第13回金融小委員会 議事録
平成15年5月23日開催
〇委員
それでは、ただいまから第13回金融小委員会を開催いたします。
本日は、お手元の議事予定にもありますが、テーマを大きく2つに分けています。
1つが、まず専門委員から、「租税裁定回避の視点」というテーマでご説明いただき、その後、質疑をいただきたいと思います。
2番目に、そのあと、事務局から納税者番号制度を中心に納税環境整備全般についての資料説明を受け、その上で日本公認会計士協会から講師の方をお招きして、お話を伺いたいと思います。
それでは、「租税裁定回避の視点」というテーマでプレゼンテーションをお願いします。よろしくお願いいたします。
〇委員
よろしくお願いします。
委員なので意見表明をしろと事務局から言われたのですけれども、何人かの委員の方々が意見表明をされたあとで、もう追加的にあまり言うことが残っていないという感じで、どういうことをお話ししようかというのを迷ったのですけれども、結論的には、非常にシンプルなメッセージだけを申し上げて、終わりにしたいなと思っております。
お手元のレジュメに沿ってやりますが、中長期的な望ましい税制を目指すという課題が基本的にあるわけですが、その一方で、当面の資本市場の活性化ということへの配慮ということも無視し切れないという問題がある中で、ずいぶん簡素化の努力はされてきたわけで、来年の1月からはかなり制度も簡素化されるわけですけれども、しかしながら、依然として金融・証券税制には複雑性が残っている。そういう複雑性が存在すると、いわゆる租税裁定と言われるような形での節税行為というのが誘発される可能性が非常に高いわけですね。
まだ来られていませんが、ある委員がご報告されたときに、租税裁定が一大ビジネスになっているというぐらいで、そのビジネスのために非常に優秀な人材等が投入されているという現実があるわけですね。それをビジネスとする、そして、そこで非常に優秀な人材が活用されるというのは、個別的にはリターンが高いからそうするということなわけですが、社会的には、ご案内のように、所得再分配、分配の仕方に影響を及ぼすだけの話ですから、分配の仕方に影響を及ぼしても、社会全体としての所得がトータルで増えるわけではないわけですから、むしろ分配のあり方に影響を及ぼすために費やされた部分が社会的にはネットで損失になるわけでありまして、したがって、そういう租税裁定ビジネスのようなものが隆盛を極めるというのは、非常に好ましくない事態であって、できる限りそうしたことが起こりにくいような税制度というようなことを指向することに非常に意義があるのではないか。それだけのことを今日は申し上げようということであります。
それで、ちょっと余談になるのですが、複雑性をもたらす1つの理由として、特に我が国の現在の文脈だと、資本市場の活性化というような話がどうしてもあるわけですね。ただ、例えば証券価格が低迷しているから、証券税制の改正を考えるという発想は、ある意味で非常に対症療法的な発想だと思うのです。
今申し上げたことだけではなくて、残念ながら、最近の我が国における政策論議というのを見聞きしていますと、ますます短絡的、対症療法的になっているような気がしまして、例えば、人間の体でも熱が出ているという症状があったとすると、どういう病気にかかって熱が出ているのか、その病気の原因は何かということを探って、原因を究明した上で対処するというのが、まっとうな対応の仕方だと思うのですが、最近の日本の政策論議だと、熱が出ていたら、熱を下げる必要があるのだから、水をぶっかければいいみたいな感じの議論が横行しているようなところがあって、証券市場に関しても、証券市場が不活発であるならば、証券税制をいじればいいのではないかというのも、熱が出ていたら、熱を下げればいいのだというのと同じぐらいに短絡的な発想ではないかという気がいたしまして、私もし税制をいじるとすると、証券税制より贈与税だとか相続税だとかのほうが、よほど実は意味があるのではないかと思っております。
余談になるのですが、一番最後のページに、家計調査からの世帯主の年齢別のデータをちょっと引っ張ってきておりまして、下から3分の1ぐらいのところのシャドウがかかっているところが実績でありまして、家計調査の数字だと、総貯蓄額のうちの6.3%が株式・株式投資信託に向けられている。これは資金循環勘定等とは定義とかが違いますので、概念的な照合が必ずしもつきにくいのですけれども、数字自体は、前回私欠席せざるを得なかったのですが、別の専門委員がご報告された際に数字等を紹介されたと思いますが、それと6%とかいう数字は大体数字としては同じような数字だと思うのです。
日本人が、リスクマネーが不足している、危険回避的でリスク資産を保有しようとしないという話がよくされるわけですが、若年層にとっては、リスク資産を保有するということは、意味のあることなわけですが、高齢者にとってリスク資産を保有することが経済合理的かというと、それは合理的ではないんですね。まだ若くて、途中で失敗してもやり直しがきくだけの時間的余裕が残されているような主体にとっては、リスク資産に投資するということは意味がありますが、もう何度も繰り返す時間的余裕がなくなった段階においては、安全な形で、価値が安全に保存されるような手段で資金を運用するという、そちらのほうが当然合理的なわけであります。
そういうことを考えますと、年齢と資産選択の間に関係が当然あるわけで、そこで本当に乱暴な話ですが、世間的に言われている話として、70から自分の年齢を引いたぐらいの割合は株式に投資していいと。だから、40歳だったら、70引く40で30%ぐらいは資産に投資をしていいという話をするわけです。だから、20歳だったら、70から20を引いて50%ぐらいはリスク資産を持ってもいい。70歳だったら、70から70を引くとゼロですから、もう株式は処分したほうがいいという話になるわけです。
それで、一番下のところで、ただそれを計算して株式リスク許容度という、何かもっともらしいことを言っているのですが、70歳からここの年齢を引きまして、20代だと25という世代中央値を引きますと、45%というふうになるわけですね。それに貯蓄額を掛けて、潜在株式・株式投資信託保有額というのを計算していきますと、平均すると11.4%という数字が出てきて、だから、言われるように、もう少し家計が株式保有等を増やす余地は確かにあるのではないかということが思われます。
ただ、世代別に見ていきますと、60代以上はむしろすでに持ち過ぎているぐらいなんです。132%とか、70代は持ってはいけないのだけど、持っているということがあります。
潜在と現状の比率はちょっと30代、40代は逆転しますけれども、やはり若い世代のところがもっと持っていいはずなわけで、だから、現在の所得というか、資産分布のもとでも、もう少しは増えて、6%台が11%ぐらいまで増える余地はあるのですが、若い世代の保有を促進するということを1つ考えるとともに、さらに許容度を上げるためには、やはり資産の保有分布自体を、高齢者に偏っているのをややならすとか、そういうことを考えるほうが、証券市場の活性化という意味では意味があるのではないか。金融資産に係る税制をどうのこうのというよりは、今申し上げたような方向性のことを考えたほうが、費用対効果は非常に大きいのではないかと思っております。というのをちょっと余談になりましたが申し上げます。
それと、お手数ですが、1ページに戻っていただいて、節税のために資源が投下されるのは無駄だから、そういう活動を抑制することを考える必要があるということを最初申し上げたわけですが、そのことをより強く考えなければいけない背景として、ご案内のことですが、この間、やはりキャッシュフローを加工する技術が飛躍的に発展しているということで、所得が発生する形態を転換するとか、所得が発生するタイミングを変えるということが、かなり容易に行われるようになっているということであります。
それはご案内のデリバティブとか、Synthetic Assetという言い方をしておりますが、要するに、合成するわけですね。Synthetic Assetの説明は下に注につけておりますが、一番わかりやすいのが次に書いております例のSynthetic Stockというもので、株式そのものを保有するのと、その株式を原資産とするようなコールオプションを買って、プットオプションを売るというポジションをとるのとは、全く機能的には同等になるわけです。だから、コールオプションとプットオプションを使うことによって、事実上株式を合成して作り出すことができるという効果があるわけです。
しかしながら、これもご案内のように、株式の譲渡益と株式オプションに関する利益については、税制上の扱いが違うわけでありまして、株式譲渡益は譲渡所得で分離課税されているのに対して、株式オプションにかかわる所得は雑所得で、現状は総合課税であると。来年の1月からは変わって分離課税になるということですが、そうなっているということで、そういう意味で、タックス・アービトラージの余地が存在しているということです。
ただ、執行上の問題があるので、白地に絵をかくような形の改革というのは無理だと思いますけれども、所得区分をやや大括りにして、その括りの中で取扱いを一元化するとか、そういった形の改革の余地はやはりあり得るのではないか。そういう余地をできるだけ 生かすことを考えていくのが、現状においては非常に意義があることではないかということです。それがメッセージです。
2ページ目にいっていただきまして、まだ来られていませんが、ある特別委員が1回目にインプリメンテーションの問題を非常に強調されて、インプリメンテーションの問題をあまり考えていない経済学者がいるみたいで、ずいぶんお怒りだったと思うのですが、確かに世の中にインプリメンテーションの問題をあまり考えていない経済学者がいるというのは、私も事実だと思うのですが、経済学という学問がインプリメンテーションのことを考えない学問かといわれると、それは違いまして、経済学という学問自体は、インプリメンテーションのことを近年になればなるほどよく考えるようになってきたと思うんですね。一昔前か二昔前の経済学はあまりそういうのを考えていなかったと言われたら、それはごめんなさいと謝るしかないのですけれども、最近はインプリメンテーションの問題も重視するようになってきておりまして、私なんかは自分ではそういうほうではないかなと思っておりまして、それで「資産課税をめぐる理論と現実」というちょっと大げさな表題をつけましたが。
それで、二元的所得税制が、これも前回私出席できなかったときの海外視察報告の中自体に、レジュメをいただいたら書かれておりましたけれども、二元的所得税それ自体、原理的というよりは現実的、プラグマティックなものにすぎないわけですし、ましてや、不動産所得はちょっと置いておいて、全資本所得を一括するというのではなくて、いわゆる金融所得だけを一括するというのであれば、これは極めて原理を押し立てた改革とは言いがたいもので、むしろ非常に前進的な変更にすぎないのではないか。逆に言いますと、それぐらいのことはやってもいいのではないかというのが私の判断なわけです。
