第11回金融小委員会 議事録

平成15年4月15日開催

委員

それでは、ただいまから第11回金融小委員会を開催いたします。

本日は、前回の金融小委員会が平成13年の11月27日で、以来1年半ぶりの再開となりますが、よろしくお願いいたします。

ご承知のとおり、平成15年度税制改正において、金融・証券税制は配当課税を中心に大きな見直しが行われました。今回の税制改正は、市場や政治の動向等を踏まえて行われた結果と受けとめていますけれども、一方でその内容や意義について、理論的な側面からの検討も十分に行う必要があるだろうと考えています。

また、「金融資産性所得に対する課税の一体化」が今後の方向性として掲げられていることをご承知だと思いますが、その意味内容についても、やはりきちんと検証していくことが重要であろうかと思います。

そこで、金融小委員会としましては、今後比較的長期のタームを想定して、多岐にわたる論点についてじっくり議論を進めていきたいと考えております。

6月末を目処に税調では「中期答申」がまとめられる予定です。金融部分については、この小委員会でのご意見・ご議論をもとに、時間的な制約もありますので、今後検討すべき論点や課題を問題提起する程度にとどめるというイメージでまとめて、引き続き夏以降の小委員会につなげていきたいと思います。

本日は、まずはじめに15年度税制改正の内容と我が国税制の現状、ブッシュ大統領が提案している米国の配当及び株式譲渡益課税の見直し内容等について、事務局に説明をお願いいたします。これが第1点です。

2点目は、今後の検討の視点ということで、これからの議論のたたき台を事務局から説明していただきたいと思います。

3番目に、専門委員から「資本所得課税の展開」、続きまして金融小委員長代理から、「経済理論とともに考慮すべき若干の法的視点について」という議題でご説明いただき、議論を進めていきたいと思います。

まず、よろしければ最初に15年度税制改正の内容と我が国税制の現状について、事務局に説明をお願いしたいと思います。

では、お願いいたします。

事務局

それでは、「金融小11-1」という横長の資料をお開きいただきたいと思います。時間も限られておりますので、簡単にご説明をさせていただきます。

おめくりをいただきまして1ページでございますが、昨年の当調査会の答申の金融・証券税制の部分を抜粋してございます。アンダーラインを付した真ん中以下のところでございますが、金融・証券税制につきましては、「金融商品間の中立性を確保するとともに、できる限り一体化する方向を目指すべきである」という答申をいただいておりまして、アンダーラインは引いてございませんが、「この場合、将来の改革の方向として、金融所得の一元化、二元的所得税についても、総合課税とあわせ検討すべきである」という方向感を示していただきました。その上で、15年度税制改正では、こうした方向性を視野に入れて、配当課税や株式投資信託に対する課税について、簡素、合理化を図る等の答申をいただいております。

これを踏まえまして、15年度税制改正を実施したわけでございますが、2ページをお開きいただきまして、大きく2つに分けてございます。「見直し措置I」、「見直し措置II」となってございますが、「見直し措置I」の左側のほうを御覧いただきますと、上場株式等の配当あるいは公募株式投資信託の収益分配金、上場株式等の譲渡益につきまして、20%の源泉徴収で納税が完了する仕組みを導入したということでございます。これは「考え方」のところにございますように、将来の課税の一体化に向けた措置であり、投資家利便向上ということで、申告不要という仕組みを幅広く導入をしたという考え方でございます。

「見直し措置II」のほうでございますが、「ただし」とございます。当面の優遇措置として、今後5年間はこれら配当、譲渡益等につきまして、10%の優遇税率を適用するということでございます。これは貯蓄から投資への対応を一層明確化するという政策的な観点から、当面5年間10%の優遇ということでございます。

それぞれについて3ページ以下で御覧をいただきますと、まず配当課税が3ページにございますが、今申し上げましたように、今回、20%の源泉徴収で申告不要という制度に一本化をしたわけでございますが、この対象となっておりますのが、右肩の上のほうに「〇」が付いてございますが、「大口(保有割合5%以上)以外の上場株式の配当等の場合」ということでございまして、小口の上場株式の配当について、一般の個人の株式投資を促すという政策的観点もございまして、このような形に変えてございますが、上場株式でも大口の場合や、あるいは未上場株式につきましては、従来どおりの取り扱いを変更してございませんで、事業所得との課税バランスなどを考慮いたしまして、総合課税という仕組みをそのまま維持してございます。

4ページでございますが、公募の株式投資信託課税でございますけれども、これは一昨年、当金融小委員会でも投資信託の課税についてご議論をいただきましたが、ご承知のように、これまでは公社債投資信託と同じように、株式投資信託につきましても、いわゆる利子並みの課税ということで、20%の源泉分離課税でございました。譲渡損益につきましても、公社債あるいは公社債投資信託と同様に、益は非課税、譲渡損はないものとみなすという扱いでございまして、解約をした場合に出た損についても、通算をしないというのがこれまでの利子並み課税の考え方でございました。

これに対しまして今回は、先ほど見ていただきましたように、配当課税自体につきまして、上場株式の配当については、申告不要で20%の源泉徴収で済む仕組みにするということにいたしましたので、株式投資信託の収益分配金につきましても、配当と同じように20%で申告不要という方向に変えさせていただきまして、それに伴いまして譲渡損益につきましても、株式並みということになりますので、とりあえず、解約損が生じた場合には、株式譲渡益との通算を可能にするというところまで持っていかせていただくことといたしました。

それから、5ページでございますが、株式譲渡益の課税でございます。これも金融小委員会で一昨年ご議論をいただいたのち改正がございまして、「改正前」というところにあるのがそれでございますが、上場株式等について20%の税率、損失の翌年以降3年間の繰越控除という基本線に加えて特例がつきました。1年超保有の上場株式等について、税率を10%に軽減した上、100万円の特別控除をするといったような特例措置でございました。これを今回簡素化の観点で、税率をすべて10%に当面5年間するということに伴いまして、その100万円の特別控除等の特例を廃止させていただくことといたしました。

さらに、特定口座制度。これも14年の改正で入れていただいたのですが、それについて実務的な意見も踏まえまして、改善・簡素化をしたということでございます。

その詳細は6ページでございますが、源泉徴収を選択された特定口座につきましては、税務署への申告なしで納税が完了する仕組み、さらに特定口座に証券会社に預けておられないいわゆるタンス株を受け入れることができるようにする。さらに、源泉徴収口座を使っておられる限りは、年間取引報告書が税務署へ行くことがないといったような実務的な改善をさせていただいております。

以上が15年改正の概要でございますけれども、1ページ飛ばしていただきまして8ページでございます。「利子・配当・譲渡所得の課税関係」ということで一表を整理してございますが、これから租税論についてご議論をいただく前提といたしまして、現在、利子所得、配当所得、譲渡所得とも、それぞれいろいろな課税方式がございますけれども、所得税法上はすべて総合課税ということで規定をしてございます。

ところが、現行の実際の課税の仕組みは、いずれも租税特別措置法で規定されている仕組みで運用がしてございまして、利子所得は源泉分離課税、配当所得については確定申告不要を選択できる。譲渡所得につきましては、申告分離課税といったようなことで、現在ワークしております仕組みは、いずれも租特で規定をされておるということでございます。

9ページは利子・配当所得の詳細でございますので、御覧をいただければと思います。

それから、10ページにお進みをいただきまして、「譲渡所得の課税の概要」というふうに書いてございます。株式、土地・建物、その他ということで、資産を大きく3区分にしてございますけれども、横に左のほうから見ていただきますと、株式や土地の譲渡所得それぞれにつきまして、申告分離課税ではございますけれども、適用税率や損益通算の仕方、あるいは損失の繰越しについて、それぞれ異なった扱いとなってございます。

譲渡益に対する税率を見ていただきますと、上場株式等は20%でございますが、それ以外は26%。非上場株式とか土地等・建物等の譲渡益については、26%の申告分離課税ということでございまして、この26%というのは、一番下にその他の資産で長期で「譲渡所得×1/2」と書いてございますが、1/2総合課税といった従来の所得税の考え方が税率に反映している部分がございます。

それから、譲渡損の損益通算の欄を見ていただきますと、株式等につきましては、他の所得との通算が不可ということで否定をされておりますが、土地等・建物等につきましては、他の所得との通算が可ということで、事業所得や給与所得といった他の所得との通算ができるという扱いになっております。

さらに、一番右の損失の繰越控除というところを見ていただきますと、上場株式等につきましてのみ、将来への損失の繰越しが3年間認められるという扱いになっておりまして、同じ譲渡所得でありましても、資産によって課税関係が区々であるというのが所得税の現状でございます。

それから、11ページ、12ページ、13ページあたりは、それぞれの課税のこれまでの歴史を整理してございますので、省略をさせていただきまして、14ページ以降の資料を御覧いただきたいと思います。14ページに「日本の所得税計算の仕組み(イメージ)」ということで、やや、ややこしいフローチャートが書いてございます。14ページ以下で各国の所得税の計算の仕組みを図式的なフローチャートとして 示してございます。

詳細については、次回以降、ご論議の必要に応じて説明をしたいと考えておりますが、若干コメントをさせていただきますと、14ページの日本を見ていただきますと、一番左の収入の種類というところで、資産性所得に関係をするような収入を網掛けをしてございます。各種の収入を所得分類に当てはめてまいりまして、それの損益を通算して合算し総合課税をするというのが所得税の原則でございますけれども、いくつか見ていただきたい点がございまして、下から5番目の土地等の譲渡収入というのを御覧いただきますと、これはずっと右に追っていただきますと、他の所得と損益通算をいたします。さらに所得控除をしたあとに比例税率で申告分離課税をするというのが土地の譲渡所得でございます。

株式等の譲渡収入という欄を右に追っていただきますと、これはビョンと飛び越えておりますが、他の所得と損益通算はしませんけれども、合算をした上で、所得控除をしたあとに比例税率で申告分離課税をするということになっております。

一番下の預貯金等の利子を見ていただきますと、これは2回損益通算と所得控除、2つの箱を飛び越えておりまして、これは他の所得と損益通算もしないし、所得控除もしないで、源泉分離課税といったことでございまして、資産によっていろいろな課税の仕方があるというのが現状でございます。

