第5回金融小委員会 議事録
平成13年9月4日開催
〇委員
ただいまから、第5回金融小委員会を開催いたします。
本日の審議に際しましては、若林財務副大臣の御出席をいただいております。
本日の進め方ですが、まず初めに、前回ヒアリングを実施した関係で、時間の都合から今回となったわけですけれども、7月17日の小委員会において、事務局への宿題事項とされた二点、第一が「ドイツ市場における株式保有の動向の要因分析」、第二が「北欧諸国における所得税制の概要」について、事務局に説明を求めます。
次に、前回ヒアリングを行った際に御指摘のあった「株式譲渡益課税の国際比較」について、改めて事務局から事実確認をお願いいたします。
その後、金融資産の年齢別、収入階級別の保有動向なども合わせて、少額貯蓄非課税制度の概要について、事務局に説明を求めます。
先日行われたヒアリングでの議論にも関係しますが、株式譲渡益課税について補足的に事務局から説明し、その後、自由に御質疑等をいただきたく存じます。
本日の審議に入る前に、事務局に人事異動がありましたので、石井自治税務局長より御紹介いただきます。
〇事務局
このたび人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
9月1日付で、これまでお世話になっておりました株丹達也前市町村税課長が固定資産税課長になりまして、新しく市町村税課長に三宅義彦が就任いたしましたので、ひとつよろしくお願い申し上げます。
なお、井上前固定資産税課長は、総務省の中の自治行政局市町村課長、これは市町村合併の推進のほうですが、今度はそちらの仕事をやらせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
〇委員
それでは、本日の審議に入ります。
まず、7月17日の小委員会において、事務局への宿題事項とされていた二点、「ドイツ市場における株式保有の動向の要因分析」と「北欧諸国における所得税制の概要」について、事務局から説明をお願いしたいと思います。
また、前回ヒアリングを行った際の「株式譲渡益課税の国際比較」についても、改めて事実確認を行いたいと思います。
では、事務局、よろしくお願いいたします。
〇事務局
お手元に、資料[1]と書いた冊子があるかと思いますが、これに沿いまして説明させていただきたいと思います。
いま小委員長からお話がございました、前々回、7月でございますが、私のほうから、ドイツの株式市場と税制、北欧でとられている二元的所得税論、これにつきまして御説明させていただきました。その際、幾つか御質問をちょうだいしたわけでございますけれども、明確にお答えできなかった部分につきまして、いままでとりあえずわかったところについて御報告させていただきたいと思います。
併せまして、前回、証券業協会が作成いたしました各国の比較につきまして、御指摘をちょうだいしておりますので、それについても御説明いたしたいと思います。
恐縮でございますが、1枚めくっていただけますでしょうか。これは、もう見飽きたグラフかと思いますが、本論に入る前に、若干おさらいでございますけれども、ドイツの株価の動向でございます。グラフの左から右上にかけまして、黒々とした線で右上がりの線が書いてあるわけですが、これがドイツの代表的な株価指数DAX30の軌跡でございます。
それに寄り添うように、細い線が同様に右肩上がりで推移しているわけでございますが、実際はこちらの細いほうが主でございまして、こちらがアメリカのダウ平均でございます。90年代を通して、世界的なトレンドとして株価が右上がり、特に90年代後半に入りまして非常に上げがきついという状態でございまして、これは、イギリスあるいはフランスの株価指数をとりましても同様の動きでございます。
ただ一つ残念ながら、日本につきましては、そこにございますように、バブル崩壊後の傷痕が癒えぬままに不調が続いているということでございます。
今回、右のほうを足させていただきました。これも御存じのとおりでございますけれども、2000年、去年の春以降、全世界的に株価の調整が続いております。世界同時株安といったような表現が昨今とられるようになってきておりますが、アメリカ、ドイツのみならず、いままでは若干仲間外れでございました日本につきましても、同様な形で調整が続いているということでございます。
この大きな要因も、御高承のとおりでございますが、いわゆるITバブルの崩壊という言葉に表されておりますように、情報通信セクターのつまずきから、次第にこれが全般的なところへ広がっているということでございます。
一つ大きな要因といたしましては、欧州のほうで、次世代の携帯電話システム--日本は、NTTドコモがこの秋から一般サービスを始めることを発表しておりますが、この権利をめぐって、電波割当といいますか、オークションをやった結果、イギリス、ドイツあたりで高騰したことから、携帯電話会社の過剰債務、設備投資の抑制と続きまして、果ては、携帯の端末をつくっているアキアといった会社のほうにまで不調が及ぶ。
一方、アメリカでございます。これもよく言われておりますけれども、いわゆるアマゾンなどのドットコム企業で、新しいビジネスモデルもそううまくいかないということもありますし、パソコン市場も一巡したということもございまして、パソコンメーカーのほうに及ぶということで、ゲートウエイとかデルといった会社の業績に及んでくる。
あるいは、固定通信のほうのセクターでございますが、新興の通信事業者が需要を当て込みまして光ファイバーを無理やり引いたのが、それほど需要が伸びないということから、こちらのほうも設備投資を抑える。これが、通信機器会社、ノーテルとかアキアといったところでございますけれども、こちらに及ぶ。さらにこれが、新しい産業のコメと言われております半導体、こういったところに及んできて全世界に不調が広がっていることを受けて、株価の調整が深まっているということでございます。
2ページ目でございますが、これが、宿題としてちょうだいしておりました分、ドイツにおきます株式保有の主体別の状況でございます。一番上のシャドーをつけた欄でございますが、家計等その全体に占める割合が表示してございます。1991年、90年代初めに2550億マルクだった残高が、年末時価のベースでございますけれども、1999年には8957億マルクと、約3.5倍に増加しております。
実数はこのように増えているわけでございますが、全体に占める割合といたしましては、家計のウエートは、22.4%から17.5%まで、約5%ポイントでございますが、ウエートダウンしております。では、個人等の株に対する食欲が下がったかといいますと、その下のほうにございます金融機関の内訳の数字でございますが、ここに投信と保険・年金というのが入っております。直接的な株式保有としてはウエートが下がっているわけですが、間接保有の形態では、投信につきましての割合は4.8%から13.6%と9%ポイント近く、保険につきましては、5.5%から9.0%と3.5%ポイント、ウエートアップしているということでございます。あえて申しますと、直接保有ではなくて、いわゆる「市場型間接金融」と我々が言っておりますものでの保有が増えているのかな、ということが伺えるわけでございます。
投信、保険が増えている要因でございますけれども、一つは、人口動態的に見まして、プレリタイア世代といいますか、リタイアにこれから入っていく世代がずいぶん増えていること。一方で、これを受けまして、公的年金制度の将来に対してずいぶん不安感が強かったということもございまして、公的年金を補完する意味合いから、投信、保険へずいぶんカネが流れ込んだという姿が伺われるところでございます。
1枚めくっていただきまして、これはシェアをグラフにしたものでございます。一番上の網かけの部分、海外、非居住者の保有でございます。これは、一たん減っておりますが、91年と99年を比べていただきますと、若干ウエートアップしているということでございまして、おそらくこれは、90年代後半に国際的なM&A等が進んだことのあらわれではないかと思っております。
他方、非金融法人でございますが、39.4%から29.3%と10%ポイントほど低下しております。これは一つは、持合い解消の動きなのかなとも思われるところでございますが、次のページで御説明させていただきますが、必ずしもストレートに出てこないということでございます。
あと、特徴的なことといたしまして、金融機関のうち、投信、年金・保険を除いた分といいますと、大体普通の金融機関、銀行でございますけれども、銀行セクターにつきましてはあまりウエートが動いていないというのが特徴かと思われます。
下のほうの三つのセクターにつきましては、先ほど御説明いたしました個人絡みのセクターでございます。
また1枚めくっていただきまして、これは、純投資、その年その年の売買のネット。したがいまして、それぞれの年の金額はそれぞれの年の時価ベースで計上されていると考えていただければいいかと思いますが、一番上の家計等の欄は、見ていただくとわかりますように、92年、95年あたりはネットの売越しということでございまして、必ずしも一本調子で増えているということでもない。それから、純投資の額として見ましても、直接保有の形態のところは、思ったほど大きく増えていないというのが見て取れるかと思います。
他方、投信、保険のほうは、着実に株式の純投資を毎年行ってきているということが言えるかと思います。それで、先ほどの持合い解消云々で申し上げた話でございますが、非金融法人企業は、純投資ということで見ていただきますと、実は、毎年着実に買越ししてきているというところでございます。ウエートがダウンする一方で、純投資を進めていることの説明は難しいのですが、おそらくは、持合いを解消する一方で、かなり積極的にM&A等の投資を行っていたのではないかということが伺えるところでございます。
もう1枚めくっていただきまして、5ページ目でございます。個人の金融資産に占める株式の割合でございます。影をつけたところの2本目の部分ですが、1991年で見ますと、6.5%。これが、1999年に12.7%ということで、倍ぐらいのシェアアップになっているわけでございます。この要因は、かなりの部分が、評価の効果、株価が上がったことによる効果ではないかということを申し上げまして、それが定量分析できないかというお尋ねでございました。
