第7回金融小委員会 議事録

平成13年9月18日開催

委員

それでは、ただいまから、第7回金融小委員会を開催いたします。

本日の審議に際しましては、若林財務副大臣の御出席をいただいております。

本日の議題ですが、先日申し上げましたとおり、証券税制等に関する小委員会の意見について、審議を行っていきたいと思います。

来週の25日、火曜日に総会が開催されますので、そこで検討状況を報告したいと考えております。したがって、本日中に意見を取りまとめたいと考えておりますので、御協力をお願いいたします。

本日お配りしている案は、後ほど事務局に読み上げさせますが、皆さまからの御意見をも踏まえまして、会長と相談しながらまとめたものでございます。

先日も申し上げましたが、政府税調の考え方を世の中にアピールすることに意義があるのではないかと考えており、最近の政治状況等を踏まえますと、臨時国会前に取りまとめを行うことが趣旨にかなうと考えております。

したがって、時間的な都合で、お配りしている案は株式譲渡益課税に関するものが中心となっております。その他の課題については、今回の取りまとめのあと、引き続き本小委員会で検討してまいりたいと思いますので、その点については、ぜひとも御理解いただきたいと思います。

また、先日、私宛てにメモの提出を依頼しておりました。もし御賛同がいただけるのであれば、委員の方限りとして、いただいたメモを配付させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、事務局からいただいたメモをまとめて配付させます。

このほかにも直接電話などを通じて委員の方々から御意見をいただいており、大変感謝しております。御協力本当にありがとうございました。

(資料配付)

委員

それでは、本日の審議に入ります。

まず、事務局に案を読み上げさせます。その後、事務局より、前回の資料からの修正点などについて説明させます。

では、事務局、よろしくお願いいたします。

事務局

「案」読み上げ

証券税制等についての意見(案)

本年6月に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針」においては、「証券市場の構造改革」として、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替えなどを踏まえ、税制を含めた関連する諸制度における対応について検討を行う」こととされている。

本小委員会は、株式譲渡益に係る源泉分離課税の廃止をはじめとする「税制面での構造改革」を着実に実行することが、市場の透明性・信頼性の向上を通じ、「証券市場の構造改革」に資すると考える。

これまで本小委員会は、今後のあるべき金融の姿を展望しつつ、税制全体と整合性のある証券税制のあり方を検討してきた。証券税制については最近、各方面で様々な提案がなされており、当面の「株価対策」としての議論や、株式譲渡益に係る源泉分離課税廃止の再度の先送りを求める議論も見受けられる。

今般、こうした最近の諸情勢にかんがみ、証券市場の現状認識等を踏まえた上で、現時点での基本的な考え方を整理し、提示する。

I.証券市場の現状認識等

イ 「証券市場の構造改革」を進めるためには、預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇への金融のあり方の切り替えの観点を踏まえ、一部の限られた「個人投資家」が短期売買で利益を狙う場としてだけではなく、広く一般の国民が、長期・安定的な資産運用を図ることが可能な場として、証券市場の健全な形成を目指していくことに政策の重点を置く必要がある。

ロ 一般の国民の証券市場への参加が進まない理由としては、証券業界や市場自体への不信感の存在が大きな要因としてあげられる。まずは不信感の払拭に向けた業界自身の更なる努力が必要である。

ハ 同時に、発行会社においては、信頼できる経営情報開示の徹底が求められるとともに、株主資本利益率や配当性向の向上など株主重視の経営姿勢を確立することが求められている。

また、行政や自主規制団体を通じた市場監視・取締りの抜本的強化、不公正取引の防止や資産運用者の受託者責任の明確化など、各種の制度・施策の整備が必要である。

ニ なお、現在のようなデフレ状況下では、株価等は低下傾向とならざるを得ない。更に、時価会計の導入を背景として、企業にとって株価変動が企業収益に直接影響するリスクが高まっており、金融機関のみならず、事業会社においても持合い株式売却の動きが進んでいる。これが現在の株価低迷の要因の一つとなっており、今後継続する可能性も否定できない。

ホ また、我が国家計には、証券投資よりも預貯金中心の貯蓄を重視する傾向がある。貯蓄重視指向の要因として、それを助長する我が国金融の制度・構造の存在が指摘できる。例えば、ペイオフ解禁の延期や民間金融機関への公的資金の導入、政府の信用力を背景とする郵便貯金の存在などであり、これらの結果、預貯金の持つ本来的なリスクが表面化していない。今般、「金融のあり方の切り替え」の観点から、家計の資産選択における変化を促すとすれば、貯蓄を優遇してきた制度・構造の是正も重要な課題となる。

へ 現在の証券市場をとりまく問題の解決のためには、以上のとおり、包括的な「インフラ」を早急に整備することが重要であり、関係者の積極的な対応を望みたい。

ト 本小委員会は、こうした本質的問題の解決抜きに、税制によって証券市場を活性化させることには限界があることを指摘するとともに、短期的な観点からでなく、むしろ「税制面での構造改革」を進めることにより、「証券市場の構造改革」に資することが重要であると考える。

II.証券税制のあり方

1) 基本認識

イ 「証券市場の構造改革」に資する税制のあり方については、市場の透明性や信頼性の向上と整合的な方向を目指すとともに、「公平・中立・簡素」の原則に立って構築することが基本である。

ロ 同時に、「金融のあり方の切り替え」との方針に照らし、政策的配慮として、証券市場の裾野を拡大すべく、一般の国民による株式の長期・安定的な保有を促し、厚みのある市場形成に資することが重要である。

その際、一般の国民が個別に市場参加するのではなく、投資信託など、仲介機関を通じて株式を保有する仕組みの重要性も指摘できる。

また、現在、証券税制については、株式取引の「活性化」を求めて、株式譲渡益課税の議論がなされているが、上記のように、広く一般の国民の市場参加を図るという観点からは、「売買」ではなく、「保有」に着目した見直しを検討することがむしろ重要と考える。こうした課題について、今後、更に検討を進めていくこととしたい。