15ページにアメリカの絵を書いてございますが、アメリカには、日本と違いまして所得分類という欄がございません。特段の所得分類が存在いたしませんで、いろいろな所得を総合課税をするというのが比較的徹底しているのがアメリカの個人所得課税の計算のイメージでございますが、それでも、一番下に譲渡収入とございますが、土地や株式等のキャピタルゲイン、ロスについては、(注1)(注2)に書いてございますが、他の所得との損益通算が制限をされているというのがアメリカの総合課税の実態でございます。

16、17、18ページにイギリス、ドイツ、フランスとございますが、時間の関係で省略をいたします。

19ページにフィンランドの所得税の計算の仕組みを掲げてございますけれども、ここは真ん中あたりの所得分類というところを見ていただきますと、稼得所得と投資所得というふうに大きく2つに区分をされたいわゆる二元的所得税の様相を呈しております。それぞれ稼得所得、投資所得にグルーピングをして、その中で損益通算をするのが原則になっておりますが、下から二番目の譲渡益を見ていただきますと、株、土地等の譲渡損失は、(注2)に書いてございますように、他の投資所得との間で損益通算が否定をされております。さらに、預金等の利子は投資所得という概念に当てはまってはおりますが、源泉分離課税ということで、初めからグループの外に置かれているということで、二元的所得税であっても、国によって扱いがいろいろあるということだろうと考えております。

次の20ページ、21ページは、株式の譲渡損失が20ページ、それから、21ページが株式以外の土地や建物の資産の譲渡損失、それぞれについて、損益通算がどうなっておるかということを、図式的に〇×で整理してございますが、株式の譲渡損失については、日本も諸外国も何らかの形で制限をしているということではないかと思います。

それに対しまして、21ページの株式以外の譲渡損失につきましては、日本は比較的諸外国に比べて損益通算という面では現状甘くなっているという実態ではないかと見ております。

また、今後各国の制度の比較につきましては、ご要請に応じて資料を提出したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

事務局

続きまして地方税関係でございます。同じ資料の22ページを御覧いただきたいと存じます。

金融資産のうちの利子につきましては、昭和62年に道府県税の利子割というものが創設されまして、現在に至っております。利子といいますのは、少額で、大量に発生し、そして精算が要らないということでございますので、金融機関がその所在地の都道府県に特別徴収をした上で、その年に払い込むということで課税関係を終了いたしております。

また、株式につきましては、幾多の変遷を遂げておりますけれども、現在、配当につきましては総合課税、そして譲渡につきましては申告分離ということになってございます。

22ページの絵でございますけれども、特に一般投資家の手続簡素化のご要望が非常に強いということがございまして、15年度改正に おきまして、この図のような形の特別徴収の制度を導入いたしたところでございます。

配当について申しますと、特別徴収義務者、これは配当を行う株式会社でございますが、その配当金を支払う際に、源泉徴収、特別徴収いたしまして、都道府県に納税し、そこで課税関係が終了するというものでございます。また、譲渡益につきましては、証券会社が同様の手続きをとるということで、その年に課税関係を終了するというものでございます。

ただ、利子と違いまして、株式の配当あるいは譲渡の場合には、精算をする必要がある場合もございますので、22ページの一番下にございますけれども、申告があった場合には、税額精算、還付というのを翌年に手続きを行うということで、従来からの手続きに戻るということも可能にいたしてございます。

23ページがそれを詳細に書いたものでございまして、これは省略させていただきたいと存じます。

24ページでございますが、利子・配当・譲渡所得の課税関係、地方税関係の概要でございます。利子については分離課税、そして配当、譲渡につきましては網掛け部分が今回の年度改正であり、それぞれに※印がついてございますが、従来からの精算の道も残しているということでございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

ご質問などはあとでまとめて行いたいと思いますので、次に進みたいと思います。

米国の配当・株式譲渡益課税の見直し内容と最近の議会の動向等について、事務局からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

事務局

「金融小11-2」という横の表でございます。目次のページをお送りいただきまして、減税措置の概要というところから始めます。

これは1月7日、ブッシュ大統領から表明されたベースでの減税案の骨子ということでございます。

「目的」、ここは個人消費の促進、それから個人及び企業の投資の促進と、経済回復を推し進めるための措置であるという目的のもと、概要1、2、3と分かれておりまして、1つ目がいわゆる個人所得課税の世界、最低税率の適用範囲の拡大、税率軽減。特に最高税率38.6%というのを35%に。この数字は後ほど関連がございます。

それから、今日のご説明の中心でございます2.でございます。配当への二重課税の撤廃。これが全体の減税規模、予算教書ベースでは6,145億ドルですが、そのうちの半分を上回ります3,600億ドル、これがこの「配当への二重課税の撤廃」内容は後ほどご説明いたします。

1月7日、ブッシュ大統領が発表されまして、2月下旬に法案が上下院に付託をされておりますが、後ほどご説明しますように、税法の審議自体はまだ始まっておりません。

次のページでございます。個人段階での配当課税をやめてしまうというのを、イメージとしてどういうことになるのかと。これは日米比較の観点から国税ベースで見たものでございます。

ちなみに日本でございますが、通常所得100が個人にあったといたします。個人段階での課税、最高税率が37%でございますので、この網掛けになっているところが税負担となるわけでございます。

ちなみに、配当所得を日本の改正後で見ますと、100の根っこがあって、それが法人段階で30%課税をされるということで、70%が個人に配当が行われる。この70のうち国分の源泉徴収税率、5か年間でございますが、7%を掛けますと、4.9、ここでは5としておりますが、5が個人段階で課税される。足しますと、課税負担は合計で35となります。

アメリカの場合、ブッシュ減税案ベースでございますが、どうなるかと申しますと、通常所得のケースでは、先ほどちょっと申しましたように、個人の最高税率を38.6%から35%に下げますので、税負担の計は個人段階で35。配当だとどうなるかと申しますと、法人段階で法人税率35%でございます。これが法人段階で課税され、従前であれば、残りの65%に、例えば改正後の35%を掛けますと、約22の課税が行われる。これは総合課税が行われるということであったのですが、この課税をやめてしまおうということで、課税負担計は35となるということで、通常所得の場合と配当所得の場合が同じ税負担になるということでございます。

次のページ、実は大統領が1月7日に発表された際には、細かな内容は明らかではなかったのですが、その後、法案が出されました。その段階でわかったのですが、配当だけではなくて、いわゆる内部留保されたものについても、一定の調整をしようと。これも便宜上、まず現行、下半分をちょっと御覧いただきますと、まず300の収入がありまして、そこから利払いをする。これは当然損金算入されますので、課税所得としては200ある。このようなモデルを想定いたします。このうち100を配当に、100を内部留保にというふうに割り振ると想定いたしますと、配当につきましては、先ほど申し上げたように、法人税が35かかります。その上で現在38.6%でございますので、1から38.6%を引いた手取りは39.9になる。根っこの300から配当に回ったお金100は、残り39.9になるということでございます。

同様に内部留保いたしましたものにつきましては、ここでも法人税課税が行われまして、65がいわゆるネットタックスになる。そのうちキャピタルゲインが内部留保されますと、株価がその分上がるであろうということで、この65のうち20%課税されるということで、最後に残るアフタータックスがキャピタルゲインとして52残るという格好になります。

利払いにつきましては、損金算入された上で、個人段階でかかるわけでございますが、利子が手取りで残るのが61.4となります。

総合課税の世界でこのようになるということで、結果的に申しますと、右下のところ書いてありますように、税制上の取り扱いは、利子、これが一番手元に残るのが多い。その次が内部留保に回したキャピタルゲイン、それから配当と、このような順番になっておるわけでございます。

これを極力中立化しようというのがアメリカの案でございまして、大統領提案と書いております。先ほど申しましたように、利益処分の欄、3つに分かれるわけですが、配当については法人段階の35だけの課税になるということで、あとには65丸々残る。

それから、利払いにつきましても、所得税を35取りますので、手元に残る利子収入というのは65。

さらに、内部留保されましたものにつきましても、これは先ほどちょっと申しましたが、キャピタルゲインに反映されるであろうと。それもネットオフしようということで、取得価額を調整する、かさ上げしておくということで、キャピタルゲイン、この場合ですと65というものを調整してしまおうということでございます。もちろん、αと書いてございますが、ほかの要因で株価が上がった場合は、それは別途課税をいたしますということになっております。

ということで、この場合、利払いに回ろうが、配当しようが、内部留保しようが、いわゆる手元に残るお金、逆に申しますと税負担というのは、イコールになる。このような考え方のもとに今回の案が組まれておるわけでございます。

次のページでございますが、今申しましたようなことがCEA(米国経済諮問委員会)の報告の中に書かれておりまして、今回の改正案の基本的考え方(1)から(5)、それぞれ列挙をされております。基本的には資本コストを引き下げることがいいことである。それから、(2)では、配当が内部留保よりも税制上不利に扱われているために生じている歪みを是正したい。それから、配当性向を高めることはいいことである。等々の理由が挙げられております。

次のページは、若干先ほどご説明したことを細かな点を付言したものでございます。ここで1つだけ申し上げておこうかと思いますのは、1.の2つ目の黒丸でございます。法人所得と配当所得の二重課税を排除する観点から、株主は、以下の計算式により算出される総所得不算入配当枠、むしろ英語で言ったほうがわかりやすいと思いますが、Excludable Dividend Amount、いわゆる総所得から外せるDividendのAmount、これを下の式のように定義をしておるわけでございます。米国で支払った連邦法人税等、これを連邦法人税率35%で割り戻す。結果、実際払った税金から算出をした利益、ある種税務会計上の利益がここに出てくるわけでございます。それから実際払った法人税を引く。税引き後の利益。この範囲内、もちろんこれを1株当たりに割り戻して各配当ごとにこの配当非課税を適用する限度額を設けておるということでございます。

ご存じのように、アメリカにおきましては、税務会計といわゆる企業会計が根っこから分離しておりますので、わざわざこのようにアメリカで実際税金を払った二重課税を調整すべき範囲というのを、正確に定義をしようとしておるわけでございます。

