第3回金融小委員会 議事録

平成13年7月17日開催

委員

それでは定刻ですので、ただいまから、第3回金融小委員会を開催いたします。

前回は広く金融のあり方全般について議論をしました。

本日からは、これまでの議論を踏まえ、金融・証券関連税制についての審議に入りたいと存じます。

審議に入る前に、事務局に人事異動がありましたので、御自身も含めて大武主税局長より御紹介いただきたく存じます。

事務局

このたび主税局長を拝命いたしました大武でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。

それでは、いま小委員長からお話がありましたように、今回、事務局に人事異動がございましたので、紹介をさせていただきたいと存じます。

前任の尾原は国税庁長官に就任いたしました。

それから、審議官をしておりました竹内が理財局の次長に就任いたしまして、その後任に秘書課長をしておりました石井が就任いたしております。

また、総務課長をしておりました小手川が官房参事官に就任いたしまして、その後任に税制一課長をしておりました清水が就任いたしました。

新しい税制第一課長には、主計局主計官をしておりました川北が就任いたしました。

それから、調査課長をしておりました池田が国税庁の法人課税課長に就任いたしまして、その後任に理財局調査室長をしておりました稲垣が就任いたしました。

それから、税制二課長をしておりました真砂が主計局主計官に就任いたしまして、その後任に大臣秘書官をしておりました古谷が就任いたしました。

いずれも前任者同様、よろしくお願いをいたしたいと存じます。

また、7月10日から、税制第一課、二課及び三課の事務分担が変更されまして、税制一課につきましては、所得税及び相続税などの資産課税を所掌する。それから、税制二課については、法人税及び消費税を所掌する。税制三課につきましては、個別間接税、通則法規及び地方税等を所掌するということで、一課、二課、三課の分担が変わりましたので、御報告をさせていただきます。

なお、審議官の所掌につきましては、木村審議官が税制第一課及び国際租税課、石井審議官が税制二課及び税制三課を基本的に所掌するということでございますが、いずれにしましても、全員一丸となって所掌の事務をきちっとやっていけるように努力いたしたいと存じますので、よろしく御指導のほどお願いいたします。

委員

ありがとうございました。

それでは、まず、金融・証券関連税制の現状などについて、事務局より説明を受けたいと存じます。

その中では、これまでの議論の中で事務局に対する宿題となっていたドイツの株式市場と税制、及び北欧諸国で導入されている二元的所得税についても説明していただきたいと存じます。

事務局

私のほうから、金融・証券税制の国内のほうの現状、国税につきまして御説明させていただきますが、資料はお手許に『資料』というのと『参考資料』というのがございます。右上に「金融小3-1」というのと「金融小3-2」というものでございますが、「3-1」の『資料』というほうを使いまして、『参考資料』のほうは、このあとの御討議のときにもし必要になればということで用意したものでございます。

それでは、『資料』「金融小3-1」を追いまして見ていただくようにいたします。

まず、目次でございますが、ざっと目次を見ていただきますと、初めの2枚ほどが総括的な表でございます。そのあと利子課税の点につきまして2枚ほどございまして、それから、配当の関係、株式譲渡益課税の関係、それから、特定目的会社に係る課税関係等、生命  保険料・損害保険料の控除の問題、あるいは調書の話、納税者番号制度といった並び方にしてございます。

それでは、順次おめくりいただきまして、御説明させていただきます。

まず、1ページ目ですが、近年の金融関連税制と金融証券市場の動きというものでございます。これは第1回目のこの小委員会のときにすでに御説明させていただいているものでございますが、62年の消費税の導入を含む抜本税制改革から、昨今の13年度の改正までにつきまして、金融税制改正の主なものを並べたものでございます。内容は追って出てまいりますので、このページは省略させていただきます。

それから、2ページ目、各種の資産と課税関係ということで、ごくごく概略的に並べたものでございます。資産がたくさんございますので、一表に全部網羅することはできませんが、大づかみにグルーピングして概観していただくためのものでございます。

左のほうに定期的なものということで、資産をもって運用から得ていく定期的な収益を得るグループ、それから真ん中の欄は、その資産を処分するなり譲渡するなりした場合のものということで、大きくそんな形で分けてございます。

まず、預貯金、公社債、投資信託のグループを、利子中心に源泉分離課税20%というグループが一まとまりございます。利子の大量発生という性格、あるいは所得捕捉体制がいろいろ難しいというようなこともございます。ここで1つのグループがございます。

それから、その下を見ますと、株式のところは配当ということになりまして、これは利子とは違いまして、事業成果で分配額が左右されるというような性質がございますが、ここは総合課税、20%の源泉徴収、配当控除があるというような形でございます。後ほど出てまいりますが、少額配当の場合、申告不要がございます。

それから、株の場合は元本のキャピタルゲインのことがございますので、ちょっと右に見ていただきますと、譲渡等による収益のほうに、譲渡益、これは売値から買値を引いた所得につきまして、譲渡益につきましての課税の関係。御案内のように、国税・地方税を合わせまして26%の申告分離課税と源泉分離課税の選択という形になっているわけでございます。これは譲渡益でございますので、そういう意味で利子・配当と異なって、源泉徴収がなかなか馴染みにくいという面がございまして、そんな意味で利益率の仮定というようなものを通しまして、この源泉分離課税が行われているということでございます。

それから、ちなみに商品先物ですと、売買差金の申告分離課税ですとか、あるいは保険の場合は、満期保険金につきまして一時所得としての総合課税があるとか、そんな大きな概略図がございます。

それから、これは金融商品とはやや範疇を異にいたしますが、資産という意味で土地につきまして最後に一覧設けてございます。土地のほうは、経常的運用の部分につきましては、不動産所得ということで総合課税というふうに置いてございます。譲渡益のほうは短期、長期に分かれておりまして、特に長期につきましては、26%の分離課税というようなことでございます。ごくごく概略の図でございます。

めくっていただきまして、3ページ、利子の関係でございます。利子課税は、概要の上の箱にございますように、預金、公社債の利子、合同運用信託、公社債投信等の収益分配等ということがございますが、源泉分離課税ということで、所得税・住民税合わせて20%でございます。

その下の箱は少額貯蓄の非課税制度の概要でございます。御案内のように、老人等のマル優ということで、貯蓄、公債、郵便貯金につきまして、それぞれ350万円ずつの非課税限度額が設けられておるということでございます。

1人当たりの貯蓄額、若干数字は古うございますが、右のほうに計数が載せてございます。(備考)の2にございますように、昭和63年4月に一般的な少額貯蓄の非課税制度、マル優制度が現行の老人に対する税制非課税制度に改組されたというものでございます。

ちなみに、この老人マル優等におきますところの租特としての減収額は、数字はここには載せておりませんが、13年度予算は6,000億円ほどございまして、これはまた郵便貯金の集中満期がございまして、その分膨らんでおりまして、それを除きますと1,000億円強でございますが、そういう大きな租特の減収額になっているということでございます。

めくりまして4ページでございますが、一般的な預金の口座数ということでございます。この数字は口座数を億の単位で書いているものでございます。10年3月末で一般の個人預金が9億、郵便貯金が6億口座ございますので、総トータル15億ほどの口座がございますので、そういう大量のものを相手にした税制だということを見ていただくための資料でございます。

それから、5ページ以降、配当のほうにまいらせていただきます。配当課税につきましては、所得税、住民税ございますが、まず所得税のほうは、配当につきまして20%の源泉徴収付きの総合課税というのが原則でございますが、所得税の下のほうの箱の中にございます1銘柄当たり年間10万円以下の配当につきましては、20%の源泉徴収のみで確定申告不要の制度がございます。

住民税のほうは、ここの部分は非課税でございまして、その上になりますと総合課税ということになっております。

それから、配当控除がその下に数行ございますが、一般に課税総所得金額が1,000万円以下の部分につきましては、所得税で配当所得の10%の配当控除というものでございます。

その状況を利子課税の状況と比較したものが6ページでございます。配当の税負担割合を利子と比較したものでございます。非常に単純化したグラフでございますので、ちょっと御説明させていただきますと、まず上半分のほうに書いてございますのが少額配当。先ほどの1銘柄当たり年10万円以下の場合の制度の計数でございます。これは後ほど試算が出てまいりますが、個人株主のほとんどがこのケース、こちらの場合で済むような形に試算されますが、そのようなものでございます。申告不要を選択可能でございますので、20%源徴、住民税非課税の形でございます。

グラフがございますが、この点線のところは20%の税負担率ということで、利子をイメージした点線でございます。700万円、1,500万円、2,000万円というのは給与収入でございます。それぞれ申告不要の20%の制度をとりますと、ちょうど20%の薄いほうの点線の棒のところが負担割合ということでございます。

これを総合課税をとった場合と比較いたしますと、700万円のところですと、これは所得の税率が10%の階層になりますので、配当を得ましても10%の税額控除がございますので、ちょうど税負担が相殺されまして、追加的な税負担はゼロというふうに書いてございます。

1,500万円のところになりますと、税率が30%のブラケットに入りますので、10%の税額控除で20%負担になりますので、利子と同じようなかぶさった形のグラフで、少し濃い目の負担額になっております。

2,000万円になりますと、配当控除が5%になりますので、25%の負担割合ということで、利子の20%よりも総合課税のほうが上へ出てくるというような形になっておりますので、ここまで含めまして、こちらの申告不要、20%源泉徴収のみという形になろうかということでご  ざいます。

下にまいりますと、これは1銘柄当たりの配当が年10万円超の場合でございます。こちらは上半分と違いまして、総合課税、配当税額控除をとるケースということでございます。所得税のほかに住民税課税もございまして、このケースの給与収入700万円ですと、住民税のみでございますが、10%の税率に対しまして配当税額控除が2.8%ございますので、7.2%の税負担。それから、1,500万円、2,000万円となりまして、上半分に乗っておりました所得税の負担に住民税の負担が加わりまして、31.4、36.6といった税負担の割合になるというものでございます。

いずれにいたしましても、個人の一般的な小口の株式保有者につきましては、上半分の税制で対応しているというのが実態であろうかと思っておりまして、その関係の試算を7ページに掲げてございます。非常に割り切った試算でございますけれども、所有株式数を大まかにくくったものでございます。この右に書いてありますように、その株式数と、もし仮にこれが額面に対する1割配当と大ざっぱに仮定いたしますと、2万株まで持っていますと10万円ということになりますので、そこで累積構成比が95%というようなことになりますので、かなりの範疇までこの申告不要の範疇になるということでございます。あくまでこれは推計でございます。

それから、8ページにまいりますと、配当につきましては、法人税と所得税の調整の問題がよく議論になっておりますが、その国際比較の資料でございます。真ん中の段だけ見ていただきますと、個人株主などにおきますところの法人税と所得税の調整方式でございますが、日本の場合は、先ほどの配当税額控除方式でございます。アメリカはこの調整をあまり考慮しない制度、欧州諸国はインピュテーション方式ということでございますが、ドイツが2002年からその方式を変えるというようなことでございまして、それを(注)につけてございます。

