第8回金融小委員会 議事録
平成16年5月11日開催
〇委員
ただいまから、第8回金融小委員会を開催したいと思います。
本日は、財務省の政務官にご出席いただいております。よろしくお願いします。
議事に入る前に、先日の税調総会について、ご報告します。前回の会合で申し上げましたとおり、4月27日に総会が開催されましたので、私から、これまでの審議状況を説明いたしました。特段の質問、意見は出されませんでした。以上、ご報告です。
本日ですけれども、これまで、金融所得課税の一体化に向けて幅広い論点について議論してまいりましたけれども、本日から、これまでの議論を踏まえて、小委員会としての意見の取りまとめ作業に入りたいと存じます。
まず、今後の作業の段取りについてあらかじめ申し上げたいと思います。本日は、お手元に「これまでに出された主な意見」という資料があると思いますが、これをもとに取りまとめの方向性などについて自由に議論したいと存じます。
その後、本日の議論を踏まえて、報告の骨格となるような論点整理メモを私のほうで準備させていただき、次回の会合に提出させていただきたいと思います。次回は、その論点整理メモをもとにご議論いただき、その議論を踏まえ、その次、次々回の会合で報告案の審議を行うというような段取りを考えております。よろしいでしょうか。
それでは、お手元の「これまでに出された主な意見」について、事務局から説明を受けたいと存じます。事務局、よろしくお願いいたします。
〇事務局
お手元に「金融小8」という6ページの冊子がございます。これでご説明申し上げます。
「これまでに出された主な意見」ということで、括弧書きがございますように、ご意見をテーマごとに分類したものでございます。したがいまして、個々の意見相互の間には論理的な関係はない。内容的に相反する意見が、実のところそんなにはないのですが、含まれることもございます。
中身でございます。まず「総論」でございます。「貯蓄から投資へ」という政策的要請を踏まえて、リスク資産への投資を促すため、一体化が必要であるという総論的なご意見。
その次は、税制の簡素性というご指摘。
ハについては二元的所得税論との関係についてのご指摘がございました。
ニでございますが、それに伴う、全部ひっくるめまして、「貯蓄から投資へ」の政策要請も踏まえ、一般の投資家が投資しやすい環境を作るという観点から、中立的で簡素な税制を構築するというのが「一体化」の位置付けとなるのではないかというご指摘もございました。
ホにつきましては、税法の観点でございますが、金融所得という所得区分、新たな所得の種類、これを新設することについてのご指摘もございました。
ヘにつきましては、いわゆる高度な金融技術を利用したハイブリッド商品の登場、さらには租税回避行為の可能性に対する対応でございます。
トでございます。これは一般投資家を対象とした簡素な制度設計という観点。
チにつきましては、一般投資家のポートフォリオに含まれる金融商品をカバーするよう、できる限り広く一体化を図るべきであるというご指摘でございます。
次のリでございます。ページ繰っていただきますが、譲渡損益と経常的な所得との性格の違い、それから適正な執行の確保という観点のご指摘でございます。
ヌ、金融所得課税一体化には、金融所得に対する課税方式等をそろえることと、それから2つ目として、損益通算を行うという2つの内容があるが、中立性、簡素性という観点からは、前者の中立性から課税方式等とそろえるということがより重要であるというご指摘でございます。
以上の「総論」に乗りまして、「課税方式」と「損益通算」、今ヌで申し上げた2つに区分して記述・整理しております。
「課税方式」、まず【配当】でございますが、配当所得、これは、イの1行目の最後、金融所得であるという性格に着目すれば、他の金融所得と同様に分離課税とすべきではないか。
ロ、配当所得を分離課税とするのであれば、配当控除や負債利子控除は不要となるのではないか。
ハ、これは大口の株主についてのご指摘、総合課税を維持すべきである。
ニ、これは非上場株式、これについても総合課税を維持すべきである。
ホ、これは従来から言われておる法人税との調整の問題についてのご指摘でございます。
加えまして、ホに関連してヘ、諸外国でインピュテーション方式が廃止されている流れも踏まえ、分離課税化するという方法もあるのではないか。
以上、【配当】で、次が【公社債譲渡益】でございます。ト、公社債の価格も日々変動しているということで、公社債も株式と同様に譲渡益には課税し、譲渡損失も認識するべきである。
次のページ、チでございますが、公社債にも株式と同じようなリターンとリスクのある商品が出現しておる。中立性の観点ということで、譲渡益には課税すべき。
【その他】として、リにつきましては、保険、為替差益、それから先物についてのご指摘。
ヌとしては、公社債投信と株式投信についてのご指摘がございます。
次に「3 損益通算等」でございます。まず【損益通算】、イでございますが、損益通算することにより、リスク資産と安全資産に対する課税の中立性が確保されるとのご指摘。
ロ、課税ベースの浸食を防止する観点から、金融所得と総合課税される勤労所得等との間の損益通算は認めるべきではないというご指摘。
ハ、金融所得の間であっても、損失と利益の課税についての取扱いの均衡の観点から、分離課税される所得と総合課税される所得との間の損益通算、それから税率の異なる所得の間の損益通算、これは認めるべきではないというご指摘でございます。
ニ、実現ベースでの課税ということで、譲渡所得と経常的に発生する所得とは性格が異なる。両者の損益通算を認めることは本来適当ではない。「ただし」ということで、一番最初に出てまいりました「貯蓄から投資へ」という要請の重要性を踏まえれば、政策的配慮として認めることは考えられる。仮に認める場合には、諸外国の取扱いを参考にしつつ、一定の制限が必要である。
ホにつきましては、税収への影響についてのご指摘でございます。
ヘ、これも損益通算についてでございますが、「貯蓄」「投資」「投機」という3つに区分されてのご指摘がございました。
ト、これはやはり利子、配当、株式譲渡益の間ではできる限り広く損益通算を認めるべきであるというご指摘。
チ、公社債の譲渡益を課税する場合には、ほかの譲渡損益との通算を認めるべきである。
リ、配当と株式譲渡益はともに株式を源泉とする所得である。ただ、片方、預貯金利子というのはそれとは違う。このような所得間の関連性というものも考慮すべきであるとのご指摘。
ヌ、これは利子についてですが、口座数の問題、それから官民双方の事務負担の問題。
ル、損益通算の範囲を拡大する場合には、資料情報制度の整備、税務当局における名寄せの仕組みの整備など、適正な執行体制が必要である。これについては、後ほど、「納税環境整備」というところで記述がございます。
次に【資産滅失】でございます。ヲ、上場株式の場合には、無価値化する前にマーケットで売却できるチャンスがあるということで、特例的に損失を認める必要はないというご指摘。
片や、ワ、株式の無価値化損失については、リスク資産への投資を支援する政策上の要請や、株式譲渡損失に対する取扱いとのバランスを踏まえて、諸外国での取扱いも参考としつつ、譲渡損失と同様の取扱いを考えるべきであるというご指摘。
それから操作可能性のある非上場株式についてのご指摘が、カでございます。
ヨ、これはペイオフでございます。元本1,000万とその利息までは預金保険で保護されておる。さらに、預金分散での対応が可能である。さらには、最後の行、「貯蓄から投資へ」という政策目的にも関連。こういったご指摘がございました。
タ、これは片やでございますが、株式の無価値化損失と同様に金融所得の範囲内で手当てを考えるべきであるとのご指摘。
レ、資産滅失の場合、「譲渡」という取引行為がなく、支払調書も存在しないということで、仮に滅失損を手当てする場合でも、何らかの形で適正な執行を確保する必要があるというご指摘でございます。
大きなくくり、「4 納税環境整備」でございます。イ、これはもう大総論でございますが、制度の適正な執行と納税者利便の向上を図るために、納税環境の整備が必要である。
ロでございますが、2行目、その支払元である金融機関等に対し税務当局に支払調書の提出を求め、納税者から提出される申告書とマッチングすることによって、申告の適正さを担保する必要がある。
ハでございます。そのマッチング、これをより効率的、かつ正確に行うためには、何らかの番号制度の導入を検討すべき。
ニ、番号がなくてもマッチング自体は行う必要があるということで、番号自体に新たな不利益をもたらすものではないというご指摘。
ホ、これは国民の理解が必要ということで、従来から検討されてきた幅広い納税者番号制度とは発想を変えて、投資家利便を第一に、損益通算というメリットを受けたい人だけが選択制で利用できる金融番号を考えるべきであるというご指摘でございます。
ヘ、このように選択制とする場合には、新たな番号を活用すれば足りるのではないか。
さらに、次のページ、トでございますが、番号を選択制とする場合でも、金融機関等にとっては事務負担が生じるというご指摘でございます。
チ、番号制度を導入し、金融機関等に対しても告知するということになるので、金融機関等から番号情報が漏洩する恐れにも留意し、民間における個人情報セキュリティの問題や、個人情報保護法などの法制面での対応についても注視が必要とのご指摘。
それからリ、適正な執行ということでございますが、特定口座のようなしっかりとした本人確認と源泉徴収制度の活用が重要。
ヌ、損益通算は基本的に申告による対応となるわけで、それは申告納税制度を中心とする所得税のあるべき姿から見て望ましい。特定口座をこれ以上便利にする必要はないのではないか。
