第10回金融小委員会 議事録
平成16年6月8日開催
〇委員
そろそろ時間がまいりましたので、第10回の金融小委員会を開催いたします。
本日は、財務省の副大臣及び政務官にご出席いただいております。よろしくお願いいたします。
本日は、前回の小委員会で申し上げましたように、報告案について議論したいと思います。お手元にお配りしてあります報告案は、前回ご議論いただいた箇条書きの論点整理メモをベースに、前回いただいたご意見、ご指摘をできる限り盛り込んで作成したものです。この報告案について、本日、ご検討いただいて、次回は報告のとりまとめを行いたいと考えております。次回はとりまとめという前提で、時間は限られておりますので、そこのところはご考慮に入れていただいた上で、建設的でかつ密度の高い議論をしていただきたい。よろしくお願いいたします。
なお、この報告案の取扱いですが、作成途中の段階のものでありますので、最後に回収させていただきます。本日の審議の終了の際、または途中退席される場合にも、席上にそのまま残しておいていただきますよう、よろしくお願いいたします。
それでは、お手元の報告案「金融所得課税の一体化についての基本的考え方(案)」について、事務局から読み上げてもらいます。
よろしくお願いいたします。
〇事務局
金融所得課税の一体化についての基本的考え方(案)
金融・証券税制については、近年、株式譲渡益課税の申告分離課税への一本化及び軽減・簡素化、特定口座制度の導入、配当課税の軽減・簡素化、株式投資信託課税の見直し等の広範な改正が行われてきた。
この流れの中で、税制調査会は、平成15年6月の中期答申(「少子・高齢社会における税制のあり方」)において、今後、金融所得課税をできる限り一体化することを目指すべきであるとの方向を示した。当小委員会は、この中期答申を受け、平成15年10月から、具体的な制度設計に向けた検討を行ってきたが、今般、金融所得課税の一体化についての基本的な考え方を理論的に整理し、総会に報告することとした。今後、本報告で示した基本的な考え方をもとに、実務面を踏まえた検討を進めていく必要がある。
一 金融所得課税一体化の意義
(1)背景・内容
我が国ではこれまで高い貯蓄率の下、潤沢な家計金融資産のストックが築き上げられてきた。しかし、少子高齢化の進展から、近年、貯蓄率は顕著な低下傾向を示している。今後の人口減少社会においては、貯蓄率の反転上昇による金融資産の増加を期待することは難しく、むしろ現存する金融資産を効率的に活用することこそが、経済の活力を維持するための鍵である。一方、従来、我が国においては、家計金融資産の大宗は預貯金であり、株式や株式投資信託の占める割合は、主要諸外国に比べても低くなっている。
こうした状況の下において、「貯蓄から投資へ」の構造改革が進められてきている。金融・証券税制についても、いわゆるプロの投資家だけでなく、今まで「貯蓄」を中心に資産運用を行っていた一般の個人にとって、より一層「投資」を行い得る環境を整備する政策的要請がある。
まず、金融商品の中から、税負担の違いに左右されず、それぞれのニーズに応じて投資先を選択できるよう、金融商品間の課税の中立性が要請される。また、一般の個人投資家が、投資判断を行うためには、簡素でわかりやすい税制であることが求められる。さらに、これまで株式投資になじみのない一般の個人投資家が投資を行いやすくするためには、投資リスクの軽減を図ることも必要である。
このような観点から、上場株式など一般の個人の投資対象である金融商品に対する投資利便性を高めるため、金融所得課税の一体化に取り組んでいくことが重要である。その具体的内容としては、金融所得の間で課税方式の均衡化をできる限り図ること、金融所得の間で損益通算の範囲を拡大することの2点がある。金融商品間の課税の中立性・簡素性の観点からは、特に金融商品からのキャッシュフローを様々な所得分類に加工することが容易になっている状況の下、課税方式の均衡化をできる限り図り、所得分類の違いによる税負担の違いを小さくしていくことが適当である。
(2)税制論からみた位置付け
我が国の所得税制は、包括的所得税を基本として構築されているが、金融所得課税については、課税ベース拡大のための取組みの中で、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点から、比例税率による分離課税が導入されてきた。今般の金融所得課税の一体化は、現下の「貯蓄から投資へ」の政策的要請を受け、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築する観点から、現行の分離課税制度を再構築するものである。
金融所得課税の一体化は、二元的所得税論の立場から主張されることもある。北欧諸国が二元的所得税を導入した際の、課税ベースの拡大、海外への資本逃避防止、資本所得間の中立性の確保などの問題意識は我が国の税制を考えるに当たっても重要な点である。他方、北欧諸国の二元的所得税においては、資本所得に対する税率と勤労所得の最低税率、法人税率は同水準に設定されているが、勤労所得の最低税率が30%前後と我が国に比べ著しく高い水準にあるなど、税率構造が我が国と著しく異なる。また、二元的所得税を導入するとすれば、あらゆる種類の所得(事業所得、雑所得、一時所得、不動産所得等)を資本所得と勤労所得とに二分することが必要となる。資産の中でも、土地等については、帰属地代・家賃に課税できないという問題のほか、我が国では公共性のある資産という土地基本法上の位置付けを踏まえて特別の税制上の取扱いがなされており、税制上、金融商品とは異なる面もある。こうしたことから、所得税制全体のあり方として、北欧型の二元的所得税については、今後、我が国の経済・財政状況や税体系を踏まえ、引き続き検討していく必要がある。
二 金融所得課税一体化の具体的内容
1.課税方式
(1)配当所得
配当所得については、事業参加性のある所得であることを踏まえ、総合課税を基本としつつ、納税者の事務負担に配慮して所得税の少額配当申告不要制度を設けてきた。平成15年度税制改正において、大口以外の上場株式及び公募株式投資信託の収益分配金について、一般投資家にとってみれば事業参加性のある所得というよりも他の金融所得と同様の金融商品から生ずる所得であるという点に着目し、上限なしの申告不要制度が導入された。なお、配当所得については、法人税との調整のための配当控除や、株式を取得するための負債利子控除が設けられている。
配当所得について、一般投資家の金融所得という性格に着目すれば、他の金融所得との中立性の観点から、20%の税率による分離課税とすることが考えられる。ただし、大口株主については事業参加的側面が強いことから、その配当を金融所得として課税することは必ずしも適当ではなく、事業所得とのバランスを踏まえ、総合課税を維持すべきである。
一般投資家の金融所得という位置付けで分離課税とするならば、配当控除や負債利子控除の位置付けについて再検討が必要となる。なお、法人課税と配当課税とを通じた負担の観点から見れば、分離課税とした場合、法人税の負担を含めたとしても、個人の負担水準としては相当程度軽減されることとなる。
(2)公社債譲渡益等
公社債の譲渡益は、現在、経過利子の反映であるとの考え方に基づき、非課税とされている。また、その反面、譲渡損失はないものとみなされている。しかるに、公社債市場の現状では、日々の金利の動きにより市場価格が変動し、その結果として譲渡損益が発生している。また、金融商品が多様化する中で株価に連動するような債券や外貨建ての債券など、金利以外の要因により譲渡損益が生じる商品も一般の個人投資家向けに販売されている。
現行の取扱いは他の金融所得との中立性の観点から問題がある。したがって、公社債の譲渡益については、株式譲渡益同様に課税を行うとともに、譲渡損失については、税制上の譲渡損失として取り扱うべきである。公社債の償還時の差損益の取扱いについても、譲渡損益とのバランスに配慮しつつ、あわせて検討すべきである。譲渡益課税を行う場合の具体的な課税の方法については、公社債の取引実態等を踏まえ、実務的な検討が必要である。
公社債の譲渡益課税を行う場合、公社債投資信託の譲渡益についても同様の課税とするべきである。
(3)外貨建て金融商品
外貨建て金融商品は、国際分散投資の考え方とともに、一般の個人投資家の資産運用対象としても定着してきている。外貨建て金融商品の為替差益のうち、外国株式については、譲渡時に為替差益が実現するため、株式譲渡益として分離課税される。他方、外貨預金(為替予約のないもの)の為替差益は、雑所得として総合課税されている。
外貨預金の為替差益については、他の金融所得との中立性を確保する観点から、20%の税率での分離課税の対象とすることを検討すべきである。外貨預金の為替差益については、源泉徴収(個人住民税は特別徴収)の対象ではなく、法定資料も不要とされているが、分離課税とする場合の適正な執行の確保について、実務的な検討が必要である。
(4)保険
保険から生じる収益については、金融類似商品として利子並みに20%の税率での源泉分離課税とされている一時払い養老保険(5年以内)を除き、一時所得又は雑所得として総合課税の対象とされている。
保険には死亡や病気などへの備えという機能がある。例えば死亡保険金についてまで、他の金融所得との中立性を強く求める必要はないと考えられる。一方、満期保険金や解約返戻金等の収益が、満期時又は解約時までの保険料の運用成果と見うる場合については、他の金融所得との中立性を確保する観点から、金融所得として20%の税率での分離課税の対象とすることを検討すべきである。
2.損益通算等
(1)損益通算についての考え方
現行税制において金融所得は利子、配当、株式譲渡所得等の様々な異なる所得分類に属し、異なる所得分類間の損益通算は制限されている。株式譲渡損失は株式譲渡益から控除可能であり、また上場株式等の譲渡損失は3年繰越しも可能とされているが、譲渡損益の発生状況によっては、損失を控除し切れない場合もある。金融所得は、経済的に見ればいずれも金融商品から生じる利益や損失であることを踏まえ、金融所得の間で損益通算の範囲を拡大し、損失の控除をより広く可能とすることにより、現行の取扱いよりも投資リスクを軽減することが期待されている。その結果、一般の個人投資家のリスク資産への投資促進に資する。
一方、税制として見れば、個人所得課税は、課税期間を暦年で区切り、その期間中に実現した所得に課税を行う税である。こうした所得税制上、譲渡所得は、資産を取得した時から一定の期間をかけて発生した含み損益が納税者の任意で行われる譲渡によって実現した際に課税されるものである。これに対し、利子、配当などの経常所得は基本的に毎期実現し課税されるものである。このような税制上の性格の違いから、譲渡所得と経常所得との間の損益通算を認めることは本来適当でない。主要諸外国においても、譲渡所得と経常所得との間の損益通算を認めていない国が多く、認めている米国でも年間3,000ドル以下に制限されている。
また、損益通算の対象となる損失と利益との課税の均衡も必要である。分離課税される所得と総合課税される所得との間の損益通算や、分離課税でも税率の異なる所得の間の損益通算を認めることは適当でない。
さらに、損益通算の範囲を拡大すると税収が大きく減少する可能性がある。したがって、具体的な制度設計に当たっては、現在の危機的な財政状況を踏まえ、税収への影響についても考慮する必要がある。