次のページでございますが、若干はしょりますが、現在、先ほど申しましたように、法案の審議にはまだ至っていないわけでございますが、各種論調等において、賛成派もあれば、反対派もいるということでございます。

賛成派、これは政府サイドでございますが、配当所得のある、これはいわゆる生株を持っている直接配当所得がある世帯のことだと思われますが、約35万世帯、それから、配当所得を受けているうち半分ぐらいが高齢者である。それに恩恵が及ぶであろうと。2つ目の丸は、対策で景気が拡大すれば、財政赤字はむしろ減少するだろうと。

ちなみに、アメリカにおきましても、いわゆるダイナミック・アプローチによる財政収支試算というのは行っておりません。ある意味ではこのチェイニー副大統領のご発言は、定性的なものでございます。

ちなみに、この2つの点について、反対派がどう言っているかというと、恩恵は一部の富裕層に集中するのではないかと。それから、2つ目の丸でございますが、やはり連邦財政赤字の拡大、これは大変なことになるのではないかと。

ちなみに、2002年度確定値2兆ドル余りの歳出規模に対して、1,600億ドルの赤字になっております。2003年度につきましては、3,000億ドルの赤字が予想されております。

賛成派の2つ目でございますが、先ほど申しましたように、配当性向を高めることは、コーポレート・ガバナンスを改善させる。それに対して反対派は、タックスシェルター等々、助長する税制の歪みは必ずしも解消されないでありますとか、配当所得の半分は年金とか401K等々のものであり、今でも実質的には二重課税になっていないものもあるのではないかと。

それから、株価への影響も10%から20%程度上昇するという見解もあれば、むしろ株価は配当の有無よりも長期的な企業収益の見通しのほうが重要であると。現在、アメリカも株価は低迷をいたしております。

その他といたしまして、雇用への影響でありますとか、さらにグリーンスパン連銀議長、一番下でございます。ある意味では、理論的には配当二重課税の見直し、これは支持すると。ただ、若干ここはニュアンスがございますのは、Pay-As-You-Go、この範囲でやるべきではないかとグリーンスパンはおっしゃっておられます。

反対派といたしましては、基本的には先ほど申し上げたように、財政赤字の拡大、それによって金利が相対的に上昇するのではない かと。

さらに、税法の仕組みや申告等の実務面において複雑化。例えば先ほど申し上げたいわゆる株式の取得価額を調整する。内部留保のみなし配当分を取得価額に上乗せする。これは1株ずつに一々ひっつけなければいけないものですから、実際実務面でどうするのだろうなということを、我々も関心を持っております。

最後、はしょりますが、今の現状でございます。最初申しましたように、1月7日に大統領が発表され、一般教書が出され、2月3日に予算教書が出ました。その後、いわゆる予算決議案、バジェット・レゾリューションということで、歳入予算、歳出予算のいわゆる枠を目標値として設定する決議がございます。その差額がいわゆる財政赤字になるわけでございます。これをまず審議するのがアメリカの予算審議のやり方でございます。2月27日に税法が出ておりますが、まだ審議はスタートしておりません。

ちなみに、3月21日に下院の本会議、先ほど申し上げたバジェット・レゾリューションでございますが、議会の試算では7,260億ドル、これが大統領案による財政赤字だということでございますが、これをそのまま修正なしに通しております。ちなみに、下院は共和党が227、民主党が206ということで、比較的共和党が優位を占めている。

一方、上院でございますが、こちらは共和党が51、民主党が48。その他1でトータル100でございますが、この上院におきましては、イラク戦費があるということでございまして、3,500億ドル、今申し上げた減税の総枠について半分にした案を可決したという状態でございます。

その後、両院協議会というものが始まりまして、上下両院の結論の差異を調整しようとしておるわけでございますが、実は先週金曜日に一定の進展がございまして、ここに書いてございますが、両院協議会の調整では、5,500億ドル、たまさかでございますが、ちょうど真ん中あたり、7,260と3,500の真ん中あたりでございますが、5,500億ドルと。ただし、上院は3,500億ドルで考えている。もう一つ「ただし」なんですが、今申し上げたのはバジェット・レゾリューション、予算決議の両院協議なのですが、今後予想される税法に関する協議では、5,500億ドルまでconsiderする。こういう実は極めて異例な両論併記型の両院協議が行われ、それが先週通ったわけでございます。

ということで、結果、下院が5,500億ドル、上院では3,500億ドル、今ダブルで走っておるということで、この予算決議のもと、現在2週間ほどのレセスに入っておりまして、5月ないし6月から税法の審議が始まりますが、それぞれの予算決議のもと、それぞれの歳入委員会で税法が審議される。

ちなみに、先ほど申し上げましたように、現在、バジェット・レゾリューション自体は上院は3,500億ドルでございます。それを超える減税法案を通すためには、普通は過半数なのですが、3分の2の賛成が必要となっています。

おそらく予想されるに、上下両院で違う形で法案の審議が行われ、また両院協議会となるわけでございますが、そこでは5,500億ドルまでconsiderするということになっておりまして、やや今後紆余曲折がございますが、これから税法審議がスタートするということでございます。

あと、いわゆるG5諸国の関係税制を挙げておりますが、割愛させていただきます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、続きまして、今後小委員会が検討を行っていくに当たり、考えられる検討の視点としてとりあえずのメモがありますので、事務局から説明をお願いしたいと思います。

事務局

1枚紙で「金融小11-3」となってございますが、「検討の視点」(未定稿)というのをご覧いただきたいと思います。

必ずしも私ども整理した形で視点をご提示できてはおりません。これからいろいろな観点でご議論をいただければと思っておりますけれども、とりあえずのものとしてご披露したいと思います。

1から9まで並べてございますが、1は現状の評価、2は金融商品の多様化等、課税をめぐるフィールドについてのファクトファインドも必要であろうということで書かせていただいております。

それから、3、4、5あたりが一括りになろうかとは思いますが、3に「金融資産性所得課税の『一体化』の意義、問題点」というふうに書かせていただきました。答申でも「一体化」ということを言っていただきましたが、一体化というのは一体どういうことなのか。金融商品が多様化しております中で、できるだけ税率をそろえる、あるいは個人のリスクテイクへの配慮といった観点から、損益通算の範囲を広げていく、そういうとりあえずのイメージを私ども持っておりますけれども、一方で、金融資産性所得といいました場合に、どこまでを考えればいいのか。先ほど資料で見ていただきましたように、15年度改正でも未上場株式等の事業所得や土地との関連で整理できていない部分が残っております。実物取引とのバランスをどうするかという問題も一方にあろうかと思います。

さらに、勤労所得等との間で、税率の設定を含め課税のバランスをどう考えていけばいいのか。あるいは、先ほども見ていただきましたように、損益通算と一言にいいましても、諸外国を見ますと、むしろ租税回避等に気を使って制限している面もございます。こういったいろいろな問題につきまして、4の租税論とも関係しますけれども、ぜひ理論的なご示唆をいただきたいと考えております。

それから、「法人所得課税と個人所得課税の関係」、5番目でございますが、伝統的には配当についてのいわゆる二重課税の議論がございます。ブッシュ減税の吟味とも関連いたしますけれども、経済や企業活動の効率性への影響という面で、改めて議論すべきことがあるのかないのか。あるいは、金融技術が高度化しております中で、金融の源泉から最終の個人の受取段階に至るキャッシュフローの中間段階に、いろいろな法人や事業体、ファンドといったものが介在するようになってきておりますが、整合的な課税の仕組みをどう構築していけばいいのか等の幅広い問題がここには伏在しているように思っております。

それから、6、7がこれまた一括りかもしれませんが、申告納税と源泉徴収、あるいは納税者番号制度等、適切な課税の確保、あるいは投資家等金融マーケットに参加する個人の利便性の向上といった面もあろうかと思いますが、幅広い視点で課税環境という問題についても議論を深めていただけるとありがたいと思っております。

さらに、「8.個別の金融商品に対する課税」と書いてございますが、今年度理財局のほうで発行を予定しております物価連動債というのがございます。この課税をどうすればいいのか。あるいは、こういったことから発展いたしまして、資料では見ていただきましたが、公社債、債券に対して今は譲渡益課税が非課税になっておりますが、債券課税のあり方をどうするのか。こういった点についても今後ご相談ができればと思っております。

とりとめがなくて恐縮ですけれども、現在私どもが持っております問題意識の一端を披露させていただきました。

委員

ありがとうございました。

それでは、ちょっと時間を取りまして、15年度税制改正の内容、あるいは米国の見直し、あるいは検討の視点、ここら辺についてご自由に質問、ご意見をいただきたいと思います。

何かとりわけ税制改正の内容とか米国の見直し内容について、ご質問等はございませんでしょうか。

では、よろしいですか。特にご質問がなければ、お二人の委員にそろそろ次の出番をお願いしたいと思います。

それでは、再開しました金融小の本題に入りたいと思います。まず、今日はどちらかというと理論的な視点ということを中心に、お二人からご説明を願いたいと思います。

まず、「資本所得課税の展開」というテーマでご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

委員

金融小委員会でもう11回会合をされていて、同じような話をするかもしれませんけれども、そこはご了承ください。せっかく機会をいただいたので、細かなことは今日はあまり時間もありませんから、資本所得課税をどう考えるのかという考え方の整理についてお話ししたいと思います。お手元に資料を配っていただきましたけれども、ほぼそれに沿って報告します。

まず、概要に沿って話しますけれども、そもそも資本所得課税というのがなぜ問題なのか。私自身は、この資本所得課税は、総合課税(包括的所得税)のアキレス腱なのだとずっと思っています。それはキャピタルゲイン、減価償却の評価、資産価値の評価など、包括的所得税では所得を発生ベースで捉えようとしますから、このときにキャピタルゲイン等々を発生ベースで捉えて、それを課税標準とすることができるのかということです。