最後、ル、損益通算が広く認められるようになると、民間において個人の金融資産を一元的に管理し損益通算も行うというサービス、ゲートキーパー的なご指摘もございました。
以上でございます。
〇委員
それでは、「主な意見」を踏まえつつ、どのような方向性での取りまとめをすべきかという観点から、ご自由に質問、意見を頂戴したいと思います。
なお、「主な意見」自体は今回限りの資料ですので、これに記載されている個々の意見の修文は必要ありません。ここにない意見の追加や、それぞれの意見に対する補足など、建設的な意見を出していただければ幸いです。
なお、それぞれの意見にはイロハの記号が振られておりますので、関連する意見についてはページ番号と記号をおっしゃってください。時間はかなりありますので、あまりばらばらになるのも何かと思いますので、3ページに損益通算というのがありますが、その前に「総論」と「課税方式」というのが1と2としてあります。ですから、損益通算以降は後で議論することにして、まず「総論」と「課税方式」のところでご意見があればと思います。どうぞご自由にご意見頂戴できればと思います。
〇委員
「総論」というか、全体のペーパーを拝見した上での印象なのですけれども、例えば損益通算の範囲をどうするかとかいうことについても、広くとるべきだという議論が「総論」等である一方で、それは課税のやり方が違うから限定すべきであるといった、ちょっと違うような意見がいろいろ入っていると思うのですけれども、それを一つの報告書にまとめるときの一つの切り口ですが、ちょっとこれとは違った観点で、例えば税理論というのでしょうか、そういうところから見たらかくあるべしという視点があるとともに、利用者のわかりやすさとか利便性から言えばかくあるべしという議論が当然ありますし、また、これはあまり今まで触れられてなかったかと思うのですけれども、経済活動というか、投資活動というか、そこの中立性というのでしょうか。資金の流れにバイアスをかけないというのでしょうか。そういった観点からすると、こういった損益通算の範囲とか、そういうのが望ましい。あるいは執行の可能性というか、執行の現実性という、コストの問題ですとか考えると、こういうふうな範囲にすることが望ましいと。1つ判断をするときの切り口というのでしょうか、そういったものがもう一つ別の視点としてあると、横串というのでしょうか、何と言うのかわかりませんが、そういうのがあると、じゃ範囲をどうするのだとか、あるいは税率をどうする、今回そこまでいかないのかもしれませんけれども、そういった議論をする際に一つの切り口になるのではないか。
そうしないと、いろいろな議論がある中で、じゃどういうことをよりどころにすればいいのかということで、あるときはこういう立場に立ってAという議論をして、あるときは別の切り口からBという議論をしてとなると、何か整合性がとれなくなるような気がするので、一つの報告のときのスタンスとして、今申し上げたような切り口を意識して整理した上で議論するということが必要なのではないかと思いました。
〇委員
こちらから申し上げるべきことを委員に指摘していただいたという感じがしますが、これは会長の総会運営のときの方向もそうだと思うのですけれども、あまり両論併記ではなくて、できるだけわかりやすい、何を言いたいのかというメッセージ性が伝わるような最終的な報告を作りたいとは思っております。そういう意味で、今おっしゃったようなことを生かして、そもそもどっちを言いたいのということをはっきりして、その意見が両方あるのだったら、どういう理由でそうなのということがはっきり伝わるようなことにしたいと思います。
ただ、今回の、これまでに出された主な意見というのはむしろ、そういう意味で両方意見が出ているのですけれども、どちらが皆さん大事だとお考えになりますかとか、こういう意見はこういう側面では重要だけれども、それ以外のところではあまり考えないほうがいいかもしれないとか、そういうことをむしろご指摘いただく場としてとらえていて、そういうご意見を集約して、次回にもう少しメリハリの効いた原案を出させていただきたいと考えております。税率とか、非常に細かいことまで踏み込むかは別として、総論といいますか、大きなメッセージはできるだけそういうメッセージ性を残したい、作りたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
そういう意味で言うと、総論もややそうですけれども、例えば一つの例を挙げますと、「課税方式」のときに【配当】、【公社債譲渡益】があって、【その他】というのがあって、【配当】、【譲渡益】のところは「である」とみんな書いてあるのですが、【その他】のところでは「ではないか」と書いてあって、まだよく皆さんの意見が統一されているようには理解していないという面もありまして、絶対統一しなくてはいけないという意味ではもちろんありませんけれども、まだ必ずしもここら辺は皆さんの議論が尽くされていないところなのかなあと思っております。それ以外にも非常に重要な論点たくさんあると思いますから、どうぞご自由にご意見を頂戴できればと思います。
〇委員
まず「総論」のところですけれども、前回、会長がおっしゃってましたけれども、現状認識の問題があると思うのですね。ちょっと気になったのは、政策要請として、「貯蓄から投資へ」という言い方、悪くはないと思うのですけれども、ただ、それを言うとなんか無理やり投資を増やす、危険投資ですよね。つまり、リスクテイキングを無理やり促そうというイメージも出てくると思う。あるいは、リスクテイクに何かあえて補助金を与えるようなイメージが出てくると思うのですが、あえてそういうのではなくて、現状は、要するに、キャピタルゲインとか、損益通算の制限であるとか、そういったことから、むしろリスクテイキングが阻害されているのであると。つまり、それが現実出発点だということだと思うのですね。
だから、例えば政策要請としての「貯蓄から投資へ」という議論と、その途中に出てくる中立性という議論、これは決して矛盾するのではなくて、むしろ現行の税制をより中立性に近づけるのだという、その結果として、今阻害されている投資活動のほうに、リスクテイキングのほうに、人々の投資活動ですか、が促されるであろうという、そういうことだと思うのです。ちょっとその辺の、問題は現状に問題があるということ、ここをクリアーにすることだと思います。
次ですけれども、今、委員のほうからご指摘があったのは全くそのとおりだと思いまして、やはりまず理想というか、こういうあるべき姿というのがあると思うのです。ただ、ここで若干人によって意見が違うのかもしれないですが、おそらく全体としては金融課税の一体化というのが望ましい方向でしょうと。ただ、そうは言いますが、要するにキャピタルゲインというのは実現課税ベースだし、損益との関係で言うならば、いつもの話ですけれども、マニピュレーションの租税回避の可能性というのはありますし、あと、もちろん税収の必要性という現実的な要請もあるし、それから徴税コストという問題、税務執行上の問題もあります。それぞれの問題に対応してある程度、例えば損益通算の範囲を限定するとか、通算できる損失に、アメリカのように上限を課すとか、あるいは何かそういうふうないくつかの措置は施されてくるとは思うのですが、それはあくまでもそれぞれの現実の問題に対処するためであって、何かその辺、まず理想論と現実論というのを少し区別して考えたほうがいいのかもしれないかなあとは思っているのですが。
〇委員
おっしゃるとおりで、現実論と理想論、きちんと分けよということ、それから、確かに「貯蓄から投資へ」というのは少しひとり歩きしているような面もありますから、おっしゃることを少しきちんと考えたいと思います。
〇委員
1ページの「総論」のヘとロの関係と、それに関係して3ページの【その他】のリのところについて、少し意見を申し上げます。
まず1ページのヘは、高度な技術を利用したこと、そういうことをする人を対象にしていて、トのほうは、そういうわけでない、一般投資家を対象としていますので、中身を見ると、ヘのほうは、発生ベースに近づけて、申告をさせるというふうに近づきそうに思いますし、トのほうは、むしろ一体化して分離課税というふうに近づきそうに思って、方向が逆のようにも見えますが、人的な対象を分けるということで、プロと、それからそうでない人ということで視点が分かれるのではないかという感じがします。
そういうふうに考えると、3ページの【その他】のリのところで、先ほどこういったものについてはまだ意見があまりないということでしたけれども、例えば外貨建ての商品を買う人や、あるいは先物取引をする人というのは、これはおそらく、先ほどの「総論」のほうで言うと、一般投資家というか、素人ではないのではないかという感じがしまして、そうすると、これは一体化の対象というよりは、もう少し違うほう、そちらのほうがいいのではないかという感じがいたします。
〇委員
ちょっと念のためにお聞きしますが、おっしゃることはある意味でもっともだと思うのですけれども、1ページのヘは、逆に、ある意味で、専門の金融機関がハイブリッド商品などを作り出して、それを一般投資家に売ると。そのときにデリバティブを使うというようなことはないのかなというのがちょっと一つ気になっております。
それからもう一つは、外貨建ての金融商品というのはかなり、結構一般の投資家も随分入ってきているのではないか。先物はひょっとしたら別かもしれません。そこら辺、事実関係についても含めて、ご専門の委員にお聞きできればと思います。
〇委員
