企画会合(第18回)議事録

日時:平成19年10月16日(火)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

ただいまから「税制調査会第18回企画会合」を開催いたします。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

本日の議事でございますけれども、本日は資産課税と納税環境整備の2つを議題として審議を行います。資産課税については田近委員に、また、納税環境整備につきましては辻山委員に問題の整理と議事進行をお願いしております。

大まかな時間割でございますけれども、本日は一応、全体で2時間半を予定しておりまして、最初に資産課税を100分程度、次に納税環境整備を50分程度ということで大まかに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

それでは、田近委員からお願いいたします。

田近主査

それでは、今日の議題に入りたいと思います。

まず、この資産課税については、前半で相続税と固定資産税、後半で金融証券税制という2つに分けてやりたいと思います。時間的には相続税と固定資産税のところで70分ぐらい、そして、金融証券税制で30分ぐらいということで、盛りだくさんの話題になっています。

早速、資料を確認しながら始めさせていただきますけれども、私の担当するテーマの論点メモとしては「企画18-1」の「資産課税(相続税)論点メモ」と、続いて「企画18-2」の「地方の資産課税論点メモ」が対象になっています。

それでは、お手元に置いていただきたいのは「企画18-1」の「資産課税(相続税)論点メモ」。それから、資料の方が「企画18-3」の「資料(相続税関係)」。この2つをお手元に置いていただければと思います。

少しスタイルを、できるだけ多く議論していただきたいということで、こんなふうに進めさせていただきたいんですけれども、メモと資料を同時に見ていただきながら、まずメモの方の「課税の状況と改革の視点」ということで、相続税の課税の状態が一体どうなっているのか。それから、資産保有がどうなっているのか。そういう中で、今、我々はある意味で抜本改革を意識してやっていますから、抜本改革を視野に置いたときに、今日のテーマである相続税をどう考えるのかというようなことまで私の方からやらせていただきたいと思っています。そして「制度の現状と問題点」ということで事務局から。そこまでのラウンドで相続税ということで進めさせていただきます。

基本的には資料の方を見ていただきながらかと思いますけれども、初めにどういう視点でこの相続税の議論をここで取り上げるべきなのか。こう思うんですけれども、高齢社会の中で相続税というのはだんだん重要な位置を占めるんですけれども、やはり我々の置かれた高齢化社会の中で、この税がどういう役割を果たすのか。視点的なことを言うと、勿論、格差是正も重要ですけれども、やはり死んだときに、ある意味で生涯にわたって社会から受けてきたさまざまな給付に対する調整、支払いという視点も大切なのではないか。

つまり、これだけ社会福祉が充実してきて、年金だ、医療だ、介護だと。さまざまな中で公的な負担がされている。その負担の多くは若い人に社会保険料等々でツケが回ってくる。その若い人たちもなかなか耐えられなくなってくるという中で、相続税というのはやはり生涯にわたった負担の公平を担うことなんだというようなことを論点として提示させていただきたいと思っています。

あと、税の世界ではよく、悪魔はディティールのところに潜むといいますけれども、要するに大きな話ばかりしていてもいけないので、制度上、具体的に何が問題かというのは事務局の方に説明していただくという感じです。したがいまして、横長の資料から始めさせていただきます。

まず、相続税の課税の状況はどうなっているのか。1ページです。

これは、今までも事務局から、あるいはいろんなところで説明がありますけれども、国税収入は足下の平成19年度で53兆円とあります。相続税は1兆5,000億円ということで、バブルのときは大変大きかったということもありますけれども、国税の3%を切っているということです。

続けて行かせていただきますけれども、2ページは、もう少しそれを亡くなられた人の数とか、相続額、残された資産の額との見合いで見ようということです。

ここで「死亡者数・課税件数等」ということで、当然、大変上がっているわけですけれども、死亡者数が昭和58年が74万人、今は100万人ということで増えています。それに対して課税割合はということで、これも皆さん御承知だと思いますけれども、下がっている。

課税価格。税の用語ですけれども、ざくっと言って、相続した額です。ただ、相続した額から土地とかその辺の評価を除いていますから、必ずしもこれがある意味で現実をきちんと表した相続財産ではないんですけれども、それは株価を反映して下がっている。ただ、申し上げたように、これがどれだけ実際の額かというのは多少精査するところがあります。