9ページ以降、株式譲渡益課税のほうに移らさせていただきます。9ページの資料は、これも第1回目のこの会でご覧いただいているものかと思いますが、このところの株式譲渡益課税の適正化の経緯でございます。もう一度、重複いたしますが見ていただくことにいたしますと、株式のキャピタルゲインにつきましては、昭和28年の原則非課税、売買回数の多いもの、売買株数の多いものにつきまして総合課税という時期から、平成元年に抜本的税制改革で源泉分離課税と申告分離課税の選択ということで、課税ベースの中に取り込まれたということがございます。

ここで源泉分離課税のほうに売値の1%というふうに書いてございますが、御案内のように、これは譲渡代金に利益率5%とみなしまして、それに税率20%ということで、5%の20%ということで、譲渡代金1%という簡略化された税制になっております。これが平成8年度以降、みなし利益率を5%から5.25%に引き上げたことによりまして、平成8年度以降、この1.05%の課税の形態になっております。

それが平成11年度の点線のところで、平成11年度の改正時におきまして、有取税を廃止して、13年4月からの申告分離課税一本化というものを法定したということがございました。13年4月がつい最近でございますが、昨年末の税制改正におきまして、これが2年延期された。13年のところに源泉分離課税「×」というのが書いてありますが、2年延期されて、平成15年まで延期されたということがございます。

加えまして、長期所有株式に係る少額譲渡益非課税制度ということで、100万円の少額譲渡益非課税制度がさらにつけ加わったという状況にございます。平成15年に一本化するという予定になっているという適正化の経緯の表でございます。

10ページは、株価と株式のキャピタルゲイン、あるいは有取税の課税につきましての変化と株価とを並べたものでございます。達観しますと、税制と株価の動き、必ずしも連動していないということはあろうかと思いますが、ちなみに、税収の面から見ますと、63年の時期、このとき有取税の0.55%の時期ですが、この際は法人も含めまして有取税が2兆円強ございましたが、13年度予算になりますと、申告分離のほうで760億円、源泉分離のほうで3,410億円というような形で、税収はそのように変化しているということでございます。

それから、11ページでございます。これも先般、100万円特別控除の関係でご覧いただいているかと思いますが、現状の仕組みを大きくイメージで見ますと、源泉分離課税でみなし譲渡益に対する課税のものが左側、右側の申告分離課税につきましては、本来の譲渡益でございますけれども、特別控除の100万円があるというような形になっているということでございます。

12ページは、100万円の特別控除をつくりました後の申告分離課税の実効的な税負担割合をグラフにしたものでございます。税率が26%でございますが、100万円の控除ができましたので、実際の実効税負担割合は、この曲線に示されましたように、譲渡益100万円までは控除がございまして、その後26%ということで、徐々に上がってまいりまして、実効税率20%に達するのが433万円のラインでございます。433万円を超えますと、20%超えまして26%に近づいていくといったようなグラフになっております。

この433万円の譲渡益をどう見るかということでございますが、参考に、これも非常に雑駁に見ておりますが、個人の平均の年間売買の回転率というのが0.35回というふうに考えますと、利益率10%ということ、これも仮定いたしますと、要するに1億円ほど持っていて、それを年間0.35回回転させ、10%利益があるというのが433万円というものでございますので、相当多くの株式保有をしている方につきまして、この433万円という数字が出てくるのかなということでございます。

それを見ていただくものが13ページでございます。まず箱の下に(参考)とございますが、個人の平均の株式保有総額というのは、589万円という調査になっております。これは累積構成比で見ますと、大体500万円までで70%、1,000万円までは85%ということでございますので、そういった株式保有の状態が一般世帯の状況でございます。したがいまして、こういう株式の保有額に対しまして、100万円までは非課税、433万円までは利子より低い譲渡益の税制になっているということでございます。

14ページは、株式の譲渡益課税の国際比較ということでございますが、後ほどドイツの関係で御議論があろうかと思いますので、私のほうからは省略いたします。

続きまして、今度は特定目的会社に係る課税関係という若干別の観点のものを御説明させていただきます。平成10年あるいは12年に、集団的な投資スキームというのが法整備されまして、その関係のものでございます。いろいろなケースがございますが、一般的に見ていただくために、まず特定目的会社を法人と思っていただきますと、投資家が会社に出資をして、その会社が何かの収益を上げて投資家に収益を分配するというケースでいきますと、一般的には特定目的会社の段階で法人税の課税が行われるわけでございますが、これは集団的な投資をするためにそういう特定目的会社というスキームを利用するということでございますので、まず法人税のほうでいきますと、真ん中のところに四角がございますが、一旦、法人税課税ということではございますが、支払配当を損金算入するということにしてございます。

一番下のところに(注)がございますが、要件がございまして、90%超配当するようなケースということでございますが、支払配当を損金算入してしまうということで、法人のところの課税を処理する。損金算入されました後の収益、配当を投資家に分配するというよう扱いになってございます。投資家のほうから見ますと、これを配当で受けまして、配当課税になるというような形でございます。

私は個人の投資家のほうから見た税制を御説明させていただきますと、16ページでございます。いろいろな集団的な投資スキームの形がございまして、左側のほうにいろいろな分類分けがございますが、この特定目的会社の一番上で見ていただきますと、いま私が御説明いたしましたようなケース、出資をしたようなケースでは、黒塗りのところでございますけれども、配当課税として総合課税の形になる。ただし、(注)にありますように、20%源泉徴収がございますが、配当控除は不適用、少額配当の申告不要の制度があるというようなくくりでございます。

一方、これを社債の形でいたしますと、個人投資家への収益は利子の課税の形になる。白抜きの形のほうでございます。

下のほうにいろいろな特定目的会社の形態がございますが、大きく社債、利子の系統の課税の形と、株式配当のほうの課税の形と2分類をしておりまして、白い利子のほうの課税の形のものと、黒い配当、株のほうの課税の形のものと、2分類にして個人課税が行われているというものでございます。

それから、17ページ、生命保険料控除でございます。生命保険料控除は、生命保険料を支払う段階で、最高5万円までの生命保険料控除ということが設けられております。昭和26年に長期貯蓄の奨励ということでできた制度でございます。その後、昭和59年に、年金につきまして別枠で、やはり生命保険料控除ということで、最高5万円の所得控除が設けられております。

右の適用状況にございますように、適用割合8割を超えてほぼ安定しておりまして、大きな課税ベースの欠落の一方、政策目的がかなり達成されている状況だということがつとに指摘されているものでございます。

住民税が次にございますが、もう1枚おめくりいただきまして、19ページ、損害保険料控除でございます。これは昭和39年にできましたもので、金額が長期のものが1万5,000円まで、短期のものは3,000円までということでございます。これも右を見ていただきますと、大体適用割合は給与所得者で4割強、申告納税者で6割強の状態でございます。(参考)にありますように、持ち家の比率が6割ぐらいということでございますので、これもかなりの普及で定着している状況でございます。

1枚とばしていただきまして、21ページ、金融の課税の問題には状況の把握の問題が出てまいります。これも後ほどまた御議論賜ればと思いますが、ここに載せましたものは、平成10年度の改正で行われました国外送金の調書提出制度の概要でございます。すでに本人確認済みの口座がある場合は別でございますが、そうでないものにつきましては、顧客のほうで告知書を提出し、本人確認をするということになっておりまして、銀行なり郵便局のほうから200万円超の送金については、税務署に調書が提出されるという仕組みが、平成10年度、外為法の改正との関係で入れられたというものでございます。

22ページあるいは23ページは、納税者番号制度についての資料を掲げてございます。

それから、24ページは、経済財政諮問会議におきまして、証券市場につきまして言及がありました部分について抜粋したものでございます。

私からは一応以上でございます。

事務局

私のほうからは、本日は2点宿題としてちょうだいしておりましたものを説明させていただきたいと思います。まず1点目がドイツの株式市場と税制の話、2点目といたしまして、北欧諸国で採られております二元的所得税についてでございます。

恐縮でございますが、右肩に「金融小3-3」と打ちました資料でございます。『ドイツの株式市場と税制』という資料でございますが、1枚めくっていただきまして、一番最初の1ページ目でございますが、ここにこの資料で御説明いたしたいことのポイントを大きく2つにまとめて書いております。

1つは、そこにございますように、ドイツの株式市場の動向でございますが、これは90年代を通しまして、特に後半にかけまして、株価は総じて右肩上がりという非常に好調な状態で推移したということでございます。これはもちろん御高承のとおり、2000年春、去年の春あたりから世界的な調整期に入ったということで、やや芳しからざる状態ではございますが、基本的に90年代を通しては好調であったということでございまして、これは世界的に見れば、他の主要国、アメリカを中心といたしまして全世界的な傾向、むしろ日本だけがやや取り残されてしまったという状態でございます。

その主な要因でございますけれども、1つは、そこにございますアメリカの株価との連動性が非常に高いということでございます。思い返してみますと、この90年代でございますけれども、グローバル化が非常な勢いで進展したということでございまして、いわゆるウインブルドン現象というようなことでございますか、各証券会社、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ大陸を含みまして、合従連衡を進めていったというようなこと。あるいは、これはヨーロッパ大陸に特有の現象でございますけれども、EU統合ということがかなり具体化してきたということで、これを投資機会ととらえ投資が進んだというようなこと。それから、これはこの春からの調整にもつながっているわけでございますけれど、情報通信あるいはハイテク株を中心といたしまして、ある意味で世界的に展開される事業を中心として投資が進んだということでございまして、これら全世界的な波に乗ったという部分でございます。

それから、その下のポツのところでございますが、規制緩和、市場整備、金融制度改革といったことで、これは主にEU統合等を念頭に置いてのことでございますが、三次にわたりまして金融市場振興法といったような法律を制定いたしまして、いろいろな規制緩和等を進めたということでございます。

その中にありまして、ドイツテレコム、これはもともとNTTのような国営の電話会社だったわけでございますが、この株式公開が行われまして、この途中におきまして、いわゆるリテールインセンティブというものでございますが、特にリテール、個人の投資家に向けてやや値引き販売をする、あるいは長期保有、ある程度の保有をした場合に、おまけのボーナス株と言っているものでございますが、これを配るというようなことをして、個人投資家の層を広げることに役立てている。あるいは、そこの下にございますノイアマルクトというものでございますが、これはベンチャーといいますか、新しい新興の企業に対して、資金調達機会を与えるということで、新しい市場を創設したといったことがあるわけでございます。

その下の(注)でございますが、しからば税制はということでございますが、実は好調だった1990年代、これを通して見ますと、証券関係税制につきましては、あまり大きな改正が行われていないというのが実態でございます。

次に課税の話に行く前に、恐縮でございますが、今の部分につきまして、先にまとめて御説明させていただきたいと思いますが、まず2 ページ目でございます。これも何度かごらんになったことがあるのではないかと思いますが、ドイツの株価指数、代表的なものがDAX30という指数でございますが、ここの太い黒線で書いてございますもの、基本的に1990年代を通しまして、特に後半に至って非常に好調なパフォーマンスを示しているわけでございます。これはそこに重ねてございます少し細めの線でございますアメリカのダウ・インダストリアルの平均ともほぼ歩調を合わせた動きということで、先ほども申し上げましたが、残念ながら、わが日経平均のほうは何となく不振を続けているということでございます。