ハイブリッド商品については、まさにおっしゃったとおり、富裕層の、本当にリスクをとりたがらない方々に、リスクがあたかもほとんどないような形で、債券型の商品という形でハイブリッド型の商品を作って売っている金融機関が非常に増えてきておりますので、これは逆に一般と言われる方に一番今多く渡っていく可能性が高いのではないかと思っています。
あと外貨につきましては、確かに外貨というものをやるというのは一歩先を進まなければいけないことではあるのですが、アンケートをとったりいろんな調査をしますと、今、預金の次に運用してみたい金融商品は何かといいますと、必ず2番目に挙がるのが外貨預金というのが現状ですので、非常にこれから多くの方がそちらに興味を持って、やっていらっしゃる方は確かにまだ少ないのですけれども、増えていく可能性は十分あるのではないかと思っています。
〇委員
そういう意味で、先物はかなり違うかもしれません。それから保険は、ついでですが、現状が一時所得になっている保険もあって、2分の1課税になっている部分もあって、これを金融一体化にすると20%にする。10%という、現状は優遇してますが、そういうのと随分違うので、かなり問題が、そういう意味では、一体化ということだけでも問題かもしれないという面があるかもしれません。一応ご注意を、皆さんのご意見を伺えればと思います。
〇委員
つけ加えて外貨預金について言うと、リスクに対する選好というのは、委員がおっしゃったように、ちょっと2つに分かれているところがあるような気がするのですけれども、デリバティブズを使って、リスクをできるだけ少なくするという商品が特に高額の商品については売れるという一方で、一般の預金者は、ひところは、例えば為替は急に円高になるリスクというのを嫌って、円高になりそうだと外貨預金をすぐぱったりやめたとかいうのがあったように記憶しているのですけれども、今は、大体いついかなるときでも、円安になればなったで外貨預金を買うし、円高になればなったで、これはチャンスだというので外貨預金を買うし、そういう意味で、外貨預金というのが全然プロの商品ではなくて、一般の人たちが普通に買うような商品になってきてますので、さっきのハイブリッドの商品、これは多分ピンキリだと思うのですけれども、一般の人たちが、それこそ毎日、1日何回でも売り買いするような商品になってきているというのが現実ではないかと思いますので、これはほとんど一般向けと言ってもいいのではないかと私は認識してます。
〇委員
いくつかありますが、一つは外貨預金の為替リスクですけれども、ホームカントリー・バイアスというのは日本の場合非常に強いとよく言われてまして、国内の運用が強いわけですけれども、政策的に、これも少し海外で運用するように仕向けようとするのかによって、やはりこの取扱いというのは違うのではないかと思います。
それから2番目は、2ページ目の真ん中ぐらいに、大口の株主、あるいは非上場株式のことが書いてありますが、企業と個人というのをどういうふうに考えるか。それから中小企業の場合にはそこがなかなか分離できないわけですから、一つ、どのベースで考えるかということがあると思います。
それから3番目は、2ページの下のほうに、公社債市場に関してもこれから損益を考えるということは、これは今後個人向け国債とか、いろいろ国債を含めて、公社債も含めて、個人の段階での売買が増えると思いますから、この部分は私は賛成で、やはり公社債も含めたほうがいいと思います。そうでないと、よく一部の批判では、所得階層の高い人のためのこういう損益通算ではないかと言われると思うのですが、公社債まで含めてきますと、大分一般的なところまでいくような気がします。
〇委員
確認ですが、公社債の話はわかりましたけれども、ホームカントリー・バイアスは、したがって外貨の、とりわけ為替リスクについても金融所得一体化として認めて、多分、損益通算まで含めてきちんと考えなさいと、そういうことですか。
〇委員
ええ。それをですから、日本の政策自身として、少し海外の運用も促進するということを目的とするのであればということです。
〇委員
それから大口配当で、企業、個人の区別をとおっしゃったのは、非上場とか大口というのは企業でやっている面も大きいから、そういう意味で総合課税を維持すべきだと、そういうご趣旨ですね。
〇委員
ええ。
〇委員
わかりました。
〇委員
今までのご意見と僕はそう違いはないのですが、「総論」のほうは、このイにすべてが一応尽くされているのは、「政策要請を踏まえ」ということは行き過ぎだというご意見もあります。これは事実ですから、どう表現するかはまた別問題ですが。
それからあと、プロ、アマというお話がありますけれども、この前僕もちょっと申し上げましたけれども、証券会社なり、あるいはインベストメントバンク、特に外資系も含めて、要するに複雑なものをいかに一般的に簡単な商品にして、仕組みは難しいですよ。ただ、出てきた商品は極めてわかりやすいというものを作って売っているということですから、ハイブリッド商品だからプロだということは全くないので、ハイブリッドをいかにアマチュアの一般の投資家に売るかというのが金融業者の、金融証券業者の仕事ですから。
したがって、僕に言わせれば、極端に言えば、かつてのプロというのは、今はアマでだめなのですね。かつてアマチュアと言われていた人のほうが、例えば僕の同級生なんかでも、リタイアしてから毎日パソコンで株式売買しているというのがありますけれども、そういうことで随分変わってきているということ。
そのいい証拠が、各社がやっている投資信託の運用というのは、おそらく株式のあれでしょう。この1年間見て、市場平均よりもみんな下にあると思いますね。アメリカだったら、このファンドマネージャーは全部クビですよ。日本はそれでもちゃんとやっているということから言って、かつてのプロ、アマという見方はもうだめで、むしろその商品が本当に一般投資家に受け入れられるかどうかということではないかと考えております。
それからあと2ページの、今、委員が言われた公社債市場の譲渡益との問題ですね。僕は全くそのとおりだろうと思いますし、当然これは株式投信と同じ扱いをやっていくと。むしろこれからはこっちのほうのリスクがでかいのではないかなという感じが僕はしておりますけれども、全く同意見でございます。
〇委員
時間もあれですから、もしよろしければ損益通算、必要でしたら納税環境整備も含めて、どうぞ皆さんご自由に。それから、念のためにですが、今の高度な金融技術というのだけではなくて、事業体とか、ある種の法的な仕組みなどを使って節税しようという話もありますけれども、そこら辺について何かご意見があるのでしたら、ぜひ伺っておきたいと思います。損益通算はかなりいろいろな議論があると思いますから、どうぞそれも含めて。
保険については、さっき言いましたが、かなり問題になるかもしれなくて、皆さんがどういうご意見なのか、もしご意見があれば伺っておきたいと思います。いわゆる2分の1課税ですから、要するに所得を2分の1というふうに評価した上で総合課税をしているので、人によってはかなり有利な商品として現在あるわけですけれども、それをいわゆる一体化課税してしまうと本来の総額に戻って、それに2割の課税ということになりますから、保険の商品の有利性が薄れるという側面もあるわけですね。
それと、損益通算に関しては、例えば利子、配当、株式譲渡益で全部広く通算を認めるべきだという意見もありますし、利子は非常に難しいのではないかというヌのようなご意見もありますし、配当と株式譲渡益でというようなリのご意見もあります。ここら辺、皆さんの出た意見を並べてあるわけですけれども、どこかに収束、収斂させていく必要はできればあるので、ご意見があれば。それから資産滅失についても、ペイオフと非上場株式と両方含めてどういう取扱いが望ましいとお考えなのかというあたりがかなり論点として残っているかと思います。
〇委員
今、ご指摘のありました4ページのヌの点ですが、利子所得はいわゆる銀行預金の利子のほかに公社債と公社債投信が原則として入っています。このヌはおそらく銀行預金を念頭に置かれたご意見であったかと思います。現行の23条の利子所得を1ブロックとしてとらえなければいけないということは必ずしもないはずでありまして、利子所得と言わずに、銀行預金の利子等々は確かに数も多いし、それはごく家計の運用をしていると。私はホビー・ロスと申しますが、そういうやや違う性格のものであるという考え方ができるだろう。それに対して公社債投信や公社債というのは、これは投資であって、一般の金融商品と考えるのに適しているという仕分けをすることが私はできるのではないかと。そうだとすると、損益通算の範囲をある程度広く取り上げながら、一番技術的、執行上、おそらく技術的に問題のある銀行預金の利子を分けるという方向もあってよいと思っております。
加えて、今、公社債投信のことを口にいたしましたので、3ページのヌで、公社債投信と株式投信は「同様の課税とすべきではないか」というこの点は、私は以前から同様にすべきであるということを発表しておりますので、そのような意見であります。
〇委員
今のご意見は、一つの可能性としてですけれども、銀行預金は損益通算を認めないけれども、公社債の利子については認めるとか、そういう可能性もあるのではないかと。
〇委員
ええ。
〇委員
利子所得の口座数が多くて事務負担が大変だという部分、名寄せの話になるのかもしれませんけれども、ペイオフに伴って、各銀行は自分の銀行の中での口座を名寄せせざるを得ないのではないかという気もしているのですが、そういうことから考えると、利子所得に関する事務負担、調書を出すというところは大変かもしれませんが、ペイオフがあるということを考えると、事務負担、そんなに気にしなくてもいいのかもしれないという気がしなくはないのですが、何かご意見等ありましたら。