ハ 一方、貯蓄優遇税制については、「金融のあり方の切り替え」との方針にかんがみれば、また、「租税特別措置の聖域なき見直し」との方針からも、根本的に再検討する必要がある。

こうした観点からは、少額貯蓄非課税制度等(老人マル優等)について基本的には、その廃止に向け検討することが適当である。

ニ なお、金融証券税制の構築に際し、納税者番号制度が存在しないことが一定の制約要因となっていることは否定できない。納税者番号制度の導入に向けて、具体的な検討を促進することが必要と考える。

2) 株式譲渡益課税のあり方
株式譲渡益課税に関する主な論点について、本小委員会としては、以下のように考える。

(源泉分離課税の廃止)

イ 現行の源泉分離選択課税方式は、税制調査会がこれまで累次にわたり指摘してきたとおり、ー 諸外国に例のない「みなし利益」へ課税するものであり、所得課税としてふさわしくない、ー 損失発生時に申告分離課税を選択し、利益発生時には源泉分離課税の
選択を行うことにより、意図的な税負担調整が可能となる、ー これらと合わせて課税に対する匿名性がある、ー 源泉分離課税を選択すると個人住民税が非課税であることから、適正化が必要である、などといった問題点があり、これを廃止し、申告分離課税へ一本化すべきである。

ロ 11年度税制改正において、有価証券取引税の廃止と合わせて源泉分離課税の廃止が決定されたにもかかわらず、13年度税制改正において、その実施が更に2年先送りされている。

源泉分離課税の廃止は、以下に掲げる制度改正の前提である。先送りすることなく、むしろ、廃止時期を出来る限り繰り上げることが適当である。

(損失繰越)

イ 申告分離課税へ一本化され、源泉分離選択による税負担調整が不可能となった後は、リスク負担の緩和等に配慮し、株式譲渡損益間での損失繰越制度の創設を検討すべきである。

ロ その場合、特例として認められている現行の損失繰越制度(災害による損失繰越等)などとの整合性を踏まえた上で、繰越期間など、その具体的な仕組みを検討する必要がある。

ハ なお、現行の源泉分離選択課税方式の下で、損失繰越を認めることは、意図的な税負担調整が可能という現行制度の問題点を更に拡大するものであり、採り得ない。

ニ また、株式については、現行の申告分離課税を前提とする以上、更に、譲渡損益の性格にかんがみれば、給与等の他の所得との損益通算を認めることは不適当である。

(申告分離課税の税負担水準)

イ 現在の申告分離課税の税率(26%)は、総合累進課税を基本とする現行の枠組みの下で、利子、給与、他の譲渡益等に対する税負担水準とのバランスなどを考慮し設定されたものである。また、株式投資への配慮としては、長期保有上場株式を対象に100万円特別控除制度が創設され、一般的な個人投資家の実質税負担は、ゼロないし利子並み以下の水準となることにも留意する必要がある。

ロ こうした中、申告分離課税への一本化後の税負担水準のあり方については、
100万円特別控除制度については、課税ベースを大きく縮減させるものであって、その下での税率の引下げは適当でなく、税率の引下げを行う場合には、廃止又は縮減することが適当である。

税率については、他の金融収益に対する課税の中立性の観点や、また一般の国民の長期・安定的な株式保有に対し一定の配慮を行うとの観点から、その引き下げ(20%)が適当であるとの意見が多かった。一方、株式保有層の収入階級や垂直的公平の要請、収益の性格等を勘案すれば、現行水準(26%)を引き下げることは適当でないとの意見があった。

ハ 本小委員会は、以上の議論を踏まえ、申告分離課税への一本化後においては、100万円特別控除制度を廃止又は縮減した上で、長期保有上場株式の譲渡益に対しては、税率を原則として20%とすることが適当と考える。

(簡便な申告)

株式譲渡益については、本来、申告納税制度の下、投資家自ら売却価額と取得価額から算出される所得により申告を行うべきものである。そうした中、申告分離課税への一本化に伴い、新たに申告を行うこととなる一般の投資家について、簡便に申告を行えるよう、各種の取り組みを講ずることも重要と考えられる。

平成13年分の所得に係る申告以降、納税者利便の向上のため、申告書様式の見直し等が行われるが、関係業界においても、例えば、年間の取引実績等を顧客に通知するなど、申告に係る利便向上のための積極的な取り組みを要請したい。

委員

ありがとうございます。

それでは、前回の資料からの修正点などについて、事務局お願いします。

事務局

事務局説明

委員

ありがとうございました。

それでは、この案について、どうぞ御自由に意見などをいただきたいと思います。どうぞ。

御意見はありませんでしょうか。満点でこのまま合格いたすのでしょうか。

もちろん、全体にわたって見ていただきたいと思いますけれども、とりわけ前回議論いたしませんでした申告分離課税の税負担水準という点は、おそらくかなりほかの人々も注目するでしょうから、何かお気づきの点等がありましたら、どうぞ何なりとおっしゃってください。

委員

よくおまとめいただいてあると思いますので、大筋につきまして、特段のあれはありません。

ただ、AかBかという並列的なものは、もう今回は避けて、一本の筋でまとめようといういまの小委員長のお話、そのとおりだと思いますが、この中で唯一2つ議論があるというのは、この5ページの「ロ」のところでございます。やはり貯蓄から投資へと、そういうふうに向けていくという中でも、一般の国民の皆さんからすれば、一定水準まではやはり元本リスクのない貯蓄、そういったもので蓄積する。それを超える部分については、ある程度リスクを踏まえても、さらに蓄積を増やす。そのときには預貯金の水準以上の収益も狙う。しかし、リスクもある。そういう人たちだと思います。それから、もう一つはインフレをどうやってヘッジするかという御関心の方々、そういったグループの人たちであろうと思いますから、やはりそこは蓄積水準、収入水準というものは違う面がある。そういったところからすると、やはり金融資産間での中立性とは言いつつ、そういった点を配慮すれば、差があっても悪くはないという点で、この「一方」というのを載せていただいていることは、結構なことではないかと思っております。

