第10回金融小委員会 議事録
平成13年11月27日開催
〇委員
第10回金融小委員会を開催いたしたいと思います。
今日は、小委員長がちょっと御都合により御欠席ということになりますので、私のほうで代理して司会をさせていただきます。会長のほうもやはり所用で御参加できないということですので、こういうことになっております。
本日は、前回に引き続きまして、貯蓄優遇税制や投資信託に関する税制のあり方について、議論を行ってまいりたいと思います。
本日の審議に入る前に、まず、租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案が国会で可決成立したことをお伝えいたします。
これについては、事務局のほうに御報告をお願いしたいと思います。
〇事務局
いまお話がございましたように、当小委員会で御議論賜りました株式譲渡益課税の関係の税制改正法案につきましては、10月30日に国会に提出いたしまして、衆議院が11月8日、参議院がきのう11月26日に可決成立いたしまして、公布日を今週の金曜日、11月30日にするということで進んでおります。おかげさまで、ありがとうございました。
それで、その30日をわざわざ申し上げましたのは、1,000万円までの購入株式の譲渡益につきまして、一定の要件のもと非課税にするという特例措置を今回の税法のほうに入れてございますが、その購入のスタート時点を、「公布の日から」となっておりますので、したがいまして、30日以降、来年末までに新たに購入した上場株式について、その特例措置が適用されるというようなことでございますので、30日公布ということで申し上げました。
審議の概要でございますけども、審議の過程で、当小委員会からいただきました意見というのが非常に多く取り上げられておりました。金融小委員会の「意見」と法案のここの部分が違うのはなぜかというようなことが、問題視されるような御指摘として国会でありました。特に100万円特別控除につきましては、今回の法案のほうでは延長しておりますけれども、小委員会の御意見のほうは、廃止または縮減ということをいただきましたので、そんなことを取り上げられたりもいたしましたし、一方、逆に源泉分離を廃止して申告分離に一本化するということの意義づけですとか、その前提となります諸々のインフラ整備のことにつきましても、かなり質問がございまして、その都度、政府税調のこの御意見というものがいわば軸になって、質問者側と答弁者側の議論がやりとりされたというようなことでございました。
それから、衆議院、参議院とも民主党から、先ほど申し上げました緊急投資優遇措置につきまして、これを削除するという修正案が出まして、修正案自体は否決になりましたが、民主党自体は、全体としてはよかろうということで賛成をして、結果、かなりの多数の賛成で成立したというような経緯でございました。
〇事務局
地方税法等の一部を改正する法律案につきましても、いまほどの租特の改正の審議状況に大体日程的にも沿いまして順調に審議をいただきまして、昨日、参議院の本会議での成立ということでございます。まことにありがとうございました。
質疑等についても、同様な経過がございます。地方税につきましては、この法律の成立で源泉分離課税選択の場合に地方税が非課税になっているという措置の期限を、3か月前倒しをして、税率等について手当てをするということができました。この間、当小委員会での御意見をベースにして御議論をさせていただけたことを、改めて感謝を申し上げます。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございます。
この御報告について、何か特に御意見、御感想等ございましたらいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
それでは、次に前回11月13日の小委員会において、委員のほうから御質問いただきました「諸外国の死亡保険金等に係る相続税上の取扱い」について、これはちょうど未定稿となっておりますが、紙が資料の中に入っておりますので、こちらをご覧になっていただいて、これについて事務局のほうから報告していただきたいと思います。
〇事務局
席上配付資料の中にあります横長の2枚紙で、『諸外国における死亡保険金に係る相続税の扱い』という、この紙で簡単に前回の御質問に関しまして御説明させていただきたいと思います。
これは(注1)にありますように、いずれの場合におきましても、被保険者、保険料の負担者、これがいずれも被相続人の場合を想定しております。
日本、アメリカ、ドイツ、フランス、この4か国は基本的に相続税については課税という取扱いになっておりますが、フランスでは、被相続人の被保険者の年齢及び払込みの期間というものによりまして、若干取扱いが違っております。被保険者が70歳未満のときに払い込まれた保険料に対応する額については、100万フランという控除がありまして、それを控除の上に20%の税率で分離課税という取扱いになっております。また、この被保険者が70歳以上のときに払い込まれた保険料に対応する保険金額につきましては、20万フランを控除の上、通常の累進税率で課税ということで、ちょっと取扱いが異なっておりますが、いずれも課税という取扱いです。
イギリスにつきましては、保険金受取人が被相続人である場合は課税、他方、保険金受取人が相続人である場合には非課税という取扱いですが、ただし、この場合でも、被相続人の死亡前7年以内の支払保険料の合計額に対しては課税されるということになっております。イギリスはもともと贈与税さらには相続税について、その贈与又は相続開始前の期間、それぞれ7年について累積して課税するというやり方をとっておりますので、ここでそれと同様7年という期間が出てまいります。
おめくりいただきまして、次のページが死亡退職金に係る取扱いでございます。これも(注1)にありますように、被相続人と雇用主との間で、死亡退職金の支払いにつき契約がなされているケースというものを想定しております。
日本は、御案内のように500万円かける法定相続人の数という非課税がございますが、それ以外のところは原則課税と。
アメリカは非課税ですが、ただし、受取人に対しては所得税のほうで課税が行われております。イギリス、ドイツは相続税が課税、フランスはアメリカと同様に相続税は非課税ですが、受取人に対して所得税で課税するという取扱いになっております。
また、これらの諸外国におきまして、こういった死亡退職金という制度が、いうなれば労働慣行として一般的かどうかということは、やはり個別のまさに契約、ケース・バイ・ケースというようなことになりますので、一般的かどうかというところまではちょっと我々も把握し切れていないということがございます。
以上でございます。
〇委員
どうもありがとうございます。
では、この点につきまして、特に何か御意見、御感想などございましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇委員
ちょっと確認させていただきたいのですが、1ページ目と2ページ目の違いです。相続人が受取人になっている場合と被相続人が受取人である場合、それで、2ページ目はこれはどういうことでしょう。何も書いてない。保険金受取人に指定がないというのか、特にアメリカ合衆国で取扱いが変わってきますので、ちょっと説明を補足していただけますでしょうか。
〇事務局
2枚目のほうの死亡退職金の取扱いについての御質問ということだと思います。日本の場合には、死亡退職金、これはまさに受取人は相続人ということになると思います。そういったことから、まさに被相続人から相続人への移転ではなくて、いうなればそれ以外の方からの相続人への移転ですが、そこは相続と同様に取り扱うということで、日本の場合にはまずこういう取扱いになっております。
