金融小委員会(第6回)後の奥野小委員長記者会見の模様

日時:平成16年4月2日(金)16:13~16:25

奥野小委員長

今日の小委員会では、金融資産性所得課税の一体化に向けた納税環境の整備について議論を行いました。これまでも指摘されてきたことですけれども、金融資産性所得課税を一体化し、損益通算の範囲を拡大していくということをしますと、現在のように利益に対して源泉徴収が行われ、税務当局は関係ないということでは済まなくなります。さまざまな金融資産性所得の源泉から生じる利益や損失を適切に名寄せすることが重要になります。そして、そのツールとして番号を使うということも考えられます。このような問題意識から、本日は納税環境整備のうち、納税者番号制度についてかなり時間を割いて議論を行いました。

あらかじめ申し上げておきますが、当小委員会は金融資産性所得課税の一体化についての検討を行う場でありますから、本日の納税者番号制度についての議論も、損益通算範囲の拡大に伴い税制執行の面でどのような対応が考えられるかという観点から行ったものであります。したがって、一般的な納税者番号制度を導入すべきかどうかという観点からの議論を行ったわけではないということをお断りしておきます。

そのうえで議論の内容についてご紹介いたしますと、まず第一に、金融資産制所得課税の一体化を行い、損益通算の範囲を拡大していけば、損と益の名寄せの必要性が高まるが、そのためには何らかの番号制度の導入を考えるべきではないかという点については、おおむね小委員会のなかではコンセンサスが出来たというふうに考えております。

2番目に付番方式ですけれども、従来、年金番号、住基コードという二つの番号を中心に議論が行われてきました。このような議論が行われてきたのは、一般的な納税者番号制度の導入ということで議論が行われてきたためですけれども、われわれのように、金融所得の一体化という当面の目的のための番号を考えるのであれば、年金番号、住基コードというこの二つの番号に特にこだわる必要はないのではないかという意見がありました。まあ、むしろこれが中心になったということです。

3番目にプライバシーとの関係ですが、これまで個人情報保護の基本法制の検討状況を見守るということでしたが、この点について昨年、個人情報保護法が成立し、また、法律を受けて本日、個人情報の保護に関する基本方針が閣議決定されております。これによって法制度上はプライバシー保護に関するOECD8原則というものが充たされているということになります。他方、個人情報保護法が民間事業者を対象として施行されるのは来年4月からということですので、それに向けた議論というのも見守っていく必要があるのではないかという意見もありました。また、税務当局におけるシステムセキュリティの話として、本年から実施されている電子申告の紹介もありました。

4番目に、金融所得課税の一体化のための番号制度ということで国民の理解を得ることがきわめて重要であるという指摘がありました。この点に関して国民の理解ということからすれば、番号を使いたくない、あるいは税務署とはかかわりたくないという人にまで番号を使用させる必要はなく、番号の使用と損益通算を投資家本人の意思に任せればよいのではないか、したがって番号利用は選択制でよいのではないかという意見が主だったものだったと思います。他方、そういう場合でも名寄せの実効性が確保されるということは必要であるという議論がありました。

5番目に、納税者番号制度については今回でひと通りの議論ができたと思いますので、今後、今回出されたさまざまな意見をもとに、金融所得の一体化についてさらに議論を深めていきたいというふうに考えています。

次回の日程は4月20日(火)午後の開催を予定しております。

以上です。

記者

名寄せの問題ですね、非常に時間的、コスト的に難しいというふうな意見とか、前あったかと思うんですけれども、その辺…。例えば預金なり、あるいは口座の名寄せにあたって、新たにシステム投資…。

奥野小委員長

システムを作ることが難しいということですか。

記者

コストがかさむかと思うのですけれども、そういった点で今日、なにか指摘はあったんでしょうか。

奥野小委員長

金融機関といいますか、金融商品については対応する機関がそういうシステムを作るために非常に多額のコストを被る可能性があるケースもあるかもしれないと、そこを考える必要があるかもしれないという指摘はありました。

