第8回金融小委員会 議事録
平成13年10月30日開催
〇委員
それでは、第8回金融小委員会を開催いたします。
先月、小委員会において「証券税制等についての意見」を取りまとめたところであり、御協力ありがとうございました。その後、1カ月ほどの間を置いての再開となるわけですが、最初に、株式譲渡益課税の見直しに係る法律案が、本日、閣議決定されたところであります。まず、これについて事務局から説明をお願いいたします。
次に、今後の金融小委員会における検討課題について、皆さんから意見をいただく必要があると考えておりますが、それに関連して、先週26日・金曜日に、基礎問題小委員会のほうで、租税特別措置の見直しについて議論が行われました。本日は、その際の資料のうち、金融税制に関するものをお手元に配付いたしましたので、今後、引き続き議論を行っていきたいと思います。
また、投資信託に関する税制のあり方について、本日は、現行制度の概要などについて、事務局から説明させたいと思います。
それでは、本日の審議に入りたいと存じます。
まず、事務局から、本日閣議決定された「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」及び「地方税法等の一部を改正する法律案」について説明していただきます。
〇事務局
お手元の資料で証券税制、株式の譲渡益課税につきます今回の法案につきまして、御説明させていただきます。
まず、お手元の資料でございますが、先般、9月18日に当小委員会で御意見をまとめていただきましたあと、一番初めにあります資料は、総理大臣が今国会の冒頭で所信表明演説で発言されましたものの証券税制の関係でございます。ここで、証券税制についての改正法案を今国会に提出するという方針を、国会に対して表明したものでございます。
その後、この方針を受けまして与党の中で調整が行われまして、10月3日に、次の資料でございますが、「株式等譲渡益課税の見直し 10月3日 自由民主党 公明党 保守党」というペーパーがまとめられております。これで具体的にいたしまして、その後、法制作業をしておりまして、その次に、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案要綱」というものがございます。これは、今回の譲渡益課税の見直しのうち法律事項の国税分につきまして、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案要綱」ということでまとめられたものでございます。おかげさまで、本日、閣議決定までまいりまして、国会に提出したというところでございます。
その内容は、10月3日版、あるいは要綱版、同じでございますけれども、簡単に見ていただくために、「租税特別措置法等の一部を改正する法律案(ポイント)」という1~2枚の紙がございますが、この紙でご覧いただければと思います。
この紙では三つに分けてございます。まずIが、「申告分離課税の見直し(平成15年実施)」でございます。御案内のとおり、申告分離課税と源泉分離課税の選択の問題につきましては、小委員会の「意見」でも、できるだけ早く申告分離課税に一本化すべきという御意見をいただいておりました。Iの1にありますように、申告分離課税の一本化を、現行制度ですと平成15年4月1日でございましたが、3カ月前倒しいたしまして、15年の1月1日からということにしてございます。これは、暦年課税であるところの所得税の原則とか、繰越控除制度が入りますので、切りかえ時期は1月からのほうが納税者にとっても税務当局にとっても利便ということで、1月1日からというふうにしてございます。
その際に申告分離課税の税率を引き下げるということで、2にございます、現行26%、国税20%、地方税6%というのを、改正案では、国税15%、地方税5%となっております。
3に、譲渡損失の繰越控除制度の創設ということで、繰越期間が損失を生じた年の翌年以降3年間という形でございます。
したがいまして、1、2、3のところは、基本的な方向性につきまして小委員会で御議論していただき、「意見」として賜った内容を基本的に踏まえたものだというふうに考えております。
それから、大きなIIのほうへまいりまして、「長期(1年超)保有上場株式等に係る特例」というものがございます。平成15年から申告分離課税に一本化されるわけでございますが、15~17年の3年間につきましては、暫定税率というのを盛り込んでございます。対象は1年超保有の上場株式ということで、この3年間は、国税、地方税合わせて20%であったものを、暫定税率として、国税7%、地方税3%の10%というものがございます。
IIの2にございますが、100万円特別控除につきましては、御意見の中では、税率を引き下げるときには、こちらの特別控除のほうはむしろ廃止なり縮減するなりという御意見でございましたが、最終的にこの法案の中では、平成15年3月末までの期限を17年末までの期限に延長するという形になっております。したがいまして、平成17年末まで、暫定税率と100万円特別控除が存在するという形になっております。いずれにいたしましても、1、2とも1年超の保有の株式ということで、保有を重視するという考え方でこの2のところはまとめてございます。
いままで御説明申し上げましたところは、小委員会の中の御議論でも出てきておりましたところでございますが、つけ加えまして、IIとIの間にコメ印が一つございます。「平成13年9月30日以前に取得した上場株式に係る取得費の特例」というものでございます。
申告分離課税ですと、売値から買値を引くということで、買値、すなわち取得費を自分で把握しておく必要があるわけでございますが、昔から持っている株の取得費、なかなかわかりにくいという議論、あるいは、便宜のために何か簡単なやり方をという要望もございました。法案の中では、この9月30日より前に持っていた株につきましては、10月1日の価格の8割とするということで、もしわかっておればその価格でもよろしいわけですが、こういういわばみなしの取得価格の規定を盛り込んでいるわけでございます。
大きなIIIでございますが、「緊急投資優遇措置」と仮に銘打ってございます。I、IIは15年実施の内容でございますが、IIIは足元の制度改正にもなるものでございます。上場株式を対象といたしまして、14年末までの間に購入価格1,000万円までの株を購入いたしまして、売却期間、17、18、19年の間に売った場合には、購入価格1,000万円までの元本の株から生ずる譲渡益については、非課税とする緊急投資優遇措置というものでございます。
この購入は、法案が通りまして、公布・施行の日から14年末までというふうにしておりまして、足元を、緊急に新しい投資家の市場参入も促進したいという措置で、緊急異例の措置ということで盛り込んでいるものでございます。したがいまして、この辺、小委員会での御議論等は直接入っておりませんでしたが、法案の中にはこういう形で盛り込ませていただいております。
以上が法律案の内容でございますが、つけ加えまして、この法律案に基づきまして、税収への影響について一言御説明させていただきたいと思います。
基本的に平成15年以降の譲渡につきましての改正でございますので、例えば平成13年、いまの進行年度につきましては直接税収の関係はございません。それから、14年も基本的にはございませんが、14年度という年度で考えますと、平成15年の1月から3月までは14年度に入ります。そこは、源泉分離課税があったものが申告分離課税に置きかえることになりますので、税収上は、その部分は14年度から15年度に移るというふうな関係がございます。その後、15年度に入りまして、税率の軽減とか、損失繰越制度が徐々に効いてくるという形で、税収への影響が本格化してくるという改正になってございます。
したがいまして、いまの段階で15年度以降の税収減につきまして確たる御説明はなかなかしがたいわけでございますけれども、現在の13年度の予算が4,200億円程度、キャピタルゲイン課税の税収で見積もってございますが、この4,200億円を仮に前提として税収の試算をしてみますと、いまから申し上げるような形になってまいります。
まず、申告分離課税に一本化するということで、これまで源泉分離を使っていた方が申告分離になるということで、税率の引下げを加味いたしませんと、おそらくここは増収効果があるだろうということでございます。いろいろ仮定を置いて見ますと、その分では1,600億円程度の増収効果があるのではないか。一方、税率が国税で20%から7%に下がりますので、そういう税率引下げの影響を1,900億円程度の税収減というふうに見込み、さらに、損失の繰越制度につきましては、徐々に平年度化してまいりますが、これを1,400億円程度の税収減の影響と見込むことができるということでございます。
もう一回繰り返しますと、申告分離課税への一本化で1,600億円程度の増になる一方、税率の引下げで1,900億円程度の減収、損失の繰越しで1,400億円程度の減収というものでございます。
ただ、もともとこれは13年度のベースではじいたものでございますので、15年度にはどういう影響があるかということはまた別途でございます。それぞれの制度がそれぞれの年の税収に影響する度合いが少しずつ違いますので、簡単に合算できるものではなくて、別々にそれぞれ試算したものでございます。したがいまして、達観して、1,000億円程度以上は減収になるのかなということを申し上げておりますが、区分して申し上げますと以上のようなものでございます。
私からは以上でございます。
〇事務局
ただいま御説明がありました資料に続いて、「地方税法等の一部を改正する法律案要綱」という縦書きの資料と、それに続きまして、「地方税法等の一部を改正する法律案の概要」という資料がございます。私からは、横書きの「概要」の資料をご覧いただきたいと思います。
措置の内容は、ただいま御説明のありました内容そのままでございますので、割愛させていただきますが、一点、源泉分離課税を廃止していくということは、地方税のほうでは、所得税で源泉分離課税が選択された場合の所得は非課税とするという規定が置いてあります。これの期限を14年12月31日限りにする、そういう直し方に地方税のほうはなるわけでございます。
