第1回金融小委員会 議事録

平成15年10月31日開催

委員

ただいまから、第1回金融小委員会を、久しぶりですけれども、開催いたしたいと思います。

本小委員会は、10月6日の総会で設置をご了承いただいたものですが、本日より審議を開始いたします。

本小委員会のメンバーにつきましては、その総会におきまして石会長からご指名がありまして、お手元の資料のとおりでございます。

金融・証券税制については、さまざまな理論的、実務的な課題がありますけれども、そうした諸課題について専門的な視点から検討を行うこと、これが本小委員会の使命だと思いますので、しっかりとした検討を行っていきたいと考えております。

本日は第1回目の小委員会ですので、審議に入る前に、事務的な点についていくつか申し上げたいと思います。

まず、随行者の出席については、総会同様、この小委員会でもご遠慮いただき、会議への出席は委員ご本人に限らせていただきたいと思います。

また、委員の間で十分に議論を練っていただくという観点から、総会とは異なり、各省幹事の方についても、出席はご遠慮いただくことといたします。

また、会議中の喫煙につきましては、総会と同様に会議中すべて禁煙ということに今回からなりまして、私個人はいいことだと思うのですが、お困りになられる方もいらっしゃるかもしれません。喫煙所以外での喫煙はご遠慮いただくよう、ご協力をお願いいたしたいと思います。

次に、議事録の公表でございますけれども、小委員会の議事について、会議そのものの公開は行いませんが、議事規則により、議事録が公表されることとなります。その点、あらかじめご承知おき願いたいと思います。ただ、自由な審議を確保するため、当面の間、発言者の氏名は明示しないで、発言内容だけを公表することにいたします。

また、会議終了後、原則として、私が記者会見を行わさせていただきます。議論の模様を紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

最後に、総会との連携については、小委員会における審議の状況について、適宜、私のほうから総会に報告することにいたしたいと思います。

本日は、みずほ総合研究所株式会社と、シンクタンク・ソフィアバンクから講師の方にご出席をいただきまして、このあと、プレゼンテーションをお願いしております。本日は本当にお忙しいところをありがとうございます。後ほど、よろしくお願いいたします。

それでは、本日の審議に入りたいと思います。お手元の議事予定に沿って進めますが、ご案内のとおり、平成15年度改正において、金融・証券税制の大きな見直しが行われておりまして、すでにその効果が一部現れているという大変結構な調査結果あるそうでございます。

そこで、今後の金融・証券税制の目指すべき方向について、これまでの税制調査会の議論が6月の「中期答申」に集約されております。その中では、金融資産性所得に対する課税の一体化を進める、いわゆる日本型金融税制という言い方をされることもありますが、そういう方向が示されております。

そこで、本小委員会においては、今後、金融資産性所得の一体化に向けた様々な論点について議論を進め、来年の夏ごろまでを目処に、簡素かつ公平で安定的な金融・証券税制の姿を示したいと考えています。

重要な点なので繰り返しますけれども、来年の夏ぐらいを目処に、この小委員会で金融資産性所得の一体化に向けた論点について整理して、簡素かつ公平で安定的な金融・証券税制に関する大ざっぱな案みたいなものが提出できれば、そういう趣旨でございます。

その上でですが、今回は第1回目であり、初めてご参加いただくメンバーの方もいらっしゃいますので、まず事務局から、15年度改正の概要及びこれまでの税制調査会における議論の流れをご紹介いただきたいと思います。また、それと同時に、今後の主な検討項目についても、併せて説明していただきたいと思います。

それでは、事務局、よろしくお願いいたします。

事務局

お手元の資料、「金融小1-1」というものと、縦紙になっております「1-2」というものがございます。これに沿いまして、ご説明いたします。

まず、1-1の目次をお送りいただきまして、1ページをお願いいたします。15年度改正のおさらいということでございます。皆様、もうお詳しいと思いますが、一番下の3行、これは年度答申の3行でございますが、平成15年度税制改正では、こうした方向性、すなわち上に書いてございます、金融商品間の中立性であるとか、できる限り一体化する方向であるとか、こういったいろいろなご議論、こういった方向性を視野に入れて、配当課税、株式投信、さらに譲渡益、これから簡単にご説明します見直しを行うよう、こういうご指摘をちょうだいしました。

次のページでございますが、左側、従来の制度ということで、「個人投資家の不満」と書いてありますが、複雑でわかりにくい制度であるとか、手続きがわずらわしい、こういうような指摘が行われておったということで、ここにございます、配当、譲渡益等について、預貯金並みの手軽さで投資ができるような制度にしたいというポイントでございます。

その考え方のもとに、将来の「課税の一体化」、先ほど申し上げた、金融資産性所得の課税の一体化に向けた措置ということで、利子、配当、譲渡益、いろいろ区々であったわけですが、20%の定率の課税、さらに、申告が不要になるような仕組みも用意した。株式譲渡益課税については、特定口座、この制度の改善・簡素化も15年度で行った。さらに、公募株式投資信託(公募株投)についての償還または解約した場合の損、これを株のキャピタルゲインと通算できるようにした。このような措置を、課税の一体化に向けた措置として行っております。

かつ、当面の優遇措置として、「貯蓄から投資へ」という文句がございますが、配当、株のキャピタルゲイン、公募株投の収益分配金、これを優遇税率5カ年間、10%、このようにしたわけでございます。

3ページ以降、各所得ごとの見直しの概要を書いてございます。3ページが配当課税、20%の源泉徴収、申告不要にした上で、今後5カ年間、20%を10%にする。

次のページ、公募株投でございます。従前は、いわゆる公社債投信と横並びでいわゆる利子並み課税をしていわけですが、これが、来年の1月からむしろ株並み課税にするということとなっております。

右下でございます。収益分配金に対して20%の源泉徴収、かつ申告不要にする。かつ、これも5カ年間10%。さらに損益通算でございますが、先ほど申し上げたように、解約(償還)損については株のキャピタルゲインと通算を可能とする、このようにしたわけでございます。

次の5ページ、株式譲渡益課税の見直しということで、複雑であった優遇措置を整理いたしました。さらに、先ほど申し上げたように、特定口座の改善・簡素化を行った。その中身につきましては次の6ページに書いてございます。

7ページでございます。以上申し上げたような15年度改正、適用時期がいろいろございます。特に16年1月というのが、あと2カ月ちょっとで来るわけでございます。後ほどお話がございますが、住民税の改正もございます。さらに、一番下の公募株投につきましては、来年の1月から10%の源泉徴収申告不要、先ほど申し上げた内容が施行されます。

こういった改正につきましては、いろいろ広報もいたしているわけでございますが、前々回の総会でもご紹介した、いわゆる効果についての調査でございます。

改正事項、今申し上げた金融・証券税制の軽減・簡素化、「評価」というところで、「評価しており、活用している」、さらには、「評価しており、今後活用したい」というお答えがかなり多かった円グラフでございます。

「主な意見・動き」、これは詳細は別紙ということで、次のページでございます。マルで並べておりますのが、肯定的、積極的なご反応でございます。「高く評価される」「活性化に寄与している」、このようなご指摘もございます。

その下のダイヤモンド、特に4つ目をご覧いただきますが、「税制改正の内容について、一般の人はまだ知らない人が多いが、既存の投資家や株式投資に関心がある人にはよく浸透している」と。実は、6月に証券団体が調査いたしまして、株式投資に関心があるとお答えになった方が10数%おられます。この数字は、去年とそう変わっていません。「関心がある」と答えた人の中では、実は8割近くが今回の税制改正の内容を了知しているということで、関心のある方には周知徹底かなり進んでいるわけでございますが、株について、ちょっと距離のあられる方にとっては、まだひとつかなということで、お手元にパンフレットを2つお配り申し上げています。

こちら側が、去年来もうすでに使っている、実は数十万部刷りまして広報いたしました。まだまだ広報が足りないというご指摘がございまして、こちらは来月の中旬に出ます。よりわかりやすく、特に見開きをご覧いただきますと、数字を入れるとか、最後のページに、「例えば複数の特定口座を開設することはできるんですか」と、こういったことについてきめ細かな広報、痒いところに手が届く広報ということで、来月の半ばから、これもかなりの部数を刷って広報いたしたいと考えております。

資料に戻りまして、10ページでございます。効果を図る方法、幾つかあろうかと思いますが、例えばということで、配当課税を見直したということもございまして、配当の利回りの高い銘柄と、そのほかの全体の銘柄の株価の推移、太線と普通の線で示しております。

次のページ、11ページでございます。個人投資家の株式の売買動向ということで、マーケットにおける個人投資家のプレゼンスがだんだんこの春あたりから上がってきている。株価の動向等も、当然、影響しているわけでございますが、4月ころからコンスタントに上がってきているという数字でございます。

次のページ、12ページが、先ほど若干触れましたが、特定口座、株の譲渡益について申告不要の制度を導入したものでございます。これも、この春からコンスタントに着実に伸びてきています。

以上が、15年度改正のある種おさらいでございますが、今後の金融小におきますご議論のスタート台ということで、簡単に、これまでのご議論の経緯をご紹介申し上げたいと思います。

13ページでございます。先ほど小委員長からご指摘がありました6月の中期答申で、それまでの金融小におけるご議論の集約がなされております。今年に入りまして、4月、5月と3回、金融小委が開かれておりまして、4月には委員及び専門委員、5月には二人の専門委員からのプレゼンテーション。さらには、連休中に海外出張をされましたので、その成果のご報告、さらには納番について、特にセキュリティの観点からのご論議を賜りました。そういう意味におきましては、検討の視点と申しますか、理念的、理論的な分析という出発点は一段落していると考えているわけでございます。

ざっと、「その他の課題 一 金融・証券税制」、ここをご覧いただきますと、中段でございます、近年における情報化・グローバル化の進展、金融技術の高度化の中で、多様な金融商品が出現している。また、取引形態の操作によって所得分類を変更したり、収益の発生時点を操作することなどを通じて、租税負担を回避することが容易となってきている。それから、資本市場からの資金調達が重要性を増している。さらには、国際的な租税競争、こういった論点が示されています。

その下のパラグラフの下線部でございますが、「こうした中、今後の課税のあり方については、簡素かつ公平で安定的な制度の構築を念頭に、金融商品間の中立性を確保し、金融資産性所得をできる限り一体化する方向を目指すべきである」、このようにご指摘をちょうだいしております。