こうした税制上の留意点を踏まえつつ、「貯蓄から投資へ」という政策的要請に応えて、できる限り広い範囲で損益通算を認めることが適当である。この際、損益通算の範囲拡大に適切に対応できるよう、申告に先立って支払時点で徴収しておく源泉徴収制度や取引の把握のための資料情報制度など執行体制の整備が必要である。
(2)損益通算の具体的範囲
[1]株式譲渡損益と公社債の譲渡損益との損益通算については、両者がともに有価証券の譲渡損益として同じ性格の所得であることを踏まえ、適正な執行体制の下で公社債譲渡益が課税化される場合には認めるべきである。
[2]株式譲渡損失と配当所得との損益通算については、配当所得は経常所得であり、上記のとおり譲渡所得とは税制上の性格が異なることから、ともに金融所得であるということだけでは直ちに認めることはできない。しかし、「貯蓄から投資へ」という重要な政策的要請に応えて、(イ)配当と株式譲渡損失はともにリスク資産である株式から生じるものでその関連性が強いこと、(ロ)配当所得が分離課税とされれば両者の課税上の取扱いは均衡がとれることから、上場株式の配当と譲渡損失、公募株式投資信託の収益分配金と譲渡損失の間の損益通算を政策的に認めることが適当である。ただし、政策的に損益通算を認める場合であっても、諸外国の例も参考としつつ、損益通算について一定の制限を設ける必要がある。損益通算し切れなかった株式譲渡損失は、3年繰越しの対象とし、翌年以降も損益通算可能とすることが考えられる。
[3]株式譲渡損失の損益通算の範囲を利子所得まで広げると、株式投資の一層のリスク軽減を図ることができる。一方、株式譲渡損失と利子所得とでは、譲渡損失と経常所得という税制上の性格の違いに加え、株式譲渡損失と配当の場合に比べて関連性がより薄い。また、損益通算を行うためには、現行制度においては一律源泉分離課税とされている利子所得について、申告還付を可能とする制度に改めるとともに、支払調書制度を整備する必要がある。その場合、官民双方の事務負担、税収への影響も考慮すべきである。
「貯蓄から投資へ」の流れを進める観点から株式譲渡損失と利子所得の損益通算を可能とするために、上記のような諸課題の解決に取り組んでいく必要がある。
(3)資産滅失
個人の保有している株式について、株式を発行した会社が倒産して株式が無価値化した場合の損失は、現行制度においては所得の処分に当たるという考え方から税制上の損失として取り扱っていない。また、預金のペイオフによって生じた損失も税制上同じ取扱いとなる。
株式については、証券取引所では上場廃止の前に一定の売買可能期間において譲渡することにより譲渡損失を実現させ、譲渡益から控除することが可能である。しかし、一般の個人投資家は株式市場の情報を常に網羅的に把握しているとは限らない。こうした投資家の利便性に配慮し、譲渡の場合とのバランスを踏まえ、株式譲渡損失と同様の取扱いとすることが考えられる。
このように株式の無価値化損失に対し政策的に措置する場合、株式の譲渡という取引が存在しないため、株主や取得価額の真正性を税務当局がチェックできるよう、適正な執行のための担保が必要である。
預金のペイオフ損失については、ペイオフに際しては元本1千万円までの預金とその利息については預金保険により全額保護される。また、無制限に保護される決済性預金も存在する。このような預金保険法上の保護に加えて、ペイオフ損失を税制上措置することは、「貯蓄から投資へ」の要請からは説明できない。ペイオフ損失については、現行の取扱いを維持することが適当である。
三 納税環境の整備
金融所得課税の一体化を実現するためには、制度の適正な執行と納税者利便の向上を図るための納税環境の整備が必要である。
(1)申告機会の増加
現行の税制は、ほとんどの給与所得者が納税申告を行わないで済むという現状を前提に、納税者及び税務当局の事務負担や、投資家心理にも配慮して、源泉徴収を活用し、申告を不要とする仕組みが中心となっている。
将来、金融所得課税の一体化を進めるためには、納税者・投資家の利便性や適正な税務執行の観点から、申告に先立って支払時点で徴収しておく源泉徴収制度が引き続き重要となる。
損益通算の範囲を拡大すると、源泉徴収された税額の還付を求めるための申告が必要となるが、申告機会の増加は、納税者が自ら申告する所得税の将来のあり方との関係では望ましい。
(2)番号制度
損益通算の適用を受けるために申告が行われると、税務当局において納税者の申告する損益をチェックせねばならない。まず、取引時の本人確認の徹底により、取引が真正な名義で行われることを担保する必要がある。また、支払者が税務当局に提出した支払調書の内容と、納税者が提出した申告書の内容とを、税務当局は限られた人員と時間でマッチングしなければならない。その場合、何らかの番号制度を利用することによって、より正確かつより低い社会的費用でマッチングすることが可能となる。
損益通算の範囲の拡大は投資家の利便性を向上させるものであるが、番号制度に対して未だ国民の理解が必ずしも十分でないので、番号制度を一律に導入することについては慎重な対応が望まれる。番号制度を導入する場合には、損益通算の適用を受けようとする者は番号を利用し、そうでない者は番号を利用しなくてよいという選択制とすることが考えられる。選択制とする場合、これまでの「納税者番号制度」の論議において前提条件とされていた全国民を対象とする全国一連の番号である必要はなく、新たな番号を活用することも可能である。今後の検討においては、マッチングの実効性を確保する方法や官民に生じるコストなどの負担面も具体的に検討する必要がある。
プライバシー保護については、平成15年に個人情報保護法が成立している。個人情報保護法は民間事業者の取扱う個人情報保護についてOECD8原則に合致した規定を置いており、法制度上はプライバシー保護に進展が見られる。個人情報保護法は平成17年4月から全面施行される予定であり、現在、個人情報保護に関する基本方針を受け、主管省庁においてガイドラインの制定等の準備が進められている。損益通算のための選択制の番号であっても、納税者が支払者に対して番号を告知することになるので、支払者から番号情報が漏洩する恐れもある。民間における個人情報セキュリティを巡る動向や個人情報保護法などの一般的な法制面での対応について引き続き注意深く見守り、必要に応じてこの番号に係る特別の制度整備を検討すべきである。
以上です。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、今読み上げていただいた報告案について、ご質問やご意見をいただきたいと思います。
先ほど申しましたように、報告の文章を詰めて来週には最終の文書を総会にあげたいと思いますので、ご意見をおっしゃられる場合には、該当の箇所と修文の内容、または趣旨をできるだけ具体的におっしゃってくださるようお願いいたします。
では、どうぞ、ご意見を。
〇委員
非常によくまとめられたと思いますが、ちょっと質問です。教えていただきたいのは、まず2ページの一番最後の「北欧型の二元的所得税については、今後、我が国の経済・財政状況や税体系を踏まえ、引き続き検討していく必要がある」と。「引き続き検討していく」というのは、どこで、いつ頃まで、どういうふうにやるかという問題が一つ。
2番目は、3ページで12行目のところです。配当所得のところですけれども、12行目のところに、「ただし、大口株主については事業参加的側面が強いことから、その配当を金融所得として課税することは必ずしも適当ではなく、事業所得とのバランスを踏まえ、総合課税を維持すべきである」、こうなっていますが、この大口株主というのは一体具体的に何%とか、あるいは何株とかいうことを指しているのか。例えば大口株主といったら、オーナーの会社が公開していった場合というのは、大体が自分の株は少なくなって、財団とかいろいろなところの大株主になっていて、そしてそこを実際支配しているということが多いわけですけれども、この「大口株主について」ということについてどういうふうにお考えかということ。
それから、一番下の30行目のところですけれども、「公社債の償還時の差損益の取扱いについても、譲渡損益とのバランスに配慮しつつ、あわせて検討すべきである」。それから、「譲渡益課税を行う場合の具体的な課税の方法については、公社債の取引実態等を踏まえ、実務的な検討が必要である」。この具体的な実務的な検討ということも、今、具体的にどのように考えておられるか。以上、3点です。
〇委員
私が理解している限りでは、今年の秋にもう少し実務的な検討を行う場を設けて、それが具体的にどういうことになるのか、あとで事務局に補足していただきますが、秋に検討したいというふうに聞いております。ただし、最初の二元的所得税というのはもう少し大きなフレームワークで、かなり長いスパンで、たぶん税調全体でということだと思います。
事務局で補足していただけますか。
〇事務局
おっしゃるとおりです。
〇委員
よろしいでしょうか。
例えば大口だけでなくて、保険の話とか、いろいろなところで「検討すべきである」とか、「検討する」という文書はたくさんあるわけですけれども、それをどこまで具体的にどうするか、大口をどういうふうに定義するか、こういうのもたぶん実務的な検討ということで、秋にということになろうかというふうに私は理解しております。
〇委員
わかりました。
〇委員
ほかに何か。
〇委員
5ページのところです。これは、私が税法とか不勉強なせいだと思うのですけれども、私、いろいろ都合があって、この間、出席できなかったので、議論を蒸し返してしまうようなことになると、本意ではないので、無視していただいても結構ですが、税制上の所得の性格が違うと。例えば5ページの上から7行目、8行目のところですか、「このような税制上の性格の違いから~本来適当でない」というふうにかなりはっきり言い切られているのですが、ここまで言い切るべきことなのかなというのにはやや疑問がある。この報告書のボトムラインとして主張していることについては賛成で、これで適当だと思うのですけれども、今申し上げた部分の言い切り方とか、それから、同じページで27~28行目のところも、「上記のとおり譲渡所得とは税制上の性格が異なることから、ともに金融所得であるというだけで直ちに認めることはできない」と。
しかし、「政策要請があるので」というので、本当は原則してはいけないことを、政策要請があるから、まあ仕方がないからします、と。むしろ原則を崩すような改革ですというふうに読めてしまうので、そこは表現ぶりを、「本来適当でない」とか、「認めることはできない」というふうに言い切ってしまわない形で。結論はこの結論で結構なんですけれども、原則を歪めることを我々はしようとしているのだということを自ら言っているように読めるので、ちょっとそこはまずいのではないかということです。
〇委員
具体的な文章、何かありますか。
〇委員
例えば下のところでしたら、「性格が異なる。」で「。」にしてもらって、「しかし、ともに金融所得であることと、それに加え「貯蓄から投資へ」という重要な政策的要請に応えて云々することが適当である」という文章にすることが考えられるかなと思いますが。
〇委員