〇委員
ペイオフに備えて口座の一元化を図らなければならんというのは課題なのですけどね。ただ、実態的に言いますと、作業はやっているのだけれども、なかなかはかどらないというのが、全体としてどこの金融機関も大変今頭を痛めているのが実態だろうと思います。資料を送って回答を求めてもなかなか返事が来ないとか、今どこに行ったかわからないとかいうような口座がやはり相当の数あって、これをどう処理するのかというのがこれから1年足らずの間の大きな課題だというのが現状だと思います。
今の、利子所得を対象にするかどうかというのは、今おっしゃった調書を出すかどうかとか、いわば課税事務の扱い方の問題と絡むのだろうと思うのですが、この間、ここにも書いてあるように、そういう扱い、損益通算を認めてほしいという人が資料を提供すればいいではないかという考え方、あるいは背番号みたいなものを独自に作ってやる必要があるのではないかという議論があったと思うのですけれども、これは、私は番号制度を使わないでもやれる可能性があるのか。
つまり、今は源泉徴収で利子を差っ引かれているわけですよね。それを通算してほしい人が、自分はこれだけの税金を払っているから、その証明を出してくれというふうに任意にやればそれで済むということであれば、背番号の問題というのは消える、あるいはその口座数がたくさんあるから云々という話もかなり整理されるのではないか。大口の利子所得がある人でないと多分そういう問題というのは出てこないだろうと思いますし、限られた数になるのではないのかなという気もするのですけれども、その辺の実態がよくわからないので、ひとつあわせてお聞きしたいと思うのです。
〇事務局
具体的にまだ金融庁等から、この辺のところ、聞いておりません。いずれにしましても、母数として十数億口座があるということが我々にとっては一つの考え方であると同時に、ここにも何カ所かに出てまいりますが、いわゆるキャピタルロスと、それから特に利子、源泉において何の関係もないものとの所得間の関連性と申しますか、先ほど委員からお話ございましたが、ああいう見方がいくつもあって、それぞれすべてが大切なものですから、一つの物差し、原則だけでクリアーカットになかなかいかないというところを悩んでおります。
〇事務局
補足的に。私が今感じておりますのは、どういう方法にせよ、やはり適正にその方が源泉徴収をされて納税が済んでいる、その済んでいるものを損益通算によって今度還付なりをするわけですから、そこのところのシステム、まさに委員がおっしゃった、別の方法があるかないかという議論をやはりこれからもきちっとしていかなければいけないと思います。
大事なことは適正なそういうチェックシステムが要るということはきちっと据えて、それで具体的な方法をどうしていくかということについては、さらに金融庁とか関係者とも実務的な面も含めて議論していく必要があるというのが基本ではないかと思っております。ただ、一番わかりやすいということで、例示的に納番的なものがというのがこの委員会でもいろいろご意見があったのではないかと承っております。
〇委員
今の委員のお話、私が認識している限りでは、今の銀行預金の利子に関しては、各金融機関が源泉徴収した総額を国税庁に出していると。各預金者別には調書を出していないという話だったわけですね。そうすると、ある投資家が利子所得に対して銀行に何か出してくれと言うと、銀行は出せるでしょうけれども、それを確かなものかどうかということを国税庁側がチェックする仕組みがあるのかどうか。だから、出すのだったら、それをもう一遍何らかの形で国税庁に、それが正しい利子所得額ですよと、○○さんあてのというようなことを何か担保する仕組みを作らなくてはいけないのかなあと。それがひょっとしたら金融機関にとってはまたエクストラのコストになるのかなという感じがしているのですが、事務局も含めて、私の理解はそれでよろしいのでしょうか。
〇事務局
基本的には、今、小委員長おっしゃったとおり、いわゆる金融機関、払う側のサイドの情報、それが一つございます。それからもらった側からの情報、これを突き合わせるという作業、これが大切になってくるわけでございます。どんな仕組みが可能なのか、今、事務局が申しましたように、これは実務的な検討も必要かと思いますが、基本的には、小委員長おっしゃったように、2カ所から来たものの突き合わせというのが大切になっているということだと思います。
〇委員
今、ご質問があった点というのは非常にやはり気がかりになるのですけれども、今事務局の答弁は必ずしもそこがはっきりしないように思うのですが、要は、銀行が利子を払うときにはだれだれさんからいくら税金をお預かりしたから払うという明細なしに、全部、自分のところの預金はこれだけあるから、これ掛ける何十%ということで利息に一定の率を掛けたやつで、これだけ払いましたという格好で報告がなされているということだと、それは今度、個別に個人がいくら税金を払っているのだということの証明を受けても、銀行としてそのことを証明できないのではないのかと、あるいは金融機関にその調書を出せないのではないかという疑問だと思うのですけどね。いや、僕は、実態がどういうふうに行われているか、申しわけないけれどもあまりよくわからないので、そこら辺のいかんによっては非常に税務上の扱いが変わってくる、やりにくくなる面があるのではないのかなというのはよくわかるのですよ。その辺、実態をもう少し知りたいような気がするのですが。
〇事務局
税務上というか、まさに税金の面では適正に、2割なら、今の税法で2割源泉徴収、銀行がしたのをそのまま税務署と地方税当局に行くと、これは何ら変わるものではないわけですね。要するに、今回の問題は、個々の納税者のレベルに落として、その人が実際にいくら利子を受け取り、いくら源泉徴収をされたかということが特定されなければいけない。その特定されることをどういう形で客観的に検証されるかということですから、やはり資料情報のマッチングの問題ということで整理できると思うのですね。だから、結果的にはある程度、やはり事務負担という問題は銀行にとって避けられない。だから、それをいかに合理的にするかという、これは実務的な面の理論だけではなくて、実務的な議論というのはまた別途これから詰めなければいけないと思いますが、マッチングシステムというものがない限り、適正な申告、適正な税務処理ができないということはやはりご確認をいただいているわけですから、そこのところはあとは、またさらにそういうコストベネフィットとかいろいろなことも考えて、逆に言えば、あまり問題が大きければ、そもそもいくら理念的によくても見送ろうという議論だってそれはあり得るわけですから、そこはまた多角的に検討していくということになろうかと思います。
〇委員
金融機関の側から言うと、おそらく、この事務手続はどれぐらいかかるのだというのがすごく気になるところだと思うのですよね。だから、特定口座のようなものの管理ということが起こってくることになりますと、どれだけの人が希望されるかにもよるのですが、それは大変な手間暇がかかって、金もかかって、とても手数料をいくらかもらったぐらいでは、証券会社いくらもらっておられるか知りませんけれども、金融機関はなかなかそこの手数料まで取り切れないのではないかという気もするものですから、難しい問題になるのではないかなという気はします。
〇委員
要するに、先ほど委員がおっしゃったことで言えば、例えば私に利子所得があって、それを相殺したいというときに、私が銀行に行って、調書をくださいと。その部分に関して調書を銀行さんが例えば国税局に上げると。そうすると国税局がマッチングできる、そういう仕組みさえあればいいのだと思うのですね。
〇委員
だから、そういうことでかなり限られるだろうなというような見込みがつけば、ある程度の手数料の問題はあるかもしれませんが、できないことではないのかなと個人的には思いますけれども。
〇委員
預金と公社債、株式を通算するかどうかですが、もともと「貯蓄から投資へ」という場合の貯蓄はおそらく銀行預金を指しているのだと思うのですね。銀行預金から公社債とか株式にということだと思いますので、そうであれば、私はやはり両方全部通算するほうがもともとの趣旨には合うのではないかと思います。ですから、今のご議論で、実務手続上、なるべくコストがかからないように、その把握がわかりやすいようにするほうが筋ではないかと思います。
〇委員
私も、基本的には通算は利子も含めるべきだろうと思いますが、具体的に納税環境整備のところで、やはり制度設計するときにコストのことを考えてやらざるを得ないと思うのですね。徴税するのにそれ以上のコストをかけてシステムを作ってもほとんど意味ないわけですから、どういう形でやるかという具体論がこれは非常に重要になってくるのではないかなと思うのですけれども。
例えば利子については源泉徴収で支払っているわけですから、要するに、支払っているものを返してもらいたいということでやるわけでしょうから、いくつも口座があったら、私はこれだけのを持ってますよということを選択制で本人に申告させれば、必ず、分散していても、本人がまとめて申告してくるのではないかと思うのですね。そうしたら、銀行のサイドではそんな大きな負担にならないのではないかなあと思うのですけれども。自発的申告にすれば。
名寄せは、そうすると自動的にやりたい人だけ自分でできてしまうと。そういうシステムにして、選択制にして、そして重要なところは本人確認ですよね。本人確認のシステムを作るというのは膨大なことですから、それは非常にむだなので、税金の通算については、例えば名前は税還付番号とかなんとか、ちょっと有利そうな名前をつけて独自の番号を作ってしまえばいいと思うのですが、問題は、それを本人確認するときに独自にやるわけではなくて、一番現実的なのは、すでに住基ネットというシステム、本人確認システムができているわけですから、それとその番号との対応関係さえつけておけば、実際民間が使うのは税還付番号であって、対応をつけているところで本人確認するところは公的な使用ですから、住基ネットが使えるということをやれば、一番効率的なシステムができるのではないかなあと思うのですね。
