企画会合(第19回)議事録

日時:平成19年10月26日(金)13時30分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

それでは、ただいまから「税制調査会第19回企画会合」を開催いたします。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、大変ありがとうございます。

本日の議題でございますけれども、本日は個人所得課税を議題として審議を行います。個人所得課税につきましては9月18日に一度審議をお願いしたわけでございますが、本日はその2回目ということでございます。議事進行、問題提起等については前回に引き続きまして、水野委員にお願いしております。

また、本日は地方税における寄附金控除と「ふるさと納税」についても御審議をいただきたいと考えております。大まかな時間割としましては、全体で約2時間と考えておりまして、最初に個人所得課税を90分程度、次に地方税における寄附金控除と「ふるさと納税」を30分程度の時間で審議ができればいいと考えております。

なお、出席されている方もいますが、出口委員、それから、本日は御欠席ですが、佐竹委員からは資料の提出がございましたので、お手元に配付しております。これは適宜、ご覧いただくようにお願いいたします。

それでは、水野委員よろしくお願いいたします。

水野主査

香西会長より御指名をいただきましたので、個人所得課税の第1回目に続きまして、私が本日の議事進行をさせていただきます。

本日の議題ですけれども、言うまでもなく個人所得課税の問題ですが、その中で地方税の「ふるさと納税」関係の寄附金の問題等がございますので、これを分けて議論していただきたいと思っております。大体、時間的に90分を個人所得課税の各論に充てまして、あと30分を地方税における寄附金控除、それから「ふるさと納税」といったものに充てていきたいと思っております。

そこで、まず私の方から簡単に論点をまとめまして、これが「企画19-1」でございます。「『個人所得課税に関する現状と課題』(第2回)」となっておりますが、今日は特に各論といいますか、個別の制度に焦点を当てて議論をさせていただきたいと思っております。

まず「I 基本的視点-課税ベースと税率構造のありかた」でございます。税制改革の議論をする場合に必ずこういうことが言われますけれども、特に所得税の場合には課税の対象である課税ベースと税率構造をどうするか。こういう両面から議論されるということでございます。

まずは[1]ですけれども、この課税ベースの中でも特に人的控除と言われますけれども、こういったものが存在しているわけです。税制改革を議論する場合に、こういった人的控除、所得控除をどう考えるかということでございます。

例としまして、ここに生命保険料控除が挙げてありますけれども、一時期、毎年のように生命保険料控除を廃止するかどうかというような議論がなされましたのですが、こういった控除項目について整理合理化をどのように議論したらいいのかという問題があります。

その中でも、特にどういう理由づけをするかということなんですけれども、実用書などには担税力がないからですと書きますけれども、なかなか、それが理論的なものなのかどうか。ここに「正当化するか」と書いてありますけれども、どういう理由でそういう控除が認められるか。そこから考えていく必要があるだろうということでございます。

それと密接につながりますのは家族というもの、世帯ですが、これをどういうふうに課税するか。簡単に言えば1人ずつ、夫婦単位、あるいは家族単位とありますけれども、それによって控除の考え方もまた変わってくるわけでございます。

更に[2]としまして、いわゆる格差社会の中で、個人所得課税における所得再分配機能というものをどう考えるか。特に住民税の方が10%の比例税率になりましたので、こちらの問題は所得課税では専ら所得税について考えるということになります。

それから、[3]ですけれども、所得税、特に税率などを考える場合に、前提として消費税の問題抜きにできないのではないか。大体、よくパッケージで言われますけれども、所得税にこれだけの期待をすると、それと対照させて、それでは消費税をどう位置づけられるか。こういった議論がされるわけです。

ヨーロッパの付加価値税に典型的に見られますけれども、付加価値税の税率を上げるときに所得税の方は対応して下げるとかありますが、少しそれますけれども、我が国では消費税を入れたときに一緒に、抜本的改革という名前の下で利子課税というものの適正化が一歩進められたわけでございます。

そこで、具体的な問題として「II 世帯構成と税負担のありかた」。いわゆる世帯に注目したことですけれども、一般に課税単位の問題と言われております。

これもしばしば取り上げられますけれども、個人単位にするか、夫婦単位にするかといったような問題で、我が国は個人単位主義をとってきた。特に、その中でも稼得者主義といいますか、稼いだ人の所得として課税する。これが戦後、とられてきているわけです。

この課税単位を議論する意味合いですけれども、一つには、かつては配偶者の社会進出と言われましたが、今日では男女共同参画社会を考えた場合に、実際的には配偶者が社会的に進出すると、これを損ねるような税制は好ましくないのではないかという論点です。

[2]は、歴史的にはこういう問題が戦後、フランスなどで起きたと言われておりますが、婚姻に対する中立性。2人のシングルが結婚したら税負担が増えてしまったとなりますと、婚姻に対して疎外するといいますか、消極的に働いてしまうということです。

[3]ですが、これが最近注目されましたのですが、少子化対策としての観点も大事ではないか。例として、フランスの家族単位課税です。家族単位というと、昔の我が国の家制度に結び付いたものなので、戦前、我が国は家制度で、家族単位でやっていたわけですけれども、それで廃止になりましたのですが、それとは違った意味合いで、いわゆる家族が、子どもが増えるほど税負担が軽くなるというような観点から、いわゆる消費者対策として考えた場合に、この家族単位といったものが議論されるようになってきております。

[4]がいわゆる公平の問題ですけれども、世帯としてとらえた場合、これは課税単位を議論するときには必ず必要な論点でございますし、ここに挙げてありますけれども、ごく簡単に言ってしまいますと、アメリカ合衆国、ドイツなどでは夫婦の所得を合算して半分に分けて課税する。税率が高い国ですと、所得が半分になりますと、適用される税率は非常に下がりますので、典型的には高額所得者に有利な税制になってしまう。こういうような欠陥が指摘されてきているわけです。

今度は具体的に、人的控除の中から特に取り上げておりますが、配偶者の位置づけということで、配偶者控除、配偶者特別控除の問題です。

これも、我が国では配偶者特別控除は一部廃止されまして、いわゆる逆転現象というものを抑えるための配偶者特別控除という制度に絞られておりますけれども、これについての考え方として、そもそも配偶者特別控除が採用された背景の一つに内助の功という考え方があったということです。それから、配偶者の存在は、納税者本人の担税力を減殺するという考え方も出されている。

そこで配偶者を考える場合に、いわゆる最低生活費というものを考えた場合に、基礎控除と、更に配偶者控除というふうになりますけれども、他方でカップルが1つに住んだ場合には規模の利益というものが出てくる。こういった論点もございます。

順番が前後しておりますけれども、いわゆる内助の功で、とにかく家の中にとどまっていることによって税制上メリットがある。こういうことになりますと、配偶者の社会的進出を損ねるものになるのではないか。いろいろな角度からの議論がございます。

次へまいりますが「(3)扶養親族の位置づけ」です。

一番頭に浮かびますのは、現在、特定扶養親族ということで、言わば高校生、大学生の年代の子どもについては扶養控除の金額がかなり上乗せされております。これは実質的には教育費がかさむということで、教育費控除といった性格も持っているものではないかと思われるわけですけれども、こういう形での控除をどう考えたらいいのかということでございます。

具体的に、この年齢制限の問題、それから、やはり少子化対策について、家族単位で考えるということもありますけれども、個別的に考えるとしますと、扶養控除をどうするかということが一番身近な問題として出てくるわけでございます。

こういうようなことがありますが「(4)給付つき税額控除・負の所得税」。これは最近、非常に議論が活発に行われているようで、事務局の方に、いわゆる給付つき税額控除についての参考文献のようなものがあるということですので、興味をお持ちの委員の方には、お申し出いただけますと資料の方を送らせていただくということになっております。ということで、給付つき税額控除は今の時点で所得税を議論するときの一つの大きな目玉ではないかと思われます。

具体的にですが、この給付つき税額控除というのはいわゆる税額から一定額控除をしていきまして、税額を納税する義務がなくなる、ゼロに達して更にマイナスになったときに、今度は給付をするという仕組みですけれども、いろいろなところで利用が考えられております。

例えば、[1]で子育て支援です。必ず児童手当といった問題と裏腹をなしますけれども、子育て支援といった目的で税額を控除する。

それから、[2]で就労の促進。職業を持たない人についての就労ということがございます。

[3]。これも[2]と似ておりますけれども、現在、生活保護の手当というものがあります。これも、言わば所得税の納税義務がなくなった階層の人たちにどう対処していくかということで、税制面から対応するということも考えられるわけです。

更に[4]で、これは違った問題ですけれども、消費税の戻し税というものが言われております。これは消費税率を上げてまいりますと、生活必需品にかかる税負担が重くなる。ヨーロッパ各国では複数税率にして、食料品等の生活必需品には軽減税率を適用しているわけですが、これが非常に税制を複雑にする上に、そもそもの消費税が持っている課税の中立性を損ねている。そういうような配慮があったのかどうか。

例えば、カナダでは長いこと、この戻し税というものを採用してきておりまして、具体的には、現在ではカナダも付加価値税ですが、昔は製造者売上税でありましたのですが、各州は小売の段階の売上税を持っておりました。そういった消費課税について一定限度、所得税から控除するということをやっておりましたのですが、こういう戻し税の考え方が出されております。

先を急ぎますけれども、レジュメの2ページをごらんいただきますと、給付つき税額控除ですが、ただ、論点が幾つかあります。

[1]には、そもそも税金を納めない人に給付を行う必要性、緊急性を考えなくていいのかという問題があります。

[2]に、先ほどもお話ししましたが、児童手当だとか生活保護給付といった社会保障給付との関係をどう整理していくのかという問題があります。

[3]には、所得だけ見れば低所得者であっても、所得以外の非常に高価な資産を保有している。大体、税制を考えるときには所得、消費、資産、全体の租税体系というものをいろいろ考えなければいけないわけですが、ここでも所得以外の資産を保有している人のことをどう配慮するのか。こういう問題が出てございます。

[4]で、大きいことですけれども、マイナスの人には給付を与える。それでは、そもそも、その財源をどうするのか。

更には[5]ですけれども、給付を与えるルートといいますか、どういう体制でそれを行うのかという問題が出ております。

以上が、世帯絡みの所得課税の論点です。

「III 所得の種類と税負担のありかた」。これはかなり技術的な問題が入っておりますけれども、どの所得の中身をどうするのが望ましいかという問題と、それから、所得によって税額が違ってきますから、その結果、どちらの所得に属するのかということが、執行上、実務上、非常に大きな問題になっております。