もう少し皆さんの議論をお伺いしたいと思うのですけれども、事務局及び私の考え方は、本来所得としては理論的には同じものなので、本来はこれを同列に扱うような税体系を組めればそれがベストであるということだと思うんですね。ただ、それを今回我々は所得税という限られた仕組みの中で対応せざるを得ない。そのときに所得税という税体系でこの二つの金融所得を考えてみると、相当程度問題がある。それはニュアンスの問題でしょうから、これはあまりにも極端だというご意見が非常に多いようでしたら、もう少し考えますけれども、所得税の体系のままで両方を単にぱっと合算してしまうと節税行為が横行する可能性が非常にあって、そういう意味で望ましくないのだということで、それを言葉であらわすために、理論として、税制としてという形で分けたというのが今回の文章づくりなのですけれども。
〇委員
今、ご説明いただいた趣旨自体、私は、賛成といいますか、キャピタルロスに関して実現のタイミングを操作できる、そういう問題があることはそのとおりであって、そういう問題に対する対策が十分とれない中で損益通算を認めることは実務上問題があるというのは、そのとおりだと思うのですが、そういうふうに今説明していただいた内容がそのまま文章になっていれば、すごく納得がいくのですが、原理論的にいけないのだと言っているような印象を受けたもので、ちょっと意見を申し上げたということです。
〇委員
ここは前回もかなり議論のあったところですし、ほかに、もしご意見があれば。
〇委員
全く同じところですけれども、5ページの例の「本来適当でない」というところです。おそらく流れとして、無制限に損益通算を認めることは本来適当ではないということだと思うんですね。あと、「税制上の性格」。これはセンスの問題というか、好みの問題なのかもしれないですけれども、税制上の性格なのか、税制上の取扱いなのか。つまり、まさに何度も繰り返されているように譲渡所得というのは実現が納税者の任意である。したがって悪質な納税逃れがあるのではないか、そういう懸念があるというのはわかるのですが、「性格」と言ってしまうと、まさに先生が指摘されているように原理的な本質的な問題のように思われるので、性格というよりは、むしろ取扱いとか、本来そういったニュアンスではないのかなと思うのですけれども。
〇委員
今のご意見は7行目ですね。「このような税制上の性格の違い」というのを、「税制上の取扱いの違い」にしてはどうか、そういうご趣旨ですね。
〇委員
はい。
〇委員
どうぞ、事務局。
〇事務局
言葉自体、微妙なところがあろうかと思いますが、端的に申しますと、税金の制度としては暦年で区切ってやっている。単に操作性だけの問題ではなくて、ここにも書いていただけていますように、一定の期間かけて発生しておったものをぽんと実現する、そこで課税するという性格も違うわけでございます。暦年に分けて課税しなければいけないという所得税制のもとにおいて、位置付けであれ、取扱いであれ、性格であれ、ここでの一番適切な言葉というのは何か検討が必要かもしれませんけれども、要するに単に節税をチェックしたいというだけではなくて、発生と実現というこの点において、課税の器にのせる際には譲渡所得と経常所得というのは自ずから性格が違ってきているということであります。あくまでこれは税制、制度に発生する、それから実現する所得をどうはめ込むかという、ある意味では仕組みの問題でございまして、原理・原則とかそういうことではございません。この仕組みにどのようにこの所得をはめ込むか、それに当たって発生と実現というのがこの両者では自ずと違っているということでございます。
〇委員
私は結論は先生に賛成です。性格か取扱いかというところはそんなにこだわりません。むしろ今、事務局がおっしゃったことも、原理・原則というよりは、発生と実現の形が違うから、適正な所得計測をしようと思うと、損益通算をただ無制限に認めるのは適当ではないのだというご趣旨であろうと思います。ですから私は、8行目の「本来適当でない」というところですが、そこは、上の行の「性格などの違いから」、例えば「適正な税制の執行の観点から」というような限定を入れて、「観点から、これこれを認めることは適当とは言いがたい」とか、そういうぐらいまで表現を改めて、かつ、なぜ適当でないかというところを明らかにされるのがいいと思います。
およそ性格が違うという議論に対しては、蒸し返しになりますが、例えば利子所得でも無分配型の定期などでは、発生はしていても実現するのは最後支払いのときだと、そういう制度のつくり方ができるわけで、利子だから経常である、そういう議論でもなくて、やはりこれも制度のつくり方であろうと思います。
最後はよけいなことですが、私の意見は結論としては、「本来適当でない」というところと、同じくご指摘のあった28行目から、「原理的に不可能であるが、政策的要請に応えて措置をするのである」というニュアンスは、やややわらげられたほうがよろしいと思います。
〇委員
どうぞ、事務局。
〇事務局
質問してよろしゅうございますでしょうか。今の委員のご指摘は、要は、発生ベースで課税するのが本来の姿だ、そうできないのは単に都合の話であるというご趣旨でしょうか。
〇委員
そうではありませんで、何が基本的に望ましいかということを申し上げているのではなくて、現行法に当てはめたときに「本来」とかいう議論ではないだろう。それは、現行の実現主義をベースにしたときに確かにここに書いてあるとおりの不都合がある、その不都合のあり方というのがここに必ずしも明確にあらわれていなくて、原理・原則として本来適当でないという書き方に読めるところに文章上の不備があろうと、それだけの話です。
〇委員
ちょっといいですか。委員がいくつかおっしゃって、傾聴すべきご意見だと思うのですけれども、一つは例えば利子の話ですね。たしかに発生してはいるけれども、実現していない利子だってあるではないかということはもちろんよくわかりますし、そこをきちんと書こうとすると、例えば実現に関して投資家が、任意というか、恣意的に実現できるものと、そうではないものを分けるという書き方のほうがいいだろうと。理論的にはたぶんそうだろうと思うのですが、この間も申しましたけれども、厳密さを追い求めて普通の人にわからない文章になっても、我々は満足するかもしれませんが、ひょっとしたらかえって問題が起きるかもしれないというのが1点です。
それから、8行目あたり、私はここは二つのことが議論になっているような気がするのですが、一つが、税制上の性格の違いかなというのでいいのか。例えば「取扱い」とか「執行」という言葉を入れたほうがいいのかという問題と、もう一つは、最後の「本来適当でない」という文章が強すぎないかということですね。それからもう一つ、28行目あたりで、「直ちに認めることはできない」という文章も強すぎるということは一つの問題ですが、私が聞いていると、むしろそれよりも、そのあとに、しかし、政策的要請に応えて本当は認めてはいけないことを認めてしまうのだ、というニュアンスに聞こえるのがまずい、と。ここはひょっとしたら我々のインテグリティーの問題ですから、今、四つぐらい、そういう問題なのかなというふうに私はまとめてみたのですが、それでよろしいでしょうか。
〇委員
今問題になっているここの部分については、今、まとめられたところで現状からいくと仕方がないのかなと思うのですけれども、ただ、金融商品の金融技術の発達ということからいきますと、今の発生・実現ということでとらえること自体に私にはちょっと違和感がある。ですから、今のこの答申としては仕方ないとは思うのですが、もともと、現在価値でキャッシュフローの価値がイコールであれば、例えば配当をぐっと下げて、最後の譲渡所得のところでキャッシュフローを大きくするということが一応技術的にも可能ですし、そういう商品も今後開発されるとなると、そもそもここで言っているような経常所得とか譲渡所得、そういう観点から見て課税をしていくこと自体がある一定の限界があるような気がしているわけです。
ですから、今出た株式とか、そういうものについてはたぶん問題ないと思うのですけど、そういう新しい技術に対してこういうくくり方で課税を考えていこうとすること自体、ちょっと気にはなるんです。ただ、今の時点でそこまで広げてしまうことが問題だということは十分わかっていますので、将来そういうことが起こっても、ここでの提言が矛盾しないような形の表現を工夫されたらいいかなと思います。
〇委員
具体的には。
〇委員
具体的には、ここの「本来適当でない」というのは、税制上の性格かどうかは別として、本来課税すべき所得という観点からいくと、ないしは金融で言う何らかの課税対象という意味でいけば、私は「適当でない」と言い切ってしまうのはやはり言い過ぎのような印象を受けますので、この辺を少し弱めていただいたほうがいいのではないかと思います。
〇委員
今まで議論に参加してこずに、今の段階でこういうことを申し上げるのは問題があるかもわかりませんが、私はこのとりまとめ、苦衷の策なんだという具合に理解しております。その苦衷の策というのは、一つは、理論的に総合課税VS二元性所得税論においても結論を出さないということがこの背景にはあるわけですね。それから貯蓄性の中においても、リスクとリターンの関係の中で、従来の課税方式として金融性の分類がある。そこは厳然としてまだ残しておきたいという執行上の問題があって、そこの二つの点が、この文章に落とし込むときに苦衷の産物としてこういう表現がところどころに見えてきている。そこを理念的・理論的にどういう具合に整理するかという問題は、先ほどのおっしゃったとおり、金融性所得がこれからデリバティブ等でメルティングしていく状況の中で、識別が難しいような状況になってきたときに、この区分というものを、「将来の税制上の我々の問題として矛盾なく理解しているよ」ということは明確に書いておかないと、この委員会の役割は果たせないだろうと。
ですから今申し上げたとおり、労働所得と金融性所得、総合課税なのか分離課税なのかという部分のところで、我々は、総合課税といいながら執行上、分離課税をやっているわけですね。本来は今のやり方というのは総合課税に近づいているのかもわからない。リスクの部分のところで損失操作を認めるという意味では、それぞれ今までは非課税の部分をおいといて、そして分離課税をしたというのをいくぶんマージスで行く話になっていますから。ですから、そこの区分の部分の整理の仕方、文章の表現のしぶりが矛盾のないように、あとで突っ込まれたときに、「ここのところはこう考えてるんだよね」というエクスキューズみたいなものが、「ここで考えてるんだよ」というような工夫ができないのかというのが、皆さんのおっしゃっていることではないかという気がいたします。
これは、我々が税制理論の現実への適応の中でクリティカルな局面に来ているのだろうと。そういう意味での整理の仕方を、もう一段それぞれの文章のところで。私も、「性格が違う」とかそういうようなことをあまりこの時点で強調することは適切ではないだろうと。しかし、執行上の問題、税収上の問題として苦悩を持たれているということはよく理解できますから、そこの整合性の部分ですね。これは小委員長にお任せしますけれども、全体のトーン、もう一度きれいにしていただければという具合に思います。
〇委員
せっかくきれいにしろという意見に対して、きれいに書くのは難しいということを言うみたいで気がひけるのですけれども、長い議論をしてきて、だいぶ参加させていただいて、この報告書を私が読む限りは、「貯蓄から投資への構造改革」というのがキーワードで、あと、中立性とか均衡化とか言葉が並べられていますけれども、高齢化を迎えて個人貯蓄は減るかもしれないし、これから、ある資産を有効に使おう、そこで貯蓄から投資だということで、今やっている議論が包括的な課税に向かうのか、二元的に向かうのか、そこもこれを読む限りはっきりしていないわけですよね。ある意味で今までは包括的なものだから、むしろ労働所得と総合化しているような部分もあった。それに対して金融所得一元化というのを割り切ってしまえば、そこから分かれてくるんだということで、むしろ二元的な流れになるのかなと私は思いますけれども、まあ、そうでないのかもしれない。
