第7回金融小委員会 議事録

平成16年4月20日開催

委員

今日の議題は、お手元にすでにお配りしてあると思いますが、資産滅失とか保険、外貨建て商品等々、これまでやってきました中で取り残した部分をやっていきたいと考えてます。この種のことをやりますと、金融資産性所得の一元化というものの残った部分が一通りカバーできるかと思います。

そこで、今日は委員にプレゼンテーションをお願いしてありますが、その前に、事務局のほうから簡単に一枚紙と資料の説明をしていただこうかと思います。お願いします。

事務局

今、おっしゃってくださいました一枚紙と、それから「金融小7-1」という資料をお願いいたします。今日、この一枚紙にございますように、資産が無価値化した場合、これを金融所得の枠の中にどの程度入れられるかというご議論と、それから、これまで益についていくつかの議論をしていただきましたが、そのある種へりの部分、外国為替の話、それから保険の話、先物の話、この辺をフォローアップしていただければと存じます。

早速、「資料」でございますが、最初に資産の滅失、無価値化でございます。1ページお繰りいただきますが、これは一度ご覧いただきました。所得税におきます基本的な考え方を図示したものでございます。収入ということで、グロスのインカムが入ってくる。給料でありますとか、年金でありますとか、不動産収入、こういうグロスのインカムがまず入ってきます。その上で必要経費等を控除する。「等」という中には例えば給与所得控除等々も入るわけでございますが、その上で税額計算をしていただき、納税をしていただくと。

この税金を納めていただいたその後の所得、税引き後の所得で、いわゆる個人の生活をしていただくということになるわけでございます。飲食でありますとか、洋服を買ったり、交際費に使ったり、家賃を払ったり。中には貯蓄、投資をするということで、基本的にはこの税引き後の所得で生活をしていただく。税引き後の所得で生活をしていただいている範囲においては、基本的にはもう税金には問題がない、タッチをしないという考え方になっておるわけでございます。

ただ、例外が2つあるということで、貯蓄、投資。例えば利子所得、配当所得、譲渡所得ということで、実現したリターンが生じた場合には収入に入れる。例えば譲渡益で言えば、取得費を差し引いて税額計算に戻っていくという流れが一つございます。

もう一つが雑損控除でございます。ここにございますように、災害、盗難、横領による、生活に通常必要な資産の損失、これが発生した場合には雑損控除と所得控除を行うことになっております。この辺はまた後ほどご紹介いたしますが、自己に責任が全くない、いわゆる突発的な原因で損失が生じたと。それはいわゆる生活を維持していく上で大変だろうという配慮から、この雑損控除が設けられておるわけでございます。

次のページでございます。これも何度もご紹介しておるものでございますが、先ほど申しました、左から出ていく、投資、貯蓄等の実現したリターン、これについては、例えば譲渡益で言えば、株式等の譲渡収入、そこから取得費を引いて、この計算が進むわけでございます。

ちなみに、雑損控除はいわゆる所得控除、一番最後の段階で行う控除でございます。ここに登場するということでございます。

次のページでございますが、株式で今見ましたが、現在、株式が紙くずになった、無価値化した場合に、それをみなし譲渡損ということでみなしておるケースが一つございます。特定中小会社が発行した株式、いわゆるエンジェル株式でございますが、これについての制度がございます。

個人投資家(エンジェル)が特定中小会社の株式を取得し、上場前に、[1]でございますが、この特定中小会社、エンジェルが投資している企業が解散をして、その清算が結了したとき、または破産の宣告を受けたということで無価値化損失が生じた場合には、譲渡損失とみなして、その年の株式譲渡益から控除できる。損失が生じた場合には、[2]でございますが、繰り越しもできると、このような制度を作っております。

1ページ戻っていただきます。このフローチャートに当てはめますと、株式等の譲渡収入、これがゼロであったと、無価値化した段階で譲渡収入、譲渡価格がゼロであったとみなします。その上で取得費を差し引くという形で、株のキャピタルロス、キャピタルゲインの世界にこれを含めるという制度になっているわけでございます。

3ページにまた戻っていただきますと、(注2)をご覧いただきたいと存じます。特例の適用を受けるための手続でございますが、そのうち[2]でございますが、確定申告に際しては、契約書の写し等々の添付が必要になっておる。それから[3]、投資をしたエンジェルが譲渡または相続、こういったことをした場合には、特定中小会社、会社のほうが株式異動状況通知書というものを所轄税務署長に提出する。

何でこんなことをしているかと申しますと、紙くずに仮になった場合に、その紙くずになった株が本当にその人のものだったかどうかということを制度的に担保しておるわけでございます。もちろん、益が出た場合には2分の1課税する等々の制度があるわけでございますが、要するに、その株主が確かにこのエンジェル税制の対象となるベンチャーの株主であるということを制度的にキープトラックする、こういう担保があるわけでございます。

次のページでございます。実際に無価値化する際の一般的な流れでございますが、上場廃止の場合、どういう手続を実際とっておるのかというのを示しております。これは東証のホームページからそのまま抜粋したものでございます。

まず上場廃止のところでございますが、4行目、「東京証券取引所は、上場株券が上場廃止基準に該当するおそれがある場合には」と。この上場廃止基準というのは右の(参考)にございます。特に会社の調子が悪くなったというのは、真ん中からちょっと下あたりの債務超過になっている場合、それからさらに進めばその他のところで、破産・再生手続・更生手続、整理、こういったことに該当するおそれがある場合には、東京証券取引所自身の裁量で、当該株券を監理ポストというのに割り当てます。その事実を投資家に周知する。上場廃止が決定された場合には、今度は整理ポストというのに割り当てられて、一定期間、原則としては1カ月間、この整理取引を行わせるとなっているわけでございます。

要するに、この上場株の場合、気がついたらあっという間に無価値化していたということではございません。一旦監理ポストに入り、さらに上場廃止が決まった後、1カ月間の整理ポストということで取引が行われるということでございます。現にいろいろなケースがございますが、この監理ポストにある間にかえって値が上がったり、そういう取引もまま見られるところでございます。

何を言いたいかと申しますと、無価値化しそうになったとき、実は売れるタイミング、損を実現することのできるタイミングというのがあるということでございます。こういう期間を過ぎてしまって、完全に無価値化したときにまだ持っていた、そういう人をどう救うかと、こういうご議論になろうかと存じます。

次に5ページ、ペイオフでございます。「預金保険制度の概要」でございます。これはもう皆様よくご存じのことと思いますが、(2)預金等の保護の範囲ということで、平成17年、来年4月以降、一番上にございます、利息がつかない等の条件を満たす預金、新型決済性預金というものでございますが、そういったものは全額保護しますと。それ以外の預保の対象預金については、来年4月から、まとめて元本1,000万まで、それとその利息を保護するということになっております。

なお、対象外になっております預金、例えば外貨預金、譲渡性預金等々、これは保護の対象外というのが基本になっておるわけでございます。

次のページでございますが、実際にペイオフが発動されたとき、どういう法律的な構成をとっておるかということを紹介しております。(注)1を読んでいただきますと、預金保険機構は、預金者の保険金請求に基づき保険金を支払う。上の図で言うと[1]でございます。と同時に、保険代位的な法律構成をとりまして、破綻金融機関に対する預金等の債権を取得する。自動的に預金者から預金保険機構にこの預金等債権が移るという構成がとられておるわけでございます。

例えば預金等債権1,500万ありましたと。複雑になるので利子を除きますと1,500万ありましたと。預金者は保険金1,000万を預保から受け取り、1,500万の債権は預保に移ると、このような整理になっております。

いずれにいたしましても、ペイオフ、元本は1,000万までは保護されるという制度が完備されております。さらに、ある種預金というものがどういうリスクを今まで持っておるのか、そのリスクを回避する方法があるのかないのか。あると言えばまさに分散預金をすればいいということにもなります。さらに加えまして、我々、全体として「貯蓄から投資へ」という議論も片やしておるということもご留意いただければと思います。

7ページでございます。以上申し述べましたが、諸外国でどうなっているのだろうということでございます。資産が滅失した場合の税務上の取扱いということでございます。事業用資産、これはある種事業の中での出来事でございますので、いわゆる必要経費として控除が可能になっておりますが、いわゆる自然人、一般の生活者の非事業用資産、これをご覧いただきますと、先ほど冒頭申し述べましたように、資産の滅失自体は基本的には税引き後の話であるということで配慮をいたしておりません。

「但し」ということで、雑損控除のある国が日本、アメリカ、ドイツ、このようになっているわけでございます。逆に言いますと、イギリス、フランスには、先ほど申し上げたような、生活維持に苦労があるだろうという配慮、これは行われていないということでございます。

片や、有価証券の欄を見ていただきます。アメリカ、イギリス、フランス、ここにおきましてはキャピタルロスとして、いわゆるキャピタルゲインとの間で損益通算が可能であったり、アメリカが頭打ちの中で通算が可能であったり、このようにキャピタルロスとして取り扱っておる国がございます。

ちなみに、ドイツ、ここは投機的取引、1年以内でございますが、益が出た場合、課税になりますが、取得後1年以内の無価値化、これは損ではないと、ここは損について面倒を見ていないということでございます。

預金の欄でございます。ペイオフ。やはりアメリカが突出いたしておりまして、ここも基本的にはペイオフ、先ほど図示いたしましたが、ある種一定のキャピタルロスが生じたという構成をとっているのだと思いますが、短期キャピタルロスとして取り扱う。あるいは、これは頭打ちがあったりいたしますので選択によりになるわけでございますが、雑損控除の中に入れるという取扱いもアメリカのみで行われているということでございます。

繰り返しになりますが、所得税の体系上は、基本的には税引き後のいろいろな消費生活、こういったものについては税の関係はある種終わりであると、もう何もしないということを基本としつつ、有価証券については面倒を見ている国がそれなりにあると、こういう姿が国際比較であるわけでございます。

8ページでございます。若干細かい話でございますが、有価証券が無価値化した場合のキャピタルロスとして構成する場合の構成の仕方が書いてございます。

アメリカは、「一般に」と書いてございますが、有価証券が無価値化した場合には、課税年度の最終日に売却が行われたものとする。このように、譲渡があって実現したとみなすという扱いになっております。

イギリスは、これも同様でございますが、申告時、または申告時までの特定の時点に売却・即時再取得、いわゆるクロス取引が行われたとみなすとなっております。

フランスはあえてそういう構成をとっておりませんで、無価値化した場合に、当該更生または清算が確定した年に損失が自動的に生じたものとして取り扱う。いずれにしましても、キャピタルロスの構成をとっておるわけでございます。

9ページでございます。先ほど雑損控除というものを若干ご紹介いたしましたので資料をつけております。制度の概要でございますが、住宅家財等について災害または盗難もしくは横領――これも前回申しましたが、詐欺というのは入っていないわけでございます。いろいろ立法政策あろうかと思いますが、全くその人に責任がない突発的な原因、事由に限るということでございます。そういった場合に、年間所得額の10%を超える額について手当てをしようと、このようになっているわけでございます。