資本所得を考えますときに、リスクという問題が非常に本質的なファクターの1つになりますから、リスクということを考えますと、課税をするにしても、資本所得の実現値が確定する前にするのか、後にするのかというのが、リスクがなければ、別にどちらでも同じことになるわけですが、リスクがある場合には、事前に行うのか、事後に行うのか、ということがやはり本質的な問題になると思うのです。
それで、やや理想的な環境を考えて、金融市場が効率的であるというようなケースを考えますと、リスクを調整して考えた期待収益率というのは均等化しているはずですから、そして、それを現在価値化したものが資産価格になっているはずだというのが、やや理想的な状況では想定できるわけですから、事前に課税するというのであれば、資産額にリスクを調整したあとの代表的な収益率という意味の安全利子率を掛けて、それに税率を掛けるというやり方が考えられるわけです。ただ、安全利子率に一定の税率を掛けるということは、結局は定数を掛けていくわけですから、資産額そのものに一定の税率を掛けるような税金になって、この場合は資本所得税なのですけれども、形としては保有税そのものになるわけですね。だから、事前的にかけるということであれば、保有税で統一するというような考え方も理論的には考えられないことではない。
しかしながら、そうすると、その次のパラグラフに書いておりますが、政府によるリスクの分担というのは全く行われない形になるわけでありまして、もしも政府が持つリスク・プーリング機能のようなものを活用することが望ましくて、政府がリスク負担に関与すべきであるということになれば、資本所得の実現値が確定したあとで事後的にかけるということになるわけですが、その場合、確定したそのとき、発生時にかけるという形が一番いいのだろうということで、捕捉上の問題がなければ、すべて発生ベースで課税するということが考えられますが、実際には発生ベースで捕捉が困難なキャピタルゲイン等の部分がいっぱいあるわけですから、そうすると、実現したときに課税せざるを得ない。
しかしながら、そうだとすると、実現を遅らせるような歪み等が発生することがよく知られているわけですから、タイミングを選ぶという形の租税裁定といいますか、節税行為を抑制するためには、遅延分の金利コストを加算するような遡及型のキャピタルゲイン税というふうなことが考えられるべきだと。もちろん、現状のようなゼロ金利だと、ほとんどこんな問題はプラティクカルには問題にはならないかもしれませんが、原理的にはそういう問題があるということです。
こういうのも、要するに現実的に組み合わせるしかないのが現実であって、発生ベースで保有税にしたほうがいいというものもあると思うのですが、ある程度政府がリスク分担に参与したほうがいいと考えられるような種類の資産については、発生ベースで課税可能なものは発生ベースで課税して、そうできないものに課税する場合にでも、できるだけ現在価値の概念を取り入れたような形にするということだと思うのです。
ただ、そういうことでやっていって、現行の税制のもとで存在すると見られる租税裁定の余地を防いでいくということをやった場合に、白地に絵をかいて完璧なものを作るというわけでない話である以上は、そうやっているうちに別の大きなまた裁定機会を作ってしまうというような、そういうリスクもあるわけでありまして、金融所得と勤労所得というような区分を導入することにいたしますと、中小企業のオーナーのように、自らの得る所得を勤労所得の形態で得るか、資本所得の形態で得るかということを選択できるような業者については、当然それを利用した租税回避ということが起こり得るわけですから、そういう事業者については、仮想的な標準勤労所得額みたいなものを想定して、それでアジャストするというようなことをやらなければいけないということになると思うのです。
そうするとまた制度が複雑になるということで、ある種堂々めぐりのところはあるわけです。だから、理想的な解決というのは存在しないと思いますが、現実的に対応していくことが必要で、その際に、冒頭で申し上げましたように、出先の資本市場活性化ということは、実はあまり考えなくていいのではないかなという、中長期的な税制の姿を優先するような形で、現実的対応をするのがいいのではないかと考えております。
非常に雑駁ですが、以上で報告を終わらせていただきます。
〇委員
どうもありがとうございました。
それでは、どうぞご自由に、質問、ご意見等おありの方いらっしゃいませんでしょうか。
どなたもまだですので、私からまず最初に口火だけ切らせていただければと思うのですが、私自身、特に北欧なんかに行ってみて感じた1つの点は、租税裁定というのは、今日のお話では、どちらかというと、資産の間の収益率の違いみたいなものを裁定する。そのためのデリバティブとかSynthetic Assetなんかが出てきているから、いろいろ問題だというお話だと思うのですけれども、そういう租税裁定が起こる、起こらないというもう1つの理由として、損益通算みたいなものを、つまり所得の区分けを大括りにするのか、小括りにするのか。小括りにすればするほど、租税回避はしにくくなるというメリットはあるわけですよね。他方、それをしてしまうと、まさにおっしゃるとおり、リスク・シェアリングみたいなものが非常に難しくなる。そこに関しては、やはり大括りにするほう、つまり損益通算は、不動産所得まではともかくとして、金融所得は完全に認めたほうがいい。そういうことと考えてよろしいのでしょうか。
〇委員
その点は非常に難しい感じが率直にいってしておりまして、租税裁定というときに、ロスを人為的に作り出すというような、そういうポジションを組むというのが、ご指摘がありましたように、やり方としてはむしろ中心的と言ったら言い過ぎかもしれないですけど、そういうケースは十分考えられるわけですね。
最初に、レジュメでoffsetting arbitrage positionと書きましたが、むしろそういう趣旨のようなことを想定したケースなわけで、そういうときに人為的にキャッシュフローを固定して一時的に損を出すとか何かをするやり方を抑制する際に、損益通算を幅広く認めることが、本当にそれの抑制につながるのかどうかというのは、なかなか微妙なところで、だから、場合によっては損益通算の範囲をやはり制限したほうが、その種の行動に対する抑止という意味では有効だと考えられるケースは十分あると思うのです。
だから、非常に申しわけないのですけど、きれいに原理的に割り切って考えるのは、非常に難しいところがありまして、こういうキャッシュフローを加工して、税負担を回避しようという技術のイノベーションに、課税当局もイノベーティブに追っかけていくという、そういうイノベーション競争をせざるを得ないところはあるのではないかなということです。
〇委員
ありがとうございました。
〇委員
年齢別の資産保有につきましては、やはり高齢者の場合でも、今はあまり心配ないかもしれませんけれども、インフレリスクがあったりします。ですから、高齢者は老後に備えて保有するだけに、より一層リスク配分というか、リスク配慮があってもいいのではないか。だから、70歳以上でも持つようにしてもらっていいのではないか。また、そういうのが自然ではないかなと思うわけでございます。
それから、2ページ目に、端的にすべてのものを公平に扱うとすれば、保有課税になると。それは非常に興味ある考え方であり、また、それは1,400兆円がどちらかといえば高齢者に帰属している部分が多いとすれば、保有課税でもってそうしたものを課税し、それを有効に使うとすれば、現下の景気対策にも、あるいは金融問題を含めた経済構造の改造にもつながるのではないかという気もするわけでございます。
その場合に、やはりリスク資産については、それ相応の配慮をする。ということは結局評価の問題になるかもしれませんけども、そうしたリスク資産と、まあ、しかしインフレリスクを考えれば、確定金利付き資産もリスクがあるとも言えますから、なかなか難しいかもしれませんが、リスク配分を考えた、リスク要素も考えた保有課税というものが、今後ある程度の役割を果たすような、何かそういう方向があってもいいのではないかという気がいたします。
〇委員
私も別に70歳以上が株式を持ってはいけないと主張するつもりはもちろんないわけで、ここは非常に目の子算をしただけですので、資産選択は基本的に個人の自由ですから、やっていただいていいわけです。
ただ、インフレリスクの問題に関しては、これも金融イノベーションの1つの成果だと思いますが、インフレリスクに対しては、従来思われていたよりも金融資産は非常に強くなってきていると思います。それは期待インフレ率をリターンに反映させるような形の、反映させるというふうな傾向を非常に強めるような形で金融市場は果たしてきていると認識しております。だから、金利規制等がないならば、あるいは国際価格支持政策を中央銀行がとるとかということがなければ、通常のデッド的な金融資産であっても、かつてよりはずいぶんインフレリスクに対して強くなっているのではないかと思います。
それから、ここへ書きましたように、政府のリスク・プーリングの機能を活用する意義はあるわけですが、それは社会保障制度だとかいろいろなところで活用することにして、資本課税のところでも政府のリスク・プーリング機能を活用するというようなことは、もうそこでは考えないということであれば、原理的には保有税で統一していくということは、十分に考えられることだと思います。
余談になりますが、私は個人的見解としては、もう日本政府は現状において自らのリスク・プーリング機能を濫用していると言っていいほど、使いに使っているという現状がすでにあると思いますから、そういう現状を前提にすれば、資本課税を考えるときに、リスク・プーリングの必要性というのは、それほど織り込まなくてもいいかもしれないと思います。
〇委員
3つほどお聞きしたいのですが、1つは、ポートフォリオ理論では、縦軸に収益率をとって、横軸にリスクをとって、いろいろ考えるのですけど、そのときに横軸のリスクに対する課税の率と、それから、縦軸の収益率に対する課税の率というのは、同じでいいのかどうか。例えば、政策的にリスクのほうを少し取るように日本人を短期的にさせたいのであれば、そちらに対して少し課税を弱めるというようなことがあるのではないかと思います。ですから、最後の収益率に関しては、安全資産としての収益とリスク部分の収益というのを、どう考えていただくかというのが第1番目です。
2番目は同じ関連なんですけれども、損益通算がないとすると、ポートフォリオで安全資産のほうに偏ってくることになるのか。それとも、損益通算がある、ないというのは、それぞれの場面によって、必ずしもそうではないのかどうかというのが2番目です。