要するに何を言いたいかというと、いろいろ議論はあって、結局は構造改革ということで貯蓄から投資へ行く、そういう形で書くのだと。そこは認めて、私がそういうふうなことをわかった上でさっきの5ページを違う角度から言いたいのですけれども、5ページの8行目、経常所得と譲渡所得は違うから損益通算を認めることは適当でないと。あとのほうで指摘があって、28行目で「貯蓄から投資へという重要な政策要請」云々と。これは、もし突っ込むとすれば、貯蓄から投資へと言っているではないか、それが政策税制ならば、利子と株式の譲渡所得を損益通算することが政策的課題ではないかと、そう来ると思うんですよね。
そこをどういうふうに我々は整理するのかということで、このペーパーは、二元的所得税だ、包括的所得税だとか、そうではない、これは政策税制なんだというふうに書いてしまうと、書いてあると思うんですけど、そうすると、利子と譲渡所得の間を認めることは適当ではないけれども、やるのが政策税制ではないかという議論を、どうやって我々の中で消化するのかという気がしてしようがないんですよ。
〇委員
では、事務局。
〇事務局
実は平成9年の金融課税小委員会「中間報告」の中でこう書かれておりまして、要するにこの金融小委員会でのご議論のバックグラウンドでございます。譲渡損失の取扱いということで、要は通算が認められていないという取扱いは、「譲渡損失のほかの所得との性格の違いや、損失の発生に任意性があること等によるとされている」ということでございます。「こうした考え方をも踏まえると、わが国においても他の所得との通算は認めないことが適当である」、こういうふうに言い切られております。
それから、その次でございますが、平成14年6月の「基本方針」でございます。そこでも補論の形でご議論賜っておりまして、「譲渡損益は発生時点に裁量性・操作性があるなどの点で、利子や配当とは異なるほか、税負担を意図的に軽減し得るとの側面もあり、他の所得との損益通算を可能とすることは必ずしも適当でない」、ここで終わっているわけでございます。
今回、いろいろなご議論を頂戴いたしまして、今、委員がおっしゃったように、政策的な目的、これがきわめて大きいということを大きな背景としながらこの小委員会でのご議論を累々行っていただいていたということではないかと思います。税制ベースで本来というのは、これ、「本来」と書いてあるのは、「本来は」でございまして、しかし、それを上回る政策的要請があるというご議論を累々行っていただいておったのではないかと、我々はそう受け止めております。
〇事務局
ちょっと補足で、私もこの問題についてかかわってきた経緯から申し上げますと、この小委員会でご議論してくださる委員は皆さん専門家であり、この分野にお詳しいので、私どものお願いしている立場から議論を進めていただいているわけですが、結局この話というのは、スタートのところからやはりいろいろな制約があると。先ほども言いましたが、金融商品の非常に特殊な部分、今置かれている状況という中で何とか政策的に振興を図っていくことに税制も役割を果たす、こういう大きな命題があるわけです。しかし、もっと大きな前提として、毎年毎年の歳入確保手段である税制の普遍的ないろいろな議論というのはまだいっぱい残されている。二元的所得税や総合課税化、いろいろあるのですが、とにかく少しでもそういう状況を乗り越えて何とか実務的に金融税制を少しでもわかりやすくブラッシュアップしていく。実は、この問題に関与されない方、世の中1億2,000万人のうち株式について関心を持たれている方というのは非常に少数なわけですから、この問題とは別の考えを持っている方もいっぱいいらっしゃる。そういう中でこういう考え方で税調がやっていくことが、世の中でそれなりに評価されて理解されるという意味では、議論のそこに制約がまたあるのではないか。そこのところを乗り越えていろいろご議論いただくということで、今回、こういう整理をしていただいていると私は思っております。
我々としては、なるべく早く実際の金融税制について現実にブラッシュアップを一歩一歩進めたい、早く進める、そのためにバックボーンとしてこういうご議論をいただいているわけです。なるべく実務的に議論をすることにしょうがないという意味では非常に大事だと思うのですが、先の先の先まで、今、全部決める必要は全くないので、世の中の構造改革の今の時点ですべきことをなるべく早くやる。一体化という意味は、なるべくそういう意味で前進させていただくような展開をお願いしたいと思っております。
〇委員
事務局のお気持ち、非常によくわかりますし、政策論議をしていくときにそのような段階的なアプローチというのは非常に重要だと思います。私も、先ほど事務局がお話しなさった金融課税小委員会で関与した者として、あの当時もいろいろ議論があって、今ご紹介いただいたような文章になったということも記憶しています。ただ、この問題について税調としての美意識をどういう具合に保つかという問題があるわけで、専門家が関与したときに、現実の執行上の問題点を推進しながら、かつ、時代の方向性をどういう具合にこの中から読み取れるかどうかということは、やはり我々としては注意しておく必要性があるのではないか。
その意味で、「貯蓄から投資へ」というのは諮問会議が言い出してご苦労いただいている部分があって、まことに申し訳ないのですけれども、税の点で言えば、平均的な収益率が一定であってもリスクが違う金融性所得に対して、中立的な課税を構想することによって、結果として「貯蓄から投資へ」動く、こういう側面を持っているわけです。それは政策なのだから、今、時代の要請なのだからといって、結果としての流れを議論するのではなく、税制上の今まで持っている目的の中の整合性というものも確認しておく必要性があるわけで、私が小委員長にきれいにまとめてくれと言っているのは、そこらの理論的な部分を踏まえながら、ちょっと言い過ぎの部分とか、あるいは、こういうところは触れておいたほうがいいよねというような部分、そこら辺を少し修文していただければ、私は今の段階としてはよくできたペーパーになるのではないかと思います。
〇委員
要するに、そういう形の中立性という形を議論するべきなのか、ただ、そうした場合には、どう言ったらいいでしょうね。
〇委員
ここの書き方ですと、税制上としてはやりたくないのだけれども、政策上の要請があるからやらざるを得ないからやるんだ、緊急にやるんだと、こういうトーンになってしまうと、これからの普遍的な方向性としての部分が、じゃ時代的な要請がなかったらやめるのかという話になるわけで、そこは、今の整合性、効率性の問題と中立性の問題にかかわってくる問題ですから、その整理の仕方なんですよ。
〇委員
そこがさっきから問題になっているところだろうと思うのですけれども、いわゆる発生と実現という問題があって、発生ベースで考えたときにはもちろん全部中立にするのが一番望ましいだろうと。ただ問題は、発生ベースで全部課税できるような税の執行の仕組みが今我々の手元にあるかと。
〇委員
いや、十分認めているんですよ。
〇委員
それはわかるんだけど。
〇委員
書き方の問題としての……。
〇委員
そういうことで、では委員がお書きになりたいような形で書きましょうかという話も実は前回出たのですけれども、それをやり出すと、文章も大幅に書きかえることになって、どういうふうに言ったらいいんですかね、少しまとめるのが困難かなというようなニュアンスが前回はあったようにも思うんです。要するに、前回もそういうことでちょっと問題になりましたということなんですけど。
〇委員
何回も同じことをグルグル言うようで申し訳ありませんけれども、私は税制の専門家ではないし、実務サイドの人間として、ちょうど今、先生が言われたので思い出したのですが、株式市場が暴落したときに、経済財政諮問会議で、あのときは日本経済の活性化という中の大項目として「株式市場活性化」というテーマがあった。これは先生と、他の方々にも加わっていただいて、僕らが中心になっていろいろやって、いろいろな活性化策が出た中の一つが「貯蓄から投資へ」と。平成13年4月2日に、これは先生の名前でレポートを出していますけれども、あれでは「貯蓄優遇から投資優遇へ」と、「優遇」という言葉がはっきり入っていたんですね。かなり政策的要請が強かった。
とはいえ、先ほど事務局がご説明のように、税制調査会としてのいろいろな過去の蓄積もありますから、その辺を、先生が言われるように、どういうように美しくというか、カッコよくわかるような格好で。具体的には、さっき5ページが問題になりましたけれども、ここでの表現や何かというのは、さっき小委員長が言われたような内容でいければまずまずではないかなというふうには考えておりますが。
〇委員
ありがとうございました。
〇委員
譲渡所得と経常所得が本質的に違うというのを、所得課税の全体の原則というような表現にしますと、法人税でも同じことが言えるかという問題が起こってきてしまうのではないかと思っています。個人所得税については所得類型というのが明治からずっとございますので、そういうところは、税制上、本来適当でないということも流れの中で言えるかもしれませんが、譲渡所得と経常所得の差というのは法人についても同じように当てはまるわけで、ここでそれが出てきてしまうと、経済学者の方はだいぶ抵抗があるのではないかという気がするので、法人と個人を必ずしも分けるという発想でなく、ファイナンス的に考えると今のような感覚が出てくるのだろうと思います。ただ、個人所得税はちょっと特殊なところがございますので、こういう表現はある程度は仕方がない。だけど、法人税にはあまり波及しないように。一般的にですね、法人税でも同じように「本来適当でない」と言えるかというと、これは問題です。
しかし、譲渡に関する操作性の強い所得で生み出された損失の利用を制限するということは、実は法人税でも、あまり恣意性が高い場合にはあってもいいわけです。アメリカのパッシブ・ロス・リミテーションとかはそれですから。何でも程度問題なんですけれども、法人と所得では少し段階の差があって、ここは個人所得の話なのではないかというふうに読んでいたのですけれども。合っているかどうかはわかりません。
〇委員
すみません、ややこしくしたような問題提起をしてしまって、反省をしているのですが、何回も繰り返しておりますように、この時点でエッセンスについては私も基本的には認めるということなのです。ただ問題は、税制上の理論的な整理をどういう具合にここでやっておくかという問題と、「貯蓄から投資へ」といったときに、少子・高齢化がどんどん進んでいくと貯蓄率が急速に低下する中で、近い将来、貯蓄そのものをどうするんだという問題が出てくる状況の中で、これを伏線としてどのようにこの文書の中に落とし込むかということだろうと思うのです。これは本源的に言えば、貯蓄の部分との関連では二重所得税論があって、それが総合課税から二元性所得につながったという部分と、金融性所得の中でリスクの違いがもたらすコンサバティブなビヘイビアに対してそれを中立化する、こういう議論が理論的には全体としてつながっているというのがおそらく関係の図式としては正しいだろうと思うのです。そことあまり背馳しないような形で今の落としどころの部分をどういう具合に整理するか、その点だけなのです、私が言っているのは。
