地方税
地方分権関係
- 地方が責任を持ち、行政改革をすることが自らのメリットとなるような税制改革、つまり地方の税に関する自主権を大きく認めると同時に、自己責任に立てるような改革を考えていきたい。
- 地方分権を進めるにあたって、歳出の構造、例えば補助金や地方交付税の問題が議論となっているが、これとあわせて、地方税制についても歳入と歳出の組み合わせといった点から議論していくことが大変重要である。
- 地方税制の問題は、どちらかというと国税に隠れて本格的な議論をしてこなかったというのが実態であり、地方分権と絡んで法人事業税の問題等も含めて抜本的に大きなウエイトをもって議論していきたい。
- 地方分権の中での税制のあり方、地方自治体の課税自主権や国税から地方税への移管が重要な論点になると思う。
- 地方分権のために地方税財源を充実確保する方向は必要であるが、歳入総額に占める地方税の割合は地方自治体毎に非常に差があり、地方を全部一括りにして国との関係を考えるのではなく、地方自治体毎の状況に応じて考えていかなければならない。こうしたことから、地方税と国庫補助負担金、地方交付税とのあり方についても検討を加える必要がある。
- まず第一に地方分権が先にあるのではなく、あるべき地方自治が先になければならず、どのような地方自治をこれから目指すのか、少子化時代、グローバル化時代、ソフト化時代を考えると地方自治を変えなければならず、そういう誘導性を税制に持たせる必要がある。
- 地方税財源の充実確保による歳入増は歳出抑制と関連づけて議論しないと国民の理解は得られず、歳出削減を最優先的に行ったうえではじめて地方税体系の構築の議論ができるわけである。また、その場合でも地方税と地方交付税のあり方の検討や税源配分を考えるときは国の深刻な財政状況も念頭に置く必要がある。
- 税収は国税の2に対して地方税は1、歳出は国の1に対して地方は2という形になっているが、国庫補助金を縮減し税源移譲を進めていけば歳出が即税収という形になり望ましいと思う。
- 歳出と歳入が一致することは理想であるが、税源に偏在がありこれを一致させることは無理である。そこは地方交付税なり国庫支出金で調整されている現在の姿が現実的ではないか。
- 法人や個人に対する税負担を考える場合には、国税と地方税をどう配分するかという問題があり、そういう意味でも国税から地方税への移譲というものを十分検討する必要がある。その場合の各地方自治体ごとの税源の偏在の問題は、地方税と地方交付税をうまく組み合わせるという点も含めて、税調で議論したい。
- 税源移譲の問題については、昭和30年代、40年代とは経済情勢、財政状況が全く違うわけで、移譲するとすればどちらの方向に移譲されるべきかというような色々な意見もあり、分権委の勧告でまとめられている考え方が現実的である。
- 法人には選挙権がないため、自由に課税を広げていく場合に焦点があてられやすいが、受益と負担の関連が端的に選挙権にも反映するという面があるとすれば、個人市町村民税の制限税率の撤廃という個人を中心に課税自主権を尊重拡大する打ち出しは適切であると思う。
- 将来的には課税自主権ですべての行政事務がまかなえるのが理想であるが、地方公共団体の規模のあり方の問題としてもっと集約するとか、都道府県段階でのブロック化、あるいは市町村を減らし大規模なものにすることにより、課税自主権を実現できるような努力をすることも必要ではないか。
- 国と地方の税源配分の問題については、そのための税調を別に作らなければならないほどの大問題であり、理念の方向としてそういう議論をすることは必要であるが、長期的な話である。
地方の法人課税
- 法人課税の見直しは、法人税だけでなくて地方の法人住民税、あるいは法人事業税も含めて議論しなければならない問題である。
- 法人事業税は地方税の話、法人税は国税の話というのではなく、両方相まって議論しないと現実的な結論は出てこない。法人事業税については、外形標準などの色々な議論があるが、少なくとも税調のテーブルに乗せる必要がある。
- 法人事業税は不安定な財源となっており、また、地方税は大体応益と考えるが所得課税となっている。問題は、どのような形で法人課税全体の問題の中で議論するかということであり、法人税とセットで考える性格のものである。
- 地方の法人課税は二重課税という議論があり、地方の行政サービスへの対価ということになればやはり消費型付加価値税か、あるいは所得型付加価値税かの外形標準に頼らざるを得ないが、その議論の前提として地方行革に踏み込む必要がある。
- 法人の実効税率の実質的引き下げを掲げながら国と地方を通じた幅広い法人課税の改革、特に法人事業税の減税の問題にも手をつけていかなければならない。
その他
- 今の市町村税の体系は、重厚長大産業を誘致することに非常に向いているが、ソフト産業の振興には冷淡な仕組みとなっている。ソフト化時代に相応しい市町村税の収入財源を明確にする必要がある。
- 所得税で源泉分離課税を選択した場合の株式譲渡益は個人住民税が課されないが、課税の公平性、あるいは地方分権を進めるにあたっての地方税源の確保の観点から個人住民税を課税する方向で検討する必要がある。今後、金融システム改革によりいろいろな金融商品が出てくるが、これらについて個人住民税の課税が適正に行われるように検討していきたい。