その左下のほうの四角の中に書いてございますが、実は上場企業の数を見てみますと、日本の方、これは圧倒的に国内企業で、外国企業は若干が外国部に上場しておりますが、極めて限られているということでございます。ドイツを見ていただきますとわかりますように、国内企業が933社に対しまして、外国の企業でドイツ市場に上場しているものが7,682社と、9割近いということでございまして、そもそもがグローバルな株価動向との連動性が高いということでございます。

これにつきまして、次の3ページ目でございますが、これはフローベースの資金循環で見ましたドイツにおける株式投資の動向でございます。そこに投資対象というのがございますが、基本的に全体としてのドイツのマーケットで取得された株のうち、1999年でございますが、実に77%が外国株であったということでございます。

ちなみに、この年、一番右の欄でございますが、非居住者による投資ということでございます。これはもちろん非居住者によるドイツ株への投資ということでございますので、1,020億マルクということに対しまして、実は投資対象の国内株のほうが744億マルクということでございますので、これは明らかに居住者投資家は国内株を売って、そして外国株のほうに投資したという姿が見てとれるわけでございますし、これは大体90年代後半から、96年あたりからでございますけれども、総じて見れば、外国株のほうが大きく投資対象になっているという姿が見てとれるわけでございます。

それから、次に4ページ目でございますが、これは少し角度を変えた話でございますが、個人の株式残高及び金融資産に占める割合ということでございまして、実はそこにございますように、1999年末、若干古い数字で恐縮でございますけれども、日本が個人金融資産に占める株の割合が6.4%、アメリカの24.2%とは比べるべくもございませんが、ドイツの12.7%と比べても半分程度ということで、ここは問題を指摘されているところでございますが、この株式の金融資産に占める割合は、確かに実態としての株保有も影響を与えておりますが、それ以上に評価の問題、株価水準の問題が非常に大きな要素でございまして、ちなみに、1989年末、バブルの時代と言っていいのかと思いますが、平成元年の数字でございますが、日経平均、そこにございますように、3万8,916円で計算しました株式の率は13.8%と、せめて10%を超えたいと言われている水準は超えていたということでございます。逆にドイツのほうが、この間ぐっと伸びておりますのは、例えば94年と99年の数字を比べていただきますと、やはりDAX指数の伸びがかなり大きいということでございまして、どうもこの数字につきましては、評価の影響、これを勘案する必要があるのではないかということでございます。

大変恐縮でございますが、さらに1ページ目のほうに戻っていただきまして、もう1つのポイントでございますが、税制の話でございます。ドイツの株式譲渡益課税の話でございます。ドイツでは株の譲渡益について課税がなされていないということが巷間指摘されているわけでございますが、これはそこにございますように、伝統的に株のみならず土地も含めまして、いわゆるキャピタルゲインにつきましては、ドイツでは原則非課税ということでございます。ただ、もちろんいろいろな濫用を防ぐという観点から、投機的売買、これは保有期間1年以下の株の売買というものとされておりますが、これにつきましては、原則を引っくり返して例外的に譲渡益が課税されるということがございますが、原則としてキャピタルゲインは非課税であるということでございます。

これはその下に書いてございますように、ドイツの所得税の考え方でございますが、経常的に発生いたします収益については、所得に入れて考える。他方、一時的に発生する収益、キャピタルゲインがこれに当たるわけでございますが、これについては所得としてとらえないという基本的な考え方に立っているわけでございます。これは右のほうに書いてございますが、他の主要国中唯一でございますが、制限的所得概念に基づくという、理論的といいますか、背景がございまして、株式投資を政策的に優遇したという結果ではないということでございます。

ドイツの税制につきまして、恐縮でございますが、5ページ以下、ざっと御説明させていただきたいと思いますが、5ページ目、株式譲渡益課税の国際比較をしております。日本につきましては、先ほどから再三御説明がありましたように、申告分離課税あるいは源泉分離課税を選択するという方式によっているわけでございますが、アメリカ、イギリスのアングロサクソン系といいましょうか、ここにつきましては総合課税が行われている。

これに対しまして、右から2つ目の欄でございますが、ドイツにつきましては、一定のもの、先ほど申し上げましたような投機売買等でございますが、これを除きましては非課税という扱いになっているわけでございます。

フランスにつきましては、26%の申告分離一本ということでございます。

これにつきまして、それぞれ課税の仕方に応じまして、譲渡損失の繰越控除あるいは損益通算につきまして、認められている場合、認められていない場合がございます。日本の場合につきましては、御存じのように両方とも認められていないということでございます。

アメリカ、イギリスにつきまして、譲渡損失の繰越控除につきましては、総合課税ということで原則として認められているわけでございます。損益通算につきましては、アメリカは3,000ドルを限度として認める。イギリスについては、これは認められないということでございます。

ドイツにつきましては、これは原則非課税でございますので、そもそも繰越控除あるいは損益通算ということが認められるべくもないということでございます。

フランスにつきましては、繰越控除は認められているものの損益通算は認められないという扱いになっております。

こうして並べてみますと、ドイツが主要国の中で圧倒的に特殊な地位にあるということがおわかりいただけるかと思いますが、これは歴史的に初めからドイツだけだったかと申しますと、そうではございませんで、次の6ページ目でございますが、キャピタルゲイン課税につきまして、主要国の歴史を縦に並べたものでございます。

まず、日本を抜かしましてアメリカのところでございますが、実はアメリカは1913年に個人所得税を再導入いたしました。このときにすでにアメリカでは包括的な所得概念、キャピタルゲインも課税するということとしまして、これがずっと続いているということでございます。

その左の欄の日本でございますが、昭和25年のところでシャウプ税制ということでございまして、アメリカの考え方を導入して包括的所得概念に立ちまして、キャピタルゲインも課税するということから、諸々の変遷を経ているというわけでございます。

片やイギリス、ドイツ、フランスでございますが、イギリスは1842年に所得税を再導入いたしましたが、このときには制限的所得概念ということで、キャピタルゲインが非課税。ドイツにつきましては、1920年に一旦連邦所得税を入れたわけでございますが、このときは実は包括的所得概念に立っていたわけでございます。25年の大幅見直しでむしろ制限的所得概念に立って、それが今日に至っている。

フランスにつきましては、制限的所得概念に立った個人所得課税の導入が1914年から17年にかけて図られたわけでございますが、これはイギリス、フランスとも同様でございますが、その後の見直しでキャピタルゲインが課税されることになったということでございまして、総じましてヨーロッパ諸国におきましては、もともと制限的所得概念に立っていたものが、ドイツを除いてはキャピタルゲインを課税する方向に動いたという歴史が見て取れるかと思います。

その次のページでございますが、7ページ目、実はドイツの2000年の税制改正で、新たに資本会社の株式の譲渡益について非課税とするということで、これは法人課税における譲渡益軽減だという見方があるわけでございますが、この実態は、そこにございますように、現行の制度、資本会社が1年超保有する一定の外国株、これの譲渡益のみ非課税とするという扱いだったわけでございますが、これを2002年の1月より、資本会社が1年超保有する株式につきまして、譲渡益は非課税となると。ただし、ということでございますが、これは当然、もともと益が非課税でございますので、譲渡損は損金に不算入という扱いになったわけでございます。

これの考え方でございますが、その下の右のほうでございます。ドイツ企業は実は個人事業、一人的会社、合名会社、合資会社と言われる類でございますが、これが84%、これに対しまして株式会社等の資本会社は16%、実数にいたしまして、98年の数字しか手許にございませんが、5,000余ということでございまして、基本的には全体として見れば人的な会社が圧倒的であるということでございます、もちろん、人的会社につきましては、個人所得課税ということになっておりますので、資本会社、普通の会社につきましてもこれに合わせたという側面がございます。

また、その(注)にございますように、実は先ほども少し御説明がありましたが、2002年1月より、それまで完全インピュテーション方式をとっておりましたドイツが、完全調整をやめまして、部分調整に移行するということがございまして、この結果、ある程度の増収を確保できたということ、それから、この考え方と合わせるといった側面もございまして、このような税制改正が行われたというように聞いております。

次、8ページ目でございますが、これは金子先生の『租税法』の本から抜粋いたしました包括的所得概念と制限的所得概念という部分でございますので、これを御参考までにということでご覧いただければと思います。

それから、もう1つのほう、「金融小3-4」『二元的所得税論』と書きましたものでございますが、1ページ目を開いていただきますと、「主な租税論」と書いてございます。これは一番下の(注)にございますが、その次、2ページ目、3ページ目につけております昨年7月にちょうだいいたしましたいわゆる中期答申、「わが国税制の現状と課題」の中に補論としてあります「主な租税論」の部分を要約したものでございます。

ここに4つの個人課税についての租税論が記されているわけでございまして、まず、第1番目が一番オーソドックスな「包括的所得税論」ということでございまして、所得税の課税対象となる所得について、全部押しなべて包括的な把握を行うということでございまして、この所得の概念でございますが、1年間の経済力の増加に寄与するあらゆる種類の所得を区別なく合算した上で、総合課税を行うといったものでございます。

これとやや対立するものといたしまして「支出税論」というのがございまして、包括的所得税とは異なり、一生の間の所得を担税力の指標とするということでございまして、その矢印の後ろでございますが、一生の間の所得というのが、各年の消費を一生にわたって積み上げたものにほぼ一致するということに着目し、各期間の消費を課税ベースとするということでございまして、実際、消費はなかなか実務的には把握が難しいので直接にはとり得ないところかと思います。もし消費を総体として把握するということになりますと、まず所得を把握しておいてから貯蓄を引くということで、把握面では非常に困難が伴うというものでございます。

これとはやや切り口が違うものでございますが、「最適課税論」でございます。課税による資源配分の効率性や所得分配の公平性等の観点を考慮し、望ましい課税のあり方を模索する議論でございまして、特に労働、資本、土地等の生産要素につきまして、それぞれの供給の価格弾力性が異なることを前提として、税率を差別化した分類所得税が望ましいとする立場がある一方で、効率性に加えまして垂直的な公平の観点も考慮する立場も有力であるということでございます。

最後にいま問題になっております「二元的所得税」の話でございますが、これはやや最適課税論の系譜に属するものかと思いますが、資本は労働よりも流動的である、足が速いということを前提といたしまして、勤労所得に対しては累進税率を適用する一方、資本所得に対しては勤労所得に適用する最低税率以下の税率により分離課税するということでございまして、勤労所得と資本所得と2つの分類を置いておりますが、それぞれの中では総合課税が行われているということでは、一種の包括的所得税論でございますし、効率性の観点を入れているという意味では、最適課税論の系譜に属するということかと思われます。

次の2ページ目、3ページ目は、いま要約で御説明させていただいたところなので省略いたしまして、4ページ目でございますが、これは平成9年12月に税制調査会の金融課税小委員会のほうからいただきました中間報告の「金融システム改革と金融関係税制」というものでございます。これもちょっと長いので、5ページ目の(4)に二元的所得税論の話が言及されておりますので、ここをごらんいただければと思います。

