第1回金融小委員会 議事録
平成13年6月5日開催
〇委員
ただいまから、第1回金融小委員会を開催いたします。
石会長の指名により小委員長を務めることとなりました東京大学の奥野でございます。よろしくお願いします。
本日は第1回目の小委員会ですので、まず、私のほうから小委員会のメンバーの方々をお手許の名簿に従って御紹介いたします。
本日は御欠席ですが、慶応義塾大学の池尾和人さん。
一橋大学学長の石会長。
御欠席ですが、農林中央金庫理事長の上野会長代理。
政策研究大学院大学助教授の大田弘子さん。
日本総合研究所主席研究員の翁百合さん。
今日は御欠席ですが、東京大学教授の神田秀樹さん。
一橋大学教授の清水啓典さん。
まだお見えになっていませんが、東京大学助教授の竹内佐和子さん。
経済評論家の田中直毅さん。
まだお見えになっていませんが、地域総合整備財団顧問の津田正さん。
まだお見えになっておりませんが、東京大学教授の中里実さん。
まだお見えになっておりませんが、大阪大学教授の本間正明さん。
一橋大学教授の水野忠恒さん。
日本たばこ産業代表取締役会長の水野勝さん。
野村総合研究所顧問の水口弘一さん。
国際会計基準審議会理事の山田辰己さん。
慶応義塾大学教授の吉野直行さん。
以上、18名で審議を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
次に、事務局の紹介をお願いします。
〇事務局
おはようございます。本日、主税局長の尾原は国会審議のほうに行っておりまして、出席できません。今回新たに御参加いただいております専門委員もいらっしゃいますので、改めまして私から主税局のメンバーを紹介させていただきます。
私は審議官で税制第一課、所得税と法人税を担当いたしております。
それから、私の右側からでございますが、審議官の竹内でございまして、税制第二課、これは消費税関係。それから、税制第三課は地方税、資産税、それから国際租税課を担当いたしております。
それから、総務課長の小手川でございますが、いまちょっと国会へ行っておりまして、少し遅れております。
調査課長の池田でございます。
それから、税制第一課長の清水でございます。
後ろのほうになりますが、税制第二課長の真砂でございます。
税制第三課長の道盛でございます。
それから、国際租税課長の杉江でございます。
以上、よろしくお願いいたします。
〇委員
どうもありがとうございました。
続きまして、総務省、お願いいたします。
〇事務局
私どもの自治税務局長の石井も、ちょうどいま緊急経済対策関係で総務委員会で地方税法の改正審議が行われておりますので、本日欠席をさせていただいております。そのほかの自治税務局のメンバーを紹介させていただきます。
小室企画課長でございます。
株丹市町村税課長でございます。
それから、後ろのほうでございますが、岡崎都道府県税課長でございます。
井上固定資産税課長でございます。
田中資産評価室長でございます。
宮地税務企画官でございます。
以上、よろしくお願い申し上げます。
〇委員
それでは、審議に入る前に、事務的な点についていくつか申し上げたいと思います。
まず、議事規則により、小委員長はあらかじめ小委員長代理を指名することとされておりますので、私のほうから小委員長代理を指名いたします。小委員長代理は、まだお見えになっておりませんが、中里委員にお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
次に、小委員会の運営等について申し上げます。
まず、随行者の出席でございますけれども、総会同様、この小委員会でも御遠慮いただき、会議への出席は委員御本人に限らせていただきたいと思います。よろしゅうございましょうか。
また、委員の間で十分に議論を練っていくという点からも、総会とは異なり、各省幹事の方についても出席は御遠慮いただくこととします。
次に、議事録の公表でございますが、小委員会の議事について、会議の公開は行いませんが、議事規則により、議事録が公表されることとなりますので、あらかじめ御承知おきください。なお、自由な審議を確保するため、当面、発言者の氏名は明示しないこととしたいと思います。
また、会議終了後、原則として私が記者会見を行い、議論の模様を紹介していきたいと思います。
最後に、総会との連携については、小委員会における審議の状況について、適宜私のほうから総会に御報告させていただきたいと存じます。
以上でございますが、何か御意見がございますでしょうか。
では、続いて石会長より、小委員会設置の経緯等を含め御挨拶をいただきたいと思います。石会長、お願いいたします。
〇委員
おはようございます。今日は最初でございますので、この会がなぜ持たれたか、あるいは今後どういうことをお願いしなければいけないかということを、かいつまんで申し上げたいと思っております。
年初来、株価が落ちたということもあって、株価対策ということで、自民党を中心に様々な議論が出、特に証券税制という言葉がマスコミに踊っていた時期もございました。そのたびごとにいろいろなアイデアが出てきて、我々もちょっと気にしていたこともあったのでありますが、言うなれば対策という形で税制をいじくるということについては、税調は年来反対でございまして、やはり税調らしい議論というのは、税制の基本的な仕組み、あるいは基本的な原則に沿って、公平・中立・簡素というような視点から議論する。これが筋ではないかと思っておりました。そういう意味で、いつかそういう視点から議論をしなければいけないと思いつつも、小泉内閣の発足等々がありまして、時間的にはかなり遅れたと思います。ただし、今日以降は、最強メンバーを集めましたので、本格的議論をこれからぜひお願いしたいと考えております。
そういう意味で、広く、例外なく証券・金融に絡む税制問題を審議していただけたらいいと思います。そういう意味で、あえて「金融小委員会」という名称にいたしました。実は金融課税小委員会というのは数年前に立ち上げまして、それなりにいくつかの結論を出し、ある重要な指針をつくったとは思いますが、今回、あえてその金融課税小委員会を活用せず、金融小委員会という形で別途新しいメンバーにも加わっていただきまして、本格的に金融を取り巻く、その金融も大きくとっていただいていいと思います。例えば、金融から出てくる所得、言うなれば利子、キャピタルゲイン、配当も含め、そういうところの課税の取扱いが著しくばらばらでありますし、あるいは個々の金融商品についても、これまたいくつか問題も抱えております。
それから、戦後、この税調でいろいろやってきた中で、難しい問題として総合課税か分離課税かという問題、これはありますよね。総合課税というのは、遠い目標と考えつつ絶えずできない。当面の目標としては分離課税へいくしかないじゃないかというような形でずっと来ておりますが、やはり議論はしなければいけないと思っています。実施になりますと様々な難しい問題があるから、フィージビリティは高いとは思いませんが、ただ、ほかの国でもやっていることでありますので、議論は一応する必要がある。と同時にそうなりますと、制度的担保として納税者番号、この議論も避けて通れないというようなこともございまして、広い領域からいくつかの問題を取り上げて、鋭意御議論いただきたいと考えております。
あるいは、さらに資産課税にまで及んでも一向構わないと思っております。やはり資産の中に金融所得的なものがいっぱい入るわけでありますから、フローとストックの関係から見ても、税制の議論は避けて通れないと考えております。
そういうわけで、あえて2つ申し上げたのは、税制の基本原則に沿って御議論いただきたいということと、幅広く例外なく金融・証券に関する御議論をいただきたいということであります。
今回、金融の御専門家の方も随分入っていただきました。それは税制だけの狭い視点にかかわらず、その辺の議論も踏まえてということであります。おそらく郵貯絡みの話等々も出てこようかと思いますので、そういう連携も深めつつ自由闊達に御議論いただけたらと思います。
何せここはヤングパワーが非常に、ヤングと言ってもそうでもないんだけど、並みのレベルからいうとヤングであると思いますが、その方の積極的な御発言をいただきたいと思います。強力な座長も調達いたしましたので、ここで皆さんの中で自由闊達な御議論をいただきたいと考えております。ではよろしくお願いします。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、本日の審議の進め方ですが、あらかじめファックス等で御案内しておりますように、2点に分けて議論を進めたいと思います。
まず初めに1番目ですが、近年の金融関連税制の動き、緊急経済対策に係る税制上の措置、これまでの税調における金融税制についての議論の概要について、事務局より説明を受けたいと存じます。続きまして、その後自由討議を行いたいと思います。
それでは、まず本日の審議に入って、近年の金融関連税制の動き、金融経済対策に係る税制上の措置、これまでの税調における金融税制についての議論の概要について、事務局より説明をお願いしたいと思います。
〇事務局
いくつか資料を用意しておりますので、沿って御説明したいと存じますが、まず、近年の金融関連税制の動き等につきまして、4文字で『説明資料』とあるものがございます。「金融小1-1」という資料でございます。ここで近年の金融関連税制と、その背景にあります金融・証券市場の動きを簡単に資料化したものでございます。先ほど石会長からもお話ありましたような、最近の株式譲渡益課税の議論につながるような動きがここでちょっと御紹介できるかと存じます。
まず、昭和62年から元年の頃、消費税の導入を含みます抜本的税制改革で資産関係は大きな改正が行われております。所得・消費・資産課税全般にわたっての抜本的改革ではございましたが、この中で資産性所得に対する課税の適正化というような観点から、まず利子につきましては、それまでいわゆる一般的なマル優制度、非課税貯蓄制度がございまして、個人貯蓄の6割ぐらいが非課税貯蓄制度の適用を受けて、非常に課税ベースが狭められたというようなことから、これの廃止が行われ、それにかわりまして、利子については一般的な源泉分離課税制度が導入されたわけでございます。
この背景としては、抜本改革の中で幅広い議論が行われたわけですが、さらには、当時、それまでの国債の大量発行や金融の国際化の中で、いわゆる前川レポートの中で、内需拡大というような観点から、非課税貯蓄制度の廃止を含めた貯蓄優遇制度の抜本的な見直しというような提言も見られたわけでございます。
それから、株式の譲渡益課税につきましては、それ以前は原則非課税、年間50回以上、かつ20万株以上という大量に売買したような場合を除きまして、原則として非課税になっておりましたが、これも資産性所得の課税の適正化という観点から廃止をされまして、かわりまして、御案内のように、譲渡益を申告していただいて、これに対して国・地方を合わせまして26%の分離の税率で課税する申告分離課税制度、あるいは株の売却価格の5%相当を利益とみなして、これに20%の税率で負担をいただく。売値から見ますと、1%課税、源泉分離課税制度が、それまでの非課税制度からの転換ということで、選択制ということで導入されたところでございます。