これは、完全なものというのはなかなかできないのですが、一つの試算として見ていただきますと、下のほうにCDAXというのがございます。これはDAX30より少し広めの指数でございます。現在802 の銘柄が入っているものだそうでございますけれども、これで見ますと、91年を100といたしますと、99年は349 でございまして、大体3.5倍になっています。保有残高のほうも大体3.5 ということですので、かなりの分はこの影響を受けていることが伺えるところでございますが、保有残高の1991年から1999年までの、単純な引き算、増加した数量が1999年のシャドーをかけた欄でございますが、6402億マルク、保有残高が増えております。上の表の一番下でございますが、年間純投資額は、毎年の売越し、買越しのネットの部分でございます。これを単純に91年から毎年毎年積み上げていったものが、その一番下の欄でございます。1999年まで足し上げた数量が-言ってみればキャッシュで毎年毎年、株を買った数量と言っていいかと思いますが-これを積み上げますと、583億マルクということでございます。
したがいまして、6400増えたうちの583 がキャッシュで買った部分、これを引いた残りの6000弱の部分が、むしろ評価の効果と言っていいかと思われます。割合で言いますと、1割弱ぐらいのところがキャッシュで増やした効果、あと9割程度は、評価が変わったことによる効果と言ってよろしいかと思われます。
6ページ目でございますが、家計保有金融資産の内訳でございます。これは、いま御説明させていただきました、株式の直接保有が6.5 から12.7にほぼ倍増ということでございます。
そのほか、投資信託も増えておりますが、投資信託が増えている分すべてが株の関係の投信とは判断できません。この統計では分離ができないものですから、いくぶんかはここでも間接保有が進んでいるだろうと思いますが、一方で債券ファンド等もかなり含まれているだろうと思われますので、これについては定量的には判断しがたいというところと、逆の話でございますけれども、現預金につきましては91年と99年を比べていただきますと、45.8%から35.2%と10%ポイント程度低下しているという姿でございます。
以上がドイツの関係で、いままで私のほうでわかったことの御報告でございます。
それから、7ページでございます。北欧諸国における所得税制の概要ということで、前回御説明させていただきましたように、北欧の二元的所得税の姿です。前回はクノッセンという方の本に従ってやっておりまして、あれが刊行されました97年当時の税制の姿でお示ししたわけでございますが、なるべく新しくするということで、各国資料を使いまして2000年現在の姿を描いております。
あのときの御説明を思い出していただきますと、本当にピュアな二元的所得税でありますと、勤労所得の最低税率と同じ資本所得の比例税率、かつ法人税率も同じというのが一番きれいな姿でございますが、このような姿になっているのはいまやノルウェーのみでございます。あと、順を追って御説明させていただきますが、具体的な税制のあり方についてはばらばらという姿でございます。
まず、横の欄に従って御説明させていただきますが、勤労所得につきましては、それぞれの国で累進税率が引かれている。資本所得に対する税率でございますが、ノルウェーにつきましては、勤労所得の最低税率になっておりますけれども、他の国についてはややばらばら。
デンマークがちょっと特殊でございまして、二元的というよりは三元的と言ったほうが近いかと思います。普通の利子、土地の収益等々、それから短期保有の株式譲渡益でございますが、これにつきましては勤労所得と同様の税率、合わせた税率でございまして、実は3年以上の長期の保有株式及び株から来る配当でございますが、これについてのみ株式所得ということで、別途25%と40%、こういった税率で課税されるという姿でございます。
源泉徴収につきましても、利子についてはノルウェー、デンマークが源泉徴収なしでございまして、フィンランドとスウェーデンがある。配当につきましては、ノルウェー、フィンランドはインピュテーションでございますし、スウェーデン、デンマークは調整しない。他方、配当の源泉徴収につきましては、それぞれの国で資本所得の税率に従って行われているという姿でございますが、デンマークにつきましては、低いほうの税率でやるということでございます。
譲渡益と譲渡損の通算の問題でございますが、ノルウェー、スウェーデンにつきましては、配当等も含めてすべて資本所得の中で差し引きすることが可能となっておりますが、フィンランドとデンマークについては、同種の所得、すなわち譲渡益と譲渡損の間でのみ通算することができるという格好になっております。デンマークにつきましては特に短期と長期の所得の分類が違っておりますので、短期は短期同士、長期は長期同士しか差し引きはできないという姿でございます。
損失の繰越しにつきましても、スウェーデンは不可でございますけれども、そのほかの国はできる。
やや特徴的なのが、その他のところでございます。土地譲渡益、不動産関係を含んでいるのでございますが、ノルウェーにつきましては、帰属家賃を含むという形になっております。スウェーデン、デンマークについても、以前は帰属家賃課税というのが行われていたようでございますが、スウェーデンにつきましては、二元的所得税を導入した91年、デンマークにつきましては2000年に、それぞれ帰属家賃課税が廃止されて資産税という形になっております。
妙にばらばらでございますが、一つだけ完全に各国とも一致しているところは譲渡益、譲渡損でございます。これは、すべて実現ベースで課税するという仕組みになっております。
以上が、二元的所得税の話でございます。
8ページでございますが、これは当方がいつもお示ししておりますもので、各国の株式譲渡益課税につきまして、課税方式、税率、控除、あるいは免税点、いわゆる縦横のロスの通算について簡単にまとめたものでございます。実を言いますと、複雑な制度の中から大筋を抽出してくるということでやっているわけでございます。
9ページは、実は前回、日証協がつくりました表のイギリスのところに書いてあることについて、こちらの表から漏れているので、どうなっているか事実確認をということが委員からございまして、そこにつきまして御説明いたしたいと思います。
イギリスの欄を見ていただきますと、真ん中の優遇措置というところの[2]でございます。保有期間に応じた段階的控除があるということでございまして、保有期間が4年以上になりますと、課税対象額が最大で25%まで減額されるというシステムがございます。事実から言いますと、確かにこういう制度はあるのですが、若干付言しておいたほうがいいかと思いまして、次の10ページをごらんになっていただけますでしょうか。
そこにございますテイパー・リリーフという制度でございます。課税対象となります長期のキャピタル・ゲインの額でございますが、その保有期間と性質に応じて、左にございます表のとおり減額されるということでございます。原則が左のほうの率でございますが、これを見ていただきますと、10年以上保有していると60%でございます。逆に言いますと、4割軽減されるという姿でございます。特に限られた事業用資産につきまして-これが最大でということで前の表に出ているわけでございますが-事業用資産につきましては、4年以上保有しておりますと25%まで減額されるということでございます。
その横に「導入の経緯」が書いてございます。これが、まさにこの制度の本質といいますか、性格を表しているかと思います。イギリスではもともと、1年以上の長期保有資産についてキャピタル・ゲインのインフレ上昇分を調整するために、1982年当時、このときは10%を超えるインフレが続いていた時代でございますが、資産の取得価額を小売物価上昇率で完全に調整してしまう制度が適用されていたわけでございます。
昨今、イギリスのほうも、ディスインフレということでインフレがかなりおさまってきたことも背景だろうと思いますが、この調整は非常に複雑でございますので、1998年に、より簡素な制度としてテイパー・リリーフという制度が導入されたわけでございます。これは、もともとがインデクセーションのかわりということでございまして、株式のみこういうふうに優遇したということではございませんで、土地等も含んだキャピタル・ゲイン全般についての調整措置と御理解いただければと思います。
そこのただし書きにございますように、法人につきましては、従来どおりのインデクセーションが続いているということでございます。
それから、先ほど申し上げました、優遇された率が適用されます事業用資産と見なされる場合でございますが、これは、そこに書いてございますように限定的でございます。一つは、従業員の持ち株、もう一つは非上場法人の株を持っている場合、もう一つ、上場法人につきましては、譲渡する人が5%以上の議決権を持っているケースという、限定的なケースに限られているということでございますので、一般的なポートフォリオとしての株式投資につきましては、むしろ10年で4割軽減されるという表のほうに従うということでございます。
大変恐縮でございますが、ついでと言っては何ですが、証券業協会がお出しになった表の幾つか、私どものほうで若干気づきの点を申し上げたいと思いますが、9ページ目でございます。
一つは、日本のところでございます。これは、さかのぼってお直しいただくということだそうでございますが、優遇措置の欄に何も書いてなかったのですが、先般設けられました100万円の特別控除、これにつきましては大変な優遇措置でございますので、こちらのほうにお書きいただくということになっております。
それから、これもアメリカの優遇措置のところに入っておりますけれども、それぞれのブラケットに応じて10%と20%の優遇税率が適用されるということでございます。これは、日本のほうの税率が26%と地方税を含む形でございますので、アメリカの場合はばらばらではございますが、州地方税が別途課税されることを御注意いただければと思います。
ちなみに、私どもで試算したところによりますと、ニューヨーク市ですと、州と市がかかってくるそうでございまして、20%の高いほうの率につきましては28%程度になってくるということでございます。
それから、細かな話で恐縮でございます。フランスは、年間5万フランの譲渡総額まで非課税ということになっておりますが、これは厳密に言いますと、免税ということでございます。5万フランを超えた段階で根っこからすべて課税されるということでございますし、ドイツの優遇措置の[2]でございますけれども、1000マルク以下--これは、厳密に言いますと未満だそうでございますが--非課税となっておりますが、これも免税ということでございます。