その問題がさらに現実的に複雑になるのは、70年代あるいは80年代、世界中で経験したインフレのときに、こういう発生ベースで資本所得を捉えることが非常に難しくなってくる。難しくなってくるだけではなしに、そのときにインフレの過程で、名目の支払利子が課税ベースから控除されますから、それが実は非常な不平等を起こした。資本所得課税は金持ちから取るというよりも、金持ち優遇税制になったということが、この問題の、つまり資本所得を総合課税で括れるのかということの火種になったわけです。それはある意味で非常に本質的な問題ですけれども、古典的な問題としてある。

一方、言うまでもなく資本の国際移動が激しくなってきて、税率の格差によって資本、特に金融資本は瞬時に動いていく。そういう問題が現実的には起きてきた。これはこの税調でもいろいろ議論されているように、単に金融資本だけではなしに、法人の世界で本店を海外に移してしまうとか、そういう形でも税率の格差が様々な節税行為、あるときには脱税行為も引き起こしている。そういう古典的な問題、そして超現実的な問題が起きている。

一方、多くの国では課税ベースを広げたり、個人の最高税率を引き下げてきているわけで、できるだけ資本所得への課税を歪みのないものにしていこうとしている。

端的な例として私が思っているのは、アメリカの個人年金勘定の401Kというのがありますけれども、あれは年金で規定されているのではなくて、個人所得の401条ですよね。そこの個人所得に対する措置として行われている。というわけで、流れとしては、ここで言ったように、課税ベースを広げて、最高税率を下げて、資本所得への歪みを下げていく。こうした流れにあるのだということです。

それでは、資本所得課税が全体としてどういうふうに考えられているのかということなのですけれども、俯瞰図的なことをまず申し上げると、あとレジメのほうに少し出てきますけれども、古典的には総合所得課税ということで捉える。その中身についてはあとでもう少し申し上げます。

それに対して対極にあるのは、資本所得課税を廃止して、消費に課税ベースを求める。これはファンダメンタル・リフォームという言葉でよく呼ばれています。そのファンダメンタルとは何か。つまりそれは資本所得に税をかけない。これは大きくは2つある。1つは、これも古典的にカルダーまで戻る必要はないと思うのですけれども、ミード報告以来出てくる支出税。これは所得から貯蓄を引いたものが消費なんだという形で、消費に直接税としてかける。付加価値税のように取引段階でかけていくのではなくて、個人の所得から貯蓄を引いた額を支出と捉えて、個人の直接税としてかける。これも伝統的な考え方の1つになっていますけれども、これがある。

それに対してフラット・タックスというのが出てきている。フラット・タックスというのはどういう考え方かというと、経済全体で見ると、付加価値にかける。付加価値も消費型でかける。つまり、企業のコストとして減価償却分ではなしに、資本取得費を全額控除したものを消費型の付加価値といいますけれども、消費型の付加価値にかける。ただ、仕組みとしては直接税的なイメージでかける。アメリカですから、所得税から出発していますから、どこかそこに引きつけたい。どうするかというと、要するに、消費型の付加価値を企業段階と消費段階に分ける。したがって、企業段階では、わかりやすいことでいえば、キャッシュフローが課税ベースになる。より具体的なことがもし問題になればあとでお答えするとして、要するにポイントは、消費型の付加価値を、企業段階では企業のキャッシュフローとしてかける。個人段階では賃金税としてかける。ただ、そこに多少の控除枠とかを認めているから、直接税的なフレーバーがあるわけですけれども、アイデアはそういうことです。

重要なことは、先ほどアメリカでご説明があったのですけれども、個人の税率と法人の税率を等しくしていく。したがって、そこでのアービトラージがなくなるようにしていく。そういうことです。

そういう意味で、今まで総合課税がいいのか、悪いのか。そして、それが対極として支出税、そして支出税と考え方は近いのですけれども、個人所得税のフレーバーをかませてフラット・タックスがある。それが1つの流れだったわけです。

先ほど来のご説明、今後の検討課題というのを聞いていても、もう一つの流れが現実的な形としてかなり今出てきたわけです。それは概念的に言えば、総合課税に行くというわけでもないよと。それから、資本所得税を廃止して、ファンダメンタル・リフォームするわけではない。ある意味で折衷的で、所得税を生かして、資本所得課税を改善したらどうだという発想になるわけです。

これも、私の見る限りですけれども、いくつか考え方がある。CBITというのは、Comprehensive Business Income Tax、包括的なビジネス・インカム・タックスとありますけれども、これもアメリカの財務省からのアイデアですけれども、どういうことかというと、こんがらがっているのは、先ほどの説明の配当にしても、利子にしても、キャピタルゲインにしても、企業サイドでかけたり個人サイドでかけたりするからこんがらがるのだと。これはフラット・タックスと違って所得という概念。所得という概念を生かしつつ、法人段階で資本所得課税を終わらせてしまったらどうだと。それはどうやってやるのだと。それは、企業で支払利子控除をやめさせるのだと。したがって、支払利子を控除させない新たに定義された課税ベースで企業にかける。そうすれば利子課税は企業段階で終わるではないかと。そして、そこで法人税をかけてしまうわけですから、これはさっきのブッシュの話に近いわけですけれども、配当課税も要らないではないかと。キャピタルゲインもその段階でかけるわけですから、ここは本当は議論が要るはずですけれども、済ましてしまう。そういう発想になったわけです。

その辺の流れと今回のブッシュ大統領の減税案がどう絡むかは定かではありませんけれども、アメリカ人は、僕の理解は、どうしても所得から税を立てていくわけですよね。そういう意味では、資本所得のややこしい問題は、今言った形で整理したい。キーワードは、法人段階と個人段階の税率は同じにしていく。キーワードというか、クリティカルなエレメントはそこです。

それで、もう一つ最近議論に出ているデュアルインカム・タックスというのがあります。これは理論的にどうこれをサポートするとか、しないとかあります。ただ、そういう議論もありますけれども、ここでは説明しませんけれども、どうも理論的にするのが必ずしも簡単ではない。つまり、資本所得に比べて労働所得があまりかかっていないとか、かかっているとか、そういう議論に行くわけですけれども、むしろ私は、デュアルインカム・タックスを考えるときのポイントは、やはり資本の国際移動の話があると思います。

それだけならば、上に言った問題は簡単に考えられるのですけれども、でも、ノルディック、北欧諸国では税は取りたいと。資本は移動するのだけれども、税は取りたい。社会保険料も込めてですけれども。そういう中で、ある意味で苦肉の策で生み出されてきたのがこのデュアルインカム・タックスなんだろうと。

それと近いものがオランダのボックス・タックスというのがあります。具体的なことはこの資料にいろいろつけていますけれども、アイデアを口で説明させてもらうと、デュアルというのは、そういう意味で、税率の格差で移動が起きやすいカテゴリーである所得、つまり資本所得とそうでない所得を分けるという意味ですけども、ここでバリエーションがいっぱい出てきます。

以下で紹介しているのがノルウェーのケースですけれども、私はこれは非常にきれいな形になっていると思います。アイデアはこんなような感じで、まずベーシックインカムというのを考えようと。そこは何でもありだと。労働所得も資本所得も、そしてキャピタルゲインもキャピタルロスも、足したり、相殺したり、それから持ち家のみなし家賃もみんな入れましょうと。全部入れて、しかも相殺した、つまり労働所得も資本所得も不動産所得も相殺したもの、しかも相殺し合ったものをベーシックインカムとしましょうと。そこには、たまたまノルウェーでは一律28%かけましょう、それで終わりですと。

ただ、それだけでは税は取れないので、労働所得というカテゴリーに関しては、さらに今度は控除とかを認めないでかけます。そういうアイデアです。

何が問題になってくるかというと、デュアルにしたときに、資本所得のカテゴリーをどう考えるか。そこは例えば家といってもそんなに簡単ではなくて、自分の持ち家とセカンドハウス、サードハウスまで入れるんですか。それから、キャピタルゲインもどう処理するんですか。その種の問題がいっぱい出てくるわけです。

ある意味でデュアルインカムの1つの極が今言ったベーシックインカムとその他の労働所得に分ける、私の理解ではパーソナルインカム・タックスに分けるノルウェーのケース。

それから、オランダは、そういうノルディックのケースをながめながら、ある意味で中間的なものを出してきたわけです。これはBox1、Box2、Box3とありますけれども、Box2はアクティブオーナーというか、特別なカテゴリーの資本家を相手にしていますからそれは省くとして、Box1は、ある意味でノルウェーのベーシックインカムよりも小さなカテゴリーを考えたわけです。あらゆるものを相殺し合ったらば、それはマイナスになってしまうかもしれない。それで、基本的には労働所得に持ち家のみなし家賃を足して、持ち家に関する支払利子までは引いてあげようと。だから、ある意味でデュアルっぽいのですけれども、最初のカテゴリーはそこまでですよと。そして、Box3が、あとに資料もあるのですけれども、貯蓄・投資からのものですよと。

ただ、興味深いのは、ここが最大の問題なのでしょうけれども、ここは相殺し合った所得を計算して、それに税をかけるということはやめましょうと。おそらくそんなことをしたら、課税ベースが細ってしまうということもあるのだと思いますけれども、非常におもしろいことで、1年間なら1年間の平均的な純資本残高を求めて、それの平均的なリターンが4%だと。そして、それに税率を仮に30%かけるとすれば、平均資本残高の1.2%をかけますという形で、ある意味でみなし課税をしたと。

したがって、申し上げたいのは、現実的なソリューションとして、所得税を生かして資本所得課税を改善するというときに、どこまでベーシックインカムのカテゴリーを広げるのか。労働所得、法人所得、利子所得、キャピタルゲイン、キャピタルロス等々、不動産収入、そこがポイントになっていると思います。

最後に申し上げたいのは、2ページに入りますけれども、[6]について申し上げたいのです。税務執行との関係でこの問題をどう考えるか。特に我が国で税務執行の関係で資本所得課税をどう考えるかというのが、私はこの問題を考えるときに、仕組みについてと同時に考えていくべきだと思っています。

納税者番号については、延々と議論をされてきているわけです。これについては、大切なことは、もちろん資本所得課税をするときに、納税者番号なしにやるということは、実質的に考えられないわけなんですけれども、徴税上の理由から頭ごなしにそれを納税者に押しつける限り、申告納税になじみの少ない日本では、納税者番号の普及は困難である。これは日本の譲渡益課税の申告分離のときに、もうすでに経験したわけです。特定口座云々の話です。