「(1)不動産所得」とありますが、これは今日ではかつての資産制度が廃止されておりますので、不動産所得は独自の存在意義が薄くなっているわけなんですが、ただ、この不動産所得には、先般、航空機のリースといったものも含まれてくるわけですので、それを利用した課税逃れという問題が数多く起きているという現状がございます。ということで、不動産所得を出させていただいております。

「(2)事業所得」。これは昔から議論されたことですけれども、給与所得とどのようにして区別するのかという問題。更には、雑所得という類型が最後にありますけれども、こういう問題については常に問題とされてきております。

[2]の記帳義務については、大分前にかなり整理されておりますけれども、電子化の進展に伴って、これを再検討する価値があるのではないかということです。

具体的に事例として挙がってまいりますのは、税務署の職員の人が調査に行ってもなかなか帳簿を見せてくれない。しょうがないので推計で課税しますと訴訟になって、法廷が開かれて、第1回目に帳簿を出してきて、いかに税務署の推計が間違っているか。こういうようなトラブルが絶えないわけですが、そのようなものを行政のコストを考えた場合に、概算経費という考え方を事業所得に入れることは考えられるのだろうかということで出させていただいております。

「(3)給与所得」。これは大まかに給与所得控除の性格というもので、もともと、これは事業所得に比べて実額の必要経費が認められていない。その代わりに、給与所得控除というものを認めてきたわけですが、かつてはかなり、実額控除が認められないということを理由にトラブルが起きたケースが多かったわけですが、給与所得控除がどんどん引き上げられてきているのが現状であります。

それに付随して、[2]ですけれども、そもそも、給与所得についての必要経費の判定の難しさがあります。典型的に、会社に行くときにスーツが必要になりますけれども、これは丸々、必要経費なのか。それとも、自分にとっても必要なんだから、それは消費としての意味があるのではないかとか、そういう判定の難しさが出ております。

[3]ですけれども、これは前回も御指摘いたしましたが、就労形態の変化に応じて新しい給与形態が出ているといいますか、新しい考え方をしなければいけないのではないかという場面が出ております。よくSOHO、スモールオフィス・ホームオフィスと言っておりますけれども、在宅で仕事をしている。これは会社に行って上司の指揮・命令に従って仕事をするのとは大分状況が違っておりますので、それについてどう考えるのかという問題がまた出てきていると思います。

[4]ですけれども、この給与所得控除絡みで、現在では特定支出控除というものが認められておりますが、これはなかなか限定されていると申しますか、あるいは給与所得控除をオーバーするような支出が現実には少ないのか、どちらかですけれども、利用者が非常に少ない、毎年十何件しかないということですけれども、言わば実額控除を採用するという意味で、この特定支出控除を広げるということも考えられるわけです。

最後に[5]で、ストックオプションや法人税法に規定されました業績連動型給与等のいわゆるインセンティブ報酬というものが最近では用いられるようになってきております。この点をどう考えていくかということであります。

「(4)退職所得」で、この退職所得というのは、勤務期間中の給与の後払いと老後の生活保障の性格を持っていると言われておりますけれども、具体的にそういう性格がありますので、非常に税負担が緩和されております。ここに書いてあります。

そこから派生して出てくる問題が、1つには終身雇用制度が変化して、かなり職を異動する人が増えておりまして、そのようなものに対応する退職所得が違ってまいりますけれども、退職所得課税の背景が変わってきているということであります。

そこで具体的に、特に年俸制で給与を決めるような企業になりますと、3ページになりますが、退職所得の税負担が非常に軽減されますので、働いている間の給与を減らして、その分を退職金に回すという例はアメリカ合衆国でも古くからありましたのですが、我が国でもこういう問題が出てきたらどう対応するかということが考えられます。

逆ですけれども、一時的な退職金を払うというのは非常に負担で、とてもそこまで補助できそうもないということで、逆に前倒し的に給与の方に含めて退職金をなくしてしまうという傾向も一部見られるということであります。ですから、ちょうど反対の動きが起きているということです。

それから「(5)年金所得」です。年金所得につきましては、年金というのは生涯の設計でありますので、掛金の段階、プールされた年金資金の運用の段階、更に給付。この3つの段階でどう課税していくかという問題が出てまいります。

現在は雑所得の中に入れて、公的年金等控除というものを置いているわけなんですけれども、そもそも雑所得に入れる意味はないんですけれども、年金所得というものを、今後、ほかの所得の類型も含めてですけれども、新しい類型にしていくことも考えられるということでございます。

長くなってしまって恐縮ですが、この後、事務局の方から補足説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

星野税制第一課長

税制第一課長でございます。私の方から資料に沿いまして補足説明をさせていただきたいと思います。資料「企画19-3」をごらんいただきたいと思います。

1ページから見ていただきますと「課税ベース(イメージ図)」でございます。ここに書かれている各種の控除などが収入から引かれて、税率がかけられ、課税所得が算出されるということでございます。

2ページに、今、申し上げた控除の中で人的控除につきまして、その概要をとりまとめて書かせていただいております。

3~6ページは、前回、総論のときにも申し上げましたけれども、税率ですとか、課税負担額につきまして、その推移。あと、各国比較で見ていただくということで資料を付けました。前回申し上げましたとおり、我が国の所得課税の負担水準が下がってきているということが見ていただけるのではないかと思います。

7ページで、先ほど水野先生からお話がありました課税単位の概要につきまして付けさせていただいております。日本、イギリスについては個人単位課税、アメリカ、ドイツが個人単位課税と夫婦単位課税の選択制になっています。フランスにつきましては世帯単位課税で、いわゆるN分N乗制が採られているということでございまして、それぞれの国は、ここに書いてあります財産制度などを反映して違いが出ているといった面がございます。

8ページで「配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み(配偶者が給与所得者の場合)」でございます。先ほど話がありましたとおり、8ページの右側の四角の中に、いわゆる手取りの逆転現象が配偶者控除だけだと起こるわけですけれども、この階段状の配偶者特別控除を設けたことによって、それが解消されているということを書かせていただいております。

9ページで、これも先ほどお話がありましたとおり「基礎控除・配偶者(特別)控除の仕組み(イメージ)」でございますけれども、例えば就業している奥さんが103万円以下の所得であれば、自ら基礎控除でもって課税関係が生じない一方で、だんなさんの方は配偶者控除の適用を受けることで、いわゆる2つの控除を享受することができるといったような指摘がこれまでもなされてきているわけでございます。

10ページをごらんいただきますと、ここにいわゆる103万円の壁とか、130万円のの壁といったようなことが言われるわけですけれども、どういったことによって、例えば奥さんが働くのを決めるに当たって、だんなさんの税負担に及ぶ影響ですとか、あと、奥さん自身の保険料負担に及ぶ影響を考えることになるわけですけれども、どういったようなことが基準を超えた場合に出てくるかということを一応整理して書かせていただいております。こういうことが、就労に対する中立性を阻害することになるのかどうかといったようなことが論点になると思います。

11ページで、これも先ほど水野先生から御指摘がありましたとおり、特定扶養の関係、あと、年齢制限などの御指摘があったところでございまして、扶養控除制度がこのように成り立っているということでございます。

12ページで、これが子育て支援策の関係で、これまでは、一番上に書いてございますとおり、扶養者の担税力の減殺ということで所得控除で行ってきているわけでございますけれども、財政支援という意味合いが強い税額控除という形も考えられるのではないかと思います。

ただ、税額控除は当然のことながら、非納税者には負担軽減が及ばないわけでございまして、そういう意味では、そこも含めた支援策ということであれば、真ん中に書いてある手当ということになろうかと思います。いずれにしても、この3つの制度の違いということをわかりやすく整理させていただきました。

13ページが、お話にありました税制を活用した給付措置につきまして国際比較をしているものでございます。見ていただきますと、アメリカにつきましては就労支援策と子育て支援策を行っている。イギリスについても同様でございます。ドイツにつきましては子育て支援策、あと、フランスについて就労支援策ということで、これらの国について税制を活用した給付措置が行われているわけでございます。

真ん中辺りの「給付の仕組み」を見ていただきますと、アメリカ、フランスでは算出税額から控除額を差し引いて、引き切れない場合にオーバーフロー分を給付するという制度になっているのに対しまして、イギリスやドイツでは控除額の全額を税務当局から給付するということで、課税の部分と給付は別々に行われてございまして、そういう意味では純粋な給付制度になっているということでございます。

一番下に控除税額の説明がございますけれども、いわゆる所得が増えると控除額が減っていくという消失控除の制度が取られておりますのはアメリカ、イギリス、フランスでございます。ちなみに、イギリスにつきましては就労税額控除と児童税額控除について一体で計算をするといったような制度が取られているわけでございます。

14ページは、水野先生の説明にございましたとおり、給付つきの税額控除のイメージにつきまして図解をしているものでございます。

15ページでございます。こういった制度を議論するときに、当然のことながら、既存の給付措置との関係といったようなことが議論になるわけでございますけれども、低所得者にどういった制度を仕組むかといったようなことを考えるに当たりまして、現在の社会保険制度におきましては低所得者に一定の軽減措置が組み込まれているところでございまして、それぞれ健保、年金、介護につきまして、どんなような軽減措置が取られているかということを簡単に図解したものでございます。

したがって、保険制度、給付制度の設計の仕方でもって、この辺の所得再分配みたいなことについても、ある程度、議論、考慮が考えられるので、こういった点も含めて考えていく必要があるのではないかと思っております。

16ページが、平成17年の所得再分配調査からつくりました、所得階級別の負担と受益の関係でございます。受益につきましては、年金その他の社会保障給付が給付されておりますし、負担の方は税、社会保険料について合算して書いてあるわけでございますけれども、見ていただきますと、大体600万円~700万円ぐらいのところを分岐点に、ネットの受益から負担に変わっているというところが見て取れるかと思います。所得階級の低いところは、負担に比べて受益がかなり大きくなっていき、そういう意味ではネットの受益額が結構な額になっているということがおわかりいただけようかと思います。

17ページ以下でございますが、基本的に水野先生から御紹介がありましたので、さっと見ていただければと思います。不動産所得の説明が、17ページ。

18ページにつきましては事業所得の関係で、事業所得者と給与所得者の比較を行っております。

19ページが「給与所得控除制度」でございまして、これを見ていただくとわかりますとおり、昭和48年当時は控除限度額があったわけでございますけれども、その後、制度が変わりまして、現行では最低保障額65万円の上に、収入金額に応じまして定率の控除がございまして、1,000万円を超える部分についても5%の控除があります。そういう意味では、どんどん青天井で控除額が増えていくといったような制度になっておりまして、これをどう考えるかといったような御指摘もあるところでございます。

