第6回金融小委員会 議事録

平成13年9月11日開催

委員

では、ただいまから、第6回金融小委員会を開催いたします。

本日は午前中の開催となり、委員の方々にはお忙しいところ、ありがとうございます。

本日の議題ですが、今回、そして次回にもかかると思いますが、先日申し上げましたとおり、証券税制に関する小委員会の基本的な考え方について、審議を行っていきたいと思います。

金融小委員会の課題は、本来、広範にわたるものですが、時機を見て、世の中に向け明確なメッセージを発信していく必要があるのではないかという問題意識を持っております。

基本的な考え方をなぜ今回取りまとめるのか、これについては委員の方々にもいろいろ御意見がおありだろうと思います。

他方、御案内のとおり、証券税制をめぐる昨今の状況を踏まえますと、今後、特に月末に向けて各方面では様々な議論が行われることが予想されます。自民党の税制調査会においても、先日、審議が開始されたところと聞いております。

特に株式譲渡益課税のあり方について、昨年末の税制改正の議論の中で、申告分離課税の一本化が2年先送りされるに至っております。今後、各方面でどのような議論が行われていくのかわかりませんが、小委員会としての見解を明確に発信していくことに意義があるのではないかと考えているところです。

したがって、今回は、株式譲渡益課税のあり方を含め、証券税制について基本的な考え方を出すことができればと考えております。

本日、お配りしておりますのは、基本的な考え方の素案と考えているもので、後ほど事務局に読み上げさせますが、これを材料に本日の審議を行っていきたいと考えております。

委員の方々からは、これまでの審議の中で様々な御意見をいただいておりますし、先日お願いいたしましたメモについても、これまで9名の委員の方から提出をいただいております。御多忙のところ、大変ありがとうございました。

そこで、会長とも相談させていただきまして、これまでの審議やいただいたメモを踏まえて、それほど多くない分量で小委員会の意見としてまとめられるような形にしてみました。もちろん、これは議論のたたき台でありますので、これから御自由に意見をいただければと思います。タイトルも「証券税制等についての意見」と便宜上させていただいておりますが、とりあえずのものですので、これについても御意見いただければと思います。

若干、補足をさせていただきますと、第1に、委員の方々からこれまで広範に御意見をいただいているわけですが、政府税制調査会・金融小委員会として「骨太のメッセージ」を発信する必要もあり、その中から、株式譲渡益課税のあり方を中心に、「案」、括弧付きですが、をまとめさせていただきました。

その他の課題については、さらに今後のテーマとしていきたいと考えております。

また、「案」の中で税負担水準のあり方については、さらに議論が必要かと考えましたので、別途、資料を1枚お配りしております。これについては後ほど事務局から説明させます。

なお、いただいたメモの中で、委員から、特に企業会計の視点からまとめられたものをいただいております。本日は御欠席ですが、御提出に当たっては配付も前提にいただきましたので、配付資料の中に含めさせていただいております。

また、ただいまはいらっしゃいませんが、後ほど委員がお見えになる予定です。委員からは、本日の午後に開催予定の経済財政諮問会議に提出されるペーパーを、お見えになり次第御説明いただけるとのことであります。お手許にペーパーを配付しておりますが、諮問会議提出予定資料とのことですので、取り扱いには御留意願います。

さらに、もう一つ、この案の取り扱いについては、本日の審議も踏まえまして、修正が必要であろうと思いますので、最後に回収させていただきます。本日の審議が終わり次第、席上にそのまま残していただきますよう、恐縮ですがよろしくお願いいたします。

それでは、本日の審議に入ります。

まず、事務局に「案」を読み上げさせます。

事務局

事務局 「案」読み上げ

証券税制等についての意見(仮称)

<前書き>

本年6月に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針」においては、「証券市場の構造改革」として、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替えなどを踏まえ、税制を含めた関連する諸制度における対応について検討を行う」こととされている。

証券税制については、最近、各方面で様々な提案がなされているが、その中には、当面の「株価対策」としての議論や、株式譲渡益に係る源泉分離課税廃止の再度の先送りを求める議論も見受けられる。

税制調査会においては、特に株式譲渡益課税のあり方について、これまで累次にわたり、いわば「税制面での構造改革」として、源泉分離課税を廃止し、申告分離課税へ一本化する方針を示してきた。

この「税制面での構造改革」の着実な実行は、市場の透明性・信頼性の向上を通じ、「証券市場の構造改革」に資すると考える。

本小委員会は、これまで、今後のあるべき金融の姿を展望しつつ、税制全体と整合性のある証券税制のあり方を検討してきた。今般、最近の諸情勢にかんがみ、証券市場の現状認識等を踏まえた上で、現時点での基本的な考え方を整理し、提示することとした。

<証券市場と税制>

イ 「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」の観点からは、一部の限られた「個人投資家」が短期売買で利益を狙う場としてだけではなく、広く一般の国民が、長期・安定的な資産運用を図ることが可能な場として、証券市場の健全な形成を目指すことに政策の重点を置く必要。

ロ 一般の国民の証券市場への参加が進まない理由としては、証券業界や市場自体への不信感の存在が大きな要因。不信感の払拭に向けた業界自身の更なる努力が必要。

ハ 発行会社における株主重視の経営姿勢の確立のほか、信頼できるディスクロージャーの整備、行政機構・自主規制団体等を通じた市場監視・取締の抜本的強化、不公正取引の防止措置や資産運用者の受託者責任の明確化など、各種の制度・施策の整備が必要。

ニ 現在のようなデフレ状況下では、株価等は低下傾向とならざるを得ない。

更に、時価会計の導入を背景として、企業にとって株価変動が企業収益に直接影響するリスクが高まっており、これを回避すべく、金融機関のみならず、事業会社においても持合い株式売却の動き。これが現在の株価低迷の要因の一つとなっており、今後、中長期的に継続する可能性。

ホ 我が国家計には、証券投資よりも貯蓄を重視する傾向がある。貯蓄重視志向の要因として、それを助長する我が国金融の制度・構造の存在が指摘できる。例えば、ペイオフ実施の延期や民間金融機関への公的資金の導入、政府の信用力を背景とする郵便貯金の存在など。これらの結果、預貯金の持つ本来的なリスクが表面化していない。今般、「金融のあり方の切り替え」の観点から、家計の資産選択における変化を促すとすれば、貯蓄を優遇してきた制度・実態の是正も重要な課題。

へ 現在の証券市場をとりまく問題の多くは、以上のとおり、税制とは別に存在。税制以前に、包括的な「インフラ」整備が決定的に重要。関係者の積極的な対応を望みたい。

ト 本小委員会としては、こうした本質的問題の解決抜きに、税制によって証券市場を活性化させることには限界があることを指摘。短期的な観点からではなく、「証券市場の構造改革」に資する「税制面での構造改革」を進めるべき。

<証券税制のあり方>

イ 「証券市場の構造改革」に資する税制のあり方については、市場の透明性や信頼性の向上と整合的な方向を目指すとともに、「公平・中立・簡素」の原則に立って構築することが基本。

ロ 同時に、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」との方針に照らし、政策的配慮としては、証券市場の裾野を拡大すべく、一般の国民による株式の長期・安定的な「保有」を促し、厚みのある市場形成に資することが重要。その際、一般の国民が個別に市場参加するのではなく、仲介機関を通じて株式を保有する仕組み(「市場型間接金融」)の重要性も指摘できる。

ハ 現在、証券税制については、株式取引の「活性化」を求めて、株式譲渡益課税の議論がなされているが、上記のように、広く一般の国民の市場参加を図るという観点からは、「売買」ではなく、「保有」に着目した見直しを検討することがむしろ重要。こうした課題について、今後、更に検討を進めていく。

ニ 貯蓄優遇税制については、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」との方針にかんがみれば、また、「租税特別措置の聖域なき見直し」との方針からも、根本的に再検討する必要。こうした観点から、少額貯蓄非課税制度等(老人マル優等)については高齢者等に対する社会政策的見地等からの検討も合わせ行う必要があるが、基本的には、制度自体の廃止に向け検討することが適当。

ホ 金融証券税制の構築に際し、納税者番号制度が存在しないことが、一定の制約要因となっていることは否定できない。納税者番号制度の導入に向けて、具体的な検討を促進することが必要。

<株式譲渡益課税のあり方>
(源泉分離課税の廃止)

イ 現行の源泉分離選択課税方式は、当税制調査会がこれまで累次にわたり指摘してきたとおり、ー 諸外国に例のない「みなし利益」へ課税するものである、ー 損失発生時に申告分離課税を選択し、利益発生時には源泉分離課税の選択を行うことにより、意図的な税負担調整が可能となる、ー これらと合わせて課税に対する匿名性がある、ー 源泉分離課税を選択すると個人住民税が非課税であることから、適正化が必要である、などといった問題点があり、これを廃止し、申告分離課税へ一本化すべき。

ロ 11年度税制改正において、有価証券取引税の廃止と合わせて源泉分離課税の廃止が決定されたにもかかわらず、13年度税制改正において、その実施が更に2年先送り。

源泉分離課税の廃止は、以下に掲げる制度改正の前提であり、これ以上先送りすることなく、むしろ、実施時期を繰り上げることが適当。

(損失繰越)

イ 申告分離課税へ一本化され、源泉分離選択による税負担調整が不可能となった後は、一般の国民の市場参加の促進のため、リスク負担の緩和等に配慮し、株式譲渡損益間での譲渡損失の繰越控除制度の創設を検討課題とすることができる。

ロ 既存の損失繰越制度(災害による損失の繰越控除制度など)との整合性の確保のほか、100万円特別控除制度との関係を整理した上で、具体的な仕組みを検討する必要。

ハ 現行の源泉分離選択課税方式の下で、損失の繰越しを認めることは、意図的な税負担調整が可能という現行制度の問題点を更に拡大するものであり、採り得ない。

ニ 株式については、申告分離課税を前提とする以上、更に、譲渡損益の性格にかんがみれば、給与等の他の所得との損益通算を認めることは不適当。

ホ 株式取引については、投資家が譲渡の時期を選択することにより、所得の発生時点を任意に選択できるという特性があることを踏まえれば、損失の繰越しを認める必要はないとの指摘。

事務局

引き続きまして、(別紙)参照となっております最後のページに、(税負担水準)というので1枚ついてございますので、そちらを説明させていただきます。

委員

申告分離課税の税負担水準の部分について、説明をお願いします。

事務局

冒頭、小委員長のほうからも御説明ございましたが、税負担水準のところにつきましては、ほかのパーツと比べまして、若干、まだもう少し御議論をいただいてからという感じもいたしましたので、a、b、c、dというような感じで、項目で論点と申しますか、留意点と申しますか、そういうものを並べてございますので、若干御説明を加えながら読まさせていただきます。

「a 総合累進課税を基本とする中、一部に分離課税を採用している現行の枠組みにおいて、株式譲渡益課税の税負担水準をどう考えていくか 二元的所得税論についてどう考えるか」もともと総合累進課税が基本で、分離課税を現実的ということで採用しております現状がございますが、そういう枠組みのもとで御議論いただいております株式譲渡益課税につきまして、どう考えていくかということでございますが、その際、夏をまたぎまして、二元的所得税につきまして御議論いただきましたので、その関係を掲げてございます。

「b 給与、事業所得や他の譲渡益に対する税負担水準とのバランスのほか、株式保有層の収入階級や垂直的公平への配慮に留意する必要」他の一般的な所得とのバランス、あるいは株式の保有層がやはり高収入層にあるというようなこと、あるいは垂直的公平への社会的な要請といったものをどう配慮するかという点でございます。