その後、平成に入りまして、金融制度改革、いわゆる銀行・証券の相互参入ですとか、金利の自由化等が進んだり、いろいろな動きが見られました。その中で、金融関連税制についてもいくつかの見直しが行われております。例えば平成8年には、有価証券取引税の税率の引下げに関連しまして、株式譲渡益課税について、源泉分離課税のみなし利益率を引き上げるというような形で適正化が図られております。
さらに、平成8年頃から、いわゆるビッグバン、金融システム改革の方針が打ち出されて、具体的に法律改正が行われております。その一番初めに外為取引の自由化が行われまして、国外送金を利用した課税の回避問題ということが非常にクローズアップされ、後ほどごらんいただきます当時の政府税調の金融課税小委員会でも問題の指摘がされまして、国外送金に係る調書提出制度が導入されました。200万円を超えるような国外送金なり、国外からの送金の受領等についての調書制度が設けられたわけです。
また、商法改正によってストックオプション制度が一般的に導入されることに伴って、それに対応する税制上の整備、あるいはビッグバンの中で、SPC(特別目的会社)ですとか、あるいは会社型投信の制度が導入されるに伴って、これに併せまして、こうしたスキームに対して、いわゆる導管的な取扱いを認めるような税制の整備が行われております。
また、こういう金融の動きとは別の流れではございますが、いわゆる電子化、情報化の流れがございまして、帳簿や書類等、これをコンピュータで保存することも認めるような電子帳簿保存法の導入なども行われております。
平成11年には、有価証券取引税、それから先物取引等に係る取引所税の廃止ということになりまして、併せまして証券税制全体としての適正化ということから、株式譲渡益課税につきましては、申告分離方式に一本化するという改正が行われ、改正法が成立し、法定されたわけでございます。その経緯につきましては、後ほど前の金融課税小委での議論等、また御紹介させていただきますが、こういう改正が行われました。
それが、ちょっと飛びますが平成13年、今年度改正に至りまして、株式市場の状況、あるいは経済の状況等を踏まえまして、この一本化については、2年延期をする、2年間は源泉分離課税方式を存続するというような改正が行われたところでございます。この間、平成12年にはエンジェル税制、いわゆるベンチャーに対する個人投資家に対する支援の制度が、平成9年頃から入ってきておりますけれども、さらに整備をされて、損失の繰延べや、あるいは公開に伴う譲渡益に対する4分の1という大幅な軽減をするような支援の制度も整備されております。
また、SPCですとか、投資信託等のいわゆる集団投資スキームの対象財産についても、一般化するような制度の整備が行われておりまして、それに対応した税制の整備が行われたところでございます。
それから、一番下でございますが、個人投資家の長期安定的な株式保有の支援ということから、長期所有株式に係ります少額の譲渡益、いわゆる100万円までは非課税とする制度を法案を決定いたしまして、いま国会で審議をしていただいているところでございます。
次のページでは、いまの1ページ目でごらんいただきましたような金融関連税制の動きの中で、株式譲渡益課税の適正化の経緯を図示したものでございます。申告分離課税の一本化につきましては、2年後に、平成15年の3月以降一本化されるという形で法律がいま法定されておりまして、一本化後のあり方について、後ほど出てまいりますように、与党の中でも議論が検討課題として問題提起されているところでございます。
続きまして、緊急経済対策関連の証券関連のところについて、簡単に御説明させていただきたいと思います。資料といたしましては、横長ですが、「金融小1-2」『説明資料(経済対策関係)』に沿ってごらんいただきたいと思います。
経緯を簡単に申し上げますと、「総13-2」という『緊急経済対策』、4月6日の経済対策閣僚会議の1枚紙の資料ですが、ございます。今年に入りまして、いろいろな証券市場の問題、あるいは経済の活性化というような観点から、いろいろ与党の中でも御議論がございまして、3月の9日には、与党としての緊急経済対策といったものが取りまとめられて、証券あるいは土地、いろいろな税制のみならず幅広い分野について措置が提言されていたわけでございます。これを受けまして、政府のほうでも経済対策閣僚会議で4月6日に緊急経済対策として取りまとめをして、金融再生と産業再生、不良債権の問題ですとか、あるいは証券市場の構造改革、いわゆる金庫株の解禁のような問題等もここで触れられております。
税制については、個人投資家の市場参加の促進等の観点から、真に有効かつ適切な措置について早急に検討を行い、結論を得るという形でここでは整理されたわけでございます。それを受けまして、番号は付しておりませんが、4月20日付で、自民党、公明党、保守党、与党3党の文書が取りまとめられております。『緊急経済対策に係る税制上の措置』ということで、ここで証券関係については4点ほど取りまとめてございます。これをごらんいただきながら、この4点に沿って経済対策関係の説明資料を整理させていただいておりますので、簡単に御紹介したいと存じます。
まず、1番目でございますが、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度、与党3党の取りまとめでは、3番目の番号についているところですが、法律を出しているので一番最初にお示ししておりますが、個人投資家による長期安定的な株式保有を促進するということで、現在の源泉分離・申告分離選択並存制のもとで、所有期間が1年を超える上場株式等について、少額部分を非課税にするということで、申告分離課税を選択した場合には、その年の長期所有株式に係る譲渡益から、100万円の特別控除を適用するというものでございます。適用は今年の10月1日以降の譲渡ということでございます。
昨年の証券・貯蓄の全国調査等によりますと、現在、1世帯当たりの株式の保有は、時価で大体589万円というようなデータが、平均ですが、ございます。600万弱持っておられると。
それから、年間にどのぐらい売り買いするか。たくさんされる人もいらっしゃるでしょうし、非常に長期の方もいらっしゃると思いますが、非常にマクロのストックとフローの統計などから見ますと、年間の売買回転率は3分の1回ぐらいかということになります。こういうことから見ましても、100万円の特別控除については、相応の効果があるのではないかと考えております。
この関連で、与党の取りまとめ文書2ページ目の3の(2)のところをごらんいただきたいと存じます。この少額譲渡益非課税制度の創設に関連しまして、さらに検討事項といったものがこの(2)で書かれております。ここにございますように、申告分離課税への一本化の実施時期及び一本化時における税率の軽減、譲渡損失の繰越控除制度の創設など、株式譲渡益課税のあり方について、抜本的な見直しを行うこととし、引き続き協議の上、早急に結論を得るということで、一本化後の譲渡益課税のあり方についてが、宿題として問題提起されているという形になっているわけでございます。
次に、金庫株の関係ですが、2ページ目は、今度の商法改正の概要でございますので、省略させていただきまして、3ページ目でございますが、ただいま議員立法で商法改正を、自己株式の取得につきまして、これまでは原則として禁止として、取得を償却目的等に限定していたわけですが、一般的な取得を認めるような改正が行われ、提案されているところでございます。
従来、この自己株式の取得に応じて、売った個人株主につきましては、市場で会社が買い入れれば譲渡益課税になりますが、相対で買い入れた場合には、留保利益の分配に当たるような部分は配当として課税されることになりますが、公開買付手続、TOBを通じて売却に応じた個人株主につきましては、市場売却の場合とのバランス等も考慮して、全体として譲渡益課税として取り扱うような仕組みがとられておりますので、今般の金庫株、自己株式の保有制限の撤廃に対しても、同様の措置を講ずるような手当てを講じようとしているところでございます。
4ページ目ですが、これはいわゆるETF(上場型株式投信)についての税制上の整備ですが、株価指数に連動して受動的な運用をするような投資信託を一般的に導入しようと。それによって一般の投資家の方が株に対して投資しやすくしようというようなことの改正が行われております。これに併せまして、税制上につきましても、現在、日経300連動型投信というのがございますが、これは取引所に上場されまして、それによって投資家は売却によって回収するということで、日経300連動型投信同様、株式並みの課税をするようなものでございます。
それから、5ページ目でございますが、いわゆる老人マル優の対象範囲の証券関係の部分の拡充でございますが、少額貯蓄、預貯金等のマル優の対象として、現在株式投資信託も入っておりますが、条件がついておりまして、運用資産における株式の組み入れ比率が70%未満ですとか、あるいは同一銘柄の株式の投資比率が5%以下というような量的な条件がございます。基本的な運用方針、安定した運用ということでございますれば、それぞれ商品性を認識して、投資される場合に、この量的な制限については、選択肢の多様化というようなことから、撤廃してもよいのではないかということで、撤廃させていただくものでございます。
続きまして、これから御議論いただきますに際しまして、以前、この税調で金融課税小委員会で、平成9年に中間報告が取りまとめられております。また、昨年、中期答申が取りまとめられておりますので、そこで金融関連のところでどのような御議論があったか資料を用意しております。お時間の関係もありますので、簡単に触れさせていただきます。
まず、平成9年の金融課税小委員会の中間報告、当時、いわゆるビッグバン、金融システム改革が行われ、それを受けていろいろ御議論があったわけでございます。フリー・フェア・グローバルといったような三原則に基づいた金融システム改革に対応して、いくつかの視点が言われていますが、1つは、新しい金融商品がいろいろ出てくるので、それに対して課税上の適切な対応が必要だというような観点、あるいは税負担の公平確保というようなことから、資料情報制度の充実といったことの必要性。それから、金融関連の所得、いわば足が速い所得ですので、そういったものが増えてくる中で、金融関係税制の税体系における位置づけ。例えば相対的に足の遅い事業や勤労による所得との関係といったことにも留意すべきだといったような大きな問題提起がございます。
その中で、当時進行しつつあったビッグバンに対応して、何弾かの対応というような形で整理がされたわけでございます。
まず第一弾は、外為法がビッグバンの先頭バッターということで出ていきましたので、それに応じて、先ほど御紹介しましたような国外送金に係る資料情報制度といったことについて、緊急対応を要請したというようなことがございます。
