、大体各国と似たようなレベルにありました。近年の姿で見ると、ドイツに次いで日本の法人課税の税率というのがやや高い方にきており、税率についても見直しが要るのではないか、という意見も出ているのが現状です。

一方、財政状況ですが、極めて厳しい状況にあります。減税の要望というのも、多数いろいろな方面から法人税に限らずありますが、現状の租税負担率で見ていくと、日本の場合には24.4%ぐらいです。アメリカが確か25.8%で、ヨーロッパ諸国の主要国は30%台だったと思いますが、そういった中で、なかなか高度成長期のような形での減税によって調整をするということはできない、という状況にあります。

そこで、税率の引下げという観点から考えて、4つほど選択肢を整理をしてあります。まず、赤字公債を発行して、これを財源として法人税の税率を引き下げるというやり方は、もちろん理論的にはあるわけですが、赤字公債を財源とするというのは、いわば財源がないということに等しいので、現状の財政事情等を勘案すると、とても選択できない、というのが現実の姿だろうと思います。

それから、2番目ですが、理論的には歳出削減を一生懸命やって、そこから生み出された財源を、法人税の減税に充てる、税率を下げる、という選択肢もあります。ただ、法人税率を仮に1%引き下げるとすると、大雑把には、約4,000億円ほどの財源が要るわけです。財政構造改革会議で、歳出の抑制について大変な御議論をいただいて、今回、臨時国会で法案も出てくるわけですが、4,000億円の歳出削減というのには、仮に1%としても、大変な苦労が伴います。したがって、理論的にはこちらの方向もあり得るとは思いますが、現状ではなかなかそちらにたどり着くのは困難ではないか、ということだろうと思います。

それから、3番目ですが、次に考え得るのは、税体系の見直しの中で考えていく。1つ理論的に考えられるのは、4,000億円というのは、相当なロットの必要となるような議論ですから、全く理論的に考えれば、例えば、消費税ということもあり得るわけですが、消費税については、地方消費税も含めて、今年の4月に5%になったばかりです。そういう意味では、そういった観点からの大幅な税体系の見直しというのは、当面なかなかすぐには取りかかれない、というのが現実の姿だろうと思います。

この法人課税の議論をいろいろなところで進めていく際に出てきている議論として、赤字法人課税、あるいは、外形標準課税問題というのも出てきています。この辺りの議論は、所得課税である法人課税という観点から見ると、ある意味でその枠を超えた議論ですが、そういった幅広い観点からも最近は議論が行われているという状況です。

それから、最後に、当面、直ちに取りかかり得る方策、現実的な方策としてあるのは、課税ベースの拡大あるいは適正化を通じて、それによって財源が得られるということであれば、それを税率の引下げという形で反映させる、というやり方があるのかと思います。諸外国で法人税の税率を下げていく際の手法を見ても、やはりそういう方向が一つの有力な手段になっているということもあります。

次の2ページの「法人所得課税の表面税率(調整後)の国際比較」の調整後という意味ですが、地方税である法人事業税は、法人税及び事業税において、損金算入されることになるので、地方税の税率と国税の法人税の税率を単純に足し合わせると過大評価されるから、それを調整したという意味です。

日本の場合には、国税、地方税を合わせて、この表面的な税率は49.98%になっています。なお、中小法人で資本金1億円以下、年所得800万円以下の場合には、軽減税率が適用されるので、その関係についても示しています。

海外の状況を見てまいりますと、ドイツが現在付加税を含めて50%を超えています。それから、アメリカが41%ポイントぐらい、イギリスは31%、フランスの場合には付加税が加わって36%というのが現状の姿です。

なお、色で二段で分けているのは、黒い方が国税、あるいは、連邦税である法人税、それから格子状になっているのが地方の法人税ということです。

4ページですが、「課税ベース」というのは抽象的なので、多少ともわかりやすくという意味で、税額計算の仕組みのイメージを図の形にしたものです。法人税の課税所得を計算する際、収益から費用を控除して課税所得を計算することになります。この費用に含まれるものが幾つか分けてありますが、仕入れ、あるいは、原価、それに人件費なり旅費交通費、あるいは、減価償却費といったものが費用として控除されることになるわけです。極めて単純に、例えば、ある個別の物品だけを取って、ある時に仕入れをして、それを単純に小売の形で売るというようなケースだと、利益がどれぐらいあったかというのは、すぐ計算できそうな感じがしますが、現実のいろいろな取引、あるいは、いろいろな事業展開というのを考えていくと、実はこの費用のところは、いろいろな意味で、これまでの企業会計のルールですとか、あるいは商法に従った処理とか、あるいは税法上の処理といったものがあって、必ずしも一義的ではありません。また、国際的に見たルールというのも結構多様なものになっているわけです。したがって、この課税所得の計算、それに至る過程をもう一回検証してみる、という作業をしてきたということになります。そこが、課税所得のところ、課税ベースという形になるが、そういう意味では、まさに動き得るところで、それが適正かどうかというものを検証しているということになります。

5ページですが、法人税の見直しのイメージということで、一つの試みとして図のようなものをつくってみました。4ページで箱の形になっていた課税ベースと税率が立方体の形になっています。これが法人税額として出てくる。それを、課税ベースを拡大すると課税所得が広がってまいりますから、仮に税収を一定とすると、税率を引き下げる可能性が出てまいります。垂直方向に下向きの矢印がついていますが、これがいわば税率の引下げということになろうかと思います。

