企画会合(第8回)・調査分析部会(第3回)合同会議 議事録
日時:平成19年4月23日(月)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇香西会長
皆さん、お忙しい中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。ただいまから、第8回「企画会合」と第3回「調査分析部会」の合同会議を開催したいと思います。本日の議事でございますけれども、本日は、前回に引き続きまして、田近部会長の司会進行の下で、調査分析部会の審議を行いたいと思います。
本日は、2つのテーマを設定しておりまして、そのプレゼンテーションを受けた後に皆さんで御議論していただきたいということであります。
本日のプレゼンテーターとしましては、外部有識者として、千葉大学の広井教授にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それから、専門委員である加藤委員からもう1つのテーマについて御説明を受けまして、それを議論したいということでございます。
なお、これとはやや離れますが、前回の会合で申し上げましたが、経済財政諮問会議から会長に諮問会議へ出て、審議の状況を報告してほしいというお話がございます。この点については、今の2つのプレゼンテーションのディスカッションを終わった後で、私が御説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、田近部会長の方で議事進行をお願いいたします。
〇田近部会長
それでは、部会の審議に入りたいと思います。
ただいま会長から説明がありましたとおり、2テーマについてそれぞれ1時間ずつの時間で、プレゼンテーション及び討論という形で進めていきたいと思います。
まず、第1のテーマですが、お手元の「企画8-1」にありますように「これからの社会保障と『持続可能な福祉社会』」というテーマです。プレゼンテーションは、先ほど御紹介がありましたとおり、千葉大学の広井良典教授にお願いいたします。
広井先生は、現在、千葉大学の法経学部で、社会保障などを御専門にしていらっしゃいます。「日本の社会保障」「持続可能な福祉社会」ほか、多数の著作がございます。
また、本日の広井教授のプレゼンテーションは、我々の3つの領域の1つで、吉川主査の担当領域である「経済社会の構造変化とそれが税制に与える影響の検証」の一環として御説明いただくものです。まず、吉川先生から問題意識等についてお話いただいて、それから始めたいと思います。
お願いいたします。
〇吉川委員
ただいま会長、部会長から御紹介していただいたので、付け加えることは特にないんですが、いわゆる高齢化が進展していく中で、社会保障というのが財政の1つの鍵になるものであるということは、この税制調査会の委員の皆様方、よく御存じのとおりだろうと思います。国の予算でも、いわゆる一般歳出のもうじき半分近くが社会保障関係になるんだろうと思います。ほかの歳出が抑制される中で、社会保障に関しては、単調増加、上昇を続けている。または続けざるを得ないような状況にあるというのは御存じのとおりです。
我々の守備範囲はあくまでも税制ということですが、今お話ししたことから、やはり社会保障については、税制調査会としてもしっかり勉強しておく必要があるだろうということで、本日、大変御多忙の中、社会保障に関する専門家であられる、外部有識者として千葉大学の広井先生にお願いしたということでございます。よろしくお願いいたします。
〇田近部会長
それでは、広井先生に御説明をお願いしたいと思います。時間は、20分程度でよろしくお願いします。
〇広井教授
御紹介いただきました広井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。このような貴重な機会に声をかけていただきまして、大変光栄に存じております。
委員の先生方の中には、私などよりもむしろ社会保障に関する知見をずっとお持ちの方も多くいらっしゃいますので、非常に不十分な内容になるかとは思いますけれども、一通り社会保障についての基本的な論点を、私見を交えながら20分ちょっとぐらいでお話させていただければと思います。
お手元に資料がA4でございますけれども、主にこれに沿う形でかいつまんでお話をさせていただければと思っております。
最初に1ページのところをごらんいただければと思います。社会保障本題に入ります前に「大まかな時代認識」というのを掲げてございます。非常におおまかな整理をあえてするとすれば、社会の姿として、2つ大きな対立軸があるのではないかと思うのですが、第一の対立軸は、いわゆる「大きな政府」対「小さな政府」、高福祉・高負担か低福祉・低負担か、決してこの二者択一ということではございませんけれども、これは言わば富の分配をめぐる対立軸と言えるかと思います。
もう一つの対立軸として「成長志向」対「環境(定常)志向」としてございますけれども、これは限りない経済成長というものを追及するか、それはそこそこにして、もう少し別のものに価値を置いていくかというような、言わば富の大きさをめぐる対立軸ということで、2つ整理してございますけれども、そこに図をお示ししてございますように、これまで、特にヨーロッパやアメリカでの政治なども含めた対立として、大きな政府と小さな政府という対立があったのは、言うまでもないことでございます。
ただ、両者が共通していたのが、強い成長志向ということで共通していたわけで、それが縦軸になるわけでございますが、だんだん1つには環境問題ということも浮上し、また経済も成熟化していく中で、左右の対立に対して縦の対立軸が徐々に浮上して、かつ先進国の場合、次第に上半分の高い成長の時代から、徐々に経済が成熟化して、相対的には少なくとも低成長時代に入って、そういう中で、次第に対立の場面が下の方にシフトしていく。そういった中で、単純な大きな政府でも、単純な小さな政府でもない姿、かつ、かつてのような継続的な高い成長というよりは、相対的に経済が成熟した中での社会の在り方を、どう望ましいものにしていくか。そういうことが浮上してきているのではないか。
それを、ここでは持続可能な福祉社会という言葉で、ひとまず表している状況でございます。
これを、1つのごく大まかな状況認識といたしまして、社会保障について幾つか確認させていただければと思うわけでございますが、1ページの下の方に図を掲げてございます。「日本の社会保障の特徴と課題」ということで、先ほど吉川先生からもお話ございましたように、社会保障は非常に大きな規模になっているわけで、平成16年度で84.3兆円という莫大な額になっているわけでございます。
一方で、そこのグラフに示されてございますけれども、これはOECDの資料でございますが、社会保障の規模を国際比較してみますと、日本は相対的には低い部類に入っている。概してヨーロッパグループといいますか、北欧を筆頭に大陸ヨーロッパ、かなり社会保障の厚い国々でありまして、ヨーロッパの中ではイギリス、アングロサクソンと言われますけれども、比較的高い。
日本は、高齢化率においては、これらの国の中では最も高い割にといいますか、社会保障の規模としてはアメリカと並んで最も小さいものになっているという状況があるわけでございます。
2ページ「日本の社会保障の特徴」ということで確認しますと、規模は今、申しましたように、比較的小規模である。内容に関しましては、よく社会保障は医療、年金、福祉というふうに3つに分けることがございますけれども、それで見ますと年金の比重が相対的に大きい。先進諸国の中では、年金の比重が最も大きい。実際に先ほど84.3兆円ということを申しましたけれども、平成16年度の社会保障の中で年金が約53%を占めていて、半分強を占めているということで、年金の比重が大きくて、福祉の比重が小さいというのが1つの特徴として指摘できるかと思います。
財源に関しましては、ここでは詳細な議論は省略させていただきますが、保険と税が非常に入り組んだ形で、ある意味では渾然一体となっているという状況があると思います。
今、社会保障が相対的に低いという点を申したわけですけれども、なぜ低い割に一定の社会の安定や平等がこれまで保たれてきたのかということでございますが、2点ほど指摘できるのではないかと思います。
1点は、インフォーマルな社会保障としてございますが、これはしばしば指摘されてきたことでございますけれども、会社と家族、特に核家族が、社会保障を補完する機能をかなり果たしてきた。終身雇用の会社が、社員のみならず、家族全体の生活保障を行うというようなシステムが以前はあったわけでございますし、家族が介護や子育ての相当部分を担う。これが1つあったかと思います。
もう一つ、公共事業型社会保障というのは、ちょっと表現として奇妙な言い方かもしれませんが、趣旨としましては、公共事業が実質的に社会保障的な機能を果たしていた面がある。これは、すなわち職の提供を通じた生活保障ということで、70年代前後から次第にそういう傾向が出てきたのではないか。
2ページの真ん中にございますグラフは、都道府県別の公共投資の額と県民所得をそれぞれ縦軸・横軸に見ているものでございますけれども、左側の50年代のころは、必ずしも明確な相関関係がなくて、どちらかというとプラスの関係にございましたが、90年代になると負の相関関係が表れてきて、すなわち県民所得の低い県に公共投資が重点的に行われるということで、言うならば公共事業が所得再分配的な機能を持つようになってきたということで、ある種の公共事業が社会保障的な機能を持っているということで入れてございます。この後、すぐ申しますように、それに限らず、戦後日本のシステム、政策を見ますと、社会保障以外の生産部門に政府が介入する中で再分配が行われるということが、さまざまな形で見られていたかと思います。
しかし、2ページの下の方でございますけれども、そうした状況がいろいろな弊害が認識されることもあって変容してきているわけでございますけれども、そのプラスの面と並んで、負の側面として近年活発な格差の問題などがあるわけでございます。
すなわち、日本の社会保障というのは、生産部門を通じた一定の再分配が社会保障以外のところで実現していたのを前提とした上でのリスク分散機能が主たる機能であった面が多くて、再分配機能としては、相対的に弱いものになっているのではないか。
2ページの一番下のグラフは、OECDの報告書に示されて、これはまたいろいろ論争の対象にもなったものでございますけれども、これは国際比較で横軸が高齢者を除く労働年齢人口に対する、医療以外の社会保障の比。縦軸が貧困率、これは、いわゆる相対的貧困率で、所得の中位、半分以下の層がどれぐらいいるかということで、社会保障の規模と相対的貧困率が、かなり相関しているということと、左上の方で、メキシコ、トルコなどと並んで、アメリカ、日本が、左の端の方に位置しているということで、ここら辺りは、またいろいろ評価や事実認識も含めて、いろいろ議論が分かれるところでございますけれども、1つの資料として示させていただいております。
3ページ、以上の話を少し大きな流れで再確認する意味で、3ページ~4ページにかけて、戦後日本の再分配政策という視点で、4段階ぐらいに分けて見ているものでございます。
第1段階としては、終戦直後に、今から見ますと、非常に強力な機会の平等政策とでも呼べるものが取られたと言えるのではないか。特に、いわゆる農地改革による土地の再分配、新生中学の義務化等の教育面での機会の均等政策。そこにお示ししておりますグラフは、世界銀行のものですけれども、初期の土地分配の平等な度合いと、経済成長の相関ということで、要するに、土地分配が比較的平等である国の方が、その後の経済成長の度合いが大きいということで、こういったことの1つの典型に日本は当たるという面があったのではないかという点でございます。
3ページの下半分は、第2段階、これは先ほど申しました、生産部門を通じた再分配ということで、社会保障そのものは、むしろこの時期までは非常に小規模で、生産部門の方に政府がさまざまな形で介入することの再分配が行われてきた。農業補助金や地方交付税交付金、その他、さまざまな産業政策。
参考として予算の数字をちょっと挙げておりますけれども、これは社会保障のうちの税で賄っている部分ですので、社会保障のうちの再分配的な機能になっているものと言えるかと思いますけれども、70年代ごろまでは、地方交付税や公共事業に比べて、社会保障が相対的に小さくて、他の部分による再分配が大きかったということを示していると言えるかと思います。
4ページ、まず第3段階としては、さっき言いましたように、70年代以降、公共事業への依存。この時期から、社会保障による再分配が、特に高齢者を中心に開始したということで、その帰結として、先ほどの結果的に現在では高齢者の割合が非常に大きくなっている。これは後でまた触れさせていただければと思います。
4番目は、市場経済化の推進と正・負の帰結。
