第5回金融小委員会 議事録

平成16年3月5日開催

委員

それでは、ただ今から第5回金融小委員会を開催いたします。

本日は、財務省の副大臣及び政務官にご出席いただいております。よろしくお願いいたします。

また、本日の小委員会から、新たに2名の方にご参加いただくことになりましたので、ご紹介いたします。

お1人目は、みずほ総合研究所(株)執行役員チーフエコノミストである杉浦哲郎さんです。

もう1人は、シンクタンク・ソフィアバンクディレクターの藤沢久美さんです。

おふた方には、昨年10月の第1回小委員会においてプレゼンテーションをしていただきました。今後、金融資産性所得に対する課税の一体化の議論が具体化してまいりますけれども、その際、実務面からの議論にも及ぶことが予想されますので、会長ともご相談した上、金融の実務、実情にも精通しておられる杉浦さんと藤沢さんに専門委員にご就任いただき、小委員会への参加をお願いすることとした次第です。

なお、事務手続上、おふたりの正式な任命は来週になるそうですけれども、より多くの議論に参加いただけるよう、本日からご出席いただくことにしております。よろしくお願いいたします。

本日は、前回に引き続き損益通算を中心に議論を行いたいと思います。まず、損益通算を考えるにあたっては、各種金融商品に対する課税方式の違いも考慮に入れるべき重要な点であると思われますけれども、利子所得の一律源泉分離課税との関係、配当所得の原則総合課税との関係、公社債の譲渡益非課税の問題など、基本的な課税方式のあり方について改めて議論したいと思います。

また、源泉徴収制度のあり方についても、課税方式に含めて議論したいと思います。

それでは、各種金融商品に対する課税方式の違い等について、事務局より説明をお願いしたいと思います。また、お手元にメモという2枚紙が配布されていると思いますが、これは本日ご議論いただこうと考えている項目を便宜的に列挙したものです。この紙についてもご説明をお願いする予定です。

では、事務局、よろしくお願いいたします。

事務局

お手元に、今、小委員長がご紹介されましたように、「前回(第4回)提出資料」という一枚紙、これは今までのご議論の柱になろうところかと思います。それを踏まえまして、メモという2枚紙がございます。まず最初に、これから簡単に触れたいと思います。

これまでのご指摘ということで、前回、大きな柱の中でご論議賜っておりますが、具体的に次のようなご指摘があったかと思われます。

収益が各種所得分類にまたがるハイブリッド金融商品が出現している。

金融技術の進展により所得類型の変換が容易になっており、所得の種類に着目した通算制限を設けてもデリバティブにより回避されてしまうのではないか。

債券などの場合、利子とキャピタルゲインとで税の取扱いが違うというのは時代遅れではないか。このあたりはまさに、極力損益通算の範囲を広くするべきであるという考え方でございます。

経済的には利子とキャピタルゲインが同じとは言っても、利子、配当等の現行の所得分類は民商法を前提としており、民商法を離れて税法だけで所得を定義するのは困難ではないか。

譲渡所得が実現ベースでしか課税できないことは無視し得ないのではないか。

高度な金融技術を駆使できるのは一部の洗練された投資家であり、まず一般投資家を対象とする制度設計を念頭に議論するべきではないか。

金融の損失を勤労性所得から遮断するだけではなくて、金融の中でも無制限に通算を認めずに一定の利益には課税できるようにしておく必要があるのではないか。

最後でございますが、利子、配当、株式譲渡益課税とで課税方式が違うことが損益通算を制限する要因となるのではないか。

前回は損失のほうに着目したご論議を賜りましたが、今日は益の課税についてのご論議を賜ればと存じあげます。以下、利子所得、配当、株式譲渡益、それから、公社債の譲渡益課税、こういったところを中心にご論議賜ればと存じます。

早速、「金融小5」という資料をよろしくお願い申し上げます。

1ページ、2ページ、この辺は、いつも最初のほうに置いている定番の資料でございます。

3ページ、これも一度ご覧いただきました。金融商品に係る損益通算の現状ということで、横軸に益に対する課税、縦軸に損の取扱い。それぞれの掛け合わせのところで、マルが損益通算ができるところ、バツが現在はできないところというものでございます。

繰り返しになりますが、本日の論議は、この横軸のところ、上場株式の配当から始まりまして、配当所得として課税されているもの、株式譲渡所得として課税されているもの、利子、雑、さらには公社債の譲渡益のように非課税になっているもの。益の課税のあり方についてご論議いただければと思います。

何故この益の議論をするかと申しますと、一つには、損益通算をするために損ばかりを申告してくる、益についてはちゃんと申告がなされていない、こういう左右非対称なことが起こらないようにという趣旨も一つございます。

それからもう一つ、損失と通算されて益に対する税額が減額される。すでに源徴されていますと、源泉徴収税額の還付ということにもなるわけでございますが、益の課税のあり方、さらには、その把握体制がちゃんと行われているかというのが損益通算の基本的な問題になるわけでございます。

4ページでございますが、金融商品ごとに課税方式を書いてございます。前回までは、益に対する課税、大体20%の税負担ということで、そろってきているということを重点に申し上げておりました。このページは、課税方式、徴収方式が、それなりに異なっているというその点を整理したものでございます。以下、利子、配当、譲渡所得、それぞれにつきまして現在の課税の概要をご説明したいと思います。

5ページでございます。まず最初に利子所得でございます。ここにございますように、預貯金・公社債の利子等につきましては一律の源泉分離課税が行われています。所得税15%、住民税5%でございます。

次のページに、簡単でございますが、源泉徴収の仕組みという図がございます。現在、利子所得の税収、16年度当初予算案ベースで8,590億円見込んでおりますが、この税金がどのように入ってきているかということでございます。源泉徴収義務者という左下でございます。これは銀行等ということですが、要するに利子を支払う人でございます。支払う人が支払う際に天引きをするのが源泉徴収の基本的な仕組みでございます。利子の場合は、源泉徴収税額を、利子支払い月の翌月の10日までにひと月分ごとを税務署に納付する、このようになっております。天引き後、税引き後の利子が預金者に渡るということでございます。

ある意味で大変簡素で、そういう意味では直線的な課税になっているわけでございます。今までの議論といたしましては、例えば大量に発生する、次のページをご覧いただきたいと思いますが、これは、全国銀行預金(個人の預金)、それから郵便貯金の口座数ということで、民間銀行と郵貯を足しますと大体10数億口座がある。人口が1億2,000~3,000万人でございますので、赤ちゃんまで入れて、1人10個以上持っているということでございます。後ほど出てまいりますが、この辺が、配当とか株の譲渡益とちょっと事情が違う場合があり得るということでございます。このように、利子については発生が大量であるというのが一つございます。

こういったものを含めまして、実質的な課税の公平の確保という観点、さらに課税の費用面、手続面などからの諸制約、こういったものを考慮いたしまして、今申しました一律源泉分離課税というのが行われているわけでございます。一律源泉分離課税ということでございますので、当然、申告は必要でございませんし、半面、所得控除等もここでは行われないことになります。

もう一つ、6ページの一番下の(注)でございますが、源泉分離課税の対象とされる利子等については、告知、預金者が源泉徴収義務者に住所・氏名を伝える、これを告知と申します。さらに支払調書、これは、源泉徴収義務者がこういう利子を支払いましたよという調書を税務署に提出する、こういったことを要しないということでございます。結果的に誰がどのくらい利子を受け取って、源泉徴収税額がどれくらいあるかということは、税務当局にとっては全くわからない状態になっているわけでございます。

8ページでございます。利子・配当課税の沿革ということで、戦後、総合課税から始まり源泉分離課税とし、昭和46年に一旦総合課税、原則に戻りつつ、昭和63年、少額貯蓄非課税、いわゆるマル優の原則廃止と同時に源泉分離課税、現在の課税の姿に移っているということでございます。

例えば昭和30年、非課税と。これは2カ年間の措置だったのですが、当時の説明文を読みますと、「貯蓄増強の心理的効果をねらった」、このような説明もございました。その後、昭和34年に源泉分離課税ということで、このときの議論としては、総合課税の復帰をどのように目指すかということが議論の軸になっていたわけでございます。その後、源泉分離課税、これは45年までの措置だったのですが、46年改正のときにいろいろ議論がございまして、総合課税としたのですけれども、いずれにせよ所得捕捉の体制が重要であると。さらに当時はマル優、少額貯蓄の非課税措置がありましたので、税の取扱いが貯蓄全体に対する影響はそんなにないであろうという議論もございました。総合課税としつつ源泉分離選択可能、このようにしたわけでございます。

また、納税環境整備が議題となるときにご紹介すべきかと存じますが、ここに書いてございません。昭和55年にグリーンカードの議論がこの間にございました。まさに所得捕捉体制が重要ということで、昭和63年、この少額貯蓄非課税制度の原則廃止、そういう意味では課税ベースを大きく広げた改正が昭和63年に行われたわけでございます。

次のページに、諸外国の利子課税の概要を書いてございます。アメリカは総合課税でございます。源泉徴収でございますが、行わない。ただ、納税者番号の申告がない場合は、28%の比較的高い税率で裏打ち源泉徴収が行われるということでございます。イギリスも総合課税でございます。10、20、40%の税率でございますが、その真ん中、20%の税率で源泉徴収を行う。ドイツも総合課税。源泉徴収は30%という高めの税率で行っております。フランスは総合課税と源泉分離課税との選択ということで、源泉分離課税を選択した場合には源泉徴収が26%でかかる、このようになっております。以上が利子課税でございます。

次の10ページから配当課税でございます。利子課税に対しましては配当課税、結構複雑になっています。これは後ほどご紹介いたしますが、事業参画的な要素がどうしても配当にはある。株を買うことは事業に参画するという意味もある。あらかじめ約定された利子で、定常的に入ってくる金利とは違うのではないか、このような議論も今までなされていたわけでございます。先に公募株投の話が出てまいりますが、要するに上場株のグループにつきましては総合課税または源泉徴収、申告不要と選択になっているわけでございます。総合課税をした場合に配当控除、いわゆる法人税と所得税の二重課税の調整という意味で日本国においては配当控除というものも用意されております。

次のページは簡単に配当控除制度の概要でございます。課税総所得金額、いわゆる総所得金額から所得控除を引いたあとの数字でございますが、それが1,000万円までの場合、配当所得の10%を税額控除する、このようになっております。さらに、1,000万円を超えていく場合は、その1,000万円を超えた部分については控除率が5%になる、このような形で税額控除ということで配当に対する税金を調整する制度があるわけでございます。総合課税を選択して申告をした場合、このようになるわけでございます。