そして、相続税額というものが、この試算からは納付税額ですけれども、それを割ってみると、大分下がっているというようなことです。

時間が限られていますので、少し省かせていただくとして、4ページは残された財産がどういう構成になっているのか。ご覧のとおり、土地が次第に減って、有価証券、現金・預貯金等が増えているということがおわかりになると思います。

それから、5ページの家計資産はこれだけ厚くなってきているということは、これで見ていただく。

あとは、資産の前に金融の貯蓄マイナス負債、ネットで一体、家計がどのぐらい持っているか。これは全国消費実態調査ですけれども、全世帯で見て、平成16年度、2004年で1,000万円程度。それに対して、高齢者の方が2,000万円。高齢者の方が遺産を残すわけですけれども、そういう形になっている。

7ページの辺りは、同じく全国消費実態調査ですけれども、これは年齢階級別に見て、左側の色が濃いのが金融資産、背が高いのが実物資産、そして、借金ということで、今、申し上げた年齢階層別のものが示されている。

そして、8ページも言わずもがなではあるんですけれども、遺産をもらった人を考えましょう。そこで、その人たちの年間の収入を横軸にとりましょう。そうして遺産として受け取った家とかそういうもので、どれぐらい広い家に住んでいるんですか?

そこでご覧になっていただくとおり、勿論、右側の所得の人たちがより広い家に住んでいる。それが右上がりになっている。カーブが自然に、年を通じて上になっているというようなことです。

そこまではいいんですけれども、論点として、むしろ私が提示させていただきたいのは9ページなんですけれども「相続税の申告からみた被相続人の年齢の構成比」。被相続人というのは亡くなられた方を指します。

平成元年から16年を見ていただきたいんですけれども、要するに70歳以上の人、上2つをとると、相続税の申告から見て、亡くなられた方というのは大体、30%と52%を足すんですから八〇数%になっている。そうすると、70歳以上の人が亡くなられると子どもは40歳以上だろう。80歳以上になれば50歳だ。だから、後期高齢化社会はこういう要素もあるのかな。亡くなられる方が70歳以上の方が8割以上で、残された人が40~50歳で、そういう状況のときに小さな子どもが残されてかわいそうだという状況ではないだろうと思います。私も母親がついこの間、死んだばかりですけれども、父親のときと比べれば大分違う状況ではありました。

そんなことが課税をめぐるざくっとした話ですけれども、これから少しメモの方に沿わせていただくと、相続税をどう考えるか。後の議論もあるので駆け足でしか申し上げられませんけれども、10ページは「美しい国」へのシナリオです。伝統的には、世代間を超えた格差の固定化は防がなければいけない。これはそうだと思います。

ただ、先ほど申し上げたように、なぜ、今、この相続税が重要かというと、11ページをご覧になって、これはいろんな場で言われているわけですけれども、これは、社会保障構造のあり方について考える有識者会議ですけれども、上のところで「主に若年の世代の負担で担われている社会保障給付が充実し、老後扶養をより社会的に支えることにより高齢者の資産の維持に寄与する」。やはり老後扶養というものが、私が今日報告させていただいているキーワードの一つだと思っています。

その次の12ページは、私が司会をさせていただいた調査分析部会で、慶應義塾大学の駒村先生にお話しいただきました。

それで、遺産相続の話ですけれども、上の大きな〇の、下から2番目のポツで、やはり同じことですけれども、年金など公的な世代間負担を相続税で取り戻すという考え方が示されています。したがって、こういう点から相続税というものを、今、見直すべきではないか。

相続財産とは何なんだと、税の議論でよくやるんですけれども、それはある意味で死んだときに一括して消費するというふうに考えるのか、あるいはあるファミリーはずっと抱えて、残された財産が消費されるのは、孫子の代に行って、その子たちがお金を使ったときに消費されるとみなすのか。ある人が亡くなられたときに、その段階で一旦、ある消費を行った。それに対してどう税金をかけるのか。そういう議論も私たちもしたことがあります。そういうわけで、今日的な相続税の意味というのはきっちり考えておく必要があるのではないかということです。