以上のような大まかな認識を踏まえました上で、これからの社会保障はどうあるべきかということでございますが、これもまた非常に大きく意見が分かれるところでございますけれども、幾つかの視点ということで申し上げさせていただきますと、私見では、先ほど申しましたようなインフォーマルな社会保障、会社、家族、生産部門を通じた再分配がさまざまな意味で弱まっている中で、基本的には社会保障の役割は強化していくべきではないかと。しかしながら、とはいえ低成長下にあって、社会保障のあらゆる分野を公的に強化ということは、当然困難でございますので、1つの視点としては、そこに4つの選択肢ということで、全分野重点型、年金重点型、これは所得保障に力点を置いて、年金を手厚く、医療・福祉は私的なものを拡大。それから、医療・福祉重点型、市場型、あらゆる領域で私的なものを中心にということで、仮に整理いたしますと、私自身は医療・福祉重点型とでも呼べるような社会保障が望ましいのではないか。医療・福祉というのは、非常にリスクの予測が困難で、個人差が大きいということもございます。市場の失敗が起こりやすいと言い得るかと思いますが、こういった領域では公的な保障の必要性が相対的に大きいのではないか。
またこれも私見でございますけれども、現在、患者自己負担や混合診療拡大ということが、いろいろな形で進められているわけでございますけれども、私自身は、これはいろいろな問題点を含んでいるのではないかということで、できるだけ私的な部分の拡大ということには慎重であるべきではないかと考えてございます。日本の患者自己負担、これは国際比較がなかなか難しいところでございますけれども、先進諸国の中でも相当高い水準になっているということです。
ただ、あり得るとすれば、いわゆるリダクティブルと言われるような軽微な医療に関する免責、それは保険から外すということはあり得る選択肢だと思います。その他、医療についてはさまざまな意味での効率化、情報化ということでございますし、保険者機能強化、あるいは医療の標準化ということを通じた効率化というのは、当然進めていくべきかと思います。
また、少し各論に入りますけれども、医療費の配分、特に病院と診療所の配分といったものが、かなり問題が生じているというふうに言えるかと思いますけれども、そういった医療費の配分決定プロセスの見直しといったことも議論していく必要がある。
年金でございますけれども、これも本当にさまざまな議論があるわけでございますけれども、私見ではむしろ所得再分配機能中心のものに、方向としては再編していくべきではないか。現在の2階建ての報酬比例部分というのは、高い所得の方が、高い保険料を払った見返りに高い年金がもらえる。そういった部分はある程度、私的なものに委ねていって、むしろ基礎年金を重点化したような、再分配機能重点型のものに公的年金としては、進めていくということが望ましいのではないか。
基礎年金というのは、満額で6万6,000円ぐらいでございますけれども、実際にはかなりばらつきが生じているわけで、そういった基礎的な保障の部分をむしろ重点化していくべきではないかということでございます。年金をスリム化する分を、広義の福祉の強化に充当していくという方向が1つ望ましいのではないかと思います。
5ページ、上の卵型の図は、公私の役割分担をどのように考えるかというのを、一番ベーシックな公的なものから派生的な私の領域、その中間の共的な領域まで含めて、これもやや単純化して示したもので、1つの整理ということでございます。
5ページの真ん中は、さっき国際比較のことを申しましたけれども、社会保障についてはさまざまな国際比較がよく行われているわけで、大きく言えば3つぐらいのモデルが指摘されているわけでございます。普遍主義モデルと言えるような、北欧に代表される税を中心に、社会保障が相対的に大きな規模のもの。それから、大陸ヨーロッパの社会保険中心に制度を組み立ているもの。それから、アメリカのように、最大限市場を重視したもの。最近の趨勢としては、どちらかというとそれぞれが接近しているような面がございますけれども、あえて言えばアメリカとヨーロッパグループのコントラストが顕著になっている面もあるのではないかと思います。
後半に入らせていただきたいと思いますが、5ページの下の方から「社会保障をめぐる新たな課題と方向」ということで、幾つか指摘させていただいてございます。
1番目としては、人生前半の社会保障の重要性、事後から事前へという視点を記してございます。先ほど来触れてまいりましたように、90年代の日本の社会保障論議というのは、ほぼ高齢者関係、年金、介護、高齢者医療が中心であったわけで、実際、社会保障給付費の約7割を高齢者関係が占めているということは、最近の少子化の議論の中でもしばしば指摘されてきて、それに対して子どもなどを含む家族関係は3.1%程度にすぎないということが指摘されてきているわけでございます。しかし、近年、会社や家族が多様化する中で、リスクが人生の前半に広く及ぶようになった。
6ページ、格差が資産面を含めて徐々に拡大して、個人が生まれた時点で、言わば共通のスタートラインに立てる状況が、やや脆弱化してきている。そういった意味で、個人のチャンスの平等を通じた社会の活性化が、特に重要になってきているのではないか。
先ほど述べましたが、戦後の時期に、かなりこういった機会の平等政策がドラスティックな形で行われたということにもつながってくる話かと思います。
併せて、人生前半の社会保障という話になりますと、教育というのが非常に深く関連してくるわけで、これも最近よく指摘されて、またいろいろ議論があるところでございますけれども、教育の公的支出が、日本はかなり低いということで、これも、ただ予算を増やせばいいというものでは決してないと思いますけれども、ここら辺りをどのように評価していくかということが論点になっていくかと思います。
6ページの下の方の2番目としまして、ストックをめぐる社会保障の重要性、フローからストックへということで、社会保障というのは、基本的にフローについて議論がなされてきているわけでございますけれども、所得の分布という意味で、格差という面で見ますと、収入のジニ係数に対して、貯蓄や住宅・宅地のジニ係数の方がかなり大きいということで、ここら辺りでフローの拡大が成熟化していく中で、ストックの再分配というものが改めて浮上してきているのではないか。
最後に経済の成熟化・定常化に適応した社会保障ということで、これは後で少し触れさせていただければと思います。
7ページ、財源でございますけれども、基本的な認識といたしましては、高齢化などの中で、保険原理、拠出と給付の均衡が成り立ちにくい層が相対的に増えているという点。それから、社会保険が前提としているような、共同体的基盤といいますか、会社や家族の画一性が揺らいでいるという点から、社会保障財源における税財源の比重を相対的に高めていかざるを得ないという面があるのではないか。
実際、ヨーロッパ諸国におきましても、社会保障財源を徐々に税の方にシフトしている傾向が一部指摘できるのではないかと思います。
ドイツにおけます環境税の社会保障財源化、これはこの後で触れさせていただきたいと思いますけれども、消費税。フランスの一般社会税と呼ばれるような制度、資産を含む広範な所得に課税して、実質的な社会保障目的税と言われるようなもの。
検討されるべき社会保障の税財源といたしましては、消費税、これは個人的にはヨーロッパなみの水準ということは、最終的に避けられないのではないかと考えております。
相続税は、先ほど申しましたような、生まれた時点での共通のスタートラインに立てるということを保障するという意味で、言い換えますと格差の世代を通じた累積・固定化を抑制する。そうした相続税の税収を、人生前半の社会保障に充当するというようなことが考えられ得るのではないか。
環境税は、社会保障の話をして、やや唐突に感じられるかと思いますが、ヨーロッパではドイツのエコロジカル税制改革と呼ばれる改革を含めて、こういった改革が90年代以降進んでいる。環境税を導入した、その税収の一部を社会保障に当てて、その分、年金の保険料を引き下げるというような興味深い政策で、ねらいとしては、そこに書いてございますように、環境負荷を抑制しつつ、福祉の水準を維持し、かつ社会保険料が企業にとって非常に大きな負担になっているという状況がございますので、それを軽減して、国際競争力の強化に資する。より考え方の根本的なものとしてございますのは、労働生産性から資源効率性の方にインセンティブを転換していく、言い換えますと、労働への課税から資源消費への課税、つまりかつて労働力が不足して、自然資源が余っていたような時代には、労働生産性が非常に重要ですので、そちらに課税することで、できるだけ少ない労働力でというインセンティブを与えていた。今はむしろ労働力は余り、自然資源が不足しているということで、企業のインセンティブを、人をある程度使ってもいいから、自然資源の使用にブレーキを効率化するということでなされているものと言えるかと思います。
7ページの一番下にございますのは、これも非常に大ざっぱな認識にすぎないものでございますけれども、大まかな税の対象ということを見てみますと、経済社会が変化していく中で、富の源泉というものが、土地から労働、それから消費、それでまた資産や相続、自然資源消費というものに回帰している状況があるのではないかということで、これは少し大まかな視点として示している点でございます。
もうそろそろ時間もまいりましたので、終わりにさせていただければと思いますが、8ページの一番上は、今の環境税のことで、こういった議論もあるということでの御紹介でございます。
8ページからは「付論」ということで、定常型社会=持続可能な福祉社会の可能性ということで示してございますけれども、これは従来、経済成長ということに向かって、非常に発展してきた方向性を、少し修正していく視点が重要ではないかということで、それを定常型社会ということで、人口減少や環境とも絡めて示しているものでございます。消費構造の在り方、労働時間の在り方ということで、8ページの下の方に労働生産性の上昇分を労働時間削減で対応するという発想への転換が求められているのではないかということで、そういった中で、市場を超えたコミュニティーということも、9ページの方に進みますけれども、新しい領域として今、NPO、その他、非常に発展してきているわけで、これと営利の市場の領域が、むしろ非常にオーバーラップしている状況があるかと思いますけれども、こういった新たな領域を促すようなシステムとしての税制を含めた対応も求められているのではないかということで、社会保障を考える場合に、コミュニティーということはどうしても避けて通れませんので、そういった話と絡めて少し記させていただいている次第でございます。
非常に雑駁でございますが、以上でございます。
〇田近部会長
広井先生、どうもありがとうございました。あと30分弱ぐらい、自由に議論を進めたいと思います。どなたでも御意見、御質問を始めていただきたいんですけれども、また例によって非常に質問等が多いかもしれないので、その場合には名札を立てていただくかもしれません。
それでは、増渕さん、土居さん、お願いします。
〇増渕委員
今、広井さんの言われた、社会保障の将来的な在り方ということについては、全般的に個人的には非常に賛成できる方向だと思うということを、まず冒頭に申し上げたいと思います。
その上で、1つ質問があるんですが、4ページの一番下のところに、年金をスリム化する分を、広義の福祉の強化に充当という表現がありますが、十分に理解してないせいかもしれませんが、年金の今の財源は、税と保険料の混合ということだと思いますが、年金をスリム化してというのは、やや今よりは厚めの、厚めといっても今とあまり変わらないんでしょうか。公的年金を基本的に基礎年金にするということだと思うんですが、その財源は税、しかし、そうすると年金保険で賄われている部分が削減される。しかし、それは保険料という形で子育て支援等の財源に充当できるものなのか。それは、できないのではないかと思うんですが、そこはどういうふうに理解したらよろしいんでしょうかというのが質問です。
〇田近部会長
土居さん、どうぞ。
〇土居専門委員
御報告、大変ありがとうございました。私も大変勉強になりました。特に医療・福祉重点型の社会保障といったところは、非常に重要なポイントだと思います。1点ほど質問と2点ほどコメントがあります。
1点目は、7ページに社会保障の財源の問題で、高齢化で拠出と負担の均衡が成り立ちにくいということは、恐らくかなり深刻な問題としてこれから起こり得るだろうと私も思います。そのときに、税財源という話なんですけれども、ただ、どんぶり勘定で保険料収入と税収入と、とにかく取れるところから取って給付すればいいという発想ではだめだと思うわけでありまして、その際に、どういう意味で税財源に求めるのかということについて、何かフィロソィーというか、広井先生のお考えを聞かせていただければと思います。
