企画会合(第20回)議事録

日時:平成19年10月30日(火)13時30分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

ただいまから「税制調査会第20回企画会合」を開催いたします。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

本日の議事について申し上げますが、本日は経済財政総論ということを議題といたしまして審議を行います。議事進行や問題提起等については、田近委員にお願いしております。

また、本日は、中央大学の富田教授にも御臨席いただいておりまして、後ほど財政に関する推計について御説明をいただくことになっております。

それでは、田近委員から、お願いします。

田近主査

それでは、これから司会を務めさせていただきます。今日は、お手元の資料が大変厚く、またいろいろありますけれども、経済財政総論の審議をしたいと思っています。盛りだくさんな内容ですので、できるだけ手際よく進めていきたいと思います。

3つの報告をしたいと思っています。

1つは「経済財政運営の基本的方針」。

2つ目は「経済・社会保障の将来展望」。

3つ目は「国と地方の財政状況」。

その後、私から全体を通じての論点を簡単に述べさせていただいた上で自由討議に入りたいと思っています。

今日は、財政の長期推計ということで、中央大学の富田先生にお越しいただいています。富田さんは、今日は2時半までということなので、富田さんの方にも議論に加わっていただきたいということで、できるだけ時間をつくっていきたいと思っています。

まず、最初のテーマである「経済財政運営の基本的方針」ということですけれども、2つに分けて進めたいと思っています。

1つは、政府の財政健全化の目標、そして2011年度のプライマリーバランス、黒字化の見直しについて、内閣府の西川審議官から説明をいただきたいと思っています。

それでは、西川さん、よろしくお願いします。

西川審議官

内閣府の西川でございます。御説明させていただきます。お手元の資料の1番でございますが「歳出・歳入一体改革について」という資料をご覧ください。1ページ目でございます。経済財政諮問会議で御議論いただきまして、閣議決定した「基本方針2006」、骨太2006と略称しておりますが、そこにおける歳出・歳入一体改革の概要でございます。

この閣議決定におきましては、下の方にございますが、2011年までの第2期というのを、基礎的財政収支を確実に黒字化する期間と位置づけております。これは、国・地方を通じたプライマリーバランスを確実に黒字化する期間でございます。

この間の展望をいたしますと、要対応額が16.5兆円程度あるということで、この財政収支を改善するために必要な額16.5兆円のうち、歳出削減によって14.3兆円、これは最大限努力を行った場合、あるいは11.4兆円程度の幅を設けております。歳出削減を行って、なお、要対応額を満たさない部分については、歳入改革による増収措置で対応することを基本とするということを決めております。

2011年度以降でございますが、2010年代半ばに向けて、第3期につきましては、基礎的財政収支の一定の黒字幅を確保し、債務残高GDP比を安定的に引き下げるということを閣議決定しております。

2ページ、こうした方針の中で国・地方につきましては、3つ目の〇にございますが、地方については、国と歩調を合わせた抑制ペースを基本として歳出削減を行いつつ、一般財源の所要総額を確保することにより、黒字基調を維持するとしております。

また、国につきましては、4つ目の〇にございますが、債務残高GDP比の発散を止め、安定的に引き下げることを目指すというふうに決めております。

こうした歳出・歳入一体改革を決めて取り組んできたところでございますが、本年の骨太を、3ページに「基本方針2007」を掲げております。改革のポイントといたしましては、1つ目にございますように、「基本方針2006」で決めました制度改革等の道筋やその取組みをはっきり示していくことが1つ目でございます。

2つ目は「基本方針2006」にのっとり、最大限の歳出の削減を行うとしております。

3つ目に「進路と戦略」で示しました予算編成の原則に沿って、「新たに必要な歳出を行う際は、原則として他の経費の削減で対応する」といった、規律ある財政運営を行うとしております。

4つ目が新しく加わった点でございますが、こうした歳出改革の取組みを行って、なお対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わないと決めております。

4ページ、この「基本方針2007」を今年の6月に決めた際に、税制改革につきましては、一番上にございますが、平成19年秋以降、税制改革の本格的な議論を行い、平成19年度を目途に社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、その費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組むとしております。

具体的な6つの柱として、そこの箱に囲ってありますように、イノベーションとオープンな経済システムによる経済成長の加速のほか、6つの柱を税制改革の基本哲学と骨組みでは位置づけております。

この平成19年秋以降、税制改革の本格的な議論を行うと決めていることを受けまして、この秋以降、早急に本格的な議論を進めるということで、この10月から諮問会議における議論を進めております。

その議論のうち、2011年度までの展望について御説明したいと思います。「企画20-2」という資料を見ていただきたいと思います。これは、先般10月17日の諮問会議におきまして、有識者議員の方からございました提出資料の「給付と負担の選択肢について」でございます。

1ページ「試算I:2011年度に向けての歳出の異なる姿(当面の選択肢)」というものを御提示しております。これは、本年1月の進路と戦略の最初の試算では、2011年度までに11.4兆円から14.3兆円の削減を行うケースをお示ししてきたわけでございますが、今回の試算ではそれらに加え、こちらの(3)にございますように、14.3兆円の歳出削減を行ったケースに比べ、仮に来年度、2008年度から4年間、毎年度1兆円の歳出を積み増し、2011年度には4兆円の追加的歳出を行った場合ということを仮定して試算を行っております。

2ページ、これは平均3%程度の名目成長率がある、新成長経済移行シナリオと呼んでおるものでございますが、そういった成長のシナリオの下で、赤い線が14.3兆円の歳出削減を行った場合でございます。この場合には、新たな増税なしの基礎的財政収支の黒字化が達成されます。

真ん中の青い破線が、歳出削減が11.4兆円の場合で、これをバランスさせようといたしますと、右の欄外の吹き出しにございますが、プライマリーバランス赤字1.9兆円に対して2.3兆円の増税が必要となっております。

一番下の緑の破線が、今後、1兆円ずつの歳出増となった場合でございます。この場合には、2011年度にプライマリーバランス赤字2.6兆円を埋めるために、増税必要額3.2兆円が必要と試算されております。

ここでの増税の仮定は、2011年度単年度に1年間で所得税と消費税を半々で行うという仮定を設けております。プライマリーバランス赤字に比べまして、増税必要額の方が2割程度多いのは、経済の引き下げ効果と消費税による物価の上昇による効果の両方によるものでございます。

3ページ、これはもう少し経済の拡大スピードが遅くて、名目成長率が2.2%という、私どもは成長制約シナリオと呼んでいる場合でございます。この場合には、最大限の歳出削減14.3兆円を行った場合にもプライマリーバランス赤字が2.7兆円生じ、それをバランスするためには3.2兆円程度の増税が必要になります。11.4兆円の削減にとどまった青い線の場合には、増税必要額が5.8兆円、更に緑の線にありますように、毎年1兆円ずつの歳出増を仮定した場合には、最終的に2011年度単年度でプライマリー財政収支をバランスさせようとしますと、増税必要額が6.6兆円になるという試算でございます。

駆け足でございましたが、御説明を終わらせていただきます。

田近主査

どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明、そのほか歳出面に関連する資料として、お手元に経済財政諮問会議の資料が20-3、20-4、そして20-5が少子化対策ですけれども、少子化対策に関する資料もお配りしています。これも含めて、質問があればしていただきたいんですけれども、議論になるようなことは後でまとめてやりたいと思いますので、事実関係で聞いておきたいことがあれば質問してください。

それでは、増渕さん、どうぞ。

増渕委員

後の方で御説明いただいた「企画20-2」の3番目のケース、毎年度1兆円の歳出を積み増したケースの1兆円というのは、どういう意味合いなのか、社会保障費の増加とか、そういうことを念頭に置いてという話なのかと思いますが、そこを確認したいと思います。

田近主査

よろしくお願いします。

西川審議官

御質問のありました緑の線の具体的な額でございますが、赤い線、青い線と合わせて一緒にわかりやすく御提示するということから、毎年1兆円というふうに仮定したので、幅について特段の意味はございません。むしろこれを1兆円縮めてみる、あるいは10兆円に縮めてみるということであれば、それぞれ4分の1あるいは2.5倍して使っていただければと思っております。

田近主査

それでは、続けて2つ目のテーマ「財政・社会保障の将来展望」に移りたいと思います。ここでは、中長期的な社会保障給付の見通しを踏まえた財政再建の道筋等について、幾つかの試算がありますので説明を受けたいと思います。

まず、2025年までの医療・介護給付の伸びを踏まえた給付と負担選択肢について、西川さんから続けて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

西川審議官

御説明させていただきます。お手元の資料「企画20-2」の5ページをご覧いただきたいと思います。ここから試算IIというものがございまして、これは御説明しました試算Iの先の2012年度以降についての試算でございます。

ここでは、長期的に見て、今後高齢化の一層の進展に伴い、医療・介護の給付費用が膨張していくということを踏まえまして、今後、団塊の世代が75歳という後期高齢者に到達する2025年度までの姿ということで、中長期的なスパンで試算しております。

具体的には、2つの選択肢を掲げておりまして、左側の赤でくくっております「給付維持・負担上昇」、これは医療・介護に関して給付を維持し負担を上昇させるケースと、右側の青でくくっている「給付削減・負担維持」ケース、これも医療・介護についてでございますが、そういう2つの選択肢を置いております。

それぞれの2つの選択肢に関しまして、経済前提を2つ置いておりまして、成長ケース「名目3.2%、実質1.7%成長」という成長の場合と、制約ケース「名目2.1%、実質0.9%成長」にとどまる場合の2つの経済シナリオを描いて、経済成長の効果を見ております。

このシミュレーションによって、どういう効果が見られるかということで、次の6ページを見ていただきたいと思います。これは社会保障の選択肢として、今、申し上げましたような給付を維持するか、負担を維持するかという選択を行ったときに、どのような経済財政の姿に違いが生じてくるかということを見たものでございます。

6ページの左下、2007年度ということで、青と黄色の棒グラフでありますが、これが医療・介護における青が税と黄色が保険料の負担になります。

ピンク色の棒グラフが、潜在国民負担率の高さになります。ここから14.3兆円、最大限の歳出削減を行ったとして、黒い破線の方が成長の制約ケース、点線の方が成長ケースということで、この絵全体として上に上がれば上がるほど大きな政府、歳出が大きな潜在国民負担率が高い姿になっております。2011年度まで、経済のシナリオによって2通りございます。

