企画会合(第21回)議事録

日時:平成19年11月2日(金)13時30分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

それでは、ただいまから「税制調査会第21回企画会合」を開催させていただきたいと思います。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。

本日の議事でございますけれども、本日は消費課税を議題として審議を行います。問題提起と議事進行は、吉川委員にお願いしております。

なお、横山委員は御出席、それから、佐竹委員、高木委員は御欠席でありますけれども、3名の委員から資料の提出がありました。お手元に配付しておりますので、適宜、ご覧になっていただきたいと存じます。

それでは、吉川委員、よろしくお願いいたします。

吉川主査

それでは、香西会長より御指名をいただいておりますので、早速、審議に入らせていただきます。

本日は消費課税が議題であり、前回からの議論の流れからしますと、社会保障の安定的な財源の確保という我が国にとって喫緊の課題に対応する上での消費課税のあり方。この論点が主たるテーマになるかと思っております。

本日の大きな流れでありますが、私の方で主査として論点メモを用意して論点を整理させていただいておりますが、全体としては事務局の御説明、私の説明、それから、事務局の説明という、ある種、サンドイッチのようなやり方をして、その上で委員の皆様方の活発な御議論をいただきたいと考えております。と申しますのも、これまでの「骨太の方針」の閣議決定等がございますので、こうしたことを踏まえておく必要が我々としてもあると考えているからであります。

また、春以降の調査分析部会の中でも、社会保障あるいは消費課税に関連して、専門委員の方々などからも示唆に富んだ報告がなされており、その内容についても整理しておく必要があると考えております。

そうしたことから、こうしたこれまでの蓄積について、まず事務局から紹介をしていただき、その上で私の論点メモに移りたいと思います。

それでは、事務局の方、よろしくお願いいたします。

佐川税制第二課長

税制第二課長の佐川でございます。よろしくお願いいたします。

お手元の資料にございます「企画21-3」という資料で御説明させていただきます。

1枚めくっていただきますと「目次」がございまして、今、吉川主査の方から御指示いただきまして「I.これまでの閣議決定の指摘や調査分析部会における報告内容」ということで、この1と2について簡潔に紹介させていただきます。

1ページ、まず閣議決定の方からでございますが、昨年7月の「基本方針2006」でございます。「基本方針2006」の冒頭のページに、この第1章がございますが、この「1.『新たな挑戦の10年』へ」の中で一番下に下線部がございますが「人口減少・少子高齢化の進行する過程の下での財政の問題は、深刻な世代間の不公平を生じさせる。給付を受け取る現世代が自らの責任で、自らの負担によって早急に対応しなければならない問題である。現世代が自らの負うべき借金の返済を『声なき後世代』へ先送りすることは許されない」。

2ページ「第3章 財政健全化への取組」の「1.歳出・歳入一体改革に向けた取組」で「(3)改革の原則と取組方針」として7つの原則が示されているわけですが、そのうち、下にあります原則5と原則7で税について触れられております。

まず原則5ですが、2つ目のポツです。「2010年代半ばに団塊世代が本格的な受給世代となることなど、年金、医療、介護等の社会保障費の中長期的な推移を展望しつつ、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げに要する財源を含め、社会保障のための安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りを止める。その際、国民が広く公平に負担し、かつ、経済動向等に左右されにくい財源とすることに留意する。また、そうした特定の税収を社会保障の財源として明確に位置付けることについて選択肢の一つとして検討する」。

原則7の下線部ですが「国・地方を通じて歳出削減を徹底した上で、必要と判断される歳入増については、これを実現するための税制上の措置を講ずる。その際、『新たな国民負担は官の肥大化には振り向けず、国民に還元する』との原則を徹底する」。

3ページで「(5)歳入改革」ですが、上から3行目に線が引いてございます。今後、中長期的に、我が国税制に求められる主な基本的あるいは政策的課題として<1>~<4>というふうに挙げられております。

<1>では「歳出では、社会保障給付の顕著な増加が見込まれることから、その財源を安定的に確保すること。特に、2009年度における基礎年金国庫負担割合引上げのための財源を確保すること」とされています。

<2>~<4>で、国際競争力の強化と、その活性化、子育て支援策等の充実、地方税源の充実とあって、最後のポツですが「これらの要請にこたえるには、税体系全般にわたる抜本的・一体的な改革が必要となる。その結果、増収及び減収がともに生じるが、ネットベースで所要の歳入を確保することが必要である。特に、社会保障給付の安定的な財源を確保するために、消費税をその財源としてより明確に位置付けることについては、給付と財源の対応関係の適合性を検討する」というふうに書いております。

以上が「基本方針2006」でございました。

4ページ、本年6月の「基本方針2007」でございます。

「2.税制改革の基本哲学」というのが第3章に述べられておりまして、最初の行ですが「21世紀の我が国にふさわしい税制を構築するため、所得税、消費税、法人税など税制全般について、『納税者の立場に立つ』『経済社会の変化に対応する』『省庁の縦割りを超え、受益と負担の両面から総合的に検討する』という3つの視点で点検し、税体系の抜本的改革を実現する」とございます。

真ん中に「実現すべき6つの柱」とありますが、それぞれ書かれている項目は複数の税目にまたがる課題を持っております。中でも消費税に関連した項目と思われるものを少しだけ見ますと、(1)では真ん中のポツで「生産活動や就労への意欲を阻害しないよう、『広く薄く』の観点も踏まえ、課税の在り方を検討する」。

(2)でも、2つ目のポツですが「投資等の経済活動に対して、税が歪みをもたらさないよう、また租税回避行動による不公平や資源のロスが生じないよう制度を検討する」などが述べられております。

5ページ「(3)世代間・世代内の公平の確保」あるいは「(4)税と社会保障の一体的設計による持続可能で安心できる仕組みの構築」などが述べられているところでございます。

以上が閣議決定のお話でございます。

次のページに「2.調査分析部会における報告内容」とございます。

時間の関係もございますので、社会保障、あるいは消費税に関連するものについて代表的なものを簡潔に御説明させていただきたいと思います。

6ページ、これは今年の4月に田近委員の方から報告されました「海外出張調査報告」よりの抜粋でございます。

最初は「1.ドイツ」でございます。7ページをご覧いただきたいと思います。「概要:2007年1月」で付加価値税率の引上げ、所得税の最高税率の引上げ。増収分の3分の2は財政再建に、3分の1は失業保険料の引下げに充当する。

「背景」で、財政赤字3%の基準を満たさない状況が続いていた。

「ポイント」の<1>で、財政再建のためになぜ付加価値税が選択されたかという理由で、税率がほかのEU諸国に比べて低かった。あるいは輸出免税であり、国際競争力に影響を及ぼさない等が挙げられております。

<2>で、付加価値税引上げの影響でございますが、最初のポツの最後の方になりますが「付加価値税引上げの影響は軽微と見られる」。

次のポツで「中長期的には、財政健全化がシグナルとなって国民のマインドが上昇するなど経済にプラスの効果が生まれると見られる」という報告でございました。

8ページ「3.フランス」でございますが、9ページをご覧いただきたいと思います。

左側に「税制上の課題」が4つ挙げられておりますが、検討案が右にございまして、趣旨のところで、今後、更に社会保障支出の伸びが予見される中、中期的に財源を確保する必要があるが、一般社会税、これは所得に課税しておりますが、一般社会税のさらなる引上げは困難。

検討されている案で「社会保障目的の付加価値税の引上げ(同時に、社会保険料を引下げ)」といったようなものが検討案として挙げられているという御報告がございました。

10ページ、IMFからも報告がございまして「グローバル化する経済の中での税制の課題(仮訳)」というテーマでございます。

最初の〇で「グローバル化(資本、財、サービス及び労働の可動性の増大)に伴う税制の課題」といったものを列挙した上で、2つ目の○に「税制のグランドデザイン」という項目がございます。

最初のポツで「グローバル化に伴う課題の多くは、資本所得に対する課税において強く現れる」と述べております。

下から4行目、2つ目のポツですが「その他の税制の役割は、直接税と間接税をバランスさせること。現実には、OECD諸国において付加価値税の重要性が増大。日本の消費税は、単一税率であることや効率性の高さにおいて最も良くデザインされた付加価値税」と述べられております。

1ページ飛ばして、12ページは今年の5月、大阪大学の大竹専門委員から「日本の所得・消費格差と再分配構造」という報告がございました。

「報告のポイント」ですが、最初の〇で所得格差・消費格差の推移について説明があった後に、2つ目の○で「所得階級別・消費階級別負担と受益の構造」という項目で、最初のポツですが、1984年と2004年の20年間で、課税前所得階級別の税・社会保障の負担率は全所得階層で低下していると述べられて、次のポツですが、受益率は課税前所得が低いグループほど上昇。受益の中身は高齢化を反映し、圧倒的に年金受給が大きいというふうに報告されております。

次に、13ページの上の〇で「生涯所得でみた税負担率」という視点から議論がありまして、一時点の所得で税の累進度を計測することには問題がある。

人口の高齢化が進んでいる中では、生涯所得で再分配政策を考えることが重要。このときに大竹先生が述べていたのは、フローの所得は少なくても、ストックが多い高齢者が増えている中では、そのときの所得ではなくて生涯所得で考えるべきではないかという御説明をされて、そのとき、先生は、生涯所得というのは消費で代理されるのではないかとおっしゃっていました。

そういう前提で、一定の仮定を置いて試算しますと、4つ目のポツですが、生涯所得階級別に見た消費税負担率に逆進性は観察されないという御報告でした。

最後に「税制改革への含意」として、税の負担構造を考える際に、個々の税の負担だけではなくて、所得税・住民税・消費税・社会保険料などを総合的にとらえることが必要。

公的年金の受給者が増えていることから、税の負担だけではなく、受益を考慮してネットの負担構造を考える必要。

人口構成が変化していること、所得の変動の可能性が高まっていることから、一生涯の受益と負担を見る必要などの結論となっております。

14ページは、今、御説明した、大竹先生が出された生涯所得に対する各税目の累進度のグラフでございます。

最後でございますが、15ページ「社会保障をめぐる税財源と保険料財源」ということで、慶應義塾大学の土居先生がこの5月に発表されております。

「報告のポイント」ですが、まず「保険料財源か税財源か」ということです。

最初のポツで、先生は、今後、改革でそれなりの給付の抑制が図られるとしても、高齢化により社会保障給付費は不可避的に増大という認識を示された上で、下の2つ目の〇の「高齢化と財政健全化」です。

歳出削減だけで財政健全化するためには、社会保障費の大幅な抑制が必要。

しかし、国民の多くは国民皆保険、国民皆年金の維持を期待。ある程度の社会保障財源を確実に租税で賄う必要。

社会保障の税財源を所得課税で賄うことについては、社会保険料は所得に比例して今後とも上がっていくことが予定されていること、勤労世代に過重な負担となること、貯蓄率低下が懸念される中で、貯蓄に対して中立的ではないことに留意が必要。

消費税による税財源の調達は重要な手段というふうに述べられておりました。

16ページ「所得税・社会保険料と消費税の性質」とございまして、若年世代は、高齢世代に比べて所得税、社会保険料負担が大きい。

消費税は、若年世代と高齢世代の間で、負担の差異が小さい。社会保障の負担と給付の世代間格差是正には、消費税が適している。

真ん中の〇で「消費税の社会保障財源化」。社会保障給付の国庫負担については、消費税により財源を安定的に確保する一方、他の分野については歳出削減を中心として財政赤字を抑制する役割分担とすれば、財政健全化も促進として、この社会保障とその他の2つに分けて収支改善努力を行うという考え方を示されておりました。