20ページは「退職所得の課税方式」でございます。先ほど水野先生からありましたので、説明は割愛させていただきます。

21ページを見ていただきますと、実際の退職金の支給額につきまして、モデル退職金がどれぐらいで、それと退職所得控除の金額の関係を図で示させていただいております。これを見ていただくと、勤続年数の低いところは退職金の支給額が控除額を下回っているわけですけれども、20年を超える辺りから支給額が控除額を上回るといったような関係になっているということがおわかりいただけようかと思います。

22ページが「公的年金等に係る課税の仕組み」ということでございます。

23ページをごらんいただきますと、モデル年金額につきまして、今の公的年金等控除によりまして課税最低限以下になっておりまして、モデル年金を受け取っている老夫婦世帯ですと、課税関係が発生しないということがおわかりいただけようかと思います。

それを超える収入になりますと、基本的には給与所得控除と似たようなカーブを描いているということが、24ページを見ていただけるとおわかりになるかと思います。

あと「企画19-4」という参考資料がございますけれども、前回、総論の議論をしたときに、若干、こんなことがわからないかというのを御指摘いただいたもので資料を付けさせていただいております。

1ページをごらんいただきますと、所得税の納税者の属性みたいなものはわからないかという御質問がございました。これを見ていただきますと、全体の人口の中で労働力人口と非労働力人口がどうなっているか。その中で就業者がどれだけいて、就業者の中で納税者がどれだけいるのかという関係がおわかりいただけようかと思います。

一番下を見ていただきますと、納税者が5,000万人ちょっといて、給与所得者、農業所得者、事業所得者、それ以外の人というふうに分かれるわけでございます。

国税については、これ以外に、あと200万人ぐらい納税者がいて、合計で5,228万人でございますけれども、残りの200万人というのは年金関係をもらっている非労働力人口になるわけですけれども、そこで納税されている方がいるという関係になるわけでございます。

2ページは、給与所得者、事業所得者、農業所得者の所得者数と納税者数の推移を、一応、数字で挙げさせていただいております。

ちょっと飛んで恐縮でございますけれども、25ページをごらんいただきたいと思います。前回、クロヨンなどの所得捕捉の関係でどういうことになっているのかといったような御質問が出たわけでございますけれども、これはこれまでにいろんな先生が行われた所得捕捉の業種間格差についての研究を簡単にまとめたものでございます。手法としては国民所得統計などに記載されている所得と税務統計上の所得とを比較して、それで所得捕捉というか、どれだけの脱漏が起こっているかの比較推計を行っているものでございまして、結果について、給与、事業、農業について比較しているというものでございます。

これを見ていただきますと、上から3つの論文については、大体、給与についてはほぼ把握されている。事業者については5、6割ぐらい。農業については3、4割というようなことで、俗に言われているクロヨンといったようなものに割と近いケースになっているわけでございますけれども、一番下の大田・坪内・辻の論文を見ていただきますと、最近、所得捕捉率が改善してきているのではないかといったような論文になっております。いろんな要因があるので、一概には申し上げられませんけれども、例えば農業についてかなり改善してきているわけですけれども、これは大規模農家と、所得が非常に少ない、課税最低限にも満たない兼業農家に二極分化が進んでいることでこういった数字になっているということも考えられますし、あと、税務行政におきましても、農業標準率を用いた課税から実額課税、収支計算に移行してきているといったようなことがあるのではないかと思います。

あと、個人事業者につきましては、最近、個人事業者全体の経営環境が厳しくなっていて、事業者の割合自体も低下してきているし、あと、法人成りがかなり進んできているといったような実態を受けているということもあろうかと思います。

勿論、私ども税制、税務行政についてもなるべく所得把握を向上させるような努力を行ってきておりまして、そういった点が表れてきているんだとすればうれしいのでございますけれども、一応、研究としてはこんなようなものがあるということでございます。

私からは以上でございます。ありがとうございます。

原田市町村税課長

市町村税課長です。引き続き、地方税関係を御説明させていただきます。「企画19-5」の「資料(個人所得課税(地方税))」をご覧いただきたいと思います。

2ページに政府税調の答申の抜粋を少し付けさせていただいておりますが、個人住民税、先ほど来、水野先生からも御説明がありましたように、基本的には所得税と同一の計算をしておるところでございますが、そこの1つ目の中期答申にも書かれておりますように、所得割の所得控除、また、課税最低限のあり方につきましては、個人住民税の負担分任の性格から所得税に比較してより広い範囲の納税義務者がその負担を分かち合うべきものということで、所得税と一致させる必要はないものと考えておるというような答申をいただいておるところでございます。

なお、下の2つ目の〇で、地域社会の費用を住民がその能力に応じて費用を分任する性格という形で、個人住民税の性格が位置づけられております。

3ページの1つ目の〇にございますように、所得割の諸控除につきましては、個人住民税の性格も踏まえて簡素化・集約化などの見直しを図り、課税ベースの拡大に努めるべきである。特に、先ほど水野先生からも御指摘がありましたように、現在、個人住民税は10%比例税率化がされておりますので、応益的な性格が強まっておることから、このような控除のあり方をどのような形で考えていくのかということでございます。

4ページで、先ほど財務省の方からもお話がありましたように「人的控除の概要」でございますが、負担分任の性格ということで所得税と個人住民税は控除の額について差が設けられておりまして、例えば基礎控除であれば所得税38万円に対しまして、個人住民税33万円という水準になっているところでございます。

5ページで、そのような負担分任の観点から、政策目的とされる主な控除制度につきましても、所得税に比べまして、その下の有り無しも含めまして、差が設けられておるところでございます。

6ページ以下は、財務省の方から御説明がありましたものの個人住民税版の資料を付けさせていただいております。

9ページが、そのうちの退職所得でございますけれども、これにつきましては前年所得課税というものの中で一部現年課税が採用されておる所得であるところでございます。

あと、11ページで「個人住民税の納税者数(平成18年度分)」でございます。一番下でございますが、所得割が課税される人間が5,504万人でございます。所得税の方の納税義務者が5,028万人ということでございますので、相当、ベースが広がっており、更に備考の3で書かせていただいておりますけれども、個人住民税均等割の納税者につきましては、それよりもベースが広く、5,919万人になっておるところでございます。

私の方からの説明は以上でございます。

水野主査

ありがとうございました。それでは、大体3時ごろまで自由に御質問、御意見などを伺いたいと思います。

どうぞ。

香西会長

それでは、特権的にトップを取ったわけではないと思いますが、私は個々の問題というよりも、我々はどういう形でこの所得課税の問題を議論すべきだろうかという点について感じたことがありますので、1、2申し上げたいと思います。

所得税については、これが20世紀において、あの大戦争を乗り切る上でも、一番手柄を立てた税ということで、しかも、累進税が付いておりまして、所得分配にもいいし、自動安定装置も備えている。つまり景気がよくなると税金が増えるという形で景気をなだらかにする力もある。しかし、現在のグローバリゼーションの中では、所得税に対してむしろ消費課税の方が自然に有意になってきている傾向もあるのではないかという指摘がありました。

典型的には、この研究会では、IMFのマイケル・キーンさんがそれ非常に雄弁に代表された一人だったと思いますし、田近部会長の部会長報告の中にもその点は指摘されておりました。

確かに所得税というのは空洞化してきているということは争えないことでありますけれども、今回の税調の審議としては、所得税は空洞一方だけの議論では収まらなくなっているのではないかと思います。それはなぜかと言えば、格差社会の問題に対抗するということで、やはり個人所得税にも、現在のままでは無理でありますし、もともと税制で格差社会を解消しようというのが無理だと思っているわけですが、しかし、税制の方から一発も弾を撃たないというのは、これまた責任回避がすぎるのではないかと考えますので、一方では、ここにも出ておりますように、課税ベースを広げるために控除をいろいろ検討し直すという形も必要ですし、それを通じて少しでも格差社会に対する答えになるように、それを持っていけないか。こういう問題意識があるということだと思います。

ちょっと余談なんですが、やや大げさに言いますと、こういうふうに所得税の位置付けが複雑になって、一方では増やしたり減らしたり、いろいろうるさくなってきているというのは、実は税制全体についても今回の大きな特徴ではないかと思います。

例えば社会保障にしても介護というものができたときは、介護という新しいサービスがあるから保険料を払ってください、つまり便益と費用が同時に発生しているわけですから、費用を払う方も非常に協力した。井堀先生の御本によりますと、北欧でなぜああいうふうにベネフィットと負担とがうまく結び付いているかというと、最初は10%ぐらいで始まった保険料や付加価値税が上がるたびにいいベネフィットを与えてくれる。

したがって、ベネフィットを上げるためには費用を負担しなければいけないということが、自ずから理解されていたというふうに書かれていたのですけれども、これからの日本の社会保障のお金が足りないというのは、新しいサービスをすることも多少あるかもしれませんが、勿論、医療が進歩して、技術が進歩したから金がかかることもあるかもしれませんが、基本的にはいいことをしてあげるというよりは、高齢化と少子化の中で、今までのことをやることに対してとても金がかかるんですという言い方しかないということでありまして、そういうものをどういうふうに国民に訴えていくかということが、従来より断然難しくなってきている。そういう中で、いろんな知恵を出していかなければ、我々の仕事は終わらないのではないかと感じていますので、その感想を一言申し上げさせていただきました。

所得税の空洞化につきましては、いろいろ反対というか、これはけしからぬというか、直そうという議論も、これは神野先生もどこかでお書きになっておられたところで、単にそれは復古主義ではないんです。現在のグローバリゼーションの中の格差社会というのは、各国どこでも問題になっていることだと思っていますけれども、それに対応する一つの手段、それで解決するということではなくても、とにかく何でも動員したいという時代ですから、そういう形でプラスとマイナスの両面でいろんな議論をし、案を考えていただきたいと思っております。