税率につきまして、いまほども御説明がございましたが、少し詳しく申し上げますと、現在、26%のうち個人住民税は6%です。内訳を申しますと、都道府県が2%、市町村が4%となっております。これが、改正案で全体が20%になりましたときに、個人住民税5%は、都道府県と市町村については、先ほどの2%と4%の割合を基本にいたしまして、都道府県1.6%、市町村3.4%にいたそうとしております。それから、暫定の税率10%の折には、個人住民税が3%になるわけでございますが、その場合も1対2という比例で、都道府県1%、市町村2%、そのようにしようといたしております。
なお、この結果が及ぼす収入への影響でございます。前提といたしましては、先ほど所得税に関しての御説明がありました、13年度の国税における収入見込みをベースにさせていただきまして、同じような考え方で試算をさせていただきますと、地方税につきましては、源泉分離の部分について、根っこからの増収要素になるということもございまして、一本化によって約1,300億円の増収を試算いたしております。そして、税率引下げの効果は、約450億円程度の減収を見込んでおります。それから、損失の繰越控除の効果としましては、約470億円程度の減収効果を見込んでおります。地方税も、当然のことながら、それぞれの要素が年度によって組合せが異なりますので、一律には申せませんが、数百億程度の増収になるのではないか、そのように見ております。
以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。
ただいまの説明によれば、小委員会でひと月ほど前にまとめました「意見」と異なる部分もあったと思いますが、皆さん、いかがでございましょう。御自由に御意見をいただければと思います。
具体的には、暫定税率が入った点、特別控除が事実上延長されたこと、緊急投資優遇措置ができたことというような点が、我々が出しました「証券税制等についての意見」とは異なっている部分ですが、何か御意見等ありましたら。
〇委員
全体は、おおむね小委員長がここでおまとめいただいた「意見」の方向で、あの中で原則として20とすると。原則が上へ行くか、下へ行くか。これは私どもとしては、非上場ならまだ26なので、26も頭に置いて原則として20という意味だったのだろうと解釈していたわけですが、下のほうが出てきた。しかし、「原則として」という中で読み込めるのかなという感じがいたしております。
それから、一つ、かなり実質的に意味があると思うのは取得費の特例です。私は前に、抜本的に変えるとき、要するに申告分離に一本化するというときには、何らかの特例、極端な話、制度変更のときの価格にするというようなことを申し上げたことがあります。今回、それが取り入れられ、しかも8割に下げたというので、これはかなり強力な措置だろうと思います。
何といいましても源泉分離は、非常に便利だし、わかりやすい。申告分離にもってきたら取得価格がわからないではないかと。どうもこれはいままでの国税庁サイドの取扱いからいくと、5%にされてしまうのではないか、そういう論調が非常に多くて、そういう議論が申告分離一本化の議論の足をかなり引っ張っていた面があったのかなと思います。ですから、申告分離への一本化とともに、こうした特例でそうした議論を封じ込めることができたのではないか。これは、技術的な点ではありますけれども、意味のある制度改正であったのかなと思っております。
〇委員
暫定措置が2003年から2005年とありますけれども、この間に、いまの日本の預貯金偏重から、少し株式などに個人が向くようにして、2005年を過ぎたあと、暫定措置がなくなったあとも、株式市場にうまく個人の資金が戻るというのが一番理想ではないかというふうに思います。
〇委員
ほかに何かありますか。よろしいですか。
それでは、御意見も大体尽きたようですので、次に、投資信託に関する税制の概要などについて、事務局に説明していただきます。
お願いいたします。
〇事務局
それでは、お手元に幾つか資料がございますので、その資料を御説明させていただきますが、資料[1]、[2]、それから、簡単な絵が描いてある番号のついていないものとか、いろいろ入ってございます。まず、資料[1]は、先ほど小委員長からも御紹介ございましたが、基礎小委員会で租税特別措置の見直しにつきまして御議論があった際に、金融税制関係ということで、こちらの小委員会にも御報告すべきと思って配付させていただいたものでございます。本日、ここは御議論賜りませんが、内容は、生・損保控除と老人マル優の件が入ってございます。加えて、相続税の分野で死亡保険金の非課税限度額というのがございます。それにつきまして、一番最後に1ページだけ資料を入れてございます。本件は、まだ金融小委員会で御報告、御説明する機会をいただいておりませんが、広い意味で金融の関係ということで、死亡保険金の相続税の資料が1枚入ってございます。これも別途、貯蓄優遇関係の御議論のときに御説明させていただきたいと思っております。
それでは、証券投資信託につきましての現行制度の御説明に入らせていただきたいと思います。資料[2]で見ていただきます。
本日、投資信託についての議論でございますが、これまでキャピタルゲインの議論の際に投資信託について言及ございました際に、いまは配当所得の区分であるけれども、利子並課税をしていて云々と。いろいろ利子配当全体の課税にも関係しているということで、制度について検討が必要だということを前回まで申し上げましたので、その関係を資料としてございます。したがいまして、所得税法におきます利子所得、配当所得、そういった所得分類につきましての基礎的な資料を初めに何枚か見ていただきます。
それから、株式投資信託の収益分配金に対する課税の仕方につきまして、資料が並んでございます。株式投資信託、証券投資信託といいましても、いろいろ制度がございます。まず、投資信託及び投資法人制度の概要ということで現状の類似の制度を見ていただきまして、その上で、証券投資信託の中に公社債投資信託、株式投資信託、特定株式投資信託という上場されるようなものの区分がございます。その辺を見ていただいた上で、さらに、その課税関係、利子、配当の区分の話、最終的に株式投資信託の公募型のものにつきまして、現在、収益分配金が配当所得でございますけれども、利子並の源泉分離課税をしている状況とか、解約・償還時の取扱いについて、制度の御説明をさせていただきたいと思っております。個人の側から見ました、利子か配当かという論点に関係するものでございます。
次に、ちょっと視点を変えまして、特定目的会社等と証券投資信託ということで、資金を集団的に集めて投資をするといういろいろなスキームがございます。そのうち、証券投資信託以外の特定目的会社その他の制度につきまして、特にファンドなりスキーム、資金、基金、あるいはビークルそのものに法人税の分野での課税をしているもの、していないもの、ございますので、そういうやや視点を変えましたファンドそのものにつきましての課税の話でございます。
その辺全体を受けていただきましたところで、株式投資信託、特に公募型につきまして、どういう基本的な視点でものを考えるかという点について御議論賜ればというようなことでございます。
それでは、資料[2]に沿いまして、やや基本的なところにさかのぼるような資料もございますが、そこら辺も含めて見ていただきたいと思います。
まず、1ページでございます。「所得の分類」ということで、現在の所得税法におきますそもそものところの所得の分類、対象、計算方法という1枚の資料がございます。所得分類は、現在、10種類。利子、配当から始まりまして、雑所得まで10種類の区分が行われまして、それぞれ、対象、その計算方法が定められているわけでございます。
所得を分類して区分をするというものの考え方につきましては、次のページに、金子先生の『租税法』の本からその趣旨を書いてございます。「所得税法は、所得をその源泉ないし性質によって10種類に分類している。これは、所得はその性質や発生の様態によって担税力が異なるという前提に立って、それぞれの担税力の相違に応じた計算方法を定め、あるいは課税方法を定めるためである」というのが、金子先生の教科書の御説明でございます。
また1ページ目に戻っていただきまして、そういう観点で10種類の所得の分類をいたしまして、それぞれ、こういうものが対象で、こういう計算方法に立つというようなものが規定してございます。
例えば利子所得でございますと、「収入金額イコール所得金額」となっておりまして、ここでは必要経費の概念が入ってございません。したがいまして、一般的に言われている利子の概念とは若干異なっておりまして、例えば貸付金利子などは利子所得の中に入ってこないという定義づけになってございます。
それから、それぞれの所得を見てまいりますと、およそプラスの場合にそれぞれを合算するというのが基本的な建前でございます。それぞれの所得を計算したときに、マイナスの所得を認識して差引きするものは、不動産、事業、山林、譲渡という形で限られております。それ以外のものはおよそマイナスが出ることを想定していない、あるいは、想定していても損益を通算することをしないという制度の区分になってございます。
3ページ目に進ませていただきます。今回、株式投資信託の収益分配金についての取扱いがお話の中心でもございますので、利子所得と配当所得の比較という、これも基礎的なものでございますが、利子と配当、右左に並べてございます。まさに所得税そもそもの本法の整理でございますが、利子所得のほうを見ていただきますと、公社債、預貯金の利子というのから始まりまして、証券投資信託のうちの公社債投資信託はこの利子所得のほうにまずは分類してあります。
一方、配当所得のほうを見ていただきますと、配当所得は法人から受ける利益の配当がメインでございます。2行目に投資信託、カッコに「公社債投資信託は除く」という形になっておりまして、投資信託の収益分配のうち、公社債投資信託につきましては所得税のそもそもの整理で利子所得にしているという関係でございます。