それから、予定より時間が少し延びて恐縮なんですけれども、今日、これから事業承継の話が出ると思います。今朝の『日本経済新聞』にも大きく出ていましたけれども、決して事業承継税制をこれから拡充するためにこの会議をしているわけでもないと私は思うし、そういう先見性のない、あらかじめ取り決められたことはないということで、今日、御意見をいただくことになっていると思います。

事業承継についてどう考えるかということですけれども、私の論点メモで「事業承継(1):中小企業の事業承継の困難さと税制の関係」ということで、勿論、この問題が中小企業の問題の一つとして、あるいは雇用確保ということで重要なことは言うまでもないんですけれども、税が中小企業の人たちの事業承継にどのぐらいの問題があるんだろうか。

後で時間があれば触れますけれども、たまたま信金中央金庫というところが10月1日に事業承継のアンケート調査をしていまして、余りにもホットなので資料に含めていませんけれども、事業承継に何が支障がありますかというと、事業の将来性とか、後継者がちゃんとやってくれるのかとか、取引先とうまくいくのかとかで、税は余り出てこない。ただ、行政として何をやってほしいですかというと、圧倒的に税が出てくる。そういうストラクチャーになっているのかなと思います。

あと、事務局からの説明もあると思いますけれども、サラリーマン等との平等性の問題とかが論点としてあると思います。

最後に一言、「企画18-3」の14ページです。抜本改革ということであえて出させていただいていますけれども、相続税といっても、ある意味で亡くなられた方、被相続人にかけるのか、もらった方、相続人の方でかけるのかという大きな論争がいまだにあります。14ページの一番左の遺産課税方式というのは、要するに亡くなられた方、被相続人にかける。これはアメリカ、イギリスです。それから、取得者にかけるのがドイツ、フランス。そういうものがあります。日本は、これから説明があるように、ハイブリッドです。

この改革というのは大変な改革ではありますけれども、ある意味で社会から受けてきた給付に対して死亡時に精算するということを考えれば、日本の相続税において遺産サイドの税というものもこれからはなじむのではないかというところで触れさせていただいたわけです。

続けて、川嶋さんお願いします。

川嶋企画官

それでは、事務局から御説明させていただきます。同じ資料の20ページをご覧いただきたいと思いますけれども、まず、現在の相続税の仕組みから御説明申し上げたいと思います。

これは、相続人が配偶者と子ども2人の例をとった説明図でございますけれども、まず左側からご覧いただきたいんですが、被相続人が遺産を残します。これが遺産総額です。これから債務を除きまして、その後、非課税財産等々も除きます。この非課税財産等が、下にありますように死亡保険金等の非課税といった非課税財産と、小規模宅地等に係る8割減額される部分がここで落ちていくというわけでございます。

それから正味課税遺産額が出まして、これに一定の生前贈与分を加えまして、合計課税価格が出てくる。それから、基礎控除、5,000万円プラス1,000万円かける法定相続人数で計算されますが、それを差し引きまして課税遺産総額が出ます。

ここからが日本の特徴的な制度ですけれども、これを法定相続分で按分して、この法定相続分に超過累進税率をそれぞれ適用して税額を出すという計算をいたします。それで出た税額を一度がっちゃんこして、相続税の総額を出すということでございます。ここまでが、いわゆる遺産課税的な仕組みと言われております。

この相続税の総額を、今度は各人の実際の相続割合、取得分で按分して、実際の納税額を出すということでございます。これが算出税額というところですけれども、ここからは一定の税額控除がございます。下に書いてありますが、例えば配偶者であれば法定相続分に相当する税額はすべて控除されますから、例えば法定相続すれば税がなくなるという形になるわけでございます。

これまでが、現行のいわゆる併用方式について御説明させていただきましたので、ついででございますので、先ほどの課税方式の資料を若干補足させていただきたいと存じます。

15ページをご覧いただけますでしょうか。これは大変古い答申でございますけれども、昭和32年に当時の遺産取得課税から現行の併用方式の導入を決めたときの答申でございます。その背景として(1)(2)(3)に3つのことが書いてあります。

(1)、当時の財産相続の現状ということで、線が引いてありますように、必ずしも分割の習慣がまだ熟していなかった。

(2)で「相続税の申告に現われた弊害」ということで、(2)の一番下にありますように「分割を仮装して申告が行われている」。

(3)ですけれども、農業や中小企業などの分割が困難な資産を持つ人にとってみれば少数の相続になりますものですから、相続税負担が相対的に高くなるといった問題が指摘されていたわけでございます。(3)については、当時は農地の納税猶予とか事業承継税制がなかったという、現在とは若干違う状況にございます。