2点目は、今日の御報告は大変美しくまとめられていて、美し過ぎるところがあるんではないかと。そこまできれいに割り切れないところがあるんではないかということで2点ほどコメントで、戦後直後の機会の平等政策という話ですが、私は極限すれば、単にGHQの軍国主義の排除という話でできた話であって、日本人の内発的な政策形成によってできたものでは必ずしもないのではないか。
そうすると、今後も政治経済学的に考えると、確かに機会の平等という話は重要なんだけれども、今後の日本において、それが日本国民の民主主義的プロセスから内発的に出てくるのかどうかというところは、なかなか疑問符があるのかなと。
もう一つは、7ページの下のところで、これも非常に美しくまとめられているんですが、確かにそういう富の源泉と税制というところであるんですが、ただ、実際は必ずしも本来求めるべき税源に対して、政治経済学的に必ずしも、その時代において求めることができなかったようなこともあるのではないか。
例えば、私が思うには資本主義という名前があるように、産業化時代の前期というのは、むしろ資本が富の源泉であって、労働というのは、労働分配率も低かったわけで、必ずしも主要な源泉だったかどうかは疑わしい。ただ、税制は確かに資本に対して課税するという動きではなくて、まさにここで御指摘のような話だと。勿論、法人税というのは資本に間接的に課税していくことにはなったりするんですけれども、そういう意味では本来あるべきだと経済学的に考えられる話が、必ずしも政治的にはそうなってないという部分を、入り交じりながら歴史は動いてきたのかというコメントです。
以上です。
〇田近部会長
今、非常に関連した質問があったと思います。4ページの年金をスリム化する部分を広義の福祉の強化に充当することについて、増渕さんの御質問は、これは実際どうやってやるのかということですね。
土居さんの方は、それに関係して、税財源をいろいろ強調されているようだけれども、それが一体どういう根拠づけか云々ということですね。
〇広井教授
いずれも非常に貴重な点での御指摘、ありがとうございました。
増渕先生の前半の方でございますけれども、確かにこれは直接財源を持ってくるという関係にはなっていないと思います。といいますのが、御指摘にもございましたように、ここで言う年金のスリム化というのは、主として2階の報酬比例部分ですので、保険料で賄っている部分で、それに対して広義の福祉の強化というのは、これは必ずしも保険料を持ってくるというよりは、税で充当するべきものもございますので、これはそういう意味では、ここでは保険料と税はむしろ一括して、社会保障全体の配分といいますか、それをどういうふうにするかという議論として申しているだけで、今も御指摘いただきましたような、財源としてそのまま充当できるかというと、これはまた別途、むしろ結果的には税の比重が高まることになりますので、それを別途考えていく必要があるということで、やや充当という言い方は不適切な面があったかと思います。
土居先生の後半でございますけれども、税と保険料で単純に保険料が取りにくくなるから、税というのはないだろうというのは、全くそのとおりでございまして、当然その考え方を整理していく必要があるわけでありますけれども、やや教科書的な言い方になってしまいますけれども、やはり再分配を担う部分は税で賄う。
それから、再分配だけかといいますと、例えば経済学でメリット材ということで、教育を税で賄うときに、一定の社会的な価値判断から国民の合意の下で税で賄う。この辺りは、また理屈づけの評価がいろいろ分かれる点かと思いますけれども、そういった再分配とプラスαの部分を主として税で、それから、リスク分散的な部分が保険でというのが、基本的には大まかな整理としてあるのではないかと思っております。
後の方の戦後間もなく機会の平等が、GHQとか外圧でというのは、これも全くそのとおりでございまして、内発的なものとはおよそ言えないもので、むしろああいった特別な状況であったからこそ行われた改革で、ただ、評価として、かなりドラスティックな機会の平等政策を行ったことが、戦後のその後の経済発展の基盤となったという、ここもまたきちんと分析評価するべき点ではございますけれども、そこら辺の再評価は必要ではないかということです。それを踏まえた上で、では日本社会でどのように、機会の平等、再分配というのを考えていくかというのは、これはまたこれで、かなり難しい課題であろうと思います。
富の源泉と税というのも、非常に単純化して示したものでございますので、もっと実際の状況はこういうものでは割り切れない、非常に複雑な要因が絡んでいると思うんですが、少し中長期的な視点で税財源の方向を見定めていく議論も必要ではないかということで、やや大まかな整理をさせていただいたところでございます。
〇田近部会長
増渕さん、土居さん、よろしいですか。
それでは、佐藤さん、横山さん、吉川さんということで、とりあえず3人、手際よくお願いします。
〇佐藤専門委員
それでは、手際よく、まさに広井先生のおっしゃるとおり、教科書的に考えれば、確かに社会保険料が保険の部分を、税の部分が福祉の部分を担うというのは、そのとおりだと思います。ただ、今の保険料がそういう教科書的な役割を担っているかというと、現実は勿論、年金は実質的には賦課方式ですし、医療保険料だって実態としてみればお年寄りへの再分配ですね。だから、保険料自体がもう既に世代間の再分配を伴っているというところがあるので、そういう割り切りは理想的なんですが、今の社会保険料の取り方自体を変えないことには、ちょっと違うかなということと、むしろ消費税というのは、もともと教科書的に言えば、労働所得税プラス相続税と変わりませんから、あえて違いがあるとしたら、やはり現行制度でいけば消費税だったらお年寄りからも税金を取れる、収入が取れる。むしろ世代間再分配を弱める方向ですね。
そういう教科書的な考え方はわかるんですけれども、その辺の実態を踏まえて、ある意味で今、我々が直面しているのは、交付税などでは地域間再分配、年金などを通じた世代間再分配というところに余りにも重きを置き過ぎていて、例えばワーキングプアーのようなことも含めて、個人間の再分配というところに本来の力点がなかった。そこを変えていくような形での財源調達の在り方を考えなければいけないのかなと。これは感想です。
あともう一点は質問なんですけれども、環境税なんですけれども、非常にいい税金のように聞こえる、これはいわゆるダブルデリジェントだと思うんですが、そんなに虫のいい話はなくて、環境を改善していけば、当然税収は下がってきますので、みんな二酸化炭素を出し続けてくれていれば、税金は上がってきますけれども、そんなことをしていていいのかということになりますので、過度な期待はやめておいた方がいいかなというのが感想です。
〇田近部会長
それでは、横山さん、どうぞ。
〇横山委員
時代認識の最初の1ページでございますけれども、これは成長と環境が相対立するような御認識でお考えのようでございますが、果たしてそうなのか。そのときに、私たちの政府税調で本間会長時代に、成長なくして財政再建なしといったときの成長の概念が、グローバル社会における国際競争力に力点があって、そこで外需と内需という、香西先生の古い時代の議論であったかと思うんですけれども、ただ、これはすごく重要でして、これまでの成長の概念自体に精査がないのではないかと。だから、内需主導型の成長はあり得るのかどうか。
それから、成長と環境が対立するんではなくて、これも例えばポーター仮説のような考え方で、両立する可能性という社会が可能なのかどうか。この辺について、社会保障と成長をどういうふうにお考えになっているのかということも併せて、広井先生に少し伺いたいと思っております。
〇田近部会長
吉川さん、どうぞ。
〇吉川委員
3点ぐらいコメントがあります。1つは、広井先生のプレゼンテーションの中にもあったとおり、日本の社会保障は高齢者に手厚い。現役世代、とりわけ若い世代に薄いということなんですが、この点については、税調の委員の皆様方は多分御存じだと思うんですが、政府の中で今、子育て、家族応援ということで、少しシフトするかということが議論されているということです。
2番目は、広井先生のどちらかといえば公的年金をスリム化して、医療、その他の福祉を手厚くという前半です。公的な年金についてはスリム化する。それは、つまるところ、例えば医療についても医療保険、プライベートなものもあるんだけれども、種々の失敗が起こるだろうと。それに対して年金はお金であるので、種々の失敗は考えにくいというような前提というか、判断があるのかと思うんですが、これは国際的にも大変大きな議論があるところだろうと思います。
例えばアメリカの有名な学者では、フェルトスタイン、ピーター・ダイヤモンド、それぞれ共和党、民主党派の経済学者の代表選手ですが、大変な論争がある。
一方では、言ってみればアリとキリギリスで、キリギリスはお金をためるところは自助努力でできるはずだという考え方で、それに対してピーター・ダイヤモンドのような考え方は、そこにもはっきりとした種々の失敗がある。つまりダイヤモンドの有名なフレーズで印象的なのは、要するに、十分貯蓄をするというだけでは、豊かな老後には備えられない。それは、キリギリスであるということです。それと同時に、インベストメント・ワイズリー、賢い投資をするということが必要条件になってくる。
ところで、賢く投資するということは、フリーグッズではなくて、とりわけ年金という、死ぬまで一定の額をもらえるアニュイティーという特定の金融資産については、それをマーケットで自分でポートフォリオをつくるということが極めて難しい。したがって、公的年金には、日本流の言い方をすれば、2階の部分も含めて十分大きな意味があって、もしアメリカでそれを壊すとしたら、アメリカ人は大変な社会インフラを失うことになるだろうというのが、ピーター・ダイヤモンドの議論なんですが、個人的には私はダイヤモンドの考え方に賛成です。
3点目は、医療保険についてなんですが、プレゼンテーションにありましたが自己負担という言葉が大変よく出てまいります。日本では、この議論をするときには3割の自己負担、それで限界だということ等がよく言われるわけですが、これも委員の皆様方御承知だと思いますが、日本の医療保険制度には高額療養費制度というものがあるわけで、月額単位ですが、今、現役のサラリーマンだと8万円ぐらいでしょうか。それから上は原理的に青天井で保険で保証されるということになっているわけで、私はかねがね、いわゆる自己負担比率よりは保険インシュアランスという観点からすれば、この高額療養費制度の方が重要な役割を果たしていると考えております。ここら辺をうまくデザインすることによって、日本の医療保険は更にいいものになるんではないかと考えております。
いずれもコメントです。
〇田近部会長
いっぱい質問が出ましたけれども、とりあえず、どうぞ。
〇広井教授
ありがとうございます。最初の点で、保険料が単純にリスク分散というより、再分配的な機能になっているというのは、全く御指摘のとおりで、年金の賦課方式は御指摘のとおりそうですし、医療保険も保険料と言いながら、実質的には世代間移転の部分が非常に大きくなっていますので、そこがこれまでも議論がなされているように、保険料と言いながら、実質的には税のようなものになってきているので、よけい不信感なり制度の性格が見えにくくなっている。
したがって、私自身もそこはできる限り機能を峻別するといいますか、明確にする必要があるかと思います。そうなると、税の比重が高まることになってしまうんですが。
それと、後半で御指摘いただきました、世代間再分配及びワーキングプアーの問題、個人間再分配の問題、これも私、全く同意見、賛成で、そういった部分が日本の社会保障の中では、機能として弱くて、再分配となるとほとんどが世代間の移転に集中してきたという点は、新しい段階にこれから入って、是正していく必要があるのではないかと思います。環境税の話で、これも確かにおっしゃられるとおりで、そうきれいにいく話ではなくて、ただ、環境税に関して指摘しておきたいと思いましたのは、基本的な理念として、課税対象の基本の視点として、労働生産性から相対的に資源効率性という方に、あるいは環境効率性の方にインセンティブを移していくような税制の在り方ということを考えていく必要があるというのは、1つの方向としては妥当なものではないかと思いますので、それが直ちに環境税の議論、あるいは過大評価にはつながらないと思いますし、およそ税収も社会保障が八十何兆円というのに対して、環境税というのはせいぜい数千億か1兆、2兆円のレベルのもので規模が違いますので、直結する議論にはならないということはたしかだと思います。
次に御指摘いただきました、成長と環境、成長と社会保障の関係でございますが、確かに1ページのところで、この成長と環境を上下に対立させていますので、いかにも対立するかのようになってしまっておりますけれども、決して私も必ずしも単純に対立するとは思っていませんで、極力、既にいろいろ議論がありますように、経済成長と両立するような環境政策を追求していくべきであろうと思いますし、かなりの部分は両立できるかと思っております。