アメリカにつきましては、基本的にそもそもが遺産課税でございますので、遺産という形で残されたもの、これについてまず遺産に関しての課税を行い、残りを相続人の方々が配分するという取扱いになりますので、そこで、その遺産の中に死亡退職金の場合にはこれは入らないということですので、まさしくそれを受け取った方に所得税を課税するという考え方がとられているのだと思います。
フランスにつきましては、日本と同様の遺産取得課税の方式をとっておりますが、ここも日本の場合には相続と同様の取扱いという整理をしておりますが、フランスはそこは相続と同様ではなくて、受取人に対して所得税というところで課税するという整理をしていると考えられます。
以上でございますが。
〇委員
ありがとうございます。並んでいますけれども、アメリカの場合には、遺産そのものが課税の対象になるといいますか、受け取った人でなくて、遺産そのものに課税しますので、そうしますとケース1の被相続人が受取人である場合、この場合には遺産に入ってくるということで、退職金の場合には遺産の中には入らないというのですね。
〇事務局
そういう整理がなされているというふうに考えております。
〇委員
わかりました。ありがとうございます。
〇委員
ありがとうございます。死亡退職金というこういう慣行がどこまでというのも、国別にずいぶん異なるのでしょうから、なかなか一義的に比較は難しいのかもしれないですね。ちょっとそこも調べてみないとあれでしょうけれども、大体のところというか、これで制度自体は整理されていると思いますので、ありがとうございました。
それでは、本日の議題のほうに入りたいと思います。
まず、小委員会の年内の予定といたしましては、今回が最終回というふうに考えております。本日午後からの総会において、小委員長にかわりまして、私のほうから小委員会のこれまでの審議状況について御報告したいという、そういう予定になっております。
そこで、すでに皆さんにも御紹介を行っていると思いますけれども、いくつかそこでいただいたコメントも含めまして、これまでの審議状況につきまして、簡単なメモを、これは奥野委員長のほうから事務局に依頼してつくっていただいております。
その概要は、いくつかございますが、まず第1に、貯蓄優遇税制の是正について、これは老人マル優や生損保控除制度のあり方についてまとめてあるということです。
それから、第2に、投資信託に関する税制につきまして、株式投資信託に関する非常に複雑な所得課税のあり方、それから、集団投資スキームに対する課税、その他の論点といった形でまとめてございます。
さらに、第3に投資信託につきましては、これは様々な御意見がございました。将来的にさらに検討が行われる必要があるということだと思いますけれども、本日のところは、総会への報告ということが念頭にございますので、制度説明の部分なども入れてまとめてございます。
いずれにせよ、金融税制全般あるいは所得税制全般にかかわる非常に基本的な点も含めた御議論が出されていたというふうに受けとめておりまして、そうした認識はこの審議状況メモの冒頭に記してあるわけでございます。
まず、おさらいという意味で、議論の多かった部分も再度御紹介しつつ、事務局から資料について説明をいただきたいと思います。その上で審議状況のメモを読み上げるというふうにしたいと思います。
〇事務局
お手許に、特に番号がございませんが、横長の『資料』というものがございます。これまで数回の御審議の中で御説明して見ていただいた資料でございますけれども、今日の後ほどの審議状況のまとめとも関係いたしますので、一応お配りさせていただきました。一、二付け加えさせていただくものだけ御説明させていただきたいと思います。
まず、貯蓄優遇税制の見直しにつきまして、これは金融小委だけの観点ではなくて、もう少し広い観点で今後また総会のほうでも御議論いただけると思いますが、特に老人の生活なり貯蓄の実態という点につきまして御議論がございますので、ちょっと1、2枚数字を付け加えましたので、それをご覧いただければと思います。
3ページ目でございますが、これは貯蓄動向調査の数字でございますので、いわゆる預貯金だけではなくて、この貯蓄の範囲は広い範囲で、株や生命保険まで入ったものでございますけども、よく私ども使っております資料でございます。左のほうが一般的な勤労者、右のほうが高齢者世帯ということでございますけれども、1人頭に直しますと、年間収入というのはあまり変わらないわけですが、貯蓄のほうは倍ぐらい高齢者世帯はあるというものでございます。
これはただ平均でございますので、もうちょっと分析いたしますと、4ページで例えば見ていただきますと、これは貯蓄のほうだけの比較でございますが、斜め線に入っておりますほうが高齢者世帯の貯蓄の分布でございますけども、貯蓄が3,000万円以上ある方というのが、高齢者世帯では比率としては3割ぐらいあるということで、高齢者世帯のほうに特にある程度高額の貯蓄の残があるというところでございます。勤労者世帯のほうは、それがなだらかと申しますか、まちまちと申しますか、そういうような状態でございます。
それから、5ページは年間所得のほうでございますが、これは濃い黒い線のほうが高齢者世帯、薄いほうが全世帯でございますが、国民生活基礎調査の数字でございます。当然のことかと思いますけれども、高齢者世帯のほうは、所得のほうは年間100万円、200万円、300万円のところに位置してございます。
それから、6ページでございますが、1世帯当たりの貯蓄と負債の残高でございます。年齢別でございます。下のほうに年齢別のくくりがございますけれども、65歳以上の高齢者世帯の場合に、先ほど平均で見ていただきましたように、貯蓄額が非常に多い、一方負債が少ないというのが65歳以上の方の特徴でございます。したがいまして、30代、40代の方から見ますと、貯蓄の額で2倍、3倍ございますのと、負債が相対的に少ないというようなことが見て取れるというような状況でございます。
あとは、保険料控除につきましては、制度の説明でございますので、省略させていただきます。
それから、もう1点投資信託の関係で、26ページでございますが、内容はこれまで見ていただきましたものですので、御説明いたしませんが、公募の株式の投資信託、ちょうど真ん中の欄にあるものにつきまして、配当所得という分類で、一方、利子並みの源泉分離課税になっているというところが議論の出発点でございましたので、一応、後ほどの審議経過につきましても、この26ページの表がベースとなった議論がございますので、もし御議論の参考に見ていただくときに、26ページというものでございます。
それから、もう1点、投資信託のファンド、法人段階の課税の件で後ほどの資料に言及がございますので、もう一度御説明させていただきます。
30ページに現行の投資信託及び投資法人制度の制度の概要が書いてございます。前にもご覧いただきましたものでございますけれども、投資信託制度そのものは、昭和26年に証券投資信託法というのができまして、自来、長期にわたっておりましたが、平成10年に会社型投信の、いわゆる会社型の形で証券投資法人制度というものができまして、法律の名前も証券投資信託と証券投資法人という法律になっております。その後、平成12年には、証券だけではなくて、ほかの資産に運用するものも可能となりましたものですから、「証券」という言葉が外れまして、現在は投資信託及び投資法人法というものになっております。結果的に、真ん中にございますように、形態としまして信託の形態と法人の形態がございまして、対象が証券投資のものとそれ以外のもの、というふうに分かれているという状況になっております。