先ほど申しましたように、事業参画的な要素もある。単に投資のバック、ほかの金融商品と同様、一般的な投資をしたそのリターンであるというだけではなくて、事業参画的な要素もあるというのが配当課税の悩ましいところでごさいまして、一つは大口。「大口とは」ということで10ページの(注)1でございますが、その株式の保有割合が発行済株式総数の5%以上である人、これが大口でございます。大口の方の配当については、今申し上げたような申告不要ができないようにしてあるわけです。

さらにまた複雑になっているのは、一番下のところでございますが、大口以外の上場株式以外、非上場株式等でございますが、そのうちの少額配当については確定申告不要、20%の源徴をする、このような仕組みになっているわけでございます。利子ほどではないのですが、配当についても事務負担というものも考えなければいけないということでございまして、非上場株式等について、少額配当については確定申告不要というものが用意されているわけです。

12ページでございます。配当所得の源泉徴収の仕組みです。配当所得からちょうだいしています税収、16年度予算案ベースで6,710億円見込んでございます。利子よりは若干少ない数字ではございます。繰り返しになりますが、配当については事業参画的な所得の性格を要するということもございます。源泉徴収義務者、左下、先ほどは銀行等となっていましたが、これが事業に参画している先の企業です。発行会社、この会社が配当を支払うわけです。この支払い時に源泉徴収が行われるということで、先ほどと同じように、配当支払い月の翌月10日までにその月々分の源泉徴収税額が納付される、このようになっています。税引き後、源泉徴収後の配当金額、これが投資家に送られる。今度投資家から発行業者に対して告知というものがございます。住所・氏名を会社に、株を買った最初の配当をちょうだいするまでの間に告知をする、このようになっています。この告知をベースに発行会社は支払調書を作成し税務署に提出する、このような仕組みになっております。

ただ、これも事務負担という問題がございまして、(注)でございます。少額配当、先ほどの定義と同じでございますが、少額配当については支払調書の提出は要しない、このようになっているわけです。配当所得と利子所得、先ほど申しましたように所得の性格も若干違う、課税の仕方もそれなりに違う。さらに徴収、バックアップの仕方もかなり違っているということでございます。

次のページは、個人株主数の推移ということでございます。先ほど、預貯金の場合は10数億口座ほどある、こういう話をいたしましたが、現在、述べ人数(1つの銘柄掛ける人数)で見ますと、約3,300万人となっています。これはサンプル調査しまして、おひと方がどのくらい銘柄を持っているかということで、これを割り込んで、延べではない投資家の人数を出しますと、(備考)の2ですが、700数十万人。これを我々としてはすそ野を広げてまいりたい、このように考えているわけですが、先ほど申し上げたように、利子の場合と比べるとオーダーが違うということでございます。

次に、再掲ですが、沿革でございます。配当課税につきましても、総合課税で配当控除を創設するというのが戦後すぐに行われています。源泉徴収をやめたり、また復活したり、さらには大口、小口、少額配当、この辺の基準をいろいろ改正してきているわけです。

15ページ、これも同様に配当所得に対する諸外国の課税制度の概要でございます。課税方式、ざっと横を見ていただきますと、大体すべて総合課税となっています。それから源泉徴収、行わない、行う、行わない、これは区々になっております。

ここでちょっとご紹介しておきたいのは、法人税と所得税との間の二重課税の調整でございます。イギリスは部分的インピュテーションをやっています。ドイツも以前はインピュテーションをやっていたのですが、配当所得一部控除方式。わかりやすく言うと、受取配当については1/2課税にいたしました。フランスでございますが、今までは完全インピュテーションということでグロスアップ方式を取っていたわけですが、2005年からインピュテーションをやめまして、配当所得一部控除方式と。実はドイツと同じように、受取配当の1/2を株主の課税所得に算入する形に変えることになりました。フランス政府の説明としましては、インピュテーションというのが複雑である、さらに、EC内の諸国、特にドイツを念頭に置いていますが、EC内でこういう動きがある、これに合わせます、ということでございます。

まさに配当所得に対する課税のあり方は、アメリカでは例のブッシュ減税でいろいろ動きがあったわけでございますが、諸外国とも悩みながらも、大きな流れとしては、今までのインピュテーションというやり方からは離れていく方向になっているということが言えようかと存じます。

次のページから、株式等譲渡益課税、いわゆるキャピタルゲインの課税でございます。16ページはもう何回も申し上げておりますので、次の17ページでございます。株式譲渡所得の源泉徴収の仕組み、ここをご覧いただきたいと思います。源泉徴収義務者は証券会社等で、これは、例の特定口座のうちの源泉徴収選択をした場合のケースでございます。この場合、譲渡所得、譲渡益の支払者自体ではないのですが、口座を管理する者ということで、源泉徴収義務者が証券会社になっています。投資家が住所・氏名を告知いたしますが、源泉徴収義務者は年間分のものを翌年の1月10日までに1年分まとめて源泉徴収税額を納付する。年間取引報告書、ある種支払調書みたいなものですが、当初、14年度改正で入れた際には必要だったのですが、15年度改正におきまして、税務署への提出義務を解除した格好になっています。現時点におきましては、源泉徴収、申告不要を選んだ場合には、税務署にとりましては、どの人のどういう税金が入っているかというのがわからない状態になっているわけです。

次のページ、「1年分まとめて」と、このように申しましたが、取引の都度に口座管理者たる証券会社は源泉徴収をいたします。利子、配当と違いますのは、損をする場合もキャピタルゲインの場合は当然あるわけでございます。1つ目、2つ目、これは益が出たので源泉徴収いたします。その次に損が出ましたと。その20%について、現在10%ですが、それについては、今まで天引きしていた源泉徴収分をそこから差し引くという形で返還する。こういったことを1年間分を全部ネットアウトして、最後に年間分を一括して国庫に納付、このようになっているわけでございます。月々納付というやり方ではない。さらに、この口座の中においてはある種自動的にプラスとマイナスのネットアウト計算がされているということでございます。

19ページでございます。今申し上げた特定口座でございます。おかげさまで大変急増いたしております。特に昨年の12月のひと月で100万近くの口座が増えるということになっています。現在300万余。おそらく、2、3カ月たっておりますので、さらに増えているのではないかと存じます。

20ページ、キャピタルゲイン課税の沿革です。ここで特筆すべきはやはり平成元年かと思います。それまでは原則非課税であったものを課税化する。課税ベースの中に株のキャピタルゲインも入れていくということをしたわけです。さらに平成11年度、有価証券取引税が廃止されると同時に申告分離課税の一本化も決定されたということでございます。

次のページは主要国の株式譲渡益課税の概要でございます。これも何回かご覧いただいていますので、説明は割愛させていただきます。

以上、利子、配当、株のキャピタルゲインと来たわけですが、4つ目です。公社債課税の考え方でございます。現行制度におきましては、公社債の譲渡益は非課税となっています。税金がかかっていません。逆に、損が仮に出てもそれは考慮しないというのが現状でございます。何故、公社債課税、譲渡益課税をしないのかということですが、簡単に言いますと、22ページの図でございます。そもそも公社債の元本価格が上がっていくというのは経過利子を反映したものである。利払いのときに課税を行うことでいいではないかと。途中で値がだんだん上がっていく段階で売ります。この場合、AさんからBさん。この段階で課税いたしますと、利子が払われた際の課税とある意味ではバッティングしてしまう。このような理屈を今まで説明していたわけでございます。

次のページでございますが、公社債マーケットのサイズを図示したものです。ご覧いただきますように、昭和62年、まさにバブル、コーポレートファイナンス、ワラント債等で急激にマーケットサイズが大きくなった時期がございます。バブルの崩壊とともに、2年、3年、4年というふうにマーケットサイズもシュリンクしたわけですが、ここのところ、ご覧いただきますように、むしろバブルの時期に近づくくらいにマーケットサイズが大きくなっているということです。昭和50年代半ばと比べようもないくらいに大きくなってきている。もちろん、この中に占めます、所得税が関係いたします個人の取引というのは未だ低調ではございますが、マーケットで値段が決まるようになってきているということが言えようかと思います。1ページ前の簡単な図、経過利子を反映して元本価格が動くという、ある意味では単純すぎるモデルだけでは説明できなくなってきているということです。このモデルだけ言えば、損があり得ない、そういう性格になるわけですが、実際は全体の市場金利が上がれば当然元本は下がっていく、このようになっているわけでございます。

24ページ、主要国における利付公社債の利子及び譲渡益に関する課税です。利子はまさに利子課税が行われているわけですが、譲渡益につきましては、アメリカ、フランス、このあたりは課税にしています。ドイツは一般的に例の投機的なもの、1年以下の保有についてのみ課税、このようになっているわけでございます。

最後に、本日、ここまでご議論が及ぶかどうかわかりませんが、今申し上げた4つの類型以外のその他の商品でございます。外貨建ての商品、保険・先物等、こういったものの換金時の課税のあり方です。外貨建て商品、特に為替差益の課税ですが、外貨建ての預金につきましては、先物予約があるかないかで変えているということでございます。先物予約があれば為替差損益は利子と同様の課税が適当であろうという考え方が背景にございます。

さらに外貨建ての利付債、上から3つ目ですが、売却段階、これは為替差益も含んで非課税。先ほど申し上げたように、公社債の譲渡益は非課税という考え方にのって非課税になっている。償還まで待ちますと、総合課税、雑所得として申告していただくことになる。この場合、為替差益についても雑として総合課税、申告していただくことになるということで、聞きますと、満期すれすれに売り抜けるという形で譲渡益課税、すなわち非課税の扱いにして済ませてしまうケースもあるやに聞いているわけでございます。

下の保険をご覧いただきますと、養老保険は一時所得として1/2の総合課税。それから保険期間が5年以下の一時払養老保険、これは一時所得なのですが、20%の源泉分離課税、いわゆる利子並みになっています。個人年金保険は総合課税。変額保険は一時所得又は雑所得、このようになっています。先物につきましても20%の申告分離ということで課税されていますが、所得分類としては主に雑所得でございまして、このあたりどれくらい課税の実がいっているのか、ちょっと我々としては自信がない面もあるのですが、雑所得として申告をお願いしているものもこういう中に入っているということでございます。

26ページから過去の答申をご参考までにつけております。特に平成12年7月の中期答申、それなりに各金融資産からの所得の性格論について触れています。下線を便宜につけておりますので、後ほどお目通しいただければと存じます。