それから、3番目は、保有課税の場合には、今度は家計が回避行動として両建てにして、借入も増やして、ネットとしての保有をなるべく減らそうというような行動に出た場合には、保有課税ですとうまくいかないのではないかと思うのですけど、その3点です。
〇委員
1番目と2番目は、実は似たようなというか、共通した問題になると思うんですね。事後的に課税をして、実現時に応じて課税をするということは、要するにロスが出たときには税金を取らないということで、政府がリスクを分担してあげることになるわけですよね。そのかわり利益が出たときには政府にも税金を払ってくださいということで、要するに、事故が起きたときには、保険料を支払うわけではないけど、保険料は取らないということで、利益が出たときには保険料をもらうということですから、そこでの税率の中には、リスク分担に対するリスクプレミアムというふうな色彩ないし要素も含まれるということになりますから、そうすると、リスクを負担させたいのであれば、リスクプレミアムを下げてやるということになるわけですから、税率の設定の仕方というふうなところで、原理的にはリスク負担行動を促進するということはできると思うんですね。ただ、私はその効果よりも、相続税か贈与税で動かした効果のほうが大きいのではないかというふうな直感的な思いを持っているということですね。
保有税でも回避が起こるかどうかですが、これは現実的には起こり得ると思いますが、原理的には両方完全にフェアバリューで評価するということができれば、それによって両建てで膨らませても、原理的には正味資産の額が動かないはずですから、それに対してかけるという形になる限りは、問題は起きないはずですけれども、実際にはすべての債務項目、資産項目について、厳格な時価評価が行え得るというふうな条件が確保できるとは思いませんから、ご指摘になったように、何らかの形で計算上の正味資産の大きさを低く見せかけるようなことが可能になるとか、そういうことはあり得ると思いますが、原理的にはないはずです。
〇委員
お願いします。
〇委員
先ほどの発生ベースか実現時かというお話ですけど、これは非常に大きい問題だろうと思います。デリバティブだけの問題ではないですよね、発生ベースという話になってくると。そうなると、キャッシュフローのないところでどうやって払うのだという問題も出てくるだろうと思いますし、不動産なども同じようなことがあるのかなと。そうすると、その整合性みたいなものが上がったとき、バブルのようなときと、今のように下がったときととれるのかどうか、またそうやると、逆にそれをやっても、例えば、では損失が発生したときには、実現しなくても差し引きが可能なのかという、そういう逆の問題も出てくるのではないかなという気もするのですが、払い過ぎた分、金利をつけて返すのかというようなことにもなるし、対象性というものがどうなるかなということですね。
そういう意味で、原理的には非常に考えられるわけですが、たとえ発生時であってみても、それをまたある意味では逃れるような技術進歩が出てくるのではないかという気もしますので、発生ベースか、実現ベースかというのは、かなり大きなほかの問題も含んでいるのかなという気がしますけど。
〇委員
それはご指摘のとおりだと思います。だから、考え方としては、現在価値に直して、要するに遅れて払った場合には、利子を加算した額をもらうし、返すときも、おっしゃったように利子を加算してというふうな考え方になるのだと思いますが、原則的にはマイナスの資本所得税というのをやっていない限り、リニアではなくて曲がるわけです。だからこそリスク分担を政府がするという話になるわけですから、その効果がある限りは、おっしゃったように、どのぐらいの通算期間を認めるかで効果は変わってくるとか、そういう要素がありますから、単に現在価値に直せばOKなんだという単純な問題でないことは、ご指摘のとおりだと思います。
繰り返しますが、私は全然原理主義者ではなくて、現実主義者です。だから、問題を考えるときに、非常に割り切って済ませるということでできない、非常に厄介な問題がいろいろあることは、認めるのにやぶさかではないという立場ですので。
〇委員
ありがとうございました。
1つだけ先生がおっしゃったことで私混乱してわからなくなったのですが、相続税とか贈与税のほうが大事だということを一方でおっしゃりながら、他方でデータでお示しになっているのは、若い世代のほうが潜在能力ほどリスクを取っていなくて、高齢者のほうがリスクを取っているわけですよね。それで相続・贈与を緩やかにしてしまったらば、むしろ潜在能力としてリスクを取らない人たちにお金が移動するような気がするのですが、そこはどういうふうにお考えなのですか。
〇委員
それはそうです。ご指摘のとおりで。最初申し上げたときは、とにかく、潜在能力を生かすのとセットというつもりで申し上げたのですけれども、日本経済を支えるためには、11%ぐらいだと、まだちょっと足らないという気がするんですね。だから、潜在能力を全部生かす努力をしなければいけないのだけど、それで11%です。それは現状に比べれば非常に大きいのだけれども、まだちょっと足らないので、もう少し上げるためには、例えば20%ぐらいまで上げるためには、世代間の資産分配構造が変わらないと、ちょっと20%までの引上げは、いくら証券税制で頑張ってリスクを取るように仕向けても、ちょっと難しいのではないかと、そういう趣旨です。
〇委員
要するに、若い世代の持っている資産の額が少な過ぎてリスクが取り切れないのだから、そこの資産規模を大きくして、リスクテイクの割合を高くしろと、そういうご趣旨ですね。わかりました。どうもありがとうございました。
ごめんなさい、時間がなくなりましたので、手短にお願いします。
〇委員
先生は、金融資産性所得といった場合に、どの程度の広さのものまでイメージして大括りに考えるべきだと今思っておられるかということについて、ちょっと確認したいのですけど。
〇委員
それもよくわからないのですけど、だから、ある種市場性と言うとちょっと狭くなり過ぎますけれども、銀行預金なんかの相対資産も当然含むべきだと思っていますから、パブリックがアクセスできるような範囲みたいなものが1つやはり考えられるかなと。プライベート・エクイティなんかになってくると、本当の事業性所得との切り分けが非常に難しいように思いますし、フェアバリューの評価も非常に難しくなると思いますから、普通の国民がアクセス可能な範囲の金融商品みたいなものが一応のイメージかなと思いますけれども。
〇委員
基本的に学問的な話ではなくて現実的な話として、例えば2ページで、二元的所得税論はそれ自体、原理的なものではなくて、現実的なものであると。そのとおりだと思うのです。金融市場が効率的であればと言いますけど、本当に効率的な金融市場なんか僕は永遠に存在しないと思っております。行動するのが人間である以上は。それはそれとして。
そうすると、発生ベースで課税するというのが理想的であるけど、これはなかなか理想的なものはない。そうすると現実的に組み合わせするしかない。そして、結論として、理想的な解釈は存在せず、現実的対応をするしかないと、こういうことになるわけですけれども、経済界からは増税であると相続税の問題を必ず言ってくるのですけども、最後の表のこれと言う意味が違っているんですね。金持ちの年寄りから若い人に譲れよということを言っているわけなんですが、その辺で池尾先生の現実的対応というお話と、相続税とか贈与税というところが、直感的とおっしゃいましたけれども、その辺との、理論的な解明と現実的な有効な手段との間を埋めるものは、どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、もしわかれば教えていただきたいのですが。
〇委員
いきなりお答えするのは非常に難しいことを聞かれまして、ただ、最後申し上げたかったのは、二兎を追うことをすべきではないのですが、そのときに何を主眼として追うかというと、中長期的な望ましい税制ということで、証券市場を活性化とかということについて、税制を手段として考えるというウエイトは、もっと低くていいのではないかという、それ自体ご異論があるかもしれませんが、そういう趣旨を申し上げたということです。
〇委員
まだ議論もあろうかと思いますが、時間の関係もありますので、次の議事に移らせていただきたいと思います。
それでは、次に、納税環境整備について、まず、事務局のほうから、諸外国における納税者番号制度の定着に向けた取組み等を中心に、資料の説明をお願いしたいと思います。
事務局、お願いいたします。
〇事務局
納税者番号をはじめとする納税環境の整備につきまして、横の資料、「金融小13-2」というものがございます。
この資料に入る前に、この金融小がある前の日には必ず米国議会で動きがございまして、昨日でございますが、前回の金融小でも申し上げましたが、下院では、配当とキャピタルゲインについて、5%、15%という二段階の税率で課税をする。これでずっといくという案を下院では決めました。上院では、初年度2003年は配当について50%落とす。それから、2004年から2006年の3年間は、100%落とす。2007年以降はぱっと100%課税に戻る。こういう決着を一旦見ました。
その後、両院協議会を開いておったわけでございますが、日本時間、昨日の晩でございますが、両院協議会ベースでは、何らかの合意案が見られたということで、ちょうどこの下院案と上院案を足して2で割ったような話になっておるのですが、配当とキャピタルゲインについて、これは下院案に似ています。2003年から2007年までの4年間が5%、15%、ここも下院案でございます。それから、2008年、1年間ですが、これは5%、15%の段階と申しましたが、その下のほうのブラケット、これが0%。2009年になった途端、またぽんと戻って100%課税される。今までどおりの総合課税になるという案になったようです。
来週がメモリアルで議会がリセスに入りますので、今週中に何とかということで、今日1日今週は残っておるという状況でございますが、特に上院は大変賛否接戦でございまして、1人が寝返ると逆の結果になるという状態なものですから、予断を許さないという報道が流れております。
以上、ご報告でございます。さっそく資料に入らさせていただきます。
納税者番号制度が中心になるわけでございますが、目次をおくりいただきまして、1ページでございます。皆様よくご存じのこともあろうかと思いますので、おさらいの部分ははしょらせてはいただきますが、まず納番制度とはということで、要素が(イ)と(ロ)に分けて書いてございます。
1つが、いわゆる納税者が取引の相手方、例えば金融機関等に番号を告知する。この告知義務というのが1つのパーツです。