「c 利子などの他の金融収益に対する課税とのバランスをどう考えるか」中立性につきまして、どういうことを中立性として議論するかということがございました。その点にも関係いたしますが、所得の性質の相違ということで、株式譲渡益の場合、価格変動が前提でございますが、譲渡のタイミングを裁量性があるとか、その間、課税の繰延べがあるとか、あるいは利子に比べますと事業参加的な性格があるとか、そういったことをどう考えるか、あるいは保有実態の差異をどう考えるか、というようなことが論点かと思います。

d以降はやや視点を変えますが、「d 一般の国民の市場参加を促進し、株式等について短期売買でなく長期保有を促すとの政策目的をどのように斟酌するか」別に読み上げましたものの中にもございますが、今回の議論が、一般の国民の市場参加を促進しまして、貯蓄から投資、市場の厚みというところでございますので、プロの投資家の視点ではなくて、一般の国民の市場参加という側面、あるいは長期保有をする、投資をするということをどう考えるか、そういう点でございます。

それから、「e 100万円特別控除の下では、殆どの一般的な個人投資家に係る長期保有株式の実質税負担は、ゼロないし利子並み以下の水準となっていることに留意する必要」何度か資料で税負担のカーブを見ていただきましたが、100万円特別控除がございましたので、まず、実質税負担がゼロになり、そのあと、しばらくは20%以下という状況でございます。100万円特別控除につきましては、まだ施行しておりませんので、課税実績もございませんので、世上まだ実感がわかないところでございますが、現在の制度がこうなっていることにつきまして、どう留意していくかという点がございます。

「f 税負担水準の検討に当たり、100万円特別控除制度を前提とするのか、これを廃止した上で税率を変更するのか、いずれにせよ、両者一体として検討する必要-100万円特別控除制度は、本年4月の緊急経済対策の一環として決定された、平成15年3月末までの時限の特例措置-」100万円特別控除制度は、15年3月末で源泉分離課税がなくなって、申告分離課税に一本化するという時期までのものといたしまして、時限の特例措置ということになっております。いずれにしましても、控除と税率が関係いたしまして全体の税負担水準ができるということだと思いますので、この辺、両者一体としてどう考えるかというような点でございます。

まだほかにもあろうかと思いますが、とりあえずこのように整理させていただきまして、御議論に供させていただきたいということでございます。

委員

ありがとうございました。

それでは、以上の説明を踏まえまして、自由に御意見、御質問などをいただきたいと思います。

委員

「前書き」のところはいいと思うのですけど、その次の「証券市場と税制」という部分については、内容的にはこれで結構だというか、私もそうだと思うのですが、プレゼンテーションの仕方がどうも消極性を与えるような書きぶりになっているのではないかという気がかなりいたしました。せっかくの内容を、もう少しポジティブな形で打ち出せないかということ。だから、内容というよりは、プレゼンテーションの仕方にちょっと問題があるような気がいたしました。

それから、「証券税制のあり方」の部分もよろしいかと思うのですが、「株式譲渡益課税のあり方」の2枚目、6ページの一番下のところの指摘は、確かにこういう御意見をおっしゃった方はおられたと記憶いたしますが、同時に逆の指摘もあったわけで、小委員長もそういうふうにおっしゃったと思いますし、私もそういうふうに申し上げたと思いますし、個人投資家が本当にこのような認識が当てはまるのかというのは、甚だ疑問だと私は思っておりますので、ここの部分については、内容的に異議といいますか、抵抗を感じます。

それから、いまの点とも関係するかとは思うのですが、最後のところの税負担水準の話のところでも出てきていると思うのですが、事実認識の問題として、株式保有が現状において富裕層に偏っているという事実がファクトとしてあるとしますよね。この事実は是正されるべきものだというふうに評価するのか、この事実は当然の事実であって、こういうものなのだというふうに前提にして議論するのかというのは、随分違う話だと思うのです。

株式を持っているのはお金持ちなのだから、だから担税能力があるはずでということの発想は、「前書き」のところ等に引用されている話とか理念と随分違う理念に立った話になってしまっているのではないか。逆に申し上げますと、富裕層しか株式を持てないような現状は甚だ困るということで、富裕層ではなくても株式を持てるようにするにはどうしたらいいのか。それから、富裕層ではない、限られた資産しか持たない主体が株式を保有するというふうになれば、当然、売却のタイミング等は、様々なライフサイクル上の要因とかその他によって規定される面が強くなるわけですから、十分にふんだんに他の資産を持っていて、流動性に関する制約を受けていないような主体であれば、自由に選べるでしょうけども、そういう主体しか株式を持ってはいけないのだという発想でいくのかどうかというのが問題としてあると思います。

委員

ありがとうございました。

1つが2ページですか、証券市場と税制について、もう少しポジティブな書きっぷりをしろということで、これは具体的にこういう書きっぷりにしろという御提言はありますか。

委員

要するに、税制改革の前にいろいろ課題があって、これを全部先にやらないとというふうな印象の形になっていて、もちろんこれはやらなければいけないわけですが、そういうことと、税制改革も頑張りますから、こういうことも一生懸命やってくださいというふうな言い方をしたほうがいいのではないかということです。

委員

ありがとうございます。

それから、6ページの「ホ」については、もしほかの委員の御反対がなければ、全部落としてもいいのではないかという気がするのですが、いかがですか。

委員

私が言ったせいもあるものですから。私は、いまの時点でやると、どうも売りのインセンティブになりかねないと思っているのですが、1つは、要するにニューマネーを入れるという場合のインセンティブ、これはあるのだと思いますし、それから、源泉と源泉から申告分離へのインセンティブというものには効くと思いますので、繰越しノーというのは、消しても結構です。

委員

では、そういうことで、基本は消す方向でお考えください。

それから、8ページのf、これはbにもかかわるのだと思うのですけれども、ここら辺に関しての御提言というふうに承りました。どうぞ、ほかに何か御意見。

委員

全体の構成としたら、1つは基本原則、これはもう中立・公正・簡素といつも言われている話ですけれども。

それから、税の場合は、税を取るという政府の立場と、タックス・ぺイヤーである納税者の立場というのを常に考える必要があると思います。原則論をいまさら言ってもしようがないのですけど。そういう点では、簡素ということが非常に重要だと思いますが、そういう点で実務的な立場を踏まえて、若干、いまのペーパーで私の感想を申し上げます。

第1は、先ほどの委員が言われたことと全く同じで、私も一番先に、といって僕が先に言うのはまずいから言わなかったのですけれども、何か非常に物事というのは、特に我々コンサルティングをやっていて常に思うのですけれども、欧米のコンサルティング・ファームとの違いは、日本のコンサルタントは非常にプレゼンテーションが下手であるということですね。したがって、あらゆる問題がみんな重要な、フィナンシャル・アドバイザーは欧米のコンサルティングファームが持っていくとか、非常にプレゼンテーションが、それを見抜けないほうも見抜けないほうだと思いますけれども。ということからいくと、せっかく大きく転換するというときに、やはりプレゼンテーションはもうちょっとポジティブにやっていただくということが非常に重要ではないかと。

特に党の税調がいろいろ言っているときに、会長が、先日もこの『日経公社債情報』にも書かれておりますように、こういうはっきりとした意見を出されているというときに、ちゃんとここにありますから、これは関係者は全部読んでいる文章ですから、影響力は非常に大きいと思います。それだけに、特に源泉分離という問題がございますので、はっきりとした明確なメッセージを出すと。

具体的には、したがって、3ページの「へ」のところの2行目に、「税制以前に、包括的な『インフラ』整備が決定的に重要。」と、この辺を、先ほどの委員も言われたように、税制もやると、これはこっちも重要だというような形にしていただけたらいいのではないか、というのが第1点です。

それから、4ページで、「ロ」のところは非常に重要だと思うのですけれども、個人株主の問題というのは、漸次、数は非常に増えているんですね。従業員持株会とかいろいろなことを含めまして。ただ、時価総額自身は、時価総額で見る場合には、持株シェアが大きく減ってきていると、こういう問題がありますので、特に少額の資金という場合は、こういうような、僕は市場型間接金融という言葉は好きではありませんけれども、投資信託であるとか、具体的なものをはっきりと出して、株式仲介機関を通じて株式を保有する仕組み、例えば投資信託というような具体的な名前を、はっきり商品名を出してやられたほうがいいのではないかと思います。

それから、5ページの問題ですけれども、譲渡益課税のあり方で源泉分離課税の廃止ということは、これは整合性のある話だろうと思いますが、ただ、「ロ」に「実施時期を繰り上げることが適当」とありますけれども、これは実務的に簡素・便利、あるいは払う立場からいったら、いきなり来年からそんなになっちゃって、一体どうするんだと。これはまた委員のペーパーにもあるようですけれども、簡素な組織を何かつくるかという問題との関連もありますけれども、この問題は慎重な論議が必要ではないかと。私は、ちょっと実務的には不可能ではないかと考えております。

それから、6ページの損失繰越の「ホ」のところは、いま御指摘があり、またいま委員からもお話がありましたけれども、僕はこれは削除していただいたほうがいいのではないかと考えております。

以上でございます。

委員

よろしいですね。商品名、投信を入れるとか、実施時期を繰り上げる。これは会長がいろいろおっしゃっている、1年繰り上げろという御意見、かなりイシューの1つだと思いますので、あとで議論をしていただければと思いますが、もう一つの考え方としては、暦年に直して3ヵ月繰り上げろという議論もあると思うのです。要するにいま4月からとなっていますが、再来年の1月施行という考え方もあると思うのです。その程度だったら実務的には可能なのですか。それとも、それも難しいですか。

委員

これは、例えば具体的に○○證券でどうだというと、これはできると言うのですけれども、ただ、さあ、業界全体としてどうかという問題はあるかと思います。これは内部の問題で、もうちょっと具体的に業界内部で、証券業界とか何かでよく説明して、おそらく僕の考えでは、これは業務系のシステムですから、情報系と違いますから、何も企業秘密はないわけですね。したがって、何も各社がやる必要はないわけで、1社か、あるいは集合してどこかで共通してやるというようなことをやれば、僕はかなり、1年あるいは1年ちょっとあれば、できるのではないかという見通しは持っておりますけれども、これはまたそれぞれの実務者によく検討をしていただきたいと思っています。

委員

あと、申告の簡素化の制度という話もありましたので、これも議論があればどうぞよろしく。

委員

1つは、「前書き」のところでございますけれども、本当は意見書を提出すべきだったのですが、それがちょっと書けませんでしたので、ここで申し上げますが、広い意味の貯蓄、預貯金であれ株式投資であれいいのですが、貯蓄と消費の選択において、いまの日本は消費が多分少ない。この前のGDP四半期統計では、消費だけ多少伸びていましたけれども、多分、消費が冷え込んでいるのが様々な原因だと思うのです。本当ならば消費を増やす方向に働かなければいけないところに、貯蓄と消費の選択において、預貯金と株式投資の両方を含めた広い意味の貯蓄を優遇するほうをさらに拡大するというのは、もっと貯蓄を増やして、消費を抑圧しろというポリシーが感じられる。これは大きな矛盾ではないか。つまり、貯蓄と消費の大きなバランスのことがあまり考えられていなくて、貯蓄を増やすことは当然であるという前提のもとで、株式はもっと優遇拡大しろという議論が展開されているのは、一体基本理念としてはそもそも間違っているのではないか。経済学のことはよくわかりませんけれども、租税法ではそういうふうに考えますね。