よろしくお願いします。

水野主査

ありがとうございました。今、香西会長から、それこそ基本的な視点を伺いましたが、御意見を伺いたいと思います。

田近委員、どうぞ。

田近委員

星野さんの今日の個人所得税に関する現状と課題、包括的な御説明をいただいたんですけれども、最初に基本的な視点ということで、課税ベースと税率構造の在り方の[2]で、格差が言われる中で、個人所得税の所得再分配機能をどう考えるかという指摘があって、それが今、会長もおっしゃられた、あるいは水野さんが給付つき税額控除、負の所得税というところで説明されたことと関わると思うんですけれども、水野さんの資料の2ページの給付つき税額控除・負の所得税をどう考えるかという論点を一緒に考えてみたいと思うんですけれども、まず2ページの上ですけれども、課税最低限未満で税を負担しない者に対する公的給付の必要性や緊急性、これは必要か緊急かというのは、恐らく[2]以降を検討して、最終的に答えを出す方がいいと思うんですけれども、[2]が既存の社会保障給付の関係をどう整理するか。指摘されているのは、既にさっき一課長の星野さんの方からも説明があったと思いますけれども、いろんな手当があるじゃないかと。手当がある中で、税額控除どう考えるかということですね。

この点、私はこう思うんですけれども、既存の社会保障給付があるからこそ税額控除が必要になる。逆説的なように聞こえますけれども、今、社会保障というのはほとんどが、生活保護自身だって半分以上は医療費の扶助で高齢者に行っているわけですけれども、社会保障の圧倒的な部分は年金、医療、介護ですね。だから、構図的には現役が背負っている。現役の人たちも、所得が低い人も社会保険料を払っている限りは払っている、負担を背負っているということで、現在、社会保障給付制度自身が、むしろ年齢構成、世代間の負担の調整を必要としているんではないかというのが私の第2点に対する考えです。

[3]の所得以外の資産保有をどう考えるか。所得は貧しくても資産があるじゃないかと、そういう人に給付をあげるのか、税額控除するのか、もっともだと思うんですけれども、若い人たちで所得が低い人にどれだけの資産を期待できるのか。高齢者の場合にはそういう問題が起きると思いますけれども、余りないのではないかと思います。

[4]の給付の財源をどこに求めるか。これは天から財源を求めることはできないし、財政制約の中で考えるべきなんでしょうけれども、こここそ先ほどから議論しているさまざまな所得の控除をどう考えるか、家族の在り方、私は給与所得控除の一番上の辺りも検討できるんではないかと思いますけれども、財源をどこに求めるかということに関しては、所得税自身の中で求める。まず所得税を強化するということだと思います。

[5]の給付の具体的手段、執行体制をどう考えるか。これは最も悩ましい問題で、いきなり日本が負の所得税で、実は先ほどの星野一課長の資料を見ると、アメリカの場合だと勤労所得控除だと夫婦二人の場合、最大勤労所得の40%、上限が4,700ドル、50万円以上を税額控除してしまう。こんなことを日本でやれるはずもないわけで、執行等はどうするかというのはあると思いますが、これ以上私の考えは述べませんけれども、執行等は十分考えなければいけない。ただ、今、言われている格差という問題に関して、税から発信するというよりは、税では手が届いていなかったのではないか。

水野さんのおっしゃるさまざまな点は、実は方向としては、むしろ社会保障の給付自身に私が言ったような問題があるかもしれないし、資産に関しても、私の言ったような点が重要だと思うし、そういう意味で、やはり日本が高齢化社会になって、そこでグローバリゼーション等々で所得格差が起きている。そこをどう税で手が届くようにするかというのは、この税調の重要なアジェンダだと思います。

水野主査

ありがとうございました。給付つき税額控除についていろいろ御指摘いただきました。

横山委員、どうぞ。

横山委員

その給付つきの話、また消費税のときにお話させていただきたいと思うんですが、私がお話したいことは、給与所得控除についてでございます。香西会長がおっしゃられたように、今、所得課税がフェアなのか、あるいは公平なのか、消費税を増税するといったときに、個人所得税を動かさずに負担を消費税だけでいくのかということを考えた場合に、やはり難しいのではないかと思います。

それは、私たち納税者一人ひとりの納得というのは、歳出側の見直し、厳格性、あるいは歳出カットを不断に行っても、一遍に消費税中心でどこまで行けるかといったときに、やはり段階を追っていかなければいけないのではないか。

そのときの位置づけとして、二元的所得税の考え方が所得課税から消費課税への移行として位置づけられるんではないか。そのときに、労働所得に累進的な税を適用し、資産所得については労働所得の最低税率というんでしょうか、そういうものが大ざっぱに言えば、スウェーデン、ノルウェー、北欧の二元的所得税の考え方だとすると、私は今の格差の根源は、確かに資産所得が源泉になっているということもあるんでしょうけれども、二元的所得税のそもそもの考え方は労働所得、高額の給与所得者が格差の源泉になっているという認識の下で、二元的所得税が組み立てられているんではないかと、私個人は理解しています。

そうだとすると、やはり1,000万超の給与所得者の、これは田近委員のアイディアで、給与収入階級別の納税者数及び所得税額のシェアということで見ますと、前回総論ところで御用意されたと思いますが、今、前回の総論の資料がなくて、手元の税制調査会の資料の平成15年分で言及させていただくと、所得税額のシェアが1,000万以上でどれぐらいのシェアかというと、所得税収全体の41%を1,000万以上の所得階層、あるいは給与収入階層の納税者の皆さんが負担してくださっている。

そうすると、ここの部分について、先ほどの給与所得控除が余りにも多過ぎるんではないかと個人的には思っているんです。

そうすると、会長がおっしゃられたように、消費税増税ということを考えますと、やはり労働所得、とりわけ高額の給与所得者に対する課税を少し重くして御負担願うことは、二元的所得税の考え方にも立脚していますし、将来的にはアンドリュース流の考え方で言えば、古典的な支出税ではなくて、労働所得がある一定の、かなり机上の空論的な部分もあるんですが、それは消費課税と同じなんだというような、新しい考え方もあるわけで、そういう点で、税率はなかなか動かせないとしても、給与所得控除を見直して、1,000万以上の階級の納税者の皆さんに、少し御負担をお願いするようなことはできないかと個人的には思っています。

以上です。

水野主査

ありがとうございます。かなり具体的な御提案でしたが、失礼しました、林委員、どうぞ。

林委員

もう論点がいっぱいあり過ぎて、どこからお話をさせていただいたらいいかということなんですが、所得税の1つの問題点は、再分配機能が低下しているということもありますが、財源調達能力が非常に弱くなっているという点も指摘されているところだと思います。

その場合に、累進度を高める形で、今、横山委員がおっしゃったのは、むしろ累進度を高めて、そして比較的所得の高いところから負担を求めるという形で財源調達能力を高めるというような御提案ではないかという気がいたしますが、今まで議論していたのは、やはり負担が中・高所得層に偏っているのではないかという議論があるわけです。

そのために、ブラケットを随分広げて、そして負担の累増感をなくそうということが今まで行われて、これは数年前にそういう形で出てきた。

格差が広がっているということは、確かにそのとおりなんでしょうけれども、その場合の格差是正というのは、いわゆる中所得あるいは低所得層も含めた格差是正を図るという話なのか、あるいは最高税率をもっと高めましょうという話なのか。その辺りがきちっと議論されないままに格差是正ということに持ってくると、ある意味では所得税の在り方として課税最低限を下回る所得の方々というのは、見方によってはゼロという税負担になっているわけです。これを税の理論から言えば、水平的公平、垂直的公平にふさわしくないではないかと、だから還付つきの税額控除をやることによって、課税最低限以下の人たちにも何らかの差を付けていこうではないかという考え方も、給付つきの所得税の中には1つの考え方としてあるんだろうと思います。

このように考えていくと、例えば給付つきの所得税という場合に、確かに負の所得税はいろんなものに使えるんですけれども、何をねらった給付つきの所得税なのかということによっては、恐らく目的は限られていくだろうと思います。

ですから、カナダのような戻し税的な還付なのか、子育て支援なのか、子育て支援ということであれば、恐らく今の扶養控除も、ある意味子育て支援に寄与しているはずなんです。ところが、その水準が少ないのか、あるいは所得控除だから高所得者の方が有利ではないかという話だったら税額控除になると思いますけれども、その辺りの議論がきちっとできていないような気がいたします。

それと就労促進という話なんですけれども、これはそもそもアメリカで負の所得税の議論が出たときには、社会保障制度が就労を阻害しているというところから出てきた議論だと思います。日本でも、働けばその分生活保護が削られるということがあれば、限界税率100%だと、だから働かない方がいいんだということがアメリカで起こる可能性があって、そのためには限界税率100%にしないようにしようという中で勤労意欲の促進ということが、負の所得税の中に考えられた。

ですから、ありとあらゆる目的を実現するような給付つきの所得税というのは、非常に難しいわけで、ただ、目的によっては今の制度の中でも可能な部分があるんだろうと思うんです。ですから、そこは切り分けて議論しなければならないのではないかと思います。

それから、給与所得控除ですけれども、これは私は実額控除がいいだろうという気がするわけですけれども、そうすると、恐らく今の給与所得控除は高過ぎるという話に当然なるわけです。そのときに、かつての論点整理で、サラリーマンねらい撃ちだと言われたのは給与所得控除の問題が一つあって、しかしながら、その背景には、やはりクロヨンというか捕捉率の違いがあるのではないかというような、ある意味不信感というものがあって、それに対して研究がいろいろなされた結果、やはり違うんだという話もあれば、捕捉率はほとんど差がないという研究結果もある。しかしながら、研究結果は非常に大事なんですけれども、私は研究者ですから大事だと思いますけれども、むしろ制度的に捕捉率の違いを生むような制度になっているのかどうかということが問題で、むしろそれはもうきちっと制度的な穴はふさいでいっているということであれば、あとはもう執行の問題ですから、やはり執行がどうなるのかというところが、これは挙証責任も含めて非常に大きな課題になろうと思いますので、その辺りを少し議論していかないと、非常に難しいのではないかと思います。

私自身は、やはり最高税率を高めてもいいのではないかと思っておりまして、課税最低限もできれば下げる。これはなかなか難しいことかもしれませんけれども、そういう形で財源調達能力を高めていく、財源調達は消費税だけではないのではないかというような気もいたします。

水野主査

いろいろな論点について、ありがとうございました。

高木委員、2時45分に御退席ということですが、御意見を先に承りたいと思います。

高木特別委員

個人所得税控除のそれぞれがどうだという各論は、さておきまして、ごくごく感覚的な話になって恐縮ですが、2、3、御意見を言わせていただきたいと思います。

まず、税というのはバランスだと。今、私も連合で組合員に税に関する意識調査等をいろいろやったりもしておりますが、8割以上の人たちが、今の制度そのものに対する不信感、あるいは税の税目、バランスについて大きな不信を持っているという結果が出ております。