しかし、そういう人たちはリスクに挑戦する人たちですから、リスクに対して儲かったときは、もうその人は成功されたわけですけれども、リスクを取られて、場合によっては損失をこうむるかもしれない。それに対して積極的に配慮してやるというのがいいのではないかと思うわけでございます。そういった意味におきまして、損失の繰越しの問題を正面から取り上げていく。これは結構なことだと思います。

私はさらに、余分なことかもしれませんが、積極的にそういったものに投資をしたら、即、その投資した段階で、5%なり10%なりをもう引き下げてやる。しかし、それは取得価額を引き下げますから、もし売ったときにそれを超えていれば、今度は利益がそれだけ大きくなるわけですけれども、即、控除をすることによって、リスクを最初から配慮するという考え方もあるかもしれないということを、コメントの中では載せさせていただきましたけれども。それはあまり税制としては、全体から見て問題かもしれませんので、あえてあまり申し上げませんでしたが、コメントの中には、そういったことも考えられるのではないかということを述べております。要は、リスクに対して、できれば正面から取り組んで、かなりなものを配慮したらどうかと、そういう基本的な線でございますので、今日の案の取りまとめ、そこは強調されていますので、結構かと思うわけでございます。

委員

ありがとうございます。基本的に修文は要らないということでよろしいですか。

委員

1つは現状認識のところの問題と、あとは株式投資信託についての税制の話と2点です。

証券市場の現状認識の「ニ」、2ページのところ、「現在のようなデフレ状況下では」というくだりですが、マーケットの理解からいうと、これは誤りではないかと思いますね。例えば、「株価等は低下傾向とならざる得ない」というのは、誰がどういう認定をしているのか。もし下がるとなれば、いまの値がついているわけはないし、現在、売り買いが交錯しているというのは、いまの開かれた情報量で、売ったほうがいいと思う人と、買ったほうがいいという人が両方出会って値がついているわけですから、それについて先行き低下傾向とならざるを得ないというのは、誰がどういうものの見方から言っているのかなと。ちょっと不思議だなというのが普通あると思います。

それから、持合い解消でディスホールディングが起きる。それはそうなのでしょう。でも、これも株価低迷の要因という理解も、それはなくはないのでしょうけれども、これもホールディング、あるいは例えば年金基金が、今後片方で持合い解消があるとともに、年金基金は、どういう年金改革が行われるかにもよりますけれども、これは買い手として明らかに持続的に登場してくるものですから、これも何か株価の先行きについて、持合い解消があるからといって、それが何か特定の色合いを示すということは、これはおそらく誤りだと思います。

それから、90年代、アメリカでもドイツでも、広い意味での個人株主の拡大に株式投資信託が大きな役割を果たしているわけですが、この株式投資信託についての、例えば野村が去年の年初導入しました日本株戦略ファンドというのは、1万円がいま5,000円ぐらいらしいのですけれども、このキャピタルロスはどうなるのですか。損益通算あるいは繰越控除というのは……

委員

私の理解では投資信託なので、入らないと思います。今回の提案は、株式についてだけの繰越しを認めると。

委員

私、欠席したときもあったのだけど、これは議論しなかったでしたか。

委員

ちょっと議論しましたけれども、投資信託についてそういうことをやるのは、非常に投資信託の仕組みの中身であるとか、内容であるとか、法律的な解釈の問題があって、簡単にはできないだろうと。そういう意味で、問題であることはよくわかっているので、3ページの「ロ」にありますように、投資信託などについては、ということを書いたあとに、最後に、「こうした課題について、今後、更に検討を進めていくことにしたい」ということで、小委員会としても長期的には議論したいと。ただ、今回の基本的考え方に、具体的な考え方、具体的な改革の方向を提示するほど物事は練れていないというのが、小委員会での、あるいは事務当局の意見であるということですけれども。事務当局の意見にみんな一応納得しているということなのですけれども。

委員

この投資信託の問題については、僕は前回のときに最後にちょっと言及をいたしまして、投資信託の中身が、いま小委員長が言われましたように、いろいろあって、すぐに結論が出しづらいと。まず、いわば生株といいますか、株そのものの扱いについて、あり方をはっきりしたところで、投資信託の問題というのを改めてほどき直して検討をする必要があると。したがって、少し時間がかかるので、後送りにしたほうがいいというような感じのお話だったと思うのです。

私、やはりいまの委員と同じように、この投資信託というのは、個人の幅広い層の厚い投資活動というものを今後つくっていくと考える場合には、極めて大事な要素だと思いますので、仮に遅れるとしても、そんなに長期的なという話ではなくて、可及的速やかに、生株についての扱いが決まったのに従って、適切な措置が講じられるべきだと思います。

委員

先送りしないということですね。

委員

はい、そういうことです。

委員

最後の点はよろしいですか。

委員

はい。

委員

むしろ全般の御意見等、特に2ページの「ニ」あたりですか、それから、もちろん投資信託について、少し修文を考えなくてはいけないかもしれませんが、まず関連する御意見がありましたら、御意見を伺いたいと思います。

委員

「ニ」のところにつきまして、私は2行目のところにちょっと違和感がありまして、「時価会計の導入を背景として、企業にとって株価変動が企業収益に直接影響するリスクが高まっており」というところですけれども、これはもともと企業が抱えていた株価変動リスクが、時価会計の導入によって顕在化したにすぎないので、導入によってリスクが高まったというわけではないので、ここはちょっと修文したほうがいいのではないかなという感じを受けました。

それから、3ページの投資信託に関しましては、私も全く同じ意見でございまして、本当に緊急の課題だと思っています。

それで、ここでちょっと私が感じますのは、いわゆる公社債投信の位置づけというのが、何かすっぽりこの中で抜けていて、本来、公社債投信というのも預貯金と株式投信の間のような存在で、リスクはそれほどないけれども、銀行のように自己資本で吸収するものではなくて、自己責任で投資家が買っていくという存在のものなのですけれども、証券税制のあり方というふうに銘打つ限りは、公社債投信とかこういったことについても、見直しをしていくのかどうなのかというようなことについても、少し議論しておいたほうがいいのかなと。書くにしろ、書かないにせよ。私は株式投信については、すぐに、非常に重要なテーマだと思っているのですけれども、すっぽり公社債投信が、MMFとかそういったものについて、何らここの中で位置づけられていないので、どういうふうにするのかということについて、少しコンセンサスを得ておいたほうがいいかなというような感じを受けたのですけれども。

