企画会合(第20回)終了後の香西会長・田近主査記者会見録
日時:平成19年10月30日(火) 16時02分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
ただいまから、第20回企画会合終了後の記者会見を始めさせていただきます。まず初めに、本日は田近委員が主査として出席させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
〇質問
両先生にお伺いしたいのですが、今日の議論では、先日、経済財政諮問会議と財政制度等審議会のほうで、今後の財政再建に向けて、収支のバランスをとるために幾らぐらいの改善が必要なのかというシミュレーションがそれぞれ示されたわけです。それぞれ考え方も数字も若干違いますが、おおむね財政再建をしていくためには、かなり大きな増税が避けられないと素直に認めるような内容になっていますが、こういう試算が示されたことをどのように受けとめていらっしゃるか、その内容の評価も含めてお伺いしたい。
〇田近主査
難しい質問ですけど、今日、僕はこの会合の準備と司会をしていて、感想と今のご質問に対してですが、06年の基本方針から始まって、11年でどうなるかということのアップデートをずっとされてきて、今のところ最新の結果である。それで、国・地方を合わせたプライマリーバランスが閉じたとして、その先はどうなのだと。それについて25年まで、それからあとを財務省。期せずして2つとも社会保障のところが伸びていったらどうなりますかということで、数字は繰り返しませんけど出てきた。それをどう理解するか。会長が途中で、プライマリーバランスを閉じるということは、それが即増税かどうかということで、それはまだ両方サイドがありますからわからない。ただ、数字は数字ですから、私はこの準備をしていて、それをどう今後の税制に生かすのかということは考えていました。
だけど、今日は盛り沢山過ぎて、実質15分ぐらいしか議論していないので、また欠席されている委員もいるので、もう少し委員の意見を聞いて考えるべきかと思います。それは会長のお仕事ですけど、私が橋渡しできる部分は、今日の部分ではそれなりにいいディスカッションはできましたけど、いかんせん、まだフィードバックが足りないというところで終わったかなと思います。
〇香西会長
大体同じようなことでありますが、今回の議論は、ここに来てたくさんの計算が出てきたわけです。これはやはりかなりの進歩だと思います。政策論としてはかなり明白にせざるを得ないというところがありますから、そういう形で議論が進んでいることは私自身としては喜んでもいるし、またそれを推進してこられた方々に対しては、敬意も持っております。
ただ、その一方で、こういう計算にはそれなりの問題もいろいろあるということも確かであります。確かにたくさん出てきて、数字があって、それについてどう答えるかということは、我々の問題として残っているわけですけれども、税のあり方については、私どもしっかりやらなければいけませんが、同時に、やはり歳出を抑えるということがかなり大事なことであって、それについては税制調査会としては強調しなければいけないと思うのです。我々は何も増税することを喜んで、サディズムみたいに国民を苦しめようと思って仕事をしているわけではないですし、例えば過去の赤字の尻ぬぐいに増税するということは、これは国民にとってはかなり厳しい要求になるということは、我々自身が一番身にしみて感じることなのです。
大体今までは、税制調査会というのは減税をするところだったわけでして、消費税が登場したときには、確かに将来の税源ということを十分考慮されたわけでしょうけれども、やったときの時点においていえば、あれは直間比率の是正だったわけです。つまり、所得税を下げておいて、あとから消費税を入れていったということですから、ネットの増税というのをしようということではなかったと思います。ですから、例えば介護保険料を取れるようになったのは、介護サービスという新しいサービスがあるから、これについての合意も得られたわけですね。
今度の今後の我々の仕事というのは、それは非常に厳しい。ある意味で代償のない、代償というか、それはいろいろ考えるわけですけれども、ある意味でいえばネット増税になる可能性があって、それに対しては、非常な批判もあり得るだろうということを覚悟せざるを得ないわけです。その場合には、歳入面もいろいろ考えさせていただきたいと思いますが、歳出の面でも協力してもらわなければ、なかなかそれが実行されることは――もともと、今の政治情勢でどういうことになるかは、私にも予測がついていないわけですけれども、大きな環境としていえばそういう環境にあります。
歳出についていえば、今のメタボリ体質、財政がどんどん膨張していくような仕組みを考え直すことが一番大事だと私は思っていまして、例えば社会保障制度自体をもう少し考え直すとか、いろいろなことをやってもらいたいということを思っております。