上の2011年度に、6.7%の医療・介護の負担をお願いして、潜在国民負担率が43%になっているところから、給付を維持し、その分、負担をお願いした場合、この場合負担をお願いするといいますのは、青い2.9%の税の負担部分を4.4%の税の負担部分まで、GDP比で1.5%の税の負担をお願いする場合が黒い破線で上に上がっていくケースでございます。

下の2011年度の経済のいいケースからも点線で、やはり給付を維持して上がったケースが一番端の2025年度の上から2つ目のケースということになります。

給付を維持した上の2つのケースの場合は、潜在国民負担率が大体5割程度まで上がる姿になっております。

右の負担を維持し給付を減らすというシナリオでございますが、この場合は青い2011年度からの医療・介護にかかる公費の負担を維持し、横ばいにする。それに見合った給付を行うということを仮定しております。

具体的には、給付の水準をおよそ3割程度減らすということを仮定しております。その場合には、潜在国民負担率が、それぞれいずれのケースも大体45%ぐらいにとどまることになります。

更にこうした2つの選択肢を行ったほかに、もう一つ債務残高のGDP比を上昇させないようにするために必要な増税を行った場合の額を参考までに、右の端に括弧書きで書いております。成長が制約ケースにとどまり、給付を維持するという、一番政府が大きくなる右上のケースの場合には、その場合の財務残高GDP比を上昇させないようにするために必要な増収額が、28.7兆円になるというふうに試算されますし、仮に経済の拡大スピードが比較的大きく、負担を維持し給付を削減するという選択を取った一番下のケースの場合には、増税必要額が8.2兆円にとどまることになります。

この増税必要額の中には、2011年度にプライマリーバランスを確保するために、経済制約ケースの場合は2011年度に自然体ではプライマリーバランスが回復しませんので、2011年度にプライマリーバランスを確保するための増収措置を行っております。給付を維持する、負担をお願いしている、赤い囲みの場合は、そのためにも9兆円程度の増収措置をお願いしております。それから、最後に債務残高GDP比を上昇させないようにするために増収措置を行うという、3段階の増収措置から最後の増税必要額はなっております。

各赤い枠、青い枠の中の上下が、ちょうど制約ケースと成長ケースの差になっておりますので、この赤い枠の上下が18年間、名目で2. 1%の成長にとどまったケースと3.2%を行った場合の差と御理解いただければと思います。

これがマクロで見ました給付と負担の選択肢の御説明でございます。

同じ資料の11ページをご覧ください。同じ2つの選択肢につきまして、一人当たりで見た給付と負担のイメージがどのようなものになるかということを示しております。「試算III:一人当たりでみた給付と負担(イメージ)」です。

具体的な制度設計と密接に絡んでおりますものですから、先ほどの試算IIがマクロモデルに基づく試算でございますが、これは昨年5月に厚生労働省が公表しております、社会保障の給付と負担の見直しをベースとしております。選択肢の設定については、先ほどの試算IIと同じように、給付を維持し、負担を上昇するケースについては、現行制度に基づく給付の伸びを継続するものとしておりまして、給付を削減し負担を維持するケースは、2011年度における医療・介護に係る公費支出、税の支出の対GDP比をおおむね維持するために給付の削減を行うという仮定を行っております。

12ページ、2008年度、来年度、高齢者医療保険制度が発足した時点を試算では出発点としております。上半分と下半分に大胆な仮定を置いておりますが、65歳で医療・介護・年金、社会保障に関する給付と負担の受け手、それぞれ担い手と置いております。上半分の方が、高齢者65歳が足元2,800万人いらっしゃる方が、合計238万円の給付を受けておられるということで、内訳は年金が153万、医療が58万、介護が27万円ということでございます。高齢者の保険料負担が12万円ございます。

これに下半分の現役の方々が、これも大胆な仮定を行っておりますが、保険料・公費負担121万円を20歳~64歳の7,600万人の方が担われているということでございます。この7,600万人の方が、121万円払っておられる部分のうち、現役の方の医療とか生活保護などに向かっている部分が39万円ございます。この網掛けの高齢者向け82万円×7,600万人という広さが、上の高齢者の給付の2,800万人×238万円という面積の広さに見合っている形になっております。

13、14ページに、2015年度の姿をお示ししておりますが、とりあえず省略させていただきます。

15ページ、給付を維持し負担を上昇するケース、自然体で現行の一人当たりの医療・介護の給付を維持したままの場合にどうなるかということを示したものでございます。

これを見ていただきますと、2025年度には65歳以上の高齢者の方が3,500万人に増えて、特に受給額が高額な後期高齢者が増えるという効果が出てくるため、一人当たりの平均的な給付額が269万円と増えてまいります。

年金については特段の仮定を置いておりませんで、普通のマクロスライドのままになっておりますので、その内訳は医療が77万円と足元に比べて3割、介護が40万円と5割弱の増加になっているところからきております。

これに対しまして、下半分の負担の構造でございますが、現役側の負担は162万円と約3割強の増加(約41万円増)となっておりまして、その8割近くの129万円が高齢者向けに当たる姿となっております。

15ページと16ページの違いでございますが、16ページでは一人当たりで見た負担の所得に対する割合が、2011年度水準でおおむね据え置かれるよう、給付の伸びを抑制しているものでございます。この場合には、下半分にある支え手側の税負担は、同じ所得の個人をとってみると所得比は現行とおおむね同じ水準になっております。

上の給付の側でございますが、医療で2割強、介護で4割弱、いずれも高齢者一人当たり給付費の削減が必要なっておりまして、かなり厳しい姿になってございます。一人当たりのベースに戻すと、こんな姿かと思います。

2015年度の数字の御説明は省略させていただきますが、実は足元で比べますと、2015年度ぐらいまでは割と厳しくなくて、2015年度から先の10年間がかなり厳しい姿になっているということがおわかりいただけるかと思います。

駆け足でございましたが、以上でございます。

田近主査

どうもありがとうございました。以上の説明で、また事実関係で御質問があれば、挙手なりお願いしたいんですけれども、事実関係の御質問はありますか。いずれ全部合わせてまた今日議題になると思うので、とりあえず今、西川さんからいただいた話を念頭に置いていただいて、次に行きたいと思います。

次は、資料「企画20-6」になりますけれども、2050年度までの財政の安定性を検証するための長期推計が、財政制度等審議会で現在議論されています。

その財政審の担当でいらっしゃる富田さんから御説明いただきます。いつも私も富田さんと一緒に説明サイドというか被告席にいるんですけれども、今日は富田さんにお願いして御説明いただきたいと思います。

それでは、富田さん、よろしくお願いします。

富田教授

それでは、長期推計、財政の持続可能性につきまして御説明申し上げます。表紙を1枚おめくりいただきますと「起草検討委員提出資料」とございまして、こちらの田近委員、そして岩崎委員、これまで税調の委員も務められておりました。そして私の3人の検討委員が提出した資料でございます。

まず、今回の試算の経緯について1ページをお開けください。財政審は、これまでも長期推計を2025年ぐらいまでは行ってまいりました。この春、財政審の委員が欧州、アメリカに出張してまいりまして、どこの国においても、アメリカの場合は75年間という3世代先までの、取り分け社会保障給付についての推計、ヨーロッパにおきましては、2050年ごろまでの財政展望を行っておられます。

やはり人口高齢化の影響というのは、我が国だけではなしに、主要先進国共通の課題であるといったことでございます。

2番目の〇にございますように、ヨーロッパにおきます長期推計というのは、非常に興味深いものがございます。それは、現在のマーストリヒト・パラメーターを達成する2050年に、国と地方の債務残高のGDP比を60%にするということに対して、現在の政策、加えて各国中期財政目標というのを各政権で設定しておりますので、それの評価も行えるモデルをつくっているわけでございます。このEU委員会の方法をそのまま採用いたしました。

そしてインプットに使いましたのは、厚生労働省が2006年5月に公表いたしました、社会保障の給付と負担の見通しでございます。これは、昨年のものでございますけれども、一番直近の長期見通しでございます。

したがいまして、使ったのは厚生労働省の給付と負担の見通し、これを2050年まで機械的に引き伸ばしました。方法論は、すべてEU委員会が使った方法ということでございます。

やや具体的に見たいと思います。2ページ、EU委員会が持続可能性、サステイナブルかどうかといった判断基準は、ここにS1とございますけれども、2050年度の債務残高対GDP比が60%となる。そのために、現時点で必要な収支改善幅GDP比幾らですかという指標をS1と呼んでおります。

また、現時点でなしに5年先送りするといった場合の遅延コストも算出しております。

現時点での制度がそのまま続くことを考え方で評価すると同時に、各加盟国が現在コミットしております中期的な財政健全化目標、これは我が国でございますと、先ほど御紹介がございました骨太2006がこのMTOに対応いたします。これは、ベースケースと中期目標を、それぞれ評価するものでございます。

S1でございますけれども、3ページ、太線、自然体のプライマリーバランスとございますけれども、これがベースラインシナリオでございます。

これに対して、2050年度において、国・地方の債務残高GDP比を60%にするために、現時点で必要な収支改善幅が幾らかというのがS1でございます。

4ページ、S1についての考え方としては単純でございまして、3つの要素からできております。債務残高のGDP比を現時点での水準で発散させないために必要な収支改善幅、これをIBPと呼びます。

債務残高GDP比を目標値、これはEUの目標値でありますけれども、これに向けて引き下げていくために必要な収支改善幅をDR。 そしてLTCと呼んでおりますのが、高齢化に伴います歳出増、これに対応するために必要な収支改善幅でございます。

S1はこの3つの合計でございます。

具体的推計方法は、次の5ページにございますが、申し上げましたとおり、厚生労働省の試算、これは1年半前のものでありますけれども、これは現在直近のものです。そのときに前提とされました人口推計を使っております。

そして「基本方針2006」の歳出改革14兆3,000億円の削減が実現されて、しかも、2011年度にプライマリー黒字が達成されるというものを、MTOシナリオと呼んでおります。中期目標シナリオでございます。

6ページ、経済前提でありますけれども、上段の推計Iは厚生労働省の推計の前提そのものでございます。網がかかっておりますのは、経済成長率1.6、その後2033年からは1.0に低下するというふうに、これは労働力人口の変化率を踏まえまして設定したものでございます。