委員

それは繰越しに関してですか、それとも、もう少し一般的な……。

委員

一般的なことでございます。

委員

いまの公社債投信のお話で、私の記憶によるところでは、公社債投資信託の源泉課税ですが、これは給与所得よりも古くて、大正か昭和の時代だったと思うのです。中身がそもそも公社債の利子だけではなくて、譲渡益なんかも入っている。にもかかわらず、無理やりそれを預貯金の利子と同じところへ押し込んであるのですが。

ただ、利子所得というと4つのカテゴリーがありまして、公社債投資信託と合同運用信託、それから預貯金の利子、もう一つは何でしたでしょうか、ちょっと忘れました。この4つで、もともと利子所得というもの自体が、ばらばらなものをまとめて1つの枠に入っていますので、そこまで広げて議論する余地は十分あると思うのですが、いまのところは、金融類似商品のカテゴリーをつくって、そこでまた利子並み課税をやるとか、そういう形で来ていますので、ここの公社債投資信託に手を加えるとなりますと、かなり預貯金の利子から始めて、利子所得全般を見直すということになりますが、タイミングとしては、ちょうどこういう機会に全部見直しをするというのも1つの考え方ではないかと思いますが、歴史的には随分古くからある税制であります。

委員

私が気がついた点でいうと、もう一つは、債券の譲渡益というのは全然ないんですね。だから、それも含めて多分議論を、これだけオープンマーケットになっているわけですから、考える必要があるのではないかと思いますが。

委員

投資信託の場合には、ある株で儲かって、ある株で損した場合は、チャラになっているでしょうね。ですから、個別株だとそうではないという方向ですよね。そこがなかなか難しくて、損失の問題は、経済学的にとかファイナンスの視点からは、対照的な取扱いというのは当然のことだと思うのですけれども、課税本来の中で、マイナスの扱いというのは、実は課税逃れと密接な関係がございまして、個別の株で得した場合と、損した場合と、両者をチャラにするというのはいろいろあるのでしょうけど、そこでもいろいろ利用制限を図るというのは、国際的な、アメリカにも469条とか何とかとございましたし、そう簡単な話ではなくて、投信の場合には、それがある程度、よくわかりませんが、きっとできるのだろうと思いますので、そこのバランスが出てくるということなんです。

損失の扱いが、先ほどの委員がおっしゃったような所得分類という明治20年勅令第5号以来の、嫌らしいというか、基本的な問題とも絡みますから、議論するとすれば、何年かかけて本気で取り組むということになって、そうではないと木に竹を接ぐという感じになってしまうということがあるのですが。

そのほかに損失の問題が非常に大きくて、この中に4ページのところと5ページのところに、「意図的な税負担調整」という非常に微妙な表現が使われているのですが、ここで言うのは源泉分離と申告分離のいいとこ取りの話なので、「意図的な税負担調整」ぐらいの表現で、「課税逃れ」という言葉を使う必要がないのだろうと思いますけれども、本当を言いますと、源泉分離課税を廃止しますと、源泉分離課税が例えば来年何月に廃止されるということが決まった瞬間、いろいろな課税逃れ商品が、必ず出てくるんですね。損失の利用について、課税制度を真っ当にするというときに、不当に軽減するというのは、やはりこれはあってはいけないことですから、源泉分離課税の廃止に伴って、いろいろなやり方をして、源泉分離課税のメリットを早めに得ておいて、しかしポジションはそのままということに対する否認というのは、置いておいたほうが、書き方は微妙ですけれども、何らかの表現は必要ではないかという気が、4ページの源泉分離課税廃止の「ロ」のところに必要だと思います。

それと、5ページの上のほうにあります「ニ」というところ、ここは譲渡損益の性格にかんがみれば、他の所得との損益通算を認めるというふうに書いてありますが、これが一番真っ当な理由だと思いますが、本当はそのほかにも、損失というのは自在につくり出せるものですから、大変なことになってしまうということがありますので、課税逃れ防止という視点も実は損失の封じ込めというのには大きいわけですね。アメリカは当然そういう条文を、アットリスクロールールとか、パッシブローリミテーションとか、個人にどうのとかという話はありますけれども、流れとしてございますので。

損失のマニピュレーションを使った課税逃れというのは、個人の場合には、要するに時価主義で評価されませんから、操作が可能ですね。しかも、ポジションをつくって、実際には損していないのだけれども、ある儲かっている人のところにマイナスを持ってくるということは、商品として売られるわけですから、そういう専門家がいるわけですから、それは何とかしなければいけない。あと、帳簿価額を切り上げて、高い帳簿価額にしておくと、これは財産ですから、次の課税が安くなりますからというようなことで、いろいろなマニピュレーションが可能でして、そこについて、書き方は微妙だと思いますが、何らかの表現を入れていただくとよろしいと思うのですけれども。

委員

最後の課税逃れに関連する一連の話ですけれども、ちょっと完全に理解していないかもしれないので、具体的にもしよろしければ、例えばここをこういう形で直したらどうかというのを。

委員

この段階で言う必要がありますか。

委員

源泉分離課税廃止と言った瞬間、駆け込みでマニピュレーションが行われることを防ぐということは、絶対入れておかないと。だって、この前、実際にそれは開発され、売った人がいるわけですから、買った人がいるということですし、今回も延びたからそれは日の目を見ませんでしたけれども、前と同じ商品がリバイバルして売られるということもあり得ますので、それはやっておいたほうが、それも野放しでもいいのですが、一応法律家としてはそのほうがいいかなと思います。

委員

言うことによって、どういうメリットが生まれるのでしょうか。

委員

そういう法律を、ふさぐ経過措置をつくるということでしょうね。源泉分離廃止がいつと決まったら、その間に。制度の変更というのは、課税逃れのいいチャンスなんですよね。だから、必要以上の何かが起こるということですけど。