それから、ドイツのほうの大口取引の話が[1]に書いてございます。最大2万マルクまで譲渡益から控除されるということでございます。ここにつきましては、持分割合と譲渡益について複雑に調整がされるということでございまして、実際に2万マルクまで控除されるケースは、会社を持っていた人間が100%全部手離して、かつ譲渡益が8万マルク、いまのレートで計算しますと440万円以下ということですが、かなり限定的な制度と申し上げていいのではないかと思います。
雑駁ですが、以上でございます。
〇委員
ありがとうございました。もし御質問などあれば、後ほどまとめて御議論いただきたいと思います。
次に、少額貯蓄非課税制度について、金融資産の年齢別、収入階級別の保有動向なども合わせて、説明をお願いしたいと思います。また、先日行われたヒアリングでの議論にも関係しますが、株式譲渡益課税についても補足的に説明を事務局からお願いします。
〇事務局
それでは、資料[2]をおめくりいただきまして、順次見ていただくようにいたします。
まず、利子関係の税制でございますが、1ページに、何度か見ていただいております、62年の抜本以来の年表的なものがございます。62年から元年にかけましての抜本改革のときに、消費税の導入と同時に、利子につきましては一般マル優を廃止して、老人マル優等の創設、株式譲渡益につきましては、それまでの原則非課税が廃止されて、現在の申告分離と源泉分離の選択制になったというところを見ていただいたものでございます。
2ページ目が、現在の利子のマル老制度につきましての概要でございます。下の「備考1」にありますように、63年4月に、それまでの一般的な少額貯蓄非課税制度が老人等向けに改組されております。この場合の「老人等」とは、2にございますように、65歳以上の方、障害者、寡婦、母子家庭という方々が含まれております。3は、非課税限度額は、従来300万円でございましたが、平成6年に350万円に引き上げられているわけでございます。
上の表に戻っていただきますと、一口に老人マル優等と申し上げておりますが、老人等の少額貯蓄非課税制度には三つ区分がございます。一番上に、預貯金、貸付信託、公社債等々の一般的な老人マル優がございます。そのほかに、国債や地方債につきましての少額公債の非課税、さらに郵便貯金と、三つそれぞれ350万円ずつの非課税限度額がございます。
さらに勤労者につきましては、勤労者の財産形成ということで、住宅なり年金なりを目的に給料天引きで5年以上積立をする場合に、利子の非課税の制度がございますので、合わせまして、ここには貯蓄非課税制度ということで掲げさせていただきました。
右端にございますように、利用者一人当たりの利用状況で見ますと、一般的なマル優が196万円、国債・地方債164万円、郵貯295万円といった状況でございます。
3ページをおめくりいただきまして、右側に非課税貯蓄の残高がございます。郵便貯金のところが、33兆円、一般の少額貯蓄30兆円、国債・地方債は3.7兆円といった大きさでございます。民間からのデータが取りにくくなりましたので、右側の二つにつきましては10年までの数字でございますが、貯蓄の残高で見ますとこういった大きさでございます。
したがいまして、先ほど一人当たりの貯蓄額を申し上げましたが、少額公債のところは利用者が1ケタ違います関係で、残高がこういった状態でございます。
左側は減収額の試算でございます。これはあくまで試算ということになりますが、平成3年以降を掲げておりまして、金利の低下に伴って減収額という意味ではだんだん小さくなってきております。それから、平成12年は減収額が著増しておりますけれども、これは、郵便貯金の集中満期ということで、利子の税収が全体として大きくなっております。それに伴いまして、減収もはね返って大きくなっているというものでございます。
4ページは、いつもごらんいただいております、租特減収全体の大きさの中での状況でございます。一番真ん中に老人マル優等ということで、13年の予算ベースで6000億円ほどの試算をしております。ただ、その下のカッコにございますように、これも、郵貯の集中満期分を除きますと1000億円強ぐらいの試算になっております。
したがいまして、全体の中身を見ていただきますと、住宅ローンとか、生・損保控除、同じ貯蓄という面で生・損保控除がこういった大きさになっているということがございます。
それから、同じ表の下、備考のところに注記しておりますが、キャピタル・ゲインの100万円控除につきましては、減収は910億円と見込んでおります。これは13年度の途中で講じられましたので、上の箱の表には入ってございませんが、900億円ほど、これも大きい金額の減収になっているというわけでございます。
6ページに、過去の当税制調査会の答申の抜粋を掲げてございます。平成4年に「利子・株式等譲渡益課税小委員会」が設けられておりまして、利子課税のあり方について特に非課税貯蓄について議論された部分でございます。このときはちょうど限度額の問題が議論になりまして、先ほどの350万円に上げるタイミングで議論になったものでございます。
結論のところ、一番下を見ていただきますと、「非課税貯蓄限度額の引上げは行うべきではないという意見が大勢を占めた」という答申を、このときはいただいております。
続きまして、7ページでございます。限度額だけではなくて、非課税貯蓄制度そのものについての言及がございました。7ページの1パラグラフ目の最後、6行目ですが、「非課税貯蓄制度を廃止すべきであるという意見が少なからずあったことを指摘しておきたい」という注記、言及がなされております。
それから、8ページは、61年10月、いわゆる「抜本的見直し」についての答申でございます。この答申を受けまして、一般的なマル優制度が老人のマル優制度に改組されたわけでございます。その際、ロ、一番下の3行にありますが、非課税貯蓄制度を見直す場合にも、所得の稼得能力が減退した人に対する配慮として、老人、母子家庭等に対して残す、というのが大方の意見であった。昭和61年にはこのような答申をいただいたというのがこの経緯でございます。
9ページ以降、金融資産の状況について、これまでもごらんいただいた資料が何枚か並びますので、若干駆け足でやらせていただきます。9ページは、いわゆる個人金融資産の1400兆円の内訳でございます。預貯金のウエート、あるいは、たびたび議論になっております株のウエートがここに出てまいります。
10ページは、ここのところの家計の金融資産残高の名目値での伸びをグラフ化したものでございます。
11ページは、国際比較でございまして、個人の金融資産残高の商品ベースと申しますか、内容別の内訳でございます。日本ですと、現預金が他国に比べるとかなりウエートが高いということでございますが、諸外国も、いろいろな状況がまちまちのような感じもいたします。
12ページは、日本の年齢別の貯蓄動向調査でございます。このあと、世帯につきましての貯蓄の状況を見ていただきますが、下の注にございますように、ここでの貯蓄は有価証券も入っておりますので、その辺をお含みいただいて見ていただく必要がございます。世帯主の年齢別で見ますと、年齢を伴うに従いまして貯蓄の残高が上がりまして、負債は中年のころが一番高いのですが、徐々に落ちます。そういう意味で、高齢者につきまして、貯蓄と負債の間の開きが広くあるというものでございます。
13ページは、左側が勤労者世帯平均、右側が高齢者世帯の平均でございます。濃いほうの棒グラフでございますけれども、高年齢世帯が平均貯蓄額という意味では非常に多くなっております。
14ページは、世帯主の階級別現在高を経年比較したものでございます。昨今、お年寄りの世帯が多くなっているということもございますが、平成12年で見ますと、60歳以上、あるいは65歳以上の世帯主の世代で貯蓄現在高が多くなっておりまして、60歳以上で半分以上、65歳以上で37.2%、そういう状態でございます。
15ページは、高齢者世帯における所得の内容でございます。一番下のところ、平成10年でございますけれども、左は年金・恩給でございます。ここのところ、年金・恩給のウエートが増えているということが見て取れるものでございます。利子・配当の所得は、ウエートとしては小さくございますが、平成10年は、右から二つ目の数字、1%ほどのウエートでございます。徐々に年金・恩給のウエートが増えているというグラフでございます。
16ページは、年齢の問題を離れまして、収入五分位階級別の株式と預貯金の分布状況の比較表でございます。収入を五分位で切りましたときのそれぞれの平均値で見ておりますが、左側が預貯金、右側が株式でございます。預貯金は、どちらかというとなだらかな形で第五分位のほうが増えている感じでございますが、株式は、第五分位のところでかなり多くの保有が見られます。
以上、一般的な資産の状況について御説明させていただきました。
あと数枚、先日のヒアリングなどでも出ました議論も踏まえまして、株式の関係で御説明を補足的にさせていただくものでございます。
17ページは、これまでも何度か見ていただきましたが、株式譲渡益の申告分離課税の実効税負担のグラフでございます。100万円特別控除が入りましたあとの姿でございます。100万円特別控除がございますので、一番左にありますように、100万円までは非課税がございまして、そのあと、国・地方合わせまして26%の税率でカーブを描いております。
それが、改正後13年10月実施の表でございますが、26%のところで、改正前というのが横に並行で書いてございます。これが100万円控除の前の姿でございます。点線のところは、20%の線を引いております。20%の線と累進のところとを見ますと、433万円というころで交差いたします。したがいまして、株式譲渡益の場合、433万円の譲渡益のところで約20%の実効税負担があるというグラフでございます。
この株式の申告分離課税の税負担の問題につきまして、幾つか論点があろうかと思いますが、まず、特別控除につきましては15年3月限りの措置でございますので、15年4月以降の申告分離一本化後の税制の姿と関係してまいります。先般のヒアリングの際に恒久化の議論が出てまいりましたが、現在は一本化のところの時限までに切ってございます。