最後に「所得課税と消費課税の役割分担」ですが、社会保障の財源として、社会保険料は上昇することが予定されているが、消費課税、所得課税それぞれの特徴を生かして、バランスよく課税していくことが重要ということでございます。

17ページは「『消費税の社会保障財源化』による財政規律」のイメージ図ということで付けさせていただいております。

事務方からは以上でございます。

吉川主査

ありがとうございました。

それでは、続きまして、私の方から「消費課税に関する論点メモ」の説明をさせていただきます。お手元に私の資料「企画21-1」、それから、横長の参考資料が、図表ですが「企画21-2」としてあると思います。適宜、これも参照していただければと思います。

「消費課税に関する論点メモ」ですが、幾つかの大きな論点を整理いたしました。

まず論点Iですが、現在、日本の経済社会は大きな環境変化に直面しております。例えば少子高齢化やグローバル化の進展、また、前回の内閣府財制審のシミュレーションにもありましたとおり、財政再建の必要性、あるいは格差が広がっていると言われる中で、格差固定化への懸念などが言われております。そうした中で、どのような税体系が望ましいのか。取り分け、高齢化社会における国民の安心を支える社会保障を持続可能なものにするためには、税がどのような役割を果たすべきなのか。これが大きな論点Iであります。

「考え方」として、2つの大きなイシューを挙げております。

1つは「社会保障の安定的な税財源の確保」という問題であります。具体的な論点として4つほど挙げおります。

1つは、社会保障費の増加圧力は、給付の削減、その他の歳出削減、効率化・合理化では対応し切れない。これは先ほど、事務局が土居専門委員の御発言として紹介された点です。

これは以下に共通することですので、あらかじめお断りしておきたいんですが、私のこのメモはあくまでも論点を整理したものでございます。もとより、この論点というのは突然私が思い付いたということではなくて、これまでの税調で、専門委員の方も含めて皆様方が御発言になったこと、また、政府の「骨太の方針」等で既に書かれていることを列挙しているわけでありますが、ここでは論点整理とはいっても、いちいち、すべてを何々なのではないかというふうに書くのがやや煩雑ですので、例えば「対応しきれない」。これは土居専門委員のようにそういう御意見が確かにあったわけですが、そういう言い切り方になっておりますが、皆様方はこれを問いかけというふうに受け取っていただいて、個々の論点については、当然、異論をお持ちの方もあるかと思いますが、問いかけというふうに御理解いただければ幸いです。

続けます。2番目として、社会保障給付は現世代にとっての受益であり、そのための負担は現世代が広く公平に負担する必要がある。

社会保険料の引上げによる対応は、若者を始めとする勤労世代への負担が集中し、世代間の公平などの観点から限界がある。このあたりのことにつきましては、横長の「企画21-2」参考資料の1ページ「年齢階級別の1人当たりの負担の状況」を適宜参照していただければ幸いです。

最後に、税制改革により安定的な財源を制度的に確保することが不可欠である。これが一つの具体的な論点であります。

次に「所得課税の限界」について整理いたしました。

まず第1に、少子高齢化の進展で所得課税は先細りである。これはお手元の参考資料の2ページで、皆様方よく御存じのこととは思いますが、少子高齢化の中で、いわゆる現役世代がどんどん減っていく。したがって、労働所得に多くのものを課税ベースとして期待することはできない。所得課税の再分配機能には大きな期待は持てないという論点。

次に、所得課税を中心とする税体系の下での税収は、経済動向等に左右されやすく、自然増収は安定的な財源たり得ないという問題。

高齢者の世代内格差、若者と高齢者の世代間格差への所得課税の再分配機能による対応には限界がある。このような指摘もありました。

経済の活性化を重視する観点から、勤労世代への負担集中を回避することや、経済活動に歪みを生じさせない中立性や国際競争力も重視すべきである。

更に、所得課税(負担)による再分配から社会保障(受益)による再分配ということも視野に入れなければいけない。これはジニ係数との関係で、ページが飛びますが、参考資料の4ページに社会保障が再分配上、大きな役割を果たしているということが示してあります。

最後に、国際的な税制改革の潮流も所得課税から付加価値税へという流れにある。これは参考資料で、1枚戻りますが、付加価値税収がGDPの中で占める比率の推移をOECDについて見たものであります。図表の左側で、OECDの平均で見ますと、個人所得課税のシェアはやや下がり気味。これに対して、付加価値税が示すシェアが上がっていることがわかります。

このほかに、もう少し細かい留意点として、所得課税につきまして、論点メモの1ページ目の一番下でありますが、そもそも、長寿化や家計のストック化、ライフプランの多様化により一時点の所得に着目して課税を行うことには限界がある。また、問題がある。言い換えれば、生涯所得を考えるべきだということであります。

金融技術の進展、取引の複雑化で所得把握は一層困難化している。これは勿論、金融所得、資本所得に関係して言われてきたことであります。

また、貯蓄率低下が懸念される中で貯蓄に対して中立的でないという問題もある。

2ページ目に移りますが、更に社会保険料負担が増大していく中で、勤労世代に負担を集中させることは不適当である。こういうことも言われてまいりました。

論点IIに移ります。所得税について論点Iの中に含めましたのは、今日のこの会議はあくまでも消費課税をメインテーマとしますので、所得税については問題点を論点Iの中で整理しました。それに対して、メインテーマであります消費課税につきましては論点IIとして、主として消費税の持つメリットを整理しております。

消費税は、勿論、100点満点ではないと思いますが、以下に説明するとおり、消費税が数々のメリットを持っていることも事実であります。こうしたことが国民に正しく理解される、その論点整理をするのも政府税調の役割だと考えております。

以下、消費税の特徴、これは先ほどから言っておりますとおり、主としてメリットでありますが、まず第1に勤労世代に負担が集中しない。これは参考資料の1ページで既に見ていただいた図表を再度見ていただいても確認できるかと思います。つまり、すべての世代が比較的フラットに負担している。したがって、勤労意欲・事業意欲を阻害しないのではないか。

また、消費税は簡素である。したがって、経済活動に与えるゆがみが小さい。また、執行コストも小さい。

貯蓄は課税ベース外であることから、貯蓄を阻害しない。

投資は即時費用化されるので、投資促進的である。

輸出免税があるため、国際競争力を阻害しない。

税収は安定的である。

こうしたメリットが挙げられるわけであります。

次に、論点IIIに移ります。これは消費税が持つと言われる大きな問題である「逆進性」を含め、消費税が家計部門の受益と負担にどのような影響を与えているのか。それをどのように評価するか。

まず「考え方」の最初ですが「消費税の『逆進性』」であります。これは一時点の所得に着目して税の累進度や逆進度を論ずることにそもそも問題があるのではないかという御指摘がありました。

つまり、負担面では生涯所得で再分配政策を考えることが重要なのであって、生涯所得に比例的に負担を求める消費税に逆進性はない。比例しているという意味です。生涯所得を見れば逆進性はないのではないか。

次に「税と社会保障の一体的把握」。これは社会保障による再分配機能の役割が高まる中、税(負担面)と社会保障(受益面)を一体的にとらえることが重要である。受益面では低所得者ほど社会保障の受益が大きいため「負担-受益」のネットベースで見れば累進的である。これは先ほど、事務局から大阪大学の大竹先生のプレゼンテーション関係で御紹介がありましたが、参考資料ですと5ページを見ていただきますと、社会保障をも考慮に入れた所得階層別のネットの受益と負担が示してあります。

最後に「『軽減税率』の是非」。これは2つ、両論を併記して、導入すべきと導入すべきでないが挙げてありますが、一方では国民の負担感に配慮する観点から、欧州諸国などで見られるように食料品等を対象とした軽減税率を導入すべきという意見もございます。

これに対して、軽減税率の導入は、経済活動に伴うゆがみが小さいという消費税の特徴を損ねる。したがって、軽減税率は導入すべきでないという御意見もございます。この点をどう考えるか。

最後のページに移ります。論点IVです。「消費税を社会保障給付の財源としてより明確に位置付けることについて、どのように考えるか」。こうした大きな論点もございます。

「考え方」ですが、具体的に「消費税の『社会保障財源化』」と呼ばれるものであります。つまり、国民負担については「国民に還元されること」「官の肥大化には振り向けないこと」を明確にすることにより国民の理解を深めることが重要である。

財政健全化の観点からも、社会保障とその他の歳出分野に分けて、収支改善努力を考えるのも一つの選択肢なのではないか。

更に具体的に言いますと、社会保障部門については給付の効率化を進めることは勿論でありますが、その上で安定的財源を確保することによって、社会保障部門については歳出と歳入をバランスさせる。

一方、社会保障以外の部門については、各歳出分野の効率化を進め、歳出を削減した上で、一定の黒字を確保する。

こういう財政全体を、この際、大きく社会保障とそれ以外という2部門で考えていく。それに伴って、消費税を社会保障財源化するということをどのように考えるかという論点IVであります。

論点Vは「地方税体系における地方消費税の位置付けをどのように考えるか」。

すなわち、地方消費税は、税収が安定的で地域的な偏在が小さいということがございます。

また、今後、地方も少子高齢化の進展に伴って社会保障関係費が大幅に増加する見込みがある。

最後に「その他の制度上の論点」として「消費税の透明性・信頼性向上への取組みについて、どのように考えるか(インボイス制度の導入、中小特例措置の見直し、租税回避行為への対応など)」でございます。

その他、個別間接税の諸問題について、どのように考えるか。

以上が、消費課税に関する私の論点整理でございますが、司会を仰せ付かっておりますが、その上で、初めに私の一委員としての私見も、この際、述べさせていただきます。これからが私の個人的な意見ということでございます。

まず第1に、消費税をめぐる議論においては、やはり社会保障が大変大きな論点だろうと思います。この社会保障につきましては、前回のこの会議で紹介されました内閣府の財政に関するシミュレーションでもそうですが、今後の社会保障給付の規模を一体どのようなものにするのかということが出発点、そもそも論としてあるわけであります。

この点については、一つの考え方ということで、私自身は、お手元の参考資料の6ページを見てもわかりますとおり、日本人の多くは現在のいわゆる日本型と呼ばれる社会保障の大きさを、少しは負担が増えても基本的には維持した方がいいのではないか。今後、どんどん日本の社会保障制度の給付を小さくしていくということには賛成していないのではないか。こういう事実がございます。私は、個人的には、この6ページに示されている多数意見といいますか、日本の社会保障の給付水準を今後もサステイナブルなものにしていくという考え方でございます。

そうした考えに立つわけでありますが、実際、社会保障というのは再分配においても大変大きな役割を果たしているわけであります。税制を考える上でも、当然、所得分配上の公平ということが大きな論点になるわけでありますけれども、やはり所得、取り分け、一時点での所得だけに関する分配上の問題を議論することには限界があるのではないか。これは既に論点整理のメモで申し上げました。つまりは生涯所得を考える必要があるということであります。