だから、そういう具体論を含めてやっていかないと、コストベネフィットで理想論ばかり言っていてもしようがありませんし、ITの進歩というのは、納税環境整備、あるいは徴税コストの引下げ、引下げができればインセンティブを付与するという格好ができるでしょうから、そういうことをかなり突っ込んで考慮した上での議論にしていかないと、どうも抽象論になってしまうと、実際インプリメントできないという問題が出てくるのではないかなという気がしますけれども。
〇委員
私が理解しているところでは、あと2回ぐらいで総会までの報告を作るので、もちろん、ある程度細かい事実認識を踏まえた上で議論はする必要ありますけれども、非常に細かい制度設計まではちょっと立ち入れないのではないかと。むしろ総会で通れば、その後、秋にでももう少し細かい議論を続けるというふうに私は理解しているのですが。ですから、その限りで、もちろん細かいことも必要な限りでおっしゃっていただいて結構ですが。
〇委員
今、委員がおっしゃったことに若干補足させていただきますと、先ほど来、ペイオフとか名寄せとか、そういう話が出てますので、私の理解しているところで申し上げると、ペイオフと名寄せというのは、破綻をしたときに、金融機関が預金保険機構に自分たちの預金のデータを渡して、預金保険機構でたしかそれを名寄せして、どこまで払うかというのを決めるというのがたしか法律だったと記憶しておりますので、今ペイオフに備えて金融機関サイドですべて名寄せをしているかというと、それはまた別の話だというのが正しい理解でしょうし、現実ではないかと思います。
ちょっとそこ、混乱されるときもままあるものですから、若干言っておきますと、例えばある金融機関の10個の支店に10の口座を持っている人がいたとして、例えばその人が非常に大金持ちであって、その人に関してはいろんな商品を売り込みたいと金融機関が判断すれば、10個の支店からその人のデータを全部集めてきて、Aから何とかの支店までこれぐらいの種類の預金と金額がありますと、そういう名寄せは当然やりますけれども、じゃ1行の預金で1円しか残高のない人が10カ店に口座を持っているとして、その人に関しても全部それを名寄せしているかというと、それはペイオフのためにやる必要はないわけですし、金融機関としてもそれをやるだけのインセンティブもありませんから、そういう名寄せは当然やられていないと。じゃ全体としてどれぐらいのカバレッジで名寄せされているかというのは、これは多分金融機関によって違うでしょうからわかりませんけれども、そこはペイオフと名寄せというのがやや混同されているときもありますので、ちょっと、すみません、補足で言わせていただきます。
〇委員
ありがとうございます。要するに皆さんのご意見というのは、利子は損益通算を含めてできるだけ広範にやったほうがいいのだろうけれども、いろいろ、やはり金融機関の負担とか考えると非常に難しいものがあるということですから、要するにここはかなり歯切れが悪い結論になるのかもしれないという気が今の段階ではしております。ニのところが、そういうことで言うと最終的に落としどころになるのかもしれません。そういうことについてご意見がある方がいらっしゃいましたら、ぜひどうぞ。
それからもう一つ、【資産滅失】のところですが、上場株の場合、それから預金の場合ですね。特にペイオフ損失についてどういうふうに考えるか。株式も両方ですね。これについても、やや両論、今の段階ではありますから、もし皆さんのご意見がございましたら……。
〇委員
ペイオフの場合、個人の場合にはそれほど問題ないと思うのですが、やはり口座を持っていて、それで1,000万以上取引している企業のアカウントのときには、ペイオフで被る可能性のあるところは出てくるのではないかと思うのです。そのときに、ここで、4ページから5ページですけれども、個人の段階では私は別にそんなに認めなくてもいいとは思いますけれども、企業で非常に多額の資金を短期間に決済しているようなところでは、ある程度何か影響があるような気がします。
〇委員
個人事業みたいなことですか。
〇委員
そうですね。個人事業、大きな中小企業とか。
〇委員
ただ、企業だと、個人所得税ですよね、今問題になっているのは。それとも法人税について考えろと。
〇委員
法人についてもですね。おそらく。法人のほうの利子ですね。
〇事務局
それは関係ないです。
〇委員
それは関係ないのですか。じゃ結構です。
〇事務局
ペイオフの名寄せ行為自体は預金保険機構が行うということなのですが、金融機関はそれに必要なデータ整備をしておくようにと、それを提出するようにと、こうなっている。これは委員のおっしゃるとおりです。問題はそのデータ整備。これはシステムのほとんどでございまして、名寄せ自体、どっちがするかという問題はあるのですけれども、データ整備、それからそれを預金保険機構に提出できるようなシステム、これを用意しておくということがコストの大半になるのではないかと思います。
〇委員
私ももう現場離れていますから、これはまた証券会社によく確認したいと思いますけれども、大体、金融機関が物事、新しいことをやろうというときは必ずコストがかかってだめだだめだと言うのですね。それはなぜかといえば、僕に言わせれば、従来のもう古い仕事をやって、それにコストを使っているから、新しいことにコストをかけられないと。要するにビジネスモデルができていないと、そういうことだろうと思うのですね。
例えば証券の特定口座を作るときも、業界挙げてみんな大反対したですね。コストがかかってできないと。それができるのは最大手だけだから、みんな口座は最大手にいってしまうと。そんなことないわけで、現在すでに350万口座、どんどん増えているわけですね。やはり僕は、ちょっと暴論みたいですけれども、批評家的に言えば、そういうことは非常に重要なので、おそらく銀行界も、どこか銀行が率先してそういうことをやり始めたといったら、おそらくなだれを打ってやり出すのではないですか。過当競争のところですから。というような感じがしております。だから、ここは少し前向きにいろいろのことをはっきり言ったほうがいいのではないかと思います。
〇委員
名寄せとかの銀行の被るコストの問題ですけれども、いろんな想像力を発揮させるよりは、やはり試算を出さなければいけないと思うのですね。どれぐらい実際かかるだろうということに関して。目の子でも構わないですから。その試算を見て数字を見ないとどういう議論もできないので、いろんな想像であとは進むことになってしまいますから。
おそらく、もしそれが答申に間に合わないというのであれば、それはコンディショナルアポンにしておいて、ペンディングですね。当面の課題としては、とにかく利子所得をもしこの損益通算に入れる場合、じゃ銀行が被るコストはどれぐらいなのだろうかということの見積もりを出す。それがあまりにも高いというのであればちょっと考えましょうということ。
つまり、それは業務上、税務行政上無理であるということになりますから、理想は確かに一体化かもしれませんけれども、それは高いコスト、それを上回るコストがあると言うなら、それは申しわけないけれども、その部分は分離というふうな形で、もし可能であるならば、これは長い目で見てということになると思うので、将来的には利子所得も一体化の方向で入れておきましょうと。ただ、現段階では利子所得は除くという可能性も、それは試算の結果を見て判断する。もし試算の結果を見てそうでもないなら入れてしまえばいいということでも構わないような気がします。
素朴な疑問ですけれども、ペイオフ損失についていろいろと議論が出ていたと思うのですけれども、これは個人の分に関してなのですが、もしペイオフで損失を出した人が損益通算してもらいたいのなら、やはり利子所得を損益通算しておかないとおかしいですよね。ですから、ペイオフとの関係もあるならば、やはり利子所得も入れなければいけないのかなあとは思うのですが。
〇委員
大変おっしゃるとおりのご意見だと思うのですが、私自身の問題意識をとりわけ一つは利子について申しますと、今はそんなに、利子率が低いので利子所得は関係ないのですが、ひょっとしたらこれから数年のうちに結構利子率が上がってくる可能性がある。そのときに、やはり大衆、それこそ一般投資家にとって損益通算の一番の柱は、預金利子と株の損をどういうふうに損益通算してもらえるのかということが多分一番問題意識としてあると思うのですね。ですから、そこについて何も言わないような答申でいいのかどうかというのが一つ問題意識としてあります。
他方では、じゃ利子率が上がってきたときに預金利子に伴う税収というのはかなり多額になる。これは損益通算してしまったときにそれで本当に税収上問題ないのだろうかということも他方では問題としてあります。それからとりわけ、もう一つは利子というのは経常的な利子であって、株のあれは譲渡益ですから、まさに租税回避ができる可能性がある。そういうことも含めて、何の歯止めもしないままでいいのかどうか。もしも認めるならばですね。それとも、認めないというので、一般に金融所得一体課税ですよと言って通るかどうかというとこら辺を皆さんもう少しご意見いただけないかなあというのが一つあります。