それから、第二弾は、証券税制の関係ですが、当時、有価証券取引税、取引所税について、政策的な廃止論、あるいはそれに対する反対論がございまして、そういう中での議論の整理をしております。有取税の取扱いについては、株式譲渡益課税の適正化ということも踏まえた全体的な議論が必要だといったような御指摘がございました。また、株式譲渡益課税につきましては、基本的に源泉分離選択課税を廃止して、申告分離課税に一本化することが適正化の方向であるというような方向を当時いただいたわけでございます。
また、当時新しく、先ほどごらんいただきましたように、ストックオプションですとか、あるいは金融持株会社、SPC、会社型投資信託といったようなことの新しい金融商品、制度が出てくる動きの中で、そういったことへの対応といったことを御指摘いただいたところでございます。
さらに、カードの普及等による番号の一般化などの状況も踏まえて、納番制度について、それから、一方で住民票コードですとか、基礎年金番号といった新しい番号整備の進展も見られた中で、新しい展開を踏まえて、具体的な積極的な検討というようなことを将来の課題として整理されたところでございます。
このほか、概要を後ろにつけてございますが、総合課税、分離課税の問題、例えば4ページですけれども、総合課税論の中でも把握体制が十分でない中で、実質的な公平の確保のために現在の分離課税、利子や株式譲渡益等についての分離課税ということを是認するというような、そういった整理とはまた別の視点として、資源配分の効率性といったような最適課税ということの考え方から、貯蓄が課税によって影響を受けやすいとの仮定のもとで、金融所得については分離課税が適当だといったような問題提起もされたところでございます。
それから、昨年の7月の中期答申の中の金融税制についての記述ですが、最初に概要を付けていますので、簡単に御紹介させていただきます。抜本的な税制改革以降、金融資産からの所得に対する課税ベースが抜本的に拡大した制度が確立されてきて、その中で、利子や株式譲渡益についての制度をフォローしたもの。2つ目の丸ですが、総合課税、分離課税の問題については、課税理論において個人所得課税の累進機能を重視し、包括的な課税ベースのもとで総合課税が望ましいとする包括的な所得税論がある一方で、さまざまな所得の性質に応じて、最も経済的に合理的な課税方法が必要であり、貯蓄に対する課税の影響などを踏まえ、金融資産に対する分離課税が望ましいとする最適課税論というような議論を整理してございます。その上で、個人所得課税の理念として総合累進課税が基本と考えるが、金融資産からの所得全般について総合課税を行うためには、各種の所得の性質の差異などに留意した上で、資料情報制度の充実、納税者番号制度の導入など、所得捕捉の体制の整備が不可欠であることから、現状においては、利子等について分離課税を維持することが現実的といったような整理もされてございます。
それから、2ページ目ですが、いろいろ各種の利子や配当、株式譲渡益課税について、それぞれの性格に即して基本的な考え方を整理してございます。具体的には後でごらんいただきたいと思いますが、例えば配当については、法人事業への出資ということで、事業参加的な性格を有しているというような整理。それから、株式譲渡益課税については、申告分離課税への一本化と言った上で、さらに本文のほうでは、株式と預貯金利子等の相違といったようなことについても議論がされてございます。
そのほか、従来からこの税調で御指摘いただいた生損保控除ですとか、あるいは非課税貯蓄、あるいは課税繰延べ商品といったことについても、問題提起がされております。
それから、3ページ目ですが、金融取引の多様化、複雑化という中で、(4)の2つ目の丸ですけれども、国内外における資産の移動が容易で、転々流通に伴い保有者、所得の帰属者が頻繁に代わり得る。取引把握や保有者の確認が難しいといった特徴、いわゆる足の速さを有しているので、金融取引の多様化、複雑化、さらに取引の国際化、電子化に伴い、金融資産からの所得に対する適正な課税の確保を図っていくことがより一層重要となるのではないかというような指摘がされているところでございます。
簡単でございますが、国税の関係は以上でございます。
〇事務局
それでは、続きまして、地方税住民税の関係につきまして説明をさせていただきたいと思います。
資料のほうなんですが、恐れ入りますがもう一度最初に戻って、『説明資料』をまずごらんをいただきたいと存じます。「金融小1-1」と書いています横長の『説明資料』の1ページでございます。この中で金融関連の税制の動き、地方税の関係といたしましては、抜本税制改革の利子の部分の3つ目でございますが、都道府県税の利子割の創設という部分がございます。この創設によりまして、それまでは総合課税をされた利子のみでの課税だったものが、老人マル優の対象などを除きました利子所得について、一律5%の税率でもって地方税住民税について課税ができるようになったということがございます。
すぐ下の株式譲渡益のところ、先ほど御説明がございましたけれども、申告分離と源泉分離の選択制が導入されたということで、15年の4月に一本化されるまでの間、これが続いておるわけでございますが、申告分離の場合につきましては、税率が26%になってございまして、そのうち6%が地方税住民税の部分でございます。他方で源泉分離の場合につきましては、税率につきましては20%ということで、地方税としては課税ができておらないという状況がございます。
『説明資料』のほうは以上でございます。
続いて緊急経済対策の関係でございます。これも横長の『説明資料(経済対策関係)』、「金融小1-2」でございます。内容的には、いずれもただいま所得税につきまして御説明があったとおりでございますが、このうちの1ページ、長期保有株式に係ります少額譲渡益の非課税制度につきまして、現在、地方税法の改正法案、国会のほうに提出をさせていただいて、審議中でございます。
同じく3ページのいわゆる金庫株の解禁、自己株式の取得・保有制限の見直しの関係での課税につきましても、議員立法での商法の整備法の中で、地方税法の改正部分がございます。
それ以外の4ページ、5ページの上場型株式投信あるいは老人等の利子所得非課税制度の範囲の拡大というものにつきましては、所得税のほうにならっての適用、地方税法独自に改正ではございませんけれども、所得税と同様の適用になるということでございます。
最後に、資料といたしましての『政府税調中期答申における金融税制に係る記述の概要』という横長の資料を再度ごらんをいただきたいと存じます。記述の概要の中の3ページ目に、個人の住民税の課題がまとめて載せてございます。いま御紹介申し上げましたように、62年の抜本的税制改革によりまして、利子割が創設をされたということ、それから、源泉分離と申告分離につきましては、ここでは13年度から一本化となってございますけれども、いまは15年度まで延長されたということでございますが、その状況があるということは申し上げたとおりでございます。
その最後の2行のところでございますが、割引債の償還差益、これはこの中でいきますと、8ページのほうにも若干記述がございますけれども、これは発行時に所得税につきまして源泉分離の課税が行われてございまして、住民税のほうは課税がされておらない状況でございます。また、同じく所得税での確定申告不要制度がとられております一定の少額配当、具体的には1回の支払配当の金額が5万円以下、あるいは年1回10万円以下のものということでございますが、これにつきましても、住民税のほうでは非課税ということになってございまして、中期答申のほうで適正化を図る必要があるというふうに記述があるところでございます。
簡単でございますが、以上、よろしくお願いします。
〇委員
ありがとうございました。
それでは、これまでの事務局の説明に対する御質問や小委員会の今後の進め方などについて、御意見などがありましたらお願いしたいと思います。特に石会長のほうから2つの大きな論点、1つが、幅広く例外なく議論するのだということ、それから、もう1つは、税制の基本、公平・中立・簡素等だったと思いますが、その基本に帰って議論をしてほしいという御要望がございましたので、そういうことも踏まえて、御自由にどなたからでも結構ですので、御議論していただきたいと思います。
〇委員
先ほど会長からお話のございました大きな方向、私はそれで尽きるのではないかと思いますので、あまり申し上げることはないのでございます。現在の経済構造からいたしますと、どうもいまは需要不足、消費も投資も需要不足、それは直接金融であれ、間接金融であれ不足気味で、需要の面が不足している。そういったときに、金融資産課税について、こういった若干軽減的な措置を行うというのは、どういうことでとらえたらいいのか。先ほど事務当局から御説明がありましたこの金融課税、昭和61年、62年改正で行いましたときに、前川リポートのお話がございましたが、そういった点を考えますと、いま、優遇とか軽減とかという措置を検討する時期なのかどうかという気も若干しないわけではないわけでございます。
そうした意味におきまして、100万円の少額譲渡益課税非課税というのは、問題もあろうかと思いますけれども、本来、考えてみれば、株式も含めまして譲渡所得課税というのは50万円控除があるわけでございます。この50万円というのは随分昔決まった金額でございまして、この間の税制改正で贈与税の非課税限度というか、これが60万円が110万円に上がったという改正が行われております。そうしたインデクセーション的な考え方、そして譲渡所得に対する課税の基本からすれば、まあ100万円というのはある意味では支持される水準でもあろうかという気もしないことはないわけでございます。
それから、今回のこの問題の検討のとっかかりというか、きっかけが、証券の市場対策、株価維持だということにもあるようでございますけれども、税制も含めまして、政策的に市場を振興する、株価を維持するというのは、どうも限界があるのではないかという気もしないわけではないわけでございます。しかし、一方、税制も含めまして制度が非中立的である、いろんな金融資産に対します課税の方式、その他諸々の制度がアンフェアで非中立的だということであれば、これはやはり問題ではないか。そうした点は検討を要する面があるのではないかと思うわけでございます。
では、いろいろな金融資産、すべて同じ扱いにすれば中立的なのか、それぞれの金融資産にそれぞれの特有な性格があるとすれば、そうしたものに応じた中立的な扱いということになるのではないか。そこは具体的なイメージ、制度が中立的であるかということは、今後の検討課題であろうかと思うわけでございます。
