企画会合(第18回)終了後の香西会長・田近主査・辻山主査記者会見録
日時:平成19年10月16日(火) 16時57分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
ただいまから第18回企画会合終了後の記者会見を行います。
まず始めに、本日は田近委員と辻山委員が主査として本会見に出席させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
〇質問
4点ほどあって、それぞれお三方に幾つかお願いいたします。
まず、田近先生に2点お願いします。
1つは、相続税の課税ベースの拡大という話が出ていたと思うのですけれども、今日の議論を聞いている限り、そういう意見が多かったかなと思うのです。田近先生もそういうお考えのようなのですが、そういう方向で今のところお考えになられているのかどうか、これが1点。
それから、事業承継税制は、比較的軽くしようという方向で考えておられる。答申のほうに盛り込まれる可能性があるのかどうか。この2点をお願いします。
それから、香西会長には、証券税制の軽減税率ですけれども、これは今回でお話し合いが終わるのかどうか、もう一回やるのかどうか。要するに今日ある程度もうこの会合で終わって、いきなり答申で結論を出すのかどうか、この点をお願いします。
それから、辻山先生には、社会保障カードと住基ネットの点について、今日は住民基本台帳の方の番号を使うべきだというお話が多かったと思うのですけれども、今後の議論の展開としてどのように持っていくのか、もう一回あるのかどうか、ちょっとわからないのですけれども、これをどのように答申のほうに反映されるのか、この1点をお願いします。
以上です。お願いします。
〇田近主査
2点、相続税の控除をどうするか、それから、承継税制が答申でどう盛り込まれるかというご質問だったと思いますけれども、相続税のところで私が議論してもらいたかったのは、吉川さん、それから横山さんがフォローアップしてくれましたけど、やはり資産格差の是正という伝統的な相続税の役割は十分認めるとして、今日的な課題として、老後扶養というか、生涯にわたって社会から受けてきた給付に対して、どうそれを負担するかというところで相続税というのは考えられないかと。
これに関しては、少なくとも反対の人はいなかったというか、そういう考え方が相続税の今日的な意味で役割があるのかなと。そういう観点に立てば、今の控除額はいかがなものかと。実際、5,000万+1,000万×人数、そして宅地はかなりかからないというようなところ、あと税率ですよね。そこは見直しというか、続きの議論では私はあり得ると思っています。
それから、承継税制のほうは、今日の日経新聞がたまたまああいう形で出たので、税調は事業承継の非上場株の取り扱いについて、もっと非課税部分を大きくするのではないかとか、そういう観測で書かれていたと思うのですけど、議論としては、事業承継を含めて相続税全体のフレームワークで考えようと。そこで、先ほどの第1の論点の控除の問題もやはりある。
実は、あれをご覧になっていただくとわかるように、控除も大きくなったと同時に、事業用の土地の非課税80%というのもしてきて、そういう事業承継に対して配慮もある程度している。それにさらにどうするかというのは、今日はもちろん答えは出ていませんでしたけれども、税調としてそれを拡大するとかいう形で意見は収束してはいなかったと思います。どう引き取るかというのは、今日これだけの議論で答えが出るわけではなくて、さらに考えたい。しかし、ポイントは相続税全体の中で事業承継税制を考えるということだと思います。
〇香西会長
金融所得課税については、田近さんのほうで答えてくれるかと思ったら、こっちへ飛んできたみたいな感じですが、お話があったように、もうすっと答申へ進むのですかとおっしゃったけれども、答申というのはすっと書けるわけではなくて、やはりだれかが案を作って、それをまたどこかで叩いて、それでまた会議をやって、ということになることは間違いないわけですね。したがって、今のような形で個別やっている中でもう一回やることができるかどうかというのは、むしろ時間の問題にもかなり影響を受けるわけです。