おめくりいただきまして31ページでございますが、「特定目的会社等に対する課税の概要」というふうに書いてございます。いま30ページのほうでご覧いただきました投資信託あるいは投資法人が、この表の下のほうの半分でございます。上半分は資産を流動化させる形で集団的に投資をするというほうで、資産流動化法というのができまして、SPCとかSPTとかいうものがつくられております。したがいまして、これは金融審議会のほうのお名前では集団投資スキームということかと思いますが、資産を流動化するタイプのものと運用するタイプのものとございますけども、一応、集団投資スキームということで、こうした2つの法律に規定されましたいろいろな種類があるというふうになっているようでございます。
この集団投資スキームにつきましては、法人とか信託の段階での課税と、個人の段階の課税をどういうふうに調整していくかという論点がございますけれども、ここの31ページで見ていただきますのは、上のほうのSPC、SPT、あるいは投資法人につきましては、一度法人段階で法人税の課税がなされまして、さらにその一方、配当を90%超をする場合には、配当を損金算入するという形で、法人課税の税金と個人段階の税金とを調整するというようなことになっております。
一方、一番下にあります証券投資信託のほうは、法人段階で課税がなされないという形になっておりますので、この表全体で見ました整合性から見たときに、証券投資信託の非課税のところの扱いが気になるところでございます。
32ページはそれを簡単に図示したものでございますけれども、左のほうはいわゆる株式会社のケース、真ん中に株式会社がございまして、個人が配当を受け取る、右側の投資法人でも個人が配当を受け取るというようなこと、下は証券投資信託というような、全体として法人からいろいろな形で個人が収益の分配を受けるというような形態でございます。
株式会社の場合は、当然、御案内のとおり、株式会社段階で法人税の課税がなされまして、個人に配当があると。個人等は配当所得の課税になりますが、会社課税との関係は、いわば配当控除などで調整されているというような仕組みでございます。
右の投資法人は、法人税課税がなされまして、先ほど申し上げましたように、配当を損金算入するという形で、法人課税と個人課税の調整が行われているというものでございます。
一方、投資信託のところは、法人税課税がございませんで、個人段階で配当の課税がなされるということになっております。したがって、個人の段階、あるいはそこの法人課税個人の段階の調整の仕方をどうするかという点がございますけれども、まず端的に言いますと、法人段階の整合性の段階で証券投資信託は課税がなされていないという点がございます。
後ほど審議状況のメモのほうに出てまいります関係で、予め制度をもう一度確認していただくために御説明させていただきました。よろしくお願いいたします。
〇委員
ありがとうございます。
それでは、朗読のほうをお願いいたします。
〇事務局
金融小委員会では、株式譲渡益課税のあり方について議論を行い、本年9月に「証券税制等についての意見」(以下、「意見」という。)を取りまとめた。その後、[1]貯蓄優遇税制、[2]証券投資信託に関する税制、について議論を行った。
小委員会は、金融税制全般にわたり、専門的・理論的観点から幅広く検討を行うことをその役割としている。これまで株式譲渡益課税など当面する諸課題について議論を行ってきたが、小委員会は、これらを通じ、例えば納税者番号制度の導入に向けた検討をはじめ、所得税制全体を広く視野に入れつつ、金融税制全般を体系的に検討することの必要性をあらためて認識している。以下は、現時点での審議状況として、上記の2点について取りまとめたものである。(P1)
1.貯蓄優遇税制の是正について
「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」の観点から、家計の資産選択における変化を促すとすれば、貯蓄を優遇してきた各種の制度を広く見直していくことが重要な課題となることは、「意見」において指摘したところである。これを受け、少額貯蓄非課税制度等及び生命保険料控除制度・損害保険料控除制度について議論を行った。
これらについては、従来から、税制調査会において、社会保障制度のあり方を検討する中で制度のあり方を見直していくべきではないか、また、廃止若しくは縮減に向けて見直しを行うべきではないか等の考え方が度々示されてきた。一方、制度創設以降、実際にそうした見直しは行われてきていない。
小委員会としては、以下に示すとおり、両制度は基本的に廃止すべきものと考えるが、こうした経緯を踏まえれば、少なくとも、時限を付した「サンセット措置」へ移行するなど何らかの具体的な措置を講ずるべきであると考える。
少額貯蓄非課税制度(老人マル優)等
・少額貯蓄非課税制度等については、従来から、課税ベースの拡大を図る観点、更に、高齢者の貯蓄水準の実態等からみて高齢者相互間のみならず世代間の税負担の公平を確保する観点等から、見直しの必要性が指摘されている。
・高齢者世帯(65歳以上)の平均貯蓄残高は、直近では、例えば30~40代世帯の約2~4倍となっているほか、高齢者世帯の所得に占める利子所得の平均割合は、総じて1%前後となっている。
・本制度は、典型的な貯蓄優遇税制に該当するものであり、「金融のあり方の切り替え」の方針、更に、「租税特別措置の聖域なき見直し」の方針からも、根本的に再検討する必要がある。
・以上を踏まえれば、少額貯蓄非課税制度等については、「意見」にも指摘したとおり、基本的には、その廃止に向け検討することが適当である。(P2)
保険料控除制度
・現行の生命保険料控除制度・損害保険料控除制度については、制度創設後、長期間が経過し、保険加入率は相当の水準に達しており、また、大半の納税者に対し適用され、これ以上の誘因効果も期待できない(生命保険料控除:昭和26年創設。損害保険料控除:昭和39年創設)。
・保険の貯蓄としての側面に着目すれば、様々な貯蓄手段のうち、特に保険に限って税制上優遇する本制度は、金融商品間の税負担の公平性及び中立性等に照らし、問題がある。
・措置の内容については、保険加入時に限らず、保険料支払期間を通じて所得控除が継続する上、所得の多寡に関わらず利用可能となっており問題である、といった指摘もあった。
・主要国においても、生命保険料や損害保険料に係る控除制度は設けられていないことが通例である。
・以上を踏まえれば、本制度は、「租税特別措置の聖域なき見直し」の方針の下、その廃止に向け検討を進めるべきである。(P3)
2.証券投資信託に関する税制について
投資信託は専門の仲介機関を通じて資産運用等を図る仕組みであり、一般の個人投資家にとっては、株式へ直接投資するより本来なじみやすい側面を有すると考えられている。小委員会においては、株式投資信託(以下、特に記さない限り「公募型」を指す。)に対する課税のあり方等を中心に議論を行った。
具体的には、株式投資信託について、収益分配金が配当所得に分類される一方で、昭和39年以降、「利子並」課税(収益分配金に対し源泉分離課税を行うとともに、譲渡益は非課税とし、譲渡損はないものとする取り扱い)が継続されており、「金融のあり方の切り替え」との関連で、こうした取り扱いを見直す必要があるかについて、様々な議論が行われた。
株式投資信託に関する所得課税のあり方
株式投資信託に対する課税のあり方、すなわち、現行の「利子並」課税を継続するのか、若しくは、収益分配金(配当)に対する原則的な取り扱いとするのかについては、様々な意見があったが、概略、以下のように整理される。