利子所得と配当所得の違いにつきましては、定義の下にカッコ書で掲げております。これも金子先生の解説でございますけれども、預貯金の利子以外のものは、法律的性質においては預貯金の利子とは異なるけれども、実質的には預貯金の利子と異ならないということで、利子所得として分類されているという御説明が利子所得のほうにございます。配当のほうは、いずれも法人の利益の処分の性質なのだということで、整理されているようでございます。
所得金額の計算に際しまして、利子所得のほうは、利子の収入そのもの、経費の控除は認められておりません。配当のほうは、基本的には配当の収入金額そのものですが、配当を生ずべき元本を取得するための負債の利子の控除は認められているということで、所得の計算の方法も若干異なっております。
課税方法は、利子所得は20%の源泉分離課税、配当所得は基本的に総合課税でございます。総合課税の中で、源泉徴収、源泉分離の選択が可能というのが右下に書いてございます。また、配当控除があるという大きな分類になっております。
利子・配当課税の沿革を見ていただきますのが、4ページでございます。いろいろ変化がございますので逐一は追ってまいりません。利子所得のほうは、もともと戦後の総合課税から始まりますが、源泉分離選択もございますし、大きく達観いたしますと、源泉分離課税が基本、少なくとも年数的には多く来ているという感じでございます。一方、配当所得のほうは、源泉徴収がございますが、基本的には総合課税という感じでございます。
そこで問題は、備考のほうでございますが、昭和26年に証券投資信託制度ができました際に、その収益分配は配当所得に分類されております。先ほども見ていただきました表の中の、配当所得のほうに分類されております。その後、36年に公社債投資信託ができました際に、公社債投資信託については利子所得だという分類がされております。その後、39年になりまして、公社債投資信託以外の証券投資信託につきまして、課税方式を変更して、配当課税ではなくて利子並課税をするという整理になっております。もともとの配当所得、利子所得という区分は、26年、36年の区分でございますけれども、課税方式につきましては、公社債投資信託以外も利子並課税にするというのが39年でございます。
このように、利子所得以外のものにつきまして、利子並あるいは源泉分離課税に取り込んでいるというのがほかにもございます。例えば割引債の償還差益などは、区分は雑所得だと思いますが、源泉分離課税制度をとっております。加えまして、右下にございますが、利子に一律源泉分離課税を採用いたしました63年に、金融類似商品の課税見直しが行われました。御記憶かと思いますが、一時払い養老保険につきまして、このときに、その差益について利子並の源泉分離課税をするということが行われておりますので、いわば利子並の源泉分離課税は、利子所得からそれに類似するものに外延を広げた形で現在行われているという状況でございます。
もう1枚の資料に、簡単に絵に描いたものが入っていると思います。そちらのほうに目を転じていただきまして、いま、利子所得、配当所得ということで御説明いたしましたものの内容につきまして若干補足的に申し上げます。個人が所得を得る段階で利子所得、配当所得というふうに区分してございますが、さらに源泉をさかのぼりますと、いろいろな稼得の形態がありまして、それを一定のところで集約した形で個人に配られるというものが、世の中の投資、収益の個人への入り方かと思います。
例えば、左上に銀行預金のケースが書いてございます。個人と銀行の間は預金に対する利子所得ということでございますが、銀行はその資金を、貸付利息もございましょうし、株に投資をする、あるいは不動産賃貸などもあるかもしれません。そういう意味でいろいろな事業収入が集まりましたところで、一たん、法人税課税を行う。次に、主体としての銀行が、個人との関係では利子を払う、個人は利子所得としてそれを観念すると。個人が受ける段階では一つの所得に認定する、束ねるという形で所得税法はでき上がっているような感じでございます。
したがいまして、右にございますように株式会社のケースも、会社自体は事業もしておりますし、金融関係の収入もございますが、全体をまとめまして、個人には配当、それを所得税法上は配当所得と認識するという建前でございます。
下の段は、投資信託につきまして、公社債投資信託と株式投資信託につきまして、ごく粗っぽく比較しております。公社債投資信託は、公社債や貸付金から得る利子を個人に対して収益分配するわけでございますが、それが利子所得として観念されております。株式投資信託のほうは、株式の投信もございますし、併せまして、それを収益分配、配当所得として観念するというような整理になってございます。その上で、この配当所得についてどういう課税の方法をとるかと、そういう議論の進め方になっているようでございます。
申し訳ございませんが、もう少し時間をいただきまして、5ページ以降で投資信託及び投資法人制度の内容を見ていただきます。昭和26年に証券投資信託制度が創設されました。その後、長らくこの証券投資信託法が続いてございますが、平成10年に証券投資法人制度というものが創設され、さらに、平成12年に証券以外のものへの信託や法人投資が認められまして、「投資信託及び投資法人制度」というふうになってございます。したがいまして現在は、その投資の形態といたしまして投資信託と投資法人がございますし、その投資対象との関係で、証券投資信託、それ以外の投資信託、証券投資法人、それ以外の投資法人という区分けが成立するというものでございます。
6ページは、投資信託の簡単な概念図です。7ページは、投資法人の概念図でございます。8ページ以降に、証券投資信託の区分がございます。後ほど課税の方法の議論を行います際に、この定義なり区分が意味を持ってまいりますので、少しお時間がかかりますが、見ていただきたいと思います。これは、それぞれ税法の区分でございますが、まず一番大きな概念として証券投資信託というのを掲げてございます。証券投資信託は、点線の中にありますように、主として有価証券に対する投資が目的でございまして、2分の1以上を有価証券に対する投資とする目的のものを証券投資信託と言っております。それ以外は証券投資信託以外の投資信託ということになるわけですが、証券投資信託は2分の1超を有価証券というものでございます。
その証券投資信託の中に公社債投資信託という概念がございます。これは、信託財産を公社債に投資するということで、税法上は「株式または出資に対する投資として運用しないもの」という書き方が、なされております。
株式投資信託は、公社債投資信託以外の証券投資信託という概念でございます。したがいまして、いわば株式組入れ比率は0%から100%まであり得る、そういう概念でございます。
それから、参考にございますように、別の切り口でそれぞれ公募型と私募型、50人以上の者を勧誘する場合は公募型というような括りもございます。
1枚めくっていただきまして、9ページでございますが、株式投資信託の中に特定株式投資信託というのがその内概念として出てまいります。これは株式のみを対象とする投資でございますし、上場を要件としております。一定の要件にございますように、信託期間を定めない、証券取引所に上場する、一部解約を請求できない、収益の分配は全額について行うといったようなことで、全体として株式の譲渡、株式並というもので一つの概念整理をしたものでございます。これは、投資対象を株価指数の変動率に一致させることを目的とした運用を行うということになっておりまして、[2]にございますように、特定の株価指数に連動するような投資信託でございます。こちらのほうは平成7年に創設されまして、平成13年に対象が拡大されたものでございますが、株式のウエートが100%というものでございます。
それらの課税の関係を大まかに整理いたしましたのが10ページでございます。証券投資信託の課税関係ということでございますが、まず一番下のほうから見ていただきますと、一番下に株式というふうに書いてございます。株式は、収益分配金は配当所得で総合課税ということで、譲渡損益につきまして譲渡益課税が行われているということでございます。その一つ上の段は、特定株式投資信託、俗にETFとか言われている、上場の株式100%の投資信託ということで、これは全く株式並の配当所得、譲渡益課税になっているわけでございます。
今度は、上からながめていただきますと、公社債がございます。公社債は、収益分配金のほうは利子所得で、利子に対して源泉分離課税が行われております。譲渡益損益については、益は非課税、譲渡損はないと見なすという利子所得の課税の仕方になってございます。公社債投資信託も利子所得で、公社債と同じような課税の仕方になっております。
真ん中にはさまれたところに、株式投資信託の公募、私募というふうにございます。このうち私募のほうは、新しいものですし、一般の個人が購入するということではないかもしれませんが、公募の株式投資信託のところ、先ほど来御説明の中にも出てまいりましたが、配当所得でございますが、源泉分離課税をとっているものでございます。俗に株式投資信託についての課税の問題というふうに御議論いただきつつありますのは、公募の株式投資信託のこの部分が中心になっているのかなという感じでございます。
11ページは、株式投資信託(公募型)の課税の仕組みでございます。株式投資信託の収益分配金は配当所得に分類されており、本来、総合課税の対象となるものであるが、公募型については、「預貯金類似の貯蓄性」を有するものとされたこと、「利子並課税」の採用について、強い要望があったこと等から、昭和39年以降、源泉分離課税など利子並課税が採用されてきているということでございます。
それの系といたしまして、利子並課税が適用されるという「預貯金類似性」というものをとらえまして、公募型の株式投資信託は、マル優(現在、老人マル優制度)の適用対象といたしまして、銀行預金と同じ括りで老人マル優の適用対象となっているということでございます。つまり、利子並課税としての源泉分離課税の仕方と老人マル優の対象という形で、預貯金類似のグループの整理になっているということでございます。
それから、12ページ、13ページでございます。投資信託につきまして、「収益分配時の課税」とは、どこのどういうものであるか、あるいは、解約・償還の際どういう取扱いをされているかということにつきましての、これも概念的なものでございますが、ちょっと御説明させていただきたいと思います。