最後のほうは、いつもつけておりますが、各国のフローチャートでございます。ご議論に応じてご参照いただければと存じます。

以上でございます。

委員

それでは、皆さんのフリーディスカッションに移りたいと思います。今日は、損益通算について、とりわけ課税方式の違い、利子所得、配当所得、公社債の譲渡益とか、損とか、もちろん株式の譲渡損益、今日は特に益のほうですか、そこら辺の関係でどういうふうに損益通算を考えていくべきかということについて、自由にご議論いただきたいと思います。

これからの時間では、最初にご紹介いただいたメモにあるような項目等についてのご意見など、ご自由に質問や意見をいただきたいと思います。もちろんメモにない項目についてもご意見を出していただきたいと思います。

では、どうぞ、どなたからでも。

委員

今、金融制度改革と規制緩和の中で、いろいろなところでクロスセールを可能にしようという動きが出てきていて、おそらく銀行でも証券とかいろいろなものを扱えるようになっていったり、また、すでに個人年金保険とかそういったものは取扱い量も増えています。そういうような形でいろいろなものが銀行、また、そのほかの業態もあり得ると思うのですけれども、クロスセールされるようになっていくと、おそらく一般の利用者にとっては特定口座のようなものが、証券会社だけでなく、業態を問わず、インフラとしてそういった仕組みが整備されていくという方向が利便性の観点からは望ましいということになってくると思います。おそらく規制緩和の方向と併せて、そういったデリバリーチャネルに応じてどういうインフラを整備していくかということも議論の対象になっていくのではないかと思っています。

委員

今の点に関連してですけれども、ある種のアグリゲーションサービスを提供する業者が登場し得るでしょうかね。現状において、証券会社だけで済まない部分を含めて、個人の金融所得を一元的に管理して、仮に損益通算が金融所得について広く認められるようになれば、そういう処理を代行してくれるアグリゲーションサービス業者のようなものがもし登場しようとしたときに、現行法上、何か制約になって、そういうサービスの提供は非常に難しいとか、そういう事情はあるのですか。

委員

これは、事務局か、あるいは……。まず事務局から。

事務局

例えば、証券会社は為替業務ができないといったような背景もごさいまして、証券会社、今、特定口座というのはまさに譲渡益の売り買いの管理をしているということでございます。例えばその株の配当などは、まさに会社が支払う際に源泉徴収をする、この特定口座は通らない、このようになっております。

今後、どのように金融の世界が変わっていくのかというのは、もちろん、いろいろな場でのご論議次第だと思われますが、現時点においては、支払者、口座の管理者、金利の場合は当然銀行が支払者になるわけですが、証券会社とはそこは全く違う。おのずからバリアというのは存在しております。

委員

そうすると、結局、個人が最終的に税理士さんとかに依頼するにせよ、処理をして申告するという形をとる以外にないということですか。

事務局

委員のお話は2つの面を分けて考える必要があると思います。税制面の損益通算の範囲をどうするか、これはあくまでも税制の問題として税調を中心に議論していただいて、結果的にこういう損益通算は認められるとかいう形ができる。もう一つは、それでは金融商品の取扱いをどういう業態が行って、業務免許なりいろいろな制約がどういうふうに外れていくかという話。最終的にユニバーサルで何でもできるようになって、一つの金融機関であらゆる金融商品が扱えれば、税法上の損益通算ができるということとそういう機能を両方合体すれば、金融機関の段階で損益通算のすべての業務を代行して特定口座を発展的にすることはできると思います。

しかし、そこのところは、まず税制をどうするかという話と、いわゆる金融の業態の規制改革をどうしていくかという話と、今の段階では2つの両方とも制約がありますから、そこのところを克服していくことが必要ではないかと思います。

委員

よろしいですか。実務といいますか、実情にお詳しい方々から、問題提起か何かございましたら。よろしいですか。

委員

やりたいんでしょう。だけど、できないだろうという話。

委員

ですから、直接業務をするのではなくて、要するにゲートキーパー的な事業者が登場し得る余地……その業者は、別に証券業務と銀行業務を兼業したいとかそういう話ではなくて、あくまでも個人投資家とのインターフェースのところでゲートキーパーとして資産管理のサービスを提供する。その資産管理サービスの重要な一環として金融所得に関する処理を一手に行うという業者が出現することも、現行法制上、非常に困難なのかどうかという意味だったのですけどね、質問は。

委員

3年前でしたか、株式の譲渡損益の有取を廃止して申告分離にしたときに、いろいろな問題があるので、特定口座という仕組みというものが、税調が作ったというよりも、議論の過程でそういうものが提案されたわけですよね。今回の話は、今度は損益通算とかいろいろなこととの関係で、納番というこれまたインフラを考えたらどうかという話も出てきているわけです。だから、むしろ問題意識としてこういうインフラ整備が必要なのではないかということをおっしゃっていただいて、あとは、知恵を、民間の側からなり事務局から出していただく。場合によっては、法的な整備に関しても周辺の人たちも含めて考えていただくことを期待するといいますか、希望するというか、それはあり得るのではないかと思います。

委員

まさに今、小委員長がまとめていただいたような趣旨で理解していただければいいのですが、そういう方向性で考えるときに、すぐに思いつくような障害がもしあるなら、ちょっと教えていただきたいということだったのです。

委員

私も、今おまとめいただいたような内容の趣旨ですけれども、クロスセールという形で積極的に取り組んでいこうと思えば、こういったインフラを提供すること自体がビジネスになっていって、おそらく、そういったところへのインセンティブというのは働くはずだろうと思います。

委員

今の委員の提示は非常に関心のあるところで、おそらくそういう商売は出てくると思いますね。それで、今、言われたように、前提のインフラとして納番制ということも重要な問題かもしれませんけれども、欧米各国で納番制ができているところでは、向こうではそういうようなサービスをする専門会社なり何なりが業務としてあるのかどうか、その辺教えていただきたいと思います。

事務局

例えばイギリスのように納番がないところもございますし、それから、基本的にはキャピタルゲインの世界とそのほかの金融所得の世界を分けている、そういう国もございます。完全にクロスオーバーな金融所得をどんぶりとして損益通算をし、その損益通算を代行する業者さんというか、サービスセクターが隆盛しているということはあまり聞いたことがないですね。

委員

少しいろいろと実情を調べていただいてお知恵も絞っていただくということで、問題提起として受けとめたいと思います。

委員

今日の中には、比較的簡単な問題と、非常に大きな理念に関する問題と混ざっているような気がするので、全体について議論を一括するのはなかなか難しいと思うのですが、例えばやりやすいというか、比較的簡単なのではないかと思うのは、公社債の課税を、譲渡益、利子、なかなか区別はできにくくなっているわけですから、それについてやるというのはそんなに難しい話ではないのではないかと思います。総合口座もあるわけですし、どうしてこれができないのか。先程の理念というのはもう一つよくわからなかったことがあるし、規模がこれだけ大きくなっていることもありますし、公社債とほかを区別する理由はほとんどないのではないかと思いますので、この辺はすぐにでもできるような気がします。

それを越えて損益通算の範囲をどこまで広げていくかという問題、これはまた法律とも絡んで非常に難しい問題があると思います。これは質問ですけれども、この間、新聞報道で、ゴルフの会員権は贅沢品だから通算の外に置くという話が決まったというようなことが書いてあったような気がするのですが、それはどういうことにかかわっているのでしょうか。ちょっとその辺の事情を説明してください。

事務局

そのような事実はまだございません。いろいろな議論があることは確かでございます。特に今回、土地の譲渡損についての損益通算ということでご論議がございました。その関係もあっての記事だったかなと思いますが、生活に通常必要でない資産の譲渡損というものの範囲をどこまで見るかというのがこの問題になっているわけでございますが、現時点においては、今お話がありましたように、その他資産の譲渡益、これは総合課税であり、譲渡損が出た場合にはほかの所得から差し引ける、このようになっており、これは今後の課題でございまして、決まったという事実はございません。

委員

それでは、さっきの最初の話に戻りますけれども、公社債について、どうして今までこれがそのままになっているのかというのも質問の項目ですけれども。これは技術的にもできるのではないかと思うのですが、どうしてなっていないのかというほうの理由が、もしあれば教えていただきたいと思います。

事務局

先ほど簡単な三角形の図でご紹介しましたように、経過利子、そちらの課税で一本化すればいいだろうというのが基本的な説明でございました。しかし、先ほど申しましたように、マーケットサイズも大きくなり、値動きというのはこの経過利子だけでは説明できなくなっている、そういう状況があるということを申し上げた次第です。いろいろなシステムの問題等々もあろうかと思いますが、物の考え方としては、経過利子課税一本化というだけではもう説明できなくなっている、このように考えております。

委員

今のことに関係して一つ質問したいことがあります。公社債の利子の課税について、利子が入ってくるそのときにタイミングをとらえて課税すると。もしそういう前提に立つとする話ですけれども、その前提で考えたときには、元本というのが税務上の基準価格というかベースになって、そして課税された部分がプラスアルファになって、後で譲渡損益が出るときの計算のときに差し引く、それが所得税の普通の考え方ではないかと思うのですが、どうしてそうではないのかというのが一つです。

もう1点は、前々回に会長が哲学の問題があるというふうにおっしゃった点に関係するのですが、例えばアメリカの例では、お金が動いたときに課税するということではなくて、所得というのを人にとらえてみて、そして利子というか、時価とちょっと違いますが、お金が動いていなくても、この部分はタイムバリューというか、利子、まさに純粋な金銭の時間的価値だという部分をとらえて、それを所得として課税していく、そういう考え方だと思うのです。そういうふうにすれば、ほかのいろいろな金融商品との関係でもいろいろなイノベーションが可能になると思うわけですが、日本はどうもそういうことができていない。

どうしてそうかと考えると、そこは、人を人としてとらえて課税するという所得税の考え方ではなくて、お金が流れたら、そのときに物税といいますか、そこで源泉徴収をするのが簡便だと、ずっとそうだったのではないかと思うのです。だからそこは、特定口座のこともそうですし、源徴のことも一律源泉分離がいいかどうかということも含めて、公社債で、どうしてOIDルールができないかというと、どうもそこの哲学のところで日米が違っていて、だからではないかという感じがしました。そうだとすると、これはそんなに簡単な問題ではなくて、所得税をどう仕組むかという一番基本のところに関係する問題がここにあらわれているのではないかという感じがするわけです。2点目は、質問というより意見ぽいのですけれども。

事務局

委員の今のご指摘、理論的にいろいろご指摘がありましたけれども、率直に申しまして、先ほど事務局から説明しましたように、結局、規制金利時代、マーケットがない時代の利子という経過利子が、元本変動というのはそれしかないのだということだから、ネグリジブルではないかと。キャピタルゲインを原則課税にしたときに、この利子はもうこのままでいいではないかというような感じだったと思います。ただ、それが今、マーケットというものがあり、金利の変動が元本変動に相当多く……金利変動もすごく大きいものですから、そういうことで、ぜひ、むしろここの場で、こういう状況を踏まえてどうすることが望ましいかということでご示唆をいただければありがたいと思っております。

