第6回金融小委員会 議事録

平成16年4月2日開催

委員

ただいまから第6回金融小委員会を開催いたします。

本日も財務省の政務官にご出席いただいております。よろしくお願いいたします。

まず、委員の追加についてご報告いたします。本日の委員会から、日本経済研究センター副主任研究員の白石小百合さんにご参加いただくことになりました。白石さん、よろしくお願いいたします。

白石さんは、家計の金融資産選択への税制の影響等についての研究業績もありますので、会長とご相談の上、当小委員会での議論に参加していただくこととした次第です。

なお、白石さんは近日中に専門委員に就任される予定で、現在事務手続中ですが、より多くの議論に参加いただくため、本日からご出席いただいております。

一言ご挨拶ありますか。

委員

今日から議論に参加させていただきます。議事録のほうを順番に勉強させていただいているのですが、まだ議論に追いついていないところがあるかと思います。どうぞお世話になります。よろしくお願いいたします。

委員

ありがとうございました。

次に、議事に入る前に、総務省に人事異動がありましたので、自治税務局長よりご紹介いただきます。よろしくお願いいたします。

事務局

4月1日付の人事異動で、前税務企画官の稲岡伸哉が石川県のほうに転出をいたしまして、後任といたしまして、自治財政局地方債課のほうから河野俊嗣が参りました。よろしくお願い申し上げます。

委員

よろしくお願いいたします。

本日の議題ですが、納税環境整備について議論を行いたいと存じます。金融資産性所得課税の一体化を進めていくに当たっては、適正な執行や納税者の利便性への配慮が必要であり、そのため、納税者番号制度を含めた納税環境の整備が必要であるということがこれまでも指摘されてきたところであります。

そこで、今回は、これまでの損益通算や課税方式に関する議論も踏まえながら、納税者番号制度を中心として納税環境整備の問題について議論したいと存じます。

それでは、まず、事務局から説明を受けたいと思います。お手元に一枚紙のメモが配付されていると思いますが、この紙についても説明をお願いしたいと思います。

では、事務局、お願いいたします。

事務局

お手元の「金融小6」という資料と、それから、小委員長ご紹介の一枚紙がございます。今日はパンフレットが三つほどございます。後ほど触れさせていただきます。

その前に、冊子になっています「平成16年度税制改正」、これは実はできたてでございます。これからこれで一生懸命PRしてまいりたいと思います。

さっそく中身でございますが、一枚紙と「金融小6」という資料をご覧いただければと存じます。

納税者番号制度ということで、これまでもずいぶん長きにわたってご論議賜ってきた項目でございます。この資料、目次をおくりいただきまして1ページでございます。「納税者の信頼確保に向けた基盤整備」ということで、特にここでは所得税を念頭に置きまして、タックス・コンプライアンス、税制への信頼と納税過程における法令遵守。このコンプライアンスを高めるいろいろな取り組みが必要であると。

さまざまな要素、例えばということで九つの丸が並んでおります。本日ご議論賜りますのは、色を塗っておりますが、納税者番号であり、それを載せる資料情報、こういったことについてご論議賜ればと思います。

資料の2ページ、これは何回かご覧いただいていますので、むしろ3ページで、そもそも納税者番号とは何ぞやというフローチャートでございます。

まず、一般的には付番機関が広く納税者一般に番号を付与するという[1]からスタートいたします。その上でそれを取得した個人、法人が取引の相手方、例えば金融機関等に、その番号を「私の番号はこの番号です」という告知を行う。と同時にその取引の相手方が、確かにこの人がその人であるという本人確認をするわけでございます。この取引の相手方は、こういう取引を行いましたという情報、支払調書等([4])でございますが、これを税務当局に提出する。今度、納税がございます。個人、法人が納税申告書([5])を提出する際に番号が記載される。先ほどの[4]と[5]、2か所から番号付きの情報が入ってくる。これを税務当局においてマッチングするということでございます。本人確認及びマッチングというのが納税者番号制度のコアになるわけでございます。

次の4ページでございます。「納税者番号制度に関する税制調査会のこれまでの主な考え方」ということで、中期答申まで拾ってございます。真ん中の段、「納税者番号制度の検討の必要性」ということで、従来からは適正公平な課税の実現、税務行政の効率化・高度化、こういったことが議論されてきております。

加えまして「納税者番号制度を巡る状況変化」ということで、番号利用の一般化等々、こういったことを踏まえつつ、「検討の方向性」というところをご覧いただきたいと思います。近年、特に金融資産性所得に対する課税一体化の検討を含めた金融・証券税制の構築のため、納税者番号制度の導入に向けた具体的な諸方策を検討する必要性が高まっておるということで、その上の納番の検討の必要性は、従来は適正公平な課税の実現等々、これが議論されておったわけですが、新たな切り口ということで、金融・証券税制の構築という観点が入ってきておるわけでございます。納税者一般の所得一般、こういったことを念頭にするということも踏まえつつ、まず、この金融・証券税制の構築という切り口がございますので、この金融小委員会でご論議を頂戴しておるということでございます。

二つ目の丸でございます。個人情報保護のあり方の状況を踏まえた検討が必要。官民のコスト、プライバシー保護のシステムを含めたシステムにおけるセキュリティ、こういった論点。さらには、当然のことですが、国民の理解が必要だと。

三つ目の丸でございます。また、簡素な申告手続を可能とすることを含め、番号を利用する納税者の利便性が高まるよう、制度のあり方や利用方法等々を検討することと。この番号を利用する「納税者の利便性」という言葉が入っているわけでございます。

次のページは、今簡単にご紹介申し上げました税調答申の原文でございます。

それを送りいただきまして、8ページでございます。先ほどの一枚紙に書いてございます「金融資産性所得課税の一体化における納税者番号制度の意義」というのにつながるチャートでございます。「番号を活用したマッチング」ということを副題にしておりますけれども、真ん中の丸のところ、これが金融資産性所得の源泉、例えば株の売買を行った場合の証券会社等々の金融資産性所得の源泉というのが、例えば大文字のA、B、Cというのがある。そこから金銭が支払われる。それは利益である場合もあるし、損失が出ている場合もあるということでございます。

わかりやすく極力簡単にしてございますが、例えば+a、▲b、+c、こういうものを納税者が損益通算をする。自分で計算をしてネットアウトをする。それを確定申告するということで、一番下の税務当局に申告が行われるわけでございます。

この図で見ていただきまして、例えば下半分のマッチングが存在しないということを想定いたします。そうした場合には、例えば支払調書だけが税務当局に行きますが、源泉徴収がなされていないものも現在あるわけでございます。例えば特定口座外の株のキャピタルゲイン・ロス、こういったものは支払調書は出ておりますが、源泉徴収は行われていない。こういったものもございます。そういったものも含めて益の一部を隠す、あるいは過小申告、こういうことをやる人も出てくるであろう。損だけを申告する。源泉徴収税額の還付。損だけを申告して、すでに源泉徴収されている税額があれば、そこから返してほしいと、こういうことを求めるということになるわけでございます。さらに、損失を実際よりも過大に申告したり、源泉徴収税額を過大に申告したり、こういったいわゆる不正が行われる可能性もあるわけでございます。

そういったことを念頭に置きまして、個々の納税者の損、それから益、これを正確に把握しておく必要があるということになるわけでございます。そのため、先ほど申しました取引時の本人確認というのがまず必要でございます。取引が真正な正しい名義で行われているということを担保する。例えばこの図でいいますと、Cとの取引が例えばほかの名義で行われておって申告されない、支払調書も全然違う名前で行われる、こういったことを防止する必要がございます。本人確認という段取りがまず必要である。

それから、真正な名義で行われた取引の支払調書が金融機関から税務署に提出される。納税者の提出した申告書の内容とマッチングする。先ほど申し上げた確定申告、一番真ん中の太い矢印、この内容とそれぞれ支払調書等の形でA、B、Cから税務当局に送られてきたこの情報、これをマッチングするということが必要になってくるわけでございます。

現在の制度におきましては、この番号がないわけでございます。また、利子につきましては、ご案内のように源泉徴収だけが行われます。支払調書というのはないわけでございます。それから、配当につきましては、小額配当以外のものについては、一番左の欄、源泉徴収も行われますし、支払調書も送られる。ただ、小額配当はこの支払調書というのはございません。株のキャピタルゲインは、源泉徴収選択の特定口座の場合は、源泉徴収のみが行われております。年間取引報告書というものは税務当局には送られてこない。情報というのは税務当局には来ていないということになるわけでございます。

この2か所、納税者からの情報、すなわち確定申告とそれぞれの金融資産性所得の源泉からの情報、これを税務当局において正確かつ効率的にマッチングする。これが金融資産性所得課税の一体化における番号制度のイメージでございます。

次に、一枚紙で申しますと「付番方式」でございます。資料でいいますと9ページでございます。これもかねてからいろいろご議論を賜りました。広く一般の納税者を念頭に置いておりましたので、今までは基礎年金番号と住民票コード、この二つの番号についてのご論議がいろいろございました。

10ページ、さらに11ページをご覧いただきたいと思います。「納税者番号として検討する場合の個人付番方式の比較」ということで、これは前々回の平成12年の中期答申ですが、そこで年金番号方式、いわゆる基礎年金番号と住民基本台帳方式(住民票コード)、これのメリット・デメリットがそれぞれ記載されております。それをまとめたのがこの表でございます。

年金番号につきましては、メリットとして、受益を伴う行政分野で利用される。ですから、国民にも受け入れられるのではないかと。さらに、基礎年金番号の民間利用については規制がない。民間利用してはいけないということにはなっていない。しかし、片や民間における個人情報保護の問題が出てくる。この個人情報保護の問題は後ほどご説明したいと思います。

デメリットといたしましては、例えば二重付番、付番漏れが生じることがあるというような問題。さらには、基礎年金番号については、法律上の根拠が現在ございません。厚生労働省の省令で規定をされているという問題が指摘されております。

片や住民票コードでございます。外国人を除く居住者すべてが対象となっているということで、住所異動を正確に把握できる。それから、法律上の根拠があるということがございます。