委員

制度を変更したあとになってからは、それをつくることは難しいけれども、ということですか。

委員

例えば、来年3月に廃止と決まったら、その間にいまの有利な制度のメリットを受けておいて、ポジションは変えないということが行われる。駆け込みというのか、そういうことですけれども。

委員

ちょっと事務的に完全に私はよくわかっていないですが、事務局、何かいまの点について。

事務局

この文章の中のお話か、あるいは私どものほうで、それを注意して立法化しなければいけないというお話なのか、両方あるかと思うのですが、御指摘いただいたほうがよろしいということなのでしょうか。

委員

ほんのいくつかのフレーズで済む話ですから、入れればやらないというのが業界のあれですから。

委員

ただ、あまり専門的すぎてしまって、わかりにくくなりませんか。この文章は簡明を尊しとしていますから。

委員

それはお任せしますけれども、全然こだわりませんが、かなり重要な話だろうと思います。

委員

もしよろしければ、ちょっと10分ぐらいの間に、少し文章を考えてみていただくというのも1つだと思いますが。

それでは、いま出てきているのは、いまの委員がおっしゃっていることを除いてあと2点ありまして、1点が2ページの「ニ」というあたりですね。いろいろな論点が出ていますので、あとでもう少し、株価等がデフレで低下傾向になるものかどうかというようなこととか、ディスホールディングの動きということが株価低迷の要因の1つになるかどうかということ、そういう委員の御指摘。それから別の委員から、時価会計の導入というのは、リスクを高めたのではなくて、むしろリスクを顕在化させたのではないかと。これはわりと容易に修文できそうですし、修文すべきではないかと思います。

それから、もう1点が3ページの「ロ」のあたりでしょうか。投資信託、場合によってはもう少し広げて公社債投信なども含めて、もうちょっと可及的速やかにというような表現も含めて、少し検討を至急進めるというようなニュアンスを強めてはどうかというような議論が出ておりますが。

委員

いまの2ページの「ニ」の修文のところなのですけれども、2行目のところから、「企業にとって株価変動が企業収益に直接影響するリスクが高まっており」というのは、ここで言いたいのは、顕在化するのではなくて、直接影響する可能性、つまり、いままでは存在していて、直接影響するということが出てきたという意味だと思いますので、あったリスクが顕在化するかどうかということではなくて、時価会計が入ることによって、株価変動がいままでも隠れてはいたのでしょうけれども、企業収益に直接影響する可能性が高まったということなんですね。ですから、リスクという言葉がちょっと違う意味を含むので、用語としてはそういうことではないかと思うのです。

それから、あとのほうの持合いのところですが、実は私が提案している中では、「企業業績が上がらなければ」というある種の条件がついていまして、それから、基金、年金等が購入するということに関しては、私はちょっといま裏づける数字を持ってはいないのですけれども、現状においては多分タイムラグがあって、時価会計の導入に伴って売ろうとする圧力と、それの受け皿になるものとの間のタイムラグがあるような感じを私はしておりますので、そういう意味では、企業業績が上向かなければ低迷の可能性が否定できないというのは、いいのかなという感じをちょっと持っております。

それから、1行目の「なお」以下のところは、確かにおっしゃるように、私もちょっとここの因果関係については、よくわかりません。

委員

まず最初のは、どうでしょうか、さっきの件は。

委員

このリスクの表現が、何のリスクなのかということで、ちょっと私は違和感があったのですが、いまのような修文で、例えば「企業収益に直接影響することになり」とか、可能性というよりも本当に直結することになったというような書きぶりにしていただくのであれば、私はそれであればわかりやすいと思いますので、そういう修文で結構です。私はこのリスクというのを、株価変動リスクというふうに読んだら、それはもともとあったものだからということだったのですけれども、むしろ「直結する」とか、「直結する可能性が高まる」とか、そういう表現であればそれでわかりますので。

委員

一つずつやれるところからやっていきましょう。これは、「更に、時価会計の導入を背景として、企業にとって株価変動が企業収益に直結する可能性が高まっており」というのでよろしいですか。

委員

そこはやはり「直接影響する」のほうがいいと思います。

委員

「直接影響する可能性」ですか。

委員

はい。それから、時価会計の導入のところですが、私は時価会計以外に実は退職給付制度なんかもあると思ってはいるのですが、可能であれば、「時価会計等」と。

委員

あと、デフレと持合い株式売却ですが、一応、デフレになれば、デフレでないときに比べて、基本的に企業の収益が名目では下がるし、低下する可能性が強いということを読み込んで、その割引現在価値である株価というのは低下するというのが、一応の経済学的な説明かなと思うのですけど。

委員

インフレーションについての期待も、ディスインフレについての期待も、マーケットではこなされているわけですよ。だから、その都度、カレントプライスがついているわけですね、すでに。だから、それはディスインフレについて、あるいはデフレについての期待があるかないかはともかく、あるとすれば、それは価格にその時点において織り込まれていますから、この話はそこからさらに低下するという話ですから、織り込んでいない話がさらにもっと進むのかということではないのですか。

委員

私が思ったのは、「株価等は低下傾向」というのはちょっとまずいかなと。だから、インフレになれば上がる、デフレになれば下がると、そうではないときに比べて、ということは織り込んだ結果そうなるわけですから、そういう意味なのかなというふうにとってはいたのですが、もっとドラスティックに、ここはまずいという御意見が出るのではないかと思いますが。

委員

遅れてきて議論を聞いておりませんので。僕は結論からいえば、この「ニ」というところは不要であるという考えです。税制調査会において、株式市場の需給関係論を論ずるということは、僕はあまりふさわしくないのではないかと考えております。理由はいろいろありますけれども。特に現在の株価の下がっているときに、下がっているリスクばかり言う。そうすると、資産価格の下落ということだったら、では土地とかほかの所有資産の下落はどういうことなのだ、というようなことも全部含めて言いますと、やはり税制調査会としたら、株式の需給を中心とした相場論に言及するというのは、やはりふさわしくないのではないかという基本的な考えを持っております。