更に言えば、いろんな問題について、所得というのはお金でありますけれども、真の所得分配からウェルフェアーの分配とでもいいましょうか、所得というのはあくまでもお金だとすれば、所得の分配を更に超えてウェルフェアーの分配というような観点に立てば、お金の上での分配だけではなくて、言わばインカインドの給付の分配ということも視野に入れなければいけないのではないか。したがって、その点でも私は社会保障がやはりウェルフェアーの分配という点で大きな役割を果たすべきではないかと考えております。

具体的には、1つの例を挙げれば十分だと思いますが、仮にある時点での所得が同じであっても、健康な人と重い病に陥っている人を比べれば、ウェルフェアーの格差というものは歴然としているわけであります。そこのところに手当をするのが、言うまでもなく医療保険というものであるわけで、それが社会保障の一端、大きな一翼を担っているということであります。

したがって、社会保障が今後も大きな役割を果たす、あるいは果たすべきだというのが私の個人的な考えでありますが、残念ながら、負担と給付は見合っておりません。したがって、これは持続可能でないという問題がございます。したがって、ここを何らかの形でみんなが十分に負担しなければいけないわけでありますが、既に論点整理でも挙げましたとおり、勤労世代に負担が集中する、所得課税や社会保険料の引上げによる対応には限界があると私自身は考えております。

また、実は税の世界で見ましても、既に参考資料で紹介したとおり、また、我々税調としてはIMFのキーン博士のプレゼンテーションにもありましたとおり、国際的に見ても所得課税から付加価値税へという税制改革の大きな潮流があるわけであります。したがって、日本の消費税率が国際的に見ても極めて低い。これは参考資料の最後のページにある、よく知られた事実でありますが、こうしたことを踏まえますと、私は社会保障を持続的なものにするためにも付加価値税、具体的には消費税というのはかなり中核的な役割を今後果たすべきではないか。消費税を上げざるを得ないのではないかという個人的な考えを持っております。

その際に、消費税を社会保障財源化することの是非いかんという論点整理、先ほど御説明しましたが、これもまた個人的な見解ですが、私は負担と受益をリンクして消費税率の上昇が社会保障による再分配を通じて、受益面からウェルフェアーの格差を縮めるという、社会の安定にとって大変大きな役割を果たしているんだということを明確にする上でも、消費税の社会保障財源化ということに賛成でございます。もとより、これは一委員としての意見でございます。

以上、私の論点整理、続けて、司会を仰せ付かっていながら初めに一委員としての個人的な意見を先に述べさせていただいたわけですが、私がお示しした論点メモの最後にも挙げてありますとおり、消費税につきましては、インボイス制度、中小特例措置など個別の制度設計に関わる論点がございます。

また、今回は消費課税ということで、消費税のみならず、個別間接税についても必要に応じて御議論をいただく必要がございます。

したがって、こうした制度上のことにつきまして事務局の方から再度補足説明をお願いしたいと思います。これは財務省、総務省の順でお願いいたします。

まず、財務省からの御説明をお願いいたします。

佐川税制第二課長

それでは、財務省から補足説明をさせていただきます。資料は先ほどと同じで「企画21-3」でございます。消費課税全般についての御説明になります。

ページで申しますと、18ページからでございます。多少、資料が分厚いものでございますから、ポイントを絞って説明をさせていただきたいと思います。

18ページは「消費課税の概要(国税)」でございますが、消費税以下、各税目が並んでおりまして、一番下の消費課税計に一般会計、特別会計を合わせまして、約19.5兆円という数字が載っているわけでございます。

24ページは「消費税(付加価値税)の特徴に関する指摘」です。先ほど吉川先生の方から論点メモでの御説明もありましたので、詳細な説明は省略させていただきますが、基本的には、先ほど先生はメリットとおっしゃいましたが、ここはメリ・デメを合わせまして、左の表の一番左側だけを読みますと、垂直的公平、水平的公平、世代間公平、中立性(活力)、簡素性、税収動向の安定性といったような特徴が一般的に指摘されているところでございます。

25ページ、これは「消費税の概要」でございます。左側に各項目が並んでおりますが、この中から、先ほど先生から御指摘のありました制度上の問題を幾つか、更に説明させていただきたいと思っております。

27ページ「主要国の付加価値税の概要」ということが述べてありまして、納税義務者、非課税、税率などの話について各国の比較を示しておりますので、必要があれば御参考にと思っております。

28ページでは、各国の標準税率と食料品に対する適用税率の国際比較を示しております。この棒グラフの高さのところが標準税率、そのうち、少し黒く塗ってあるところがございますが、そこが食料品に関する軽減税率でございます。

大体、見ていただきますように、デンマークやスウェーデン等の北欧諸国が25%という数字になりまして、一番左側、欄外にありますが、欧州理事会指令ということで、標準税率は15%より上に設定してください。それから、同じように軽減税率は5%より上に設定してくださいというのが左の欄外に書いてございます

29ページでは、軽減税率の御説明をさせていただきたいと思います。「収入階級別の実収入に対する税負担(平成16年分)」とありますが、いわゆる累進性に関係するグラフで、左側が税負担額、右側が税負担率のグラフでございます。

まず左側で「実収入に対する税負担額(1年当たり)」ですが、当然ですが、収入が高い方が消費税額も高くなっておりますし、全体の税負担額も高くなっておるということでございます。

右側の「実収入に対する税負担率」になりますと、消費税はそのときそのときの所得に対する率でございますので、収入が高い方が消費税の負担率は低くなっておりますが、税全体では累進的に上がっているということでございます。

31ページは、食料品に対する軽減税率の主要国を挙げてございますが、これも各国さまざまでございまして、例えば一番左側に食料品の原則と例外とあります。

フランスであれば、食料品は原則、軽減税率5.5%ですが、例外として標準税率が適用される品目を限定列挙する。

ドイツは逆でございまして、食料品の原則は標準税率ですが、例外として軽減税率の適用品目を並べるというようなことで、各国それぞれ経緯を背負っておりますので、品目を見ましても、それは共通というわけにはいかないということでございます。

御参考に、次の32ページで簡単な例を示させていただいておりますが、ごく一部でございます。左側に「贅沢品か否かの違い」と書いております。例えばフランスであれば、自国でつくっておりますフォアグラとかトリュフなどは軽減でございますが、輸入するようなキャビアは標準とか、同様に、バターは軽減ですけれども、マーガリンは標準とか、こんなようなことがございます。

右の方に行っていただきますと、外食の問題が結構複雑でございまして、例えばイギリスでございますと、備考に書いてございますが、区分けの指標として「気温より高く温められたかどうか」が採用されているというのがございます。したがいまして、左側の標準で、温かいフィッシュ&チップスとかハンバーガーみたいなものは標準で、デリカテッセンみたいな常温以下のお惣菜は軽減とか、そんなようなこともございますし、一番わかりやすいのは真ん中のドイツでございます。いわゆるイートイン、テークアウトと申しまして、同じファーストフードでも、中で食べれば標準、飲食のサービスの提供。持ち帰れば食料品だから軽減だといったようなこともございまして、一例でございますけれども、各国ともいろいろな経緯を抱えて、この線引きには大変苦労しているというような簡単な事例でございます。

33ページはイギリスの例を示しておりますが、仮に非課税や軽減をした場合、税収にどういう影響を与えるかということで、この減収額が右の箱ですが、細かいことは省いて、一番下の計のところに417億ポンドとありますが、大体、日本円で9兆1,700億円程度の減収額の推計がされております。

ちょっと小さくて恐縮ですが、注1で付加価値税収が773億ポンドで17兆円というので、ざくっと言えば、大体3分の1が課税ベースから外れているというようなことになっているわけでございます。

そうするとどうなるかというのが34ページで、全く単純な機械計算ですが、所要の税収を確保するために必要な税率の引上げ幅で、例えば一番右で、軽減税率対象が1、標準課税対象が2とすると、課税ベースも1.5β%という、簡単な機械的な計算の表でございます。

35ページ、複数税率を採用した場合の仕入控除税額の把握のイメージでございまして、左側が現行です。現行は課税の仕入れと、例えば土地の売買みたいな非課税の仕入れを区分けして仕入税額控除を計算するんですが、仮に右のように複数税率になった場合には、標準、軽減、非課税とに分けて仕入税額を計算しますので、事務は煩雑になるということでございます。

後ほど御説明しますが、消費税の信頼性や透明性を向上するためにはインボイスを導入すべきだという御意見もございます。ただ、インボイスはそれだけではなくて税額が記載されておりますので、こうした複数税率の場合の事務負担の軽減にも必要だという御意見も多くございます。

次の36ページで、軽減税率に関するこれまでの政府税調の答申の御指摘でございます。上が平成15年、下が平成16年で、同様の指摘でございますので、平成16年の上の3行だけ読ませていただきます。

「将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。

しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税務執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい」という指摘をいただいておるところでございます。

下の「検討に当たっての留意点」については省略させていただきますが、低所得者の負担緩和に資するけれども、高所得者の負担緩和にも効果が及ぶとか、そんなようなことが書いてあるわけでございます。

37ページ、先ほど複数税率を採用した場合のの仕入税額控除の話をしましたが、現行の制度で仕入税額控除がどうなっているかという仕組みでございます。

下の四角にございますように、仕入税額控除をやるためには、仕入れの事実を記載した帳簿の保存に加えて、請求書、領収書、納品書等の取引の相手方が発行した書類の保存が要る。「請求書等保存方式」と呼んでおりますが、この絵にありますように、帳簿と書類があるというのが現行の仕入税額控除の仕組みでございます。

38ページ、したがいまして、いわゆる日本の「請求書等保存方式」と「インボイス方式」とでどう違うのかという話でございます。

端的に言いますと、イギリスの方は、絵の「TOTAL」の上に「VAT 59.25」とありますが、こういう税額を書くのが義務付けられているということで、下の箱にありますように「<1>『インボイス』に税額の記載が義務付けられている」。「<2>免税事業者は『インボイス』を発行できない。したがって、免税事業者からの仕入れについて仕入税額控除ができない」等の特徴があるということでございます。

39ページ、これがインボイスに係るこれまでの政府税調答申の指摘ですが、先ほど説明したような御指摘があって、上から3行目でございます。「このような請求書等保存方式は、単一税率の下では適切な仕入税額控除に特段の支障がないが、将来、複数税率が採用される場合には、適正かつ円滑な施行に資する観点から、免税事業者からの仕入税額控除を排除し、税額を明記した請求書等の保存を求める『インボイス方式』を採用する必要がある」という指摘を受けておるところでございます。

40ページからは、消費税の中小事業特例の話でございます。

40ページで見ていただきますように、消費税の創設時から現在まで、例えば「<1>免税点制度」の上限は3,000万円から1,000万円に、「<2>簡易課税制度」の上限が5億円から5,000万円に、「<3>限界控除制度」は6,000万円からなくなるといったように、相当な取組みを行ってきているところでございます。

43ページ、ここでは簡単に消費税の租税回避の事例を1つだけ御紹介させていただきたいと思います。「事業者免税点制度の新設法人に対する適用関係」でございますが、これを利用した租税回避の例を、このページと次のページで併せて御説明いたします。

上の箱でございます。事業者免税点制度というのは、基準期間、いわゆる前々年の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、その課税期間の課税資産の譲渡等について、消費税を免除しているという制度でございます。したがいまして、このすぐ下の絵にありますように、開業して、第1期目と第2期目というのは、いわゆる前々年がないものですから、ここは基準期間がないということで免税となっているというのが基本的な制度の仕組みでございます。