読ませていただきますが、「勤労所得と資本所得に大別する最近の考え方として、近年、二元的所得税論が提起されている。これは、勤労所得に対して累進税率を適用する一方、資本所得には勤労所得よりも低い均一税率で課税し、グローバル化された今日、国際間の資本移動の中立性を確保するために、実質的な税負担を一定水準に収めようとする考え方である。この考え方は、勤労所得、資本所得それぞれの中では総合課税を目指す一方、勤労所得と資本所得との間ではその性格に応じて税率に差を設ける、」先述の(1)と(3)、この(1)というのは包括的所得税論でございます。(3)は最適課税論でございますが、包括的所得税論と最適課税論を折衷する考え方を踏まえたものと言えるということでございます。

駆け足で恐縮ですが、次の6ページ目、これがそこにございますS.Cnossenという人が97年に書きました"Dual Income Tax"(二元的所得税)という本に基づきました二元的所得税につきましての理想形といいますか、理論的な仕組みでございまして、まずそこにございますように、すべての所得を2種類に分類してしまうということで、1つが左にございます資本所得、他方のカテゴリーが勤労所得ということでございます。

それぞれの中身の例示でございますが、資本所得は、その箱の外側に書いてございますが、利子、配当といった金融所得、株・土地等のキャピタルゲイン、家賃、事業収入のうち投資収益的な部分といったものが入ります。他方、勤労所得でございますが、賃金、給与、フリンジベネフィット、社会保障給付に加え、事業収益のうち賃金報酬的な部分、これが入ってくるということでございます。

申し遅れましたが、このポンチ絵の縦の高さは適用税率でございますが、左に書いてございますように、資本所得につきましては、比例税率を適用するということでございます。この比例税率につきましては、この人の本では、勤労所得の最低税率と合わすということでございますが、理論的には勤労所得の最低税率を下回るということになろうかと思います。先ほどから申し上げておりますように、資本の足の速さといいますか、価格弾力性の高さといいますか、それに着目いたしまして、勤労的な所得の部分よりも低い税率を課すということでございます。

かつ、これに加えまして、これは法人税率とも一緒の比例税率になるということでございまして、これは完全インピュテーションが前提ではございますが、投資形態について中立性を保つという観点から、同じ税率とすべきとされているものでございます。

片や勤労所得に対する課税でございますが、一番右の波をつけたところに書いてございますように、普通の累進税率ということで、先ほどの繰り返しでございますが、その最低税率というものは、資本所得に対する比例税率を上回っているというのが理論的な姿でございます。

この二元的所得税でございますが、主にとられておりますのは北欧4か国と言われております。7ページ目にございますように、わかりにくい表で恐縮でございますが、これはCnossenの本からそのまま抜きまして、97年、本が書かれた時点での最新の姿が網掛けした部分でございます。まず最初にデンマークで87年に導入されたわけでございますが、そもそもこのデンマークは導入の時点で先ほどの理論的な姿とは乖離しておりまして、そこにございますように、資本所得のその他所得というところにつきましては、50から56と書いてございますが、これは均一税率ではなくて、そもそも累進制がとられていたということでございます。

そのあと90年代に入りまして、スウェーデンで導入されまして、最初導入されたときは理論的にきれいな姿だったわけでございますが、94年以降は、そこにございますように、法人所得とその他所得で乖離が生じているということで、先ほど申しました投資形態の中立性が保たれていないというものでございます。

その後、ノルウェーで1992年に導入されまして、ここは比較的、見ていただきますと、先ほど御説明したような法人課税とその他が均一、かつ、勤労所得の最低税率が均一税率とそろっているという姿でございますが、その後、93年に導入いたしましたフィンランドにつきましては、実は93年の導入時は比較的理論的にきれいな形だったわけでございますが、95年以降は勤労所得の最低税率が均一税率を下回るということで、ここでも乖離が生じている姿でございます。

ざっとでございますが、以上でございます。

事務局

それでは、続きまして地方税の関係を御説明させていただきたいと思います。資料につきましては、戻りまして右肩に「金融小3-1」と書いてあるものでございますが、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。

まず、1ページをご覧いただきたいと思いますが、この中で、62年のときでございますけれども、抜本税制改革がございます。そのうちの利子の3つ目のところに「道府県民税利子割の創設」と書いてございますが、それまでは個人住民税につきましては、所得税で総合課税をされました利子についてのみ課税でございましたけれども、これ以降、一般的に課税ができるようになったということで、具体的には3ページをごらんいただきたいと存じます。

3ページに利子課税制度の概要、先ほども所得税で御説明がございましたけれども、こちらのほうで住民税につきまして預貯金等の利子などにつきまして、一律現年度の分離課税5%ということで課税をしてございます。対象となりますのは、所得税での一律分離の課税の対象と同じでございまして、ちなみに、下のほうに老人マル優等の非課税制度の概要を書いてございますが、これによります減収額は、ここには書いてございませんけれども、所得税と同じように申し上げますと、13年度のベースで住民税につきまして大体2,000億円程度。ただ、これは郵貯の満期の集中がございますので、それを除きますと、大体400億円程度の減収ということになってございます。

続きまして5ページをご覧いただきたいと存じます。株式の関係のうちの配当課税の概要でございます。これにつきまして、右側のほうに住民税の概要を書いてございますように、原則としては総合課税ということでございますが、一番下の部分、いわゆる少額配当につきましては、非課税ということになってございまして、これは支払調書が税務当局のほうに提出されないということがございまして、課税をいたします市町村にとりまして、所得を把握をする体制が十分整備をされていないというようなことがございまして、非課税ということになっているわけでございます。この点につきましては、これまでもしばしば当税制調査会におきまして、適正化というものについての御指摘をちょうだいいたしてございます。

それから、9ページ以降に同じ株式の譲渡益の課税の資料がいくつかあるわけでございますけれども、11ページをご覧いただきたいと存じます。11ページ自体は長期の保有株式についてということでのイメージ図でございますが、特別控除の部分を除きますと、一般的なものと同じでございますので、これをごらんいただきたいと思いますけれども、株式の譲渡益の課税につきましては、右側の申告分離課税、これが原則でございますが、これにつきましては、下のほうにちょっと書いてございますけれども、譲渡益に対して26%の税率でもって課税をされる。その中に住民税6%分が入ってございます。

他方で、左側の源泉分離課税というものにつきましては、下のほうにみなし譲渡益に対して20%という数字で税率がかかっておるわけですが、これは所得税だけの税率でございまして、源泉分離課税、左側の選択になりますと、住民税は課税ができないということでございます。この点につきましても、適正化についての御指摘を受けておったわけでございますが、9ページの右側の一番端にございますように、申告分離課税に一本化ということになりますと、この住民税が申告分離と源泉分離、いずれかによって課税になったり、非課税になったりという部分の問題の解決はおのずと図られるということでございます。

あと、生命保険料あるいは損害保険の関係でございますが、18ページあるいは20ページに、それぞれ生命保険料控除、損害保険料控除の住民税の関係の部分を載せてございます。基本的には所得税と同じ考え方でございますけれども、負担分任ということがございますので、控除の額自体につきましては、所得税よりも低い水準になってございます。

なお、両方合わせまして、13年度ベースでいきますと、約1,000億円の減収ということが両方の控除であるわけでございます。

簡単でございますが、私のほうからは以上でございます。よろしくお願いします。

委員

ありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からの説明も踏まえまして、これから自由討論をしたいと存じます。

まず、前回質問がありました株式投資の現状と証券会社の営業姿勢との関係について、もしよろしければ水口委員から御説明をお願いすることとして、そのあと自由に御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

委員

議事録を拝見しまして、前回、私、欠席しましたときに、小委員長のほうから、昨年の5月に証券広報センターがやりましたアンケート調査の結果が引用されまして、事実、私もその直後にあれを見まして、非常に驚いたわけであります。30年前あるいは40年前と全然変わらないという投資家の信任の状況ということで、私、振り返ってみると、40年不況のときに、業界の信任を得るということで、実際上はそのときから証取法を改正して、免許制になったわけです。あのときは実際上はコントロールを強めるというより、むしろ私の記憶では、業界内部から信用力を付与するために、大蔵省の免許をいただきたいということでやったのが実情であります。

委員

前回の会議のそのときの資料は、『参考資料』の26ページにございます。御関心があればですが。

委員

長々と話をしても仕方がありませんので、1枚ペーパーを、これは2月26日に『金融財政』という時事通信の雑誌の巻頭言で書いたものを載せておきましたので、基本的な考え方はいまでも変わりません。要するに、株価が下がると株価対策、例えば1万2,000円を割りそうになると、また財務大臣と誰かが相談してどうにかしようと、その場合必ず税制の問題が出てくると、こういうような話ではだめなので、基本的にはやはりファンダメンタルズであるということを、過去の数字を示しながら言ったのですが、その場合に、この下段にありますように、税制というものは非常に重要であるということと同時に、企業経営者、コーポレート・ガバナンスの問題が重要だということと、もう1つは関係業界、ということは仲介業者である証券業者中心ということになりますが、これらがしっかりする必要があると、こういうことを申し述べたわけでありますが、その後7月に入りまして、状況はいろいろな変化がございますので、若干申し上げたいと思います。

第1は証券業の問題ですが、国際証券に、これは証券業協会が過怠金3億円というものを出したということであります。その前にも新聞でも御承知のとおり、金融監督庁から6月に命令書というのが国際証券の社長宛てに出ておるわけであります。中身は取引一任勘定取引の契約を締結する行為、これが証取法違反。もう1つは、特別の利益を提供することを約して勧誘する行為、これも証取法違反。3番目が、役職員による検査を忌避する行為、これも証取法違反。4番目に、有価証券の売買その他の取引に関し虚偽の表示をする行為、これも証取法違反ということになって、大臣の談話でも言語道断であると、こういうことになって、業務改善命令あるいは全店の営業停止といういままでなかったことがあったわけです。

ここで1つ僕は指摘したいのは、これは全部あるいは東京三菱証券の場合にしろ、あるいはアーク証券、日興證券、随分多いわけでありますが、全部金融監督庁長官の命令書になっているということですね。アメリカではこれはSECがやるわけですから、やはり現在の監視体制、あるいはルールを守るという問題は、自主規制機関である証券取引所及び証券業協会ということの前に、やはりSECというものの内容をもうちょっときちっとした形にするということが、行政としたら非常に重要ではないかと考えます。

また、証券業界内部からいえば、これはまさに言うことはありませんで、自助努力で自らの自浄行為をしていくことが非常に重要でありまして、私も証券業協会の公益理事をこの3年来しておりますので、事あるたびにそういうことは強く言っておりまして、また公益理事では、前の証券取引等監視委員会の委員長、水原弁護士もなっておりますので、2人でいつも苦言は呈しているわけでありますが、やはりこれは国際証券とか1社の問題ではなくて、業界の問題であるということで、証券協会長にもきちっとするようにということを強く言っておるのですが、過怠金だけではだめで、といって単なる決意表明だけでもいけませんので、これはやはり日常の営業姿勢の中から常にやっていかなければならないと考えております。