分割の習慣という最初に申し上げた点ですが、19ページをご覧いただきますと、これは法定相続人数の中で実際に遺産を取得した人の割合。これは折れ線グラフで示されていますが、これも最近、徐々にその比率が高まっているということで、当時よりも分割の習慣はついてきているのではないかと考えられる点でございます。

ページが行ったり来たりで恐縮ですが、前の14ページをご覧いただきますと、一番右に「併用方式」というものが書いてありまして「特色」の[2]をご覧いただきたいんですが「相続により取得した財産の額が同額であっても法定相続人の数によって税額が異なる」と書いてあります。

これはわかりにくいので、具体的な数字で示したものが17ページでございます。「現行課税方式の検証[1](法定相続人数と1人当たり相続税負担額の関係)」でございますけれども、これは各相続人が1億円を相続した場合で、それぞれ法定相続人が1~5人いる場合について計算してあります。

結論だけ申し上げますと「相続人1人当たり相続税額」というシャドーで書いた部分ですけれども、法定相続人1人が1億円相続する場合は600万円で済む。ところが、法定相続人2人が1億円ずつ相続する場合は1人当たり1,250万円になるというふうに、法定相続人の数が多くなるにつれて1人当たりの相続税額が、同額の相続をするにもかかわらず多くなるということでございます。

これは上の方にありますが、基礎控除の構造が5,000万円プラス法定相続人数かける1,000万円という構造になっておりますので、1人当たりの基礎控除の額が法定相続人の数が多くなるにつれて少なくなっていく。逆に相続税額は法定相続人の数が多くなるほど多くなるということが挙げられようかと思います。

それから、かなり技術的な問題になって恐縮でございますけれども、18ページもご覧いただけますでしょうか。「現行の課税方式の検証[2](小規模宅地の課税価格の特例と相続税負担額)」と書いてありますけれども、ケース1というのは子ども2人で預金2億円をそれぞれ1億円ずつ相続するケースでございます。

ケース2と書いてありますのが子ども2人で預金1億円を1人が、小規模宅地1億円を別の人が相続するというケースでございます。

ケース1の方ですけれども、右側にありますように、相続税の総額が2,500万円と計算されまして、按分しますと1人当たり1,250万円になるということでございます。ところが、ケース2でございますけれども、これは最初に小規模宅地で80%減額が効くものでございますから、相続税の総額は650万円になって、これを按分いたしますので、勿論、小規模宅地そのものを相続する人は制度の趣旨から負担は軽いわけですけれども、預金1億円を相続する「子A」と書いてあるところが542万円となっておりまして、ケース1の場合よりも税負担が少なくなっている。要するに、小規模宅地を相続する人が共同相続人にいれば負担が軽くなっているという現状にあるということでございます。

また飛びまして恐縮でございますが、21ページをご覧いただけますでしょうか。これは「最近における相続税の主な改正」でございます。昭和63年、平成4年、6年、15年というふうに改正がございました。

税率構造について申し上げますと、まず最高税率につきましては海外との比較、あるいは個人所得課税とのバランスを踏まえまして下げられている。また、累進構造も緩和されているということでございます。基礎控除等につきましても、これは地価の高騰等を背景にいたしまして、引上げがそれぞれの回で行われたということでございます。

22ページは、地価の状況と相続税の改正との関係を図示したものでございまして、折れ線グラフが地価公示価格を示しております。二重の箱で囲んでありますものが基礎控除等の改正を示しております。

それで、〇でつないだ横軸に平行な線がございますが、これが法定相続人が配偶者と子ども3人の場合の基礎控除の水準を示しております。地価が上がるにつれまして、この基礎控除の水準が上がっておりますが、地価が下がりました今日でも、この水準自体は下がっていないということが言えるわけでございます。

23ページは「税制改正に伴う相続税の負担率の推移」でございまして、これも簡単に申し上げますと、基礎控除が引き上げられましたので全体的にグラフが右にずれていまして、かつ累進と最高税率とも緩くなっております関係で、グラフが下の方になだらかになっているということでございます。