この間、特に小泉政権以降は、法人税あるいは資産課税を計課する方向、一方で、いわゆる庶民というんでしょうか。そういった人たちの税負担、あるいは財政の方ですが、給付削減というんでしょうか。民主党の試算によりますと、税負担増と給付削減で国民負担が増えた分が約9兆円という試算もございますが、そういう法人税あるいは資産課税優遇、一方、庶民への負担増と給付削減というセットに対する不信感が非常に強い。そのことは皆さんも実感されている方も非常に多いんではないかと思います。

所得税につきましては、やはり所得再分配機能が大分落ちていることも、どなたも否定にならない。勿論、社会保険料とセットで考えるべきだという御議論もあることも承知をいたしております。

高額所得者の税率を上げる、あるいは上げないという、横山先生、林先生のお話もございましたけれども、いろんな試算があるんだろうと思います。所得分配機能のようなものが低下しているということについて、我々どういう処方せんを用意できるのか。そのこともあるのではないかと思います。

捕捉率で、大田大臣等が書かれた一番最近のものだと、個人事業主の捕捉率が、8割、9割になっている。これの実態はよくわかりませんが、捕捉率がどういう結果であるにしろ、捕捉をする仕組み自体が公平・公正な捕捉につながる、その仕組みがない捕捉率論は、しても余り意味がないのではないかという意味で、制度の根っこから捕捉率がそう違わないような制度にしない限りは、この問題はなくならないんだろうと思っております。

以上、3点、抽象的でございますが、今後の御議論をいただくときに、是非御配慮、御高配をいただきたいと思っております。

以上です。

水野主査

ありがとうございました。

それでは、出口委員、中里委員といきます。

出口特別委員

恐らくここで私だけが文化に関する研究をしている研究所の人間ですので、1つ申し上げたいんですが、平成16年に我々が実情把握というものを出したわけで、その中で、いわゆる世帯の構図が根本的に変わってきておりまして、今や一人世帯というのが一番多いわけです。夫婦と未婚の子女という形ではなくて、現在、格差社会があるのは間違いないんでございますが、いわゆる助けるべき人々が一体だれなのかというものを、どうやってとらえるのかという大問題が一方でありまして、この点に関しては、あらゆる方法、つまり歳出対応、歳入対応だけでなくて、あらゆる対応でやっていくべきだろうと思います。

最高税率につきましては、各国の比較が出ていて、非常に言いにくいんですが、この前、中里主査から大変いい勉強をさせていただいたのは、国際課税は国際協調で何とかやっていくんだという話がありましたので、だとすれば、我が国は先進国中最大の財政赤字を抱えている国でありますし、ここに出ている他の国々も財政赤字を抱えている国々なわけです。

そうした国々の中で、我が国が最高税率の在り方を先頭を切って議論するというのは、まさに国際貢献でもあるでしょうし、人が逃げるんではないかという御意見もあろうかと思いますが、文化というものを考えますと、言語の問題がございまして、通常の国境以外に言語の国境、言語境あるいは言政学という言い方をしてもいいと思うんですけれども、英語母語国あるいはスペイン語母語国とは、日本の国は根本的に違うようなところがあって、そういった点は余りエコノミストや法律学者は余り考えないかもわかりませんが、私は最高税率の最高については、林さんが言うように、ここでタブー視すべきではない。

ただ、高額所得者が一体どのぐらいかということに関しては、例えばそれは対数で考える方法もあるでしょうし、いろんな考え方の中で、ここで心理的なメッセージを出すということは大変大事なことだと思います。

水野主査

ありがとうございます。

中里委員、どうぞ。

中里特別委員

ありがとうございます。憲法上の財政の原則に非充当原則というのがありまして、Non appropriation principleというんですけれども、これは取ることと配ることを切り離す、つまり税収確保の問題と使い道の話は一旦切り離して、取った税金を一般財源に入れて、どこから取ったかわからない形にしていろいろ使っていくという原則があるんだと思います。

だからこそ、目的税とか、ある種特別措置とか、そういうものは余りいいものではないとされるんではないかと思いますけれども、負の所得税の話と、給付つきの税額控除の話というのは、取る話と配る話を租税制度の方で一遍にやってしまおうというところがあって、何か法律家としては細かいことを言うようですが気になる。

近代的な国家の財政制度自体は、ここから取った金をここに配っているんだということを、なるだけ見えなくするという形でつくられているわけですから、租税は税収確保、取る方に専念して、配る方の話というのは、それはまた別途、審議会でいえば財政審とかもございますので、そういうことだと思うんです。

定率減税を私たちが廃止したのも、その両方の話をごっちゃにしてしまったところがあって、それがちょっと望ましくないところがあったんではないかと思いまして、負の所得税も給付つきの税額控除も、そのこと自体はアイディアとしては理論的にすばらしいところがあるんだろうと思いますが、今の1点がちょっと気になるということです。

その延長線上で一つ、これは事務局にお伺いした方がいいのかもしれませんけれども、この給付つき税額控除を取っている国で、課税最低限というのは一体どうやっているんですか。それが混乱してよくわからなくなってしまったものですから、もしおわかりだったら教えていただきたいと思います。

水野主査

星野課長、いかがですか。

星野税制第一課長

課税最低限につきましては、各国比較をこれまでもしているわけですけれども、今、中里先生から御指摘がありました負の所得税の関係で申し上げますと、例えばイギリス、ドイツで出されています児童税額控除とか、ドイツの場合は児童手当を出しているわけですけれども、こういったものは一応計算上、給付ではありますけれども実質負担をなくしているということで、計算上入れて課税最低限の計算を行っております。

ただ、そこは今、御指摘があったように、いろんな考え方ができると思います。例えばイギリスの制度と似た制度で、では日本の場合、児童手当を考えないのかとか、そういった議論はあると思いますので、ちょっと御時間をいただきまして、次回、整理してまた御説明をさせていただければと思います。

中里特別委員

よろしくお願いします。

水野主査

よろしいでしょうか。それでは、井戸委員、井堀委員、お願いします。

井戸特別委員

まず、やはり会長のお話ではありませんけれども、格差に対して何も考慮しないのはいかがだろうかと思いますし、現に先ほど横山先生から御指摘いただいたように、1,000万以上の人が41%負担しているということをどう評価するかというと、もっと負担していってもいいのに41%しか負担してないという評価だってあり得るわけで、そういう意味からすると、累進度を上げるというのは1つの選択だろうと思います。

もう一つ、給与所得控除についても、1億円の方に一律5%がそのまま適用になるというのは、やはりおかしいので、どこかで限界を引くべきだと私自身も思います。

もう一つ、課税最低限の問題をどう考えるか。これは、どちらの制度が悪いのかわからないんですが、生活保護費の支給基準の方が課税最低限より高い。あるいは生活保護費の方が基礎年金の給付よりも高いとか、こういうのに対して、どういうふうに整合性を制度として取っていくのかということは、どうしても避けて通れない課題ではないかと思います。

これは、私が人間が古いからかもしれませんけれども、どうしても二元的所得税というのがよくわからないんです。なぜかというと、担税力という観点からすると、給与所得よりも配当だとか、利子とか、額に汗しないで勝手に入ってくる所得の方が税率が低い方が望ましくて、額に汗して稼ぐ勤労所得の方が累進で高い負担をした方がいいんだという発想はもう全く理解できないんです。額に汗をしない、非勤労性の所得こそ税負担を高くすべきなので、その辺の議論を、少なくとも平等にしようではないかというのが、総合課税の考え方だったと思うんです。

ところが、税務執行上の課題で、総合課税しようとしてもなかなかつかまらない所得がたくさん出てきたので、それでつかまえやすくしようではないかという発想で金融所得一元化論が出てきている。これは論理的な話ではなくて、要はつかまえられるかどうかというような話からの制度的な議論ではないかと思っているんです。現実それはやむを得ないところがあると思いますが、ただ、余りにも、例えば10%なんていう水準は低過ぎるし、私はもし分離課税をするなら累進課税を入れてもいい、それこそ1,000万以上の利子とか配当、あるいは不動産もその一群に入るかもしれませんが、そういう所得の人には2倍取れとか。そういう税率を2倍にするというような緩い形の累進課税制度を入れるべきではないかと逆に思っております。それの方が、どうも公平感に徹しているんではないかと思います。社会的公正も実現できるんではないかと思います。

今、非常に格差が目立つのは、給与所得の差で格差が感じているんではなくて、財産系の所得、金融所得等の偏在で格差を感じているのが多いのではないかと思います。

貯蓄から投資という言い方は、非常にいいかげんな言い方でございまして、何がいいかげんかというと、貯蓄で間接金融のときの方が、逆に言いますと集中投資をやろうと思ったらできたんです。ところが、直接投資になったらどこに投資するかの操作がなかなか効かない。そういう経済をいい経済だと言えるのか。あるいは経済政策としていいと言えるのかどうかという議論も、きちんとしておく必要があるのではないか。単に間接金融がだめだだめだと言うだけでは、どうも実証的な議論になってないのではないか。政策論して使用されているだけではないかという感じが、私はいたしております。

もう一つ、あえて付け加えれば、所得課税か消費課税のどちらが投資に対していいんだろうか。それは所得課税は所得から負担を求めますから、投資の内部留保が減るという意味で、消費税はそういう負担はありませんので、消費税の方がいいというのは当たり前のことで、その当たり前のことを強調して、所得課税を軽減して消費課税を上げればいいんだという議論がよくなされますけれども、これも全く理解できないし、そういう主張で本当にいいんだろうかと思っております。総論的な議論にすぎましたが、以上です。

水野主査

ありがとうございます。

井堀委員、どうぞ。

井堀委員

今までの御意見を伺っていますと、累進税率を上げて再分配を強化する方が望ましいという意見が結構出ていますので、税の議論というのはバランス感覚が大事だと思いますので、私はあえて、そのバランス感覚ということで別の観点から議論させていただければと思います。

確かに格差の問題を考えたときの1つのテーマは、だれが社会的な弱者であるのかということを、税の世界できちんと対象を絞ることができるかどうか。これが非常に難しいという点だと思います。

今日の議論になっている勤労所得税のレベルで、極端に累進的に再分配を効かせたとして、それが本当に社会全体の必要な再分配にとって、どのぐらい役立つのかという点では、かなり留保が必要ではないかと思います。