それから、もう一つは、6ページの損失の繰越しのことでございますけれども、預貯金と比べて、片方は20%で、株式は申告分離26%ということについて、高すぎるということなのですが、これは助手や院生と一緒に議論したのですが、例えば私が100万円銀行に定期預金を入れておいて、総合口座で90万円借り出すと。支払利子と受取利子では、どう考えても支払利子のほうが多くて、受取利子のほうが少ないのですが、それにもかかわらず、ちゃんと20%で源泉分離を受けていますよね。だから、これはユニットのとり方で、何と何をセットとして考えるということですが、逆に通常の感覚からいうと、預貯金のほうが所得がないにもかかわらず税金を取られるという場合もあり得るわけですよね。そういう状況は、それで知ったこっちゃない、だけど株式はプラスとマイナスは云々、それはしかも拡大しろというのは、単に26%と20%という数字だけ比べるのはどういうことなのかが、まずもってわからないということですね。

分離課税というのは、要するに分離して閉じ込めろということですから、申告分離であれ源泉分離であれ、そこのことであっちとこっち、ユニットのとり方にもよりますが、あまり水かけ論をやっても、所詮、水かけ論にしかならないのではないかと。どうしろということは私はわかりませんけれども、2つ疑問があるものですから、申し上げました。

委員

ありがとうございました。

最初の点ですが、文章の意図としては、消費との関係で議論しているのではなくて、貯蓄といわゆる証券投資との関係で、貯蓄は少し優遇されすぎていると。そのバランスをもう少し証券投資のほうに移してほしいと。だから、この文章の最後のほうに出てくるように、老人マル優なんかは基本的には再検討してほしいという文章になっているという趣旨だとは思うのですが、そこのところは、もしあまり明白でないようでしたらば、少し考えさせていただきたいと思います。

委員

いまよりもどうして貯蓄をさらに優遇する方向に持っていく必要があるのかが……。

委員

貯蓄というのは、広い意味でのですね。

委員

広い意味の貯蓄です。それが理由がわからないですね。

委員

だから、広い意味での貯蓄を優遇するというよりも、貯蓄の中での貯蓄性預金と、投資性預金というか証券投資など、そのバランスの問題だとは思うのですけれども。

委員

それはそうだと思うのですが、全体に広い意味の貯蓄の税率を上げた中で株式だけ落とすというのだったら、まだわかるのですけど、そのままにしておいて、株式のところだけさらに落とすというのは、消費との選択でいえば、広い意味の貯蓄をさらに優遇しろという意味ですよね。ということは、消費をさらに抑圧しろという意味になりますよね。広い意味で考えれば。どうしてこれ以上預貯金や投資を促進する必要があるのかがわからないということです。

委員

経済学の講義をされている方にやってもらったほうがいいのだけれども、少し気になるので、私から申し上げます。

消費を決めているのは、その時々の家計が合理的に決めているのであって、その消費を増やそうと思えば、その家計の生涯といいますか、長期にわたった所得の流列を増やさないと消費は増えないんですよ。だから、現在の消費を決めているのは、そういう中で決まっていますから、投資を通じてより高い所得に至る道が用意されることが、消費を増やすことになるわけです。

ですから、いま手許にある小麦のうち、どれだけ留保して次の期に蒔くのか、どれだけ食べちゃうのかというのは、その時点における話でして、少し時点をその場に限って議論しすぎている。早わかりさせすぎているわけですよ、子供たちのために。本当は、もっと現在の消費というのは、長い流列の中で決まるのだから、それは経済学の講義をされている人の責任だと思うけど、それはちょっと違うのではないかと。

委員

どうしましょうね。別に委員と喧嘩する気はないのですけれども、要するに、基本は貯蓄対消費というのは、やはり貯蓄に対するインフラストラクチャー、あるいは消費に対するインフラストラクチャー、全体がどうなっているかということだろうと思うのです。貯蓄に対するインフラストラクチャーの中では、どうも証券に関して税制が高かったり、あまりきちんとしたことをしていないということで、むしろ貯蓄性の貯蓄をあまりにも優遇しているということのほうに問題があるのではないか、というのがこの委員会の問題意識であって、もしそれが基本的に間違っているということであるならば、これはかなり大問題なので、そこはきちんと指摘していただく必要があると思うのです。

ただ、そうではなくて、小委員会の基本的な考え方はそれでいいのだけれども、書き方がよくないということであれば、それはそれで、そういう趣旨でもう少し修文をする必要があるのかなというふうには思いますけれども。

委員

経済学の方がそれでよろしいというのであればよろしいのですが、本当によろしいのか、私はよろしくないと思いますけれども。

委員

例えば金利水準が貯蓄行動に与える符合というのは不定だというのが普通の経済学の考え方で、例えば、老後に備えて、老後を生活するために、例えば5,000万なら5,000万の貯蓄をしたいというふうな形のターゲット型の貯蓄行動をとっていたとすると、むしろ収益率が上がると、月々食べる額を小さくしても、ターゲットである5,000万に到達し得る可能性が増えるわけですから、貯蓄額が減るという可能性、利子率が上がったほうが月々のフローの貯蓄額が減るという行動になる場合も十分あり得ることであって、だから、その議論をし出しても、それは日本の実際の家計の貯蓄行動はどうなのかという実証研究をまたやってもらわなければいけない話になって、やはりここは相対的に金融商品の間での課税の非中立性がいまあるのではないかという、そこの是正に絞るという話でやったほうがコンセンサスが得やすいような気がするのですが。だから、全体の税率を上げて相対的にという話は十分あり得ると思うんですね。

委員

何でそれではだめなんですか。

委員

私はだめだとは実は思ってないですけど。中立化の方向に考えればいいということで。

委員

まあ、それはそうですね。

委員

全体の税率を上げたほうがいいという……。

委員

そうではなくて、どうして2つの選択肢があって、全体を上げて株式をそのままというストラトジーと、全体をそのままで株式だけ引き下げるというストラトジーが2つあって、経済学者としてどちらがいいということが必ずしも言えないのだったら、どうして片方だけになるのか、その理由づけが全くない。つまり、いま以上に資産所得課税の水準を引き下げて、消費を相対的に抑圧するということが、なぜそんなに望ましいことなのかの説明を、一言ぐらいは入れてもいいのではないかと。

委員

ちょっと考えます。

委員

先ほど御紹介いただいたこのペーパーですけれども、一番最初に、「貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切り替え」。優遇というのはどういう意味で言っているのか。おそらくは、これは税制と書いてありますから、税金のことだと思うのですが。

それから、先ほど小委員長もちょっと言われたのですが、貯蓄優遇というのは私にはちょっと理解できないのですが、ずっとここ数年の答申と、それから中期答申を見ましても、貯蓄のほうが株式の投資などよりも優遇されているというくだりは全然見られないので、税制調査会でそういう認識で来たとは思わないのですが、どうしてここへ来て急に貯蓄優遇から投資優遇と……。現実問題として、株式の譲渡益というのは1.05%で来ているわけですね。これに対して貯蓄のほうは、利子中心に大体15%と5%という形で来ているわけですが、それにもかかわらず、なぜ貯蓄優遇というような、こういう形の命題ができ上がっているのか。おそらく、株式の場合は譲渡損の問題を取り上げて、貯蓄の場合には老人マル優があるからと、そういう違うものを取り上げて比べて、貯蓄優遇ではないかという話になるのではないかと思うのですが、どうもここが強く出すぎていて、いままでの税制調査会の議論の流れからすると、何かそぐわない感じがするのです。

それから、もう1点は、非常にプレゼンテーションの問題だと言われるのですが、いまの状況から見まして、この間も申し上げたのですが、有価証券取引税を廃止して、結局、証券税制というのは、申告分離はありますけれども、大体源泉分離で1.05%で来ていると。結局、これは何を言っているかというと、税制によって何も市場が改善されてこなかったということです。税制といいますか、有取税をなくして、さらに従来からの源泉分離という極めて優遇した税負担を置いているにもかかわらず、証券の市場というものはどんどん下ってきていると。

ということで、3ページ目に出ておりますけれども、やはり税制とは別の存在になると、これはむしろ私としては、ここは強く出すべきではないかと思うのです。

逆に税制でもってどんどんやれというのは、株式譲渡益をただにしろと、そこに話がいってしまうわけですが、やはりそれも、どう見てもいままでの税制調査会との流れがおかしいのですが、結局、それは何かというと、最後に「ト」に書いてありますけれども、いわゆる構造改革の1つに税金が入っているということで、そういう新しいポリシーといいますか、そちらのほうが考え方が強くなってきていると思うのですけれども、これはやはりちょっといままでの認識と違うのではないか。むしろそこは、ではなぜそうなのかということを、そう言われるのであれば、もう少し説明していただきたいと思うのです。何か違ったものを比べて、これは株のほうが税制上不利に扱われていると。それは全く逆の話でいままで来ているのではないかと思うのですけれども、なぜこういう話になったのかということなのですが。

私としては、これは結論にありますように、「限界があることを指摘」と書いてありますけれども、やはり、くどいようですが、有取税を廃止して何が改善されたのかと。平成になってからですが、1.05%で来ている。にもかかわらず、これでまだ税制面での構造改革ができていないと。ではもっと下げたら、これはゼロになるではないかと。それしかもう進む道がないような気がしてくるのです。やはりここはむしろ逆で、「ト」に書いてあるようなことをはっきりと出されるという形のほうが、私としては、税制調査会で短期的には5年ですが、もう平成になってから何度も検討されていますけれども、急に流れが変わったというか、トーンを変えられたという気持ちがしないではいられないのですが。

ということなのです。ですから、一番最初の「イ」のところで、どうしてこういう考え方なのか、そこを御説明いただきたいのですが。

委員

私が説明するのが一番適当かどうかわかりませんが、私の考え方としては、税調で過去議論してきたことはともかくとして、今回の金融小委員会で議論してきたこととしては、「ハ」とか「ホ」に書いてありますけれども、税制だけではなくて、一般的な各種の制度とか施策とか実態とかというものとして貯蓄優遇があったと。これを本来は投資優遇に金融のあり方を切り替えていく必要があるというのが、金融小委員会が議論してきたことだと思うのです。

つまり、言い換えると、「イ」というのは、四角の「証券市場と税制」という言葉でくくってあることでいえば、税制よりも証券市場にかかるものであって、そこをいまの御指摘を踏まえて、もう少し明快に書いたほうがいいとは思いますが。

したがって、むしろ「イ」から「ト」までの全体の流れとしては、税制はあまり本質的な役割を果たしていないので、むしろ制度とか構造とかそちらに大きな問題があるので、そこを改革しなければいけないというのが、「イ」から「ヘ」までで書いてあることであって、構造改革に資するような税制面での構造改革をしなければいけないというのが、この章の一番言いたいことだと思うのですが。「ヘ」とか「ト」をもう少し頭のほうに持ってくるとか、「イ」についても少し文章を再検討するとか、いまの委員の御指摘も踏まえて少し検討したいと思います。

委員

いま委員が言われたことで、私は確かにそうだなと思うのは、税が貯蓄手段としての預貯金を優遇していたということはない。それは私もそうだと思うのです。ただし問題は、日本のこれまでの仕組みの中で、貯蓄主体から投資主体に結び付け方の中で、ある時期までは預貯金という形を通じて、それが投資につながるというメカニズムはあったし、それは投資の側で外から青写真さえ持ってくれば、まずリスクは少ないし、したがって、仲介に当たった銀行は割当てしてでも張り付けなければいけないという状態でしたから、貯蓄主体が預貯金という形で持ってくることが投資を促進することとそのままつながっていた。それはそれでよかったわけです、ビークルとしてそれが。

