第9回金融小委員会 議事録

平成16年6月1日開催

委員

ただいまから、第9回の金融小委員会を開催いたします。

本日は、前回の小委員会で申し上げましたとおり、これまでの議論を踏まえて、私のほうで論点整理メモを準備し、お手元にお配りしております。これをもとに、取りまとめの内容について議論したいと思います。

なお、この論点整理メモの取扱いについては、報告の起草段階の資料ということになろうかと思いますので、最後に回収させていただきます。本日の審議の終了の際、また、途中退席される場合にも、席上にそのまま残していただきますよう、よろしくお願いいたします。

この論点整理メモは、報告案を箇条書きにしたようなものだとお考えいただければと思います。また、論点整理メモのうち、1ページを見ていただければわかりますが、四角で囲ってあるのが制度等の「説明」部分で、その下に〇をつけて箇条書きになっている部分が「意見」に当たる部分という構成になっております。

それでは、お手元の論点整理メモについて、事務局から説明をしていただきます。事務局、よろしくお願いいたします。

事務局

論点整理メモですが、まず全体をさっと見ていただきますと、最初の1ページ、2ページがいわゆる総論、一体化の意義ということでございます。それから3ページから、一体化の議論としての半分、課税方式でございます。3ページから、配当、その次の公社債、それから外貨建て金融商品、保険と、このように並んでおります。次の6ページから、一体化のもう一つの中身である損益通算が2ページにわたってございまして、8ページに、資産滅失、無価値化の話が入っております。最後の9ページ、10ページが、納税環境の整備ということで番号制度のお話が書いてございます。

それでは、読み上げさせていただきます。

金融所得課税一体化の意義

【背景】

我が国ではこれまで高い貯蓄率の下、潤沢な家計金融資産のストックが築き上げられてきた。しかし、少子高齢化の進展から、近年、貯蓄率は顕著な低下傾向を示している。今後の人口減少社会においては、貯蓄率の反転上昇による金融資産の増加を期待することは難しく、むしろ現存する金融資産を効率的に活用することこそが、経済の活力を維持するための鍵である。このような観点から、「貯蓄から投資へ」の構造改革が進められてきている。

  • いわゆるプロの投資家だけでなく、今まで「貯蓄」を中心に資産運用を行っていた一般の国民にとって、より一層「投資」を行い得る環境を整備する政策的要請がある。
  • 金融商品の中から、税負担の違いに左右されず、それぞれのニーズに応じて投資先を選択できるよう、金融商品間の課税の中立性が要請される。また、一般の個人投資家が、投資判断を行うためには、簡素でわかりやすい税制であることが求められる。
  • こうした取組みにより、一般の個人投資家にとっての投資利便性を高めるような税制の構築が求められている。

【税制論からみた位置付け】

  • 北欧諸国が二元的所得税を導入した際の、課税ベースの拡大、海外への資本逃避防止、資本所得間の中立性の確保などの問題意識は我が国の税制を考えるに当たっても重要な点である。
  • 北欧諸国においては、勤労所得の最低税率が30%前後と我が国に比べ著しく高い水準にあるなど、税率構造が我が国と根本的に異なる。北欧型の二元的所得税を我が国の目指すべき所得税の姿とすることについては、我が国の経済・財政状況や税体系を踏まえ、慎重に検討すべき課題である。
  • あらゆる種類の所得(事業所得、雑所得、一時所得、不動産所得等)を資本所得と勤労所得とに二分することは困難である。資産の中でも、土地は土地基本法により公共性のある資産とされているなど、金融商品と不動産とでは性格が異なる面もある。
  • 我が国の所得税制は、包括的所得税を基本として構築されているが、金融所得課税については、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点から、比例税率による分離課税が導入されてきた。今般の金融所得課税の一体化は、このような現行の分離課税制度を再構築するものと考えることが可能である。
  • 二元的所得税論については、所得税制全体のあり方として、引き続き検討の必要がある。当面、「貯蓄から投資へ」の政策要請の下、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築する観点から、金融所得課税の一体化を進める。

【具体的内容】

  • 金融所得課税の一体化の具体的内容としては、金融所得の間で課税方式をできる限りそろえていくこと、金融所得の間で損益通算の範囲を拡大することの2点がある。金融商品間の課税の中立性・簡素性の観点からは、課税方式を揃えていくことが重要である。
    金融所得課税一体化の具体的内容
    課税方式

【配当】

配当所得については、事業参加性のある所得であることを踏まえ、総合課税を基本としつつ、納税者の事務負担に配慮して所得税の少額配当申告不要制度を設けてきた。平成15年度税制改正において、大口以外の上場株式及び公募株式投資信託の収益分配金について、金融商品から生ずる所得であるという点に着目し、上限なしの申告不要制度が導入された。また、配当所得については、事業参加性を勘案した株式を取得するための負債利子の控除や、法人税との調整のための配当控除制度が設けられている。

  • 配当所得について、一般投資家の金融所得という性格に着目すれば、他の金融所得との中立性の観点から、20%の税率による分離課税とすることが考えられる。その場合、負債利子控除や配当控除は不要となると考えられる。
  • ただし、多様な配当所得の全てを金融所得として課税することは必ずしも適当ではない。たとえば、事業支配のために大口株主の保有する株式の配当については、事業参加的側面が強いことから、事業所得とのバランスを踏まえ、総合課税を維持すべきであると考える。非上場株式については、他の類型の所得を配当所得に変換する可能性もある。
  • 今回の金融所得課税の一体化の議論を契機に、配当課税と法人税との調整についても、諸外国の動向等を踏まえ、改めて考える必要がある。配当所得を分離課税とすれば、法人税の存在を勘案したとしても、個人の負担水準としては適正と言えよう。

【公社債譲渡益等】

公社債の譲渡益は、現在、経過利子の反映であるとの考え方に基づき、非課税とされている。また、その反面、譲渡損失はないものとみなされている。しかるに、公社債市場の現状では、日々の金利の動きにより市場価格が変動し、その結果として譲渡損益が発生している。また、金融商品が多様化する中で株価に連動するような債券や外貨建ての債券など、金利以外の要因により譲渡損益が生じる商品も一般の個人投資家向けに販売されている。

  • 現行の取扱いは他の金融商品との課税の中立性の観点から問題がある。したがって、公社債の譲渡益については、株式譲渡益同様に課税を行うとともに、譲渡損失については、税制上の譲渡損失として認識すべきである。
  • 公社債の償還時の差損益の取扱いについても、譲渡損益とのバランスに配慮しつつ、あわせて検討すべきである。
  • 譲渡益課税を行う場合の具体的な課税の方法については、公社債の取引実態等を踏まえ、実務的な検討が必要である。
  • 公社債の譲渡益課税を行う場合、公社債投資信託の譲渡益についても同様の課税とするべきである。

【外貨建て金融商品】

外貨建て金融商品は、国際分散投資の考え方とともに、一般の個人投資家の資産運用対象としても定着してきている。外貨建て金融商品の為替差益のうち、外国株式については、譲渡時に為替差益が実現するため、株式譲渡益として分離課税とされる。他方、外貨預金(為替予約のないもの)の為替差益は、雑所得として総合課税されている。

  • 他の金融商品との中立性を確保する観点から、外貨預金の為替差益については、20%分離課税の対象とすることを検討すべきである。
  • 外貨預金の為替差益については、源泉徴収の対象ではなく、法定資料も不要とされているが、分離課税とする場合の適正な執行の確保について、実務的な検討が必要である。

【保険】

保険から生じる収益については、金融類似商品として利子並みに20%源泉分離課税とされている一時払い養老保険(5年以内)を除き、一時所得又は雑所得として総合課税の対象とされている。

  • 保険には死亡や病気などへの備えという機能がある。たとえば死亡保険金についてまで、他の金融所得との中立性を強く求める必要性はないと考えられる。
  • 一方、満期保険金や解約返戻金等の収益が、満期時又は解約時までの保険料の運用成果と見うる場合については、他の金融所得との中立性を確保する観点から、金融所得として20%分離課税の対象とすることを検討すべきである。
    損益通算等

【損益通算についての考え方】

現在、金融取引から生じた損失については、株式譲渡損失は株式譲渡益から控除可能とされ、また上場株式等の譲渡損失は3年繰越しも可能とされているが、譲渡損益の発生状況によっては、損失を控除し切れない場合もある。