「このような方向に関しては」ということで、具体的な切り口ということでございますが、「金融資産性所得の範囲や税率、損益通算など多岐にわたる課題について、様々な観点からの理論的・実務的な検討が必要である。その際、貯蓄・投資や企業活動への中立性の確保、課税ベースの拡大、所得再分配への影響、納税者利便と国内外にわたる適正執行の実現などに関する配慮を欠かせない。このためには、納税者番号制度など納税環境の整備を進めていくことも重要となろう。また、諸外国の状況を見ると、二元的所得税など新たな租税論の展開が見られる一方で、勤労所得との間の課税バランスや租税回避行動の抑制等の観点から、実際的な対応が行われている。今後、金融資産性所得に対する課税の一体化の検討に当たっては、わが国においても、これらについて十分な検討が必要となろう」、このような総括的なご指摘をちょうだいしています。

14ページでございます。ご議論に入る前に、そもそも日本の所得課税の計算の仕組み、これは皆様ご専門でいらっしゃいますが、ご覧いただきますように、所得の種類というのが幾つかに分かれている。この所得の種類ごとに、まず必要経費等、負担調整的な控除もあるという意味で「等」をつけておりますが、それを踏まえた上で、所得分類が、給与所得、雑所得、ずらっと並んでいる。それを足し上げまして、損益通算、さらに所得控除を行って税率を掛ける、このようになっているわけでございます。

金融に関して申し上げますと、網かけをしています。下から4つ目、2つ目、1つ目、株の譲渡益、配当、利子、このようになっているわけでございます。

このように所得分類がかなり細かになっている、こういった中において金融資産性所得の一体化をどのように図っていくか、という論点があるわけでございます。

特にこの損益通算のところをご覧いただきますと、例えば株式譲渡益収入、これは、所得分類のところからジャンプしております。直接所得控除のほうに飛んでいる、いわゆる損益通算がないわけでございます。利益の配当、これは昭和36年の改正で、負債利子の控除を認めた際に損益通算から外すということで、これは「×」がついています。さらに利子、これは源泉分離でございますので、控除もなしに最後の税額が決まる。このようになっております。

また、金融関係で申しますと、例えば割引債の償還差益、これは雑所得の中に入っています。さらには、注の1にございますが、先物取引に係る利益、これは雑所得として課税する。

このように、金融資産性所得と一言で申しますが、所得分類上は結構ばらばらになっている。それがすべて課税のあり方を現行では決めている、このようになっているわけでございます。

次の15ページでございます。利子・配当、所得税本法ではすべて総合課税という形になっているわけですが、租税特別措置法によりまして、ただいまご紹介いたしました仕組みになっているという整理でございます。

16ページ、17ページ、特に17ページをご覧いただきますと、譲渡所得の課税の概要ということで、株だけではなくて、そのほかの資産、どうなっているのかということでございます。株式については、上場株式と上記以外ということで分かれております。土地・建物等については、申告分離課税ですが、税率が26%。さらに、その他の資産につきましては、総合課税を行っている。短期と長期でこのように区分をしておりますけれども、基本的に総合課税を行っている。

損益通算につきましては、株は、先ほどちょっとご覧いただきましたが、そのほかの所得との通算は「×」になっています。そのほかの土地とその他の資産、これについては、同一年分の他の所得との通算が可能になっている。

横の損益通算が以上申し上げたことですが、縦、損失の繰越控除については、ここにございますように、上場株式については3年繰越しができる、そのほかは繰越しができない、このような制度になっております。

18、19、20ページと、これまでの制度改正の沿革を簡単に紹介したものでございます。あとでご覧いただくとしまして、21ページ、先ほどの答申の中にも二元的所得税という言葉が出てまいりました。資本は労働よりも流動的、すなわち価格弾力性が大きいということを前提といたしまして、資本所得と勤労所得を分離する。勤労所得のほうは累進課税、資本所得は合算した上で比例税率で掛ける。資本所得の税率、比例税率は、勤労所得の最低税率と法人税率と等しくする。一般的な定義はこのような方向にされております。

定義上こうなのですが、例えば次のページ、フィンランドでの二元的所得税、実態をご覧いただきますと、確かに、真ん中あたりの所得分類をご覧いただきますと、稼得所得と投資所得という意味で二元化が図られています。そういう意味で2つに分けるという考え方がここに出ているわけでございますが、細かに見ますと、例えば投資所得の一部をなす譲渡益、これについては損益通算は譲渡益の範囲内だけで行っている、そのほかの投資所得との損益通算は行われていません。

さらに、一番下の利子。これについては、今申し上げた2つとは別に源泉分離で処理をしているということで、たしかに二元的所得税という類型ではあるのですが、各国においていろいろな事情、例えば租税回避の問題、税収の問題、いろいろ悩みながら実際的な対応をしているということでございます。

23ページ以降、納番についてのご論議がございます。真ん中あたりをご覧いただきますと、一言だけ、「改めて検討を行うべき時期にきている」ということで、納番につきましては、政府税制調査会においても長きにわたるご検討を賜っております。

しかしながら、ただいま申し上げた金融資産性所得の一体化課税といった新しいファクター、こういったものを念頭に置きますと、改めて検討を行うべき時期にきているというご指摘でございます。

さらに、一番下のパラグラフ、「今後は」というところでございますが、「全国一連の番号の利用や個人情報保護のあり方の状況を踏まえ、導入に向けた具体的な諸方策について更に検討を進めるべきである。この際、民間及び行政のコスト負担が小さく、プライバシー保護を含めたシステムにおけるセキュリティが十分に確保されるよう適正な制度設計が必要」と。さらに、下線は引いておりませんが、「また、例えば簡素な申告手続を可能とすることを含め、番号を利用する納税者の利便性が高まるよう考える」。この「納税者の利便性」というワーディングは、今回、初めて中期答申でお入れいただいたということでございます。

次のページ、各国においてということで、27ページでございます。各国においても、それぞれの経緯をたどりながら納番制度が導入されているということで、例えば、納番を使えば源泉徴収の税率が低くなるとか、申告書が自動的に送付されるとか、こういった納税者の利便等々もいろいろ工夫しながら、各国、これまで導入をしてきているという実情でございます。これにつきましては、また回を改めまして詳しくご説明申し上げたいと思います。

便宜上、私のほうから先にご説明してしまいます。

1-2という検討項目でございます。先ほど、小委員長のご指示のとおり、来年の夏ごろを目処に何らかのアウトプットをおまとめいただくということでございます。我々なりに、この項目、どんなものがあろうかということで整理したものがこの紙でございます。

大きく分けまして、「一体化に向けた検討」、これが大きな課題でございます。そもそも、今、金融商品に対する課税がどうなっているのか、どこまで一体化するのか、その一体化の中身、税率を合わせる、さらには損益通算、こういった一体化の範囲と中身、これが主なる項目であろうかと思います。

さらに、この一体化を果たすためにインフラが必要であるということで、納税者番号、源泉徴収の問題、資料情報の問題、こういったものについても拡充が必要であるという位置づけでございます。

こういった項目を論ずるに際して、次のページでございますが、「検討に当たっての視点」ということで、先ほどご紹介申し上げました中期答申におきまして、このような論点が提起されております。このほかにも「視点」というものがあろうかと思います。どうぞ付け足していただいて、今後のご論議を深めていただければと存じます。

事務局

続きまして、地方税関係についてご説明いたしたいと思います。

先ほどの資料の1-1の28ページをご覧いただきたいと存じます。基本的な考え方などにつきましては国税と同じでございますけれども、15年度改正で地方税、かなり大きな改正をいたしましたので、ご紹介させていただきたいと思います。

この背景にありましたのは、特に一般投資家から、天引きで課税関係を終了させたいという声が非常に強く出たということがございます。それで、従来、配当につきましては総合課税、譲渡益については申告分離ということで地方税はなっておりましたが、利子をならいまして、特別徴収義務者が天引きをして、そして、都道府県に納めたところで課税関係が終了する道をつくろうということにいたしたものでございます。

利子につきましては、金融機関がその所在する都道府県に納めて、そこで一切課税関係が終了するという利子割の制度がございますが、それをならった形で、配当割と株式の譲渡所得割という新たな制度を設けたものでございます。配当につきましては、配当支払者、すなわち配当を行う会社であり、その人が天引きをして、5%、しばらくの間は3%ですが、都道府県に納めて課税関係を終了する。一方、譲渡益につきましては、証券会社が同じような手続きで課税関係を終了する。

税は、ここで一応終わることになりますけれども、交付金という形で市町村に後から約3分の2が分配されるということで、16年1月からスタートすることで準備を進めております。

ただ、利子と違いますのが、28ページの一番下でございまして、申告があった場合は、税額精算・還付ということが出てまいります。これはどういうことかといいますと、配当、株式の譲渡につきましては特例措置がございますので、場合によっては、その特例を受けるためには後から申告をしていただくことが必要になることがございますので、そういう道も従来どおり残しておくということでございます。

29ページが詳細ですが、特に、今の話は[6]のところでございます。納税義務者、これは一般投資家等でございますが、特定配当等について申告した場合には所得割で課税し、所得割額から配当割額、所得を控除するという形で後から精算するということで、従来どおりの道も残しているということでございます。

それらを全部まとめましたのが30ページでございますが、今、ご説明したところは、2段目、上場株式等の配当のところで、特別徴収・申告不要(配当割)という制度ができ、コメ印で従来のものも選択可。それから2段下ですが、特別徴収で譲渡益のところも天引きで終了し、従来どおり申告分離課税も選択可、こういう新しい制度を設けたということでご紹介させていただきました。

以上です。

委員

ありがとうございました。

以上、おふた方のご説明ですが、基本的に、今まで、もとの金融小委員会で行ってきた議論についての説明、前回の税制改正で行われたことの説明が一つと、もう一つが重要な点ですが、「金融小1-2」という資料に書いてある、我々の委員会が来年の夏までに何を議論するのかということについての素案を出していただきました。