それを利用したのが次の44ページで、この絵でございますが、右上の方に「人材派遣業A社」というのがございます。このA社は、通常、下にありますような女性の方たちを雇用して、普通に工場に派遣すれば、この女性の人たちの給料というのは人件費ですから、普通、仕入税額控除の対象にはならないわけでございます。

ところが、このケースは、実質的にはA社がこの女性の人たちを雇用していて、彼女たちもそう思っているんですけれども、実は彼女たちの知らないところでA社がペーパーカンパニーのa社をつくって、このa社と彼女たちの雇用契約書を勝手につくって、委託費として仕入税額控除を受けるわけでございます。

一方、a社は資本金1,000万円未満でございますので、消費税も免税になっている。それで2年経ちますとa社をつぶして、またb社をつくって同じことをやるといったような、比較的、悪質なケースが摘発されているということでございます。

48ページ、ここももう一つ、租税回避スキームがありますが、お時間もございませんので、こういうものがあるということで紹介を省かせていただきたいと思います。

49ページ「消費税の使途」でございます。上の四角にありますように、消費税の収入が充てられる経費、つまり、国分の消費税の範囲を基礎年金、老人医療、介護のいわゆる高齢者三経費に充てることを平成11年度予算から予算総則に規定してございます。

下の絵を簡潔に御説明しますと、全体が5%で13.3兆円あるんですが、地方消費税と地方交付税分を足した5.8兆円が地方に行くわけでございまして、国分の7.5兆円が高齢者三経費に充てられているということでございます。

ただ、一番右にございますように、三経費分の一般会計が12.8兆円でございますから、この7.5兆円を充てても、そのすき間として5.3兆円あるということになります。

その表が51ページで、同じことでございます。一番左に平成11年度から19年度まで並んでおりますが、今、申しましたのは、一番下の平成19年度の合計12.8兆円という対象経費(A)があって、その右に消費税収(B)7.5兆円があって、すき間が5.3兆円。それで、A分のBで充当率が58.7%と書いてございます。この58.7%をずっと上にさかのぼっていって平成11年度を見ますと、83.1%と比較的高い充当率でございまして、消費税収は実は余りそう大きく変わっていないわけでございますので、この対象経費(A)が増えているということが、この率を下げてきているということでございます。

消費税は以上でございます。

次に酒税の御説明をさせていただきたいと思いますが「3.酒税関係」で、54ページでございます。

事実関係だけを申しますと、課税実績です。左側が課税数量、右側が課税額で、課税額で1兆5,000億円ほどでございます。数量も額もそうですが、ビール、発泡酒、その他の醸造酒、いわゆるビール風のお酒でございますが、この3つ、ビール系で課税数量で大体3分の2、課税額で約7割というのが特徴でございます。

55ページ「酒類の課税数量と課税額の推移」でございます。いわゆる、この折れ線グラフが課税数量でございまして、右の方に行きますと、近年、下落傾向でございます。それに伴いまして、課税額も下がっているというのが最近の実情でございます。

「4.たばこ税関係」で、57ページ「たばこ税等の税率及び税収」とございます。合計額を見ますと、一番下の一番右の欄に合計2兆2,823億円とございまして、これは平成19年度の国の予算と地方財政計画の合計で、大体、国と地方で1対1、半分ずつというのがたばこの話でございます。

58ページ「たばこ税等の税収と紙巻たばこの販売数量の推移」ですが、これも上の折れ線グラフが紙巻たばこの販売数量でございます。

近年、ずっと減少傾向にあるのが見て取れると思います。税収はおおむね横ばいとなっておりまして、税率は、この棒グラフの下にありますように、近年、平成15年あるいは平成18年にたばこの税率を引き上げているということでございます。

駆け足で恐縮でございますが「5.道路特定財源関係」でございます。

59ページ、国税と地方税がございますが、税目、課税対象、税率と横にありまして、この税率の欄を見ていただきますと、揮発油税で本則税率2万4,300円が4万8,600円と、倍の暫定税率になっておるところでございます。適用期限は来年、平成20年3月31日。

以下、同様に地方道路税も同じで、自動車重量税も暫定税率があって、いずれも適用期限は来年の春となっているところでございます。

地方税も同様でございます。

60ページ、道路特定財源がどういうふうに流れているかを整理した絵でございます。これは見ていただければよろしいんですが、結局、歳出ベースで国と地方にどれだけ財源が配分されているかを右で見ますと、国が合計で3兆4,000億円、地方が2兆2,000億円。

御参考までに、本則分と暫定分を分けますと、国の方の3兆4,000円の内訳は、本則分で約1.7、暫定分というか、上に乗っかっている分で約1.7。地方は本則分で約1.2、上に乗っかっている分が1.0といったものが大まかな数字の内訳でございます。

61ページは、見ていただければと思いますが、GDPを棒グラフで表して、折れ線グラフがガソリン税と自動車重量税の税率で、昭和50年代以降、この税率は変わっていないという図でございます。

62ページで「主要各国におけるガソリンの価格と税」。左側はガソリンにかかっています個別間接税の比較で、右側は税と価格を足し上げた比較でございます。最近、値段が上がっていますので、値段のところはもう少し高いでしょうけれども、全体の感じをこれでご覧いただければと思うわけでございます。

ポイントは63ページで、今、道路特定財源の見直しの話が随分新聞等でも取り上げられておりますが、昨年12月の閣議決定でこういう具体策が政府としてとりまとめられているところでございます。

細かくは読みませんが、ポイントが1~4とあります。

まず1番は、道路整備に対するニーズを踏まえ、真に必要な道路整備は計画的に進めることとし、19年中に、今後の具体的な道路整備の姿を示した中期的な計画を作成するということで、現在、この計画を国土交通省で、その素案を今月中にも出したいというようなことを聞いているところでございます。

2番が税でございます。20年度以降も、厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持するということでございます。

3番は、一般財源化を前提として、全部、今、予算を道路整備に義務付けているという仕組みを改める。道路歳出を上回る部分は一般財源とすると書いてございます。

4番は、国民の理解を得るために、例えば高速道路料金の引下げや既存高速ネットワークの効率的活用といった新たな措置のために新たな法案を出すというのが全体の概略でございます。

以上が道路関係でございました。

最後になりましたが「6.環境税関係」でございます。

64ページ、基本は京都議定書の目標達成計画とございまして、一番左の上の箱「目指す方向」というのが「京都議定書の6%削減約束の確実な達成」。

「基本的考え方」が下にございますが、環境と経済の両立という下で多様な政策手段を活用していくのが重要と書いてあるわけでございます。

その環境税そのものでございますが、65ページに、今、御紹介した京都議定書の目標達成計画の閣議決定、平成17年でございますが、ここの最後のパラグラフに書いてございます。「環境税については」というのが下から5行目にありますが、下から4行目の一番最後「地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題である」というふうにされております。現状でも、環境税に係る要望などを見ますと、なかなか、その立場はさまざまでございます。

駆け足になりましたが、国税の方は以上でございます。

吉川主査

どうぞ。

米田都道府県税課長

それでは、続きまして、地方税関係の補足説明をさせていただきます。「企画21-4」をご覧いただきたいと存じます。

1ページで、この地方税の全体の中で消費課税がどのようなウエイトになっているかということを見ていただくものでございます。黒く塗りつぶしましたところが地方消費税でございまして、全体では7.3%を占めているということでございます。

その他の消費課税でございますけれども、下の道府県税の方でご覧いただきますと、軽油引取税、自動車取得税等の道路財源のほかは道府県のたばこ税。更に市町村税の方をご覧いただきますと、右の方に市町村たばこ税といった税金がございますけれども、ウェートはそれほど高くないというのが現状でございます。

2ページ、先ほど国税でも御説明がございましたけれども、いわゆる消費税5%部分のうち、国と地方でどのように配分されているかということでございまして、1%部分が地方消費税、更に国税部分の一定部分、1.18%に相当いたしますけれども、ここが地方交付税という形で地方に配分されているということでございます。

3ページは「地方消費税の概要」を参考までに付けさせていただきました。これは何度もご覧いただきましたので、省略させていただきます。

4ページ、主要税目につきまして税収に推移を掲げてございます。下の方に地方消費税がございますけれども、非常に安定的な税収の推移ということになっております。

5ページ、これも何度もご覧いただきました。人口1人当たりの税収額を各県ごとに見たものでございまして、右から2つ目のところに地方消費税がございます。最大と最小で1.9倍の差ということで、主要税目中、最も偏在度が小さいわけでございます。

6ページ、最近、地方全体の歳出の構造がどのように変わってきたかということを見たものでございまして、上の方につきましては、どちらかといいますと、企業に対するサービスが中心になっている農林水産業費等々の合計。下の方に、社会保障の中核を占めます民生費を掲げてございます。最近は、やはり民生費がそのウエイトを非常に高めてきているという状況でございます。

7ページ、社会保障関係費が今後どのようになるのかということでございます。従来、同じようなものでございましたが、精査をいたしまして、2005年と2015年という形で示させていただいたものでございます。国と同様、地方も大幅な伸びが見込まれるということでございます。

8ページは、御参考までに、調査分析部会で小西先生の方からなされました報告のポイントを付けさせていただきました。

以上で地方消費税関係を終わりまして、9ページが地方たばこ税でございます。左の方にマイルドセブンを例にとりまして、どのような構成になっているかということでございますが、税といたしましては、国のたばこ税と地方のたばこ税が同額で税率の設定がされているということでございます。

続きまして、10ページ以下、地方の道路特定財源関係でございます。

11ページに、地方における道路特定財源の一覧を掲げてございます。先ほど国税の方で御紹介がございましたので、ここでは省略させていただきます。

12ページは、特定財源の歳出と歳入の状況がどうなっているのかを掲げたものでございまして、都道府県、市町村、いずれも道路特定財源の比率が2割程度という状況になっております。

なお、13ページは道路の整備状況が、国道、都道府県道、市町村道でどのように違っているかを数値化したものを付けてございます。

14ページで、先ほど国税でありましたものと同様の、昨年の閣議決定でございます。

以上でございます。

吉川主査

どうもありがとうございました。

それでは、以上、事務局の御説明、それから、私の論点整理メモを参考にしていただき、消費課税について御議論いただければと思います。どなたからでもどうぞ。

それでは、増渕委員、井堀委員の順番でお願いします。

増渕委員

消費課税については、吉川委員が委員個人としての意見であるということで言われた部分について、私自身もほとんど賛成といいますか、同じ考え方ですので、余り付け加えることもないんですが、2つ、これは吉川委員から説明していただければと思う点があります。

1つは、社会保障の財源としての社会保険料の役割といいますか、ウエイトについてはどう考えられているんでしょうかということで、社会保障が全部、税で賄われているのであれば非常に考えやすいわけですけれども、現状はそうではないわけですし、税と社会保険料というものを併せて負担を考える必要が、所得階層別にも、あるいは年齢別にもあると思うんですが、その中で将来的に社会保険料というものをどう考えるのかということが、それを併せて考えなければ、消費税を将来どうするのかということも考えにくいと思いますので、その点についてお伺いしたい。

もう一つは、逆進性の問題について、途中を省きますと、生涯所得で考えればそうでもないんだという話なんだろうと思うんですが、経済学者にはある意味、自明のことなのかもしれませんけれども、一般庶民である私などが考えると、これは非常にわかりにくいといいますか、生涯所得というのは、一人ひとりについて、生涯が終わってみないとわからないのではないかというふうに普通捉えるとすると、やや消費税というのは生涯所得で考えれば逆進的でもないという説明がどこまで受け入れられるのかについて、よくわからない点があるんです。その点についてお伺いしたい。

