法人課税
- 法人の税負担は実質的に高いという意見と、課税ベースを考えると必ずしも高くはないという意見の両論がある。結論が出ないまま次の議論に進むことはあり得ないのではないか。
- 法人課税の改正は、過去の総会で示した「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という方向で既に作業が進められており、今後ともこの方向を堅持しなければならない。
- 実効性のある法人課税の税率引下げが必要である。財源の問題もあって短期的には困難であり、当面はレベニュー・ニュートラルでいかざるを得ないが、中長期的には直間比率の是正にまで踏み込んで議論せざるを得ない。
- 税制のループホールに対する誘因を作らないために、思い切って一律に税の優遇措置を無くしてはどうか。その上で課税ベースを広げ、その次の段階で法人課税の税率引下げについて議論すればよいのではないか。
- 法人課税の税率よりも個人所得課税の最高税率の方が高いことが、経理基準の乱れを引き起こす一因となっている。法人課税のネット減税を行うと、これに拍車をかけることになる。現在の財政構造を考えるとネット減税は困難である。仮にやるとすれば優先順位は個人所得課税の方にあるのではないか。
- 法人課税については、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという基本的方向の下で、まずは現在の経済構造や経理基準について理論的な検討を行い、純粋にそのあり方を議論しなければならない。税負担水準の引下げの議論は二の次ではないか。
- 法人課税については課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという基本的方向に沿って検討すべきである。消費税の税率を5%に引き上げながら法人課税のネット減税を行うのは、国民の納得を得られないのではないか。
- レベニュー・ニュートラルであっても、既存の企業にも税率引下げの効果は及ぶものである。その恩恵の度合いは新規の企業の方が大きいと考えられるが、それは望ましい方向ではないか。
- 法人税等の見直しについては、できるものは年度改正で行い、片づかないものは引き続き検討していくことがよい。
- 公認会計士協会が課税ベース拡大の問題について意見をまとめて発表しているが、その中で税率の引下げや企業会計の尊重の必要性を指摘している。
- 引当金は、商法・企業会計の基準に従って各企業が平穏かつ公然と行ってきたものである。見直しは企業財務等の関係も考えて、慎重に議論してもらいたい。
- 企業が誰のものかという議論がある。本来なら株主のものであるはずだが、商法は債権者保護、証券取引法は投資家保護の観点が強い。法人課税小委員会報告は、これまで軽視されてきた株主の立場あるいは国の立場も考えて、適切な指針であると思う。
- 退職給与引当金は、サラリーマンの生活設計に係わることから、企業経営者の問題ではなく、従業員、労働組合、主婦の問題であり、税制だけで処理するわけにはいかない。
- 貸倒引当金の例をとると、銀行の貸倒れのように予想もつかないことも生じるので、税制は、その時々の状況で頻繁に変更するのではなく、一律が大事ではないか。
- 大企業の引当金残高が大きいのは大量の雇用を長期にわたって安定的に継続してきた結果であり、決して優遇されている訳ではない。最近ではむしろサービス産業やソフトウェア産業の方が雇用の伸びに伴って引当金残高を増やしており、こうした現状も十分勘案願いたい。
- いきすぎた福利厚生費の否定には賛成だが、すべてを否定することには問題がある。「会社型人間」がよくないという認識は、既に古い考えになってきているのではないか。
- 構造改革の視点から、長い間の企業慣行を守らせた税制上の様々な取決めが見直される時が来ているのではないか。過去の慣行や伝統的な絆であるから存続を認めるという議論もあるが、既得権化した様々な措置は、法人課税の抜本改革の中で見直していくのがよい。
- 経済が沈滞して企業の開業率が落ち込んでおり、大企業の分社化による新分野への挑戦を促進していかなければならない。その場合、連結納税制度は非常に有効であり、結果として雇用の増大や経済成長にもプラスになることを期待したい。
- 連結納税制度については、小委員会でも作って研究するような姿勢を打ち出してもらいたい。
- 連結納税制度の導入を求める理由の一つとして分社化の問題が挙げられているが、分社化した場合、親会社が出向職員の人件費を分担したり、低利で資金を貸し付けるなどいろいろなことが行われており、現実的には概ね解決されている面もあるのではないか。
- 親会社も子会社も上場してそれぞれが社会的評価を受けたり、問題のある部署を子会社に移しかえて親会社を身ぎれいにするといったことが行われており、日本の社会の意識は企業をグループとして捉えるまでには至っていないのではないか。
- 連結納税制度を導入すると特定の企業グループの税金が安くなり、特定の親会社を持っていない企業との間における税収の中立性を欠くことになる。また、大幅な減収になるというような問題があり、慎重な検討を要する。
- 連結納税と一口に言っても、現在要望のあるのは、関係会社それぞれの赤字と黒字を相殺するだけのものである。アメリカ型の連結納税であれば議論をしたらよいと考えるが、それには前提条件や環境が満ちていないのではないか。
- ボーダーレス化や空洞化が問題となっており、先進国間の国際的な調和という視点を重視して検討を進めることが重要ではないか。
- 国際化の進展する中で、企業の活性化の問題や国内に対する投資の活性化の問題を視点に入れて考えていただきたい。
- 空洞化の点に関して、企業が海外展開する理由は、税金の負担が大きいためというよりは、市場の魅力や労働力といった要素の方が大きいのではないか。
- 法人課税の中期的な展望を示す場合には、表面税率も実効税率も高いのでこれを引き下げていくということを明示する必要があるのではないか。
- 産業構造、世界経済の大転換期にあたり、法人税制は、従来型の装置産業中心主義の税制でいくのかソフト・人材育成産業中心の税制とするのかという基本的な理念を明確にしてほしい。
- 法人課税の税率を引き下げた場合、個人所得課税との格差が益々広がり、法人成りといった傾向を助長することになる。法人課税の検討を行う際は、個人所得課税と関連付けて考えなければならない。
- 法人課税の改革について具体的な提案を行うためには、法人課税小委員会の報告とは別に、総会における議論を要する。
- 税務当局と納税者の解釈の相違で修正申告が提出されたという新聞記事をみるが、納税の基準は誰が見ても同じであることが重要である。そのためには、業種別に違う制度はやめて、簡素・一律が求められる。
- 税制にも、自治体が認めた団体への寄附金は国も認めるといったような、地方分権の発想をいれてもよいのではないか。