デメリットといたしましては、住民票コードの民間利用が、現在、その上に書いております住民基本台帳法で禁止をされておるということがございます。先ほど申しましたように、例えば取引の相手方、金融機関等でございますが、民間がこの番号を使うというのが納番のコアになるわけで、現時点ではこの民間利用禁止というのが一番大きなハードルになってございます。いずれにいたしましても、次の黒丸ですが、住民票コードについては、今後の整備、定着・活用の状況を十分見なければいけないということでございます。

1ページ戻っていただいて10ページでございます。住民基本台帳ネットワーク、右下の最近の動きということでございます。昨年の8月に、我々二次稼動と呼んでおりますが、住民基本台帳カードを発行するというようなこと、さらには利用対象範囲をパスポートの交付手続き等々、行政の分野で使える範囲が格段に大きくなっておるということでございます。

それに加えまして、また後ほどご紹介いたしますが、「公的個人認証サービス」という小さいパンフレットでございます。電子署名、電子証明書、電子認証というのが電子社会において必要だということで、ある意味では印鑑証明のようなものでございますが、そのサービスもこの二次稼動で始まっております。

12ページでございます。諸外国では付番をどうしているかということで、これも何回かご紹介したものでございます。アメリカ、カナダは社会保障番号を使っております。デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、韓国、シンガポールは個人の登録、我が国でいうと住民票番号のようなものでございます。さらに、イタリアとオーストラリア、これはどちらでもないということで、ある種税務番号を使っているものでございます。

ご参考までに、一番最後の40ページ、オーストラリアの導入に関わる経緯でございます。オーストラリアにおきましても、各行政分野でばらばらの行政番号があったのですが、それを1986年、オーストラリアカード、ACというものを導入したいということで、政府としてはチャレンジをいたしました。しかし、その結果、プライバシー侵害に対する懸念等を理由に否決されてしまった。何回かチャレンジしたのですが、結局だめということで、1988年、このオーストラリアカードという発想にかえまして、TFN(Tax File Numbers)、ある意味では税務整理番号でございます。これをプライバシー法案と同時に出して、ようやく通ったということでございます。税務当局において整理番号として使っておったタックス・ファイル・ナンバー、これを納番に使うというふうになったわけでございます。その後、1989年に納税者の選択により納税者番号を付番するというようなことになっております。

12ページに戻っていただきまして、このように納税者一般、さらに、例えば給与所得なども含めてこの対象にするということを念頭に、社会保障番号、住民登録番号、こういったものが各国においては議論をされて、導入をされておるということでございます。

次のポイントは、この一枚紙でいいますと真ん中あたり、プライバシーの問題でございます。納番につきましては、やはりこのプライバシーの問題というのが一番議論の対象に今まではなっております。これも13ページに平成12年中期答申の抜粋をご用意しております。このプライバシーの保護と一言でいいましても、実は三つのフェイズ、局面に整理できるのではないかということで、[1]、[2]、[3]という整理がございます。

一つ目が「納税者と税務当局間のプライバシーの問題」。納税者が税務当局に対して、これはプライバシーだからこの数字は出せないと、こういうことは言えませんよということがここに書いてございます。基本的には納税者と税務当局間にプライバシーの問題が新たに生じるわけではないということでございます。

二つ目でございますが、「税務当局が納税者番号を用いて収集した税務データへの他の行政当局からのアクセスの問題」があります。ここに書いてございますのは、例えば、個人情報ファイルの目的外使用に関する規制といったものがある。いずれにせよ、税務職員の守秘義務の問題になる。さらに、後ほどまた電子申告の例でご紹介いたしますが、税務データへの不正アクセス防止、こういったものをしなければいけない。いわゆるシステム・セキュリティの問題があるということでございます。

さらに三つ目でございますが、資料情報提出義務者、いわゆる取引の相手方等でございますが、こういった人たちが知り得た納税者の個人情報、いわゆる民間サイドの機密の保持という問題があるわけでございます。これは平成12年に書かれた文章でございますので、「現在」と書いてございますが、個人情報保護の基本法制の検討を含めた取り組み、これはこの後すぐ現状をご報告申し上げたいと思います。個人情報保護の仕組みというのが、この民間の機密保持については議論があるということでございます。

14ページでございます。今申し上げた「個人情報保護法制の体系イメージ」ということでございます。現在、個人情報保護法という法律、それから、下のピラミッドでいうと右下でございます。国についての行政機関の保有する個人情報保護に関する法律、独立行政法人等の保有する個人情報保護に関する法律、それから、地方公共団体がそれぞれ条例でこの個人情報保護法制というのがあるということでございます。

基本となるこの個人情報保護法、これが右下半分を除いた部分のところでございます。大きく分けまして基本原則、基本理念を述べたところ、ピラミッドの上半分でございます。その下に民間について個人情報取扱事業者の義務というものが入ってございます。公的部門については、先ほど申し上げたように、個々の法律で定められておるということでございます。

現在、この基本法制の頭の部分、基本的な考え方の部分については、すでに施行がされております。ここに書いてございます基本方針の策定というのを踏まえまして、後ほど図でご説明いたしますが、平成17年、来年の4月1日にこの個人情報取扱事業者の義務と国、行政機関、この三つの法律の適用が始まるという段取りになっております。

ここでまずご紹介しなければいけないのは、個人情報取扱事業者の義務等となっております。最近いくつか事件がございました。それぞれの漏洩をした人に対する法制というのは、むしろ今の一般的な刑法の世界になります。この法律で定めておりますのは、その管理体制、これをしっかりしたものにしなければいけないと。

具体的な中身でございますが、次の15ページでございます。「個人情報の保護に関する法律」ということで、総則、それから国・地方の責務等ということで、第3章、左下でございますが、個人情報の保護に関する基本方針を定めなければならないということで、これは後ほどすぐご紹介したいと思います。たまたまでございますが、本日朝の閣議でこの基本方針というのが閣議決定されております。

こういったものを踏まえて、右でございます。「第4章 個人情報取扱事業者の義務等」ということで、事業者自身の義務というのが定められておるわけでございます。それに対する罰則といったものも規定されておるわけでございます。この中身につきましては、OECD8原則というのがございますので、そのところでご紹介いたしたいと思います。

さらに次の16ページ、先ほど申し上げた国、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」。これにつきましても、国の義務、この場合は守秘義務の行政職員です。公務員自身の罰則、こういったものも規定をされております。

18ページでございます。今ちょっと申しましたが、OECD8原則というのがこの個人情報保護の体系の中でよく引き合いに出されます。各国ともOECD8原則にコンプライアンスするようにそれぞれの法制を進めてきておるということでございます。

8原則は、上から、「目的明確化の原則」、「利用制限の原則」。特に利用制限でございますが、右でいいますと、これが我が国の個人情報保護法の条文でございますが、それぞれ第16条で利用目的以外、必要な範囲を超えて取扱ってはならない。それから、本人の同意を得ずに第三者に提供してはならない。こういったことが書かれております。

それから、「収集制限の原則」。これは不正な手段で取ってはいけないと。それから、「データ内容の原則」、「安全保護の原則」。この安全保護の原則というところで安全管理のために必要な措置を事業者自身がとらなければいけないと。それから、従業者・委託先に対する必要な監督、これもその事業者自身がしなければいけないということでございます。

それから、「公開の原則」、「個人参加の原則」、「責任の原則」。苦情の適切かつ迅速な処理、こういったことをしなければいけないと、このようなことが個人情報保護法に書かれてございます。

先ほどの本人の同意を得ずに第三者に提供してはならないという利用制限の原則でございます。それにつきまして19ページでございます。これは我が国の個人情報保護法に書いてあるのですが、基本的には本人の同意が必要ということは当然でございます。これはあるわけですが、例外がございまして、その下の矢印、真ん中の矢印でございますが、[1]、[2]、[3]ということで、[4]に国等に協力する場合ということで、税務調査に協力する場合には、先ほど申し上げた本人の同意がなくてもできるとなっておるわけでございます。

20ページでございます。施行に向けたスケジュールということで、平成15年5月30日に公布・施行、先ほど申し上げたピラミッドの一番上の部分、これについては施行がされておりますが、基本方針を策定し、これが16年春頃となっておりますが、今日(4月2日)閣議決定が行われております。これを踏まえまして、各省庁がいろいろなガイドラインを作る。そういったものを踏まえて来年の4月1日に具体的な個人情報取扱事業者の義務等の適用が開始する。このようになっておるわけでございます。

その基本方針案の概要というのが21ページにございます。いろいろ書いてございますが、右のほうの6のところに、「個人情報取扱事業者が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する基本的な事項」ということで、「責任体制の確保」というのが[2]にございます。それぞれの事案、実は外からのハッカー等の事案ではございません。むしろ当該内部の人、ないしはOB、やめた人、そこから漏れてしまったというケースでございます。このような外からのハッキングについては不正アクセス防止法という別途刑事法がございます。この個人情報保護法で対象にしていますのは、責任体制の確保、そういう内部の人が持ち出すようなことのないように、適切に管理体制をとれと。データに対するアクセス権者、こういったものを明確に限定し、それが適切に履行されているかどうかということをしっかりフォローするようにと、こういう責任体制の確保がメインになるわけでございます。

これは各業態に応じてそれぞれ実態が違うであろうということで、左側に戻りますが、「国が講ずべき個人情報の保護のための措置に関する事項」にございます。そこに「(事業分野ごとの方針)」というものが真ん中あたりにございます。法律が各分野に共通する必要最小限のことしか書いていないので、それぞれ事業等の分野の実情に応じたガイドライン等の策定・見直しが必要であると。

その下でございます。特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野ということで、その例を、括弧書きでございますが、医療、金融・信用、情報通信、これは各分野ごとに早急に検討し、法の全面施行までに一定の結論を得るようにと、このようになっております。現在、我々が議論しております金融関係の番号に関しては、金融・信用、この分野における個人情報保護の問題になるわけでございます。

次の22ページでございます。米国におけるプライバシー保護の取組みということで、一般的なプライバシー法でありますとか、SSN、先ほど申し上げしたSocial Security Number、これの社会保障法上の保護。これも罰則がございます。さらに、税務におけるプライバシー保護ということで、1976年の税制改革法、ここで守秘義務違反は5,000ドル以下の罰金もしくは5年以下の禁錮またはこれらの併科がなされる。