ただ、そういった上で、冒頭申し上げたとおり、全体としての考え方は将来的に社会保障というものを消費税を主たる財源として考えることについては、私は全く異論がございません。

以上です。

吉川主査

ありがとうございました。それでは、井堀委員、横山委員に御発言いただくんですが、私への質問だったということなので、簡潔にお答えさせていただきます。

社会保険料につきましては、1つは現役世代が主として負担するという問題があると思います。また、これは理論的というよりは現実面の問題ですが、いわゆる未納の問題というものも無視できないと考えています。したがって、社会保障なんだけれども、今後、社会保険料に大きく頼っていくというのは、私は現実論として難しいのではないかと個人的に考えております。

2番目の生涯所得というのが、言葉も含めてややわかりにくいという御指摘があったと思いますが、これは言葉を言い換えると、すべてではありませんが、資産の保有というふうに考えてもいいかと思います。したがって、とり分け高齢者の場合ですが、カレントな、現在の一時点でのフローの所得は仮に小さくても、資産という面から見ると、かなりそれを蓄積している。例えば金融資産だけではなくて、持家などのことを一つ考えてもいいかと思います。

したがって、やはり一つの時点での所得ということだけに注目して経済力をはかるというのは限界がある。これは別の言い方をしますと、繰り返しですが、資産を保有しているのはほとんど高齢者だというような言い方にも置き換えられるのではないかと思います。

以上を、一応、お答えさせていただいて、続いて井堀委員、それから、資料を提出していただいている横山委員に御発言いただきたいと思います。

井堀委員

吉川委員の個人的な考え方というのは、私も基本的には賛成なんですけれども、コメントを3つほど述べさせていただきます。

1つは、理論的というか、余り本質的ではないんですが、論点IIの消費税のメリットの一つで、最初に勤労意欲を阻害しないというのが消費税のメリットなんですが、理論的には消費税は勤労意欲を阻害するので、御存じのように、消費と労働所得の相対価格にくさびを打ち込むのが消費税で、これは労働所得税でも同じですから、要するに、なぜ人は働くかというと、常識的に考えると、働いて得た所得を使うために働くので、使う段階で消費税がかかれば相対的な価格にはディストーションがかかっているわけですから、勤労意欲を阻害しないというのはメリットとしては言い過ぎではないか。これはコメントです。

もう一つ「『軽減税率』の是非」で、2つ意見が紹介されていたんですけれども、もう一つは、やはり軽減税率を導入することでどの程度所得再分配効果が期待できるかだと思うんですけれども、つまり、軽減税率というのは食料品のように相対的に所得の低い人がたくさん買うだろうと思うものに優遇税率をかけるわけですけれども、所得の低い人だけが買うものについて軽減税率をかけるわけではなくて、所得の高い人も、当然、そのものを買うので、結果として見ると、軽減税率を適用したものの再分配効果はかなり限界的で、それによって失われる税収増に比べると余りメリットはないのではないかと思います。

3番目で、消費税の社会保障財源化の話なんですが、これは大ざっぱに言えば、消費税を福祉目的税化しようということで、現状でも、一応、予算の上ではなっているわけですが、それを文字どおりに解釈すると、社会保障のための財源は消費税だけにする。消費税の現状の税率が足りなければ、税率を上げてでも消費税はすべて社会保障に回して、社会保障の財源と消費税を、今は社会保障の財源、要するに歳出の方が消費税よりも多いわけですけれども、そこを均等にしようという目的税化が効果を持つんだと思うんです。

そのときのデメリットは、今日、後半の方で道路財源あるいは環境税の話も出ましたが、要するに目的税化することのデメリットというのは、既得権化して、消費税で上がった税収は必ず福祉目的に使わなければいけないという形になってしまうことがデメリットなわけです。それがいいか悪いかというのは、そこで一般財源化してフリーに予算編成している場合に比べて、目的税化することによって歳出を確保するということが社会的に必要かどうか。逆に言うと、目的税化しないと、その歳出が社会的に望ましい水準よりも減るかどうかという話だと思うんです。

だから、昔の道路特定財源も、目的税化しないと道路整備のためのお金がどうしても集まらないというときには、目的税化することのメリットがあると思うんですが、福祉の場合はどちらかというと高齢者の方が主要な受給者ですので、政治的な発言力等も考えますと、目的税化しなくても、どちらかというと、歳出は膨張しやすいものですから、そこをあえて目的税化して、そのための消費税をとなりますと、消費税率がどんどん上がってしまうおそれもありますので、あえて目的税化しなくても、歳出は歳出できちんと効率化して、必要な財源を、消費税も含めて一般的にとるという形の中で消費税を考えていった方がいいのかという気はしております。最後は感想です。

以上です。

吉川主査

ありがとうございました。

それでは、横山委員、資料も提出していただいているかと思いますが、それも含めてよろしくお願いいたします。

横山委員

基本的には、吉川委員の論点メモは非常に明確に整理ができて、また、個人的御意見についてはほとんど異論がなく、私は全面的に吉川委員のおっしゃられていることが、ここに御出席あるいは政府税調の委員各位の基本的な認識に近いのではないかと個人的には思っております。ただ、それを認めた上で、私、これから個人的な意見を3点申し上げたいと思います。

1つは、中長期的な視点から見ると、国際的な税制改革の潮流が所得課税から消費課税、とり分け、付加価値税へというような、論点メモにあるように、消費課税中心税制に行くんだといったときに、所得課税をどういうふうに位置づけるのかについて整理が必要なのではないか。ここをどういうふうに考えるのか。

これは、大きな経済社会構造の変化とともに、委員各位も御承知のように、我が国の税制も明治以降、地租から個別消費税、それから、個人所得税、法人税、消費税というふうな形で、基幹税が収入十分性へというんでしょうか、その社会で一番経済的な活動をしている中核に税源を求めない限り、必要な税収はなかなか上げ得ないということで、長い歴史を見ると、やはりグローバル化ということも踏まえて、吉川委員がおっしゃられるように、長期的には付加価値税中心税制にならざるを得ないんだろうけれども、そこまでの筋道をどういうふうにつけるのかということが必要なのではないか。

併せて、逆進性の話で、お手元に、私、何も書いていなくて、出典だけで横山というのがわかるような図があるのでございますが、現行の消費税は、そこに書かれている付加価値税ということで、比例消費税という形になっている。これは免税なりがないというような話です。原則としてはこういうふうな、今、5%で上がっている。

そうすると、個々の主体は、1年なら1年という期間にどれだけ消費合計したかはわからないんですけれども、その都度、消費税を払っていますから、そうすると、消費の総額がC1の個人はC1かけるTだけ消費税を実際、累積で払っているわけです。そういうふうな形が、ある意味、逆進的だということは、そこに所得に占める消費税の割合、先ほどの資料にもありましたように、高所得者になればなるほど所得に占める消費税の割合が低くなる。

これをいわゆる逆進性へということなんですけれども、これを回避するにはどうしたらいいのかといったときに、複数税率の考え方もあろうかと思いますが、先ほど委員全員の皆さんがお笑いになったように、何がぜいたく品で、何が必需品かについて政府が項目ごとに規定しない限り、複数税率の適用というのはなかなか難しい。そういうことをやるよりも、基礎消費というような形で、1年間にどれだけのものが基礎消費かといったときに、例えば生活扶助を受けている、標準値で、今、3人世帯で1か月16万2,000から3,000円だとすると、1人が1か月5万円ちょっとですね。それかける12か月分でいくと、大体、生活扶助を受けている個人は、年額でいくと1人65万円、政府から補助を受けている。

そうすると、この扶助を受けている人たちが消費税を払っているということについてどうなのか。その生活扶助額が適当かどうかはともかく、基礎消費額を例えば65万円と決めたとすれば、その部分については全部還付するような形が考えられないかというのが一つの考え方で、交付国債でやればかなり行政コストもかからないのではないか。だから、私自身は必ずしも複数税率を適用する必要はないのではないかと思っています。

2番目は、地方消費税について、私たちはどういうふうに考えるのか。これは井堀委員が議論されているのかもしれませんが、この税調では余り明確な御指摘はなかったと記憶しているんですが、消費税を上げるといったときに、今の国の消費税率かける、地方の消費税率は25%ですから、連動しているわけです。そうすると、国の消費税率を上げるという選択をしたときに、今の25%そのままでいくのかどうか。あるいは国と地方の消費税をある程度切り離して、国の消費税率と地方の消費税率を連動させないような方向でいくのかどうか。ここについては余り議論されていないのではないか。

特に、地方消費税についてはかなり重要な税であるということは偏在性がないということでいろいろな委員が御指摘しているわけですけれども、1つ、やはり問題があるのではないか。それは、現行の地方消費税の清算基準が本当に課税標準の分割基準になっているのかどうかということは、これから地方消費税のウェートを上げていくときに、現行の清算方式について、やはり私はもう少し精査して、財政調整ではなくて、課税標準の分割基準としての現行の清算基準が合理性を持つかどうかということもやはり議論しておく必要があるのではないかというのが2点目です。

長くなって恐縮ですが、最後に3点目なんですけれども、EUの税制改革の議論を主に国際的な税制改革の潮流といっている以上は、これは田近委員を中心にヨーロッパに視察に行かれた御報告の中でも、私、質問を申し上げたんですが、EUの税制改革のもう一つの大きな流れは、やはり環境税制改革になるのではないか。その環境税制改革について、EUの税制改革のかなり大きなトレンドあるいは潮流だとすると、なぜ、この環境税について国際的な税制改革の潮流ということで、所得課税から付加価値税へというときに、環境税についてもっと全面的に取り扱わないのか。

今日の日経の1面の記事にあるように、国が課税するのか、地方が課税するのか。この辺のところも、上流課税か、下流課税かということも含めて、また来年のサミットのことも考えますと、やはり日本が明確な形で環境に対する経済的手法を考えているんだというメッセージを発する上でも、ここは政府税調としての環境税についてどうするんだ。EUの環境税制改革をどういうふうに評価するのかという視点は、我が国で環境税を入れるかどうかは置いて、EUの税制改革における環境税制改革をやはり総括しておく必要があるのではないかと思います。

以上、3点です。

吉川主査

それでは、高山委員、お願いします。

高山特別委員

幾つか意見を申し上げたいと思うんですけれども、まず吉川さんが作成なさったメモは大変包括的で、問題が明快に提起されていると理解しております。最後に近いところから行きますけれども、まず国においても、地方においても、現在の消費税は、財源が足りないものの、事実上、福祉関係の支出に使われている。これを広く国民にもっと深く理解してもらう必要があるのではないか。今後、仮に消費税の税率をアップするにしても、それは福祉目的に使うということです。日本の社会保障支出を見ますと、最近で言えば、その7割は高齢者、お年寄りに向けられた支出なんです。消費税の税率を引き上げれば、それだけ老後の安心の基盤がより厚くなり、強固になる。そのことについての理解がまだ不十分であって、そこのところを訴えていく必要があると思うんです。