したがって、納税者番号を取得することではなくて、納税者番号を取得することによって、仮に確定申告時に1年間の雑所得とか一時所得とか、より重要なことは、利子所得や資本取引額が税務当局から仮に提供される等の利便性を高めることが私は重要だと。なぜ納税者番号をつけるのだと。それは意図的な脱税を図らない限り、納税者番号をつけたほうが便利だからだと。それでいいことがあるから納税者番号をつけるのだという環境をぜひとも作ってもらいたい。作るべきだと思います。

それと、先ほど来の資本所得課税の考え方をどう絡ませるかというのは、ここでは十分議論できませんけれども、単に取るためにではなくて、払うためにもあったほうがいいというカルチャーをつくっていくべきだ。それが今言ったような形で問題を整理していけば、できる環境ではないのかというのが私の考えです。

最後にあと1分ぐらい時間をいただいて申し上げると、[5]ですけれども、資本所得課税を考えるときに、今日ぐたぐた言いましたけれども、一番大切なことは、様々な税率、法人税、法人所得税、個人所得税、その他のいろいろな資本所得に関しても、税率に格差がないこと。税率格差があるために、つまらないタックス・アービトラージを起こさないことだと私は思います。

この点に関して、今度は日本の個人所得税のサイドですけれども、やはりそこに問題が戻ってくる。それは日本の個人所得税は、ここの税調でもさんざん議論していますけれども、課税ベースが様々な所得控除で侵食されているわけで、そのために限界税率をどうしても下げられなくできている。したがって、その意味で、資本所得課税の議論というのは、それは同時に個人所得の課税ベースの議論と並行して進めなければいけない。

その点で非常に参考になるのは、例えばアメリカで所得控除に代えて、Earned Income Tax Credits、イギリスではWorking Family Tax Credit、そしてオランダではそうした一部の貧困者をターゲットにした税額控除ではなくて、所得税の本則においてクレジットを入れて税率を下げてきた。というわけで、これも同時に目を開いて考えていくべきだと思います。

少し長くなりましたけれども、そういうわけで私の考えている範囲ですけれども、資本所得課税というのが租税の議論の全体的なピクチャーの中でどういうふうに今理解されていて、そして、それを日本で考えるときに、どういうふうに問題点を整理するか。そういうことをお話ししたつもりです。ありがとうございました。

委員

ありがとうございました。

資本所得課税の問題を中心に、それだけにとどまらず、非常に広い範囲、視野から、例えば租税回避の話であるとか、あるいは国際競争の話、それから様々なプロポーズされているいろいろな税の形、あるいは税務執行、タックス・クレジットの提案、いろいろとご説明をちょうだいしました。どうぞご自由にご質問、ご意見をいただきたいと思います。

委員

どうもありがとうございました。特に税務執行というところ、ここで今盛んに言われている電子政府であるとか、あるいは納税者、タックスペイヤーに対して非常にフレンドリーな、それぞれもうパソコン時代ですから、ものすごく発達していますので、その辺は納税者番号をボランタリーに取得するという場合に、非常に私は効果的な問題があると思うのですが、その辺は先生はどうお考えになっておられますか。

委員

例えば、イメージしたのはやはり特定口座の話ですよね。最初にこれは僕が思いついたもの。例えば僕自身が納税者番号をつけて株の取引をする。それが国税庁に投資的に把握されていれば、それを打ち出すだけで私の取引とキャピタルゲインが計算されます。細かな、どの株を売ったとかということはあるのでしょうけれども、計算できる。ただ、ポイントは、あのとき出たように、やはり申告分離といいながら、実際申告納税するとなると、大騒ぎになったわけですよね。

だから、そういう意味で、僕のお答えは、まずはあそこの申告分離のようなところで納税者番号をつけてくださいと。そうすれば、これについては、例えばあなたのコンピュータでID番号を入れて出せば、1年間のトランザクションがわかりますよと。そういうような仕組みから始めることもできたのではないか。そういう意味です。

委員

1つは、特定の金融資産を優遇するような税制というのは、アメリカとか、今の話ですとヨーロッパにあるのかどうかというのが1つです。

それから、2番目は、企業と家計の税率が等しいというわけですけれども、そのとき、大企業とか中小企業という区別をアメリカなどではやっていないのかどうか。

3番目は、90年代のアメリカの経済はすごくうまくいっていたわけですけれども、それはやはりITとかそういうところのターゲットとした何らかの戦略があったのか、それとも、別の要因でそういう企業ができてきたのかどうか。

最後は、日本の金融業を強めるとか、そういう産業政策的なところで金融課税というのを考えている国があるのかどうか。その4つをお聞きしたいと思います。

委員

1番目と2番目が基本的には……。金融だからこういう議論をしつつ、資本所得に対する優遇を行っているところがあるのかどうかということですよね。さっき言ったように、アメリカで401Kというのが典型ですよね。個人年金勘定に入って、ある期間は引き出せない。引き出すときにはペナルティーがある。それに対しては優遇税制を与えましょうと。最近それ以外あまり調べていないのですけれども、個人のベーシックな貯蓄に対しては非課税にするというのは十分あり得ると思います。

今日申し上げなかったのですけれども、日本で年金の問題ともろに絡みますけれども、401Kをどう考えるかというのはありますよね。確定拠出の個人年金をどう考えるか。そういう意味で日本でなぜ確定拠出の個人年金を考えるのか。それは日本で貯蓄を増やしたいというよりは、個人のポートフォリオに有価証券を組ますことが可能ではないかとか、そういう意味で戦略的に使える。ただ、401Kを今の日本の年金制度の上に乗せるということは、屋上屋に屋に屋ぐらいですから、それは整理が要ると思いますけども、そういう意味で、戦略的に貯蓄税制を考えることは私は可能だと。あるいはむしろしてもいいと思っています。

それから、法人に対する税率がどうかということで、日本は2段階ですか、基本税率と中小企業。アメリカはもっとあったと思いますけれども。これはだけど法人税の累進性というよりは、基本税率があって、中小企業に対する特典みたいなものですよね。だから、法人税に基本的に累進性を持たせるというよりは、あるカテゴリーのものに対しては特別措置をしているというふうに、それが必要かどうか私自身は疑問に思いますけれども、そういう考え方だと思います。

あと3点は十分答えるキャパシティーがないので、むしろ1番目のほうで、優遇というよりも、やはり資本所得課税をそれぞれの経済の現状で戦略的に使うことは可能だし、特に日本で401Kというのは、もっと戦略的に使える余地はあると私は思います。

委員

2つの点でごもっともだという感じでお聞きをいたしました。

1つは、納税者番号の扱い方でございますが、ご承知のように、昭和55年にグリーンカード制度というのを、とにかく立法化はいたしたのでございますけれども、あの場合でもマル優をやる人はグリーンカード番号をもらってくださいということで、利用者に限る発想ではあったのですけれども、やはり世の中から警戒されて、最後は法律を廃止せざるを得なかったということでございますので、利用価値のある利用者本意のものであっても、なかなか難しいとは思いますけれども、やはりそういうところから入っていって、いいじゃないか、便利じゃないか、というところに持っていくという発想がどうしても必要ではないかという気がするわけでございます。

それから、2番目はクレジットの問題でございまして、配当につきましては、要は配当控除がある。あれによって5%なり10%の税率軽減が行われているような見方もできるわけでございます。できるだけ資産所得も勤労所得も、やはり租税論からすると総合課税というか、単一課税が望ましいわけでございます。しかし、現実は昭和63年まではキャピタルゲインはおよそ完全非課税であった。62年までは利子もマル優でほとんど実質的に非課税であったわけでございまして、やっと十数年前に課税の世界に入ってきたというのがいわば率直な現状だと思います。

そういう意味では、やはりせっかく入ってきた世界ですから、基本的には資本所得も勤労所得も単一課税で総合課税が望ましい。しかし、そうはいってもなかなか現実の問題があります。そこはクレジットで調整するという1つの考え方があるのかなと。現実に配当控除があるわけですが。そういう感じでお聞きをしておったわけでございます。

それから、1つは質問ですけれども、資産所得の世界の中でも利子の扱いをどうするか。お話にもありました北欧諸国では、利子はかなり自由に引いていた。それがむしろ問題になってということのお話もございました。利子というものをどこまで控除できるようにするのか。現状の北欧諸国もやはりある程度限度を設けつつ認めているような感じもするのですけれども、資産所得を一元的に課税するにしても、普通の家計の利子、住宅ローン利子プラス一般的な利子というものをどう見るのか。およそ今の我が国の現行法では、ここは非常に厳しく扱っておるわけでございまして、それでいいのではないかと思いますが、そこの点についてはどんなお感じでございますか。

委員

前2点も議論すべきなのでしょうけれども、グリーンカードのときはいいことばかりでもなかったわけですよね。あのときなぜかというと、郵貯がまだあったし、そっちをちらちら見れば、なかなかグリーンカードに乗ってこれなかったということもあると思いますけれども、それはそれで、最後にご質問いただいたところが、おそらくこの小委員会でも大きな問題になると思います。

日本の利子課税というのは、ある意味で非常にプラクティカルな政策を続けているわけですよね。源泉で国が15%、地方が5%で20%、そこは貧しい人がもらおうが、誰がもらおうが、同じにかけてしまうという形でやってきている。

これもいろいろな問題をもっと検討しながら答えを出さなければいけないのでしょうけれども、そういう時代を続けるのかなというのがある。もちろん、持ち家に対する利子もあるけれども、これからある意味で人的資本を形成していくときに、例えばより高度な知識を身につけたいと。そのときに借金をして人的資本を形成していくというようなことも起きてくる。だから、そろそろ利子所得課税を、グリーンカードの次に、抜本的改革のときに、ある意味で「エイヤッ」という感じですよね。とにかく利子に対しては20%頭から取ってしまうということをやってきたわけで、これだけ成熟してきて、世界で資本所得に対して一元的に税をかけるというときは、そこは議論としては改革の俎上に乗るのではないかと私は思っています。