(ロ)でございますが、今度、納税者の行う納税申告書、さらに取引の相手方、金融機関等が税務当局に提出する、資料申告書と申しますか、情報申告書と申しますか、こういう法定資料に記載をする記載義務がある。告知をし、それを記載して、資料を出す。これを義務づけることによって、納税者に関する課税情報、これは後ほどフローチャートで見ていただきますが、例えば課税庁において両方からその情報が回ってくる。取引先、相手方、それから納税者本人、両方からその情報が回ってくること、それを突き合わせる。マッチングするということで、その事柄の正しさを確認する。告知、記載、突き合わせ(マッチング)、この3つが納番の本質的な要素かと思われます。
諸外国の状況、それから番号制度の我が国における検討・準備状況、これは後ほど改めてご説明いたしたいと思います。
今申し上げたことをフローチャートに簡単にしましたのが2ページでございます。繰り返しになりますが、付番機関からまず番号が付与されるわけでございますが、それを使って[3]の告知、[4]及び[5]の番号記載、それぞれから回ってきた番号記載の申告書、これを税務当局がマッチング、突き合わせをする。こういうのが雑駁な流れになっておるわけでございます。
この問題につきましては、税調におきましても大変ご熱心なご論議を賜ってきておりまして、4ページ以降、主に12年の中期答申を中心に整理をしたものがございますが、とりあえず3ページ、1枚にまとめましたので、これを見ていただければと思います。
納税者番号制度とはということで、一番上の箱でございます。これは先ほど申し上げた事柄でございます。その上で、制度検討の必要性ということで、整理いたしますれば、いわゆる公正・公平な課税の実現でありますとか、税務行政の効率化、高度化、総合課税や資産課税との関係、タックス・コンプライアンスの向上、これが納税環境の整備の議論につながるものかと思います。さらには、本小委員会でご議論賜っております金融・証券税制の構築。このような必要性の認識、これは我々も持っておるわけでございます。
片やでございますが、最近における状況変化ということで、番号の利用が一般化してきておる。さらに、これも後ほど申し上げます行政による全国一連の番号、こういう制度が整備されておる。また、国際化・電子化が進展する。これは今のお話にもございましたが、租税回避の機会が拡大するという面もあるわけでございます。さらに、電子化でありますとか、番号利用が一般化することで、この制度を運営するコストというものもだんだん低減してきているのではないかと、こういうようなご議論もございます。
こういった諸状況を踏まえまして、検討の方向性ということで、これは昨年の基本方針でご整理いただいたものでございますが、まず1つ目の丸、納番については、「資料情報制度のあり方など納税を支える他の諸制度のあり方とも併せ検討」と。まさにこの資料情報をどうするか、マッチングする対象をどのように設定するかというのが事柄の本質でございます。
2つ目の丸、今後、検討すべき課題ということで、付番方式のあり方、コスト、効果、プライバシー保護、経済取引への影響。このあとこの検討すべき課題、順番に沿いまして資料をご説明申し上げたいと思います。
今申しましたように、過去の答申をちょっと飛ばしまして、8ページでございます。
まず、1つ目の課題の付番方式ということで、全国一連の番号制度がすでに存在すると先ほど申しましたが、皆様ご案内のように、基礎年金番号というものと住民票コードという2つの番号制度がございます。それぞれ根拠規定、付番機関、付番対象者と、このように整理をいたしております。
このあたりはもうすでにご案内のことだと思われますが、最近の動きといたしましては、住民票コードでございます。一番下でございますが、利用提供可能事務の拡大ということで、90ちょっとの事務から264の事務に拡大をしていこうと。これは法律または条例で明確に規定された事業、事務分野でないと利用ができないというふうになっておりますので、このように限定列挙の形で93から264に拡大をされておるということでございます。
次のページでございますが、それぞれの今申し上げた2つの番号制度のメリット・デメリット。これは3年前の税調答申、中期答申からの抜粋で整理をいたしております。ご参考に供します。
この付番制度に関しまして、10ページ、外国の制度でございます。後ほど制度の経緯、変遷につきまして、やや詳しめに調べましたのでご紹介申し上げますが、ざっと分けますと、アメリカ、カナダ、この社会保障番号、社会保険番号となっているところでございます。付番の根拠法というのが右から2つ目の箱に入っておりますが、いわゆる社会保障関係の法律が根拠になって番号がつけられておるわけでございます。適用業務は税務、社会保険、年金。アメリカの場合、後ほど出てきますけれども、兵役などにもこれが使われておるということでございます。
それから、デンマークからシンガポールまでの5つの括りでございますが、これは住民であるとか国民の登録を行う法律、これを根拠に作られたものでございます。デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、韓国、シンガポールということで、付番維持管理機関は、例えばスウェーデンの国税庁という例もございますが、法律はそれぞれいわゆる住民ないし個人登録に関する法律が根拠になっております。
それから、最後の2つ、イタリアとオーストラリアでございますが、これは根拠法を見ていただきますと、いわゆる税法の世界の法律が根拠になっておるわけでございます。ということで、適用業務もいわゆる税務が主でございまして、それに付随して許認可等がひっついてくる。オーストラリアは所得保障等にも使われる。根っこは租税法、いわゆる税制改正法で作られたと。このような3つのジャンルがあるというふうにご理解いただければと思います。
以上が付番についての頭の整理でございますが、次にコストでございます。先ほど見ていただいた納番を使うそのフローチャート、それぞれのところに初期コストであるとかランニングコスト、どのようなものがかかるかということを整理したものでございます。時間の関係上、さっとご覧いただければと存じます。
次に、12ページでございます。ここからいわゆるプライバシーの関係でございます。どうしてもこの問題、番号制度に関しましては、プライバシーの問題というのが大変関心を呼んでおります。国民の理解と協力が必要だと、こうなるわけでございますが、1つの重要な柱であることには違いないと存じます。
ここにございます個人情報保護に関するOECD8原則、これは1980年の理事会勧告でございます。目的の明確化でありますとか、利用制限の原則、収集制限の原則、データ内容、これが正確、完全、最新であるべき。それから、安全保護、公開の原則、個人参加の原則、責任の原則と、このような原則をOECDでご議論されまして、各国、もうすでに個人情報保護法を持っているところもございましたが、次のページでございます。この8原則にのっかりまして、オーストラリアから、アルファベディカルに並んでおりますが、各国において関連法が通っております。
その次のページ、14ページの頭に日本がございます。この網掛けの日本、韓国、メキシコ、トルコ、アメリカ、これがいわゆる民間部門を対象とする法律を持たない国という整理がなされております。現在、日本におきましては、行政機関の保有するコンピュータ処理に係る個人情報の保護に関する法律、電子媒体にのっかった個人情報についての保護法は、1988年に制定されて存在するわけでございます。
実は、つい先ほどと申しますか、お昼前に個人情報保護法が可決成立いたしまして、それとの関係は後ほど見ていただきたいと思います。
15ページにアメリカにおけるプライバシー保護の仕組みということで、1974年のプライバシー法上の制約でありますとか、社会保障法上の保護、それから税務自体、1976年の税制改革法において、このような改善に関する要件が決まっているとか、それから民間部門における納税者番号の利用の罰則。アメリカにおいては、このような取組みが行われておるというご紹介でございます。
次のページでございますが、今申しましたように、すでに1988年に行政機関が電子媒体で持っている個人情報については保護法があったわけでございますが、今般、種々のご議論を経まして、個人情報の保護に関する法律案、これはすでにもう「案」取れになっているわけですが、法律の概要ということで。
法律がいくつかに分かれておるわけですが、1つが個人情報の保護に関する法律案。これは全体的な考え方と、それから右の半分でございますが、第4章、これは取扱事業者、すなわち民間でございます。民間のセクターでの個人情報の保護のあり方、これを規定したものでございます。
次のページでございますが、行政機関が保有するものはどうなのだということでございます。行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律というのが別建ての法律になっておるわけでございます。
基本的には、先ほどご紹介申し上げたOECD8原則にのっかりまして、この17ページの右半分、個人情報の適切な取扱いということで、保有制限に始まり、書面による直接取得に際しての利用目的の明示、利用提供の制限、正確性の確保、安全確保、こういった規定が盛り込まれておるわけでございます。
次に、ちょっと切り口が変わりますが、19ページでございます。これは金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律というものでございます。制定の趣旨ということで、これは昨年でございますが、その下に書いてございますように、これは平成14年ベースで見た金融庁のホームページでございますので、13年10月に署名されたと、このように読んでいただけると思います。
ということで、まさにテロ資金の対策という一環の流れの中で、次のページでございますが、金融機関が取引を行う人についての本人確認をしなければいけない分野。それまで、いわゆるマネロンという形でやっておったものを法定化したものでございます。掛け捨て型の保険、それから200万円以下の現金送金等、これは本人確認が要りませんが、口座を設けるときとか、200万円超の現金送金等を行うとき、この場合は本人確認が必要になる。
この本人確認という作業自体が、先ほど申し上げた納番を使うフローチャートの中でも1つのキーポイントになっておるわけです。本人が告知した内容、それについて本人確認をその相手方が行うというのが本質的な要素になっている。現にこういう形で、本人確認自体は片や進んできているということでございます。
21ページは割愛いたしまして、22ページでございます。信頼確保に向けた基盤整備、いわゆる納税環境整備的な議論でございます。これは一度ご覧いただいたことがある資料かもしれませんが、真ん中に「納税環境の整備」ということで、納番であるとか資料情報、さらにはこのあと見ていただきます公示の問題、こういったものをひっくるめまして、この納税者番号制度も納税環境整備の中の一環としてご議論賜っておるということでございます。
以下23ページ、24ページ。24ページには公示の答申における記述も下線で指し示させていただいております。