以上が資産滅失のところでございます。この一枚紙に戻っていただきますと、我々といたしましては、基本的な所得税の考え方というのを前提としつつ、何らかの政策的配慮ということでご議論賜る場合でも、それぞれの、株の無価値化、ペイオフのところに書いてございますが、適正な執行の確保というのが是非とも必要であろうと思います。先ほど、ベンチャーの場合に手当てをしているということを申しましたが、いわゆる真正な株主がまさにその本人であるということを確保する何らかの制度的担保が必要になってくるということになるわけでございます。

次にその他の金融商品課税というところでございます。10ページでございます。今まで、預貯金、公社債、投信、それから株ということでご議論いただきましたが、その外縁に属する商品をここで掲載しております。外貨建て商品、為替差益をどう扱うかということでございます。

次の11ページをちょっとお繰りいただきますと、外貨建て商品の課税の概要、イメージということでございます。まず外国の株式、これを売った場合どういうふうに計算するかということでございます。1ドル100円の段階で、10ドルで株式を買いましたと。その株式が11ドルに値が上がりました。その時点で実は1ドル110円になってますと。円安に振れておりました、ドル高に振れましたと。こういう場合にどのような計算をするかということでございます。

譲渡所得の計算は、まず譲渡段階での価格、これは11ドルですが、これをすでに円換算いたします。ということで、1,210円。譲渡価格はたとえ円転してなくても1,210円というふうに計算いたします。11ドル×110円、1,210円。取得費は、この10ドルの段階で、そのレートを使って1,000円。この引き算を単純にするわけでございます。210円。分解いたしますと、値上がり益が110円、元本の為替差益が100円と分解できるわけですが、譲渡価格から取得価格を差し引くという計算の中でこの為替差益も含めてしまうということで、全部を株式譲渡所得として210円課税をするわけでございます。

これに対して外貨預金の場合どうなるかと申しますと、同じように、1ドル100円で10ドルの外貨預金をいたしましたと。それが仮に満期といたしますと、110円になって、1ドルの金利が入りましたと。この黒く塗ってあるところが金利でございます。これについては、利子課税を110円で行うわけでございます。

問題は元本の為替差益でございますが、先ほどのキャピタルゲインの計算のようなことをいたしません。あくまで10ドルが10ドルになっているだけのものですから、この計算はどうなるかというと、改めて為替差益ということで、110円から100円を引いた10円分×10ドルで、100円分、これが為替差益であるということで雑所得に分類されております。ほかの所得分類に入らないものですから雑所得ということで、これが総合課税されている。人によっては50%の税率がかかると、こういう課税になっておるわけでございます。当然、申告をあえてしていただく必要があると、このようになっております。

1ページ戻っていただいて、先ほどの一覧表でございますが、外貨建て預金の場合の払い戻し時の為替差益、これは今申しましたように、総合課税、雑所得になっている。片や支払調書、一番右の欄でございますが、現在は提出されておりません。

為替先物の予約がある場合、これは実は金融類似商品ということで、雑所得ですが、普通の利子並み課税を行ってます。これは、為替先物の予約をいたしますと、いわゆる円建てで利子収入が確定するということで、為替差益部分はもう利子の中に込みになるという考え方のもとで利子課税を行っている。これは税率20%の源泉分離、利子並みの課税が行われております。したがって、支払調書は当然ないということでございます。

外貨建ての利付債でございます。これは売却した場合は普通の公社債と同じで、キャピタルゲインは現在非課税になっております。為替差益が仮に生じておっても、それはキャピタルゲインの中に溶け込まれて非課税になっておるわけでございます。

払い戻し(償還・解約)の段階、これは先ほどの一番上のところと同じになります。元本の為替差益が生じているはずだということで、これはキャピタルゲインではないわけですから、雑所得としての総合課税が行われるわけでございます。

上場外国株式につきましては、先ほど図示いたしました。為替差益も含めて税率が20%、現在は10%、源泉徴収選択、申告不要が適用になるということでございます。それに応じて、右の欄、支払調書も一定のものが出ることになっておるわけでございます。公募株投も、株と同じ考え方で行われております。

これが為替についての現状でございます。

次に保険でございます。これは先にこの一覧表を見ていただきますと、養老保険の満期保険金、これは換金時には2分の1総合課税、一時所得として扱われております。

それから保険期間が5年以下の一時払い養老保険の満期保険金、これも先ほど申し上げました金融類似商品ということで、一時所得なのですが利子並み課税が行われております。

個人年金保険の受取年金、これは雑所得として総合課税。

それから変額保険については、満期保険金としてもらった場合は2分の1の総合課税の一時所得、それから年金としてもらった場合には総合課税の雑所得となっておるわけでございます。

12ページを見ていただきますと、この中でいわゆる金融商品に近いものがあるのではないでしょうかということでございます。これは金融広報中央委員会ホームページからピックアップしたものでございますが、養老保険と変額保険を例示として挙げております。

養老保険でございますが、10年とか20年、保険期間を定期で定めて契約をする。その間に死亡等した場合には保険金が出ますと。何とか無事に満期を迎えた場合、その死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れるということでございます。現時点におきましては、一時払養老保険で保険期間が短いもの、これについてはあくまでもある種定期預金と同じではないかということで、金融類似商品として、その満期保険金に係る差益については利子並み課税を行っております。

次に変額保険でございます。3行目をちょっと見ていただきますと、死亡・高度障害時に受け取れる保険金、これは運用実績にかかわらず最低保証される。一方で、途中で解約した場合の解約返戻金や満期を迎えた場合の満期保険金、これはその運用実績に応じてお金が返ってくる。その場合には最低保証はありませんので、リスクが伴う商品であることに留意が必要ですと、このように書いてあるわけでございます。

基本的には、亡くなったときに保険金が入ってくると、それが最低保証されているという意味において生命保険の機能を持つわけでございますが、途中で解約したり満期を迎えた場合には、その運用実績に応じて支払われるということで、ある意味では投資信託的な要素を持った商品がこの変額保険であるわけでございます。

13ページ、今申し上げたように、「金融類似商品等に対する課税制度の概要」ということでございますが、真ん中に金融類似商品ということで、利子並み課税を行っているもの、これは雑所得とか一時所得に一応所得分類されておるわけでございますが、その上で利子並み課税を行っておるわけでございます。また懸賞金付預貯金等の懸賞金等、これは平成7年4月からこうなっておるわけでございますが、一時所得として総合課税していたものを利子並み課税にするということをいたしております。

このように、いわゆる所得分類上はいろいろなところに属しているものがあるわけでございますが、それを事柄の性質に応じて利子並み課税をしたりしているわけでございます。

最後に10ページにもう一度お戻りいただきたいと思います。一番下の先物でございます。これは一定の予約をした上で、その一定の期日が生じたときに差金決済が行われる、そういった商品でございます。商品の先物、それから有価証券指数等を使った先物、こういったものがあるわけでございます。これはそれぞれ基本的に雑所得として分類されておるわけでございますが、現時点においては、20%申告分離課税として、雑所得の中にありながら金融的な課税を行っておるということでございます。また、先物取引に関する調書というものも提出されているということで、益についてはちゃんと課税できていなければいけない、このような制度に現在はなっております。

ただ、商品先物、これは例えば小豆とかそういったものも入るわけでございますが、金融という概念にどこまで入るのか、さらに一般投資家がどのぐらいやっておられるのか、こういったこと等々も考えなければいけないものと考えております。

14ページでございます。「主な金融商品に係る損益について」ということで、表をご用意いたしました。一番左側がいわゆる預貯金、一番右側が上場株式等となっているわけでございますが、間に公社債とか公募株式投資信託、こういったものがあるわけでございます。一番上の4つの箱、右にずっと見ていただきますと、これがいわゆるインカムゲインでございます。経常的に入ってくる所得でございます。経常的にずうっと入ってくるわけですが、所得税というのはどうしても暦年課税、期間を切って課税するということで、人為的に暦年に切って課税している、そういう経常的な所得でございます。

それに対しまして、2段目はいわゆるキャピタルゲインとロスでございます。公社債、株式投資信託の譲渡損益、それから上場株の譲渡損益、ずうっと一定期間を通じて発生するのですが、ある一定の時点で実現させる、売ったり買ったりすることで実現させる、そういう段階において生じたもの、このキャピタルゲインとロス、こういったグループがあるわけでございます。

現時点においては、やや太めの線で囲ってございますが、公募株式投信の譲渡損益と上場株の譲渡損益、これが損益通算が可能になっております。この太い線をどこまでどう広げるかというのが損益通算の議論のポイントになるわけでございます。

さらに、これは一応実現した損失、益の話でございますが、一番下のところで、価値が無価値化した場合、これは譲渡損失の実現と税法上はなってないわけでございますが、それぞれに生じますものをどのように取り扱うかということが今日前半ご紹介したものでございます。

15ページでございます。その後は参考資料でございますので、ご説明はここで終わりますが、前回、宿題を頂戴いたしました。納番が導入されていない国、それぞれどういうふうにしているかということを整理したものでございます。ヨーロッパの国、イギリス、ドイツ、フランスを掲名しております。

金融資産性所得の課税方式の欄を見ていただきますと、利子については源徴したり、各国それぞれの工夫をしているわけでございますが、ポイントとなりますキャピタルロスとほかの所得との通算でございますが、これは各国とも不可ということになっておるわけでございます。いわゆるキャピタルロスが生じても、ほかの所得から差し引きができなくなっておるわけです。

それから納税者番号制度の有無というところ、これはそれぞれないわけでございますが、税務に関連する、納番ではないけれども、ほかに番号があるかということで、イギリス、フランスについてはそれぞれ税務整理番号、これは国税当局が使っている。それから国民保険番号、イギリスについてでございますが、その下の備考でございます。一定の限度額のもとで非課税にする、個人貯蓄勘定、インディビジュアル・セービング・アカウントという制度がございますが、その口座開設時にはこの国民保険番号を申告するようにと、このような制度が使われております。

ドイツについてご質問が前回ございました。備考の1つ目の黒マルでございます。統一的なあらゆる登録、管理に対して適用される国民標識(国民番号)の導入は、憲法裁判所の判決がございまして、プライバシーを中心にするのですが、個人の尊厳の問題があるということで、違憲であるという判決が出ております。

先ほど、税務に関連する番号があるかということで、ドイツのところはバーになっておりますが、2003年に租税通則法が改正されまして、2007年から、今まで州ごとにばらばらであった税務整理番号を連邦レベルで統一すると、このようになっております。ただ、いわゆる民間利用は制限されておるということで、納番ではないということでございます。

以上でございます。

委員

それでは、皆様のお手元に一枚紙があると思いますが、そこに挙がっているような項目について、ご自由に質問や意見を頂戴いたしたいと思います。

議論していただきたいこととしては、大きく分けると、資産滅失の問題と、その他の金融商品についてという話があります。たくさん項目がありますので、まずは資産滅失について、2点ほどあります。