ただ、それでも、これは環境というよりもライフスタイルとか、そういったことも含めてのものになるかと思いますけれども、経済成長という価値のみならず、もう少し生活のゆとりであるとか、自然との関わりのようなものに軸足を置いていくというのは、対立するものではないにしても、少しそういった方向にこれから変えていく必要が、今の日本社会としてあるのではないかと思っておりますので、ややここは対立的に示しております。社会保障と経済成長に関しましては、これまでの社会保障というのは、限りない成長拡大を前提として制度が設計されてきているというのが、年金なども一部あるかと思うんですけれども、少しその辺りを拡大成長を必ずしも一義的に前提としないような社会保障の在り方、勿論、人口減少ということもその中には含まれますし、そういった社会保障の在り方ということを考えていく必要があるのではないかということで、持続可能な福祉社会という標題にしている次第です。
吉川先生のはコメントということですので、以上です。
〇田近部会長
この会議は、企画会合と調査分析部会の合同でやっております。この議論を踏まえて、秋以降の税制改革につなげていきたいということでやっております。そういうことで、委員、特別委員の方も是非、どういうことでも結構ですから、活発に議論に加わっていただきたいと思います。
それでは、八塩さん、井堀さん、井戸さん、小西さん、手際よくお願いします。
〇八塩専門委員
どうもありがとうございました。先ほどからの話の続きですけれども、日本の所得再分配と社会保障論議が、年金で若年から老年へと集中していたということですけれども、要は結構裕福な老人が年金をもらっている一方で、所得の低い若い人が社会保険料を一生懸命払うという状況になっているんだろうと聞いておりました。
そうすると、例えば所得の高い人から低い人へと再分配するということであれば、先ほど再分配は税という御議論がありましたけれども、例えばヨーロッパなどで負の所得税といいますか、税制を使って直接再分配するということをしているのもありますので、日本でそれをやると執行がいろいろ難しいとか、勿論難しい点はあるけれども、そうしたことを考えるのは重要かと思いました。その1点です。
〇田近部会長
井堀さん、どうぞ。
〇井堀委員
先ほどからインセンティブ転換ということで、労働への課税から資源消費への課税というお話を、理念として強調されていて、これは私も非常に重要だし、興味深いし、こういう点も今後の議論の中で、現実の政策なり税制改革を深めていければと思うんですけれども、そのロジック、それを正統化する理屈なんですが、さっきのお話だと、労働が余っていて、資源が希少だから労働への課税から資源消費への課税だとおっしゃったんですが、ただ、余っているか足りないかというのは、必ずしもそこに税金をかけるか、補助金を出すかということとは、直接は関係ない話だと思うんです。要するに、インセンティブの面から言えば。
例えば資源が足りなくても、マーケットで足りないものは当然値段が高く付くわけですから、去年から今年にかけて原油の値段がどんどん上がってきたのは、マーケットでもエネルギー関係の消費について、非常に将来の希少性をもってどんどん値段が上がってきたので、問題はそれを超える値段をマーケットで付けた値段以上の値段を付けるのがいいのかどうかという話で、単に希少か余っているかというだけではちょっと不足で、まさにマーケットで出した値段以上に介入するのが望ましいかどうかというところが問題だと思うんです。
そういう意味で、もう少しここのところを掘り下げる方が大事だと思うんですが、その点について、何かプラスの議論があればお聞かせ願いたいと思います。
〇田近部会長
井堀さんはサジェスチョンはないんですか。
〇井堀委員
まあ後で。
〇田近部会長
井戸さん、どうぞ。
〇井戸特別委員
非常に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。幾つかの質問です。インフォーマルな社会保障の存在で、会社と核家族と言われたんですけれども、この核を取って家族とおっしゃっておられると、私自身はよく理解できるんですが、核家族ではもうインフォーマルな社会保障が破綻してしまっているんです。今ではもう親子であっても保証しないというような傾向が、特に介護保険制度が入ってきてから、社会化が進み過ぎているという印象が非常に強くありまして、ちょっと実情に合わないのではないかと思いますが、いかがでしょうかというのが1点です。
第2点は、4ページですけれども、基礎的年金の部分について手厚くして、ある意味で、例えば100%税負担だということを考えたとすると、水準のいかんにもよるんですけれども、生活保護というものをどう考えていくべきなのかということと、直ちに制度的な調整が必要になってくるのではないかと思うのですが、広井先生の将来方向としては、生活保護制度を基礎年金制度に吸収してしまえばいいという意味でおっしゃっているのか、それとも別の意味を考えられているのかというところが、第2点の御質問です。
第3点は、ストックの再分配が必要だということを強調されておられる意味はよくわかるんですけれども、さてストックの再分配をどんな手段でやるかということが非常に難しくて、今までまける方の政策税制は非常によく機能して、機能し過ぎて、バブルまでもたらしたということまであったんですが、負担を重くするという意味での政策税制というのはなかなか難しい。
現に過去も、土地の譲渡・取得の自由化と特別土地保有税ぐらいしか、あまりやってこれていなかった。そのストックの再分配にどういう形で評価していくのか、相続税をもっと使おうというのが、私の年来の主張なんですけれども、それはそれでいいんですが、もっと強力な政策税制みたいなことを念頭に置かれているのかどうか。あるいは別の手段を考えられているのかどうか。この点についてもお伺いさせてください。
それから、7ページの環境税に関して、非常に機能的にいいますと、これは私の見方が間違っているのかもしれませんが、ヨーロッパ諸国は法人税負担を下げて、環境税を埋め合わせにとって、それでバランスを取ろうとしているんではないか。これは1つの発想だと思うんです。見掛け上の法人税負担を下げて、環境税の負担を上げて、それで言わば別の手段として重要なことに充てていくという発想、それはそれで必要な発想だと思うんですが、ただ税論理的にはあまり説明がない、整合性がつかない。
もう一つは、税環境としては、ヨーロッパにおいては消費税の水準があまりにも高くなり過ぎているので、だから、CO2対策としての環境税でも取ろうという話でないと、税負担上なかなか納得が得られない。そういう機能的な面から、環境税というのが、ごまかしといっては何ですが、主張されているのではないかというふうに、私自身は受け止めているんですが、そういう意味からしたときに、環境税をこんなにきれいに説明できるだろうかというのが疑問だ。これが私の意見でございます。
〇田近部会長
幾つか重要な御質問もいただいたと思います。まず、環境税についていろいろ御質問があったので、労働生産性から資源・環境効率性へという御質問と、あと井戸さんから、環境という名前でいろいろ具体的に増税を図られているんではないかという御意見です。お願いします。
〇広井教授
井堀先生からも御指摘ございましたように、ここは本当に論理を詰める必要がある点だと思っております。単純に労働力が余って自然資源が不足で、それが直ちに税制ということにつながるのかどうかというのは、単純に一直線にはつながらない飛躍があると思います。ただ、企業行動のインセンティブを、労働力はできるだけ少ない人数で高い生産を、自然資源は幾ら使ってもいい、そのため労働生産性を上げることにインセンティブが湧くような税制でよかった。それを、現在は相対的に失業が高くなって、自然資源不足ということが状況として出てきているので、企業のインセンティブとしては、単純に言えば労働力はむしろどんどん使ってもいいから、自然資源の使用に効率性を高める。そういった意味で、労働生産性から環境効率性にインセンティブをシフトさせていく。あるいはより大きく言えば、労働への課税から資源消費への課税。これも非常に大づかみな議論になってしまってはいるんですが、それは1つの方向としては考えていくべきではないか。
しかし、先ほども言いましたように、環境税の税収は、せいぜい数千億から1、2兆円のものですので、社会保障の八十数兆円に比べれば極めて小さいものである。ただ、ヨーロッパの改革は、環境税を入れたと同時に、別の社会保険料ですとか、場合によっては法人税を下げることで、税収中立といいますか、それで影響をできるだけ小さくしていくということで、そういった議論は、つまり負担増にならないような対応をしていき、かつ、インセンティブを変えていくという方策は考えてもよいのではないかと思います。
税論理的な説明というのも、非常にこれは難しい、深めていくべき点であろうかと思います。7ページの下の図は、非常に大づかみに整理してしまっているものであるわけですが、相対的にストックへの課税というものの比重が重要になってくる時代状況があるのではないか。また、具体的には井戸委員の御質問にございましたけれども、これは非常に再分配ということで、戦後間もない時期にかなりドラスティックに行われたという話をいたしまたけれども、これを合意を得てやるというのは、極めて困難を伴う。しかし、状況を見ますと、こういった形での負担、再分配ということを考えていかないと、結果的に経済の効率性ということにおいても、今日のお話の中で、ある程度共通のスタートラインなり、ストックの再分配が行われている社会の方が、経済成長にも寄与するのではないかというお話をさせていただきまして、これもそう大ざっぱに言える議論ではないと思いますけれども、経済効率性ということを考えても、一定の再分配というものがなされた方が、寄与する部分があるのではないか。
ここら辺りは精査していくということも含めて、検討していくべき課題ではないかと思います。
〇田近部会長
時間が予定より過ぎていますけれども、これで最後にさせていただいて、沼尾さん、永瀬さん、小西さん、井上さんで、手際よくお願いします。
〇沼尾専門委員
どうもありがとうございました。4ページ目~5ページ目のところで、広義の福祉の強化ということを指摘されていて、恐らくそれに対応する財源という意味でも、インフォーマルな社会保障の部分が解体しているので、それに対応する財源として、税をということなのかと伺ったんですけれども、こういう広義の福祉と言われている範囲というのが、恐らくユニバーサルサービスとしての子育て支援とか、雇用とか、若者対策のような幅広いものを含んでいると思うんですが、5ページ目の図を拝見した限りですと、これは公が担う部分とともに、新しいコミュニティーが担う部分があるんだというお話をまとめてくださっているんですが、実際、現実的には、関係性を取り結べないような人たちが随分増えてきていて、そこでどうしても行政が介入しないと、一定のつながりというものが取り戻せない。それが将来的な財政負担の潜在的なリスクを生んでいるような側面があると思うんですけれども、そこでの政府の役割と、そこで必要な財源として、ここに挙げてあるような、消費税、相続税、環境税というものを先生は考えておられるというふうに理解していいのかどうかということを教えてください。
〇田近部会長
続けて、永瀬さん、小西さん、井上さん、どうぞ。
〇永瀬特別委員
4ページのところで、これからの日本の社会保障ということで、医療、福祉、年金、どれを重点的に置くべきかということが書いてあるんですけれども、勿論、福祉の中に含まれているおつもりだとは思いますけれども、子どものケアの問題をどうするかということでありますとか、あと児童手当などは、現在、所得制限があって一律でありますけれども、かなりの所得の低い世帯について、どのように考えていくのかですとか、あるいは母子世帯の問題ですとか、その辺についてのコメントが少ないように思いましたので、その辺についても御考慮いただければと思います。
〇田近部会長
小西さん、どうぞ。
〇小西専門委員
本日の御報告は、持続可能な社会ということでしたので、非常に注意深くおっしゃったと思いますが、中長期か長期か超長期かわかりませんけれども、基本的には国民負担率を引き上げる方向で、年金ではなくて医療、保険への現物給付を中心にということで、私も基本的にそのとおりだと思います。持続可能な福祉社会はヨーロッパであって、アメリカではないわけですから、そういう方向がモデルではないかという御提案は、そのとおりだと思うんですが、政府税調としてまとめていくときに、持続可能な福祉社会を築く前に、ただいまの未曾有の財政収支の不均衡をどうするかという問題の方が、どうしても先に来る問題がありまして、そのことを解決するために、賛否あると思いますが、成長重視路線の小さな政府路線で収支均衡するということが1つテーマになっていて、それはそれでやった上で、その次の課題として、今日の御報告がありますというふうに考えた方がいいのか。やはり成長重視路線の小さな政府一辺倒でいいのかという御提言なのかというところが、もう一歩お伺いしたいところであります。