〇委員
一応私が理解しているのは、二元的所得というものに今の段階で日本の所得税体系に踏み込むことは難しかろう。そこで、金融商品という形で金融所得自体がいろいろ区分けされているわけですが、それの中立化を図らざるを得ないだろう。そのときに、1ページに書いてありますけれども、一つの視点として、プロではなくて一般投資家の普通に考えられるような金融商品に着目して、その間の中立化をできるだけ図る。それが今回のこの案のメッセージだと思うんですね。それがどこまで伝わるように書かれているのか、今の委員のお話をお聞きしているとちょっと不安になってくるので、そこはもう一度考えてみますけれども、基本的な考え方はそこにあるというふうに私は理解しております。それに加えて、諮問会議がおっしゃっている「貯蓄から投資へ」という現下の政策要請、これに応えるということについてももう一つ考えなくてはいけない。その2つをここではやろうとしているということかと思います。
私は先ほど、皆さんのご意見はその4つですねということをお話ししましたが、税制上の性格の違いという文章が本当にいいのかどうかということは、ちょっと考えさせていただいて検討させてください。「本来適当でない」と、これも一応検討しますけれども、例えば他の委員がさっきおっしゃったみたいに、無制限に認めることは適当でないということではなくて、租税回避とかそういうことを考え出したらば、少額であっても租税回避というのはもちろん可能性があるので、量の多寡の問題ではないのではないか。本来的にはですよ、そういう気が私個人はしているのですが。いずれにしても「本来適当でない」という文章に関しても、もう一度こちらサイドで検討はするということにさせていただければと私は思います。
ただ、後半のほう、「貯蓄から投資へ」ということでやむを得ないという形で書いてある、これは、さっきから具体的に提案があればというふうにお聞きしているのですが、いずれにしてもここの部分は、「貯蓄から投資へ」というまさに総理の諮問があって、それに応える税制改革というのが今回の話なので、文章を修文することはもちろんあり得ると思いますけれども、流れ自体を変えることはちょっと難しいのかなというふうに思います。
そういうあたりの整理でもしよろしければ一旦引き取らせていただいて、もちろんあとで議論対象として出していただいて結構ですが、ほかの部分も含めてもし議論がありましたら、どうぞ。
〇委員
公社債の譲渡益のところ、譲渡損益を認識する、今までのように単に利子だけにしないと。これは非常に大きな改正だと思いますが、疑問というのか、確認しておきたいことがあって、一つは、割引債等について最初に……利子があれだから関係ないのかな、わからないですけど、発行時の源徴をどうするかという話と、それから、公社債の譲渡損益を認識するのを個人についてやる場合に、法人についてはどうするのか。もし異なるとすると、市場が分断化されて何かがある。しかし、法人についてそうしてしまっていいのかとか、そういう所得税のこれだけでは済まない問題があると思うのです。それは、議論は出てこなかったと思うのですが、どんな感じなのでしょうか。
〇委員
それは、何かあれば事務局にご説明いただいたほうがいいと思います。
〇事務局
3ページの30行目ぐらいでございますが、まさに公社債の取引実態等を踏まえ実務的な検討ということで、実際仕組む際には、今おっしゃったことそのものをちゃんと議論しなければいけないと思っております。特に割債の償還差益、これは今、先取り18%。ある種利子20%の先取りということで18%を源泉徴収しているのですが、実際この課税の仕方、譲渡損益ないしは償還差益課税が確立されれば、それに吸収させるということも制度としてはあり得ると思います。この辺はまさに実務的な検討ということで、事務局でもう少しもませていただければと、このように思います。
〇委員
公社債のことでこれも質問です。5ページの23行目で「公社債の譲渡損益との損益通算」と出ていて、4ページの1行目、2行目で公社債投信の話が出ていますので、これは、当然、5ページの23行目に含まれるという理解でよろしいと思いますが、それはもちろん確認だけです。
2点目が質問で、ここはあくまで公社債は譲渡損益という言葉が使ってあって、6ページの13行目からの「資産滅失」には公社債のことが一切出ていないということは、償還の額面割れとか、社債の場合の発行会社の倒産という場合については、あくまでこの制度は対象にしないという決定をされているのか、そこは秋からの実務的検討でオープンなのか。これは、修文という問題ではなくて質問ですが、いかがお考えかだけお示しいただけますでしょうか。
〇事務局
まず、公社債投信。これは、公社債と並べて同様のやり方にしましょうということに尽きます。それから公社債の額面割れ云々の話ですが、基本的にこの報告の全体の土俵と申しますか、「貯蓄から投資へ」ということで大きな背骨が通っているわけでございます。公社債、すなわち現在、一般の個人にとっての公社債というのは国債に当たるわけでございますが、「貯蓄から投資へ」という分け方をいたしますれば、少なくとも現状においては貯蓄のほうに入っておりますので、ある種投資にドライブをかけるという金融小委でのご議論、そのコンテクストの中では説明が難しいということで、あえて何も書いていないということでございます。
〇委員
ただ、公社債といった場合に圧倒的に国債が多いわけですけれども、社債とか、そういった事業債も含まれるわけで、そういう意味では日々の金利の動きだけでなくて、企業の信用リスクも反映して市場価格が変動するという認識は持っておいたほうがいいのではないかというふうに思いますし、そういう記述が全くないことについてはちょっとおかしいかなと。3ページ目の23~24行目ぐらいですか、金利変動のことだけを認識したことしか書かれていないのは、ちょっと違和感があるという感じがするのですけれども。
〇委員
やや現実的な話ですけれども、5ページの「損益通算の具体的範囲」で[1]、[2]、[3]と書いています。まず[1]は、株式譲渡損益と公社債の譲渡損益は損益通算を認めますということですよね。[2]は、いろいろ議論があったけれども、何を言っているかというと、31行目くらいで、上場株式の配当と譲渡損失、公募株式投資信託の収益分配金と譲渡損失の間の損益通算。ということは、これを読む人は、株式の譲渡損益と公社債の譲渡損益、上場株式の配当、公募株式投資信託の収益分配金と譲渡損失、これを同時に相殺すると読んでいいのですか。それとも、相殺のこれに何かシークエンスというか、ここを考えているんですかね。
〇事務局
まさにその辺が今後の制度設計によらしめるわけでございますが、公募株投を全く上場株並に扱ってしまう、みなしてしまうという制度の仕組みにするのか、一応別にしておくのか、これはまさに制度の仕組み方次第でございます。そういう意味では、この文章の中ではまだそういうことまで決め切ってはいないということだと思います。
〇委員
それと同じ種類の質問ですが、6ページの損益通算のところの[3]です。細かいことは別にして、この報告書全体の大きなトーン、中心の趣旨というのは、要するに「貯蓄から投資へ」という中で今までも変えてきたし、これからも変えます。この一環として今回は金融所得の損益通算を認めましょうということが出て、その中で株とか公社債とかいくつか出てくる。その中の[3]の利子をどこまで含めるかということですね。これを見ると、本当に貯蓄から投資へということになると、利子を含めないと「貯蓄から」というのが意味がなくなるわけですから、あまりインパクトがないかなと。
今回そこまで言い切ってしまうのはなかなか難しいからということで、[3]のところを見ると「株式投資の一層のリスク軽減を図ることができる」と。これはメリットですよね。通算の範囲を利子所得まで広げると、リスク軽減を図ることができる。そのあと、「一方」というのは、いろいろ条件がついていて、こういうのがあるから難しいですよと書いてあるわけですね。それで最後のところに、「『貯蓄から投資へ』の流れを進める観点から株式譲渡損失と利子所得の損益通算を可能とするために、上記のような諸課題の解決に取り組んでいく必要がある」。上記の諸課題というのは、税制上の性格の違い、申告還付可能、支払調書制度整備、官民双方の事務負担、税収への影響、5つあって、これを本当に解決できるのかどうかというのが、「性格の違い」などは解決できるのかどうかという問題がありますから、やるのかやらないのかがよくわからないんですね。可能とするために解決に取り組むべきであると。もしやるのであったらば損益通算を行うことが望ましい、したがって上記のような諸課題の解決に取り組むべきである、というのだと非常にポジティブなのですが、そこまで言い切らないということなんですね。それはできないで、時間的には将来になるかもしれない。その辺はあえて曖昧にぼかしてある、こういうことなんですね。
つまり、以前から理論的整理をやるのがここの役割だというふうに言われているので、理論的整理と、そこから先は執行上の制度設計だという話がよく出てくるわけですが、この執行上の制度設計と理論的整理というのはこの辺でなんかごちゃごちゃになっているような気がして、将来の課題であれば今すぐやる必要は全くないし、難しいのだから、いいと思うんですね。だから、やるのかやらないのか。我々自身がやる理論的整理としてはどうもすっきりしないな、と。
〇委員
やるのかやらないかはともかくとして、この間も言いましたけれども、経済学の論文ではないので、理論のところと執行の部分をきちんと分けてセクション立てはしていない。そこはちょっとお許し願ったほうがいいと思いますが。
〇委員
理論的組み立てがどうなるかという問題ですね。
〇委員
はい。
では、こちらから。
〇委員
さっき言い忘れたというか、もう一つ、シークエンスの話の次に言いたかったのは、5ページというか、「損益通算の具体的範囲」の最後、今、まさに委員が質問された[3]ですけれども、これは最初のところは、通算の範囲を広げると株式投資の一層のリスク軽減を図る。だけど、譲渡損失と経常所得は違うから云々。次に、利子が源泉課税されているからそこも問題だよと、新しく出てくるんですよね。この流れでいくと、[3]はやめてしまって、要らないと思うのは5ページの上。つまり、損益通算のところと同じことを言っているわけです。4ページの下から2行目、「金融所得の間で損益通算の範囲を拡大し、損失の控除をより広くすることにより云々…投資リスクを軽減できる」と、同じことを言っていて、その次も同じで、要するに譲渡所得と経常所得は違うということを言っているわけですよね。
なおかつ、利子を通算することに伴う困難な問題としては、要するに申告の問題があると。問題群としては同じことを言っていると私には思えてしようがない。だから、多少理論的なものを付加するのであれば、譲渡所得と経常所得の通算は難しい。また、それを現実的にやろうとしても申告の問題がある。とすれば、論文としてではなくて、報告書の体裁としても6ページの[3]はないほうがいい。ないほうがいいというか、5ページの第2段落に書き込むことで十分なのではないのかなと。(2)の「具体的範囲」というのは、四つのいくつかの所得は通算するけれども、やり方については意図的に書きませんよということで、6ページの[3]は何のためにあるのだろう、という気がするんです。
〇委員