それは税制調査会としては、本来の税制のあり方を議論する上で、税を国民からいただくことになるにしても、そういう努力をして、かつ、税制についても十分考慮して、初めて増税というようなことが何とか受け入れられる、多少は理解していただけることになる、ということを考えなければいけない段階で、仮に今まで出てきたような数字の線に沿って来年度以降の税の動きが行われるとすれば、それをどういうふうに説明するか。従来のように非常にはっきりした代償は出てこないわけですから、これをやることによってどういうメリットが将来に期待できるか、そういったことについての検討をやっていかないと、我々自身が立ってやっていられない。こういうことになるのだろうと、やや悲壮な感想を持って、緊張して今日の議論を私は聞いておりました。
〇質問
この関連でお尋ねしたいのですけれども、今日は時間も限られていたことなので、方向性が出たという感じではなかったかもしれませんが、こういう試算を今後の税調の議論にどうつなげていくお考えなのか、具体的には年末に書く答申で、こういう増税必要額的なもの、あるいは各試算した割合の数字でも、何らかの数字的なものを答申の中に書いていくことになるのかとか、この点については今どんなイメージをお持ちでしょうか。
〇香西会長
ただ、数字はいろいろな条件が違うわけですね。例えば、基礎年金の国費負担を2分の1にするという条件、あるいはプライマリーバランスを達成するという条件、あるいはそうではなくて債務ですね、国債発行額のGDP比を下げていくという、それぞれそういう狙いが今まで出てきた数字は必ずしも一致していないわけです。そのうちのどの狙いを選ぶかということは、大きな政治問題になる可能性があることであって、これは政治家の皆さんの間でも政党の間でも、あるいは有識者の間でも、最終的にいえば、非常に長期的な目標として今掲げられている財政が非常に健全な姿になる、例えば60%を割るというようにやや時間のかかる問題と、もう今年やらないと間に合わないじゃないかという、遅れればコストが高くなるというのはもちろんそうですけれども、それは将来のことですから、じっと待っていたら、そのうちに高齢化もピークを達するかもしれないとか、いろいろな議論も出てくるわけでしょうが、つまり、どの時間軸で考えるかということ。それは、政策としてどの目標を一番大事にするかということについてのコンセンサスというか、それがいいだろうということができてくることが解決の方向性を生み出すために必要な条件だろうと思っております。
あちこちからたくさん奉加帳が来たので、お金を出すのに幾ら出しますとはなかなか言いにくいところであります。
〇質問
香西会長にお伺いしたいのですが、こういうふうな財政の議論になってくると、諮問会議との関係なども出てくるかなという感じがするのですけれども、今後は諮問会議とどのような関係でやっていこうとお考えでしょうか。もしあればお願いいたします。
〇香西会長
諮問会議は総理を議長とする政策審議機関で、非常に重要な役割を果たしておられると思いますから、もちろん、私どももいろいろ教えてもらったり、情報交換したりすることを考えておりますし、必要があれば協力をしていくということだろうと思います。
〇質問
2点それぞれ違うお話をお伺いしたいのですが、1点目は、今までお話しになっていた内閣府と財審のそれぞれの試算を受けて、委員の方から歳出削減をきちんと徹底した上で、増税というのは致し方ないのではないかとはっきりおっしゃる方がけっこう多かったという印象を受けたのですけれども、今の試算を受けて増税やむなしだということを委員の方からいろいろ意見が出たということを、会長としてどのようにとらえられて、先ほどの数字は別としても、答申にそういう意見をどういうふうに反映させるおつもりなのか、お聞かせいただけますか。
〇香西会長
先ほど田近先生からもお話がありましたけれども、私も今日の議論だけではまだはっきりした方向性は出ていないと思います。もう少し、今日発言のなかった方を含めて議論してからでないと、税調プロパーとしての意見もまだそこまではいっていないと考えております。ただし、今日の議論は、出発点を与えるものといいますか、刺激するものとしては非常に有益だったと、こういう感じで受け取っております。
〇質問
あともう1点別の話で、国と地方の財政のお話を後半されて、地方もなかなか苦しいのだという意見で、多くの方がまだ発言されなかったので、もうちょっと議論が必要なのかもしれませんけれども、国と地方、特に地方税の偏在是正の話は、もうちょっと来週以降議論していくということになるのでしょうか。
〇香西会長
そうですね。一つはふるさと納税の問題と、今の偏在の問題。偏りの問題というのは、来年度ということの次元でも、地方税としてはやはりその2つが重要な問題点に浮かび上がるだろうと。そういうことで既にいろいろな所でいろいろな議論が行われている。 ただ、地方税の問題で、財務省と総務省の論争というのは、もう100年戦争であって、お互いに楽しんでいるのではないかと思うぐらい、ものすごい知恵の出し合いで、これは聞いていて本当に感心しちゃうんですけれども、しかし、やはり地方分権を進めるということが基本的な方向だろうと私は考えております。
ただ、それにしては、地方分権を進めるということは、まだ答えが出てくるのは2年か3年かかるのでしょうけれども、そういう点では、最後のフレームワークみたいなところがまだはっきり見えていないということもありますが、今出てきたような足下の問題は、何とかそれは置いておいても、処理をするという形に来年度税制では進むのではないか、とぐらいにしか考えておりません。
〇質問