もう一つは、キャピタルゲインと、いわゆる利子とか配当のような恒常的な所得というのは、そこはちょっと性格が違うということで、今でも基本的には、キャピタルゲインというのは期間の結果生じたものがある一定の時期に顕在化する。しかも顕在化させる時期は非常に自由があって操作性が高い。一方、恒常的な所得は、そういうものとはかかわりなく生じてくる。逆に言うと、そこのところの違いは今でも我々は強く認識していますので、本来は違うであろうと。アメリカでも総合課税をやっていますが、キャピタルゲインと恒常所得の損益通算というのは非常に制約している。

ただ、そういう中で金融商品という立場から見ると、そこのところは別の考え方もあり得るのではないか。いや、しかし、そこはまだやはり制約が要るのだと、この間ちょっとご議論いただきましたけれども、そういう部分で、今回の公社債の利子と公社債の元本のキャピタルゲインも、基本は利子とキャピタルゲインの違いは本来あるのではないかと思っております。

事務局

利子課税からキャピタルロス分を差し引くのはなぜできないかということですが、図の上はでき得るのですが、課税の仕方として、利子のほうは源泉分離で、誰の税額かわからない状態で徴収していますので、引き算ができない。理論的な話はありますけれども、一律源泉分離課税をやってしまっている利子についてはそういうことがございます。差し引き計算が実務上できません。

委員

利子からは引くことはできなくても、もし譲渡所得を非課税にせずに、そして総合課税で考えれば、そこのときに調整することはできるのではないかというのが一つです。

もう一つは、公社債のときに、これまではそんなに変動が出てくるということではなかった、ネグリジブルだったというお話ですが、公社債といっても社債は自由に作ることができるわけで、エクイティリンクというか、リスクを取るような形で設計をするものがもし市場にたくさん出てきて、しかも、それを個人がたくさん買いますというようなことになったら、ほとんど株と区別がつかないものを作ることができると思うのです。そうなると、今のままのルールで本当にいいのかということは問題になるのではないかと思います。

委員

今日は利益の話なので、譲渡益の場合、最大の問題は、たしかに理想的な所得概念としては譲渡益に対して課税するべきであるといいますが、それは発生主義ベースの問題であって、しかし、現実の譲渡益……これは公社債であろうと株であろうと、これは実現ベースですから、それが実をいうと株のキャピタルゲインの場合、土地もそうなんでしょうけれども、実現主義ベースでやるから、ロックインエフェクトだ何だという問題、そういった問題が起きてくるわけで、公社債についても、たしかに所得概念に沿えば、やはりゲインがあるのだからそれに課税すれば、と。でも、それは実現ベースではなくて発生主義ベースでの所得概念である。しかし、現実に我々がもしこれに課税しようと思うのであれば、それは実現主義、キャッシュベースになってしまいますので、新たな別の問題を引き起こすだけのような気がしなくはないですね。

私の理解が正しければ、株と債券の違い、もちろんリスクの程度も違いますけれども、債券の場合、公社債とかでやれば満期がありますから、ゲームオーバーのところが必ずありますので、逆に、最後は償還のところで課税すると。課税の繰延べになっているのかもしれませんが、そこで確実に課税するのはそんなに悪いアイデアではないような……。もちろん、いろいろな金融商品でハイブリッドができていくと、ネットでゲインが生まれる構造になるというのであればまた考え直さなければなりませんが。

先ほど外貨建て利付債で、例えば売却のときに非課税で払戻しのときに総合課税だから、駆け込みで売る人がいるといいますが、売る人がいるのだから買う人がいるわけで、これは要するにババ引きみたいなもので、最後にババを引いた人は税金を納めるということになります。市場が効率的であればその分キャピタライズされますから、帰着というところだけ言ってしまえば、誰が負担しているかといったらたぶん持っている人が負担しているはずですね。もちろん、市場は効率的ではないといったら話は全く変わってきますけれども。

何が言いたいかといいますと、譲渡益の場合、我々が見定めているのは発生主義ベースなんだけれども、実際やっている課税は実現ベースである。そこのギャップが意外と重要な問題を引き起こすのではないかということです。

それから、これまでの議論、損益の損のところで一つだけ。配当の場合は二重課税問題というのが否応なくて出てきていて、総合課税でやれば税額控除が受けられるのでしょうけれども、これから分離していくというときに--これは別に今日の議論ではないかもしれませんが、配当所得をこれから分離課税のほうで一本化していくときに20%で、ただ配当だけに関して言えば、今言ったように、二重課税のところをどう調整するのだということ、それは考えなければならない問題なのではないかなと、ちょっと印象ですけれども、それだけです。

委員

公社債のほうに議論が集中していて、これはむしろ簡単ではないかというご議論も本当は多いのではないかと思います。簡単だったらば、そうだということもおっしゃっていただきたいのですが、むしろ問題は、1つが、配当所得、配当控除の問題ですね。特に総合課税でやった場合に配当控除をどうするか。特に欧米では、さっきご説明がありましたけれども、インピュテーション廃止の方向。そうすると、分離だけで、例えば控除も全くなくしてというチョイスもあるのかもしれませんが、そこら辺をどうお考えになるか。上場株式の大口以外とか、公募株投というのは20%源徴で申告不要となっていて、申告して配当控除を受けることも可能とされているわけですが、配当所得のもとになる株式というのも金融商品だというふうに割り切れば、配当控除は必要ないのかもしれないという議論もあり得るだろうということです。

それから、配当所得に関して皆さんに議論していただきたいもう一つの論点は、大口株主のところでして、配当所得については事業参加性がある性格の配当所得もあるわけです。それが特に大口株主の場合であって、その場合には総合課税とされているわけです。これをどうしたらいいかということが問題の1つで、論点が2つあると思うのですが、1つは、大口株主の総合課税を維持すべきかどうか。これは事業所得との関係で、分離課税にしてしまうと、高額所得者にとっては、あるいは大口株主で高額所得の人たちにとっては相当の減税となる可能性があるわけです。そこを割り切っていいものかどうか。もう少し言えば、法人成りみたいなものがたくさん起きて、法人成りによる租税回避が結果として起こるのではないかということをどう思われるか。

2つ目の議論としては、逆に総合課税を維持するとした場合、大口株主の配当所得を金融所得と見て損益通算の対象とすべきかどうか。これをどうしたらいいかということも議論していただきたい。

あと、利子所得とか、譲渡益課税、特定口座の問題もありますけれども、特に配当関連でご議論があればぜひご意見を賜りたいと思います。もちろん、公社債とかほかのことに対して議論してはいけないということはございません。

委員

ちょっと質問していいですか。この配当の二重課税というのは税調が発足以来延々と議論しているんですよ。私も長くつき合っているんですが。昔は、配当の二重課税が存在するか存在しないかから議論があって、計算付きの資料がよく出てきた。インピュテーションがどうだとか、支払い軽課何とかと言ってるんですけど。よくマスコミで批判というか、特に証券会社あたりから出ますよね。二重課税をなくせば株価が上がるようなことがしょっちゅう出てくる。それに対して、現実は二重課税になっていないよと。あるいはなっているのかもしれない。伝統的には、部分的に二重課税を排除すればいいという発想ですね、つまり転嫁の問題があるから。

ただ、今、事務局の問題意識としては、そういう計算をしてもう一回エビデンスを出そうというところまでいってないのか。最近全く資料が出てこないから、どうなっているのかと思って。さぼっているわけではないと思うけれども、何か哲学があるのかもしれないから、ちょっと聞きたいと思います。

事務局

この問題はご指摘どおり、ずっとやってきて、一度整理したつもりなのは、実態はやはり別だと。そもそも二重ということよりも、法人の課税と個人段階の課税は別に考えよう、あとは全体のトータルの税負担の問題としてそれぞれがどの程度がいいのかという話で、大きな流れとしては、例の配当軽課も切りましたし、受取配当の益金算入もどんどん増やしています。そういう意味では私どもとしては、もう一回従来版の二重課税論議を云々ということは最近はしていない。

ただ、金融所得の一元化とかいろいろそういうことをやっていく途中で、法人の負担と配当の税負担をどういうふうに整理していくか。諸外国も、アメリカもこの間いろいろ動きがあったので、やはりこのあたりで一度考え方を整理しておく必要はあると思うのです。逆に言うと、従来型の議論で行くのか、それとも全く別の切り口で……。例えば、実効税率とよく言いますが、それとよく似ているのですけれども、法人が稼いだ所得を民と官でどういうふうに分けるか。法人税率50%にして配当をゼロにするのと、法人税率を30%にして、個人のところを20%にするので、ある意味では国と民との分け方は同じなので、二重課税だから云々というよりも、一重か二重かよりも、実効的に誰がどの程度負担して、最終的に国と民がどういう取り方をするかという議論もあり得るのではないかと思います。だから、配当の問題というのはそういう意味では法人の負担との調整もあって、2つの側面で少しここは議論が必要かなと思っています。また、資料等はもちろん出し惜しみしませんので、必要に応じてやります。それはぜひご注文いただければと思います。

委員

いろいろな議論が出て、なかなか頭の整理ができかねたのですけれども、まず大口の話で、10ページです。大口というのは、ここに書かれたように、株式等の保有割合が発行済株式総数の5%以上である人。この場合には総合課税になっている。これをどう考えるかということですよね。上場株式で大口というのは、そういうお金持ちがいるわけです。それはこのルールに従えば、我々は金融所得課税というのを、今、一元化しようとするわけですから、私の考えは、これは右側のほうで扱えばいい。金融所得一元化の中でやればいい。

たまたまその人がお金持ちなわけですよね。大資産家であるから、大資産家であるならば総合課税にして、そうではない場合には一元化というのはおかしくて、大資産家に対して課税すべきものは相続税でかけるとか、保有資産に対してかけるというならわかるんです。たまたま誰かが、どういうプロセスでもいいのですけれども、上場株の5%以上を持っていると。そうすると、あなたは、我々がさんざん議論してきた金融一元化の枠には入らないでほかのところに入りますよと。それは我々の議論からすれば違って、そういう人にかける課税としては、資産に対してかければいいというのが、私の整理というか、ここの場の整理だったと思うのです。