それからもう一つ、念のために申しますと、今、委員がおっしゃったこととの関連で言うと、ペイオフですね。株とペイオフの滅失というのは、私、ちょっと最近分けて考えてもいいのではないかと思い始めていて、なぜかというと、預金利子に関してはペイオフを1,000万円まで保護しますよということを言っているわけですね。しかも決済性預金なんてものもできているわけで。要するに1,000万までしなければ何の損もないわけですね。そういう制度設計はしてあるのに、1,000万超えたものに関して税の損益通算を認める、そんなのいいのですかねというのは一方でありますね。
他方、株に関しては、確かに措置はあるのですが、監理ポスト、でも、新聞でそんなに大きく取り上げられるだろうか。ひょっとしたら、気がつかないうちにもう監理ポストも終わっていたというようなことはないだろうかということも一方で気になるのですね。
ですから、株とペイオフは同じ資産滅失でも、ひょっとしたら別の取扱いをしてもいいのかもしれない。そこら辺も含めて皆さんのご意見を伺えればと思いますが。
〇委員
今のご質問にすべてお答えできるかどうかわからないのですが、全体の総論も含めてですけれども、今回のテーマ「貯蓄から投資へ」ということをまず考えたときに、たくさんの金融商品がある中で、これを一体化というふうに話すと、非常に、どこまで入れるのかというのがなかなかおさまらない話だと思うのですね。
であれば、貯蓄というものは一体どういうものであり、投資というものはどういうものであり、そして投機というものはどういうものであり、かつ保険に関しては、これは貯蓄でも投資でも投機でもなく、備えという役割をするものでありますので、備えるという意味、要するに預けたお金に大変なレバレッジがかかってもしものとき返ってくる。これは貯蓄でもありませんし、投資でもありません。そういう備えるという商品。そして、あくまでも預けたものの元本が保証され、それなりの金利が返ってくるという貯蓄というもの。そして、その間にあるのが公社債や債券なのかもしれませんが、さらに企業活動に必要となる資本を出すという投資と、もう一つは、短期的に売買をして利ざやを稼ぐという投機的行為、これは先物であったり、株においては1年未満の短期売買みたいなものだと思うのですが、そういったそれぞれの性質というのを一度認識をあわせた上で、では金融商品それぞれがどこに入るのかというのを一応考えてみる必要があるのかと考えています。
したがって、保険におきましても、死亡であったり障害であったり、何かがあったときに大変なレバレッジがかかって戻ってくるものに関しては、もう備えとして、やはり2分の1の税金でいいとは思うのですけれども、あくまでも貯蓄性の高いもの、養老保険であったり、それから投資性の高い変額年金保険のようなもの、これは保険とは別に考えるべきであると思います。
そうすると、「貯蓄から投資へ」というテーマを我々が考える中で、やはり貯蓄商品と投資商品というものを一体化することによって、今多くのお金が貯蓄的な預金にいるわけですから、それが投資に移ることによってメリットがあるというのを多くの方が感じていただければいいのではないか。
そして、そのメリットというのが一つ、損益通算であり、課税を一体化させるということだと思うのですが、その損益通算をするときにどうやって、名寄せというのでしょうか、ちゃんと税金をかけられるかというのを確認するかということでコストの問題など出ていますけれども、先ほど委員がおっしゃいましたように、私は、個人の申告制というのが非常にリーズナブルなのではないかと思っています。
その理由の一つは、要するに、背番号制に関しても、希望を出した人だけがやればいい。なぜそれがリーズナブルかと思うかといいますと、今、証券会社と金融機関、保険会社のまた業務の一体化のようなものが進んでいて、特に仲介制度というのが今度生まれてきます。そうすると、おそらく銀行は株の仲介をするかもしれませんけれども、ほとんどあまりしないと思うのです。
何をするかというと、今すでに起きているように、ある銀行と証券会社の関係のように、銀行は証券会社の口座を紹介しますと、口座開設をアドバイスしますと。証券会社のほうは、口座を開設してもらえば、銀行に1回お客さんが売買するたびに1,000円払うなんていう関係を作るのですが、逆に今度、証券会社に来たお客さんが投資信託を買いたいというと銀行を紹介するというような関係を持つ。そして、今度、その証券会社は全国の地銀ともその関係を作るということをやっています。
と考えると、多くの証券会社がそういう金融機関との関係を作っていくとすれば、自分で損益通算をしたいという人は必ず株式の売買をやるわけですから、もしくは投資信託の売買をやるわけですから、証券会社に、銀行に預けている預金が一体いくらあるのかというものを申告する。そのとき番号を提出するということかもしれません、番号を取得するということかもしれませんが、それによって、もしかすると証券会社のほう、もしくは銀行もやるかもしれませんが、そこで損益通算の処理を番号に基づいてするということが、私は可能性として非常にあるのではないかなと。そうすると、コストの問題も、これで解決とは言えませんが、それほど全金融機関が対応しなくてはいけないということにならないのではないかと思っています。
話は少し戻りますが、ペイオフ、そして株式の滅失に関してですけれども、今の話でいけば、預金、貯蓄と投資というものを金融の一体化と考えるのであれば、ペイオフも入れるべきではないかと。保険に関してはという意見も前回出ていたと思うのですが、あくまでも備えである保険に関しては別というふうに考えるべきかと思っております。
ペイオフを一体化する、そして株の滅失に関しては、まさに委員がおっしゃるように、株というのは最終的には売買するチャンスがあるとは言われますけれども、あくまでも買い手があって初めて売買が成立するものですから、買い手がつかなかった場合は売れないわけですね。本当に売れなかった場合どうするのかということも私は残ると思いますので、何らかの形で本当に売却ができなかった状態で株が無価値になったときというのはやはりきちんと処理をしておくべきではないかと考えております。
少し長くなりましたが、以上です。
〇委員
ありがとうございました。どうぞ、今のご意見も踏まえて。
〇委員
保険商品への課税のあり方なのですが、今、委員がおっしゃったように、保険商品と一言で言っても、消費とか貯蓄とか、いろんな性質を持つものがあるので、その性質を考えて、考えを整理した上で課税をすべきという点には非常に賛成をいたします。
それで、納番制の選択制の話なのですが、非常にまだ素朴な疑問が私の中ではあって、もし選択制になるとすると、全員に付加される場合よりも金融機関にとってのコストはどの程度になるのか、これは他の委員がおっしゃった疑問にも通じるものですが、金融機関にとっての本当のところのコストはどれぐらいなのかという点が非常に気にかかります。
といいますのは、個人的な意見で恐縮ですが、納番制というのは、いつの将来になるかわかりませんけれども、いつかはみんなが、国民全員がちゃんと一つずつ番号を持ってというのが私の中での理想論でありまして、それは納税者間の公平性を確保する意味でも、それぞれの納税者が気持ちよく税金を、利便性のある範囲で納めることができるという意味でも、理想論として納番制というのは入れるべきだと考えています。
今回は金融所得の一体化ということで選択制をとるわけですけれども、理想論として、全員が選んでもらえるような納番制がいつ実現するかわかりませんけれども、そうだとすると、納税者がなるべくその納番制を選びたいと思うようなシステムにどういうふうに進んでいくのかというのが問題になってくるかと思います。
「貯蓄から投資へ」という点が今回非常に強調されているわけですけれども、一つちょっと冷静に考えなければいけないのは、ほかの外国の例を見ても、危険資産への投資の状況はリミテッド・パーティシペイションの問題がありまして、アメリカのように、半数以上の国民が株式を持つというような状況はなかなかほかの国ではないわけですね。イギリス、オランダなどは3割程度で、日本は低くて2割程度ですが、ですから、今の現状の2割というのが税制を一体化することによってもう少し上がってくるとすると、3割の方々がここの中で使われる一般投資家の中に入ってくるというところなので、その方々、3割程度の方々にまずは選んでいただけるような納番制、どういうふうな制度設計をするかというのが重要になってくると思います。
〇委員
さっき他の委員がおっしゃって、今、委員がおっしゃいましたけれども、金融機関のコストというものがどのぐらいかというのを調べないとまずいのではないですかという意見がさっきからたくさん出ているのですが、これは調べられるのでしょうか、あるいは調べる予定があるのでしょうか。あるいはどういうことをお考えになっていらっしゃるのでしょう。
〇事務局
結論から申しますと、どんな仕組みにするかというもの、いわゆる前提の置き方でコスト計算違ってくると思われますし、計算するのは我々ではなくて業界そのものなものですから、これは今後金融庁等を通じてちょっと相談しなければいけないことかなあと、このように思います。
〇委員
もう一つ別の聞き方をすると、金融界出身の方々も何人かいらっしゃるわけですが、金融界の側のストレートな意見というものを我々必ずしも聞いていないわけですよね。そういうものを聞くということは、この小委員会、あるいは今後もう少し具体化していく段階ではどこかで聞くのでしょうか。
〇事務局
そこはまさに小委員会でお決めいただくことかと思われますが、今回、この夏にいわゆる理論面の詰めというか、考え方の一つのパッケージをお示しいただきまして、この夏以降、より具体的な議論をする際に、そういうようなセッションというのは大いに考えられると思います。
〇委員