それから、他の金融資産との中立性という点とともに、この譲渡益課税の中での中立性というか、そう言っていいかどうかわかりませんけども、所得が生じた場合と損失が生じた場合、これの扱いの中立性という問題も検討していいのではないか。現在は申告分離、源泉分離がごっちゃになっていますから、そういう議論はできないわけでございますけれども、いずれ一本化されるということであれば、損失というものについて、どの程度リスクとして、所得と損失一体となって、そこを中立的に公平に対処できるという面もあるのではないか。それは横の同じ課税年度での話でもあるし、また過去にさかのぼり、将来に繰り越すという問題もある。そういった点も含めて、所得と損失への中立性という点での検討の視点もあるのではないかと思うわけでございます。
そうした意味で、先ほど会長から幅広くという御示唆でございました。まさに幅広く議論をし、公平・中立・簡素というのが税制の基本とされております。そういった観点に立って検討がされてしかるべきではないかと思うわけでございます。
これは当面の問題ですけども、少し将来の観点に立ってみますと、現在の経済情勢からすれば、財政再建を非常に急ぐということはなかなか選択が難しい方向ではございますけれども、いずれそれは出てくる。それはおそらく消費税の話になるのだろうと思います。そして、消費税の課税の問題が取り上げられますときには、消費と貯蓄といったものをどう考えるのか。最適課税論等々からしますと、もう消費課税に徹すれば、金融課税、貯蓄課税というのは課税しなくていいのだという考え方もあるようでございます。
一方、消費と貯蓄、これは中立的に同じように考えて課税をする。消費課税が充実強化されるんだったら、その際に貯蓄課税がどうあるべきかということも頭に置いて検討をしていいのではないか。それは貯蓄課税であり、資産所得課税の問題となる。そうすると、所得課税としては金融資産課税、これが先ほどお話がございました足の遅い所得、勤労所得等々との間でどういうふうな中立性を維持するのかという問題であり、それはもし総合課税、金融資産も中期的に消費税の課税充実といった観点からすると、その充実のためには、やはり総合課税というものを視点に置く必要があるのではないかという議論が当然あり得るわけでございますけれども、この10年、15年、20年を振り返ってみますと、そういうことで一生懸命20年ぐらい前にグリーンカード制度というのを導入してみたのですけれども、どうしても世の中の国民の皆さんの難しい感触に押されて、せっかく法律になったのに撤回せざるを得なかったという事情、こうしたものを考えると、なかなかすぐにもう1回ということもビビる面があるのでございますが、しかしそうも言ってはおれない。何とか納税者なり国民の個人の皆さん方の支持を得ながらできるような総合課税といったものがあるのか、ないのか。
調査会の場でも、私、時に申し上げたことがあるのですけども、金融資産所得の世界の中での総合課税というか、そうしたものが考えられないのかどうか。その世界で総合課税をする。しかし、課税当局との間で1つそこに仕切りがあるというものができるのかどうかということですが、それは究極的な総合課税、番号制度のもとでの総合課税という観点からすると、どうしてもそこは中途半端だと。それは堕落であるというふうにも言われるかもしれませんけども、現実的な対応としてまず一歩進めるという意味では、そういったいろいろな方式での総合課税といったものもあるのかもしれない。そうしたものも頭に置きながら、当面の課題に対処する。そうした検討を頭の片隅にその問題もやはりあっていいのではないか。これは先ほど会長のお話にもございました。当然のことだと思います。その場合でも、やはり現実的な検討が期待されていいのではないかと思うわけでございます。
〇委員
すでに非常に幅広い観点からお話しいただいたわけですが、金融課税小委員会という以前の委員会のあらまし、これを拝見しますと、一方で金融システム改革の3原則というのがあって、ちょうどそれに対して租税原則、公平・簡素・中立、これをどう合わせていくのかという問題が基本にあると思います。そこで、この委員会としては、一体どのあたりを眺めて議論するのかということが一番大事ではないかと思います。
資料を配付していただいたわけですが、緊急経済対策といった性格のものが出ている一方で、税制調査会の中期答申がある。非常に基本的な方針を立てるに当たっても、資料自体が混乱するような状況であるということですね。どのぐらいを眺めて議論したらいいのだろうかということが大事ではないかと思います。
例えば、非常に昔の例になりますけれども、シャウプ勧告、シャウプ税制を例にとりますと、これはもう50年も前の話です。当時の日本国の政府は、とにかくシャウプ勧告というものが減税を言ってくれるのを待ち望んでいたわけですけれども、資産の再評価はやりましたけれども、シャウプ勧告は全くそれを無視して、公平課税一本やりのいわゆる総合課税といった線で押し出したわけです。戦後の動乱期にある日本にそのような税制の勧告をしたということは、全然時代は見ていなかったということではあるわけですけれども、逆にいうと、現実の税制はどんどん変えられて、キャピタルゲインの全額課税、キャピタルロスの全額控除などというものは実際的でないので、政策的な税制でどんどん取り替えられていったわけですけれども、なおかつ、50年たっても議論の対象になるというのは、やはりシャウプ勧告そのものが長期的な視野に立った上で、公平な課税といった原則を徹底させた1つのモデルであると。だから、現実の税制はどう動いても、やはりあるべき方向はこうであるということを示しているから、何十年たっても引用されるような勧告であったわけですね。おそらくよその国では考えられないと思います。50年前の勧告などというものを持ち出してくること自体ばかげていると思われるわけですが、やはりそこの違いは、租税原則というものに立って物事を考えていて、あえて戦後の動乱期であるにもかかわらず、そういうようなものを出している。
そこで、現代のこのような非常に緊急な状況に置かれている中で、委員会としてはどういう方向といいますか、どのあたりをゴールに置いた議論をするのか。これが一番基本的に考えるべきものではないかなと考えております。おそらくその辺の考え方によって随分いろいろ議論の食い違いも出てまいりますでしょうし、委員会自体の中が混乱するということもあります。私もいま現在、どのあたりを見据えたらいいのかちょっとわからない状況ですけれども、そのあたりを考えながら検討をしていく。何度も会議が開かれると思いますので、だんだんそれによって、どのあたりを見据えた方向を出すものなのかどうかということは、自然に固まっていくのではないかと期待しております。
〇委員
事務局ないしは石会長のほうから、いまの決定に関しては少し御説明があるほうがよいのかとも思いますが、私の理解では、基本的には、かなり長期の金融税制一般を見据えた議論をするのだと。再来年の4月1日に証券税制が一本化されるわけですから、その前の秋ぐらい、つまり来年の秋ぐらいですか、までの時間をかけて、ゆっくりと長期を見据えるのだと。ただ、政治情勢が流動的なので、場合によっては緊急にどこかの部分だけ動かさざるを得ない可能性があると私は理解しておりますが、もし事務局ないしは会長のほうから補足がございましたら。
〇事務局
金融・証券関連税制ということで、いろいろな幅広い分野がございますし、金融のほうも非常に日進月歩で大きな動きがございますが、いまの緊急経済対策の中のその次の課題で出てきましたような証券関連税制で申しますと、株式譲渡益課税につきまして、申告分離へ一本化した後の課税のあり方ということが、政治といいますか、与党の中でも大きな検討課題になってございます。一本化後の制度というのは、かなり長期的な視野も含めて御議論いただかなければいけない部分ではないかと思っておりまして、ぜひその部分についても御議論賜りたいと思います。
一本化の時期が今年の税法改正で2年延期されましたけれども、かなり理論的な整理は前広に議論していただいたほうがいいのではないかと思っております。さらに、この一本化後の姿についての議論をなるべく早く、というようなことが与党の御議論の中でもございますし、国会での法案の質疑の中でもそういったお話が出てきております。総理や財務大臣、この一本化後のあり方について、政府税調でもちょうど金融小委の設置が決まってきた動きの中で、そういった議論もお願いしたいし、与党の御議論を踏まえて対応していきたいということを言っております。財務大臣は、特にできるだけ早く一本化というような御議論もあるので、秋に向けて、来年度改正に向けた議論というのが必要になってくるのではないかというような御発言もされているところでございます。
したがいまして、当面の大きな1つの御審議いただきたい柱としては、一本化後の株式譲渡益課税の姿というのがあると思いますし、その際にはおそらくいろいろな関連の問題、預貯金の利子との関連の問題とか、いろいろな御議論が出てくるのではないかと思っております。
〇委員
先ほど委員が言われたことについて、違和感が若干ございますので、その点から申し上げたいと思います。
先ほど優遇税制にかかわるお話の中で、サプライサイドと需要サイドのお話をされまして、いま日本では需要サイドが不足しているのに、なぜサプライサイドの話をするのだと、こういうお話でございます。川を挟んでこちら側と向こう側というふうに分けられないのが需要と供給の関係でございまして、現在ただいま何が問題かといえば、残念なことに、需要を喚起するような形のサプライサイドが立ち上がってこない。あるいは既成の企業なり既成の経営者というものに、そういう力量がないことがこうした全体的な停滞を招いているというのは、どうされるかはともかくとして、私はこの問題というのは大変根強くあると思っております。したがいまして、需要と供給を分けた議論というのは、私は正確ではないと。むしろ、現在、金融資産を保有されている方と、それから、我々の社会が望むべき経営者とでもいいましょうか、いろいろな経営資源を組み合わせて現実に立ち向かわれる方との間に乖離がある。金融資産を保有しておられるからといって、経営能力といいますか、そういう社会に対してチャレンジする人との間に乖離がありますから、これをどのようにつなぐのかということが極めて重要だと認識いたしております。
そして、緊急経済対策というものが取りまとめられたいろいろな政治の事情はあるのでしょう。ただ、重要なのは、商業銀行の貸出資産の質が異常に低下している。特定の分野、特定の業種、非製造業の、しかも広く土地に絡む分野において融資されたものが、不良債権という形になって、貸出資産の質が御存じのように非常に低下しているという現状から考えますと、この延長線上に、要するにファイナンスの課題を日本の商業銀行が担う形で21世紀初頭の日本経済はやはりあり得ないというのは、残念ながらこれは認めざるを得ないのではないかと思います。
ということは、先ほど申し上げました金融資産の保有者が一方に、これは川の向こうと手前みたいに、ここは明らかに線が引けるわけでございますが、他方、経営能力を持った人を十分オルグできないという中で、エクイティにかかわる証券を通じたつなぎというものが、日本の活性化に不可欠であるというふうに私には考えられます。そういう点からいきますと、証券税制のあり方についての考察は極めて重要ではないかと思います。