推計IIは、推計Iからそれぞれ名目経済成長率を1%、機械的に引き上げております。

名目金利につきましては、ここにございますように、2012年以降、名目金利3%横ばいということでございます。

歳出でありますけれども、社会保障につきましては、給付と負担の見直しによります。その公費負担部分が歳出計上されております。その他の歳出につきましては、名目GDP比一定という前提でございます。なお、地方交付税交付金は、GDP成長率に弾性値1.2をかけて伸ばしてございます。

一方、国税収入につきましては、弾性値1.1まで伸ばしております。

7ページは、厚生労働省の給付と負担の見通しを紹介しております。

8ページ、EUと同じ方法論なんですけれども、EU各国の成長率と金利につきまして、2050年までの前提を置いております。

金利につきましては、ここでは実質金利で示されておりますけれども、各国共通の3%でございます。成長率につきましては、潮が引くような形に見えると思いますけれども、成長率は金利よりも1.5%程度低い水準になっております。これはたまたまでありますけれども、厚生労働省の給付と負担の推計の前提と非常に近いものにたまたまなっているということでございます。

そこで、いよいよ推計結果でございますが、9ページ、太字で真ん中にございます、国・地方のプライマリーバランスの推計値、2050年に向けて現在の足元▲0.9%から▲4.9%に赤字が拡大いたします。高齢化に伴います歳出増を税収増では飲み込み切れないということで、どんどんプライマリーバランスが悪化いたします。国・地方を分けてプライマリーバランスを推計して示されております。地方は一貫してプライマリー収支の黒字が続くということでございます。

(注)に、2010年以降の成長率を推計Iよりも1%高くしたもので見ましても同じように、2050年には4%の国・地方を合わせたプライマリー赤字が予想されます。

こうしたプライマリー赤字の拡大が続くわけですので、10ページをご覧いただきますように、ベースラインケース、本年度の政策がそのまま続くといった場合には、2050年度には債務残高GDP比は400%ほどになってしまいます。まさにノンサステイナブルな姿が描かれております。

そこでサステイナブルにするにはということで、11ページをごらんください。今、申し上げましたベースラインシナリオに対して、このグラフの右手にありますように、2050年度に60%にする。そのために必要な収支改善幅、現時点での推計、収支改善幅S1は5.5%でございます。それが、5年間何もしない、こんなことあり得ないですけれども、そうするとS16.2%ということでございまして、上のくくりにございますように、遅延コストは0.7%程度と推計されます。

12ページ、他のEU諸国のベースラインケースにおけるS1が示されております。右側には推計の前提となっております高齢化に伴う歳出増及びプライマリーバランス、そして2005年時点、我が国は2007年時点の債務残高GDP比が示されております。

先ほど申し上げましたように、我が国の推計Iの場合は5.5%がS1でありますけれども、分解いたしますと現状の142%を続けるために必要な収支改善幅は2.8、142を60にするために1.3、そして高齢化に伴います歳出増を吸収していくために必要な収支改善幅1.4と推計されます。

中には、ハンガリーとかポルトガルは、我が国よりもS1が大きいということが、この12ページではうかがえます。

そういう状況では、各国、とても政権が維持できないということでございまして、13ページにございますように、各国どこも中期目標シナリオが設定されております。我が国は骨太2006でございまして、歳出改革14兆3,000億円を行い、かつ2011年度にプライマリー黒字が確実に実現される。あるいは実現されたという前提の下で、2007年度時点で必要とされます収支改善幅、これはグラフ左にございますように、4.1%でございます。

骨太を実現することに加えて、あと4.1%の収支改善努力が現時点では必要だということでございます。右側には、その4.1の努力を今、行わず5年間先送りいたしますと、4.9%が必要だということになります。

ほかにも中期シナリオが考えられます。14ページ、2050年度に公債残高対GDP比を60%とするために、現在の骨太2006に加えまして、どういう代替的な方法があるかということでございます。グラフの一番左に太い点で書いてありますのは、先ほど御紹介いたしました4.1%の収支改善、骨太プラス4.1、そのほかに考えられますのは、毎年一定のプライマリー黒字を確保することによっても60%を達成できるわけでして、その場合には3.6%のプライマリー黒字を毎年続ける必要があるということです。これは、改善幅ではなしに3.6%という絶対値で示してございます。

[2]でございますけれども、毎年度徐々に収支改善を行っていくんだということで、例えば毎年度GDP比0.5%ずつ収支改善幅を拡大していくとすれば、2022年まで11年間これを継続する必要があるということも推計されます。

15ページ、左側のベースラインシナリオは、先ほど御紹介したものでして、我が国は悪い方から上位3番、4番にございますが、右手は現在の各国が掲げております中期目標をインプットした場合なんですけれども、我が国も骨太2006をインプットしても、先ほど申し上げましたように、なおかつ4.1%の収支改善が必要だと。ほかの国は、網掛けしてありますイギリス、ドイツ、フランス、何とイタリアは今の中期目標であれば過剰達成ということが推計されております。

この4.1という数字が物語りますように、2011年度プライマリー黒字の達成ということは、健全化への一里塚であることには間違えないんですけれども、それで終わりというものではないということです。

16ページ、60というといかにも高いハードルだと感じられるかもしれませんが、大分先なので十分実現可能な目標とも思われますけれども、横ばいに置いた140%の場合でも、現時点において2.9%の収支改善努力を行いませんと140%とならない。100%の場合は3.5ということでございます。

17ページ、一般会計に置き換えた場合は、冒頭申し上げましたように、地方は黒字基調維持ということでして、国・地方の赤字はすべて国に集中する姿でありまして、大きな数字の変わりはございません。

以上でございますが、参考資料といたしまして「企画20-7」に1枚紙がございます。主な結果としてまとめてございます。

2050年度に我が国の政府債務残高GDP比を60%に到達させるために、現時点ではここにございますように、2012~2032年の成長率1.6という前提ですと、現時点でGDP比5.5%の収支改善が必要と試算されます。また、骨太2006が確実に達成される。これは歳出削減とプライマリー黒字ができる。その場合には、4.1が現時点です。

更に骨太は骨太としてやって、2012年に改めて努力しようということになりますと、この中期目標シナリオの下にございますように、4.9%を2012年度に歳出改善努力が必要だという試算でございます。

ベースラインシナリオとして、これまで紹介いたしましたけれども、メインシナリオは中期目標シナリオと見ております。

私からは以上です。

田近主査

ありがとうございました。以上、富田さんの方からは、EUの推計に習って、日本の財政の長期推計の結果が示されたわけですけれども、まだ富田さんの方にお願いして、15分程度は同席していただけるようですから、是非どういう点でも御質問あるいは御意見をいただきたいと思います。

林さん、お願いします。

林委員

非常に参考になりました。ただ、いずれにしても負担増は避けられないということは、この試算から明らかになっていると思うんです。ただ、前提として、例えば税収弾性値が1.1、経済成長率の成長ケースと抑制ケースを考えながら推計するといったときに、本税調として考えなければならないことは、税収弾性値をどのような税体系で高めていくのか。あるいはまた別の議論の中で税収弾性値を低めていくのか。つまり消費税のウェートを高めれば税収弾性値は落ちると思うんです。法人税をそのままにおけば、当然税収弾性値は高くなるわけですから、その辺りが税調の議論としては負担増というよりもそこからどうするんだということ、それから前提としての税収弾性値が税体系によって変わると考えたときに、財政再建という目標の中でどういう税制であるべきなのかということを議論して、そしてそれをまた試算に反映させることが必要なのだろうという気がするんです。財政審のところでは、恐らくこれでいいんだと思いますけれども、税調の議論ということになると、やはり税制をどうするかという話ですから、その辺りの試算が今後必要になってくるのではないかということ。

それから、成長なくして財政再建なしということですから、成長率が1.6、2.6、これは2つのケースなんですけれども、成長率が高い方がいいということに試算上はなるわけで、その場合にやはり成長を高めるような税制を議論することが税調に課された課題ではないかという気がいたしますので、その辺り、今後の試算としては税調マターなのか、財政審マターなのか、そういうこともありますけれども、やはりそこのところが、1.1を現行の税制のままで引き伸ばして試算がどうなるということで、果たして税調の議論の材料としてどうなるんだろうと。勿論、税負担増は避けられないということはわかりますけれども、そこから更に進んだ議論をするためには、もう少し試算をしていかなければならないのではないか。

感想でございます。

田近主査

どうぞ。

香西会長

私も大変富田さんらしいレポートで感銘を受けました。非常に立派な報告だと思います。富田さんは非常に正確に書かれておられるんですけれども、ごくわかりきったことをお伺いします。収支改善幅というのは増税額ではないわけですね。そして将来を考えた場合、これは林さんの御議論とも多少は関連がありまして、先ほどの西川さんの御報告にもありましたけれども、どちらを収縮させるか、どちらを拡大するかによって、乗数効果等が変わって、またそれによる二度目の計算が必要になるということがあると思います。

もう一つ言えば、人口の減少が財政規模、財政需要を拡大すると考えるべきなのか、それとも日本のように非常に借金の多い国で、財政を緊縮しなければならない国が人口減少するのは、むしろ財政の撤退作戦を楽にすると考えるのか。そういったことも問題になってくるのではないかと思います。つまり収支改善幅をどちらでやるかということについても、本当はいろいろ議論が必要になるのではないかという感じです。

大体議論を聞いていますと、収支改善幅は増税の幅だとみんなが思っているように、ひがんで考えているようですから、一言確認を求めます。

田近主査

それでは、まとめてどうぞ。

富田教授

まず、林委員の提示されました点というのは、長期にわたる推計でして、前提といたしましては、すべて現在の政策がそのままだということで税制も同じだということで置きました。ですから、余り深い意味はございません。すべて機械的に、だれがやっても検証できる仕組みで計算したということでありまして1.1、交付税は1.2という、これまでのパターンを踏まえております。

香西会長の指摘の点でございますけれども、これはS1というのは必要な収支改善幅でありまして、増税で対応するのか、あるいは歳出削減で対応するかは問いませんが、いずれにしても、恒久的な収支改善措置ということが本年度取られる。その幅がどれだけかということについて示してございます。