それから、株式譲渡益の中でごらんいただけますように、累進的な負担になっておりますし、小口の非課税というふうになっておりますが、この辺をどう見るか。あるいは、433万円までということですので、おそらく億円単位の保有の方まではすでに利子の負担以下となっておりますので、そこらをどう考えるかといった点でございます。特に、絶対的な税負担の水準を見ますと、特別控除と税率で構成されますので、そこらあたりをどう考えていくかというところはございます。
この表はもっぱら利子との比較で見ていただいておりますが、一般の給与や事業所得との比較という議論もあろうかと思います。この点、先ほど見ていただきましたような株式の保有がやや富裕層のほうに偏りがございますので、仮に総合課税的な感覚で見ますと、上積みの税率という形にもなりますので、そこら辺をどう見るか。あるいは、一回で高額な譲渡益も存在し得るということだと思いますので、利子や給与というよりは、事業とか、土地の譲渡益とか、この辺との比較もあろうかと思いますので、そういうやや多角的なバランスがございます。そういう意味で、この実効税負担の表を御説明させていただいたところでございます。
次は、損失の繰越控除でございます。株式の譲渡益につきまして、そのリスクとの関係で繰越控除制度の議論がございます。一般的に繰越控除につきまして、ほかの税制を御説明させていただくのが18ページでございます。18ページ冒頭にまた原則論を書いてございます。所得税は暦年課税でございます。1年間の稼得所得で、その大小に応じて累進負担を求めるということでございますので、暦年ごとに所得を把握する。原則として、翌年以降にその損失を影響させないということでございます。
その暦年課税の原則の例外でございますけれども、現在あるものは、ここに掲げてあるものに限られております。所得税法の本則にございますのが、純損失の繰越控除。これは、青色申告で記帳しているようなケースのほかは、変動所得とか、事業用資産を災害で失ったとかいうケース、あるいは、一般的な災害とか盗難での雑損失という二つのケースが、所得税法では3年間の繰越しが認められております。
このほかに、租税特別措置法で規定されているものが二つございます。一つは特定の居住用財産の買換えの際の譲渡損失の繰越しでございます。これは、平成10年から15年までの制度として設けられているものでございます。この創設の趣旨は、ローンで住宅を取得いたしまして、その後値下がりをして住宅を買い換えにくいというような方に対して、住替え促進、住替えを支援するということで、損失を出してさらに買い換えるケースにつきまして3年間の繰越控除を認めております。ここに「一定の要件」というのがございますが、これは、所得が3000万円以下ですとか、500平米以上の住居であるとか、そのような要件が設けられております。
二つ目の特例は、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除、いわゆるエンジェル税制というものでございます。これは平成9年にできたものでございますが、投資リスクの高い創業期のベンチャー企業に資金供給を支援するという政策に基づきまして、「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」というものがございます。そこに「特定中小会社」という定義概念が置いてございまして、その会社の株式につきまして、上場の日まで、非上場の間に譲渡損が起きた場合に3年の控除を設けるというものでございます。
したがいまして、現状の制度のもとでの繰越制度は非常に限定されているというのが実情でございます。住宅の場合ですと、買換えとか、ローンがあるとかいうような限定がございますし、エンジェル税制のほうは、中小ベンチャー法という特別の法律に基づきまして、会社を限って、しかも上場前に出てくるというものでございます。
今回、一般的な株式投資についての議論ということになりますが、一般的な株式投資でございますので、益を出す、損を出すというところの操作性といいますか、裁量性みたいなところがございますので、これまでの特例との関係が問題なのかというふうに思います。特にベンチャーのエンジェル税制につきましては、政策的な限定をしておりますので、一般的な上場株式の投資リスクをどう考えるかという問題があろうかと思っております。
いずれにいたしましても、ここは我が国の税制の中では、限られた例につきまして3年間という特例を設けているというものでございます。
最後のページでございますが、現在の論点でございます、源泉分離選択課税制度のもとで損失の繰越しをする場合の問題点ということでございます。非常にイメージ的な図式で恐縮でございますが、左側から順に見ていただきますと、現在は、一番初めに出た譲渡益についてみなし譲渡益の課税をして、そのあとの譲渡損、譲渡益は申告で相殺していけるという制度になっているわけでございます。
これで翌年への損失の繰越しを認めますと、真ん中にあります譲渡損が年をまたいで翌年の譲渡益と通算されて、みなし譲渡益についての薄い課税は両端に残るというような形になってしまいますので、そのつど選択の現行制度の問題点が非常に拡大するという問題点があろうということでございます。
私のほうからは以上でございます。
〇事務局
ただいま御説明がありました資料[2]の中で、地方税関係について若干御説明をさせていただきたいと思います。
1ページに戻っていただいて、金融関連税制の動きでございます。おさらいのようで恐縮でございますが、63年4月から道府県民税の利子割の創設ということで、利子に関して一般的に課税させていただけるようになった。それについて、元年4月から、株式の譲渡益について申告分離と源泉分離の選択制が導入されておりまして、その際、源泉分離を選択された場合には地方税が非課税の形になっております。その後、この表にございますように、一本化への経緯がございますが、現時点で一本化が実現しておりませんで、その非課税になった扱いが今日に至っているわけでございます。
続きまして、3ページ並びに5ページにかかわりますが、老人等の少額預貯金の利子の非課税の減収額につきましては、3ページをごらんいただければ、国税のほうと同じような流れできております。そして5ページでございますが、老人マル優等ということで、13年度のベースで2000億円余り、ただ、郵貯の集中満期を除きますと380億円ということでございます。
一番下の備考のところでございますが、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度で10億円程度の減収を見込んでおります。
少し飛んでいただきまして、18ページは、いま繰越しについての御説明がございましたけれども、損失の繰越控除につきましては、住民税においても所得税と同様の取扱いがなされております。
以上でございます。
〇委員
それでは、以上の説明を踏まえて、自由に御質問、御意見をいただきたいと思います。
先日の小委員会で御説明しましたように、できれば今月中にも基本的考え方を出したいということで、皆さんの御自由な御意見をちょうだいしたいと思います。皆さんのお手元に、前回お配りした、7月31日の総会で私から報告を行った「金融小4-1 経過報告」という資料と、その基本的考え方のときに重要と考えられる、あるいは、基本的な論点と考えられる「項目表」を、委員限りという形で1枚紙をお配りしてあります。これも参考に御自由に意見をいただければと思います。
明日ぐらいをめどに、皆さんの個人的な意見も出していただくことになっておりますが、一部の委員からはすでに紙で出していただいているというふうに聞いております。そういうことについても、もしよろしければこの場で口頭で御説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。
〇委員
預貯金について申し上げれば、いま御説明がありました老人マル優ですけれども、これは61年のときに、原則はマル優はやめる、しかし老人等については残すということで、ある意味では経過的な要素もあったと言えるのではないかと思いますので、基本的に金融課税、資産課税を議論する段階においては、根本的に見直していいのではないかという気がいたすわけでございます。
お年寄りに残したということですけれども、もし貯蓄を優遇するということであれば、本来は、現役世代の人たちがその収入の中から貯蓄することを優遇すればいいわけで、すでにお年寄りなり、社会保障制度で支えられているお年寄りに貯蓄を優遇するというのは、どういう意味になるのかなとも思うわけでございます。いま、お年寄りにこれを優遇するという意味は、非常にデリケートな意味がある程度ではないかと思うわけでございます。
先ほど御説明いただきました数字によりましても、65歳以上の世帯が年収の12~13倍の貯蓄を持っている。一方、勤労者世帯は6倍ぐらいですけれども、年収はむしろ65歳以上の人たちのほうが多い。これは、公的年金が大半ではないかと思うわけですけれども、絶対額でも高齢者のほうが多い。まして世帯人員一人当たりから見ればということで、これは世帯人員に直してあるとは思いますけれども、それにしても大きいわけですから、貯蓄する余裕はかなりあるとも思われる。こういった観点も考えれば、基本的に優遇措置は見直していいのではないかということでございます。
もう一つ、現在はデフレの時代でございます。預貯金等は、実質的に価値が毎年1%なり2%なり増えているという意味において、さらにこれを優遇するという意味もまた疑問に思われるわけでございます。こうしたもろもろの観点から、基本的に見直していいのではないかと思うわけでございます。
けれども、お年寄りに最後に残された貯蓄のことでございますから、根っこから課税するというのも難しいかもしれない。これは十分な経過措置はつけて考える必要があるのではないか。例えば、これから65歳になる方はもうありませんよとか、いま持っている方にはあまり影響はないようなことが考えられないかなという気がいたすわけでございます。
これが、間接金融の預貯金の問題でございますが、一方、証券税制について言えば、これからは直接金融なんだということを税制が積極的に誘導するのかどうか、誘導する力が本当にあるのか。また、株式、証券保有の世帯は、高齢者世帯、高額収入世帯に多いわけですから、そこをあえて優遇するという意味がどのくらいあるのか。また、優遇することに本当にそれだけの効果があるのか、いろいろ疑問に思うわけでございます。