それから25ページ、これにつきましても公示制度につきまして、これは昨年の年度答申での記述をここで下線で示しております。最後の文だけ読みますと、「資料情報制度の充実等納税環境整備についてあわせて検討する必要がある」と、このようなご指摘をいただいております。
このあと、手短でございますが、諸外国の様子をご紹介申し上げたいと思います。先ほどのページで申しますと、10ページの表をちょっと傍らにご覧いただきながら見ていただければと思います。
まず、アメリカでございます。これは後ほどもうちょっと詳しめにご覧いただきますが、1936年に番号制度自体は入っております。そのあと、いわゆる大統領令という形で、行政統一番号化ということで、行政府が何か番号を使うのであれば、これを使いなさいという大統領令が出ております。税務関係では1962年、任意の形でスタートをしております。その14年後、1976年に申告時に使用が義務化されるということになっております。
ちなみに、カナダ、並びでございますが、64年に番号自体が入っておりまして、同様に1967年、任意の形で税務目的の利用が開始されております。1976年に取得が義務化され、82年、申告時に使えと。それまでに若干の独自の整理番号があったようでございますが、それもひっくるめて社会保障番号へ一本化されるということが1982年に行われております。さらに、情報申告書、いわゆる支払調書みたいなものですが、これへの記載が義務化されるというようなことがカナダでも行われております。
さっと上の段だけ見ていただきますと、スウェーデン、これは先ほどご紹介しましたように、個人登録番号として発達したものでございます。スウェーデンはちょっと特殊でございまして、教会が管理する個人識別番号が前身になっておりまして、1967年に行政統一番号化をする。10年ちょっと前にこの教会から国税庁に番号の管理が移ったという経緯がございます。
デンマークも1924年に住民登録制度が導入されまして、これも教会管理から自治体管理へこの時点で移っております。68年、それで2000年。2000年のときに民間利用に拡大されるということがあります。
韓国も個人登録番号として発達しておるわけでございますが、1968年に18歳以上の人に任意で住民登録番号というのが導入されました。その2年後、これが義務化されまして、1975年、18歳以上のみならず全国民に取得義務。80年に民間も使えるようにすると。韓国の特徴として、93年の金融実名制。これはちょっと下を見ていただきますと、金融実名制の下で、番号の使用を伴う実名による金融取引を行っている者に対しては、いわゆる租税減免規則法により、証取税などが免除される場合があると、このようになっております。
オーストラリアでございますが、ここは税務番号として発達したと、先ほどイタリアの例とあわせてご紹介しました。内部整理番号が1936年にできたわけでございます。その50年後に国民登録番号法案という、いわゆるスウェーデン的なものを導入しようとしたのですが、種々の議論があって廃案になる。その2年後、リターンマッチということで、税務番号を導入ということで、いわゆる新しく被用された方から継続被用者に適用を拡大するという形で税務番号が導入されております。さらに10年ほど前、91年、ここはアメリカ等とは逆に、社会保障に利用が拡大されるということになっております。
このように利用範囲の主な変遷、それから、そもそもどの根っこから始まったかというのを、この6か国で見ていただきましたが、雑駁に、「利用定着に向けた主な仕組み」という下のところをご覧いただきますと、アメリカやカナダは、どちらかと申しますと、申告の適正を担保する仕組みとして活用されているのではないか。ここにございますように、番号制にリンクした諸制度が書いてございます。番号を使用しない申告は、申告をしていても無申告加算税を課す、でありますとか、さらに、虚偽の番号を使用した場合には罰則があるとか、それから、後ほど出てまいりますが、扶養控除の適正でない申告がかなりあったものですから、この扶養控除等に係る申告の適正性を担保するための仕組み。扶養控除を受けるためには、そのお子さん、扶養親族の納番を記せと。このような制度ができたりしておるわけでございます。
カナダにおいても同様でございます。
スウェーデン、デンマークは、番号の利用により申告を簡素化する。これにつきましては、先ごろの海外出張でもご報告いただきましたが、後ほどフローチャートを見ていただければと思います。
韓国は先ほどご紹介した金融実名制という形で定着を図ろうと努力をしております。
オーストラリアでございますが、申告時における番号の使用は任意であるということでございます。ただ、未使用の場合、最高税率で源泉徴収する。源徴率を高める、ないしは使うことで低めるということで、利用を促進するということを考えております。
次のページでございます。ちょっとややこしいフローチャートでございますが、27ページでございます。アメリカの、紙のように波打った形になっています。これはそれぞれの情報箋、それから申告書でございます。一番左側、金融機関等、それからその他の情報申告義務者、支払調書を出さなければいけない人たちでございます。それから、右から3分の1ぐらいのところ、この大きな四角が納税者でございます。一番右にあるのがIRS(内国歳入庁)と、このようになっておるわけでございます。
左側、上からいいますと州政府でありますとか金融機関、それから情報申告義務者、変わったところでは、ギャンブル収入に関しても納番がかかりますので、ギャンブルの運営者、それから雇用主、これは給与について情報箋を出す。相手方が出してくる紙が、結局ずっとめぐりめぐって納税者のところへ行って、さらに、1040という、これは申告書でございますが、4月15日までに送付、これを経て内国歳入庁にやってくるわけでございます。片や、黒太線でございますが、これがそれぞれ先ほど申し上げたところから源となって出てくる、直接内国歳入庁に回ってくる情報箋でございます。
すなわち、納税者から出される1040、申告書、それと直接内国歳入庁のほうに回っていくデータ、これらのマッチングがここで起こっておるということでございます。
28ページ、アメリカの場合、いろいろな利用範囲の拡大や変遷がございましたので、整理しております。1936年、先ほど申しましたが、番号自体が導入されて以来、一般的な利用の分野、いわゆる税務以外でございますが、もちろん社会保障中心に始まっておるわけでございますが、例えば67年、国防総省は軍人番号をこのソーシャル・セキュリティーナンバーに代えるというようなこともしております。さらに1976年、自動車登録や免許証、これをソーシャル・セキュリティーナンバーにしております。1981年、徴兵。これはアメリカの18歳の男性、これは登録義務がかかるわけでございますが、この結果、18歳以上の男性にはSSNの取得・提示が義務づけられることになっております。
そのほか、ほかにも使えるよということで、例えば88年の献血機関、これは使ってもいいですよと。それから陪審員の選出のためにということで、94年に番号を使ってもいいですよと。いわゆる抽選の際にこの番号を使う。このようなことが行われているわけでございます。
税務の分野でも、例えば納番として使用開始して以来、1964年、連邦貯蓄証券の購入者に対するSSNの提示の義務づけに始まりまして、だんだん税務分野でも範囲を広げてきておるわけでございます。
最近の例では、扶養家族のSSN。扶養控除につきましてのいろいろな乱用等があったということで、88年は2歳以上、90年は1歳以上、SSNを書けと。
さらに、勤労所得税額控除という制度がアメリカにございます。低所得者の勤労者のために導入された制度でございますが、この適用のためにSSNを使えと、このようなところまで来ておるわけでございます。
次に29ページ、30ページに、現在アメリカがマッチングをしておる項目について並べてあるわけでございます。
次にカナダでございます。カナダも基本的には同じような流れがございます。時間の関係がございますので、一旦ここでは割愛をさせていただきます。
スウェーデンでございます。もちろん、対象範囲等々にも差があるわけでございますが、ここでちょっと申し上げておこうかなと思いますのは、先ほど、マッチングが行われたのがアメリカやカナダでは税務当局で行われておるわけでございますが、このフローチャートをご覧いただきますと、金融機関、一番左側でございます。金融機関や雇用主から税務局に対しては情報箋がまいります。片や金融機関等と雇用主は、納税者個人に情報箋を送るということになっておるわけでございます。税務当局は、情報箋をもらって、それをどうするかというと、4月に納税申告書ということで、こちらでわかっている限りにおいて申告書を作って、4月に納税者に送付をする。そこで納税者は、金融機関へ雇用主から送られてきておる諸情報とマッチングする。ある意味では、アメリカやカナダが税務当局で行っているマッチングを納税者のところでやっておるということになります。納税者はそのマッチングの結果文句があれば、5月初旬に返送する。その時点で返送の内容と、税務当局が雇用主等からもらっている内容とのマッチングをするということで、セカンダリーなマッチングがここで行われる。このようになっております。
デンマークでも基本的には同じ流れがあるということでございます。
オーストラリア、先ほど簡単にご紹介いたしました。いわゆる税務目的を中心に作られた納税者番号の概要をここでご紹介をしております。特徴ということで、3.の(2)でございますが、タックス・ファイル・ナンバーの利用については、各納税者の任意でやると。ただ、これを利用しない場合には、一定率、最高税率の源徴が課されるというような制度になっておるわけでございます。
最後でございますが、納税環境の整備に係る検討に際しての基本的な考え方ということで、これまでいろいろご議論賜ってきておる事柄等々を、我々なりに整理したものでございます。お目通しいただければと存じます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、ただいま説明のありました納税者番号制度に関連して、日本公認会計士協会・ITアシュアランス専門委員会という、難しい名前ですが、委員長に、「情報セキュリティ管理と監査」についてお話を伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
〇委員
よろしくお願いいたします。
資料のほうを事前に用意させていただきましたので、「情報セキュリティ管理と監査」という資料でございますが、これに従いましてご説明差し上げます。
ページを開いていただきまして、まず「情報セキュリティとは」ということで、一般的な説明、定義をさせていただきます。この定義は、もともとはOECDの92年のガイドラインに定義されたものでございますけれども、今、一般に使われておりますISOとかJISとか、そちらの定義もこれに従っております。