お答えすると、4ページの2があって、(1)が「損益通算についての考え方」ということで、基本的考え方を説明した上で具体的範囲ということを説明することになるわけですね。具体的範囲を説明するときに、やはり基本的考え方を援用しながら説明していかざるを得ないだろう。それがたぶんわかりやすいだろうということでやっていますので、具体的範囲を説明するときに基本的考え方の一部はどうしても出てくるかなと。それを切り分けてわかりやすい文章になるかどうかというのは、ちょっと疑問ではあるのですが。
〇委員
損益通算を行うためには利子が源泉分離課税されていて、一元化するには申告納税が必要ですよというのが基本的考え方ですよね。
〇委員
繰り返しになりますけれども、私が冒頭に申し上げたのは、3ページの最後の「実務的な検討が必要である」ということで、公社債譲渡益等についてはそこでやるのか、と。委員が言われたように、今日の5年の国債の入札は0.8 %ですから、おそらく10年の標準物は今日あたり1.7%だと思います。これが近日中に1.8 になることは間違いないと思います。そしてアメリカが金利を上げていくというときに、実務的に秋から検討されるとおっしゃっていましたが、その頃はおそらく新聞は国債価格暴落なんていう記事があるかもしれない。したがってここのところは、それに備えてもうちょっと前向きな表現をされていたほうがいいのではないかという意味を含めて、いつ頃からやるのですかということを申し上げているのですが。まあ、一言だけ意見を申し上げております。
〇委員
十分に議論に参加できていないので誤解があればご指摘いただきたいのですが、私の理解としては、金融所得課税の一体化も、ステージというか、最終的に着地したときの一体化と、当面実現できる一体化という段階論をとっているのではないかという理解をしていて、最終的な状況においては利子も含めて一体化であるのだけれども、当面、利子まで含めて一体化できるかというと、それはいろいろ困難である。当面は利子は入りがたいけれども、最終的着地点は利子も含めてだということをどこかで明確にするために[3]はなければいけない。[3]がないと私はちょっと不満だと、逆に。他の委員がおっしゃったように、もうちょっとやるというふうに書いていただければもっとハッピーなんですけど。[3]を落とされてしまうと、最終着地点は利子も含むのだというニュアンスが薄まるような感じがするので、そこはやはり重複をいとわず残していただきたい。
〇委員
これは、個人的な意見ですけれども、株式の配当と譲渡益の損益通算と、利子と譲渡益の損益通算というのはちょっと違うのではないかと思っていまして、利子と譲渡益の損益通算をすると、株式の有利性も上がるかもしれないけれども、貯蓄、預金のほうの有利性も上がるわけです。そういう意味で本当に「貯蓄から投資へ」ということになるかどうかというのは、よくわからん。だけど、配当と譲渡益だったらば株式のほうがたぶん有利になるだろうから、「貯蓄から投資へ」という流れにはたぶん当たるだろうという感じはしていて、これは個人的な意見ですけれども、さっき委員がおっしゃった、利子と損益通算すれば「貯蓄から投資へ」になるのだからというふうにすぐパッと行くかどうかというのは、個人的には疑問があります。
〇委員
おっしゃっていることはよくわかるのですけれども、それでまた蒸し返しになってしまうのですが、原理的にすべきでないことを政策要請でやっているのだという理解なのか、原理的にもこういう方向に進んでいくことが望ましいと。そこは、委員の考え方の対立が今の段階では残っているのだから、それを一本化できないということで、報告書の書きぶりはこういうところだというのはそれで結構だと思いますけれども。
〇委員
委員の意見は違っているのですか、今の点について。
〇委員
委員の意見が違うというよりも、私が最初にまとめたことで、文章にするかどうかよりも、少なくとも議事録には残ると思いますが、本来は税が今の所得税ではない、したがって発生ベースで課税ができるような税にして中立化していくのが一番いいんだということに関しては、合意があると思うんですよね。ただ、それを所得税という形で今やらざるを得ないので、ここはどういう表現になるのかは知らないけれども、やはり難しい。そう容易には一緒にできないし、今考えるべきことと、5年後に考えること、10年後に考えることでデリバティブの技術なども違うだろうから、一言で片づけられない文章を我々はつくらざるを得ない。そういう状況にある中で、そういう意味ではある種の妥協の産物という文章をつくらざるを得ないんですね、と。それはたぶん少なくとも議事録にはきちんと残っていくだろうと思うので、そこはご了解になった上でご発言等をいただきたいと思います。
〇委員
先ほど来話題になっている損益通算の範囲、具体的に言うと6ページの10行目から11行目ですけれども、ここで「諸課題の解決に取り組んでいく必要がある」という書き方がしてあります。その前のページをいろいろ見ていくと、大体、「実務面を踏まえた検討を進めていく必要がある」とか、「検討が必要である」とか、「検討すべきである」という書き方になっていて、ここだけ「取り組んでいく必要がある」という書き方になっている。このニュアンスの意味するところが、損益通算を可能とするために実際に解決に向けて議論していくんだよということなのか、あるいは、引き続き検討課題にのせますよというニュアンスなのか、あるいは、解決に取り組むことは必要だけど、検討するかしないかはちょっとわかりませんよというニュアンスなのか。今までの表現との違いというのでしょうか、そのニュアンスがちょっとここからは私は読み取れないのですけれども、どういうふうに理解すればよろしいのでしょうか。
〇委員
私が理解している限りでは、まず第一に、大きな問題として「官民双方の事務負担」というのがあるわけですね。これは、我々はヒアリングもしていないですし、どれだけの事務負担が出てくるのか、その結果、損益通算をするとかえって社会的費用が便益を上回ってしまう可能性さえ極端に言えばあるわけで、そういうこともきちんとやっていかなくてはいけない。それから、さっき言った「貯蓄から投資へ」ということに本当に合うのかどうかということも含めて、配当とはちょっと違うかもしれないとか、そういうようなことを考えていったときに、[2]の配当ほどコミットはできないですね、というニュアンスだと私は一応理解しています。どなたか、もし補足されたい方がいらっしゃれば、あるいは、何かおっしゃりたいことがあればあれですが、私はそういうふうに理解した上で、そういう意味では「検討を進めるべきである」とかいう表現よりは少し引いた表現になっている。それはそれなりの理由があるんだというのが私の一応の理解です。
〇委員
コンプロマイズする話になるのかもわかりませんけれども、[3]のところは実は複数のことを言っているわけですね。一つは、利子所得まで広げるのは原理的には正しいということを言っている。もう一つは、さはさりとて株式譲渡益と利子所得との関係は違うのだということの所得の性格上の問題を言っているわけです。3番目は、「また」以下で、これは現行、一律源泉分離課税をしている、執行上の問題として違う、と。そして最後に、これが本音かもわかりませんけれども、「税収への影響」ということを言っているわけです。だから、いろいろなことを言っていて、執行上難しい、難しいというところの具体的な部分は、支払調書も含めての部分のところに対応しているわけですよね。
ですから、[3]の部分はやはりもう少し整理したほうがいいので、税収への影響というのは税務当局からすれば重要なわけで、例えばこの改革というのは、当面、金融課税という点において税収中立的にやるのだという形で議論していると。セカンドベスト的な議論で、最適課税論的なフレームワークの中で考えるんだよというようなことを書くかどうかということも含めて、税収の問題については私は明示的に書いたほうがいいと思うのですよ。
〇委員
すみません、税収中立という議論は今まで全くしてきていない。
〇委員
だけども、書いてるわけ、「税収への影響」と。
〇委員
議論してこなかったことを小委員会報告に書けるかということを申し上げたわけで、税収に対する影響はもちろん議論しましたし、きちんと書いたらいいと思うのですけど。
〇委員
ですからそこは、暗黙のうちに税収が激減してはならないということ、税収中立的な考え方がこの背景にあるということは事実なわけですよ。あまり激変してはいけないと。そうではないのですか。
〇委員
もうちょっと気前がいいんじゃないですかね。配当と株式投信の収益まで入れているから、私は、そこまではまあいいのではないかと。それ以上いくのはトゥーマッチだと書いてある。
〇委員
要するに一時所得、雑所得だったものを分離したり損益通算なんかするわけなので、かなり減るような気がするんですけど。
〇委員
これは、経済学的な分析というものが背景にあるか否か、計量経済学的な分析があるかどうかということにも依存するのですけれども、考え方として激減するということにおいての歯止めをかけているわけですね、ここでは。
〇委員
そうです。
〇委員
そこは重要なんだということを、執行上の問題も含めて、つまり徴収コストの問題も含めて、別項目で書くというのであれば私はそれは意味があると思うのです。
〇委員
例えば5ページの14行目に損益通算の一般論が書いてあって、「損益通算の範囲を拡大すると税収が大きく減少する可能性がある」云々と書いてあるんですね。たぶん、こちらのほうが税収に関しては重い文章があって、それを受けて、今、委員がおっしゃっているところに受けてあるので、[3]のところは、これ以上税収のことを書くよりも、何か書き加えるのだったら、むしろ……。
〇委員
私は書けと言っているのではなくて、整理したほうがいいのではないですかと。ばらばらにいろいろな執行上の問題も書いたり、複数のところが出てきたり、税収のところも、今、おっしゃったとおり、複数のところが出てきているのを、もう少し整理統合ができるのではないですかということを申し上げているわけです。
〇委員
検討しますけれども、私の理解では、配当税収とか株式の譲渡益税収に比べて、利子所得税収というのは額的にただでさえ大きいわけですね。それから、これから利子率が上がっていった場合に非常に大きくなってくる。そういう意味で、一般論として税収の問題、損益通算は大事なんだけれども、利子と株式譲渡損を通算した場合には税収の問題というのは特に大きな問題になるのではないですかというのが裏にあって、再び税収がここでも出てきているということなのかなと私は理解しています。
〇委員
他の委員がおっしゃったとおり、利子課税の部分のところ、クオリフィケーションとしてずっと書かれているようなイメージがあるから、理論の部分のところでのそれを否定しているようなイメージがこの[3]のところで付帯化してしまうからわかりづらい、というのが皆さんのおっしゃっていることなので、そこの部分はまた別個書いたらいいと思うんですよね。
〇事務局
この[3]の部分、まず一つ、書いていただければ、我々としてはここに書いてあることについての検討をこれからすることができますので、むしろ書いておいていただかないと動きがとれない、そういう実情にあるということを事務局として申し上げたいと思います。