それから、最近のように株式取引がものすごく国際化する、ハイテク化する。そうなりますと、個人の皆さん方全員に十分な理解を得ながら投資を推進していくことが、本当にできるだろうかという気もするわけでございます。
そういう意味において、税制としては、直接金融、間接金融、これは中立的でいいのではないか、基本的にはそう思うわけでございます。それにしても中立というのは、機械的中立、形式的中立にとどまる必要もないわけでございます。やはりリスクの多い商品にはそれだけのものを見てもいいではないか。あえてリスクをとろうとされる方についてはそれ相応の配慮をするのも、中立の線を大きく外れることでもないのではないかと思うわけでございます。そういった意味においては、損失の繰越しとか、通算とか、検討されていいのではないかという気がするわけでございます。
もう一つ、証券投資、株式投資、これは、利益も出れば損失も出る。利益が出た場合は、それほど税制として見る必要があるのか。あえてリスクをとろうとされる投資家の方々にとって、リスクが出た場合が問題なわけですから、利益よりは損失に対して配慮する方向がむしろいいのではないか。そのほうがまた、一般の社会の理解も得られやすいのではないかと思うわけでございます。
そういった意味において、100万円控除、これをさらに倍にするとか、恒久化するというのは非常に問題ではないか。端的に考えれば、株式投資をするというのは、リスクがあり損失があるかもしれない。その損失の分はあらかじめ、例えば、取得されたら、その年に5%の所得控除を行いますと。かつて法人についてはそういった例もありました。いまはないかと思いますが、損失に配慮するというほうが理解が得やすいのではないかと思うわけでございます。
三点目は、先ほどイギリスの説明をいただきました。普通の譲渡所得と事業的な譲渡所得で差がつけられている、配慮がされているという面があります。これをさらに広めて考えますと、法人が株式投資する場合と個人が株式投資する場合、このバランスをどう考えるか。これも、中立という観点から考えられていいのではないか。例えば法人が株式投資すれば、すべて損益の通算は当然でございますし、また、繰越し、繰戻しも若干の範囲においてある。そこらとのバランスをどう考えるか。
それから、個人が株を売って損すれば、これは今回は損失になるのでしょうけれども、会社が倒産してしまったら一体どうなるのか。持っていた株が無価値になってしまう、これは譲渡損失になるのか。これはならないだろうと思います。倒産する前の日に売れば損失になるけれども、そのまま持っていたら倒産してしまったというときにはどうなるのか。おそらく雑損失にはならないだろうと思いますから、そこらのバランスをどう考えてやるか。これは証券に限らず、来年からペイオフになったら、ペイオフの損失というのは一体どうしてもらえるのか、そこらとも関係する話でございます。
それから、株式と利子との課税の水準、税率の話で、片方は26、いや、これは地方税が入っているから20だと。それに対して20。それはバランスがとれていると言えるのではないか。あるいは、所有階層の所得水準からいけば、株式のほうが高いという差があってもいいのではないかという議論もあるわけでございますが、これはフローの問題として考えるのか、キャピタル・ゲインの問題として考えるのか、配当取引ならバランスはとれているわけですから、そこらも含めてどう考えるのかという気がいたします。いずれにしましても、26を20、あるいは10に下げるのだと、そこまで議論が行けるのかどうかという気はするわけでございます。
ただ、ここで現在の経済情勢との関連で考えられるのは、貯蓄のほうはむしろデフレで実質的に価値が毎年増加しているという点はある。だから株式の配当のほうを差をつける、逆にするということは、なかなか難しい点があるのではないか。しかし、検討の余地はあるかもしれない。こんなふうに思うわけでございます。
〇委員
いま、私の周りで流行っているのは、ゴルフ場の会員権、高いときにつかんだものを売って、ゴルフ場としては同価値の別のものに買いかえる。損を税金の面でまけてもらって、プレーは従前と変わらないということをみんなよくやっているわけですが、株の場合の損を出すというのも、ほかのとは違って、会社がつぶれてしまってただになったというものと、売って損が出たという場合では、どちらかといえばそれで株をやめるというような買換えなんですね。ほかの銘柄でリバウンドしやすいものに移っていく。こういう性格を持っているものですから、繰越しとか何かということまでは必要ないのではないか、こういうふうに思います。
それから、源泉分離とか申告分離という制度に、免税点的な発想のものは制度として考えられるのですけれども、ほかの控除とか何かというものはもともとなじまないものなのではないかと思います。100万円はもうできてしまっているのですから、とやかく言ってもしようがないのですが、税の仕組みとしては、源泉分離、申告分離というときに、全般的な資産状況とは全然関係のない話なのですから、特別の控除的なものは本来必要ない。ただ、納税者、徴税者の便宜の意味での免税点的なもの--申告不要だとか何かはそっちのほうだと思いますが、必要ないのではないか。というより、制度としていろいろなものを入れるのは問題ではないか、こういうふうに思います。
〇委員
繰越しが不要というのは、かなり強い御意見のように……。
〇委員
大体、売る時期もまさしく納税者本人の判断なんですね。事業がつぶれてしまったというのは自分の判断ではなくて、他の要因なわけです。株で損をするという場合は、売るタイミングをみんなねらっているもので、それを次年度に繰越しとかいう必要のものではないのではないか。
〇委員
学者的発想で言うと、買うときは税金がかかるけれども、売るときは補助金がつかないというのは非常におかしく思っていて、だから繰越しぐらい認めてくれてもいいのではないかなというのは、わりと私どもは考えるほうなんですけれども、いずれにしても御意見はわかりました。
〇委員
僕もびっくりしましたけれども、実務をやってきているマーケットサイドの立場から申し上げます。
一つは、途中欠席で申し訳なかったのですけれども、きょうも定例記者会見がありまして、新聞記者諸公の質問は全部、株式市場をどう見るかということで、僕は「一つのシグナルである」ということを相変わらず言っているわけですけれども、先ほど事務局の御説明を聞いても、税収が減るのは困る、困るという説明に終始しているという印象です。これは僕のひがみかもしれません。
それから、民間の社長、会長をやられた方が、個人株主不要論に等しいような議論を吐かれるのにはびっくりいたしました。こんなことだったら、この株を買う個人はいなくなってしまうと思います。これは現実の僕の感じであります。
特に国の方向として、僕は「貯蓄優遇から投資優遇へ」という言葉を言ったら、「貯蓄重視から投資重視」という言葉に変わっておりますけれども、そういう基本的な方向の中で、機械的中立性の問題であるとか、いろいろな問題がいまだに議論されることは、きわめて浮世離れ、現実離れした議論ではないかというふうに考えております。
では、具体的に何をどうしたらいいかというのは、これからまだ時間もありますので、問題でありますけれども、僕は基本的には、金融庁が出してきたような案、これにはいろいろな問題点はありますけれども、基本的な方向としては、ああいう意欲、スタンスは高く評価していきたいと思っております。
〇委員
私は個人株主不要論ということを言っているわけではなくて、間接金融なり直接投資を選ばれるかどうか、これはもう投資家の皆さんのご判断ではないか、国がどうこうと言えるのか、という点がまずある。しかし、来年はペイオフが始まる。預金というのは100%安全ではないのだということになると、株式市場にもかなり向いていく、そういう趨勢にあるのではないかと思います。そういう中でどちらを選ばれるか、これは投資家の御判断。それを税制で誘導できるかどうか、その余地があるのか、効果があるのかどうかということなので、中立的でいいのではないかと。
しかし、中立的とは言いつつ、直接投資なり株式投資のリスクというものは非常に大きいので、機械的に中立的にする必要はない。そこは実態に応じて考えていっていいのではないか。そういう意味においては別に個人を排除しない。我が社も個人がかなり増えておりますし、外人も増えている。問題は外人ですけれども。
もう一つそれに関連して、来年からペイオフが始まる。そうなると、預金も必ずしも安全ではないというときに、残るのは、郵便貯金を一体どうするのか。郵便貯金に、第3条で全部国家が保証するというあれがあるのは金融を歪めるのではないか。民営化するにしろ、民営化しないにしろ、あの点をどう考えるのか。これは税制と離れるかもしれないけれども、あれが残っていると、直接金融、間接金融、民間金融、公的金融、中立性が保持されないのではないか。その点は、今後、税制の面からも何らかの立場を出していっていいのではないかと思います。
〇委員
いま意見が割れていますけれども、かなり本質的な議論だと思います。つまり、貯蓄重視から投資重視にしなくてはいけないという話が一方ではあって、そのときに、我々がどういうメッセージ、基本的考え方を出すのか。それが決まらないと具体的な草案づくりに入れないということだろうと思うのです。
考え方としては、貯蓄優遇であることをやめれば自動的にそちらに行くんだという考え方が一つある。もう一つの考え方としては、それでは不十分で、もっとインセンティブといいますか、そういう誘因づくりを証券税制のほうにしないとだめなんだという議論もある。そこははっきりしないと事務局も困るでしょうし、我々も困るので、どうぞご意見をお願いいたします。
〇委員
諮問会議がありまして中座しなければなりませんので、いまおふた方の御意見を伺った感想めいたことを述べさせていただきます。
諮問会議で小泉総理が就任されて、何回目だったか、私もはっきり記憶はしていなかったのですが、総理がやはり「貯蓄重視から投資重視」という言葉を使われて、そのような税制をしなければならないということをおっしゃったのですが、その問題がメイン・イッシューではなくて議論が進まなかったということが実はございました。