1点が、事務局からの説明では、資産滅失による損失は所得の処分であり、諸外国においても、原則として、その損失を所得から控除するものではないということでした。したがって、いわゆる株式などの滅失損を仮に認めるにしても、無制限に認めることはできないと思いますが、どこまでを政策的な配慮から認めていくべきかという基準について、どのような考え方があるか、こういうことについてもぜひ意見をいただきたい。

それからもう一点ですが、滅失損を認める場合の留意点として、事務局からは、譲渡という行為がないので適正な執行が難しいという指摘がありました。この点、例えばエンジェル税制ではしっかりとした担保措置が講じられているわけですが、仮に滅失損を認める場合でも、そういった適正執行のための仕組みが必要ということでよろしいでしょうか。

2点目ももちろんですが、1点目、株式等の滅失損を認める場合に無制限に認めることができないのではないか。その場合、どういうような政策的な基準、配慮の基準というものがあるかということですが、このようなことも含めて、ぜひ議論を頂戴いたしたいと思います。当面、よろしければ資産滅失の問題を中心に皆様からご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

また、その他の金融商品についてもご意見を頂戴いたしたいと思います。

委員

資産滅失の場合、ストックの資産が滅失した場合ですけれども、そうすると、不動産などのリートで証券化された場合に、その証券化されたもののロスと、それからストックとしてのロスがコンシステントかどうかというのがちょっと質問したいところなのです。それから資産として持っている場合には、例えば住宅とか家屋ですと控除されないと。しかし、それが証券化されてもし持っていたとすると、アメリカなんかの場合ですと、ロスとして控除される。そうすると、証券化することのインセンティブがすごく出てくるような感じがするのが一つです。

それから2番目は、証券化の場合も、配当とかクーポンという形でリターンとかロスを入れてくるのか、それともクーポンとか配当を少なくしておいて、最後にキャピタルゲインとかロスで大きくするのかによっても違ってくると思いまして、ですから、ストックで評価したときの税と、それからフローで評価したときの税が同じでない場合には、やはりある種の資産というものをエンカレッジするという、そういうことにならないかどうかというのが一つです。

それから2番目は、もし広くてよろしければ、ペイオフの場合に、先ほど7ページで、下のほうでは、日本の場合、「-」になってまして、アメリカの場合には、キャピタルロスとかいろいろなやり方があるということですが、これは非事業用資産なのですけれども、企業の場合に非常に多くの預金なんかを持っているところがあると思うのですが、そういうところがもしペイオフで万一引っかかった場合にどうするかというのはこの表にはないような気がしたのですが。

以上、2点です。

事務局

まず、不動産実物の場合と、それを証券化した場合でございますが、今の制度は、整理といたしましては、Jリートになった段階でいわゆる証券化されたということで、やはり現物の場合と証券化した場合の取扱いというのは異にしておるわけでございます。確かに証券化することによるメリット等々の議論があるわけでございますが、まだやはり現物の土地・建物についての扱いと、それをあえて証券化して広く一般の投資家に投資をしてもらうという形にした場合と、やはりこれは扱いが違っておるということでございます。

それから事業用の預金というご質問でございますが、実は、例えば貸付金の貸倒損失等々は差し引きができますが、個人の事業用の預金はそういう扱いとなっておりません。ということで、一般のペイオフと同じ扱いになります。例えば金銭債権としては貸付金とか売掛金、こういう事業性のある金銭債権がございます。この損失については、控除は可能と。ところが、一般の預金は非事業用資産と同様に整理しております。

委員

わかりました。ただ、ストックで評価したときとフローで評価したときの、本当は何かコンシステンシーがないとやはりどちらかに税を抜け駆けて動くことがあるのではないかと思ったのです。

もう一つは、クーポンで渡すか、最後にキャピタルゲインとかキャピタルロスで渡すかによってもやはり、そのときの割引現在価値の計算で違ってくるような気がします。

委員

要するにデリバティブ等を考えると、ストックとフローで取扱いを変えるというのはいろいろと問題を引き起こす、将来禍根を残さないかということが委員としてはご心配であると、そういうご趣旨だということでよろしいですね。

委員

ええ。

委員

理屈がよくわからないというか、教えてもらいたいのですけれども、質問というか問題は、株式等の資産が、株式でいいのですが、資産が滅した場合、どう扱うか。ご説明は、特定中小企業が発行した株式に関してだけは認めているということですよね。逆に言うと、ほかのところで認めないというのは、この場合のロスが発生したもので、理屈で言えば、発生はしたけれども、実現したものでないという理由なのですか。この控除に制限が、滅失した場合の控除に制限が加えられるというのは理由は……。

事務局

一番最初のページにございますように、損益が実現した場合はもう一遍計算を、初度計算に戻ると、こういうふうにしているわけでございます。ある意味では発生は確かにしているのかもしれませんが、譲渡という行為がないものですから、実現はしていないという考え方に立っております。

委員

ちょっと整理しますけれども、要するに滅失に関しては、一つは執行上の問題がありますと。ただ、執行は手続を変えれば、ひょっとしたら解決でき得る問題かもしれないという問題ですね。それからもう一つ、法律といいますか、今の話なんかは典型ですが、譲渡という概念に入らないという、要するに言葉の定義といいますか、そこの問題がもう一つありますと。その二つでよろしいのですか。あるいは、私が今言わなかったことでもう一点ぐらい何か問題あるのでしょうか。

事務局

まさにその整理で結構だと思います。加えまして、先ほど、実際の無価値化する場合の段取りを申し述べましたが、ある種実現する機会はあると。それが徒過してしまっているという場合に、その人にどう配慮するかと、こういう話であるということですね。

委員

今のお答えは、14ページで見たときの公社債の元本割れによる損失というような場合にも当てはまるとお考えでしょうか。あるいは、これと類似のものとして、例えば実績配当型の投資信託が最終的に満期になって額面が割れているというような場合についても、やはりそれは実現していないという理解でこういう扱いをされてきたのでしょうか。あるいは、そうではなくて、「実現した貯蓄・投資のリターン」という1ページの図に戻ったときに、プラスは収入として課税しないとおかしいけれども、そこから出てきたマイナスというのは家事費なのだよと、そういうお考えだったのでしょうか。あるいは、あわせてそう考えていらっしゃったのか、そのあたりを伺いたいと思います。

事務局

公社債と株でございますが、先ほど申しましたように、我々の基本的な考え方としては、持っていた資産がなくなるというのはほかでも生じることでございます。何らかの政策的配慮で、例えばリスク資産に対するセーフティネットと、こういう政策的配慮を加味するかどうかということだと我々の気持ちとしては思っております。その場合に、株と公社債で同じかどうかというような議論は、いわゆるリスク資産、リスクの度合い、先ほど申しましたように、ペイオフの預貯金の場合でございますが、やはりリスク性はより低いはずでございます。かつ、ペイオフの場合は元本は1,000万までは保護されておると。株はそういう最低の保護というのはないわけで、全くゼロになる。こういったリスクをみんなで、国がセーフティネットを有してあげるという必要性が政策的にあるかどうかというところも、先ほどの14ページの図で言うと、X軸では違いがあるのかもしれません。

委員

確認ですが、その前の先生のお答えでは、譲渡という行為がないから、実現がないというふうにお答えになりましたよね。その場合、公社債とか実績配当型の投信なんかのまさに償還期限が来て額面が割れているというのも、同じように実現がないというのがまず最初にあって、それから政策的な配慮の問題になるのだと、こういうご議論なのでしょうか。

事務局

まさに元本割れも、例えばそこの社債が、会社がつぶれてゼロになってしまったと。そうすると、償還があったときに元本割れしているというのはまさにこの2段目の実現ベースの話だと思います。

委員

今話題になっている、先生が質問されたことで、僕は、3ページのエンジェルの場合はこのとおり。ところが、ここで上場廃止基準が出てきているわけですね。したがって、上場廃止基準に該当して株がゼロになってしまったと、あるいは1円になってしまったと。これはだから、税の理論で、譲渡がないからという話であって、僕は投資家の立場から、長年の経験からいくと、上場会社というのはきちっとしたディスクロージャーをして、アカウンタビリティを問われているのだから、投資家の自己責任としてそれをきちんとしてなかったと。したがって、ゼロになったのは自己責任でしようがないよというような理屈だったら非常によく理解、わかるのですけれども、譲渡がなかったから実現損でないというとなかなか難しいなという感じがするのですが、やはり税理論からいくとそういうものですか。

事務局

これは長い歴史から見ると、もともとインカムゲインとキャピタルゲインが全然違う性格で、本来的にはもともとインカムゲインだけを課税していたわけですね。それで、確か元本というのは、先ほど事務局が説明してますように、資産滅失というのはまさに所得処分の一形態であって、もともと税の世界の圏外であったと。ところが、キャピタルゲインを課税するということになって、キャピタルロスもキャピタルゲインから引かないとかわいそうではないか。そこからまたさらに発展して、ではつぶれた会社、要するに上場廃止直前の会社が額面1円で売買されて、実現したらキャピタルロスになり、それが放っておいたらゼロになってしまうのをどうするかという、徐々に議論が発展してきたのだと思うのです。

それで、今の取扱いはやはり、先程も事務局から説明してますが、基本は、資産滅失というのは所得処分であって、我々、税の世界だけから言えば、本質的にはちょっと、所得税制で損失を認めるというのは税の理屈からだけではなかなかできないだろうと。

ただ、「貯蓄から投資へ」という政策的な配慮を踏まえると、特にエンジェル税制のように、まだ上場してないような段階でつぶれたものは、まずそこを手当てしようということで今の現状があると。さらに、上場株式までそういう資産滅失もキャピタルロスと同じように見る必要があるのかどうか。

ここで説明させていただいたのは、実際には資産滅失に至る過程がかなりあって、上場廃止まで、監理ポストなどいろいろあるため、その間に投資家は適切に対応すればそこで事実上対応できるのではないかということで、今はこうなってますと。かつ、そうは言っても、資産滅失となる前に譲渡できなかった人が最後損となるときも、かわいそうだと。もし仮にそういうことで、そこまで手当てをするということになったとすれば、そこのところは、では適正執行の確保はどうやって担保するのか、そこまでやはりきちっと議論していかなければいけないのではないかということで、原点に返りますけれども、税の理屈からすると、もともと資産滅失というものが、実現と先程から言っているのは、キャピタルロスとして実現させるさせないの議論でございますから、あくまでも資産滅失はもともと所得税の世界からは本来的には手当てしないのだというところからぜひ出発をしていかなければいけないのではないかと思っております。

あくまで、その後のことは、やはり貯蓄から投資とか、今回の、投資家の立場に立って、インフラとしての税制をどうしたら合理的かという、税だけの世界ではなくて、投資という経済活性化も含めて今ご議論をいただいているのではないか。そこは応用発展だと思っております。

委員

ちょっと私の言ったことが誤解があるといけませんので。私は、上場株式については、ゼロになっても、これは投資家の自己責任だから当然であると、面倒見る必要はないということを言っているわけでありますから。そのかわりにディスクロージャーとか、これはきっちりやることが必要だろうと、そういうことを言っているわけですから。