ただ、私は野村證券にいるときも、もちろんリテールをはじめ7、8年間やりましたが、あとはずっとインベストメント・バンキング部門をやっておりましたので、アメリカでSECが猛烈な処罰をする場合は、大体引受け行為、それに伴うディーリングによることが非常に多いわけです。例えばミルケンのジャンクボンド事件、あれによってドレクセルバーナムはつぶれちゃったわけですが、あるいはソロモンブラザーズ・グッドフレンド会長がやめたという場合も、これは国債のディーリングにおける不当行為ということでありますが、リテールで日本にはこういう問題は非常に少ないということがありますので、業界の後進性ということもありますけれども、なおさら自浄自戒は特にやっていくということ。

もう1つは、証券アナリストの役割というのが非常に重要であろうと思います。特にITバブルの最中に証券アナリストの中で、これはITバブルだと言って指摘したのは、寡聞にして私は知らないですね。我々が、卒業生がそういうことは随分言ったわけです。これはアメリカでも同様で、新しいエコノミストは大体バブルを一生懸命礼賛していた。バブルだと言ったのは、やはりガルブレイスであるとか、サミュエルソンであるとか、古いことを知っている学者であったというのは事実だと思うのです。したがって、現在、証券界の中でも証券不況を経験して実際にやってきたというのは、生き残りはもう私ぐらいしかいなくなりましたので、そういう点はこれからもいろいろなことはよく考えてやっていきたいと思います。

それから、もう1つは、企業の問題はやはり情報公開をちゃんとするということが重要だと思いますし、またその情報公開に対して、アナリスト説明会の場合、アナリストはもうちょっと経営者に対してきちんとした説明を求めるという内容が非常に重要だろうと思いますね。具体的な名前をいえば、例えば光通信の社長が情報公開で説明をしたと。その情報をそのまま鵜呑みにしてやるのは、とんでもない職責放棄の話でありまして、もうちょっときちんとした分析をする必要があるということで・・・、そういうことを含めまして内容の環境をしっかり整備するということ、それから、上場会社自身が情報公開なり、あるいはコーポレート・ガバナンス、あるいは利益分配、株式の価値を高めるということが必要。またそれを仲介する、これが一番重要でありますけれども、証券業者という問題。したがって、いまの証券外務員資格試験なんていう問題は、もうちょっとエシックスという問題を強く入れてやっていく必要があると考えております。

最後は政府の問題として、本日のテーマであります税制の問題というのは非常に重要でありますので、業界がよくないからといって、税制は放っておいていいということにはならないと思います。

それから最後、去年、広報センターからああいうアンケート調査が出たときに、私なんかは、あるいはうちのエコノミストなんかが1つの主張をしたのは、日本では郵貯にあれだけ金が集まるというようなことを踏まえますと、いきなり株式投資に行くというのは信頼感がないということ、あるいは投資信託にしても、ものすごい金が集まったときは、バブルの絶頂期の、去年の2月にある会社は1兆円なんていうファンドが集まってしまったというような、株式投資というのはそういうところがありますけれども、それだけではやはりだめですから、タイミングを見てやるというようなことも非常に重要であろうと思います。

そういう点からいきましても、全体としての環境を整備するということと同時に、証券業界自身も、これは創業の精神がどこでもいつでも必ず、みんないまになって初めてまた、証券不況のときもそうですけれども、顧客の利益を第一に考えるという営業姿勢に変わってきているということの繰り返しになりますが、今度こそ、日本経済自身も構造改革は最後のチャンスだと言っておりますけれども、証券界としても本当に面目を一新していく最後のチャンスだろうということで、事実、私もこの間財務大臣との懇談のときに、税制改正の話を強く言いましたら、「それはよくわかるけど、あなたのいる前で申しわけないけど、証券業界はもうちょっとしっかりしてくれなきゃ困るぞ」という苦言を呈されまして、さっそく証券業協会長にはその旨強く伝えておきましたけれども、そういうようなことが非常に重要だろうと思います。

また商品開発の場合も、いま投資信託のミューチュアル・ファンドの話をいたしましたけれども、例えばMMFというような郵貯に変わるような、元本についてもかなりの安心感がある、しかも出し入れ自由であるというようなファンドをどんどんつくっていくということが非常に重要だろうと思いますし、これは金融審議会でもいろいろ議論になっていると聞いておりますけれども、そうなりますと、アメリカと違って、マネーマーケットあるいはマネー・マネジメント・ファンドの材料になるものが短期国債しかなくて、アメリカの場合は半分以上がコマーシャルペーパーになっておりますから、日本のコマーシャルペーパーは現在金利の問題もあってダイレクトペーパーですね。三菱商事が出すものは三菱銀行が全部引き受けていく。これが全部日銀にいってしまう。こういうことになって、完全な市場型になっていないわけですね。というような問題もありまして、まずそういうものからつくっていくということも非常に重要ではないかと考えております。これは税制の問題よりむしろ、登録その他の問題でも売買手法は整備されてきつつありますので、そういう方向に行くと期待しておりますけれども、そういうようなことも常に考えていく必要があると考えております。

かなり雑駁になりましたけれども、以上でございます。

委員

ありがとうございました。税制も大事ですけれども、この小委員会は広く金融一般も含めて見ようということですので、大変ありがたい重要な指摘だったかと思います。

それでは、いまの委員の御指摘、あるいはそれ以前の事務局からの説明、どの点でも結構ですから、どうぞ御自由に。

委員

質問よろしいですか。二元的所得税論で、北欧諸国の課税の仕方をちょっとお伺いしたいのですけど、いろいろな金融収益とか資本所得を単に実現ベースで合算してかけているということなのでしょうか。それとも、例えば家賃であるとか配当というのは、算定する前に何らかの配慮を行っているのか。

それと、非常に多様な金融商品が出てくる中で、高度な組合せ型の商品とか、そういうものも同じように実現ベースで組み入れているのか、ちょっとそのあたりを伺いたいのです。

事務局

申しわけございません。不勉強でございまして、いまの段階で確定的に細かなところまでは当たっておりませんが、基本的にはそういう御理解で結構かと思います。

委員

2つあるのですが、1つは、日本は現在のところ預貯金が非常に多いというのが1つの特徴だと思うのですけれども、それを何かある形に変えていこうというような税制を目指すのか、それとも本当に中立の立場で考えるのかによって、少し方向が違うのではないかと思うのですけれども、それが大きな点の第1点です。

2点目は、先ほどの諸外国の例で、ドイツとかアメリカの場合には、株価が上がっているためにシェアが大きくなったように見えている部分があるということだったわけですが、その場合、ドイツなどで上がっているのは、ほとんどが株価の上昇によるのか、それとも本当に買っている個人も多いのかどうか、ということがもしわかったら教えていただきたい。

それから、ドイツは70年代には日本とほとんど似ていたのですけれども、最近なぜ大きくなったかというのは、ドイツ人に聞いてみますと、あそこはもともとユニバーサルバンクであったと。ですから、銀行に行けば株も預貯金も買える中で、その中での選択だったというようなことを聞いたのです。日本ですと、違うお店に行かなくてはいけない。それが先ほどのイメージや何かにつながっていると思うのですけれども、そういう意味では、ドイツの国民というのは割合、株から投信とかそういうものに移りやすかった。そういう意味では、日本でも銀行の窓口を通じて、これから投信とかいろいろな商品の販売ができてくれば、少し動きが早くなるかなという感じがします。

その2点です。

事務局

申しわけございません。第2点目のほうでございますけれども、先ほど傾向として御説明させていただきましたが、かなり大きな影響が株価のほうがあるかと思いますが、量の部分と評価の部分で定量的に分析しておりませんで、確定的なことを申し上げられませんが、量の部分もある程度は、先ほど申しましたようないろいろな手段を通しまして、個人の投資家、それから実はこれはかなり機関投資家といいますか、投信の形で個人に向けて入っているということはございますので、すべてが評価効果ではないということは申し上げられるかと思います。

それと、まさに90年代において、もともと間接金融文化であったドイツが、急速に直接金融文化に切り換わった原因というのは、これはなかなか難しいのでございますが、1つは、先ほど申しました規制緩和、ドイツテレコムの売却等を通しまして、株に個人が馴染んでもらうというような施策をしたということがございます。それから、もう1つは、先ほど申しましたが、株を直接持つという形態も増えているのですが、投信の形で持つというのも相当増えておりまして、やはりこちらの面では業界等の努力があったのかなということと、あと、これは大きなマクロ的な話でございますけれども、人口動態的に見て、ベビーブーマー世代がリタイアして、次世代、遺産を受け取ったような層が投資をし始める時期に当たったということ。

それと、これは必ずしも望ましいことかどうかわかりませんが、長期金利が6%が壁と言われていたわけでございますが、この辺を割ったというようなことで、少し資産を動かした動きがある。

それから、これからまたリタイア世代が多くなるわけでございますが、それを前にして、これもあまり望ましいことではないのかもしれませんが、公的年金制度に対する不安があったので、自助努力ということで、少し投資の多様化が図られたというようなことが言われております。

委員

先ほどの委員の第1点目ですけれども、第2回目の委員会で翁委員と池尾委員から御報告を受けて、そのときに私からほとんど同じ質問をいたしまして、そのときのお答えが実はちょうど割れまして、池尾先生の御意見は、どちらかというとセットアップコストみたいなものがあるのだから、少し証券に振ったような税制をかけるのも1つの案ではないかというニュアンスのお答えをいただいて、翁先生からは、どちらかというと、やはりここは中立でいくべきではないのというような、もし間違っていたら御指摘いただきたいのですが、そういう御意見をいただいております。

それ以外にも、例えばそもそも中立ってどういう意味なの、という質問も多分あり得ると私などは個人的には思っておりまして、例えば、利子と株式ではリスクが違うだろうとか、いろいろな問題がありそうなので、ですから、ここら辺が今日も含めてですが、これからのかなり大きな論点の1つになるのではないかと思いますので、その点も含めて、皆さん御自由に御意見があれば、どうぞよろしくお願いいたします。

委員

いまの委員の質問と重なるのですけれども、追加して、ドイツの場合はもともとキャピタルゲインについては非課税だったわけですから、そして、今度の税制改革は来年からということになると、キャピタルゲインに関する税制改革はこれまでの上昇には関係ないわけですね。そうすると、いまおっしゃった規制緩和、あるいは馴染んでもらう対策というようなこと、その辺が具体的にはどういうものであったのか。ユニバーサル・バンキングで、銀行のほうがもっとセキュリタイゼーションなど商品のほうを増やしてきたという供給側の要因のほうが大きいということなのか。そのあたりについてのもし情報があれば、ちょっとお伺いしたいと思いますが。

事務局

重なるかもしれないのですけれども、ドイツの場合は、DAX指数というのは、御存じのとおり、大きい大企業30社の平均でやっておるわけですが、その30社のうちの11は、実はドイツの企業ではあるのですけれども、ニューヨークに上場している企業でございまして、かつ、先ほどの表にもあったのですけど、ドイツの証券市場の場合には、株式会社が5,000社ぐらいしかドイツにはない。ほとんどが個人会社であるために、ドイツの株式というのは7割方以上が外国株式であるという点があります。したがいまして、株価がアメリカに非常に特に連動するというのは、いま言ったように30社中の11社というのがニューヨークで上場されていますから、ニューヨークの株式市場が上がると自動的に上がるという仕組みになっていて、したがって、言ってみればウエイトとして大きくなるというのを必然的に持っている。ところが、日本の上場株式というのは、極めてニューヨークに上場している会社というのは多くないわけでして、このあたりの連動性というのが、多分そのあたりにも非常に響いているのだろうという気はいたします。ちょっと余分ですけれども。