さらに、右側のところは点線で「?」マークがついていますが、将来、他の税との関係なり、あるいは歳出削減といったものが仮に行われたとすると、理論的な話になりますが、同じ課税ベースであっても、いわば他のところから助けを得るという形で、この税率がまた下げられるという可能性はある、ということだと思います。

下に円グラフがありますが、そこのイメージを、例えば、国税収入の構成というもので見たものです。現行法人税の割合に大体等しいもの、25%弱のところですが、課税ベースの拡大、適正化といったものから税率の引下げをしてまいりますと、税収としてはあまり変わらないということであるとすれば、この比率は変わりません。仮に税体系の変更などが行われたというようなことだと、法人税のウエイトは全体の中では減少するというような姿が考え得るわけです。

次の6ページですが、税制調査会の中に設置された法人課税小委員会、これは一昨年の10月からスタートしていただきまして、約1年余にわたり、極めて濃密に、まさに課税ベースの個別項目についての検討を行っていただきました。俗に「38項目」と言っていますが、項目として一体どんなものがあったかというのを、一覧表にしたものです。さらに、もう少し研究しなければいけないというようなものまで含めて、一通り御議論をいただいたということです。

7ページですが、今年の1月におまとめいただきました『これからの税制を考える』の中の法人課税についての該当部分です。これまで申し上げたようなことが、まさにここに集約をされているということです。

8ページは、昨年の12月の答申です。

9ページ、10ページですが、海外主要国で法人税改革が行われた時にどんな手法が使われたか、というものをレビューしたものです。

1986年にアメリカ、84年にイギリス、ドイツは94年、それぞれ上から2段目に基本税率ということで、法人税の基本税率のところを御覧いただくと、いずれも引下げが行われています。アメリカは46%から34%。イギリスは3段階にわたって、当時52%でした税率が35%に引き下げられた。それから、ドイツは94年の段階で留保分について見ると、50%から45%に引き下げられているわけです。この時には、同時に、一番上に「特別措置の合理化」とありますが、例えば、アメリカを御覧いただくと、投資税額控除の廃止とか加速償却制度の縮減・合理化、貸倒引当金の原則廃止、等々の措置がとられています。イギリスやドイツについても、同様の趣旨の改正が行われています。

また、当時の改正の理由をフォローしてみると、アメリカについては、「優遇措置の利用度の違いによる企業間の税負担格差、及び租税上の誘因による企業決定の歪みの是正」という言い方をしています。それから、サッチャー政権当時の言い方は、「租税上の誘因により企業投資が歪められること等を是正するため、時代に適合しなくなった租税特別措置の廃止を行う」という言い方をしています。ドイツの言い方は、「課税ベースを拡大」とすっきりと言っているわけです。

一番最後のところに、全体の改革の結果としての増減収の数字が出てます。

それから、10ページですが、直近時点での法人税等をめぐる動きをまとめたものです。イギリスは、労働党政権に変わって、法人税率の引下げということで、基本税率については33%から31%の引下げを提案して、これは既に実施されています。同時に、各種の工夫をして、財源措置を行っているということでございます。

それから、ドイツですが、与党サイドから、98年度と99年度の税制改正案というのが、いわばパッケージのような形で提案されています。この中で法人税率についてみると、98年度に留保分の税率45%を40%に、さらに99年度で35%に下げるという提案になっています。これについては、これは法人税、所得税、両方またがっていますが、それが98年度、さらに99年度にも含まれていますし、また、99年度については、これによっても資源が足りないということで、付加価値税を―現行ドイツは15%ですが、―その税率の引上げを含めたものという提案になっているわけです。

現在の状況ですが、ドイツの場合、一般法の場合には連邦議会の議決で成立するようですが、税法については、連邦参議院の議決も必要だ、ということになっているようです。連邦参議院は、野党である社会民主党の方が優勢になっているようでして、これまでのところ、与野党間の協議ができていないために、まだ合意ができていません。したがって、これはあくまでも与党サイドの提案ということで、具体的にどうなるかは、今後の状況を見る必要があります。

それから、フランスですが、97年の緊急財政赤字削減策というのが7月に公表されています。9月下旬に議会に提案の予定、ということのようですが、フランスの場合には、ある意味で、やや逆の動きになっています。大企業に対する法人税付加税、税額の15%というものを導入する、というような提案になっています。現状でも実は付加税がついていて、基本税率の33と 1/3%に付加税がついて、36と 2/3%というのが現在の姿ですが、こうした大企業の場合、新たな法人税付加税が課されると、41と 2/3%に当面なるというような改正です。

この改正の趣旨は、EUの共通通貨制度への第一段階への参加ということで、フランスは以前から極めて厳しい財政赤字の削減策というのを講じていますが、これまでの措置では不十分だということで、さらにこのような動きになっているものと思います。

11ページですが、参考までに、アメリカの過去の税制改革によりまして、税収等がどういうふうに変動しているかというものを、一つの図にまとめたものであります。アメリカ経済は最近好調を持続していますが、それとの関連で、レーガンの時の減税というのがよかったのではないか、というような指摘もあります。そういった観点に対して、一応過去の動きなどを検証したものです。