委員

それは上場の大口の話ですか、非上場の大口……。

委員

非上場の大口というのは変な話で。

委員

非上場です。

委員

わかりやすく言えば同族会社みたいなものですよね。そこがポイントで、これを課税にするというインセンティブはあるわけです。金融所得がまだまだ非常に魅力のある所得だということは前回も出てきましたけれども、所得を金融資産のものに化けさせるというのが、それはあるわけですよね。対処としては、そこを総合課税で対処するのか、同族会社に対してどうするのかというのはありますよね。たしかオランダの場合がありましたね。同族会社のボックスだけ特別に扱わせたと。

だから考え方としては、もらうほうで整理するとごちゃごちゃになる。もらうほうは一本の箱で入れる。ソースとして特別な同族会社というのがある。放っておくと、その人たちはタックスの工夫をして給与部分と資本所得部分をマニュピレートする。したがって、ソースのほうで特別な工夫をすると。実はそれは、各国、オランダはシンプリファイしたけれども、私の見る限り、たまたまノルウェーに行ったりして見ていたけれども、ものすごく大変なことやるわけです。その人たちの給与所得部分と資本所得部分をどうやって配分するのか。放っておけばほとんど資本所得にしてしまうわけですから。

その問題は、もらうほうで総合課税にするというのは我々の趣旨ではなくて、大変であっても、みなしとか、例えば少なくとも給与部分は75%なければいけないとか何とかにして、そっちのほうで整理するということが上場の場合と非上場の場合の大口の扱い方なのだと思います。

委員

要するに配当に関しては普通の一体化の中に入れて、ただし、同族的なソースの部分で少し規制をかけると。

委員

それは、特別なことをする必要はあるだろうなと。

委員

それが委員のお考えだということでよろしいですね。

委員

はい。

委員

ほかに関連して、あるいは、配当控除も含めて。

委員

言葉というか、概念が曖昧な部分があるのはやはり整理する必要があるのではないかと思うのですが、大口、小口、なぜ5%でそうなのかとか。それから、これは質問になるのですけれども、「事業参画性がある」、この言葉がもうひとつよくわからないのですが、これはどういう意味なのですか。リスクを取っているという意味ですか。事業参画性があるということで優遇しているのか、優遇しようとしていないのか、どちらでしょうか、この言葉の意味は。

事務局

これは議論の整理も必要だと思うのですが、実は、一昨年になりますか、証券税制をかなり大きく見直した、その最も大きな要因は「貯蓄から投資へ」、資本市場を活性化するには税制をなるべく簡素にしてわかりやすくしていこうと。したがって、ターゲットとして我々はまず市場性の株式に着目し、しかもそれが、もともと創業者で、上場企業であっても創業者のような方をターゲットにした税制をということではなくて、一般の投資家をターゲットに、まずそこに議論を集中しているのです。逆に言うと、全体の配当所得の課税方式について全体的な議論をしないで、当面何とかしなければいけない部分をピックアップしてやりました。その基準に5%という基準を使っていますので、今、委員に議論していただいたここの部分は、むしろ今やっていることをちょっとおいて、本来的にどうすべきかという議論をしていただければ、私どもとしてはよろしいのではないかと思っています。

あのときの改正は、今言った事情が実務からまず入っている部分がありますので、本当の意味の損益通算を認める金融所得の範囲とか、上場株式とか非上場株式の区別が要るのかとか、二重課税の議論をどういうふうに整理するのかというのは、現状というよりは、むしろ改めて議論していただくほうが私どもとしては望ましいのではないかと思っております。

委員

そういう議論も含めて、どうぞ。

委員

今の話は私が聞いていた感じでは、株式保有には、一般的に言って、投資目的とコントロール目的というのが考えられますよね。株式を買っているときに、通常の意味の投資を目的にしているのか、それとも、事業参画ということをおっしゃいましたけれども、コントロールを目的としているのかというのは、意図の問題だから、心の中は見えないから、外形基準で区分するしかなくて、外形基準で区分するときに5%がいいのか、10%がいいのか知らないけれども、それを越えて保有している場合はコントロール目的であろうというふうに見なす。それ以下は投資目的だというふうに見なすと考えたときに、コントロール目的で株式を保有している人に対する配当というのは金融所得なのか、というのがたぶん問題提起のポイントだったと思うのです。

金融所得というのは、インベストメントに対する報酬を金融所得と言うのだろうと。そうすると、単なるインベストメントを越えてコントロールに基づいて何か利益を得ている部分は、それを勤労所得とも言いにくいと思うのです。それは金融所得と言い切っていいのだろうかというのが、事務局の問題提起ではなかったかというふうに思いますが。

委員

今の点で言うと、アクティブな投資とパッシブな意味の投資がありますので、前にスウェーデンのときにやったと思いますけれども、あそこの二元的所得税の二元は勤労所得と資本所得であって、その資本所得の中に、もちろん金融所得も入っているし事業所得も入っている、そういう扱いだったと思います。ここで、大口で、しかもコントロールを目的とした……インセンティブ上重要なのは、配当をいくら配るかとか、そういったことを決めているのはその人たち自身ということになりますから、当然、マニュピレートする余地というのは多いわけですね。

したがって、そういう人たちに対して特別な何か措置をしなければいけないというのはわかりますけれども、だとしたら、そういう大口の人たちに対するいわゆる配当というのは、実は配当という性質ではなくて、いわゆる事業所得というか、事業所得というのは税務署向けの言い方ですけれども、経済学用語でいえばレントという言い方になると思いますが、それは特別な対処が必要だというのはわかります。ただ、5%かどうかは私はそれは何とも言えない、ノーバディ・ノーズでしょうけれども。

あともう一つ、二重課税問題、これは学生に教えるときもいつも困るのですけれども。ただ、経済学者と法律を考える人で全く考え方が違うみたいで、見なすかどうかというのと、実態がそうかどうかはまた別の問題でして、やはり実態として見れば二重課税はあるわけで、ないと見なしてもあるわけです。同じソースに対して2回税金をかけているわけですから。

となると、そもそも金融所得の一体化の目的は何かといったら、「貯蓄から投資へ」と。つまり安全資産から、株であるとか、リスクテイキングへというのであるならば、そのリスクテイキングを、エンカレッジしろとは言いませんけれども、阻害しない税制というのであるならば、20%に統一したからそれで済んだのだと言えないのは、二重課税の問題が残っていますから。まさに実効税率ということで見て、株に投資したときのほうが税率が高くなるというのであれば、それは貯蓄から投資への動きは阻害してしまいますから、そこは何らかの対処は考えなければならないのではないかと思います。

委員

今の話との関連で言えば、配当とキャピタルゲイン、これは基本的に利益処分になるので、こう分けることも一つ問題かもしれません。

委員

私は法律家ですが、二重課税というのは、二重課税だからいけないのではないけれども、ファイナンスにすごく変な影響を与えたり、法人形態か非法人形態かに変な影響を与えたりするので、よくないことだというふうに思っております。これはおそらく、法律家の中にもそういうふうに思っている人が多いのではないかということです。

それから、大口株式というのが5%切るかどうかは別としても、大口かどうかということをどう考えるか。特に一体化のときにどう考えるかということですが、これはたしかに相続税で見ればいい。あるいは、同族会社の段階で見ればいいという議論はもちろん立つとは思うのですが、しかし、仮に所得税固有の再分配の機能を大切だと、もし思うとすれば、それは累進税率にふくさしめるような総合課税がいいだろうとか、あるいは、今言ったような二重課税をいろいろな形で排除するようなことをするにはやはり総合課税のほうがなじむ。

あるいは、物と人との区別で言うと、会社の段階で何か区別したりするよりは、個人を見て個人の段階で再分配ができる、これが所得税の意味だと思いますので、もしそちらのほうに立つならば、大口であれば総合課税、外に出すという考え方もあり得るのではないか。しかし、おそらくこれは、法律のほうが大切だと考えるか、あるいは物税のほうがいいかと考えるか、大きな哲学にかかわる問題だと思いますので、意見はおそらく分かれるだろうと思います。

委員

私は実務をやってきた経験から申し上げますと、大口だから別にすると。あまり意味はない話で、例えば上場会社で5%以上を個人が持っているというのは非常に少なくなっています。おそらく上場直後においては非常に多いわけです。そのうち、あるいは上場直前にみんな知恵を働かせて、財団法人を作ったり、持株会を作ったりということで、個人の保有は非常に少なくしていくということで、同じにすると金持ちがよけい優遇になるという話もありますが、これは大いに結構な話ではないかと思うのが一つです。

特に、今、中小企業の我々が接触するところはみんなわりあいいいところですけれども、問題は、中小企業でも3割しか配当しているところがないわけです。470万社とか言ってますけれども、彼らの一番の関心は、配当をどうして、自分が配当所得を取るなんて話ではなくて、自分の会社の株価を、子供に譲るとか、あるいは外から経営者が来たときに値段がいくらになるかという、そちらのほうの話なんですね。持株の評価の話が最大の関心事であって、したがって、上場、非上場ということで区別してもしようがないなと。非上場数百万社全部相手にしても、これは事務的にも困る話だと思います。それが一つです。

あとは、税制も、中小企業の承継税制の持株の評価の問題はいろいろと当局も考えてやっていただいてきておりますけれども、例えば私の部下だった男は婿養子に行って、そのときは最低だったので、義父から全部株を受け取ったときはゼロだったんですね、要するに無配ですから。そうしたら、30年間刻苦精励してやってものすごくいい会社になった。さあ今度は自分の息子に譲ろうかといったら、とんでもない値段になってしまうというような現実があります。中小企業の非上場の場合はそちらのほうが現実的には大きな問題だという、現実だけちょっと報告しておきます。

委員

配当所得の一部に事業参画の性格を持つ可能性があって、それが租税回避に使われるだろう、デリバティブというような洗練されたもの以前にその可能性があることは、前回、すでに指摘いたしました。ですから、範囲をどう切るかというのは問題だと思いますが、私は、ある一定のそういう非上場のものを含めて総合課税を残しておくというのは、事業所得との比較という観点で現行制度の上では十分考えられる選択だと思います。それが1点です。

それから、この問題を離れまして、今日、我々に投げかけられている問題の性格がちょっとわかっていないので、教えていただければと思うのですが、各金融商品の課税方法を、例えば公社債の譲渡益はどうするのですかというような議論をするのではなくて、その大枠が損益通算ですよね。損益通算の中で益のほうの課税方法が区々になっているが、いかにすべきか、そういう問題であると認識をしております。