特に主として議論すべき点は、この1ページ目にありますような、課税の現状もそうですけれども、一番重要なのは、金融資産性所得の範囲をどこまでとるのか。その際、税率をそれぞれ均一にするのか、そうでないのか、税率をどうするのか、どこに決めるのか。それから、この辺が非常に難しくなるのかもしれませんが、損益通算をどの程度認めるのか、というようなことについて議論する必要があるでしょう。

それから、納税者番号についても、金融資産性所得を一体化する以上、どうしても納番みたいなものを入れないと実行も非常に難しいし、納税者にとっての公平性、そういうものも担保しがたい。そういう意味では、これも同時に入ってくることになると思いますけれども、他方、プライバシーの問題、情報の問題で非常に国民からの関心も強いところですから、そこをきちんと考えた上で議論をする必要があるでしょうということです。

次ですが、2ページ目に、「検討に当たっての視点」ということで書いてあります。上に書いてある、公平、簡素、中立というのは、いわゆる税にとっては重要な視点が書いてありますが、たぶん下の5つぐらいの視点というのが、今回の金融小の議論では大事な議論なのだろうと思います。納税者利便とか、適正執行とか、租税回避行動の抑制、デリバティブ等の所得分類の変更・収益発生時点の操作、あるいは国際的な租税競争、このほかにもたくさんあるかもしれませんが、いずれにしても、こういうような問題がかなり重要な論点かなというふうに考えております。

以上の説明に関して、何かご質問、今までの議論でわからなかったこと、あるいは、こういう検討項目ということで不十分だと思われる点等、そのほか、どういうことでも結構でございます。どうぞご自由に、ご質問、ご発言いただければと思います。

委員

よくわかりました。おさらいもできましたし。

それで、最初に小委員長が言われた、来年夏までに論点整理からプロポーザルということを、どのくらいの委員会を考えていらっしゃいますか。

委員

私が事務局と相談したのは、一つは年内ですが、年内については実はいろいろな事情があって、来週もう一回委員会をやりますけれども、そのあとは年度末のいわゆる税調本体の会議を、選挙等があって遅れているので、かなりタイトに開かざるを得ないという状況でございまして、金融小を開いている時間的余裕がないということなので、年内は今回と来週の2回である。したがって1月になってから、やや集中して、普通よりは少しタイト気味になるのかもしれませんが、開いていくということになろうかと思います。

事務局のほうから、何か追加はありますか。

それは、少し楽にしてくれというか、あるいは、少しタイトにということでしょうか。

委員

いえ、そういう意味ではなく。これだけの問題だと相当大変ではないか、あるいは、毎週ぐらいやらないとだめなのかと、そういうような意味でございます。

委員

はい。

どうぞ。

委員

前にこの委員会で発言したかどうだったか忘れたのですが、14ページ、この資料を見ていただきたいと思うのですが、所得の種類ということでこれだけ並ぶのですけれども、さて、金融関係の所得を一体化するという話でいつも気になっているのですが、株のキャピタルゲインと配当、それから預貯金の利子、この3つ、今のところ、利子並みに課税すると、20%に大体収れんさせるのがバランスが取れるということできているわけです。

そもそも、この収益が発生する源は何であるかというと、株式の譲渡益というのはある意味で法人の所得を反映したものである、また利益の配当というのは、まさに法人の利益の一部が分配されたものである。これに対して預貯金の利子というのは、金融機関、銀行で運用されますけれども、預金者はあくまでも契約で利率をもらうだけであって、運用したことについては全く金融機関とは切り離された状況であるというわけです。

そうしますと、収益の発生の仕方が、預貯金の利子と、キャピタルゲイン、配当と違うんですね。そうすると、その違いをどういうふうに説明するのかなというところをちょっと検討していただきたいと思います。そうしませんと、株の譲渡益というのは法人とは関係ありません、とやりますと、今度は配当控除の理屈が立たなくなってくるわけです。ですから、そういったところの調整といいますか、どういう説明をするのか、これはこの委員会で検討していただきたいと思います。以上です。

委員

そこら辺は、私は経済学という立場から言うと、ストックを持っているとそれが収益を生むという意味で普通に考えていたわけですが、法律的な視点もいろいろあると思いますから、きちんと考える必要があるのかもしれません。

ただ、一つだけちょっとお聞きしたいのは、貯金をした場合に金融機関に預けます。そうすると、その預けられた金融機関がいろいろな形で運用するわけですね。貸付とか、場合によっては証券投資とか、それに関するリターンというものは金融機関に戻ってきて、それが最終的に預金者に支払われる。金融機関を除いてみると、本源的な投資をしているということでは直接投資も間接投資も同じということでは、法学的にはまずいということでしょうか。

委員

今のお話ですと、はっきりするのは、典型的な例で倒産した場合どうなるか。「株を持っている人はあきらめなさい」ですけれども、預貯金の利子や債権者は残りますよね。そういったようなことでは違いは出てきますね。

委員

預貯金の場合も、預金保険とか、最近の制度整備がなければ、銀行はつぶれれば、あるいは典型的には、1,000万円を超える定期預金なんていうのは、つぶれてしまえばだめという意味では同じ。

委員

その「だめ」の意味が、事実上だめであるのと、権利はあるけれども、何の中身もないという、その違いですね。

委員

そういう意味で言うと、私の個人的な関心は、同じストックでありながら、入ってくるときに、いわゆる利益という形とは違う形で入ってくる、例えば家賃であるとか、不動産の譲渡益みたいなもの、これは今の委員の話とは違うわけですね。これはやはり金融として違うものなのか、それとも、利子、配当云々と一緒に考えていいのかというところはかなりグレーなので、これはひょっとしたら重要な論点かなと思いますが。

すみません、私ばかりしゃべっていて。

皆様、どうぞご発言ください。

委員

今日いただいた資料1-1ですけれども、22ページ、このフィンランドの説明というのは、趣旨は、二元的な所得というのは、我々は資本所得というのですけれども、資本所得の損益通算というのはいろいろありますよ、ということですよね。それで、あと来週やってしばらくお休みなので、何か宿題を出すような言い方で申し訳ないのですけれども、まさにそこが損益通算をどこまで扱うか。実物な、実物というのは土地とか、そういうものからのキャピタルゲインと金融資産のキャピタルゲインも混ぜるのかとか、あと、家賃のほうはみなし家賃をどうするかとか、ここは、いろいろ工夫というか、それぞれの国の事情があって、本当にピュアな二元的所得税というのは実現できていない。脱落していくわけですよね。

せっかくこれから損益通算のところを議論するので、フィンランド以外にも、私の理解する限りノルウェーが一番きれいな形でやっていた。あと、新参ですけれども、オランダが、ボックスタックスというので、非常に資本の逃げ足が速い国で、思い切った形をやっています。この辺が重要なイッシューの一つなので、もうすでにわかっていることというか、二元的所得税がどういう形で困難になってきて、それぞれの国がどういうプラクティカルな対応をしているかというのを説明していただければ、議論に役立つと思います。

それから、今日お触れになっていないところでは、古くて新しい二重課税の話がありますね。それもどこかでやらなければいけないと思います。そういうわけで、もう少しこの問題の状況を提供していただければと思います。以上です。

委員

ありがとうございました。その点については、では、事務局、よろしくお願いいたします。

後半のことに関してのお答えも含めて、みずほ総研の講師の方に、アメリカの金融証券税制改正、まさにこの二重課税の問題も含めて、配当課税を見直したわけですが、それと経済効果というテーマでご説明をいただきたいと思います。

では、よろしくお願いいたします。

委員

お手元にお配りさせていただいた資料でございますけれども、「米国におけるキャピタルゲイン減税と配当課税の軽減」という資料でございますが、そこに目次のようなものが書いてございますので、これに沿ってご説明させていただきたいと思います。主に経済効果についての議論ということで、今日はご報告をさせていただきます。

ご案内のように、アメリカにおきまして金融所得税制といいますと、キャピタルゲインに対する減税をどうするかというのが税制改正のたびに議論になってきたわけですけれども、今年のブッシュ大統領の提案の中には、配当課税の、当時は撤廃という主張が入っておりまして、実際にはそれが軽減という形で落ち着いているわけですけれども、この2つが、事実上、議論の中心をなしてきたというふうに考えられます。

まず最初に、キャピタルゲインの税率を1ページ目の図でごらんいただきたいと思います。おおむねキャピタルゲインの最高税率は所得税の最高税率をずっと下回ってきておりまして、一時期を除きますと、大体半分くらいの低さになってございます。直近では35%と15%という数字になってございますけれども、長期的には、キャピタルゲインが所得税の税率に比べてかなり優遇されてきた、そういう事実がございます。

そこで、最近これがどうなってきているか、あるいは当面どうなるかというのを、2ページでごらんいただきたいと思います。もうご案内のことだと思いますので、私が言うとかえって変な言い方になってしまうかもしれませんが、キャピタルゲインの課税が具体的にどうなっているのかというのを模式的に示しております。

まず、所得税のブラケットが2001年までは27.5%のところ、2003年からは25%のところで2つに分かれまして、例えば2003年について言いますと、この分かれ目の所得が5万6,800ドルというところにございますが、例えばその隣にありますけれども、通常所得、普通の所得が5万1,800ドルある人であれば、仮にキャピタルゲインが、これは、1年超保有のものに関するキャピタルゲインですけれども、1万ドルあったとしますと、5万6,800ドルまでの差、すなわち5,000ドルにつきましては、96年までは15%の税率が適用され、97年になりますと、保有期間の1~5年、5年超ということで、税率は分かれますけれども、10%か8%で課税され、2003年に関しましては5月から5%という税率になりました。これが2008年になりますと、ゼロになる。2009年は、またもとの10%、8%に戻るということになっておりますけれども、そういう税率になっている、あるいは、なるということでございます。

今度、上の27.5%、あるいは25%のブラケットの上の5,000ドルにつきましては、96年までは28%、それが20%、18%に分かれまして、2003年からは15%になっている。これも2008年まで続く、こういう税率の推移になってございます。そして2003年以降、すなわち今年の税制改革からは、配当課税につきましてもここのキャピタルゲインと同じ税率で課税をされることになりまして、こちらは、2003年の年初にさかのぼって適用という形になってございます。すなわち、当初の提案では配当課税をゼロにするということでございましたけれども、さまざまな要因で反対がございまして、キャピタルゲインと同じになっているというのが税率の現状でございます。