ちなみに、日本の税法の守秘義務違反は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金となっております。

さらに、先ほどの行政機関の個人情報保護法でございます。そこの守秘義務違反としては、2年は同じでございますが、100万円以下になっております。

次に、電子申告、これを例にセキュリティがどのように取り組まれているかというPRをいたしたいと思います。これにつきましては、「国税の電子申告・納税等がご利用いただけます」というパンフレットもございます。

23ページでございます。まず、e‐Taxというふうに名前をつけておりますが、これを使い始めるためにはどうするかということで、手続の概要というところでございます。このe‐Taxを利用したいということで書類を提出して、税務署から利用者識別番号というものが出されます。これは右下の注1でございます。利用者識別番号はe‐Taxで使用するIDということで、16桁の番号になっております。それをもらった利用者・納税者は、それを踏まえて暗証番号の変更。暗証番号というものは税務署から送られてくるのですが、それを本人が自分の好きな番号に変更する。これはいわゆるパスワードでございます。さらに、電子証明書等の登録を行うということでございます。電子証明書というのは、ある種印鑑、さらには印鑑証明に当たるものでございます。これにつきましては、先ほどちょっと触れましたが、二次稼動に伴いまして、住民基本台帳ネットワークにおいても、公的個人認証サービスというものが、民間でもこういうサービスを行っているのですが、安い費用により基本的に全国共通の制度で行われておるということでございます。

次に、24ページでございます。e‐Taxを利用した申告ということでございます。まさにe‐Taxソフトというのが送られてきておるわけですが、それをパソコンにインストールいたしまして、パソコンに申告等のデータを入れ込む。申告データに先ほど申し上げた電子署名、それから電子証明書を添付して送信をする。この電子署名及び電子証明書、この辺がセキュリティの一つのコアになっております。

25ページでございます。e‐Taxのセキュリティ対策ということでございます。このe‐Taxを安心してご利用していただけるようにということで、次のようなセキュリティを確保しておるということでございます。

まず、先ほど申し上げた利用者識別番号、暗証番号、こういったものがございます。それに加えて電子署名、電子証明書。印鑑ないし印鑑証明に当たるものでございますが、この添付によって改ざんが検知できる。この電子証明等がついていないと、暗号化された部分がデコードされないという形になっております。ということで、これを使わない受付サーバーへのアクセスは、はじかれることになっているわけでございます。

それから、右下にファイアウォールと書いてございますが、いわゆるブロックするものです。不正なアクセスがあった場合には、極力この手前ではじくと。仮にこれをすり抜けたものがあっても、アクセス監視システムというものがございまして、これでもう一度チェックをするということになっております。それから、ウィルスが入り込まないように、これは毎日ウィルスチェックを実施しておるということでございます。

ということで外からのアタックについては、万全な体制をとっている。民間の方、いわゆる第三者がこれにアクセスするというのは、少なくともテクニカルにはできないことでございます。アクセスをできる中にいる人、これはいわゆる守秘義務であり、そういう問題になるわけでございますが、このアクセスすることのできる人は、限定をしておるということでございます。

繰り返しになりますが、このセキュリティは一般的に何となくイメージとして不安だということなのですけれども、問題を分解していきますと、外にいる番号を知っている民間の人、民間の事業者、その人がどのようにセキュリティを守るかというのは、個人情報保護法の体系でやる。それから、サーバーにあるこのデータに対するアクセスは、不正アクセス防止法というものでこれをチェックする。さらにe‐Taxの中にいる人については守秘義務でチェックする。このようになっておるわけでございます。

次に、一枚紙でいきますと、「国民の理解」というところでございます。もう20年近く前になってしまいますが、グリーンカードについてのいろいろな経緯がございました。制度の趣旨としましては、非課税貯蓄及び課税貯蓄の双方を通ずる本人確認、名寄せをしたいということでございます。この利子課税につきましては、いわゆる総合課税化がどうかという議論が昭和50年代半ばまでずっと続けられておったわけでございます。それに対する解決策という位置付けで、非課税限度を適切に確認する、適正な管理をする、それを超えた分については総合課税をする、こういう制度のもとでこのグリーンカードというものが導入をされました。

経緯は27ページでございます。54年に特別部会が税調に置かれまして、55年に法律が出されました。成立したのですが、いろいろな経緯をたどりまして、適用が延長され、最後は昭和60年、廃止をするということになったわけでございます。

この背景でございますが、やはり法律ができてからいろいろな声が各方面から出てきたということでございます。例えば、当時いろいろ出ておった議論を整理いたしますと、やはり付番されることに対する心理的な不安、抵抗感というものがあったと言われております。国民の資産が一元的に国によって管理されるのではないかという、そういった何ともいえない不安感でございます。

さらに、元本が他に知られてしまう。この辺につきましては、中小企業者等々の不安、抵抗が極めて強かった。これがある意味では政治的な動きにもつながっていったかということでございます。

さらに、国民や金融機関の負担が大きいというコストの問題が出ておったわけでございます。

さらに、先ほど申し上げたように、この非課税限度を超える分については総合課税という制度、これがセットだったものですから、利子に対する税負担の増大、こういう批判もあった。

さらには、マクロ経済的に資金シフト、国民の貯蓄意欲の減退、こういったものにつながるのではないかと、いろいろなご議論がございまして、諸事情ということになるわけでございますが、最終的には法律は成立したのですが、廃止されたということになったわけでございます。

こういう経験を我が国は持っておるわけでございます。そういった経験も踏まえつつ、「納税者の利便性」、一枚紙でいいますと「国民の懸念」の下に書いてございますが、先ほど申し上げたごく直近の税制調査会の答申におきましては、納税者の利便性という新しい要素も記入されておるわけでございます。

例えばということで、これもちょっと飛びますが、スウェーデンの例、36ページでございます。フローチャートが書いてございますが、スウェーデンにおきましては、上の金融機関等というところから、いろいろな法定調書が送られてくる。これは税務局に送られてくるわけでございます。この複数の収入源からの収入を実は税務当局が合算をするということをいたしております。その結果を、この申告でよろしいですかということで納税者に納税申告書を送ります。これでいいですよということになった場合、これは納税者にもいろいろなところからのデータが行きますので、納税者でマッチングをする。これでいいですよということになれば、実は電話で、「送ってもらったやつで結構です」ということで申告が終わる。こういう制度がスウェーデンにはございます。

いずれにせよ、現在、金融資産性所得課税の一体化というコンテクストでご論議を賜っておるわけでございますが、「納税者の利便性」というものを新しいキーワードに加えていただいているということでございます。

一枚紙の「その他の留意点」ということでございます。実効性の確保、それから官民のコスト負担への配慮ということで、例えばコストの問題も大きな問題でございます。資料の28ページでございますが、ここに書いてございますように、いろいろなところでコストが発生する。これをどのように考えるかと。特に幅広い範囲でいろいろな調書をまとめなければいけない、提出してもらわなければいけないとなりますと、当然でございますが、このコストは大きくなるということになるわけでございます。

また、実効性の確保ということでございますが、例えば、どうしても損益通算をするということで番号をもらう。その番号を全部の取引に使ってもらわなければいけないわけでございますが、すなわち、得が出ていそうなところには番号を使わないというようなことが起こり得るとすれば、せっかく仕組んだマッチングシステムがうまく機能しないという問題もございます。

さらに、一番頭が痛いのは、三つ目でございますが、税務署と関わりたくないという心理、あまりにも率直すぎる書き方でございますけれども、例えば株のキャピタルゲインの課税につきましては、特定口座というものが導入されております。これは年間取引報告書、いわゆる法定調書でございますが、これは税務当局には来ないようにしておるわけでございます。基本的には税務署と納税者の間には接点がないわけでございます。

損益通算をしてもらう際には、先ほど申し上げた8ページの流れ、例のイメージ図ですが、あれをご想起願えればと思いますが、税務署にマッチングのための支払調書が提出されているということが必要になってくるわけでございます。この特定口座、税務署に対する匿名性のようなものと、この損益通算、ある種どちらを選ぶかのような話になるのかもしれませんが、こういった問題がどうしても出てくる。

情報申告書は日本におきましては30ページです。所得課税に関するものということで、利子、配当、収益の分配、この辺が一般的な狭い意味における金融資産性所得に関するもの。現在はこういう支払調書が提出されております。

さらに、31ページ以降には、アメリカの場合のマッチング項目、すなわちこれだけの書類が出ているというのをご参考まで添付しております。

以上でございます。

委員

それでは、今のご説明を踏まえて、これからの時間では一枚紙にあるような項目等について、自由にご質問やご意見をいただきたいと思います。どうぞ、皆様、何でも結構です。

委員

大変なことだと思いますけれども、ちょっと教えていただきたいのは、21ページの個人情報の保護に関する基本方針案の概要の2のうち、(事業分野ごとの方針)の二つ目で、「特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある分野については、格別の措置を各分野(医療、金融・信用、情報通信等)ごとに早急に検討し、法の全面施行までに、一定の結論」と出ています。金融はここでやるというご説明でしたが、あと医療あるいは情報通信なども、今のシステムの問題もありますけれども、非常に関連してくるのですが、これらはそれぞれどういうところで、どのようにしてやるのか、その辺を教えていただきたいと思います。

事務局

先ほど申しましたように、平成17年、来年の4月1日まで1年間あるわけでございます。これは各所管省庁、すなわち医療については厚生労働省、それから情報通信におきましては、それぞれの所管省庁が行う。金融については金融庁が仕切っていかなければいけないと、このようになっております。

委員

情報通信という場合も、総務省と経済産業省が分かれている問題があります。その辺はどういうふうな格好ですか。

事務局

つまびらかには私存じ上げません。それぞれの所管するところをやっておるという言い方しかできません。

委員

総務省側でご存じですか。

事務局

個別分野はいろいろと取り決めがございますが、もし仮に法律ということになるとすれば、法律自体は内閣でまとめて出してということで、共管とか分野調整があると思います。

それから、個々のガイドライン等も、今は特に齟齬がないように官邸のほうからも言われていますので、そこはこれからのことになりますけれども、十分その辺を酌んで進められると思います。