前回の最後にもこの点何かないかということを問われて、特に発言もしませんでしたのは、常識的に考えれば益のほうが、源泉分離の形になっていても、源泉分離選択にして一本化した申告分離にすれば損益通算は技術としては難しくないわけです。あとは、支払調書が出ていないとかいうところをどうするかという話に技術的になってくるし、およそ支払調書を取れないという場合には、それは損益通算の対象に技術的にできませんねという話だろうと思ったのです。あるいはそこからさらに進んで、前々回、タックスベネフィットナンバーという話がたしか出ていたと思いますが、どうにかして申告をせずに損益通算をする仕組みをこの益の課税の枠内で考えろ、というのが今日の問題であるのかとも思ったのですが、その辺はいかが考えればよろしいのでしょうか。

委員

事務局に、何かあれば聞いたほうがいいかもしれませんね。

事務局

あくまで我々が議論していただければと存じあげておりますのは、益の課税がちゃんとできているかどうか。さらに加えまして、それを確実に税務当局が把握しているかということでございます。現状においては、各納税者自身が申告をするという形において、こういう益をこっち側で出し、それについて源泉徴収も受けています、こういう損が出ました、それを損益通算、こういうのが基本的な姿であろうかな、こんなふうに思っております。

委員

一番最初に数名の委員がおっしゃったのがむしろタックスベネフィットナンバー的な形で、自動的にできる、納税者の利便のためになるような仕組みはないでしょうか、という話につながるのだろうと思います。他方でもう一つ、徴税側としては、正確さといいますか、申告できちんとした納税が行われているのかどうかということが実態として担保できるのかをご心配になっている、両方の問題がたぶんあるのだと思います。

事務局

まさに今おっしゃったとおりなのですが、我々としては税制としての損益通算の条件というものの制度をきちっとして、どれとどれを損益通算するかというまず仕組みがあって、その上で、納税の便宜のためのツールのようなものはもう一つ次の世界で、実務的なことも含めて……例えば特定口座制度というのは、かなり実務的にいろいろ議論して作る必要があったと思うので、その前に申告分離に一本化するということがあって特定口座という制度が出てきた。だから逆に言えば、損益通算を理論的にどの範囲でどうするか。

さっきも言いました課税方式のほうも、総合課税の所得を定率分離課税の損でどんどん消していくということはやはりおかしいので、そこは課税の対象でなければいけないのではないかとか、そういうところは、我々としてはまず整理をしていただけたらと。その次のステップとして、納税者便宜のための仕組みづくりのようなこともまたご相談できたらと思っています。

委員

今との関連で、注意を喚起してほしいたいのはあと2点ほどございまして、1つが利子所得に関連してです。現在、一律源泉分離課税ということで、さっきご説明がありましたように、誰がどのくらい利子を受け取っているか税務署に一切情報がないという状況である。こういうことが損益通算を認める障害となるのではないかということも考えられるけれども、どう考えるべきか。

それからもう一つは、株式譲渡益のほうです。特定口座があるのですけれども、さっきご説明がありましたように、15年度改正で年間取引報告書の税務署への提出というものがなくなってしまった。これを考えたときに、損益通算を認める場合どういうふうに考えていったらいいだろうか。こういう問題意識もありますということで、そういうことも含めて、先ほどからの流れで、どうぞ。

委員

そちらの委員の意見と同じようなことを考えていたのですけれども、答えはちょっと違うのですが、例の非上場の話と、通算の範囲と納税者番号、もし時間があればインピュテーションの話もしたいのですけれども、パッシブというか、上場会社の場合は脇において、非上場の場合の扱いをどうするか。税が利益配分を変えるわけですよね。だから、現在だと配当かつかつしているところはこれしかないよというのですけれども、もし金融所得のほうの税率が下がってくると、そもそも同族会社の所得がどこまでが労働からあげたものか、資本からあげたものかわからない。親からもらった株価が心配になるとすれば、配当部分をどんどん増やしていけばいいわけです。最後、死んだときのバランスシートでその資産価値が上がらないようにすればいいわけだから、どんどん配当で流していけばいい。そうすると、ふたをあけてみたら、今度やにわに日本の同族会社の配当性向が上がって、こんなに配当が増えたのかと。

そこの問題はすごいセンシティブな問題で、そこは税が、ビヘイビアではなくて、利益の配分を変えるのだろうなと。それに対して何かしなければいけないことは我々はシェアしているのですけれども、それを総合課税に持っていってしまうとすると、今までの議論は何だったのだろうと。そこに関しては総合課税をかぶせて、そうでないのは二元にしようというのはおかしいわけです。私、間違っているかもしれないですけれども、今までの議論をおし進めていけば、ある事業形態に関しては特別な課税方法をするという形で、仕組み自身は金融所得の配当にした場合には同じように扱いますよ。ただ、配当にする範囲に関しては制限しますよ、という形をとるのが合理的なんだろうなと、今までの議論でいくと。それはさっきの話です。

それで、通算の話がどこかに消えてしまったのか、私もずっと思っていて、事務局の説明は、答えを何かチラチラさせながらしゃべっていたような気がするのですけれども、3ページが今日のポイントですよね。だいぶきれいになってきて、これが時代を画するような改革をしてきたと思うのですけれども、公社債の譲渡益はどうしますかと。表の上の右側にあって、下のほうに公社債の譲渡損。これは、益が立たなければ損は立たないですよね。

ところが、公募の株式投信については益を出して損を出すということにしてきて、残っているのは、公社債の譲渡益、譲渡損で、今日のご説明は、昔と違いましたよね。公社債も利息が時間の経過とともについていくというのではなくて、マーケットバリューですねということならば、右の公社債の譲渡益は株と同じようにして、下のほうも損を出させる形にすると、この箱はきれいになって、いろいろな名前もきれいになって、全部マルなのかなと。ただ、全部マルにするには納税者番号がやはり要りますよと。利子所得だけ源泉で支払調書も行ってないような状態で、利子所得からその他の損を引くなんていうのはあり得ない。そんなことをしたら、課税の公平も徹底できないし、そもそも我々がしていることは、別に人々を脅かしてよけいな税を取るというのではなくて、できるだけ資産所得をわかりやすくしているわけで、リスクも取りやすくしているわけで、それは納番を受け入れてもらわなければできませんよ、それは投資家のためにやっているのですよ、ということだと私は思うのです。したがって、3ページは全部マル。だけど、全部マルにするには納税者番号が不可避。これは納税者のためにやるのだというのが私の理解です。

委員

まさに今、先生がおっしゃってくださったお話を、投資家の立場から申し上げたいと感じているわけですけれども、公社債の扱い、公社債投信の扱いに関してもマルにするというのは賛成です。なぜかといいますと、投資家の立場から見たときに、今、公社債投資信託と株式投資信託の違いはわかるのかと言われると、わかっていません。どちらも同じではないかとおっしゃる一般の投資家のほうが明らかに多いわけです。そこをあえて別にしていて、その説明もまた販売会社側から明確にできないという状況がある中で、わざわざ分けておく必要性……私は法律など不勉強なのでわからないことですけれども、置いておく必要性は、投資家の立場から見ると、あまりないのではないかなというふうに感じているところです。

それから配当に関しましても、公社債の配当所得だったり、利子所得の扱いになっているのですけれども、投資家の立場で考えると、今、利子の部分もしくは配当の部分を主に自分のポートフォリオの中で重きを置くのか、もしくは、譲渡益の部分に重きを置くのかということを、日頃みんな考えて金融商品を選択しているわけです。そう考えますと、それぞれに違う税金のかけ方が存在する必要性があるのだろうか。投資家の側から見れば、横並びで、今は利息を重視したほうがいいのか、配当を重視したほうがいいのか、譲渡益のほうが利益がたくさん取りやすいのかというような比較をしているのであれば、ここもあえて分ける必要なく同じにして、損益通算できる形に持っていったほうが実は投資家にとってわかりやすい。

私の日頃感じていることは、多くの個人が税金についてもっと理解をすべきである。税金については、前回も会長と一度新聞で議論させていただいたときに、大変厳しいご意見を一般の方からいただきまして、どうせ税金のことはわからないので、金持ちが考えていればいいなんていう投書が私のところに来るわけですね。それは大変いけない。それぞれの人が考えるためには、まず自分の資産運用を考えるときに税金という問題が自然に入ってくるようにしなければいけない。一般の個人が資産運用において利用する商品に関しては、同じテーブル、横並びで比較できるようにしておくと考えると、できるだけそれぞれを、法律上別のものというのではなくて、損益通算できるようにしていただくというのは、先ほど先生が投資家のためだとおっしゃるのは、そのとおりではないかと感じております。

そして納番制というのも、流れの中では徐々に考えていく必要がある。納番制が必ずしも正しいのかどうかわかりませんが、そのようなものがない限り、他の先生がご指摘されたように、金融の商品を一元化して税金についていろいろアドバイスをするビジネスというのはなかなか生まれてこないと思いますので、この議論は、今後、ぜひ進められたらというふうに感じております。

委員

一般投資家とのあれで、例えば大口については何かご意見おありですか。

委員

大口に関しては、先ほどある委員がおっしゃっていた投資目的とコントロール目的、そして他の委員もおっしゃいましたスウェーデンのモデル、あれは非常にクリアでいいと思うのです。個人の投資家も自然に大口になってしまう方というのはいらっしゃいますけれども、ご指摘があったように5%まで持つ人はそれほど多くないのも現実ですので、目的をきちんと分けるという課税の仕方は非常にスマートなのではないかと思っております。

委員

3ページのいつもの表を見ていてやはり気になりますのは、一番最後の欄です。これについて事務局と経済学の先生の両方にぜひ伺いたいことがあるのですが、経済学的に見ると、預貯金、公社債の元本割れによる損失というのと、その上の譲渡損は分けて考えるのが正しいのだろうか、という非常にシンプルな問いであります。事業所得であれば、事業用資産の損失というのは、所得税法の51条と70条の3項で被災も除却の場合も全部必要経費に入る。ただ、雑所得だったら51条の4項でその年のプラスまでですよと、そういうつくりになっているので、プラスのほうについて、あるいは譲渡損についても課税上現われているというふうに見るというのであれば、この損失というのは何らかの手当てをしていいのではないかなという問題意識をずっと持っております。

事務局にはこの点について、特に預貯金の元本割れというのはほとんどなかったということが原因かもしれませんし、また違う言い方をすると、譲渡損に比べれば預貯金や公社債の元本割れはマニュピレーションの度合いははるかに低いのではないかと思われることから、これを分けておくことにこれまで沿革的な合理性があるのかということを伺えればと思います。2点です。