それから、もう1点、公正・中立・簡素について、これは別に異論があるわけではないのですが、税制全体としてこのことは言われるべきであって、特定の分野の中において、公正・中立・簡素を言ってみても、全体としてそうでない場合にはゆがみが多いということを私はもう少し正面から議論すべきだと思います。そういう意味からいくと、租税特別措置は全廃。そして課税ベースを広く取る。そして納税者番号を通じて所得把握についても明確なものを入れる。そして、国民の納税者の公平感を背景において保障するならば、あとは私は極めて簡素の税のあり方というものが、税法学者が失職するような、あるいは税理士が不必要な簡素な税体系というものが、我々が目指すべきものだと思っておるわけです。そういうシステムがあって、初めて全体として中立性とか公正というものが確保されるのではないかと思います。
アメリカでギングリッジというスキャンダルで失脚した男がいるのですが、彼の周りで税制改正をやっていた議論を聞きますと、日本でいえば、はがき1枚で納税できるというシステムを入れたいと。これが国民との契約とか何とかと当時言っていました。そういうシステムにございましたけれども、おそらくそうした税制こそが今望まれているものではないかと思います。
〇委員
何点かダブるかもしれないのですけれども、問題意識として私としては3つぐらいあるのではないかと思っております。
1つは、いわゆる平成9年の金融課税小委員会で議論した段階と現在がどのような違いがあるのかという、新しいフェイズの違いというか、それをしっかりとはっきりさせるということと、2番目に、日本の税制そのものが持っている、先ほどの委員はシステムという言葉を使われたのですけれども、システム化に移行できない原因は何か。いわゆる税制そのものが持っている構造的な課題というか、そういうものをどのようにここで新しい判断基準に変えるか。いまおっしゃった点としては、システム化に移行できない問題として、先ほど資料にもございましたけれども、選択制の問題が大きく言えば低所得層と高所得層のこの基準を人為的に分けてしまっている。少額か高額かというこの基準が非常にわかりにくい。少額の例えば投資家というのは、貯蓄の一環としてやっている傾向が強い。高額の人は投資の一環としてやっている傾向が強い。では、どこで分けるのかというような問題があいまいに置かれているというようなことについていえば、この一本化というのはそう簡単な問題ではなくて、どのような形でこの基準を整理するかという基準の問題ですね。
3番目に問題意識として私の頭にございますのは、現在、金融インフラの失敗というか、金融インフラの未成熟化という問題が起こしているテーマ。最近のインターネットなどの普及ですとか、ペイオフとか不良債権の問題、こういう実体経済から起こってくるプレッシャーに対して、税制としてどの程度失敗の問題を内部化するか。これを全部内部化したのでは、租税制度そのものが成り立たないという意味でいけば、金融インフラとの関係をきれいに分けることができないのかという問題。この3つぐらいの点があるかと思います。
1番目の点だけ補足いたしますと、やはり現在と3年前か、平成10年の段階との違いというのは、まさに、新たな介入手段をいくつか政治的な形で提案されている。それは土地の問題ですとか、それから業界再編の問題ですとか、そういうところで一種の資金移動をスムーズにするようなものができないかと。これはいわゆる市場の活性化という観点だと思うのですけど、これは新しいテーマではあるものの、前向きに対応するべき話であろうと思います。
ただ、2つ目の課題として、損失の補てんの問題ですとか、あるいはショックをやわらげる問題ですとか、新しい商品に対する税率の設定、このような分野において、どの程度税制として対応すべきか。生保の例などもございますけれども、あれだけの普及をした背景にやはり優遇税制があったわけですね。しかしながら、結果的にそれが何らかの形で生保システムの信用をやや助長したというか、信用を創造しすぎた面がありまして、そういう問題に対して、もちろん税制のせいだとは言いませんけれども、何か存在しない信用を付与するようなことを税制として行うというのは、過度な介入にならないのかというような問題点が残るのではないかと。
さはさりながら、もちろん、金融市場を活性化するというその側面はございますので、そこをどの程度、どういう論理で税制の基準を持っていくかというのが2つ目でございます。
それから、3番目について言えば、いまおっしゃったように、分離・総合の問題について言えば、よりシステム化とか簡素性とか申告のしやすさ、あるいは納税のしやすさという問題について、いままでは所得の階層性という問題がどうもネックになってうまく図られないという点について、どのようにしたら、見えやすい、システム化された租税制度というようなものを21世紀に対して提案できるのかというようなこと。その辺をちょっと私としては感じておりますので、先回の議論よりはもう少し踏み込んだというか、そういう方針というか、そういう議論にしていきたいと思います。
〇委員
さっきから出ている議論として、証券市場の活性化といいますか、あるいはもう少し非政治的な言い方をすれば、間接金融から直接金融へ時代の流れが移りつつあるのだと。だから、そこを誘導すべきなのか、それとも、それは証券市場とかそういう市場自体の市場インフラの問題であって、税制としては中立であるべきかということが、1つ大きな問題だろう。
それから、もう1つは、その中で、いわゆる金融商品の間の中立性なのか、所得全体を通じた中立なのか、そういうこととの関連でいったときに、利子の例えば20%、あるいは土地の譲渡益税ですとか、配当の税金であるとか、それから、それに比較して株式の譲渡益というものがとりわけリスクプレミアムがある中で、26がいいのか、20がいいのか、あるいはもっと低いほうがひょっとしたらリスクプレミアムを考えたらいいのか、そういうようなことも含めてちょっと議論をする必要があるのかなと1つは思っておりますが。
〇委員
例えばペイオフが来年から始まるわけですけれども、現在はどういうわけか預貯金にまたますます人気が集まっていまして、元本保証であるということが強いのだと思うのですが。少し幅広いところから議論させていただきたいのですが、税制以外でいきますと、全額預貯金がいま保証されていますが、21兆円という公的資金が注ぎ込まれているわけです。ですから、本来はそれはリスクであるのですけれども、国民に表面的にはリスクに現れないで、それで元本と金利が保証されているわけですから、そちらにシフトしてしまう。ですから、もしそういうことまで含めれば、公的資金が出ていることによるベネフィット、それと税制まで考えた幅広いことを考えませんと、うまくいかないのではないかと思います。
21兆円が出ていまして、それで97行、信用金庫、信用組合を含めてつぶれていますから、それで預金額がいくらあったかをやれば、何%ぐらいインプリシットに保証されているかといえば、税制よりも高くなってしまうわけですね。だから、そういうことまで含めませんと。
それから、あとは預貯金がなぜ多いか。先ほどの委員が郵貯のことを言われますが、2万4,700という全国に店舗数があって、そうすると、そこまで行くのに非常に近いわけです。そうすると、時間コストを考えれば、税制の何%よりもそちらのほうがいいというので、いままで国民が預貯金にやはりシフトしていたわけです。
ですから、そういう意味では、本当に中立を考えるのであれば、利便性なり、公的資金等のそういうのを全部考えた意味での税制というのは、あるいはそれをきちっとエクスプリシットに説明した上での税制というのが本当はあるのではないかと思うのです。
それから、今度はもう少し具体的な話です。ペイオフが来年から一応定期預金に関して始まるのですが、これでもし納番制がないと、非常に悪いことが起こるのではないかと思っています。それは、1,000万ずついろいろな銀行に全部分けてしまうわけですね。そうしますと、かえって危ない銀行でもみんな安心して1,000万ずつ預けることになりますから、そこが破綻したときには、結局、ますます公的資金が注ぎ込まれる。こういうことになりかねないのではないかと思いまして、そういう意味では、やはり何らかの番号がもし来年初めにありませんと、公的資金の脆弱性といいますか、これをますます助長してしまうというのがもう1つあります。
それから、その次は、リスクマネーの家計による提供というのが、それをいかに迅速化するかということだと思うのですが、そのときには、先ほど申し上げました、本当にリスクがあるのに、あたかも元本保証であるように見えているということとか、そういうことまで含めた意味で、税ばかりではないことも考えませんと、リスクマネーの提供というのはできないような気がします。
それから、最後は、不動産の証券化が具体的に来ているわけですが、そうしますと、不動産というもの自身も金融に全部変わってきてしまいますので、不動産の税制と金融との税制というのも整合的に考えませんと、いろいろなSPCを使った税制が、抜け穴といいますか、それが出てきてしまうような気がしますので、そこもぜひ考えていただきたいと思います。
〇委員
株式投資の課税のこととか、問題が主に個人所得税中心の議論がいままで出てきているのだろうと思いますが、せっかくですから、法人税のことでちょっと申し上げておきたいことがありまして、場合によっては、多少そういう資料を提出していただきたいという、可能ならばの話ですが、そういうことも含めて申し上げたいのです。1つは、外国から日本に投資した場合に、日本で得られる所得を実質的に経済的に非課税とするスキームがかなり幅広く利用されているという現状がございます。そこにおいては、日本における法人税が逃れられている。逃れられていると言うとちょっと言葉が悪いのですが、軽減されているだけではなくて、そのバックアップとしての源泉徴収が機能していないということがございます。
例えば実例を挙げますと、オランダにダミーの法人をつくって、その法人が日本の営業者に対して匿名組合形式で投資して、日本からオランダの法人に対する支払いが匿名組合の利益の分配ということで、日本とオランダとの間の租税条約において、その他所得となり、源泉徴収が免除される。ということで、このオランダの法人の背後に日本人がいたりすると、特定の日本人は、このスキームを使うことによって、非課税の所得を得られる。しかも、オランダで受け取った場合には、資本参加免税ですから、オランダでも課税がされないというのが1つあります。
それから、もう1つ有名なやつでは、日本で営業している保険会社が、バミューダに存在する親会社の子会社として吊るされていて、日本で売った保険の例えば85%を、かなり具体的な数字で恐縮ですが、再保険としてバミューダの親会社に出すことによって、日本の法人税を逃れ、かつ、再保険料の支払いについては、源泉徴収の規定が働きませんので、源泉徴収もない。つまり非課税でバミューダに所得が流れ、バミューダに法人税はないので、全く非課税で所得がプールされるということが起こります。