〇田近部会長
井上さん、どうぞ。
〇井上特別委員
7ページの課税されるべき税財源ということで、消費税については考えられることなわけですけれども、相続税を社会保障に充てるということについては、非常に問題があるのではないかと。要するに、日本というのは島国であり、家族主義でずっと来た日本、その良さというものを、この相続税によって、要するに核家族化させてきたわけですね。
それをずっと続けていくべきなのか、どうなのかということを問題視すべきであろうと。今、中小企業というものが非常に廃業が出てきておるのも、要するに、そういう相続税を取ることによって継続を困難にさせているという面もたくさんあるわけでして、そういうものを財源にして社会保障に充てるべきということは問題ではないかというふうにも思います。
それから、労働への課税から資源消費への課税、これは確かに考えられないでもない。ただ、しかし、一方において、所得税の軽減ということをイコールにしていかないとならないと思います。
〇田近部会長
時間をオーバーしているので、手際よくお願いします。
〇広井教授
それでは、簡潔に申し上げます。最初の御指摘、5ページの公私の役割分担と財源の関係、これは私の方でも説明がうまくできていませんで、私としては公私の役割分担の議論と財源の話を、別の文脈で考えていましたので、直結する形で、一応独立したテーマで、その場合の財源をどこに求めるかというのは、また別途検討していく。差し当たっては独立したテーマではないか。
ただ、私としては、2番目の御指摘とも関係しますけれども、新しいコミュニティーやこういった部分を強調するあまり、公的な福祉が非常に小さいものになっていってはいけないという基本的なスタンスを持っておりますので、2番目の御指摘でございましたように、具体的に福祉のどの部分を充実させるかというのは、十分お示しできなくて恐縮だったんですが、やはり子どもや母子世帯、そういった部分での、先ほどもありましたように、そういった世代内の再分配、特に人生の初めの保障が非常に脆弱化しているという部分は、特に強化していくべきである点だと思っております。そこら辺はむしろ私の方も更に勉強していきたい点と考えております。
3番目は、基本的なスタンスとして、私自身は小さな政府でまずやって、ある程度財政を均衡させるというよりは、むしろ並行して持続可能な福祉社会、やはり負担の問題を避けてはもういけない状況になってきていると思いますので、勿論、成長ということがあって、それが問題を緩和させている部分が多ければ多いほどいいわけですけれども、それと並行して少なくとも負担の問題を考えていかないと、結果的に若い世代にどんどんしわ寄せがたまっていくという状況が顕著になってきているように思っております。
相続税は御指摘もありましたように、まさに社会の単位を、個人と考えるか、家族、家計と考えるかというのは、かなり根本に関わる問題ですので、非常に意見が分かれるところかと思います。
ただ、状況として、相続の際での、ある程度そこで格差を是正するような方策を入れて、個人が人生の初めにある程度共通の土俵に立てる社会にしていった方が、社会の活性化という点で、より望ましい帰結を生むのではないか。これも精査した研究が必要ではありますけれども、そういった視点も考えていくべき時期に来ているのではないかと思っております。
〇田近部会長
広井先生、どうもありがとうございました。今後の社会保障と、我々の領域でいえば財政ということで、幾つか非常に重要な、印象に残るお考えが示されたと思います。内容については、最後に広井先生がおまとめになられたので、これ以上繰り返すことは避けたいと思います。
どうもありがとうございました。また今後ともよろしくお願いします。
続きまして、今日の第2の報告に移りたいと思います。今度は企業課税の方ですけれども、企業負担と経済活性化の関係についてということで、専門委員の加藤委員に報告をお願いしたいと思います。
これは、第2の領域の井堀主査のところの「税制が経済及び社会構造・経済主体の諸行動に与える影響の検証」の一環として報告していただくということで、井堀さんに一言コメントいただいて、開始したいと思います。時間が押しておりますので、20分ちょっとぐらいでお願いします。
〇井堀委員
我々の作業グループでは、今、田近さんから紹介いただいたようなテーマについて、主に企業に与える効果と金融所得課税の話を今やっているんですけれども、今日は加藤さんに企業負担と経済活性化の関係について、特に法人税減税が設備投資にどのぐらい効くのかについてサーベイの話です。
これは、ミクロのデータを使った分析ですので、話の性質上、かなりテクニカルにならざるを得ないところがありますので、なるべく加藤さんに工夫していただいて、直観的にわかりやすく説明していただきますが、話の性質上かなりごちゃごちゃした話にならざるを得ないという点も御配慮していただければと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
〇田近部会長
それでは、20分ぐらいでお願いします。
〇加藤専門委員
加藤です。どうぞよろしくお願いいたします。私よりも全然法人税に詳しい先生方がたくさんいらっしゃる前でお話するのは非常に僣越ですし、田近先生や吉川先生の前でこういう話をするのは緊張しております。
まず1枚開けていただきまして、キック・オフの議論としまして、これは皆さん御存じのところかとは思うんですけれども、法人企業の公的負担とマクロ経済の関係というものを、簡単に整理してみたいと思います。
一般的な議論の中で、例えば公的負担がどういう形で設備投資に影響を与えるのか。右側に5つありますが、法人税率を引き下げることによって、これがもし設備投資の拡大につながるとするならば、これが今日の一番大きなテーマになるんですけれども、それがマクロ経済の押し上げ効果があるだろうということになりますし、もう一つは、法人税率の引き下げということで、いわゆる外国企業による対内投資の促進につながる。更にキャッシュフロー増加による賃金・配当の増加。3番目は結構ありそうだと思っております。
それから、これもよく言われている、財・サービス価格の低下等に対するプラスの効果。法人税率引き下げですと、大体この4つぐらいの大きなプラス効果が主張されるわけですが、その一方で税収が減少するという当たり前の話も当然あるわけでして、それによって日本の場合には、それほど明示的ではないですが、財政赤字の拡大と利子率押し上げ効果が、せっかく法人税率を引き下げたのに対して、資本コストを逆にまた引き上げるという方向性もないわけではないということがあります。
1枚めくっていただきまして、これは経済産業省の報告書、井堀先生が主査をやられた研究会だと聞いておりますが、これも今と同じような話を載せております。大事なところは、多分法人税率を引き下げたときに、その恩恵が企業だけに行き渡るように思われているところでありますが、実際には製品の引き下げ、キャッシュフロー増加による所得の増加等々によって、これはすべての人に対して影響が及ぼされるんだというところも一応見ておかなければいけない点だろうと思います。
もう一枚開けていただきまして、それでは、今、申し上げましたキック・オフの議論の中で、具体的にどういうことが起きそうなのかということを簡単に見ていきたいと思います。これは、今、見ていただきました研究会の中のアンケート調査の結果だと思います。ちょっと社会保険負担が増大した場合となっておりますが、これは法人所得課税負担が増加した場合というふうに読み取っていただいても構わないと思うんですが、もし税率が上がった場合、本来ここで税率引き下げという議論をしていかなければいけないんですが、上がったとするならば、どういう反応を示すかというところで、最も大きいのが賃金雇用調整で対応するということであります。あとぎりぎりまで我慢するというのが一番大きいです。
それでは、設備投資の抑制、これは社会保険料負担ですが、すなわち法人税率を上げたことによって、どこまで設備投資が影響されるかというと、ここでは短期的には抑制で対応するといったところが2.9%しかございません。ちょっと見づらくて申し訳ないです。ということは、法人税率の上げ下げによって、どこまで設備投資に影響が与えられるかという点に関しては、どうも考えているほど感応的ではないのかもしれないという点が、あるかもしれません。
それから、下は法人所得課税の実効税率の国際比較という問題であります。勿論、法人実効税率、それが国際競争の中で非常に大事な問題であるということはあるのではありますが、例えば日本のところを見ていただきますと、国税ベースで27.89%、これは各国の税制の違いによって、国税、地方税の違いもあると思うんですが、日本の場合、国税だけ取ってみると、相当低いところまで来ている。更にこれを下げるということになったときに、それはどちらを動かすかということもあるんですが、それは国と地方の税財源の配分問題という点からも考えていかなければいけないだろうというふうに考えております。
もう一枚開けていただきまして、では、そういうプラスの面とマイナスの面、勿論経済活性化という点からすれば、税を使って活性化ということは、当然の話とした中でも、果たしてそれが法人税率を下げることによってうまくいくのか。それは、法人税率の引き下げ、資本コストに影響を与えて、設備投資にどれだけの効果が与えられるのかという点から考えていかなければいけないということになってきます。
そこで、若干テクニカルなんですが、設備投資の理論というのが経済学で幾つかございます。アドホックな形で、例えば現実のマクロの経済がよくなれば、それに応じて加速度的に投資も行われるだろうというような加速度モデルと言われているもの。
企業の財務構造や配当施策というのは、基本的に設備投資の決定要因には無関係である。新古典派的に、資本のユーザーコスト、資本コストが投資にとって大事だという議論。
これは細かいことを言っていると、いつまでも時間がかかってしまうんですが、qモデル、企業の株式市場での価値と資本の再取得価格を見て、企業の株式市場の価値が、実際の再取得価値よりも高ければ、これは投資に行くだろうというような、トービンのq理論以来の設備投資の理論がございます。
ここで、理論の中身を並べるんではなくて、考え方によって、例えば資本コストの変化が設備投資に及ぼす効果を、どうやって計算するかとなると、新古典派モデルなり、あるいはトービンのqを使ったモデルでの推定がよく行われているんですけれども、ただ、現実的に、経済学的なパフォーマンスからいきますと、あまりパフォーマンスがよくない。昔から言われているように、加速度モデル、アドホックな方が非常によくて、なかなか計量的に分析しようとしても、理論的には勿論こういったモデルは非常に大事なことなんですけれども、どこまで実証的に解明できるかという点について、幾つかのクエスチョンマークがないわけではないということがございます。
さて、5ページでございますが、そういったことを踏まえて、具体的にさまざまな実証分析、試算が行われております。後で実際の研究のサーベイもさせていただきたいと思うんですが、ここでは政府関係機関の方々がやられた簡単なサーベイです。2002年の内閣府の資料によりますと、これは法人税率を1%引き下げることによって、設備投資を0.4~0.5%ぐらい引き上げるだろうという試算がなされております。この試算というのは、先ほど加速度型モデルというのを使っておりまして、特に法人税率引き下げが資本コストに影響してというような経路ではないということであります。単純にキャッシュフローを増加させてということになって、キャッシュフローの増減が投資に影響を与えるというような経路になっております。
先ほどの研究会の報告でありますが、これも減価償却制度の変更というのが前提だったんですが、資本コストが4.5%低下すると、設備投資を1.5兆円ぐらい押し上げるというようなことになります。
これはちょっと古いんですけれども、99年の『経済白書』の中では、法人課税の実効税率を3.62%ポイント引き下げる、それは当時の実効税率から下げるということですが、そうすると資本コストは1.5%下がる。ただし、この『経済白書』の中では、それ自体が設備投資にどこまで影響を与えるかとなると、必ずしも大きくはないというコメントもそこに付けられております。
時間も関係もあるので、あまり長くはできないと思いますが、以上の点を踏まえて、簡単に幾つかの留意点を、途中の整理としていきますと、1つは分析の視点としまして、活性化のために企業の負担を考えていかなければいけないという問題がありますが、資本コストの軽減というのが一般的に言われれば、短期的には設備投資増加の需要増加をもたらすとともに、それによって投資が増えれば、当然生産能力の増強という効果を持つという問題があります。ですから、それを考えていくためには、一般均衡アプローチ、もしくはマクロ経済全体を視野に入れた分析が必要だということもあります。