委員

ありがとうございます。

「デフレ状況下で」というのを入れるかどうかはともかくとして、時価会計の導入に伴ういろいろな問題というのは、これは相場の問題では多分なくて、要するにインフラが変わったことによって、株式にいろいろな影響が起きてきますよという指摘ですよね。

それから、もう一つは、持合い株式の売却。これもある種の市場をめぐる環境が変わっているということで、いろいろな問題が起きていますということに対する指摘なのですが、それもまずいでしょうか。

委員

前回のときに配らせていただいたペーパーの中で私が指摘したかったのは、企業会計制度が大きく変わって、株価の影響というのが企業行動に直接影響を与えるようになって、そこからいくつかの、例えば持合いの解消等々が起こって、そういう受け皿に、単純に貯蓄者から投資者へという形で持ってくるというのは、問題があるのではないかという観点から、それ以前にそういう制度そのものに、そういうことが起こりつつあることに対応する、税制の問題を超えた制度的な対応がある必要があるのではないかという指摘をさせていただいて、ですから、ここの委員会の本来の御指摘のとおり、入るべきかどうかという議論はあるかと思うのですが、しかし、その問題を避けて、そこがないかのように、税制だけで投資者に移行させるということには、やはり問題があるのではないかと認識しております。

委員

政府の税制調査会の場では、今回の証券税制の検討は、株式市場なり株価との関係から出ているわけではないのだということが、かなりはっきり前提とされてはおるわけです。また、この間の総会の場でも、奥本委員から、それはそうではないとはっきり言われたこともあります。しかし、与党の税制調査会の場でありますとか、メディアの世界では、この株式市場の低迷をどうするのだ、税制は黙っておるのか、という議論も非常に多いわけでございます。そういった意味においては、こうしたパラグラフは置いておいて、これはなかなか税制として真正面から取り組んでも難しい問題なのだと、いろいろな要因があるのだということを、一言パラグラフとして置いておくことは、やはり意味があるのではないかと思うわけでございます。

ただ、先ほどの委員から話のあったデフレ状況下では、さらに低下傾向となるというそこらがいろいろな論議があるかもしれません。ですから、そこは表現の問題として何かうまく、別にそれが正面から取り組む理由ではないけれども、こういう世の中の議論に対しては、一言入れる、それはあってもいいのかなと思います。

委員

僕が申し上げたいのは、再々申し上げているように、コーポレート・ガバナンスの問題として、70年代から80年代に株が一生懸命上がっているときは、事業会社では財テクということが盛んに言われたです。財務部門が非常に花形であったと。その結果として、90年代、みんな不良資産を抱え込んだ。あるいは株式が叩かれるようになったということが1つ。

金融機関の場合にしても、メインバンクシステムをずっとやってきて、しかも、プロジェクト・ファイナンスではなくて、協調融資という格好でやってきて、その見返りに政策投資と称して株を持って、しかも上がっているときには、これを全部益出しということでクロスを振って利益を出して、それで株価のコストを上げてきた。株が下がりだしら、それ大変だというのは、それぞれ自己責任でやるべき話ではないかということで、私はこの「ハ」の発行会社における、これは当然銀行も入りますけれども、やはりコーポレート・ガバナンスの問題として、それをはっきりさせろということが非常に重要ではないかと思いますので、株式相場論というのはいくらやってもきりがないという話が1つと、しかも、金融機関及び事業会社の持つ持合い株式というのは、おそらく売らなければならないというのはそれぞれ10兆円ぐらいずつはあると思いますけれども、このくらいの金額が今後もずっと継続して株価低迷の原因になるというのは、僕はこれは株式市場をよく知らない方の言うことであって、ちょっと売れば大体毎日1兆円ぐらいの売買出来高が東京だけであるわけですから、現在悪くても、今日は前場でも4,000億ぐらいあるわけですから、現在の状況を前提として、しかもそれが続くということを前提として、こういうことは僕は書かないほうがいいと。むしろ、コーポレート・ガバナンスの問題として「ハ」のほうへ吸収するということのほうが妥当ではないかという考えを再度申し上げておきます。

委員

この件に関しては、小委員長と会長で引き取った上で、申しわけないですけれども、我々に御一任いただけますでしょうか。意見が非常に分かれておりますので。

それから、先ほどの3ページの「ロ」ですが、これは先ほどからの意見を聞いておりますと、投資信託について、もうちょっと「可及的速やかに」というような文言をできれば入れてほしいということで、公社債投信とかそこまで広げるのは現状では難しいかなというニュアンスのようにお聞きしましたが、関連する御意見等がありましたら。むしろ「可及的速やかに」というのを、具体的にどこにどういう文章として入れたらよろしいというような御提案がありましたら、我々の仕事が減りますので、どうぞ何か御意見がありましたら、教えていただきたいのですが。

事務局

現在のここの文章でございますけれども、ここは一般国民に株式を保有してもらうことが重要だと。市場の厚みが重要だと。その際、投資信託というような形で、いわばリスクが若干個別の株よりも少ないということかと思いますが、そういう意味で、一般の国民が市場参加するということで、商品のほうから書いてございます。

これは税制のほうで議論いたしますと、現状は先ほども御議論がございましたように、所得の分類上は配当所得であるものを、一般の国民が、おそらくアクセスしやすいということかもしれませんが、利子の源泉分離の課税の仕組みでやっておるという状況にございます。したがいまして、もともとの所得を利子・配当、あるいは投資信託の収益のもとになりますものはキャピタルゲインの部分もございますので、キャピタル、領土の部分と、税制についていろいろ論点を当たっております。そもそもどこをどういう論点として議論を進めていくかというところが、まだちょっとこなれていないように思います。そういう意味で、これから検討をこの場でも進めていただきたいと思っておりますし、私どものほうも少し整理して御議論いただきたいと思っておりますが、もう少し、どこが論点かというところは、まだ煮詰めきらないところがあろうかと思いますので、そういう意味で、ここは商品の側から重要性を指摘したということにとどめさせていただいているというのが現状でございます。

委員

わかりました。もしよろしければ、「ロ」については、多分両方とも、投資信託の問題でなくて、税制の問題について保有の問題も極めて重要だと思いますので、最後の1行を、あとでもう少し変えるかもしれませんが、「こうした課題について、可及的速やかに検討を進めていくことにしたい」というような文章にすることではいかがかと思いますが。