委員

途中ちょっと退席して失礼いたしました。

先生のペーパーの1ページ目の[4]の一番最後にあるCBITですね。先ほど事務局もご説明になったのですが、1992年で、ちょうどブッシュのお父さんの大統領の最後のときに提案が出たのですが、その時点では全く誰も議論もしないで、そのままボツになったような感じだったのですが、息子のブッシュさんが大統領になったらまた生き返ってきまして、ところが、具体的なブッシュ政権の改正案というのは、受け取った配当を非課税にすると。このCBITというのは、支払った利子を控除できなくするということなのですが、先生の考え方では、こちらのCBITといういわゆる企業課税のあり方、受け取った配当を課税しないという方式と、多少の関連性というのはあるのでしょうか。ちょっとご意見をいただければと思いますが。

委員

支払利子の点は明らかですよね。法人段階で支払利子は引かないで、法人段階でかけるということですよね。配当に関しても、法人段階で今言ったディバイズされた法人所得に税をかけてしまうということで、二重課税は考え方としては終わりですよね。キャピタルゲインは必ずしもそうではない。内部留保されて、さらにそれが所得を生むかもしれないから、そこは必ずしもそうではない。だけど、支払利子と配当に関しては、僕はシンプルに考えすぎているのかもしれませんけれども、今言った考え方で課税すれば終わる。課税が1回だけだから。

委員

その効果というのは、やはり違うと思いますけれども、そこはいかがでしょうか。

委員

何の効果ですか。

委員

CBITと、受取配当を非課税にしてしまうと。

委員

企業重課になるのではないかと。企業が重い負担になるのではないかという反論が出るでしょう。日本だってそうだね。

委員

それは誰の所得かということですよね、根っこの問題は。経済学者はそういうふうに考えてしまうんですけれども、法人のものだとは思いませんから。

委員

2代目ブッシュになってまた同じ前の報告書の税制が注目されているのは、どこに魅力があるのか。やはり単なる選択肢として、2回課税するのを1回課税するという端的な手段であると、それに尽きるのでしょうか。

委員

というか、もっとイミデートな問題は、株価をどうするかとか、現実的にはそっちのサイドなんでしょうけれども。

委員

ジュニア・ブッシュはCBITですか。単に彼は二重課税を取って活性化しようということで、CBITは関係ないんじゃないですか。関係ないから今の委員の質問は関係ないんですよ。

委員

ただ、クリントン政権には出てこなかったものが、ブッシュの代になったらもう一回復活してきて……

委員

おやじの発想じゃないでしょう、これは。

委員

それはそうだけれども……。だから、少なくとも選択肢の1つとして議論する人がかなり現れているということですけれども、どうなんでしょうかということなんです。ブッシュ案と比べた場合に。

委員

92年の?

委員

ではなくて現在の。

事務局

先ほどの米国制度の動向のページで申しますと、3ページでございます。2段に「大統領提案」と「現行」になってございます。もちろん法人間の問題でありますからいろいろございますが、あくまで法人と個人という段階での整理をいたしますと、CBITは法人段階の利払(費用)になっておりますが、費用にしないということになるわけでございます。ということで、この段階で35%の法人税を取ってしまう。受け取った個人段階では課税をしないということで、網掛けの部分が個人段階のところから利益処分の段階にシフトするということで、基本的には今回の大統領提案というのは、CBITから利払いの取り扱いを除いたのが基本的な姿になっているということだと思われます。

委員

ありがとうございました。

委員

1つだけむしろ逆にお聞きしたいのですけど、先ほど会長がおっしゃったみたいに、日本だと、利子とか配当とかを課税をしないとか、あるいは企業のほうに回してしまうということになると、むしろ逆の問題が起きるというようなお話だったのですけれども、それはアメリカの場合には資本所得も基本的な考え方としては総合課税ですよね。日本の場合にはかなりの部分が分離課税になっていますよね。事実上軽減税率で済むような。そこを考えたときに、アメリカでさえ分配上の問題がいろいろ問題になっているときに、座長がこんなことを言うのはあまり適切ではないのかもしれないのだけれども、一体化ということを言って、いわば資本所得を軽減していくという方向を出したときに、所得分配上の問題は日本はいろいろ文句が出てくるという可能性はないのでしょうか。

委員

難しい問題というか、資本所得課税をまさに皮肉な行動でヨーロッパは出発したわけですよね。資本所得課税がむしろ不平等だと。それから、例の支払利子をどうふさぐのだというところから出発してきた。ただ、税は欲しいという形で、僕の見る限りプラクティカルなソリューションをしたと。

アメリカの場合は、ある意味で特殊性は、連邦政府で付加価値税がないわけですよね。あの国はどうしたって個人の所得税と法人税で心中しているというか、そこでどうしてもやっていかなければいけない。それでやっているのでしょうけれども。おっしゃることはよくわかります。ベーシックインカムのほうが例えば30%で、労働所得のほうは高いじゃないかということで、委員のおっしゃるのは、税制として耐えられますかということですよね。

委員

まあそうですね。

委員

僕はむしろ、じゃあ総合課税でやれるのですかと。総合課税をやるなら、それならば今のままの所得税でいったら、個人の限界税率は高いですから、そんなので資本所得課税ができるのですかと。今の50%のような税率で資本所得の総合課税に入り込んだら、とんでもないことになってしまう。だから、それに対する答えは、やはりたたずまいというか、自分の所得税をきちんと直すこと。

それから、もう一つそれでも格差が、労働所得が起きるとしても、でもそこは歳出の面を考えて、現実的に資本移動の問題と、ヨーロッパで高いといっても、それはソーシャル・セキュリティー部分が高いわけですよね。日本でも年金課税がこれから出てきますけれども、そういうことを考えると、耐えられるかどうかというのは、政治的な判断というのは難しいけれども、やはりエコノミストとして言いたいのは、総合課税でいくならば、たたずまいをまず直しなさいと。それでも、Dual income taxes的なものになれば、そういう格差が起きます。でもその格差は、資本移動の問題もあるし、ベネフィットが何と言ったって社会保障で出てくるわけですから、それは個人も受け入れるべきだという主張ですけど。

委員

私があまりしゃべるべきではないですけれども、本当は私が言いたかったのは、日本で総合課税をやるのは現実的ではないのではないかという気がしていて、むしろ今問題になっているのは、一体化とか日本型金融税制とかということを議論するときに、先ほど委員が問題にされたのは、1つが北欧なんかの節税の問題、国際競争の問題、課税環境の問題、それから、表立っては触れられなかったですけれども、金融所得間の中立性の問題。

おそらく日本の場合は、国際環境は北欧ほど深刻な問題かどうかわからない。それから、中立性がどのぐらい大きな問題になるか、もちろん問題だとは思いますけれども、それを表に出すのが本当に国民的な意識としていいのかどうか、特に所得分配のことを考えるとよくわからない。課税環境と納番は非常に重要だと思うのですけれども、お聞きしたいのは、節税のところで何か言えることは日本の場合はないのでしょうか。つまり、例えば事業所得とか、あるいは法人税とか、とりわけ利子で相殺してしまっていて、法人所得などにしていないとか、事業所得にしていないという部分、そういう部分で節税しているということはあまり問題にならないんですか。

委員

それを議論すると、僕などの考え方は、赤字法人とかの話ですよね。そうなると、いわゆる法人成りの話ですね。本来なら、アメリカから見れば、二重課税されるのになぜ法人成りするのだと。矛盾ですよね。それが矛盾でないのは、やはりたたずまいの話をすれば、個人所得サイドで控除が大きい、給与所得控除がものすごく大きいということに戻ってくる。議論の方向は、個人所得の控除、特に給与所得控除、社会保険料控除等が猛烈だということが根っこにあると私は思っています。

委員

わかりました。

ほかによろしいですか。よろしければ、これで委員へのご質疑を終わらせていただいて、続きまして、別の委員から、「経済理論とともに考慮すべき若干の法的視点について」というテーマでご説明をお願いいたします。

委員

そこにございますレジュメに従いまして、少し短めに10分強ぐらいでお話を済ませたいと思います。

先生と租税論に関する考え方は、私は経済理論的にはほとんど同じなんですけれども、ロジスティックスを考える法律家ですから、具体的に出てくる結論が大分違ってくる。発想は一緒でも執行を考えると中身が違ってくるというところがございまして、そういう点がけっこう重要なのではないかという気がいたします。

金融の問題、株安の問題とか不良債権処理の問題を、私は税制でそう簡単に解決できると思っておりません。新聞のインタビュー記事にはそうだと書いてあったのですが、そういうことはありませんので、もうちょっと細かく詰めていくことが必要だと思います。

いくつかの論点で分けて書きましたけれども、まず、これはなかなか経済の方は理解したくないことなのかもしれませんけれども、経済学的に正しい理論が憲法などにより制約を受けることがあるということでございまして、憲法が悪いと言えるのであれば、それは別ですけれども、そうではない限り、憲法の制約のもとで経済学的に正しい理論が屈服させられることが起きてきます。

二元的所得税も、これは考え方は様々でしょうけれども、例えば同じ所得を勤労所得として得ている人と、資産所得として得ている人で、どうしてそんなに扱いが違っていいのかというふうに考えれば、法のもとでの平等は憲法14条1項の問題ともなり得ないわけではないだろうというようなこともあります。

それから、租税であることから来る制約というのは、税金というのは、例えば悪いことをしたからかけるという発想はないわけで、だからピグー税というのは税金ではない。ピグーが勝手に税金だと名前をつけただけで、それは税金ではない。課徴金のようなものなのかもしれません。そういう制約もあり得ます。

それから、国際法上の制約で課税できない主体というのが世の中に存在しまして、例えば外国の国家とか、外国の中央銀行とか、いろいろあるわけですが、それを利用した課税逃れというのもまた別途仕組めますけれども、これは国内法をどう変えてもだめなわけですね。そういう縛りがいろいろあるということ。

それから、もう一つ憲法の制約とともに手続的制約というのがございまして、経済学的に望ましい租税制度が手続的制約により実現されないことはままあるわけです。立法された制度がそのまま実現されるのだったら、法律家は要らないわけでして、立法された制度はそのまま実現されるとは限らない。ここであまり強調するのもなんですが、執行できない制度は制度ではないということで、けっこう執行できない制度は理論的に美しいものですから、そのまま提案されるのですが、執行できないのですから意味がない。それは悪いということではなくて、理論的には美しいかもしれませんが、やはり現実を考えなければいけないということがあります。