このように、キャピタルゲインに対する課税というのは所得課税に比べてかなり優遇されてきたわけですけれども、その背景には、経済的な効果として、経済成長ですとか、株価といったところに好影響が及ぶであろうということがあったと思われます。

実際にキャピタルゲイン減税の効果に対する試算が、税制改正のたびに行われてきたわけですけれども、例えば、先ほどご覧いただいた97年の減税、28%から20%に最高税率を下げるといった減税に当たって、どういう効果があるのかというのを試算した数字がございますので、3ページの左側、DRIの試算というところでご覧いただきたいと思います。

いろいろな変数について試算をしておりますけれども、これは、大きいと見るか小さいと見るかは議論があろうかと思いますが、おおむね最高税率の8%の低下という、あまり大きくもない低下に関して申し上げれば、そこそこ効果があるというふうに当時は評価されていたと思います。

例えばGDPについて言いますと、98年から2009年の間、標準予測といいましょうか、ベースラインに比べて0.4%増加するということでございましたし、財政収支につきましても、経済成長の結果、税収が増えるということで、その減税分をリカバーして若干のプラスになる、こういう計算でございました。

株価につきましては、減税が行われた97年からこの試算が行われた99年にかけて、この減税が株価を30%押し上げたというふうに試算されておりますし、また、ベンチャー企業のような、新しく起業するといったようなところとか、あるいは技術革新に関しましても、キャピタルゲイン減税がそれを促す効果が認められる、こういう試算が当時行われていたわけであります。

そのあと、先ほどお話し申し上げましたように、98年に減税法案がまた出されまして、この中に、キャピタルゲインのさらなる減税が盛り込まれておりました。実際にはこれは実現しませんでしたけれども、最高税率を20%から15%に下げる、低いほうのブラケットの税率を10%から7.5%に下げる、こういう提案がなされておりまして、それに関して、CBO(Congressional Budget Office)がさまざまなモデルを使って試算した結果が、右のほうに書いてございます。

また、ここはCBOの試算だけ取り上げておりますけれども、それ以外にもさまざまなシンクタンク、研究機関、経済学者、いろいろな試算が出ていまして、このCBOの試算に大体集約されるかなということでこの数字を取り上げております。

右と左をご覧いただきますと、税率低下幅の違いはございますけれども、経済効果の大きさについては、CBOの試算、その他の研究機関の試算も含めて、かなり小さいものではなかろうか。逆に言えば、これまでかなり効果があると言われていたのは実は間違いであって、よくよく考えてみると、あまり大きな効果を期待しないほうがいいのではないかという議論がだんだん出てきたのが、97年から98年、あるいは、最近に至る議論の流れだというふうに思われます。

ここに並んでいます数字をご覧いただきますと、誤差の範囲内と言ってもいいくらいの数字の小ささでございます。財政収支に関しましても、ネットで、これについては不確実性が高いという言い方をされておりますけれども、それでも大きなプラス効果があるということではなくて、むしろマイナス効果になるのではないかという議論になってございます。

また、起業ですとか、技術革新を促すといった点に関しましては、プラスの効果はあるだろうけれども、その効果の大きさは未知数である。あるいは、これまでキャピタルゲインの減税が行われた期間、税率が低かった期間に、起業あるいは技術革新が促されたかというと、そういう事実はないということで、これに関してもやや否定的な見方が多くなっているように思われます。

このように、経済効果に対する評価がからくなった、あるいは、からいということの背景ですけれども、言われておりますところは、先ほどご覧いただきましたように、そもそもキャピタルゲインの課税は低率でございますので、さらに下げても効果は大きくないのではないかといった点。あるいはキャピタルゲインというのは、株式を売却して初めてキャピタルゲインが実現して、それに対する税率が下がるということでございますから、株式を保有している個人が減税によってどれくらい売却を前倒しするのかといったこととか、ずっと持ち続けている人もいるわけですので、そういった点から言って、減税の対象というのが、考えられているほど大きくないのではないかという点。あるいは、そもそも非課税になっている主体が持っている株式も4分の1くらいあるだろうということがございまして、その減税効果はそれほど大きくないのではないかということ、そういう結論が出てきております。

あと、起業とか技術革新につきましても、新しい事業にファイナンスするというのは、そもそも非課税の年金基金ですとか、IRA、401Kといったようなところでございますので、これも減税の効果が及ばない。こういう議論になっているわけでございます。

その次のページでございますけれども、先ほど、キャピタルゲインが実現される比率がそれほど高くないのではないかということを申し上げましたけれども、実際にキャピタルゲインの最高税率の軽減とキャピタルゲインの実現率が、どういうふうな関係にあるかというものを見たものでございます。例えば、一番山が大きいのが84、85年ですけれども、その数年前に税率が下がりまして、そのあと、キャピタルゲインの実現率が高まった。キャピタルゲインが、実際にGDP比で見ても増えているということでございますけれども、そのあと今度は反落しておりまして、過去50年間の平均値を上回って、そのあとは下回るという姿になっております。

同じようなことは60年代から70年代にかけても生じているわけですので、ここから導かれる結論は、キャピタルゲインの実現というのが大きく変動するために、そこから生じる経済効果も持続的ではない。あるいは、プラスの効果があったとしても短期的で、そのあとはその反動が来るというのが経験が示すところであります。

こういったキャピタルゲイン減税の経済効果に関する議論を一言で申し上げれば、あったとしてもわずかであり、長い目で考えれば、そのプラスの効果は大きなものだというふうに期待することはできないというのが、とりあえずのコンセンサスのようになっていると思われます。

次に、今年、ブッシュ大統領が提案した配当課税の撤廃ということでございますけれども、これに関しましては、概要について、以前、この調査会でご説明があったと伺っておりますけれども、簡単におさらいだけさせていただきたいと思います。

最初に申し上げましたように、配当課税の税率が撤廃される、あるいは、実際には軽減されたわけですけれども、それ以前は所得税の税率と同じ税率で課税されておりました。なおかつ、配当課税の撤廃が二重課税の廃止であると言われるとおり、配当に対しては企業段階で課税をされ、なおかつ個人段階で課税をされるという二重課税というものになっております。その結果として、投資家が受け取る所得、投資収益率というのが、例えば企業側から見て、負債で調達して事業を行って、その利益を投資家、家計に返すときと、あと、利益を内部に留保しまして、その結果生じたキャピタルゲインでもって投資家に返すケースと、株式で資金を調達しまして配当で返すケースとで、大きく異なる結果となっている。そういう実態があったと思われます。

5ページには、税引き後の所得をファイナンスの方法ごとに書いてございますけれども、これは2002年のケースですので、所得税率、最高税率を引いたりしておりますけれども、負債の場合は、税引後の所得は61.4%、内部留保の場合は59.2%。これは、キャピタルゲインにかかる税率をかけたり、キャピタルゲインの実現の比率等々をかけ合わせて出した数字でございますけれども、59.2%、株式の発行の場合は二重課税になりますので、39.9%ということで、かなり低くなっているという実態があったと思います。

このような二重課税がどういう歪みをもたらしているのかというのが、6ページの左側に書いてございます。これは、以前ご報告があったということでございますので、簡単に触れさせていただきますが、配当課税、二重課税を撤廃することによりまして、資本コストが下がり、設備投資が増える、景気がよくなるという、よく出てくる議論でございます。また、先ほどご覧いただきましたように、配当が内部留保よりも税制上不利になっておりますもので、その企業の配当政策が歪んでくる、あるいは、内部留保が乏しい新興企業に対する投資が増えなくて、大企業に対する投資が増える。この背景には、大企業よりも新興企業のほうが成長力が高くて経済にとってプラスである、それが阻害されるのは経済にとってマイナスであろう、こういう判断があろうかと思います。

3番目は、コーポレートガバナンスに対する影響ということで、企業経営者が内部留保を不正に利用する、私的に流用するというふうなことも実際に起きたわけでございますし、また、内部留保を新たな投資プロジェクトに回す場合に、投資プロジェクトが本当に効率的なのかどうかという判断をするに際して、その経営者の判断が、市場の判断、すなわち配当をしてその所得を投資家に回し、その投資家が新たに株式を購入することで、その投資の採算を判断するわけでありますけれども、それと比べて非効率である、あるいは、採算性の低いものに投資しがちである。

そういう問題と、あと、配当課税を撤廃して、投資家が企業の株式を買って配当を受け取ろうという動きを強めるようになりますと、投資家が、きちんとこの企業は利益を出しているのかということをしっかり監視することになりますので、それによってコーポレートガバナンスが強化されることが促されるのではないか。配当課税、二重課税のときはそれがなかなかうまくいかない、という議論があったわけであります。

もう一つ、4番目ですけれども、借入れによる資金調達が結果的に優遇される、そちらのほうにバイアスがかかるということでございます。それは、支払利子が損金算入されるという税制上のメリットもあるわけですけれども、そういうことによってその企業の債務が増えて、企業の資金調達が債務に過度に偏ることによって、その企業の体質が、例えば景気の低迷ですとか、あるいは、デフレに対して脆弱になるという現状があって、そういったマイナス、歪みを取り除くことが必要であるということも論点としてあったかと思います。

実際に、7ページになりますけれども、アメリカの企業の資金調達、これは通常はストックベースで見れば、エクイティによる資金調達が非常に多いわけですけれども、90年代に入ってからの増加額を見てみますと、特に後半でございますが、資金調達増加額に占めるデット、社債の割合が非常に多くなっているわけでございます。これは、最近も続いている現象でございますけれども、これも、配当重課の問題だけではなくて、例えばROEを重視する姿勢が高まった。その背景には、株価が非常に重要なメルクマールになってきたこともあろうかと思いますけれども、こういう、やや債務偏重の資金調達構造、財務構造をもたらした要因として、配当重課が考えられるということになっているかと思います。

こういった背景、あるいは動機でもって配当課税の撤廃が提言され、実際には軽減にとどまったわけでありますけれども、ブッシュ政権が発表した当時、この効果に関して投資銀行が、株価に対してプラスの影響が大きいのではないかというふうなことを幾つか数字で示したものがございます。それが、もう1枚戻っていただきまして、6ページの右側になりますけれども、これはUBS Warburgが出した数字でございます。