3つ目は、最近、日本で活動している会社の中に、例えば何とか証券株式会社という形ではなくて、何とか証券会社というところが多々あるわけです。これはいいとか悪いとかということで申し上げるわけではありませんけれども、何とか証券会社というのは株式会社ではありません。なぜかというと、日本法人ではなくてケイマン法人だからでございまして、ケイマンにダミーのペーパーの本店をつくって、その支店が日本で大々的に活動している。実質は日本法人なのですが、あくまでも設立準拠法はケイマン法で、その支店のみが活動しているわけです。
なぜこんな形態をとるかというと、支店から本店への送金については、これは単なる送金ですから、源泉徴収がかからないということで、この本店・支店構造を使った節税というのがございます。
以上のように、匿名組合とか保険とか本店・支店構造とかを通じて、日本に投資した場合に得られる所得が実質的に非課税となっていて、これが大々的に利用されていまして、これで逃れられている法人税等の額は、何兆円が大げさとしても1兆はいくのではないかと。これは単なる思いつきですから、根拠は何もありませんけれども、相当の額がいっている。あまりにも幅広く利用されているという現実がございます。
したがって、金融小委員会において、株式の課税をどうするということも当然重要な問題ではございますけれども、一般国民から見てこういう問題についてどう考えるのかについて、いまのままでいいという考え方もあるかもしれませんし、それは何とも言えませんが、取引の実態がどういうものであるかについて、いい悪いは別として、明らかにしていくということは、情報提供として必要なのではないかと思っております。
いまの点は、こういうふうに課税が軽減されているという話ですが、それとは別に、先ほど委員が御指摘なさったことと全く同じですけれども、金融インフラとしての租税制度の整備がまだ立ち遅れている部分があるのではないかと思います。金融取引というのは課税を極端に嫌うわけです。特に嫌われる税金というのは、源泉徴収ということでございまして、源泉徴収はグロスでかかりますし、支払いの都度取られるし、金融の方で源徴が好きな方はあまりいらっしゃらないと思いますけれども、いい悪いは別として、源徴の制度をどう適用するかについてのルールが必ずしも明確ではないのではないか、という噂、感じがあります。例えば、現先契約につきまして、いろいろな動きがあったわけですが、例えばこれに対して源泉徴収を課するというようなことが仮に行われるとしますと、日本の国際取引等は壊滅的な打撃を受ける場合もございます。これは、だから源徴をやめろという話ではなくて、どうしたらいいのかを、金融インフラの一種としての、特に源徴を中心とする租税制度の整備という形で私たち考えていかないといけないということですね。
以上、2つの点は法人税の絡みですけれども、これらについてどのような事態が現実に起こっているのか。これはなかなか出せることと出せないこと、守秘義務等のこともあって難しいとは思いますけれども、私のようなそれを中心に勉強している人間が得られる知識と、それから財政や経済の専門家であっても、なかなかそういうテクニカルなことについては、情報がとりにくいということもあるかもしれませんので、ざっくりとしたところで結構ですから、事務局からお示しいただくと、こちらの問題の深刻さというのも多少浮き彫りになるのではないかと。その上でどうしていくかを考えられたら、きっといい税制がつくれるのではないかと思います。
〇委員
多分、いますぐにというのは無理でしょうから、時期を見て、とりわけ国際化の金融インフラについての資料を出していただければと思います。
私自身も、正直言いまして、1つはインターネット化とか、あるいは金融商品が極めてデリバティブだの何だのいろいろ出てきていて、こういうものでいろいろな節税ができるのだろうと思うのですけれども、そういうようなことに関して、事務局からもぜひ御意見を伺いたいですし、きょうは御欠席ですが、池尾さん、神田さん、あるいは翁さん、この辺専門家ですから、ぜひ御意見を賜れればと思うのですが、いかがですか。
〇委員
私もこの税が市場化とか金融の情報技術革新にどういうふうに対応していくのかというのは、非常に重要なテーマだと思っていまして、こういう委員会でぜひ議論していくべきだと思うのですが、デリバティブとか仕組金融商品というようなものは、これからどんどん出てくる方向にあると思いまして、ここの前回の金融課税小委員会なんかでも多分整理されていると思いますけれども、ますます多様化、複雑化していくというのはそのとおりだと思うのです。やはり、そこにそういったいろいろな商品が出てくるということを念頭に置いて、それに適用可能な税の考え方というのをきちんと整理しておく必要があると思います。
1つ大きな考えるヒントになると思うことは、そういったデリバティブとか仕組金融商品とか、そういったものがどんどん編み出されるにしても、金融の機能としてはそう大きく変わらないという、その機能のファンクショナルな考え方を念頭に置いて議論しておく必要があるのではないかということで、おそらくそれは、金融の機能といってもいろいろありますが、おそらくいろいろな間接金融、直接金融を問わず、資源の時間を超えた移転であったりとか、リスク管理であったり、それから、小口の家計の商品をプール化するというような機能であり、また、最近よく言われているのは、経済学では、単なる資金のパイプのみならず、金融は情報生産活動であると。そういった観点から、多様な商品に対する、その根っこを流れる機能に着目して、いろいろな問題を整理していくということが1つのヒントになるのではないかなと考えています。
〇委員
今回の検討ですけれども、先ほど会長のほうから公平・中立・簡素ということをお話があったわけですが、私は今回は、大きな環境変化、技術進歩があった中で、金融税制というのをどう考えていくかというのが基本だろうと思うので、どういう大きいい環境変化があったのか、どういう変化が以前に比べて対応しなければいけない変化なのか、ということを確認していく必要があると思うのです。
私は、1つは、先ほどおっしゃいましたように、リスクの社会的シェアリングというのが必要になってきて、リスクが非常に大きくなった社会の中で、従来は国の元本保証があるような大きな資産構成になっていたものを、リスクが高くなる、あるいはリスクシェアリングを国家的に大きな形でやっていけるような体制にどう税制が対応していくべきか。それには足が速い資産ということもあるでしょうし、そういうものをきちんとしておかないと、モラルハザードというものが大きな問題になる。そういう中で金融税制をどう考えていくかということが非常に重要なのではないか。
そういう意味で、将来展望が可能な原則を確立するということが必要だろうと思うのです。金融税制というのは、特に将来所得に関する課税だと思うのです。ですから、将来所得というか、あるいは将来との関係で決まる所得、すべて将来との関係で決まる。したがって、国民の期待などに明確なメッセージを与えるようなものでなければいけないし、非常にシンプルなものでなければいけないと思うのです。皆がわかりやすい、将来こうなるという原則を示すこと、それがいまは非常にわかりにくくなっている点があるのではないかと思います。それはおそらくシンプルにするということは、徴税コストを低下させるということにもつながるでしょうし、先ほどからお話が出ているようなデリバティブというのは、やはりデリバティブが発達した背景の非常に大きな原因というのは、節税ということにあるわけですから、それをどういう方向へ持っていくかは、税金の体系次第で大きくそれ自体も変わってくるというものがありますので、それを変に使われるとモラルハザードが発生するというような問題もありますから、やはり長期的にどういう方向での課税をするのかということを、シンプルに明確なメッセージを出せるような方向ができると、非常にいいのではないかと思うわけです。
例えば、先ほど言いました大きな変化の1つとしては、リスクが増えてきた社会、資産構成をどうするかということ。あるいは土地にしましても、従来は地価上昇というのを何十年間も前提にした税制、キャピタルゲインがあったのではないかと思うのです。したがって、キャピタルゲインと所得税との整合性をとった譲渡益課税になっているわけですから、その辺をどう見直していくのかという問題も大きな問題になるのではないかと思います。
したがって、金融システム全体、あるいは資産というものの環境変化に対して、どういう税制を対応していくか。その中で1つクリアなメッセージとして考えられるのは、資金にしましても、土地にしましても、資産というものがより効率的な運用ができる主体にシフトしやすいような税制にしていくというのが1つ考えられるのではないかなと思いますので、何かそういう大きい原則に従って各税制を整理していくという必要があるのではないかと思います。
〇委員
前回の金融課税委員会も、やはり広く金融課税のあり方をということだったのですけど、実際のエネルギーは有取税をどうするかに9割とられたところがありますので、1つのことをとっても、それだけ議論が錯綜するということでもあるのです。うまくスケジュールを組んで全体的な議論を、流行り言葉ですが「骨太」の議論をしていく必要があると思います。
当面は、時間的にいうとやはり証券税制ですね。与党のつくった税制上の措置でいうと、3の(2)のあたりですけれども、一本化したときの税率であるとか、譲渡損失を繰越しするかどうかといったようなところは、やはり時間的にいうと早い段階で集中的にやりませんと、政治の後追いになってしまうかなと思います。
あまり短期的に証券市場の活性化のために税をどうこうするということは、私は賛成しませんし、預貯金の税率が20だから証券も20だというような議論はやはりおかしいとは思いますが、先ほど委員がおっしゃったように、広くリスクマネーの供給という観点から、何かやはりゆがみがあるのではないか、広い意味で預貯金のほうが有利になっているのではないかというようなところは、きちんと議論すべきであると思います。
それから、損失の繰越控除も、いまの所得税の考え方からいうと、おかしいのだということになってはいるわけですけれども、やはりそこはもう一歩踏み込んで、いまの状況を押さえて議論してもいいのではないかなと思っています。
それから、少し中期的な課題としては、いろいろな金融商品を金融所得として統合して課税していくという議論、これは前から出ている議論ですけれども、このことを考える必要があると思うのです。
事務局にお願いなんですけれども、スウェーデンとかデンマークで金融所得を一元化する試みが始まっていますので、その資料を御提示いただけるとありがたいなと思います。
〇委員
二元的所得論の話ですね。
〇委員
そうです。
〇委員
最初のほうですが、当面は証券を議論したほうがいいということですが、これは会長、あるいはみんなで議論したほうがいいかもしれませんが。
〇委員
どうですかね、決めてすることはないけど、時の流れ、時の勢いは証券税制から始まっているから、それをここでフォローしようという気もありましたからね。ただ、これはいろいろあると思いますから、事務局のほうもプランがあるでしょう。