今日では、それがビークルにならないわけですね。投資がいま出ない。なぜならば、リスクが極めて高いものに、従来に比べてですよ、それをどうやってみんなでシェアするのだと。ナショナル・エコノミーの中でそれをシェアする仕組みをつくらないと、投資は十分に出ない。

とりわけ今日の経済情勢の中では、ケインズが言ったように、利息収入で生きている利子生活者の安楽往生と言わなければいけない、リスクを取ろうとしない、アニマルスピリットがないという状態においては、利息生活をしている人は安楽往生してもらわなければいけない、というような状況がいま起きているわけです。それを新たなビークルをつくることを通じて、どうやってリスクがある分野にも投資が行われるのか。リスクのシェアをどうやってナショナル・エコノミーの中で取るのかという中に、税は使えるのではないかと。

個々に決めるのは経営者、あるいは経営を委託された人であれ、あるいは証券を持つ個々の家計であれ、それぞれがリスクについて判断し、自分が取れる範囲内において持っていく。このビークルをどうやってつくるか。いろいろな方法があるのですけれども、税は民間主体を動かすのにやはり力があるし、民間主体それぞれに意思決定してもらうのが一番ゆがみが少ない。これがもし政府機関が間に入るとか、納税者にリスクを取ってもらうという形で政府機関が間に入った場合には、ゆがみが非常に大きくなるけれども、相対的にゆがみが少ない。だから得する人も損する人も出るということは前提ですけれども。したがって、自分で取れる範囲でリスクを取っていただくという、このビークルをつくり上げるのに税が効くはずだという話だと私は思っております。

先ほどの委員が言われた有取税の話なのですが、これは思い出して、そういえばあのときも、委員とやったのかなという記憶があるのだけど、私が申し上げたのは、取引税は廃止しようではありませんかと。資源配分に取引税を高く置いておくことは意味がない。要するに、株価を高くするためにやれと言った覚えはないし、それをやれば株価が高くなると言った覚えはないのですが、資源配分の効率を考えれば、取引に税をかけるという仕組みはやめたほうがいいのではないか、課税の仕方として取引税というのはいかがなものですかというのと、当時、国会における立法府の意思がそういう流れにあったわけですから、立法府がそういう意思決定をされている以上、我々ができることは、有効な資源配分を行うために、有取税は廃止したほうがいいというロジックだったと、昔のやつがあれば、自分の発言をちょっとチェックしてみようと思いますが。

委員

念のために申し上げますが、税負担水準ということで別紙になっている部分が、なかなか意見が煮詰まっていないので、これを11日と18日、今日と来週の議論で、あと繰上げの時期などの問題も場合によれば入ってくるかもしれませんが、少し議論をしておく必要があると思いますので、皆さんよろしくお願いします。

委員

先ほどから貯蓄とか投資の話なのですけれども、経済学でいうと、貯蓄が例えば預貯金、株式に運用されるという見方もあるわけです。ですから、ここの貯蓄というのは、預貯金だけを指していると思いますので、どこかでちょっと言っておいていただいたほうがいいかなという気がします。ですから、消費と貯蓄といった場合の貯蓄は、この場合の投資も含んでいるということになると思います。

それから、先ほど実証の話がありましたが、税率を変えることが消費と貯蓄の代替になるのではないかというのは、実証分析からは、日本のあれではならないというのがこれまで実証を得ています。それは先ほどの委員もおっしゃったように、将来の所得を変えますから、現在の消費とか、代替効果で所得効果があるので、金利が消費にどう影響するかというのは、日本では確定できないということがあるわけです。それは、貯蓄が増えれば将来の所得が増えることになりますから。

それから、もう一つ、2ページの一番下の「ホ」のところで、いまの貯蓄重視の中で一番日本で重要なのは、安全性志向に日本人が傾いているということが大分あると思います。だから、それがどういう形で、いわゆるここで言う投資のほうに回っていくかということが必要だと思います。

それから、3ページ目のところの2行目で、先ほど委員のほうからもお話がありましたが、包括的なインフラ整備で、もう少し具体的にインフラ整備の中身を書いておいていただいたほうがいいのではないかと思うのです。例えば、利便性の向上とか、小口取引を促進する ためのいろいろなインフラ整備、もうちょっと具体的なことを入れておいていただければいいかと思います。

それから、3ページ目の「ト」のところですけれども、「税制によって証券市場を活性化させることには限界がある」という、これは前の金融課税小委員会で私が実証分析したときに、証券税制を変えてもインパクトがないというのが出まして、やはり一番効くのは、株価の動きがほとんど決定要因でした。ですから、やはり税制を動かしても全然効かないというのがあったので、この限界があるというのは、私は正しいと思います。

それから、全体の流れですけれども、OECDの中では、日本人の預貯金志向が非常に大きいというのが、先進国の中では少し飛び抜けているという現状はあると思うのです。ドイツのように、70年代には日本と同じようだったわけですけれども、それがだんだんに、ここでいう投資のほうに変わってきているという背景はあると思いますので、ここには入っていませんけれども、その大きな流れというのは、日本の旧態依然、貯蓄志向ということが言えると思います。

委員

税負担水準のところでいくつかの問いかけがあるのですけど、二元的所得税論につきましてですけれども、多分、これはいろいろ学会でも議論されているのだろうと思うのですが、勤労所得と金融資産所得の性質の違いをどう考えるかということのほかに、最近、デリバティブとかそういったものがかなり大きくなってきていて、これを一緒にしてしまうと、デリバティブなんかは操作可能性がありますので、大きな損失をつくって、それで勤労所得と合算して、損益通算して、そして課税の税率を下げるとか、そういったことも可能になってきているような状況で、勤労所得と金融資産所得の性質の違いのほかに、そういった金融商品、特にデリバティブなどの出現による操作可能性ということについても、配意する必要があるかなというような感じを持っております。

それから、中立性の点ですけれども、これはさらっと考えれば、税コスト負担に対して、利子所得とか、配当所得とか、キャピタルゲインとか、そういったものがどのぐらい資金供給の弾力性が違うかということに依存するわけですが、それほど弾力性に違いがないとすれば、そういった点を中立性として考えるのかなというのが1つの点なのですが、同時に、例えば配当とキャピタルゲインについての中立性というのを考えた場合に、企業の利益処分のあり方などについても、この中立性というのは関連してくるのかなという感じを持ちます。例えば、経営者が本当に株主のために行動するという理論的な前提に立てば、配当が20%で、キャピタルゲインが26%という課税の税率の違いがあるとすると、株主のために本当に考えるのであれば、むしろ内部留保をしていくよりも、配当するというような行動に出る可能性もあるかなということで、利益処分のあり方にも税率の大きさというのは多少は影響を及ぼす可能性があるのではないかなというような、そういった論点もあり得るのではないかと思います。

委員

2ページからの「証券市場と税制」のトーンなのですけれども、何人かの方がおっしゃった意見に賛成です。やはり日本のこれまでのあり方が間接金融市場が優位であって、貯蓄優遇であったのは事実で、いまの時点でリスクマネーの供給を促進したり、それが産業構造の転換を促すというのは事実だと思いますので、この3ページの「ト」に書かれている「『証券市場の構造改革』に資する『税制面での構造改革』をする」、これはこのとおりだと思うのです。税制が証券市場をいろいろ変えるということは、私も懐疑的ですけれども、やはり税は税で変えなければいけないのだと思います。そのことはきっちり書くべきだと思うのです。

ところが、何人かの方がおっしゃったように、「ニ」から3ページに書かれていることは、いろいろ言われているけど、税は問題じゃないよということを、すごく言いたくてしようがないようなのがありありと読み取れてしまいますので、やはり書き方を変えたほうがいいと思います。

それから、3ページの「ヘ」にある「税制以前に」という言葉はやめるべきだと思います。後先論ではなくて、一緒に変えるべきで、こういう書き方はやめたほうがいいと。

それから、「ト」の後段に書かれていることと、それから「ホ」、貯蓄を重視しているのだという、これはやはり変えていく必要があるというあたりを前面に出したらどうかなと思います。

税制面の改革として何が必要かというと、やはり1点は、これまで株価が右肩上がりで来たことを前提にして、税率を引き下げることが優遇だと、そのかわり株式の損益通算は認めないというような制度になっていたわけで、それを変えるということが1つのポイントだと思います。ですから、「株式譲渡益課税のあり方」の5ページの源泉分離課税の廃止というところも、これまでの株価が右肩上がりを前提にした優遇措置のあり方というものを変えていく、申告課税にして譲渡損失をきちんと繰越控除できるようにする、ということの意味をしっかりと書いたほうがいいのではないかなと思います。

それから、もう一つの改革点は、金融資産への課税が相当難しくなってきていて、これは前から金融小委員会で出ていることですけれども、株と預貯金、配当といったようなことの中立を目指さなければいけないと。そういう中で二元的所得税論というのが出てきているわけですから、税率のあり方としては、私はここは20%でいいのではないかなと思っています。預貯金と一緒である必要は全然ない。構造的にいって、売る時期を選べるわけですから、一緒である必要はないけれども、これから二元的所得税論的な考え方でいくとすれば、ここで20%にしていくということはいいのではないかなと思っています。

それから、つけ加えますと、申告納税を簡素化するということを書き加えたほうがいいのではないだろうかと。申告納税にした上で、なおかつ、簡素に。技術的にいろいろ検討をしなければいけないと思いますが、申告納税の簡素化を書く必要があると思います。

ただ、委員がいらっしゃいましたので、これから説明があるのだと思うのですが、もう一つのペーパーの5ページに、簡易申告制度の導入というのが書かれていまして、これに証券会社の代行による申告不要制度を認めると書かれているのですが、私はこれは賛成ではなくて、証券会社が代行する申告不要ではなくて、あくまでやはり個人が申告するときの申告を簡素化していく必要があると。

多分、この証券会社の代行というのは、マイアカウントというペーパーが出ており、それはそれでよく考えられた制度なのですけれども、マイアカウントというのは、基本的には電話のマイラインと同じで、かなり囲い込み的な制度ではないかなと私自身は思っています。ですから、これからのことを考えると、証券会社が代行する申告不要ではなくて、あくまで個人が簡素に証券の所得だけを分離して出せるような、そして証券会社も申告のときに楽になるような書類を出すというような形が必要ではないかなと思います。

それから、もう1点最後に、やはり譲渡ではなくて保有への優遇を設けていいのではないかなと。かつて、マル優制度があったように、証券についても保有への優遇があっていいのではないかなと。それからしますと、いまのこの100万円特別控除というのは、譲渡に対する優遇ですから、これを廃止すべきだと思っています。かわりに一定額の保有までの優遇、例えば1人1,000万ぐらいまでの保有に対して非課税にするという優遇措置を、しばらくの間適用してもいいのではないかなと思っています。

委員

一言だけ。いまの委員からマイアカウントの話が出ましたけれども、あれは囲い込みをするというような意図は全くありませんし、私はああいうようなやり方は、名前はともかくとして、1つの方法だと思います。簡素という場合、個人でというのは僕は実務的に不可能だと思いますね。現に、いま源泉分離の場合でも証券会社が自分で全部やって納めているわけですから。

それから、どうも議論がキャピタルゲイン・タックスの話ばかりになってしまって、これはかなり売買を前提としたという話で、片方では個人の長期保有のためにということになっていますので、やはり配当課税の問題、それから投資信託その他の取り扱いの問題、こちらもきちんと書き込みが必要だろうと思います。