レーガンの税制改革というのは2回ありますが、81年の改正は、下の囲みの中にありますように、所得税とか法人税を5年間で7,500億ドルの減税という提案になってました。この時の状況がどうだったかということですが、上の折れ線グラフを御覧いただくと、一番上の点線グラフ、四角を点線で結んだものが、改正がなかった場合の歳入見通しとして示されたものです。改正を行った場合が、その次の三角を結んだものです。当初の提案は、実はこういう形で行われました。当時、例えば「ラッファーカーブ」というようなことが非常にもてはやされたわけですが、減税をしても、それにより経済の活力が出てきて、それなりの増収が見込めるので、もちろん減税は減税ですが、その幅はおのずと一定のところにとどまるのだ、というような説明がされました。

ところが、現実の姿ですが、下の丸の実線のところのような形で推移をしました。政府の提案したものと比べると、残念ながら歳入はなかなか追いつかないという形で動きました。この結果、この間、4,500億ドルというのが実は見込み違いとして出てまいりまして、大幅な財政赤字をもたらしたわけです。当時、これとあわせて貿易収支の赤字も大幅になったので、「双子の赤字」というようなことがよく言われたのが、この第1回目のレーガンの税制改革当時の姿だろうと思います。

第2回目の税制改革というのが86年に行われています。そこのエッセンスが囲みの中にありますが、所得税については、累進構造のフラット化をこの段階では2段階に思い切ってしたわけです。それから、課税ベースの拡大・適正化等による措置と法人税の税率の引下げとをあわせて、全体として歳入中立での改正が行われています。この時には、見通しと実際の姿というのが、大体線がすべて重なっています。ほぼ見通しに沿ったような動きをしたというのが、2回目のこの改革の結果でした。

次の1990年になりますが、これはブッシュ政権時の改革です。この時には、所得税について最高税率を引き上げるということで、むしろ増税の提案になっています。大幅な財政赤字に配慮した提案でした。結果的には、不況が続いたので、歳入の実績は、上で御覧いただくように、見通しを下回る形で推移をしたということになります。

それから、現在のクリントン政権が93年の「包括財政調整法」という形での税制改革を行っています。所得税については、最高税率を引き上げて、結果的にいま5段階になっているわけです。法人税についても、最高税率の引上げが行われています。5年間で2,400億ドルの増税が行われました。結果的に、上の線を御覧いただくと、改正をベースにした歳入の見通しというものに沿った形で、むしろ96年ぐらいはややそれを上回るという形での税収の伸びが出てきている状況にあります。これがアメリカの約20年近くの動きです。

なお、若干補足しますが、この法人税の見直しの作業は、昨年の年末の段階で、私どもから3つの引当金を財源として、1%程度の税率の引下げが可能であるというふうな提案をしました。結果的に、時間も非常に短かったものですから、見送りになりましたが、その後、年が明けてから、この課税ベースの拡大あるいは適正化の考え方といったものを、いろいろな機会に御説明をさせていただいているところです。全体として、いろいろな関係の方々といわば議論が進められる状況です。

なお、夏の間の作業ですが、先ほど38項目を御覧いただきましたが、現実に改正をする際には、基本論も大事ですが、その経過措置をどういうふうにつけたらいいか、あるいは、過度の事務負担がかからないかどうか、というような実務的な勉強も大切だという観点から、企業の経理担当者との間で議論の積み重ねをしています。

加藤会長

地方税について、事務局より説明を受けたいと思います。

石田府県税課長 資料説明(資料8)

最後の12番の地方の法人課税について簡潔に御説明します。

まず、法人住民税ですが、課税団体は都道府県と市町村です。・の均等割ですが、都道府県においては資本等の金額に応じて2万円から80万円の5段階で課税しています。市町村については資本等の金額、さらには従業者数に応じて5万円から300万円の9段階で課税しています。・の法人税割ですが、課税標準は原則として法人税法等の規定によって計算した法人税額でして、これに標準税率として都道府県で5%、市町村で12.3%の税率で課税しています。法人税割は法人税額が課税標準で、法人税額がどうなるかによってその税収が決まります。レベルニュートラルの改正が法人税で行われれば、こちらも税収は変わらないということになるわけです。

2番目は法人事業税で、課税団体は都道府県です。課税標準はそこに書いてありますとおり各事業年度の所得及び清算所得で、原則として法人税の課税標準であります所得の計算の例によって算定します。これに・の標準税率、基本税率が12%ですが、この税率をかけて計算をします。一部収入金額課税法人がありますが、概ねそういう形になっています。法人事業税の課税標準は原則として今、申し上げましたとおり法人税と同じでして、法人税の課税ベースが拡大すれば法人事業税の課税ベースも拡大し、それだけ税率の引下げの余地が出てくるということになるわけです。例えば先ほど1%の話が出ましたが、1%法人税の税率が下げられるだけの課税ベースの拡大があるということになりますと、法人税の税率は37.5%でして、法人事業税の基本税率がその約3分の1の12%ですので、1%に対して概ね0.3%程度の税率を引き下げる余地が出てくるということになっています。