それともう一つ、税収の話でございます。これは、制度の仕組み方をどうするのかというのに深くかかわっております。一律源泉分離課税、これを申告還付を可能とする制度に改めようとした場合に、損益通算のためだけの制度とするのか、ないしは、一般的にいわゆる源徴で行われているものを還付を可能にする制度にするのか、これによって税収への影響というのは全く違ってきます。すなわち、一律源泉分離課税制度、これは皆様ご記憶だと思いますが、いわゆるマル優を原則廃止しまして利子を課税ベースに入れた。そのときに、10何億口座もあるそういった中で実務的にどうやってやれば課税ベースに入るのかということで、ある種実際的な課税ベース拡大の方策として十数年やってきている制度でございます。これを変えようという話なものですから、その際やはり税収への影響を当然考えざるを得ないということでございます。
さらには支払調書制度云々と書いてございますが、これは官と民双方にしかるべきコストがかかるということでございまして、「その場合」となっておりますのは、一律源泉分離課税を変える、さらに支払調書制度を導入する、そういう場合の官民双方の事務負担コスト、このようにご理解いただければと思っております。
〇委員
気になっていることを一つだけ申し上げますが、議論を2つに分けて今日議論したらよかったのかもしれませんが、7ページ以降に「納税環境の整備」というのが1枚ちょっとあります。これについて実はほとんど議論されていないんですね。これで本当にいいのだろうかと。皆さん、実現と発生のところを非常に気にしていらっしゃって、それはそれでいいのですが、別に問題がなければちっとも問題はありませんが、一応念のために皆さんのご注意を喚起しておきます。
〇委員
利子と株式譲渡損益との関係については、臨時的なものと経常的なものという説明もある程度成り立つと思うのですが、公社債の利子と公社債の譲渡損益については、今まで、両者は一体でいわば表現形式が違うだけだと説明してきて、それを変えるときに、片方は臨時的なもので片方は経常的なものだということで、公社債利子と公社債の譲渡損益の間の損益通算を規定するというのはかなり強引な理論武装が必要かなと。それを認めるか認めないかは、これは書いていないのでよくわかりませんが、それが一つ気になったのと、それからある委員がおっしゃったことです。
長期金利上昇、上昇、上昇という感じになっていますから、そのことも含めると、公社債利子と公社債譲渡損益の関係については、「さすが税調、先の長期金利の上昇を見込んでここまで入れておいた」というような雰囲気がほんのちょっとでも漂うようなことがあったほうがいいのではないか。まあ、結論はどうなるにしろ、そんな気がします。
それからもう一つ、5ページのところで、株式の譲渡損失と配当所得との損益通算について書いてあるのですが、これも現行の商法を前提とした上での配当所得ということで、商法のほうで非常に大変な改正が進行中でございまして、配当所得というのがそんなに簡単に定義できるようになるかどうかも、もう数年先に怪しいという状況ですから、そこまで見越してこの答申は出せないと思うのですが、俺たちは商法の改正も知ってるよという感じをほんのちょっと入れておくと、雰囲気が保てるのかなという感じです。
〇委員
デリバティブがどうのというような話もどこかになかったでしたかね。そこら辺との関連で、将来のフレキシビリティというようなものを場合によっては……フレキシビリティという言い方は悪いかもしれません。将来まだ不確実性がありますと、そういうニュアンスをどこかで出すのも一つかもしれません。
〇委員
これはいい文章だと思ったのですが、2ページ目のところで、「拡大することの2点がある」。そのあとに、「金融商品間の課税の中立性・簡素性の観点から」云々で、そこで「さまざまな所得分類に加工することが容易になっている状況の下」というのがあります。これはたぶんデリバティブも意図していたと思うんですよね。ここに最後にポツッとあるのがさみしいので、どこかもう少し目立つところに置くか、もう少しこれを膨らませられればいいと思うのですけれども。
もう一つ、納税者番号制度です。これもニワトリとタマゴだと私は思うのですけれども、名前はどう呼ぶかはともかくとして、選択制ということになると思うので、選択制ですから、使ってもらえないことにはどうにもならないということですよね。となると、損益通算の範囲をある程度拡大していかないと、それが利子所得もかかわってくると思うのですが、誰も使わない。損益通算の範囲が限定されれば使う機会も少ないですから、当然、納税者番号を使おうなんていう気にならないですよね。強制しているわけではなくて選択制なわけですから、それを普及させるという観点からすると、損益通算というのは可能な限り拡大していかないといけないでしょうということが一つ。
それから、これはどこまで書くかわかりませんけれども、一生、選択制にしたいというよりは、今この段階において国民にはいろいろなアレルギーがあるということなので、実験というと大げさですけれども、とにかく部分的にでもやってみて、その便利さをみんなにわかってもらうというか、見てもらおうと。どれくらい便利なものなのかということ。その上で普及させていく。そういう二段論法もあると思うので、そこらあたり少し膨らませて考えたほうがいいのではないかと思うのですけれども。
〇委員
番号制度ですが、本当に便利なのかというのがあって、私は、「適正な税務執行の観点から」ということを、正論なのだから、もう少しはっきり書いてもいいような気がするんですよね。損益通算は受けたい、でも所得の把握をこれ以上厳正にはやってもらいたくないとかいう変ないいとこ取りはできないんだという趣旨のことを、書いたほうが。もちろん利便性もあるだろうけれども、利便性があるでしょうというロジックを押し出すと、別に番号なんかなくてもできますよみたいな反論が一方で返ってくるというのがあって、「適正な税務執行の観点」というのが7ページの10行目にはあるのですが、番号制度の中の説明では、その趣旨が直接は触れられていないのかもしれないですが、触れてもいいような気がするというのが感想です。
〇委員
7ページの21行目でしょうか。「その場合、何らかの番号制度を利用することによって、より正確かつより低い社会的費用でマッチングすることが可能となる」とありますけれども、ここに場合によっては前か後ろか知りませんが、「適正な執行を行うため」と、何かそういうような言葉が入ったほうがいいというご趣旨だということでよろしいですか。
〇委員
そうです。
〇委員
ありがとうございます。
では、どうぞ。
〇委員
質問ですが、8ページの最後のところ、下から3行目、「民間における個人情報セキュリティを巡る動向や」云々と書いてあって、「必要に応じてこの番号に係る特別の制度整備を検討すべきである」と書いてあります。これの意味するところがいま一つ私はよく理解できないので、どういうことを念頭に置いておられるのか、ちょっと説明をいただけたらと思います。
〇委員
事務局に説明してもらいます。
〇事務局
ここに書いてございますように、「一般的な法制面での対応」というのが現在行われております。片やそれに上乗せして何らかのペナルティーを、例えば「番号」を漏洩したような場合に特別なペナルティーを科す、そういう意味において特別な制度整備ということでございます。この番号をつくるにしても、あくまでこれは法律にしなければいけないものですから、その法律で特別にペナルティーを科す。プライバシー保護、セキュリティに関しての特別なペナルティーを科すことがある必要があるかもしれない、こういうことでございます。
〇委員
そうしますと、要はこの番号のセキュリティを高めるためにそういう特別な整備をする、そういう積極的な意図ということですか。
〇事務局
全くそのとおりです。
〇委員
であれば、このところをもう少しポジティブに書かれたらいいのではないでしょうか。単に特別の制度整備ではなくて、プライバシーの保護をより確実にするためとか、そういうための方策。特に私が気になるのは、自分に番号が付されたときにそれを守ってほしい。つまり、利用するのであれば、その利用される情報が守られているという安心感がなければ、損益通算の金額が小さければ、いやだなということになりかねないわけで、そういう保護という色彩を出されたほうがいいのではないかと思います。
〇委員
3行目くらいに「支払者から番号情報が漏洩する恐れもある」と書いてありますけれども、これのためにということをもう少し積極的に出せと、そういうご趣旨だということですね。
〇委員
はい。
〇委員
番号の件は、「より正確かつより低い社会的費用でマッチングすることが可能となる」、これは非常に正しいことが書いてあって、非常にいいと思うんですね。ただ、これだけだと、先ほど委員が言われたみたいに、ほかでもできるのではないかという話が常に出てくるわけですよね。だからこれを積極的に……まあ、ここで書く必要はありませんが、なぜ必要なのかということをどこかで言われる必要があるのではないかと思います。
番号というのはなぜ便利かというと、単一の基準でソートできるからなんですよね。名前と住所なんてあるけれども、名前で言えば同じ人が何万人も出てくる、それをもう一回住所と合わせるという作業が要るから一つの基準でソートできないのです。だから、必ず名前はあっても受験番号のない受験なんてないわけで、それがあるからうまくできるということをどこかでキャンペーンする必要があって、技術的に必要なんだ、と。番号が漏れること自体はそんな大したことではなくて、マイレージ番号なんてみんな漏れていて、それで影響があれば……影響があることはある。自分で言わないとこれは使えないわけでしょう。相手が取引でそれを書いて出してくれないといけないわけだから、相手が使ってくれなければいけない。そういうメカニズムがわからないから何となく反対するというのが、ずいぶんあるのではないかと思いますので、その辺を何か工夫できないかなという気がするんですけどね。
〇委員
保険のところで一言もないので。外貨建て金融商品が上にあって、保険があって、ケタで言うと2ケタくらい違うのかどうか知りませんけれども、それにしては保険の書き振りがさびしいなというか、これだけ大きな資産になってきて、読む人にどういうメッセージを流すのかなということで、一時払い養老保険は金融類似商品だから10%の税率になっていますよ、あとは一時所得と雑所得、生命保険と個人年金みたいなものはそういうふうに分かれていますと。いいのですけれども、もうちょっとわかりやすく書けないんですかね。次に「保険には死亡や病気などの備えという機能がある」と。例えばこれは純粋な掛捨て保険などですよね、言っているのは。それについてはここの議論ではないですよと。そうすると、あとは20%の分離課税はいいのですけれども、ここの金融所得の委員会で書くべきではないかもしれませんが、何かもうちょっと。例えば現行の生命保険料控除はどうなっているんだとか、身ぎれいにしてというとおかしいけど、きれいにしてこれも移行するんだと。もっと言っていくと、じゃ公的年金はどうなんだとかいう話にどんどん広がって、さっき言ったようにケタが2ケタ、3ケタ飛ぶ話になるんですけど、ここは事の重要性というのかな、個人資産の厚みから言っても、今後、何か書き足すことがないのか。少なくとも掛け捨てと収益を求める保険は違う、という書き込みはあってもいいかなと思います。
〇委員
もちろんわかりますが、一つ、皆様にご了解いただいておいたほうがいいのかなと思うのは、私は当事者ではないのですが、横から見ていて思うのは、秋以降にいろいろなことを具体的な設計に入るわけですよね。そのときにある意味でフリーハンドを持っていないと設計ができない話というのはいくつかあって、例えばさっきの預金の話もそういう面がかなり強いし、保険もひょっとしたらそうかもしれない。もちろん、きちんと書くことも大事ですから、そこら辺はバランスだと思いますが。