それから、もう一つは、先ほども御意見がございましたけれども、インフラ整備という問題で、証券業界も一生懸命やっているようでありますけれども、やはり上場企業のコーポレート・ガバナンスを、特に株主優遇ということでROEを高めるとか、特に配当性向をもっと高めていく、魅力を持たせる、というようなことを、やはり強く具体的に書き込んでいただきたいなと思います。

委員

この段階で、具体的な提案として、小委員会として一本化して文章をまとめるという問題と、それはちょっと無理だろうと、こういう問題に関して基本的に検討すべきであるというぐらいのメッセージを書き込む、という2つのものがあるように思います。そういうことも含めて、先ほど何人かの委員から非常に重要な指摘として、保有に関する論点とか、あるいは簡易申告制度の論点とか出ていますので、どちらかというと、検討課題として書き込むのか、具体的な提案として書き込むのかということも含めて、御指摘いただければと思います。

それはそうとして、委員がお見えになっていらっしゃいますので、今日の経済財政諮問会議でこれを提言されるということなので、もしよろしければ委員に、配付してあります資料をちょっと御説明いただいて、皆さんの御意見をと思いますが、よろしくお願いします。

委員

事前にお話をする機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

実は、我々、「改革先行プログラム」の作業を急いでおりまして、その中に税の問題を位置づけるということがどうしても必要になってくると。現段階で具体に案が出ておりますのは、金融庁等の案が出ている。これは直接的なお立場からの要請でありますので、できましたら、本政府税制調査会におきまして、前倒しで御検討いただきたいということで、たたき台を用意をしたということでございます。

今日、実は我々前3回にわたりまして、各大臣からのプラン、あるいはイニシアチブというものをヒアリングを進めてまいりまして、今回、実はそのプラン、イニシアチブに対して、経済財政諮問会議側からコメントをする。具体性、あるいはその実施の時期に関して、メリハリをつけた形でのリコメンデーションをする、こういう作業をやっているわけでありまして、それも今日同時に出すわけでありますが、その中で、税制改革におきましても、総理の御意向を受けまして、貯蓄重視型から投資重視型に税制を変更するということで、諮問会議のもとに実は歳入問題プロジェクトというチームを立ち上げておりまして、これは税の専門家の皆さんにお集まりいただいて、そして最終的には私の責任においてこの案をまとめ、4議員がこれに合意をして、今回、ここでお示しをする証券税制の改革の1つの案をまとめたということであります。

経緯につきましては以上でございますが、基本的な考え方、これはまさに、いま申し上げました、1つは、過去、貯蓄優遇的な税制に変わっていった総合課税というものを、現状の状況からすれば、投資優遇に対してインセンティブを与え、資産課税全体の中で中立化をすると、こういう構図で理論的には整理をいたしております。

しかも、この1ページの[4]のところで書いておりますように、先ほども御指摘のとおり、資産選択というものが、金融商品の多様性というものが出ておりますので、そのようなものまでカバーするような形での中立性ということを念頭に置いております。

もちろん、二元性所得に立脚をしておりますが、二元性所得は本来は労働所得・勤労所得と金融性所得との関係の中で議論される部分がございまして、足の速い所得と足の遅い所得との関係、リスクがある所得と、そうでない所得と、こういう状況の中で仕分けをするわけでありますけれども、ここではもう一段、金融性所得の中においての中立性という問題、さらには、もう一つ、ここでは貯蓄優遇から投資優遇という政策的な意図におけるインセンティブの問題、これをどういう具合に組み合わせるかということで、ここのプランというものが我々としてまとめた形になっております。

具体のところが御関心があろうかと思いますが、理論的なところにつきましては、これは論点は少しきちんと詰めていない部分もございますけれども、ほぼ論理的には問題がない形であろうかと思います。

3ページ以降、「改革の指針」のところから具体の改革案につきまして、説明をさせていただきます。

まず、改革の指針[1]、これは匿名制度を廃止すると。「証券税制を新しい時代の課税に」、これは「課税方式に」という具合に直していただきたいと思います。匿名投資というものを、これまで源泉分離課税という形で許容してまいりましたのは、やはり前時代的な制度であるということで、これは株式投資にまつわる不透明性というものを払拭するためにも、証券税制というものを新しい時代として再構築する必要があろうと。

それから、2番目はリスクのある投資。これは先ほども申し上げましたとおり、譲渡損失の繰越しと損益通算の徹底という形で認めるべきであるということであります。これはやはりアップダウンする投資的な部分について、リスクを考えますと、課税方式、これは古典的なマスメル・ドーマーの議論あたりから、ずっといろいろな議論がなされてきたわけでありますけれども、この損失相殺の導入というのは、必然的に行うことが求められているだろうと思いますし、エンジェル税制においても、これは言及をいたしております。

それから、もう一つは、申告納税という形で、当然のことながらこれはやっていかなければならないわけでありますけれども、その際に、源泉申告に慣れておりますわが国の個人の納税者にとって、急速に納税コストが高まるような、そういうやり方はなじまないであろうということでありまして、これは先ほどの委員のほうから言及をされて、證券会社の囲い込みというようなことが言及されましたが、決してそういうようなことを書いておりませんで、証券会社が投資家に1年を通じた取引と、それによる譲渡益に関する通知書を用意するということでありまして、これは現在の体制の中に、またプライバシーの問題等で、企業を通してこれをやるのかどうかとか、いろいろな問題がございますけれども、そういう点では公正さというものを担保しながら……

委員

先生、すみません、ここはいいんです。さっき囲い込みじゃないかというのは、5ページの……

委員

いやいや、そこのところがここのところに対応しているということで、そういう具合に理解をしてくださいということを申し上げているわけです。

それから、4番目の部分のところは、個人投資家への少額投資優遇。これは、現在、やはり多くの投資家というものが、資産保有者に限定されるようなイメージがございますし、証券市場というものが厚みのある資本市場を形成し、多様なリスクに対するプリファレンスというものが市場の中で具体化されるためには、当然のことながら、多くの投資家が市場に参入してくるということが必要なわけでありまして、この点を考えますと、非課税保有枠というものを設定していくということも、これは1つの考え方であろうと思いますし、預貯金等に対しての非課税保有枠が、高齢者等に限定をしておる向きはありますけれども、存在する中で、やはり日本の資本市場の後進性という観点でいえば、この枠組みというものも導入する必要があるのではないかと。

さらには、金融資産性所得というものは、中立性の観点から、税率は原則として20%にする。こういうことで先ほどの二元性所得の中における金融資産に関しても、統一的な税率を導入するということであります。

長期的には当然のことながら、このような税を執行していこうということになりますと、納税者番号というものが当然のことながら必要になってくる。これにつきましても、早急に検討を要するテーマであろうということであります。

5ページ以降は、具体に証券税制改革の提案になっております。いまの基本的な考え方及び改革の方向と重複する部分がございますが、基本的には、税率の統一と損失の繰越控除制度の導入。

ここで我々としては、期間と税率の問題で、やはり個人投資家をメッセージ性を含めて改革プログラムの中で織り込むというときに、単に一律というだけでは少し弱いのではないかと。金融市場の厳しい状況を考えて、過渡的な経過措置として、10%という形でこれを始めてはどうかということを提案いたしております。

それから、損失相殺につきましては、株式譲渡損益はもちろんのこと、株式投資信託の譲渡損益につきましても、5年間の繰越控除というものを認めていくということでございますし、ベンチャー企業の株式譲渡損失についても、繰越控除というものを認め、損益通算というものを実施するということ。これがどの程度効果があるかどうかの問題は御議論がございます。しかし、いまの状況を考えますと、メッセージ性というものを重視するということも1つの考え方かなということで、このただし書きをつけているということであります。

それから、少額配当申告制度。この点につきましても、10万円から50万円。

簡易課税、これは先ほど委員のほうからも出ましたけれども、先ほどのような形で考えていただきたいと思います。

それから、最後に、その他の検討事項につきましては、長期保有株式譲渡益に関する特別控除、これは導入が決定をされておりますけれども、これにかわり少額投資について非課税保有枠を設定する。あるいは401kの限度枠につきましても、これを大幅に拡充する必要があるのではないかと。自己株式償却の譲渡益の問題、さらには株式等投資を行うための親子間の贈与の問題、ストックオプションの問題、SPC、会社型投資信託にかかわる不動産流通税の大幅な軽減ないし非課税の問題、それから、不動産投資信託の問題も、これとどう考えるかという問題、さらには老人マル優を廃止し、生命保険・損害保険控除というものも、これも見直すという形で、貯蓄・投資税制全体の見直しも今後の課題として位置づけているということであります。

決して奇をてらった案になっておらないと思いますし、おそらく判断の違いというのは、臨時応急的な形でのただし書きの部分、税率等の部分のところについて御議論があろうかという具合に思っております。このたたき台をどこまで御検討の対象にしていただくか、これはもちろん税調の判断でありますけれども、1つの案としてお示しをしたということであります。

以上です。

委員

ありがとうございました。

それでは、どうぞ本間委員に対する御質問、ないしは当小委員会の「案」に関する提案、冒頭に仕分けて、その上で発言していただければと思いますが。

委員

このペーペーを拝見しまして、2つのところで伺いたいと思うのですが、1つは手続きですね。前に経済戦略会議というのがあって、そこから住宅ローンの利子控除というとんでもない制度が投げられてきて、それで税制調査会でやっとつぶしたような経緯があったのですが、今回、経済財政諮問会議で話が出て、大体、案が出る前にこういう税制調査会に先に出てくる、これはどういうことなのであろうかと。

うがった見方をしますと、税制調査会の反応、そのときの意見など、それを踏まえて、これが経済財政諮問会議で話をされるのかということになりますと、この2つの会議の関係がどういう関係になるのかということで、私としては、こういうものはむしろ諮問会議のほうで出て、いろいろ議論されたあとで御報告されるというのなら理解できるのですが、意見を言われる前にこちらのほうへ持ってこられたと。これがちょっと税制調査会としての取り扱いに困るのではないかと。少なくとも、何か言わないと、全部税制調査会では特に異論が出ませんでしたと、失礼ですが、極端なことをいうと、そういうことになってしまうということですね。

それから、もう一つ、今度は中身の点でありますが、総論のところは大体中立性というお話、わかるのですけど、いろいろ意見は違うところが出ますが、例えばフレンドリーな申告制度。おそらく株をやっている方というのは、非常にきちんと帳面をつけて、儲かったか、損したか、毎日新聞を見ながらにらめっこするわけですから、かなり几帳面な方が多い。むしろ中小の法人の事業者のほうが、減価償却をやったり、棚卸資産の評価をやったり、これも全部自分でやっている方が多いわけですから、そういうのに比べたら随分株の申告は、これは記録さえとっていれば、そんなに難しい問題ではないだろうと。なぜこういう投資家にわざわざ申告手続きを緩和したような形をとらなければいけないのかという点ですね。私にはちょっと理解できないです。

その申告の手続きを簡素化するということだけでとまるのであればまだしも、おそらく、そういう簡素化ということによって、実体法の中身までも変わってくる可能性が非常に高くなるということで、こういう申告制度を簡素化ということは、あまり大きく出されるということには疑問があるわけです。