事務局

規制緩和といいますか、市場振興対策の中身でございますが、申しわけございません、細かなところまで私説明する能力がないのですが、例示させていただきますと、例えば債券の発行認可制度、これを1990年代の初めに廃止した。あるいは、これは税制でございますが、1990年代の初めに有価証券取引税を廃止しております。

90年代半ば、94年7月の第2次の金融市場振興法でございますが、インサイダー取引規制、連邦証券取引監督庁の設立。あるいは株式につきまして、これはかなり大きな話かと思いますが、最低額面金額を50マルクから5マルクまで引き下げたということ。それから、金融機関の自己株式保有を解禁した。MMFを解禁した。

第3次の金融市場振興法、これは98年3月でございますが、企業のディスクローズにつきまして簡略化する。あるいは有限会社の持株会社を解禁する。それから、これは投資信託関係の解禁でございますけど、かなりやっておりまして、いわゆるファンド・オブ・ファンズという、ファンドに投資するためのファンドでございますが、これを解禁する。あるいは証券と不動産の混合ファンドの解禁。それから、高齢化対策ファンドといいまして、一定の長い期間持ち切っているようなファンドの創設を行ったというようなことがございます。

委員

先ほどの委員の点につきましては、やはり税は公平・簡素・中立と言ってきております。大原則でございますから、原則は中立的なものであるべきではないかと思うわけです。しかし、単に形式的に中立といっても、間接商品と直接金融資産では、全く性格の違う点も多々ある。そういったすべての性格の違いも含めたところでの中立ということではないかと考えるわけでございます。

そうした意味において、前回もちょっと申し上げたかと思いますけれども、郵便貯金というのは、およそ国家があの第3条で元本も利払いも保証している。そういった意味では、商品自体のつくり方に非中立的な面があるのではないか。そうした点も含めた見直し、しかし、そうした点を含めた意味での中立性の貫徹ということは、やはり基本的にはポイントになるのではないかという気がいたします。

それから、1つ質問させていただければと思うのですけれども、前回の2人の先生の御説明で、間接金融か直接金融かという中で、市場型間接金融という御説明がございまして、今後の方向はそういうところに行くのではないかということですが、おそらくそれを翻訳していけば、投資信託のようなものなのかなという気がいたします。投資信託という点については、先ほどの委員からいろいろ証券業界のお話がございましたけれども、投資信託業界と申しますか、投資信託業務、これにつきましての何らかの今後の方向づけというものがあるのかどうか。どうも今まで投資信託というのは、どうしても親会社というか、系列会社の証券会社との関連が重視されて偏る、非中立的になる面があるのか、ないのか。そういった点は今後心配しなくてもいいのか。

それから、こういう間接金融商品を利用しようとする事業者との関連性について、顧客の立場から見ていて大丈夫なのかどうか、そこらへの信頼性を確保するためのいろいろな方策といったものが考えられているのか、あるいはそこらは全く心配ないのかどうか、もし、委員から教えていただければと思いますが。

委員

私は監督者ではありませんので。私は個人的な見解としたら、みんな法律体系も違っているわけですから、完全に独立分離すべきだと考えております。

ですから、いまは、例えば「野村アセットマネジメント」が野村證券とどういう関係があるかというと、おそらく全く関係はもうなくなってくると思います。ただし、現在、社長はまだ行っておりますけれども。今後はそういう関係はなくなってくるし、それから、もう1つは、投資顧問法をつくるときに受託者責任ということが非常に強く言われまして、概念としたらわかっているのですけれども、まだまだ実行されていない。事実、それで訴訟が起こったというのは日本には1つもないわけです。アメリカだったらすぐ起こるような事件が非常に多いわけですけれども、まだ起こらないということは、これからの問題だろうと思います。

そういう点からいえば、例えば投資顧問会社にしろ、あるいは投資信託の会社、いまはみんな合併しておりますけれども、完全な国際競争になってきます。例えば日本の証券会社でも投資信託は自分のグループの会社のつくった投資信託よりも、むしろ、例えば「野村アセットマネジメント」の投資信託よりも、野村證券はフィデリティのほうをよけい売っているとかというようなことは、やはりマーケット対応ということになってきておりますので、そういう点は僕はマーケットからも徐々に変わっていくと考えております。

それから、あとはドイツのことでちょっと質問です。以前いただいた資料にもあったように思うのですけれども、現在の株主構成がどうなっているかということです。先ほどの委員の質問にも入っていますけれども、例えば個人株主の数はどのくらい増えてきたのかとか、あるいは投資信託はどのくらいあるか。投資信託の内容も相当これは個人が入っているのではないかと思います。それから、外国の年金であるとか、海外の機関投資家がどのくらいになってきているかというような、おそらくドイツは日本ほどの明瞭な資料はないかもしれませんけれども、株主構成というものがこの間でどう変化したかという資料があったら、教えていただきたいと思います。

事務局

本日、ドイツの株式市場、税制につきまして、簡単に御説明させていただいたわけですが、私ども、ドイツのマーケットというのは、委員、一番御承知だと思いますけれども、例えばロンドン、ニューヨークとか、東京と比べても、どちらかというと小ぶりなマーケットということで、あまりこれについてどうかなという感じがあったのですが、簡単に資料をつくらせていただきました。今日、いろいろな先生方から御質問が出ておりますので、次回、ちょっと時間があくかと思いますが、いまの御質問等を踏まえまして、もう一度資料を整理して、御説明させていただきたいと思います。

委員

先ほどから出ている預貯金と株が中立であるべきなのか、どっちかを優遇するのかというのは、非常に難しくて、あまり考えてもしようがないといいますか、イコールフッティングというのは性格が違って考えられないですね。リスクということで考えますと、株式はリスクを取っている。預貯金の場合は金融機関の倒産というリスクに対しても預金保険機構で保証されているわけですね。株式はいま何もないと。私は株の譲渡益に格別の優遇は要らないとは思うのですが、日本の状況を考えますと、リスクマネーが供給しやすい状況はつくる必要があるのではないかと思っています。それから考えますと、損益通算、譲渡損を翌年以降に繰り越す制度は私は賛成です。導入すべきだと思っています。これが1点。

それから、もう1点、イコールフッティングという観点でいうと、株は売買時を選択できるわけですよね。預貯金は必ず発生しますけれども、株は売買時を選択できるわけで、そういう状況のもとで例えば今回導入された100万円の非課税というのも非常に妙な制度だなと思っています。ですから、あれは私はあまり賛成していません。売買時を選択できるということから考えると、税率が20%で預貯金と一緒である必要は全然ない。このことは意味がないと思うのです。そこから先はよくわからなくて、26%と20%、あるいは20%より下なのか、ちょっとそこは何とも言えないのですが、将来的にはやはり金融収益は一元的に課税する方向を目指すべきだと思っておりますので、それから考えると、将来的には預貯金と同じになっていくのかなということですね。

それと、もう1点、みなしで源泉分離課税というのはやめるべきだと思っています。

委員

いまの委員のおっしゃったとおりで、いまみたいなかけ方をしていると、当然比較できないですね。これは非常に難しい議論になると思うけど、中立・公平を言うのだったら、僕は総合課税が一番筋だと思いますよ。つまり全部同じ種類にして、かつ、損益通算とかロスのキャリーオーバー等々を認めてやるということでリスクの補償をしてやるというのが、おそらく筋としては一番すっきりしているし、アメリカ型になるのかと思いますが、これに対してまた証券業界はかなりいろいろな点で抵抗しますよね。つまり、口では「そのほうがすっきりしていますから、ぜひ……」なんてリップサービス的なことを言うのだけど、いざとなると、また「株主離れが起こる」とか、「申告させられては皆さん寄りつきませんよ」なんていうことを脅す人もいるわけです。

そこで、一挙に総合課税というのは難しいから、やはり僕は申告分離というのをまずステップにして、しばらくの間それでやっていて様子を見るというのがおそらく公平・簡素だと思います。

そこで、先ほどの委員は冒頭、税制も問題だとおっしゃいましたよね。どこがいま問題ですか。

委員

いまの税制は、老人マル優もそうですけれども、やはり貯蓄優遇であることは間違いないわけです。投資優遇ということは、国民経済的な、あるいは日本の国際競争力とか、企業競争力とか、そういう立場ではなくて、証券業界のビヘイビアが悪いとか、信頼感がないとか、そういうことにすりかえるというのは間違いで、やはり税制は税制としてきちんとすべきであると考えます。

それから、あと具体的にどうするか。・・・もちろん、きちんとした申告分離にすべきであると。その場合、条件は、先ほどの委員の言われるように、はっきり損益通算できちんとやる。これが筋だと思います。

それから、税率の26%というのは、ちょっと僕は論外だと思いますけれども。

委員

論外というのはどういうことですか。

委員

高すぎるということです。優遇になっていないわけですから。だから、その問題をどうするかということは、まだ議論を……。証券業界でも政策委員会でいろいろやったけれども、この間レポートを見たら、非公開になっているんです。要するにまとまっていない。従来のことを勉強したというだけになって、こういう考え方もある、こういう考え方もあるという状況、現実はそういうことです。ただ、私自身はやはり申告分離にして、それから損益通算。そのかわり分離課税の問題はいくらにするかということは検討する余地があると考えております。

それから、もう1つは、我々実務家から見ると、やはり二元的所得税論というのは、極めて現実的であると考えているのですが、税調などの先生方の御意見は、ここでこれが出てきたということは、ここはこれでいこうかと、こういう意思と考えてよろしいのですか。

委員

これは学会でも7、8年前から登場した見解なんです。特にヨーロッパの学者が多くて、特に北欧に適用されたという、前から理論的にあって、どうしても利子を強化するとキャピタルフライトというのが起こる。それを避けつつ、しかしやはり担税力というのに目をつけて、労働所得は累進でもいいではないかと。労働所得の一番下の税率にフラットで資本所得にかけろというのが筋ですよね。だから大体20%ぐらいやっているわけです。

ただ、問題は、総合課税の思考に慣れている人から見ると、不労所得に甘すぎるではないかという議論ですよ。そこをキャピタルフライトを防止して、実現的な話としていいじゃないかということが言えるかどうかですね。ただ、これはもうすでに行われていますから、私は包括的所得税と並べて議論の余地はあると思いますが、かなり斬新的なアイデアだから、どうですかね、すぐ行くかどうかわからないけど、議論は大いにすべきだと思っていますから。

委員

あと2つ質問ですが、1つは法人税の問題です。利子と配当とで取扱いが違うということで、これは企業としてみたら、資本調達をする場合に、非常に大きな問題点になっていること、この問題をどう考えるかということが1つ。

もう1つは、総合課税一本にするというのが一番だというのだったら、「聖域なき構造改革」と言っているのだから、納税者番号制度というような問題も思い切ってやってしまったらどうか。では、それで行きましょうということになったら、誰も現状においてはまだ異論がない。実施段階になったらいろいろな意見が出るかもしれませんけれども、そこまで踏み切れるのかどうかという問題。2つの質問ですけれども。