  • 金融所得の間で損益通算の範囲を拡大し、損失の控除をより広く可能とすることにより、現行の取扱いよりも投資リスクが軽減される。その結果、一般の個人投資家のリスク資産への投資促進に資する。
  • しかし、譲渡所得は、資産を取得した時から一定の期間をかけて生じた含み損益が納税者の任意で行われる譲渡によって実現するものである。そこで、利子、配当などの毎期発生する経常的な所得とは性格が基本的に異なるので、譲渡所得と経常所得との間の損益通算を認めることは本来適当でない。主要諸外国においても、譲渡所得と経常所得との間の損益通算を認めていない国が多く、認めている米国では一定の金額以下に制限されている。
  • 損益通算の対象となる損失と利益との課税の均衡が必要である。分離課税される所得と総合課税される所得との間の損益通算や、分離課税でも税率の異なる所得の間の損益通算を認めることは適当でない。
  • 損益通算の範囲を拡大すると税収が大きく減少する可能性がある。したがって、具体的な制度設計に当たっては、現在の危機的な財政状況を踏まえ、税収への影響についても考慮する必要がある。
  • 損益通算の範囲拡大に適切に対応できるよう、申告に先立って支払時点で徴収しておく源泉徴収制度や取引の把握のための資料情報制度など執行体制の整備が必要である。

【損益通算の具体的範囲】

(株式譲渡損益と公社債譲渡損益)

  • 株式譲渡損益と公社債の譲渡損益との損益通算については、両者がともに有価証券の譲渡損益として同じ性格の所得であることを踏まえ、適正な執行体制の下で公社債譲渡益が課税化される場合には認めるべきである。

(株式譲渡損失と配当所得)

  • 株式譲渡損失と配当所得との損益通算については、配当所得は経常所得であり、譲渡所得とは基本的な性格が異なることから、金融所得課税の一体化ということだけで直ちに認めることはできないと考えられる。
  • しかし、「貯蓄から投資へ」という重要な政策要請の下、配当と株式譲渡損失は、ともにリスク資産である株式から生じるものでその関連性が強いこと、また、配当所得が分離課税化されれば両者の課税上の取扱いは均衡がとれることから、上場株式の配当と譲渡損失、公募株式投資信託の収益分配金と譲渡損失の間の損益通算を政策的に認めることが適当と考えられる。
  • 政策的に損益通算を認める場合であっても、諸外国の例も参考としつつ、損益通算について一定の制限を設ける必要がある。
  • 損益通算し切れなかった株式譲渡損失は3年繰越しの対象とし、翌年以降も損益通算可能とすることが適当と考えられる。

(株式譲渡損失と利子所得)

  • 株式譲渡損失と利子所得との損益通算については、譲渡損失と経常所得という所得の性格の違いに加え、株式譲渡損失と配当所得の場合に比べれば、所得の関連性がより薄い。
  • 損益通算を行うためには、一律源泉分離課税とされている利子所得について、申告還付を可能とするとともに、支払調書制度を整備する必要がある。
  • 利子所得との損益通算を可能とすると、税収への影響も大きくなるということも考慮すべきである。
  • 株式投資の一層のリスク軽減を図る観点から、代表的な金融所得である利子所得と株式譲渡損失との損益通算を可能とするために、上記のような諸課題の解決に取り組んでいく必要がある。

【資産滅失】

現在は税制上の損失として認識されていない金融商品からの損失として、金融商品の無価値化による損失の取扱いについて検討を行った。たとえば個人の保有している株式について、株式を発行した会社が倒産して株式が無価値化した場合の損失は、現行制度においては所得の処分に当たるという考え方から税制上の損失として認識されない。また、預金のペイオフによって生じた損失も税制上認識されない。

(株式の無価値化損失)

  • 株式については、証券取引所では上場廃止の前に一定の売買可能期間において譲渡することにより譲渡損失を発生させ、譲渡益から控除することが可能である。
  • 一方、株式売買に慣れていない一般の個人投資家の利便性に配慮し、また、譲渡の場合とのバランスを踏まえ、株式譲渡損失と同様の取扱いとするという考え方もある。主要諸外国においても、一定の要件の下、株式の無価値化損失を譲渡損失とみなして取り扱っている国が多い。
  • ただし、非上場株式については、意図的な倒産による租税回避の可能性もあり、また、一般投資家の株式投資支援という目的からも離れることから、別に考えるべきである。
  • 株式の無価値化損失に対し政策的に措置する場合、株式の無価値化については、株式の譲渡という取引が存在しないため、株主や取得価額の真正性を税務当局がチェックできるよう、適正な執行のための担保が必要である。

(ペイオフ損失)

  • ペイオフに際しては、元本1千万円までの預金とその利息については預金保険により全額保護される。また、無制限に保護される決済性預金も存在する。このような預金保険法上の保護に加えて、ペイオフ損失を税制上措置することは、「貯蓄から投資へ」の要請からは説明できない。
  • ペイオフ損失については、主要諸外国での取扱いも踏まえ、税制上の損失として認識しないという現行の取扱いを維持することが適当である。
    納税環境の整備
  • 金融所得課税の一体化を実現するためには、制度の適正な執行と納税者利便の向上を図るための納税環境の整備が必要である。

【申告機会の増加】

  • 現行制度は、ほとんどの給与所得者が納税申告を行わないで済むことを前提に、納税者及び税務当局の事務負担や、投資家心理にも配慮して、源泉徴収を活用し、申告を不要とする仕組みが中心となっている。
  • 納税者・投資家の利便性や適正な税務執行の観点から、申告に先立って支払時点で徴収しておく源泉徴収制度は引き続き重要である。
  • 損益通算範囲の拡大による申告機会の増加は、納税者が自ら申告する所得税の将来のあり方との関係では望ましい。

【マッチングの必要性】

  • 損益通算の適用を受けるために申告が行われると、税務当局において納税者の申告する損益をチェックせねばならない。取引時の本人確認の徹底により、取引が真正な名義で行われることを担保する必要がある。
  • 取引による金銭の支払についての調書が支払者から税務当局に提出され、納税者の提出した申告書の内容とマッチングできることが必要である。

【番号制度】

  • 損益通算の範囲を拡大すると、税務当局は、限られた人員と時間の中で申告書と支払調書のマッチングをする必要が生じる。その場合、何らかの番号制度を利用することによって、より効率的かつ正確にマッチングすることが可能となる。
  • 損益通算の範囲の拡大は投資家の利便性を向上させるものであるが、番号制度に対して未だ国民の理解が必ずしも十分でないので、番号制度を一律に導入することについては慎重な対応が望まれる。
  • 番号制度を導入する場合には、損益通算の適用を受ける者のみが番号を利用するという選択制とすることが考えられる。その場合でも、マッチングの実効性の確保が必要である。
  • 選択制とする場合、これまでの「納税者番号制度」の論議において前提条件とされていた全国民を対象とする全国一連の番号である必要はなく、新たな番号を活用することが可能である。
  • 今後の検討においては、官民に生じるコストなどの負担面も具体的に検討する必要がある。
    (プライバシー保護)
    プライバシー保護については、平成15年に個人情報保護法が成立している。個人情報保護法は民間事業者の取扱う個人情報保護についてOECD8原則に合致した規定を置いており、法制度上はプライバシー保護に進展が見られる。ただし、個人情報保護法は平成17年4月から全面施行される予定であり、現在、個人情報保護に関する基本方針を受け、主管省庁においてガイドラインの制定等の準備が進められている。
  • 損益通算のための選択制の番号であっても、納税者が支払者に対して番号を告知することになるので、支払者から番号情報が漏洩する恐れもある。民間における個人情報セキュリティを巡る動向や個人情報保護法などの一般的な法制面での対応について引き続き注視し、必要に応じてこの番号に係る特別の制度整備を検討すべきである。

以上でございます。

委員

では、これからの時間では、今お読みいただいた論点整理メモについて、ご質問やご意見をいただきたいと思います。先ほど申し上げましたように、次回ご審議いただく報告案は、この論点整理メモを本日の議論を踏まえて修文したものを、文章の形でつなげるようなものにしたいとイメージしております。したがいまして、本日の議論では、箇条書きとなっている個々の意見についての修文だけではなくて、メモ全体の流れ、構成等にもご留意いただきながら、ご意見を出していただきたいと存じます。また、発言の際には、関連するページ番号と場所をおっしゃってください。

議論ですが、最終的にはもちろん自由討議にさせていただきますが、少しフォーカルポイントを定めたいということで、まず、先ほど事務局が言った1、2ページの「背景」、それから3~5ページの「課税方式」、6~7ページの「損益通算」、8ページの「資産滅失」、9ページ以降の「納税環境の整備」という5つに分けて議論を進めていきたいと思います。