それから、5ページに具体案がいろいろ並んで、過渡的な経過措置ということになっていますが、これは私、委員がいらっしゃらなかったときにこの小委員会で申し上げたのですけれども、やはり税制調査会というのは、これもまた先ほど話した話の繰り返しになりますが、源泉分離から申告分離と、これを何度も繰り返し言ってきている。特に昨年の中期答申では、やはり総合課税ということ、これがはっきり出ているわけですね。その中で源泉分離から申告分離、総合課税、このステップをどういうふうに考えて税制を考えていくのかと、そういう方向の中で考えるべきで、悪く言いますと、拙速な手段を使ったようなことは、税制調査会では議論すべきではないのではないかと、こういうお話をしたのですが、5ページに出ているのは、全くの政策的な対応であって、従来の税制調査会とは少し距離を置いた議論だと思います。だから、これを取り込んで税制調査会の場でたたき台とするのは、ちょっと無理があるのではないかというような気がするわけです。

特に401k、これは税制調査会では年金課税の問題というのは、現在の公的年金についても非常に批判が強いところですけれども、401kは個人年金になりますけれども、これはさらに個人年金にも税制上かなりひどい優遇政策になっているわけでありますので、この点については、前から議論は出ておりましたけれども、このままこれをたたき台にして議論すると申しますか、そういうことはちょっと難しいのではないかと、このように思っております。

委員

非常に実務的な御質問が最初にありまして、これにつきましては、事務方からお話を伺っていただければと思います。委員がこういう問題について御質問があるというのは、少し私は理解ができない部分がございまして、あらゆる領域の中でいまそういうことが起きております。例えば、社会保障に関する審議会におきましても、「骨太の方針」を受けて、きちんと対応してくれと、審議会が対応する前に、ある種具体的な「骨太の方針」を出しているわけでありまして、これもその例外ではないという具合に御理解をいただきたいと思います。

それから、ここでも私はスピード感の問題について申し上げて、その取組みというものが、こういう状況であれば、具体的なたたき台を用意させていただく準備はあるということを申し上げておりますので、そういう点で何も裏切り行為をしたということではないと、事前に情報を提供していると、こういうことであります。

それから、2番目の問題は、これは委員は総合所得税論者、古典的なお立場であるということは十分理解をいたしますが、理論的に二元性所得というのは、きちんとした位置づけが与えられているわけでありまして、税調が果たして総合課税をずっと言い続けてきたか。租税特別措置の状況の中におきましても、分離課税を現実にずっとサポートしてきたのが歴史でありますから、ここに来て総合課税論に立脚をして、このたたき台がならないというのは、私は全く理解できない。そういういまの御質問を受けての感想であります。

それから、3番目の問題は、これは緊急の問題としての側面があるわけでありまして、証券税制、株価対策というような問題ではない。これは御理解いただきたいと思います。

株価が低迷をしておりますのは、株式市場それ自身の問題、あるいは株式会社の問題、あるいは日本の企業の低いROE等の問題、これが解決しなければ、当然のことながら株価が上がらないということはあり得るわけでありますけれども、それとの問題でこの税制、あるいは環境というものの整備という問題を別個に考えなければならないわけで、その意味で我々は、総理が貯蓄優遇から投資優遇についての議論をしろということでございますので、こういう形で答えたということでございますので、そういう形式論に基づく議論よりも、むしろ実態的にどのように考えるか、そして、そのスピードをどのような形で加速化をしていくかということのほうが、私は構造改革の実現にとって重要ではないかという具合に考えています。

委員

1点確認しておいたほうがいいことは、委員の文章の5ページ目のただし書き以下のところで、いま先生がおっしゃいましたよね、まさにそういう御配慮があるのは十分わかります。この文章ですが、源泉分離課税について廃止して、一旦切ってしまって、それでこの過渡的な経過措置を始めるんですね。つまり、過渡的な経過措置の中に源泉は残っていないのですね。

委員

もちろん、そういうことです。

委員

残っていないよね。この辺、もうちょっと明確に書いていただいたほうが、心配する人がいるから、そこをちょっと配慮してください。

委員

関連して1点だけお聞きしたいのですが、過渡的な経過措置というときに、「金融市場を巡る環境が厳しい現状にかんがみ」と書いてありますね。いままさに委員自身もおっしゃったみたいに、税制がそんなに大きな役割を果たすとは、特にこの譲渡益課税があまり株価に大きな影響を与えるとは思えないということをおっしゃったわけですよね。そういうことにもかかわらず、「金融市場を巡る環境が厳しい現状」と「過渡的な経過措置」というのは、何か結び付かないような気がするのですが。

委員

これは実態はともかく、いまシステミック・リスクの胎動が起こっているような、そういう雰囲気がある中で、この問題について、我々が構造改革に対して、よりスピードを速めているというメッセージをここの中でいま書いているということであります。

委員

システミックを解消すれば、もう……

委員

もちろん、そういうことであります。

委員

そこをもうちょっと明白に書いたほうがいいように思いますが。

委員

拝見をし、ただいまの御説明をお伺いして、おおむね基本的な考え方につきましては、私ども、匿名性であれ、中立性であれ、おっしゃるとおりだと思いますが、各論になると、なかなか心配があるということでございます。

いずれ税制としても、現在は財政構造改革があまり叫ばれませんけれども、早い機会におそらくやらざるを得ない。いつまでも50兆の税収で80兆使っているというわけにいかないわけですから、いずれ税は基本的に見直さなければいけないと思います。そのときには、おそらく所得税の課税最低限を下げなければいけない。消費税の税率を上げなければいけない。広く薄く御負担を国民の皆さんにお願いするということになるだろう。そういう税制の抜本的な構造改革をいずれすぐやらざるを得ない。それとの関係で障害にならないようなことを、ひとつお願いをしたいという感じでございます。

いまから12、3年前の税制抜本改革、これは10年がかりでございまして、最後は消費税でございましたけれども、結局、最後まで引っかかったのは、お医者さんの税金、利子、株、これが主なものでございました。こういう不公平な穴のあいた税制を抱えていながら、消費税みたいな、売上税みたいなものが一体本当に世の中にできると思うのかということでございまして、医者の税制は何とかまとめましたけど、結局、利子と株が残る。最後は、当時利子は郵便貯金は非課税、普通の預金はマル優でございまして、これが全くの管理できていない濫用で、実質非課税でございました。それを何とか、61年頃でございました。これを課税に持っていく。それは源泉分離になってしまいましたけれども、しかし、何とか課税に持ち込みました。そのときに与党・自民党サイドの中で先頭に立って引っ張っていただいたのは、いまの小泉総理でございました。

そこで利子は何とかなったのですけれども、株がどうにもならない。利子がまとまったところで売上税が提案され、結局、これは国会で相手にされなかったのですが、最後残るは株式でございました。そして、株式の中でも、フローとしての配当のほうは、これは何とか一貫して課税はしてきましたけれども、キャピタルゲイン、これはシャウプ勧告では課税と言われて、そうしたのですけれども、28年に非課税になってしまった。これが30年、40年ずっといろいろ議論されつつ続いてきた。しかし、何とか税制の抜本改革をするためには、これを何とかしなければいけないということで、とにかく、原則非課税は原則課税にお願いをしようということで、63年の抜本改革のときにできたわけでございます。しかし、源泉分離といった妥協的な経過的な措置が残りましたけれども、これはいずれ是正されなくてはならないという理解のもとでございました。そういった意味から背景を考えますと、これは何とか、今回、基本的な考え方としては、哲学は税制調査会とそう変わらないと思いますが、この5ページあたりの各論になりますと、そこらがかなりいろいろ心配があるわけでございます。

例えば、税率についていえば、10%、これは経過的だということかもしれませんけど、一度経過的な措置で入りますと、10年続くのか、20年続くのかという、そんな悲観的であってはいけないわけですけれども、大丈夫かなと。

それから、100万円控除は廃止して、少額の非課税制度、保有制度ということをお考えだと。これはまさに10数年前に、小泉総理が先頭に立って廃止したマル優、郵貯、これが部分的に、確かにいまマル老というのがあるのですけれども、これの復活になってしまう。そして、これは株式だけだよと言っても、それで治まるか。結局は中立性の問題からして、それは預貯金もそうではないかと。そこは税調として頑張るべきところなのでしょうけれども、そこは本当にもつだろうか。

そういったところの問題、いろいろこれは心配すればきりがないかもしれませんけれども、どうもそのあたりが心配になって、この何年後かにすぐ来る税制の抜本改革のときに、そこに問題があるのではないか。それを解決しなければだめだよと言われてしまうような環境、雰囲気には、ぜひひとつならないような配慮が必要ではないか。そんな心配をするわけでございます。

委員

私は専門委員で、特にこの小委員会へだけということでありますので、従来の税調の議論というのはあまりよく知りませんけれども、やはりスピード感を持って、特に現在の状況に対応していくという意味でこういう小委員会ができて、しかも、当初はもっと中期的な税制ということを言われましたけれども、やはり特に私の個人的な考えでは、党の税調あたりには若干妙な動きもあるので、先にこれでやっていくという会長の方向には、基本的に賛成でございます。したがって、先ほどの委員のお話は除外しまして、僕は専門委員ですから、素直にこういうのが経済財政諮問会議の腹案としてオープンに出てきたというのは、非常に結構なことではないかと思っております。今日、11日、何にも我々が知らない間にボーンとやって、大きく新聞に取り上げられたということのほうが、かえっておかしな格好ではないかと考えております。

実は、私も株式市場活性化の問題で、委員に依頼されて、プロジェクトチームをやった経験から、そういうような感じを持っております。それで、基本的に僕は内容については全く異論はございません。

ただ、その中で1つだけ特に、先ほどの委員からもありましたけれども、申告納税簡便化の必要性ということ、これは結局、現状は4ページの[3]、それが5ページの(3)、こういくわけですが、これは僕は非常に重要な問題だと思います。

それから、基本的には、まさに証券市場をめぐるインフラ整備、これは仲介者、証券業界、あるいは発行会社、その他監督当局を含めての問題、これが大前提であり、同時に株式市場というのはファンダメンタルに従うというのは、長期的なトレンドはそのとおりであるし、また私も従来からそういうことを言ってきておりますけれども、ただ、税制というものは1つのインセンティブとして非常に大きな要素になるということは事実だと思いますね。したがって、現在、これは私の主観的な感じですが、株式市場はおそらく大底にあるというような状況で、こういう問題が早く出てくるということは、数年後には非常に大きなインパクトになると思います。

これはまた政府の当局にとりましても、具体的な数字を申し上げますと、例えば、〇〇證券で株式その他を含めて有価証券にかかわる問題で、どのくらいの税金を納めているかということを、税額を計算してみますと、平成11年度、これは株が上がっているときですね、大体月間平均80億円、そのうちの65億円は株式です。それから、そのうち源泉分離の選択率というのは82%ですね。申告はしたがって18.2%という状況。

これが平成12年度に入りますと、下げ相場ですから、有価証券関係の税額は月間平均で42億円です。半減するわけです。株式は39億円というような状況で、やはりいま基盤を整えておけば、先には大きく税収が増えていく。当然、これは株がファンダメンタルズがよくなるという前提でありますが。その場合でも、源泉分離の選択は77%、したがって申告は23%。やはり下げ相場のときは、おそらく両面をうまく使っているというところがあるいはあるのかもしれませんけれども、そういう意味からいきまして、僕は申告納税の簡便化ということ、ユーザーフレンドリーということは非常に重要なことではないかと、この数字を見たら、件数はまた膨大な件数になっているわけですから、そういうふうに思います。