総理の問題意識の中には、いまのマクロの経済状況を考えると、現行の税制も含めて、どのように過剰貯蓄、過少投資経済から脱却するかということがおそらく念頭にあっての発言だろうと思います。株価の対策というような姑息なことではなく、より基本的な問題点として、税のありようについて、中立性の定義も含めてきちんと議論をしていただきたいということ。それから、この問題は戦後ずっと議論していたにもかかわらず、税制調査会がさぼってきたという問題がある。この問題がスピード感のなさにつながっている。私、正直申し上げまして、あまりのスピード感の欠如に少しあきれている部分もございます。
この問題は我が国の政策意思決定の共通の現象でありまして、ダイレクトに政策論議をしているところでは、非常にスピード感がある形で議論しなければならないという具合になっていながら、現場の、餅は餅屋、あるいは各審議会に来ると、きわめて遅い対応になっている。これが、内閣の方針と、それを支えるものとの違いという形で国民に不信感を生んでいることも否定せざる事実だろうと思います。
その意味で、内閣における基本的なスタンスを十分に踏まえた上で、少なくとも理論的に税制調査会が早く一定の結論を得て、これに応えていくことが重要な役割であろうと思っておりますし、もし必要であれば、諮問会議でそれに対してプッシュする用意も、実は私たちは持っているということをつけ加えさせていただきたいと思います。
〇委員
金融税制、それから資本市場の問題というのは、我々は正面から考えなければいけないと思うのです。第二次世界大戦が終わったときに、アメリカでは、連邦債の債務残高が多かったわけですから、GDP比で見ていまの日本のように120%前後の公共債の残高があった。そうなれば、当然、国債管理政策と金融政策がぶつかる。いろいろな議論があって、その中のある種の着地点を見ていくわけですが、いま日本で投資が重要だという場合には、鏡として資本市場を使うということだと思うのです。
それではTBとかFBを個人が買えるのかというと、税制上の源泉徴収という話で、これは、専門家で、国税当局が把握できるところだけ、いわばインターバンクといいますか、ファイナンシャル・インスティテューションだけが売り買いしている、そういう性格のものだということになっています。資本市場という鏡を使って、我々がリスク、リターンを含めて、いろいろ取り分け切り分け、その中でポートフォリオを組もうとしても、それにふさわしい商品構成が現状は起きていないという中で、資源配分は歪むに決まっているわけです。
そういうテーマを、一体どういう時点で、どういう形で論じてきたのかということからいくと、いま日本経済全体を活性化しなければいけない、しかもデットが膨大にあって、その機関構成に猛烈な歪みがあるというときに、適切なポートフォリオが組めるのかという問題がある。税制がそこに関与している限りにおいては、キャピタル・マーケットをつくるに当たって金融税制はいかがあるべきかということを論じなければいけない。少し迂遠かもしれませんが、そこの基本を書かないことには、資本市場を使った資金配分、あるいは、リスクの多い分野で、どのようにリスクをみんなに分担してもらうのかという基本が立たないのではないかというふうに思っています。
〇委員
先ほど指摘されました根本のスタンスの話ですけれども、原則としては中立的な姿を基本的にしっかり考えるということだと思うのです。タックス・インセンティブを使って資本市場取引を活性化させるということを考慮するとしても、それは、中立的な姿の上にある種の時限措置として優遇をかけるという話になるはずだと思いますから、優遇であるか、ないかということを判断するためにも、ベンチマークとしてまず中立的な姿をきっちり考えることが必要だと思います。
それから個別の論点になるかもしれませんが、私も経済学者ですので、当然、損益通算は必要であるというふうに考えております。というのは、それをしない限り、同じ期待収益率でも、変動性を伴う所得が実質的に不利に扱われるという非中立的な効果が生まれるからであります。マイナスの部分についてのマイナスの課税はないわけですから、租税のカーブはトツになりますから、変動所得は、期待収益率が同じでも、変動しない所得に比べて実質税率が高くなるという効果が生まれてしまいますので、損益通算はぜひ必要だと思います。
もっとも、個人の株式保有は長期保有が原則だということを考えれば、実体的にどれだけ損益通算が効果を発揮するかどうかというのは、別の問題としてあるとは思いますが、原則必要だと思います。売買のタイミングは自分が選択できるといいますが、もちろん選択するのですが、きわめて大きな制約条件のもとでの選択に特に個人の場合はなると考えられます。つまり、個人の場合は、支出行動がライフサイクルの各段階に規定されるという側面を持っております。
例えば、バブル期に非常に高額でマンション等を購入して、そのローンに苦しんでいる世代があるわけですが、その世代の多くは、必ずしも自発的に儲けようと思って投機で買ったわけではなくて、30代の後半とかになって子供ができると、否応なしに住宅を取得せざるを得ない、そういうライフサイクル的な規定を強く受ける面があります。プロの機関投資家ではないわけですから、個人投資家の場合は、損が出ることがわかっていても売らざるを得ないという局面は十二分に考えられるわけでありまして、そういうことを含めてもやはり損益通算はぜひ必要だと考えております。
もう一点、本論とは関係ないのかもしれませんが、ペイオフの話が出ました。ペイオフが解禁されても、預金保険法の本則での1000万円までの保護が続くわけで、郵便貯金の限度額は1000万円なのですから、そこで相対的に、いま青天井の保護を受けている銀行預金は受けなくなるという意味ではバランスに影響が出るでしょうけれども、ちょっと気になりましたので、補足させていただきました。
〇委員
ぜひ議論していただきたい点をあらかじめ申し上げたいのですが、いまの損益通算必要云々は、源泉分離を残すか、残さないかということに密接に関係してきます。したがって、申告免除を我々は認めたい、認めようということになったときには、おそらく源泉分離はやめたあとの世界であるという議論をするということ。
それから、いまは縦の損益通算ですが、横の通算をしろと言ったときの議論がまた出てきます。資本所得の中だけでやるか、あるいは給与所得まで入れて通算させていいかという議論が出てきたときには、これは総合課税の世界なんですよ。だから申告分離がある限りにおいて、税の理屈から言ったら、やはり横の通算は難しかろう。申告分離ということは、まさにキャピタル・ゲインの世界で分離してしまっているわけですから。そういう形のことを税の理屈で骨っぽく言えばそういうことでしょう。
さはさりながら、金融庁がいろいろ問題を出していることに対して、シンパシーを持っている人も結構いるわけです。この際、株式市場がこれだけ悪化しているから少し税でインセンティブをくれよと、こういう世界の議論をするときに、そういう税の理屈はさておき、それから、効果もまだよくわからないけれども、いま何かやれよと言ってるんだからやれ、ということで行くのか。それとも、税の理屈はそれなんだけど、何か効果があるんじゃない? だからやれというのか、その辺は見極めをつけないと、税調としてうかつに簡単に言えませんわね。
それで、どこで金融庁の案にシンパシーを持たれているのか、ちょっと御説明いただけますか。
〇委員
結論から先に言いますと、税制によって株式市場が急に上がるとか下がるとかいうことはないと思います。これは歴史が証明しています。例えば有価証券取引税を撤廃するときに、同じ業界の中でも、ある会社の研究所は、「これによるとこれだけ株が上がる」という馬鹿な計算を出して、僕はずいぶん怒ったことがあるのですが、事実、何にも関係がなかったわけです。
最近のドイツの例を見ましても、これは残念ながら、僕のほうの研究員のレポートと主税局のレポートと全く一致しているわけです。要するにアメリカ株式が上がったということ。あるいは、ドイツ・テレコムでずいぶん株主が増えたというようなことによって市場に株主が増えていった。やはり株が上がらない限り株主は増えないというのは事実ですから。私は相沢委員会ができたときにもはっきり申し上げましたけれども、株価対策としての税制改正はだめ、やはり株式市場はファンダメンタルズに従うことが一番ですから、それをまずやるということが第一。
では、具体論に入りますと、金融庁が出してきているというのは、一つは、私は自分の個人的意見を先に申し上げれば、源泉分離はやめ、申告分離で行くと。そのかわり、この間、奥本協会長にも念を押したのは、税のほうも、26が10まで下げられたら一番いいですが、何かインセンティブをつけていくことと、損益通算をしていくこと。三点セットとしてそういうことを考えろ、ということを考えております。
もう一つは、経過措置ということを、この前、委員の方も質問されていましたけれども、金融庁の案で、2003年3月までをさらに延ばせという問題は、まだ準備も……例えばマイアカウントがいいか悪いかという問題もあります。僕は非常にいい制度だと思っているのですけれども、ただ、私のほうから出している案なものですから、アンチ〇〇が強くて、中小証券には反対の動きがあるわけです。
システム化なんていうのはそう大した話ではないですね。ティープラスワンのシステム対応をするというときに、一緒にやってしまえばそう大した話にならない。しかも専門家に聞いてみましても、これは業務系のシステムで、情報系ではないわけですから、企業秘密は何にもないわけです。業務処理の問題ですから、何も1社1社がやる必要はないわけです。現在でも、例えば〇〇証券にしろ、外資系もそうですが、証券システムの業務系は全部私のほうでやっております。そうしたら、そんなに時間もかからずに早く安くできるのではないか。そうした場合にはまだ1年半余裕がありますから、その間に十分できるのではないか。もし非常に混乱があるということになった場合には、それはそのときのこととして、したがいまして計画期間はゼロ・プラス・アルファ、できるだけ短いほうがいいという考え方を私はとっております。
また、先週も申し上げましたけれども、損をしているのに1.05%税金を取られているのがかなりいる。統計で見ると3割ぐらいいるわけです。これらの人も、そういう方向が決まって、今後はこうなりますよということを説明すれば、だんだんそういう方向へ変わっていくことは十分あり得る話だと思います。業界にはいろいろな意見がありますけれども、私はそういうような基本的な考え方を持っています。
〇委員