今日出てきた事務局の資料の14ページの図なんですけれども、給付つき税額控除のイメージの図、これは我々、財政学をやっている者が大学の講義で学生に使っているような図と同じなので、非常に理論としてはすっきりしているんですけれども、この図が言っていることというのは、税負担を課税最低限以上の人から取ってきて、それを給付という形で再分配しているわけですけれども、この図は税曲線が直線なんです。ということは、要するに累進度が全然上がらないフラットな所得税体系であっても再分配はできる。要するに所得の高い人から取ってきて、それを所得の低い人に再分配することはできるので、問題は課税最低限よりも、上の方からどのぐらいたくさん税収を確保できて、それを課税最低限以下の、あるいは所得税の課税ベースから落ちているような社会的弱者に有効にそれを使えるか。そこが格差問題のポイントだと思いますので、いかに税収を稼げる人からきちんと取れるかということだと思うんですが、そのときに往々にして、今の所得を前提にして、それが動かないという下で税率を上げれば、どのぐらい税率を上げれば税収が増えるかという計算はできるんですが、経済の実態というのは税率を変えれば、当然課税ベースが動きますので、そこまで議論してやらないと、結果として税率を上げても余り税収が増えないままに、かえってディストーションといいますか、マイナスの副作用の方が多くなってしまう可能性があると思います。

累進的な所得税が悪いと言っているわけではないんですけれども、最高税率が50%というのは、普通の再分配の価値判断からすれば十分に高いと思いますので、それを上げてまで再分配を強化することのメリットとデメリットを考えると、むしろデメリットの方が大きいのではないかと思います。

最後ですけれども、給付つき税額控除について若干補足しますと、今日の水野委員の資料のところで、5つぐらい留保点を挙げられていて、それはそれで非常にもっともらしくて、こういった点をきちんと詰める必要があると思うんですけれども、もう一つ所得税をベースにして給付をするときの難点は、所得というのは御存じのように変動しますので、毎年、毎年安定的に所得が発生しないケースのときに、その年の所得がたまたま低いときに自動的に給付が行われるというのは、必ずしも合理的でない可能性があるわけです。

例えば毎年、毎年700万の年収の人は、当然この給付の対象からは外れるわけでけれども、ある年、年収が200万で、次の年に年収が1,200万としますと、2年で平均すると700万ですけれども、年収が200万のときには当然課税最低限以下ですから落ちるわけです。所得というのは非常に変動しやすいので、その年だけの所得をターゲットにして給付してしまうということは、かなり不公平感をもたらしますので、その意味ではこれをやるとすれば対象を限定すると、課税ベースとなる所得がある程度その人の経済力をきちんと反映するようなものに工夫する。例えばその年の所得ではなくて、過去の経年の所得の平均値を用いるとか、何らかの工夫をしない限りは、これをやると相当な不公平感をもたらすのではないかと思います。

その意味で生活保護というのは、いろんな資産テストをかけているのは、それはそれで非常に不公平感もあるんですけれども、逆に言うと、その年の所得というのは、クロヨンの問題を差し置いてそれ以外の面でも、いろいろと問題が多いということを反映しているんではないかと思います。

水野主査

ありがとうございました。

横山委員は先ほどお話しされたので、ちょっとお待ちいただけますか。それでは、増渕委員、上月委員、大橋委員、御船委員、永瀬委員、北村委員、それで横山委員とまいります。

増渕委員

それでは、ごく手短になんですが、今の井堀委員のお話の全般とある意味同じことになろうかと思いますが、所得税の話を考えるときに、所得税としてどのぐらいのものを確保するかということを当然念頭に置かなければいけないわけですが、最高税率の話を考えると同時に、いろんな控除が適切な規模であるんだろうかということを併せて考える必要があります。

この所得税の就業者6,400万人の中で、納税者が5,000万人、非納税者が1,300万人、1,300万人も所得税を納めてない人がいるということで、これは課税最低限の話だと思いますが、これはいいバランスなんだろうかということも考える必要があると思います。

ですから、最高税率の話をしては具合が悪いということでは全くないんですけれども、併せて控除、課税最低限の両方を考えるべきだということを指摘したいと思います。

水野主査

ありがとうございました。

上月委員、お願いします。

上月特別委員

時間がありませんので、手短に申し上げます。所得の捕捉率の問題ですが、先ほど高木委員がいろいろおっしゃいましたけれども、私はここの25ページに出ています研究報告の結果、これが非常にありがたいと思うのは、1,000万を超えますと全部消費税がかかるようになりまして、事業所得者というのはほとんど今、課税漏れというのが起こらなくなってきているんではないかと、現場にいる者の実感として意見を申し上げます。

格差是正の問題から言いますと、給与所得控除の問題というのは、私も賛成です。それはやはり問題があると思います。

課税単位の問題、個人単位課税というものを徹底する必要があるんではないかという気がします。それから考えると、配偶者控除もそうですし、事業専従者の問題もあるんですが、これも今、働き方が非常に複雑になっておりますので、こういう問題についても見直しをする必要があると思います。

いろいろありますけれども、それだけにしておきます。

水野主査

ありがとうございました。

大橋委員、お願いします。

大橋特別委員

先ほどから給付つきの税額控除の問題について、いろいろ皆さんから議論が出ておりますので、その辺について一言だけ申し上げます。やはり所得課税のことを考えれば、いずれにしろ、消費税との問題を避けて通れなくなるので、この2つが本当はパッケージでいろんな議論が必要なんでしょうが、これは進行上どうしても今日は所得課税のお話をいただいているんだと思います。

私は、消費課税につきまして、これから議論がいろいろ出るんでしょうけれども、これを今後上げていく、税率を余り複雑にして、例えば食料品をどうするとか、このぐらいの年収の方についてはどうするとか、そういう消費課税についての複雑化というのは極力避けて、できれば単純一本化がいいだろうと思います。

そういうことを考えた場合に、消費課税が今、逆進的だという御意見があるわけです。必ずしもそれが本当に正しいかどうかということと別にして、逆進的ではないかという議論がございます。ですから、その辺をカバーするために、この給付つき税額控除というのは、非常に意味があるんではないかと思います。

これは、井堀先生もおっしゃるように、これを実際に取っていくときに、どういう形がいいのかとか、いろんな複雑な問題がございます。しかし、それは英知を絞って、ある程度の公平感があるようなことはできるんではないか。そうすれば消費課税を一本化して、逆進的といわれているような公平感の欠如を、これで補っていくというのが1つの考え方で、かつ香西会長もおっしゃっている格差是正につながっていくんではないかと考えております。

ありがとうございました。

水野主査

ありがとうございました。

こちら側に移りまして、北村委員、お願いします。

北村委員

出張で早く失礼するものですから、申し訳ありません。基本的に所得税の課税というのは、私も個人単位主義を貫けばいいのではないかと思っています。従いまして、先ほど意見が出ましたが、配偶者特別控除というのは、もう廃止してもいいのではないかと思います。

その代わりに私思うんですが、基礎控除が少な過ぎると思っているんです。基礎控除を引き上げて、特定扶養控除のあたりの引き上げをやっていきますと、それは別に子育てのためのということもあるかもしれませんが、やはり今、不安なのは、子どもをつくってしまって税制が変わってくるというのが、今まであったはずだと思っていたのがなくなるとか、逆は一向に構わないんですけれども、そうすると子どもがいるのにどうしようということになるのを、何とか考える必要があるんではないかと思っているんです。

あと給与所得控除がちょっと大き過ぎるというのは、確かにそのとおりだと思っています。ただ、1,000万円を超えて、また何千万円といったときに、給与所得控除をなくすというのは余り賛成しません。というのは、勤労意欲を損なわないような税でなければならないのではないかと、だから、ある一定のところに行ったら全然控除がありませんという形のものは、少しやめておいた方がいいのではないかと思っています。

大体、以上です。

水野主査

ありがとうございました。

永瀬委員、御船委員、あと御希望の方、よろしいでしょうか。それで、次のテーマに移らせていただきます。

永瀬特別委員

お配りいただいた資料の6ページに所得税の限界税率ブラケットというのがあるんですけれども、国際比較はとても難しいだろうとは思うんですが、これを見ますと、日本は納税者の6割の限界税率が5%ぐらいと見えてちょっと驚くんですが、かなり多くの人が非常に低い税を払っているということを見て、これはほかの国はぜんぜん払わない人が非常に多いためにこうなるのか、それともそうじゃなくて、ほかの国は全体に高いのかと思ったということです。

ほかの国に関していうと、恐らく全体に高くて、そしてその上で、例えば児童税額控除であるとか、今、話題になっている負の所得税であるとか、あるいは児童手当の給付も日本よりずっと高いですし、ですから、比較的全員に負担してもらって特定のところに戻すという形を考えるのかどうかということで、現在の低さでもって戻すということが、果たしてできるのかどうかということが一つあるのかなということがあります。

参考の方で、いただいた「企画19-4」の個人所得税の参考資料の4ページを見ますと、これも多くの人が分布しているのは大体1,200万ぐらいまでとしますと、このグラフは3,000万までのグラフになっているんですけれども、そういう状況だと。給与所得控除を引き上げるとすると、後ろの方が上がっていくんでしょうけれども、先ほど基礎控除を上げてという話があったんですけれども、前回から私がお話しています配偶者控除と配偶者特別控除については、こちらの11ページの方に資料がありまして、図で103~141万まで妻の課税所得が増加していく、そこのところで夫の課税所得も同じ比率で増加しているので、このグラフは2つの角度が同じで、もう少し高くなると思うんですけれども、141万まではかなり急速に課税所得が増加して、そこからやや傾きが2分1になる。税率で考えると、夫の税率の方が高いですから、103~141万まではかなり高い税率で増加して、そこから先は妻の税率になるという形になっているので、やはりいろいろ問題があると思いますが、そう一筋縄で行かない部分もあるんではないかとも思うんですけれども、全体的に考えて給与所得控除の問題から高いところだけではなくて低いところもいろいろ問題があるのかと思いまして、もう少し幅広く取るような形にしながら、例えば子どもがいていろいろと大変だというところについては、もっと返すような形があるのではないかと思います。

参考資料の15ページに「所得再分配によるジニ係数の変化」が出ていますが、それを見ますと社会保障による改善度がずっと進んでいるんですけれども、税による改善度はほとんど進んでいませんで、社会保障でもって若い人たちに出している部分というのは、雇用保険ぐらい、医療も母子世帯に対する手当もほんの少しあるかもしれませんけれども、基本的には若い世代にはほとんど再分配は行っていないということがわかりますので、そうしますと方法をどのような形で若い世代に出すのかということで負の所得税ということがいろいろ言われていたと思うんですけれども、一般的にただ入れると、それが若い世代に行くとも限らずに、いろんなところに行くような気がしてきて、これをどういうふうにするのか、またいろいろと難しいのかなと思いますが、全体的なところとしては若い世代にもっと再分配が行くようにする。それから、現在ある女性の働きにくさというものは解消するようにするということができるような、整合性があるようなものができればいいんではないかと思います。