自分の専門から考えますと、タックスシェルターを用いた課税逃れ圧力というのは、その圧力は非常に高いわけでございまして、これがいろいろなところで法律を変えるむしろ要因となっているということでして、そのための業界が存在いたしますし、非常に優秀な方が課税逃れ業界――課税逃れ業界と言うとちょっとあやしいですが、節税業界に身を投じていらっしゃるという現実がありますので、これも前提としなければいけないということ。単にみんながのんべんだらりんと節税しているのではなくて、本当に気合いを入れた節税が行われた場合に、なかなか執行の対応は難しいということです。

所得類型との問題ですと、原資産に着目した課税とキャッシュフローに着目した課税と書きましたけれども、金融取引を租税のサイドから見る際に、法律的な見方とファイナンス的な見方と2つあるのだろうと思います。私法的見方というのは、民法や商法によりキャッシュフローに色づけがなされるわけです。これは利子だ、これは配当だというふうに。利子とか配当とかというのは、経済学的に決まるのではなくて、民法なり商法によって決まるわけであろうと。ファイナンス的見方というのは、何であれ単なるキャッシュフローだと。キャッシュアウトとキャッシュインがあって、あとはリスクだけの問題だということなのでしょう。

租税の法律をつくるときに、このいずれの見方から制度を仕組むことも理論的には可能です。ファイナンス的な見方に基づいて所得税の制度を仕組む場合には、要するに民法、商法を全く無視して、キャッシュフローに独自に租税法で名前をつけて扱いを決めるということになりますが、それは多分非常に取引費用を増大させて、できないことだろうと思うわけです。

したがって、現実は、民法、商法で性格づけられたことに従って一定程度課税を考えざるを得ないというのが常識的になります。したがって、法的性格別に、商品別に課税が異なるということが起こってくる。利子のルートによればこうだし、配当のルートによればこうですということが起こってくるわけです。

すると、経済学的に見ると同質のものが課税上異なる取り扱いを受ける場合というのは必然的に生じてくるわけで、これをいいとか悪いとか言っても、制度がそうだから、それが嫌なら所得税法を例えば1万2,000条ぐらいの条文にして、ものすごく細かく決めていくしかないわけですが、それはできないわけです。

例えば、昔は動的リスクについてはデリバティブ、静的リスクについては保険料ということで、単純だったのかもしれませんけれども、今は保険料とデリバティブの差というのはほとんどありません。そうすると、保険料のルートに乗った上にはこうで、デリバティブのルートに乗った場合にはこうでということになってくるわけですが、いろいろ難しい問題が出てきます。

それから、例えば、他社株転換可能債で確定金利11%がついている。今のご時世で11%の金利がつくはずないですが、11%のうち実際の利子部分は0.1%で、残る10.9%はオプション・フィー、リスクを取った対価だということになるわけで、全体が11%が利子ということで性格づけられていれば、利子として課税するということもある程度仕方がないというところがあるわけです。

この民法、商法に引きずられる結果として、課税上異なった扱いが出てくるというのが所得課税の最大の問題の1つですが、簡単な解決方法は存在いたしません。その都度改正していくしかない。つまり、所得分類は困難であり、単純に二元的所得税とか一元化論とかいってもできない。すべきでないと言っているのではなくて、できない、やれるものならやってくれということになるわけではないかと思います。

それから、同時に損失の引き起こす問題というのがありまして、マイナスをどこまで考慮するかということも非常に重要です。理論上は消費でない純資産減少は、例えば支払利子のようなものは差し引かなければならないわけでしょう。しかし、所得類型の存在との関係で、収入金額と関連する利子だけが引かれるというわけで、例えば消費のための利子等は引けない構造に日本ではなっております。これがいいか悪いかはわかりませんけれども、そうなっているということです。

それから、人為的な損失の取り扱いというのもございまして、私はこれを専門にやっているわけですが、人為的に損失をつくり出すことは、いとも簡単とは申しませんが、可能です。経済的には損失でないものを、損失であるかのごとく民法上の契約書をつくる。それに応じて課税がなされるわけですから、実際は損失ではないのに、損失であるとして課税上引けるという、これが課税逃れ商品の基本的な発想で、そういう業界があるくらいですから、これはいろいろなやり方で可能だということです。

それを組み込んだ商品を販売するというのは、非常に繁栄していたわけで、今、アメリカの連邦議会のジョイント・コミッティー・オン・タクシェーションにエンロンの報告書が出ていますが、エンロンは飛ばしをやっていただけではなくて、同時に課税逃れをやっていたわけです。飛ばしをやりますと黒字が出てきますから、課税上赤字にするためには、同時に課税逃れもしなければいけないという非常に複雑なことをやっている。これは1,000ページぐらいの報告書が3巻ぐらい出ています。おもしろい話ですけれども、ここまで一生懸命やられたら、仕方がないのかなというぐらい巧妙にできています。これも制度の限界かもしれません。しかし、アドホックに対応していくしかないわけで、一元化しても逃れられるものは逃れられるという意味の差別は残るということです。

具体的な論点ですが、金融所得とは何かとか、いくつかの論点を書きましたけれども、金融所得を例えば一元化する方向に行く、そのこと自体は正しいことかもしれません。しかし、金融所得の定義というのをどうしたらいいのか。金融所得の前提としての金融資産や金融取引を定義する必要があるわけですけれども、果たして可能なのか。

ここで言う金融所得というのは、先ほどご説明された先生は資産所得とおっしゃいましたけれども、ここは金融小委員会ですから、ちょっと意味が違うのかもしれません。本当に経済学的に言うところの実物に対する金融を意味しているのかどうかもわかりません。単純に投資所得という意味なのかもしれません。その辺もちょっと区分しなければいけないわけです。

また、実物資産への投資と金融資産への投資のバランスというのも考え始めますと、非常に難しい。これはばらばらであっていいということにはならないはずですね。金融小委員会で金融資産への投資については課税がそろったとしても、実物資産への投資はそうでもないということで果たしていいのかという問題、これは深刻な問題としてあります。先ほどご説明された先生のような資産所得という切り分けからいうと、両者はバランスがとれていなければいけないということになるのだろうと思います。

それから、金融所得は収益から費用を引いたものだという、そういう包括的な計算方式をつくり出すことが可能かという問題があります。明治20年勅令第5号で日本の所得税が始まったわけですが、実質的には明治32年の所得税法から所得類型をずっと維持してきております。それが理論的であるかどうかはともかく、100年間以上動いてきたものを急に変えるというのは、制度のイナーシャーがございまして、なかなか難しいわけです。租税制度全体をいじらなければいけないということになるわけですね。

所得の性質の差を念頭に所得類型ができているわけでして、私などは、これを授業で説明するのはなかなか難しいことだと思っていますが、しかし現実はこうできていまして、執行もそれで動いているわけで、特に実現主義の制約とかいろいろなことがございまして、これを簡単に破れるかどうかは難しいところです。

それから、所得類型の背景にあります所得を生み出す私法上の契約、労働契約と株式投資の契約はやはり違うわけで、どう違うかと言われても困るのですが、多分、それぞれに違うところがあるのだろうということで、それも100%無視できるかどうかわかりません。

仮に金融所得というものを包括化できたとしても、勤労所得とのバランスが残り、このことはおそらく説明不可能だろうと思います。のみならず、投資先、仲介機関、投資家の全段階を含んだ課税方式のバランスを考えるというのが、あるべき姿であろうと思われます。利子ルートをとった場合と、配当・株式譲渡益ルートをとった場合、保険金ルートをとった場合、それぞれ預金者段階、銀行段階、貸付先段階というようにいろいろな段階があって、それを総合的に考えて、投資と税引き後リターンのバランスというのを考えることになるわけですが、そんな難しいことが我々にできるのかということもあります。

したがって、例えば預金者なり投資家段階だけの税率を部分的にそろえることにどれだけの意味があるのか、なかなか難しいわけです。おそらくあまり意味はないのではないか。単に10%にそろえる、あるいは20%にそろえると、それで中立的かというと、とてもそうは思えないということです。

それから、差し引くべきマイナスの問題ということで、投資所得から引く経費の範囲、これをどのように配分するか。業務と投資、消費と投資分にとか、そういう話ですね。どう証明するかという問題も起こってくるわけです。

その上に損益通算の問題が出てまいりまして、金融取引でマイナスが出た場合に、それが勤労所得を削っていいのかという、損益通算が必要かという問題があり得るわけです。この辺もいろいろな考え方があるのだろうと思います。さらにその上に、事務局がおっしゃったでしょうか、人為的に損失がつくり出される可能性を封ずるために、他方で損益通算を広く認めながら、片方であやしい場合には徹底的に制限するというのが世界的な傾向ではないかと思いますので、この辺も制度を複雑にする要因になります。

それから、法人税で時価主義が来た場合に、個人所得税で時価主義をどうするのかという深刻な問題がありまして、期末に値洗いして申告してくれといっても、個人納税者にそれができるのか。しかし、しないと、オプションをもらったけれども、オプションをもらっただけだから、期末には価値がないよということで課税逃れも出てくる。しかし、時価主義の値洗いを強制すれば、多分制度はもたなくなるという、これが実は一番大きな問題かもしれませんけれども、深刻な問題があります。

それから、執行の問題がいくつかございまして、これは先ほど先生がおっしゃいましたけれども、個人納税者段階で課税することは困難であると。自発的に納税者番号を使うようにしたところで、そもそも納税者番号が嫌なのではなくて、申告に行くこと自体が嫌だというのが、去年の特定口座のことであまりにも明らかになってしまって、税務署に行くこと自体がそんなに嫌われているとは思っていなかったものですから、ショック……、あまり好きな人はいないんですかね、よくわかりませんが、とすると、番号を強制的に付与しようが、すまいが、なかなか難しいということになります。小口多数の納税者に対して課税するか、大口少数の納税者に課税するかというところのバランスの問題ということになります。