したがいまして、まず1ページから2ページの「金融所得課税一体化の意義」と「背景」、この部分について、まずはご意見等ありましたら、ご発言いただきたいと思います。どうぞ、どなたからでも。

委員

2ページの上からパラグラフで2つ目の「あらゆる種類の所得」から始まるところの第2文で、「土地は土地基本法により公共性のある資産とされているなど、金融商品と不動産とでは性格が異なる面もある」。この文章だけだと、これをもって次にどういうふうにしたいのかというのがちょっとよくわからないのですけれども、できれば追加で、この趣旨をご説明いただきたいと思います。

委員

事務局、どうぞ。

事務局

土地については、譲渡益課税について一定の改正を16年度税制改正でも行ったわけでございますが、この資産という点に着目して、株と全く同じ扱いにするというのはなかなか難しいと。例えばいろいろな控除がありましたり、長短の区分がありましたり。やはり日本においては土地というものが極めて限られた貴重な公共財であるというものがあるということで、資産ということでひっくるめて、まさに二元的所得税のほうにどんどん突っ込むということがなかなか難しいという我々なりの認識も片やございます。

ですから、ここに書いてあるからこの先どうなのかということですが、まさにこの二元的所得税の議論の際に当たっては、どうしても日本の場合は土地というものについて特別な観点からの検討も必要であるという我々なりの留意点でございます。

委員

同じところを僕も質問しようと思っていたのですけれども、考えてみれば、土地が公共性があるとかないとか言い出したら、公共性のある資産はほかにあるかもしれないし、ここで指摘すべきことは少なくとも、土地という資産に対して、例えば帰属家賃がかけられてないと。他の金融資産、貯蓄ならば、その銀行に預けたときに利子があって、そこに税金がかかると。土地だって、自分が住んでいようが貸そうが、帰属家賃があって、本来かけなければいけない。そういう、もし議論するならば、この場で何回も言いましたように、どうやって所得が生まれるか、労働か資本か、有形固定資産か、土地かということですよね。

ただ、土地という資産に関しては、金融資産と比べて対称的な課税が行われていない、あるいはできないということに着目して、ここは別にしたいと。加えるに、公共性があるかどうかということは議論してもいいと思うのですけれども、公共性があるから別なのだという議論はここの議論ではイレリバントだと思います。

委員

同じところにも関連してくるのですけれども、まず一つ、現状認識として、「背景」というところですが、もちろん、少子高齢化の問題、貯蓄率の低下の問題、それはそのとおりだと思いますが、あと、「むしろ現存する金融資産を効率的に」というのはどれぐらい、どういう状況を前提にしているかといえばというところでもう少し突っ込んで、例えば日本の場合は諸外国に比べても個人の株式や投資信託の保有率が低いと。いかにもリスクテイキングの度合いが低いということ。それから従来の税制において課税の一体化というのがなくて、かつ損益通算が限られているということ。そういったことがこれまで、前も言ったと思いますが、現状として人々のリスクテイキングを阻害してきているという要因があるのではないかと。だから、この後出てきますが、一体化を通じて、今ある歪みを是正すると。それが結果として「貯蓄から投資へ」の構造改革を進めるのだという、そういう流れなのではないかなというのが私の意見ですけれども。

あと文章の流れなのですが、初めに何かできないことを書かないで、いきなり二元所得税はできないと書くよりは、まず、今これからやることは何かといえば、とりあえず金融所得の一体化であると。それで、二元所得税については今後の課題とすると。幾つかの困難として、先ほどの先生が指摘されているように、確かに土地に関してはいろいろと、帰属所得の問題とかもありますので、こういった課題はあるから、それについては今後の検討課題にするという流れにしたほうが……。これを順番どおり読んでいると、いきなりできないことを先に書いて、それから金融の課税の中だけで議論しますという感じになっているので。

委員

まず、先ほど議論になった土地の問題ですが、公共性という概念というのは多分、確かに微妙かなあという気もするのですが、委員がおっしゃった帰属家賃の問題というのは極めて説得力のあるといいますか、指摘すべき論点で、だから、それをむしろ中心に書きかえるということは、私自身はかなりリーズナブルだと思いますが、まずその点について何かご議論ありますか。

では、どうぞ事務局。

事務局

土地に関しましては、実はこの政府税制調査会におきましても、この土地の公共性についての論議、これは過去から累々行われております。もちろん、この帰属家賃、税制上の取扱いというものもあるわけでございますが、この譲渡益課税等々、それから不動産所得関係等々を考える場合に、どうしても政策的な観点というものも無視、看過しがたい面があるということでございます。

それから先ほどの歪み、現行税制が歪んでおるという先生のご指摘でございますが、諸外国におきましても歪んでいるというご趣旨なのでしょうか。我が国の税制のみが歪んでいるということなのでしょうか。基本的に損益通算では、譲渡損失に関しては認めていないのが世界的な取扱いでございます。それぞれの国の税制が歪んでおる。我が国だけがそれを正すという位置付けとして整理してしまうかどうか、そこが我々としても悩んでおるところでございます。

経済的に見ると、ロスを全部差し引きできるようにしておくということが確かにニュートラライゼーションなのですが、税制というものはどうしても暦年で区切って個人所得課税をするという必要がございます。税制上に中立性をどこまで持ち込むかということは、ある種、この制度設計の際の政策判断になろうということになります。

先にできることを書いてしまったほうがいいというのは、そのお考え、よくわかります。小委員長とご相談したいと思います。

委員

フリーに議論してください。

委員

先ほどの先生が言われたことと関連するのですけれども、今、税制の歪みというお話がありましたが、日本のそもそもリスク資産が少ないというのは、一つの理由としては、例えば定額貯金に投資した人の利回りが一番高くて、リスク資産に投資した人は非常に利回りが低かったという、そういう経済合理性があったという議論もあるわけで、そういう中で、歪みというか、税制の複雑さというか、今の税制がどれぐらいそこに安全資産へのバイアスをかけていたのか、あるいはホームバイアスをかけていたのかという議論がこの段階では必要なような気がするのですけれども。

私、途中から出たので、最初にそういう議論があったのかどうか、申しわけない、承知してないですけれども、そういう観点で、歪みというか、安全資産への過度のバイアスを税制というものがもたらしていたという認識、事実確認と、それに対して、税制をこう変えればこういうふうに変わっていくのだという、これは後でも出てくると思いますが、そういう分析なり観点というのがここでは必要ではないかという感じ、印象を持ちました。

委員

もちろん、諸外国で税制が歪んでいるのは当然のことでして、別に日本だけが悪いと言っているわけではないです。ただ、なぜ私がこの問題にこだわったかというと、「貯蓄から投資へ」というスローガン、これは結構だと思いますが、これがいわゆる課税の原則である公平・中立・簡素のうちの中立及び簡素、こういう原則と反しないということだと思うのですね。そこは言わないと、新しい何か別の歪みを入れるような、そういう印象を与えるので。ですから、課税の原則に則しているということだと思います。

それからもう一つ、現状認識としてというところで、やはり日本人のリスクテイキングというのはこれまで非常に低かったということ。で、これを是正するのだという、そういう視点は現状認識として、分析をアナリティカルにやろうと思うと大変だというのはわかってますから、現状認識としてそういう視点はあってもいいのではないかということです。

委員

ホームカントリーバイアスはどこの国でもあるのですが、日本が一番多いのだと思いますが、そのときに、税制だったのか、それともその金融資産自体の収益だったのかというのは、やはり本来きちんと実証分析しなくてはいけないと思います。だからそういう意味では、海外の商品の為替リスクが随分日本はありましたから、それも影響あったのではないかと思いますけれども。

それからリスクテイクの問題も、アメリカが非常に個人も含めてリスクテイクが多くて、それからイギリスの場合も、データ的にはリスクテイク多いのですが、普通の一般の人はそれほどリスクテイクをしてないような面もあるようです。だから、そういう意味では国によっても少しは違うような気はします。

それから先ほどの金融商品と不動産で、またこだわるようですけれども、不動産も証券化されてくるとそれは金融商品で、もしそこの税率が違った場合には、非常に金融商品への証券化を加速するとか、そういうような歪みを生じてしまうのではないかと思います。ですから、そういう意味では、ここは金融商品と不動産とでは性格が異なる面もあるが、やはり証券化などではその性格も非常に似通っているとか、そういうのが少し必要かなと思いました。

委員

私は、一番最初のところでございますけれども、もちろん、ROEの改善とか、そういった企業の経営努力が重要であるということはあると思うのですけれども、税制をより中立的にすることが環境整備の一つであるという位置付けをきちんと、全体の前として、しておく必要があるのではないかと思ってます。