事務局

この滅失損、元本割れ等の損失、これはまた機会を改めまして、損についてのご論議をもう一度していただく機会があろうかと思います。前回申しましたように、基本的には所得税の考え方といたしましては、投資したリターン、これが例えば譲渡等によって実現した場合には所得にリカウントする、それ以外はアフタータックスで一般の生活をしている、税金もかけないし損失も考慮しない。こういう仕切りというか、割り切りを所得税の基本的な構造としているということでございまして、例えばポルシェが電信柱にぶつかって滅失してしまった、これはある種消費の延長である、こういう整理を今までしてきたわけでございます。片やリスクの分散という政策的な要請、こういったものもある中において、滅失損についてどう考えるのか、機会を改めましてご論議いただきたいと思います。

委員

この議論、私なりに整理しようとしているのですけれども、この委員会の一つの大きな流れは、金融所得の一体化、一元化、具体的には20%で分離課税にしていきましょう、そういう感じだと思うのですが、金融所得ではくくれないものが出てきている。その典型例は、これはたぶん非上場がほとんどなのでしょう、非上場の配当であるとか、そういったものをどうするのだと。コントロールが伴っていますから、利益処分に裁量のある投資家たちがいて、一方では裁量のない投資家もいますが、これは一般の投資家というものですから。となるとある特定の分野で、オランダのボックス2、ああいう形でひとまとめにするのかどうかというのは改めて議論しなければいけないし、根本的な問題は、金融所得という枠の中にとどまる問題なのかどうかということで、実を言うと、一部先程私が申し上げましたが、事業所得というか、レントという側面があります。そこの部分を一体にして考えるのか、そこの部分だけ分離して考えるのかということは、少し整理して議論していく必要性があるでしょうということです。

それから、公社債の譲渡益課税についてということですけれども、発生主義か実現主義かは大きくて、前にどなたかおっしゃっていましたが、ソースのほうは自己申告していただけますから別に気にしなくてもいいのですが、利益が発生したときに、それを売却して実現させるかしないかというのは投資家の裁量ですよね。一体化させるという方向に別に異論はないですけれども、課税発生主義ベースのままの課税体系のもとで公社債も株も譲渡益に対しては課税していきましょうという行為、これでいいのかどうかというのは少し考えていく必要性が……。やむを得ないと言ってしまってはそれでおしまいですけれども、ちょっと考えてみる必要性がある。少なくともそれは問題であるという意識だけは持っていたほうがいいと思います。

委員

すでに挙げた論点を繰り返さないとして、例の3ページで、だいぶいろいろな議論が出てきて、どこまでこの議論をするのかなということを考えているのですけれども、最後のほうに参考まで、時間がそこまであるのかなということで説明されていましたが、外貨建ての商品とか、保険とか、先物とか、大きさで言えばどれが大きいのか。保険というのは非常に大きいし、先物も重要だと思うのですけれども、少なくとも概念的に整理することと、ここでの仕事の範囲をどこまでにするかということで、前に言った不動産に関しては、証券化の問題とかいろいろあってそこはグレーゾーンですねということになっていたと思うのですけれども、今日挙げている為替差益、保険、先物、特に保険だと思いますが、そこまではここの守備範囲というか、この表をB4にして、保険とあそこが入るところまでの議論は要るのではないのかなと。特に保険に関しても非常にいろいろな措置をしていますよね、控除の段階から相続税の段階まであらゆる段階で。私の意見は、この表は金融商品ということで限定するにしても、いくつか重要なものは入れた上で議論するべきだろうと思います。

委員

今、私が申し上げたいことは委員がおっしゃったので、全くそのとおりだと思いますね。この4番目の問題、その他の金融収益、ここを入れないと、これから技術革新、その他を含めて、あるいはグローバルにマーケットが広がっていきますから、意味がないのではないかという感じが一つ。

それからもう一つ、これまでのご指摘という中で、高度な金融技術を駆使できるのは一部の洗練された機関投資家であり、まず一般投資家を対象とする制度設計を念頭に議論すべきである、こういう議論があったようですが、私の意見は、投資家というのは機関投資家を言っているのだと思いますけれども、機関投資家が洗練されているとは思えないですね、実績から見ても。

また、みんなそれぞれ高度の金融技術を駆使して新商品を開発しているというのは、投資家のためにやっているわけで、自分のためではないわけです。その意味では「貯蓄から投資へ」という流れから言って、金融技術を駆使して新商品を開発する。これは開発部隊がどこでもあるわけですが、問題は、これを一般投資家に売っていくということですから、やはり一般投資家を対象とする制度設計を念頭に議論すべきであるという意見を、もう一度私は繰り返しておきたいと思います。

委員

そこら辺、ご意見がいろいろあるのではないかと思いますが、どうぞ。

委員

全く違ったトピックスで恐縮ですけれども、最初の話に戻るのですが、やや実務的な面を考えてよくわからないところがあって、例えば特定口座とか、銀行の預金利子とか、支払い義務者が源泉徴収の場合は違うのだと思いますけれども、それで税務当局に報告するものと、しないものとがいっぱいある。今のところは例えば特定口座にしても、先ほどの図にありましたけれども、口座数というか、相対的にはそれほど多くないものですから、まだいいのかもしれませんけれども、例えば銀行預金などに損益通算の範囲が広がってくると数がものすごく増えてくる。

ここは私もよくわからないので申し訳ないのですけれども、通算を実務的にはどこでやるのだろうかというのを考えると、やはりシステムの問題だとか、ハード、ソフトの負担というのが結構かかってくるのではないか。先ほどのお話では、それは理論的な枠組みが決まってからその次に議論すればいいというお話でしたけれども、あまりにも数が大きくてコストが大きくなるとすると、現実的にそういったものがうまくいくのだろうかという問題が出てくるような気がします。そういう意味では先ほど他の委員がおっしゃった、そういった計算を専門にやって、そこで利益を出せるビジネスがあるのであれば、それをあらかじめ考えた上で、最初の理論的なというか、制度の詰めをやっておくのが後々スムーズになるのではないかということで、そこがあまり議論が出ていないものですから、ちょっと私は不安になっているということです。

委員

以前、ある委員が、経済学者はインプリメンテーションのことを何も考えていないかのようにおっしゃっていたような感じがしたので、それで私は、むしろインプリメンテーションのことを考えておかないと、理論的に整理するといっても整理がつかないのではないかという趣旨で申し上げた。ただ、それに対して今回はむしろ事務局のほうが原理主義的で、インプリメンテーションの問題と整理は段階論で行きましょうという話だったので、一応インプリメンテーションの問題はちょっと置いて考えればいいかなというふうに思って議論に参加していたのですけれども。

委員

ちょっといいですか。むしろ委員にお聞きしたいのですけれども、日本の金融といいますか、銀行というのは、例えば欧米がフィービジネスに行って、口座の手数料ビジネスに行ってますよね。それにもかかわらず全くそれをやらないために休眠口座がたくさんあって、儲からない構造にもなっている。特定口座という仕組みがいいのかどうか知りませんけれども、とにかく何らかの管理の仕組みを銀行も作る。そうすると、当然フィービジネスに変わっていかなくてはいけないだろう。そういうインセンティブも与える。そういう形でむしろ経営戦略上プラスという発想はできないのですか。

委員

私、別に経営者ではないものですから、よくわかりませんけれども、欧米のモデルというのが特に90年代に入ってから大きく変わったというのは、ものすごく意識しているわけですし、金融庁のビジョン懇の報告書でもそういう議論があったというふうに思うのですけれども、一つはとにかく歴史的な問題があって、休眠口座もカットし始めたのはようやく最近。例えば、そういうものを効率化のためだからといってやると、社会的責任はどうしたという形で必ずクレームが来るというので、なかなか一気にはいかない部分はあろうかと思います。

ただ一方で、専門的に分化していくというのは、今の日本の金融機関の経営を考えると必然的にそうなっていくだろうと思いますし、例えばアメリカで言えば、住宅モーゲージのサービス、サービシングをやるところで非常に儲かっている銀行はいくつかあるわけです。そういう形で専門分化していかざるを得ないと思いますが、ただ、今の段階では、何でもかんでもできるものはやって収益をとにかく上げないと、金融・経済財政政策担当大臣からお尻を叩かれるということになりますから、一気にそこまで行くというふうに考えている経営者はそんな多くはないのではないかという感じはします。

委員

申し上げたかったのは、こういう管理口座、特定口座みたいなものをつけてサービスをしてあげるから、そのかわりに手数料をくださいという形で口座がいわば手数料化するのが、投資家といいますか、預金者にとってもプラスなイメージでとらえられるような仕組みはあるのではないかなということだったのですが。

委員

範囲のことについて、先生がおっしゃったことに他の先生もご賛成ということで、私も、できるだけ同じようなものは同じように広くということはいいことなのだと思います。ただ、そことインフラとの関係なのですけれども、そうだとすると納番が必要だというのが先生のおっしゃったことで、こことの関係で、納番だけあれば、一定の事業主体に任せておけば個人は申告しなくてもいくというふうに仕組めるのかどうかというところが、検討の必要なことではないだろうか。

私の感じは、これはこちら側の委員がおっしゃったこととの関係で、もし発生主義というか、タイミングのことをきちんと考えて、所得をきちんと……きちんとという意味は、発生ベースでということで、お金が入ってきたからといって動いたところを見るのではないという意味です。もしそういうふうにしてきちんとタイミングを計測するのであれば、これはやはり個人ベースで、つまり人をとらえて申告させる以外にないのではないかという感じがしていて、そこをネグって別に実現主義でもいいやということであれば、その業者の方にお願いをして、そして投資家にもできるだけ負担がないと。その方向があるかもしれませんが、やはりこれは、所得税をどう捉えるかという、人に対する税金なのか、お金が流れたらそこで税金を取っていく、それだけのものなのかという一番根本のところに……根本の問題にしたくないですけれども、何かそんな感じがします。

委員

我々が理論的にいろいろ考えるときと、こういうところで議論するときに基本的な論点の違いというか、違う要素が入ってくるのかなと思う面は、理論的にすっきり説明できる面と、同時に、担税力のある人から取るという面が相当あるのではないかと思うのです。発生主義、実現主義というのは実際には実現しないと取れないわけだから、理論的に発生主義といってもなかなか難しいということだと思うのです。特に、常に租税回避の防止とか、適正な税務執行なんて書いてあるわけですけれども、これは非常に曖昧なあれで、「適正」というのをどう定義するか。本当に適正にやろうと思えば、前も言いましたけれども、節税を促すようなインセンティブを作るからこそ、みんな一生懸命働いたり、いろいろな工夫をして新しい商品が出るわけですから、この辺が非常に曖昧なわけですよね。

しかし、一方で税金はたくさん取らなければいけないという面があるから、この辺が議論がいつもすれ違うというか、すっきりできないところ。最終的にそこまでできるとは思いませんけれども、担税力があってどれだけ取りたいのかというあたりの現実的な問題をどこかで視点として入れてこないと、なかなか空回りする面が多いのかなという気がちょっとしますけれども。

