企画会合(第19回)終了後の香西会長・水野主査記者会見録

日時:平成19年10月26日(金)16時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

ただいまから、第19回企画会合終了後の記者会見を行います。

まず初めに、水野委員が主査として本会見に出席させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

質問

両先生にお伺いしたいのですが、今日の議論の前半の所得課税の部分です。どういう締めになっているのかがよくわからなかったので、どう受けとめていらっしゃるのかお伺いしたいのですけれども、今日の議論を聞いていますと、格差是正の方向性をやはり所得税でも対応することが必要ではないかということは、いろいろな方が共有されているのかなと思う一方で、具体的にどういう方法があるのかについては、最終的にこういう方法がいいだろうという話にはなっていないような感じがしました。まず、そういうことでいいのかどうかお伺いします。

具体的には、給与所得控除の見直し。所得が大きい人たちの部分を、今よりも縮小する方向にすべきではないかという意見が幾つか出たり、最高税率を引き上げることを考えてもいいのではないかという意見もありましたし、給付付き税額控除も検討に値するという意見もあったと思います。ただ、一方で異論も一部あったりして、この辺というのはどのように受けて見ていらっしゃいますか。

香西会長

本日の議論ですけれども、たしかにたくさんの話題があって、それについてたくさんの議論があった。出席されていた方の間では、同じような意見が幾つもありましたけれども、完全に方向が決まった形にはまだなっていないと私は理解しております。最後には、各委員それぞれ意見があればメモもいただきたいというふうに言っておりますし、これからは、いろいろな形で各委員の意見を吸い上げながら全体をまとめていくことが仕事になるわけです。必ずしも会議を一々やっている暇はないかもしれませんけれども、いろいろな接点を設けて、税調委員と私なり主査をお願いしている方の間で、いろいろな形で接触してもらって、だんだんと固めていきたい、こういうつもりでおります。

水野主査

私もひと言だけ申し上げます。いろいろ議論が収れんしたというよりも、並行したか、あるいは拡散したような感じがいたしましたのですが、言えることは、格差ということがどの委員の方も前提になっておりましたので、そこの認識はどうも共通しているようであったと思います。ただ、どの階層とどの階層の格差が拡がっているのか、その点をもっとはっきりさせるべきではないかというご意見もありまして、これはまた今後、とりまとめの中で検討したいと思っております。

以上です。

質問

香西会長にお伺いしたいのですけれども、水野先生は今日の中で、所得課税のほうですと、給付付き税額控除というのが所得課税を考える一つの目玉ではないかというふうにおっしゃっていましたが、香西会長はどのようにお考えかということが一点。

それと、今日の議論を聞いて、答申の中に盛り込むことに前向きになられたのか。それとも、まだ時期尚早だとお考えか。この2点についてお願いできますでしょうか。

香西会長

最終結論は、答申案がまとまってそれが皆さんに承認されるまではわからないということになると思いますが、私自身は、税額控除をする、あるいは、それをある程度給付に結びつける――すぐにできるかどうかとか、それに対してどういう問題があるかということは、今日、水野先生が書いていただいた5つの問題点があるわけです。

それから、本当に正直に申告してくれるのかどうかとか、また所得税というのは、所得の低い人が所得を伸ばしてもすぐ取られてしまうからガックリ来るというので、それをもっと前向きに、もっと上げるようにするということで、上へ引っ張り上げようとしているわけです。しかし、それもどこかへいけば打ち止めになる可能性がある。そうすると、やはりそれだって、そういう特別な給付を受けるところへ止まっているのがいいという形のモラルハザードというのも可能性としては十分あるわけです。それから、さっきちょっと言った、実際とは違う人たちが入ってしまう。資産を持っている人で、所得がないからといって入ってくるのをどうやって防ぐか、そういった問題もいろいろあると思います。

これは実務的な問題でもありまして、その辺は税制調査会としても、実務的な関係の知見の深い方々や、当局というか、そういうことをいろいろ調査していただいている方々の意見も十分聞いた上でないと、簡単にはいかないことである。しかし、もしそれが可能であれば、やはり議論をして、来年度とかそういうことになるかどうかはまた別として、私は、そういう実験もやってみたほうがいいのではないかというふうに前々から考えていたことは、個人的な意見としては若干お話をしたこともあったかと思います。私としては、この調査会をデモクラティックに運営していろいろな方々の意見を聞くと同時に、弱みというか、そういった点についても十分配慮しなければいけないことは、水野先生のペーパーにも指摘されているとおりだと思いますが、だからといって私の気持ちは、それはもうここで断念したとか、そういうことではありません。いろいろ議論して、いろいろな意見が出て当然の問題であるから、最後まで楽しみたい。まあ、それはよけいなことですけれども、大いに議論を楽しませていただきたいと思っております。

質問

一つお伺いしたいのは、今回、個人所得課税の議論をこういうオープンの場でやるのは最後という形になるのかということ。それから、今日はまさに多岐にわたる議論が出たのですが、給付付き税額控除みたいに、ある程度中長期的に考えていかないと制度設計が難しい話題もあれば、給与所得者の高所得者の部分の控除のカットという、どちらかというと短期的にもできるテーマとか、幾つかあろうかと思います。その辺の短期、長期でどのように整理されているのか、その辺をお伺いしたいのですが。