ほかに何かありますか。

それでは、あとは引き取らせていただいて、基本的に修文の必要があると思っておりますのは、2ページの「ニ」、これは修文をする、場合によっては全部を落とす、場合によっては「ハ」に一部入れるというようないくつかの議論がありますので、ちょっと会長とも御相談の上、こちらで検討させていただきたいと思います。

それから、3ページの「ロ」については、先ほど申しましたように、「こうした課題について、可及的速やかに検討を進めていくことにしたい」というようなニュアンスの文章にしたいと存じます。

この2点を除いて、一応よろしければ、ほぼ現状の文章を踏襲したものを公表したいと思いますが、よろしいでしょうか。

それから、もしよろしければ、あと1時間ほど時間がありますので、むだに時間を使う気は毛頭ございませんが、先ほどもありましたように、投資信託の話、あるいは保有の話等、今後検討を進めていくことにしなくてはいけない課題がいくつかあります。そのほかに我々が気がついていない課題等があるかもしれませんので、もし皆さまお気づきの論点がございましたら、ぜひお教え願いたいのですが、何かございますでしょうか。

委員

ちょっと講義してほしいのですけれども、投資信託は、私の認識は、例えば野村の何とかとか、フィデリティの何とかとか、それを銀行なり証券会社の店頭で買うというふうに考えて、それがロスを含んだときに税制でというふうに考えているのですが、そういうものではないのもいろいろなのが出ているということですか、現実には。例えば先ほど言われた、自分が持っているポートフォリオの中で、損失を恣意的にというか、あるいは意図的に出しながら、そういう商品を組み合わせるような形のものが出ているということなのですか、違うんですか。株式投資信託について、税制上の措置がなぜ困難なのか、ちょっとそれを説明してください。基礎的な理解が私ないので。

委員

よろしければ事務局のほうから説明を。

事務局

お手許に『資料』というのが、今日お配りしたものと別に机の上に置いてある資料の中に、8月31日の資料でお配りしました「金融小4-7」というのがございます。単に「資料」と書いてあるものでございますけれども。

そこの14ページに、証券投資信託の課税関係ということで、簡単な表がございます。〇とか×とかがついているものがございます。私、先ほど口頭で申し上げましたものですが、左のほうから見ていただきますと、まず公社債、一番預貯金に近い、動きはいたしますけれども、公社債は利子所得という所得区分になってございまして、現在、利子につきまして、預貯金と同じ20%の源泉分離課税になっているということでございます。公社債のほうは利子のほうで取りますので、個人の場合は、下を見ていただきますと、譲渡所得課税が×となっておりますが、ここは課税がございません。

一番右サイドに株式と書いてございます。これはインカムゲインのほうは配当所得でございますが、譲渡所得がございます。20%源泉分離課税のところが×になっておりますのは、利子とは違う課税の仕方になっておりまして、配当のほうは、下にずっと〇がございますが、基本的には総合課税で配当控除があるとか、そういう配当の仕組みになっております。

右下に譲渡所得課税ということで、今回中心的に議論いただいております株式の譲渡課税の問題が右下の四角のところの〇ということでございます。

いろいろ御議論を賜りました証券投資信託、あるいは証券以外のものもあると思いますが、信託につきましては、真ん中に位置しているものでございますが、それもいろいろな種類がございますので、詳しい資料にいたしますと、もう少し詳しい膨大なものになりますけれども、一番左側にございますのがいわゆる公社債投信、これは公募のケースも私募のケースも、所得は公社債から得られるということで利子所得の分類でございまして、現在はこの利子所得としての預貯金並みの課税になっております。

それから、株式投資信託は所得区分は配当という頭の整理でございますが、公募の株式投資信託につきましては、配当ではございますが、利子並みの20%源泉分離課税という形で、毎年のインカムゲインにはこういう形で課税をしておりまして、下に×が4つ付いておりますのは、配当ではございますが、配当の課税の仕方はしておらないということでございます。

公社債投信、株式投信とも、この譲渡所得のところは、これはむしろ譲渡というよりは、通常は解約する形になりますので、そのときに収益がありますと収益課税、というのが現在の仕組みでございます。

もう一つ、やや別のものといたしまして、上場株式投資信託(ETF)、最近開発されまして上場された商品でございますが、これはむしろ上場して流通するということでございますので、株に近い課税の仕方ということになっておりまして、×と〇がそういう形になってございます。

いま特に御議論いただいておりますのは、この真ん中の株式投資信託につきまして、通常は解約がなるべくここで損が出ないような形でおそらくやっておられるのかと思いますが、損が出ているときにキャピタルロスをどうするかということで御議論を賜っているのだと思いますが、もともとの根っこのところで、配当所得でありながら20%源泉分離課税という形で処理をしておりますので、ここの株式投資信託をどういう形で今後もともとの配当所得として考えていくのか、これまで長年利子所得と同じような課税の仕方をしてきたというような経緯、業界がそのほうが商品が売りやすかったというような経緯も踏まえまして、これをどう処理していくかということでございます。

委員

よろしいですか。だから、そう簡単に結論を出すわけにはいかないということのようですので、できるだけ早く、もちろん中長期的には必要があると思いますが。中期的にでしょうか。

委員

もうすでに議論済みのことかもしれませんけども、随分早く議論が進んでしまったなと思って見ているのですけれども、1つは、4ページの「ロ」の「源泉分離課税の廃止は、以下に掲げる制度改正の前提である。先送りすることなく、むしろ、廃止時期を出来る限り繰り上げることが適当である」ということは、以前から石会長が来年からだということを言われておりますけど、1つは事務的に問題が本当にうまくいくのかどうかということは、実務者からはかなり疑問視の声があります。私もタッチしておりませんので、これはわかりません。できるだけ早いのがいいとは思いますけれども、その辺はこういう表現で、「適当である」ということだから、そういうことまで含まれていると理解してよろしいかどうか、ということが第1点。