わかりました。
〇事務局
ちょっと補足で。私どもとしては、今回の小委員会のレポートは、まさにその議論をいただいて、最初のおまとめということ。ですから、今いろいろご指摘のあることも、まさに必要に応じて小委の中でご指摘事項として、その課題としてさらに次の検討につなげていただくというのも十分価値があると思っております。
〇委員
納番を選択制にするというのが大体ここでの方向であるということはよく承知していますが、選択した後の利用強制というのがどうなるかということを議論していないように思います。つまり、ある年、株式の譲渡損があったから損益通算をするという年にだけ申告が出てきて、ほかは源泉分離のまま放っておかれる形になるのか、それとも、一度選択したからには、これは毎年、金融所得については、プラスであれマイナスであれ、分離申告しなさいという形になるのかというところを少し考えておかないと、要するに損が出た年にそれを差し引くためだけの番号ですねということになるのか、より進んだ納税環境整備ということになるのかというのは大きく変わってくると思います。
〇委員
どちらのほうがいいということですか。
〇委員
私は、選択制を入れるからには使用強制をすべきだと思いますが、それが現実的に可能であるのかどうかということに対して非常に疑問を持っております。
〇委員
今、委員がおっしゃった税収の景気との関係で、これはもし預貯金まで含めますと、景気が悪いときには相当キャピタルロスが出ると思いますから、それが預貯金の金利を全部なくしてしまうぐらいになると思いますので、やはり税収の景気に対するプロシクリカリティというのは相当上がるような気がします。
それからもう一つは、預貯金を入れるか入れないかによって、おそらく個人の金融資産の選択も大分違ってくるのではないかと思うのですけれども、最近、個人向け国債が大分出てきてますから、そうしますと、公社債と株式だけが通算されるとなると、意外に個人向け国債とかそういうところにシフトする可能性もありますから、やはりどこまで含めるかというのは相当注意しませんと、金融機関の行動にも影響するように思います。
〇委員
委員にちょっと、ほかの方にもお聞きしたいのですが、他の委員がさっき、公社債の利子と預金の利子と分けて考えたらどうかとおっしゃいましたが、それに対して何かご意見ありますか。
〇委員
私は、最初申し上げましたけれども、預貯金と公社債とは、もともと貯蓄というのは私は預金というふうに考えてますから、やはり預金から公社債、株式にシフトするというのがこの投資だと思いますから、そういう意味で、私は通算、両方。
〇委員
利子はすべてということですね。
〇委員
ええ。
〇委員
その前に委員がおっしゃったことを私はやや念頭に置いていたところがあるのですが、仮に、簡単に言って銀行預金ですね。銀行預金、貯蓄の部分は、プラスが出たら源泉分離のままで、マイナスはほかのもののマイナスと通算できないと。公社債や公社債投資信託は利子所得だけれども、プラスが出たときの通算の範囲に入るという制度を作ったときに、素人考えですと、そうであれば、株を買うときは預金をおろして国債を買おうという方向に動くのではないか。そうだとすると、この政策要請という点から言うと、むしろそこは分離するということもあるのではないか。
問題は、ペイオフのときに、前に他の委員に怒られましたが、それをあまり手厚くするとかえって預金にお金が残りますという話ではなかろうかとも思っておりまして、今の委員のご発言の直前に委員がおっしゃったことは私の理解にかなり合致していたのですが、なぜこの政策要請を前提にすると預貯金全部までを一体化の範囲にしなければいけないのかというところをお教えいただけますでしょうか。
〇委員
わかりました。これはどういうふうに動くかというのは非常に予測は難しいと思うのですけれども、個人の場合には完全に、わりあい普通の所得層の方は預貯金が圧倒的に多いわけですね。これで、では、株を買ったときの損益通算がどこまで認められるか。もし預貯金まで認められるとしますと、相当、預貯金から株、あるいは株から預貯金へというシフトが出てくると思うのです。
ところが、預貯金が除かれてしまいますと公社債と株式の中だけになりますから、おそらくそこでの配分というのが、預貯金のほうはまず確定して、それからという形になるのではないかと思うのです。ただ、他の委員がおっしゃったように、そういうふうにしますと、全部通算しますと、相当税収というのは振れることにはなると思うのですけれども。
〇委員
ここに書いてない議論というのがひょっとしたらあるかもしれませんので、それも含めて、次は報告書案を作りますので、抜けているところ等ありましたら、ぜひ教えてください。
〇委員
まず、損益通算の範囲をもし限定すると、税収確保の目的、要請だとか、タックス・アボイダンスに対する対処であるとかいうときにいくつかのやり方があって、一つは、アメリカではないですが、一律、いくらまでしか損失は控除できませんよという縛りをかける。2、そうではなくて、例えば利子所得に対して守りたいというのであれば、利子所得から控除できるのに何か上限を置く。あるいは3としては、もともと損益通算できる所得の範囲というのは従来よりは広げるけれども完璧にはしない。極端な場合は利子所得を排除するといういくつかの選択肢があると思うのですね。
もう一つ、今までの議論に出てこなかったなと思っているのは、繰り越しをどれぐらい認めるかですよね。あと、無制限に認めるのだったら、ある意味でいいのは、今年、株のキャピタルロスが生じて、ほかの所得から損益通算できなくても、将来でのキャピタルゲインから損益通算できますから、もちろんそれに利子はついてきませんけれども、したがって、繰り越しのほうをどうするのか。もし、ある意味で損益通算の範囲、所得の損益通算の範囲を限定していくなら、将来の繰り越しの年限を延長していくとか、そういう形で対処していく必要性もあるので、ちょっと同時に考えなければいけない問題かなあと思うのですけれども。
〇委員
今、委員のおっしゃった使用強制というのが私よくわからないのですが、損が出たときに還付してもらいたい人が自発的に選択制でやるということであるから、損が出ないときにそれを使えということを強制する必要があるのかなあという気がするのですけれども。それは別に、損が出なかったら払っているだけですから、使うメリットも、還付そもそもなければ通算もないわけで、それは強制する必要、必ずしもないのではないかと思うのですが、どうなのでしょう。そうでないと、そもそも自発的とか選択制ということ自体を否定することにつながってしまうのではないかという気がしますけれども。
〇事務局
もっと議論をかっちりした形にする必要があるのではないかと思うのですが、我々、実は前、制度を行う実効性が必要ですという論点を出したことがございます。やはり益の出そうなところには番号を使わない、損が出そうなところに番号を使って税務署に申告するという恣意性というのは、これはある意味では困る。すなわち、益が出たらそれはほうっておく、損が出たらそれを申告するというのは変な話なものですから。そういう意味においての、番号を取得された方というのは、損が出る場合も益が出る場合も、その口座なら口座に税務署への道がついているという必要があろうかと思います。
あと、ある一定年やりました、その次どうするか、その次の年度どうするかという議論も使用強制の話であろうかと思います。この辺の話は今後の仕組み方ということではないかと思います。
〇委員
ちょっとイメージが違ったのかなあと思ったのですが、今、課税方法は現実にはものによっていろいろ違いますよね。それを損益通算をするというときには分離申告を出させるという形におそらくなるのだろうと思います。そうだとすると、そこで税率なども変わってくるはずであって、損が出たときは一定の分離申告の税率にそろってしまって、そうでない場合には、ものによっては特別措置で安い源泉分離の税率になっているというのは、いかに考えてもおかしいと思ったのがその年度を通じたほうで、事務局が指摘された1点は、10種類いろんなものを持っていて、これはたまたま今税率が安いから今度の通算の範囲には入れない。ぎりぎりマイナスをカバーできるところまでプラスだけを申告してくればいいという形になれば、それは年度内でやはりおかしいという、その年度と、それから年度を通じてと両方について、やはり私は、原則は一度選んだら使い続けるということではないかと思います。もしも完全に、源泉分離のやり方が全く申告分離の場合と同じになるというのであれば、それは前提を欠きますけれども。それはおっしゃるとおりです。
〇委員
ちょっと議論がもとへ戻ってしまっているような気がしますけれども、当然、それを使うと使わないの選択で、有利になる、不利になるということがあって、所得があったのにそれを申告しないほうが税金が少なくなるからと、そういう形になることはもう前提からしてないようにしなければいけないのは当然の話ですけれども、例えば利子の話などは、放っておいたら源泉徴収とられているわけですね。必ずね。だから、その部分を通算しようと思ったらば、それは申告しない人のほうの損になるわけですから、その部分を心配する必要ないのではないかと、そういう話なのですけどね。
〇委員
一応だから、損益通算する場合には一体化していますから、源泉か申告かというのは違いがあり得るかもしれませんが、税率に関しては多分同じ税率だと思うのですね。その中でないと損益通算認めないと。そうでないといろんな問題が当然起きるだろうと思うのですが。
〇委員
現状は、何度かご説明いただいたように、かなり違いますよね。それを全部手直しをした上でというふうにこれまで前提を置いておられましたでしょうか。
〇委員