香西会長

短期、長期ということになると、私たちの税調のレポートをどういう形でまとめるか、その問題になってしまうわけでして、それをどういうふうに整理したらいいかというのは、まだ十分考えていないというのが率直なところです。ただ、そういうことについての相談は急がないと、世の中にだいぶ遅れていく危険も出てきているわけですので、そろそろ、そちらの全体像というものをいろいろなところで議論してもらいたい。税調の中でもその意識を持って議論してもらいたい、こういうふうに考えております。

個々の税目について問題があったものについては、会合を開いてということでない形でも、意見のあった人たちがもう一度話し合うこともあり得るわけでしょうが、あまりそういうことをしている時間的余裕はだんだん乏しくなってきています。先ほどお話ししましたが、次の会合の予定は、テーマとしては「経済・財政総論」と書いてあります。これは、日本の財政状態、経済状態全体の中でどういう税制がいいかということを議論することになると思います。それから、個別税目ではありますけれども、消費課税がまだ残っている。そこまでは予定ができているわけですから、まずその2つをこなしていく中で、全体のまとめ方というのはそれをやった上でもう一度考え直してみたい、こういうふうに思っております。

質問

補足です。個人所得課税というのが2回あったわけですけれども、そういった形での会合というのは今回が最後なのでしょうか。

香西会長

その可能性があると思います。

質問

今日の所得税の議論の中で、消費税との関連について意見が幾つかありましたけれども、この関連性についてのお考えをお聞かせください。それから、今後の検討の進め方についてもお願いします。

水野主査

消費税の問題といいますか、所得税を今後どうするかということについては、先ほど私はパッケージと言いましたのですが、大体どこの国でも必ず、所得、消費、パッケージで議論しないと税制改革としてきちんとしたものになりません。そういう意味では両方の関連性というものは否定できないと思います。今日は個人所得課税ということでしたが、消費税の話を出された方もありました。詳しくはまた消費税について議論する機会もあると思いますけれども、今のところ、そういうふうに考えております。

香西会長

同じようなことですけれども、従来は、消費税が登場して、それが日本の税制改革の大きな転機になったわけです。大体、消費税を出すぞというときは、消費税をあらかじめ下げておくとか、消費税を実施したあとで、生活保護費とか年金とかそういうところに特別の給付をするとか、そういう形であって、どちらかといえば、従来主役であった所得税が舞台の中央から少しこっちへ来て、中央に次第に付加価値税や消費税が出てくる。日本ではまだそこまで行っていませんけれども、新しい勢力であるそういうものが出てきて、例えば、消費税が入ってくれば所得税が減税されるということは、ある意味で所得税の持っている機能も小さくなるということになるわけです。

ところが、現在は、もちろん消費税がどれだけ必要かとかそういうことは、あと2回目で我々は議論するつもりでいますけれども、所得税のほうも、ただひっこんでいればいいという事態では全くなくなってきているのではないか。金がなかなか所得税で集まりにくい状態だということはわかっているのですけれども、しかし、何とか金をつくって、所得税の体系の中である程度格差問題に対応することができるようでないと困る。つまり、所得税も本当を言えば増やしたい。だからといって、ある程度所得税を減税したから新しいのを入れていいだろう、というわけにはいかない状況になっているだろうというのが私の感じで、それだけエラいときに税調をやっちゃったもんだなあということで、大体、昔は税調というのは減税するのが仕事だったわけですね。

シャウプ勧告のときだって、占領軍に対して主税局は実に果敢に減税を要求したわけです。それからあとはどんどん減税していくとか、あるいは、これは所得税ではないですが、税金のマキシマムは国民所得の2割であるということを決議している。これは中山伊知郎さんか、東畑さんか、どちらかだと思いますが、そういうふうに、減らす、抑えるというのが原理だったわけです。しかし、そうはいってもそれで機能不全になっては困るではないかという問題と、両方があるわけです。バランスのとり方というのは、今日もどなたからか注意を受けましたけれども、非常に難しい時代に入っているということを覚悟して、まだ展望が十分開いてきているわけではありませんが、何とか最後にたどり着きたいと考えております。

質問

今日はもう一つ、あまり時間がなかったですが、最後のほうで議論がありました、ふるさと納税制度のことでお伺いしたいのですけれども、今日の出席者の委員の方からは、よく意味がわからないのでもっと説明してほしいという意見や、従来の寄附金税制との関係で問題があるのではないかと、慎重な意見が目立ったわけです。一方で、次回までに説明してくださいみたいなこともあったりして、これはまた改めてやるということですか。今日の段階ではあまり収れんしていないから、もう一度やるということなのでしょうか。

香西会長

あそこの会合の中で、水野先生から総務省にどう考えているのかという質問に対して、「次回にでも」とおっしゃいましたので、ほかの議題をやるセッションであるけれども、持ち越したからということで、特別に若干の時間を割くことになるだろうと私は思っております。どれだけの時間が割けるかは別として、とにかく残された問題として、今日の議論で答えがなかったところは答えていただくようになるということです。