委員

株式のほうに集中してますが、預金のほうは、ペイオフというのは、ひょっとしたら取りつけかなんかで、監理ポストなんていう時間的余裕もないまま一気になくなるという可能性はゼロではありませんから。ただ、逆に言うと、ペイオフという制度はそのためにあるので、それ以上にはもう何もする必要はないというご意見もあるかと思いますが、ペイオフについてもどうぞご自由にご議論いただきたいということと、その他の金融商品についても、どうぞご自由にご議論をいただきたいと思います。

その他の金融商品については、これらの金融商品としての性格づけについて、個人投資家の立場から見てどう考えるべきか。例えば保険商品など、いろいろ商品がありますけれども、どう考えたらいいだろうか。特に実務に携わっている委員から何かご意見を後でいただければと思います。

それから2番目が、外貨預金の為替差損益については、益は雑所得として総合課税である一方、損は雑所得から控除できるという形であるということですけれども、この取扱いについて意見があったらよろしくお願いしたい。

3番目が、外貨預金の為替差損益については、現在、支払調書もない状態であるということですので、金融所得に含めていくという場合に、この点についての適正課税のために何らかの仕組みが必要であるということでよろしいか。特に必要がないというご意見がありましたら、よろしくお願いします。

保険商品から生ずる所得ですが、養老保険や変額保険のように、その他の金融商品と同じ性格であるものについては金融所得として課税すべきであるという点について、何かご意見があれば。

それから最後に先物ですが、紹介のときに話もありましたが、現在、商品先物と有価証券先物を一緒に扱ってますけれども、金融商品という観点から見た場合、この商品先物と有価証券先物を同列に扱っていいものかどうか、何かご意見がないか。

今の問題提起も含めて、どうぞご自由にご意見をいただきたいと思います。

委員

よくわかってきたのですけれども、滅失の問題で逆のことを質問すれば、滅失を認めたとしますよね。滅失した場合、ロスの控除を認めると。そこで起きる問題が非常に深刻なことがあり得るということがポイントなのではないですかね、言いかえれば。そのプロセス、完全に滅失する前にいろいろ逃げることが、売ってしまうことができます。ロスは出せますよね。なおかつ、意図的に滅失をねらったと言うとおかしいけれども、つぶれるということを予見して操作してくると。そこが問題なのでしょうかね。追加的に言えば。実質的には。

事務局

所得税の基本を通ずる考え方というのは先程事務局から申しました。加えまして課税の適切な執行の確保、こういったものも大切であると。今、委員がおっしゃったとおりでございます。

委員

すみません。しつこいようですが、意見を申し上げます。

1ページの図ですけれども、全体を通してこれが所得税の考え方であると言われると、やはり1カ所違和感を持つところがあります。というのは、税引き後の所得で生活してくださいということで、飲食、衣服、交際費、その他、生活用の動産、不動産を買うということはわかります。そこから得られるある種の利益は全部非課税になっていますから、それを滅失をしても所得税の目からは見ないよというのもきれいに理屈が通ります。それに対して、最後の行の、税引き後から貯蓄、投資をしたときは、これはリターンは原則課税をするという話になっているわけですから、この部分はやはり、まずどちらが原則かといえば、プラスに課税をし、マイナスは差し引くというのが通常のルールになっていって、しかし、その中で、こういう貯蓄と投資というのはいわば家事費だよという部分があったとしたら、それについては滅失はいわば普通の自動車をぶつけてしまったと同じ扱いになると、こういう思考手順ではないかと私は思います。これは質問ではなくて、私はそのように理解をしていますという意見です。

委員

ということは、一括して、今の株式とか預金とか、いわゆる滅失はすべて税として面倒を見るべきではないかと、そういうご意見だということでよろしいですか。

委員

はい。原則としてプラスに課税をするものはマイナスも引くということを原則としつつ、執行の点と、それから今申し上げた貯蓄、投資が家事費と同視できる部分については、なおそれは埒外に置いてよろしいという意見です。それは同時に限界を画する議論でもあります。

委員

わかりました。

委員

預金のペイオフのところで、手当てが必要であるというアイデアが出ていて、それは損益通算を含めた形で出されているようなのですが、もし手当てをするというふうな方向で考えるとすると、私には二つ疑問があります。

一つは、ペイオフ導入時に国民になされた説明というのは、ペイオフ解禁によって、預金者による金融機関経営の規律付けがなされるのではないかと。もし手当てがされるとすると、預金者のそういう監視体制というか、インセンティブが弱まってしまうので、政策の整合性と言うとちょっと大げさな言い方になりますが、その点でちょっと疑問があります。

それからニつ目ですが、預金のペイオフに関してここで議論しようということですけれども、90年代の終わりには生命保険会社がいくつか破綻して、予定利率が引き下げられたりというようなこともありました。ですから、家計にとっては多分、預金も、それから生命保険も、ポートフォリオの中で同じ金融商品ととらえて選択していると思うのですが、破綻したときに、預金ともし生命保険会社との間で違いがあるとしたら、どういう説明ができるのかなというのが質問です。

委員

何か、事務局でもいいですし、どなたかあれば。そうでなければ問題提起だという形で承っておきますが、よろしいですか。その他、保険の話とかいろいろ、先物の話とかも含めてどうぞ。

委員

ちょっと確認の質問ですが、適正執行という場合、譲渡行為がないからというお話でしたけれども、事業用資産の場合、法人の場合はやはり、持っている企業が例えば破綻して株が無価値になったというのはきちんと証明できるわけですから、それは常にやっているわけですね。株が無価値になったかどうかというのは非常にはっきりとした証拠があるわけですから、その辺どうして適正執行が難しいのか、損をその段階で確定することができないのか、ちょっとわかりにくいのですが、その辺はどうなのでしょう。

事務局

法人の場合は、その存在自体がいわゆるお仕事しかしてないと。税引き後の所得で生活してくださいという要素はございません。そういうこともあって、法人の場合には適正に財務諸表も作って、その存在全部がお仕事そのものであるという位置付けでございます。ところが、個人の所得税というのは、自然人を、実際の生活をしている人にどういう税金を負担していただくかというものですから、どうしても法人の場合と個人の場合、おのずと違いが出る、そのちょうど中間にあるのが個人の事業、こういうのが位置付けられるのだと思います。

委員

ですから、その持っている株が例えば無価値になったかどうかという事実は確認できますよね。そこではないのですか。どうなのでしょう、適正執行という面で。損失が、本当に滅失が発生したのかどうかというところの確認が適正執行にかかわる部分ということではないでしょうか。

事務局

今、委員がおっしゃったように、確かに適正執行という観点においては、無価値化した株等々が本当にその個人のものかどうかというのをどうチェックするかということでございますが、先ほど申しましたように、基本的には、法人というのはその存在自体がお仕事であり、かつ、ちゃんと財務諸表等が整備、完備されておるという実態もございます。

ただ、しつこいようですが、適正な税務の執行の確保というのは、今委員がおっしゃった問題意識と全く同じでございます。

委員

どうぞほかにご意見、特にその他の金融商品に対する議論として何かございましたら。

委員

先ほどの委員の、キャピタルゲインとキャピタルロスを対象にすることなのですけれども、景気全体が非常に悪いときはキャピタルロスをこうむる人が多くなってくるわけですね。そうすると、税収全体としては相当下がってくる可能性がありますし。だから、やはり税の景気との関係でいくと、対象にするかどうかというのは、集める側としてはあるのではないかと思うのです。

それからペイオフに関しましては、もともとの発想は、悪い金融機関から預金者が逃げていくことだと思うのですが、逆に言いますと、1,000万円ずつで、みんながいろんな金融機関に分けてしまうという行動が起こりますと、弱いところもずうっと集まり続けてしまうと思うのですね。そうすると、そこでつぶれたときに、結局は相当のペイオフコストがかかってしまいますので、さっきの委員のご意見と関係するのですけれども、1,000万円以上の手当てをするのかしないのかでやはり預金者の行動は違ってくると思います。しなければ、おそらく1,000万円までで分散する効用がすごく出てくるのではないかと思うのですが。

委員

今のペイオフのお話はわかりましたけれども、前半の話は、税収といいますか、タックスベースについてもある種の判断基準として考えるべきであると、そういうご意見だということでよろしいですね。

委員

ええ。

委員

何かほかに。

委員

一つ、株式が無価値化したときの扱いですけれども、もちろん、それがキャピタルゲインではない、実現しているわけではないのだからという議論もあるとは思うのですが、一つ、経済学というか、ポートフォリオといいますか、インセンティブの観点からすると、他の商品がどう扱われているかということと密接に絡んでくると思います。例えば、一方では預貯金に対してはペイオフという形で、実際は保険がかかっているわけですよね。それに対して、株式に関しては価値が失われるということに関して、こちらは税ですけれども、税という形で保険をかけないということになれば、当然、これは1,000万円以下という条件付きですけれども、預金として持っているほうが有利になりやすい。それから公社債の扱い、もしこれが元本のほうにも、元本損失、これについてももし損失控除を認める、あるいは事業用資産であれ、個人の資産に対して雑損控除を認めているというのであるならば、それは相対的に株式のほうを不利に扱っていることになると思います。それをどうみなすかということは少し留意するべきことだと思います。それが1点目。

2点目ですけれども、確かに自己責任という、要するにモラルハザードだと思うのですが、モラルハザードの問題とリスクシェアリングの問題と、これはトレードオフがありますので、当然、税を通じて損失控除を認めるという形でリスクシェアリングを強化するというのであれば、その一方ではモラルハザードを伴うのはある意味で必然でありまして、どちらを重視するかというその判断の問題だと思います。逆に、リスクシェアリングをしつつ、かつ、モラルハザードを起こさないというのができれば理想ですが、多分それはできないということになりますので。

それから最後の先生からのコメントで、不況であれば当然キャピタルロスが発生しますから税収は下がるではないかと。でも、それがまさに目的ではないかと言うとあれですが、まさに経済安定化というか、ビルトインスタビライザー、課税平準化の世界に入ってきますので、もしリスクという観点で見るならば、マーケットをヘッジできるリスクは投資家はマーケットでヘッジすればいいわけでして、税の助けは要らないわけですよね。リスクヘッジのところだけ見れば。したがって、マクロ的なリスクというものをある程度国と民間でシェアをする、それによって「貯蓄から投資へ」という、それが方針であるならば、そういう貯蓄から投資を促すというのであるならば、それはある意味で政策の一部になるのではないかと思います。

ただ、何度も言いますが、冒頭へ戻ってしまいますけれども、モラルハザードの問題、それから、前も出てきたと思うのですけれども、ロスというのが実現するのは個人の裁量ですし、株式を無価値化するのもある程度個人の裁量がききますから、そこはインセンティブは考慮するべきだということだと思うのですけれども。