それから2つ目、全く先生と同じことですけれども、やはりリートとか、不動産をバックとしてキャッシュフローを生み出すような金融商品が出てきているということを考えると、より金融商品と不動産の関係というのはこういう切り口だけで切れないものになってきているので、ここはもう少し書きぶりを工夫したほうがいいのではないかと思います。

委員

今の点とも絡むのですけれども、結局、個人にとって、投資したキャッシュフローをそれを超えるキャッシュフローで回収できるかどうか、つまり、個人にとっての金融投資という性格を考えると、そういう観点で一元的にとらえるとすればとらえられるのではないかと思いますけれども、その際に、先ほどから議論になっているこの土地等の部分というのは、そういう、本来金融所得が有している、個人にとってみれば、みずからのお金を投資し、そのリターンを極大化するという意味で共通の性格を持っているものに対して、ここでは公共的と書いてますけれども、それ以外の要素によって課税のあり方が影響を受けることがあるということを述べれば十分であって、本来の目指そうとしている金融所得の一元化というのは、すべての商品というのは媒体であって、今までの課税がそれぞれの対象の商品の性格に着目してきたわけですけれども、ここで大きくそれを転換して、個人が得られる結果としての元本とそれの果実という、そこのところに着目した税制の作り方をしようという、大きな点というのがもう少し強く出たほうが格調があるような気がします。

委員

皆さんのご意見、大体わかってきて、ただ、要するに、今はまだ項目別に立っているので、項目一つ一つが別に立つわけではなくて、いろんな文章の流れの中で一つ一つが入りますので、少しいろんなことを整理しながら、事務局と少し相談したいと思います。

委員

今の続きでよろしいでしょうか。土地の問題ですけれども、これは確かに、信託を使ったり、その他事業体を使えば、小口化、証券化という方向になりますけれども、資産流動化法といったような問題、それと他方でやはり、これは小委員長が言われるように、これがそのまま原案になるわけではないですけれども、「土地基本法により公共性のある資産」であると。ちょっとやはりわかりにくいのですね。土地基本法は、地価税を入れたときに、土地税制というのが補充的な手段ではなくて、一つの土地政策としての重要な手段だと、それを位置付けるために土地基本法が入ったわけですね。

現実に土地の問題というのは譲渡所得の場合の分離課税だけにとどまらないで、買換えをやったときに、いわゆる譲渡益を繰り延べるとか、場合によっては、同じ土地でありましても、高度化利用のために優遇措置を与えるなどやっております。いわゆる土地法といいますか、土地法制の中での一つの重要な手段でありますので、おそらく一部は金融所得の議論にも出てくると思いますけれども、そうでない面がたくさんありますね。ちょっとこの書き方が理解を促さないということがあるのではないかと私には思えますが。

委員

それでは、3ページから5ページの「課税方式」について、どなたか、ご意見等ありましたら。

委員

質問ですけれども、一番最初の丸の「配当所得について」というところ、20%で分離課税するとき、この場合、「負債利子控除や配当控除は不要となると考えられる」という話があるのですが、別に不要にはならないと僕は思うのですけれども。というか、一度もこれは多分、配当控除は少なくとも議論した記憶がないので、ほかのところで決まっているならそうなのかもしれませんけれども。

委員

多分これはテクニカルな問題だと思います。

事務局

その上に四角で囲ってございますが、「配当所得については、事業参加性を勘案した株式を取得するための負債利子の控除や、法人税との調整のための配当控除制度が設けられている」と。何ゆえ、この負債利子控除、それから配当控除があるかというと、要は、個人が法人という形態を使って収入を得ると。ある種、事業的な面があるということです。ということで経費控除が認められ、かつ法人税でも税金がかかり、個人段階でも税金がかかると、これは二重課税ではないかと。

一転して、いわゆる余資運用、普通の所得の処分の一環として、貯蓄、投資をする場合、これは例えば利子所得については経費性がないという整理をしておるわけでございます。これは少なくとも現行税制の考え方を整理いたしますれば、金融所得ともう割り切ってしまって、金融所得課税をしてしまうとすれば、これは利子並みになってしまうと。現行の日本の所得税法の利子並みと同じように、経費控除等は必要なくなるということになるわけでございます。

委員

よろしいですか。一体化課税をして、配当についてだけこういう控除を認めるということはそもそも可能なのかという問題でもあるような気がしますが、何かどうぞ。

委員

私も同じ点で、配当控除について、そうすると、今まで私どもが古い税の本で習った法人税というのは、究極的な個人課税の前段階の課税であるというそのロジックが、今回のこの決定によって、少なくとも個人の段階においては、つまり、個人投資家の段階においてはそのロジックは適用されないということは結構大きなことかなという感じを受けます。

委員

だと思いますが、だから逆に言えば大きな論点だろうと思いますが、ただ、逆に、金融一体化課税に配当を含める以上、何らかのことをせざるを得ないということなのではないでしょうかね。両立させることは非常に、多分、そもそも概念上無理があるような気がするのですが。

よろしければ、何かほかにありますでしょうか。

委員

3ページの丸の二つ目ですけれども、「ただし、多様な配当所得の全てを金融所得として課税することは必ずしも適当ではない」。この前も論点となったわけですけれども、「たとえば」と言って「事業支配のために大口株主の保有する」、大口株主とはじゃいくらなのかというような問題とか、あるいは、非上場株式についてもというようなことになってくると、一番簡素な税制にしようということがなおさら複雑になってしまうので、私はもう大口とか小口とか言わずに、あるいは上場、非上場言わずに、配当は配当として、もう一つでやるということが一番単純明快でいいと思っておりますけれども。

委員

今の先生のご意見で、私も、非上場株式については一緒にしてしまうべきではないかと考えています。「他の類型の所得を配当所得に変換する可能性」というのは、おそらく、株を持っている経営者の方が役員報酬を配当という形で受け取るという危険性というのを意識されているのかと思うのですけれども、実際問題、役員報酬を大きく変動させるというのは、年に1度しか決められないことですし、そのようにフレキシブルに対応することで税務署から必ず何らかの指摘を受けることになると思いますので、それほど大きな税収に対する影響が私はあるとは思えません。これから本当に中小企業を含め産業育成をしていくという観点から考えても、非上場株式への投資というのを入れておくということは重要ではないかと思います。

委員

エンジェル税制とかいろいろありますが、どうしましょう。事務局のほうから説明してもらいましょうか。

事務局

この大口株主、これの定義は、保有割合が発行総数の5%未満というふうに現行ではなっております。この5%というのでいいのかどうかというのはいろいろご論議あろうかと思います。これは具体的な制度設計での問題かと思われます。

それから非上場株式でございます。これは我々も悩みの種でございます。非上場株式というのものは、要はいろいろなものが入っていると。これから伸びて上場しようという勢いのベンチャー企業のような一般投資家が買うような非上場株式もあれば、街の角っこの商店の株式もあるということでございます。

適切に税務署が見れるのではないかということもございますが、たとえ見ても、これは配当だと、20%課税で済むのだと言われれば、制度がこうなっていれば、事実上50%課税しなければいけないような利益分配に対して20%で済んでしまうというのは、これは国民の理解というのがどこまで得られるかという懸念も片やあるということでございます。

非上場株式の取扱いというものは、まさに非上場株式の中にいろいろなものが入っていると。ある種、全く上場しようもないようなものとこれから伸びようという。ということもあって、ベンチャーについては、非上場でありますが、我々なりに対応しておると。それ以外というのはあくまで非上場は非上場と、こうなっております。

委員

損益通算と無価値化損失というのがかなり重要な論点で、そこまで行き着かないうちに今日の会合が終わってしまうのは非常に困ると思っているのですが、今の論点、ご意見としては伺いましたけれども、どうしても何かつけ足したいということがあれば、できるだけ簡単にお願いします。

委員

重要な点2つ出たと思いますが、特に最初の丸の配当所得については、20%源泉分離だから、「その場合、負債利子控除や配当控除は不要となる」。ところが、僕の読み方が違っているかもしれないですが、一番最後の丸で、配当課税と法人税との調整を考えなければいけないと。考えても、配当所得を分離課税とすれば、法人税の負担を考えても、個人の負担水準については適正と言えようと。だから、何かねじれているというか、まっすぐでないというか。配当に分離課税をしたから、それで配当控除が要らないのではなくて、20%だからまあいいだろうという書き方が下のほうですよね。