最後に3番ですが、地方税収入に占める法人関係税収を掲げています。まず法人住民税ですが、都道府県と市町村合わせて3兆円余です。うち均等割は合わせて4,800億円余ということになっています。法人事業税については4兆2,000億円余ということで、法人関係税収全体としては7年度の決算ベースですと7兆3,000億円余ということで、概ね国税の2分の1強という税収になっているわけです。以上です。

加藤会長

何か、御意見、御質問はありますか。

今井委員

今年度は、この法人課税の見直しが、5月の閣議決定によって盛り上がっています。私ども経済界としても、これに正面から取り組んでいきたいと考えています。

先ほど事務局から御説明があったように、先進各国の実効税率は大体40%前後ですから、少なくとも10%程度の税率の引下げということをやらないと、国際競争力がない。そして、先ほど金融税制のお話にもあったが、日本の空洞化を招くということで、やはり10%程度を目標にしてやっていきたい。そのためには、法人税だけではなくて、やはり地方の住民税、事業税もあわせてお考えいただかないとできないと思っています。

もちろん、私どもこの10%というのは、初年度から実質減税になることを望んでいますが、非常に財政事情が厳しいという先ほどの御説明もよく理解していますので、課税ベースの適正化ということについて、できるだけゼロベースからスタートして、正面からこれに取り組んでいきたいと思っています。

それから、地方税の問題についても、これはいろいろなところで、いろいろな御意見があると思いますが、やはり赤字法人課税の問題もあるし、例えば法人住民税の均等割の引上げ等も考えていきたいという考えです。

もう一つは、地方税というのは応益税だということがよく言われていますが、公共投資が従来の産業をベースにしたものから生活環境ベースに変わってきています。したがって、産業が受ける応益的な面も減ってきているので、そういう意味では、やはり地方税収の財源の見直しをお考えいただきたい。すなわち、地方の歳出削減、あるいは将来的には直間比率の是正というような形で、地方税の引下げも是非お考えいただきたい。

それから、先ほど課税ベースの拡大によって、税率を引下げるという話がありましたが、その場合には、中小企業の税率も引き下げないと、中小企業に不利になるので、そういう点も勘案して、是非、全体で中立、公正になるような見直しをやっていきたいと思っています。

今野委員

先ほど伏見課長の御説明がありましたが、法人課税を見直すに当たっては、新規産業、新規企業の振興ということを視座に入れながら、課税ベースの見直し、拡大をし、税率を引き下げるというお話でした。それで、御説明いただいた資料に課税ベースの見直しの項目が具体的に書かれているのですが、こうした課税ベースが見直され拡大されることによって、どのように新規産業、新規企業が振興されることにつながるのか。その因果関係、波及効果についてもう少し御説明いただきたいと思います。

伏見税制第一課長

これはいろいろな観点があろうと思いますし、適当なお答えになるかどうかわかりませんが、例えば、引当金の中でも退職給与引当金というような制度があります。新規企業の振興ということで考えると、当面はあまり人を雇えませんので、仮に利益が上がっても、引当金という形で利益を留保するというのはなかなか難しい。むしろ税率が、仮に今の水準よりも低ければ、当然、一定の同じ利益水準であれば、税率が低い分だけ残る留保所得が増えてまいります。そういった観点から、むしろそういう方向でやってくれないかというようなお話を伺ったことがあります。

これまでの制度というのは、そういう意味で、かつてのものが初めから中立的でなかったということではないと思いますが、現状のいろいろな産業構造、経済構造が転換している姿から考えていくと、必ずしもフィットしてこなくなっている。そういった観点からすべてのこういう項目を見てまいりますと、結果的に特定の事業を優遇するというのではないかもしれませんが、より新規産業、新規企業も活動しやすくなるような改正が可能になってくるのではないかという意識です。

堺屋委員

2点申し上げたいと思います。

今の法人課税ですが、プラスマイナスゼロのベースでやると、結局、法人の負担は変わらないわけで、あまり国際競争力の点では有利にならないのではないかという気がします。問題は、法人税のあるべき姿というのと、それから財政事情というのとを切り離して考えなければいけないと思います。

というのは、財政事情は支出を削るという方向が大事でして、これだけ要るから、これだけ取るのだ、だから法人税はこうだ、という言い方だけではいけないので、法人税のあるべき姿と財政事情と両方出しまして、その間でどういう取り持ちをするかというような発想をしないと、はじめから財政事情がこうだから、イコールフッティングで取るんだという発想では、これは改善しないと思います。

それから、公益法人、宗教等、非課税になっている法人の増収についても考えていただいて、理想的な法人税の取り方を考えていただきたいと思います。課税ベースの拡大というのが、この内部にとどまる限り、それほど大きな税率の引下げにはならないのではないかという気がするので、是非そういった観点からの問題を提起しておきたいと思います。

もう一つは、全然違うことですが、先程の説明資料(資料1)に、当面の課題として、金融関係税制と法人課税改革が書いてあり、あともう一つは年金課税というのが書いてあります。現在の景気、社会状況から見て、やはり土地税制というのは大変重要だと思います。秋の改正に合わせて、土地税制問題を取り上げる小委員会か懇談会かをおつくりいただいて、検討していただければありがたいと思います。

薄井主税局長

土地税制については、御指摘のように、土地問題、あるいは土地をめぐる状況が大きく変わってきているし、また、経済の状況との関係で、土地の動向が非常に今注目されてきています。そういう新しい観点から、私ども土地税制についても議論をしていきたいと思っています。

