総論
- 「小さな政府」「大きな政府」の選択については、「行財政改革」が言われているように「小さな政府」を選択していく方向に向いている。このことは、強制的に徴収される税や社会保険料をできるだけ減らすために、負担能力のあるものが適切な自己負担をするということが基本にあるのではないか。
- 財政の抜本改革、つまり支出をまず減らすというのは疑いのない方向で、その上で税の問題を考えていく場合、「公平中立簡素」という視点でやらなければならない。
- 税の原則で「公平中立簡素」があるが、グローバル化が進み高齢化が進む社会の中で「活力」というものを大きな要素として税のあり方を考える必要がある。
- ここ10年来やっている「直間比率の是正」は、今後も大きなターゲットになる。直ぐには着手できないが、それに沿った基礎的な作業が必要である。
- 世界の税制の動向は変わってきており、例えば所得税について従来型の包括的所得税とか支出税のような発想とは別に、所得を労働所得と資産性所得とに分けて片方は累進課税で片方はフラットでいいのではないかという学説も出てきている。法人税、消費税、個別消費税についても、いろんな議論が出てきている。そういうものを踏まえつつ、直間比率の見直しについて理論的な「固め」をすべきではないか。
- 平等とは何かということをよく考えなければならないのではないか。日本はどちらかというと悪平等であったわけだが、アメリカはこれとは対極的に機会は平等で後は自由の討議場に全部投げ込んでしまう。この中間みたいな道が見つかるかどうかといったことについて、税調で議論したら良いと思う。
- 税というのは結局所得再配分であるが、この政策手段がどのくらい有効であるかを根本的な議論として考えていきたいと思う。
- 電子マネーの議論をすると「税金が取れなくなる」との指摘を受けるが、本当に電子マネーで崩壊してしまうのかどうか、この問題に真剣に取り組まなければいけない。
- 国際化というと、直間比率の是正とか、法人税の実質減税、流通税の廃止といったイメージで語られるが、国際化とはそんな生易しい問題ではない。仮に日本の税制がローカルスタンダード的であるならグローバルスタンダードに変えるという考え方もあろう。そうなると日本の税制を根底から引っ繰り返すようなことが必要になる。
- 税制のグローバルスタンダードを単に法人税率の引下げや直間比率の是正としてとらえるのはあまりにも浅薄ではないか。法人税改革の問題は、会計制度における情報開示や時価主義の国際的な流れとも相当絡む問題であり、税務行政や会計制度を見直すということまで踏み込む可能性がある。
- 電子会計になると、把握しにくい問題がたくさん出てきて、個人でも累進課税が大きいこと等を理由に所得を国際的に分散させることが可能になる。これを踏まえると、歳入から歳出を抑えていくというような考え方にならざるを得なくなってくる。
- グローバル化とソフト化が進むと税金は取りにくくなる。どういう税金が確実に取れるのか、地方税で取れるものと国税で取れるものとを明確にしなければならない。20年後の日本の税制を考えると、消費支出とか固定資産とか明確に把握できる分野に傾斜せざるをえない。
- 税金のGNPに対する水準を定め、これを超える部分は社会保険でどうみるのか議論をして、これ以上税金をとれないという水準を明確にすべきである。
- 長期的には、確実に把握できる税目と、今までのようには把握できない税目とが、技術的、産業的に決まってくる。このような長期的な前提をもって議論する必要がある。
- 税率だけを議論していても、現実には介護保険も導入されるといったように他のところでパーセンテージが上がっていくようなケースもあり、最適な規模というものがどうなのか、足元から変わっていくトレンドをキチッとみなければならない。
- 「直間比率の是正」について、どのくらいであれば皆が納得できて妥当な線なのか、本当に出せるのか、といったことまで含めてキチンと考えていかなければいけない。徹底した行財政の簡素化なり効率化については、厳しく見てどんどん注文をつけていかないと納得できる状況にはなっていかない。