委員

質問ですか。御意見でしょう。

委員

意見でいいです。

事務局

事務方のほうから、いまの二元的所得税の資料でございますけれども、これはたしか前回ちょっと御質問がありまして、そういう関係で資料を用意させていただいたもので、基本的にそれ以上のものではございません。

それから、もう1つ、これは言うまでもないと思うのですが、私自身がよく間違えるので、念のためということで、議論をスムーズにする観点でございますが、損益通算という言葉がございまして、よく私どもは縦通算、横通算という言い方をするときもあるのですが、この資料にもありますように、正確に言うと、損益通算というと、ある1年における、例えば株の益については損と損益通算する。それから、例えばこれはアメリカだけが特例として認めているようでございますけれども、株の損が出た場合に、給与の一部と損益通算する。これを通常「損益通算」という言葉で言っております。

それから、いまよく議論になっておりますのは、ある年において株の益と損を通算して、損が残った場合に、それを翌年以降に繰越しを認めるということがございまして、おそらく諸先生ははっきり区別して使っていただいていると思いますが、念のために、議論があとでこんがることのないように、ということで申し上げさせていただきたいと思います。

委員

やはり伝統的に所得税をずっと見てきていた立場からすると、この二元的所得税論、勤労所得の最低のところでというのは、何としてもどうも頭に入りにくい。しかし、現実の7ページの表を見ますと、25とか30、ここらの数字になる。これは非常に結構なことではないか。それは日本が最低税率が低すぎるというところに問題がある。本当は日本の勤労所得者の最低税率だって20ぐらいでいいとは思いますけれども、現実にはかなりそこは困難な問題があると思います。そうした日本の現実の累進構造を考えるときには、日本としては最低税率がそれだけ世界的にも低いということを考えれば、勤労所得の一番下ということでなくて、真ん中ぐらいの水準、それでちょうど20なり25ぐらいなら最適な税率ではないかなと、そんな感じがいたします。

それから、究極的には総合課税ということであれば、納税者番号ということになるわけですけれども、やはりどうしても昭和55年にグリーンカードといったものを、やるときは熱狂のうちに国会も通ってしまったけれども、気がついたら何となく物騒だということで、結局、6年後ですか、7年後ですか、法律が廃止されてしまったという現実はどうも引っかかる。そこはよっぽどの、納税者、特に資産所得者のアレルギーといったもの、そういった点を非常に現実的に考えて対処しないと、また同じことにならないかという大変よけいな心配をするわけでございます。

したがいまして、納税者番号なり何なりという非常に正面切った、これはまさにそうあるべきだとは思いますけれども、これだけいろいろIT化が進み、いろいろな技術的な点も開発されている。それから、国税庁ではKSKシステムがかなり完備しつつある。そうしたものを技術的に最大限活用することによって、実質的に総合できるような方向、そうした現実的な方向といったものも考える余地がないかどうか。そうした点も含めて検討していってはどうかという気がいたします。

委員

税率に関してですけれども、いま先の委員は26%という水準が一口で高いとおっしゃって、他方で納税者番号などによって所得をもう少し総合的に把握する必要があるとおっしゃったのですけれども、その方向というのは、どちらかというとアメリカ的な、かなりぶれのある税率というか、一律ではなくてぶれのある税率を目指しているという御発言と、2種類のものが入ったような感じがするのですけれども、26%がぱっと高いとおっしゃった根拠というのは、どこにあるのかなと。つまり、いままでの源泉分離の世界からすれば、非常に煩雑であるとか、いろいろなものがあると思うのですけれども、20%と26%の差の問題について、とにかく業界の方は高いとはっきりおっしゃるのは、どういう根拠でおっしゃっているのでしょうか。

委員

非常に困る質問で、要するに、20%に比べて高いということに尽きるだけです。合理的な根拠は全くありません。また、20%が合理的かどうか、これもわかりませんけれども。

それから、総合課税と納税者番号はかなり矛盾しているということをおっしゃいましたけれども、ただ、それになっても二元的課税論というようなことになると、やはりこの問題について、また具体化した段階でいろいろな議論は出るであろうということを予測して、そういうことを申し上げたわけですが。

委員

前回も少し申し上げたのですけど、さっきの納税者番号の件に関連して1つあるのですが、やはり入れるとなりますとプライバシーの保護という問題があって、慎重に事を進めなければいけないのですが、それに対する先を見据えた研究といいますか、それがやはり私はどうしても必要ではないかなと。つまり、ないところに入れるわけですから、メリットとデメリットと両方あるわけで、そのデメリットのほうを何とか回避するということを基本的には考えていかなければいけない。

それから、前申し上げたように、いわばそういう番号制度がないことによる国際的な後進性という問題も少し考えなければいけないのではないかなと。

それから、先ほど、源泉分離がなくなって申告分離だけになるということで、課税が一歩透明性が高まると思うのですけれども、もう1つ、割引債のように匿名性のある商品が残っているということが、しかも国債でも割引のものがあるという、国も脱税を奨励しているといったらちょっと言葉が悪いのでしょうけれども、そういうようなものを1つずつなくして、金融商品としての質の高さというのでしょうか、そういうところを少し考える必要があるのではないかなと。

それから、前も申し上げた海外への所得の回避という問題ももう1つあるかと思うのです。

それから、もう1つは、勤労所得と不労所得というときの考え方として、私は先ほど言われた損益通算というのはなくてもいいとは思うのですけれども、税制の中立という問題がちょっと絡むのですけれども、もともと日本の国民がリスクを非常に回避する性格を持っているとよく言われているわけで、そういう性格を持っている国民に、いまリスク教育というのはあまりきちっと行われないまま、401kなんかもそうですけれども、国家的にリスクにさらしてしまう状況をつくり出そうとしているわけです。そういう状況の中で、税制としてある程度リスクを取るような国民性に変えていくのかどうかというところは、中立性という問題がもちろんある中で、少し考えないと、いまのままであれば、ほとんど小手先のことをやっても、私は変わらないのではないかなと思うのです。そこにおいて何らかの誘導性というか、方向性を持った考え方というのもあっていいのではないかなと。

それから、今度は事業会社のほうの問題ですけれども、配当が投資額に対してあまりにも低すぎて、それから、価格変動のリスクも取って、株に行く魅力がどこにあるのかという率直な話があって、いまだったら元本がなくなるよりは、金利が少なくても預けておいたほうがいいわということになる現実を、リスクを取ることによる見返りがどこにあるのかということを、実態として投資者になるべき人に与えないと、これはいくら税制を議論しても、私は何も進まないという印象を非常に強く持ちます。ですから、もしもいまできる税制の中でやるとすれば、せいぜい言えるのは、損益の繰越控除ぐらいしかないのではないかなという感じを持っています。

委員

いただいた『参考資料』の24ページ、これは前回もいただいたと思いますが、所有者別持株比率の推移がございます。要するに、これは長い目で見ますと、個人の比率というのは長期的にずっと低落してきているわけですよね。長期的に低落してきている間は、ずっと譲渡益非課税だったわけでしょう。原則課税になってから、むしろ上昇傾向に転じている。ということもありますし、下がっている受け皿がどこになったかというと、長期的に見ると金融機関ですよね。これが受け皿になってきて、そして、おそらく金融機関がもってきたというのは、そのプロセスを考えてみると、やはりそこで一応効いていたのは、それこそ損益通算だと思うのです。損をしたときに売却して売却益を出す。しかし、これが今度は株を持てなくなるかもわかりませんし、これが急速に今後減っていく可能性がありますよね。そこのところの受け皿がどこに行くのか。

それから、事業法人を見ますと、45年ぐらいまでは上がっていますけど、それからはもう水平ですよね。むしろ最近下がり気味かということになると、やはり大きい流れで見ると、今度、長期的に金融機関が低下傾向にあるところで、それから事業法人も持株を解消するということになりますと、これはどこが受け皿になるかというと、個人だけが直接というよりも、投資信託、年金信託、この辺が日本はアメリカなんかに比べて極端に少ないわけですよね。ここを通じて個人が入るような市場を本来はつくっていかないといけないのではないかなと。これは金融審議会のほうの話ではないかと思いますが。

そこではしかし信託のほうは20%の源泉分離だったわけですよね。そうすると、優遇されているという意味では、銀行と同じだと。そういうことになると、やはり先ほどのドイツの御説明があった規制緩和とか馴染んでもらう対策、非常にいろいろ教えていただいて勉強になりましたけれども、ああいういろいろな政策との関連でこれを考えていかないと、前回お話があったような、税法だけ変えてどれぐらい効果があるのだろうかという問題にまた戻ってしまうと思うのです。そういう大きい枠組みの中の一環として、そして長期的に大きな傾向がどう変わっていくか、あるいはそれをどう持っていこうかというプランの中で位置づける必要があるのではないかという気がします。

委員

いまの関係で会計的な観点からいきますと、金融商品の時価評価の基準が入ったあと、相当持合構造が解消しています。したがって、いま委員が言われたように、受け皿としては、個人か、外国人か、信託かという形になってくるわけですけれども、個人の投資家の場合、多分、上値は非常に重くなるので、とにかくちょっとでも上に上がれば、法人が売って解消しようという方向になりますので、これから個人が株のリスクを取るのは、非常に構造的に多分難しいのではないのかなという実は感じを持っています。

その中で、もう1つ、個人はそういうことで何らかの優遇が必要なんですけれども、年金信託のようなものになってきますと、フィデューシャル・デューティーといいますか、そういう年金を受託する人の誠実度というものを担保するような制度がやはりないと、こういう運用というのが非常に難しくなる。ないしはそこへの信頼感というのがどう社会的にこれからやっていけるのかなと。さっきも言いました401kなんかもそうですけれども、証券会社を別に悪いと言うつもりはないのですが、回転売買のような形のものがまだ根付いていますと、非常にその辺行き場のない状況になる。その辺がやはり手がつけられないと、ここの議論とはちょっと違うのかもしれないのですけれども、やはりその辺もどうしても手を打たなければいけないのではないかと思います。

委員

いまの点に関連するのですけれども、時価評価がかなり株式持合を解消する方向に働いていることは確かですし、同時に、今度、株式の保有規制というのがもし実現いたしますと、2004年ぐらいまでに相当の銀行からの株式の放出というのが予想されまして、その意味で、本当にその株式をどういうところに受け皿として日本の金融システムが持つのかというのは、非常に喫緊の重要なテーマになってくると思います。

その点で、やはり私は、先ほどの委員もおっしゃいましたけれども、投資信託とか確定拠出型年金とか、こういった金融仲介機関を通じた形で、個人が株式を持つということと同時に、そういった新たなパイプという部分を相当太くしていくということは、非常に重要な政策的な目標になっていくことは確かであり、その点について税制でどういうふうに考えていくのかというのが極めて重要なテーマ、ここ2、3年で考えなければならない重要なテーマになってくるとは思っております。