いまのお話を聞いたら、金融庁の意見を批判しなければいけないのではないですか。だって、あれはずっと先まで源泉を残せと言ってるわけでしょう。それから、26を10まで下げろと。つまり、26に100万円加えたら、20%以下、433万になるわけです。損益通算も、源泉を残してやれというのではおかしいので、シンパシーが起きてはまずいのでないですか、いまの現状では。
〇委員
ただ、「大勢として」と言っているのはそこの問題です。経過期間の問題はゼロ・プラス・アルファだと、これは現実をよく見てやらなければいけない、こういうことですね。
〇委員
そうすると、申告分離を前倒ししようという話はとれないのですか。
〇委員
会長が、あらゆるところで前倒しを……。
〇委員
あらゆるところでは言ってませんよ。
〇委員
そうですか。もう来年で終わりだと言っているのには賛成できません。2年間の猶予期間を置いたわけですから、それはきちっと守るということが必要。
〇委員
いろいろ話を聞いたら、1年でいいという政治家があのとき多かったんですね。たまたま何かの妥協で2年になったというので、あれもいいかげんなんですよ。
〇委員
きょうは、貯蓄との比較という議論が出てきているわけですけれども、ベースの違いをまず三つぐらい挙げた上で議論すべきかなと。
一番目は、現状の源泉と申告の二つの選択制というものをどういうふうに考えるか。これは貯蓄との違いですから、この問題をどう考えるか。
二番目に、特例措置で、13年から15年、2年間の100万円の特別控除というこの制度が、いまの税制において効き過ぎているというか、税制上、非常に大きな穴をつくっているんですね。これを、ないと考えた場合にどういう税率が望ましいかということ。つまり、実効税率と表面の税率をなるべく近づけるというか、現実上幾らなのかということがわかるような税率に持っていけないか。
三番目は、諸外国との比較間で、いま少額貯蓄の話も出ましたが、所得階層の違いを考慮すべきかどうかということについて、ほかの国の例を見ますと、それなりに公平感というものは最低限残そうという意識は出ているというふうに見えるわけです。例えばフランスの場合でも、非課税枠5万フランありますけれども、それを超えた段階で、そこからゼロではなくて、総額に対して26%というかけ方をしているということは、それなりの公平感を最低限保つという考え方が残っているわけです。
日本の税制を考える場合でも、総合課税化という意識をどこまで残すかというのは非常に重要だというふうに見えるわけです。現実上、投資リスクを負って投資活動に入ってくる人の立ち上がりというのは、一般の平均値より高いということはどうしても残るのではないかというふうに見えるわけです。
これは前置きなんですけれども、要するに、ざっくり理想型を描いてみるとどうなるのか。それには幾つかのことを一遍に直さなくてはいけないことになるわけですけれども、いきなり申告に変えてしまう、その段階からスタートして税率を決めてみる。しかも、いまの穴ぼこが出ている特別枠をやめて、どこまで税率を一律に考えられるのかというふうに考えますと、現状の433万で20%に達するというのはいかにも不可能な数字だと考えますと、非常に言い方は悪いのですけれども、例えば20にすると。しかし非課税なし、国税15で地方税5というような場合にどういうシナリオになるのかなと。
いま、10%ということをおっしゃっていますが、現行の非課税枠を使えば10%以下の人もいるわけです。現実10%以下になっているのですが、全然効かないわけですね、このメッセージでは。いまのアナウンスメントだけでは引き下げようがないところまで来ているわけで、あと2年間の考え方で言えば、これ以上どこを引き下げたらいいかというくらい下に張りついている状態なので、これをやるならば、非課税枠をなるべくやめて申告にする、しかし税率は一律下げる、というようなシンプルな考え方ができないのか。その場合も繰越しはなし。繰越しの問題は非課税と税率とちょっと性格が違います。一遍に議論は難しいと思うので、これはちょっと置いておくとしても、税率と非課税枠の問題だけは、早急にある程度の税率の数字を持って出せないかという感じがします。
〇委員
私は、景気対策が必要ないと言うつもりはないのです。ですから、税率なら税率で勝負をすればいい、判断すればいいので、特別控除とか仕組み自体に問題を残すものはむしろやめたほうがいいと。まあ、やめられないかもわからないですが、少なくとも拡張すべきではない、こういう姿勢です。
それから繰越しをどうのこうのというのは、景気対策というより、売るほうが出てしまうのではないか。株を売るほうの誘因になるので、さて、いま言われているような政策効果のときに、無理して入れる必要はないのではないかということです。それだけつけ加えておきます。
〇委員
僕が聞いている限りの投資家の動向を見ると、期待感があることは間違いないです。しかも株は非常に安くなってきていますから、いまがチャンスだと。これは株式、投資信託、あるいはETFも含めての話ですね。
〇委員
何の期待感ですか。
〇委員
税制の優遇ということがあればですね。特に年寄りなどは、相続税に対しては非常に期待感があることは、現実の投資家動向として間違いなくあることだけは申し上げておきます。
〇委員
損失控除の繰延べは売りに関係するとか、そんなことはないので、買うときにリスクがヘッジできるかどうか、それで制度があるかどうかで買いに行くので、それは全然間違っていますよ。
〇委員
税率が株価対策にあまり効かないというのは、いずれにしても効かないとは思うのですけれども、株価対策に効くのかどうか。特に譲渡益課税の税率ですね。保有税だったら別ですが。そういうことから考えると、むしろ繰延べと申告分離を早めに入れて、とりわけ繰延べに関しては場合によっては遡及するというようなことをすれば、株式市場は案外活性化するかもしれないというふうに個人的には思っています。
〇委員
私は、企業会計をやっている立場から、少し恒久的な措置を考えたほうがいいのではないかということを申し上げたいのですけれども、一つは、現在、時価会計不況というような言葉が言われています。実は、企業側のほうから株式市場への影響という観点で申し上げて、それで投資家が魅力を持つかどうかという問題があるという指摘をしたいということなのですが、一つは、いま国際的に議論されている会計基準の中で、時価評価に関しては、いま日本にある金融商品の会計基準のようなものは国際的にはたぶん5年ぐらいは続くだろうと。一方に、全面時価評価という、金融資産を全部評価してそれをP/Lに持ってこようという動きがあるのですが、これは世界的に反対が起きて、少しとどまっています。
実は、金融商品の会計というのはそこで止まっているのですが、裏側から、包括利益計算書という計算書が制度化されようという議論が起こっていて、これは2年から3年のうちに国際的に定着する可能性がある。これはどういうことかというと、いま資本の上に直接持っていっている持合株のような株の時価評価の評価損益を、第二の損益計算書というか、損益計算書を拡大しまして、現在の投機利益の下に、直接資本の部で認識した株等の投機の損益を合算して出そうということです。
これが入ってきますと、実質PLに株式の評価損益を変動したときに認識したものと全く同じことになります。そうなると、企業側のほうから言えば、いま以上にポジションを減らさないことには、株価の変動に対して株主に対する説明ができない、ないしは、一番下の包括利益と言っているものが変動し過ぎるという状況になります。
したがって、5年後かもっと先に、これが日本で導入されるとすると、そのころまでをにらんで、いまの過剰である株を基本的に数を減らしておかないと、企業はそういう変動のリスクを背負いたくないために売り出したものを、今度は個人の投資重視という形で個人のほうにはめ込んでしまって、変動制だけが残る、ないしは、上値が重くてなかなかいかないというようなことになりかねない。したがって、基本的な社会的な構造を変えなければいけない時期に来ていて、これは一朝一夕でいきませんので、5年とかそれぐらいのスパンを見ながら手を打っていかないと逃げ道はないという状況があります。
これは、ここの委員会の問題かどうかという問題はあるのですが、そういうことが背景にあることを考えた上で、投資者となる個人にとってみると、リスクをとってなおかつ上値がほとんどいかないというときに、どういう魅力があるのかということは少し考えておかなければいけない。したがって、制度的に損益の繰延べとか、通算とか、そういうものを何らかのものとして恒久化されておかないと、将来的には大変なことになるのではないかなという感想を持っております。
〇委員
戦後ずっと直間金融の話があり、私どもとしては自己資本の充実ということがよく言われてきたわけです。高度成長期には10数%だったと思います。それを、欧米並の3割、4割にしようではないかということでやってきた。現在は30数%になっていると思います。自己資本の割合がかなり高くなっている。そして、現状での企業の資金調達という面から考えると、圧倒的に内部留保と減価償却でございます。借入はどんどん返済しているし、新しく資本を調達することもない。現在の資本でいくと、むしろROEは2%前後ではないかと思う。2%前後のROEでもって株式市場を振興することは、なかなか難しいのではないかという気もするわけでございます。
ある意味では自己資本が過剰である。だから、自己資本の償却をする余地を開いたらどうかという議論もあるわけでございます。現時点では、金融が、直接にしろ間接にしろその機能を十分に果たしているのかどうか。また、果たすそれだけの役割がいま期待されているのかどうか。個人も企業も、自己資本、自己金融でやっているということですから、そういった中でどういうふうに直接金融、間接金融を整理していくのかということでございます。
その点に関連して、いままでは企業が自己資本を持っていた。その中のかなりの部分は持合い。特に銀行。その銀行が大変だということで放出しようとする。それはどこへ行くかといえば、企業も別にそれを持とうとするインセンティブはないわけですから、個人にお願いせざるを得ないというのがいまの状況ではないのか。そういった場合においては、個人についての何らかのいろいろな配慮は必要かもしれない。先ほどの間接金融とのバランス、中立性の問題にも配慮しながら、そうした特殊な現時点での要請をどこまで考えたらいいのかが検討の対象ではないかと思います。
〇委員