委員

どうぞ、何かご意見ありましたら。

委員

インピュテーションというか、配当の二重課税の話も他の先生がおっしゃったように延々とやり続けていて、ただインプットとしては、すでにお話ししたことがあると思うのですけれども、ドイツで例の「EU指令」というのがありましたよね。インピュテーションを一番きれいにドイツがやっていたのですが、配当税額控除、インピュテーションをやるときに、自国の会社の配当に対しては100%インピュテーションできるけれども、外国の会社から配当をもらったときにはできないではないか。ということは間接的に言うと、自国の投資を優遇するということで、よくないという指令が出ましたよね。その結果、ドイツは今度2分の1になったと思うのですけれども、思わぬ展開というか、教科書どおりに解したのが、グローバリゼーションになってくると、インピュテーションも字句どおりにはあれなのかなという感じで……。

しかし、どう考えても二重課税は生じているわけで、ここは、私も歯切れが悪いのですけれども、何かしなければいけない。だけど、大口何とかというのではなくて、きれいな仕組みにして、金融所得で一元化して、配当に関しては、何かというのはいろいろ知恵を出して、10%か20%がいいのか知りませんけれども、配当所得は減らすのだという形ですっきりさせるのかなと。ある意味でここで禁句というか、触れてはいけない議論は、さっきから隣の委員は触れていたのですけれども、発生ベースか実現ベースかとか、キャッシュフローにするか、所得に……。発生ベースにしなければキャッシュフローすればいいわけですよね。資本買ったものは全部そこで引けますし。だから、実現ベースか発生ベースか、あるいは、キャッシュフローか所得かというのは、比喩的なことで言えば、禁句みたいな、禁じ手で、ここは本質的に一番重要なところだと思うのですけれども、そこまでは我々は今回はやらないということだと思うのです。だから、それに伴うことはよくわかって、実現ベースでやる限りはキャピタルゲインにはいろいろ問題はあるけれども、ただ、そこは今回の範囲ではない。今回の範囲は、非上場の範囲も入るし、そのかわり保険も商品取引も入るということだと思います。

委員

禁句らしいので、その話はそれでも言いたいという人はどうぞおっしゃっていただいて結構ですが、一つ、私自身気になっていることはそこの話ではなくて、むしろ納税者番号の話と課税方式の違い、それから、課税方式の違いが徴税当局に情報としてどう流れていくかということの違い。だから、単に納税者番号を入れるだけではたぶん問題は解決しないのではないか。そうすると、例えば利子所得に関してみんなできるだけ広く損益通算とおっしゃっていますから、それをするためには、典型的には銀行がきちんと各預金者について例えば調書みたいなものを、納税者番号をできれば入れて、国税庁、当局に情報を流す。納税者のほうは場合によっては還付を受ける。そういう仕組みを皆さん理想としているのかなというふうに考えるのですが、それでよろしいのでしょうか。それについてもうちょっとご議論を。そこまで踏み込んだ議論はいずれするのでしょうけれども。

委員

その点は14億口座と聞いて……。14億についてそれをやるのかというのは、ちょっとたじろぎましたけどね。

委員

今の点、14億というのはすごいと思うのですが、これは、先ほど先生がおっしゃった14億なのですが、洗練された投資家と一般投資家とを分けようと。これは、この間、他の先生がおっしゃっていたことですけれども、損が出るようなものまで買っていろいろなことをしている、そこまでしている人はこの14億の中にもそんなに多くはないのではないか。そうすると、昔、源泉分離選択だったように選択をする。納税者番号を届けて調書を出してもらった分については、損益通算のときにも使えるという制度を一つ最初にとにかくかませることによって、タックスベネフィットナンバーのようなものも定着しやすいのかなと。

そうではなくて、ただ預金をしていますというだけの人にとって、その人の分についても全部調書をおよそ法律上取るのだというのは、やや無理ではないかという感触を……。これは全く実務は存じませんが、やはり嫌われるかなということを考えております。

委員

今の意見に私も賛成でして、14億口座ある理由の一つ……理由なのかどうかわかりませんが、これは、特別口座みたいなものを作ることによってある程度は減らすことができるのではないかというふうに考えます。その理由は、今はどこに行っても結局は源泉分離だし、損益通算するメリットみたいなものがなければ、とりあえずこの銀行のサービスがいいと思えばここに口座を開き、あちらがいい金利をくれるといえばあちらに開きということになりますが、損益通算のようなことが実際起こってくると、どこかにまとめない限り非常に煩雑になるわけです、個人にとっても。そのときに特定口座みたいなものを金融機関が作ってくれれば、トータルでサービスのいい銀行をメインバンクとして個人が選ぶ可能性はずいぶん高いと思います。そう考えると、この口座数というのは実は減っていく面もあるのではないかなというふうに感じております。

委員

もちろんこれは14億というのは多すぎて、コストを取れば減っていくとは思うのですが、これから銀行というのはリスクがあるわけで、一つのところに集中するというのは相当リスクがあるわけだから、アメリカなんかでもみんなが分散して持ってますよね。だから、メインに一つ集中するというようなことだけではないのではないかと思うのです。

委員

あまり議論にしてはいけないと思うのですけれども、おっしゃるとおり、1行に絞るということは大変リスクがあると思います。アメリカにおいてもたしかに分散する方はいらっしゃる。そのときに誰が活躍をしているかというと、やはりファイナンシャルプランナー、ファイナンシャルアドバイザーであったり、税理士的な方の存在だと思うのです。いくつかの金融機関とのつき合いの中で、どの金融機関を複数選択するべきであるかというアドバイスとともに、税金的な一番よい形というのはどういうポートフォリオかということを説明しつつ、税金の計算もできるという人の存在というのがある。

ただ、特定口座をすると減るというのは、「私、預金しかやりません」というような方にとっては、そういう選択肢はやはり必要なのかなと感じております。

委員

ただ、数がどうして問題なのか、私はあまりわからないのですけれども、これだけコンピュータが発達しているときに、14億あろうが1億あろうが、あまり関係ないのではないかと思いますけれども、どうなのでしょうね。

委員

それは、今、源泉で税金を取って利息をお支払いするということですから、その部分までは14億について全部計算しているだろう。それを税務当局に報告すればいいだけではないかと考えれば簡単というふうに思えるかもしれませんが、とにかくそのためのシステムを組む。なおかつ14億もあって、間違いがあってはいけないと考えると、二重、三重の手を打たなければいけないので、私もいくらかかるかはさっぱりわかりませんけれども、現時点で今の日本の銀行がそれにハイハイと頼るようなレベルなのかどうか、これは疑問に思わざるを得ないというのが本当のところです。

あと、アメリカの話が出ましたので、これは私が正しいのかどうか知りませんけれども、アメリカの場合はそういう損益通算というのはある意味でやりやすい。すなわち全部確定申告をしますし、なおかつ、自分でもそうでしたけれども、そういうパソコンのソフトがいっぱいあって、そこでみんな自動的にやっています。たしかに税理士を頼むというのもありますけれども、基本的にはソフトを買ってそこでやっていますから、彼らはそういう意味ではやりやすいわけです。そういうシステムの違いがあって、結局、マニュアルレーバーに依存している部分と金融機関に依存する部分と、日本とアメリカではちょっと違うのではないかと思います。

委員

それは非常に面白いポイントだと私は思うのですけれども、そういうソフトができやすい税制を作って、そういうソフトがどんどん供給されるようなシステムになれば一番いいのではないかと思います。

委員

総合課税の確定申告をやれば、必ずそれは入れないと、とてもじゃないけど……私らも駐在のときにやりましたけれども、みんな会計事務所に頼んでいますから、こんな厚い書類が来て、こことここにサインしろと5、6カ所くらいピラピラが付いてきて、中身を何も見ないでサインしていました。それは、会社がそのお金を払ってましたから簡単だったわけですけれども、もし自分がやらなければいけないとなったら、それこそこんな厚い本を読んで、ソフトなり何なりを買って、パソコンがあれば全部自分でやるようになります。そうすれば、コストという意味では広く薄く分散されますから、導入はしやすいと思いますけれども、大前提の確定申告というのが仕組みとしてないとそれはできないということではないかと思います。

委員

金融所得を一体化する上で納番が必要であるというのはわかるのですが、ただ、ここは私の理解では、では納番を国民皆さんに一律に導入できるかどうかというのは、実は前にプライバシーだ云々かんぬんという議論がありましたよね。もし納番が損益通算の前提条件であるとするなら、逆に損益通算を認める納税者と、そうでない納税者が出てきて、それは簡単に納番が欲しい人といらない人というところが出てきます。さっき、先生から指摘がありましたように、世の中には、別に関係なく普通に細々と金利を稼いでいる人もいるわけで、別に彼らは損失もないでしょうから、それはそれでいいではないか。まあ、欲しければ別ですけれども。みんなに納番を入れるから14億という問題が出てくるわけで、そこは限定的に考えてもいいのではないでしょうか。

委員

何かご発言を、ぜひよろしくお願いします。

事務局

どうも本日はありがとうございました。委員の先生方の幅広いご意見を伺わせていただき、大変参考になりました。

私ももともと銀行員ですから、先生方のお話をお聞きして、やはり納税者番号制度に至るまでの幅広いご議論が必要なのかなと、そういうふうに思っていた次第です。実際私がアメリカにいたときは、ソーシャルセキュリティナンバーがないと銀行の口座一つ開けない、そういった社会制度というのが今日本に本当に必要なのかどうかという議論も必要だなと、そういうふうに思いました。

それと、金融商品というのは行われる税制度を見ながら開発されていく、いわば追っかけごっこのような立場にあります。それと、投資家というのもまさにいろいろな性格の投資家がいる。ですから、上場、非上場という切りわけ、あるいは投資家別の切りわけ、どこで線を引くのかということが大事ではないか、そのように思った次第であります。

一言だけ、意見として申し上げさせていただきました。本当にありがとうございます。

委員

それでは、今日は大変幅広い観点からたくさんのご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。私が記者会見で整理できるかどうか非常に不安ですが、いずれにしましても本日いただいたご意見をもとにして、今後、金融資産性所得の一体化の具体的範囲を考えていきたいと思います。

最後に、今後の予定ですが、次回の小委員会の日程は4月2日の金曜日2時-4時を予定しております。正式に開催が決まりましたら案内状をお送りします。課題についても、案内状でお知らせしたいと思います。

それでは、今日の小委員会はこれで終わりにいたします。お忙しいところをありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会