〇事務局
いま委員のほうからのお話がありましたし、各委員のほうからお話を聞いて非常に参考になったわけでございますが、具体的な進め方、まさにこの場でお決めいただく話でございますが、先ほど事務局のほうから感じはお伝えしたところでございます。私ども、この金融課税の問題というのは、非常に古くて新しい問題もいっぱいございますし、また、いろいろな新しい問題、非常に金融の世界は大きく動いておりますので、これは追いついていかなけばいけないという問題もございます。そういった意味で、前からこの金融課税について、きちっと御議論いただかなければいけないと思っていたわけですが、それに合わせまして、今度は政治の世界の場で、いま委員の話もございましたように、与党3党のまさに株式譲渡益課税の申告分離課税一本化後の姿について、早急に検討するという話が出てきております。
したがいまして、当面の話といたしまして、まさに先ほど事務局から話しましたように、塩川財務大臣も、できるならば申告分離一本化を早められれば早めたいし、2年間今回延長したわけでございますが、例えば14年度改正の中でもそういった議論もしてみたいという話もございます。したがいまして、もしこの場で皆さま方がそういった形になるならば、例えば株式譲渡益課税のあり方について、例えば秋口でも、1つある程度の方向というのは御議論願えればという気持ちはございます。
それから、そのあとの問題というのは、非常にこれから難しい問題がございます。例えばそういった問題意識につきましては、昨年の7月に出しました中期答申の中で、例えば先ほどの委員の話につきましても、法人課税のところで、多様な事業体に対する課税のあり方、そういうような形で問題意識も出しておりますし、そういったものにつきましても、また引き続き御議論いただければと思っております。
〇委員
委員のおっしゃることもよくわかるのですけども、他方では、ある程度は広くまず議論しないといけない。こちらの武装ができないままに政治に引っ張られてしまうという面もあるので、少し夏前にぐらいに中広に議論して、それでやる。そのあとでもう一度広げるというような感じになるのかなと思いますけど。
〇委員
真っ先にという意味ではなくて、やはりスケジューリングは最初でしっかり立てた上で、政治の後追いにならないようにしませんと、最後は時間がなくなって、追われてしまう。
〇委員
私は初参加でありますし、委員の先生方の御意見を全部拝聴して、今日は黙っていようかと思っておりましたけども、私自身の経験から申し上げて、政府の税制調査会とのかかわりは、実は随分古い。1968年からでありまして、当時、私は日本証券業協会の協会長をしておりました野村證券の瀬川会長の秘書役をしておりましたので、自動的に、いまもそうのようですけれども、証券協会長は税制調査会の委員になると。ただし、当時は発言は一つもできないと。金持ちを代表するような業界の代表が何事を言うかと、一つも言わない。したがって、当時におきましては、我々は毎年与党の税制調査会へ行って、いわゆる電話帳と称するこんなでかいものを持っていって、毎年同じことを話し合ってきたという経験を持っておりまして、32年たっても、いまだにお話を聞いても、従来から有取税をどうするか、キャピタルゲイン・タックスをどうするか、それから、配当の二重課税、インピュテーション方式なんていうわけのわからないものを一生懸命勉強したりしてやってきているのが現状であるということでございますが、といって私自身は、ずっと引受け業務、インベストメント・バンキングをやってきておりますので、いわゆるキャピタル・マーケットの立場からということでいろいろなことを考えて、提言もし、あるいは勉強もしているわけですが、そういう意味では、税制調査会という本日の委員の中で、私1人がおそらく非専門家の専門委員であるということになろうかと思いますが、そういう立場でお聞きいただきたいと思います。
というのは、例えば石先生の発案によりまして、先週、財務省の財政制度等審議会と税制調査会の幹部の会合がありまして、国・地方の歳出と歳入という問題からいくと、なるほど、これだけ違うのかという感じがいたしまして、それだけにこの場でいろいろなことを私も申し上げて、また勉強していきたいと思います。ただ、私は別に証券及びその研究所の出身ではございますけれども、立場は極めて公平に見ているというつもりでございます。
次に、冒頭に石会長のほうから、税制で公平・中立・簡素という基本原則ということをおっしゃいました。私は一番大事なのは簡素ということであって、税法六法を見なければ何もわからないというようないまの税法は、ちょっと問題ではないかと思っておるのですが、特にまた公平・中立という問題は、その立場によってものすごく価値観を含んでくるという問題がございますので、公平・中立ということを本当に基本的に通すのだったら、例えば一部では日本は金融社会主義であると言われている意見が非常に強いわけでありますけれども、やはり公平・中立という基本的な問題は、もう一度基本原則をきちんとした合意の上でスタートすべきではなかろうかと。いや、そんなことをしたら、堂々巡りでしようがないよという意見もあるかもしれませんけれども。
あるいは公平・中立といっても、先ほど1つの商品、あるいは全部というようなお話もありましたし、また、立場立場によって、いまは随分オープンになってきましたけれども、当時は、本当に30年前は経団連から出ている長谷川周重さん、証券業界の野村の瀬川さんといえば、一言もものは言えないという状況でしたが、いまは随分オープンになってきたと。ただ、傍聴はおりませんけれども、オープンになってきたということで、非常に開かれてきたということで、そういう意味では、公平・中立という概念も、相当みんなのコンセンサスを得られると思いますけれども、この辺が第1点だと思います。
第2点は、私は自分の立場からいっても、従来は貯蓄をあまりにも優遇しすぎる。投資は非常に冷遇されてきたと。大体株を買うということは、かつて日銀総裁が、私は株式取引をやっていませんということを、いかにも自分が潔白のような証明で言われたということが、極めて遺憾でございますけれども。したがって、もちろんインフラの問題は、日本的なSECをつくる、あるいは取引所とか、あるいは証券業協会の自主規制機能を強化する。同時に、これは銀行も含めてですけども、証券界、銀行を含めてのビヘイビア、最近も某大銀行系の証券会社で商品販売について遺憾な事実がありますけれども、ああいうことのないように、それぞれがきちんとやっていくということでありまして、それとは別に、やはり税制については、公平・中立とは言いながら、時の政治にものすごく左右されることは紛れもない事実だと思いますので、その辺が非常に重要ではないかと思っております。
雑談になりますけれども、例えば去年の年末でしたか、自民党の商工部会か何かで、外形標準課税の問題について、経済団体の意見を聞きたいというので、私は経済同友会の代表で出て、私だけは理論的には正しいと言ったら、総攻撃で、極めて感情的な反撃を食ったという、極めておもしろい事件がございまして、やはりそういう点からいきまして、政治の問題ということは十分考え、また、先ほどお話がありましたけれども、やはり政治家の説得というようなことは非常に重要であろうと思います。といって、一時の状況に流されて、特に株式市場を活性化するとか、特に株を上げるためにやるなんていうのはとんでもない話だろうと思います。結果がどうなるかというのは、諸外国の例を見ればわかるとおりでありますから、公平な立場でやっていくべきだと、このように考えております。
そういう意味からいきますと、諸外国の例というのは、非常に勉強すべきであろうと思います。一部にはドイツの例はあれは特殊な例だと、こういう意見もありますけれども、本当にそうなのかと。もうちょっとこれは謙虚にいろいろと勉強をする必要があるのではなかろうかと思っております。
話は飛びますけど、例えば財政再建の問題も、初めはアメリカとかイギリスを勉強していたのが、最近は財政制度審議会委員はイタリアの勉強に行っていると。数年前は、EUへ参加する前は、日本はイタリア並みになっちゃうぞと言ったら、とんでもない、いまはもうイタリアに勉強に行くと、こういう状況でございまして、あるいは資本市場関係も、かつてはだめだと言っていたドイツをいま勉強しなければならないということで、フリー・フェア・グローバルと言って金融ビッグバンをやったときは、ロンドンとニューヨークを早く追い越そうよということでやったわけでありますが、いまはフランクフルトを勉強しなければならないという情けない状況、これは僕の偏見かもしれませんけれども、それだけの力はあるわけですから、早くきちっとやっていく必要があるのではないかと、このように考えております。
それから、先ほどの委員も指摘されました法人税の問題は、やはり基本は、法人所得利益の中からどう来るかという問題でございますから、非常に重要だろうと思います。特にグローバルなマーケットであり、しかも金融商品、これは税をどう捕捉するかということとイタチごっこ、知恵くらべに現在もうすでになっているわけでありますけれども、非常に重要な問題でありますので、やはり国内だけではなくて、広くグローバルなマーケットの中で考えていくということが必要ではないかと考えております。
それから、最後はいろいろ御意見がございましたが、タイムスケジュールという、これは臨機応変にということが重要だと思いますけれども、1つの方向性ということを一応考えてやっていただけたらありがたいなと。
〇委員
ドイツに関しては、資料ができていると思いますので、近々御報告いただけると思いますが、お願いしますということです。
それから、タイムスケジュールについても、一度事務局のほうで少しお考えいただいて、ラフなプランぐらいを次回にでも出していただければと思いますが、よろしくお願いいたします。
〇委員
本日から初めて参加させていただきました。私の専門としているのは、国際的な会計基準の議論ということで、特にこの金融については、会計の分野でも、ここ5年位の間に大きく方針が振れております。日本の昨年から導入された金融商品の会計基準、何か一説によると時価会計不況と言われているようなことも聞いておりますけれども、あの考え方は、ある意味では保有して、デリバティブに関しては時価評価ということではっきりしているわけですが、それ以外についても、時価という考え方を中心に入れながらも、一部損益として認識するものと、そうでないものというものを、経営者の保有目的に沿って損益の認識を変えるという実は手法をとっておりますが、これに対して、いま私もメンバーに入って、世界の10か国が議論している金融商品の会計基準というのは、すべて時価評価をして、経営者の保有目的は一切考えずに、時価の変動をすべてその期の損益として認識するという考え方が出てきております。