その新しい観点を一言だけ申し上げると、今までは土地税制というと、地価税などを下げろというだけの話でしたが、そういうアプローチではなく、不動産を証券化するとか、小口化するとか、そういうスキームをつくって土地が動くようにする、そういうスキームの中で、税制をどうすれば手助けができるか、そういうアプローチならば新しい意味があるのかと思います。単純に減税すればいいという話では、あまり議論が深まらないような気がします。もうちょっといろいろな手立てを考えていく。それも税だけではなくて、総合的な土地対策を考えることが必要になってきていると思いますので、是非とも税調で御議論いただきたいと思っています。

中西委員

法人税の問題ですが、これは昨年1年かけて大いに議論をしました。大蔵当局は、我々産業人の主張に対して、課税ベースを広げることによって、レベニュー・ニュートラルで法人税率を下げようという基本的なお考えだったわけです。これに対して我々は実質減税を求め続けて、去年、延長戦に入って、今年いよいよ秋の陣ということになりますが、あれだけ1年議論をし尽くして、一番大きなポイントは、いま堺屋さんも言われたことと趣旨が似ていますが、資料(資料7「法人課税」)1ぺージの法人課税の見直し、これは根っこの議論になりますが、要するに、減税を論じる場合に、当然財源という問題が一番大きな問題であり、その選択肢が資料の右側に4つ書いてあります。

1つは課税ベースの拡大・適正化、第2が税体系の見直し、3つ目が歳出削減、4つ目が赤字公債の発行ということになっていますが、我々は昨年も課税ベースの拡大・適正化は別に反対する気持ちはなかったわけで、これはこれで非常に陳腐化している租特なんかは、大いに取り外していくということがあっていいと思いますし、引当金もある程度それに該当すると思います。

問題は、歳出削減、赤字公債発行ということですが、私は大蔵省の基本的な考え方は、要するに歳出と歳入の単年度主義で、ここのところの基本スタンスを大蔵省が持ち続けている限り、我々産業界が主張していることとは基本的に平行線、要するにどうしてもかみ合わない問題点があるのではないかと思います。

産業界を指導している通産省の次官の声明では、法人税は実質10%ほど下げるべしという意見が出ています。これは、一気に10%なんか下げられるはずもないわけで、やはり我々も通産省の考え方も、ここに4つ書いてある選択肢の最後のところに、経済の活性化によって、単年度ではなくて、多年度にわたって、経済が活性化して、そのことによって税収が増えてくるということで辻褄を合わすという発想があると思います。

英国の政権も、減税することによって企業収益を上げるということで一気に30何%まで下げています。これは税率の引下げによって、企業コストの低減と企業収益の向上を実現するために、52%から35%まで下げたという論旨ですね。

ですから、その基本的な考え方で、やはりボーダーレス経済ですから、これをやっていただかないと、今まさに企業が国を選ぶという時代ですが、もう一つ言うと、資本が企業を選ぶ時代ですから、投資も全然入ってこなくなる。企業は逃げ出すということになって、これはかつて英国で何十年前に実験をやって、大変な失敗をやらかしているので、そこのところの基本スタンスを主税当局がどうお考えになるのか。やはり大蔵省として国家の財政をあずかっている以上は、当然、歳入と歳出を踏まえてお考えになるのはわかりますが、問題はそれを単年にとらえるところに、どうも硬直化した思考で問題の解決が進まない。今年の議論も、そこのところを基本的にどう考えるのかということを、きちっと攻める側と守る側で腹を割って話さない限り、同じ平行線で行き続けるのではなかろうか。この辺を是非何らかの議論の機会をお願いしたいと思います。

森下委員

この法人税の問題については、私は2点どうしても今回の議論で成案にしていただきたいと思います。1つは、今、日本の国が国際化という問題に少し遅れているのではないかと思うのです。各企業はほとんど今グローバルに展開をしています。そういう意味では、この税制という問題も、グローバル化という視点に立てば、大きな、グローバル・スタンダードな法人税、または地方税を含めた問題にどうしても取り組んでいかなければならない。その場合に、先ほどの酒税の税率の引下げ引上げではありませんが、ステップを踏んで、しかし必ずこの時点においてはこのようにしていくというタイムスケジュールを明確にした税制の改革をこの際やるべきであろうと思います。

もう1点は、財政が今難しい時期なので、課税ベースの適正化ということも、ある意味でグローバルに見ていって、この方が正しいという場合であれば、課税ベースの適正化の方もグローバル・スタンダードにあわせていくということを、是非タイムスケジュールを明確にして実施しなければいけない。昨年度見送られているので、是非とも本年は、21世紀に間に合うようなグローバル・スタンダードな税制をまとめていただきたいということを、意見として申し上げます。

河野特別委員

私は、7月のときにも申し上げたが、法人税は、今井さんが言われたように、国税と地方税セットで議論すべきテーマです。国税の方については、私はやはり基本は、課税ベースの適正化ということをベースにどこまで膨らみができるかどうかということだと思っていますから、それはこれからの議論に任せるとして、私が言いたいのは地方税の話です。