委員

最初におっしゃったことと最後から2番目におっしゃったこととの絡みで一つだけお伺いしますが、「貯蓄から投資へ」という話がされていて、だから、株式に関して少し政策的なことを考えたらという流れが一方であるわけですね。他方では、株式はほかに比べて少し取扱いが不利になっているという話もされたわけですが、だとすると、やはり株式に関してはこういう少し特別の扱いを考えることも一つであるという、そういうインプリケーションもあるように聞こえたのですが、そういうご判断だということですか。それともそこは関係ないのですか。

委員

いや、多分ロジック的にはそういうことになるのだとは思いますけれども。

委員

1番目のペイオフと他の商品ですけれども、預金保険機構のバランスが完全に預金保険料とペイオフのコストが合っているとしますと、金融機関がそれを負担していることになるわけです。ですから、全体としてはいいわけです。ですから、ノーマルな状況であれば、預金保険があっても同じですけれども、現在のように、税金がうんと使われているときにはちょっと違うと思います。ですから、ノーマルになればバランスはあると思います。

委員

先物とか保険とかに関してあまりご意見が出ておりませんが。

委員

特にこれから問題になってくるのは変額年金保険のところが非常に問題になると思うのですが、実際に変額年金保険がどんどん商品性が変化しています。現実に。この資料の中でも、満期時の元本保証は、最低保証はありませんというふうになっているのですが、今流れとしましては、満期時も最低保証しようというような流れも出てきておりますので、養老保険と同じく、変額年金保険というものが、投資家のニーズを酌んでいくと、非常に預金的性格というのを強めてくる中で、必ずしも投資商品と一緒にするかどうかという議論を早急にする必要はないのかなと私は今印象で思っております。

委員

最初に事務局から出ていた資産滅失についての第1の点にかかわることですが、もう一点、おそらく、今、他の委員がおっしゃったことで、ロスを出すかどうかはマニピュレートできるという話でしたが、この資産滅失についてはロスのマニピュレーションの度合いというのが相当あると思います。公社債の元本割れとか上場会社の倒産というのは、それ自体はおそらく多くの人にとってはマニピュレーションできないことであるし、それから閉鎖会社の倒産というものは非常に容易にマニピュレートできるわけですから、一つ、適正執行との関係で範囲を画することがあるとするならば、マニピュレーションの難易というのも考慮要素であると思いました。

委員

委員にお答えして。一つ、これは前から何度も出てきていると思いますが、損失をどれぐらいマニピュレートできるかどうか、ゲインをどのぐらいマニピュレートできるかどうか、それからあと労働所得と金融所得の分担、分け方、それにどのぐらい裁量がきくかということに関して、大口投資家か小口投資家か、あるいは上場か非上場かという話があったと思うのですけれども、全くある意味で同じで、マニピュレーションあるような問題であれば、それは別途考えていかなければならないことだと思うのですね。ですから、前は普通の投資家と賢い投資家という言い方をしていたと思うのですが、要するに普通の一般の投資家に対する扱いと、それから大口を含めて、大口及び非上場、オーナー経営者も含めて、そういった人たちに対する扱いというのは必ずしも同一である必要性はないのではないかとは思います。

それからあともう一つ、これも従来の話だと思うのですけれども、当然、キャピタルロスをあえて発生させるという問題があるから、ロスの控除に対しては、ロスを認めるということに関しては、アメリカのように、上限を設けるとか、そういうやり方はあり得ると思うのですが、例えば株式だから認めないとか、あるいは、逆にほかの資産だから認めるとか、そういう資産による区別の仕方はあえてする必要性があるのかなと。あえて言うなら、裁量性のある程度、投資家によって区別することはあり得るとは思うのですけれども。

委員

ちょっと二つお聞きしたいのですが、一つは後者ですよね。それは商品によって区別しないとおっしゃるということは、執行の問題は関係ないということでしょうか。あるいは執行は商品を通じて全部一律にしなくてはいけないということなのかということが一つと、もう一つは、大口投資家と小口投資家とおっしゃったのが、大口株主、小口株主ならばわかるのですが。

委員

失礼。言葉の言い違いです。それは大口株主か株主です。最初の執行の話は、ちょっと私が今議論する中で考慮してませんでした。失礼しました。

委員

では、まだご意見あるかもしれませんが、ありましたらまた後で、委員のご報告の後で適宜いただくことにいたしまして、続きまして、委員から金融資産性所得課税の一体化の所得税制上の位置付けについて、ご説明いただきたいと思います。では、よろしくお願いします。

委員

私が承りましたのは、今ご紹介いただきましたが、金融資産性所得課税の一体化についてというお話をするようにということで、ご存じのように、この委員会、非常に議論が活発で、場合によっては、何か相撲取りと柔道をやっている人が闘っているような印象もありまして、非常にまとめにくいところがございまして、どういうふうに私はお話ししたらいいのか悩んだのですが、結局、私流にやらなければいけないのでやらせていただきます。

幸い、今日、資料を出していただいたのですが、2ページ目に、ちょっと順番は違いますが、日本の所得の種類が書いてありまして、それで損益通算がどうなっているかという見取り図ですね。それからあと10ページ目に、これは外貨建て商品に限定されておりますけれども、いろいろな商品、保険ですとか先物がどういう課税上の取扱いを受けているか。それぞれ、一言で言えば種々雑多な扱いを受けていると。別に雑に扱っているのではなくて、非常に細かく分かれているということですね。それを時々参照していただきながら、お話をしたいと思っております。

そこで、「金融課税の一体化の位置付け」ということですけれども、まず第一に、所得税の理論としまして、包括的な所得概念、従来、それに基づいて総合課税という改正、改革、一つの理念であったわけですけれども、前に二元的所得税のお話も随分出ましたが、そういう形で方向を変えていくのかどうか。二元的所得税になりますと、確かに総合課税の目標も大きく変えることになるというわけですが、これは非常に大きな論点であります。

ここにつけ加えてありますけれども、いわゆる資本の海外流出、キャピタルフライトといったような問題は議論されておりますけれども、あとこの点について技術的な観点から少し分析するとどうであろうかということが一つでございます。

そこで、IIの「所得の区分」ということですが、先ほど、2ページ目、ご覧いただきましたが、さて金融所得という独立の一つの類型にまとめ直すことができるのだろうかと。これは本当の制度論になりますけれども、私が思いついた限りで挙げたのですが、例えば利子所得というのは、預貯金の利子のほかに4つの定型的な商品、公社債と公社債投資信託、それから合同運用信託の収益の分配、さらに公募公社債等運用投資信託の収益の分配といったような商品が並んでいるわけです。

それから配当所得は、利益の配当のほかに、今後、商法が自由化しますと、現物配当、それから、すでに出てきてますけれども、自己株を買い受けた場合の例ですとか、あと譲渡所得、不動産所得。事業所得につきましては、貸付金の利子が典型ですけれども、リース資産の収益といったようなものもあります。それから一時所得は、先ほどご説明いただいてますけれども、典型的には満期保険ですけれども、この10ページを拝見しますと、レジュメに書きました一時払い養老保険というものは一時所得ですけれども、これが一時でなくて年金保険の形をとると雑所得に入ってくる。[7]に、さらにワリコーといったような割引債の償還差益、これは雑所得ですけれども、それと先ほどご説明いただいた金融類似商品ですね。こういった10種類ありますけれども、ほとんどの所得に金融関連の所得が並んでくると。

そこで「論点」ですけれども、今お話ししましたが、さて10種類の所得、これの全面的な見直しをしないと金融所得というカテゴリーは作れないだろうなということですね。しかも、典型的な利子、配当、キャピタルゲインといった[1]から[3]ですけれども、それだけをくくってみましても、限定されてこないということは今お話ししたとおりです。ですから、それぞれの所得について、これは今度は金融所得に移すとか、極めて難しい線引きが必要になってくるというわけですね。

ではそもそも、もともとにさかのぼりまして、所得を区分することにはどういう意義があるのだろうということですけれども、⇒で書いてありますが、これは一般的に言われているところですが、所得の性質によって、包括的な所得概念と言って、どんな所得にも課税するとは言っても、担税力そのもの、負担する能力は所得によって違うのではないか。典型的には、いわゆる資産性所得は勤労所得、ヒューマンキャピタルに比べてみれば担税力は高いだろうと一般的に言われてきてますけれども、現実に制度として仕組まれたときにはどうなっているかというと、どちらかというと逆の仕組みになっているわけですけれども、大体、所得を区分することというのは、例えばアメリカ合衆国のように、表向き、通常の所得とキャピタルゲインだけしか分けていないような国でも、実際の法律の規定一つ一つ、この規定はこれに適用になるということを考えますと、かなりいろいろな種類に分かれるのですね。

これはなぜかといえば、この下に出ておりますように、まず計算方法が違っています。典型的には必要経費の控除のあり方が所得によって違っている。例えば配当の場合には、手元にある株式にかかる負債の利子だけを控除できるとか、非常にいろいろな扱いの違いが出ております。

その中でも一つ今回問題になるのは損益通算、損益を相殺する問題がどう扱われているかということですね。それから、後でまたお話ししますけれども、譲渡所得の場合には、特に不動産に関連した譲渡所得は、今はちょっと時代が逆になってますけれども、いわゆる含み益、値上がり益といったものが、長期間かけて行われますので、その平準化を行わなければいけないといった特別な考慮も必要になるわけですね。

それから課税方法が違っています。典型的には源泉分離課税、これをするかどうか。源泉分離して比例税率を適用するといったもの、それに対して総合的に集めて累進税率を適用する、こういった課税の方法の違いが出てまいります。

それから、これも先行き考えると大事な点だと思いますけれども、配当所得の場合には必ず、いわゆる配当二重課税、法人税と所得税の統合の問題ですけれども、配当所得だけを見ていたのではいけないので、法人のあり方、所得の課税の仕方も考えなければいけない。そうすると、他の所得の場合にはどうなのだろうかと。現実に収益のところだけ見ればいいのか、それとも、もともと運用されている段階のことも考えなくていいのだろうかとか、こういう問題が出てまいります。

それから4番目、これは最新のあれですけれども、いろいろな事業体が出てきておりますが、それによって新しい商品が作り出されている。さらに金融派生商品というものが、これを使いますと所得の性質を変えることも簡単にできてしまう。

というようないろいろなことがありますけれども、とにかく現実には10種類の所得、これをどうするかとなりますと、2ページ目のイ)ですけれども、制度的・技術的に見た場合には、金融所得という一つの所得の種類を新たに作る、あるいはまとめてそこへ当てはめるということは、私としましては、複雑さをもたらすだけではないのかと。先ほどお話ししましたように、それぞれの所得に金融関連の所得というのは散らばっているわけです。これを金融所得とやりますと、今度は一つ一つの、例えば一時所得の中でこれはどっちに入るのだろうかという作業をやらなければいけないということで、当てはめの問題が大きく出てくるという懸念があるわけです。

それからロ)ですが、金融所得の定義が難しい。日常用語的に、あるいは金融の世界で金融所得という言葉が使われると思いますが、今度、法律の概念としますと一体どういうふうに定義づけるのかと。いわゆる利子所得といったものすら定義は書いてありませんけれども、そういう状況で、金融所得の定義は非常に難しいと。ただ、難しいのですが、定義をしないと今度当てはめる、法律を適用することができませんから、非常に難しいとこれは思うわけですね。