まず、黒のひし形の2番目のところ、「配当課税撤廃ケース」と書いてございます。これが当初の提案だったわけですが、配当課税を撤廃して、企業の配当性向が変わらないとして株価が5%、配当性向が上昇するとして10%、株価が上がるのではないか。さらに、債務依存体質の是正に顕著な効果がある、こんなふうに試算されておりました。

実際にはその当時から、撤廃は無理であろう、引下げにとどまるのではないかということで、最初のひし形に、税率を20%に引き下げるケースというのが試算されておりまして、このケースは、キャピタルゲインの税率よりも高いということになりますので、あまり効果はないだろうということで、2%程度の上昇にとどまる、こんな試算がなされていたわけであります。

その後、実際にどういう経済効果があったかということにつきましては、残念ながら、私の見る限り、定量的な分析がなされたというのをあまり見たことがございませんで、いろいろな方々に確認をしたところ、今ちょうど試算をやっているところだとか、これから分析して試算をして発表する、というふうな答えが多うございました。

したがいまして、この時点で経済効果の大小を定量的に計量するというのは、今のところできないのですけれども、ただ議論の整理としまして、8ページ、今年の3月ですが、下院歳入委員会でいろいろな人が呼ばれて証言をした委員会がございまして、そこでの議論というのをもう一回整理ということでまとめてみたのがこの表でございます。

賛成、中立、反対というふうに単純に分けておりますけれども、まず、一番上のコラムであります。先ほど、企業の資金調達構造が変わった、あるいは、歪んでいるというふうなことを申し上げましたけれども、そういった点に関して、賛成派と中立派、大体意見が一致しております。すなわち、二重課税が企業の財務体質を歪めてきた、経済活動を歪めてきたということに関してはこの辺は共通しております。

例えば、賛成派のJohn Makin、あるいはJames Glassman、これはAmerican Enterprise
Institute というどちらかというと共和党系のシンクタンクでございますので、そちらのほうにバイアスがかかりますけれども、論点としては、内部留保をため込んでも、それが本当に効率的な投資に使われているかどうかというと、疑問である。あるいは、配当が相対的に減ることによって個人投資家が恩恵を受けられない、投資家にとっては投資の選択肢が減るということでこれはマイナスである、こういう議論をしています。

一方、反対派は、大企業への投資が促進されて小企業への投資が抑制されるということで、これは成長にとってマイナスであるという議論をしておりますし、また、財政の赤字が拡大することによって将来の国民所得が減る、あるいは金利が上昇する、そういった反論があるということでございます。

配当課税撤廃に対する議論の中で、そもそも年金基金など非課税でございますので、その配当減税の影響は小さい、恩恵は小さいという議論がございます。これは、2番目のコラムでございますが、中立派と反対派が同じような議論をしているわけですけれども、賛成派はこれに関してどういう議論をしているかというと、配当の受け手が少ないからメリットが小さいということではなくて、配当重課によって企業が配当を減らしているから、結果的に受け手が少なくなっているのだ、だから企業が配当を増やせば、配当の受け手というのはもっと多くなるから、減税のメリットは大きいのだ、そういう言い方をしております。どちらが本当なのかはちょっとまだわかりません。

最後に、一番下の箱でございますけれども、経済効果的なものについては、中立派も含めて、なにがしかのプラスの効果あるでしょう、こういう議論になっております。左の賛成派の黒ポツの2つ目で、先ほど日本に関するご説明にもありましたように、配当を実施している企業の株価のパフォーマンスは、実施していない企業よりも良好である、そういう事実があることが指摘されておりますし、また個人投資家へのメリットも、高齢者を中心にして非常にメリットが大きいものがあるのではないかという議論がなされております。

ただ、中立派の人が言っておりますけれども、大統領の提案が複雑すぎて、もうちょっと別のシンプルなやり方もあるだろう。例えば、企業側から見て配当の支払いを控除して、個人が受け取るときに課税をするということであれば、エクイティとデットの差というのはなくなるではないかとか、そういう議論もあり得るということで提案をしております。

反対派は、経済に対する効果で、これは非常に否定的でございまして、例えばMacroeconomic Advisors、これはアメリカでも影響力の強い金融コンサルティング会社で、政府、あるいは民間がいろんな経済効果の試算をするときにマクロモデルを使いますけれども、そのマクロモデルのつくり方等々について非常に大きな影響を与えているというふうに言われます。そこの試算ですと、全くプラスの効果はないということになっておりまして、それを論拠として反対をしているということでございます。先ほど申し上げましたように、このあと、実際的な定量的な評価がまだ出ていないものですから、具体的な評価はこれからということになろうかと思います。

ただ、最後のページになりますけれども、幾つかのリアクションが、配当課税の撤廃、軽減によって出ております。例えば左にございますように、配当を実施する企業の数、これはS&P500社のうちの社数でございますけれども、90年代、ずっと減っておったわけですけれども、それが、2002年末の351 社から2003年10月末には368 社に増えたということで、配当に対する関心が高まって配当する企業が増えてきた。これまで、配当ではなくて株価の上昇で投資家に報いるのだと言っていた企業も、配当するということで転換をしたということがございました。

また、右のほうの図でございますけれども、実際に今年の春以降、株価が底を打って上昇しておりまして、これが本当に配当課税軽減の効果なのかどうかはわからないところではありますけれども、事実としてこういったことがあるというふうに考えられます。

最後に、以上のような議論をもう一回ざっとながめてみまして、どんなことが言えるのかというのを整理してみますと、アメリカにおきましては、キャピタルゲインの減税、配当課税の軽減の経済効果について、非常に多面的、定量的にきめ細かな分析をしているというのが、当然といえば当然ですけれども、目につきます。GDPとか株価という定量的なものに対する影響もそうですけれども、それが経済に影響を与えて、それが投資家、企業のビヘイビアを変えて、さらに税収にどうはね返ってくるのかということにつきましても、多面的な分析を行っているというのが非常に印象的でございます。

また、その結果として出てくる経済効果でございますけれども、短期的な効果はともかく、長期的に見ますと、あまり大きくないか、あるいは不確実であるといった評価が、特にキャピタルゲイン減税については多いという印象がございます。一方で、長期的な市場構造、経済構造に与える影響に関しては、特に配当課税の軽減撤廃に関して見られましたように、コンセンサスのようなものがあるわけですし、また同時にそこにおきましては、経済行動に対する歪みを取り除くことは重要である、といったようなコンセンサスはあったように思います。

あと、今日はちょっと触れませんでしたけれども、よくある批判として、キャピタルゲインの減税も、配当課税の撤廃・軽減も、その利益が高所得者を中心に及んでいくために、公平性を欠くという議論も必ずや出てくるということでございます。今日はちょっと取り上げることはできませんでした。

そんなことが、アメリカでの議論の一つの特徴ということになろうかと思います。日本とは、金融風土もかなり違うというのは言うまでもありませんし、株式投資の目的も、当面、それで収益を上げて何か使うというのか、自分たちの老後の年金を増やすために株式投資をしているのかといったような違いですとか、あるいは、毎日株のことばかり考えているアメリカ人と、そんなことを考えるのは忙しくてできない日本人との違いですとか、いろいろなものがあろうかと思います。ここでの議論がそのまま当てはまるとは思いませんけれども、ただ、議論の一つの材料、あるいは判断材料として、このような分析がアメリカでは行われているというのを紹介させていただきました。

以上で終わらせていただきます。

委員

ありがとうございました。

ただいまご説明をいただきました内容ですけれども、ご質問、あるいはコメント等、ありましたら、どうぞご自由にご発言願います。

委員

配当課税の件です。国家が小さいということが一般的な結論だというお話でしたが、例えばLLCとの関係、これは制度自体が配当課税というものがない、それを避けるための制度ということだろうと思いますが、大きな企業ではなくて小さい企業の場合は、LLCが圧倒的に増えてきている。それはある意味で二重課税を避ける租税回避のシステムではないかと思いますが、それがベンチャー企業の活性化につながっているということがあると、そこまで含めて計測すれば、経済効果というのは非常に大きいのかなという気もするわけです。

その辺は、計測は難しいことだと思いますけれども、大企業になりますと、何万人も株主がいるようなところではそういうことはできませんが、中小企業でベンチャーに影響を与えるという意味では、かなり大きなことではないかというふうに思うのですが、その辺の評価というのはどうなっているのでしょうか。

委員

今、先生がおっしゃるように、そういう定量的な評価はなかなか見られないということだったのですけれども、どこかに書いてございますが、ベンチャーのような企業にお金が回っていかないことがむしろ経済にとってマイナスである。すなわち、今のような内部留保を重視、そちらにバイアスがかかるような政策をとることによって、大企業にお金が回って、ベンチャーにお金が回らないのではないかというふうな議論が、議論としてはなされておりますので、ちょっと違った観点からの議論になっていようかと思います。

現在のベンチャー等々にお金が回る、それが経済を活性化するというのは非常に正しいことだと思いますけれども、それに関して言いますと、ベンチャーに出資している、あるいは投資している企業というのは、もともと課税をされていないので、今回の減税の影響はないのだというふうな議論がそこではなされているようでございます。

委員

どうもありがとうございました。今日のプレゼンテーションは、経済効果をめぐる議論ということですから、ちょっと埒外の話かもしれませんけれども、例えば、アメリカでこれだけの減税をする、大統領がそこまで踏み切るというのには、彼が理解しただけの説得力のある何かがあったと。それは何があるか、ということが一つ。それから、日本では配当二重課税廃止というのは、私の知る限り、私が証券の仕事をするようになってからおそらく数十年来言ってきている話ですね。アメリカでも、証券業界は常にそういう主張をしてきたのかどうかということ、これが第1点。

第2点は、実証的な効果はまだかもしれませんけれども、これによって個人投資家の数が増えてきたのかというような問題、あるいは、取引高に占める個人のシェアが増えてきているとか、そういう証券市場における効果がどんな具合かということまで、もし調べてわかっていたら、教えていただきたい。