消費税の税率の引上げは、これまで抵抗が非常に大きい問題だったと思うんです。いろいろなアンケートを取ると、消費税の税率アップには年配の女性の反対がものすごく強いんです。ところが、実は消費税というのは、今のところほとんど福祉に使われていて、しかも福祉というのは事実上、年配の人むけに使われている。そこをやはりちゃんと理解してもらうことが、この消費税の問題の理解を深める上で重要ではないかと思っています。

国民負担について「国民に還元されること」という一般的な書き方になっているんですが、もうちょっとターゲットを絞って、実は消費税はお年寄りのためなんだということをもっとストレートに主張することが大事ではないかと私は思っています。現内閣は「お年寄りには安心を」ということがキャッチフレーズのようでして、その基盤なんだということをちゃんと訴えるということではないかと思います。

2点目は、逆進性の問題です。消費税というのは常に逆進性とワンセットで議論されてきて、それが大きな抵抗の原因だったと思うんですけれども、従来から消費税は必ずしもそんなに逆進的ではないという議論が進んでいたと思うんですが、今回、生涯所得というものを基準にとった場合には、実は必ずしも逆進的ではないという議論を強く主張していると思います。

生涯所得は確かにわかりにくいんですけれども、所得はやはり変動するんです。変動するにしても、消費支出はそれにぴったり、所得の変動に応じて消費支出も変動するかというと、そうではなくて、消費支出の方が動きが安定的なんです。それはどこかに何かベンチマークがあって、そのベンチマークは何だといったときに、自分が将来、かせぐであろう所得であるという考え方だと思うんです。

先ほど、吉川さんがおっしゃった資産ということも確かに重要なんですが、資産ということになると、別途、資産課税があるではないかという議論が起こるはずです。なぜ消費税でやるんだという議論と区分けして、更に突っ込んでいかなければいけない。いずれにせよ、生涯所得という切り口をもっとわかりやすくしながら訴えていく。それが逆進性の問題に対する誤解を少しずつなくしていく方向ではないかと思います。

ただ、逆進性と言えば、社会保険料の方がはるかに大きいんです。しかも、政府の方針で、社会保険料は当面、引き上げ続けるということになっているわけです。ますます逆進性は強まります。そういう方向との比較で消費税はどうかという議論ではないかと思っています。

それから、消費税を導入をしたり、税率を引き上げたりするときには増減税同額という縛りを今までかけざるを得なかった。今回はそれとは違う議論をしようということになっています。将来に向けて少子高齢化はさらに進む。財源が足りない中で、今後とも、社会保障関連の支出は増えていかざるを得ない。そうした中で、増税する場合の一つの重要な財源として消費税というものを位置づけているという話でありまして、そこのところも従来とは違う問題提起になっています。

近々の課題で言いますと、基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げる財源ということになっているんですけれども、それだけで議論が終わっていることに、私はやや不満を覚えるわけです。

基礎年金の給付は、今、65歳からもらうと、40年加入の人は、大体、1人月額6万6,000円なんです。この金額は高齢であれば、経済的に恵まれている人も例外なしに受給する金額です。高齢で経済的支援の必要のない人も老齢基礎年金を受給している。そういう人に対する経済的支援を一段と厚くするために税金を更に投入する。そういう議論を、そのまま国民が広く受け入れてくれるかということなんです。

これは、税の守備範囲を超える問題かもしれません。何のために増税するんだ。増税は基礎年金の国庫負担割合を引き上げるために必要です。しかし、それでは高齢者に満遍なくお金が行ってしまうではないか。経済的支援をする必要のない金持ちの高齢者にも、税金負担の給付が届いてしまう。そういうことでいいんですかということをやはり、もう一回、再検討してもらってもいいのではないかと思うんです。

諸外国の例を見ますと、ミーンズテストとか、所得テストとか、年金テストとか、クローバックだとか、いろいろな工夫がとられているわけで、その上で増税をお願いするという形になっているわけでして、基礎年金の国庫負担割合を引き上げるために消費税を上げるというだけでは議論が足りない。税調の守備範囲を超えるんですが、給付についての検討を改めて求める必要があると私自身は考えております。

最後ですが、地方を見ますと、ほとんどの団体は、やはり消費税に対する期待が大きいと思います。将来的に見ますと、福祉関係の支出は増えていくわけでありまして、福祉という場合に、地方も含めて、今後、増税が必要になる。その点をちゃんと押さえておく必要があるのではないかと思っておりまして、その点への配慮をお願いしたい。

以上です。

吉川主査

ありがとうございました。

それでは、出口委員、辻山委員、それから、とりあえず若林委員の順でお願いします。

出口特別委員

ありがとうございました。

事務局の「企画21-3」という資料の36ページを見ながらコメントをしたいのでございますが、エコノミストが多い中で私のようなあまのじゃくがいると、今日の議論は、吉川さんは非常にうまくまとめられていらっしゃって、きっちりしたメッセージは出されているんですが、誤ったメッセージを納税者に送ってしまうのではないかと危惧します。

何かといいますと、高木委員のメモにもありますとおり、消費課税は逆進性がありますということで真っ先に書かれているのでありまして、納税者、特にスーパーのチラシを毎日見ながら、あちらに買いにいこうか、こちらに行こうかという人からすると、生涯所得で見れば逆進性はありませんなどというのは逆なでするようなことであって、理論的には勿論、そういうことはわかりますが、そういった方々に反対してくれという誤ったメッセージを送ってしまうのではないか。

むしろ、これは役人風に読み替えれば、短期で見れば逆進性はありますというメッセージですね。そうであれば、真っ先に短期の逆進性を受け止めてあげて、これに対してどうするのかというきっちりしたメッセージを発しないと、とてもではないけれども、恐らくはみんな、消費税の増額には賛成されていると思うので、そこはやはりきっちりしていかないといけないと思います。

それについて「企画21-3」の36ページの上に〇が2つあって、事務局の御説明では、ほとんど一緒で上だけ読みますなどというとんでもない話がございましたが、先ほどの横山委員もやはり、逆進性をしっかり受け止めてこういうメモを出されたんだと思いますし、こういう解決策を提示していくというのが大事だと思うんですが、この36ページの1つ目と2つ目の○は、そういう意味で全くメッセージ性が違うんです。明らかに逆進性を認めた上で、2つ目の○は、最後の2行目の後ろから言いますと「税制全体や歳出面を含めた財政全体の中で」。これは、今日、吉川委員はちゃんとメッセージを出されて、ウェルフェアーということをきっちりするんだとか、あるいはインカインドのウェルフェアーが大事なんだということをせっかくメッセージとして出されているわけですから、そこのところは是非強調して、更にここでは「近年の民間非営利活動の広がりをも踏まえつつ」ということで、だれが支援されるべきものかがわかりにくくなっている中で、この辺の逆進的な対応をしっかりとっていきましょう。その次に長期的な話をしないと、納税者の目線というのはやはり、今日の生活、明日の生活の中で、そういうところで話が進んでいるということは税調としても忘れてはいかぬだろうと思います。

もう一つは、今日の中で触れられていないんですが、前回、田近委員が1997年の消費税に係ることで、これから消費税を上げたときに経済にどういう影響を与えるかというところもしっかり、国民に対してはやはり、ある程度のメッセージを出しておかないと、個別消費税というのは消費を望ましい水準に下げるためにつくっているわけでして、それと消費税というのが非常に紛らわしい形で、その消費税を上げれば、当然、経済に与える影響があるわけですから、そこのところをトータルでどう考えて、これを設計するのかというところは、やはり政府税調としてはメッセージを出していくべきだろう。

3つ目ですが、ちょっと話がややこしくなりますが、個別消費税に関しましては、これは英語ではエクサイズ・タックスと呼ばれていますけれども、英語のエクサイズ・タックスは物だけにかかっているわけではなくて、ある望ましくない行為、サービスという表現をとっていますけれども、行為に対してもエクサイズ・タックスというのはかなりの税率で、例えば100%だとか、200%だとか、あるいはもうちょっと高い税率もあったかと思いますが、そういうものでかけられておりまして、これが来年度の税制改正には無理にしても、個別消費税を議論するときに、行為に対するエクサイズ・タックス、これは日本にはまだ入っていませんから、新しい税として是非検討していただけたらと思います。

長くなりました。

吉川主査

それでは、辻山委員お願いします。

辻山特別委員

総論として、吉川委員の私見とおっしゃいましたけれども、それに賛成なんですけれども、細かいことを2点申し上げたいと思います。

1点目は、前回の金曜日の税調のときは、特に消費税に触れられていたと思うんですけれども、主として財政再建の問題が前面に出ておりまして、財政再建だけから消費税を上げていくということについては少し国民の理解が得られないのかなと思います。今日は社会保障という面から新しく議論が出ましたので、そういう意味では説得力があるのかなと思いました。

もう一点目は逆進性の問題ですけれども、今日は生涯所得の観点から見ると必ずしも逆進的とは言えないという、これはいろんな説明ができると思うんですけれども、実は消費税こそ最良の所得税であるという議論が1980年代に、前に一度、横山委員もおっしゃられたと思うんです。 どういうことかというと、理想的な所得税というのは包括的所得税である。この包括的所得税を本当に理想的に運用をしようとすると、実は含み益の問題、未実現の所得の増加も本来は課税しなくてはいけないんだ。しかし、未実現のものというのはフローでなければ所得を捕捉できないということで、そうすると、そのものも含めた所得の増加を最もよく表すのは消費、支出のところなんだという議論が昔からございます。

したがいまして、所得というものをどういうふうに考えるのか。これは経済力の増加というふうに定義をし直しますと、結局は消費のところで捕捉するのが最もいい所得税なんだという話が昔から言われていることなので、そういう説明もできるのではないか。生涯所得といいますと、私はよく理解できない。生涯所得に比例してという所得というものをどういうふうに定義するのかにもよります。

それと、先ほどの御指摘のように、生涯を見ると資産も増えているではないかということなんですけれども、もうちょっと別の説明もできるということを申し上げました。

以上です。

吉川主査

ありがとうございました。

それでは、若林委員、お願いします。

若林委員

これから社会保障コストを維持していくには、消費税の充実が基本となるという吉川主査の御私見だったと思いますけれども、原則異論はありません。その際、お願いしておきたいのは、社会保障というとすぐに年金だとか、医療だとか、金目の大きいものに目を奪われがちなんですが、それだけではないと思います。さっきの高山委員と同じ意見になるんですけれども、地域に密着して、フェイス・ツゥ・フェイスで、直接住民サービスでやっているような、高齢者や障害者を相手にしたきめ細かな福祉サービスもあると思います。

こうしたマンパワーを中心とした地域の活動を支える財源もしっかり確保していただくよう、お願いしたいと思います。

要は、社会保障や福祉というのは、年金のように単に金を払えば済むものではなくて、本質的にはきめ細やかさや心の温かさというのが必要だと思います。そういうところにもしっかり財源を手当していただきたい。そうでないと社会保障は維持できないのではないか。これはお願いであります。

以上です。

吉川主査

それでは、井上委員、お願いします。

井上特別委員

消費税の問題は、非常に検討しなければならないことなわけですけれども、今、急に叫ばれてきて、これは成長率が2%だということで、3%を投げたということからそういうことが急激に上がってきているんだと思いますけれども、2011年にプライマリーバランスを均衡させる。これはもう絶対にやらなければいけないということはよくわかっておるわけですけれども、まだまだ行政の経費を節減するだとか、今の防衛庁の問題が出てきたり、ああいうことで行政経費をもっと節減して、それを達成するためにもっと努力をしなければいかぬというふうに思います。