ただ、私の感じとしては、問題はもう税調は議論し尽くしてしまったぐらいやった。私はいなかったのですけれども、やった問題であって、変わるのなら変わる理由は何だということを今度は逆に考えなければいけないところに来ているのだろうと思っているのですけれども、まあ今日も、しかし、そうはいっても株が下がったら困るだろうというご意見もあったわけですね。
したがって、何回やるかということでは、時間がなければ、答申を起草して、その中に答えが書いてあるという形になって、そのことだけの項目の企画会合はないかもしれない。それはもう時間の問題だと思いますが、今日申し上げましたように、大体今月中に各税目の議論は一巡する。若干の総論も加えてするということには大体なるのではないかと思います。
大体そんなところで、よろしいでしょうか。
〇辻山主査
まず、今日の議論の中では、住民基本台帳の番号が割と優勢だったのですけれども、これ自体が法的な情報開示についての規制が今かかっているところですので、社会保障番号との関係がまだこれから整理されていく中で、ですから今日のところは住民基本台帳の番号を支持するという議論がありましたけれども、これが直ちに納税者番号制度について有力な候補だというふうには私は受けとめなかったのです。
今日のメッセージは、納税者番号でもそうですし、社会保障番号でもそうですけれども、新しい番号をもう一度振るということは、社会的なコストが大きいだろう。ですから、何か今までの番号を利用して、ただし、もう少し国民にとってメリットがあるような、要するにその番号を自分が持つことによって、何らかのメリットが感じられるような番号にしていったらどうなのかというのが委員のメッセージだったのではないかなと受けとめました。
それから、もう一つ、ご質問にはなかったのですけれども、納番というのを議論する時に、番号があるといろいろなことができるというのは少し幻想だろうということですね。今回の答申では、できることがどういうことなのか、今日は説明にもありましたけれども、資料情報があって初めて資料の名寄せというのができるわけですから、番号が入るだけで資料がたくさんそれに付くということではないでしょうということだと思うのです。その辺は少し細かく分けて多分答申には書かれるのかなと思っています。
〇質問
田近先生に確認でちょっとお伺いしたいのですが、証券税制の議論の最後の先生のまとめのところで、この問題はこれで決着して、次のステップに行ったらいいかな、みたいなことをおっしゃっていたのですけれども、決着したとは、つまり軽減税率を戻すということについては、委員の皆さんからは賛成あるいは異論がなかったということで、そこはこの会合としてはいいと。まずそういう理解でいいのかどうか。
それから、次のステップというのは、具体的にどの辺の話を指しているのか。例えば、今日の委員の中からも、現実問題、株価の影響を考えたほうがいいのではないかとか、あるいは、長期的な保有を別途考える余地があるのではないかとか、そういう意見もありましたけれども、そういった部分のことを指しているのか。それとも損益通算の範囲とか、その辺をイメージされているのか、その辺をお伺いしたいのですが。
〇田近主査
まず、若干専門的なところもあるので、答えが不十分だったり、おわかりにくければもう一回聞いていただくとして、軽減税率の話は、1年延ばして今度終わるわけですけれども、これについては、今回は留意する点があるという意見も最後にありましたけど、今日の出席者の範囲の中で、特段これに対して強い反論をとなえた人はいなかったと、まあ聞き方でしょうけど、そういう印象は持ちました。
あと、私が個人的な考えも言ってしまったのかもしれませんけども、次の段階に行きたいというのは、私のまとめでは、金融所得課税の一体化という議論を次の本格的な議論として進めるべきだと。ただ、これは税調の中でもう一体化についての基本的な考え方が示されていて、その辺のことを踏まえて議論したらどうだと。
あと、専門的というのは、飯塚さんのご質問とか、それに対する私の答えもしましたけれども、企業が所得を得てから最終的に個人が受け取るまで、総体としての税をどう考えるかという議論を税調としても今後しっかり踏まえて、そして、その結果として金融所得の一体化をやる。そういう意味で本格的な議論と言ったつもりです。