それと同時に、税収との問題も考えていかなければいけないだろうということがあります。
同時に留意点として、例えば永幡・関根論文、あるいは土居論文もあるんですが、税率を下げても、それが即設備投資に行くんではなくて、やはり周りのさまざまなバランスシートの問題であるとか、あるいは企業の資金繰りの問題とか、そういったところを踏まえていかないと、直接キック・オフの議論にあるような形の、単純な一本通行の議論、単純にうまくいくという話は、ちょっと考えておかなければいけないのではないかというふうに思います。
7ページ以降、日本における研究事例、海外における研究事例を、簡単に御紹介したいと思います。
ここには、田近先生の御研究を含め、いろんな方々の簡単なサーベイがあるんですが、資本コストについて見れば、これは資本コストを下げることによって、投資はあるんだけれども、実際問題、資本コストへの低下に対して税制の影響というのはそれほど大きくはないのではないかというような研究もあります。これは、例えば田近先生の御論文であるとか。あるいは、竹中先生辺りの1986年の論文についても、日本の場合、設備投資の大きさを決める資本コストの変動に対して、税制要因の貢献というのは、今までわずかであったというような研究もございます。
8ページで、Tax-Adjusted Q、これはqモデルの中に税制であるとか、そういったものを含めたモデルであるんですが、qモデルを使った場合においても、そのq、法人税の減税というのは、それなりに設備投資に対して影響を持っているということはあるんですけれども、しかしながら最近では、上村委員の論文にありますように、過去はそういったものでうまく説明できていたんだけれども、最近では産業ごとに効果が違うとか。あるいは説明力そのものの大きさが随分変わってきたというような指摘もございます。
次の9ページは、大まかに分けたものであります。法人所得税の税率引き下げによって、設備投資への効果というのは、一般的に認められているという点もあります。
ただし、その一方で、税制が資本コストに影響を与えるのかとなると、それに対してさまざまなペンディングの議論もあるということになります。
ちょっと早めですが、10ページを開けてください。先ほど申し上げましたように、法人税率の引下げなり、法人税額の減税なりを行ったときに、どこまでマクロ経済にインパクトを与えることができるかという問題を考える場合には、さまざまな方法があるんですが、ここではマクロ経済モデルというものを使ってシミュレーションして、どういう結果が出るかということを紹介させていただきたいと思います。
1つは、短期日本経済マクロ計量モデル、これは内閣府さんがお持ちになられているモデルですが、毎年公表されておりまして、隔年ごとに若干の違いは出ていると思いますが、2006年版モデル、公表レベルのモデルで言えば、名目GDP1%相当額の継続的な法人所得税の減税が、1年目に4.5%の設備投資を増加させて、GDPを0.68%上昇させるということになっております。
その一方で、財政収支が0.84%悪化させるというような、数値としては、これが1つのベンチマークとして、こういう効果があって、そしてGDPを引き上げる効果があるというところは出てくるのかとは思います。
その一方で、税収が悪化するという点も留意しておかなければいけないであろうと思います。
ただ問題点が幾つかございまして、これは内閣府さんのモデルだけではないんですけれども、いつの期間を考えるのか。そして、いつまでの、どういうモデルをつくるのかによって、実はプラスがマイナスになるということはないとは思うんですけれども、この効果の大きさというのは、相当範囲を持って考えていかなければいけないのではないかというふうに考えております。
次は、内閣府さんの経済財政モデル、これは中期のモデルですが、これも同じように名目GDP1%の法人税の減額、大体初年度5.4兆円程度を下げることによって、実質GDP0.35%を増加させる効果があるということであります。
ただし、その一方で、税収として5.4兆円程度の税収減ということになるわけでして、そういうことを考えたときに、全体のバランスの中で、どういうふうに考えていくのか。どういうモデルを組むかということによっても変わってくるんですけれども、どういう効果をこれから読み取るのかというのは、そう単純なものではなさそうだということも考えられるかもしれません。
あるいはこれは民間のモデルではありますが、電力中央研究所というところがございまして、そこでマクロ計量経済モデルで法人税減税のシミュレーションをやっております。ここでも1兆円の法人税減税、それぞれのモデルのシミュレーションによって大きさが違うんですけれども、先ほどの名目GDP1%相当額に比べると、5分の1程度の減税でありますので、上と合わせると5倍ぐらいしていただければよろしいかと思うんですが、設備投資を0.32%、GDPを0.05%、5兆円ぐらいの減税ですと0.2%~0.25%ぐらいGDPを押し上げるという結果が出ております。
こういう結果で、法人税の減税、税率を使うのか。あるいは税額控除を使うのかという話は別にして、減税によると試算としてはうまくいくという数字もあるということになります。
さて、そういう日本の議論と同時に、少し海外での研究事例、これは昔からさまざまな議論がされておりますし、さまざまなサーベイが行われておりますので、ここではできるだけ新しいところだけ取って考えてみようと思います。この下の分析の視点のところだけ見ていただければいいんですが、法人税の減税を行うことによって、企業内部の資金が増えて、それが設備投資を促すのかどうかという分析の視点があり、そしてその結果、アメリカを中心としたサーベイですので、アメリカの場合ですと財政黒字が縮小することによって、長期金利に影響を与え、それが投資増を相殺するような方向性もあるんではないかという議論があります。
もう一つ、法人税制の変更は、どれだけ資本コストを変動させるのかという議論があります。実は、この2点は、先ほど申し上げましたように、法人税率を減少させたときに、少し考えておかなければいけないという、日本でのサーベイの結果とも全く一致するところでございます。
そういうことを踏まえて、12ページ以降の簡単なサーベイを見ていただきたいと思います。
今日は、全体にこういう結論というよりも、材料をお出しするということを前提として考えておりまして、ポジティブな見方と、どちらかというとネガティブな見方と2つそろえてあります。
1つは、ポジティブな見方としましては、やはり内部留保資金というのが投資にとって大事なんだと。ですから、法人税率の引き下げによって、内部資金が増えることによって投資にいい影響を与えるんではないかという研究であるとか。
あるいは[3]の研究ですが、パネルデータの分析から、Tax-Adjusted Qモデルというのは、まだまだ十分ではなくて、キャッシュフローをやっても、そのモデルを使ってもキャッシュフローが設備投資に有意に影響しているということがあります。
最近の見方として、やはりブッシュ政権になって以降の減税というところも含めて、投資インセンティブというのは非常にアメリカの経済成長を支えているんではないかという見方があります。
13ページ、とはいうものの、逆の方もございまして、実はいろんな実証分析の中で、資本コストを下げることよって、設備投資は増加するという見方があるんですが、実はそれほど多くないという見方もあります。これは[1]の研究の中にもありますし、[2]の研究の中で、実はいろんなシミュレーションの中で、税率が下がって、そして財政黒字が減少することによって、どうも利子率が上昇して、それが例えば長く続くと、せっかくの減税の効果がすべて失われる。そういうシミュレーションも実際に出てきております。
更にキャッシュフローそのものが設備投資に及ぼす効果が、本当に確立したのかどうかという見方もいろいろとございます。
最後でありますが、今日のプレゼンの中では、具体的にこうした方がいい、ああした方がいいというよりも、やはり材料をごらんいただいた中で、さまざまに検討すべき課題というものも提案させていただきたいと思います。
これから、高齢化、人口減少という中で、やはり経済社会のトレンドを考えたときに、成長はもう間違いなく必要であり、そのためには活性化していかなければいけないということは、確かにあるという点は、これはまず間違いないし、税調の中でも当然のものとしてあるんではないかと思います。
とりわけ、これから高齢化していき、国内の貯蓄率が低下して、投資資金が不足になったときに、どうやって投資を呼び起こすかということは、重要な問題だと思います。しかし、その中で税率を引き下げてキャッシュフローが増加したとしても、果たしてそれは設備投資に直接結び付くのか。将来の需要とか将来の期待に対して、やはり設備投資を行うときに、中長期的な問題もあるんですが、短期的に見ても将来の需要に対する見方、期待がなければ、なかなか企業としても設備投資をするとは限らないでしょうし、先ほど広井先生のお話にもあった、社会保障との関係ですが、年金の保険料率もこれから18.3%まで引き上げられていきますし、多分医療保険についても上がっていくかもしれません。そういった社会保険の保険料の負担の増加ということも踏まえながらやっていくと、企業の雇用主負担が、法人税率を下げたとしても、実質的にはそれほど下がらないという問題もあるかもしれません。
あるいは、最後ですが、例えば2010年代前半の財政均衡プライマリーバランスを維持するといった問題に対して、どういう位置づけでこれを行うのか。中長期的にはもうやっていかなければいけないということは間違いないんですが、さまざまなことを考えながら、バランスを持った議論が必要ではないかと思っております。
以上であります。
〇田近部会長
大変ありがとうございました。いろいろ工夫に工夫を重ねての御報告だったと思います。
続きまして、もう一つお手元に資料があると思うんですけれども「日本を救うための東京改造計画」という資料です。猪瀬委員の方から資料提出があり、説明したいという御希望があります。時間も押しておりますけれども、法人税と深く関わる問題だろうという判断で、この部会の中で、御説明いただくことにさせていただきました。今後またいろいろな方が御意見、御要望等あると思いますけれども、適宜こういう形も含めて判断させていただきたいと思います。非常に時間が貴重ですから、猪瀬さんから手際よく御説明をいただきます。お願いします。
〇猪瀬委員
突然申し込んだので、御迷惑をおかけしましたけれども、短くやります。
実は、先週も「地方分権改革推進委員会」にこの資料を出しましたものですから、政府税調の委員の方々にも認識を共有していただければと思いました。これは地図ですから、少し頭をやわらかくして、楽しんでながめていただければいいと思います。
東京DCという赤いラインを区切ったところで、大体人口が300万人です。千代田区というのは天皇陛下以外に4万人ぐらいしかいませんから、都心の部分はそれほど人口が密集しているわけではない。生活空間としては、非常に少ないわけですが、税収は圧倒的に東京DC部分に入っているんです。
この赤いラインは、12区+αと書いてありますけれども、北区の半分と目黒区の半分が切れて、この赤いラインの中に入れてあります。山の手線とその外側、山の手通り、環状6号、今の池尻から新宿、池袋の方に地下の工事が進んでおりますが、東側が荒川の中央環状の高速道路が通っておりますけれども、山の手線と首都高速の環状線の部分が1つのエリアかと考えて、仮説を立ててみたわけですけれども、その外側の青い部分は大体560万人で、少しくっ付けたりしますと、政令指定都市が7つできます。都下は400万人です。実際に中身の部分だけめくっていただきまして見ていただくとわかるんですが、東京に入る税収5兆7,000億円のうち、赤くラインを引いた東京DC特区に入る税収が3.3兆円で、特に法人二税、法人住民税と法人事業税が東京の総計では0.8と1.1ですから1.9兆ですが、うちDC部分が法人住民税0.6と法人事業税0.9で合わせて1.5兆です。
したがって、この赤いラインの部分にほとんどの法人住民税、法人事業税が入ってくるということになります。
更に述べるならば、日本全体の法人二税の2割が東京に入るわけですから、税収の偏在というのは国家レベルで是正していく必要があるし、これは東京都の自己努力で税収が上がっているわけではなくて、東京という立地条件が税収をもたらしているということで、近年のグローバリズムを含めて、富が東京に税収として一局集中しているということで、それを直していく必要があるのではないかということを考えていただければ面白いと思います。
もう一つ付け加えるならば、東京都心に税収が集まって、それは国全体のために使うことが正しいわけですけれども、例えば千代田区は18歳まで児童手当が出るとか。23区のうち19区で医療費が無料である。医療費無料というのは、高所得の息子でも無料である。つまり所得制限なしなわけです。ですから、所得制限なしで医療費無料である。つまりばらまきが行われているわけです。