ただ、消費税というものは将来的に当然導入しなければいけないことなので、今から検討するということには結構ですが、それと同時に吉川委員のおっしゃられた社会保障のためにということでやられることも結構なわけです。ただ、特別会計に持って行く、要するに、目的税のために持って行くということは、私としては反対です。御承知のように特会となりますと、どうも入ってきたものを無駄遣いする、節減する努力がなされなくなるというふうに思うわけでして、医療費などでも世界から比べれば非常に高くかかっている、老人の1人辺りの医療費というのは、大体諸外国に比べれば2.2倍~4倍だとか、入院数も2~4倍だとか、そういう点でも非常に医療費がかかっているわけですね。

そういうものもいかに合理化して、節減するかということは、やはり目的税化にしてしまって、特定財源化にしてしまうということになると、そういう努力が払われなくなる可能性が十分にあると思いますので、そういう点は反対です。

それから、特別会計も重複分を削除すると175兆からある。そういうものをもっと活用することを考えるべきではないか。

もう一つ、その医療費の問題からくるとたばこ税、これも2兆2,000億から上がっておりますけれども、これこそがんの基になって男性が1.6倍、女性が1.9倍というがんの発生率が高い、害あって益なしというものを、人によっては益があるのかもしれませんけれども、そういうものを世界から比べても非常に安い税金で、今、何で温存しなければいけないのか。もっとそれを上げて、今の基礎年金2分の1の分に充てるということも、やはり早期に実現すべきだろうと思いますので、是非ともその辺も考えていただきたい。

中小企業にとって、事業者免税制度、簡易課税制度が現行1,000万、5,000万とございますけれども、これは是非とも継続をしていただきたいと思いますので、その点をよろしくお願いします。

以上です。

吉川主査

それでは、大橋委員、お願いします。

大橋特別委員

今、吉川委員の方から、極めてクリアーカットに御説明があり、御自身の御意見もいただいたので、私もこの問題については、もうほとんど何も吉川委員のお話に付け加えることはございません。むしろ逆進性については、私はこういう考え方をもう少し広くあまねく国民の皆さんに理解していただくことが大事で、この説明から逃げることによって、下手をすると国民が誤解を招くのではないかということを余り考える必要は、私はないのではないかと個人的には考えております。

今、私が発言をお願いいたしましたのは、実は一番最後の64ページのところで出てまいりました環境税の問題なんですが、先日、内閣府からマスコミにも発表されましたし、経済財政諮問会議の席上でも給付と財源の問題として、今の問題点のためには日本経済の成長がとにかく非常に重要だという論点が出ております。

これについては、皆様もう異論は全くないと思うんですが、この環境税の問題が産業界の一番大きな問題で、そこをもう少ししっかりせいということのために、この環境税というものが賦課されてくるとなれば、この間も各業界が本当に真剣になって、化学業界も鉄鋼業界も、言わば川上に位置している、比較的量の多い排出をしているところが真剣になりまして、現在の目標を更に上回ることを徹底的にやっていこうということを考えております。

したがいまして、この自主行動計画というものを、もう少し温かく見守っていただくということが非常に大事ではないかと。それを信用しないと、したがって、何でもいいからかけてしまおうということになりますと、私どもとしても相当失望感が出てまいります。

ただ、この消費課税のところでこの話が出てきたということは、もしかしたら川上の課税で、結局消費者のところですべてのいろんな計算をした上で、我々あるいは末端のところで買うものについての細かい計算を、炭酸ガスの発生量などを計算して、それに対する消費税のプラスαのようなことで課税していこうということでしたら、場合によっては国民に対する、大きな発生量の削減に対する、アナウンスメント効果があるのかもしれませんが、これは実際には非常に複雑怪奇で、現実には難しいのではないかと思います。

私が冒頭に申し上げた、企業の成長の問題というのは、現実に産業界に位置しておりますと、今、アジアの中で中国あるいはインド、そういうところもアメリカと同時に、今度のポスト京都にも入っていかなければ、とても議論ならないということは言っておりますが、精神的にはわかると。ですから、そういうものに対する協力はしましょうということは言っておりますが、多分数値の目標というのは、絶対に彼らは賛成しないと思います。

そういたしますと、まず海外企業が我々日本国内にこれから入ってきて、日本経済の活性化に少しでも貢献しようと思っているところは、日本に入ってくることは断念すると思います。間違いなくアジアを中心としたほかの国でやった方がいいということになると思います。

もう一つは、日本の企業そのものも、これは国際競争力という意味で、我々が国内でやっていることについては、やはり限界があるなという意識が更に強くなってきて、中国や場合によってはインドとか、ほかのASEAN諸国も含めて、そういうところに更に生産工場を移していくことにならざるを得ないと思っています。

ですから、そういう意味でこの問題は、財政再建のためにはどうしても今、日本企業ではなくて日本経済の成長が必要で、そのために例えば名目が3%と2%でこれほど違うんだということ、経済財政諮問会議でもそういうアナウンスメントが出ているわけですが、日本の企業の成長のためにではなくて、是非日本の経済の成長のために、マイナスの効果があるようなことは結果的に国民生活に大きな負担を加えていくことになると思いますので、この環境税問題だけは今後議論されるにしても相当慎重にやっていただきたいし、私どもとしてはこの問題はどうしても賛成できないという立場でございます。

ありがとうございました。

吉川主査

それでは、井戸委員、どうぞ。

井戸特別委員

幾つか端的に申し述べさせていただきます。1つは消費税の逆進性の問題については、例えば社会保険料、医療費負担が3割負担になっていますが、明らかに逆進的なんです。だけれども、これについて逆進的であるとなぜだれも言わないのか。消費税についてだけ、なぜ強調されるんだろうか。そういうふうに考えてきたときに、それはきっと受益と負担との対応関係が見えている。自分が充分それだけの受益を受けていることが見えているということで、みんなが納得しているんではないか。ということだとすると、逆進性の議論は受益と負担の対応関係を明確にしていく方向でクリアーしていくのが1つではないかと思います。

それから、格差是正が地方間で非常に問題になっておりまして、私どもは実を申しますと、地方消費税と法人二税を入れ替えて国税に法人二税の一部を渡して、国税の消費税部分を例えば1%更に地方によこしていただきますと、3.2の格差が2.7ぐらいの格差に縮減しますので、こういう税源の入れ替えということもタックスミックスの1つとして考えていただく必要があるのではないかと思っております。

もう一つ、若林委員が発言していただいたので、私が言うまでもないのでありますが、限界集落という言葉が最近はやっておりますが、結局50%を超えるような高齢地区は、過疎地だけではなくて都心にもいっぱい転がっているわけです。こういうところに対してどんなサービスを提供していくのかというのは非常に重要な問題でありまして、そのような意味で地域全体として取り組まざるを得ない。これは具体的にはマンパワーなんです。そういう意味で、いわゆる制度的な負担だけではない負担がかなり地方にはあるんだということを是非御理解いただきたいと思います。

道路目的財源なんですけれども、何度も言うようで恐縮なんですが、地方の方はオーバーフローしているどころではなくて、道路目的財源のウェートは国からの補助金を入れましても37%、兵庫県でいいますと34%でありまして、私どもとしては、地方道路目的財源は増やしていただきたいというのが基本的なスタンスで、もし国が余っているならば地方によこせというのが我々の主張であります。

暫定税率につきましても、補助金まで入れて暫定税率込みで考えますと、暫定税率の収入でいいますと、国ですと3割ぐらいなんですが、地方が7割ぐらい占めているということでありますので、暫定税率が飛ぶと痛手を地方が受けるという点も是非御理解いただきたいと存じます。

それから、たばこ税を上げろというのは大賛成です。

もう余り言いませんが、もう一つ私が日ごろから思っておりますのは、特に消費税につきまして、担税力が高い個別消費の税負担をなぜ上げないのかと思います。例えばダイヤとか、指輪とか、高級時計とか、だれが見ても過剰消費、担税力が高い消費だと思われるものについて、税率を20でも30でも上げて取るべきなんだと。それにもかかわらずなぜ下げる方の話ばかりになるのか。ヨーロッパでも上げる方を特定しているという制度を取られている国があるというのは、そういう点に配慮されているんではないかと思います。だから、私はその点も検討の俎上に上げていいのではないかと思います。

横山先生がおっしゃいました税の帰属をめぐる分割基準は検証して、適切なものがあればそれに基づくのが基本であろうと存じております。ただ、なかなか難しい課題だと思いますので、一言触れさせていただきました。

吉川主査

だんだん時間が迫ってまいりました。若干時間を延長するにしても、大変恐縮なんですが、御発言を簡潔にお願いしたいと思います。

まず、飯塚委員、猪瀬委員、お願いします。

飯塚特別委員

消費税は避けられないというところは、かなり一致したところだと思うんですが、私が申し上げたいのは、対応の高速化、スピードアップ、世界との歩調を合わせていただきたいということです。環境税も早過ぎるのかもしれませんけれども、17年ぐらいにわたって収入と支出がこれだけ乖離して、低負担で世界一の高負債という状態が放置されてきている。これは経営腐敗、そういう企業からは大体ものを買わないですね。つまり税金を払わない。なぜならば、いいサービスが受けられないと予測するからです。それを一番妨げていることは、多分精緻な議論を長くやっているということよりも、国民の中での議論とここでの議論が余りにも離れているということだと思います。

特に逆進性ということが一番問題だと思いますけれども、それをもっとクリアーにわかりやすく説明し、対策をちゃんと説明する。あとシンプルにするということと経済への影響、こういうことをクリアーにして、もう避けようがないし、高速な対応をするために、そこを急ぐ必要があると思います。

吉川主査

それでは、猪瀬委員、どうぞ。

猪瀬委員

今日は時間がないので、井戸委員が言われた法人二税の問題はやめましょう。さっきダイヤからたくさん取れとか、発想が古いんですよ。全体に古いトーンになっているのはそういうことで、軽減税率の問題なんですけれども、食料品を軽減税率でやれば逆進性が緩和されるという考え方も、これは井戸さんではないけれども、先ほど井堀さんが問題だということを提起しましたが、今の消費は違うわけです。つまり食料のカロリーベースの需給率が40%という話をよくするわけですけれども、それは梅干と御飯の話なんです。我々が今、こういうペットボトルを150円で買ったりしていて、牛乳がこれの2倍の量で余り値段が変わらないわけだから、一生懸命牛に餌をやってつくったものと、その辺の富士山のバナジウムとか変わった命名の水と同じ値段になっている。そういう意味では農業産出額が大体9兆円ですね、水産を入れて10.5兆円ぐらいです。ところが、我々は今、GDPで80兆円食べているわけです。80兆円消費していて、その消費というのは生き残るための消費ではなくて欲望としての消費なわけであって、そういう中でしばしば聞かれる話は、また格差とか貧困とか、非常に古い言葉で覆われるわけです。そうではなくて、我々は80兆円をどんどん海外からも買い付けて食べて、味もわからないのにトロがいいという人がいっぱいいたりする。しかし、この季節はサンマを食べた方がおいしいに決まっているわけです。それはともかく、そういうことで80兆円を消費している。

そういうことで考えるときに、多分こういう消費税を上げるという話になると、政治家はどうしてもリップサービスしなければいけないから、貧しい人のために食料品は安くしましょうとか、そういう話になってくるんだけれども、それは今の我々の消費の実態を踏まえていないことになるわけで、消費税というのは消費の実態を踏まえてあるわけですから、そういうことで軽減税率の問題は余りポピュリズムに陥らないで考えるべきだろうと思っています。