さらにつけ加えますと、今、商法の現代化といった改正作業が行われておりまして、2005年には会社法という法典が作られる。それで配当がますます自由に行われるようになっていくのですね。今の配当というのは、損益計算上の手続を踏みまして、株主総会で承認するという形をとっていると思いますけれども、それが好きなときに利益の分配ができるようになる。商法の先生に伺うところでは、配当という概念そのものがもう会社法から姿を消していくのだということになるわけですね。そうなったときに、さて、これをどういう具合に所得税法で、あるいは法人税法で受けとめていくのだろうかと。ますます複雑さが増していきそうな感じがするわけです。今までは配当所得、みなし配当でやってきましたけれども、その根本が大きく動いてしまう可能性がある。

それからハ)ですが、これはそもそも論に戻りますけれども、そもそも包括的所得概念、これと対立するのは、制限的な所得を制限して課税する。あるいは支出税と言われたような、消費した部分にだけ課税して、貯蓄・投資部分は課税しないといった考え方。これと包括的所得概念と相容れないということは考えられるのですが、我が国の利子所得に典型的に見られます源泉分離課税、これは否定するものなのかどうか。

おそらく、これはもともとヘイグ、サイモンズも議論はしてないと思いますし、今でも、具体的に考えていくと、案外こういうところが議論がなされていないのではないか。そうすると、我が国の現在の制度、申告分離と源泉分離残っていますけれども、こういうような考え方から、こういうような分離課税という位置付けをこの際し直してみる価値があるのではないか。特にそれが包括的所得税といったものからそれているとは思えないと私は考えますけれども、その辺も議論に乗せてみる意義はあるのではないかということです。

結局のところ、ニ)、これは前にも出ましたけれども、北欧の社会の二元的所得税、これは北欧といえども、所得税の制度がどういうふうに所得の分類が進んできているのかということ、これもさかのぼってみる必要がありますけれども、結論として、先ほどお話ししましたように、二元的所得税というのは非常に技術的に面倒な点を我が国では生ずるのではないかなと。私としては、これは「我が国の制度として不適当と思われる」とはっきり書いていますが、そういうような印象を持っております。

それから「損益通算」。これは非常に簡単に言えば、2ページのところにきちんとした図がありますけれども、いわゆる所得を10種類に分けました関係で、プラスの所得とマイナスの所得が出てくる。それをお互いに相殺すると、通算するという、非常に考え方は簡単ですけれども、現実に一つ一つの所得を見てまいりますと非常に難しいところがあるわけですね。ですから、その辺のちょっとした違いでこの委員会も議論が活発になったりすると思いますけれども、まず、制度として損益通算の趣旨というものをはっきりさせておく必要があります。

課税の中立性のために、金融に関連した所得には同一の税率を適用する。それから金融に関連した所得にかかる損失について、どの範囲で他の金融関連所得と相殺するのか。こういう問題があるわけですけれども、一番下にありますけれども、そもそも損益通算、もとをたどると人為的に所得が区分されていることにあるわけですけれども、それを今度もう一度、いわば相殺、通算するというその理論付けというもの、この点を明確に報告書なり、この報告に出しておく必要があるでしょうということですね。

3ページ目にまいりまして、ii)のところに、その点ですけれども、損益通算の趣旨、考えられるのは、事業もしくは投資した資金を回収する、税制の上で回収する形を認めるということ、もしくはリスクに対して中立性を維持するということではないかと思われるわけです。特に[2]の点、金融論の先生、いろいろなご意見あると思いますけれども、この2つを基本に置くことができるかなと考えております。

現行法では、こちらの2ページ目の図にはっきりと出ておりますけれども、損益通算で損失がほかの所得から差し引けるのは不動産所得、事業所得、形の上で譲渡所得に限られているということなのですね。これはどうなっているかといいますと、利子所得はそもそも損失というものを考えられなかった。

一時所得については、これはいろいろ議論が出るところですが、例えばそこで生じた損失が収益を得るための投下資本と言えるのかどうか。例えば宝くじ、これは非課税になってますけれども、宝くじで1億円当てた人はそれまで買った宝くじの損失はそのための投下資本かと、そういう問題ですね。

それから雑所得、これはすごく裁判所をにぎわせましたが、先物取引といった損失、これは投資の回収なのか、投下資本を回収するものなのか。裁判所は、結論から言いますと、損益通算を認めてないのですけれども、これは結局、別々の取引だから合わせることは認めないと、もうかった場合の利益から損したときの損失を相殺するということはできないと、こういうような考え方が強いわけですね。

そこで2番目、損益通算の範囲をこういった基本的な趣旨に基づいて考えますとどうかというと、できる限りまとめて書いたつもりですが、1つには、総合課税される所得と分離課税される所得との間で損益通算、これは理由がないと。というのは、この下にありますけれども、そもそも税率が、累進税率を適用しているのと比例税率で一本化して1本で課税している所得、これは課税の対象の範囲が違ってきますと、何のための累進税率かという問題が出てきてしまいます。これはやはり分けなければいけない。

それから2番目ですけれども、ちょっと言葉足らずですけれども、損益通算が典型的に認められている事業所得ですね。この損失というのは、いわば必要経費が収益を上回った部分である。ですから、回収できなかったので、税制上何とかしなければいけないという考え方に立っているわけです。こちらが典型的ないわゆる損益通算の例ですが、では譲渡所得の場合はどうであろうか。

実際には株も、それから不動産も昨年の改正でだめになったのですけれども、シャウプ勧告を例にとると、シャウプ勧告は譲渡所得の全額課税と譲渡損失の全額控除というのを提案したわけですけれども、この譲渡所得には譲渡益ではカバーできない損失、これは投資の回収という性格を持っているだろうか。確かに、同じ株ですから、そういう考え方ができないわけではない。といいますか、自分が払って買ったときよりも安くなるわけですから、これはマイナス部分は投資したお金の回収と。それができなかったわけですから、何らかの手立てを打つことは意味があるのではないかということですね。

しかしながら、キャピタルゲインの問題は、先ほどお話ししましたが、株の場合は多少違う面がありますけれども、一般的に言って上がったり下がったり、含み益、値上がり益がありまして、特に不動産関連の所得の場合には、平準化などを行ったりするわけですので、これを事業所得、不動産所得を主とする損益通算と同じに並べていいのだろうかと。現行法、本法にはそうなっているのですけれども、そういう点、ちょっと考え方が、所得の性質がそもそも違っているのではないかということですね。

「加えて」と書いてありますけれども、ですから、譲渡所得とそれ以外の事業所得、不動産所得、いわば半継続的に生じてくるような所得の損益とは、これはやはり別に扱うべきではないかという点、ここをちょっと押さえておきたいと思っております。

それから4番目ですけれども、今後の方向ですけれども、さまざまな所得の種類、金融関連所得にありますけれども、今までお話ししたようなことを考慮すると、幾つかの所得の間で通算を認めることは可能ではないか。

具体的には、「結論」のところに入っておりますけれども、一つには、同じ性格の所得の中で認める。それから2番目には、関連した所得、いわば金融に関連した所得ですけれども、比例税率が適用されているもの、これ同士は損失の通算というものを認めてもよろしいのではないか。これは従来の基本的な包括的な所得税の考え方に特に変わるものではないのではないかということですね。

それから最後にちょっと注目していただきたいのは、いわゆる金融課税の一体化ということで、一番最近にかけて行われてきた15%の源泉分離課税といいますか、比例税率の課税の中心にありました利子所得、利子並み課税と言われて、15%、地方税入れて20%の方向へ大体金融関連の所得は収斂してきているわけですが、この大もとになっている利子所得自体が、いわゆる源泉分離として、この所得だけがといいますか、この所得は申告の形をとっていないわけですね。そうしますと、金融関連だということで一緒に損益通算をやろうとしたときに、損益通算というのは申告して計算しないとできませんが、もともと源泉分離課税になっている利子所得にそれが適用できないと、こう考えるのが通常ですね。所得については源泉分離で、マイナスのときには通算するために申告していいと、こういう考え方はちょっと成り立ちませんので、この点を留意しなければいけない。

例として、公社債の譲渡損と預貯金の利子とは相殺できないでしょうと書いてありますけれども、源泉分離課税、利子所得、そこまでこぎつけたわけですが、これがやはりありますので、金融関連所得、損益通算、これから範囲を広げる方向で、この「結論」の[1]、[2]で出しておりますけれども、金融課税の一番の基本にあった利子所得については、そこはちょっと別に考えなければいけないなと、このようなことを考えております。

これが一貫性のある報告なのか、思いついたばらばらなものなのか、ちょっと申しわけございませんが、終わらせていただきます。

委員

どうもありがとうございました。

今いただいたご意見といいますか、ご説明、私なりに整理しますと、一つが、金融所得という所得区分を新設することはいろいろ難しいので、むしろ現行の所得区分のままであっても、一体化課税というのは実現可能ではないかということが1点。もう一点は、包括所得税とか二元的所得税とか、いろいろ理論はあるけれども、特に包括的所得税等は必ずしも一体化と矛盾するものではないのではないか。それから二元的所得ということも特に考える必要ない。要するに、そういう理論的な問題を解決することは必要、先決問題ではなくて、むしろ実態として一体化税制を考えていったらいいのではないかというご議論だったと思います。

むしろ問題は一体化の範囲というものをどういうふうに考えたらいいのか、それから、とりわけ重要な問題として損益通算というものの考え方としてどういうものを考えたらいいか、理論的に、あるいは実態的にどういうふうに考えたらいいだろうかということがご議論だったように思います。

どうぞ皆様、ご質問、あるいはご意見等をいただければと思います。

委員

一連の皆さんの議論を伺っていて、前半の議論を伺って、今の先生のお話を伺って、どうしても解けないいくつかのテーマが浮かんできてしまって、先に進めないという感じで。

まず、冒頭に何度も繰り返されている政策的配慮ないしは政策的という言葉の定義が二通りに使われているということが非常に違和感がございます。一つの使い方は、つまり、投資促進のようなインセンティブ的な使われ方、もう一つは、所得を何らかの形で、有価証券であれ何であれ、失ったことに対して、何か社会政策的な配慮が必要かどうかというこの二つの問題は非常に非対称的な問題を含んでいて、それが時折同じようなレベルで議論されるのには非常に違和感があるわけです。

特にこういう金融商品というのはリスクに対して中立的でなければならないということはどういうことかというと、所得が多い少ない、あるいはタイミングに対して中立的でなければならない。しかし、先ほど言っていたような議論、例えばキャピタルゲインに対して、ロスに対して同一に扱うというのは非常に違和感がございます。つまり、ゲインに対しても税制がかかわるから、ロスに対してもゲイン、かかわらなければならない。この二つの議論が一緒に放ってしまっている。つまり、ゲインというのは何かプラスのゲインが発生していると。それは担税力が発生しているから、それに対する課税能力があると考えるのはいいけれども、ロスに対して、じゃ担税力が失われたから、負の担税力みたいに、何かそれを負にとらえるというのは、これは非常におかしいので、むしろロスとゲインは別な問題であるというふうにとらえないとおかしい。つまり、政策的に同一議論をするのは非常におかしいように思うし、今の議論で、キャピタルゲインからリアルなもの、つまり、会社が倒産したとか、そういう資産滅失の議論をくっつけるということについても、かなり無理な議論が入っているというふうに見えて仕方がないのです。