なお、参考までに申し上げますと、この議論は平成11年の時に、住民基本台帳法の審議の中で個人情報保護の関係が出てまいりまして、当時、こういった個別の法律整備が先ではないかというご議論もあったのですが、今ご説明いただいたような全体をかぶる総体の法律が先行して、そういう意味で個別の分野で対応する部分がこういう形でいろいろな対応として残っている。そういうような過去、進展の経緯がございます。

委員

委員のご質問の趣旨は、金融庁と財務省とのとか、そういうことではないのですか。

委員

若干そこもあります。実は金融庁も、新聞によると新しいチームができて、堀内教授が座長でやるというようなお話がありますので、その辺は今後どういうことになっているのかと。おそらくここには金融庁の人は一人も入っていないわけですよね。その辺を含めまして……。

委員

やることになれば、金融庁とある程度協力して何か法整備を行うという、そういうことになるということでしょうか。

事務局

もちろん、何らの番号制度、これが個人情報制度の中でどういう位置付けになるかということだと思います。一般的な場合、それから、番号に関わるいろいろなプラスアルファのセキュリティの問題、これは二通りあると思います。一般的な個人情報の問題、さらに、仮に番号を入れるとすれば、その番号に関わる例えば重めの罰則とか、そういったことはあり得ると思います。

委員

一つ教えていただきたいのですが、12ページに「主要国における納税者番号制度の概要」というのがございます。これは番号制度を導入している国について書いてあるわけですけれども、例えばここに書いていない国、ドイツですとか、フランスですとか、イギリス、こういった国では納税者番号制度がないと聞いておりますし、特にドイツだったと思いますが、一度導入しようとして反対があって、導入できなかったということを聞いたのですけれども、その理由はどういうことだったかというのをお聞きしたいのが一つ。

もう一つは、今日の一枚紙の最初に、金融資産性所得課税の一体化、あるいは損益通算ということだと思いますが、そのために納税者番号制度が必要だという議論だと思います。以前いただいた資料では、例えば、これもドイツだったと記憶していますが、損益通算に対する制限というのでしょうか、これは通算できないという制限が少なかったように記憶しているのですけれども、だとすると、納税者番号制度がないけれども、損益通算の範囲は広くとっているということになりますから、では、何で番号制度がないのだけれどもそういうことができているのか、あるいは、制度としてはそうなっているけど、それはうまくワークしていないということなのか、その辺、ちょっと基本的なことで恥ずかしいのですけれども、教えていただきたいということでございます。質問でございます。

委員

大変重要な、多分、委員全員が関心を持っている点だと思いますが、もし事務局のほうでおわかりになりましたら、お答えいただきたいのですが。

事務局

宿題として受けとめさせていただき、次回、ご説明いたしたいと思いますが、今私が記憶する範囲では、やはりプライバシーの問題というのが一番大きかったというのを覚えております。

さらに、それぞれの各国の課税方式でございます。これにつきましては、例えばドイツのような国は、そもそも譲渡益課税というのを原則やっていない。投機的なものだけを課税する。こういう限定的な課税の世界でございます。いずれにしましても、番号があることによって、効率的かつ正確なマッチングが可能になるという事実自体は変わらないのだと、このように思っております。もう少し諸外国の経緯は調べさせていただきたいと思います。

委員

昔の話で、今そのまま通用しているかわからないのですが、私、過去3回この納番の調査に参加しておりまして、ドイツとかイギリスも行って聞いたのですが、典型的にはイギリスです。本音と建前がきれいに分かれていまして、キャピタルゲインを総合課税でやるという建前でやっていますよね。それで、「番号がなくてどうやってやるの」と言ったら、「紳士の国だからそういうことはなくて、ちゃんと申告ベースでできるのだ」というようなことをしらっと言うわけです。そんなこと誰も信用しないですよね。

また、僕の仲間に株をやっているやつがいるから、「おまえ、申告しているか」と言ったら、「そんなことするはずない」というのがまた片やあるわけですよ。だから、それがどこまで証拠があるかわからないけど、番号がなければ、性善説に立って申告に依存するということを表立って言うしかないのでしょうね。多分そういうことがやられていて、しかし、それを突破するだけ、番号を入れるだけの勇気もまたないのでしょうな。というにらみ合いだと思います。

委員

今の件、事務局にはぜひ次回までにもう少し詳しい情報がわかれば、よろしくお願いいたします。

委員

納税者番号ということで統一的にどうのこうのということとは別に、例えば付加価値税の事業者番号とか、金融所得とは関係ないわけですけれども、そういうものはフランスでもあるのだろうと思います。なければインボイス方式が機能しないですから、かなりそちらはシビアになっているのではないかと思います。

それから、イギリスですけれども、記憶がはっきりしないのですが、『エコノミスト』誌の2~3週間前の記事がございまして、イギリスでは、これは納税者番号とは直接は違う話なのですけれども、課税逃れ商品に対して否認をするということに関して、裁判所のほうでのいろいろな問題があって、否認で対応するということを諦めたわけではないのですが、それとは別にアメリカ型の、節税商品等を買う場合には全部届け出ろ、届け出ない場合には重いペナルティーだというような方向への転換を図りつつあるというような、そういうイギリスのインランドレベニューの報告書が出たのか何なのか、ちょっと今記憶が定かではないのですが、そういう動きがありますので、どの国も同じ納税者番号というイメージで比べるよりは、いろいろな制度があって、何もなしに丸裸でやっているはずはないので、どの範囲を納税者番号というようなことでとらえるかという概念規定の問題がかなり効いてくるのではないでしょうか。あまり余計なことを言ってはあれですが、簡単に、例えばある種の調査機関の調査みたいに、この国ではこうでというように、そう単純に比較できないところがこの問題の難しさではないかと思います。

委員

まだ利便性等についてはこれから議論があると思うのですけれども。

本質的なこと過ぎるかもしれないのですけど、先ほど、他のいろいろな番号とか、あるいは他の省庁の検討とのすり合わせが出たのですけど、12ページの各国の表を見ても、大きな意味では利便性とか、あるいは省庁間の関連とか、そこに関わってくるのですけど、今、日本の番号を考える時に、社会保険庁との関係をどうするかというのは、最大問題の一つで、非常に大き過ぎる問題かもしれないのですけれども、卑近なことを考えても、国民年金の保険料を払ったか、払わないかというのを今賑やかにやっていますけど、社会保険料控除は所得税でしていたけど、実際は保険料を払っていなかったと。それは統合していないからわからないわけですよね。税務署のほうは社会保険料控除されている。これは実際払ったかどうかというのは、今度は社会保険庁へ行かなければわからないわけですよね。

それから、国民年金の保険料を払っているかどうか。では所得を調べようといった時に、国民年金を払っていない人の所得を調べることがいいのかどうか、一律に払うことになっているわけだから、それはわかりませんけど、社会保険庁が国民年金の保険料を仮に払っていない人を、いくら所得があるのか調べようと思ったら、それはわからない。市町村に行って聞くとか、国税しかない。

この辺のことを言い出すと、介護保険からあらゆるものが絡んできて、各国のどれを見ても、納税者番号をつけるということは、やはり社会保険との関連があるから意味があるわけだと思います。ただ、これを税調の場でこの議論を持ち込むのがどれだけふさわしいかわかりませんけど、やはり高齢化社会だ、年金だ、医療だ、介護だと言っている時に、社会保険庁の業務とこれからの納税者番号をずっとセパレートで議論し続けることが可能なのか、そんな国があるのか、これだけ高齢化になってあり得るのか、というのが私は非常に大きな問題だと思い続けています。

それから、利便性に関しては違うことになるのですけれども、二つあって、もし最後にご説明のあったスウェーデン的なことまでやるなら、それは大変利便的であろうと。税務署はすなわちここまでわかっているということを宣言するわけですよね。ここまでわかってOKならばいいということで、ある意味で、税務当局のほうが手の内を全部示してくれているわけで、ここでいいなら済むというようなことでやるならおもしろいし、あともう一つそれに加えるに、納税者番号を強制的ではなくて選択的にすることもあり得るのかというのが議題だと思います。

そういう意味で、私自身は、金融一元化の話もしてきて、機は非常に熟しているのだろうなと。その利便性はさらにきちんと納税者に説明できる。ただ、その時に大きな問題は、さっきから十分承知しているのですけど、社会保険庁との問題をこのままずっと触れないでこの議論ができるのかというのは、疑問視しています。

事務局

米国の情報申告書等の流れというのが34ページにございます。米国におきましては、一番下のほうでございますが、W-2という法定調書がございます。これは雇用主がまず社会保障庁に提出します。それを内国歳入庁(IRS)とデータを共有する、連携をしておると、このような情報の流れになっておるわけでございます。新聞等でお読みになった方もいらっしゃると思いますが、未納者対策の関係で、国税庁、それから市町村の税務当局、さらに社会保険庁、この間の情報の連携をより一層強化しようということで、現在細目を詰めておると。組織論は私は何も言える立場にございませんが、いずれにしましても、アメリカにおきましても、IRSとSSAという二つの組織の間で緊密な連絡が行われておるということでございます。

いずれにしましても、雇用主から所得情報が社保庁に行くようになっているわけですが、日本での状況はこうではない。さらに、ここで今ご審議賜っている金融所得一体化のための番号制度というのからすると、ディメンションが若干違うのかなという気もいたします。

委員

むしろ委員にもう一つお聞きしたいのは、長期的に考えた時に、委員がおっしゃられることは、当然、私なんかも非常にシンパシーを感じるのですけれども、今我々がやっているのは金融一体化課税、そのためにいろいろな仕組みを国民のためにできるだけ早く作っていきたいと考えている時に、ひょっとしたら、そういうことを考えるならば、別のやり方も当面あり得るのかもしれないというふうにも思わなくはないのですけど、そこら辺はどうですか。