だから、この東京都の現状を少し変える。それは日本を変えることであるという問題提起で、法人二税がとにかく偏ってここに集まっているという現状を認識していただければということであります。
以上です。
〇田近部会長
どうもありがとうございました。盛りだくさんになってしまいましたけれども、メインには加藤さんの報告に基づいて議論したい。猪瀬さんの御指摘は、この場でも東京における税の偏在の問題、あるいは日本全体における法人税の偏在の問題は、ここで改めて、また機会を見て検討していきたいと思います。
加藤さんのは、非常に時間が押して申し訳なかったと思いますけれども、やはり最後のいろいろなモデルの考え方に従って、税制が経済にどういう影響を与えるかという議論をなさった後に、やはり最後に幾つか非常に重要な御指摘をされていると思います。
法人企業の公的負担ということを考えて、少子高齢化の中で、法人の税を下げたらば、それをR&Dにちゃんと寄与するんですかと、あるいは日本に投資が来てくるんですかと、あるいは法人税を引き下げると企業のキャッシュフローが増えるけれども、それが投資に回るんですかと、あるいはそれがそうじゃなくて社会保険料に消えてしまうんではないですかと、あるいは金利がそういうことで上がって逆の効果があるんじゃないですかと、加えて、今日はお話になっていませんけれども、欠損法人、法人税の帰着ということで、この税調の我々の審議においても、議論されるべきことが論点としてきちんと提出されたのかなと思います。あとは、皆さん、どなたからでも御意見をおっしゃっていただければと思います。
では、國枝さん、佐藤さん、手際よくお願いします。
〇國枝専門委員
加藤先生、大変短い時間でまとめられて、どうもありがとうございました。大変参考になると思います。
それで、1点だけ付け加えたいんですけれども、時間の制約もあったということだと思いますけれども、Tax-AdjustedQの分析が中心に出てきたわけですけれども、90年代以降、投資の不確実性みたいなことがあるので、リアルオプションを使った分析という、リアルオプション・アプローチ、あるいは投資調整があまりスムーズではない濫費なケースということで、新しいモデルが出てきております。
それに基づくと、少なくとも短期については、今までのモデルの予想とは違いまして、投資減税等の効果というのは、非常に小さなものになるというような話が出てきております。
更には、最近では経営者の個性とか、あるいはコーポレート・ファイナンスの知識とかが実際の企業行動、企業投資に影響を与えているというような議論がございます。リアルオプションの話というのは、もともと日本の企業がどうして過剰投資体質なんだろうというところから始まった議論でもありますので、なかなか正直なところ、日本でまだ分析がなされていない分野ではあるんですけれども、重要だと思いますので、今後の企業減税等の議論の中でもそういった点も踏まえて議論がなされればいいなと思います。質問というよりもコメントでございます。
〇田近部会長
では、佐藤さん、お願いします。
〇佐藤専門委員
私も手際よく、3点だけなんですけれども、非常に勉強になりました。
今回は、法人税が資本コストを通じて、企業の投資活動にどんな影響を与えているのかということについても実証文献のサーベイだったと思うんですけれども、例えば中小企業の場合と大企業の場合は、やはり違いますね。よく言われる資金調達の源泉が違いますので、だから、同じ投資効果といっても、やはりそれは中小企業に及ぼす効果、大企業に及ぼす効果というところで区別する必要性があるでしょう。
もう一つは、起業活動にどういう影響を与えるのかという視点も大事なのかなというふうに思います。ベンチャーとかいうのは、今、重視されるようになっていますので、それは第2点目です。
第3点目は、二重課税との関係で、これはもしかしたら加藤先生の担当ではなかったのかもしれませんが、例えばCBITとか、ACEとか、あるいはノルウェーのシャーホルダイカブタックスとか、ああいう形で課税ベースですね。課税ベースを調整することで、要するに二重課税を避けて、要するに実質的に投資に対するネガティブなインセンティブ効果を抑制しようと、そういう話もありますけれども、この辺はどういうふうにとらえられているのかなということです。
〇田近部会長
時間が限られていますから、今のことも加藤さんにノートしていただいて、お答えいただくとして、我々の税調で、非常に重要な企業課税をどうするかということで、考え方とか、今日のプレゼンテーション全体に対する御意見とか、林さん、横山さん、江上さん、では、今のお三方、どうぞ。
〇林委員
検討課題と議論する起点で、これもいろんな選択肢があると思うんです。前回の中里委員の御発言の中で、要するにいろんな代替的な手段がある中で、どれが一番効果的なのかということを考えなければいけない。
そうしたときに、例えばR&D同士を促すという場合には、法人税全体を下げる場合と、それからR&Dをねらいうちした特別措置のような、そういう方法です。
これをやはり検討しなければいけないのか、あるいは当然税に対する受益があるわけですから、税収が減で財政収支が悪化するからマイナスという話と同時に、一方で法人に対するベネフィットというのがあるので、それの比較考量といいますか、やはりその辺りもやっていかなければいけない。
ほかの条件全体を所与としたら、当然減税すれば、マイナスの効果が出るということはあり得ないわけですね。ですから、前回やらないよりはましという話もあったわけですけれども、やらないよりはましという形の考え方で行くのかどうかという問題、これはやはり選択があって、機会費用がありますから、そこらをどう考えるのかということです。
ですから、財政収支が悪化するから金利が上がってということだけではなくて、それ以外の代替的な手段と、そしてベネフィットがどうなるのかという話を考えなければいけない。
〇田近部会長
ポジティブなエフェクトがあるとすれば、もう少ししっかり議論してほしいということですか。
〇林委員
そうですね。ですから、検討すべき課題というところがもう少し多くなるんではないかという気がします。
ドイツで経済活性化というのがあまり効果がなかったという話と、それから今回の引下げも経済活性化というよりは、むしろ税収の問題だと、これはどう認識すればいいのか、部会長、どのようにお考えになられたのか、ちょっと教えてください。前回にちょっとお聞きできなかったものですからね。
〇田近部会長
では、時間があったらお答えすることにしたいと思います。
横山さん、江上さん、どうぞ。
〇横山委員
私は、2点だけ、このレベニュー・ニュートラルでやるとしたときに、どういうような形が一番エフェクティブなのかということを勘案いただきたいということ。
それから、オープン・エコノミーのときに、海外部門、グローバル化といったことが、どこまで考えられているのかということについて少し御検討いただきたい。この2点です。
〇田近部会長
では、江上さん。
〇江上委員
先ほど広井先生のお話も含めて、今回、加藤先生のお話を伺って、非常に共感できる部分もございました。
広井先生の、先ほど御説明はなかったんですけれども、8ページの付論で定常型社会の可能性ということで、イメージの御提示があったんですけれども、ここでやはりこれからの新しい税制の在り方として、こういう持続可能な社会を実現するための税制の在り方として、やはり政策税制というのは、非常に有効に機能するのではないかと思っております。併せて、加藤先生の御説明で、いろいろ過去の研究を御紹介いただきましたけれども、9ページの表2に非常に簡明に3段階に整理されておりますが、私は産業界にいろいろ研究開発とか事業戦略等を考えておりまして、これが非常に実感値と合います。極めて合います。
そういう意味では、近年の政策税制の有効性とか、そういったものをまとめた研究結果などが、もしあれば、その辺もまた御教示いただきたいということと、それから併せて、近年GDPの増加率の9割ぐらいがサービス産業ということで、私たちは、職業の問題も少し調べているんですけれども、やはりサービスの職業が非常に拡大して、サービスの生産性を高めるということを、今、経産省なんかは、いろいろ研究会を立ち上げてやっているんですけれども、サービスの労働の生産性を高めるためにも持続可能な社会にする上では、例えばワーク・ライフ・バランスは皆さん御存じだと思いますけれども、非常に家庭と子育てと仕事を両立、労務管理政策なんですけれども、例えばワーク・ライフ・バランスを実現している企業には優遇税制を行うとか、あるいはこれも生涯学習なんかの分野では、議論で萌芽的に出ているんですけれども、職業能力の再開発とか、そういった問題で、自己啓発に関する優遇税制を行うとか、いろいろ持続可能な社会に対応する、政策税制として、いろいろ優遇税制措置の議論というのは萌芽的に出ているんです。
しかし、そういったものは、なかなか議論だけで政策化するレベルには入っていないんですけれども、是非近年の政策税制の効果をいろいろ分類して、何かの機会に御提示いただけると、今後の議論の一つの材料になっていくんではないかと思います。お願いです。
〇田近部会長
ありがとうございました。期待が高まる一方のような感じがしますけれども、大別して、私が御質問を伺っていて、政策税制とは一体どういうもので、それがどんな具体的なポジティブ効果を持つのか、それは何人かの委員、ようするに今の江上さんのもそうだった。
もう一つは、國枝さん、佐藤さん、横山さんの方から、投資の働き方のメカニズムとか、オープンのところはどうだとか具体的な、とは言っても時間があまりないので、ポイントを選んでお答えください。
〇加藤専門委員
どうもいろいろとありがとうございました。
國枝先生からは、これはコメントをいただいたということにさせていただきたいと思います。
次の中小企業と大企業の違いをどうするのかという問題は、確かにあると思います。欠損法人の話も含めながら、やはり企業ごとに違ってくるんだろうと思います。
ただ、ここではマクロでしか見ていないので、ちょっとそこまでは何とも言えないと思います。
起こす方の企業活動に対する効果というのは、先ほどの政策税制の江上委員の御質問と同じように、政策税制という形で、どういうふうに誘導していくかという問題と絡んでくるのかなという気がします。
二重課税の問題につきましては、これは後の方のプレゼンにちょっと逃げさせていただきたいと思います。
それから、どういうものがポジティブなのかというのは、結構難しいところがございまして、今、どういうふうに申し上げていいのか、何とも整理が付かないところなので、少し勉強させていただきたいと思っております。やらないよりはましということなのかどうなのかということについても、ただ、それはどういう分析視点でとらえるかというところの問題になってくるのかもしれません。
それから、R&Dをねらい打ちにするのか、法人税一般の引き下げかという問題では、確かにR&Dのねらい打ち、あるいは投資減税の方が税率を下げるよりは絶対に効果的だということはあると思います。それは、まさに政策税制という話の中に入っていくんだろうと思います。
政策税制のお話なんですが、やはり経済活性化ということになると、一般的なマクロ全体への話と、それから個々の政策をどういうふうにして実行していくかという問題と、そこは分けて考えていく必要があるのかとは思います。
ただ、全体的なサーベイがどこまで行われているかというのは、ちょっと不勉強でわからないんですけれども、これからちょっと勉強させていただきたいと思います。
以上であります。
〇田近部会長
では、井戸さん、それから長谷川さん、お願いします。
〇井戸特別委員
非常に税制との投資行動との関係で、分析的な資料を提供していただいてありがとうございました。
さて、それで企業が本当に投資をするときに、税制のウェートがどれぐらいあるのかというのが本当は知りたいんです。
つまり、税負担なのか、需要対応なのか、供給能力向上なのかというような問題が、あるいは資金コストがどうなのかとか、そういう総合的な判断の中で、企業は投資を決められているので、税制なんかだけでは、現実に全然決めていませんね。
そういうようなことを考えておかないと、単純に国際比較だけして、国際競争力が劣るから、税制水準を合わせなければいけないというような議論になってしまうと困るのではないかというのが1つです。
ですから、そういう意味では、投資行動の、できれば決定要因みたいなものの分析がないんだろうかという、ないものねだりかもしれませんが、それが1つです。
もう一つは、いつも海外との関係というのは非常に強調されるわけですが、海外との関係を念頭に置いて投資行動されている企業が、日本の企業の中で何ぼあるのか。その何ぼあるかというところに対する議論が、全部を支配してしまうということについて、いかがなんだろうか。
こういう点についても十分な分析を踏まえた上で議論を進めていく必要があるのではないか。これは、もうコメントです。
〇長谷川委員