ケース1でございます。これは、購入価額よりもその後の運用が成功いたしましてファンドが膨らんだケースでございます。まず、左側にございますように、投資家が1万円で取得したというケースから始まります。次の柱にありますように、それが1万2,000円に基準価額がなったケース。基準価額というのは1口当たりの純資産価値ということでございます。1万円が1万2,000円になったケースで、収益分配が1,000円あったということになりますと、その1,000円が収益分配、分配後の基準価額が1万1,000円になるという場合でございます。この場合の収益分配金の1,000円を配当所得と見まして、それについて源泉分離課税をするというのが一番典型的なケースでございます。
その隣、収益分配が3,000円あったケースは、2,000円だけが収益分配でございますので、1万2,000円と1万円の差額の2,000円だけが配当所得としてカウントされまして、1万円と9,000円の間の1,000円部分は元本が戻ったというふうに認識いたしまして、ここは非課税の取扱いでございます。
一番右にいっていただきまして、最後に解約いたしますときには、1万円のものが1万2,000円になっておりますと、2,000円部分は収益の分配ということで配当所得というふうに整理されております。
13ページは、逆に基準価額が減っていったケースでございます。先ほどの投資家の方は、1万円でそのファンドに参加されたケースでございますが、この表では、1万3,000円でファンドに参加したケースが書いてございます。1万3,000円の取得価額からスタートいたしまして、基準価額が1万2,000円になったケースで、収益分配金が1,000円あったといたしますと、この1,000円は収益分配金ではございますけれども、新たに収益というよりは元本の返戻でございますので、ここは元本返戻と見まして、非課税になるという扱いでございます。
隣は、それが3,000円あったケースでございます。これも同じように非課税でございます。元本返戻した部分を、取得価額を切り下げるという形で処理をするというものでございます。
この場合、解約になりましたときに、1万3,000円のものが1万2,000円で返ってくるということがございます。これは、元本が目減りしたということで、課税、非課税ということではなくて、課税外という扱いでございます。
最後に、「特定目的会社等に対する課税の概要」という14ページでございます。
特定目的会社等ということで、先ほど投資信託、投資法人法ということで御紹介いたしましたのが下半分でございますが、これ以外に資産を流動化するための資産流動化の法律で、いわゆるSPC、SPTというものがつくられてございます。いわば集団的な投資スキームということで、SPCから証券投資信託まで概観して並べてまいりますと、それぞれの目的なり投資の仕方、投資の対象というふうに異なっておりますけれども、右側に法人税というふうにございます。SPC、SPT、投資法人につきましては、法人税を一たん課税いたしまして、その右にございますように、収益の90%超を配当する場合につきましては、その配当を損金算入する形で、法人税の課税とビークルとしての機能を調和させるという制度になってございます。
いままで御説明いたしました証券投資信託につきましては、似た機能を持ってはおりますが、法人税の課税という観点からまいりますと、これまでの経緯もございまして非課税ということになっておりますので、分配しないような……90%超分配されれば損金算入するというような上のものに比べますと、非分配型の証券投資信託につきまして法人税の扱いは非課税になっているというような、この制度のバランスの問題が一点あるのかなという感じでございます。
そのSPC等につきまして、法人課税の問題についての税制調査会の答申が15ページでございます。
16ページ、17ページは、証券投資信託のそれぞれの投資対象がどういう内容であるかという計数指標でございます。
以上でございます。
〇事務局
私のほうからは、補足的なことを申し上げたいと思います。いまほど所得分類論の御説明がございましたけれども、地方税は、総所得金額の計算については所得税の計算の例によるということで、所得の考え方につきましては、地方税もいまほどの考え方によるということになっております。その点が一点。
それから、4ページに経緯等がございます。一番下に小さく「注」がございますけれども、地方税は、利子所得につきましては、昭和63年以降に、利子割ということで源泉分離課税ができて今日に至っております。それ以前は、所得税において総合課税が選択されたときだけ総合課税ということでできていた。それから配当所得につきましては、源泉徴収を行わずに総合課税ということで、所得税のほうで……申し訳ありません、資料[2]のほうを御説明いたしております。失礼しました。[2]の資料の4ページでございます。
もう一度申し上げますと、所得の分類なり考え方につきましては、地方税も所得税の考え方によるということですので、ただいままで説明いただきました内容がそのまま地方税についても当たる。それから、細かな話ですが、4ページで、利子所得、配当所得について、一番下に「注」がございまして、昭和63年以降、利子所得について利子割ということで、源泉分離課税ができるようになっております。配当所得については、源泉徴収は行わずに総合課税ということになっておりまして、所得税において申告不要になったものについては非課税という扱いになっている。
以上でございます。
〇委員
どうもありがとうございました。
投資信託のあり方については、この小委員会で引き続き議論を行っていく必要があると思いますけれども、まず本日は、投資信託制度自体の概要や仕組みについて、税制以外の点も含めて、御自由に質問や意見をちょうだいいたしたいと思います。どなたからでも、どうぞ。
〇委員
投資信託の中身としていろいろなものがあるというのが、何もついていない2枚紙(の資料)です。簡単に申し上げますと、証券投資信託、投資法人、特に証券投資信託の中身ですが、単なる配当ですと、株に対する果実ですけれども、そうでなくて、いろいろなものに投資をして、場合によってはキャピタルゲインという性質も入っていると。それで、今後の投資信託、それから投資信託の課税を考えるというのは、一番下の右側に絵がありますが、株式について言えば配当とキャピタルゲインがある。これは現在では配当所得だけれども、これは利子並に課税していると。
論点として、今後の課税のあり方を考えるというのは、この利子並というものをやめてそれなりの対応をしていくという意味が含まれているのか。さらには、株式投資信託を構成しているいろいろな投資の対応ですけれども、この投資の対応に応じてばらばらにして課税するというのか、それとも、配当所得、利子所得とは違うから別の新しい類型を考える。こういうようなことを検討するという御趣旨になるのでしょうか。
〇事務局
まさにその辺をどう整理をするかというのが、御議論を賜りたいところでもございます。株式投資信託につきましては、いま、源泉徴収、源泉分離の形で個人向けの課税を行っているということでございますが、それは貯蓄、あるいは利子との類似性を非常に強く意識しつつ、課税の便宜もそれで図っているということかと思うのです。
昨今、株式投資信託につきましては、リスクのある資産だということを認識したほうがいいのではないかという御議論もあるようでして、そのことと、課税の方式をどう考えるかということがどうリンクするのか、という点も御議論賜る必要があると思います。少なくとも現在、配当所得を利子並課税しているという課税の仕方につきまして、そのままでよろしいのか、あるいは再検討する必要があるのかということが議論の対象かなということでございます。
その際に、もともとの収益源泉がいろいろあるので、収益源泉ごとに課税をするかどうかという課税の方式も考えられなくてはいけないわけでして、過去、そのような課税の仕方をしていた時期もあるようでございます。その辺が、個人のほうが投資信託の内容につきまして、一部分は株のキャピタルゲインであり、一部分は利子であるというふうに分けて課税することの仕組みがどの程度組めるのか、組めないのか、そういうようなことも収益源泉別に考えるときには論点かなというふうに思います。まだ、どの部分をどういうふうに、どういう方向で御議論賜るべきかというところまで、きょうはちょっと御説明に至っておりません。
〇委員
いまの話を伺いますと、間接投資から直接投資へ、貯蓄から投資へ、こういう流れで株式投資信託に注目されつつあるということで、それなりの課税環境を変更するとか、そういうことが必要になると、こういうことでよろしいのでしょうか。
〇委員
事務局から補足していただいたらいいと思うのですが、私の理解では、この間の意見を取りまとめる過程でも、株式の問題だけではなくてこの投資信託がかなり重要だと。とりわけ投資信託の譲渡損失の問題とか、それの繰越しの問題とか、そういうことを考えたときに、株式に比べて投資信託のほうが、大衆投資家といいますか、そういう人たちが投資しているのだから、こちらのほうをむしろ証券税制改正の対象として考えるべきではないかという意見があった。ただ、それには実は大きな法律的な問題があるというのが当時の事務局の御説明であって、それを説明しましょうというのが、今回の動きだというふうに私は理解しています。
それの典型的な問題点というのは、[2]の資料の10ページですが、本来の株式は総合課税で譲渡益課税になっているので、譲渡損失の繰延べとかそういうことは全部うまくいくし、所得に関しても総合課税でいけばということで我々はそういう形にしたわけです。他方、利子所得などは、現状ではむしろ譲渡益は益しかないということが暗黙のうちに考えられていて、譲渡益も非課税だし、源泉分離という形になっている。それを、投資信託の公募の場合、証券と同じ形で取り扱おうとした場合に、現在、貯蓄と同じような形での取扱いが税法上でなされているので、それでうまくいかないのではないですかというのが、事務局がこういうことをおっしゃっている理由だというふうに私は理解していますが、間違っていれば、あるいは追加の論点等ありましたら。
〇事務局