それから、1つだけ、私が申し上げると、またおまえは業界寄りだと言われるかもしれませんけれども、3ページの「改革の指針」というところで、[1]の「匿名制度を廃止して、証券税制を新しい時代の課税に」というところの、「黒い影を払拭する」というのは、いかにも何かマフィアみたいなので、せめて「不透明感」とか、何か言葉を変えていただきたいなと、これはお願いであります。

委員

ちょっと念のために申し上げておきますが、冒頭に申し上げましたとおり、経済財政諮問会議ではなくて、我々のほうの案を今回と次回でつくらなければいけないということがあります。とりわけ、税負担水準という部分は、さらに議論が必要かと思うので別紙にしたという経緯があるので、とりわけ、経済財政諮問委員会の意見であるとか、あるいはさっきの委員の御発言もありましたけれども、どういう税率を提案するのか、しないというチョイスもなくはありませんが、どうするのか。

それから、特別控除制度、これをどういうふうに提案するのか。あるいは、場合によってはしないで、経済財政諮問会議のように、保有枠みたいなものにするという考え方もあるかもしれませんが、それをするのだったら議論をしなくてはいけないので、そのための時間はかなり限られている。

それから、簡易申告制度について触れられている方もいますが、これは我々の委員の総意をまとめるのは多分無理だろうと思うので、メンションする必要があるのかどうか、というようなことも議論をする必要があります。

税率に関しては、過渡的な経過措置をするとか、あるいは繰越しについても、経済財政諮問会議では損益通算も実施するということも書いてありますから、こういうようなことに関して議論の時間も取っていただきたい、あるいはぜひ御発言もいただきたいと思います。

委員

私はやはり税の議論というのも、多元的な場でなされていいと思っています。やはり政府の審議会がスピード感がないのは事実ですから、多元的な場で議論すべきだし、規制改革を長くやっていて痛感しているのですけど、いつでも役所が審議会に引き取らないと政策決定しないということに相当いら立ちを持っていますので、こういう多元的な議論が出てくることはいいし、それを今日、委員がお話しになったのも、税調の承認を得たというようなケチな了見ではなくて、対立すべきは対立した意見を交換すればいいし、連携をとるべきはとればいいという趣旨だと思います。

それから、先ほどの委員がおっしゃった簡素化というか、フレンドリーな申告ですけれども、いま税をやっている人ではなくて、これまで税をやったこともないような普通の人が、これから株式投資をするのだというような状況を考えて制度をつくっていく必要があるわけですから、やはり私はフレンドリーであったり、簡素であったりということは、重要ではないかなと思っています。

ただ、以上を踏まえた上で、今日これを拝見して非常に戸惑っているというのが実感です。私もこの歳入問題プロジェクトに入らせていただいたのですけれども、やはり簡素という点でいうと、証券会社の代行による申告不要制度というのは、少し違和感があります。

それから、(4)のその他の検討事項のところも、初めて目にすることとか、もう少し考えてみたい点もあります。

おそらく、新聞記者がここで一番注目するのは、5ページ以降の各論のところだと思うのです。これはここで申し上げような話ではないのかもしれないのですが、一番最後に歳入問題プロジェクトに感謝の意を表していただいているのですが、これで取材をされたりしても、ちょっと困るかなというところがありまして、できればやはりこれは経済財政諮問会議としてお出しいただいたほうが、これからあとの発言の自由度といいますか、そういうものがあるかなと思います。これは私、直接委員に申し上げることかもしれませんが、時間がないといけませんので、5ページについて、ちょっと戸惑っているということを申し上げます。

それから、5ページの(1)、税率を20%にして、経過的に10%にすると。それから、損失を繰越控除するというこの点については、私は  これでもいいかなと。

委員

5年間も含めてですか。

委員

はい、5年間を含めて、いいかなと思います。

委員

委員は非常にいま責任あるお立場で、逆にそうであるがゆえにいろいろな批判の矢面に立たされていらっしゃるのだろうと思いますが、税制調査会から経済財政諮問会議のほうで、税制調査会の議論も踏まえた上で御発言なさる方ということで、税制の将来を考えると非常に大切な方ですので、そこでお願いということで、批判もありますけれども、それも含めてお聞きいただきたいのですけれども、やはり執行の問題が非常におろそかにされているのではないか。おろそかというと非常に失礼な言い方ですが、そんな気がしているわけです。

歳入問題のプロジェクトの方々の中に執行の専門家がどれだけいらっしゃったのか、私にはちょっとわかりませんけれども、例えば納税者番号制度については長期的と。この流れでいけば、長期的ではなくて、来年から入れろとか、それでもいいはずなので、できる、できないは別としてですよ。その執行に関する興味は示しながらも、実際のところでかなりいろいろ執行の視点が落ちているのではないかという気がしております。

例えば、先ほど指摘なさったのでよろしいのですが、過渡的な経過措置として10%申告分離の税率を落とすというところは、この文章ですと、過渡的な経過措置として源泉分離課税も残すというふうに読めてしまうものですから、これは、というふうにちょっと思ったのですが、先ほど直してくださいましたけれども。

それから、非課税保有枠なのですが、納税者番号制度がないところで非課税保有枠なんて管理できるはずがないというのは、常識だろうと思うのです。仮に納税者番号制度が入ったところで、非課税保有枠制度は無理だと思うのです。なぜ無理かというと、値洗いができない。この1,000万というのは買ったときの1,000万だということであれば別ですが、毎期毎期値洗いして、1,000万であるかどうかを確認する手間隙をかけて税金をまけてあげるということが、果たしてどうなのかということでございまして、その他いろいろなところで個別的な額を決めて優遇措置が出ていますが、すべて番号制度を前提ですし、仮に番号制度が入ったところで、どこまでどうかということは非常に大きな問題になると思うのです。ですから、執行の観点をぜひ強調していただきたいと思います。

それから、一般庶民に対してまけるということは、それはそれでお立場としてわかるのですが、厳しくするところ、つまり日本で儲けて一銭も税金を払っていない方で、ケイマンに持ち逃げしている方等について、きっちりとやるというようなこともつけ加えていただけると、内閣で言うとパワーが違ってきますので、ぜひお願いしたいと思います。

委員

先ほどお話のあった別紙の8ページの問題につきまして、大体いままでも申し上げていたことでございますけれども、8ページの水準の話でございます。やはり100万円控除ができてしまったということで、前回の資料でも御説明がございましたが、433万円までは20%にいかないのだということでございます。そういった意味では、100万円控除が前提になっている限り、これはなかなか動かすことは、逆にむしろ上げる方向には動くことはあっても、なかなか下げるというのは、100万円と一体でできるのかなという気がするわけでございます。

それから、二元的な所得税論という観点からすると、利子との関連で同じようにという点もあるわけですけれども、ストックとフローという話もあるわけでございます。先ほど委員からお話があったように、デリバティブとかいろいろなことをやると、ストックもフローもごっちゃになってしまうという点もあろうかと思いますけれども、それはプロの話でございまして、一般の投資家にとっては、やはり配当は配当で、配当はいま20%ですが、そこは利子とつながってバランスがとれているとも言えるわけでございます。

それから、企業経営者が配当のほうが20%で、キャピタルゲインが26%だと、株主のことを考えればというお話もございましたけれども、配当の場合は、それが的確に配当落ちに反映されれば、そこはバランスがとれるようになるのではないかとも思います。ちょっとよくわからない点もありますが、そういう見方もあるのかなと。

また、二元的所得税論でいけば、キャピタルゲインということで見れば、土地との関連もある。そういった意味では、土地は26%でございますから、こういったいろいろな点を考えますと、水準をいま見直すという時期であるのかどうかについて、疑問を感ずる次第でございます。

委員

いまの税制の問題としては、課税ベースが随分縮まっているというのが問題で、これから所得税にしろ、法人税にしろ、課税ベースを拡大するということに努力しなければならない折に、ここに出されておりますものは、みんな課税ベース縮小の話でございまして、私はこれは大勢には反するものだと、こういうふうに思います。

経済対策等で問題にするのなら、まさしく税率一本で、どの税率で現在の経済情勢を切り抜けるのか、その話一本に限るべきなので、特定の負担を上げ下げするような課税ベースの問題に入るのは、私はおかしいと思っています。

いま委員のほうからもお話があったことですが、ちょっと事務局でもう一度調べていただきたいと思うのですが、二元的所得税論、2ページで委員は、最適課税論に依拠する二元的所得税論というお話で、この間、事務局のほうからも北欧の二元的所得税論というお話があったのですが、私がヨーロッパへ調査に行ったときに、イタリアで、大蔵省、財務省というのでしょうか、いろいろパンフレットが玄関に置いてありますが、そこにデュアル・インカム・タックスというのがありまして、結局、EU諸国ではどこでもそれを採用して、というのは通貨統合のために各国の企業の自己資本比率を高めなければいけない。そのための政策税制としてこのデュアル・インカム・タックスというものが採用されていることなんです。

それがクノッセンといったような人たちの論文も影響があるのだと思うのですけれども、どういうわけか日本では、ちょうどいまの金融課税の議論に結び付きまして、何かいかにも金融所得に対する課税は低くてもいいということを支える税制であるかのように捉えられているわけですが、委員が言われているのは、別の理論なのだと思いますけれども、ちょっとその辺の何かが混乱しているようなところがありますので、そのヨーロッパのデュアル・インカム・タックス、これをもうちょっと調査をして、情報として提供していただけると非常にありがたいのですが、よろしくお願いいたします。

委員

先ほどの委員のお話から始めたいと思いますが、もちろん税率できちんと対応できれば、それにこしたことはないと思っておるのですが、今後の検討課題のところで挙げておりますとおり、利子の問題、ペイオフも含めての問題をどう考えるか。それから生命保険控除・損害保険控除、こういうものがあるときに、どういう形で個人投資家をここの中に入れ込んでいくかということを、中立性の観点から考えますと、それはやはりいまの存在することをスタートにすれば、やらざるを得ない。したがって、我々としては、こっちのほうがきちんと対応できるのであれば、これは税でリスクの問題については考えましょうというのが、ここの根底にある考え方であるということであります。これは御理解いただきたいと思います。

それから、もう一つ、執行体制の問題、これは御指摘のとおりでありまして、とかくやはり「黒いうわさ」が、申しわけございませんが、ある分野でございまして、これをどういうぐあいに適正化をしていくかというのは、非常に大きなテーマだろうと思います。

私、いま委員のお話を伺って、消費税導入論議の際に、私が何かそのような議論をしたなと。つまり、課税ベースを把握するときに、納税者のいわばインボイスをつけて、きちんとやれと、番号をしてやれよと。しかし、その際には政治的な判断もあって、みなしでいきましょうよと、中小企業を中心に実態はついてこれないと、こういうお話でございました。したがって、私は泣く泣くこういう現実にすり合わせるような案をつくっていると。中長期的に見れば、これは当然のことながら、きちんとした番号を前提にした申告制度にしていく必要があるのだろうと。そういう意味では、そこを待って入れるということになりますと、消費税のときもそうでありましたとおり、非常に結論が得にくいという状況がございますので、こういう形でまとめさせていただいたということであります。

それから、先ほどの委員のコメントは、メンバーの方々に御助言でございますから、責任は私が負っておるということでございまして、チームの存在それ自身が認知されているので、こういう形でやらせていただきました。もしあれでしたら、これは外させていただきたいと思いますが、日頃お元気な委員が、そういうことをこだわるというのは、若干私は理解できない部分もありますけれども、それはそれとして、あとでまた調整をさせていただきたいと思います。

これは経済財政諮問会議側としては、やはり現状の把握において、極めて危機感を持っていると。若干、私も委員と同じように、拙速で十分詰めなければならないという部分は認識をしております。これは、ある委員はたたき台にしてはいけないとおっしゃっておられますけれども、たたき台にしていただけるなら、こういう案をいわば頭の中に入れておいていただきながら、税調で御結論を得るというのが、やりやすいやり方ではないかと。また、諮問会議としてお出しいただいた案に対して、コメント等をまたつけさせていただくということもあり得る話だろうと思っております。

委員

ありがとうございました。

そういう最後の一言も、発表される?