委員

3番目の点は、私、ちょっと調べておりませんで、あとで調べて、もしそういうものがあればご報告させていただきたいと思います。

逆で申し訳ありませんが、2番目の点ですけれども、ご指摘のように、配当課税に対する議論というのはずいぶん昔からあるようでございまして、たしかルーズベルト大統領のときからされているとか、70年代からそういう議論が経済学者の間でされてきたとか、そういう歴史はあったようでございます。ただ、この議論が盛り上がってきたというのが、そもそもこれを言いだしたのが、CEAにいらっしゃったハバードさんです。90年にそういう論文を書いて、それからずっと検討してきたのだということをご本人が言っているのですが、ちょっとそれが見当たらなくて、本当かどうか、私、確認できませんでした。

ただ、最初の点と関連しますけれども、この議論というのはこの10年間くらいずっと行われてきた議論のようで、私、実際にこのペーパーをつくった、今はCBOのチェアマンをやっているホルツイーキンさんという方、私が1月にお会いしたときはCEAのナンバーツーで、ハバードさんの下にいた方だったのですけれども、その方と議論をしていて、ホルツイーキンさんが言うのは、以前からこれに関して問題だと思っていたのは、さっきちょっとグラフをご覧いただきましたが、これが一番大きな要因かどうかは別にして、企業が資金調達をするのに、株式ではなくてデットに依存するようになってきている。その結果として、日本もそうですけれども、景気が悪くなり、デフレになった途端に、経済の体質、あるいは企業の体質というのが非常に弱くなってきてしまっている。あるいは、過剰債務という問題も生じてきている。これを長い目で考えると、アメリカの経済の成長に対してはマイナスだというふうに考えざるを得なくて、それを何とか変えたい。そのための一つの重要なツールが、この配当課税の撤廃なのだというふうなことを言っております。あるいは、ブッシュ大統領が、あの方も経済に関心があるのかどうか、私、ちょっとわかりませんけれども、あるとはあまり思えませんけれども、そこが受け入れられたのではないかなというふうに思います。

少なくともCEAの意図としては、株価への影響ですとか、あるいは、株式投資が増えて、投資が増えてというのを必ず書いてありますけれども、そこよりは、経済あるいは企業の体質を、債務依存の体質からもう一回エクイティ中心の体質に変えて、不況ですとか、いろいろな外的ショックですとか、デフレから隔離をしたいというのが意図としては大きいのだけれども、それは誰もわかってくれないんだよね、というふうなことを本人は言っていました。そこは大きかったのではないかというふうに思っております。

委員

すでに何点か出て、繰り返しになるかもしれないのですけれども、キャピタルゲイン課税と配当課税と経済ということで、キャピタルゲイン課税を減税したり、配当を減税していると、それが回りまわって経済成長にどれだけ影響があるかというのは、循環的な要素もあるので、それは非常に難しい。

ただ、この税制と経済との関係で何が問題かというと、一つは、専門委員がLLCとおっしゃったけれども、やはり組織の選択には影響があるだろう。今日の説明ではしょられましたけれども、S法人というのも出てきていますよね。どういうことかというと、アメリカの税を議論するときに、86年というのがものすごい年で、個人の最高税率が28%まで下がる。今日のお話ですと、4ページで説明いただきたいのですけれども、86年にキャピタルゲインの益がドッと出るわけです。S法人というのは、法人の形態を保ちながら、課税上は二重課税されない、配当課税されない、パススルーするわけですよね。そうすると、S法人が雨後のタケノコのようにドーッと出てくるわけです。

だから、86年だけで何十人という経済学者が飯を食っているというか、仕事をしているわけですけれども、実体の成長率というのには、86年の改革というのは、やはり益出しとか、上のほうの人たちがこの機会に利益を出してしまう。それから組織形態もS法人にしてしまうとか、専門委員の指摘されたLLCとかも底流としてはずっとある。だから配当課税というのは、大きなところのGDPの話まではわからないけれども、潜在的にというか、もっと言えば、現実の経済とは関係があるのだろうなと。

もう一つ、どういう点でこの課税が問題かというのは、7ページの資金調達のところでも、最後のところでご説明されたことの繰り返しかもしれないですけれども、何が起きていたかというと、この図で、要するに社債を発行して株を買い取ってしまうわけです。だから、株をどんどん煮詰めていく。アメリカの企業はROE等に敏感ですから、借金して株を買い取るという形で、最近だと銀行の借入まで減らしているわけです。借金して株式を償却して、銀行も減らしている。これが、ある意味でアメリカでもう一つずっと言われてきたんですよね、これがいけないと。だから資本所得課税というのは、我々の言葉で言うと、一元的な方向にしたいと。この問題というのは、どこかで非常に重要なところがあるとすれば、今言ったようなところで、現実の問題としても起きているという理解を私はしているのですが。

委員

最初の点に関しましては、どこかに一言だけ書いて、飛ばしたのですけれども、おっしゃるように、86年に改正して以降S企業は急増していると。このS企業、私も実態はよくわかりませんけれども、いわゆる経済に対する貢献ということで言えば、貢献度があまり大きくないというのがたぶん前提にあるのでしょうけれども、それがけしからんのだというふうな言い方もされております。

ただ、経済効果という点で言うと、4ページの図では、一たんそこで増えたあと、また今度は落ち込んでおりますので、キャピタルゲインの実現率がずっと上がっていくわけではなくて、反動減もあるから、ならしてみればあまり大きくないよということで、この図は使わせていただいたということでございます。

資金調達に関しては、おっしゃるとおりであろうかというふうに思います。ストックベースではまだまだですけれども、実際に企業の借入が非常に増えてきて、株式での調達が減ってきて、それがつい最近では、過剰債務の問題ですとか、銀行から見れば不良債権ですし、企業の信用リスクの高まりということで、非常に強く意識されてきたということも事実でございます。特にこれからアメリカもデフレ傾向が強まる可能性があるとすると、これがここに来て非常に大きくクローズアップされたというのは、非常に適切な問題意識ではなかったかと個人的には思っております。

委員

質問というよりも感想です。先ほど委員が、86年でS法人が非常に増えたと言われたのですが、企業形態を選択するときに、税制から見た場合に何が一番のポイントかというと、法人税と所得税の税率がどうなっているかということですね。1986年で法人税の税率が34%になりまして、所得税が、例外的な所得でも33%ということで、法人事業というものが税負担の面で非常に損になるということで、組合であったり、S法人といった、個人事業として課税される仕組みにどんどん企業が移行したということがあったわけです。

それはそれとしまして、今日のお話を伺うと、先ほど言われたように、ルーズベルトのときには留保金課税ということをやったのですが、戦後アメリカは、配当二重課税の問題は、一時的に配当税額控除をやりまして、配当と法人の所得とは別の問題という形で扱ってきたのですが、ここへ来まして、配当所得を軽課する、5%と15%であると。

先ほど私は、金融資産性所得の一体化というけれども、配当と預貯金の利子とはやはり違うではないか、というのは、もとの出どころが違うからだという話をしたのですけれども、ここを見ますと、やはり配当には二重課税の問題を調整しなければいけないという問題が出てくる。では、これを金融資産収益として一体とするときに、こういう問題を抱えているのをどこで対応したらいいのかなと。素案のところで出していただいているところには、どこかに入れなければいけないと思うのですけれども、その辺もご検討いただきたいと思います。

委員

まだご意見がおありの方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと時間が押しておりますので、よろしければ次の議題に移りたいと思います。

次に、ソフィアバンクの講師の方から、「個人から見た金融商品」と題して、個人の資産運用における各金融商品の位置づけ等についてのご意見、ご説明をいただきたいと思います。

それでは、よろしくお願いします。

委員

前の講師の方のように、大きなお話ではなくて、非常に小さなお話になってしまうのですけれども、時間もありますので、手短にご報告させていただきたいと思います。

私、日ごろ、個人の投資家の方もしくは資産運用を考えている方々には、セミナーという形でお話をする機会を多く持たせていただいておりまして、そのときに感じていること、聞いたことというのを、ご報告させていただきたいと思います。

現在、セミナーというものをやると、かなり人が集まります。しかも、有料で資産運用セミナーをしても集まるというくらい興味を持っている方が増えている。ご存じのとおり、資産運用及び株式投資に関する雑誌の出版の数も非常に増えておりまして、興味を持っていらっしゃる方が多い。しかもその中で、単一の商品というよりも、バランスを持っていろいろな金融資産を持つべきではないかということを考える人が非常に増えています。私、税金のこと、税制のことは全くわかりませんが、今日お話を伺っている中で、この一体化という部分は非常に大切なことなのではないかと感じている次第です。

皆さん多くの個人の人たちが、資産運用に目的を持っている、興味を持っている一つの大きな理由は、やはり将来に対する不安の部分が大きい。いろんな雑誌、新聞、テレビなどで報道されるのに大きなものがあるのですが、老後60歳以降生活をするために夫婦で1億円必要だということが、まことしやかに言われているわけです。このまま年金制度が維持される場合、3,000万円あれば大丈夫ですと言われているわけですけれども、皆さん、年金制度に対する不安もたくさんお持ちであります。3,000万で本当にいいのだろうか、3,000万貯められるのだろうかという不安をたくさんお持ちの中で、では、どうやって60歳までに3,000万もしくは5,000万くらい貯められるのだろうか、増やせるのだろうかという深刻な心配をお持ちの方が多いのが現状です。

では、個人の方がどのような行動を起こしていらっしゃるのか、どういう興味を持っていらっしゃるのかというのを、非常に大ざっぱなくくりですけれども、まとめさせていただいているのが資料の2番目です。

大半の方は、そうは言ってもそれほど動いていらっしゃいませんし、まだまだ預金と保険という状態で金融資産を置いておかれているのですが、動き出している方というのは、今後、そういう何もしていない方に対して大きな影響力を与えられると思いますので、いわゆる口コミのリーダーになるような、先進的でかつ影響力のある方々を大ざっぱに分類させていただいております。

AからEまで分類したわけですが、今、非常に資産運用に興味を高く持っていらっしゃる世代の一つが20代後半から30代の女性です。私もこの中には入るのですけれども、将来一生独身ではないかという不安を持っていらっしゃる方が非常に多い。本当に多いんですね。ですから、ここの世代に対しては有料セミナーが非常に効果的なわけです。この方々は、誰も支えてくれないかもしれない、仕事も続けられないかもしれないときに、どうやって一生安心を買うかということで、まず一番興味を持たれるのは、やはり住宅を早く持っておこうということなんですね。

