総論

  • 企業や個人の活力を維持するためには、公平の原則と若干矛盾してでも税制に経済政策を取り入れざるを得ない。日本経済の構造変化に対応して、活力や国際基準といった視点を取り入れることが重要であり、活力と公平とのバランスをどう取るか議論する必要がある。
  • 活力と中立は相反するのか両立するのかという点について議論は必要であるが、税制が中立なほど、企業は皆同じ土俵で戦え、企業活力を発揮できるので、中立と企業活力は両立するものと考える。
  • グローバル化という視点から、同じようなレベルの国は同じような税制を持った方がよいという意味で、公平、中立、簡素という租税原則に国際化も加えてよいのではないか。
  • 国際化、情報化の進展に伴い、電子商取引やクロスボーダー取引が拡大しているが、これらは従来の所得、消費、資産といった税制の枠組みでは律しきれない面があり、税制がどのように対応していくべきか中長期的に検討する必要がある。
  • 今後、経済構造改革を進める上で、事業環境、投資環境の整備という観点から、経済政策の中でも大きな柱である税制の基本問題について、時間をかけて議論してはどうか。
  • 財政再建は大きな課題だが、これだけに注力すると縮小均衡ということにもなりかねない。経済の活性化のためには公平、公正といった税制の原理原則だけでは処理しきれない面があり、産業構造審議会の状況を聴いてもいいのではないか。
  • 日本が生き延びるには変化のスピードが必要であり、スピードのある変革がなされない場合には、産業空洞化が進み、国際的にも取り残されて、世界から相手にされなくなる。
  • 日本経済が現在のようにグローバル化し、企業が立地する国を選ぶ時代においては、ある程度の空洞化は避けられない。一方で産業空洞化も水平的分業を促進するというメリットがあるので、空洞化も程度問題である。
  • 企業の海外展開の理由として、確かに税金の問題もあるが、税金の高低よりも、むしろ市場の魅力や労働力等に関連する要素の方が大きいのではないか。
  • 歳入と歳出のギャップは歳出削減で埋めるべきであり、増税は最後の手段であることを税調としてはっきり打ち出す必要がある。
  • 財政赤字を増税で負担するということになれば、企業の国際競争力に悪影響を与えるだけでなく、一般国民も勤労意欲を失う。
  • 歳出の削減、合理化など行財政全般に渡る思い切った改革が、累次の答申が書かれた時以上に、非常に強く求められている。
  • 社会保障や公共事業にも歳出削減の余地はある。歳出の入替えが不可能ならば一律1割カットということをやればよい。財政赤字を税負担で賄うという考え方には非常に強い抵抗を感じる。
  • これまでの日本の行政の根底には、広くあまねく公平、平等にという哲学が見受けられる。しかし、今後は原則自由化し、自己責任原則を訴え、行政改革や社会保障関係を含む財政支出削減に取り組むべきである。
  • 財政の実情等について情報公開し、実効性のある行政改革を進めるなかで、生きた税制論議をしていきたい。
  • 現行制度の下では、社会保険料が上がると税収が下がり、様々な公的負担を賄うための税収が不足し、結果的に財政構造が益々悪化する可能性がある。このような制度的な問題は、中期的な問題として議論していかなければならない。
  • 高齢化が進展する中で、日本を投資の対象として魅力のある国にしていく必要があり、活性化の問題も念頭に置きつつ税制を議論しなければならない。ただし、単に税金を安くしろというだけでは問題である。
  • 現在のようにこれだけ債務が大きくなると、会社であれば新勘定をつくり、旧勘定は固定し、少なくとも新しい垂れ流しはしない。国や地方も、旧勘定は固定し、その後はキャッシュフローの範囲内で税金を徴収し、歳出を賄うことにすれば、経済社会も元気になるのではないか。
  • コンピュータを利用した会計処理の普及を踏まえて電子データによる帳簿書類の保存を認めるなど、情報化時代に積極的に対応していく必要がある。
  • 行財政改革を進めるのであれば、政府の多くの審議会も改革の対象になるのではないか。