それから配当とキャピタルゲインについても、配当はリアルなものであるけれども、株式は必ずしも、ロスに対して評価というプロセスを経て投資家はやっているのであるから、同じものではないと。配当は現実の経済事業活動からリアルに発生しているけれども、キャピタルゲインとかロスというのはマーケットの動きによっていかようにでも変わるわけで、これは投資家の判断、評価の問題であって、全然違う性質のものであるから、これもやはり違うものとして考えなければいけないのではないかと考えていくと、その前提の議論、今までの議論では私のスタンスがちょっと違うなという。つまり、政策的な配慮が行き過ぎているというか、議論の中に入り込み過ぎているというのがちょっと私の印象でございます。

最初に先生がおっしゃったストックとフローの問題、つまり、ストックが減損しているケースとフローが減損したケース。フローが減損というか、価値が減ってしまうということの関連についても、コンシスタントでなければならないという議論は非常におもしろいのですが、逆に、同じ議論ではないだろうと。つまり、ストックは上がったり下がったりする。固定資産とか有形のものは上がらないというか、常に下がっていくわけですから、これはやはり同じ体系ではないので、それをまた、つまり、会社が倒産したりするというのはリアルな現象が発生しているということであって、それと何かキャピタルゲインのように、非常にマーケッタブルな問題をくっつけるというのはどうしても違和感があって、何でこの議論をしているか、そもそもわからないというか。

分けるものは分けた段階でやるべきだし、そもそも株に投資している人というのはロスに対してリスクを持って対処しているわけだから、そのロスに対して何らかのインセンティブを働かせてほしいという議論は最初から私にはよくわからないし、何のためにやっているかもわからない。それを言い出したら切りがないし、そこまで課税当局として面倒見るとか、そんなことをいつまでやっているのかという。そもそも、昔、有価証券取引税とかってありましたよね。あれが嫌だ嫌だと言って大騒ぎして、やっとせっかく取り除いて、課税が株式の世界に入るのは一銭たりとも嫌だという議論をしていた人が、今度逆にいろいろそれぞれ面倒見たり、プラスとマイナスをくっつけてほしいとかいう、いろいろ細かい議論はあると思うのですけれども、その議論の方向に行くというのは非常に違和感がある。

諸外国の例を見ても、配当とキャピタルゲインは別の体系だし、その辺が、そもそも議論で本当に申しわけないのですけれども、いくら聞いていてもよく納得がいかないというか。この議論が進んでもいいのですけれども、何か我々の学者の世界のいろいろな議論の中でやっているような感じになってしまうのではないかというのが私のちょっと印象で、理解が足りないのだと思うのですけれども。

委員

一言だけちょっと補足すると、多分おっしゃっているのは、セクストインカムといいますか、利子とか配当という事前に決まっているインカムの部分と、キャピタルゲイン、ロスという部分と少し性質が違うのではないかというお話だと思うのですけれども……。

委員

それはいいのですけど。それは最初からわかっている。

委員

わかりました。

委員

ロスとゲインも同じ政策の上に乗っけると。先生のおっしゃり方がよくわからなかったのですが、ゲインに対して何らかの課税が入ると。キャピタルゲインに対して。

委員

ゲインに対して課税をしているのだったらば、ロスに何も税を担保しないということは税の取扱いが不均衡になるというか、非対称になると。

委員

そうそう。そこのポイントが、そもそも違う政策的配慮が入っているのではないかという。

委員

難しいことを申し上げておりません。政策的という言葉が二様に使われているというご指摘、非常に興味深く傾聴しましたし、全くそのとおりだと思います。私のは政策という議論ではありませんで、担税力という言葉を先生はお使いになりましたが、担税力をお金ではかるというときに、直前で100万円持ってました。そこで、もう20万円追加になったので、今年の担税力は120万円ではかりますという話と、それから100万円持っていたものに対して20万円損が出ましたから、今年の所得は80万円ではかりましょうというのは、そういう意味では対称的であり得ますねと、そういう議論です。

ロスとゲインがおよそ違うというご立論は、やや私には、承ってもよくわからなかったのですけれども、そんなに、私の申し上げていることはむしろ政策のレベルではなくて、そこにオンされたときに税金をそこまでかけるのであれば、そこが減ったと見られる場合には減らしてあげたらどうですかと、それだけの話でございます。

委員

要するにもともとの問題は、もちろん一番理想的なのは、税は中立的であるべきであって、投資家の行動に対して税が影響するべきではない、ここは多分コンセンサスがあったと思うのです。現行の制度がどうなっているかというと、キャピタルゲインに対しては課税をします、ロスに対しては控除をします、あるいは控除に制限がありますと。これは投資家の行動を変えていないなら別に問題はないわけで、それでめでたしめでたしでおしまいですけれども、現実問題としては、結局、キャピタルゲインに対して課税をする、ロスに対して損をさせるという行為が、株は危険資産ですから、したがって、そういう危険投資、投資家のリスクテイキングを阻害しているという認識があると。

実際どれぐらい阻害しているかは実証研究マターですけれども、阻害しているという、そういう懸念と認識があるということだったわけで、とすれば、損失に対しても、どの程度というのは、確かにインセンティブの問題がありますので、先ほど申し上げたように、タックス・アボイダンスの問題があると。これは冒頭、一番最初から言われていることなので、どの程度損失を認めるかということについては考えなければならないものはあるけれども、しかし、原則として、損と利益を対称的に扱うようにするべきではないですかという議論があったのですね。

その結果、これは単なる経済学理論ですけれども、これは一種のインプリシットなリスクシェアリングですから、そういうことをする結果として、貯蓄から投資に対してある程度、今、貯蓄というか安全資産に対してあまりにも税制がフェイバーし過ぎているという認識であるならば、そこを少し是正する方向に作用するのではないですかという、そういう議論だったのだと思いますけれども。これはもう随分前にやった話だと思いますが。

委員

先生のお話、投げかけの中で、一体化の範囲をどう考えるか、実体ベースでというところで、私の経験というか、印象をお話ししたいと思います。そして先生がおっしゃったゲインとロスを分離して考えるというのは非常に私も、確かにそういうことは大切だなと思ったわけですが、そこで、私が日ごろ感じていることですけれども、個人の方が資産運用するときにどんなふうなことを考えているかというと、貯蓄という考え方、その前に保険という考え方があるのですが、それ以外に貯蓄という考え方、そして投資という考え方、そして投機という考え方、4つがあると思うのです。

先生もおっしゃってましたけれども、利子所得のようなものを一体化の中に入れるのは非常に難しいのではないかと。そういう意味では、貯蓄という中に入っている商品、例えばペイオフの話であったり、そういうものを一元化して考えるというのは、私も、投資家の人たちに、個人の人たちに資産運用の理論とか考え方を説明する上でも一緒にするというのはあまり好ましくないのかなと感じます。

個人の方が、ではもっと資産というものを運用して増やしていこうと考えたときに、投資と投機というものが考えられるのですけれども、投機というのが非常に微妙でして、株で投機をやる人もいます。先物を投機でやる人もいます。株で投資をする人がいます。しかし、先物で投資をする人はいない。できませんから、そもそも。

この大きな違いは何かというと、やはり投資のほうはオープンエンドで終わりがないわけですね。終わりは自分で選択するということ。投機のほうは、先物においては常に期限、期日があって、そこで決済しなければいけないというものもあります。私は、ここを分けて考えるべきで、もし金融資産の一体化をして、損益を通算してあげようと考えるのであれば、投資という考え方において金融商品、金融所得を考えてみてはどうかと思うのです。したがって、株式についても一元に損益通算をするのではなくて、ドイツなんかはそうだと思うのですが、1年であったり、短期的な売買における損失については損益通算というものから外していくという考え方も一つあるのではないかなと感じております。

委員

委員がおっしゃったので少し気になっているのですが、委員の資料の最後に、利子所得については申告されてないから損益通算になじまないと書いていらっしゃるのですが、一つの考え方で、傾聴に値すると私はもちろん思っているのですが、ただ、例えばですが、外貨預金なんかありますよね。ヘッジされてない場合、利子と為替差損というものは、差損が起きた場合には両方来ますよね。それを加えると、多分、分けて取り扱わなくてはいけなくなるのですが、そういうことになるのでしょうか。あるいは、利子所得であっても、こういう部分に関しては源泉分離課税にしないとか、要するに課税方式というのはこちらサイドである程度変えることもできるわけですよね。だから、そこら辺どういうふうにお考えなのか、もし何かお考え等ありましたら教えていただければと思います。

委員

質問のご趣旨がちょっとわからないところもありますけれども。

委員

11ページに「外貨建て商品の課税の概要」というのがありますよね。下のほうが外貨預金で、利子の場合ですが。

委員

片方が総合課税になるわけですね。で、申告をしますと。

委員

為替差益は多分金融で、これは譲渡に近いですから、損益通算を認める可能性強いですよね。わかりませんけれども、認めないという考え方はもちろんあると思いますが。

委員

先生が言われるのは、もし同じように差損が生じた場合には利子と雑の区分に応じてそっちで相殺できないかと。

委員

利子と為替差損を別々の課税というか、別々の形にしておいて、損益通算を認めないと、外貨建ての預金の場合には非常に投資家としては面倒くさい納税をしなくてはいけないかもしれない。あるいは金融機関のほうもかなり難しい計算をして、これこれこうですよということを投資家に言わなくてはいけない。投資家のほうは結構わかりにくくて、どうなっているのですかという質問がかなり出そうな感じもするのですがと、そういう趣旨です。

委員

ただ、損失が生じた場合にそれを相殺できるのであれば、面倒くさくても、それは喜んでやることですよね。結局強調したのは、意外といいますか、いわゆる金融課税の一体化の中心にあった利子所得が、何とこれは源泉分離でしたねと。だから、この一番肝心の所得が一体化の対象にならないのですねということを私がはっと気がついたものですから、それで強調したのです。失礼しました。

委員

すみませんが、1つだけ追加の質問ですが、ということは、利子所得は源泉分離であると。これは動かせないと。逆にそういうことなのでしょうか。あるいは、利子所得も例えば源泉分離からやめて、別の形にして、損益通算を認めるというオプションは考えられないという。

委員

十分考えられますが、そうなると納税者番号が出てきて、話はますます大きくなっていきますが、そういうふうに盛り込むのも一つの考え方だと思いますが。

委員

ちょっと質問ですが、要するに、異なる所得の種類すべて、すべてというのは範囲かわかりませんが、損失の通算、問題が多いということで、基本的にはあまり通算というのはやりにくいのではないかというご趣旨だと思うのですけれども、それは包括的所得概念の方向を変えるものではないということも書かれているのですが、変えるような気がするのですけれども、この辺はどうなのですか。