記者

それで実際の問題として、2005年度の導入をめざしていかれるかと思うんですけれども、時間的な問題もあるかと思うんですが、その辺、先生、どんなふうにお考えありますでしょうか。

奥野小委員長

まあ要するに、こういう金融一体化課税をすると…今お聞きになったのは番号の話ですよね、番号がないままに名寄せをするということは、やはり非常に大きな当局側のコストがかかるので、そういう意味で番号が使えるならば出来るだけ使える方向を、まあ選択制であってよいのだと思いますけれども、少なくとも出来るところから、出来る限りで番号を使っていくということについては、コストを削減するとともに、損益通算の正確さ、真正さ、真実性、そういうものを担保するためにも出来るだけ番号を使うことが必要なのではないかというふうには思います。ただ、それがコスト的に非常に出来ない、時間的に非常に出来ないという部分があれば、それについてはやはり考えざるを得ないだろうと。ただ、そういう部分があるから番号については最初から全部あきらめてしまうということは必要ないのではないかというふうにも思います。

記者

選択制でいいのではないかという意見が主だったということなんですが、反対意見としては、じゃあ全部入れるべきだとか、逆にどういったものがあったんでしょうか。

奥野小委員長

いや、むしろほとんど一色ですね。やはり番号を入れるのに、なにか強制的に入れるというのは、全部に入れるというのは、やはりかなり無理があるという言い方の人がいた…皆さんの意見を一遍に代表してるとは思いませんけれども、むしろやはり、番号を使ってもらう以上は出来るだけ、どうしてもというか、使いたくない人はやはり使わなくてもいいという仕組みにしないと、やはりとても使ってもらえないだろうし、そのためにも出来るだけ番号を使えば、納税の利便が上がる。そういう使ってもらって、出来るだけみんながよかったと思えるような、そういう番号を設計するということが必要なのではないかというのが、もうほとんどの意見だったと。そのようなものではいけないという議論は、たしか今日は一つもなかったと思いますけれども。

記者

二つの今ある基礎年金と住基ネットのことにこだわる必要がないということなんですが、じゃあどの番号を使うんですかという話と、それともう一つ、要は選択制を選ぶときのインセンティブの方向はどんな感じになっているんでしょうか。

奥野小委員長

まあですから、一つは、二つの番号であってはいけないというわけでは必ずしもなかったと思うんですけれども、ただ、選択制にするのならば、既についている番号である必要は全然ないので、新しい番号をつけていけばいいのではないかというのが、まあ主だった意見としてあった。だからそういう意味で言いますと、その二つの番号でなければ、多分新しい…まあ税務番号という形になるのかどうか知りませんけれども、なにか新しい番号にということが、みんなが持っていたイメージだろうと思います。

2番目が何でしたでしょうか?

記者

利便性としてどういうものが…。

奥野小委員長

どういう…、何がありましたでしょうか?

(事務局)
まさに議論されている損益通算というのがまずは代表例だと思います。

奥野小委員長

まあ要するに、番号を使うことによってそういう損益通算が出来るし、場合によっては、ある種の特定口座的なものを使うと、それと番号がマッチしてるとか、まあいろんなことが考えられると思いますけども。

記者

確認ですけれども、番号を選択しなかったら損益通算を認めないというようなことではないんですね、その逆の見方からすると。

奥野小委員長

そういう議論はなかったと思いますけども、ただ、損益通算の仕組みとして、例えばひとしきり言われていたのが、例えば特定口座をもう少し拡張したような仕組み、例えばそういう仕組みが言われたわけですけれども、そういうものをうまく番号と組み合わせることによって、つまりそういうものに使われた番号を使わざるを得ないというような形でという意見が中心だと思います。

事務局

番号なしで損益通算出来るかというと、出来ません。

(以上)

金融小委員会