〇質問
香西先生と田近先生にそれぞれお伺いします。さっきの事業承継の絡みで再度の質問になってしまうのですけれども、両論それぞれ強い意見もあって、その中で香西さんも一委員としてということで、世襲というのにこだわるのはちょっとおかしいのではないかという問題提起をされていらっしゃいました。この問題は、当座、今年末に向けたテーマの一つだと思うのですけれども、政府税調としてどのような方向性を出していこうとお考えなのか、お聞かせいただけないでしょうか。
〇香西会長
つまり、少子化がどんどん進んできているから、子どもに伝えようと思っても、子どもの数が少ないわけですから、血縁だけでやっていったら、むしろ事業承継というのは必ずしもうまくいかないので、それなら別の人、従来の雇用していた人でもいいでしょうし、養子でもいいでしょうし、この人がいいと思ったらその人を入れる、あるいは信託に頼んでもいいのでしょうし、とにかく事業の承継をするということが大事なのだったら、そのことも考えてもいいのではないかと私は言ったので、別段、家族主義を根本からつぶさなければいけないと言っているわけでは決してないのですよ。だけど、やはりオープンドアにしないと、なかなか承継者は探しにくいでしょうと、むしろ逆にそういうふうに私は考えておりますので、そういう点も配慮することも必要なのではないですかということをちょっと考えているということで、あくまで一委員の見解でありますので、これで政府税調をそのほうにリードしようとまでは思っているわけではないのですけれども、そういう視点もあってもいいのではないかと思います。
〇田近主査
その部分は前提だとして、さっき言ったように、高齢化社会の中で相続税をどう考えるかという土俵がまずあって、その中でさらに中小企業の人たちの事業承継をどう考えるか。正直言って、もうちょっと状況を知りたいなというか、聞きたいなと。これだけ次に手渡したいのだけど、これでこんなに問題でできないと。
それで、今日、井上さんがおっしゃったのは、本当に雇用がなくなってしまうのかどうか。そういうある意味で切実な問題というのか、それを議論する上で知りたいというか、シェアすることも踏まえて、もう少し検討という気で私はいます。
〇質問
会長に個人の委員としてのお考えをお伺いしたいのですけれども、世襲にこだわらないというのは、非上場株の取得者の要件を見直すという意味なのか、それとも、制度的にそういったものを入れたほうがいいというのか、その辺をお伺いしたいのですが。
〇香西会長
まだそんな細かいところまでは考えておりません。世襲だけにこだわる必要はない。むしろインセンティブをいろいろ考える。そうすると、税の問題ではなくなるかもしれませんよね。
それから、税で言えば、企業再編税制というのもあるわけですから、それとのバランスとか、そういったことをいろいろ考えてみたらどうかと思っています。それも個人のアイデアで、すみません。
〇辻山主査
要件の緩和ということはおっしゃっていない、というふうに私は理解しています。
〇質問
金融税制ですけれども、証券税制の打ち切り期限が来年末、それから来年度末に来るのですが、それとあわせて金融一体課税を導入されようとお考えなのか、その辺のスケジュール感を知りたいのですけれども。
〇田近主査
僕も知りたいなと思う感じですけど、大分議論してきた点ですよね。だから、まさにこれから税調でどういうスケジュールでどこまでできるかは議論して、この段階で少なくとも私の、今日はイシューを議論して、討論するという役割をしているわけで、税調の行方まではここではお答えできない。むしろ僕も知りたいなというような感じです。
〇質問
投資の環境から考えて証券税制を打ち切られた時に、ぽこっと20%に上がって、それがしばらく続いて一体課税にいくというような二段階的なやり方がいいのか、それとも、市場の環境から考えると、速やかに一体課税に移行したほうがいいのか、この辺はどういうお考えなのでしょうか。
〇田近主査
個人的にはいろいろ考えますけど、今のご質問も含めて非常に重要なご指摘なので、つまり、軽減税率を変えるスケジュールと一体改革のスケジュールを含めてどうするか。これは税調のマターとして考える。私の立場から言えば、考えるべき問題だと、こう思います。