本来ならば、また例の税額控除、何%にするとどのぐらい二重課税が調整されているのだとか、そんな話が出てきてしまうので、ここはだから、丸の3番目のところでこんなに突っ張らないで、下のほうで素直に、ここまでやったのだから、でも、あと内部で、僕がやってもいいですけれども、二重課税がどのぐらい調整されたかというのを書いてあげればいいと思います。

あと大口株主のところはご意見はまたあると思うのですけれども、これはやはり特別にしなければ、個人事業主の事業所得がこっちに化けてしまうという、さんざん議論した、そこはやはりしようがないのかなと思います。

委員

ありがとうございました。では、そういう方向というか、皆さんのご意見を踏まえて、少し次回までに修文等を考えさせていただきます。

必要があればまたもとに戻りますので、損益通算について、どうぞ議論していただければと思います。

委員

7ページの一番最後のところですが、これは利子所得を入れるかどうかは将来の課題みたいな書き方になっているのですけれども、これは要するに次年度どこまで、何をやるのかというのがこの全体でよくわからないという感じがしますし、現在は特例措置なんかがかなりありますよね。だから、損益通算といっても、今は特例措置があるから一律な率でないわけでして、それをどういうふうに実際問題として対処するのかという具体的なところになるともう一つわからないし、そういうところを含めて、いつ、何をどういう段階でやるのかというところまでは書き込まなくていいのかどうかということですけどね。利子は次年度はやらないけれども、将来的には考えましょうと、そういう意味なのでしょうかね。

委員

会長が今日いらっしゃらないのであれですが、会長がわりと強調されるのは、政府税調と党税調、ないしは与党税調との役割分担とか、いろんなことをおっしゃっていて、あまり細かい具体的なことまで我々が書き込めるのかどうかというか、むしろそれよりは、政府税調の答申というのは、過去ずっとそうですけれども、やはり考え方といいますか、きちんと論理的にこうであるべきだというところをむしろ中心に議論するということが考え方だったように思いますが、いかがでしょうか。何か事務局でつけ加えることありますか。

委員

というのは、要するにこういうことを考えるときに、特例措置が結構あって、5年間は10%だとか、その辺の取扱いはどうなるのでしょうかという。

事務局

事務局といたしましては、金融小委員会で、今小委員長がおっしゃいましたように、ある種、今回、夏に理論的な論点整理を固めていただければ、それを我々頼りにして制度設計をこれからすると。また、これは秋以降の税調のセッションで、年度答申に向けてのご論議をお願いするということになろうと思います。この金融小委での理論的な詰めというのを我々頼りにしておるということを重ねて申し上げ、今先生おっしゃったようなお話は、むしろその次の段階、制度設計の段階の話かと思われます。

委員

損益通算、今のかかわりで6ページのところですね。さっき、金融所得と土地所得をどう分けるのかと。今度6ページの大きな問題は、損益通算の上から2番目の丸で、譲渡所得は、資産を取得したときから、含み資産があって、それが譲渡するときに云々と。利子、配当は毎期実現すると。そうすると、譲渡所得は何か実現したときにと。利子、配当は経常的だと。譲渡所得と経常所得との間は損益通算を認めることは適当でない。これもまた、要ですよね。まず、金融所得と土地所得をどう分けるか、次は、利子、配当と譲渡所得をどう整理するかと。

さっきは土地のことをやって、ここは利子でもらおうと譲渡所得でもらおうと、そんなの、すぐに変えられますよね。利子と同じ額を譲渡所得でもらうということでやればいいわけですから、問題はそこではなくて、やはり譲渡所得というのは、ここに書いてあるように、含み益って発生したところにかけられなくて、実現にかけるのが問題なわけだと。そこですよね、問題は。

だから、2つは違うのだではなくて、2つは同じなのだけれども、譲渡所得というのはどうしても実現のときにかけるしかないからと、さんざんここで議論した点で、したがって、それが要するにボランタリーなタックスみたいになってしまうということを指摘すればいいのではないですかね。

あと、非常に苦肉の策で、一生懸命工夫の跡はよくわかるのですけれども、利子と譲渡所得をどう通算するか。それは納税者番号が必要ですよねということで、ここはだから、違うのだというのではなくて、同じなのだけれども、いかんせん、譲渡所得というのは発生ではかけられない。そこが課税上の最大問題ですよということでいいし、そうあるべきだと思いますけれども。

委員

性格が違うという意味ではなくて、要するに実現段階でしかかけらないということを強調しろと、そういうご趣旨ですね。

委員

はい。実際、利子でも譲渡所得でも、どうでも作れるわけですよね。デリバティブなんていうものでなくて、簡単に。

委員

7ページになるのですけれども、上から2つ目の丸で、「貯蓄から投資へ」ということが書いてあって、その後で、そういう政策要請の下で配当と株式譲渡損失は通算することが適当であると書いてあるのですけれども、これはちょっと私、勘違いなのかもしれないですけれども、配当でもらうかキャピタルゲインでもらうかというのは、要は長期に株式を保有して安定的にもらおうとするのか、それも利益によって変動するのでしょうけれども、あるいは短期で売買してもらおうとするのかという点の違いはありますけれども、リスク資産に投資しているという意味では一緒なので、この点において、「貯蓄から投資へ」という政策要請の下というコンテクストと合うのかどうかというのがちょっと違和感がありました。

委員

今の、よくわからなかったのですが、基本的な流れとして「貯蓄から投資へ」という政策があるわけですよね。それはちょっとこことしては認めざるを得ない、そもそも出発点ですよね。その上で、配当と譲渡損失は株式から生じていると。それはよろしいわけですか。

委員

ええ。そこは一緒なので、「貯蓄から投資へ」ということとは関係なしに、そもそもこれはリスク資産に投資しているということですから、ここの「政策要請の下」という文章の次に出てくるものとしては、何かちょっとコンテクストが違うのではないのかなと思ったというのがこの1点目です。

2点目は、同じ「貯蓄から投資へ」ということで考えると、下のほうに株式の譲渡損失と利子所得は一緒にすることは適当でないと、そういう書き方もしてあるわけですけれども、そうすると、「貯蓄から投資へ」という政策課題と、この株式譲渡損失と利子所得を通算すべきでないというのとどういうふうに関係するのかというのが、私はちょっとここからは読み取れませんでした。

つまり、金融資産の中で非常に大きなウェイトを占める預金、あるいは貯金の利子というものを仮にここから外したとすると、じゃ「貯蓄から投資へ」というマネーフローはどういうふうな影響が出てくるのか。つまり、政策課題にちゃんとこたえることができるのかどうかという点に関して、ここでのロジックは、税収だとか所得の関連性ということでちょっと違うコンテクストで議論していると思うので、果たして利子所得を外すというのがそういう政策要請のもとでいいのかどうかというのはちょっと私はよくわかりませんでした。

委員

私の一応の理解は、配当と株式譲渡の損益通算をすれば、株式に対する投資に関してインセンティブが上がるでしょうと。他方、利子と株式譲渡に損益通算してしまうと、株式に対するインセンティブも上がるかもしれないけれども、預金に対するインセンティブも上がってしまうので、したがって、「貯蓄から投資へ」という話の流れにならないのではないですかというのが、私が少なくとも考えた考え方であったのですが。

事務局

「貯蓄から投資へ」ということで、要するに、この投資、株のロス、これをできるだけネットアウトできるように、オフセットできるようにしようということ自体が「貯蓄から投資へ」という意味を持ちます。どこの所得とネットアウトができるかということ自体というよりも、できるだけ面倒を見ようと、ロスがネットアウトできるようにしたいというところでございます。どの益と損益通算ができるかということと、この「貯蓄から投資へ」というのとはある種、そんなに論理的にはつながらないのではないかと。

言い方難しいですが、Aの益とBの損をネットアウトすることが、AからBに資産が移ることになるかと。なりません。それ自体ではそうならないと我々は思います。この利子と譲渡損失、我々、ここから読み取れることは、まさにその方向に向かうのだけれども、そのためには現行の一律源泉分離課税、さらには税収、さらに、そこまでして株式投資をどんどん、いわゆるこの関連性が薄いにもかかわらず、そこまでネットアウトするという政策的要請が今足元であるかということも議論しなければいけないと思います。