いずれにしても、収益を「利子並」に扱いつつ、譲渡時には譲渡益課税を行うなど、税体系上の整合性を考慮しない取り扱いは適当とは言えず、採るべきでないと考える。(P4)
a株式投資信託に対する「利子並」課税を変更し、収益分配金に配当としての課税を行うなどとする意見が多かった。
・株式投資信託の創設時は「貯蓄優遇」の時代であったが、「投資優遇」に方向が転換している現在、収益に配当課税を行い、譲渡時には譲渡益課税を行うといった、株式に対する課税と同様の方式へ変えていくのが適当ではないか。
・投資信託は、その時々の時価により評価され得る商品であり、支払い時のキャッシュフローが予め約定されていないという意味では、税制も株式に対する課税と同様の方式でなければならないのではないか。
b株式投資信託の株式の組入比率はゼロから100%まで様々であり、株式と同一視することが適当かという点に関連して、次の意見があった。
・特定株式投資信託(ETF)が株式と同一の税制上の取り扱いがなされているのは、現物株式の拠出のみによって組成される点に着目されたからであり、その点で、必ずしも株式投資信託を株式と同一に取り扱う必要はないのではないか。
・株式投資信託の中には、株式の組入比率がゼロとなる場合も想定し得るが、その場合には、むしろ公社債投資信託と同様の性格を有するものと考えるべきではないか。
c株式投資信託について、現行制度(収益に対する「利子並」課税)が合理的ではないかとして、次の意見があった。
・株式投資信託は、資産運用を職業とする専門家が金融サービスを提供する商品であるほか、ファンド内で分散投資される上、いったん損益通算も行われるなど、株式と商品性が異なるのではないか。
・これまで「利子並」課税が行われ、言わば「貯蓄類似商品」として広く普及してきた経緯等を踏まえれば、一般の個人投資家にとって、株式投資信託を購入する際、「リスク商品」を購入しているという認識があまり無いのではないか。(P5)
集団投資スキームに対する課税
証券投資信託は、投資法人、特定目的信託、特定目的会社等とともに、「多数の投資家から資金を集め、第三者である資産運用の専門家が市場で運用・管理する仕組み(いわゆる集団投資スキーム)」の一類型と位置付けられる。
証券投資信託以外のものについては、ファンドである会社や信託をいったん法人税の課税対象とした上で、収益の分配を損金算入する等の取り扱いとされている。これに関連して次の指摘があった。
・集団投資スキーム全体を通じて課税の整合性を図る観点から、証券投資信託に対してファンド段階での課税を行った上で、損金算入の手当てを講ずるなどの措置を実施すべきではないか。(P6)
証券投資信託課税を巡る所得税制上の論点
株式投資信託を含め、証券投資信託に関する税制一般については、次のとおり、多岐にわたって議論が行われたところであるが、これらは金融税制のみならず、所得税制全体のあり方にも関連するものであり、将来にわたって更に検討が進められる必要があると考える。
・金融商品の類型として、フィクスト・インカム型(支払われるキャッシュフローが事前に約定されているもの)とマーク・トゥ・マーケット型(資産価値の変動が市場価格として反映されるもの)に分類する考え方もあるのではないか。
・株式から預貯金まで、金融商品の抱えるリスクは様々と考えられるが、所得税制上、リスクはどう捉えられるのか。
・投資信託の解約(償還)時に生じる実質的な損失について、これを所得概念上どう位置付けるか、また、投資信託の解約(償還)と譲渡との違いをどのように考えるか。
・金融商品が多様化・複雑化する中で、所得分類は経済実態に適合的と言い得るのか。逆に、所得分類を維持しつつ、総合課税の方向で検討することも考えられるのではないか。
・納税者番号制度の導入については、具体的な検討を促進すべきではないか。(P7)
〇委員
ありがとうございます。
こういうふうに御説明と朗読をいただきましたので、それでは、自由討議に入りまして、御自由に質問や御意見をいただきたいと思います。さっきの資料にございましたような貯蓄優遇税制に関して、または投資信託に関する税制に関して、いずれでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
私からちょっとテクニカルな点を質問させていただいてよろしいでしょうか。いまの御説明を伺っていて、資料の31ページのところで、上のほうのものにつきましては、法人税を一旦課税して、支払配当を一定の要件を満たすものについて、つまり、たまりのないものについて支払配当を損金算入するという制度を採用しているわけですよね。これは別に法人税をかけて税収を取ろうというのが目的ではないというのか、それ自身が目的ではなくて、たまりが少なければ実質上は法人税は課税しないという意味なのだろうと思いますが、こういう場合にマイナスは投資家に配れるのでしょうか。
〇事務局
マイナスと申しますのは、例えば、投資法人なり信託の段階で運用が損であったというときに、配当は行われないですよね。したがって、マイナスは配れないと思いますが。御議論を進めていただけますか。ちょっと整理します。
〇委員
すみません、思いつきで。よろしくお願いします。
ほかに何かございますでしょうか。
〇委員
細かいところですが、先ほど世帯主が65歳以上のいろいろなデータがあったのですが、この場合、貯蓄動向調査ですと、どちらかというと金持ちの老人だけがデータに出ていまして、同居老人の部分はこのデータに入っていないものですから、世帯主として65歳でおられる方の資産とか負債はこうであって、それで、子供さんと一緒に住んでおられる高齢者の方はここに入っていないので、どちらかというと、お金持ちの老人がこういう状況だという見方もあると思うので、その点だけはちょっと注意したほうがいいと思います。コメントです。
〇委員
ありがとうございます。
〇委員
言わずもがなのことかもしれないですが、前もちょっと申し上げたのですけど、言葉の使い方で「貯蓄優遇」「投資優遇」とかあるのですけれども、それはどういう意味なのかという説明のようなものがあってしかるべきではないかという気はするのです。少なくとも経済用語としてはおかしい使い方になっているという気はいたしますから、これはここだけの話ではなくて、政府の方針としてこういう言い回しをしているわけですから、それについてのディフィニションをここだけで与えるわけにはいかないにせよ、全く無定義でこういう議論をして、それでこういう方針の切り替えがあるから税制も変えるべきだというふうに議論をするのは、ちょっと乱暴な感じもするので、多少説明が要るのではないかなという気はするのですけれども。
〇委員
それは貯蓄も投資だという意味ですか。
〇委員
貯蓄という場合には、全部これを含めるんです。預貯金とか株式とか投資信託とか、それを全部をふつう経済学で我々は「貯蓄」と言いますので。その中で、ここでは預貯金に近いものを「貯蓄」と称し、それから、株式とかそういうほかのものを「投資」と称しているわけですけど、ふつう我々が金融で授業で教えるときは、全部を貯蓄と定義するわけです。
〇委員
昔、マクロで習ったのは、貯蓄と投資は事後的に一致すると、そういうときともまた違うんですか。
〇委員
その投資のほうは実物の投資ですから、インベストメントのほうで、こちらは金融の中でも預貯金以外のものに資産を運用するのが投資としているわけですから、やはり定義をしておいたほうがいいと思います。
〇委員