情報セキュリティとは、情報の機密保持、インテグリティ、可用性を維持することということでございます。それぞれ英語の訳でございまして、Confidentiality、Integrity、Availabilityということで、頭文字を取ってCIAというふうに覚えている人もいますけれども。
まず、機密保持という内容ですけれども、これは情報へのアクセスが許された者、あらかじめ登録された者のみに限られるというのが内容でございます。
それから、インテグリティというのは、辞書を引きますと、完全無欠とか無傷とかという原義がありますけれども、情報が正確に過不足なく処理されて、そして保存されることということでございます。ここで正確にというのは、例えば1という数値が、2とか0にならないという意味でございます。
それから、過不足がないというのは、1件のデータがなくなってしまったり、あるいはダブって処理されたりしないというのが過不足なくということでございます。
処理されたデータが保存されることが必要でございます。5年とか7年、あるいは10年という単位で、正確に過不足なく維持するということが、このインテグリティという意味でございます。
それから、セキュリティのもう1つの意味としまして、可用性というものがあります。Availabilityをこのように訳しています。一般的に使われていますが、利用できるという意味でございます。情報が必要なときにいつでも利用できることということでございます。
この3つをトータルにセキュリティというふうに言っております。
続いて、こういったセキュリティが何もしないと維持できない可能性があるということでございまして、そのときの維持できないという状況、これを「情報セキュリティの脅威」というふうにここでは表現しております。
主なものだけここに挙げてございますけれども、まず、盗聴・漏洩ということでございます。正当または不正アクセス手続を通じて、情報関連施設・組織の内部者または外部者が機密情報を取得したり、他者に提供するということでございます。ここで内部者というのは、内部の業務を担当する外部委託者、これも含んでおります。そして、正当な手続、これは通常内部者ですけれども、内部者が自分に許された正当な手続によって盗聴したり漏洩したりすること。それから、不正アクセス、これは内部者も、外部の第三者、そういう場合もありますが、やはりアクセスの手続を通して情報を取得してしまったり、あるいは他の人に提供するというようなことがございます。
それから、2番目の改ざん・破壊ということですが、これも同様に正当な手続あるいは不正なアクセスの手続を通じて、情報を異常に更新するということでございます。異常に更新するというのは、悪意を持って変更をしたり、削除してしまったり、なくしてしまったりというような、こういう脅威がございます。
それから、3番目、システムダウンということでございます。先ほどの可用性ですね。いつでも必要なときに使えるということに対する脅威なのですが、災害等、人為的なテロ等もございます。自然災害等もございますが、そういうことを原因にして、コンピュータの端末機やネットワーク、コンピュータの運用、そういうものが停止するというような状況、これも1つの脅威ということでございます。
何もしないとこういうものがあるということでございます。その次のページの資料でございますが、ということで、このような脅威から情報を守るためにどうするかということが、この情報セキュリティ管理という内容でございます。人的な管理と物的な管理ということで記載してございます。
人的な管理のほうは、主に内部者を対象にした管理でございます。教育・研修による管理。例えば、セキュリティ教育ですね。こういった脅威があって、こういうことについて、してはいけないというような教育でございます。
それから、もう1つは規程による管理ということで、例えばセキュリティポリシー、これは罰則等も含みますけれども、ポリシー、それから、その下に位置するものとしてスタンダード、マニュアルというものを作りまして、これを遵守させる。定まったものについて従う。それ以外のことについてはやらない。あるいはやったものは、それは異常とみなされるというようなことで規制するということです。この中には法律あるいは規則による規制というものも含まれると思います。要するに、人の不正等の動機とか発想とかを断ってしまうというようなことです。非常にうまくいけば効果の高い管理手法なのですけれども、人は気まぐれなものですから、これに従うかどうかというのは、もう1つ問題があるということでございます。
そういうこともあって、物的な管理というものが必要でございます。こちらのほうは内部者、外部者の両方を対象にした管理というふうに言えると思います。
3つ書いてございますが、1つはアクセス管理ということでございます。情報を処理する、あるいは保存する建物や設備、それからネットワーク、データ、プログラム、これは磁気媒体も含みますし、紙等も含みますが、それについて、許された者だけを限定し、不用の者はアクセスをさせないという形で、それを保護するということでございます。これは皆さんご存じのような、例えばコンピュータ室への入退室の管理であるとか、ネットワークのファイアウォール設備を設けるとか、データ、プログラムについてのアクセスは、パスワードやカードやそういうものを使って制限するというようなことが考えられています。
それから、2番目の暗号化というのは、万が一漏れてしまった場合に、その情報が判読不能にしておいて、それ以上のことをストップをかけるというような意味で、暗号化というものも考えられています。
それから、バックアップの管理。これは可用性にかかわることでございまして、コンピュータがストップしないように、いつでも使えるようにということで、例えば、データ、プログラム等について、コピーをしておいて、それをもしものとき、本体がだめになってしまった場合に、代替のコピーを利用して、同じように仕事を続けるとか、あるいは電源の二重化とか、雷でだめになるとかいろいろありますので、そういうことが考えられているということでございます。
もう1つ、管理ということとあわせて、監査も必要であるということをつけ加えておきたいと思いますが、意味としては、ここに書かれているとおりでございまして、情報セキュリティ管理の整備・運用の有効性というものは、運用主体がこれだけきちっとやっている、規則とか法律とか手続とか、そういうことを決めてやっていますと、自分自身が宣言したとしても、なかなかどうかなと思う人もいるかもしれない。ということで、運営主体自身でない第三者が保証する、あるいは監査するということに言い換えてもいいと思いますが、そういうことで信頼性が付与されて、安心して情報を利用できるということになるだろうと思います。
ここで情報セキュリティを監査するときのポイントは、この前で申し上げました情報セキュリティ管理がうまくいっているかということを見るということでございまして、内容としては、セキュリティの仕組みが適切か。それから、その仕組みを支える、どちらかというと人の面ですね。組織とか手続が適切かどうか。それから、仕組みとか手続、組織、これは形としてあるものですけれども、その形として決められたものが実際に動いているかどうか、運用されているかどうか、ということを見るのがポイントでございます。
実際に情報セキュリティの外部監査、外から法律等の要請によりまして強制的にやられている例ということで、3つ挙げてございます。すべて強制ということではございませんで、任意のものも含まれていますが、将来そうなるであろうということも含まれていますが、例として3つ挙げてございます。金融庁の「システムリスク監査」、それから経済産業省の「情報セキュリティ監査制度」、総務省の「住民基本台帳ネットワークシステムのシステム運営監査」の3つでございます。
一番上の金融庁の「システムリスク監査」というのは、金融庁の金融検査官の金融機関を検査するときのガイドラインとして示されていますが、その内容について、金融機関自身が自分でシステムリスクについて整備を整えるということが趣旨として使われるためのガイドラインですが、そのガイドラインの中のチェックリストというものが公表されておりまして、その中のコメントの中に、「金融機関はシステムリスクの外部監査を受けているか」という記述がございまして、これに従いまして、各金融機関は外部監査を受けております。これはガイドラインということで、半強制といいますか、強制ではございませんが、そういう形で多くの金融機関がこのシステムリスク監査というのを外部の監査法人等によって受けていきます。内容としては、主に情報セキュリティにかかわる監査ということでございます。
それから、2番目の経済産業省の「情報セキュリティ監査制度」ということですが、これは今年の4月に告示・開示されたもので、情報セキュリティ監査基準というものと、情報セキュリティ管理基準という2つの基準が開示されまして、これらに基づいて民間、中央官庁、自治体等を内部監査、外部監査の制度をやっていきましょうということの制度ということでございます。今これは任意ということでございます。今後これらの基準に基づいて、情報セキュリティ監査が実施される方向にあるというふうに考えております。
それから、もう1つ、総務省の「住民基本台帳ネットワークシステムのシステム運営監査」でございます。先ほどのご説明の中にも少し出てきていますが、住民基本台帳ネットワークシステムというのが動いておりまして、これについての運用状況の監査について、監査法人等がこの住基ネットのセキュリティを確保する上で、重要な事項の実施状況等について、外部監査を実施しております。
私の情報セキュリティの管理と監査というお話、以上でございます。
〇委員
どうも大変貴重なお話をありがとうございました。
それでは、ご自由に質問、ご意見等をちょうだいいたしたいと思います。どうぞ、どなたからでも。事務局のご報告とただいまのご報告と両方に関して、どうぞご自由に。
〇委員
最初に、あまり本質的ではないかもしれないですけど、少し疑問に思うことを聞きたいのですが、マッチングのために番号が本当に必要な時代なのでしょうか、というのがあると思うんですね。アメリカの例とか各国のことをご紹介になりましたが、30年代とかはもちろんのこととして、1970年代の情報技術などの水準だと、大規模データのマッチングには、やはりマッチングキーがないと不可能だということだったと思うのですが、我が国は導入が遅れている間に情報技術もかなり飛躍的に発展してきていて、ひょっとすると、全文検索が簡単にできるような時代になっているので、必ずしもマッチングのためのキーコードみたいなものをつけなくても、実質的にデータの集計・照合というのができる時代になっちゃうんじゃないかという……。
〇委員