24ページでございますが、これは具体的な地点の相続税負担を計算してみたものでございます。商業地、住宅地につきまして計算しましたところ、どちらもバブル前の、今と地価の状況がそれほど変わらない昭和58年当時と比べましても、現在の方が随分と負担は軽くなっているということでございます。

次から話題が変わりまして、事業承継に関して申し上げたいと思います。

25ページでございます。事業承継税制として言われますのが、1つが「事業承継に関連する相続税の課税価格の計算の特例」と書いてあります上の方でございます。

「小規模宅地等」ということで、事業用宅地について400平方メートルまで80%の軽減という措置がございます。

「取引相場のない株式等」については、次のページで御説明します。

山林については、5%減額するという措置がございます。

「相続時精算課税制度(相続税・贈与税の一体化措置)(平成15年度創設)」については、昨年度御議論いただきまして、取引相場のない株式につきまして贈与者年齢あるいは非課税枠を拡大したというところでございます。

26ページが「取引相場のない株式についての相続税の課税価格の計算の特例」でございます。どういう中身かといいますと、取引相場のない株式を相続しますと、その会社の発行済株式総数の3分の2以下に相当する部分で、上限10億円がございますが、その課税価格について10%減額するという措置でございます。

要件が幾つかございます。被相続人の要件といたしまして、被相続人を含む同族関係者でその会社の発行済み株式総数の5割超を持っていなければいけない。相続人の要件としては、まず親族でなければいけない、申告期限まで株式を持っていなければいけない、あるいは申告期限において役員でなければいけないといった要件がございます。更に会社の規模の要件ですけれども、発行済株式の総額が20億円未満であることという要件がございます。

27ページは「取引相場のない株式等についての相続税の課税価格の計算の特例の拡充」の経緯でございまして、ご覧いただいたらわかると思いますので、省略いたします。

28ページで、これは相続財産の中に同族株式が入っていた被相続人、これは「同族株式を有する者」と左側の欄にありますが、これと全体の申告相続財産の構成を比較したものでございます。

まず、左側の「同族株式を有する者」で「(d)同族株式」ですけれども、1件当たり平均しますと5,000万円程度ございまして、構成比は13.9%でございます。

同族株式を有する者の残した遺産の総額でございますが、(k)にありますが、3億6,400万円でございます。一方で、全体の平均は2億5,000万円でございます。

上場株、あるいは現金預金等の流動性資産でございますが、これが同族株式を有する者は1億3,700万円程度あった。全体平均は8,100万円であります。

「(m)納付税額」でございますけれども、同族株を有する者の方は約5,000万円あるということでございまして、流動性資産との比率を見ますと36.4%程度になっているということでございます。

29ページは、小規模宅地の拡充の過程を示したものでございますので、ご覧いただいたらわかりますので、省略いたします。

30ページは『2006年版 中小企業白書』に出ていた廃業した理由ということでございますが、これも御参考程度にご覧いただければと思います。

31ページは農地の納税猶予について書いてございます。簡単に申しますと、農業を営む人が亡くなって農業を引き継いだ相続人がいる。この場合には、農地本来の価格を超える部分については納税猶予をします。それが農地の相続人が死亡したときなどには、その猶予したものが免除されます。そういった仕組みでございまして、この特徴は真ん中辺りにありますので、時間の関係がございますから、省略させていただきます。

あと、参考資料として過去の答申とか海外の状況を付けさせていただきました。

それと「企画18-5」に資産課税関係の最近の答申の指摘事項をおまとめしておりますので、またごらんいただければと思います。

以上でございます。

田近主査

ありがとうございました。一生懸命、時間を節約したいんですけれども、私も時間を使ってしまったんですけれども、少し超過気味でやらせてもらっています。

ここで議論をしたいんですけれども、まとめて議論していただきたいということで、続けて「企画18-4」、地方の固定資産税になりますけれども、その説明を固定資産税課長の大橋さんからいただいて、「企画18-2」が私が用意した論点メモですけれども、今回は固定資産税ということで、そもそも、この税がどうなっているのかというのも、なじみのない方もいらっしゃるかもしれないので、大橋さんから御説明いただいて、私が論点を述べるということにさせていただきたいと思います。