そして人口減少の歳出への影響がどうかということでございますけれども、これはぶっちゃけて言えば政治がきちんと国会で決めるべきことでございます。例えば児童の数が大幅に減少しているにもかかわらず、義務教育国庫負担金がずっと横ばいで置かれていたり、なかなか人口との対応は我々が机の上でパラメーターとして設定するには難しいということで、ここもGDP比一定で、確実に高齢化の影響を受ける。社会保障給付だけを取り上げて、その増加を吸収するという形で計算いたしております。

田近主査

いろいろ御質問があったのは、S1というのは財政収支を2050年で債務GDP比率60%から100%を実現するために必要な財政収支の改善幅をGDP比で示した。それは、歳出で行くのか、歳入で行くのかは示してないということですね。その辺のどちらでいくかということに関しては、富田さん、どうぞ。

富田教授

私はというよりは国民として答えろということですか。

田近主査

今日は私が答えるあれではないから、聞いているだけです。

富田教授

これまで、歳出削減もかなり続けてまいりまして、勿論まだまだいろいろと歳出削減の余地はあるんですけれども、すごく大きな幅であるかということについては、だんだん限界的なところに来ているようにも思いますが、勿論まだ削減が国民から見て無駄だと思われるところがありますので、歳出削減努力も続けねばなりませんけれども、やはりだんだん増税でもって対応すべきところは明らかになってきているんではないかと思います。

1点追加させていただきますけれども、よろしいですか。

田近主査

どうぞ。

富田教授

このアプローチが気に入ったのは、コンパラブルなアプローチである。各国比較はできるし、コンプリヘンシブなんです。医療、介護だけで必要な増税幅という議論もあるし、また年金どうだとか、いろいろあるんですけれども、これは高齢化に伴う歳出増プラス、ほかの歳出もすべてです。現在の政策の継続ということで置いておりますので、コンプリヘンシブである。コンパラブル・アンド・コンプリヘンシブ・アプローチだと、EUの方にはちゃんとそう書いてありましたので、なかなかEU委員会で各国の財政政策を評価するということで、こういうものを開発したんだと思います。

我々としては、それを機械的にまねただけでございます。

田近主査

それでは、増渕さん、お願いします。

増渕委員

試算というか、推計そのものは、勿論、数字は相当幅を持って見なければいけないと思いますが、それにしても非常にサジェスチョンに富むとは思います。

1つお伺いしたいのは、長期金利と成長率の関係が、EUのもので見ても、推計の前提として置いてある厚生労働省のもので見ても、非常に保守的といえば保守的なのかもしれませんが、実質名目で見ても同じことだと思いますが、EUの推計などで長期金利の方は、ずっと実質3%横ばいで、成長率がだんだん下がっていく、これは高齢化とか人口減少が入っているのかもしれませんが、マーケットに近い人間としては、こういうことが起こり得るとは到底思えないんですけれども、長期金利の成長率の関係、特に長期金利をいじったところで、大した違いはないということなのか。それともそこはある程度影響してくるところなのか。そこのところがよくわからないのでお伺いしておきたいと思います。

田近主査

お願いします。

富田教授

ある意味で、非常にクルーシャルな変数でございます。この点は、昨年、議論があって、今日は吉川先生がお見えだと思うんですけれども、やはりデフィシット・ギャンブルはできない。ねずみ講の前提で考えることはできないというのが大方の見通しと考えていいかと思います。

これまでを見ましても、金利が自由化されてから、内外資本移動が自由になってからの先進国だけを見ますと、やはりおしなべて長期金利の方が名目経済成長率も高いという状態が続いております。私などの理解の仕方は、地球全体で見れば、非常に長期でマクロで考えますけれども、やはり金利と成長率は名目でも実質でもイコールだろうと。だけれども、それが一方に偏ることはないだろうと。

ただ、成熟した国においては、成熟したといったら、また吉川先生に御注意を受けるかもしれませんけれども、先進国ではそうではないのではないかということで見ております。

増渕委員

長期金利の高い、低いというのは、両方あり得るんだと、歴史的事実としても、あるいは理屈としてもそうかもしれませんが、だんだん長期金利と成長率の差が、成長率の低い方向で開いていくということまで成熟経済だから仮定しなければいけないということですか。

富田教授

今の御指摘は、ヨーロッパ各国の前提でして、その背景の考え方については、特に明示しては示されておりませんでした。ですから、どんどんこのギャップが広がっていくと読むのか、あるいはこれがだんだん定常状態に近づいていると見るのか、それについての明示的な記述はEU委員会の報告にはなかったんです。

増渕委員

日本についても、期間を区切ってですが、だんだん開いていくような推計の前提にはなっていますね。

富田教授

はい。これは、厚生労働省の方がお見えになったら、またお教えいただきたいんですけれども、これは基金を運用しているわけでして、基金運用を多く見たいとすれば、見通しが正しいかどうかは別ですけれども、どういう見通しのインセンティブ、推計の前提のインセンティブが働くかということを考えると、厚生労働省の方々は、運用収入が少ないと保険料が上がるとよく言われますね。そういう意味でこのギャップが大きいという前提にはなり得るとは思うんです。だけれども、そういうふうに置かれているかどうかはわかりません。

ただ、このギャップが非常に大きいかということについては、私はそれほどではないと思います。

もしこの長期金利と成長率のギャップが小さいとすれば、いつも人々は将来余り成長しないと思っている。だけれども、結果として高い成長になったというときには、金利差は小さいと思うんです。やはり長期金利というのは、人々の期待インフレ率を織り込んで動くわけですから、いつも国民がだまされ続ければ、市場がだまされ続ければ、この金利の逆転とか、同じような数字になり得ることはあるかもしれない。だけれども、マーケットの参加者がそうじゃないとすれば、やはりこういう形に金利の方が成長率も高いという状況になり得るということだと思います。

田近主査

それでは、井戸さん、どうぞ。

井戸特別委員

それでは、簡単に。シミュレーションの結果そのものは非常に面白い結果が出ているし、今おっしゃいましたように操作性もあるということですので、いろんな政策検証に使えるのではないかと思いますが、前提としての公債残高の対GDP比を、EUは60%にしているんですが、これはどうして60なのかということと。私は、GDP比の残高の比率が問題であるというよりは、実を言うと残高がもたらす利子負担、元金そのものはぐるぐる回していってもいいわけです。ところが、それに伴います利子負担が財政的に耐えられるかどうかの方が大変問題なんではないか。それとの関連で、60とか100とか140というGDP比の議論がなされるべきではないかと。このモデルの話とは違うんですが、そういう意味で富田先生はゴールとしての残高についての考え方は、どういうふうにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

富田教授

マーストリヒト条約で3%、60%というパラメーターが設定されたんですけれども、なぜそうしたかということにつきましては、私もいろんなヨーロッパの方にお聞きいたしましたところ、いろんな説があります。1つは足元が60と3で実現しやすい目標だと、これは非常にポリティカルに大事なことだと思います。

もう一つは、3%の財政赤字というのは、公共投資とか、そういう投資的なものに大体パラレルなんだと、当時の名目経済成長率は5%なので、3と5で長期均衡を考えると、債務残高のGDP比が60だという説明なんです。

現実に、毎年の財政状況を見ますと、3と60をどっちを優先するんだということにも、当然景気の変動とか、いろんなことがありますので起こるんですが、このレポートを見る限りやはり60%というものを非常に大事にしていると思います。考えてみれば、財政状況が非常に悪い国が同じ通貨を使えば、金利上昇というのが同じ通貨を使っている国にダイレクトに、これまでは為替市場で遮断されていましたけれども、ダイレクトに表れるので、非常に他国に対してけん制効果もあると思います。

今から50年前を振り返りますと、我々はEU各国が同じ通貨を使うようになるとは、とても考えていなかったんですけれども、それと同じで我々の国だってきちんと50年後には、アメリカも大体60ぐらいですから、60に向けて目標を持つのは、決して高いハードルでもないように思うわけでして、そういう意味では、この4.1%というのはそれほど高いハードルでもないように思います。これは税調の皆さんに是非とも頑張っていただきたいと思いますけれども、そういう目標だと思っております。

田近主査

時間があれですけれども、ほかに御質問がある方は挙手いただければ、翁さん、どうぞ。

翁委員

こういう大変長期の財政見通しというのは、初めての試みで、非常に勉強させていただきました。一つ確認をしていただきたいんですが、7ページのところに厚生労働省の社会保障に係る給付と負担の見直しが、2025年度までの見通しで書いてございますけれども、今回の見通しに関しては、社会保障に関して2025年度以降の非常に高齢化が深刻になる状況において、そういったものを反映した形での社会保障の負担と給付を前提としたシナリオになっているのかということについて、確認をしていただきたいと思います。

富田教授

基本的には、2026年以降につきまして、厚生労働省が2025年まで試算されているものと共通のパラメーターを使って、人口の変動による変化というものを計算しております。ですから、余りどころか何も恣意的なものを加えずに、例えば介護でありますと、介護の形態なり、要介護の発生確率と要介護の分布などを基にして、単価につきましては、2025年度を足元にして、その後の物価の見通しで引き伸ばしておりまして、それをGDP比でやっております。ですから、先のことなので、できるだけ共通の前提でわかりやすいものをということで試算してございます。

田近主査

まだいろいろあると思いますけれども、ひとまずここで富田さんに感謝したいと思います。どうもありがとうございました。この結果を是非参考にして議論を進めていきたいと思います。

続けて、1つ目は西川さん、2つ目は富田さん、3つ目のテーマとして、国と地方の財政状況に入りたいと思います。資料の「企画20-8」が国、「企画20-9」が地方ですけれども、国の方を財務省の鑓水企画官、地方の方を総務省の米田都道府県税課長から説明していただきます。続けて、よろしくお願いします。

鑓水企画官

財務省主税局総務課の鑓水と申します。よろしくお願い申し上げます。

それでは、お手元に「企画20-8」「我が国の財政状況」という資料がございますので、それに従いまして、足元の財政状況につきまして概略御説明申し上げます。

資料1ページは、平成19年度一般会計の予算でございます。歳出では、社会保障、国債費がそれぞれ大体4分の1、地方交付税交付金等が2割弱で、3つ合わせて全体の3分の2となってございます。