こういう基本用語というのは、往々にして多義的に使われる場合があるんですね。日常語として使われるときの意味とか、ある学問分野での専門用語として使われるときの意味とか、そういうのが微妙に違っているということが、基本用語であればあるほど起こり得るわけで、貯蓄とか投資という言葉も、いまもありましたように、実物的な意味の、機械を買ったり工場を建てるということを意味する場合と、株を買うことを意味する場合とあったりしますから、現にあるわけですね。現にあることですから、それはどちらかの使い方が間違っていると言い出しても始まらないことなので、例えば、ここでの報告書で言っている意味合いは、このようなものであるというような若干の説明があったほうがいいのではないかという、そういう趣旨です。
〇委員
これ、もともとはどういう意味でお使いになっているのでしょうか。
〇事務局
これは9月の段階で、株式譲渡益課税の「意見」を取りまとめていただきましたときにも、この場で御議論がございまして、我々も同感する部分もございますが、いわゆる「骨太の方針」で「貯蓄優遇から投資優遇」という言葉が使われておりますので、それをそのままフレーズとして使わせていただいたということなのですが。
9月18日の日の「意見」のときには、「骨太の方針」をよく引っくり返してみますと、多分、つくられたときにもそういう議論があったかと思うのですが、貯蓄のところには「預貯金などの貯蓄」と書いてあるくだり、あるいは投資のところには「株式など投資」と書いてあるくだりもありましたので、それを18日の日の文章には、ちょっと言葉を足させていただいて、とりあえずの御指摘に当時答えさせていただいたということになっております。
それで、実は今日のものにつきましては、そこがまた失念いたしましたので、御指摘のとおりでございますが、ちょっと言葉を入れるだけでは、初めて見た方、総会でもおわかりにくいかと思いますので、どこかで注で「骨太の方針」の用語上そういうことであるのでと、あるいはこの場ではこういうことにしたとか、ちょっと注を入れさせていただくようなことのほうがよろしければ、御意見の御指摘も踏まえて、小委員長代理とも御相談して、午後までには注をつけさせていただくとか、そんなことでよろしゅうございますか。
〇委員
よろしゅうございますか。
〇委員
ちょっとよろしいですか。「貯蓄優遇から投資優遇へ」というキャッチフレーズ的なものを言い出した張本人は、経済財政諮問会議で委員が資本市場活性化問題を担当されたときに、私、他の委員も入っておりましたけど、取りまとめてくれという話で、そのときやった話。ですから、実務サイドからいったら、あそこに書いていますように、従来、貯蓄という場合は預貯金、投資という場合は株式・投資信託というのが極めて常識的な判断であったというような事柄からそういう方向。ですから、1つの政策方向として非常に結構ではないかと、私自身は思ってやってきたということですが、いまおっしゃるように、経済学的にどう定義するかということは、それはそれとしてやっていただいて結構かと思います。
事実、かなり前まで日銀には大きな看板で、貯蓄増強何とかという垂れ幕がずっとあったわけですね。要するに、あれはともかくみんな銀行へ預金しなさいよということをずっとやってきたわけですから、そういうことはもう時代に合わないのではないか。特にグローバルなマーケット、あるいはビッグバンが始まっている最中で、しかもまだこれが20世紀中に完成しようといったら、まだまだ道半ばどころか、またスタート時点に後戻りしてしまっているような状況下で、というような方向を踏まえて、我々実務サイドからそういう意見を強く申し上げたと、こういう状況です。
〇委員
この間も申し上げましたが、別の場であったかもしれませんが、このフレーズ、これが必要なのかどうか。というのは「優遇」という言葉が非常に気になるんですね。「貯蓄優遇から投資優遇」、金融政策ではそうなのかもしれませんが、租税の場面でそれを使うと、いかにも貯蓄の優遇措置はやめるけれども、今度は投資の優遇措置をするということになって、そうなりますと、租税特別措置で次のページでは「聖域なき見直し」と言っておいて、投資は別だと、こういような印象を受けるわけですね。これは文章になって残りますと、あとになった場合に、投資を優遇すると書いてあるではないかということが出てくるわけですね。だから、これはもし必要なければ削ったほうがいいと私は思いますけれども、ということなのですが。
〇委員
この点、いかがでございましょうか。もうちょっと御意見をいただけたらと思いますが。
〇委員
もう一度申し上げます。僕はその言葉を削ったら、全くもう意味がなくなると思います。一言申し上げます。
〇委員
ほかの先生方、いかがですか。これは税調以外のところの、そこの方針を踏まえて税制のあり方を議論するということで書かれているわけでございますよね。であるとすれば、この言葉自体というか、要するに、そこでの議論を踏まえてということが実際の意味なのかもしれないのですけれども、とはいえ、明確な言葉としてそちらでは出されているわけですし、これについてどうしたらいいかというようなことについては、わりと基本的な問題だと思いますから、できる限り御意見を伺って、その上で集約できればしていったほうがいいとは思うのですが、いかがでございましょうか。
〇委員
優遇というのは、おそらく従来の意味として私が理解していたのは、ほかよりも税率が低いか高いかということを相対的に比較して、優遇という意味であったのではないかと思うのです。ですから、先ほどの委員がおっしゃるように、筋からすると、全体としての整合性ということを通せば、特別措置というよりも、むしろ本来の筋に戻す中で、それが従来の歪みを是正するという中で解決されれば一番いいことですよね。
ここでしかし大きい方針が出ている中でその言葉を入れるかどうかというのは、ちょっと判断に迷いますけれども、しかし、やはり一番私はこの大きい方針の中で直さなければいけないのは、従来の例えば所得分類ですとか、要するに実態に合わなくなってきたところを、どう直していくかということをポイントにすべきだと思うのです。
例えば、前回も一番問題になりました「証券投資信託の譲渡損はないものとみなす」というところ、このあたりはやはり実態に合わなくなってきて、このあたりをどういうふうに現実に合わせていくかということをすれば、自動的に投資のほうが、本来、そういう税体系の歪みによって優遇されていなかったというか、税体系の見直しによって、むしろ投資を促進する方向に働く要素というのは相当あるのではないかと。だから、むしろそっちの見直しのほうが、「聖域なき見直し」と矛盾するわけではなくて、その大きい流れの中でそれを解決していくという方向でやっていくというニュアンスで書く必要があるのかなという気がしますので、後半のほうでそれが具体化されていればいいわけですから、例えば、譲渡損はないものとみなす、あるいは1%でも入っていたら株なのか、あるいは、1%であろうが、100%であろうが、最近は非常にリスクがいろいろな商品が増えてきているわけですから、例えば社債でもデフォルトがあるわけですし、そういう実際の状況が変わっている中で税制をそれに合わせていけば、自動的に実質的には投資優遇というような形に是正されていかざるを得ないのではないかという、そういう流れの中にあるのではないかと理解しているわけですけど。
〇委員
フレーズ自体よりも中身の問題であるということでございますね。
〇委員
極めて大ざっぱな議論かもしれませんけれども、20年、30年間、長期的に金融商品課税につきまして眺めてみますと、かつては元本保証のないようなものに税制が支援するということは、おかしいではないか、あり得ないのではないか、という発想が大体根底にあったように思われます。したがいまして、マル優、国債もそうですけれども、優遇措置を講ずるというとき、それはあくまで元本の保証されたもの、それを国民の皆さんにお薦めする、そういう意味で税制上も御支援をするという発想だったのかなという気がいたします。