私は短く。1ページの表ですけれども、これはそれぞれの効果について、時間軸についてイメージをちょっと語っていただけたらありがたいと思います。
つまり、ポジティブな効果とネガティブな効果とそれぞれあると思うんですが、ポジティブな効果が先に来て、ネガティブな効果が後に来るとか、あるいはネガティブな効果が先に来て、ポジティブな効果が後に来るとか、さまざまあると思うんですけれども、ざっくりとしたことでも結構ですから、時間軸についてイメージがあれば、ちょっと教えていただきたいと思います。
〇田近部会長
では、お答えをお願いします。
〇加藤専門委員
ありがとうございました。最初の御質問ですが、税制がどこまで重要なのかという問題については、2ページ、3ページにもありましたように、例えば法人税率が上がったからといって、急にそれが全部設備投資を抑制しないというようなサーベイ調査もありますので、まさに同感だと思います。
時間的な効果については、これは非常に難しいかなと思っておりますが、基本的に企業が法人税率を引き下げたということをどこで把握して、それが投資にどこまでのタイムラグというのがあるかという問題が、まず出てくると思いますし、あるいは政府の税収の減少が、例えば金利に影響するにしても、それはまたタイムラグがございます。
特に、どちらが先ということではなくて、どちらも同時に影響していくというようなことしか、今のところは何とも申し上げにくいところだと思います。
以上です。
〇田近部会長
ただ伺っていて、今、長谷川さんの御質問とも関係すると思うんですけれども、具体的に時間軸はどうかというのは難しい、いろんな要素があるので、的確に答えるのは難しいし、加藤さんのおっしゃるとおりだと思うんですけれども、今日の御説明は、基本的に減税すると、どういう形でするかというのは、GDPの1%、法人税を減税したときに投資は増えるけれども、それを取り返すほど税収面では、それで、なおプラスになると、そこまでうまい話はないよといって伺っているんですか、その過程で、副作用としては金利がマクロでは、長谷川さんの話になると、そうすると、拡大するからそこで金利が上がって、プラスの面も阻害されるかもしれないし、だから法人税を下げる、投資が増える、成長する、税収も増えるという結果は、今日の話の限りはなかったということでよろしいんですね。
〇加藤専門委員
はい。
〇田近部会長
土居さん、どうぞ。
〇土居専門委員
一言だけ、井戸委員のおっしゃるところは、加藤先生の資料の2ページの研究会でアンケートを取っていて、6~7割ぐらいの企業は考えていると、税制かどうかは別として、海外に進出するかどうかとか、そういうようなことについては、非常に設備投資云々というところは重要だという話は、アンケート結果で出ているということを付け加えさせていただきたいと思います。
もう一つ、では、国内に残る企業もあるということでありながら、海外の企業のことに、進出するかもしれない企業のことばかり考える必要はあるのかどうなのかということについては、私が思うには、少なくとも、もし海外に逃げる企業は、どうぞ海外にお勝手に逃げなさい。その代わり、国内は国内のことで法人課税を考えますよといっていると、結局、日本の法人課税というのは、日本に残ることにならざるを得ない企業にだけ課税されるということになる。
逃げる人は、どんどん勝手に逃げて、日本の課税ベースから逃げていってしまうという側面はあるのではないかということです。
〇田近部会長
どうぞ。
〇増渕委員
先ほど横山先生からもレベニュー・ニュートラルの場合についてどう考えるかという御質問があったと思うんですが、そこのところについて、仮に法人税は減税するけれども、税収を中立にしたときに、経済全体に対する影響もゼロということなのか、どうもそうではないんではないかという気もするんですが、そうすると、どういう組み合わせを選ぶかということに議論は行き得るわけですけれども、そういうことについてのお考え、あるいは研究があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
〇田近部会長
では、これで1つの区切りということで、お答えをお願いします。
〇加藤専門委員
減税して、更にそれで取り戻すことがなかなかできないというのは、過去のそういったケースがあるのか、そのレベニュー・ニュートラルの問題として、どういう組み合わせがいいかというのは、これは本当に考えていかなければいけない問題ですが、ただ少なくとも、それが両方とも一石二鳥になるというような感じには、まずないんではないかというふうに思っております。成長もして、更にそれで税収が元に戻って更に増えるということは、なかなかなさそうですし、レベニュー・ニュートラルのところまでも戻れるのかどうなのかというところも踏まえて、もう少し勉強させていただきたいと思います。
〇田近部会長
加藤さんがおっしゃるとおり、どの税とどう組み合わせるか、また、税を下げるといっても、どこを下げるかという部分があるから、また更に御検討いただきたいと思います。
時間はちょうどなんですけれども、猪瀬さんから御意見があって、それに関することで質問等があれば、ごくごく手短でしかあり得ませんけれども、また、手短にやりますのでね。
〇土居専門委員
DCという話があるんですが、DC内の地方自治というのは、どういうふうになるんでしょうか。
〇佐藤専門委員
本当に短く、東京都の再編成というのは、私は賛成です。それから法人税収の問題は、偏在を是正しなければならない。これは賛成です。
ただ、この2つをどうして組み合わせなければならないのかというのは、私にはわからなくて、法人税収の是正は是正の措置として考えるべきことだと思います。
〇田近部会長
手短にお願いします。
〇猪瀬委員
憲法92条で地方自治がやらなければいけないことになっていますけれども、一応確認してみましたら、全訂日本国憲法で宮澤俊義著の本の92条の解釈で、特殊な理由により、両隣りの特定の限られた区域において、例外として地方公共団体が認められないことがあるとしても、あえて本条に違反するものとはならない。
例えば、仮に中央政府の所在地をどの地方公共団体の区域に属さないことにするとしても、直ちにそれによって本条が破られるという結論には恐らくならないとなっていますので、一応、92条はクリアーできるんだなということはわかりました。
〇田近部会長
この問題は、税調でも今後正面から受け止めなければならない課題の1つだろうと思います。 林さんから私にも御質問をいただいていますけれども、一言言わせていただければ、今日の加藤さんの話とも直接関係しますけれども、1980年の初めぐらい、サプライサイドの経済学とかいって、投資減税する、あるいは償却を早くすると、投資が生まれるというような議論が盛んにされて、こういう研究が誘発されてきたと思うんですけれども、これは個人の感じですけれども、今、見ていると、この間、ドイツのことも触れられましたように、資本がどんどん飛び交っている。
そういう中で、どの投資がいい投資か、悪い投資かというよりも、きちんとそれぞれの国と企業がどう投資するかは御自身で判断してください。国としては、あなたたちの企業から上がったキャッシュフローに対して、できるだけ手を付けないようにして、お手元に残します。そこで判断してくださいというふうな形の考え方に収まってきているんではないか。
投資減税とか、そういうところで税収を失う余裕もないから、それならそういうふうにできるだけ中立的に内部留保を高めてください。それが、あなたたちにとってもいいし、国にとってもいいんだというような広い意味の考え方があるのかなと、これは私の見方です。
今日も広井さんも、加藤さんも、本当に貴重な御報告をしていただきまして、ありがとうございました。これで今日の合同部会は終わらせていただきます。あとは、香西先生、お願いいたします。
〇香西会長
本当に今日は、大変いい御報告をいただいて、それに対して非常に活発な議論が行われました。我々が最終目標としている税制の在り方にたどり着くには、この分では紆余曲折をたどらなければならないというので大変だなと思いますが、やはりこういう議論を一つひとつ積み上げていくということが、私は、これからの税調にとっての一つの大きな課題だと思っておりまして、非常に今日の議論を喜んでおります。
会長の意見では全くありませんけれども、今、問題になっていることは、不況対策として設備投資を何が何でも引っ張り出そうという意味の減税政策ではないということです。もう少し中長期的に日本の成長を高めていくにはどうすればいいか、こういう話だということがあるということを、これは最後のページに書いていただいたとおりで、そこの問題意識が、私はこの税調には非常に大事な示唆があったんではないかと思います。
それから、先ほどの広井先生のお話も本当に刺激的で、楽しくといっては申し訳ありませんが、事実、これは田近部会長の出張報告にもあるんですね。つまり社会保険料の頭打ちと、税の増加というのがドイツの場合も、ヨーロッパでも並行的に進むようになってきている。日本も基礎年金の半分は国庫ということで、18.3%の頭打ちになったのかもしれませんけれども、そういった関係は、これからもあまりり出てきて税金をどんどん取られて、あっちへ取られるのは、ちょっとしゃくだなとも思いますけれども、大きな問題がそこにあるということは、たしかだと思います。
さて、私のプロパーの話は、前回もお話をいたしましたけれども、経済財政諮問会議、これは議長が総理で、大田大臣が司会役を務められ、民間から4人の委員が出ておられる会合で、税制調査会が何をやっているのか報告してもらいたい、どう考えているか報告してもらいたいというお話がありました。
当初は、今日、これからということだったんですが、急に時間が変わりまして、一応25日に予定されているということですが、実は時間的にはあまり時間がない形になります。
そこで、どういう人がどういう意見というか、恐らく従来のパターンで行きますと、民間から出ている議員の方から、民間議員ペーパーというものが出る。それからほかに、私なんかのような人間がプレゼンテーションをごく短時間で行うということになっていますので、どういうふうに対応するか、ちょっとその場に出てみないとわからない質問がいろいろ出たりするかもしれないということで、大変恐縮ですけれども、この会議が、今日も出てきたような議論をやって、紆余曲折を覚悟しながらやっている状態というのは、これはもともと具体的な問題は秋以降というふうにスケジュール化されていたのに沿ってやっているわけで、現時点で結論的な、我々がこういう哲学だとか、これに決めましたということは、とても言えない段階であるということでありますが、しかし、こういう問題がまだ残っていますとか、こういうことをもう少し議論したいとか、そういうことは求められれば答えるような形で、私が大変僣越ですけれども、一応、会長ということになっていますので、その場をそういう形で切り抜けてまいりたいと思っております。
大変恐縮ですが、一応御一任いただいて、結果は後で議事録等も発表になりますので、それをまた次の適当な機会に御批判をいただく形で、軌道修正はいつでもいたしますから、そういう形で25日は過ごさせていただくことについて、御一任いただければ大変ありがたいということでございます。よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
〇香西会長
それでは、次回は5月11日の金曜日の午後2時から4時まで、中央合同庁舎第4号館の今日と同じ場所において、本日と同じく企画会合・調査分析部会の合同会議といたします。
次回は、アジアの海外調査を行いましたので、その報告をしていただきます。また、本日同様、委員からのプレゼンテーション及び自由討議を予定しております。
その次の予定は、5月17日の木曜日で、これは前回も御紹介いたしましたけれども、IMF、国際通貨基金の税制専門家とのプレゼン及び討議という形を予定しておりますので、御関心のある方は是非御参加いただきたいと思います。
これ以降は、大分先の方まで一応の予定として、また正確に決まれば更に御連絡もいたしますけれども、5月20日の火曜日は、委員からのプレゼン及び討議ということを予定しております。
更に、やや長期的ですが、6月8日金曜日午後2時から4時、それから22日の2時から4時、それから7月13日の2時から4時というのを一応の予定としておりますので、一応日程を確保していただければ大変ありがたいと思います。確定いたしましたら、改めて御連絡をいたします。
それから、今日はペーパーを猪瀬委員から出していただきましたけれども、ほかの委員の方々でも何かこれを是非議論してほしいという御意見がありましたら、メモその他を事務方の方に御連絡いただければありがたいと思っております。
これは、さっき部会長も話しましたけれども、繰り返してお願いいたします。
それでは、本日はこれで終了といたします。本当にどうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。