うまく補足させていただけるかどうかわかりませんが、もともと株式投資信託について、昭和39年に利子並の源泉分離課税をするとなったわけですが、その際は、むしろそれ自体が優遇と申しますか、業界からも要望があったということはあったのだろうと思います。総合課税と源泉分離課税との関係で、源泉分離課税の簡便性の問題とか、利子と同じような課税ですよということが、売りやすいというのでしょうか、そういうことが昭和39年にあり、そのことが現在もそのまま妥当するのかどうかということはあろうかと思います。
先ほど、リスクの点も出てまいりました。個別の株式の投信について御議論いただきました際に、個別株については値動きがございますので、個別株についてのリスクを、その年のほかの株式の譲渡益と通算するとか、翌年以降のものと繰越しをするとかいうような形で、株式についてのリスクを軽減するという形の御答申を先般いただいたわけですけれども、投資信託につきましては、ファンドの中で、大部分は通算なり繰越しがある意味では行われているという商品性がございます。そういう意味で、損とか、繰り越すとかいうことをあまり意識しなければ、源泉分離課税で収益の部分だけ課税しておしまいということの簡便性が非常にあるということかと思います。
新しい時代になって、株式投資信託のリスクをリスクとして正面から税制上とらえるべきなのか、これまでどおりの簡便性をとるのか、あるいは、利子との比較というものをより強く見るのか。特にいままでですと、貯蓄ということで老人マル優の対象にもなっています。そこが、貯蓄ではないからということであれば、もともとは老人マル優制度そのものについての存廃の御議論がございますけれども、仮にそれを前提としたときに、株式投信をどう扱うのかというようなこともあろうかと思います。
それから、少しつけ加えますと、先ほど定義のところで御説明いたしましたが、公社債投信は公社債だけなのですが、株式投信は株も入り得るということだけでして、ETFのように、100%株で上場して取引をするというのであれば、株なのですけれども、ゼロから100まで全体を括られている株式投信と株との比較、あるいは、公社債投信との比較というところで、どこで区切りをつけていくのか。区切りをつける必要があるとすれば、どこで区切りをつけていくのかというところも、制度を組む上では御議論があろうかなというふうに思います。
〇委員
いまお話がありましたように、昭和39年のときは、そちらのほうが何となく有利だということで選ばれた面もあるだろうと思います。昭和39年、あるいはその前後、高度成長時代は、右肩上がりですから、ある意味で預貯金というのは元本目減りしている。証券のほうはむしろ右肩上がりですから、こういう時代には預貯金を優遇し、マル優があったということで、ほとんど実質非課税になっていた面があるのだろうと思います。預貯金はある意味では不利だったわけですから、そうしたものに対して優遇措置的なものが行われる。それはある意味では理由のあることだったと思うわけでございますが、それが有利だからといって、そのときは、証券投資信託は利子並だったという面がある。
一方、最近は間接金融から直接金融ということで言われますけれども、また、経済的実態としてはデフレ時代であります。デフレ時代になりますと、預貯金は、目減りではなくて実質価値が上がっているという面もある。そういった段階では、預貯金について本当に優遇する必要があるのか。また一方、直接金融へという流れもある中で、マル老を廃止してはどうかという議論も出てきているわけでございます。そして株式のほうは、投資信託も含めてリスクがあるということで、今回の証券税制改革にもありますように、かなり手厚い措置が講ぜられるようになる。そうなると、証券投資信託は利子並をやめて株式並のほうにいこうかというのは、いいとこ取りのような気がしないこともない。何となく釈然としない面があるわけでございます。
しかし、そこらはある程度しようがない面もあるのかなと。いいとこ取りばかりされようとしている面はあるにしても、この機会に、それぞれの資産の経済的実態に応じてはっきりと理論づけて、体系づけられたらいいのではないかという気がいたします。
〇委員
これはかなり個人的な考え方ですけれども、各資産ごとに、この資産はこういう所得を生み出して、別の資産はこういう所得を生み出すという形で分けてしまうのが、いまの税法の考え方ですよね。つまり、証券はリスキーであって、公社債は全然リスクがないというふうになっているのですが、そこら辺の考え方自体がもう時代遅れになりつつあるのではないかというのが、率直な私の印象であります。
例えば債券でも、当然、譲渡益が出たり譲渡損が出たりするわけです。それから、この間のマイカル債みたいに破綻したり、返済できなくなるというようなこともあって、ある意味で債券であっても株式と同じである。譲渡損益も出るし、ある種のリスキーな収益も支払われるということで、抜本的にはそこら辺まで本当はさかのぼらなくてはいけないのかもしれないけれども、いずれにしても、いま引いている線引きの微妙な線上にこの株式投資信託が来ていて、歴史的な事情もあるのでしょうけれども、ここは見直さないとおかしいのかなというのが私の印象です。
〇委員
インフレとかデフレというのは、こういうことを議論するときにはほとんど関係ないと私は思いますね。21世紀、これから我々の投資というのは、まだ見ぬ明日に対して特定の資産を割り当てる行為ですから、我々がいま突き進もうとしているところでリスクがあるに決まっているわけですから、それを社会の中でどうやってリスク分担を担っていくのかという問題。リスクがないなんてことはあり得ないわけで、リスクがあるところに挑戦する仕組みをどうやってつくり上げるかによって、我々の職場がどれだけ拡大するのかということなのです。
問題は、その場合にリスクの分担をどうするか。普通は、リスクを取れといっても、毎日、日経新聞の株式欄を見ているというのはごくごく異常な人で、普通の生活をしている人たちがファンドのマネージャーを選んで、その人たちが、投資家のためにちゃんとやってくれる、フィデューシャリー・デューティーを果たしてくれるという仕組みのもとで、本来、投資信託というのは発生するわけです。
そういうことからいけば、もともと投資信託は、時価(カレント・プライス)がそのつどクォートできるような性格のものですから、税制は当然株式と同等のものでなければならない。銘柄を選ぶだけの勉強をするつもりもない人に対して、投資信託はそれなりにリスクがプールされているだけでなく、ちゃんとした専門家がいて、投資家のためにやってくれる。フィデューシャリー・デューティーがあるという前提で、しかも一番入りやすい。社会の中でリスクができるだけ広くシェアされるためには、最も望ましいといいますか、普通考えたら、株式投資信託を中心としたものでこれからはファイナンスされていくだろうということですから、これは常に時価がクォートされる性格のものだと考えて、その中からファンド・マネジャーの職業上の義務も生ずるわけですから、税制からいけば、キャピタルゲインとか、キャピタルロスとか、あるいは解約に当たって、譲渡損失が生まれた場合には繰越控除制度が受けられるというのは当然のことだというふうに私は理解しています。
前回、なぜ株式投信は、今回受けるような扱いを受けられないのかと言ったら、「いや、業界がそういう選択をしてきたんだ、配当と同じ利子並課税が商売しやすいといっていたから、こういう経緯なんです」というお話を伺ったときに、私が思ったのは、これはやっぱりフィデューシャリー・デューティーというのは入らないなと。職業人としてファンド・マネジャーを鍛える仕組みがないし、税制もまたそういうことに対して関心がなかったという一連のことがセットになって、今日までの株式投信をめぐるパフォーマンスの悪さがあったのかというふうに私は思ったわけです。
いずれにしろ21世紀を考えれば、我々はリスクのシェアをどうやって社会の中で最適なものを実現していくのかということと、職場の問題はピッタリ一致していますので、この問題を税制で議論するときには、今回入れた譲渡損失の繰越控除等も含めて議論されるべきことではないかというふうに思います。
〇委員
私も、株式投信のほうに今回のようないろいろな優遇措置が入らないとしますと、個人の株式投信からのシフトが起こる可能性があるのではないかと思います。その意味では、こういう商品を個人に買っていただこうということに水を差すような気がしまして、一つは、株式投信に対してもやはり同じようなことをやらなくてはいけないと思います。
それから、いま公社債投信もリスクがあるとおっしゃいましたが、預金もペイオフが始まりますと、1,000万円以上のところでは元本のロスが生じるわけです。そうしますと、その元本のロスに対しても、ほかの金融商品と同じように見る必要があるのではないかと思いまして、預貯金から株式まで含めた意味で、ここで考え直す必要があると思います。
〇委員
何を議論すればいいかという論点の所在がよくわかっていないのですけれども、きょうは、あまりそういうことにこだわらないでフリーディスカッションすればいいような感じですので、少し発言させていただきたいと思います。
金融商品というのを二つに大別するとしたら、一つは、フィックスト・インカムと呼ばれるタイプのものと、もう一つは、マーク・ツ-・マーケットされるタイプ、つまり値洗いされるタイプの金融資産というふうに分けるのが、基本的な区分だと思います。貯蓄から投資へとか、貯蓄商品、投資商品という言い方が定着していて、ここの場でも使われているわけですが、経済学者としての私個人から言うと、そういうのはミスリーディングな用語法で、貯蓄とか投資という言葉にはそれなりの定義があって、そういう定義と「貯蓄から投資へ」というときの定義とは必ずしも同じ意味ではない。同じ言葉をいろいろな意味で使うのは、誤解を招きやすいので、好ましくないと個人的には思っております。
そこで言っている貯蓄商品というのは、フィックスト・インカム・セキュリティーズ(fixed income securities)のことだというふうに考えていいと思うのです。つまり、最初から支払われるキャッシュフローの額が固定されているタイプの商品ということです。預金はそうですし、社債もそうです。それに対して投資商品と言われているのが、マーク・ツー・マーケット(mark-to-market)、値洗いが行われる商品ということで、株式等だと思うのです。その二つの区分が基本であるということで言えば、投資信託は明らかにマーク・ツー・マーケットされる商品なわけですから、当然、株式の側と同じ扱いにされなければおかしいということだと思います。