今日は2つの試算、内閣府と財審の試算を中心に議論をされたのですが、どちらかというと長期的な見通しが中心で、議論もそちらのほうが中心で、長期的な増税は避けられないのかなという雰囲気、それから議論があったかと思うのです。09年度の基礎年金の国庫負担の引き上げに伴う財源はどうするのかという点も非常に必要な議論の論点かなと思うのですが、これに当たって増税が必要なのかどうか、これについて香西先生と田近先生のお話を伺いたいのですけれども。
〇田近主査
その問題ですけど、その部分は例の06の基本方針に入っているわけですよね。どうして今日の議論になったかというと、やはり11年までの歳出削減のプランを実現するだけでも大変なことで、それについていい質問が後半でありましたけれども、それを実現しても、11年の時点で債務GDP比率が140~150%。内閣府のほうはそれを維持するのでも大変だと。財務省のほうは、同じ意図で12年以降どうなるかということで、財審のほうでも140%も実は入っています。だから、そういう意味で問題意識は近いし、歳出の出っ張り部分は、会議でも言いましたように社会保障だし、そこは問題意識をシェアした。だから、基礎年金の部分は2004年の年金改革自身のコミットメントでもあるわけだし、私の理解は、もし税を上げなければ社会保険料を上げなければいけない。しかし、税を上げるということは、06の基本方針に入っているわけですから、それは実現するようにする。その次の問題というのがもう今考えるところ、というふうな話が組み合ってくるのかなと思います。
〇質問
香西会長に2つ伺いたいのですが、1つは、昨日、町村官房長官のところへ行かれたと思うのですけれども、どんなお話をされて、官房長官のほうからどんな話があったか。
それから、今度の金曜日は消費課税ということなのですけれども、来週の2回について、月曜日と金曜日はどんな感じの議論をされるのか、お聞かせください。
〇香西会長
昨日、官房長官のところに確かに参上いたしました。趣旨は、秋以降、本格的に議論をするということになって、そういったことについては、一応、こういうふうにやりますということは事務的にご連絡していたのですけれども、大体議論が一巡しつつある。あと消費課税は残っておりますけれども、ほぼ一巡したところで、これからそろそろ、それをさらにとりまとめていく段階になる。その節目に近づいてきているということで、この秋以降の議論の流れ、どういう問題をどういうところで議論したかということについて、あまり長い時間はかけておりませんけれども、私からご説明いたしました。
長官のほうからは、特に具体的な指示、非常に明確な指示は受けておりません。こういうことを言うと怒られますけれども、この内閣の性格でしょうか、非常にご丁重に、「皆さん方のご努力どうもありがとうございます。感謝しております」と、こういう低姿勢で、こちらが恐縮いたしました。というのが実態でございます。
もう一つの問題は、来週、消費課税というところでほぼ一巡すると考えておりますけれども、一つには、そこで秋以降の審議をもう一度議事を振り返って、それを全員でもう一度読み直してみるといいますか、振り返ってみる。その中から次の答申に向かっての意見を引き出していくという形で、現在はこれまでの議論を、どういう議論が行われたかということを、やや具体的な問題を中心にして、議事の記録などを整理して、それをもう一度委員の皆さんに見てもらって、こういう議論はした、じゃあこういう議論はどうだろうとか、こういったような形で、もう一度今までずっと個別にやってきたことに対して、見落としがないかとか、そういった形で議論を深めていきたい。それが次のステップの答申の形成というか、それの準備になると、そういうふうに考えて予定をしております。
もちろん、今日はまだ最後にもいろいろ問題が出まして、こういうことを調べてほしいというご注文もあったわけですから、し残した答弁がまだあるわけで、そういったことについても、この2回のうちになるべく整理して、答申に打ち込んでいける準備態勢を整えたいという気持ちであります。
〇質問
そうすると、この前、所得課税については2巡目をやったのですが、もうああいう感じで税目ごとにやっていくわけではないということでしょうか。
〇香西会長
今のところ予定はしておりません。大分時間が迫ってきているということを考えておりますので、今後は答申の中にどういうふうに書くかということに合わせて、別のある税についてもう一度議論が行われるということはあり得ますけれども、その税目について何かもう一度議論しようという会議は、今のところは予定されておりません。
〇質問
先ほど、地方の法人2税のときに、会長が、「基本的な方向としては地方分権を進める」という表現をされましたけれども、これは国から地方への新たな税源の移譲も含めて考えるという意味ととらえてよろしいのでしょうか。
〇香西会長
地方分権をどういうふうに進めるかということ自体、先ほど申しましたように、政府ではもうそういう委員会もつくられて、審議を進めています。ただ、その結論はもう少し時間がかかるということだと思います。地方分権をそういうふうに進めることを中心に考えるということは、当然のことだろうという程度にしか認識していないというか、それを深く、ここはどういうふうに変えたらいいかというようなところまで私としてはまだ準備が整っておりません。
〇司会
よろしいですか。それでは、これで会見を終了させていただきます。(了)