それから、第2点は、これは一番大事な点ですけれども、5ページの最後、これが結論になっておりますが、「本小委員会は、以上の議論を踏まえ、申告分離課税への一本化後においては、100万円特別控除制度を廃止又は縮減した上で、長期保有上場株式の譲渡益に関しては、税率を原則として20%とすることが適当と考える」と。これは100万円の控除枠を廃止または縮減ということになると。おそらくこれは、源泉分離を廃止するとなると、1つのセットとしてここは非常に大きな関心を呼ぶところとなりますので、「廃止又は縮減」というと、おそらく世の評価は、何だということになってくるのは明々白々だろうと思うのです。この辺のところは、私は、ともかく一定の期間の間は100万円の特別控除制度を存続するという形のほうがよろしいのではないかという意見でありますので、一言申し上げておきます。

委員

ありがとうございました。

4ページの最後の部分に関しては、おっしゃるように、業界ができるのかとか、そういう点について完全にチェックしたわけではないのだろうと思います。だから一抹の危惧はあるのだろうと思いますが、もし間違っていれば、事務局等からあとで訂正していただければ結構ですが、「出来る限り繰り上げることが適当である」と、この2つの文章で担保してあるというのが私の理解でございます。

それから、もう一つが100万円の特別控除の廃止または縮減ということで、100万円特別控除は実はまだ現実には導入されていませんので、来月からですから、それをできるだけ早く、おそらく税率の引下げもやるということであると、半年か1年で廃止または縮減するということになりかねないので、やや朝令暮改的なニュアンスも出てくるということで、少数意見をつけたほうがいいのではないかという議論もあったのですが、つまり、朝令暮改になるから100万円特別控除についてはそのまま残せという意見もなくはなかったのですが、ただ、小委員会等での多数意見は、この100万円特別控除は廃止または縮減ということだろうと思うのです。そういう意味で、少数意見をたくさん書き連ねるのもあまりスマートではなかろうということで、一応、こういう文章にしてあるということでございます。つまり、少数意見としてつけることは考えたと。だけども、それはあまりにも複数意見を書き込むことになるので、一応書いていないと。ですから、むしろ委員が多数意見を変えてしまうということであれば、それはまた話は別だろうと思いますが。

委員

少なくとも少数意見は委員会の報告書に出さない。その点は、当然私の委員としての発言ですから、議事録には載せておいてください。

委員

もちろんそうです。

委員

今日は時間があるので教えていただきたいのですけど、源泉分離を廃止するというのは、この3月に廃止のはずでしたよね。そして、いまもって事務的に間に合わないとかおっしゃいますよね。1年先とか2年先。これはどういうことですか。3月にもう廃止するべきだったら、当然事務的にできているはずなんでしょう。業界は何をやっておったんですか。

委員

よそ様のことはわかりませんけど。

委員

〇〇においてどうですか。

委員

〇〇については、全部システム関係は研究所がやっておりますので、それはできると思いますね。

委員

他の小規模のところですか。

委員

ほかの会社のことは、そこまではわかりません。ただ、僕自身は、個人的には、業務系のシステムですから、そんな秘密があるわけではないし、やればできるという考えを持っておりますけれども、ただ、じゃあ来年4月からということになると、これはそれぞれの会社がどうなるか、そこまでは僕も責任を持てませんので。

委員

そうすると、業界としては、2年前に2年後に廃止だと言われても、全くやる気がなかったわけですな。

委員

ざっくばらんに言うと、この前委員が来たときに、僕は申告分離という場合は、いろいろな優遇措置を置いて3点セットかということと、それから、延ばしてもらうときに二百数十万枚の署名を取ったと。その意味はどういうことかということは、2年間猶予するから、その間に準備期間を置くという意味なのか、さらにそれを延ばそうという魂胆だったのか、その辺を聞きたかったけど、答えがなかったということで、それ以上は……。

委員

遅れて来てすみません。前回ちょっと申し上げたのですが、私も税率は20%。この間の経済財政諮問会議の案で、20%で当面は10%という、私はこれに基本的に賛成ですので、一応申し上げておきます。

理由は、今回やはり申告に変えるということが非常に重要で、これまで日本の税制はなるべく申告を不要に不要にということでしたから、申告に変えるということが重要で、そういう意味からいいますと、いまのいろいろな景気状況とかそういうものを考えると、当面は10%でもいいと思っております。ただ、20%が多数意見であるということなら、もちろん私は中期的には20%に賛成ですので、これでも結構です。

それで、いまの5ページの「ハ」のところですけれども、ちょっとここには私も異論があって、100万円特別控除を廃止または縮減した上で20%となると、廃止または縮減しないと20%にならないわけですよね。私はやはり税率は20%にしていいと思います。廃止または縮減した上で、長期保有にかかわる優遇制度を入れたほうがいいと思っています。つまり、譲渡益100万円ではなくて、保有に関する優遇制度ですね。

ただ、これは前に委員がおっしゃったように、納税者番号制度がないとなかなかできない話ですので、急には無理ですけれども、本来あるべきは保有にかかわる優遇だと思いますので、ここは100万円の特別控除か、保有への優遇かということであって、これか、税率下げかというスキームでは私は発言していませんので、確認しておきます。

委員

保有に着目したということは、むしろ3ページの「ロ」のところで、やや中期的な課題として書いてありますので、むしろそちらになるというふうに引き取らせていただければと思います。

「ハ」に関しては、一応、議事録に残しておきたいということでよろしいでしょうか。

委員

それでは、もしほかに中長期的な課題としてこれだけは触れておきたいというような御意見がないようでしたら、まだ早いのですが、修文の時間もありますので、もし御迷惑でなければ、このあたりで審議を終えさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、時間も迫ってまいりましたので、この辺で審議を終えたいと思います。

時間の関係で、修文のほうは私と会長に御一任いただきたいと思います。このあと、小委員会の意見として記者会見の場で公表させていただきたいと思います。

なお、来週総会がありますので、私のほうから報告させていただきます。

本日の審議は以上です。

なお、今後、総会に本日の意見を報告したあと、事務局とも日程調整しつつ、次回の案内をさせていただきます。

それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会