そういう点を基本的に見直して、そうでない、リスクにさらされるそうしたものも金融商品として中立的に扱うべきではないか、あるいはさらに、同じ金融商品でもリスクのあるものとないものとでは、やはり質的に差異がある。そうした差異に応じた税制上の扱いの差があってもいいのではないかというのが、最近の検討の視点ではないか。
この頃は預金についてもペイオフがあるというので、リスクゼロではないのですけれども、少なくとも約定の段階では保証されている。そこはやはり差がある。差があるところをどういうふうに税制上も差をつけて扱うのか、全く中立でいくのか、そういう視点なのかなという気がいたします。
もう一つ、さらに議論を混乱させる点かもしれませんが、1ついまの点に関連して申し上げますと、そのマル優自体を廃止しようとしたとき、十数年前ですけども、マル優自体を廃止、老人マル優になったわけですけれども、そうした貯蓄優遇はやめるのだというとき、そして、マル優は実際に廃止され、マル老になったのですけれども、そのときに、ここにも並列して掲げられておりますけれども、生命保険でございます。生命保険というのは、単に自分が自分のために金をためるというのではなくて、やはり自分のリスクをしょっている。それは個人個人のリスクの範囲の中でリスクをしょっているのですが、もう一つ、保険集団としてのリスク分散、リスク管理というものがある。さらには、生命保険でも年金保険が入ってくると、これはますます集団としてのリスク、保険リスク、相互扶助の観点が入っているので、これは単なる自分のためにお金をためるという貯蓄と違うではないかという議論がかなり強くて、結局、マル優廃止のときに保険料控除のほうは全く手がつけられなかったという点があるわけでございます。
そこらも含めて議論、考え方を整理し、明確にしておく必要はあるのかなと思いますが、そこまでいけるのか、そこはもうあまりきめ細かすぎて必要ないので、ふつうに言われるリスクのあるもの、ないものというふうに区分すればいいのか、そこらはさらに詰めておく必要、これから本当に世の中へ出ていって、いろいろなところと詰めていくというときには、そういういろいろな議論が出てくるのではないかと思います。
〇委員
ありがとうございます。
〇委員
長く国内及び国際的なマーケットの中でやってきた人間として、先ほどの委員が言われた、状況に税制が合わなくなってきている。これは再三この前から申し上げておりますけれども、そういう意味からいえば、いま言われたように、僕は商品についてリスクのないものは1つもないというつもりでおります。銀行預金もかつてはそうだった。あるいは日銀を中心にやった貯蓄増強というのは、元本がみんな保証されていて安心だからと。かつて国債もそうだったわけですが、これは61国債のときに見事に、61国債はその後9%に金利が上がったときは75円ぐらいまでに下がっちゃったわけですから、25%も下がっているというような状況で、現にまた中期国債ファンドというものもみんな元本割れになってもう廃止というような状況になってきているわけですから、日本の場合は国債のデフォルトはありませんけど、社債にしたってみんなデフォルトがある。あるいは預金にしてもそうです。というようなことで、商品についてリスクのないものは1つもない。ただ、リスクが多いか少ないか、あるいはそのヘッジの方法がいろいろと商品として出てきているということを考えますと、議論をこれ以上錯綜させるつもりはありませんけども、事実、もう中期国債ファンドがだめになってしまったという事実から見ましても、公社債投信自身にしても、おそらく全部みんな元本割れという状況が来る。
したがって、僕は証券投資信託という場合は、それは1つの新しい範疇として税制をどうするかということを考えていくべきではないかという基本的な考えを持っております。だから株は株式というふうに、単一の商品は単一の商品というふうに思っておりますが、それが基本的な私の意見でございます。
あとは、今日読み上げていただいたこれは、午後の総会にはどういうようなプレゼンテーションといいますか、報告といいますか、というのは譲渡益課税のときは1つの方向性がはっきり出ましたから、あるいは明確なメッセージが出たわけですね。そんな効果はあって、もちろん、簡易申告の問題とかテクニカルな問題は追目をしている問題はいろいろありますけれども。今日の議論、こうやって基本的な問題まで変わって議論がこうなると、これはどういうふうに取り扱っていかれるのか。もちろん、これからの議論次第ということだと思いますけれども、お考えはいかがでございますか。
〇委員
難しい問題ですけれども、「優遇」というところは2方向なんですよね。貯蓄優遇は望ましくないから、特別措置的なものでそれは圧縮しましょうと、これが最初に出ているわけですよね。投資優遇というほうも、だから投資だけ特別にものすごくほかよりも図抜けて有利なようにするということではなくて、貯蓄についての優遇を、様々なマル優とかを見直す過程で適正化していく中で、ここで言う貯蓄と投資のバランスのとれた税制上の扱いをということが、この紙の意味ではないかと僕は思っていますし、そのこと自体は、だから、ここで優遇という言葉を使ったのは別のところで使ったわけですから、それを引き取って、そういうふうに方向を出していくということ自体は、まあニュートラルかなという気はしているのですけれども、どうでございましょうかね。もっと優遇を言わなければいけませんか。
〇委員
かなり相対的なことです。
〇委員
これは、先ほど御説明がちょっとありましたけれども、租税特別措置法等が改正されまして、相当に株式が優遇されていますよね。片一方は老人のマル優を廃止して、それで株式のほうは1,000万円まで認めましょうと。これを中立的と言うのですか。私はこれは経済財政諮問会議で使われた言葉だというのでしたら、主語をはっきりさせておくべきで、税制調査会でそう言っているからこうという……。よく問題になるのは、そちらの会議と税制調査会とのすみ分けはどうなのだという議論がありますけれども、これはかぎ括弧の中にその意味が含まれているのだと思うのですけれども、これをもうちょっとはっきりした形で出されたらいかがでしょうか。
〇委員
かぎ括弧のあとに括弧書きか何かで出所をはっきり書いたらどうですかね。
〇委員
確かに著作権というか、誰がおっしゃったかということは重要でございますのでね。
〇委員
注ではなくて、はっきり本文に括弧書きで入れておいたらどうですか。
〇委員
それは非常に妥当じゃないですかね。
〇委員
それで客観的な叙述になるということですかね。それでよろしゅうございますか。
株式についてどの程度優遇云々というのは、税調は税調で議論はしてきましたから、それはそれで、ここでは貯蓄の優遇に関して見直すべきところは見直し、それを前提としながら投資について考えていくと。だから、ここで言う投資の優遇ということ自体も、貯蓄の優遇と同じような意味の優遇というのか、バランスという感じで僕自身は考えているのですが、政治的にはもっといろいろなことがあるのかもしれませんけれども。先ほど委員がおっしゃったようなことは、確かにかなり重要なポイントとしてはございますけどね。この中にはそこは入っていないということで、ほかには出すしかないのかなという気がするのですが、いかがですか。
〇委員
先ほどの委員の御発言との関連ですけど、結局、投資信託関係の取扱いをどうするかということを、かなり意識した金融小委員会のこのところの議論だったと思っているのですけれども、私が感じる限り、なかなかそう簡単に、投資信託関係の税制をこうしようというふうに結論を出し切れないいろいろな問題があって、いろいろ議論していくと、所得税体系全体に及んでいくような議論にどうもなっているなと。そこを、いまこの時代にはもう考えて取り扱っていかなければいけないのではないかという御発言もありましたけれども、私も全く同感でございまして、そういうように大体皆さんの感じがなっているのではないかと私は思うのです。