私、カナダとアメリカを前からずっと15年ぐらい追っかけていますけど、確かにおっしゃるとおりの、おそらく名前と住所ですよ、やるとすると。それから年齢。できないことはないでしょう。ただ、コストリーですよ、それは。番号をいっぱいつけるより。
〇委員
その常識が本当に現代の情報技術において……
〇委員
それは向こうの担当官が言っているもの。それから、やはり時間がかかるでしょう。いくつもかけなければいけない。例えば何とかスミスなんて山ほどいるわけ、向こうの人はね。同姓同名なんて、加藤一郎みたいなのが何十人もいるのと似ているわけですよ。佐藤ヒロシとか何とかかんとかいるじゃないですか。だから、理論的にできないことはないと、それは言っていましたよ。だけど膨大な時間がかかるし、手間暇のほうが大変だと。
番号を作っちゃったら何も慌てて、日本だって番号はもうできているんだから。今、委員の議論は、おそらく1980年代後半には日本でも説得性がありましたよ。番号がなかったから。番号を作ると、プライバシーが何だかんだとみんな言うから、それは確かにもう10年前に言ってもらうと、大分説得性があったと思う。
〇委員
よろしいですか。
〇委員
いいです。
〇委員
この番号制度、グリーンカード制度で昭和55年に一回それに類したものが法制化された。しかし、今のお話のように、その時代ではまだ番号的なものがなくて、ついに2回法律を延期したけども、廃止してしまったということから、確かに番号制的なものが増えてきていますから、アレルギーはかなり減っている。この35ページ、資料にありますように、環境は非常に大きく変化してきていると思います。思いますが、やはりグリーンカード制度のときに、あれだってマル優と絡めてやったのですけれども、結局受け入れられなかった。そういう難しいデリケートな国民性というのがあるのかなという気がします。
そこで、35ページにありますように、納税者番号の利用を選択した納税者の利便性向上とか、国民の理解を深めていく取組み、これが非常に重要ではないかと思うわけでございます。
今もお話がありましたように、生年月日、名前、そういったものでほとんどもう確定できるわけでございますから、私は基本的には、本人に選択をさせる形で、本人の関心を高める。これが1つのやり方になり得るのではないか。例えば生年月日でやったら、まずこれで7桁ぐらいができるわけです。それにあと本人の暗証番号、どこでも今非常に一般化していますから、4桁なり5桁なり、本人の選んだ暗証番号、それで11桁なり12桁なりのものを作らせて、登録させて、重複を排除して、それで本人のものを確定するようにしてやれば、非常に関心、理解が深まるのではないか。
また、イタリアやオーストラリアのように、税制上もいろいろなメリットの与え方もある。あまりどぎついものは適当でないかもしれませんが、それはいろいろな方式があり得るわけですから、ここにありますような理解を深めていく取組み、納税者の利便性向上の措置、こういったものを幅広く考えていけば、環境もずいぶん変化していますから、かなり前向きにいけるのではないか。そのためにおいて、納税者中心に、納税者の選択、納税者の利用、それを重点に置いて考えていく、それが基本的に必要ではないか。そういう意味では、この基本的考え方、まあまあ結構。こういうことでやっていったら、今度は進んでいくのではないかという感じがいたします。
〇委員
委員のおっしゃったことに賛成でございます。個人の納税者のコンプライアンスに対する意識のために番号をつけること、今のようなやり方でやるというのは、絶対必要だと思います。
それと、番号をつけるだけではきっとだめで、納税者番号の意味は、番号をつけて、企業のほうで情報が整理されます、国税庁が出かけていって見られます、というそこの話で、今のままだって、銀行に行けば全部情報を何から何まで出してくれるのであれば、きっと手間をかければいろいろなことができるのだろうと思いますが、行って見られるようにするということがポイントなんだと思うのです。
今の質問検査権というのは、特定の納税者について、特定の税金について、情報をくださいというときの、本人のところに行かない、反面調査となるわけでしょうけれども、一覧性のある形で情報をいっぱい集められる人たちのところに情報がプールされ、それを国税が出かけていって、もっと質問検査権を、強化するというのとはちょっと違うのですが、見られるようにしてというところにポイントがあるのだろうと思いまして、ただ番号を振ったらそれで終わりということにならずに、いつでもいろんなところ、番号をいっぱい集めているような人たちのところに出かけていって、見られるようにしてくださいという義務をつけないと、おそらく難しい。持っている人がいても、国税がとれなければ意味がないですから、そちらの話ではないかと思いますけれども。
〇委員
情報セキュリティのほうですが、非常によく整理されて、大変勉強になりましたけれども、この情報のセキュリティというのは、要するにコストとベネフィットの問題で、切りがないと思うんですね。完璧にやろうと思えばできるでしょうけれども、膨大なコストがかかる。要するに、誰がどこまでやるか、どれだけのコストをかければいいかというところに尽きると思うのです。
例えば、電話なんかは、あれも盗聴という可能性はありますけれども、NTTとかいろいろなところがやっていますよね。それを自分で管理しようということをやっている人は誰もいないので、ネットワークとかそういう専門のところが集中的にやっている。もし誰かが盗聴したりすると、これは犯罪ですから、そういう格好で管理しているのだと思うのですが、どういうふうに整理して、誰が、どこまで、どれぐらいのコストをかけてやるかというのを、どういうような考え方をしたらいいのか。何かあいまいな話ですが、具体的に何か例でもあれば、教えていただけると助かるのですけど。
〇委員
おっしゃるとおりだと思います。セキュリティとコストというのは、かけなければセキュリティのレベルは低いし、お金をかければセキュリティのレベルは上がるということでございますが、絶対ということはありませんで、それから、システムのほうも、これだけやればもう絶対万全であるということは、なかなか難しいということで、どこかにレベルを設定しなければならないということだと思います。
先ほどご説明にありましたOECDの個人情報保護にかかわる8原則の5番目のところの安全保護の原則というのが、このセキュリティにかかわるものですけれども、この言葉の頭にも、「合理的」というふうに入っています。絶対ではないということで、適切なレベルを決めてということです。これはどこで決まるかということは、やはりコストを考えて、どこまで万全にするかということを検討して、そこまでやるという、ちょっとあいまいなお返事ですけれども、そんな形ということだと思います。
そのレベルにつきましては、例えばいくつか標準的に決められているものが、グローバルの基準ではいくつかございますけれども、そういうものを参考にして決めるということになるのだろうと思います。
〇委員
いくつかあるのですが、1つは、先ほどの個人情報の保護に関する法律が通ったということなのですけれども、日本の場合、いろいろ個人情報を漏洩したときの罰則が軽いような気がするのですけれども、この中でどういうふうになっているのか、諸外国と比べて、こういう罰則に関して、日本が軽過ぎるというようなことはないのかどうか、わかれば教えていただきたい。
それから、2番目は、これもおわかりになればですけど、預金保険のペイオフが始まる。定期預金は始まったわけですけれども。それで、銀行は個別に名寄せをやっているわけですけれども、そういうものの番号は、全然銀行によって違うのかどうか、もしどなたかご存じだったら教えていただきたいのですが、そうすると、何らかの形で銀行間でもそういうものがわかるようになればいいのではないかと思いまして、預金保険のような場合の番号というのは、全然独自でやっているのかどうかです。
それから、先ほどのいろいろな情報に関してですけれども、ウイルスのところもそうですけれども、日進月歩で、とにかくせっかくウイルスのチェックを買ったとしたら、そのウイルスのほうが、またそれを新しく作る人間が出てくるというようなことなんですけれども、印象で結構ですが、日本というのは、こういうセキュリティのシステムに関しては、相当進んでいるほうなのか。それとも、昔2000年問題のときに、日本は先進国で25番とか、そういうのを聞いたことがあるのですが、もしそういう調査があれば、教えていただきたいと思います。
〇事務局
1つ目の罰則の件、日本はたしか罰金が30万円だと思います。今後ろで調べています。
それから、預保の関係もちょっと私のところではあれなものですから、詰めさせていただきたいと思います。
6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金ということで、国際比較はここではちょっとわかりませんが、罰則自体としては、懲役と罰金があると、こうなっております。
〇委員
最後のセキュリティのシステムが日本が進んでいるのかどうかということですが、もし何かございましたら。
〇委員
セキュリティの技術のレベルとかというのは、アメリカが一番進んでいると思いますが、それについては、日本も追いついていく形で、あまり後れてはいないと思いますが、それが実際に世の中で浸透して、その技術を使っているかということについては、かなり遅れているという印象を持っています。
〇委員
では、どうぞ。
〇委員
私はコンピュータシステムは、全然専門家ではなくてわからないのですが、私自身、かなり大規模なシステムを、今更新もやっているのですが、もう私割り切っていて、セキュリティなり何なり、事故はあるものだと。事故があったときに、ものによって30分で復旧するもの、1時間で復旧するもの、そういうような仕分け。もちろん、物事によって2系列でバックアップするとか、4系列でバックアップするとか、そういうことは一応万全は期していますけれども、どうもやはり事故というのはあり得ると考えなければいけないと思っておりまして、それをいかにして短期間に復旧できるかというようなことで、今システムは作っております。それは素人のあれなんですが。
質問なんですが、スウェーデンの納税番号、これは33ページの場合には、所得税申告のチャートを書いてあるのだけれども、気になるのは、スウェーデンは一般財産税、これを持っておるんですね。これが二元所得税論や何かでも、要するに資本所得は一番低率なやつでやるというののエクスキューズに、いや、財産税があるからみんな納得しているんだよと、こういうことを聞いておるわけなので、この納番というものが一般財産税あたりの把握にどの程度使われているのかということ、もし知っていたら教えていただきたいと思います。
さっきの資金保有税について、私どもバブルのときに、要するに固定資産税が安いから土地が流動化しないのだということをさんざん言われたわけですね。ですから、資金を流動化させるという意味では、この保有税というものがプレッシャーになるのかどうか。そこらを議論する価値もあるのではないかと思って聞いておりました。