これにはいろいろな経過があるが、例えば6年の我々の答申の中で、事業税について、地方消費税が創設されたから、もう必要がないのではないかという議論がありますが、それはそうではなくて、消費税と地方消費税とは性格も違うし、事業に対する応益課税としての事業税の性格だとか、都道府県の税収の安定的な確保―これはバブルの最中と今とでは全く乱高下したわけですから、これで県は大変苦しんでいるわけです。それから、赤字法人に対する課税の適正化もかねがね言われている話です―の視点から、引き続き検討することがいいというふうに書きました。
それから、そのメンバーの一人で、今日は諸井さんが来ていませんが、7月8日だったか、総理に分権論で勧告を出したときに、これについても言及しています。実は我々は同じような言葉を使っています。どう言ったかと言うと、地方分権の観点から、偏在性が少ない、あわせて税収が安定している、そういう地方税体系の構築を考えたらどうか、ということを総理に言ったのです。総理はそれを守る責任があるのです。尊重すべきという法の建前になっているので……。この2つの流れから見て、いよいよ税調で地方税について本格的な議論をやる時期が来た。自治省も地方自治団体ももう避けて通れない、と私は思うのです。6年のときの答申にいろいろ書いてあって、基本は全く変わりませんが、あのときに「引き続き検討」なのです。引き続き検討ということは、官庁用語で言えば、この話は10年でも20年でも引っ張るという話です。しかし、年末の我々の答申の中には、最低限、こんな甘い表現ではダメだと。言葉はいろいろあるから、使い分けだと思いますが、そういう表現を組み込むような方向で議論をして、その上で、来年度しかるべき時期から本格的な検討に入るべきだと私は思います。

そこで、たった一つ今井さんと意見が違うのは、法人事業税の減税ということは大テーマであって、基本的に大賛成なんですが、問題は方法論なんです。どこで財源を生み出すかという議論で、今、経団連と商工会議所で完全に意見が割れていますが、今必要な議論の立て方は、法人税と事業税を一体で考える、地方の税金については、基本的にそれをより安定した方向に向けて議論を始める、ということを確認することが必要なのであって、地方において、特定のやり方について固執する、それが前提だから議論にならないということを言い出したら、この議論は空中分解するんです。このことをわかっているのは財界なんです。全部わかっている話です。

だから、私が言いたいのは、その方向をお互い確認することが第一、積極的に来年やることが第二、あわせてどこをどうするかという具体論については、それぞれスタートラインで意見があっていいのですが、固執するということをやったら、この議論は全く空中分解する。全然進まない。そこのところを関係者は全部留意してもらいたい。この2点を申し上げます。

森田委員

法人税を減税すべきだというそもそもの論議に対して、大体みんな一致していると思います。別にイギリスだとかそういうところを挙げるだけではなくて、例えば、スウェーデンとかフィンランドとかノルウェーなどの北欧の国も、50%ぐらいだったのが、今は25%から28%ぐらい、大幅に下げている。世界的な一つの現状をやはり日本もちゃんと見なければダメだということは、もう論を待たないと思います。

だけど、現状論というか、今年、一体どういうことになるのかというと、まず考えられるのは、円安で貿易黒字がものすごく増加している。アメリカが矢継ぎ早に、日本の内需追求の約束はどうなったのかと言ってきています。それは財政にどういうふうにはね返ってくるかというと、公共事業拡大要請というよりも、むしろ所得税減税をしろという要求になってくると思うのです。その点が、多分、将来的にこの問題と噛み合わなくなる部分になるおそれがある。

それから、景気を見ると、やはりかなり落ちてきている。先ほど地方税の税収について、ちょっと懸念の声が出ましたが、成長率も落ちれば、当然税収も見込みより落ちてくると思うのです。日銀の短観だとかそういうものを見ても、大企業の製造業は先行きの見通しは非常に明るいが、その他の8割以上の中小企業(非製造業を含む)は、あまり見通しはよくないということだと思うのです。そういう意味で、景気の方からの制約が出てくる。

3番目には、「6大改革」の一番中心になっている財政構造改革という方向から、赤字国債の発行を減らして、いろいろな制約の中で一体どこまでできるのかという数字の辻褄合わせになってくると、なかなか出てこない。そもそも日本の経済の活力の源泉である富を生み出す企業を、どうやって活性化するかというものを、どういうふうに整合性をとらせるか、そういう問題になってくると思います。そういう意味で、かなり細かい戦略を立てないと、法人税減税は賛成だけれども、できないということに結果としてなるおそれが多分にあるのではないかと思うので、その点を是非留意していただきたいと思います。

小長委員

先ほど河野委員、中西委員の言われたことに基本的に賛成で、私も昨年来ずっと申し上げていることですが、単年度ベースのレベニュー・ニュートラルではなくて、中期的視点に立ったレベニュー・ニュートラルという議論を是非深めていただきたい。おそらく会長があちこちで言われていることも、ほぼそれに沿っているのではないかと私は思っているのですが、これを是非お願いをしたい。

それから、河野さんが強調された地方法人税も入れた議論というのを、是非今回特に議論を深めていただきたい。その2点だけ申し上げておきます。

平田委員

今のお話の中で、特に私ども実務家の目で申し上げたいことは、中小企業、零細企業の景況は、本当によくないのです。産業界の先生方が皆さん言われるように、一部上場製造企業は好況かもしれませんが、大半の事業資本は非常に疲弊しているのが事実で、これは日本の国の将来を決する話かもしれませんが、減税をして、経済の活力を取り戻すというようなはっきりした方向のほうが、私はいいと思います。