委員

もちろんそういうことは理解して発言はしているのですけども、ただ、私の言った点を認識した上でやるというのは非常に重要だろうと。

もう一つ議論しているのは、社会保険の場合には個々人の生涯のデータが入るわけですよね。そこはまた税とも切り離せないし、話すと長いことになるのでこれ以上しませんけど、多かれ少なかれこの問題は避けられない。

あと、最後のアメリカの例は、ペイロール・タックスで取っているわけだから、当然これはもう内国歳入庁が関与するに決まっていて、そこも関係してくるわけです。だから、税調の今回の議論のある意味で土俵は、そこは理解してはっきりさせようというスタンスならスタンスで、はっきりすればいいと思います。

委員

そうなんですよね。社会保険料を社会保険税の形で国税が徴収していれば、それはある意味当たり前の話になってきますから、どこの社会保険料をどこの機関が徴収しているのかという手続的な問題は、この納税者番号との関係では避けて通れないということがございますよね。

それだけではなくて、例えばここの1ページ目の表などでは、そのための表なのですから当たり前ですが、情報収集に主眼を置いた図になっています。国税の組織自体もそうですが、調査というのと徴収というのは、税の二つの大きなもので、他にもいろいろありますが、調査と徴収とがあるわけで、調査ができても取れないというのは、日本の社会保険庁が最も……情報は持っていても取れていないのですから、情報だけ持っていても取れないことはいくらでもあるわけですよね。ですから、情報を集めるということと同時に、源泉徴収の強化とか、あるいはその他いろいろな徴収手段の強化というのを入れておきませんと、番号が入っただけという、それよりはずいぶんいくと思うのですが、国税が情報を把握していても、払ってくれない人が出てくる、というようなことになってしまってはいけないので、徴収のほうのことを、社会保険も込みでですが、もうちょっと一緒に考えていく必要があるのではないかと思います。

委員

どういう番号を振るかとか、そういう問題については、この所得税の問題だけではなくて、もっとすごく広い範囲に関わる問題だと思うのです。一番重要なのは、本人確認のプロセスをどういうふうにやるかということですし、利便性を高めるということは、やはり徴税のコストを下げるということとセットになっていないとあまり意味がないわけで、これは国際的にもOECDでIT技術を使って効率的な徴税執行を行うシステムを検討していて、技術的徴税メカニズムTTCM(Technical Tax Collection Mechanism)というものの検討を進めているわけです。国際的に同じようなことが動いていますし、例えばVITとか州際取引における小売税みたいに直接取り入れないところについては、トラスティッド・サードパーティーというような納税者の第三者に、民間に委託して徴税させるというシステムまでできているような環境がありますので、そういう時にもやはり本人確認というのは非常に重要になるし、これを違うシステムでダブって作るのはものすごいコストだと思います。それが将来的には統一的に、精度の高い個人認証システムが使えるようになるということを視野に置いておく必要があるのではないかと思いますけど、つまり同じ個人認証システムですよね。これは技術がどんどん進んでいるので、パスワードだけではなくて、声帯を使った認証システムとか、目とか手の血管の形とかいろいろ今は非常に進歩しているようですから、そういうのが共通に使えるようなことを視野に置いておく必要があるのではないかと思います。例えば民間業者が提供する個人認証サービスというのは今後出てくると思いますけれども、逆にそれを課税当局が納税者の特定に使っていいのかどうかということを検討する余地もあるのではないかなと思います。

今、利便性といっても、今回の納税システム、電子申告は、今ご説明があったように、英大文字と英小文字と数字を3つ必ず用いた8桁から50桁以内のパスワードということですが、これもかなり複雑だろうと思います。その辺をうまく利便性を高めるようなシステムを作っていかなければいけないのではないかと思うのです。それがどれぐらいのコストがかかるのかということを定量的にかなり詰めておかないと、膨大なコストになったらほとんど意味がないわけですし、もしそれで大幅なコスト減が実現できるのならば、その電子申告の普及を促進するための一定のインセンティブ、特別控除など、その範囲で考えるということもできるでしょうから、技術的にはその辺を詰めていく必要があるのではないかなと思います。将来の、どこまでの範囲をカバーするということを視野に入れてやるのかということですけど、あまり狭い分野だけでやっていると、かえってコストが高くついて、また技術が進歩すると、それを全部やり直さなければいけないというようなことになってくると、これは大変なことになるという心配です。

委員

我々、今、金融所得の一元化で納番と言われているわけですが、その場合の納番と、今お三方から相次いで発言がありましたもうちょっと幅広い番号とは、どうも発想が違うんですね。金融所得の番号だけだと、まさに税務整理番号ぐらいで、希望者だけメリットを与えてやれば導入可能で、これは比較的日本型に利用が可能だと思います。ところが、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーみたいに社会保障まで広げて、かつ、今委員が言ったように、先の先まで見て大きいものを作ろうという話になると、これはまた番号の意味が違うんですね。これをどう仕分けるかということをここで議論しなければいけない。

そこで、一つ問題提起は、これは皆さんはもう経験しているかもしれないけれども、今、年金の一元化というのが言われて、納番を使えば、所得が捕捉されていない、特に自営業者ですね、あれがすぐわかるよという話が民主党から出ていて、僕は新聞記者からよく聞かれるんですよ。番号を入れるとすべてわかってしまうという話が非常に流布していて、そういうことはあり得ない。番号のメリットは、払った人と受け取った人2か所あって、それをマッチングするからわかるので、自営業みたいに自分で払って自分で受け取ったものは、番号のメリットはゼロなんですよ。そこをわかっていないで、年金の一元化に所得のわからない人を捕捉するために云々という話があるのですが、それは事務局に質問は来ていませんか。僕は新聞記者から時々聞かれるけど、あり得ないと一生懸命言っているんです。これはやはり誤解を解いておかないと、番号がえらい威力があって、オールマイティみたいになってしまって、マジック的になるのは困るんですよね。どうですか、今まだそういう現状に行ってないですか。

事務局

この問題に関して社会保険庁から個別の話が来ているとは全く聞いていませんが、今、お話があったように、私も長年納番に取り組んで議論してきた経験だけちょっとお話ししておきますと、実は適正課税のために納税者番号というのが最初は求められたのだと思うのです。それは委員が言われたように、どちらかといえば、非常に大きな番号であって、それはまさに基本台帳番号であったり社会保険番号で、むしろ社会保険番号すら、どちらかといえば20歳以上であるとか、外国人が漏れているとか、そういうご議論があったりして、非常に大きな議論がありました。

その背景には、適正課税、クロヨンという反省の中から、どちらかといえば誤解が非常に走ったように思います。例えば、今先生が言われた本人が出して本人が受け取るというのは、わかるはずがありませんし、ましてやよくクロヨンで言われてきた、つけ込みというのでしょうか、自分たちは経費で落としているけれども、それが経費でない、家族で飯を食べている。それを納番で防げるかといったら、絶対防げません。誰が食べたかは本人しかわかりませんから。そういうような、ある意味では納税者番号について非常に過大な適正課税というところに期待があるとともに、それによってありとあらゆるプライバシーがすべて税務当局に把握されてしまうのではないかという反発もものすごくあって、そういう意味では、その議論をやっている限り、日本では実は納税者番号というのは難しい問題なのかなと実は思っています。これは個人的意見です。

ただ、今回私が思いますのは、金融一元化というのにこの3年間取り組んできて、特に2年間取り組んできて、やはりこういう金融の足の速い商品を、適正課税をしながら、かつ、利便性を高めるという観点からしたら、そんな大上段な番号よりは、むしろ利便性に着目した番号というのが、セカンドベストかもしれないけれども、税として取り組んでみる価値がないのかどうか。このあたりを実はぜひこの金融小委ではご議論いただけないかなという思いがあります。

そして、皆さんにご議論いただきたいのは、この金融の一元化という概念の中で、果たして利便性という観点でどうかとなると、実は網羅性が必要がなくなってきます。ある意味ではこれは選択制で十分だと。特に適正課税となったら、これはもう選択制はあり得ないので、まさに網羅性がなければならない。このあたりが今までのご議論とかなり違う切り口のご議論をこの金融小委であえてやっていただいているゆえんなのかなと。本格的な議論なら、基礎問題小委員会でそれこそ取り組んでいただかなければならないテーマなのかなと、私はそういうふうに思っているということであります。

委員

そういうコンテクストで議論するということをここで認識すればいいので、今、事務局の言われた中で一番重要な言葉は、「選択」という言葉を入れるかどうかです。「選択」という言葉を使ったら、今の社会保険庁のほうの議論はあり得ないわけで、利便性ということで選択制までここで認めるなら、これは大変に大きな決定で、私はそういう形でもいいと。利用勝手がいいから使ってもらうのだと。一たび使う形になった後はe-Taxで、あとは国税庁のほうから、そちらの調べたのをわかっているところまで教えてくれるところまでやれば、さらに徹底ということで、したがって、今日の議論の最大のキーワードは「選択」ということだと思います。

委員

まさに私も先ほどの議論を聞いていて、ここでやる議論は金融所得に関する議論だと思っていて、大きな話だなと実は思っていたのですが。

それで、今の状況を見ますと、例えば配当所得とか利子所得というのは、現行の制度においても、ほとんど100%把握できているのではないかと思うのです。そうすると、今度、金融資産性所得という中で、ある種の通算が必要になってくると、譲渡所得とか一時所得、雑所得といったこういうものとの間で通算をしてメリットをとりたい時に、通算をしてもらうメリットを納税者が受けるための一つのインセンティブとして番号というのが機能するのであれば、これは私は普及するのではないかなと感じています。

したがって、この中でも、「金融・証券税制構築のため」というような言葉が入っていますが、それでもちょっと大き過ぎて、つまり海外と違うのは、日本の場合は、サラリーマンだけとりますと、源泉徴収と年末調整でほとんど終わっていて、確定申告するという慣行がないという日本の国情を考えると、海外の国の税制と一気に合わせるのはほとんど不可能であって、ある段階で納税者にとってメリットがある時に初めて活用できるという形で導入しないといけないのではないかなと。

そういうものが一つ入ること、一旦それを採用すれば、それ以降については、その番号が適用されるようになれば、いわゆる納番による牽制効果というのも、ある限定された範囲ですけれども、広がっていく可能性があるので、一気に100%ではなくて、及第点から進めてはどうかなという感じを非常に強く思います。