あと言いたいことがあったんですけれども、時間の関係でやめておきます。

吉川主査

それでは、田近委員、翁委員、長谷川委員、松田委員の順で、恐縮ですが、簡潔によろしくお願いいたします。

田近委員

簡潔にやります。ただ、お手元の「企画21-3」の49ページ、さっき佐川課長が御説明された消費税の使途ということで、私の申し上げたいのは1つで、議論もこれだけ煮詰まってきて、国民にこの税をどうわかってもらうか。それで生涯所得の負担はわかりやすい、わかりにくいという議論をしましたけれども、その点で言えば、やはりこれだけ福祉国家になってきて、生涯にわたって子どものときから高齢者になるまで、いろんな給付を受けてくる。その給付に対する負担ということで、みんなが払うということなんだと思っています。

そういう観点では、相続税の議論をしたときにも、昔は相続財産の格差の是正だということが、非常に重要な問題で、今でも重要ですけれども、あのとき私が非常に新鮮だと思ったのは、やはり亡くなったときに生前受けてきた給付に対する負担をする。そういう考え方はみんなも受け入れているんだと思いました。その一環として消費税があるというのが、私の理解です。

さて、49ページの消費税の使途で2つ言いたいんですけれども、この図がある意味で日本の消費税のすべてだと思うんです。平成19年度で100というのが全部で13.3、つまり5%で13.3兆円、1%で2.6兆円取れたわけです。説明は省きますけれども、それが右側のいろんな形になって、最終的には国の部分は基礎年金、老人医療、介護に使途を目的として使われる。それが予算総則に書かれることになっているわけです。

国民はこの姿は知ってないと思うんです。つまり消費税は福祉目的だというときに、消費税がどう福祉目的に使われているかというところが、やはり議論として出てくるんだろうと思います。国民は、多少わかっている人も、1%の2.6兆円が社会保障に行くのかというところが、多分頭にあるんだろうと思います。

そうすると、ここは、先ほど地方の説明もいい説明があって、実は地方の方は国と同じぐらい社会保障を使っているんだと、かかっているんですというのならば、大きな話ですけれども、やはり消費税で社会保障を担うというのは、一体どういうことなのかという議論が根っこの議論の一つとして要るような気がしております。

第2は、目的税化の話で、井堀さんがおっしゃったのは、道路特定財源も思い起こせば、昔は道路が必要でつくった。それが必ずしも道路がきちんとできた後では、不要不急の道路の建設に使われるようになったのではないかと。それが消費税についても、将来的に言えるかもしれないという御指摘があったわけです。

その場合、目的税というときに困難を覚えるのは、この49ページの上で、消費税は4%で、その4分の1が地方消費税、我々の頭で全体で5%となっていますけれども、国税部分はずっと右に来るとかぎがかかっていると、下の地方に行く部分は、かぎがかかってない。

吉川主査

恐縮ですが、少しスピードアップしていただけますか。

田近委員

もうやめます。さっきと同じ話ですけれども、福祉目的の消費税というのをどう国民に理解してもらうかという問題があるということです。

あと、この税自身を上の方の部分でも、使途を目的税化したときに、これが長期的には財政再建との絡みで、議論に将来的にはなるだろうということを指摘したいと思います。

以上です。

吉川主査

翁委員、どうぞ。

翁委員

私も、吉川先生の今日の個人的な御意見に基本的に賛成でして、2つだけ申し上げたいんですが、軽減税率なんですけれども、食料品などの軽減税率によって消費税の中で垂直的公平を少しでも確保しようとしても、かなり強い税率の差別化が必要になると思います。また、税率の差別化をしたとしても、それによって必ずしもジニ係数が改善するわけではないというような実証分析もありますので、その意味では所得再分配を消費税の中でやるということではなくて、むしろ大きくとらえて所得税や社会保障給付とか、そういったほかの手段でしっかりと所得再分配に対する対応を考えていくことが望ましいのではないかと思います。

もう一つは、井堀先生、田近先生がおっしゃった点と関連しますが、私も基本的には社会保障と結び付けることによって、給付と結び付けることによって、負担と受益の関係がわかりやすくなるという意味で、吉川先生の御意見に賛成なんですが、吉川先生も御指摘されているとおり、これからどんどん高齢化していって、給付を受ける人たちの声がどうしても大きくなっていくという状況でございますので、社会保障の効率化、支出の効率化ということに関しては、何らかの歯止めがかかるような仕組みにしていただくことが重要だと思っております。

吉川主査

それでは、長谷川委員、お願いします。

長谷川委員

私はもうほんの一言だけ、井堀先生の御心配もわかるんです。つまり一旦決めてしまうと、それだけ入ってくるんだから使えばいいという話ですけれども、でも51ページの図にあるように、隙間がだんだん増えていることを考えれば、逆に言い換えれば天井さえ決めておけば、それ以上は増やすことができないというメリットもあるかなと。だから、一言で言えば、国民の目から見れば足りているのか、足りていないのかという関係が明確になると言う意味で、社会保障との関係をはっきりさせることは大事だと思います。

吉川主査

それでは、松田委員、お願いします。

松田委員

まず、消費税本体の話については、吉川委員の私見に全面的に賛成します。それから、逆進性がいろいろ問題になっていますけれども、この逆進性は消費税を導入するときに、ほとんどのメディアが反対して、その反対したメディアが反対のための反対というか、かなり無理に探した論点でありまして、そんなに取るに足らないと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、かなり反対のための反対でずっと何度も何度も使われるという面があるということを指摘したいと思います。

これは私が言い出しっぺのようなところもあったので、新設法人の免税の話なんですけれども、これは資本金1,000万のところで切っているんですけれども、今の時代に企業の大小を資本金で切るというのは時代遅れですので、何らかの形で是正していただきたいと思います。今、運用でやっているのかもしれませんけれども、何らかの法的な措置を整備すべきだと思います。

道路特定財源なんですけれども、これは現実の問題として、今度の暫定税率の切れることが非常に大きなポイントになると思うんですけれども、今の道路特定財源の税率は、例えばガソリン消費の抑制とか、そういう環境的な要素でも、時代にかなう税率になっていると思います。

環境税とは銘打っていませんが、環境税的にガソリン消費抑制的に働いているものでありますので、道路財源に使う、否とかかわらず、暫定税率は維持するという方向を税調で打ち出すべきではないかと思います。

以上です。

吉川主査

それでは、どうしてもという方だけお願いします。上月委員、お願いします。

上月特別委員

単一税率の話は、先ほどから意見が出ておりますのは、私も賛成です。

それと、今、新設法人の話もありましたけれども、消費税が非常に簡素だという御意見がずっと出ておりますけれども、基準期間の問題等がありまして、税の現場では決してそれほど簡素なものではありませんので、今のような御意見が出てきますと、もう少し基本的な点から見直しが必要ではないかと思います。

以上です。

吉川主査

それでは、山田委員、お願いします。

山田委員

3点あったんですが、1つだけ申し上げますと、福祉財源のために消費税を上げるという議論を一方でされていて、それでドイツとかフランスの報告ですと、それに伴って社会保険料の引き下げがあるとか、何か必ずワンセットで行われているわけですけれども、今の税調の議論ですと、例えば個人所得税については、財政再建という観点から上げる。消費税についても、社会福祉目的のために上げる。社会保険料についても、徐々に上がっていく、つまりすべて上がっていくという方向での議論のみで、個別に考えると非常にそこだけの議論では項目的に成り立つのかもしれないのですが、全体として与えるメッセージは、かなり上げるという方向だけになっているような感じがしまして、そこのところをもう少しメリハリを付けた形で、消費税はどうするんだ、どこはどうするんだ、その中で例えば間接税である消費税というのは、例えば大くくりであれば、それは直接税を下げることによって間接税との間の配分が行われてきているわけですが、その辺に配慮した訴えかけがないと、ちょっと議論としては片手落ちの議論になっているという印象を非常に強く受けております。

吉川主査

どうもありがとうございました。司会の不手際で、最後の方は随分急いでいただいて、失礼いたしました。それでは、時間も過ぎておりますので、これで消費課税に関する議論はおしまいということで、香西会長、よろしくお願いいたします。

香西会長

私も発言したかったんですが、言う機会がありませんでしたので、またいずれ。大変活発な御議論をいただいて、ありがとうございました。今後のスケジュールについて、一言御説明をいたします。

本日で、一応これまで積み重ねてきました税目を中心とした審議がほぼ一巡したというふうに理解しておりまして、来週からはこれまでの議論を整理した上で、更に審議を深めて行くということを考えております。

次回は、11月5日月曜日の午後1時~4時までを日程としまして、これまでの企画会合で出された御意見を整理した資料を用意し、それを基にして更に議論を深めていくということを考えております。

なお、5日の会合でございますけれども、できれば総理にも出席していただけるよう調整を図っておりますので、そのために会合は企画会合ではなく総会を、総理官邸で開催する予定にしております。

まだ、最終的に調整されているわけではありませんので、今、そういう可能性が出てきているので、それに備えているということです。したがいまして、会議室も本日のこの会議室ではなくて、官邸の方でということになっております。

また、その次の会は11月9日金曜日の午後1時30分~4時30分までを予定しておりますので、御時間の確保をお願いいたします。

それ以降の日程等は、また事務局から御案内、御相談をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

なお、1点御報告ですが、経済財政諮問会議から私、つまり会長に対して、来週の木曜日、11月8日に税制改革について諮問会議でも審議が行われるので、そこに出席してほしいという話がありました。私としては、現在の税調の議論の状況を報告するということで対応したいと思っております。よろしくお願いいたします。

御報告は以上でございます。

さっきの議論に一言だけ言わせてほしいと思うんですが、山田委員の言われたことは、本当にそのとおりなんです。しかし、それはある程度客観的なんです。例えば高山先生が言われたように、確かに老人にたくさん金を出しているわけです。だけれども、一人ひとりの老人は増えてないんです。老人の数が増えたから仕方なしに金が出ているわけで、だれも得をしてない。つまり放っておいたらもっと減るものがやっと止まるということで金が必要になっているわけです。

それはまた逆に言えば、社会保障について増税するということについては、いろいろそういった点の説明が必要ですけれども、可能性がありますが、国債残高を減らすために増税するといったら、お前たちがまずリストラしろという話になるだろうということで、そこをどうやって突破するのかということも、実は頭が痛いということですので、是非知恵をお出しいただきたいと思います。

将来の財政負担を軽くするためには、やはり財政のメタボリ体質をどこかで変えるように、例えば社会保障制度とか、そういったところで何か手を打ってもらわないと、この間の財政制度等審議会の報告ではありませんけれども、数字はそうだけれども、2050年までにずっとこれでということはなかなか難しいだろうと、私も心配しておりますので、私どもの議論もまだまだ残っているということで、いろいろ御知恵を考えていただきたい。もし、どうしても金の面でたまらないというのだったら、もっと公正な制度にしましたから出してくださいとか。いろんなことを考えなければならなくなってきている。そういう状態であるということを私としては感じております。

余計なことを最後に申しました。これで、終わります。どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本文中の○付数字の標記は、<○>にて標記致しました(内閣府のアクセシビリティによる)。

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。