これに関して、下世話な話ですが、お嫁に行くときはご両親からお金をいただけるわけですけれども、嫁に行かなければいただけないということで、今、贈与税が非常に注目されています。住宅を買うので、どうせお嫁にも行けないので、贈与の減税を使わせていただきたいということの話になると、ものすごく熱心に聞かれるんですね。

実は、親を巻き込まれる世代です。そういう意味で今度は親を連れてきます。親を連れてくるので税金の話を聞かせてほしい、ということを言われることが非常に多い。かつ、住宅を持つ、さらにお金もできるだけ効率的に運用しておきたいということで、多少資産運用のことも興味をお持ちになりますし、なかなか株に興味をお持ちなのですが、行動しない世代です。株式のセミナーをやると数は集まるのですが、口座を開いたまま株式投資行動をしないのがこの世代の特徴です。

この世代が少しリスクをとるとすれば、外貨預金、外貨MMF、外貨なんですね。これは、海外旅行など、それから、海外の物を買うということが日常の習慣になっておりますので、為替に対する恐怖感とかリスク感覚が、あるようで、甘いというところがあるんですね。皆さん仕事は持っていらっしゃいますので、リスク商品に対しては100万円くらいは使ってもいい、というような方々です。

税金に関して「考慮せず」というふうに書いておりますが、投資に関する税金については興味がないに近いです。ただ、先ほど申し上げましたように、贈与税であるとか、相続税であるとか、住宅ローン減税であるとか、こういった消費に関する税金に関しては大変興味が高い世代であるなというのが、私の印象です。

続きまして、Bで、主婦ですけれども、この方々というのは、目の前の消費、支出に大変追い込まれている状態でして、資産運用に関しては、興味はあるんですけれども、まだ先の話だということで、金融商品云々というものにはあまり興味をお持ちではない。あるとすれば、先ほども申し上げましたが、住宅ローンをどうするかということと、保険をどうするかというところに大変興味を持っていらっしゃる世代です。

ただ、投資に回す資金がほとんどありませんので、普通の世代で話すと、月1万円も投資に回せないという世帯が非常に多いです。この中の方々は皆さんもっとお回しになれるかもしれませんが、驚くほど、主婦向けの雑誌の方々と話していると、月1万円でも投資信託は無理だという世代なんですね。この方々はやはり保険の部分に一番興味をお持ちです。学資保険であったり、年金保険であったり、そういったものに関して大変興味を持っていらっしゃる世代です。

税制に関しての興味というところは、商品に関しては興味をお持ちですけれども、資産運用に関しては、そもそも資産運用するつもりも資金もないのでということで、なかなか向かいません。

この2つの方々もそうなんですけれども、いろいろ証券税制変わりました、低くなりましたから、皆さんこれで投資を、という話がよく出てくるのですが、皆さん全くぴんとこないわけですね。今まで投資をしたことがない人に、税制が変わりましたと言っても、その実感が全くありませんので、私の感覚では、税制の改正によって優遇されるようになったから投資に行こうというレベルではない方々がほとんどです。投資そのものが、その方々の生活において必要かどうかという判断がまず問題でありますので、税金によって動くほどの方々ではないというのが私の印象です。

続きまして、今、積極的に株を売買されている、今日も日経金融で、3割、個人投資家が株の売買に占めているという数字が出ていましたけれども、そのメインのプレーヤーがCの男性の会社員です。おそらく公務員の方は入ってないと思います。公務員の方々にもセミナーをさせていただくのですが、投資はやりたいけどできませんというか、興味がありません。あと、正直におっしゃる方は、「そうはいっても我々、老後は比較的お金がもらえます」ということをアンケートに書かれる方が多くて、将来に対しての不安をより持っていらっしゃるのは一般の会社員なのかもしれません。

そういった男性の会社員の方というのは、株式投資、リスクをとることに積極的です。これは、家庭をお持ち、お持ちでないにかかわらず、ご自身のお小遣い、もしくは、うまく収入の中からご自身のお小遣いにされたお金で投資をされています。投資されている商品につきましても、株式をはじめとして、最近であれば、eワラント、これが大変人気です。eワラントというのは、ネットの証券会社で扱われている商品ですけれども、オプションのようなというか、オプションそのものなんですけれども、少ない金額でレバレッジをかけて株式の売りも買いも行えるという商品です。これを積極的に利用されている人が非常に多い。ネット証券でeワラントセミナーをすると、必ず人があふれるというような現状です。

それ以外に少し伸びてきているのは外貨証拠金取引ということで、これも、為替に関してオプションで売買するようなものです。あと、投資信託。これも今日の日経金融に出ていましたけれども、中国株がブームですから、こういったものを直接買えない方々、つまり、海外の投資先でリスクが高い、もしくは手続きが大変なものに関しては、こういった男性のサラリーマンの方々は投資信託を利用されている。あと、商品ファンド、証券化商品というのも多少興味はお持ちですけれども、短期で利益が上がらないものに関しては、あまり触手を伸ばされていないというのが現実です。ですから、今、5つお話しする中で、このCの男性会社員だけが、資産運用というよりも、わりと楽しみの一つとして金融商品とおつき合いされている感覚があります。

それから、Dの高齢者、富裕層ですけれども、この方々は税金に一番興味をお持ちの方々です。税金がどうなるかということは非常に興味を持っていらっしゃいます。この人たちの資産運用に対する動機づけというのは、お金を増やしたいのではなくて、今あるお金を減らしたくないというニーズが一番高いです。したがって、リスクはあまりお好みになりません。ただ、為替リスクについてはある程度覚悟を決めておられるというか、理解をされているということで、外貨物に対しては積極的な方が多いようです。

あと、販売会社という意味では、この世代は、証券会社を利用されるというよりも、銀行を通じてリスクのある商品をお買いになる方が多い。この世代で今一番人気が高く、伸びているものの一つに変額年金保険があります。これは投資信託と保険が合体したような商品でして、年金保険、掛け金を支払いますと、株式であるとか債券であるとか、そういったもので運用されて、15年もしくは20年、そのあたりで年金として受け取る際に、値上がりした分は値上がりした分としていただける。

しかも、投資信託の場合は、値下がりしていると、値下がりしたままで償還するのですが、ここが保険という機能がついておりますので、元本は一応保証されるということで、守りをしたいという高齢者、一般的な富裕層にとっては非常に魅力的な商品である。かつ、これは保険ですので、もしお亡くなりになったときは生命保険の保険金という形で入ってきますから、税金の控除もできます。そういった部分で、今、銀行においては、投資信託とは比べものにならないくらい変額年金保険というのは売れています。

同時にこの層に売れている投資信託という意味では、外債の投資信託が大変売れています。これは、毎月分配金が出る。私たちのような一般の人間から見ると、毎月分配金が出て、毎月税金が取られるようなもののどこに魅力があるのだろうかと思うのですが、こういった方々のリスク商品に向かう動機というのが、どうも違う。毎月配当がもらえることの喜びというのは、私たちのような世代とは比べものにならないくらいの安心感がある。元本が目減りしながらでも、配当がいただけるというところに大変魅力がある。

ただ、大変問題になっているのは、この外債型の投資信託を買う方々は、外債の投資信託になると為替リスクを忘れがちです。かつ、債券に関して異様な安心感をお持ちです。債券というものは必ず元本が返ってきて配当がもらえるので、安全であるということを、迷信と言ってはいけないのですが、当たり前のように思っていらっしゃいます。そこに外国の通貨がかかわるというところがどうも意識の中で見落とされがちで、非常にリスクがあるなというのは私の印象であります。

最後に、一つだけ自立型富裕層というふうに分けさせていただいたのですけれども、かなり資産をお持ちの方々というのは少し行動が違いまして、資産運用というよりも、その資産を守りながら一つの事業として増やしていけないだろうかというぐらい、積極的な方がいらっしゃいます。この方々は、株式、中でも信用取引が中心ですし、商品先物取引なども積極的にされ、自己責任が非常にしっかりした方々であります。この方々が、税金、税制がどのように変わっていくかということに最も目を光らせていらっしゃる方であると感じております。

金融商品いろいろありますが、では、一般的に資産運用で利用され、もしくは注目されている金融商品を、一般の国民というか、私たち生活者は、どのようなリスク感覚でとらえているかというのを、全く数字とは関係なく、感覚でどうなっているかというのを3番に書かせていただいております。

一番リクスが少ないという意味では、保険は絶対返ってくるだろうと。そして預貯金、それから外貨預金、あと、国債、外貨MMF。これは元本割はしていないのですけれども、外貨MMFのほう少し上にあります。同時に、金。皆さん、ペイオフが解禁になって「千両箱」という商品が出たのはご存じでしょうか。桐の箱に1,000万円分の金が入っているんですね。これが飛ぶように売れまして、この桐箱の生産が間に合わなくなって、ベトナムで生産をしたぐらい、高齢者の方々がペイオフで心配になって金を買われている。実際にいろんなマネー雑誌でも金の特集が非常に増えてきていまして、金への投資というのが、今、ブームになりつつあります。

それから外債、そして投資信託。投資信託も幅広くあるんですけれども、なかなか認知度が低くて、このあたりに置かれています。あと、証券化商品という意味でいろいろな商品があります。不動産関係の証券化商品も多いのですけれども、こういったもの。それから株式、転換社債、不動産、先物、eワラントという形で、意識の中でのリスク感覚というのがあるかなと。

あと、不動産。これも年配の方に非常に増えてきているのですが、一方で不動産投信という商品もあります。Jリーとと言われて、株式市場に上場しているわけですが、これは意外に個人の投資家は利用していない感じですね。株式になってしまっていることが非常にわかりにくい。証券会社でしか買えないというのが、高齢者の方々にとっては非常に遠い存在なわけですね。ですから、Dの高齢者富裕層の方々が不動産の投資信託のようなものを利用するときは、信託銀行でご用意されているような不動産の組合型のもの、もしくは、証券化されたようなものを利用されることが多いように聞いております。