一応、年末の段階で一区切り金融小委員会をつけるというのがこの間の会合のお話にもございまして、それでは総会のほうにどういうような状況報告をしようかということがこのペーパーの趣旨だというふうに思うのです。その先は、年が改まって、また金融小委員会というものの活動が行われるのだろうと思うのですけれども、私の希望からすれば、やはり基本的な問題、ここに書いてある一番最初のページの2つ目の丸印の中に、「金融税制全般を体系的に検討することの必要性をあらためて認識している」と、この認識に基づいた勉強といいましょうか、検討が続けられる必要があるのではないかと。これは小委員の皆さんなり、小委員長なり、あるいは会長のお考えでもまた聞かなければいけないところでもあるだろうと思うのですけれども、私としては、そういうふうに理解をしているのですけれども。
〇委員
後ろに書いてあることは、ほとんどそういうことになって、大きい問題に全部つながってしまっていて、ここですぐにとても結論が出ないような問題点の指摘がある。だから、表書きのところに、問題意識をもうちょっとはっきり書いておけば、結局、いま会長代理のおっしゃったようなことになるのではないかと思うのです。最初の貯蓄の定義のお話もありましたけれども、要するに大きな変化というのは、貯蓄というか、金融商品がすべて同一化してきているという大きい金融の流れの中で、税体系をどういうふうにするかという大きな問題意識がここの問題意識の1つの大きなポイントではないかと思うのですが、それを最初に書いておいて、そういう問題が出てきている中で、それを解決するということ、あるいはその問題点をここで指摘したというようなことが表に出ていると、ずいぶん全体の印象が違うのではないかなと思いますけれども。
〇委員
度々申しわけありません。いまおっしゃったことは全く賛成です。
それから、いまおっしゃったとおり、例えば1ページの2つ目の丸のところも、最後のところで、「例えば納税者番号制度の導入」云々となっている。僕はむしろ、「例えば」というのは、じゃあほかに何があるのだということになりますから、「納税者番号制度の導入に向けた検討をはじめ、所得税制全体を広く視野に入れつつ、金融税制全般を体系的に検討することの必要性を」というふうに、「例えば」という言葉を除いて、ここに重点を置くというような形のほうが、意味がはっきりするのではないかと思います。
それから、もう一つは、やはり金融商品の多様化という問題ですね。現実がそうなってきているよと。しかも非常にグローバル化しているというような問題も、特に、我々株の場合は個人投資家ということを中心に考えていますけれども、グローバルには機関投資家というものも非常に大きなウエイトがあるということも含めまして、金融商品の多様化、国際化というような問題も、何かどこかへ入れておいていただけたらいいなというふうに、私の希望でございますが。
〇委員
ほかにいかがですか。
この金融小委員会の審議状況は、報告書というのとはちょっと違いますので、結論は、いままでどういう議論をしてきたかということを、ごく簡潔に総会のほうに御報告するということなのだろうと思います。ですから、一番最初の1ページ目にそれがきれいに説明してあるわけですよね。株式譲渡益の議論に引き続いて、貯蓄優遇税制と証券投資信託に関する税制についての議論を行ったと。これについて、以下に述べるような議論が行われて、いろいろ意見対立とかはあるのでしょうけども、大体こんな意見が出ましたということを御報告するわけでして、基本にさかのぼって、そもそも所得分類のあり方如何というのまでは、まだ議論は、これからもちろんそれは必要になってくるのかもしれませんがということでありますので、そういうまとめから考えると、これは小委員長の御意見というかお考えでつくったのだと思いますが、今後の方向としてはいろいろな議論をしなければいけないというのは、もちろんそうなのですけど。
〇委員
つまらないことを聞いて申しわけないのですけど、今日の午後の総会に報告をするわけですよね。一応予定はね。そうすると、今からあまり時間もない。これ、相当修文をするとなると、なかなか間に合わないという物理的な問題があるように思いまして、最小限、読み上げるときに、ここにこういうのを入れてくださいぐらいの話で済ませられる程度の修正に限られてくるのではないかなと思うのですけれども、事務局の能力としてはどうですか。
〇事務局
御指摘のとおりでございますので、若干の修文を会長代理と小委員長代理にお預けいただいた上で、最小限昼休みの間にできることをして、大量の印刷にもなりますので、そこはあるいは口頭で補足していただくとか、その辺をお願いできればと思います。
〇委員
要するに、そういう作業で済ますという前提は、ここにおそろいの皆さんが、こういう内容の報告をするということでいいのだというあれがないと、要するに、だめならもうこれはしないという話にもう一つのオプションとすればあるのだろうと思うのですけれども、それはいいだろうなというか、確認なのですけど。
〇委員
そういうことでよろしいのではないでしょうか。これは、まさにいまお話にあった審議の経過の報告でございますから、この間やったのが証券税制、今後、その後どういうことをやったかということで、しかし、非常に大きな視野から見た問題点も認識はしていますよということを、先ほどの委員のお言葉のようなそういったもの、直すのなら第2パラグラフを若干修正をしてということで、そこは代理か小委員長にお任せしていくということで、どんなものでしょうか。
〇委員
全部お任せしますけど、ただ1つ、証券税制はきのうの法律で終わってしまったというのは全く間違いで、我々は譲渡益課税の問題をやったというだけの話で、証券税制はほかにも、いま言っている投資信託もあれば、金融庁なり業界からの要望もいろいろございますから、それらを今後も全く無視してというわけにはいかないと思いますので、その辺は、もしどこかへ加えるとしたら、やっていただければありがたいと思いますが。
〇委員
この審議状況を御報告する際に、いろいろな御意見もあるし、いろいろな課題もあって、一筋縄ではいかない本質的な問題に絡むというところなのだろう思いますけれどもね。言い出したらそれは何から何まで全部入ってきますから、それを、こんな問題もあります、こんな問題もありますというわけにはなかなかいかないでしょうし。
〇委員
どこまで広げるかです。それは広げたら連結納税の問題まで全部いってしまいますから。
〇委員
証券税制あるいは株式関係の税制についてもいろいろ議論があるというのは、そのとおりだと思うのですが、要するに、この小委員会の今後の課題というのは、所得税制全体をどうするかということで、総合的にものを考えて議論しようと。その中には当然入ってくるだろうと思うのです。むしろ、証券税制だけを特にという話ではなくて、全体の議論をしなければならないと、こういう理解だということで含めさせていただいていかがでしょうか。
〇委員
1ページの第2パラグラフのところにかなりそこは正面から出ておりますので、その中で、金融税制全般を、体系的にということでございますから、体系的にというところには、特に何かだけ優遇とかどうのという話でもなくて、全体的に整合的に美しい制度をという方向性も出ているのだろうと思いますから、そこはちょっと御勘弁いただいてということでいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
〇委員
端的には金融小委は残るんでしょう?