水野主査

ありがとうございました。

御船委員、お願いします。

御船委員

抜本改革ということを前面に出すということが前提にあるとすると、非常に全体的にわかりやすいことをしなければいけない。そのときに、一方で税を減らす、一方で増やすというのは、本当に緻密な議論をすればそうなんだけれども、非常にわかりにくくなる。つまり増税が必要でしょうというのが基本的にある中で、減税というような形にシフトするときには、相当な説明責任を要するだろうと思います。

それでも逆に増税ということできちんとやっていくことが必要で、その中の1つの論理としては、やはり配偶者控除廃止という方向を前面に出した方がいいと考えています。

配偶者控除というのは、2つ意味があって、1つは若い人が子どもを育てているときに専業主婦になるということがあると思うんですが、そうではない段階があって、それを2つに分けなければいけないので、今、永瀬先生おっしゃったように、ちゃんと若い人で必要なところに給付が行くという形を税ではなくて給付という形で明確に分ける方がわかりやすいと思います。

税の方向性を見失わないような打ち出し方が必要だと思います。ただし、配偶者控除は、今、専業主婦の方が非常にいて、それをなくすことによって自分たちの存在を否定されているというふうに、ちょっとゆがんでとらえられる危険性があると思うんです。その辺は、かなり時代が変化して、家事というものの位置づけとか、ここには内助の功という考え方があるということですが、別に内助の功は自分のことは自分でやれば自分でやることになるわけで、ある1人の人が家事を一手に引き受けているということで、それで優遇される根拠は薄弱だと思いますので、1点だけそういうことを危惧と、やはり基本は進めていった方がいいんではないかという意見です。

以上です。

水野主査

ありがとうございました。

それでは、江上委員、お願いします。

江上委員

手短に申し上げます。今、永瀬委員や御船委員、あるいは北村委員がおっしゃったことと同じなんですけれども、私も一つは今後は個人別税制を徹底するという考え方でよろしいかと思います。

先ほど配偶者控除の考え方に内助の功という1つの論理があったということですが、専業主婦の仕事がシャードーワークと言われて、これを経済価値に置き換えると、たしか260万円ぐらいという試算も発表されたことがあると思います。そういう意味では、これからは個人を単位にする。

しかしながら、そこで子育てという機能について、どういうふうに社会的にカバーするのか。それは、給付や保育制度の社会的な支援というところで、今、内閣府の方でもワーク・ライフ・バランスという政策が出ておりますので、それを徹底していくことが重要だと思います。

特定扶養親族について、本人の所得要件が設けられていないんですけれども、これについては所得要件を設けてもよろしいのではないかと思っております。

先ほど井戸委員がおっしゃった大変重要なこと、やはり勤労によって得る所得課税を、所得に対する評価をきちっとしていくという国民的な価値は、非常に重要ではないかと思います。そういう意味では、今の若年者のこれからの働き方の傾向、職業選択等を見ておりましても、国がどういうふうな価値を持って税制を決めているのかということが、非常に重要な影響力を与えると思います。

以上です。

水野主査

ありがとうございました。

それでは、時間が押し迫っておりますが、次のテーマに移ります。薄い1枚紙のものでございますが「企画19-2」、私のレジュメですけれども、時間の関係で皆さん探している間にしゃべらせていただきます。「地方税における寄附金控除とふるさと納税」、選挙前から話題が出てまいりました問題ですが、これについて検討していただきたいと思います。

簡単に申し上げますが、1つには地方税における所得控除については、先ほどお話いただきましたけれども、いわゆる地域社会における会費であるとか応益課税の考え方が非常に強いわけですけれども、その中で寄附金控除については、所得税と比べてかなり限界がある。というか、範囲についても狭いし、また認められる最低限度額も高い。具体的には、所得税が5,000円ですけれども、住民税になりますと10万円以上でないと所得控除が受けられない。こういう問題がございます。

その中で公益法人のところでも申し上げましたように、いわゆる民間による公共という考え方が強くなってきますと、地方税に対する寄附控除の見直しが必要ではないか。これは従前から言われていることでございます。

もう一つが、寄附金控除と「ふるさと納税」の考え方ですけれども、「ふるさと納税」というのは、いわゆる住民税の算出された税額、これの一部を自分のふるさとに納付したいという形で、全体としての地方住民税額は変わらないわけですけれども、この一部をふるさとに納める。

「ふるさと納税」の研究会が総務省の下につくられまして、私もその一員でしたけれども、ここでは税制調査会ということで、ひとつ考えていただきたいんですけれども、論点としまして、ここに書きましたが問題提起は、今、申し上げましたように、納税額の一部をふるさとに納付する。これがどうなるんだろうかということです。従来から応益課税の話が出ておりますけれども、これをなかなか納税することにふるさとを課税の主体にして考えることは困難であるということがあるわけですけれども、その結果としまして出てまいりましたのが、いわゆる給付した分を住民税の税額から控除する。いわゆる、先ほどとは違った形ですけれども、税額控除として寄附した分を住民税から差し引くという考え方が方向で示されております。

詳しいことは、時間の制限がございますが、総務省の事務局の方でお願いいたします。

原田市町村税課長

それでは、市町村税課長でございます。「企画19-5」という、先ほど前半を説明させていただきましたが、15ページ以降に関係資料を付けさせていただいております。

15ページ、寄附金控除の全体像の中で、個人住民税は先ほど水野主査からもお話がありましたように、受益との対応関係が必要であるため、所得税に比べて極めて限定されたものになっているのが現状でございます。

16ページ、非営利法人ワーキンググループの中で、個人住民税の寄附金控除につきまして、真ん中辺りでございますけれども、国が一律に対象を定めることは分権の観点から慎重であるべき、また地域に密着した非営利法人等については、地方税においても寄附金控除が可能となるよう見直していくべき、また先ほども御指摘のありました現行10万円の適用下限額についても大幅に引き下げるべき、それと併せまして、その下にもございますように、基本的には条例などによりまして、地方公共団体によって独自に構築されるべきである。その際、受益の関係とか、自主性、事務負担にも留意するという指摘がなされております。

17ページ、所得税と個人住民税でございますが、先ほどもお話させていただきましたように、限定されているところでございます。

18ページ以下に、先ほど水野主査から御指摘のありました。ふるさと納税研究会の報告書のポイントを掲げさせていただいております。当時の総務大臣からの問題提起があり、骨太の方針の中でも、実現に向け検討するという位置づけがされておる「ふるさと納税」の部分でございますけれども、ふるさとの意義をそこに3つ掲げており、税関係ですと19ページでございますが、先ほどお話のありましたように、もともと寄附金税制が地方公共団体向けの寄附金は住民税において所得控除が現状されております。その中でのいろんな議論でございますけれども、1つはふるさという定義が人によってさまざまですので、限定をしない。納税者の意思にゆだねることが適当であるということ。

税を分割するという当初の問題提起につきましては、受益と負担の関係、課税権等々によりまして、やはり分割するという仕組みではなく寄附金税制を活用するようなことを考えるべき。

20ページが、具体的なところでございますけれども、国も一定の役割を担っていただくということで、所得税、住民税双方を対象にする。現行も双方から控除されているところでございます。

控除方法につきましては、住民税について税額控除方式、効果が実感しやすく、控除の効果を高めることが可能になるということでございます。

個別の課題としまして、税額控除の割合でございますが、所得税と合わせて適用下限額を超える部分の全額を控除する。割合は、都道府県民税、市町村民税の4対6の税率比。

ただ(3)でございますけれども、地域社会の会費という住民税の性格、負担の公平の視点から、全額控除の対象は所得割の1割を上限とするということ。

適用下限につきましては、現行10万円でございますけれども、5,000円に大幅に引き下げるべき。

手続の簡素化、また交付税においても現行と変わらない制度。

所得税との関係につきましても、研究会といたしましては、所得税も合わせて税額控除とされることが望ましいけれども、体系の中で検討が必要であり、所得税について現行制度が維持される場合には、所得税が所得控除、住民税は税額控除というような指摘で、所得税、住民税を合わせて全額控除させる仕組みとすることが適当。併せて地方団体も説明努力に努める。

このような報告をされておるところでございます。

以上でございます。

水野主査

ありがとうございました。この地方税における寄附金控除について、出口委員から1枚資料をいただいておりますが、出口委員、発言を手短にお願いします。

出口特別委員

ほかの方も御意見があろうかと思いますので、手短に申し上げます。

横長の資料をごらんいただいて、要は17年の基本的考え方だけでなく、それ以降に考慮すべき問題が出てきているということが四角に書いています。とりわけ「ふるさと納税」の研究会は、都道府県域を越える寄附を奨励する。これを納税という名称でしたから税額控除にするというのは、非常にわかりやすいんですが、都道府県域を越えるようなことをここで奨励しようとしているわけです。

それに対して、地域間格差とか認定法上のいろんなこと、とりわけ学校法人等と全く違うものが出ているということが大事なことでございまして、ここの下の図に現行のものを表示していますが、これは前回の12日にも申し上げましたので重なりますが、所得税は全部控除可能なものを図に出しております。一目瞭然ですが、企業から全部出れば、受益と負担の中でこれはこうなっているという理解なのかどうか、よくわかりませんが、個人の場合は地方公共団体には既に寄附金控除というのが特権的に与えられて、この中で「ふるさと納税」というのが議論された。それプラスαとして、今度、公益法人については、寄附がなければ公益法人はつぶれかねないという制度になっているわけで、これをどう考えるか。

例えば東京都の中で寄附が回れば、公益法人の方は非常にハッピーであるし、「ふるさと納税」の方は、東京都から長崎県に寄附すれば税額控除だと。ところが、長崎県立美術館というものがあるわけですが、ここに寄付する途端に、これは財団法人ですから、一方で財団法人で寄附しろと言っていながらどうなるんだという、いろんな問題があるということでございます。

やり方としては2つありまして、企業から出ている矢印は、受益と負担が大事ならば、これを全部点線にする方法もあると思うんです。そうではなくて、これは企業から出ている実線が、受益と負担の範囲にあるんであれば、当然個人から出ているのも実線にして、それは当然受益と負担の原則の範囲内であると。金額的には微々たるものでございますので、範囲内であるという理解も十分にできるのではないかと思います。