フィックスト・インカムといっても、デフォルト--あらかじめ支払われる額が約束としては固定されていても、その約束が守られない可能性があるとか、それから、満期以前に途中で流動化しようとすると、額面金額どおりに流動化できるとは限らないという意味のリスクとか、そういうリスクが存在することは事実だと思いますが、だから全部同じだというふうに考えるのはちょっと行き過ぎだと思います。バックにある資産価値の変動を反映する形で、日々とは限りませんが、ある程度短い間隔で常に値洗いが行われて評価替えが行われるという金融商品と、それから、もたらすキャッシュフローについて事前に約定で定められていると。そこの違いが、大きく分けるときの基本として明確に確認されていることが必要ではないかと思います。
〇委員
皆さんおっしゃっているとおりだと思いますが、要するに、最近、いろいろな種類の金融商品が増えてきて、分類すること自体が非常に難しくなってきているというのが基礎だとしますと、例えば株や公社債、それぞれ分けても、先物とかオプションとかいろいろなものがあるわけです。今後の大きな流れを考えると、それは、そもそもできないというふうに考えたほうがいいのではないかと思うのです。それぞれ対応しようと思うと、特別措置とか、臨時措置とか、区分がまた非常に複雑になってくる。日本は、それでなくてもほかの国に比べて非常に複雑だというふうに言われています。以前から税調でも、総合課税が一番望ましいということを言われているわけです。
基本的に、すべて総合課税の方向に行くという方向の中で検討する以外にないのではないかという気がするのですけれども、いろいろな制約があってそこに行けないと。望ましいけれども、行けない。でも、行けないという前提で何を議論しても、つぎはぎ的になって、あまり生産的でないような気がします。総合課税に移行するための体制を考える、あるいは目標をつくるという中で、こういう問題をシンプルにする方向で検討するということはできないものでしょうか。原則的には非常に難しい話だと思いますけれども。
〇委員
それは、例えば二元論みたいな形で、金融所得、譲渡所得、フィックスト・インカム的な部分と全部含めてですけれども、それをある程度分離して、しかし、そこでは損失の繰延べなどをして、他方、残った部分をもう少し高い税率で総合課税するというようなことでもよろしいわけですか。
〇委員
そういうのも含むかもしれませんが、例えば資料[2]の10ページの例でいきますと、下のは総合課税になっているわけです。上のほうとの整合性がとれないというわけですから、これを全部総合課税にしてしまえば、基本的には整合性の問題はなくなるわけです。総合課税をどこまで含めるかという問題はもちろん残ると思いますけれども、それが大きい流れとして望ましいということが基礎にあるのであれば、そっちの方向に近づく方向でしか、具体的な解決策はこの大きい流れの中で考えにくいのではないか。そこまで言っていいのかどうかわかりませんが。
〇委員
学問的な知識はおよそないのですけれども、ただ、先ほど委員がおっしゃったような感じで、大衆が直接株式のマーケットに参加するというのはなかなか難しいのではないか。投資信託を売るという形で、言葉遣いはどうも問題があるようですが、「貯蓄から直接投資に」というふうに持っていかなければ、金融機関から見れば自分で運用するのも容易ではない事態。事態が変われば、また変わるということはあるのでしょうが、現状から言えば、なかなか運用も難しいような事態ですから、できれば個人にリスクをとっていただきたいという気持ちも強うございます。
いま申し上げたような二つのことを考えると、税制上も、株式の投資の場合と同じような……全部並べて色の違いに応じて変化が与えられるのか、あるいは、一体的に合算して総合課税にするのかというのはあるでしょうが、そういう形で均衡感のとれた税制を考える必要が実態的に強いのではないかなというふうに思います。
〇委員
きょうは、基本的にフリーディスカッションだとは思っているのですが、何を議論していいのか必ずしもよくわからないという御意見もあるので、もしよろしければ事務局から、そもそも何を議論しようとしているのか、それからタイムスケジュール、何をいつごろまでに議論しようとしているのかということが、委員の方には見えていないのかもしれないので、私から言って間違いがあるといけないので、もしよろしければ……。
〇事務局
非常に難しい御質問でございますけれども、もともと株式投信の議論をする際に、個人の直接投資、個人の株式への参加につきまして、個別の株よりも株式投信のほうが参加しやすいのではないかという、市場から見た実態論のところは格別異論はないと思うのです。その上で、個別株のときに議論しておりました繰越しとか通算ということについて、どう考えるかという点については、先ほど、ファンドの中でとりあえず行われているのではないかというふうに申し上げましたが、さらにそれを越えて損を出しているときにどうするかという点があるということかと思います。
もう一つ、一番初めに金融庁からのヒアリングをしていただきましたが、金融庁からの要望に株式投信の話が入っておりました。もともと金融庁の要望自体が、税率を全体に引き下げるとか、あるいは、損が出たときの損を、配当なり株式のキャピタルゲインなり、周りのいろいろなものとの間で通算できないかというお話でもありました。そこのところが、これまでの所得税法の、どことどこで通算するかというところの括りとだいぶ異なっているものですから、そこのところを我々なりに整理した上でここでお諮りしたいとは思っておりますけれども、いまはまだ基本のところだけを見ていただいているという状況でございます。
加えてもう一点、個人の保有する資産の価値の移動について所得税でどう見るのかという点は、初めに所得の分類を御説明いたしましたときに、我々はちょっと意識しているところでございまして、そこはまた繰り返し御議論いただいたほうがよろしいかと思いますけれども、私が見るところ、個人が持っている保有の資産の価値の変動というのは、譲渡した場合に、譲渡益とか譲渡損という形で出てまいります。単に保有しているものの価値の上下動、特に減のほうは、それ自身が所得税の課税の中には入ってこないということがございまして、株式の投資信託の場合におきましても、譲渡した場合の益とか損のほかに、解約・償還したときに、もともとの自分の資産が減価していたということをどう見るのかというのは、もう一つ別の次元の点でございます。
というのは、預貯金につきましても、現在のところ、仮に預金が減価して戻ってきましたときに、その減価分を所得計算上の必要経費として見るというふうにはなっておりません。その辺は、所得税の所得分類のところにさかのぼって変更を要する話になるのかなということが、整理されておりませんけれども、私どもの感じでございます。
〇委員
スケジュールの件はお話がなかったので、私が理解している限りの話で申します。11月中にもう1回、場合によってはもう2回の議論をこの小委員会でやって、皆さんから、ほかにこういうことのほうが大事だからこれをやれという議論があれば別ですが、投資信託に関して皆さんの意見が一致すれば、何らかの取りまとめをして税調の総会に報告する。それがうまくいけば、国会での審議にインパクトを与えるかもしれない。そこまで事務局がお考えかどうか私はよくわからないのですが、そういうふうに理解しております。
〇委員
先ほどの事務局の最後の説明ですけれども、持っている資産の価値の目減りを税制上どう扱うかというのは、時価会計的な考え方ですか、それとも……。私、ちょっと理解できなかったのですが。
〇事務局
法人ですと、全体が法人の収益をもたらすために持っている資産でございますし、活動そのものが全部事業活動でございますから、資産も収入の出入りも一体として収益を計算する根拠になっております。さらに、時価会計的な資産の価値--その年の資産の価値の変動をその年の所得にどう反映するかというところも、議論が進んでいるような感じがいたしますけれども、個人の場合は、自分が持っている資産は、生活に使っているものから事業に使っているものまで幅もございますし、持っている資産の増減につきまして、毎年の所得税の中でそれをこなしていくという体系にはなっておらないような感じがいたします。
そこは所得税の限界なのか、所得税というのはそういうものなのか、わかりませんが、少なくとも所得分類がこういう形で、所得として明らかに把握できるものについて税負担をお願いするという仕組みになっておりますので、法人で、我々が常々意識しがちな全体として収入、それに対する経費、どういうふうに計算していくか、あるいは、保有資産の価値をそのときの収益にどうやって反映するかという精緻なところと、少し違っているような感じがいたします。その辺が、執行上の限界などとも関係してくるのかなというふうに思って、そういうふうに御説明いたしたつもりでございます。
〇委員
所得の分類の一番最初の表がありましたね。譲渡所得の目減りや何かは、資料[2]、1ページの一番下のコメ印の注、ここら辺が議論の対象になるということですか。
〇事務局
このコメ印のところは、関係もいたしますが、損をどういう形でそれ以外の所得の得と通算してよろしいかという意味でございます。お話し申し上げましたのは、そもそも個人の所得税の世界で、所得なり、それに関係する損を認識するときに、自分が持っていた資産の目減りをどう認識するか。譲渡する場合は、譲渡の益とか譲渡の損がはっきりいたしますが、預けていたものが返ってきたという形に、いまのところ譲渡とは分けているような感じがいたします。
〇委員
わかりました。
〇委員