委員

多分ちょっと議論の混乱になりやすいのは、「株式譲渡損失と配当所得」のすぐ下の丸と、それから「株式譲渡損失と利子所得」のすぐ下の丸ですが、基本認識としてその性格が違うのだという認識で話を進めていると思うのですが、基本的な姿勢は、要するに金融課税の一体化であり、金融所得という枠の中でできるだけ課税方式は一律化しましょう、損益通算を認めましょう、そういう基本方針があって、とはいえ、税務執行上、あるいは課税逃れとの関係でいくつかの制約を設けなければならないという、そういう議論だったと思うのです。ですから、例えば株式譲渡損失と配当所得は基本的に違うのだと言われても、多分ほとんど、経済学的に考えたら同じものですよというのが我々の素直な反応ですし、でも、そうはいっても、もちろん、その二つ下にすぐありますように、さっき言った課税逃れの誘因がありますから一定の制限を設ける必要性がありますねと。それはそのとおりだと思うのですね。

利子所得との関係でも、関連性が薄いと言われても、ポートフォリオの関係で言えばやはり関連性はあるわけで、ないと言ってしまったら、それは多分認識としては正しくないような気がします。とはいっても、やはり支払調書制度を整備しなければならないとか、納税者番号制度が絶対に必要であるとか、そういった理由から、他の所得の場合と比べて少し慎重に考えなければならないよという考え方はあると思うのですけれども。

委員

物事をちょっと整理させていただきたいのですが、7ページの最初の丸ですが、書き方は確かに私も少し問題あるのかなあと思わなくもないですが、ただ、株式譲渡損失と配当所得の場合には発生と実現の違いがあって、経済学で考えればともかくとして、税として徴収するときにはやはり、少なくとも今の税体系で考えると、実現段階で徴収せざるを得ないというのは一応皆さんの合意だと思うのです。これを崩してしまったら報告まとめられないと思うので。

したがって、そういう意味で、ある程度分けて考えないと、節税、回避行為が起きるので、分けて考えますと。これはいいですね。「基本的な性格が異なる」という言い方はちょっと考えますけれども、そういう方向でやりたい。その上でということで、2番目の丸についても、以下を少し議論していただきたい。

配当と株式譲渡損益というのは、本来はそういう意味で非常に租税回避行為を生みかねないような損益通算なのだけれども、しかし、それをすることによって株式に対して有利性が発生するだろう、インセンティブが発生するだろうから、「貯蓄から投資へ」という政策要請にこたえるだろうと。利子と株式譲渡損失というのは、租税回避上は同じような問題を生むからきちんと考えなくてはいけないのだけれども、しかし、それで考えると、「貯蓄から投資へ」という政策要請から考えると、配当と株式譲渡損失の損益通算ほどの政策要請に対しての考慮というものはそんなに考えるべきではないのではないか。それが配当の取扱いと利子の取扱いの非対称性にあらわれているというのが私の一応の理解ですが。

委員

一番最初に言われました発生と実現、それで実現をもって課税せざるを得ないと。ここは今の前提として認めざるを得ないのかもしれないですが、もう一つ考えておかなければいけないのは、最近の金融技術の発展によってでき上がっているいろんな商品が、実はこの間に差異を設けてないわけですね。こういう商品を作り出す人はですね。つまり、発生ベースのところで多くとって、後で損を出してみたり、発生ベースのところで少なくして、必ずあとどこかで実現する段階で実現益が出るという形で、そういうことを作れる技術があるわけで、そういうものがあることに対して、今直ちに、これまで培ってきた税制がそれをすべて取り込んで変えることは不可能としても、そういうものがあるということはどこかでにじみ出ている必要が私はあるような気がして、例えば先ほど来問題になっている6ページの上から2つ目のところで、毎期、経常的なものと譲渡とは基本的に性格は異ならないわけで、課税に当たっての技術上の問題で今はそうしていて、ただ、将来それの弊害が出てきたら何らかの手を打たなければいけないわけなので、そこは他の委員がご指摘されたとおりですけれども、そこの認識が何かうまく出てこないと、それからそれ以外のところでも同じですけれども、結局、金融課税というか、個人にとっての問題というのは、先ほどの繰り返しで、投資したキャッシュフローの極大化であって、そのための手段として、貯蓄であろうが株式であろうが何であろうが今は構わないというところで論理が動いていて、そういう一つの大きな流れの中で、今ここにある「貯蓄から投資へ」という中で、課税面において、優遇面において何らかのインセンティブをそこでしようという、そういう流れが多分背後にあると思うのですが、それが出てくると、私なんかはすっきりと理解ができるのですけれども。

委員

デリバティブで変えられるというのは、一体化の話をするのですかね。つまり、税率とか課税方式を一体化してユニフォームにする。その意味では非常に重要だと思いますが、損益通算のところで、そこを逆に非常に認め過ぎて大丈夫なのかということであるような気もするのですが。

委員

ですから、そこの、認め過ぎるかどうかというのは政策の問題であって、ただ、前提として動いている経済実態というのはそこに差を置いていないということがどこかで認識されている必要があるのではないかと思うのです。

委員

大きな理論的整理がこの課題だということなので、ちょっとこの問題自身がここの対象になるかどうかわかりませんが、「貯蓄から投資へ」という政策的要請という点で言えば、やはりどこかに配当二重課税の問題というのは触れざるを得ないのではないかと思うのですけれども、それだったら、ここですぐ取り扱える問題ではないと思いますが、例えばLLCのような制度設計とかそういうようなこと、大きな方向性というのであれば考えることのほうがはるかに「貯蓄から投資へ」という政策目的に合うのではないかと思いますけれども、そういうようなことまでは触れないでいいわけでしょうかね。

委員

さっき触れていたような気がするのですが。ちょっとデリバティブの話に。

委員

簡単なコメントですけれども、利子所得と、株式譲渡損失とかいろいろな所得の関連性の非常に大きな差異をあまり強調し過ぎるよりも、今度ペイオフ解禁ということで、預金の利子所得というものが今まで完全に絶対的な安全資産からリスク度のある相対的な安全資産になってきていて、そういう意味でのリスク度の観点から、いわば金融所得として考えるのにかなり似通ってきているという側面も挙げておく必要があるのではないか。あまりこの差異だけを強調するのはちょっとどうかと思います。

委員

先程の委員の話は、配当控除とかそういう話をしたときにちょっと議論をしたので、そこを場合によっては考えて触れます。

委員

6ページ、さっき言ったところが、実は7ページの「株式譲渡損失と配当所得」、「株式譲渡損失と利子所得」、ここの言葉でさっき問題になった「所得の関連性」という、経済学者にとっては非常に耳慣れないというか、理解しがたい言葉ですけれども、要するに、書きっぷりというのはだから、譲渡所得と利子、配当、経常的な所得とは違うのだと。違うのだから通算も違いますよねという書き方ですよね、これは。その点についてはさっき言ったとおりで、所得は変わらなくて、課税の仕方が違うのだと。そうしてくると、何を本質的に言うべきなのかなと。だから、「所得の関連性」という言葉は、僕はあまり避けてない。利子所得を譲渡所得に変えることは容易ですから。

そうするとやはり、ここの7ページの「株式譲渡損失と利子所得」の丸の2番目で、損益通算を行うときには支払調書を整備しなければいけないと。これは他の委員がさっき言ったところで、だから、所得の関連性とか所得の違いとかではなくて、繰り返しですけれども、課税の仕方が違う。そして特に通算するときにはそれは大問題になってくるので、利子所得に対する、課税に対する整備も一段きちんとしなければいけませんよねということで、株式投資の促進のために「所得の関連性」とか出してくるのは何かやはり違うのではないかなと。

というのは、繰り返すと、利子所得をキャピタルゲインにするのはいとも簡単なことだとかいうことを理解すれば、そこではなくて、一体化したいのだけれども、それは逆に利子所得に対する、捕捉ではなくて、管理ですね、これが必要ですよと。正面からそういう議論をすれば足りるような気がするのですけれども。

事務局

利子を株の譲渡損益に転換するとは。利子ですか、配当分配金ではなくて。そういう商品というのもあるのでしょうか。

委員

そうではなくて、ここはだから、問題はそうすると、上の「株式譲渡損失と配当所得」のところで、どこまでのキャピタルゲインを含むかということですよね。だから、この場合、上のほうだけで、株式譲渡損失と配当所得は通算していいのだということになったら、利子所得を譲渡所得に変えたときには上に入ってしまいますね。

事務局

預貯金、公社債の利子所得を株式の譲渡益に変えるようなものもあるのですか。

委員

株に変えるって、例えばゼロクーポン債のときだって、クーポンのその価格の差を使うことは可能なのではないですか。

事務局

公社債の譲渡損益のご論議ですね。今ここは株の譲渡損と何が、配当なのか、利子はどうするのだという、一応このマトリックス全部書くと大変だということで、株の譲渡損と何が足し引きできるかということを議論してまして、確かに、配当分配金と譲渡損益、これはある意味ではリスク資産、ここに書いてありますように、株から生ずるという意味においてコンバーチブルなところがあるのかもしれません。そういうことで、そういったことを総称して関連性ということになっております。