一方、右側の歳入でございますが、いまだ3割程度は借金に頼っているということを示しております。

2ページ、歳出・歳入をそれぞれ折れ線グラフ、公債発行額を棒グラフで示した、毎年のフローの財政状況でございます。税収について申し上げますと、平成2年の60兆円をピークにいたしまして、景気対策としての減税、景気悪化による税収減によりまして、平成15年には43兆円台まで低下いたしましたが、最近の景気回復に伴いまして増加している姿となってございます。公債発行額も3年連続で低下してございますが、依然として歳出・歳入額は多額になっております。

3ページ、公債残高、すなわちストックの財政状況でございます。平成19年度末で547兆円という数字になってございます。内訳を見ていただきますと、平成15年以降、下の薄く塗っております特例公債、赤字国債残高の方が、建設公債残高を上回っている状況になってございます。

4ページ、フロー、ストック、それぞれのSNAベースでの財政状況の各国比較でございます。フローの財政収支は、最近持ち直してきておりますが、依然として対GDP比で3%程度の赤字でございます。特にストック、右側でございますが、対GDP比で他国に類を見ない高水準となっているということでございます。

5ページ以降は、国、全体としての地方という観点からの資料を幾つか付けさせていただいております。5ページは、国と全体としての地方の財政状況の現状でございます。基本的な税収によって返さなければならない債務残高につきまして、国が600兆、地方が約200兆という姿となっております。借金を返すのが、最終的には毎年の実質的な稼ぎとなりますので、交付税移転後の税収で見ますと、国は約15年分、地方は3.5年分ということになります。また、借金の残高につきましては、国は増加し続けてございますが、地方は若干減少しているという現状でございます。

6ページ、国・地方の税財源配分の推移を示してございます。50年前は、税収で見ますとおおむね71.8対28.2という数字だったものが、現在では57.3対42.7という比率になってございます。現在、交付税及び譲与税移転後の姿では、一番右下にありますが、41.3対58.7という比率になってございます。

7~10ページまでは、国と地方の財政に関わる時系列のデータを御参考までにお付けいたしました。7ページは一般歳出の推移、8ページは税収の推移、9ページは長期債務残高の推移、10ページはプライマリーバランスの推移でございます。御説明は省略いたします。

以上が我が国の財政状況についての資料でございますが、11~13ページにつきましては、国と地方の財政状況に関連した問題といたしまして、地域間の財政力格差の是正という問題について、今年5月に経済財政諮問会議で議論された際に、財務大臣から提出させていただいた資料でございますので、御紹介させていただきたいと思います。

11ページは、全体としての財政状況でございまして、上段は先ほど申し上げました、国と総体としての地方の財政事情。下段は地方間で見た場合の財政力格差の現状を示してございます。

12ページは、こうした今、申し上げた財政状況の下で、地域間の財政力格差の問題に取り組むに当たっての基本的な考え方として、地方団体間の調整で対応するべきではないかということと、具体的には格差の最大要因である地方法人二税の税収帰属について見直せないかということを問題提起しているものでございます。

下の3でございますが、また地域間の税収格差是正については、偏在の小さい地方消費税の問題ということもございます。これに関しましては、偏在財政という側面もございますが、それだけでとどまらず、社会保障給付などを踏まえて、税制改革全体の中で検討すべき課題ではないかということを指摘しております。

最後に13ページ、地方税源の充実と財政力格差の問題についての概念整理ということで掲げさせていただいております。地方税源の充実は、どのような形であれ財源超過団体の税収を増加させる結果になるということ。それから、先ほど申し上げたように、交付税等で国の税収を移転させた後の姿を見ますと、国と地方の業務量の比率が4対6になっていることから、業務量に見合って単に地方税の比率を近づけていくことになりますと、地方の財源として交付税などから地方税へ移し替えていくことにならざるを得ない。そのままでは、財政力格差を一層拡大させることになってしまわないかという問題意識を提起しているものでございます。

私から以上でございます。

田近主査

それでは、続けて、米田さん。

米田都道府県税課長

引き続き「地方の財政状況」の資料をお目通しいただきたいと思います。

まず、1ページ「地方財政の現状」でございます。左側、近年、歳出削減と税収増加で地方の財源不足額は縮小してまいりまして、ただ、平成19年度におきましても、4兆4,000億円残っている状況でございます。2、3はまた別途見ていただきます。

2ページをごらんいただきたいと思います。先ほど来いろいろ資料がございました、国と地方のプライマリーバランスの推移をここに掲げさせていただいております。その要因につきまして、次の3ページをご覧いただきたいと思います。

2002年~2006年にかけまして、国・地方ともプライマリーバランスの改善が見られたわけでございますけれども、その要因を分析したものでございます。下の表の方の地方の欄をごらんいただきますと、歳入で2.3兆円、歳出でマイナス4.7兆円ということになっておりまして、この歳出の削減による寄与度が非常に大きい。その内訳でご覧いただきますと、社会保障費では1.9兆円のプラスになる中で、人件費、公共投資層を大幅に削減してきたという結果になっております。

4ページ、これは借入金残高の推移でございまして、最近は伸びが鈍化しておりますが、19年度末の見込みで、199兆円という水準でございます。

この水準が、どのようなものかということでございますが、次の5ページでございます。右の方でございますけれども、OECD諸国の平均から見ますと、地方政府としての債務残高というのは、こういう国の6.5倍ということで、かなり債務残高になっているものでございます。

6ページ、先ほど申し上げましたように、地方は歳出を削減しております。左の方に、地方の一般歳出の削減額が出ておりますが、15年度と18年度を比べますと、4.1兆円削減がされております。一方で、歳入の主なものでございます、地方交付税につきましては、この間5.1兆円の削減があったというものでございます。

7ページ以降は、税の問題でございます。まず最近の税収の状況でございますが、やはり国と同じような状況でございまして、15年度に32.2兆円という低い数字になっておりましたけれども、最近法人二税の回復などによりまして、税収の増加があるというのを示しております。

8ページ以降は、偏在問題ということで、以前からご覧いただきました、まず各税目ごとの一人当たりの税収額の指数が8ページです。 更に9ページは、東京都等を取り上げて、代表的な税目について、それの偏在度を見ていただくものでございます。

10ページ、先ほどお話のあった経済財政諮問会議に出されたもので、総務大臣の方から出された資料でございます。偏在度の小さな地方税体系を構築することが課題であるという認識を示したものでございます。

ちなみに11ページは、地方税、タックス・ミックスでございまして、それぞれの課税ベースごとに、どのように国と地方の配分がなっているかというものを示したものでございます。ここに掲げました5つの税目につきましては、いずれも交付税の対象税目となっているものでございます。

12ページは、今、申し上げました地方税の収入を、特に東京都との比較で最近状況を示したもので、御参考でございます。

13ページ以下につきましては、以前、偏在問題につきまして御質問をいただきました宿題を返させていただくものでございます。まず1つは、県内総生産と税収との関係ということで御質問がございました。ご覧いただきますとおり、県内総生産は全県を合わせますと508兆円あるわけでございますけれども、これは所得ベースで見ますと、右の下の方をごらんいただきますと、企業所得が105兆円でございまして、そのうち民間法人の企業分が53兆円でございます。この民間法人企業分が、ほぼ法人課税の課税ベースに匹敵するものでございます。そういう意味で見ますと、この民間法人分というのは、県内総生産の大体1割程度というレベルでございます。

14ページ、今、見ていただきましたのは、県民の総所得を全国ベースで足し上げた数字でございますけれども、これは各県ごとに作成しておりまして、統計等の制約から各県とも所得をどのように出すかということは、かなり苦労されております。この企業所得につきましては、税のデータなどを用いまして推計されておりますけれども、必ずしも全県同じような推計の仕方をされておりませんので、かなりばらつきがあるというような現状でございます。

ちなみに15ページに、企業所得に対する法人事業税の割合を掲げさせていただいておりますが、かなりばらついている状況でございます。

更に16ページにつきましては、県内総生産をさまざま課税ベースを有しております地方税全体で比較してみたものでございます。

17ページにつきましては、東京都につきまして、その全国シェアを年次的に推移を示させていただいております。

18ページ、最近のいろんな企業形態と税収との関係ということで、フランチャイズにつきまして宿題をちょうだいいたしました。フランチャイズ形態をとっている代表的なものとして、コンビニエンスストア業界の規模がどれぐらいあるかということを推計いたしました。主要事業者9社、これでフランチャイズチェーン全体の売上の3分の1程度になると見込まれますけれども、これの地方法人課税の税収を合わせまして、280億円程度と推計されるものでございます。

19ページは、それの課税関係がどうなっているかということでございまして、フランチャイズの本部会社につきましては、ロイヤルティの収入を加盟店からいただくわけでございますが、当然のことながら、本社の方は加盟店に対しまして役務の提供を行っております。右の方に例を書いてございますが、中にはコンビニにございます冷蔵庫のレンタル費用をもらっている例もございます。そういう意味で、本部会社の所得ベースということで見ますと、粗々の利益率の大手コンビニチェーンの平均を見ますと、大体7~8%程度でございますので、ロイヤルティそのものが利益ではないということは注意する必要があるということ。

2点目といたしましては、ほとんどの本部会社は地域統括本部というのを本社以外にも設けておりまして、当然のことながらそういうところでも納税している。更に加盟店につきましては、それぞれの所在の団体に納税しているということでございます。

最後に20ページ、もう一つ、最近親子会社が増えているのが、課税にどう影響しているかということでございますが、子会社につきましては、それぞれの地域で当然課税する。親会社は子会社からの配当が入ってまいりまして、それが利益を押し上げておりますけれども、子会社から受取配当につきましては、親会社は課税されないということでございます。

以上でございます。

田近主査

せかして申し訳ありません。せっかく今日いろいろ資料をいただいて、議論をしていただこうと思っておりますので、私の用意しました「企業20-10」に、いつもと違って今日はマクロ財政が大きな話なので、論点を言い出したらまた切りがないし、多くの議論をいただきたいので、1、2点申し上げて議論に入りたいと思います。

お手元の「企業20-10」の2/17で申し上げたいのは、一般政府、国・地方を合わせた政府ですけれども、この政府の債務問題は、決して日本の古い問題ではない。この図は、GDP比に占める一般政府、国・地方あるいは社会保障基金も入りますけれども、一般政府の債務残高の比率を見ると、1993年で、もうちょっと左の方に行くと、まさに日本も60%ぐらいだったのが2007年には、したがって、14、15年の間に、この債務の中の範囲がいろいろありますけれども、150%を超えているということで、本当にこの15年ぐらいの間が問題なんだと。