いまのスケジュールをお伺いしますと、総合課税というよりも、はるかにタイムスパンの短いお話が前提にあるようです。例えば現在の景気対策の一環として、理論的に考えても、これは資産所得税制の一つですから、資産全体についての整合性がないといけないと思うのです。そうすると、現在重要なのは、ここで議論できる話かどうかわかりませんけれども、不動産所得は非常に大きい話ではないかと思っているのですが、その辺はどこで議論するのですか。ここはそこまでは踏み込まないのですか。資産課税の一環であるし、先ほどの資産目減りの評価なんていうと、そこもやはり目減りはしているわけですから、そことの整合性という問題も出てくると思うのですけれども。
〇委員
もう少ししたら、そちらに話を振りかえようと思っていたのですが、もしよろしければ、それも含めて議論していただいてもいいと思います。きょうは、最後の10分か15分を使って、今後、年末に向けた小委員会の検討課題として、投資信託制度、そのほかにあと二点ほどお諮りしようかと思ったのです。一つは、資料を配付してあります[1]のほうの租税特別措置の見直しに関連して、何か御意見があればおっしゃっていただきたい。これは、どちらかというと基礎問題小委員会がやっていることですので、そちらにお話をつなぎますという趣旨です。
もう一点は、この小委員会で、貯蓄優遇税制の見直しという観点からの検討として、この投資信託のほかにどういう論点があるのか、そういうことに関して御意見がありましたらそれもちょうだいしたいというつもりでおりました。ですから、まだ25分くらいありますから、不動産所得の話も重要だから話をしたいということであれば、ぜひ御意見を伺いたいと思います。租特とか不動産とか、ほかの論点も含めて、どうぞ。
〇委員
バブルのあとの対応ということを考えますと、バブルになったのも不動産市場に資金が相当流入したということですし、バブル崩壊も、そこに流動性が入らなくしたことがきっかけです。そこのところが資産としても最大の規模の資産なわけですから、それをどうするかというのは、不良債権問題、金融システムの問題とも非常によく関係しているだろうと思いますので、その辺でもし何かできることがあれば……。税制でできることがどれくらいあるかという問題もあるでしょうが、不動産税制というのはバブルの前のレベルに戻ったということで、バブル後の対応があまりできていないという点もあるのではないかと思います。
資産所得全体のことを考えて動いていかないと、どうもパッチワーク的になって、あとから複雑化したばかりのような印象があったのではいけないのではないか。公平性とか、シンプリシティーというものは非常に重要だと思いますので、そこの議論でできることはやっていく必要があるのではないかなというふうに考えています。
〇委員
不動産税制に関して、現状の税制に問題があるからそれを直せという御趣旨なのか。そういうふうに理解してよろしいわけですか。
〇委員
それもあると思います。
〇委員
それのほかにも、現状の景気とか、構造改革とか、そういうことを踏まえて不動産税制を変えて、何かそういうことに使ったほうがいいということですか。両方ですか。
〇委員
そういうことです。
〇委員
それと関連ですが、不動産もそうでしょうけれども、不動産投資みたいなものがこれからどんどん「リート(REIT)」のような形で出てくると思うわけで、それと実物の不動産との整合性がとれていないといけませんから、それが一つ。
住宅に関しましても、住宅を実物で買う場合と、これから住宅ローン債券の流動化のようなことが出れば、それがまた投資信託の運用資産になりますから、そういうふうに流動化したものと実物で持っているものとの整合性が考えられる必要があるのではないかと思います。
それから、先ほどちょっと申し上げたのですが、預金もフィックスト・インカムだったのですけれども、ペイオフが始まれば、1,000万円以上はフィックスト・インカムではなくなるわけでして、そういうふうになったときに投信と同じようになるわけですね。1,000万円以上に関しては、銀行の資産が劣化すれば、その分、元本が落ちるわけです。いまのとおりですと、これが2002年の4月から始まります。ここも、一番上の利子所得と考えられているわけですけれども、下と一緒に考えなくてはいけないような気がいたしまして、早急に考える必要があるのではないかと思います。
〇委員
幾つかありますが、いま委員が言われた、利子所得もペイオフだと。それは、倒産法の問題といいますか、銀行そのものが危なくなるのと、証券投資信託、あるいは投資法人でもいいのですが、その場合のリスクとは大きさが違うと思いますし、法律上の性格も全然違うわけですね。片方は元本保証で、元本が保証できなくなるのが倒産です。会社更生になりますが、それと、もともと元本を保証していない信託契約なり法人の場合とは、分けたほうがよろしいと思います。
それから、きょうはお話が出ていませんが、不動産投資信託の取扱いです。これを不動産そのものと同じように扱うというのか--そういう議論があると思いますけれども、その論点が私はちょっと違うのではないかと思います。基本的には、10種類の所得というのは動かないのか、それとも、上の二つ、三つ、これを動かすという方向でも議論するのか。
〇事務局
先ほど小委員長からあった話に関してですが、実は、株式投資信託の議論をしていて、幾つも難しい問題点はあるのですが、市場へお金を流そうというときに、少しでもリスクを分散できるであろう株式投資信託なりというものが非常に重要なツールであるという認識を、我々としても十分持っています。税制上、まさに所得分類から入りましたとおり、株式投資信託を譲渡したり売ったりしたときの損益であれば、従来の譲渡損失みたいな話が成り立ち得るのですが、満期になって投資信託が戻ってきたときに、それが減価していたと。実は、その損は所得の中で反映する仕組みになっていないのです。
例えば、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得というのを「注」でお書きしました。別にそれを全部一緒にするという意味ではありませんけれども、特に譲渡所得というところを見ていただくと、売却したときに発生するわけです。それは認識としてあるのですけれども、戻ってきたときに減価していたという認識は、個人のこういう所得税の世界ではほとんどないのです。言いかえれば、買ってあったものが減価していますと。売ればそれは譲渡損になるのですけれども、売らないで、価値を持ってきましたというものを、所得の中にどう反映するんですかという話なのです。不動産だって、持っていて売ればそこで譲渡損が出てくる。不動産所得というのは賃料ですから、それはちょっと違うわけで、フローの話ですから。そうではなくて、不動産を持っていてそれが減価していた。明らかに減価している。しかし、その減価は、売って初めて実現して所得税の世界に入るわけでございますね。
ところが、投資信託というのは、現金にかわることはそうなのですが、自分の持っている信託のそれが目減りしたときの評価をどうするのかというのは、個人は内と外と二つにあって、事業であればそれを評価できるのですが、事業でない、内のものにおいてどう表現するかというのは、根本的に非常に難しい問題を内包しているわけです。それを大きくとらえるなら、雑損控除みたいな話が一方にあるんです。例えば、物を失ってしまって、泥棒に入られた、こういうようなものでは一部、所得の世界では入ってくるのがあるわけです。しかし、そうではない世界で一体どう表現するのかというのが、配当の問題とか何かは別にして、そこの元本の部分にありますというのが一つです。
もう一つは、これはもっとマイナーな話ですが、現状の公社債投信は公社債のみですが、株式投資信託は、わずかでも株式が入ればみんな株式投資信託になってしまうものですから、株式のウエートがわずかしかないのに、実は株式投資信託と言っているものもかなりある。しかも、株式投資信託というのは必ずしも中身がフィックスされているわけではなくて、中身がゴロゴロ変わっているケースもあるわけです。そういうものを一体どういうふうに認識して、個人に帰属させるかというのは、現実的に整理……。例えば平成7年にそうした特定株式投資信託のように、100%株式ならはっきり証券と同じ扱いができるわけですし、今度入れた不動産投資証券みたいなものも完全に不動産ですから、きちっと整理して、今回の法改正に、政令ですけれども入れ込ませていただいているわけです。そういう意味で、株式投資信託の公募のもの--前者のほうの問題が若干哲学的といいますか、所得税本体の思想に絡んでいる話なものですから、非常に難しい。10分類の所得分類をさらにどうするか、というところにまで絡み得る話だろうと思っています。
いずれ、二元性所得税論であるか、あるいは総合課税にするのかという大きな話とは別に(これはもっと大きな話としてありますが)、その前に、年末に向けて投資信託を何らかの格好で評価していきたいと。評価というか、アプローチしやすい、リスクを反映したものに変えていきたいというときのそのリスクの損が、所得という認識の中で非常に困っているという実情の一端を、皆さんに議論の説明をさせていただいたということでございます。どこかで割り切りというのはあるのだと思いますが。
〇委員
ちょっとお聞きしてよろしいですか。大変重要で、むしろ問題が整理されたと思うのですが、その満期の話ですけれども、例えば株式の場合、株式会社が倒産するとしますね。そうすると、その株式はチャラになります。これは、今回の証券改正も含めてですが、損失繰越しということを考えた場合には損失に入らないと。ということは、要するに1円でも市場価値がある間はとにかく売って、それで損失を出して、そこでは自己責任だということですね。そうだとしたら投資信託の場合も、今度は満期がはっきりわかっているわけですし、基準価額も出ているわけですから、満期になる1日前に売ってしまえば、当然、そういう損失になりますよね。そこはまさに自己責任であって、最後の日まで待つのが悪いんだ、株式だって同じではないか、というような議論というのは成り立たないのでしょうか。
〇事務局
ゼロになるようなケースは全くそうなのですが、ただ単に減価したという場合は、あくまでも売ってはいないものですから。
〇委員
だから、1日前に売ってしまうと。
〇事務局
売れれば、そうです。もちろんそのとおりです。実際に倒産するような株券は、大抵整理ポストに入って1円とかいう値段がついて、それで売ってしまっているケースが大半だろうと思います。しかし倒産したときは、個人の場合にはそれが損にならない。あくまでもリスクとして、いわゆる損は立てられていないということなのです。