委員

一言だけちょっと聞きたいのですが、それは税制で考えられる問題なのでしょうか。それとも、先ほどの委員がおっしゃったようなフィデューシャル・デューティーとか、もう少しいえば、投資信託に関する国民の信頼に関するインフラストラクチャー、そういうようなものも含めて、どこでやったらいいのかというのが少し不安なので。

委員

税制での対応というのは、やはり一部にすぎないと思いますね。やはりフィデューシャルルールの問題とか、様々な制度的な要件をそろえて初めて税制の問題を議論することに意味があると思いますので、基本的には、やはり企業そのものがROEを向上させていって、魅力的な投資商品になっていくということが基本的に重要だと思いますけれども。

委員

先ほどの図を見ていますと、外国人が最近増えているのですけれども、若い学者が誰が一番株式でうまく儲けたかというのを見ますと、一番儲けているのは外国人である、一番損しているのが個人であるというのを、売買のデータから全部推計しました。そういう意味では、個人がみんな損しているのがいままでの実情だと思うのです。400兆円で国内が全部それで買うかというと、やはり海外の人が張ってくる可能性はありますから、そういう意味では、国内だけではなしに日本の国民もやはり海外で運用しなくてはいけないというところがあると思います。国内だけで考えるというのは、ちょっと違うような気がします。

それから、これまでの日本の金融資産の選択で、3年ぐらい前までのデータのプールクロスセクションとタイムシリーズでいきますと、やはり利便性というのが結構効くわけですね。ですから郵便貯金が、それから最近は安全性が出ています。ですから、税というのは、たしか前にやった推計ではほとんど効かない。株でいけばそれの収益率がほとんど説明しますし、あと利便性がほとんど説明しましたので、やはり少しマイナーなところかなと。ただ、最近のところまで全部含めてきちんと推計し直さなければいけないですが、すべての商品が同じ利便性だとして買えるのかという状況と、そうではない状況では、やはり少し違うと思います。

それから、もう1つは二元的所得税論ですが、これは資本所得と勤労所得になりますと、西欧の場合に、例えば本来は勤労所得になるものを、例えば資本所得の形式で働いている方に渡すとか、そういうことが起こってくるのではないかと思いまして、大企業ですとすぐそういうことができますし、中小企業ではなかなかできないような気がしまして、そういう点がもしおわかりになったら教えていただきたいのですが。

委員

関連して、私もそんなに専門ではないのでお聞きしたいのですけれども、二元論というのを、説明を聞いていると、2種類の二元論があるように聞こえるのです。1つは、資本に課税するのか、それとも労働が生み出す付加価値に課税するのかという意味での二元論というような話と、それから、逃げ足が速いから、遅いからというので分けている二元論というのと、何か2種類あるような感じがして、家賃なんかは一番典型ですけれども、確かに資本が生み出すのでしょうけれども、そんなに簡単に動かないでしょうというのが私の印象です。

もう1つの論点は、生み出す付加価値というところでかけるのですか、それとも、そうではないんですかというところは、ちょっとよくわからなくて、例えばデリバティブなんていうのも別にキャピタルが生み出しているものではなくて、極端にいえば単なるスペキュレーションをやっている。そこで利益が上がって、しかし非常に足が速いわけですよね。そういうものにも課税するのですか、課税しないのですか。そこら辺、一番最初の委員がお聞きになったことにも関連するのかもしれないのですが、ちょっと教えていただければ……。

委員

事務局もそこまでフォローしていないでしょう。Cnossenの"Dual Income Tax"を引用されていますけれども、最近すごくこれは文献が出ているんです。特にスカンジナビア的な税の研究雑誌にはかなり出ていますから、本格的にやるなら、いまの質問に全部答えるならば、もうちょっと事務局にお願いするか、誰かここの有志に少し研究してもらって、いずれこれは議論するので、きょうはちょっと難しいと思いますが、やったほうがいいと思いますよ。

事務局

これは申し上げていいのかどうかわからないのですが、現在、OECDのほうで、そういった北欧諸国の二元的所得税につきまして議論が行われております。そこでいろいろな問題点とか、どういう背景で入れられたかということもいろいろ議論されているようでございますので、そういったものを参考にしながら、これもまた次回、今日は時間の関係で、準備できておりませんので、どこまで御説明できるか、できるだけやらせていただきたいと思います。

委員

配っていただいた『参考資料』の5ページを拝見させていただきますと、貯蓄の年齢階級別の残高を見ると、これは満60歳以上の方が53%というふうに読んでいいのかなと思いますけれども、この割合がこの10年、20年でどんどん増えてしまっている。半分以上が60歳以上の人の残高だということになると、これはこういう貯蓄に対してリスクを取るように仕向けていくということは、非常に難しいのではないか。もう老後を安全に暮らしたいということからすると、これはなかなか容易ならざる仕事ではないかなと思います。

そういった意味におきましては、個人にそれをさせるのではなくて、この間のお話の市場型間接金融みたいなのがそこで役割を果たしてくれるのかなという感じがいたします。リスクを取るように日本経済全体が向けて行くべきだと思いますけれども、現実は容易ではないという実感でございます。

それから、リスクというときに、非常に技術的ですけれども、売ったときに損が出たというのは、これは損ですけれども、持っていたらつぶれてしまってゼロになってしまったというそのリスクというのは、それはもう面倒の見ようもないリスクなのか。それこそ損益通算とかになった場合に、そこは最大のリスクではないかと思いますが。

委員

ついでにもう1つ言うと、リスクという問題のほかに、戦後ずっと言われてきた株式を持つ理由の1つに、インフレヘッジというのがあったわけですよね。いまはデフレの世界で、そもそも株式を持つインセンティブは非常に小さいわけですよね。そういうときに、あり得るとしたらば、本来だったらインフレヘッジに弱い債券のリスクというものが顕在化しそうな場合には、財務省及び政治がもう少し率直に言うといいますか、典型的に何が一番言いたいかというと、生保の例えば危ないという状況などをやはりきちんと言うようなことを、もう少し言っていかないと、銀行なども本当にどこまで浸透しているのか私もよくわからないのですけれども、そういうことも含めて、リスクということに対する、401kの例を引かれて言われましたけれども、各個人がどう思っているのか、私にはよくわからないのですけど。

委員

私もリスクを認めるような社会というのは、基本的に反対なんです。つまりリスクというのが、さっきおっしゃったように、単なる元本が割れたとかそういう場合に、非常に人為的ミスですとか経営責任を全く果たせなかったという明らかに人の失敗をこうむることが、リスクを負うという正当な根拠になるかどうかというのは非常にあいまいで、リスクとは何か、リスクを人に押しつけるという思想は、なかなか日本には浸透しないと思うのです。では何が正当なリスクで、いわゆる経営責任のマージンの中に入っているリスクというのは何なのか。そういうようなことが1つはっきりしないと、では老人も含めてリスクを認めましょうなんていうばかばかしいことを言っても、結局、その浸透度は非常に低いと思います。

年金の形になって確定拠出型年金になったところで、結果的には最後源泉は同じ問題に入ってしまうわけで、では年金がなくなった場合どうするのかとか、もうすでに公的年金の世界ではいろいろな問題が起こっているので、これを国民が受忍できるかどうかというのは非常に難しいところで、この委員会の範囲を超えるかもしれないのですけれども、みんなで挙げてリスク社会に行こうなんていうばかなことを言ってもしようがないのではないかと。だから税制だという話は避けていただきたい。

委員

もう時間があれですけど、僕は、リスクというのは現実に存在するわけですから、そのためにリスクを売買するのが大きな商売となってきている。デリバティブなんていうのはまさにそういうことですが、これは真正面から、しかもグローバルな問題になってきていますから、取り上げなければいけないのではないかという考えを持っています。ちょっといまの委員とは違うかもしれませんけど。

それから、この前欠席したときに盛んに言われて以来、市場型間接金融論というのが多いわけですけど、僕はこれはちょっと納得できない。要するに市場金融の中に間接型、直接型があるかという話であって、いかにも市場型間接金融の重要性というと、極めて従来の間接金融をモデファイしたような、極めて日本的な表現のような感じがいたしまして、これはまた先生方から、世界の金融学会でそういうことが1つの定説としてあるのかどうかということはお伺いしたいと思っておるのですけれども、我々実務から見ていると、何かよくわからないなと。例えば、あそこで出していた先生の表なども、点線でやったらいままでのことが、直接・間接にしろ全部市場というところへ入ってくるわけですね、というような感じが1つしております。

それから、もう1つは、先ほどの委員が言われたように、外人が買っているときはずっと個人が売っているんですね。ということは個人が結果としてみんな損をしている。ということは、投資のタイミングということに対して、日本は機関投資家がしっかりしていないという問題が1つと、証券界もこういう時期は必要である、投資のチャンスであるということ、1979年の株式の死と言われたときに、メルリンチはいまが投資のチャンスであるという大宣伝をしてやった。僕は野村にも98年の暴落のときから言っているのですが、なかなかできなくて、踏み切ったときは去年の2月で、すっ天井を買ってしまったという格好になっておりますので、もういまさら言っても仕方がないのですが、こういうことは今後きちんとしていかなければならないと思います。

それから、税制の問題は、きょうは議論が抜けていますけれども、相続税という問題は非常に今後の証券投資については、これは投資信託もそうですけれども、大きい問題ではないかということだけは申し上げておきたいと思います。

委員

市場型間接金融というのは、先日、池尾先生が御紹介されたのですが、蝋山先生が最初に使われた言葉らしいですが、基本的にミューチュアル・ファンドとかそういうイメージでございますね。ですから、直接金融の中にある金融仲介機関を使った資金仲介のパイプだと、詳しく説明すればそういうことになります。ですから、市場化していく、しかも金融仲介機関がかつての伝統的な銀行のようにリスクを全部負うのではなくて、リスクをテイクする主体は投資家であるというところが決定的な違いだと思います。

委員

さっきの委員のリスクのお話ですけれども、私はそれはリスクとモラルハザードの問題だと思います。だから、モラルハザードを起こさないような制度は別個にきちんとつくっていかなければいけない。ところが、それは投資家のほうから見ていれば、それもリスクの一部になりますから、だから非常に危ないということになるのですけれども、概念としては、リスクはリスク、モラルハザードはしっかりそれを起こさない制度をつくっていくというふうに、分けて理解できるのではないかと思います。

委員

ありがとうございました。小委員長の不手際で時間が延びましたけれども、今日はこれで終わりにしたいと思います。

それから、次回の小委員会については、夏休み明けにも開催したいと思います。具体的な日時は決まり次第ご連絡いたします。

それから、これまで3回にわたり御議論いただき、金融全般もしくは金融・証券税制全般に関する現状なり問題意識なりについては、一通りは確認することはできたと考えております。

そこで、次回以降ですけれども、ヒアリング等を含め精力的に審議を行っていきたいと考えていますが、その際には、まずこれまでの議論を整理して、問題意識を全体的に俯瞰できるようなものをお示しし、その後の議論の参考にしたいと考えています。いずれにせよ、石会長ともよく御相談しつつ進めていきたいと思います。

なお、次回の総会で求められれば、私のほうからこれまでの小委員会の議論について、簡単に整理して紹介することもあろうと思いますので、その点についてはよろしく御了解いただきたいと思います。

では、本日の小委員会はありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかに公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

金融小委員会