次の3/17を見ていただくと、それでは、何でこれが瞬く間に増えたんだろうということですけれども、これは財務省の資料ですけれども、また対象とする債務の範囲が違いますけれども、一番重要なものである普通国債の推移を見たのが3/17です。これは、平成2年、つまり1990年~2007年度の間の普通国債が380兆円増えたけれども、これは歳入の要因で、つまり歳出が拡大したので、どれだけ増えたのか。130兆円増えたんだと。一方、税収が取れなくて140兆円増えたんだと読むわけです。

歳出の方は、90年度をゼロにして、歳出の上の方にいったのがふくらんだ、下の方はカットできた。足し合わせたのがネットで増えたということですけれども、見ていただくとわかるように、平成2年から2000年ぐらいまで、非常にきれいにと言ったらおかしいですけれども、公共投資が支えてきた。これが日本の90年代の不況のときの歳出の1つのパターンだったと思いますけれども、それが最近はすっかり社会保障がテイクオーバーしている姿です。

下の方が増収で、上の方が減収になった分です。ここで歴史的なことで、時間がないので私が一つ指摘させていただくとすれば、1997年、平成9年に消費税が引き上げられた。見ていただきたいのは、平成9年の前の方に、実は所得税始め、かなり大幅な減税をしてきた。平成9年で消費税が上がったから、実はこの山は上ではなくて下の方に行くはずだったのが、予想もしない、平成9年に消費税を上げて、逆に山が上に行ってしまうという、結果的には考えられないことが起きて今日になってきた。

そういうわけで、今日の債務問題というのは、歳出の方で見れば社会保障がこの足元では大変な問題になっている。歳入の方では、やはり97年の消費税を上げたところ以降、思いもかけないことで債務がふくらんだということかと思います。

それ以降、実は今日ばっと説明していただいたものの数字がどういうふうになっているのか、もう一回御説明して議論と思いましたけれども、すべてこれはもう走らせていただきたい。

ずっと飛んでいただいて11/17「3 歳出をどう管理するか」、あと数分で終わらせますけれども、繰入一般会計を見ると、交際費、社会保障費、地方交付税で7割になっているわけです。そのうち社会保障費というのは、基本的には若い人から高齢者への所得移転、そのほかもありますけれども、実際多くの部分はそうだと。そして地方交付税というのは、経済力のある地域からそうでない地域への財政移転だと。したがって、歳出の非常に多くの部分が移転支出なっている。

社会保障を議論するというのはどういうことかというと、これは一般の国の社会保障関係費ですけれども、2006年度で20兆円ある。それがどう構成されているかというと、医療、年金それぞれ構成されている。したがって、社会保障財政をどうするかというのは、このそれぞれを今後どう見ていくことか。

例えば去年の改革で何が行われたかというと、雇用保険3,900億円が失業保険のたしか4分の1だったと思いますけれども、それは政府が見ていた。そういうことが必要なのかということで、去年これを1,800億円カットした。今年、先ほどの西川さんの御説明、富田さんの御説明にもありましたけれども、2006年の基本方針をやるためには、国レベルでこの社会保障の中の2,200億円を工面しなければいけない。そのときに、どういう形にするのかというのが、こういうものを前提にやっているんだということを言いたかったわけです。

12/17は、やはりこの税調の場で我々がきちんと確認しておくべきことだと思って提出しました。つまり基礎年金の国庫負担の引上げですけれども、これは平成16年の年金の改革をしたときに、附則16条で決まっています。16条では、特定年度、つまり国庫負担が2分の1に引き上げる年度については、平成19年を目途に政府の経済財政運営の方針との整合性を確保しつつ、社会保障に関する制度全般の改革の動向、その他の事情を勘案し、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成21年度までに調達する。

要するに、私が言いたいのは、この2004年の年金改革のパッケージの1つとして、基礎年金に対する国庫負担の引き上げが入っているわけです。もし国庫負担の引き上げがなければ、社会保険料が自動的に上がらなければいけない。そういう意味で、ドイツのケースをやりましたけれども、つまりこれ以上社会保険料を増やすわけには行かない、この場合には失業保険だったわけですけれども、それを上げないために付加価値税を上げた。実は、我々も時間差はありますけれども、消費税を上げるか何税を上げるか知りませんけれども、社会保険料を上げないと、そのためには税で調達するという仕組みは、時間差はありますけれども同じことをやっているんだということを申し上げたかったわけです。

最後の13/17は、これをやると議論が沸騰して、どこに行ってしまうかわかりませんから、実は今日毒饅頭について是非、失礼。平成16年から18年に、三位一体改革というのがありまして、その評価をめぐって、先ほど米田さんが、交付税が5兆円減ったとか、いろんな議論があって、外から見ていれば、地方分権を促進するために三位一体改革をやったんですけれども、それに対する大変な議論があって、この10月21日にここに書かれた5つの県の知事さんが、法人二税についての意見表明をした。それ自身は御意見なんでしょうけれども、ポイントはその中をざっと読んでいただきたいんですけれども、地方再生を図るには、まず何よりも三位一体改革に名を借りて、一方的に削減された交付税の復元こそが必要である。さすがに私も、これをどう考えるのか。三位一体改革をした挙句、最後は交付税に戻るというのだったら、何の改革だったのかということはありますけれども、不用意にこういうことを言うと議論が沸騰しますから、司会者の特権で自分だけしゃべって終わらせるということで、時間がもったいないですから。メインは、我々、今日いろいろ貴重な説明をいただいたことに対して、どんどん議論したいと思います。

続けて、この骨太2006を含めて、政策の内側というか、当事者の一人として見て来られた吉川さんからコメントをまずいただいて、それを出発点として議論を進めたいと思います。

吉川さん、お願いします。

吉川委員

どうもありがとうございました。それでは、御指名ですので、私自身が2006年の骨太、歳出・歳入一体改革づくりに携わったということ。あと私の専門がマクロということもあって御指名を受けたと思いますので、2つのシミュレーション、内閣府のシミュレーション、財政審のシミュレーションについて、内閣府、富田先生から大変明快な御説明があったわけですが、それをもう一つ私自身要約させていただいて、反芻しながら、その上で私自身の個人的な感想のようなもの述べさせていただくということをやらせていただきます。

昨年の歳出・歳入一体改革では、2011年までにプライマリーバランスを黒字化するということを明確な目標として掲げて、それに向けての歳出カットのプログラムなども数字を入れて提示したわけですが、実は財政再建の最終的な目標は、プライマリーバランスゼロでは不十分で、現在140~150と言われているデットGDP比を安定的に下げていかなければいけないということ。これは昨年の骨太にも書き込まれたわけですが、ただ、経済の議論は必ず数字、数量の議論が必要であるわけで、デットGDP比を緩やかに下げていく、あるいは発散させないためには一体どういうことが必要なのか、数字の上でそれを明確に示すということは、昨年の骨太ではなされていなかったわけです。

今回のシミュレーションは、いわばその宿題に、内閣府、財政審それぞれが答えたものだというふうに考えております。

まず内閣府のシミュレーションですが、1つの重要なインプリケーションは、やはり成長率によってかなり結果が違ってくるということです。具体的には、内閣府の名目成長率約3%、約2%、2つのケースを計算している。2%のケースですと、実は現在想定されている14.3兆円の歳出カットを行っても、2011年のプライマリーバランス黒字化は達成できないという結果になるわけですが、更にその先のシミュレーション、内閣府のシミュレーションでは2011年~2025年までを想定して、財政審との関係でデットGDP比で言いますと、2025年で約140%ぐらいということを想定してシミュレーションしている。

内閣府のシミュレーションの特徴は、先ほどからお話しているとおり、まずは成長率が2つ、名目で3%成長、2%成長の2つのケース。それから、社会保障に注目しているわけです。社会保障の給付をおおむね今のものを維持するケース、負担の方を維持するケース、負担を維持するわけですから給付の方はカットしていかなければいけない。これは、先ほども御説明がありましたが、給付でいうと3割削減という、かなり厳しい削減だと思います。したがって、内閣府のシミュレーションは4つのケースになるわけです。成長率が3、社会保障の負担を維持する、それは給付カットということですが、この掛け算で4つのケースになるわけです。

結論、細かいことはあれですが、この結果で、もう一つ内閣府のシミュレーションの結果では、要対応増税額が示されている。先ほどこの点については、香西会長から、財政審に関してはプライマリーバランスの黒字化の要対応額であって、それがイコール即増税額ではないという御指摘があったわけですが、この内閣府のシミュレーションでは増税に対するよう対応額が示されているわけです。

それが対GDP比で見ますと、ちなみに日本のGDPというのは約500兆円ですので、1%5兆円ということですが、その対GDP比で今、4つケースがあると申し上げたわけですが、数字を丸めますと、対応額が少ない方から多い方に関して、2、3、5、6%、一番少なくて済むのが2%、実額約10兆、一番厳しいケースが、約6%で29兆、こういうふうに4つの数字が出てきているわけです。

それで、この場合、1つのポイントは、先ほどからお話しているとおり、社会保障ですが、負担維持ケースが給付3割カットいうことですが、ここで思い出さなければいけないことが、先ほど田近先生からも御指摘があったわけですが、現在の国の全体の一般会計の予算から、国債費と地方交付税交付金を除いた、いわゆる裁量的経費、一般歳出と呼ばれるものの、まだ5割まで行っていませんが、もうじき5割近くが社会保障だということです。ですから、この内閣府の試算で、負担維持ケースというのは、一般歳出の半分ぐらいのところについて、かなりの削減をあれしているわけですから、たしかに一般歳出イコール社会保障の経費ではありませんが、かなりの大所、あるいは一番の大所を1つのケースとして考えているということは、注意しなければいけない。それが内閣府のシミュレーションです。

財政審のシミュレーションは、まずは期間が少し違う、更に内閣府よりも遠くまでの2050年までを見込んでいます。内閣府と同じく高成長のケースと低成長のケース、名目の成長率、期間によって違いますが、内閣府の想定よりは少し低め、しかし、ものすごく低いというものでもない。