〇事務局
まず事実でございますが、33ページのフローチャートをご覧いただきます。これはすべての情報箋を挙げているわけではございませんが、ここにございますように、利子、株の取引等々、フローに着目したものが対象になっておりまして、いわゆる一般的な資産の保有そのものについての情報箋のルートはないと承知しております。
〇委員
どうぞ。
〇委員
情報セキュリティ監査についてお聞きしたいことがあるのですけれども、監査という言葉の意味するところの重さだと思うのですが、個人情報をいっぱい持っている企業なら企業があって、それは当然、コンピュータならコンピュータの専門の会社から技術を買って情報を管理していて、そこに会計士の先生方が、このセキュリティレベルはトリプルAだとか、そういうことをなさることになるのではないかと思うのですが、その前の責任というのはどうなるのでしょうか。
つまり、漏れた場合に、会社は個人に対して責任を負わなければいけない場合もあると思うのです。損害が生じた場合には不法行為で。ある種の技術が、あまりよくない技術を開発して提供して、その技術に欠陥があったという場合に、コンピュータ会社も責任を負うのでしょうけど、一般消費者に対して、適マークを出したということは、会計士の先生方も責任を負うことになるのだと思いますが、これは大変怖いことだと思うのです。「当協会の定める基準によりこの範囲で」というふうに責任逃れの条項を最初に置いておくのか、それとも……。会計士の先生って今大変ですよね。かなり勇気の要る決断でこの業務に入っていかれたのではないかと思うのですが、その辺いかがなんでしょうか。大変心配になるのですが。
〇委員
最近の事例なども加味されてお話しされたのかなと思いますが、今度の経産省の情報セキュリティ監査制度を例にお話し申し上げますと、このセキュリティ監査の場合、2つ方法が用意されていまして、1つは助言型というもの、1つは保証型という監査でございます。
助言型というほうは、例えば情報セキュリティの管理基準、作るほうの基準なのですが、その作るほうの基準について、その基準に乗っかってきちっと作られているかどうか、あるいは、作られて運用されているかどうかということを検討しまして、そのときに、その基準に沿っていない部分、不備な部分、それについて、こういう不備な部分があります、こういう改善をされたらどうか、というふうに報告書を書く助言型というものがあります。これはこういう悪いところがあって、こうだということを指摘するだけですから、今おっしゃったような責任というのは生じてこないだろうと思います。
もう1つ保証型というのがございまして、保証型の場合は、何もなければ「万全である」「基準に照らして十分である」「適正であることを証明します」というような意見になるだろうと思います。このときは、かなりリスクといいますか、誤ったときのことに対する責任というのは、非常に出てくるだろうと思います。したがいまして、どういう基準でやったかとか、どの範囲でやったかとか、そういうことを十分に報告書の中に詰めて、そういう意見を差し上げるということになると思います。
それと、もう1つ、監査は過去のことについて実施します。報告書を書いたときよりも以前のことについて調べた結果、こうであったということを申し上げますので、例えば、そのあとに事故が起こった原因が過去のことになければ、それについては責任は負わないということになります。過去終わったことについて、監査をするということです。そうしないと、監査の範囲が確定できない、対象が確定できないので、過去終わったことについて、手続とか運用状況について保証するということでございます。そういう部分で、もし過去のことに起因して何かあれば、それはセキュリティ監査報告書について、監査人が責任を負うということでございます。
その範囲についてどこまで負うのか。その監査をした企業だけについて負うということだけで済まない場合があるだろうと思います。財産者のために保証の監査をした。例えば、中央官庁であるとか自治体とかについて、そういうことであった場合には、例えば市についてやった場合、市全体、市民全体から訴訟を受けるという可能性もあるかもしれません。したがって、その辺は最初申し上げた範囲とか、そういうものをきちっとするということと、それから、今後の制度で固めていくということを待たないといけないと思っています。
〇委員
納税者番号の一番大きいメリットの1つは、よその国がやっていますけれども、マッチングという、どうやって納税者の申告とそれ以外の法定調書などを合わせるかということですけれども、日本の銀行の場合、源泉徴収という仕組みがあって、そのかわり、いわゆる支払調書等の情報申告は免除されているわけですね。そうすると、マッチングするためには、やはりそういった銀行が持っているような情報も申告させなければいけない。できればディスケットなり電子申告の形でコンピュータに取り入れられるような形にしなければいけないわけですけれども、それによって初めて納税者からの申告との照合が容易になる。
さて、支払調書というもの、今、いざ源泉徴収させて、なおかつプラスアルファで支払調書もやはり出させて、しかも何らかの電子媒体でやりなさいと。これは行政上、そんなに無理なことではないのでしょうか。いかがでしょう、これは。ちょっとお伺いしたいと思います。
〇委員
事務局のほうでどなたかありますか。
〇事務局
金融機関での対応なものですから、つまびらかではないですが、ただ、かなり金融機関サイドの仕事、業務の運営が電子化されておるということも当然の事実でございまして、どの程度の事務量がどの程度膨らんでしまうのかというのも、例のコストの観点からの議論ということで、大事な論点にはなっているということでございます。なかなか定量的に、可能といえば可能だと思いますが、どの程度のコストが上積みされてしまうのかというところが、実際導入の際にはキーポイントになるかと思います。
〇委員
先ほどの委員がご質問されたようなこととも関係すると思いますけれども、日本の銀行の内部のシステムというのは、汎用パッケージを使っていたりするケースがすごく少ないですから、銀行ごとにずいぶん違う、統一性がないのではないかという気がするのです。だから、どういうことを要求されるかによって、比較的楽に対応できる金融機関もあれば、システムを作り直さなければいけないとか言い出すような金融機関もある。というのが多分、想像の範囲を超えませんけれども、現状ではないかなという気がするのですけれども。
〇委員
私があまりしゃべるべきではないのかもしれないのですけれども、今の話ともやや関連するのですが、例えば事務局の用意していただいた資料の3ページ目の一番下のほうに、「検討の方向性」というところの丸ポツの2つ目に、検討すべき課題というのがあって、2番目に導入に伴うコストと効果というのがあるのですけど、この資料を見ていると、導入に伴うコストの部分、それから効果は、今度は特に当局にとってのメリット、これをものすごく強調されているような気がするのです。
先ほどの委員のお話ではないのですけれども、やはりこういうことの導入に伴う一番の問題は、納税者にとってのメリットがどこにあるのかということを、もう少しきちんと、可能なものはどういうものなのかということを挙げて、それがどういう方式でやったときにどういうメリットがあって、どういう方式だとないのかということを、きちんと挙げることが必要ではないかなと。
例えば社会保障番号とうまく使えば、社会保障の受給とうまくくっつけられるとか、ひょっとしたら、そこまでいくのかどうか知りませんが、スウェーデン方式みたいなことでやれば、企業は源泉徴収とか年末調整とかをしないで、当局の側でやってくれる可能性があるとか、何か様々なメリットが納税者側、民間側に生まれてくるような可能性があるんですね。そういうことをうまく使って納税者番号を導入するということを考えるべきではなかろうかと思います。
そういうこととの関連でもう1つ思うのは、今、税調としては、中期答申で、公的年金等控除を多分縮小ないしはやめる方向で、年金も課税対象にしようという話になる可能性があって、そうすると、高齢者の方々で年金をもらっている方々が、ある意味で確定申告をしなければいけないという可能性が出てくるわけで、これに対するコンプライアンス・コストを下げる仕組みみたいなものとして、ひょっとしたら納税者番号も考えるし、うまくいくのかどうかわかりませんが、スウェーデン方式みたいなものも考えてやる。そういうようなことは、ある意味でメリットと両方くっつけるから、その分入れやすいという可能性もあるので、そういうことも少し検討してみるのはどうかなと私は思います。
〇委員
今の話と重なるのですけど、まさにそういうことだろうと思うのです。つまり、デジタル社会になったときに何が変わるかというと、パラダイムシフトの1つは、消費者が選ぶものを提供すると。つまり、今までは提供するものを買わされるという感じだったのですけども、消費者が選ぶものを提供する企業のほうが成功しているという話があるようなのです。
つまり、例えばコミュニケーションが自由になったものだから、DELLなんていうのが成功しているのは、自分で自由に組み合わせたコンピュータというのができるから、それを即座に提供するというのでうまくいっている。つまり、今までは組み合わせたものを店頭で売っているのをどれか買うというのではない。それが安くできるようになったということだろうと思うのですけれども、そうすると、消費者のほうが選ぶシステムを作る。納税のほうについても、消費者のほうが選べるようにして、強制するのではなくて、例えば納税者番号とチョイスを与えて、それを一人でに選ぶようなシステムを作っていくという形でだんだんに変わっていくというシステムは、今後できるのではないかという気がしますけど。
〇委員
ありがとうございました。
では、このぐらいで自由討議の時間を打ち切らせていただきたいと思います。
委員長、本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
では、最後に今後の予定を申し上げます。
来週の27日、火曜日ですが、税調の総会が開催されます。そういうわけで、年初からのこの小委員会の審議は一区切りということにして、税調自体の審議は一区切りということになって、来月以降は中期答申の策定に向けた作業に入ることになります。
金融小委員会は今まで3回開催してまいりましたが、これまでの議論を私のほうでまとめて、来週の総会へ報告させていただくことにして、中期答申にもできるだけ反映させていただきたいと思います。
何か中期答申に反映してほしいご意見がありましたら、私のほうから伝えますが、何かございますか。
よろしければそういうことで、次回は開催するとしてもおそらく9月以降ということになると思います。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。