質問

水野先生にお伺いしたいのですけれども、今日のふるさと納税の意見交換の中では、税額控除を使うという総務省の研究会が報告したやり方に対する疑問の声が幾つかあったわけですけれども、これはどのように受けとめていらっしゃいますか。つまり報告書の中身の骨格にかかわる部分だと思いますけれども、それを否定されたということなのか、それとも、そこまでは行ってなくて、まだまだ議論をして実現したいということなのか。いかがでしょうか。

水野主査

これは非常に難しいといいますか、役所の中につくった研究会の結論なり考え方が、そのまま税制調査会の答申の中に採用されるかというと、これは必ずしもそういうことにならないわけですね。あくまであれは、それで自己完結した報告書だと思いますので。それをもとにして総務省なら総務省で、どういう課税の仕組みがいいかを考える、こういうことになるのだと思います。総務省のほうでは、「ふるさと納税研究会報告書の要旨」と出されましたけれども、それがそのままずっと、例えばとりまとめの段階まで使われるということではありませんので、そこはやはりはっきり区切るべきだと思います。税制調査会は税制調査会の考え方というのが出てくると思いますし。

質問

香西会長、前の質問のお答えにちょっと関連しますけれども、これからの税制を考えてみた場合、今日の議論でも、御船先生だったと思いますが、抜本改革というのをやっていく中では、今後、増税が必要ではないかという考え方を出さないといけないのではないか、という趣旨のことをお話しされていたと思います。今後の税制のあり方について、レベニュー・ニュートラルという形はもう限界に来ていて、今後、増税というのは致し方がないという考え方を、答申に盛り込まれるというか、その辺のお考えはいかがでしょうか。

香西会長

税制の問題と増税の問題というのは、今の日本の財政状態からするとかなり密接な関係はありますけれども、一つの考え方としては、税制というのはむしろ税目間のバランスをどう取るかというところに主眼があるのかもしれませんね。私は経済企画庁にいて、経済予測とか経済計画をやらされたのですけれども、将来の経済情勢というのは実はよくわからない。変動があるということは確かです。

しかし、その一方で、少子高齢化というのは簡単には終わらないとか、日本のグローバル化の中における地位というのもなかなか難しいものがある、こういう状態は明らかです。そして、現実に積み重なっている政府債務のGDP比というのは非常に高い、こういうことは事実です。いろいろな場合のことを考えて、そういう場合にはどうするかということについて、ある程度シミュレーションというか頭の体操をして、できればそのことについて多くの人が賛成してくれるというふうになっていたほうが、将来、その方向に行く可能性がある。それが必ず実現するというわけではなくても、あらかじめプランがあれば一つの要因にはなるかもしれない、こういうことだと思っております。

今のご質問に対する答えは、私の回答を見てください、というか、答申を読んでくださいというところまで、ひとつ留保させてください。

質問

お二方に伺いたいのですが、ふるさと納税のところでわかりにくいというのは、所得税と住民税と既に両方ともある制度の上で、総務省の研究会で住民税だけやっているからわかりにくいというところもあると思いますけれども、今日、総務省の説明の中でも、研究会では住民税、所得税、両方とも税額控除が望ましいという結論が出ました、ということでした。その点についてどのように考えていらっしゃるかということを伺えますか。

水野主査

ふるさと納税の考え方は幾つか論点がありましたが、一つは、寄附金の控除として税額控除を使っている。これがほかの寄附金控除とは違う。そこの整合性のよくないところ、これを指摘される方がありました。もう一つは、では所得税はどういうふうに対応するか。今おっしゃったように、所得税も税額控除を採用してほしいという意見はありましたけれども、報告書としてそれは出してはいないと思いましたし、そもそも私は、これは税制調査会の記者会見の場ですからあれですが、いわゆる所得税についてどう対応するかという、その点で疑問が出て幾つかのご意見をいただいたのだと思います。ですから所得税については、もし実現する場合にも、当然、両省で話し合わなければできない問題だと思いますし、委員会の報告がどう書いてあったにしても、それはあくまで委員会限りのものだと思っております。

香西会長

水野先生はふるさと納税の委員会でも委員のお一人ですので、お立場が大変難しかったかもしれません。私の今日の印象としては、いろいろな議論が行われたけれども、自分は、ふるさと納税というのは説明は聞いて一度わかったような気はしていたけれども、結構いろいろな問題があるんだなあということがはっきりしたくらいで、どっちが正しいかというところについても、勉強してもわからないかもしれませんが、もう少し勉強させてもらわないと、簡単には結論が出ないのではないか。簡単な結論にしていると、とんでもないことになるのかなと。むしろそういう警戒感ができたというのが、私の個人的な実感です。

しかし、税制調査会の意見も求められているわけです。大臣の記者会見では、今後、政府税調や党税調に諮る、こうおっしゃっていますので、水野先生、その他、ご専門家の方々の意見も再度いろいろ教えていただいて、税調として恥ずかしくない意見を最終的には述べるようにしたい、こういうのが私の気持ちであります。

司会

これで記者会見を終了させていただきます。ご協力ありがとうございました。(了)