今日の話で言えば2の部分というのがあって、これは課税方式のところですよね。ここでいわば一体化をするので、どこまでを課税方式一体化の中に入れますかというのがこの2のところですね。ただ、課税方式のときに、今申しましたように、申告なのですか、源泉分離なのですかというところは、そこまでは議論していないと思いますが、税率を等しくするのはどこまででしょうというのがこの2の課税方式の意味だと思います。その上で、その中のどの部分を損益通算しますかというのが3だと私は理解しておりますが。
〇委員
今、議論が混乱しているといいますか、よくわからないのは、ある委員が先ほどから言われてますけれども、利子所得の場合は源泉分離で、申告制度になってないわけですよね。これはなぜかというと、消費税を採用するときに、今までほとんどマル優等で非課税になっていた利子にも課税するというときに、源泉分離という形でやっと課税することにしました。その代わり支払調書も一切出さないで結構ですという非常に緩い形の仕組みが残っているわけですね。今度それで損益通算となりますと、損益通算というのは自分のために計算してやるわけですから、当然申告する形になるわけですが、さて、それに利子を入れようとすると、源泉分離である状態ではとてもできないので、そこをじゃどういうふうに利子所得の課税の仕組みを考えていきますかというようなことで、一からもう一度やり直すようなことをしていかなければいけないというのが委員のご意見なのですよね。違いますか。私の意見ですか。
いずれにしましても、利子を中に取り込むということは、さて、源泉分離から離れて申告分離へ持っていくなり何にしろ、これをかなり仕組みを改めなければいけないということがあるわけですよ。それを全くもう簡単に考えて、利子も一緒に引き込んでやってしまえばいいとなると、申告分離にすると、源泉徴収くっつけるかどうかによって大きく違いますけれども、申告しない人も出てくるとか、いろんな問題抱えてきますよね。その辺まで広げて議論しないと利子の問題は片づきませんよと。簡単に損益通算で合わせてしまえばいいなんていう議論にはすぐには結びつかないということです。
〇委員
ちょうど中間にあるのが配当だというのが私の理解なのですが、配当は、事実上源泉分離に近いことが行われているのだけれども、調書は全部国税庁に上がっているわけですね。本人確認もしていると。だから、配当と株の譲渡益は、事実上、源泉分離と申告分離で違う課税方式なのだけれども、わりと通算はできるでしょうというのが私の理解なのですね。国税庁側でチェックもできるでしょう。銀行の預金利子の場合には、配当と同じように、源泉分離なのだけれども、違いは、調書が国税庁に上がっていないために、ある人は、申告したときに、国税庁としては、その申告が正しいかどうかというのを反対側の金融機関側からの調書でチェックする仕組みが今のところないと。それが配当と違うので、損益通算が配当ほど容易ではないと、あるいは非常に難しいかもしれないと。とにかく配当と違う。配当の場合にはわりと簡単にできる。これは私の理解なのですが。ですから、それを皆さんの共通認識にしていただいて議論を進めたいと思うのですが。
大体これで尽きてしまったのなら別ですが、皆さん黙りこくって考え込んでおられますが。
〇委員
先ほど委員がペイオフを対象にするかどうかというので、1,000万円までは要するに完全に保証されるというふうになっているから、ペイオフを考えることは必要ないのではないかというような感じのことをおっしゃったのですけれども、私、どっちがいいかということはあまり考えないで、考え方として、やはり1,000万まではそうだけれども、1,000万を超える部分は、それはリスクをとっているというだけのことではないかなという気がするのですがね。1,000万まで保証されているから、そこから先のことも考え方として損益通算みたいな話に入れる入れないという議論に影響するのかなという気がちょっとするのですけどね。
〇委員
僕は先程の委員の意見に賛成でしてね。予告期間があって、しかもそれを延長してまでやっているわけですから、先ほどの株の場合の買い手がないという話もありますけれども、これとは違って、おろして分散したら相手はみんな喜んでやるところですから、十分自分でリスク対応はできているということがあると思いますから。もっとも、それによって法人預金なんかぐーんと減ってしまって、地銀が、おれのところつぶれてしまうという、これまた別問題の話ですけれども、したがって、僕はやはりできるところからきちんと特定口座でやっていくと、あるいは利便性と選択制というのは一つの柱になったと思うのですけれども、そういうふうにしていくと、やはり預貯金利子というのは第二ステップの話ではないかなという感じがしておりますので、その辺は投資信託、あるいはその配当という問題とはちょっと、第一段階では分けたほうがいいのではないかと、現実的ではないかなという感じがしておりますが。それだけに、次回、論点整理が明確に出ると思います。非常に期待しております。
〇委員
何か、もうよろしいですか。
〇委員
それでは、最後に。
総括という意味ではありませんが、今日は随分議論が煮詰まって、ある方向性が出たと思います。そこで、私の聞いていた印象ですが、金融所得の一元化と言ったときに、やはりコアの部分があると思いますよ。インポータントな所得とアンインポータントの所得があるのですね。金融所得の一元化と言ったときに、多分。やはり僕は、利子が入らない金融所得の一元化というのはおかしいと思う。それは委員が言われたように次の段階で入れるという手はあるかもしれない。最初、非常に難しいから。それで、やはり金融所得と言うと、普通は利子、配当、キャピタルゲインですよ。はっきり言うと。その3つの中の1個落っこってもやはりおかしいのではないかという気は個人的にはしているのですよ。
その派生的にあるいろんなほかのものですね。端的に言えばペイオフの話とか資産滅失であるとか等々は、次のフリンジでやる周辺部分の話だから、それは僕はコアの部分ではないという気もしますので、やはりそこははっきり分けないと。将来的に利子入れるから、まあ第一段階として金融所得課税はこれでいきますよと、小さな部分から始めるというやり方で果たして今回の議論がうまくつながるのかなあというところはちょっと心配な気はしますけどね。
ただ、これは事務当局が言うと、そんなこと言ったって最初から難しいよという判断があるのかもしれない。それはあとストラテジーの問題でありましょうから、これはこれで議論したほうがいいと思いますけれども、やはりしっかりと本体をとらえるべきだというのが僕の印象ですけどね。
〇委員
ありがとうございました。もしよろしければ、簡単に。
〇事務局
簡単にいきますと、やはり本丸をねらうのか、外堀から埋めていくのかという議論だとは思いますね。キャピタルゲイン、譲渡性と、いわゆる経常的なその性質というものをどうやって乗り越えるかということが大きい点ではないかと思いますし、あるいは、先ほど外貨預金という話が出ましたけれども、実際、この為替の差損益、個人における為替の差損益、どうやって把握するのだという問題点というのは、これは外堀の部分だと思いますので、順番をつけて段階的にやっていくというのが一つの方法ではないかなという感じを持ちました。
〇事務局
あえて物議のために。今の委員のご意見に対して私は若干違う考え方を持っているのです。それは、そもそもこの議論というのがいわゆる金融所得一体化と言って、決して資産性所得と言ってない。議論としてそこはそこまで、いわゆる北欧型までいってないですよね。そのときに、やはり一番の私どもが思っているポイントは、いわゆる経常的な所得と実現益をいつでも選択できる所得というのを本当に合算するのかというところに実はポイントがあった。そういう意味では、私は、利子、配当と譲渡益、本当は違うと思うのですね。
ただし、間接金融から直接金融へという流れがあるので、あえてそこを配当と譲渡益は合算するという議論がもう一つ出てくるのであって、利子、配当、譲渡益は、確かに金融所得一体化と言うとそういうふうになってしまうのですけれども、この議論の一番スタートは、どうも今度の土地の譲渡でもそうだったのですけれども、私なんかの思いは、いわゆる実現を選択できる所得と、経常的に、勤労所得が典型ですけれども、選択できない所得というのを総合合算するのがどうかという程度の取り上げ方なのではないかと。本気で金融所得という議論を徹底的にやれば、それは多分、資産性所得、ほかにも、北欧が言っているように議論しないと本当はおかしくないかという気がするのです。むしろ私などは、利便性という観点を徹底するなら、どちらかといえば配当・譲渡益というところが基本にあって、そこでどういう派生商品の議論をしていくのかという気が、私はあえて、委員が言われたので、若干、利子、配当、譲渡益を一緒かなあという気がちょっとしているということだけです。
〇委員
むしろぜひ次回に、そこが多分一番最終的に問題になるところだと思いますから、今日無理にまとめる必要ないと思いますし、次回、徹底的に皆さんにご議論をいただければと思います。
時間の関係もありますから、この辺で終わりにさせていただきたいと思います。議論、大分煮詰まりましたので、次回の小委員会では、先ほど申しましたとおり、今日の議論を踏まえて、私のほうで論点整理メモを準備し、提出したいと思います。
最後に今後の予定ですが、次回は6月1日火曜日の午前10時から、その次が1週間後の6月8日火曜日の午後2時ということで予定しています。正式に開催が決まりましたら案内状をお送りしますので、よろしくお願いします。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。