社会保障については、どういう想定がなされているか。厚労省の見直しを使っているわけですから、内閣府のシミュレーションとの対応で言えば、給付維持ケースに近いということだと思います。内閣府の試算では、2011年までは昨年の骨太の歳出カットを行うという想定でやっているわけですから、それに見合うのは財政審のシミュレーションで言うところのMTOシナリオというものが、それにほぼ対応していることになるかと思います。

そこで、MTOシナリオについて、推計Iと推計IIというのが低成長と高成長なんですが、プライマリーバランスの要改善額が、対GDP比でどれぐらいになるかというと、3%と4%ぐらい、数字を丸めておりますが、そのぐらいになってくるわけです。

話は戻りますが、先ほど香西会長から、財政審のシミュレーションに関しては、あくまでもプライマリーバランスの要改善額であって、歳出カットもあり得るということであったわけですが、内閣府の方では歳出でカットし得る一般歳出の中の一番大きなところをカットしているケースについても見ている。数字をこうやって全部並べてみますと、6つの数字があるわけで、2%、3%、5%、6%、4%、3%という数字が並んで出てくるんですが、これをすべて見て、これは私の個人的な感想ですけれども、増税に関する要対応額というのが、対GDP比で最も少なく見積もっても2%ぐらいあるんではないか。これは内閣府の一番少なくなるケースがそのぐらいになるということです。

したがって、そのピンポイントの数字というのは今後いろいろな議論があると思いますが、今回の2つのシミュレーションを見て私が個人的に考えたことは、勿論プライマリーバランスを改善していくということなんですが、歳出カットもその背後に1つのオプションとしてあるわけですが、それを見込んでも社会保障の将来像等を考えると、ちなみに実は今回の社会保障、あるいはこの議論では、年金、医療、高齢化対応が注目させるわけですが、今日の「企画20-5」という形で皆さんのお手元にも配られていると思いますが、少子化対策というのが今、政府の中で議論されているわけで、少子化対策では、大体1.5~2.4兆ぐらい必要だという議論が、現在、政府部内でなされているわけです。そういうものは、ここには織り込まれてないわけで、そうしたことを総合的に考えると、繰り返しになりますが、要プライマリーバランス改善額ではなくて要増税額としてミニマム大体GDP比2%ぐらい、2~4ぐらいのボックスという感じで、私は今回の2つのシミュレーションを読みました。

最後に、財政審のシミュレーションで一つ興味深いのは、これを5年遅延したときのコストも計算しているわけで、5年間ほっておくと、今度はそれを改善するためにどういうことが必要になるのか。遅らせるためのコストが発生していくわけで、それが対GDP比で1つのケースですが、0.7%ぐらいだと、遅らせるコストが存在する。これは当然のことであって、私自身はこの財政再建の問題というのは、ある意味では不良債権問題とパラレルなところがあるわけで、不良債権問題のときは95、96年、住専の辺りで非常にトラぶって、対応が遅れて、遅延コストが97、98年の金融危機ということで表れたわけですが、財政審のシミュレーションでは5年間の遅延コストを円という形で、幾らのコストが発生するかという形で試算して、そのまま1つのケースですが、対GDP比0.7%ぐらい発生する。要は遅延コストが発生するんだということをあれしたのが興味深いと思います。

長くなりまして、失礼しました。

田近主査

どうもありがとうございました。今日の説明のレビューもあり、そしてそれを踏まえて吉川さんからの財政再建に関するPBバランス、そして増税の幅という議論もありました。

済みません。盛りだくさん過ぎたということは最初からわかっていますけれども、限られた時間になりましたけれども、どのようなお考え、御意見でも、是非発言ください。

井戸さん、若林さん、佐竹さん、お願いします。

井戸特別委員

それでは、簡単に、まずプライマリーバランスが地方の方がいいという話なんですが、我々の数字でいいますと、平成13年と19年を比較しますと、公債費3,000億ほど増えているんです。歳出削減で8兆円減らしているんです。国の方は、国債費が3兆円増えているんです。歳出削減は7,000億円です。歳出ベースだけでいう限り、国は努力してなくて、地方はべらぼうに努力している。なぜこうなっているかということが問題なんです。財源不足額を強引に圧縮しているんです。だから、我々が政策的経費に回せる金が、その間で1兆5千億ほど減っております。

こういう努力をしてきているにもかかわらず、地方の方が余裕があるんだという議論を前提としてされるのは、もう全く理解できないし、けしからぬ。

第2番目は、水平的調整でやればいいと、法人二税を吸い上げて格差是正だから、毒饅頭論はやめますが、水平的調整でやるというのは、地方税源を国税に吸い上げて、それで自分が配ってあげるという発想なんです。人の懐に手を突っ込んで、召し上げて、それでもって配分をするからいいだろうといっているんです。こういう態度はけしからぬのではないかですかというのが、毒饅頭論です。

第3番目は、田近先生が、交付税の削減がおかしいとおっしゃったんですが、地方交付税というのはどちらかというと、格差是正の機能を果たすもので、税源のないところに税源のあるところから配ろうということです。

それで、平成15年に5.1兆円減らされたときと、平成18年を比較しましたら、対東京に対する税の格差と、税と交付税を足した格差、これを比較しますと、33県で税と交付税を足した格差が対東京に対して広がってしまっているんです。つまり税の格差の広がりよりも、交付税プラス税の格差の方が広がっているんです。ということは、交付税の均てん化機能が減退しているということなんです。ということは、やはり減らし過ぎだということなんです。

三位一体改革は、私は基本的には地方税源が増えたという意味で評価しているんですが、交付税を減らし過ぎているんです。4.7兆円の補助金をカットして、3兆円の税源移譲をしたんです。1.7兆円の補助金に見合う交付税を減らせばよかったんです。それを5.1兆円も減らしてしまったものですから、1兆円前後ぐらいの減らしだとよかったと思うんですが、4兆円は減らし過ぎだと、これが我々の主張です。それほどむちゃくちゃを言っているつもりは、全くありません。

田近主査

若林さん、どうぞ。

若林委員

お話を聞いておりまして感想なんですけれども、強く感じるのは総務省と財務省は、お互いうちの方が貧乏だと言い合っている。これは、私が30年前に財政クラブと内政クラブを持っていたけれども、そのころから言い合っていて、うちが貧乏だから金よこせという議論を資料で見る限り言っている。ただ、全体の状況を見ると、今そんな余裕のある国・地方の状況ではないと強く感じます。

国と地方がゼロサムゲームの中で、足の蹴っ飛ばし合いをやるものだから、こういう議論になるのではないかと思います。

先ほども議論がありましたけれども、徹底的に歳出カットした上に、税収のパイを増やしていかないと、この国は早晩立ち行かなくなるんではないかという気がします。国も地方も社会保障サービスを安定的に供給するには、実態、幾らかかるんだという議論を冷静にすべきときではないかと、プライマリーバランス、借金をどうするかという話よりも、これから社会保障サービスにどれぐらいかかるかという議論を、国も地方もやっていただきたいと強く感じています。

以上です。

田近主査

今日、2006年の基本方針で、11年までのPBバランスがどうなるか。その先をやったときは、内閣府の議論も富田さんの方も、結局、出っ張る部分は社会保障ですね。そのほかのものは基本的には、改革を12年辺りで抑えようと、あとコントロールできないというか、GDPで増加していくかもしれないのは社会保障だから、その分は延ばしましょうという議論ですね。

そういう意味では、今、若林先生のお話を聞いた限り、今日のシミュレーションはそれに応えようとしたものなのかと思います。

若林委員

わかりました。ちょっと理解不足でした。

田近主査

佐竹委員、どうぞ。

佐竹特別委員

私が話すと、また井戸委員の話と同じになりますので、そこを横から別な見方で。まず、プライマリーバランスの問題は、もう基本的に地方は赤字地方債は出せませんから、入ってくる金の中でやらざるを得ない。赤字予算は組めないですから、それは地方と国を同じディメンションの中でPBを比べるということは、やや意味がないと思います。

もう一つは、交付税の議論の三位一体ですが、これは実は私、市長会側の財政委員長で当事者でしたけれども、あのときの三位一体の改革について、実は交付税の議論は1つもしてないんです。補助金と税源移譲の問題をやって、交付税の議論は実際机の上でいろいろなやりとりが全然なかった。そこが非常に地方が不信感がある。それで、前からの削減に加えてその後の削減と。ですから、ここはあのときは非常に時間がないということで、わずか2、3日で国がまとめたんです。そのときにじっくりした協議の場がなかった。それが今、尾を引いているんではないでしょうか。

もう一つ、今、吉川委員がお話ありましたけれども、まさに交付税の中にもものすごいボリュームで社会保障費が入ってきてます。というのは、我々地方の一般財源として医療福祉関係に投ずる金が、これはお金に色は付いていませんけれども、やはり交付税がどうしても大きい、自主財源の少ないところを、その交付税から更に今の地方負担分が相当持って行かれていると。交付税も単に地方が自由に使える金ということではなくて、その中の大半はもう義務的に医療・福祉に回さざるを得ない。こういう状況は御理解いただきたいと思います。

以上です。

田近主査

増渕委員、どうぞ。

増渕委員

いろいろお話を伺っていて、国と地方の問題は大変大きな問題だと思いますが、財政の持続可能性という話と国と地方の問題というのは、何となく楕円形の2つの焦点について議論しているような感じがして、私は議論自体を分けた方がよかったのではないかという気がしております。というか、国と地方の問題については、別の機会に議論があってしかるべきだと思います。

先ほど吉川さんに大変要領よくシミュレーションの結果をまとめていただいたんですが、ミニマム2%という数字を言われました。これは私の理解では、歳出、社会保障費を3割削減した上で、名目成長率3%というケースですが、成長率としてサステイナブルである限り高いものを目指す、実質についてもある程度名目についてもというのは、そのとおりだと思いますが、財政の姿を将来展望するときには、かなり保守的な前提で考えるべきだと、これは吉川委員も全く同じ思いだと考えておりますが、そういうことでいいますと、仮に社会保障費を3割削減したとしても、相当高い成長率があって、なおかつGDP比2%足りないということの重みを共通の認識として、これからの議論の出発点として持つべきではないかと思います。

田近主査

わかりました。

井上委員、どうぞ。

井上特別委員

お話を聞いておりますと、名目成長3%というものも投げて2%だという考え方で、それは是非というようなお話が出ていると思うんですが、先ほど林委員からもお話がありましたけれども、成長率を高めるための税制というものを、もっと検討しなければいけないのではないかと思います。