いま言っておられるのは、事実はそうですよ。データで見ても、法人企業統計調査で見ても、70年代の半ばに製造業において10数%であった自己資本比率は30%を上回っています。だけど、いま我々は、21世紀において職場はどうやってつくれるのかということを議論している。
そんなことを言っても、株式を発行して利益があるのかというお話をされているわけだけれども、いま我々はどうやって職場をつくるかというときに、経営者としてリスクをとって前に出る人に対して、どうやってキャピタルを供給するのかということを議論しているわけで、他の先進国が90年代において新しい職場をつくってきたときに、誰が経営者だったかということを考えれば、何も巨大企業が雇う人を増やしたわけではないんですね。違うことを議論されているので、僕はいまのお話は全く受け入れられません。
〇委員
関連して申し上げたいのですが、個々の個別企業として見た場合に、日本の事業会社の自己資本比率はたしかにおっしゃったように上がってきているわけですけれども、その裏側にある、株式の持合いという形で上がってきている部分--株式の持合いというのはダブルギアリングですから、そのダブルギアリングの部分を全部落としてしまったときの正味の自己資本比率を考えた場合に、果たしてどの程度の自己資本比率であって、正味の自己資本に対する収益率ということが本来は問題である。先ほどおっしゃったようなことに備えるためには、要するに、ダブルギアリングの部分を消す作業をこの5年ぐらいの間にやらなければいけない。
タブルギアリングを消すというのは、別に個人を受け皿としてそこにはめ込む必要は本来ないはずなんですね。持合い解消売りという表現が一般にされていますが、私はあれは明らかに用語が間違っていると思います。持合い関係を解消するのだったら、自分が持っている相手の株を手放すと同時に、相手に預けている自分の株をちゃんと処分しなければいけないわけです。お互いの株を消し合うということをするのが、持合い関係の解消であって、相手に預けている株はそのままにして、自分が持っている分だけを売るのを持合い解消売りというふうに呼ぶのは、用語が間違っていると思うのです。
ダブルギアリングの解消にプラスして、実は新株発行しているような効果がいまの売りにはあるので、それで供給過剰になって株価が下がっているのは当然だと思うのですけれども、本来のダブルギアリングを消すということを早急に実現することが、株式市場、資本市場の機能を発揮させる前提条件をつくることになると思います。
ちょっとうまく言えなくてすみませんが、個人にはめ込むということで解消すると、そこはやはり歪むと思います。持合いでダブルギアリンクで膨らませている部分は、企業自身が自分の責任で解消してもらうというのが前提ではないかというふうに思います。
〇委員
私が先ほど申し上げたことの一つは、いまの持合いというのは結局は資本の空洞化であって、実質的に入ってきたおカネが持合いを通じてほかへ行っているわけで、何の意味もないというか、かさだけ大きくなっているわけです。
例えばある大企業などは50%が持合いであると。そうすると、マーケットに出ているのは50%でしかない。これがある要因で持合いが解消して、市場に影響を与えることによって重いという状況にならないような、事業資産を時価評価して償却するというのはありましたけれども、ああいうものが一方で行われた上で、ある適正な規模の株数が、いま流通しているものに見合ったものになって、投資家がそういう前提をもとに入っていければ、旧の業種ではなくて新しい業種にも資金が入っていく。持合いの解消みたいな要因で影響されないマーケットができて、それに対する信頼がつなげないと、なかなか増えていかないのではないかなという印象を持っております。
〇委員
流通市場の問題で需給関係をやるときりがありませんけれども、おっしゃるとおり、持合い解消なんていうと銀行のことばかり言っていますけれども、事業会社が持っているのは10兆円あるわけです。これが、銀行株を売り出したらどうするかということは、銀行の方がいらっしゃるかどうか知りませんけれども、なかなか大変な、しかも銀行の利益率は非常に低いですから、日本にとって非常に重要な問題であるということだけは指摘しておきたいと思います。
それから、何も受け皿は個人だけではなくて、外人の機関投資家もあればいくらでもあるわけです。ただ、その中で、個人だけが持ちにくいような税の措置というのはよくないのではないか、しかも中立性に欠ける、こういうことを常に申し上げているわけです。
〇委員
いろいろ御意見を伺っておりまして、平成8年でしたでしょうか、金融課税小委員会というものがつくられて、そのとき以来、同じような議論が繰り返されてきているわけです。先ほど、審議会に出てくると、ノロノロノロノロしているというようなお話がありましたが、私としては、いつも同じ議論ばかりが繰り返されていると。
5年前を思い出しますと、有価証券取引税がターゲットになりまして、取引にかかる税金というのは非常に悪いんだとさんざん言われて、結局、廃止になったのですが、廃止によって証券市場に何かいいことがあったのかというと、何にもないわけです。にもかかわらず、どんどん落ちてきている。ということは、税金を切り離した目で見ていただくことが必要ではないかと思うわけです。いまでも取引高の1.05で、これでだめなら、税金の問題は抜きにして考えて、ほかに原因があるのではないかというようなことを検討すべきではないかと思うわけです。
では、この小委員会のあり方をどうしたらいいかということですが、他方で経済財政諮問会議を総理大臣みずからが主宰されている。責任ある政策判断というのはちょうどうまい具合にそちらにあるわけですので、小委員会はやはり筋を通して、いままでの税制調査会の答申を踏まえた上で、総合課税にするかどうかはいろいろ揺れておりますけれども、いままでの流れは踏襲していただきたいと思います。源泉分離から申告分離に来る、さて、ここで損益通算と繰延べ、繰戻し、これをどうするか、そういった技術の問題はありますけれども、やはりいままでの税制調査会としての筋は通していただきたいと思っております。
政策的な小手先のことを取りまとめ、「基本的な考え方」などというのでやりますと、結局それはいい結果をもたらさないと思います。繰り返しですけれども、政策的なその場しのぎのものは総理大臣みずからやっている会議がありますから、そちらで考えるべき問題で、役に立つかどうかわかりませんけれども、税制調査会、ここ何年も同じことはやってきているのだということは出していただきたいと思うわけです。
もう一点加えさせていただきますと、私は20年間、大学で学生の就職を見ていました。銀行、保険会社、こういうところへは行きますけれども、証券会社に行った学生というのはほとんど見ないんですね。最近ではどうかというと、銀行が危なくなってきて、外資系の証券会社に人気が集まって、銀行を避ける人間はそちらに移りつつある。いわゆるヒューマン・キャピタルの動きを見ていると、お金のほうの動きと非常にバランスがとれております。証券市場の担い手である証券会社が小説の舞台になるような状況ではやはり困るわけです。そこを脱皮していただくと。これは、私、専門家でないからわかりませんけれども、少なくとも学生がみずから入りたいと思う会社は限られていて、ほかの証券会社はまっぴらだというのが正確な話なのです。そういう状況である。
ということは、証券会社を特殊な目で見る目というのは、日本人の中に根づいてきていますし、現実に昭和30年代、そういう形でいろいろありました。証券市場の担い手としての証券会社、そのほかのインフラストラクチュア、これの構造を変えていくのがむしろ中心に置かれるべきではないか。税金の取引高の1.05にこだわるというのは、税金はいままで税制調査会で議論してきましたので、こういうところで変なことはやらないで、多少風当たりは強いかもしれませんけれども、やはり筋は通していただきたいと思っております。
〇委員
大変お厳しいコメントなのでちょっと困っているのですが、一つは「貯蓄から投資へ」という流れが重要であろうということですね。そのときに貯蓄税制が優遇過ぎると。私は税調はわりと最近なのですが、この二点に関しては、税調がいままで言ってきたことに近いと思いますし、それほど違和感がないのではなかろうかということが一点です。
それから証券税制に関しては、先ほどから出ているように、中立とか、そういうことを考えた筋論をまず考えてみた上で、何か言うべきことがあれば言うべきではないか。そこに関しては、先ほどから出ている意見等を踏まえて、言うことはたくさんあるのではなかろうかというのが私の印象ですが、それではまずいという御判断なのでしょうか。
〇委員
特にそういうことではありませんが、日本の税制、総合課税が現状では税率の問題で難しいというときに、結局、利子所得の20%(15+5%)を中心に、ある意味で中立性ということでそこへほかの商品の課税も収れんしてきているということですから、これをどうするか。私としては、やむを得ないのではないかと。
〇委員
26を20にすることはやむを得ないということですか。
〇委員
そういう意味ではなくて、6%は地方税を合わせての話ですから。
〇委員
でも、利子は15プラス5ですから。
〇委員
いかにも違って見えていますけれども、国と地方の税金が合わさったものですから、それは、一つにまとめて議論するとちょっとまずいのではないかと思います。
〇委員
次回は、9月11日、来週を予定していますので、次回にぜひ御出席いただいて、激しい議論を闘わせていただければと思います。
また、その後については18日を予備日としておりますので、よろしくお願いいたします。あとで案内状を発送させていただきます。
次回の小委員会の進め方については、私自身、思案中のところですが、「審議経過報告」や「項目表」、さらに、ただいまの小委員会での議論のほか、前回お願いしたメモの提出をぜひよろしくお願いいたします。それも含めて論点を整理し、議論の素材となるものを皆さんにお示しできればと思っています。
なお、すでにメモの提出をいただいている委員の方もいらっしゃいますが、何かしら御意見をメモでいただける場合には、その提出は、前回の小委員会では5日まで、すなわち明日までにと申し上げましたが、5日以降でも構いませんので、メモの提出をよろしくお願いします。
それでは、本日の小委員会、これで終わります。お忙しいところをどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。