しかしながら、当然、長年にわたって課税ベースの問題等もやっているから、ゼロベースからはじまって、もちろんニュートラルな方法が一番いいことはわかっていますが、そういっことでは今救い得ないほど事業資本は大変疲弊しているのではないか。ですから、減税をするすると言っているうちに、欠損法人がますます増える、赤字法人がますます増えることになりかねない、と私は大変懸念します。その辺、課税ベースを適正に見ることも必要かと思いますが、何か大きな、日本の国の経済をどういう形で活力を持たせるかという方向の議論をすべきで、そういう視点がないと、法人税減税問題は正面から取り組めないと思います。

柳島特別委員

先ほど中西委員が言われたことですが、例の金融課税にしても、法人税にしても、結局、対外直投が何で日本に入ってこないかという話だろうと思うのです。アメリカが活性化したのも、結局、外資が入ってきて、今でもアメリカは大体五分五分で、出ていくのが五分で、入ってくるのが五分ぐらいです。日本は13対1とか、20対1とか、水準においては台湾の50分の1、アメリカの1,000分の1ということで、金融も資本市場も活性化させなければ、これから日本だけでは生きていけない時代になると思います。資金が逃げていく心配ばかりしていて、どうやったら外国の企業が入ってくるかという、そういうことの場合の金融税制とか資本市場のあり方、法人課税のあり方を検討すべきだ。今盛んにグローバル・スタンダードというのが言われているのですが、もっと入れる方策を考えて、それで法人税、金融課税、その他を考えるべきだと。私はもっと資本を呼び込む方の方策を考えたらどうかという意見です。

松本(作)委員

今までの議論自体の方向は、大体私も賛成ですが、減税を要求する法人側の方々が、法人税率を下げることによって、どれだけ国際競争力が強まるのかとか、それによって経済がどの程度変わってくるのかということについて、もう少し説明をしていただかないと、国民全般として、法人税だけを特に今やらなければならないということの意味が、まだわかりにくい点があるのではないか。法人税を下げることがどれだけの経済的な影響を持つのかということについては、もう少し明確に話していただく必要がどうしてもあるのではないか。

第2点は、先ほど森田さんも言われた点ですが、法人税だけ下げていくということになれば、今までも言われているような法人成りという傾向だけになってしまいますし、個人の所得税の非常に高いところがまだ残っていることに手をつけないで、法人税だけということは、やはり税制上としても問題が残るということがあると思うので、この法人税の問題が直接ではありませんが、所得税の税制改正なり減税なりに配慮をするという必要があるのではないか。

それから、第3点は、先ほどの課税ベースの拡大という話ですが、課税ベースの拡大は、会社のいわゆる経理の状態を詳細に今後把握していく面が出てくるのではないか、ということを考えてみなければならないと思います。また、別の話ですけれども、先ほどの金融課税小委員会などで、こういう国際的な資金の動きというようなものをつかまえるとすれば、金融取引と徴税執行というようなものが、非常に関連が出てくるという議論もあります。やはり、こうした制度を変えるということと、徴税の体制というものとが関連を持ってくるということを、税調の議論の中でも組み込んで、いわゆる徴税体制というもの自体も、やはり税制上の大事な課題であると思います。その辺を主張しておきたいと思います。

津田委員

今井さんから、事業活動と地方行政の関係について、だんだん減っているのではないかというようなお話があったが、具体的に申すと、例えば、今地方行政の最大の課題は、ごみ処理がかなり大きな問題です。ごみ処理を見ても、大体9割が産廃です。産廃は事業者が処理するということですが、御承知のとおり、豊島や何かの問題等あるように、最終的には地方団体というものが対応しなければならない部分というのが非常に大きいことも御理解いただきたいと思います。大体ごみの9割が産廃で、残りの1割が生活廃棄物ということですが、生活廃棄物も実は3分の2ぐらいのものは、ペットボトルその他の容器で、やはり事業活動と地方行政というのは、かなりな面で絡まっております。下水道なども両方に絡む問題ですが、事業活動と地方行政の縁がだんだん薄れてきておるのではないかというようなことは、実態的に見ると、いろいろ議論があるこではないか。この点も御理解いただきたいと思います。

それから、もう1点ですが、今、松本さんが言われたように、所得課税の最高税率と法人課税の問題は、ある程度リンクして考えていかなければならないのではないか。特に、所得課税の最高税率引下げの問題は、一般的な所得減税の中で、低所得階層あるいは中堅所得階層との絡みもあって、なかなか実現できない。今度の議論で法人の課税ベースその他の財源等がある場合には、所得課税の最高税率の見直しということも考えなければ、実際面としてはなかなか進まないのではないか。この点もあわせて御審議いただきたいと考えています。

松本(和)委員

地方の立場で申し上げたいのですが、国民の理解ということで、先ほど津田先生などからお話がありましたが、所得税減税が打ち切られ、消費税も上がりました。町村の場合、やはり法人住民税、また県の場合では事業税関係で、やはり恩恵を受けています。それで、法人税ばかり下げるということであれば、我々ちょっと抵抗があり、国民的理解が薄いのではないかというような気がいたします。そういうことで、下げるならやはり課税ベースの拡大関係で考えていただかないと、所得税問題、また消費税問題で、国民的理解がなかなか得られないのではないか。