〇委員
わかりませんけど、私は。
〇委員
これではやめるわけにいかないんじゃないですか。
〇委員
あと何年かかるか。
〇委員
タイムリミットがないですね、これは。
〇委員
えらい問題がいっぱい出てくるのだろうと思います。
先ほど僕が御質問したことが、実はあとに関連すると思ったのですが、31ページのさっきのところですね。マイナスを配れるか、配れないかで、上と下と、要するに下ではマイナスを配れと。まあ御説明を受けてからにしましょうか。お願いします。
〇事務局
マイナスを配るという言葉の意味でございますけども、個々人投資家にマイナスの配当をするということ、ここにマイナスの所得の控除権みたいなものを渡されるということはもちろんないわけですので、そういう意味では、個人に赤字を分配するということはもちろんできないわけだと思いますが、ただ、ファンドの中では赤字になり得ますので、その際は、もしそれでも分配をしようと思えば、いわゆる元本部分を合わせて、元本を少し減らす形でと申しますか、配分するということは可能なのだと思います。つまり、当期マイナスでも資本分を使って配当するということかもしれませんが、それはファンドとして可能かと思います。ただ、その分元本が減りますので、翌期以降、収益が出ればそこへ戻していくというような形になるのだろうと思います。
〇委員
マイナスを配れないということの意味は、課税上の控除権を配るわけにはいかないということで、ただし、ファンド段階でプラスとマイナスの相殺があるということは、かなり投資家にとっては有利でございますよね。下のほうで法人税の課税云々というのをやらないで、しかも元本割れを投資家に配れというのは、バランスが著しく悪くなるというのは、これは見た瞬間明らかでございまして、それをお聞きしたかったということなのです。法人税を課税して、90%超の配当と一定の要件を満たすものは、支払配当を損金算入でやるというのは、マイナスを配れなくするというところに、むしろ多少の意味があるというのか、実質上はパススルーですが、それで日本の所得税制度との整合性が一定程度とられるように、このリート型の調整が入って、かなりの制度的な、あるいは理論的な進歩だったというふうに私なんかは考えているのですが、それを申し上げたかっただけなので、ありがとうございます。
すみません、ちょっと細かなマニアックな話を申し上げてしまいまして。
あと何かございますでしょうか。
〇委員
先ほど、ああいう証券税制が出てきて中立的と言えるかという御指摘がございましたけれども、この税制調査会の金融小委員会としてのスタンスというのは、この間まとめられた「意見」でございますし、この中の「意見」で言われているのは、源泉分離は廃止する、損失の繰越について措置する、税負担水準はこうする、その中では100万円特別控除は廃止か縮減の上税率を検討するということですから、金融小委としての中立性という意味で、いままでの全く源泉分離一本の預貯金とか、そういったものとまず中立的な線で発想がまとめられている、この小委員会の発想はですね。あとはいろいろなプラスアルファはあるかもしれませんが、小委員会としては、そこは金融商品に対して中立的、しかし、それぞれの特性に応じた配慮、措置をするということでは、貫かれていると考えていいのではないか、また考えたいと思うのでございますけど。
それから、その中に残っている問題は、簡便な申告という点が残っている。これは今後の方向として、検討課題としても指摘されていますから、小委員会の考え方はそんなにぶれていない。それからまた、今後の方向はこういうことだということは、前の意見と今回のこれとをあわせて読んでいただければ、御理解いただけるのではないかと思うのでございますが。
〇委員
いかがですか。そういうことで小委員会としては一貫していると。
〇委員
あえて言いますと、申告分離一本化、もともと大きな議論になると、二元的所得税なんていうことを言う人まで出てきておりますが、もともとが特別な扱いをしているわけなので、そこでどういう議論をするのがいいのか、非常に難しいような気がいたしまして、簡単に言いますと、ほかの所得については土俵の上でやっているわけですけれども、こっちはプロレスの何かをやっているような感じがしまして、やはり非常に議論しにくいんですね。
結論として申告分離に一本化して、なおかつ、税率は20%になりましたが、そういう意味で、ある意味では何となくこっちではやはり利子並みなのかなという気もいたしますけれども、またこれから先、証券投資信託を初めとするそちらに手を加えるときに、やはりこちらの株式の譲渡に対する扱いはこういうふうになっているという税制調査会の立場でやはり検討していくのかなと思いますので、先ほど言われたとおりだと思います。
〇委員
ありがとうございます。
貯蓄優遇、投資優遇云々については、出所を明らかにして、それから、小委員会自体としては、ここの委員会では可能な限り整合的な、しかも中立的、かつ公平な租税制度を追求してきたし、それを総会にも御報告してきて、今回もその方向で審議状況を御報告するということで、いろいろな御意見はもちろんあるとは思いますが、一通りの筋、税調としての一貫したものはあるのではないかという、確かにそういう気はいたしますので、細かい点はいろいろあるかと思いますが、大筋でこんな方向で、細かい修文はまた多少御一任いただければ、会長代理と一緒にそれはしかるべき形でとは思いますけれども、こんな方向で午後の総会にということ自体は、いかがでございますでしょうか。いろいろな意見があると思いますが、よろしく。ありがとうございます。
まだ時間が多少というか大分ありますが、御意見何か承ればと思いますが、ありましたらいかがでございましょうか。
〇委員
質問ですが、先ほどの高齢者世帯の貯蓄と所得というときに、所得水準も度々出てくるのですが、この所得水準というのは、例の公的年金控除なんかをかなり引いたあとの、いわゆる申告所得ベースの所得なのか、家計調査での収入的な所得なのか、これはどちらでしょうか。それによってかなり印象が違うなという感じがするのですが。4ページ、5ページ。
〇事務局
これは税務統計ではございませんので、まさに国民生活基礎調査ですから、いわゆる収入ベースだと思います。
〇委員
ほかに御意見等ございますでしょうか。
これ、またもとの基本的な点に戻っていろいろあれしてもいいのですが、大体言いたいこともそれぞれ委員の中でわかっていますし、今後にそれはつないでいくということで、大分早いといえば早いですが、午後も控えておりますし、修文の作業にも時間を取ると思いますから、多少怠け者のあれですが、少し早めにということでよろしゅうございますでしょうか。大分早めですが。
〇委員
効率的にやったということで。
〇委員
それでは、本日はこれで小委員会の議論のほうを終わりにしたいと思います。今日の意見ももう一度反芻いたしまして、適宜必要な場合には、会長代理と御相談の上で、追加・修文して、私のほうから午後の総会に報告させていただくということで御了承いただきたいと思います。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。
今後の予定につきましては、小委員長と事務局で御相談し、また、委員の方々に御連絡したいと思いますので、その旨よろしくお願いします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。