委員

選択制というキーワードについて少しイメージを、どなたに質問すればよろしいのかよくわかりませんが、選択制といってもいろいろなバラエティーがあるように思います。つまり、一回例えば損をとりたい、あるいは損を通算したいので、一回選択したらその後はずっと使わなければいけないというようなものなのか、その当年度限りでおしまいなのか、そういった点について、一言で選択といってもいろいろな仕組み方があるのではないかという気がするわけです。意見というか、質問といいますか……。

委員

それとの関連で、12ページにいろいろな国の納番制度の概要があるのですが、下のほうでイタリアとオーストラリアはまさに選択制をとっておられるようで、選択をしない家計はどういう理由でしなかったのかということがもしわかれば、教えていただけたらと思います。

委員

使わない人はある種のペナルティーがありますね。そういうことも含めてちょっと……。

事務局

選択という言葉がどういう定義を、中身はもちろんのこと、まさにこれからのお話だと思いますが、例えばイタリアにつきましては、基本的に付番対象者全員が持っている番号でございます。そういう意味では、ある人は持っている、ある人は持っていないということではございません。一旦損益通算のために番号をもらいましたと、それを使って確定申告をして損益通算をしましたと、翌年は損益通算をしないので番号はもうお返ししますと、こういったことがそもそもできるかどうか。やはりプロトタイプとしては、一旦選択をして番号を頂戴すれば、自分の対象範囲の取引については、番号を告知してやってくださいと。

実効性の確保と一枚紙で書いてございますが、選択制にした途端にそこが悩みになるわけです。全員がこれを使うというのであれば、金融機関のほうも全部に要求をすることになるわけでございますが、選択になると、ある人は番号を言ってくる、ある人は番号を言ってこないと、こういうふうになるわけで、得をしたものについては番号を言わないという輩が出た場合に、さあ、どうするかと。おそらくはこういうことが発覚した場合には何らかのペナルティーを課すと、こういう実効性担保の措置が必要になってくるのだと思います。

委員

オーストラリアの場合は、番号を使わない人は源泉で高い税率で徴収するという、たしかそういう仕組みでしたよね。

事務局

番号を使わない人がいれば、高い税率で源徴が課せられる。バックアップ・ウィズホールディング・タックス、裏打ち源徴と我々は呼んでおりますが、こういったことが行われるということでございます。

委員

もう一つ関連して、使わない人にペナルティーかどうか知りませんが、ある種の負荷がかかる。今度は使う人にはメリットが出るということも当然考えられるわけで、他の委員がおっしゃったようなことを考えると、今まで出てきた議論でいえば、ゲートキーパー的なサービスを何か作って、番号を使うのだったらゲートキーパーを使ってよろしいと、そういうような仕組みもあるようにも思うのですが、そこら辺について、事務局で何かお考えになったことがあれば、なければもちろん構いませんが。

事務局

なかなか現行の制度におきましては、たくさんの種類の金融所得を管理する、いわゆるゲートキーパー的な口座というものがないということもございまして、この口座単位の管理、それの損益通算のあり方、それにどう番号を絡ませるかというところまでは、現時点では検討しておりません。

委員

今、選択制というお話を伺って、あと利便性というところを伺って、二つ感じたことがあるのですけれども、やはり多くの日本人にとって、確定申告というのが非常に大きなネックになっていると思うのです。今も特定口座等やらないかどうかというのも選択制になっていますけれども、多くの人が特定口座を選ぶ一つの理由は、確定申告しなくていいというところが非常に大きいと思います。

しかしながら、今度一元化した時に特定口座のようなものは、やはり選びにくいと思うのです。その理由はなぜかというと、特定口座というのは、例えばある証券会社にすべての株券を預けない限り申告ができないわけですから、今度一元化すると、いろいろな金融機関にまたがるわけで、そこでそういう特定口座みたいなものが存在するのであろうか。しかし、そういうものが存在しない限り、利便性というのはなかなか感じられないのかなと。

そう考えた時に、今すでにあるサービスですけれども、よくネット証券やネットの銀行のサイトにありますが、アグリゲーションソフトというのがついています。一つの証券会社でそのアグリゲーションソフトを使うと、提携金融機関、今であれば、ほとんど系列に関係なく金融機関の口座の残高が一つの証券会社のサイトの上で見れるというシステムがすでに存在しますので、そういうものをシステム的には利用して、そこに納番を入れる。金融機関が納番を入れた人に関しては、アグリゲーションシステムに乗っかっている金融機関における取引については、すべて税金を計算してあげるサービスみたいなもの、そういうものをもし導入できるような仕組みを考えることができれば、確定申告以外に考えることができれば、非常に個人にとっては選択する意義のあるシステムになるのではないかなと、素人考えなのですけれども、何か穴とか問題点があれば少し議論をいただければと思います。

委員

実は私、今年の確定申告でどういうわけか株の譲渡益が出まして、ちょっと損が出まして、しかも二つ証券会社があって、二つの口座をまさにアグリゲートしなければいけなくて、正直いって嫌だったのですが、ぎりぎりにやっていましたらば、そのための申告書をもらっていないということに気がついて、やむなく調べたらば、実は国税庁のホームページに、e-Taxではないのですが、国税庁の出来合いのプログラムができている。これを使ってやりました。そうすると、二つアグリゲートするのが極めて簡単だった。

ですから、そういう仕組みを、わざわざゲートキーパーを民間がやらなくても国税庁の側でもう少し、ただ、正直言って少し使いにくい。コンピュータを知らない人にとっては少し使いにくいと思うので、もう少し使いやすい仕組みを、しかもほかの所得を申告しないとだめだという仕組みになっているみたいなのですが、例えばこの金融一体化だけについてもできるという仕組みを作れば、ひょっとしたら、もう少しうまく国民にとってもやりやすい仕組みができるのかなというのが私の体験であります。

委員

非常にいい体験をされたと思います。

先ほど、事務局としては個人的と言われましたけれども、かなり大胆な発言だと思います。私も前から投資家にとっての利便性が第一で、その結果結論を出すとすれば、選択制にならざるを得ないのではないかというのが私の結論です。

そして、先ほど特定口座ではそれができないということですが、僕はむしろ特定口座こそそれを生かしてやっていけるのではないかと。今、ITソフトなどもよくできていますから、現に今先程の委員も国税庁提供のソフトでやったと。民間はもっとすばらしいものがありますから、それをやって伸ばしていくことが一番いいのではないかというのが僕の考えです。

もう一つは、生臭い話ですけれども、さっき税務署と関わりたくないという心理があると、大胆にここまで出されてきたということは、グリーンカードがだめになった1985年からもう20年たっているわけですから、おそらく納税者の心理も、あるいは税務署のやり方も相当変わってきたと思います。現に非常に納税に便利なソフトまで開発されるというようなこと、また、今回のパンフレットを見ても、ちょっと難しいけれどもよくできている。この税制改正その他含めまして、e-Taxもそうですけれども。そういうことで、地方公聴会とかタウンミーティングなどでいろいろ話を聞いても、相当もう変わってきているという感じがありますので、納番制という言葉ではなくて、選択制で利便性第一でやっていくということを踏み出すには、僕は絶好のチャンスではないかと、そういう認識を持っております。

委員

議論は金融課税というフローの面をずっと言ってきているわけですけど、金融所得に限定したとして、資産というかストックに関する面もありますよね。具体的には相続税との絡みでいけば、納番を選択してつける、そして、死んだという情報が入った時点で、資産の額も登録されている限りは出てくる。そういう理解をしていいわけですか。

事務局

まさに、いわゆる法定調書、これをどういうものを導入するかということでございますが、ここそこにどれだけの残高がありますという法定調書というのは今のところないし、そういうものを導入している国もないと思います。ただ、例えばボックスタックスを入れているオランダ、ああいうところにはもともと富裕税等があって、そういう把握システムが別途あるというのは聞いたことはございますが、少なくとも今申し上げている、ないしはここで今まで頂戴しているご議論では、インカムフロー、フローの収入、これについてのご議論を頂戴していると思っています。

事務局

個人的な感じをお話ししますと、資産に関しては、いわゆる民間人を巻き込んだ番号というのは、ある意味で世界中ないのではないでしょうか。これはむしろ、要するに有名人に登録されると、多分属人的に名前とその他でちゃんと管理されておりまして、亡くなられた時に一体その申告がどのぐらいかなというのはチェックするシステムがあって、基本的には名前と住所と、そういうものである程度の管理はできるということになっているのだろうと思います。

特に資産は今申し上げたように、はっきり言って、海外への移転とかそういうところでいろいろ情報が入ります。それを全部足していくらかなどという必要はなくて、ある意味では、その方がどのぐらい資産を動かしていたか、どのぐらい所得があったかとか、そういう意味で高額、あるいは著名人というような方は、属人的に見ていくことで十分可能であるのだろうと思います。

というのは、おわかりのとおり、相続税は100人亡くなって5人しか納税されない税です。全員の資産をすべて管理しておく必要はないと思いますが、将来相続税を、よく会長が言っておられる意味で、広く薄くみんなで払ってもらいますということになってくると、これはかなり性格を異にしますから、今のような体系ではできないかもしれません。

委員

ここでの理解ですと、納税者番号制度はあくまでも金融課税の一体化の枠の中で、かつ、適正化ではなくて利便性を高めるためということ、それでいいのだとは思うのですけれども、ただ、さっき意見がありましたけれども、納税者番号がどれくらいの効果があるかということで、あくまでもこれはマッチングというか名寄せですから、例えば非上場株であれば、多分それは初めから申告しないという選択肢もあります。

それから、前に議論が出たと思うのですが、大口株主の場合どうするのだという議論はまだ残っていると思うのです。つまり、大口株の場合は一部を自分の給与所得に、一部を自分の資産所得にというふうに振り分ける裁量権を持っているとするならば、金融所得のところだけに納税者番号制を入れても、ある意味でループを残していますから、それは何を言っているかというと、金融所得以外の所得との関係ということになると思うのです。その辺少し論点を整理したほうがいいのかもしれないです。