これは大変不興を買っておりまして、世界中から、いまコメントを6月末から9月にかけて求めているのですが、どうなるか先行きがわからない。ただ、先ほどから言われていますように、金融商品の多様なものが出てくるときに、どういう視点でつかまえるのかと。つまり商品が出るたびに、その商品についての会計処理を考えるということは、これは不可能でございまして、先ほど言われたようないわゆるファンクションに注目するというのは1つの見方なんです。しかし、そのファンクションもまた実は多様なあり方があって、なかなかそこでつかまえていくのが難しい。
そういう中から実は会計で出てきているのは、すべて時価で、つまり何をメルクマールに取引しているかというと、時価の変動であろうということから、時価の動きに注目するという動きが、実は会計の面では出てきている。ただ、これが直ちに税という面に、つまり担税力という観点からいきますと、なかなか簡単にいかないだろうと思いますが、そういう会計の動きが1つある。これがまず1点でございます。
それから、もう1つは、株価対策としての税制という議論が先ほど来ございましたが、これはやはりもう限界があるというのは、多分明らかだろうと思います。むしろ幅広く言えば、リスクをどうとるかという国民性みたいなものが実は私あるのではないかなという感じがしております。ただ、その中で、先ほど言われたグローバルということで、日本の証券市場を国際的にしていく中で、実は会計という面でもいまはグローバル化が進んでいるわけですから、税のルールを決めるに当たっても、金融だけに限りませんが、グローバルという視点を実は入れていかないと、日本の国民は多分、タックスショッピングといいますか、税制が有利なところに金をすぐシフトするということは、なかなかいかないとは思うのですが、そういうことが将来的に起こらないとも限りませんので、過去のしがらみの中で変えることは非常に難しい面はあるかと思いますが、国際的な整合性というのも議論の1つの視点としてどこかに入れておかないと、いつの間にか、何年かたつと、世界と全然合わないようなものになるというのも、これはグローバル化の中で、特に金融商品というのは世界中マーケットが1つですので、その辺の問題があるかなと思います。
〇委員
これで一度一巡しましたから、どうぞどなたからでも追加発言を。
〇委員
先ほどいろいろお話がございましたけれども、常に証券界の代表される方々の御議論も十分税制調査会で議論はされてきたようにも思います。特に、現在、源泉分離課税と申告分離課税が発足、62年から63年にかけてでしたけれども、これは当時の田淵さんのいろいろな御議論や御意見なんかから、だんだんとそういうふうに固まってきたという面もありますので、大いに御発言をいただき、大いに引っ張っていただければという感じがいたします。
それから、いまもお話がございましたリスクテーキング、それから、先ほどお話があったペイオフ。ペイオフは郵便貯金にはない。一方、金融機関は一体どうなる。そうした場合に、そこの基本的な問題があるとすれば、金融資産どこまでいけるかわかりませんけれども、郵便貯金の問題もどこまでいけるかわからないにしても、頭に置けれるものなら、置いておいたらどうかという気がいたします。
〇委員
幅広くということで、皆さんの意見にも入っていますけれども、郵貯の問題と金融システムの、私は個人的には現在の金融機関はこのままでは全くだめで、要するに、預貯金から、リスクテイクというのか、あるいは直接投資のほう、あるいはキャピタルマーケットへどう誘導するかという問題もありますけれども、やはり金融システムの問題とか郵貯の問題、これはもちろん所管が違いますから、ほかの審議会でいろいろやられているようですけれども、そちらとも幅広くやらないと、この問題というのはなかなか……。それでなおかつ簡素にしろというのは、非常に無理な注文かもしれませんけれども、やはり公平・中立ということも含めて、非常にこれは重要な問題ではないかと思いますので、場合によったら、それをやっているほかの委員会なんかとの合同なり、あるいはヒアリングをするとかいうことは非常に重要ではないかと考えます。
〇委員
先ほどの将来展望という話でちょっと補足させていただきますけれども、先ほど会長のほうは、原則として公平・中立・簡素というお話でしたけれども、非常に本音のところでいうと、おそらく税収のマキシマイズというところがあると思うのです。マキシマイズというのは、率とタックスベースがあるわけですから、それをいかに国としてマキシマイズしていくか。そのためには経済成長しなければいけないわけですし、マーケットが大きくならなければいけない。それにはやはり時間がかかりますので、将来展望と言ったのは、そういう意味で、そういうことが将来に起きるということを踏まえて、いまからそれを考えておく。そういう意味での枠組みをしっかりしておく必要があるのではないかと思うのです。
例えば、アメリカの税制改革をレーガンの時代にやったのは、これは10年以上たって、サプライサイドエコノミーという形で大きな減税をしたのが、90年代に成果を現してきたということであろうと思うのです。そういうふうにやはりタイムラグがあるわけですから、将来のそういう経済成長を促進することを通じた税収のマキシマイズというか、そういうような観点からも、将来展望を持った大きな枠組みというのを検討しておく必要があるのではないかなという気がします。
〇委員
これは総会でも一度話したことなのですけども、私は、証券税制をいま申告分離に一本化しようということになっているのですが、これにちょっと違和感を感じているんですね。それはどういうことかというと、所得税は実は申告を義務づけられていないんですね。ところが、証券の譲渡益だけには申告を強制しようというのがこの案なわけですよね。そこが何か非常に違和感を感じていて、むしろ委員がおっしゃるような非常に長期的な展望ということから考えると、税収のマキシマイズだけではなくて、国民がいかにして政府をきちんとコントロールするか、あるいは政府がきちんと国民に対してアカウンタビリティを持つかということが非常に重要であって、そのためには国民の意識改革が極めて重要である。
そういうことから考えると、所得税も含めて確定申告をきちんとするのだということが、むしろ本来の筋であって、そういう意味の第一歩として今度の申告分離を考える。例えばですが。そういうような方向性みたいなものを考えてはどうかなと、私などは思っておりますが、そういうことも含めて、御自由闊達な御議論をいただければと思います。
〇委員
長期的にお伺いしたいポイントなのですけれども、一本化の話が出ていまして、先ほどの与党のペーパーの長期保有株主に係る少額の譲渡益非課税制度という問題ですが、一本化と同時に、繰越控除を導入するというお話が出ていまして、私としては、個人的にはぜひとは思うのですけれども、大分損したので、ただ、自分的にはそう思いますが、これはどこからどういうヒントで入ってきた話なのか、アメリカなどは所得制限を設けて、一部そのような制度をやっているみたいですけど、誰がどういう経緯でこれを言い出したのか、ちょっとわかる範囲でお願いしたいと思うのです。
それと、この中に土地流動化との関係で流通税という言葉が出てきて、取引税とか取得税とか、いろいろな範囲だと思うんですけど、この問題はどこまでこの範囲で扱うのか、ちょっとその点だけをお伺いしたいと思います。
〇事務局
1点目の、譲渡損失の繰越控除制度の創設の話でございますが、与党のこの文言は、譲渡益課税の一本化後のあり方を検討すると。その中で大きな問題として、税率の問題と繰越控除制度の問題があるだろうということで、一本化したときこれを入れるというところまで決めているわけではございません。まさにそういったものをこういった場でまず御議論いただければと思っております。
ただ、そういった議論が出てきた背景でございますが、諸外国の例を見てみますと、主要国でございますと、例えばアメリカ、イギリス、それから西ドイツは原則非課税、ですからこれは別でございますが、フランス、そういった国々を見ましても、損失につきましては、繰越控除制度を認めております。そういったことで、これが損をしたときに、将来の繰越を認めれば、非常に投資に対してしやすくなるだろうという観点から、こういった議論が出てきているということでございます。
それから、2点目の流通税の問題でございますが、一応、与党の中で検討事項のところで、土地再生、土地流動化の観点で出ておりますけれども、今回、この金融との関係でこの流通税がどういうふうに位置づけられるか、ちょっと私も自信がございませんが、先ほどちょっとお話がありましたように、土地の譲渡益課税の問題、それから、土地の証券化の関係、そういったものとの関係では、議論を最初から排除する必要はないと思っておりますけれども、一応、与党の議論では、金融と離れたところで、まさに土地流動化、土地再生の観点からこういった議論をしていこうということになっております。
〇委員
小委員長がまとめられる前に一言、もう時間も過ぎておるようでありますから。
今日、皆さんのお話を拝聴いたしまして、お立場お立場で非常に含蓄のあることをおっしゃっているなと思って、興味深く拝聴しておりました。多分、これからは同じ方向で議論ができるでしょう。その許容範囲というのはいろいろあるかもしれませんけど、おそらくいい議論ができると思います。
そこで、1つお願いは、総会の議論等々を聞いたときもいつも気になっていたのですが、我々はやはり実務が弱いんですよね。源泉分離を廃止して申告分離に一本化するなんていうことを言うと、そんなことをやると株が暴落して、日本経済は大変であるというような話を言われるわけですよ。我々は若干そうかなと思いつつ、申告分離だってやれるのではないかと思う方は、そういう発言にはやはり気になるんですよね。暮れに我々は申告分離一本化しまして、結局、与党にはねられて残ったというのは、ある意味では幸いしているので、あれがもし、株価の暴落を我が税調が一身に引き受けるようになるのも困るので、そこでお願いは、そういう実務的なレベルの議論は、ぜひ水口さんとか田中さんあたり、山田さんあたりからも、その辺確実な情報を提供していただいて、そんなことは心配することはない、どんどんやれと言っていただくのが一番いいのですが、これは注意したほうがいいよというようなこともおありでしょう。そういうときはまたブレーキをかけていただければと思いますので、そういう実務面でのサポートを、ぜひこの理論的な皆さんの議論の背後に据えていただけたらと、ちょっとお願いです。
〇委員
大変貴重な御示唆をありがとうございました。事務当局におかれては、事前にエクスパートの御意見をお聞きの上、参考の方を選んでいただければと思います。
いずれにしましても、大変幅広い論点について御意見をいただき、ありがとうございました。
次回の小委員会ですけれども、6月22日、金曜日の午前中に開催してはどうかと考えております。その際には、金融のあり方について御議論いただくこととし、議論の口火として、翁委員と、本日は御欠席ですが、池尾委員にプレゼンテーションをお願いしてはどうかと考えており、その後、再び皆さまに自由に御議論いただきたいと考えております。
それでは、本日の小委員会はこれで終わります。お忙しいところどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。