あとは、最近少しずつ高まってきている商品としましては、未公開の株に対する投資というのが、自立型の富裕層の方、そして株式投資に慣れた男性の会社員の方々からのニーズが高まっています。皆様も、新聞とか、このごろの雑誌の特集をご覧いただければ、未公開株もしくはIPOのところでいかに収益を上げるかという話題が高まっているのをご存じだと思いますが、未公開株も立派な株であるにもかかわらず、一般の株と全く違う税制になっている。上場株とは違う形になっていますし、エンジェル税制というのがありますけれども、実際に公平に取引ができるようになっている未公開株のグリーンシートという市場があります。ここにおいてもエンジェル税制を使っている会社はたった1社です。ですから、まだまだそういったメリットのある税制というものが行き渡っていないし、未公開株というのがまだまだ投資しにくいものとして存在しているのは、私は非常に残念だなと思っています。

そして最後に、資産運用に対する考え方がどのように変化してきたかということを簡単にまとめました。この間、ある運用会社が、30代から50代の方々にどのくらいリスク商品を利用しているかというアンケートをお取りになっています。ただ、運用会社がとりましたので、若干バイアスがかかっているような気はしますけれども、30歳代から50歳代の36%が、老後の資金づくりにリスク商品を利用しているというふうに言っています。ただし一方で、リスク商品を利用したいと思わない人たちも実は36%いる、というのも現実であることはつけ加えておきたいと思います。

そのリスク商品を利用する方が増えている理由に、ファイナンシャルプランナーという職業を持つ方が増えてきているというのも一つ。そして、銀行であるとか証券会社が、ライフプランであるとか、資産運用のコンサルティング的なサービスを増やしてきたことも一つ背景にあると思うのですが、その中で彼らが常にアドバイスするものが国際分散投資です。もう日本の預金だけというのはやめましょう、円だけではいけません、株だけではいけません、日本だけではなくて海外の通貨、海外の資産を持ちましょう、ということを積極的にうたっています。

これはアメリカでもそうなんですけれども、株が低迷してくるとそういう話題が出てくる。面白いことに、ITバブルが崩壊するまでは、アメリカのこういうファイナンシャルプランナーの方々たちは、アメリカ株だけを持っていればいい、ドルだけを持っていればいいと言っていましたけれども、ITバブルが崩壊すると、どの方々のレポートを見ても、「これからは国際分散投資です」ということを言われてきたわけで、日本がちょうどその時期にFPが増えてきたというのも一つ理由があるかとは思うのですけれども、国際分散投資が、どんな資産運用の教科書でも必ず大切であるというふうに出てきている。

そして、それと同じような考え方で、地域分散以外に、タイミングの分散、時間分散も必要であるということが、投資もしくは資産運用の基本として伝えられておりまして、積立を利用する方が非常に多いです。特に若い世代から多いんですね。積立というのは、長期投資の投資家を増やす一つの大きな活動でありますので、私は、こういう積立型の、長くリスク商品を持つ、株を持つ人たちに対して、もう少し優遇の何かがあっていいのではないかと。今は投資信託でも株でも、毎月買うにもかかわらず手数料が取られます。これは何とかできないのかな、そこを税制で、なんていうふうなことも考えたりはします。

4番目として、最近は、投資を副業とてやりましょうというムーブメントが非常に高まってきていまして、会社だけでは仕事、収入もということで、そういったブームもありますというのを一つご参考に。

そして最後に、特定口座も少しいい形になりましたし、証券税制に関しても非常にメリットのある形になってきたのですが、まだまだよくわからないという方が非常に多い。これは、金融の雑誌、投資雑誌を見ていただいたらわかるように、しょっちゅう、証券の税制はどうなっているか、特定口座とは何かというのを毎月のように特集しています。これくらい問い合わせが多いわけです。証券会社に行ったらきちんと説明していただけるかというと、まだまだ店頭にいらっしゃる方は十分に説明できない。

かつ、税金に関して税理士さんがいらっしゃらないというのが、今、一番大きな問題になっています。たくさん税理士さんはいらっしゃるのですが、今まで源泉で徴収されていたものですから、税理士さんに株式の税金について相談に来られた方がほとんどいらっしゃらないわけです。だから、ご経験もなければ、そういったことについて研究されていない税理士さんがあまりにも多いので、いざというときに相談に行けない。結局、税務署に行かなくてはいけないのではないかということで、そこら辺が、いろんな方とお話をしていて、そもそもプロがいないのでは、税制がメリットのある形になっても、安心して利用できないというところがあるのかもしれないなという、大変素人的な感覚でお話をしてしまいましたので、お役に立てるかどうかわかりませんが、以上です。

委員

興味深いお話を、大変ありがとうございました。

たくさんご質問があると思います、どうぞ、どなたからでも。

委員

基本的な質問で、これからの動きを形成していくであろう層を5つに分類されたということですが、それぞれのグループの大きさ的なメドみたいなものをちょっと知りたいのですけれども。日本社会全体の中で占める割合、というとちょっと大げさですけれども、金額的、あるいは人数的に、こういうグループというのはサイズ的にどんな感じかというところを、ちょっと補足的にご説明いただければと思うのですが。

委員

なかなか正確な数字というのはつかめませんし、平均的なものに関しては、「参考」ということで後ろに、日銀さんがお調べになった、世帯別の金融資産の保有額を出させていただいています。

一番わかりやすいのは、高齢者、Dのグループだと思います。60代以上が個人金融資産の半分持っているわけで、どの金融機関でもセミナーをやるときはこの高齢者の方々を集めるわけですけれども、最近すごいものになると、金融資産5,000万円以上の方だけいらしてくださいとやっても、帝国ホテルの大きなホールがいっぱいになるくらいいらっしゃるわけなんですね。人数においては少ないかもしれませんけれども、金額ベースでいくと、6割、7割持っている方が、こういったことに非常に真剣に取り組もうとされているのではないかというふうに感じております。

委員

そうすると、Dの層はおっしゃったように大きいけれども、あとのABCEというのは、エピソード的と言ったら言い過ぎかもしれないけど、目立った動きだけれども粒としてはそんなに大きくない、という感じですかね。

委員

ええ、粒としては小さいですけれども、将来性というか、今後牽引するメンバーになることは間違いない。おそらくこの方々というのは仕事に関する考え方も全く違いますから、自分たちで資産をどう形成していくかということに一番熱心でいらっしゃいますので、今すぐに影響力というのは小さいかもしれませんが、今後、大きな影響力を与えるということと、あと、シニア層に対して影響力があります。親子でセミナー参加というのが非常に増えていますので、この人たちというのを、その人たちだけでとらえるのはどうかなというところは少し感じているところであります。

委員

関連してお聞きしたいのですけれども、主婦が非常にコンサバティブで、男性会社員は逆だというのは、ちょっとイメージとしてよくわからないのですが。つまり、むしろ普通の家族持ちの男性会社員は財布を主婦に握られていてとてもじゃないという感じがしているのですが、ここに書かれている男性会社員というのは、例えば独身とか、やや富裕なとか、そんな感じの人だということですか。それとも、実はそうではなくて、握られていないということなのか、どちらでしょうか。

委員

もちろん独身のほうが使える金額は多いですけれども、皆さんもそうじゃないかと。今日は私だけが女性なので、ものすごく--後ろにもいらっしゃいましたね--不利な感じがしたのですが、皆さんさりげなく、上手に、自分のポケットにお金を入れる方法をお持ちなわけです。ですから、セミナーをすると所帯をお持ちの方も結構多いわけですね、なぜか捻出されて。かつ、お小遣いが少ない。お金を全部握られているからこそ、取り組まれていらっしゃるという方も比較的いらっしゃいます。

委員

非常に興味深いお話でした。2ページ目ですけれども、リスク感覚のスペクトラムがあるわけですが、この中に不動産というのがどうしても入ってくるんですよね。今の分類の中にも、興味というのは不動産というのが相当ある。資産という中で金額が一番大きいのは不動産と。

そうしますと、金融商品だけを議論していていいのだろうかいう部分あるわけです、税制のところで。不動産との関係をどういうふうに考えたら全体として効率的になるのか。そこのところは大きいお金が動く部分だし、その部分はマクロにも大きな影響がありますね。そのリンクの辺は、印象でもいいですが、どういうふうな感じですか。

委員

印象になるかもしれませんが、我々が資産運用のアドバイスをするときというのは、不動産はほとんど金融商品と同じ扱いになっています。不動産というのも、これからは、値上がりするものとしてとらえるのではなくて、運用資産として考えましょうというのが、当たり前というか、私たちの中でそのように語っておりますので、不動産、自分の持っている土地をいかに活用していくか。我々、3つに不動産を分けましょうと必ず言います。一つは住むための不動産、一つは相続のための不動産、現金化できる不動産、そしてもう一つが、運用するための不動産に分けましょうという話をしていますので、不動産というものが別になっているというのが税制を考えればそうだったんだなというくらい、我々の中では金融商品になっています。

委員

ありがとうございました。

委員

一つだけ、変なことをお聞きしますけれども、最初に委員のご質問に対して、土地みたいなものも大事です、経済学で考えるとある種の金融商品ですということを申し上げましたけれども、経済学でもう一つ、ヒューマンキャピタルというストックがあるんですね。これは、子供とか家族に投資をする、それが長期的に戻ってくる。どうも今日のお話のもう一つの裏の側面は、教育というところが実はあまり税制も優遇されていなくて、負担なっていて、他方、子供がつくれないかもしれないから、それが逆に代替的な資産であるところの金融資産に向かわざるを得ないというAの層、そういうことが出ているのかなという気もするのですが。単なる感想ですけれども。

委員

でも、それは大変深い洞察だと思うんですね。20代、30代の女性もそうですけれども、将来誰も面倒を見てくれないかもしれないという部分というのは、やはり子供の問題というのが非常に大きいと思いますし、高齢者の方々から見ても、コミュニケーション、そして絆のために、子供たちにどうお金を使うかみたいな部分もありますし、教育の部分というのはあると思います。

委員

よろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。特に講師の方には、大変お忙しいところを貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。

それでは、今日は大変幅広い論点についてご意見をいただきました。最後に、今後の予定を申し上げておきたいと思います。

次回の小委員会は、すでにご案内しましたとおり、11月7日、来週の金曜日午後2時から、場所は財務省ではないですけれども、虎の門パストラルで開催を予定しております。その際には、今後、本小委員会で議論の対象となるであろう、主な金融商品に対する課税の現状を、諸外国の例とも比較しながら事務局から説明していただき、議論を行いたい、かように考えております。よろしいでしょうか。

それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会