特にちょっと気になったのは、これも前にも出てきたのですが、不動産の譲渡益課税であるとか、不動産所得であるとか、この辺も今の金融商品などでお互いに密接に代替関係を持つようになってきていますので、金融所得のところだけ納番を入れて名寄せをきちっとやったとしても、一方でどこか漏れている部分はあるのではないかと考えます。その辺を少し、納税者番号を入れたから、金融課税の一体化が即実現するというわけではないことは、わかっていると思うのですが、ちゃんと認識しておく必要性はあるのではないでしょうか。

委員

今のお話の続きみたいなものですが、土地の譲渡所得みたいなものを入れるかどうかというところまでいかなくても、金融所得の間でも利子所得を入れるということになれば、例えば今の特定口座の話などは状況が変わってくるのではないかと思うのです。そうなってくると、地域金融機関みたいなものを巻き込んだような、トータルとしての所得の把握をどうするかというような問題が出てきまして、様相が少し変わってくるのではないかという気がします。

委員

私も、ここで議論している範囲ですよね。金融所得の損益通算のためだけということでは、あまり大きな意味というか、今はそれをしなくても、損益通算はコンピュータでやっていれば事実上できているわけだし、選択制というのは、将来は基本的に全員が選択してくれたほうがいいのでしょうから、やはり普及のプロセスという面もありますよね。だから、所得全体にかからない番号だけについてここでは議論すればいいわけですか。その辺はどういうふうに理解すれば……、金融所得の損益通算に限っての話ですか。

委員

金融所得の一体化の課税のために、何もしないでやるよりも番号を入れたほうがいいのかどうかというのが一つ。そうだとして、それをまずどういう形で導入するのがいいのか。そこまでを今は一つは議論していて、もう一つ、さっきから出たり引っ込んだりしている議論は、ではそれは長期的にどういうふうに推し進めていくのでしょうね、という議論が多分あるのだと思うのです。そこまでいくと、基礎小の議論なのかなというような議論もさっきからあったように思うのですけれども。

委員

損益通算は簡単にできるけど、正しいか正しくないかの担保のために番号が必要なんです。委員の大前提は、コンピュータができるからいいではないかということだけど、そうではなくて、それがちゃんと出てくるかどうか、税務当局がチェックしなければいけないんですよ。そのための番号なんですよ。

委員

本人確認なんですよね。

委員

本人確認以外に、皆さんロスばかり出してくるから、払った人と申告する人の間でマッチングをしなければ絶対正しくないんですよ。だから絶対必要なんですよ。

委員

もちろんそのための番号ですけども、それは当面は金融所得の通算にしか使わないということのほうが入れやすいということですね。

委員

そういうことでしょう。「しか」っていうけど、そこが大変なんですよ。

委員

いろいろな金融商品がこれからいろいろな形で出てくると思いますし、それから、何人かの先生がおっしゃいましたけど、不動産に関連していろいろ加工して、キャッシュフローを加工して作った金融商品とか、そういったものがどんどん出てきますと、どういった主体まで、おそらく金融所得といった場合には、金融商品を提供する主体というふうに考えるのでしょうけれども、それをいかに確実に網をかけてやっていくかということが一つの重要なポイントになってくると思います。

それから、私も投資家の利便性を高めるというのが一番重要な論点だと思うのですけれども、投資家にとって非常に利便性が高くても、金融機関にとって選択制でやるのは非常にコストが高いし、むしろ金融機関にとって名寄せができるということのメリットは、全預金者なり全投資家に番号を振るということが一番効率的なわけですから、そこの折り合いをどうつけていくかのかという問題もあるように思います。

委員

多分、金融機関にとっては、選択制であっても全体的に適用するのであっても事は多分同じで、同じ準備をしなければいけないということにきっとなるのだろうと思うのです。そういう意味で、金融行政の面から今いろいろ勉強しておられるようですけれども、金融所得の一元課税の話について、いろいろ議論が出てくるのではないかとちょっと思いますね。

委員

ただ、金融機関も結局お客様のために商売をしているわけで、お客様にとって利便の高いものであれば、それはコストがかかってもやらざるを得ないわけで、そのコストをどう回収するかというところで金融機関さんには知恵を絞ってもらう。そういう形にならざるを得ないのではないかという気もするのですが。

委員

私が思いますのは、中小の金融機関みたいなものから見れば、おそらく通算されるのに意味のあるような利子所得を上げる人はあまりいなくて、使われる選択制になった途端に、多分、そんなに大きな利用はないのではないかなという気がするわけです。だけども、準備だけは全面的にやらなければいけない。そうなると、こういう制度を入れられることによって、中小金融機関としてその負担に耐えられるかという問題が出てくることがあるのではないかと、そういうことです。

委員

そこら辺どうなんですかね。可能なのかどうか知りませんが、逆に金融機関側にも選択制が要るのかもしれませんし、いろいろなことを考えていくしかないような気もしますが。

ちょっと気になっているのは、番号の話をした段階で国民が一番気にするのは、実は選択制とか利便性とかの話ではなくて、プライバシーなんですね。我々はある意味でプライバシーの問題よりも、これが税務のために非常に重要だということで議論しているわけですが、国民に理解していただくためには、ある程度プライバシーのことも触れざるを得ないだろうと思います。もしその点に関してご意見、あるいは、こういうふうに言ったら国民にもっと理解してもらえるのではないかとか、あるいは、先ほど出ました個人情報保護法に関して、さまざまな追加的な法律を作るとか、あるいはシステム・セキュリティを電子申告などの例で、今お話が出ましたけれども、そういうことも含めて何かご意見を、ほかの話に戻っていただいても結構ですが、もしプライバシーについてご議論のある方がいらっしゃれば、ぜひそれも含めてどうぞご発言ください。

委員

とても乱暴な意見なのかもしれないのですけれども、税務署と近づくのは嫌というようなことも書いてありましたし、プライバシーの議論になるのは、どうしても国だとか公的機関に自分のデータが行くことに対して、プライバシーが……というような意識を持っていらっしゃる方が多いのではないかなというのが私の一つの印象です。

実際に見ていると、証券会社に特定口座を作って、そこですべての取引情報が集まっても何も不安を感じていないですし、銀行で給料の振り込みから公的なお金の引き落としから、そしてローンを借りているものから、すべての情報が行っていても、みんな何の疑問も、何のプライバシーの心配もしているように私は見えないんですね。そういう意味では、先ほどから出ているように、金融機関というものが意外に一つの役割をしてくれるのではないかなと、私は非常に素人的な印象ですけれども、あるのですけれども、いかがでしょうか。

委員

私も、お聞きしていて大体同じ感じなのではないかと思うのですけれども、先ほど事務局がご発言されましたように、大方のところはもうちゃんと把握されていると。私は実は内部では番号が振られているのではないかなと思っていたのですけれども、そこまでする必要もないというお話のようなのですが、もしそういう把握されないような資産を持っておられる方がいるとすれば、選択制にすれば多分乗ってこない。プライバシーの問題というのは、選択制にする限りあまり問題にならないのではないかなという気がします。だから、その選択制とプライバシーの問題というのは、かなり連結した問題ということではないかという気がします。

委員

多分、当初からファーストベストというか一番いいのは、当然一律に導入してしまうことだったと思うのですけれども、でも、やはりそれだと国民からの理解というか、プライバシーの問題もある。納番のポイントは投資家の利便性というなら、その利益を特に享受できる人がということだったと思うのです。それは具体的には普通の預金者とかではなくて、やはりさまざまなところで投資活動を行っている人、つまり損益通算しなければいけない人たちということになりますから、自ずと利便性の便を得る人たちというのは限られている。残りの多くの人がプライバシーが気になるというのは、そっちはコストですから、その人たちにとってみれば、だから否応なく選択制になると思います。

ただ、選択制というのを、恒久的な制度として仕組むか、あるいは移行的な措置として仕組むかというのは、ここは工夫の余地があって、つまり、とりあえず移行という形でやっておいて、要するに理屈をこねるよりは実績を上げたほうが国民からの理解が得やすいと思うので、納番でやってみて実際これくらいの便益がありました、これくらい投資活動が確かに活発になりました、というような実績を示していけば、全体的に、いわゆる義務化というとあれですけれども、もっと幅広く普及させることに関して理解を得られるのではないかなとは思います。

あと、僕も、本当は玄人のはずなのですが、ちょっと素人っぽい意見を言わせてもらいますと、例えば各個人にメインバンクみたいなものを作らせて、つまり、そこにまさに情報の一元化をすればいいのではないか。例えば私はどこどこ銀行がメインバンク。銀行でなくてもいいわけです。証券会社でもどこでも。つまり、バーチャルなもので、要するにそこに情報だけが集まっていればいいわけですから、各個人にメインバンクを持たせて、そこが代理で徴収して税務署等にお金を払えば、行かなくてもいいですよね。

委員

まさにそれがOECDなんかでやっているトラスティッド・サードパーティーという話なんですよね。つまり、納税者以外の第三者に納税を委託するということ。特定口座というのは事実上それをやっているのではないかという気がするのです。そうしたらプライバシーの問題なんていうのは、まさに他の委員がおっしゃったように、直接に公が関わらなくてできると。前、事務局もおっしゃっていたように、なるべく税務署が表へ出ないようなシステムがあれば事実上同じで、そういう民間の情報というか、組織をうまく使うようなシステムを作っていくということが、コスト的にも非常に重要なのではないかなと。そうなると、そこで使っている個人認証システムを公的に使えるのかどうかというあたりとか、その辺がどうしても問題になってきます。

委員

それは難しいですね。金融機関は猛烈に皆さん囲い込みをしなければいけないんですよ。メインバンクをどこにするか何だかんだで、これはグリーンカードの教訓ですよ。グリーンカードがなぜつぶれたかといったら、限度枠まで使っていいよという形で、結局一つの銀行に入れなければいけないというようになって、それで大騒ぎをして、息切れしてだめになったんですよ。おそらくこれは金融機関でも反対するでしょう。そういうメインバンク制は難しい。証券だけならいいですよ。利子も絡みますからね。そうすると大変な話になるんですよ。多分これは難しいと思いますね。