利子と株の譲渡損との間にはそういう関係は少なくともないのではないかと。おのずとこの損益通算の順番と申しますか。決して、この文章、利子についてルールアウトしているわけではございませんで、気持ちはまさに先生方と一緒でございます。

委員

皆様にお願いしたいことが二つだけあるのですが、一つは、これは報告で時間も限られているので、できるだけまとめる方向で議論していただきたい。

それから2番目に、この報告が今後20年、30年にわたってずうっと金融税制を縛るものだとは私は思っておりません。デリバティブの進歩とか、そういうことがあれば当然税制も変わるものです。そこも考えた上で、当面何とか耐え得る、当面、「貯蓄から投資へ」という政策要請にこたえ、今から2週間でまとめられる、ここら辺のことを考えてご発言をできるだけよろしくお願いします。

それから、時間が限られているので、これで全部制約外します。後ろまでも含めて、最初から最後まで全部含めて結構ですので議論をしてください。

委員

三つあるのですが、一つは、キャピタルゲインと配当ですけれども、キャピタルゲインも実現のときに課税しなくてはいけないのですが、複利的に考えれば、配当と同じように毎年かかることになるのではないかと思うのです。ですから、そういう課税の仕方もあるのではないか。それが1番です。

2番目は、7ページの4番目の丸の、繰越しの対象を3年とするという、これの合理性ですね。なぜ5年としないのか、なぜ2年でないのか。これは何かデータで、例えば株式の譲渡損失とか、これが大体平均して3年なのか、そういうデータがあるのかということです。

最後は、税収の減少というのは、こういうのが拡大されればされるほど、非常にプロシクリカルな税収になると思いますから、景気が悪いときにはものすごく税収が下がることは事実だと思います。

委員

今回の損益通算の範囲ですけれども、利子という、ちょっとリスクが出てきましたが、リスクがないとされている金融商品と、それ以外の公社債とか株関係、投信のリスクがあるようなところに大きな線を引いて、保険はまた別というか、分離課税をするという意味で別ということになっているのですけれども、そうするとやはり、これをご覧になった方が、利子はどうして損益通算ではないのですかという説明を求められたときに、この7ページ目のところの4つの丸で説明をするのがちょっと苦しいかなというのが少し感想です。

委員

まとめるという方向なので。せっかくいい話をしているわけで、つまり、金融の一体化をしましょう、損益通算の範囲を可能な限り広くしましょう、これは非常に原則論としていい話ですよね。で、先ほど小委員長がおっしゃったように、これは別に今後10年を縛るものでないと言うなら、もっと素直に考えて、今できることは何で、今できないことは何なのかという整理であってもいいと思うのですね。

今できないことは何かといえば、例えばさっき言った二重配当の問題というのは実はまだ残っている課題であって、これは無視するべきではない。だから、せっかく最終的に配当税額控除の問題、それをやめるということになったとしても、二重課税の問題は消えてないはずなので、それは今後の検討課題として残るし、それから、実現ベースでしか課税していないわけですから、でも、これがやはり歪みの問題になっているというのも事実ですから、これは今後の課題として残ってくると思いますし、それからさっきの不動産所得との関係もありますが、金融所得と、本当は資本所得の中で我々は金融所得だけをとっているのですが、その金融所得の範囲というのがこれでいいのかどうか、他の所得との関係、これもやはりまだ残っている課題であると。

これらの課題を残しながら、今できることは何かといえばというところで、いくつかの点に関して、例えば譲渡所得と配当所得の関係、それから譲渡損失と利子所得の関係、こういったところについてはいくつかの歯どめが必要になってきますよという。基本的な性格が違うのではなくて、さっき他の先生とかがおっしゃっているように、課税方式が、今言っているような現実があるから、その制約の中で我々はやっているのだということだと思います。あと、もちろん利子所得の場合はより大きいのは税収の問題もありますので、税収確保という観点も考慮されているのだと言ったほうがいいと思うのですけれども。

委員

そこら辺、だから、長期的に委員の問題意識までこういう答申に書き込んだときに、国民も含めてどこまでわかっていただけるかということも含めてきちんと検討させていただきたいと思いますが。

「資産滅失」のところ、ほとんど議論が出ておりませんが、よろしいでしょうか。

委員

損益通算のところへ戻ってもよろしいですか。6ページの「損益通算についての考え方」ですね。これは説明がちょっと、もし一般向けだとしますと、やはり少し足りないのではないかと思うのです。もともとをたどると、なぜ損益通算が必要になるかというと、今の時代ですと、所得が10種類に分かれていると、そこから始まるわけですね。昔ですと、それなりにまた、何種類かの所得についてはどことどこを通算するとずうっと変遷してきているわけですが、その10種類に分かれているものについて、これは経済的に全部どれも同じなのだというようなことを書いても説得力がないし、国民が納得できないとだめなわけです。

例えば、話はずれますけれども、イギリスではキャピタルゲインというのが所得だということが国民には認識できないので、だからキャピタルゲインズ・タックスという別の法律をわざわざ使っているように、一般の人が見て理解できるような形でやはり、それが分類のもとになっていると思うわけですね。その一つ一つの所得の性格がどう違うかと話し始めたら長いですけれども、いきなり「損益通算についての考え方」。その前に、所得、10種類に分かれている、それについては、その合理性があるかどうかを議論しますとこれまた手間がかかりますけれども、そういう前提の上に成り立ってきていると。それを今度、その中でどういうふうに組み合わせるかという問題であるということをあらかじめわかりやすく書いておいていただいたほうが議論も混乱しないのではないかと思います。

委員

ちょっと検討してみましょう。

委員

さっきの「資産滅失」で僕の質問ですけれども、他の文脈に比べてちょっと歯切れがいいのか悪いのか。これは結局、譲渡損失と同様の、2つ目の丸ですけれども、「バランスを踏まえ、株式譲渡損失と同様の取扱いにするという考え方もある」ということなので、これはどういう方向で考え、つまり、やるという方向なのか、それとも今後の検討課題としてこれは残していく方向なのでしょうか。

委員

ここはだからむしろ皆さんのご意見を聞きたいということではないかと思いますけれども。株式のほうですよね。

委員

ええ。

委員

無価値化に関しては、私個人もちょっと迷ってます。

事務局

何度も繰り返しますが、このご報告の中で理論的な考え方をちゃんと詰めておいていただきたいということでございまして、ここはある種、政策判断がこのベースの上であるのではないかと思われます。やはりこれは現時点で両論あると思いますし、ある種、この政策税制の次元になろうかと、このようにも思います。

委員

むしろ、だから本当に無価値化損失のところと、あとは損益通算の利子や配当あたりですね、この辺についての皆さんの意見を聞きたかったというのが今日のあれではあるのですけれどもね。

委員

無価値化というところが、株に関しては損失を認識して控除するのに、ゼロになった場合は控除しない理由というのはないのではないかと思うのですが、それはどういうことなのでしょうね。

事務局

確かに経済学的な意味において、ゼロになったものを売ったのか、そのまま持っていたのかの違いでないかというご指摘、わかります。ただ、先ほど来、性格の違いというふうにちょっとぶっきらぼうな書き方、これは確かに小委員長のご指示で調整しようと思いますが、税制でそれをどう受けとめるかとなりますと、いろいろな技術的な問題もありますし、やはり実現ベースで税金をかけようという基本的な考え方が税制の背後にあるものですから、この場合、経済的には同じ無価値化ではないかということですが、税制度においての受け止めというのが、譲渡した場合と単に持っていた場合とではやはり違ってきてしまうということになります。

委員

繰り返しになりますけれども、要するに、最初に書いてありますけれども、いわゆる一般の投資家、プロでなくて、そういう人を対象にした税制なので情報は完全でないわけですし、そういうことも考えたときに、一応自己責任で考えればやらなくてもいいのではないのという考え方も一方ではあるでしょうし、一般の投資家も考えるのだったらば、そこまで情報が完全かどうかよくわからないから、ひょっとしたらそこまで救済したほうがいいかもしれないし、両方あると思うのですね。考え方が。これはやはり非常に微妙に、常識とか税収とかいろんなことを考えながらバランスをとって決めるべきことだろうと思いますので。

それとの関連ですが、いわゆる譲渡所得と配当所得の基本的な性格が異なるという言い方はちょっと考えさせていただきますけれども、やはりこれは経済学の論文ではないので、少し国民にわかるような書き方で、正確性を考えたら、科学性を考えたらちょっと微妙に問題あるような表現かもしれないけれども、そこはちょっとご容赦願いたい。皆さん発言していただいたことはできるだけ考えますけれども、ということです。