例えば中小企業の場合でもそうですけれども、大企業は44兆円の付加価値を生んでいる、中小企業は58兆円の付加価値を生んでいる、2,800万人いますと、そういうことから考えて、今、中小企業はまだ疲弊している。それに活力を与えるための税制というものをどう考えているのかということも大事だと思うんです。やはりそこが活性化することによって、消費もどんどんふくらんでくることにも、相成ろうと思いますので、まずその辺をしっかりと検討していただくべきであろうと思います。

あと歳出の問題、予算の問題、これもどうも我々民間として見ておりますと考えられない。その削減の仕方にしても、どうなのかというように感じております。やはり重点的に予算の配分をしっかりするべきではないか。それによって、やはり効果というものがもっと出てくると思います。

それから、今の交付税の問題も出ておりましたけれども、地方もそういうものをもらってから、それをいかにして有効に活用するか。やはり地方も企業誘致ということに対して、もっともっと真剣に考えなければいけないのではないか。ところが、企業を誘致するには、土地代は非常に高く取ろうとして、それでいろいろと地方財政というものを健全化させるという方向に持って行っておるのかもしれませんけれども、やはり企業が来ることによって、その雇用、税収、そういうものも非常にふくらんでくるわけですから、そのためには、むしろ土地などはただで企業に提供する。そのために交付税でも使うなら、非常にいいのかなというふうな、勝手な考えも持っておりますので、ひとつよろしくお願いします。

田近主査

それでは、田中さん、井伊さん、お願いします。

田中特別委員

2011年にプライマリーバランスを均衡させることが、現状の国の至上命題であるというわけですけれども、いろいろシミュレーションで示されていましたように、今後の経済、社会情勢の変化を考えますと、必ずしも簡単ではないということですけれども、今できることといえば、できる限りの歳出削減をやりながら、2006年の骨太方針に決められた方針に従って、それを着実にやっていくということしかないと思います。

今、非常に注目しているのは、この骨太方針が本当に軌道に乗るかどうかという情勢で来年の2008年度の予算、これは概算要求が既に出ておりますけれども、これの水準が骨太方針で決まっている方針とそんなに大きなそごがなく、ほぼ想定の範囲内だったのかというのをお聞きしたいと思っております。

田近主査

今の質問は、事務局の方ですか。御質問は、来年、2008年度に向けての予算の概算要求はふくらんでいると思いますけれども、2006年基本方針以来の歳出カットに向けて進んでいるのかという御質問ですね。

田中特別委員

はい。

猪瀬委員

それと同じ話で、2011年までにプライマリーバランスを均衡するには、2006年の骨太で14.3兆円の歳出カットということを先ほど吉川さんが御説明されました。これは、いつから始まっているんですか。2007年からですか。

吉川委員

2007年です。

猪瀬委員

そうすると、財務省の資料「企画20-8」の2ページですけれども、俗称「ワニの口」と言われているものですけれども、この「ワニの口」の上顎がまた上がっているわけですね。これが、2007年から14.3兆円のカットが、例えば5年間かけて3兆円ぐらいずつやるとしたら減っていかなければいけないわけです。その辺りがどうなっているのかわからないんですが、それこそ先ほど言われた遅延コストのようなものがここに発生しているのかどうか、その辺りもきちんと説明していただきたいと思います。

国債発行額を減らしたことは、それはそれとして、歳出はあくまで歳出ですから、そこのところをはっきりさせていただきたいと思って、今の質問に重ねてですね。

例えばあと5年間で3兆円ずつというようなきちんとした計画があるのかどうか。ロットで5年で14.3兆円となっているのは、だんだんつけ回しが後ろに来て遅延コストが出てくるわけですけれども、その辺りがはっきりしないんですが、いかがでしょうか。それを、今のついでに聞いてください。

田近主査

どう持って行きますかね。2006の方針でも、毎年14.3、11.4がありますけれども、それぞれを各分野に落として5年間でいくと。例えば社会保障だと1.6兆円をやっていくというスケジュールで、毎年の。それでは、川上さんから、お願いします。

川上調査課長

一言だけ申し上げます。まず、14.3兆円とか11.4兆円という削減は、自然増に対してそれだけを削減するというのが計画になっております。

今年のシーリングも、細かくは申しませんけれども、この5年間の計画に沿ったシーリングの中身になっているということでございます。

田近主査

御二人の御質問は、それが今、2007から始まって2008に向かって計画通り進んでいるのかということですね。

川上調査課長

少なくとも、来年度のシーリングまではその線に沿った方向で進んでいるということです。

田近主査

全然答えてないと思うんですけれども、御懸念は高齢者医療の自己負担はもう上げられないから、それはどうしようかとか、そこでまた歳出がふくらんでしまうんではないかとか、平たく言えばそういう御懸念があって、来年の予算はいかがなものかということですね。

田中特別委員

そうですね。先ほどのケース3で年々1兆円増えるというケースも考えているという不測の事態といいますか、そういうものがもう既にあるのかどうかということです。

田近主査

加藤さん、お願いします。

加藤局長

まさに今、予算編成のいろんな要請も踏まえて、しかし、財政の大きな方針を前提にした動きやっておるわけですけれども、これはあくまでも予算編成過程でいろんなお立場の方がいろいろおっしゃっているのは承知しておりますが、最終的には今の段階で政府としては、シーリングの段階では、従来の2006年の骨太方針に沿ったシーリングを策定し、その後、今、予算の査定作業をやっているということですから、もう少しこの状況が続くんではないかと思います。最終的には、予算編成の中身が示されることによって、その答えが出てくるという形になろうかと思います。

田近主査

そのとおりで、今どうなっているかというより、この税調でも適宜歳出の動向が、どういう形で先ほどの14.3、今年の持ち分が達成されたかということは、適宜報告いただくということでよろしいですね。

猪瀬委員

どうやって検証していいかわからない。検証の仕方がわからない。14.3の見通しがなければわからないわけで。

田近主査

どうぞ。

松山総括審議官

若干、御説明いたしますと、11兆円から14兆円の歳出削減、これは毎年度平均的にやるものではありません。それは閣議決定の中にも書いてございます。したがって、毎年きちんと検証しなければいけないというのは、おっしゃるとおりでありまして、昨年の年末に今年度予算を編成したときに、14.3兆円、要するに大きい方の金額の5分の1よりも大きな歳出削減をやりました。初年度の歳出削減は、正確な数字を記憶しておりませんけれども、3兆円を上回ったと思います。初年度の結果において、かなり大きな歳出削減を行いましたという、12月に試算結果と申しますか、評価を公表しております。

田近主査

もう時間があれなので、今年もどういう形で進んで、どう決着したかということは、この場でも報告いただくということでよろしいですね。

時間がちょっと過ぎてしまったので、今、御質問いただいた、出口さんと井伊さん、お願いします。

出口特別委員

今の話、大変重要な話でして、長期的に財政が大変だから、ここで税制を議論しろということと、足元のところで、たがが緩んでいるんではないかということであれなんですけれども、その点でいうと、税収そのものも大変重要なもので、17年度税収というのは、予算と途中の税収見込み、決算額とで、ここで実際に議論している増税額よりも多い幅で変動があって、18年度につきましては、最終的な決算額はきちっと聞いてないんですけれども、この辺はしっかりと説明して、一つずつ足元を固めて、みんなに納得してもらいながら進まないとだめではないかと思います。

その点で、今日の長期見通しは、2002年の人口統計推計を基に、内閣府も財政審も両方ともしているわけです。これは、現実にそれを下回っている、非常に重要なパラメーターが下回っていますから、長期的には今日の非常に暗い話よりも、もっと暗い話もあり得るんだということも、一方で前提にしていかなければいけなくて、この辺はしっかりと事実を公表しながら進んでいった方がいいと思います。

田近主査

今わかりました。

井伊さん、どうぞ。これで終わらせていただきます。

井伊特別委員

大変細かい点なんですが、私が質問したことですので、コメントというか再質問になるかもしれませんが、総務省の資料「企画20-9」の地方財政状況ですが、13ページに県内総生産と県民所得の関係、これは地方法人税のことですが、全県合わせたもののデータです。私の質問の意図は、こういった割合が都道府県ごとにどのようにことなるかということが趣旨でして、全県合わせたものの状況がこうなっているというよりは、都道府県ごとにこの割合はどう異なるかということ。

あと経年的には、17ページに東京都の法人二税と都内総生産というのが、平成7年辺りから格差が広がってきて、現在、法人二税の割合が25%で、都内総生産の割合が17.8%でして、こうした乖離がなぜこの10年ぐらい広がってきているのか、その辺りの分析をお願いしたいというのが前回の質問の意図でありました。

田近主査

わかりました。盛りだくさん過ぎて、もっと議論したい最後の部分で、税調としてこれから増税も含めて議論していくときに、歳出の方がどれだけしっかりしているのかという御質問はもっともだし、これが今年の守られていくのか、どういう状況になっていくのかという情報は、税調としてもきちんと欲しいということは重要だと思います。

あと、今日いろいろ数字が出て、恐らく皆さん頭の中はまだ、吉川先生の非常に整然とした御説明があったので、大分落ち着いたと思いますけれども、まだ数字は頭の中で安定してないかもしれませんから、その辺を踏まえて答申に向けて、更に議論していきたいと思います。

今日はどうもありがとうございました。

香西会長

活発に御議論いただいて、どうもありがとうございました。だんだん答申が迫ってきまして、我々も緊張してやっていかなければいけないということが、最大の結論だと思います。

今後のスケジュールについて御報告をしておきます。次回の日程でございますけれども、11月2日、今週の金曜日でありますが、午後1時30分~3時30分までという時間を取っております。議題は、消費課税についてということになっております。今週で言えば、各税目、消費課税まで出てくると、税目ごとに議論してきたことが、一応一巡することになるわけです。

その次の週からは、更にこれまでの議論をもう一度整理しながら、審議を深めていくことにしておりまして、11月5日、これは月曜日でございますけれども、午後1時~4時までの3時間を予定しております。

それから、11月9日の金曜日、午後1時30分~4時30分の3時間を予定しております。

本日、議論を残したような点についても、こういう機会を利用してもう一度しっかり議論を詰めていきたいと考えております。

それ以降の日程等については、確定次第事務局から御案内を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日は大変どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。