〇委員
いまの点ですけれども、私が素人だからそう思うのかもしれませんが、行為として売ったということにどこまでこだわる必要があるのかというのは、経済学者的に考えると疑問で、要するに、満期が来て償還が行われるというのは、形の上では強制的に買上げが行われると。満期日というのは発行主体のほうがコールをかける日であって、そこで持っている人間は強制的に発行体に売却しなければいけないということなんだというふうに観念することは、機能的には十分できることだと思うのです。そういうふうに機能的に観念して扱いを統一することが、経済学者的に考えると、できそうな気がするんだけれども、そこは本質的に難しい問題だと御指摘になったので、よくわからないというのが一点目です。
二点目は、金融商品の区別で、株式投信というのは株式が幾ら入っているかわからないという話です。私が最初に申し上げた、マーク・ツー・マーケットされるか、されないかで区別するという考え方を取るといたしますと、それは、バックにある資産の構成比がどうかとかそういう話とは直接関係のないことであって、どんな資産であれ、とにかくバックにある資産の価値変化を反映する形で、請求権の価値が値洗いされるという仕組みがあるか、ないかというところが大きな違いである。結果的にバックにある資産の価値がほとんど動かなければ、値洗いされても実態的には元本保証と同じだというケースもあり得ると思うのですが、そういう場合でも、とにかくバックにある資産の価値変化に応じて評価替えが行われるということがある商品は、統一的に扱ったほうがいいのではないか。そういうふうに考えるのですが、発想が素人過ぎるのかどうか。
〇事務局
経済学的には言われるとおりだと思います。ただ、現実における税法上の所得は譲渡所得となっていて、譲渡等所得ではない。明らかに違うわけです。ただ、そこはそれこそこれに限らずいろいろなものに波及すると思います。たまたま投資信託というものだけとらえておりますが、もしお時間があれば次回にでも……。どんなものに影響してくるかというと、たぶん山のようにあるはずです。たまたま持っているものが、ある時点において、売却もしないけれども、評価が明らかに下がっているもの、滅失しているもの、いろいろなものがあり得ると思います。それを所得の中に織り込んでくるということは、たぶん所得税の世界をきわめて課税ベースを狭くしてしまうことになる。逆に言えば、上がったときも、そういう商品は全部評価替えをして課税しなければならないという話になってきますから、このあたりは損だけを見るわけではない、逆に得も見なければならなくなる。それは現金にどういうふうになるかという話になってきて、これはきわめて難しい世界になると私は思います。
もちろん、全部個人まで含めて、法人の世界の企業会計のように時価会計にするということなら、これはわかりませんけれども、明らかにそういうことは困難だろうと思いますから、そういう意味では、非常に悩ましい、所得税における家の外と内の部分を抱えているわけです。こういうのが、外に出したいから、一人が法人をつくりましょうみたいな話が、節税策としてよく本に出てきますよね、何とかエンタープライズとか。このたぐいは、税法上、評価に当たる部分なものですから。たまたま投資信託というのが、金銭でそういう格好でなってくるので、たしかに経済学的には言われるとおりですけれども、所得税という世界に落としたとき、どう整理するかというのは、きわめて難しいのではないかと思います。
また、ここはいろいろな波及があり得ると思います。損と得と両方あると思いますから、それをどう整理するかという話にぎりぎり……。まやかしでない格好で……本質論をすると、非常に難しい問題だと思います。
〇委員
公社債投信と株式投信で、公社債投信といって売ったのに、株式が入っていたらそれはとんでもない話ですけれども、株式投信で売って、ファンド・マネジャーだったら、ここは流動性比率を高めなければいけないというふうに投資家のためを図ったら、一たんは株式全部を売却して流動性でもっているというのは当然の義務なわけでしょう。そういう局面というのはあり得るわけです。ずっと株式で持っていろというのは、それは投資家のことを全然考えていないファンド・マネージャーだと。むちゃくちゃなことですから、それはいろいろですよ。銀行預金なり全部そうしているかもしれませんし、先ほどの理解はちょっと違うのではないかと思います。
〇事務局
申し訳ありません、いまの点で誤解があるといけませんが、株式投資信託の資産運用はもちろん株だけである必要はなくて、公社債であれ、余資は預金であったりするわけでして、一番最後に資料をおつけしましたが、株6割、公社債2割ぐらいの感じで、しかも株価が上がるときは株が増えたり、そういう移動は当然あり得るということだと思います。
私が先ほど申し上げたかったのは、平成7年以降にできました上場物の株式投資信託というのは、わざわざ株100%に絞りまして、売買の仕方も上場にして、かつ一部解約はなしにしてという商品が新しくできているのでございます。つまり、株並の課税であることを言いやすいといいますか、それにつきましてはまさに株並の譲渡益課税で組んでいるわけであります。そこのところは所得の内容の問題もございますし、流通の仕方が、上場で、転々流通する仕組みになっておりますので、株とそろえているという点もあろうかと思います。
それ以外の投資信託は、公募であれ私募であれ、取引所で転々流通するというものではありません。したがって、売買というよりは、どちらかというと解約という形でファンドから出ていくことで、最終的に信託関係が終了するという、いわば最終的な契約関係からの離脱の仕方が、譲渡中心なのか、解約なのかという違いが、一般の株式投信と特定の株式投信との間にあるということをちょっと申し上げました。
〇委員
現制ではそうなっているかもしれませんけれども、そこに差をつける理由は何もないでしょう。ETFと株式投信一般との間に、差をつける理由はないと思うのですが。
〇事務局
そこは最終的に幾つかのファクターがあると思うのです。差をつける必要はないという御議論もあると思いますが、一方で、個人が課税をしていくときに、譲渡益課税のフレームのほうがしやすいか、むしろ収益のところで源泉分離でとらえたほうがしやすいかという、しやすさの面では違いがあるような感じが私はいたします。収益部分だけとらえて、経済的に価値が同じだから同じように課税するという御議論ももちろんあり得るかと思いますが、いまは、上場で、株式の転々流通でというものに近い形のものを一つ新しい商品としてつくっているということはございます。
〇委員
いま言われたことを正面からやろうとしますと、所得の分類を前提とした上で、中身の入れかえ、あるいは、年金のときにそれをやりましたけれども、第二項をつくったりする形で一つ対応して、もう一つは、損益通算のところに何らかのルールを修正するのか、そういうことになりますでしょうか。あるいは、償還というのを何かの形で読みかえると。ただ、先ほど言われたように、ゴルフ場の利用権とかみんな入ってきてしまいますから。といって特別措置というのはいくら何でもあれですから、そうすると所得の分類、もともと利子所得のこの四つは全然ばらばらで、定義づけようがない四つの商品が並んでいるということですから、この際、いろいろ入れ替えとか……。それと、正論でいきますと、損益通算のところ、事実上はいま、事業所得と不動産所得の損失だけがほかの所得からできるようになっているわけですね。そこをもう少し広げられるかどうかという形ですが。
〇委員
それは、先ほども議論がありましたし、事務局からも話があったと思います。まさに雑損失の世界へもっていって、そこで処理してやると。いまなら、家屋敷が火事で焼ければ見るという、そこまでありますけれども、マイカルの社債を持っていたのがパーになってしまったというのも、そこまでいくのかどうか。株式は、譲渡損が出たときは引けるが、パーになったらだめだと。いずれにしてもマイカルは助からないわけで、やはり限界があるのかなあと。生活に必要な資産までは雑損なり何なりで見るが、そこを越えるというのはなかなか難しいのではないか。所得の分類の中に、譲渡にそういった類似のものも含めていくというあれもあるでしょうけれども、それは本当に問題が大き過ぎて、金融小委のあれを越えていく、所得全体の話になるのかなという気がいたします。それに入らないなら、雑損失あたりで処理してくれるか。それもちょっと無理かなあという気がいたします。
〇委員
ということは、法律上は非常に難しいということになるのですかね。ただ、この間の議論を踏まえて、それから世の中の常識を踏まえて言うと、「株式と投信とそんなに違うの?」というのが健全な常識だと思うのです。法律というのは、できるだけその健全な常識をうまく処理するというのが本来の用途だと思っていますので、もし可能ならば次回にでも、法律的にどういう形だったら処理ができて、その場合にはどういう問題が起きるのか。具体的にどういう問題が出てくるのかということも、きょうで尽くされているのかどうかもわからないので、もし尽くされていない部分もありましたら、こういう問題がさらにあるということを含めて、事務局のほうで整理していただければと思います。
〇委員
先ほどの事務局の説明の中で、我々の観念だと、投資信託を証券会社に持っていって売るということだと思っていたのですけれども、税制上の考え方としては、あれは解約だというふうに考えるということですか。
〇事務局
証券会社が受益証券を反対側となって買って、証券会社が投信会社の間で解約をするというやり方も、あるとは思います。ただ、基本的には、証券会社を通じて解約されるというふうに認識されているのではないかと思います。
〇委員
それも含めて、次回に議論することにしたいと思います。
きょうは、不手際で少し時間が延長していますが、次回以降、事務局とも相談しつつ検討を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
次回は、11月13日・火曜日の午前10時から開催したいと思います。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。