〇質問
辻山委員にちょっとお尋ねしたいのですけれども、今日、納税者番号の議論がけっこう活発に交わされていて、基本的にこういうのはあったほうがいいということで、共通認識なのかなと思うのですけれども、昨年もそうだし、かねてからそういう意見は強いわけですけれども、とはいっても、実際これはなかなか政治的な決断力も必要になる性質の事柄でして、なかなか実現しないで今に至っている。今年の答申では、何かさらに従来よりも一歩踏み込んだような書きぶりにしようというお考えなのか、その辺はどのようなイメージでしょうか。
〇辻山主査
この問題は、諮問会議でもこれまで以上に具体的な制度として踏み込むべきだと、そういうことが書かれているわけですけれども、従来、かなり抽象度の高いレベルで賛成論、反対論があったと思うのです。反対論は、典型的にはプライバシーの侵害に当たるとか、あるいは賛成論は、納税者番号を導入すると、所得の捕捉率が直ちに上がるのではないかと。
ですから、その辺のことについて、もし今年の答申に盛り込むとしたら、要するに納税者番号が入っても、今までの名寄せが番号でできるというレベルのものですので、その辺の何ができて、何ができないのか。そうすると、反対というのは、いわゆるパーセプションといいますか、本当の意味があったのかということも少しクリアになりますので、その辺に踏み込んで、具体的なことを少し答申の中に書き込むということで、半歩でも一歩でも前向きな姿勢を示すという趣旨で考えております。
〇質問
その関連でもう一つ、今日は時間が限られていたので、話題に出ませんでしたけど、脱税の罰則についても何か答申でイメージはあるのでしょうか。
〇辻山主査
それは、私はあまりイメージは個人的にはございませんが、他の金融犯罪が厳しくなっている中で、税調の中でも出ましたけれども、昭和56年が最後の改正ということで、いわゆる抑止効果のあるような見直しが少しあってもいいのかなというのは、個人的には思っておりますが、具体的な、定量的な、どこがいいかという、そういうことに対するイメージは持っておりません。
〇質問
香西会長にお伺いをしたいのですが、今、田近先生のほうから、証券税制のお話で、軽減税率の話は特に強い反対はなかったという印象を持ちましたと。これからは一体化の問題を本格的に進めるべきだということをおっしゃったのですけれども、会長は今日の議論を聞いていて、同じような認識を持たれましたか。
〇香西会長
私は、証券税制というと、すぐ優遇というか、株屋さんを助けているとか、そういうイメージでみんな受け取っていると思うのですけれども、私はやはりそうではなくて、ああいう形で金融商品がいろいろ多様化しているけれども、それを損益通算もできるようになるというような形で、日本の投資のリスクテイキングを容易にする、そういう意味で経済を活性化させる力があるはずだというふうに考えて、それが一番のメリットではないかと思っているわけです。金融商品が多様化すればするほど、一体化して扱うとか、損益通算の幅をだんだん広げていくとか、そういうことがむしろ、そのためにやっているので、別段、証券会社に儲けさせようと思ってそういうことを言っているわけではないのではないかと。そういった点で、いきなり優遇税制と頭から言われると、そういう話ではないのではないかと、言いたくてうずうずしているところがあるということです。
〇質問
今の会長のおっしゃることはよくわかったのですけれども、一つ焦点というか、まさに軽減税率の期限というのが来年度中に来るので、それをどうするかというのは、一つ世間的に大きな関心があるので、政府税調としては、先ほど田近先生がおっしゃったように、そこは軽減税率を廃止するということで、強い反論はなかったという受けとめでよろしいかということを確認させてください。
〇香西会長
現時点ではそういうことでしょうね。これは去年の暮れに答申したのと情勢が同じだとすれば、同じ答申になることについては反対がなかったというふうに私は思いますけれども、何か知らないけれども、大きな経済情勢の変化が起こることがあるかもしれないわけですから、それは今決めることではないと思っているわけです。
〇司会
ほかにございますか。よろしいですか。
それでは、これで記者会見を終了させていただきます。(了)