あといろいろありますけれども、執行の問題というのを、その都度制度改正のときに十分に考えなければいけないということだろうと思います。

まとめですが、租税制度というのは分析するために存在するわけではありませんで、国家活動に必要な財源の調達のために存在するわけですね。ただ、この絶対的な目的、憲法によって国民の義務ですから、憲法によって与えられた義務を履行する際に、できる限りあまり余計なインパクトがないようにしましょうというのが、おそらく租税制度の中立性とかということの意味だろうと思いまして、税収の上がらないような租税制度というのは、憲法30条に反するとは言いませんが、租税制度ではないということになりかねません。

したがって、経済理論、これはかなり勉強しなければいけない美しい理論もありますし、大局的に見て、長期的に見ますと正しいわけでしょう。しかし、制度的な制約がいっぱいございますので、法律制度を上手に組み合わせるというところが必要になってきまして、理論があるからそれで押していけるというものでもないという、よくわかりませんが、つらいところがあって、法律家は悩むわけです。

以上です。

委員

短時間でまとめていただきまして、ありがとうございました。

いろいろ制約についてお話ししていただきましたけれども、どうぞご質問、ご意見等ちょうだいできればと思います。

事務局

先ほど最後のところでおっしゃった国家活動に必要な財源の調達のために存在する課税は、確かにそういうところがあるのですが、先ほどのブッシュの減税のところの議論で、出なかったところが1つあると思うのですけれども、これが果たして二重課税の撤廃のことなのかどうかということを検討する必要があると思います。

それは、そもそも我が方の法人税の税体系というのは、擬制説に立っておって、受取配当の益金不算入で調整しているわけでしょう。しかし、一方でアメリカにおける税体系が私はどういうことになっているかわかりませんが、実在説というような税体系になっているというように聞いているわけです。そうすると、むしろ現行のやりぶりがあってもおかしくないということになるわけで、ですから、今申し上げたのは、確かに国家活動に必要な財源を調達するのに今課税があるわけですが、しかし、そこにある程度の税の体系があってしかるべきだと考えるのですが、このあたりはどうでしょうか。

委員

おっしゃるとおり、実在説、擬制説の問題というのは、よくよく考えると、どつぼにはまるような難しいところがあります。

先ほどの投資先と仲介機関と投資家の全段階を統合的に考察するというのは、これはある意味擬制説的な発想なんですね。どのルートをとっても同じようにするということが、アメリカの政策論をする人たちは、常にこれは考えていらっしゃるのであろうと。ただ、どういうわけか、法人税になりますと、途端にクラシカル・メソッドで実在説的なところがあるのでしょうけれども、あれも法人の精算の段階まで考えると、1986年まではジェネラル・ユーティリティー・ドックというのがあって、精算の段階で二重課税が排除できるようになっていたという説例も読んだことがありますけれども、そこは理論を使ってみんなが自分に有利な制度を引っ張ろうとしているという圧力団体間の構造のような感じがどうもしてしまうのです。「理論は使うものであって、信じるものではない」というふうに私習ったのですが、どうもそういうのがかいま見えるところがあって、ちょっと難しいですね。

ただ、これは強く申し上げますが、憲法30条は非常に崇高な国民の義務でございまして、これは絶対に必要なことだろうと思っておりますけれども。

事務局

おっしゃることはよくわかるので、私の立場ではむしろそういうことを強く言うべき立場なので、私が野党のときに、よく主税局にそういう説明をされたものですから、そのことを申し上げただけですが、確かにそういうところがあるのだろうと思います。しかし、ある程度の税の体系というものもしっかりやっておかないと、それを無視した形で税制改正が行われるということについては、それはアローアンスがあるのだろうと思いますけれども、それを逸脱するといったところまでは、なかなか難しいのではないかと、私は個人的にはそのように思うのですが。

委員

何かつけ加えることは。

委員

大きな問題全部を答えられませんけれども、その時その時の企業の置かれた環境というのもあると思うのです。高度成長のときみたいに、企業が含み益を持っていて、そして、株価も単独の決算でついて、経営者というのは、株価を適当な水準につけていくことができた。ところが、今は環境が変わってきて、株価がこういうことになってきているし、そうなると、投資家に報いる方法としては、やはり配当というのは重要になってくる。配当が重要になってくると、それは当然配当課税ということで一気に問題が出てくるという形で、それを翻訳していけば、現実的には企業の所得というのは次第に個人段階で捉えていくような流れになってきている。

税制は単に経済学者が頭で、先生にさんざん言われましたから、頭で考えているのではなくて、現実的にも配当課税がなぜこれだけ今重要かというのは、それは基本的には昔ながらの含み益、単独決算というのが変わってきたという流れの中では、今、我々がここで議論している問題というのが本流になってきていると思います。

委員

さっきから出ている二重課税についての感想で、私いつも同じことばかり言っているのですけれども、先ほど事務局からご説明がありました2ページかどこかに、アメリカは今後は35を1回で終わりであると。今までですと、22が個人で来る。そして、日本は30があって5が来るというのがあったと思うのですけれども、二重課税の問題を考える上で、二重課税制度というのは、一重目は必ず当期課税なんですね。したがって、2ページの図の左側にある通常の所得課税と書いてある部分は、法人の分が飛んでいるのですけれども、35、35というのは、常に当期課税であって、それは自分がもらったか、もらわないかは関係なくて、所得が発生すれば、その時期に35はいただく。

こうなっているのですけれども、二重目は、当期課税ではないんですね。受取時課税なので、例えば日本とアメリカの35の図でいいますと、アメリカは35は当期いただきます。それで終わりです。日本は30と5だと、数字は合っているようですけれども、30は当期いただきますけれども、5は分配されるまでは、先ほどの先生の法人が時価課税とかという話を別にしますと、個人は受け取るまでは課税されないんですね。それを現金化する方法は、配当として受け取るか、あるいは売ってキャピタルゲインにするかという両方あるのですけれども、配当も現在の商法を前提にすると、少なくとも制度的には株主総会で決議しますから、つまり二度目の課税のタイミングというのは、受け取る人が支配できるという構造になっている。これはどこの国でも比較的共通なんです。

そこで、物事を考えるときに2つ課題があって、1つは、税率とかいろいろな問題がありますけれども、当期課税がいいのかどうかというのが1つの課題になるということだと思います。「二重か一重かということよりも」という言い方かどうかわかりません。ただ、もう一つの問題は、分配時課税、すなわち分配のタイミングを納税者が選べる。今の例でいいますと、配当をいつにするか、あるいはいつ売るかというのを選べるときの、これは選んだときにはそれは利益になるかもしれませんし、売る場合には損になるかもしれないのですけれども、そういうものについてどういう態度をとるか。

その点について、アメリカは後者の点について、内部留保についても両面、すなわち配当で受け取ることもあり得るし、キャピタルゲインになることもあり得るというので、いわば両方調整しようとしているんですよね。その辺をどう考えるかという問題があって、これはいろいろな組み合わせがあるのですけれども、その2点が私は重要なポイントになると思います。

委員

経済学者はいろいろと考えなくてはいけないたくさんの側面があるということだろうと思いますが、ほかによろしいでしょうか。

委員、よろしいですか、何か会計の立場から。

委員

先生の3番のところで、私法的見方とファイナンス的見方という分類をされておられまして、今、金融市場で起こっている商品のつくり方、ないしは投資家の行動というのは、基本的にはファイナンス的見方で取引が行われているはずなんですが、それに対して課税が私法的な見方で、先生のお考えですと、その間を大きく埋めることはできないと。したがって、あくまでもモグラ叩きといいますか、ある現行の制度の上に不十分なところを直していくしかないというのが現実的な方向なのかというご提案というふうにお聞きしたわけですけれども、そうすると、あと出てくる問題というのは、それと先生がご指摘になられた、いろいろな仕組みをつくることによって税を逃れる、ないしは仕組みによって損をつくるということをどこまで防げるか。そういうイタチごっこというのは果たしてどこまで可能なのかというのを、非常に今日強く感じたわけです。

それから、もう1点は、個人レベルで、先ほどオプション料なんかは値洗いというか、時価評価をしてはどうかという、それが課税技術としてできるかどうかということなのですけれども、発生時点での課税ということもあるのですけれども、いわゆる金融所得の特徴というのは、本来は発生した時点でつかまえるということだろうと思うのです。そこの理想と現実をどう折り合いをつけていくのかというのが、今後の論点かなと思います。感想で恐縮です。

委員

法律家というのは常にイタチごっこを繰り返して、個別の問題が出てきたら裁判でというメンタリティーですから、それができるということは重要だと。

それから、もう一つ時価主義ですが、時価主義が個人段階で貫徹できるなら、法人税は要らないわけですね。内部留保されれば株価が上がりますし、将来キャッシュフローの予想が上回れば株価が上がる。配当を受け取ろうが、受け取るまいが、利益で決まりますから、さすがに法人税廃止までは、理論的には正しいのかもしれませんが、なかなか厳しいということです。

委員

そろそろ時間になりましたので、このあたりで終わりにしたいのですが、最後に今後の予定を申し上げます。

まず、4月末に税制調査会の調査出張が予定されておりまして、スウェーデンとデンマークに中里委員と私が、それから、アメリカとカナダに石会長と水野忠恒委員が参ります。金融・証券税制と年金税制を中心に調査を行う予定となっています。

次に、日程ですけれども、5月には小委員会が2回予定されています。5月16日、金曜日の10時から12時の午前中です。時間が違いますのでお気をつけください。それから、5月23日、金曜日、1週間後ですが、これの14時から16時を予定しております。

16日は北欧、北米の出張報告を行わせていただくとともに、それも参考に今後の金融に関する所得の捉え方、あるいはその性質、リスクに対する認識等を中心に議論を行いたいと思います。

23日のほうですが、ここでは引き続き皆さんのご意見をいただくとともに、納税者番号制度についても議論を行いたいと考えております。

ただいま申し上げましたのは予定ですので、事務局を通じて各委員にプレゼンをお願いすることもあるかと思います。皆さんのご意見を積極的に中期答申に反映させていきたいと考えておりますので、どうぞご協力をよろしくお願いします。

それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会