また、先ほどごみの問題が出てきたが、今ダイオキシン問題で、ごみの問題が非常に地方では問題になっています。この投資も大分必要です。それから、下水道も何とか早くやらなければいけないということで、前向きで今取り組んでいます。そういうことを考えると、やはり地方において、日本の場合が49.98%で高いようだけれども、行政サービスの関係で、大分ほかの国と違ったサービス関係も多いのではないかというような、他の国はよくわかりませんですが、そういう点から、やはり総合的にいろいろ検討を願いたいと思います。

竹内委員

課税ベースの拡大2~1%程度の引下げの話と、法人税の減税の幅は10%下げたいという話がどうも噛み合わない。この幅をどうやって埋めるかというシナリオが非常に不明確なのが1つ。

それから、国際競争力がないからという考え方つまり今まで日本では、いろいろな減価償却、引当金等を目一杯使うことによって、国際競争力を維持してきた。他方、ヨーロッパ諸国の考え方は、そういう考え方よりは、法人の負担をなるべく軽くするということで、一部間接税への移行、それから課税ベースの拡大という2つの方向で、長期的に調整をしてきている。もし日本がそういう方向であれば、10%の引下げ幅というのは、消費税にするとどのくらいのことになるのか、あるいは課税ベースでどのくらいなのか、その辺のシナリオづくりというものを、きちっとしていただければいいのではないかと思います。

それから、中期的シナリオというのは、非常に不明確な計算が入るので、日本がこれから高度成長のような高い成長率になるということも考えられないし、法人税の引下げによって、それが内部留保の拡大につながる、あるいは設備投資につながるということは不明です。設備投資の必要額というのはマーケットによって決まるものであって、内部留保の額によって決まるものではありません。それが、現実に日本の経済成長にどのくらいの影響力があるかということについては、企業努力も含めて幾つかのシナリオが少なくとも必要ではないか。その中で現実的なシナリオの中から可能な線を探るという作業をきちっとやっていかないといけない。まず1年目でどのくらいのことが可能なのか、目標値から現実の数字にもう少し落としたところで議論をする必要があると思います。

和田委員

法人税の税率を下げる、あるいは減税ということは、国際競争力をつけて活性化して、景気がよくなれば、一般の生活者みんなの生活がよくなるというつながりで、私たちにはよく話があるのですが、正直なところ、今までずっとそういう方向で来て、それ以外の金利の面もあるし、本当の生活者の視点で見ると、『これからの税制を考える』の中で、高齢者が一律に社会的弱者と見ていいのかどうかという話もあり、私はこれを一律に見る必要はないと思います。高齢者に限らず、社会的弱者に対するいろいろな対応というのが、あまりにないままに税制だけではなくて、9月1日からの医療制度の問題とかいろいろな問題を含めて、私たちの周りで出てくるのは、悲鳴に近いような経験なり、お医者さまに行く回数を減らしていかざるを得ないとか、余分な医療を減らすというのは当然のことですがそういう話を見聞きしているとこれは税調だけで議論する問題ではありませんが私の周りからは、そういう声や経験が非常にたくさん出ているので、その辺の配慮というか対応というのも、きちんと考えていただきたい。先を考えれば、プラスになりますよ、ということだけでは、対応し切れない個々の人の問題があるということだけ申し上げておきたいと思います。

加藤会長

これで今日の審議は終わりたいと思っていますが、今日の法人税の問題について一つだけ申し上げておきます。「法人税」と言わないで「法人課税」と言っているのは、地方税も含めた意味です。その法人課税の引下げをやろうということは、前から私たちの提案ですが、それがいろいろな意味の問題を考えた上でやっていかないと、非常に危険であるという感じがします。その辺のところは、これから来年度改正をめぐっての煮詰まった議論が出ると思うので、その時また御議論をいただきたいと思っています。

私の考えでは、どのくらい下げていけることができるのかということについての、ある程度のスケジュールというか、タイムスケジュールみたいなものまでもつくっていかないといけないのではないかというような気がしていますので、その辺のところもこれから検討していきたいと思っています。

それから、法人税の問題に並んで、もう一つ別な問題があります。

皆さま方御承知の行政改革会議でもって中間報告が出て、これは私たちと直接関係がないのですが、国税庁のあり方について、「徴税における中立性、公正性の確保の必要性」とか「税制の簡素化」、あるいは「地方税徴収機構との一元化」という観点から、国税庁を大蔵省から分離すべきであるといった考え方も述べられています。これについては、いろいろな立場からの御意見があるが、私は基本的には、「徴税における中立性とか公正性の確保」ということは、当然必要であるし、それから「税制の簡素化」も私たちが望んでいるところでもあります。「地方税徴収機構との一元化」ができれば、これもまた悪いことではありません。

そういうことを考えて、それをやっていくためにはどうすればいいのかということについては、果たして分離をしてしまってやれるかどうか、あるいはそうではないのか、などということを、全然答えを持たずに税制調査会として直接の問題ではありませんが税制調査会でも真剣に討議をしていきたいと思っているので、またそのときには御意見をいろいろといただきたいと思っています。

〔閉会〕