委員

今日は諮問会議で議論をしたあとで、この資料については公表するということでございます。事前に実は事務局とも調整をいたしまして、そういうことで御了解を得ているという具合に理解しておりますが。

委員

小委員長はこういう立場では本当はないのかもしれないのですけれども、私自身も、何かをすべきだという意味でのスピード感が必要だということはわかるのですけれども、他方では、拙速であってはいけないというふうには思っておりまして、いくつかの点で少し危惧は感じないわけではないので、今回の意見を踏まえて、よろしく御検討はいただきたいと思います。

それから、他方、我々の小委員会のほうの結論ですが、あと5分ぐらいしかないのですけれども、とりわけさっきから問題にしております税負担水準にかかわる別紙の部分で、いままで出てきているのは、税率に関しては20%一元化という議論しか出ておりません。経済財政諮問会議から出てきたような過渡的な経過措置10%というのは、委員からそういう形で言われている。この2点ですね。それから、26%のままでもいいのではないかという議論もあります。そこら辺、どういうふうに折り合いをつけたらいいのか。

委員

私、この間、小委員長が言われたのですが、その辺がまだ考えがまとまっておりませんので。現状維持26%なのか、あるいは段階的にするのか。

委員

いまのは別の委員です。

委員

あ、失礼しました。

委員

それから、特別控除をどうするか。特別控除に関しては、どなたもいままで指摘はされていないと思うのですが、100万円をそのまま残すのか、委員の一人から少しネガティブなことはちょっと言われたように思いますが。それから、今朝の朝日新聞等に書いてありました50万円という説とか、これは会長ですが、そういうことが席上ではなく言われておりますけれども、ここら辺についてどうお考えになるか。

それから、繰越しに関しては基本的に認めるのだと思いますけれども、損益通算についてどうするかということは、これは経済財政諮問会議から問題意識として提供されているということだろうと思います。

配当に関しても、委員を含めて経済財政諮問会議から言われておりますが、これが年間10万円ですでに9割カバーしているということを含めて考えたときに、少額配当申告不要制度を引き上げるということを、どういうふうに判断すべきかということについて、もう少し御意見をいただきたい。

それから、簡易申告制度に関して、私はこれは結論を書き入れることは、事実上不可能だと思うのですが、経済財政諮問会議、それから委員から出ましたので、これについて何らかのメンションをすべきかどうかということですね。

それから、保有に関するもう一つの問題として、非課税保有枠ということが、これは委員からも経済財政諮問会議からも出てきている。これについてどう考えるか。

あと、老人マル優制度については廃止ということで、一応ほかのところで書いてありますから、これはいいのだと思うのですが、そのほかにその他の検討事項という部分で、何か我々のほうで明示的にメンションすべき必要があると思うかどうか、というようなことが問題かと思います。

何か御意見がありましたら、今日のうちにおっしゃっていただきたい。さもなければ、18日に全部一括して議論せざるを得ない。

委員

先ほどの御指摘の部分、5ページの(1)のところ、これはこういう具合に修文をさせて明確にしたいと考えています。私はそのつもりで事務局に修正をお願いしたのですが、(1)の一番最初の文章、「株式譲渡益を含め、金融所得について原則として一律20%の税率に統一する」、「ただし」この文章をそのあとに持っていく。「金融市場を巡る環境が厳しい現状にかんがみ、申告分離課税の税率については、過渡的な経過措置として10%とする」、そして、「その際、源泉分離課税については廃止をする」と、こういう形でより明確にしたいと思います。この(1)を変えれば、御懸念の点は払拭されるのではないかと考えますので。

委員

わかりましたけれども、「その際」というのは……。

委員

過渡的措置が始まったときですよね。

委員

そうです。

委員

そういう意味ですよ。それでいいんじゃないですか。

委員

あるいは、「その際」は取っていただいてもいいですが。

委員

「その際」を取ったほうがはっきりするんじゃないですかね。

委員

下げないと廃止しないというのも……。いやいや、いいですけど。

委員

これ、時期的にはまだ多分、明示できないんだよね、向こうのお立場上。

委員

ここの部分のところは、いろいろ書き方が誤解を生みやすい。我田引水的に解釈されやすい部分がございまして、時期の問題として、臨時国会でやったあと直にやるのか、来年4月にやるのか、再来年にやるのかというような時期的な問題がこの背後にあるわけでありまして、できるだけ新しい制度が導入されたときには、源泉分離の部分のところについては……

委員

委員、源泉分離課税については廃止した上で、申告分離課税について、経過措置で10%にするというふうな書き方は、あからさますぎますか。「上で経過措置を始める」と。はっきりするでしょう。

委員

わかりました。いまの御指摘を含めて。

委員

僕は法案を書いていないからわからないけど、事務局はこういう理解でいいのですか。いまみたいな書き方で。

事務局

いま言われたのは、ここで言う株式譲渡益を含め云々廃止するというこの2行を、もっと上に持ってきてしまうのですか。

委員

違う違う。税率を統一すると。源泉分離課税について廃止した上で、申告分離について10%にするという、そういう趣旨です。

事務局

わかりました。

委員

サイマルテーニアスでやるという趣旨が入るかと思いますけど、それは僕は法律を書く立場でないから、こういうので曖昧さが残るのか、残らないかは、事務局のほうですから、あとでちょっと出しておいて。

委員

20%を10%にするので、それを廃止するという、そこが続いているのかどうかなんですね。20%に統一する。そして源泉分離は廃止すると。ただ、現時点では経過的に10%だという。

委員

条件にしないほうがいいんじゃないですか。

委員

これはコンディショナルな形で書いたつもりはないのですが。

委員

それはやはり大原則が申告分離だという趣旨をはっきり出したほうがいいと思いますね。

事務局

私どもは、委員がお書きになった前段の部分からすると、そのほうが一貫しているように思いますが。

委員

それでは、よろしいでしょうか。

委員

最後にちょっと、いまの話にもありましたように、私はこの問題を考える際に、現在の源泉徴収制度をやめる、申告の制度に基本的に持っていくのだというのは、すべてを考える基本だと。これなくしてほかのことを考えるというわけにいかないというぐらいに、この点については思うのです。

細かいことは、特にこの委員会のまとめのペーパーそのものについては、従来のいろいろな御意見を踏まえて、いいと思いますが、ただ1点だけ、投資信託関係のところが何という名前で書いてありましたか。重要性を指摘した文言がございますよね。あれを受けて、一番最後の税負担水準のところにも何か投資信託関係の話があってもいいのではないのかなと。庶民にとっては、こういう税制の恩典を受ける一番多い分野ではないのかなというような気がするのですけれども。

委員

それは、どの部分でもとおっしゃいましたか。

委員

前に本文の部分にはあるのですけれども、税負担水準の別紙の部分に。やはり損益通算みたいなことを、いまでも銘柄というのですか、1つの投資信託については、分割して売ったりなんかしたときの損益通算みたいなものは、多分、実質的にあるのだろうと思うのですけれども、いくつかのものを持っているようなときの損益通算というのは、多分、全然ないのだろうと思うのです。

委員

執行上、何か難しいというのを私は事務局から聞いたことがあるのですが、何かそれに関して、よろしいんですか。

事務局

現在、株式投信のお話だと思うのですが、公募のものにつきましては、源泉分離の形で利子並みとなっておりますので、したがいまして、通算の問題が生じておらないという整理でございます。

したがいまして、仮に通算のお話ということになりますと、個々の商品ごとの源泉分離の形を変えなければならなくなってまいりますので、少し税制上の検討が必要なことになるのかなと。

委員

私は、やはりそこだけは源泉分離を残すのだというのも、ちょっと変ではないのかなという気がするんですけどね。技術的にできないという話であるならば、それはまたいろいろ考えなければならないところがあると思うのですが、考え方とすれば、そういうことではないのかなという気がするのですが。

事務局

まさに市場型間接金融という流れの中で、証券・投資信託というのは非常に大事だという認識は持っております。この問題は、この中でどっちかというと株式譲渡益課税の問題を中心にいま議論がなされてきたのですが、この投資信託をどうするかというのは、経緯的に見ますと、かなり利子並み課税にしたいという業界側の要望もありまして、いまそういう形にしているわけですけれども、これをそういった損益通算とかいう話が出てまいります場合には、根っこから投資信託の仕組みをどう考えるか。例えばビークルという形で、いま投資信託と投資法人というのが12年度改正でかなり大幅な議論をいたしまして、いま仕組みをつくっているわけでございますが、その際にも株式投資信託につきましては、あまりいじっていないという問題がある。したがって、ビークルそのものに対する課税の問題とか、そういった問題まで含めたところで、本当に株式投信をどういうふうに考えていくか。かなり根本にさかのぼった議論を一度お願いしないと、例えばいいとこ取りだけで、いいところだけくっつけたような税制というのは、なかなか仕組めないのかもしれないということで、少しお時間をいただきたいなと、正直なところあります。これは引き続きこの場で御議論を賜ればと。今回、この意見でそこまで掘り下げることは、なかなか時間的にちょっと厳しいかなというのが、事務当局としての一応の考えでございます。

委員

ちょっと確認的な話になるのですが、そうすると、「証券税制のあり方」の「ロ」のところで、市場型間接金融の重要性を指摘をするわけですよね。これは要するに、いまおっしゃったような、もうちょっといろいろ基礎的な勉強をして、先々考えていくのだと、こういう意味で書いてあると、こういうことですか。

事務局

そのあとに「ロ」と「ハ」をあわせまして、今後さらに検討を深めていくというようになっていますけれども、まさに、当初11月ぐらいに中間的な報告という話もございましたし、いずれにしても、今回かなり緊急的にこういった報告をまとめていただくということになっているわけでございますが、もう少しその辺は、今後さらに次の問題として、またここの場で御議論いただくと。まさにこういった小委員会で、専門的な見地から御議論いただくのにふさわしい問題だと思っております。

委員

ぜひそれは検討をお願いしたいと思いますね。

委員

「残された課題」というような紙をもう1枚何ならつけていただいて、そこに投信の問題であるとか、さっきの簡易申告の問題であるとか、そういうのをいくつか、結論は出さないで、今後検討が必要であるというような形で盛り込んでいただくことが必要かなと思いますけれども。

委員

二次所得の所得類型そのものに関する非常に基本的な話ですから、そう簡単に……

委員

いかない?

委員

じゃないかと思うのですが。基本中の基本なんでしょうね、やはり。

委員

それも含めて事務当局でちょっと考えていただいて、次回の委員会で検討するということにしたいと思います。

では、本日の審議は、すみません、長引きましたけれども、以上です。

次回は9月18日、火曜日を予定しております。

次回は、本日いただいた御意見を踏まえまして、案を修正いたしますので、再度、取りまとめに向けて御議論をいただければと思います。本日の案は中途段階のものですので、席上にそのまま残していただくようお願いいたします。審議の進展にもよりますが、基本的には次回で取りまとめを終え、委員会としての考え方をまとめることができればと考えております。

それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところ、どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会