ちょっと早口で申し上げましたが、以上です。

水野主査

ありがとうございました。

中里委員、お願いします。

中里特別委員

私が新聞の報道等で見ていたものと感じが違うので、東京から長崎に「ふるさと納税」を回せば、長崎の税収が9万5,000円増えて、東京の税収が9万5,000円減って、5,000円はどうのという話だと思ったんですが、この説明ですと東京から長崎に税金を払うと国の税収が減るんですか。魔法のような話で、この5,000円分について寄附金控除なり何なりで国税が減るというならわかるんですが、ほかの部分について、この御説明だとよくわからないので、わかるようにというか。

水野主査

それでは、併せて、田近委員、お願いします。

田近委員

同じ質問なんですけれども、そもそもこれを読んで中里さんがわからないというんだから、私はそれ以上、今までのケースでは私が中里さんよりわかることはないと思います。

ただ、わからないというのは、水野さんの論点の重要なのは、寄附金控除と「ふるさと納税」の考え方で、議論になっていたのは住民税の納付額の一部をふるさとに納付するということがいいかどうか。今日いただいた資料の本論の方で、税を分割する方式の可否を含めと。それで結果として、税額控除にするならば、それは税を分割する仕組みにならないのかどうか。

今日、中里さんと私が共通しているのは、例えば所得が500万円の人が50万円をふるさとに寄附したら、その50万円のうち御本人は幾ら払って、あと国と地方がどれだけ負担してくれるんだというのを、ケースで出していただかないと、恐らくここにいる方は理解できないと思います。

あともう一つ言うと、私の思っている寄附金税制というのは非常に重要で、散々ここの場でも延々と議論してきて、非常に社会が成熟化してきて、個人あるいは会社等が公的な活動、社会的な活動に対して何かしたい。それを国は支援しましょうと。支援するというのは、非常にわかりやすい考え方で、税率が20%の人が仮に100万円寄附しましょうと。それを控除してくれるわけですから20万円返ってくる。そうすると、100万円の公共的なサービスが世の中に提供されるわけですけれども、御本人は80万円、国は20万円、そうすると国にとっては20万円で100万円の、こういうことを言ったら熱い志に水を差すかもしれませんけれども、国としては20万円でできた、御本人は80万円でできた、三方一両損ではないけれども二方得したという思いでやる。それが成熟化社会の一つの在り方かなと。

ただ、これで私が懸念することで、次回お示しいただきたいのは、仮に10万円でも寄附したときに、それをどうやって負担し合うのか、もしかすると、これは5,000円払っただけで、残りの9万円5,000円は丸々だれかに払ってもらうとすれば、果たしてそれが我々の散々議論してきた民間の公的なことに対する国の、あるいは地方の支援と言えるのかという寄附金税制との関係が一番根っこで、出口さんはいろいろ関係をおっしゃいましたけれども、私の方はある意味で寄附をみんなが支えて上げようという考え方とどう関係するのかお示し願いたいと思います。

水野主査

時間の関係で、原田課長、次回にその資料と御説明をお願いできますでしょうか。

原田市町村税課長

はい

水野主査

それでは、今、手を挙げた方に限らせていただきます。

井戸特別委員

水野先生の問題提起の中で、過去のサービスを根拠に課税できるのかという点が、我々の立場からすると非常に、今の時点だけの応益関係ではなくて、住民税を考える場合にも、生まれてから亡くなるまでの間の応益関係を考えてもいいのではないかというのが、この「ふるさと納税」議論の発想だったんだろうと思います。

ただ、いかにも課税権の帰属を納税者が決められるというのは、地方団体とは何かということが問われてしまうことにもなるので、さすがにそこまではようやらなかったということが結論で、寄附金税制を使おうかということになったんだと思うんですが、そうなってくるとまた応益関係をどういうふうに考えるのかというのが出てくるのではないか。それで複雑性が出てきたのではないかと思います。

これも国税に協力してくれと言っているよりは、現行制度でも国または地方公共団体に対する寄附金は、寄附金控除の対象になっていますから、その中に入れてちょうだいという話だと思います。ただ、ふるさと寄附金の場合だけは税額控除制度にして、その特異性を特色付けようとしている。現行制度でも、地方団体に対する寄附金は他の団体でも控除できる制度があるので、それがあるのに何であえてやるんだろうというと、税額控除にして「ふるさと納税」性を意識しようということで報告書がまとめられたんではないかと思います。ただ、仕掛けるのは税額控除にしないときっともたないのではないかと思っております。

更に付け加えさせていただきますと、今の住民税の控除制度との関係をどう整理するのかというのが、これが田近先生などの御疑問にもつながっているのではないかと思いますので、この点は是非事務当局から意見を伺わせていただければと思います。

出口先生の他の団体に出さないと、実質的な公益法人に対する寄附金税制としての促進にならないのではないかという点については、その受益関係との結び付きをどう考えるかという住民税独特の問題点があるんですが、乗り越えられないのかどうか、手段があるのかないのか。私は、実を言いますと指定寄附の制度、この寄附は何々団体に出す寄附なんですが、地方団体に寄附しますという仕掛けを活用すれば、普通負担付贈与を受ける場合に議決が要るんですけれども、議決を外して、指定寄附の制度を活用するということでも達成できるのではないかと思います。やはり応益課税の原則に、余りたくさんの例外をつくってしまうと住民税とは何だということになるので、そこの点は注意をしながら実質的な解決を図っていくということもあるのではないかと思っております。

水野主査

問題点の御指摘ありがとうございました。

それでは、松田委員、お願いします。

松田委員

この「ふるさと納税」は、大臣の方から絶対つくれという指示があってつくったんです。だから、実現性を考えるとこれしかつくりようがなかったと思います。寄附にするということ、ふるさとを特定しないということ、この2つがないと恐らく実現はできなかったと思います。

一つ私が心配しているのは、ふるさとを特定しなかったことによって、初年度、恐らくかなりの部分が夕張に行くんではないかと思います。要するに、放漫な財政をやって、惨めな状況になって、それがテレビなどで注目された自治体ほど、この寄附が集まる。

恐らくそういう自治体は、小規模な自治体でしょうから、一発寄附が集まってしまうと問題が全部解決できてしまう可能性があるんです。それぐらいの規模になるものだと思うんです。

となると、モラルハザードをすごく助長する制度になるような感じがしていまして、ただ、こういう政治状況になったので多分導入されないと思いますからいいんですけれども、この辺が欠点だと思います。

以上です。

水野主査

ありがとうございました。

次に、井堀委員、お願いします。

井堀委員

ありがとうございます。簡単にですけれども、寄附税制の中に「ふるさと納税」を入れ込もうとしたので、税額控除100%という、ほかの寄附税制と比べて相当違和感があるので、そこの整合性を取るのがかなり難しいと思います。

1つ質問なんですけれども、交付税の扱いなんですが、寄附を受けた地方団体に関しては交付税は減少しない措置をして、減少したところは減少分を算定するというか、結果として交付税が増えるということで、そうすると国からの持ち出しということになるので、これは全体から見ると必ずしもいいのかどうかという別な議論もあると思います。

水野主査

今の点いかがですか。

原田市町村税課長

部分的に団体で見ますと、まさにそういうことはあるんですけれども、それは交付税総額全体の話とも絡まってまいりますので、個々の団体だけ見て出て入ってくるというところで、その部分だけをつかまえれば交付税は増えていますけれども、交付税制度の総額というのはまた別のところで決まっておりますから、そこは変わらないと思っております。それは、また次回に含めて御説明させていただきたいと思います。

水野主査

お願いいたします。

江上委員、お願いします。

江上委員

「ふるさと納税」の議論は、先ほど大臣がおっしゃったというふうなことですけれども、コンセプトとしては非常にわかるんですが、かなり情緒的なところから議論が始まって、寄附金税制を適用して検討されたということで、では実際、これを実施した場合、インセンティブとしてどのぐらいの効果があるのか。5,000円以上寄附する人がどのぐらいいるのか。そういう事前の調査とかシミュレーション、そういったものをした上でこういう制度を検討しているのかどうか。そこが一番気にかかるところです。

寄附金税制をかえって複雑にすることによって、こういうふうに対象別に次々につくっていくということも非常に懸念しております。

水野主査

ありがとうございました。今のは総務省から回答いただきますか。それでは、御意見ということでお願いします。

不手際で時間が過ぎてしまいまして申し訳ございませんが、所得税につきましていろいろ御意見をいただきましたので、とりまとめさせていただくようにします。どうもありがとうございました。

香西会長

大変長い時間、活発に御議論をいただきまして、本当にありがとうございました。今回は、所得課税について2度目ということですけれども、3度目とかやっている時間がだんだんなくなってきておりますので、言い足りなかった方もあるかと思いますが、現在の問題も更にもう一回総務省からも御説明いただけるそうですけれども、いろいろ疑問等がありましたら、事務局の方におっしゃっていただきたい。こういう意見があるということをメモでもメールでも御連絡いただければ大変ありがたいと思っております。

例えば例の給付付きの税額控除に対しても、具体的にはどんな提案があるかということについても、もし必要でしたら事務局の方へ問い合わせていただければ、例えば田近さんのこういう論文があるとか、そういうことはお答えしたいと思いますので、是非御検討いただきたいと思います。

本日は大変長い時間かかりましたが、更にまたそのために水野先生には、事前の準備から本日のとりまとめまで御議論いただきまして、大変ありがとうございました。関係各省にも資料の準備や本日の議論に参加していただいて、大変ありがたかったということで、御努力に対して感謝をいたしております。

最後に、今後のスケジュールについて御連絡したいと思います。次回以降の日程につきましては、たしか御案内していると思いますが、10月30日火曜日の午後1時30分~3時30分までということで、議題としては経済財政総論という形にしております。歳出も含め、国債の累積も含めまして、日本の置かれた経済あるいは財政全体の中で我々の税制調査会の議論はどういうふうにあるべきかということについての議論をしたいと思います。

その次は11月2日金曜日の午後1時30分から、これは同じ週になるわけですが、議題としては消費課税を予定しております。

更にその次でありますけれども、11月5日月曜日を予定しております。時間については、現在、最後の調整中でございますが、今のところは午後1時~4時までと考えておりますが、仮押さえしておいていただければ大変ありがたく思います。時間等は確定次第、事務局より連絡していただきたいと思います。

それでは、本日の「企画会合」はこれで終わりにしたいと思います。皆様、最後まで頑張っていただいて、どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。