委員

8ページの「資産滅失」のところですけれども、「株式の無価値化損失」の一番上の丸は、上場株は売買だからいつでもできるはずだということは僕の原則論でしたけれども、2番目にある、一般の投資家、株主がどんどん増えていった場合、一々株式市場なんか見てないという人は非常に多くなってくるわけですね。そうなるとまた、ある期間を過ぎると、これはマーケットで「やり気配」といいますけれども、売りばかりで買い手が一つもなくて、結局、整理ポストへ行って1円になってしまうというのがあるので、そこはやはりきちんとした救済をしておいたほうがいいのではないかと。そうしないと、僕が非上場株も同じだということを常に言っているのと矛盾する話になりますので。

非上場株についてだめだと、別に考えるべきだというのはいかにも書き方が、配当の場合もそうだけれども、非上場株式、中小企業の経営者はみんな悪いことばかりするという前提で言っているような話が非常に多いので。片方では、僕の今の仕事もそうですけれども、やはり日本では、中小企業を強くしなければだめだと。これは国策としてやっているわけですね。ベンチャー育成だというときには、やはり非上場株式についても同じようなことを考えていくということ。そうしないと、オーナーだけでなくて、家族だけでなくて、取引先とかいろいろな人がその株を買うとかいう動きは随分出てきてますので、その辺は現実論として、僕は実務的に見ていて必要ではないかなと思いますが。

委員

多分、ベンチャー税制に関して何か一言どこかでまとめて触れたほうがいいでしょうね。

事務局

委員のお話、非上場株の問題、まさにおっしゃるとおり、そういう企業の育成という見地からいろいろ必要だと思います。ただ、今回、整理としては、やはり投資家サイド、一般国民の普通の投資家の利便性をまず整理していただいて、あと、そういうベンチャー的な話とか中小企業育成はまた別途、これは調達側の論理もいろいろありますので、またそこは改めてご議論いただくということで、ここは別に区別している部分。我々のお願いとしてはやはり、投資家サイドが一般の投資家、一般の大衆投資家が買う商品を念頭に置くということでこういう整理をしているということをぜひお願いしたいと思います。

委員

そろそろ時間が来ておりますが、大体議論は出尽くしているということでよろしいでしょうか。これをまとめるのはかなり大変な状況になるかもしれませんが。

委員

最後に1つだけ。先ほども議論が出たことですけれども、今のお話で、一般投資家に対する利便性といいましょうか、彼らのビヘイビアというものを非常に念頭に置いて書いているということであれば、先ほどもご意見が出たように、預金利子が除外されているというのは、一番大きな部分であるだけに、きちんと説明する必要があるように思うのです。

ですから、ここの書きぶりですと、先ほどちょっと、ルールアウトしてはいないというお話がありましたけれども、どうもそれは税収のロジックから別ものだと簡単に割り切られているような気がするので、やはり読み手の印象としては、何で大きな預金が入らないのかということがどうしても出てきてしまうような気がしますので、ここでルールアウトしてないのだということがわかるようにこれは書いていただきたいと思います。

委員

ルールアウトはしていないと思いますし、税収の問題というのはある意味で制限を設けるということですから、株式に関してもそう書いていることですので。ただ、あまり安易に期待されてもちょっと。多分、必ずこれが実現しますという雰囲気で書いてしまうと、ちょっとやはり困るだろうという面もありますので、そこは少し考えさせていただきたいと思います。

委員

「資産滅失」のところで、倒産して無価値になるか、それともそうでない段階で救済するかというのが、個人投資家の扱いのやり方を違えることによってかなりシームレスになって、なくなってしまうという問題があるなと思います。ですから、結構、どういう企業再生とか倒産法制を適用するかということとちょっと関連してくる話で、諸外国というのはおそらくそういう環境の違いというのがあるのではないかなと思います。ちょっと一言。

委員

執行の問題もあるかもしれません。よろしいでしょうか。事務局、何かありますか。

事務局

最初に小委員長が言われましたとおり、この話自体が本来、資産性所得と勤労所得を分けるという、いわば大きな北欧型の議論というものをしているわけでは実はない。まだそこまではいってないわけで、はっきり言えば、これは会長がよく言ってきたように、税率をフラット化していけば、結局、分離課税と総合包括的、総合課税とそれほど違わなくなっていくではないかと。そういういわば流れの中にあって、やはり政策的な要請として、この金融所得、できるだけ一般投資家育成、利便性という観点に立って、できるだけそれの利便性に配慮した税制を作るというのがまず一番の主眼にある。

そのときは、先ほど委員もちょっと言われましたけれども、現在のデリバティブなりそういういろんな、いわば金融技術、そういう前提の中で議論していくということになると、多分まだまだ、通常の利子というものが一般大衆投資家にとってデリバティブ商品になって、それを一般大衆投資家が投資するという状況では僕はないと。そういう中で、今とりあえず、先ほど小委員長も言われたとおり、10年なら10年を見据えたときにどういう税制をしたらいいかということだろうと思うのですね。

何より、皆言ってますけれども、配当や株というものは基本的にはなお申告課税を選択できるのですよね。利子はできないのですよね。そういう意味では、今の税制自体も、配当と利子は違った話に実はなっていると僕は思います。

それから、本当にアメリカが完全な総合合算という仕組みをいわゆる金融所得にも残していて、日本の最大のいわば、何というか、取引相手が日本と完璧に違う税制になっているわけですね。特にアメリカは、多分、財政再建を果たしたのは証券のキャピタルゲインが大変大きなウェイトを占めているし、かつ、個人の金融資産残高が、あれだけ貯蓄率が低いにもかかわらずどんどん伸びて、日本より一人当たり金融資産残高が多いのは、はっきり言って株に投資しているからであってということですよね。

そういう背景を考えたときに、日本の貯蓄率が急激に下がっている。そして多分これは下がり続ける。高齢化の中で。その中でやはり資産残高をできるだけ増やそうとすれば、やはり株なりに投資を向けていかなければならない。そういう大きな政策要請の中で、当面10年を見据え、一方でアメリカの税制とこれだけ違う税制を本当に永久に使い続けるのかというところも、僕自身は、まだ決断つけられないのではないかと。

ただ、そういう中だけど、そういうことを放っておいて、まさに金融商品、今の間接金融から直接金融というか、まさに個人金融資産残高を少しでもストックとして増やしていくという政策をとる必要があるとすれば、利便性の観点で当面10年何をやったらいいかということをそろそろ決断するべき時なのではないか。

それがかねてから、はっきり言えば世界の潮流とも違う、日本独特の特定口座などという仕組みをお願いしながらも、個人にそちらへシフトさせていただく要請をしてきた背景にあると。それをさらに、番号も入れてより利便性を高めて、いろんな商品に個人が関心を持って、単に消費を減らして貯蓄を増やすだけでなくて、まさに持っている資産そのものを増やす政策を個人が選択できるようにすることに目的があるのではないかと。ですから、その意味では、まさに小委員長が言われたように、そういう置かれている状況を最初に少し書くのも方法かと、伺っていて、私は思いました。

委員

私が思っていたことをほとんど全部おっしゃっていただいたと思います。時間の関係もありますので、今日の会議、このぐらいにしますが、次回の小委員会で報告案文について議論したいと思います。できるだけ今日出た案といいますか、ご意見を踏まえて、文章を作りたいと思いますが、今最後に事務局がおっしゃったことも含めてとにかくまとめて、10年ぐらいの一般大衆のための金融税制という、経済理論ではなくて、税なのだというところを、ぜひそこのところはご理解いただいた上で、文章作りに次回はお願いしたいと思います。

なお、最後に2つほど重要な点ですが、本日午後に総会が開催される予定です。金融小委員会の議論の状況については私のほうからこの総会に報告をさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

それから最後に今後の予定ですが、次回は、すでにご案内していますように、6月8日、来週の火曜日の午後2時から開催いたします。その次がまた1週間後の6月15日、火曜日の午前、これは11時から。これは最終のものを期待しておりますが、そうでないと大変なことになりますが、正式に開催が決まり次第、案内状をお送りいたします。

15日の会合では報告の取りまとめを行って、その日の午後の総会に報告したいということでございますので、ぜひご協力のほう、よろしくお願いいたします。

では、本日の小委員会はこれで終わります。冒頭に申しましたけれども、論点整理メモは席上にそのまま残していただきますよう、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会