委員

委員がメインバンクをどういう意味でおっしゃっているかよくわかりませんけれども、ただ、先ほども別の委員からお話があったように、サラリーマンは全部銀行振込です。だから、自分だけの口座にするか、あるいは奥さん用、家庭用と、せいぜい二つ。大体メインバンク的なものはみんな決まっているんですね。今さらに金融所得の一元化ということでの新しいメインバンクを作れということでしたら、今の委員の言うとおり、これは非現実的な話になってしまいますね。

委員

そこまで非現実的ではなくて、例えば私は2つの銀行に口座を持っていますけれども、別にそれを一元化してどちらかにしろと言っているのではなくて、要するに情報だけの収集なので、例えばそれぞれの銀行口座でこれだけの利子を稼いでいますと、あるいは、どこどこの株式の会社でこれだけのキャピタルゲインを得ましたと、その情報だけ集約できるところがあればいいわけで、そこで納めるべき税金、あるいは払い戻してもらうべきお金の額というもの、それを要するに計算してくれる場所ですよね。つまり情報だけです。

委員

議論が混乱したというか、乱れたような気がするのですけど、ここは金融小ですけど、全体として流れとしては、申告納税制度にどうやって日本の税制を近づけていくか、収斂していくかという、大きな土台の上に議論してきたと思うのです。特定口座のソフィスティケーションについて、ここで知恵を絞る必要は、僕はアブソリュートリー・ノットだと思うのですけど。

その意味では、さっきから言っているように、もしスウェーデンとか、僕も個人的に調べなければいけないのですけど、申告納税制度に近づけていくという意味で、利便性という意味では、やはり税務当局がいろいろなところから調書を受けて、Aさん、Bさん、Cさんに仕分けして出してあげる。これが究極の特定口座ですよね。そこがe‐Taxで計算までしてくれれば、しかも我々はそれが金融所得で一つの括りでいいと言っているわけですから、そこまでで話は閉じるのだろうなと。それがどこまで現実か。

だから我々がやらなければいけないのは、納税者番号の仕分けはしてきて、金融所得ですよと。だけど、それは申告所得税という大きな流れの中でやっているわけで、金融は切ってきた。その中でどこまで利便性を貫けるのかなと。それは特定口座のソフィスティケーションだという考えも一つなのでしょうけど、僕の意見でいえば、行くところはずれるのではないのか。一つの究極かもしれないのは、税務当局がどれだけ得た情報を納税者にディスクローズするかというところだと思うのですけれども、そこまで踏み込めれば、それはもう大変なことだと思います。

事務局

今、先生がおっしゃった、そのとおりのことを申し上げようと思っていたのですが、もう一度8ページをご覧いただきたいと思います。確かに先ほど他の委員がおっしゃっていたアグリゲーションサービス、我々も存じ上げていました。要するに、納税者が行う損益通算のいろいろなツールというのはあろうかと思います。問題はマッチングをしたいというところがこの話の根本にございまして、納税者サイドのほうである種A、B、C、D、Eというものを申告してきたのに、DとかEの情報が実は税務当局に来ていないというようなことをどうチェックするか。このダブルトラックに情報の流れがある、それをマッチングするというところが、この問題のコアになっているということをもう一度申し上げたかった次第です。

委員

私なりに整理をしますと、問題は二つあって、一つは申告の利便性の話と、もう一つは税務調査の話の時の真正性といいますか、二つの問題があると思うのです。多分、番号は後者に非常に関係する。前者はある意味で民間がいろいろな仕組みを考えて、まさにゲートキーパーでも……、ただ、委員が最後におっしゃったメインバンクは多分あまり機能しない。要するにA銀行とB銀行に口座を持っていて、A銀行の口座の内容をB銀行に教えろといっても、それはA銀行は嫌だと言うような気がするのですが、いずれにしても、そこら辺は民間が自由にやればいい。そういう意味で、ある程度民間が自由に納税の利便性を高めるような環境を作りつつ、それを担保するために番号を入れる。しかしそれは選択制でいいと。そういうような仕組みをうまく考えることが大事なのかなと。それが皆さんおっしゃっていることなのかなと思うのですが。

委員

さっきのプライバシーの保護との関係なのですけれども、プライバシーの保護という言葉だけが先走りすると危険かなと。つまり、実際にその中で使われるデータといいますか取引が、例えばここだと金融取引に関して、番号を申請したものだけに限られるというような、そういうことができるのであれば、その中身をもう少し伝えないと、プライバシーの保護というと、人によっていろいろな取り方をして、言葉だけがひとり走りして、拒絶になるのではないのかなという観点が一つあるのです。

最近、驚いたことがあって、私はロンドンと日本と月半分なので、オフショア・アカウントをロンドンに持っているのですが、最近、3年ほど使っていたところ、銀行から調査票が来まして、おまえの勘定の動きを見ていると、とてもロンドンに住んでいない人とは思えないと。ディクラレーションしろと。これはつまり税金がかかっていないので、課税をしようということなのでしょうけれども、それを銀行のそういうオフショア・アカウントを担当しているところが、詳しくはわからないのですけど、法律によって多分義務を課されていて、私にディクラレーションとフルイクスプラネーションを求められるのです。非常に驚いたのは、私の1件ごとの取引を、多分日付を見ているのでしょうけど、それを見て、利子の課税だと思いますが、それまで来るのかと。私はそんなこと思っていなかったので、こんなところまで見られているのだとショックを受けたのですが、つまり、どの程度のことがこの金融所得の把握、ないしは納番の導入によっていくのかという範囲がある程度予測されないと、突然、ロンドンに来た日付が全部押さえられているのかというような、非常に私個人としては驚いた経験があって、その辺のところの理解というか、何を狙っているのかというのを明確にする必要がやはりあるのかなと思いました。

委員

今の話は、私なりに知っていることを使うと、イギリスもそうですけれども、海外の先進国の銀行は、今、マネーロンダリングとかそういうことをものすごく気にし出して、つまり犯罪に対するチェックですね。それがあるために今おっしゃったようなことがたくさん出てきている。それと、プライバシーと番号というのはどういう関係になるのか。そういうことが問題であるというご趣旨でよろしいですか。

委員

私も最初はマネーロンダリングかなと思ったのですけれども、結局、要求して出せたのは、私はイギリスの居住者ではないということだったので、スタートはその辺からスタートしたのかもしれませんけど、最終的には利子課税。6月までに回答しなければ、国内での利子課税をするぞというのが入っていましたので、いくつかの要素を持っていて、一つの要素には、利子に対する源泉課税の役割があるのは明確だったわけです。

委員

何か事務局サイドでコメントがあれば……。

事務局

これも資料の13ページ、プライバシーの保護ということで、今までのご議論の整理ですが、もう一度ここをご覧いただきたいと思います。先ほどある委員がおっしゃった13ページでございます。国に知られるのが一番心配であると。お気持ちもわからなくはないのですが、税務当局と納税者との関係におきましては、基本的には全部税務当局が知っていなきゃいけないということです。

ですから、例えば特定口座のいろいろな取り扱いにつきましても、関わりたくないという手続的な問題、こういったものはいろいろあるだろうなという配慮もいたしております。ただ、国に自分の所得情報は知られたくないというのは、これはプライバシーの問題では本当はないのではないかなと。

委員

さっき私が申し上げたのはその点に関してなのですけれども、要するに、当局がすべての金融取引についてあらかじめすべて知っておく必要はないわけですよね。そこではやはり納税者の利便性を大事にしてやって、納税者の感情を大事にしてあげるべきだ。だから、国税庁にまでわざわざ全部が知られるような仕組みをあらかじめ作る必要はない。ただ、問題が起きて、何か不審なことが起きた時に、国税庁ないしは税務署が出てきて、それを調べる。その時に簡単に調べられる仕組みが必要だと。そこは二つ違う話だと思うのです。そういう意味で、委員がおっしゃったのは非常に重要なことで、前者に関しては、あまり税務署、税務署というのは目立たないような仕組みにしておいたほうがいいのではないのという、そういうご趣旨だと思います。

ほかに何かございますでしょうか。

委員

相続税の調査などでは、最初に仮名口座とかそういうところを見るはずで、銀行にはあらゆる情報が入っていますから、仮名口座とかをなくして、それだけでも番号の意味はある程度はあるということは言えるのではないかと、実際の調査の現場ではそうなのではないかと思いますね。

あと、プライバシーのことは、制度の設計上はこうするとよくなるというのは簡単なのですけれども、これは事務局のほうでも本当に深刻に考えていらっしゃると思うのですが、イギリス、ドイツ、フランスでないということは、法的には重みがありまして、アメリカ、カナダ、あるいはヨーロッパの小さな国にあって、イギリス、ドイツ、フランスというヨーロッパの中核の国でないということに対して、プライバシーのこととかについては、相当きちっとした法的な立証責任のようなものがここに来るのではないかと。さもないと、後で混乱の原因になるということはあると思うのです。あまり簡単には考えられないのだと思うのです。あったほうがいいと思いますが、でも、説明していくのは実は思ったよりも大変なのではないかという気はいたしますね。

委員

先生がおっしゃったことと関係して、もう一度この中期答申の13ページのところを見ますと、本当に考えて書かれていると思うのは、プライバシーの問題が新たに生じるわけではないということで、やはりプライバシーの問題はあるのだと思います。ただ、納税者番号制度を入れることで新しくそれが出てくるということではないと、そういうふうに整理したほうがいいと思います。

委員

ありがとうございました。大体それでプライバシーの問題も一応全体の意見がまとまったように思いますから、よろしければ、これで今日の小委員会は終わりにさせていただきたいと思います。幅広い観点からのご意見をいただきまして、大変ありがとうございました。本日いただいたご意見をもとに、金融資産性所得の一体化に合わせた納税環境整備のあり方について、今後とも考えていきたいと思います。

最後に今後の予定ですが、次回の小委員会は4月20日の火曜日を予定しております。正式に開催が決まりましたら、いつもどおり案内状をお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。議題も案内状でお知らせいたします。

では、本日の小委員会はこれで終わりにいたします。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会