委員

包括的所得税と言って、よくヘイグ、サイモンズの定義とか引用されますが、ヘイグ、サイモンズは、課税はいわゆる純資産の増減と消費だと言ったけれども、具体的に何がそれに入るかというところは言ってないわけですね。私たちが議論しなければいけないわけですので。ですから、この場でその辺をはっきりさせることができれば、それが非常に一つの成果ではないかと思いますけれども、先生はそれは否定的にお考えになるわけですけれども。

委員

要するに、税体系、税率を、比例税率とそうでないところを一緒にする、それは難しいことはわかりますが、同じ税率にあわせた金融の中で通算していこうという話でしょう。今議論しているのは。それを難しいという話ですか。

委員

一番難しいのは二元的ということで、資本性所得として一つにまとめる、金融所得として一つにまとめることは、これは難しいなというのが第一の意見です。

損益通算の場合には、いわゆる累進税率の適用される、総合課税される所得は区別されると今先生おっしゃられたとおりで、さて、じゃ中でどう扱いますか、これはこれからの作業になると思うのですね。私は、だめとか難しいというより条件をくっつけたのですね。この所得はだめですよと。典型的には利子ですけれども。それから譲渡所得。委員が特殊な性格を持っていると言われてますが、確かに特殊な性格を持っている。これもほかのとぶつけるのはちょっと難しいなと。そうするとやはり悲観的になりますかねえ。

委員

趣旨がわからなかったのでちょっと質問があるのですけれども、確かに金融所得の定義は難しい。僕はそのとおりだと思います。でも、そのことをもって、配当所得や利子所得を定義するのが簡単であるということは全く意味しないので、今のままでいてもやはり難しいものは難しいと言っているだけだと思います。

それからあと改革の方向ですけれども、ここは名前が金融小委員会だということも僕はあると思うのですが、金融所得の一体化をしましょうというのは、別にこれでエンドだとは思ってなくて、それは人によって違うと、同床異夢のところがあると思うのですが、これはじゃ今度は事業所得をどうするのですか、まさに不動産所得をどうするのですかという議論に持っていくそのステップとみなすのか、ここで終わるのか、それは人によってちょっと違いますけれども、ただ、ステップとみなすのであれば、別に金融所得の一体化というのは今後の議論の、ここで終わるわけではないから、進めていく一つの移行過程としてとらえることができるのではないですか。二元所得税が無理であるというのは、北欧の事情を知らないからとおっしゃいますが、じゃ知ればいいわけで、それは勉強の問題でありまして、それは理由にはならないだろうというのが私の認識です。

あと、やはり議論として、納番がなければいけないというのはそのとおりだと思います。損益通算をやるやらないということともかかわってきますが、やるならちゃんと納番導入しなければならないでしょうと。納番がないままで利子所得課税と損益通算できますかと。それはできない、技術的に難しいでしょうというのは、それはわかります。

あともう一つ、前にこれも出ていたと思いますが、納番に関して言っても、選択制でいくということを考えるならば、もし利子所得、そのまま普通に源泉徴収されて、それでおしまいという人がいるなら、それはそれでいいし、投資家であって、ほかに株とかがあって、そこで損失と控除したいという人がいるならば、そういう人に関しては申告を求めていくという、そういうやり方でいけば何とか、問題は消えないけれども、そんなに大きな問題にはならないのではないかと思うのですが。

委員

二元的所得の話はちょっとやめましょう。委員、何かレスポンスあれば。

委員

私、スウェーデン語もデンマーク語もわからないから、これ以上勉強するのは無理だと思いますけれども、それはさておいて、一つだけお話ししておきますと、金融所得を定義するのと利子所得を定義するのでは全然次元が違うのですよ。利子所得というのは5つの商品に限って、それを利子所得として、ほかに入らないものは類似商品という名前をくっつけたり、ほかの所得に入るのですが、今度言っている金融所得というのは、その中にできるだけ金融関連の所得は入れましょうと言っているわけですから、入る入らないの基準ができてないとだめなのですよ。そうでないと、20種類の商品を列挙して、これを金融所得と言いますとやったら、なおさらもうこれは動きのとれないといいますか、全く何の意味もなさないような所得になってしまう。だから、金融所得というのは定義することができるかどうか、これにかかっていると言ったわけです。

委員

すみません。最初に二つだけちょっと整理させていただきたいのですが、我々の金融一体化課税を議論するためには、委員がおっしゃったように、一つの論点として、包括所得税とか二元的所得税というのはわざわざ議論しなくてもいいのではないかというご意見だったと思います。多分それのほうが生産的だろうと私も思うのですが、それに関して、皆様、よろしいでしょうか。それから、いずれ二元的所得にいくかもしれません。それはしかし、この金融小の後の話なので、我々の関知するところではないということです。

それから所得区分ですが、委員から出ているのは、金融所得という新たな所得区分を新設することは必要ないのではないかというご意見だと思うのですね。それに対して今委員からお話があったのは、必ずしもそれに対する反論ではないような気がしていて、ですから、仮に損益通算を認めるにしても、ある意味で、どの所得とどの所得を損益通算をという話になるわけでしょうから、そういう意味で、金融所得という概念を改めて作る必要は特にないかもしれないし、少なくとも今までの所得区分というものはあったからといって困る話でもないと。そういうご整理だと思うのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

委員

先生の考え方は非常に常識的で、大体これからいくべきラインというのは、このお考えからずれるということはあまりないのではないかと思います。例えばリスク性の資産とか、金融資産とか、それは経済的には何らかの定義があるのでしょうけれども、法的には定義できないのですね。法的に定義できないものは執行できないのですから、法律に入れることはできないので、そういうもとに制度を組むことはできない。

利子所得というのは、コアとなるのは利子という概念がありますから、これは預貯金の利子で、民法なり何なりで定義できますし、配当のほうも一定の定義ができるわけですね。譲渡所得は資産の譲渡という2つの概念でできて、経済実体をいきなり所得税法なり何なりの中に記述できればいいのですけれども、間に民法や商法を入れたほうが記述しやすいというのがあって、そのほうが執行の便宜になるわけですよね。そうすると、所得類型というのも、経済的にはよくわかりませんけれども、そういうトータルなことを考えると意味があるわけで、それを全部ばらしていく、なくしていくというやり方もできなくはないのでしょうけれども、なかなか急激にそちらに移るというのは難しいということで、大枠でそれを維持しながら、問題の起こったところを少しずつ手当てしていって、個別の取引がそれぞれあるわけですから、それに応じて物事を考えていくというのはいいかと思います。

ただ、損益通算についてどこまでというのは、例えばシャウプ勧告はキャピタルゲインとキャピタルロスは対称的に取り扱えと言っているわけですし、我々の戦後の租税の体系がそういうところでできているところがあるものですから、これは意見が分かれるところですが、個人所得税というのを前提に考えると、先生の言うように、そう簡単に何もかもというわけではない。しかし、やっていい場合もあるし、また、そのバランスをあまり崩してもよくないということがありますから、そこはいわゆる政策論が入ってくるのではないかと思いますけれどもね。基本的に賛成です。

委員

そろそろ時間ですが、最後に。

委員

今日聞いていて一番苦労されたのは座長ではないかと思うし、事務局も、この小委員会をどう持っていくかで心配し出したのではないかと思いますけれどもね。各委員が自分の本音でさまざまぶつけ合ったというのは非常に成功というか、いいかと思いますが、ただ、そもそも論に話がいってしまって、100%自分の信じているところで議論をみんなし出してますから、これ、どうやってまとめていくのかちょっと心配になってきましたね。

というのは、税制って100%ベリーハッピーなんてないのですよ。みんな妥協の産物なのですね、ある意味では。ですから、今議論すべきことは、金融所得の一元化という理想の姿を追い求めて議論したって、僕はそう生産的な議論は多分できないと思いますよ。問題は、今なぜこの議論が出てきたか、もう一回原点に返ってもらったらいいと思う。というのは、現行が悪いから、改革の方向で金融所得の一元化と言い出したのでしょう。だから、現行どこが悪いかというのは、皆さんさまざまな意見をお持ちなので、そこの共通の理解というか共通の認識がかなりばらばらだから、もうこんなことやってもしようがないという形で分解しそうなのですよ、今。

やはり皆さんをある方向に持っていくのは、現行の制度が悪いから、少しでも、一歩でも二歩でも、もうちょっとまともというか、ましというか、そっちへ行こうという腹があるかどうかでしょう。金融所得の一元化について一々、ここが悪い、これが悪いと言ったらまずできませんよ。そういういろんな問題があるけれども、それを束ねた上でも、一歩でもベターな方向に行くのかなという認識がないと、この小委員会で私は建設的な議論ができないと思いますけれどもね。

今日はまだ論客が大分いませんから議論がどうなるかわからないけれども、確かに、それは随分違った所得をまとめようとしているのですよ。金融所得と言いつつね。しかし、他の勤労所得に比べればまだ商品には所得のカテゴリーがあるわけだから、あるコアな部分の商品とかまとめて、どうしても入れ損なうのは、全部入れないで、ちょっと入れようという議論があると思いますから、もうちょっとまとめていく方向で私は議論することを希望しますね。

委員

この辺で終わりにさせていただきたいと思います。

基本的に金融一体化課税と言ったときには2つの大きな問題があって、1つは一体化の範囲をどこまでとるか、滅失とか、ペイオフとか、まさにそこら辺の問題だと思います。それからもう一つは損益通算をどういうふうに、どこまで認めるのかということで、今日も出ましたけれども、キャピタルゲイン対利子・配当の問題とか、執行、課税方式の問題とか、税収とか、政策とか、いろいろな論点があって、そこら辺を少しずつ整理していって、最終的には、委員もおっしゃいましたけれども、どこかで妥協するという方向で考えるしかないのかなあと思っています。大体、そういう意味で、その限りではできるだけ一体化の範囲を広く考えるというのが多分そもそもの議論の前提でもありましたし、国民といいますか、投資家の人たちが望んでいることかなあとも思います。

いずれにいたしましても、大変幅広い論点からご議論いただきまして、ありがとうございました。来週の4月27日に総会が基礎小委員会とあわせて開催されますので、金融小委員会、すでに7回開催してきましたので、これまでの議論の状況について、私のほうから来週の総会に報告させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。当然、いただいた意見を踏まえて総会で報告させていただきます。

最後に今後の予定ですが、これまでの議論を踏まえて取りまとめに向けた作業に次回から入りたいと思います。次回の小委員会では事務局の方にこれまで出された主な意見をまとめてもらい、それをもとに議論していきたいと考えております。ぜひまとめる方向で、皆さん、議論をお願いいたします。

次回の日程は5月11日の火曜日を予定しております。時間はまた追ってお知らせします。正式なことが決まり次第、案内状をお送りします。

それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところをどうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会