〇委員
7ページの「申告機会の増加」のところですけれども、12行目で、「損益通算の範囲を拡大すると、源徴された税金の還付を求めるための申告が必要となる」ということです。ここら辺の確認ですけれども、まず、損益通算の範囲を拡大すると申告が必要になるのは、主に利子所得を入れると、こういった申告が新たに必要になるというふうに言っているのか、という点と、それから、申告機会の増加は所得税の将来のあり方との関係では望ましいという文章があるのですけれども、これは、所得税は個人がちゃんと申告をして納めるべきというのが政府税調として世の中に対して言うべきことなので、こういう一文があったのか、というのが質問です。
というのは、将来のあり方はそうなのかもしれないですけれども、やはり世の中の動きを見ていますと、特定口座等もありますが、納税コストというか、納税のための書類を書く時間とか、税務署に足を運ぶ時間のコストというのがどんどん高まっているので、あり方との関係で望ましいというふうに申告機会の増加をとらえるのかというのは、ちょっと疑問のところがあるんです。ただ、今回はこの文章で結構です。
〇事務局
まず、利子の場合だけかということでございますが、仮に配当と通算を認める場合でも、少なくとも現在の特定口座の仕組みからすれば、特定口座には配当というものが入っていないものですから、いずれにせよ別途申告をしてもらう必要がございます。そういう意味においては、現在の損益通算の範囲を少しでも拡大するだけで、申告というものは、少なくとも今の仕組みでは必要になります。
それから、所得税の将来のあり方、これは皆様のご論議次第でございます。我々といたしましては、自分のことは自分でちゃんと申告するのも一つの考え方であるということで、実は基本方針、中期答申においても、サラリーマンの申告について、今の給与所得控除という概算控除、これを見直して、それぞれのサラリーマンが申告する機会を増やしていくべきだ、こういう記述も頂戴いたしております。所得税の将来のあり方というのは、そういうことをバックグラウンドにしているというふうに我々は理解しております。
〇委員
私は、「納税環境の整備」、これでいいと思いますけれども、ただ今後の問題として、今、私も、証券会社その他を含めて実務から遠ざかっていますから、ヒアリングをしている最中ですけれども、「金融所得課税の一体化を実現するためには、制度の適正な執行と納税者利便の向上」、そのとおりなのですが、例えばこういう意見が多いんですね。今までの議論と若干関係しますけれども、7ページの20行目にありますように、「税務当局は限られた人員と時間でマッチングしなければならない。その場合、何らかの番号制度を利用することによって、より正確かつより低い社会的費用でマッチングすることが可能となる」と。納税者のコストが安くなるのではなくて、徴税当局だけに利便性があるのは困るぜと、実態としてそういう意見がわりあいあります。この前、ある委員が、たしかアメリカでの納税のやり方で非常に簡素な書式があって、記入すればすぐできるというようなことは、今後の問題として当然事務局は考えておられると思いますけれども、そういうことをいろいろPRしていくことが必要ではないかと思います。
〇委員
実を言うと、最初、たしか「より低い費用で」と書いてあったのを、「より低い社会的費用で」と書き直したのです。それは、納税者側のコストも安くなるのだという心を入れようとして入れたのですけれども、今のご意見は、あまりそこは伝わってないよというご意見だと思うのですが、具体的な文章か何かありますか。
〇委員
私は文章はそれで十分だと思います。でも、今後の一般的なPRとか、そういう感じですね。
〇委員
わかりました。
〇委員
「社会的費用」という言葉はいいのですか。外部経済とかそういう話に関連づけられる危険性はあるわけですよ、社会的費用というのは。外部不経済との関係で。だから、コンプライアンスコストとか、もう少し結びついた形で表現したほうが、今の委員の指摘は、誤解を招かないのではないかという気はしますけどね。コンプライアンスコストというと、それは、執行上の両方の面で社会的全体のコストが低くなるという意味での使われ方をしていますから。
〇委員
であれば、課税庁も納税者もより低い費用でと、そういうふうなニュアンスのほうがいいということですね。
〇委員
そうです。そういうふうにはっきりとしたほうがいい。ここは私は事務局に同情的でして、番号制度をここで全面的に打ち出すと、これは本丸ですから、やはり抵抗が……。ほかの部分とかベネフィットに大体結びついているわけですね。ここはおずおずと、金融性所得の一体ということでメリットはあるよという形で言っていて、そして、そのカウンターパートとしてオプションなんだと、こういう話なんですよね。だから私は、今の段階ではこれでしかないのかなという感じがしますけれども。
〇委員
飛び飛びに出ていたので、完全に理解していなかった、ようやく腑に落ちたのですが、損益通算という議論をしていて、そこでの損失というのは株式譲渡損失ですよね。一周遅れでようやく追いついたように思うのですけれども、それがどこで読み取れるかということで、金融所得というのは、損益が全部金融所得なんだという議論をしながら、本当に制度的に対象にしようとしているのは株式の譲渡損失だということを、一言入れることを検討されてもいいのかなと思います。
1ページの18~19行目で、預貯金と株式や株式投資信託ということを言われて、ここで投資というのは株式、株式投資信託で、以下、そうなんだよという頭でおそらく書かれているわけですが、例えば4ページの損益通算についての考え方で、ざーっと5ページの先ほど議論になったところに入り込んでいくわけですが、例えば30行目、「株式譲渡損失は」という書き出しのところで、「投資にかかわる金融所得の主たる損失である」とかいうふうにつけ加えられると、損失というのは基本的に株式の譲渡損で、投信がちょっと入りますが、それを他から差し引くことを考えているのだという議論にきれいに流れるのではなかろうかと思うのですが、検討だけしてくだされば大変光栄です。
〇委員
ご趣旨は、損益通算といったときに損のほうは株式の譲渡損なので、「貯蓄から投資へ」ということを踏まえて、そことの通算を議論しているんだよということを書け、と。
〇委員
少なくとも主たる戦場であったということをですね。
〇委員
書いたほうがいいのではないかというご趣旨ですか。
〇委員
はい。
〇委員
それでは、何かリアクションがあれば別ですが、検討させていただければと思います。ただ、2の[1]で、公社債の譲渡損益。だから、公社債については譲渡損も入っているということではありますね。一応そこはご了解いただきたいと思います。
では、よろしいでしょうか。時間の関係でこのあたりで終わりにしたいと思います。
委員の皆様には、大変ありがとうございました。報告案については、大筋においてこの案文でご了解賜ったと考えております。なおいくつか議論とか指摘とかございましたので、それは、私、事務局、会長で検討させていただきたい。最終的な案をとりまとめさせていただきたい。ぜひ最終案についてはご協力のほど、よろしくお願いしたいというふうに存じます。
〇委員
感想を。今日はいい議論をしたんじゃないですか、皆さん。だんだんまとまってきて、小委員長の苦労もあって、とりあえずまとまるような雰囲気というか、大体これに沿った議論でより深めたという意味で、あまり脱線したのもなかったし、聞いていて、今日は安心感をもって聞けたというのが印象ですね。
最後、補足的に言うと、6月に出すやつはある意味で頭出しというか、「こういう問題意識を」と、世の中に問うわけですから、今、一文ごとの解釈をここで規模別的に厳格に書くことはかえってまずいんですよ。たしかある委員がおっしゃった利子のところで、ここをどう読むのだと、二つ、三つ、選択肢を挙げましたけれども、皆さんの幅の中で落ち着いていればいいんですよ、今の段階ではね。このほうがかえって重要なので、同床異夢というところまで行くのかどうかわからないけれども、利子のところだって、やるよという人がいてもいいし、じっくりやろうという人もいていいし、今のところ幅の中で議論して、小委員長が盛んに言われている、秋以降実際の中でその幅がだんだん狭まっていくというので、私はそっちのほうが実際的だなあと思いますけどね。
だから、今のこの報告書については、7、8割、皆さん満足すればいいですよ。この意見に100%賛成だという人がいるのはかえって問題なので、大体7、8割のところでまあまあ矛先をおさめて、トータルすればもっと満足度は上がるわけだから。まあ、そういう印象を持ちました。
〇事務局
本当にありがとうございます。実は、先ほど委員もちょっと言われましたけれども、貯蓄率がものすごく落ちているというのが、はっきり言って、私ども経済を見ている者から見ると非常に心配しております。先般来やっている租税条約も全くその一環なのですが、このままいくと、個人の貯蓄というのはよく1,400兆と言われますけれども、もう増えない、むしろ減っていく。そういう中で考えたときに、その実質的個人貯蓄を増やすというのは、アメリカがそうであるように、経済の発展の受益を個人に回していくことではないのだろうか。それが重要になっている時代ではないか。
そういう意味では、税制の理論的背景も重要なのですが、まさに総理から指示をいただいたように、個人にとって貯蓄から投資へ回すことによって、経済の配分を直接個人金融資産残高として増やしていくことが焦眉の問題としてあります。選択制で番号というのは、影響が利子を入れないと小さいと言われましたけれども、配当所得を株の譲渡損で消せるということですから、実は配当収益で稼いでいるお年寄りというのはいっぱいいて、自分の譲渡損になった株を入れかえることが可能になるわけで、そういう意味では、番号を使えば、税収では決してニュートラルではなくて、税収は減ることは確かだと思うのです。しかし、それを覚悟の上でも利便性を高めてやっていく必要があるという意味で、今回、こういうお願いをしているという背景があります。
さらに、もっと大所高所で考えたときに、本当は私自身は、アメリカという国が、金融所得を総合課税合算でやっているという大きな国がそうなっているものですから、そのあたりとの整合性はどういうふうに将来的には考えたらいいのかなという実は悩みは持っています。ただ、相違は別にして、今言ったような政策的要請から、やはりここは大いにご議論をいただけたらと思っていましたから、こういうご議論をいただけたことを本当に感謝している次第であります。
〇委員
長い間、審議にご協力いただきましてありがとうございました。
今後の予定ですが、次回はすでにご案内したとおり、来週15日火曜日の午前11時からということで予定しております。その会合で、本日の議論を踏まえて修文した最終案をご検討いただきたい。その上で、報告のとりまとめを行って、その日の午後の総会に報告をしたいと考えております。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。冒頭に申し上げましたように、「報告案」は席上にそのまま残していただきますよう、お願いいたします。
では、本当にどうもありがとうございました。来週、よろしくお願いいたします。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。