大橋さん、お願いします。

大橋固定資産税課長

それでは、駆け足で「企画18-4」に基づきまして御説明申し上げたいと思います。固定資産税の現状を中心とした資料になっております。

まず、1ページ目「市町村税収全体に占める固定資産税の割合」ということでグラフがつくられております。

ご覧いただきますように、一番上に全市町村について固定資産税が45%を占めているということであります。市町村税の基幹的な税として非常に重要な財源となっております。大都市と町村との比較においては、大都市よりも町村部の方が税収全体に占める比重が高いということも1つの特徴になっております。

2ページ目には「固定資産税収の動向」として経年の変化を挙げております。固定資産税といいますのは、土地、家屋、償却資産に対して課する税であります。その税収の内訳を示しつつ経年変化を示したグラフであります。

まず、一番下の黒いところ、土地についてごらんいただきますと、平成11年をピークとして地価の下落を反映した減少傾向ということが読みとれるかと思います。

真ん中の白いところでありますけれども、家屋については3年に1度の評価替えの影響がありまして、3年サイクルの増減というのがわずかに読みとれるかと思います。

それから、償却資産につきましては景気の変動、特に設備投資の動向を反映しております。しかし、全体として見ていただきますと、基本的に、この固定資産税というのは税収として安定している様子が読みとっていただけるかと思います。

3ページは、その固定資産税の概要について表にまとめてございます。

固定資産税といいますのは、全市町村を課税主体として、適正な時価を課税標準とする税であります。その標準税率は1.4%ということで、かつてあった制限税率は現在廃止されております。

なお、右側にあります「都市計画税」でございますけれども、これは適正な時価を課税標準とし、市町村が課する税であるという点で固定資産税と同じでございますけれども、これは都市計画事業とか土地区画整理事業を行う市町村が、その財源に充当する目的税という点で違っております。原則として市街化区域内の土地・家屋のみに課税するという特色がございます。

4ページは、その固定資産税の中の償却資産についての概要をまとめた資料でございます。

時間の関係がありますので、少し割愛をさせていただきますけれども、この償却資産につきましても所在する市町村が課税主体であるという点はほかと同じですけれども、発電所などの大規模な償却資産に関しては一定額以上、道府県が課税主体となることがございます。

5ページは、固定資産税の税額算定の流れを絵にしてございます。

上の図にありますように、課税標準額かける税率によって税額が求められております。かつて、宅地の評価は市町村間あるいは地域間のばらつきが非常に顕著にございました。その均衡化・適正化のために、平成6年度から地価公示価格等の7割を目途に評価する評価基準が導入されております。地価公示価格という全国統一の客観的な物差しを導入し、その上で課税標準の特例でありますとか負担調整措置が設けられた様子がここに図示されているわけでありますけれども、詳細を次ページ以降で述べてみたいと思います。

6ページ目は、まず、その課税標準の特例の例として住宅用地の特例の内容を挙げてございます。

住宅用地、とりわけ小規模住宅用地の税負担軽減のために、課税標準は6分の1あるいは3分の1に抑える措置が講じられております。

7ページは、今度は商業地等の地価とその評価額・課税標準額の相関的な変動をグラフに表したものでございます。

一番、山が切り立っているのがいわゆる地価でございますけれども、ここから評価額が導き出され、それから課税標準額が出てまいります。この関係は先ほどの5ページ目で御説明しようとしたことでありますけれども、平成6年度の7割評価の導入後、このグラフに見てとれますように、評価額は大きく上昇しております。課税標準額は負担調整措置によってなだらかな上昇ということで落ち着いてまいりました。しかし、最近、一方で今度は価格下落の影響を反映した課税標準額の下落も緩やかに見られております。すなわち、このグラフの中で一番下にあります課税標準額が緩やかに変動しているという様子を読みとっていただければと思います。

それでは、固定資産税における負担水準の均衡化の仕組みがどうなっているのかを図にしたものが8ページでございます。

ばらつきのある税負担の均衡化を図るために、評価額の6~7割のターゲットゾーンに収斂するような工夫が講じられております。負担水準が高い場合には課税標準額を評価額の70%にまで引き下げ、逆に低い場合は60%に達するまで引き上げるような負担調整措置が講じられております。

なお、平成17年度以前の負担調整措置といいますのは、前年度課税標準額に対して調整率を乗じる方式でありましたために、負担水準が低い土地の負担水準の均衡化がなかなか進まない状況がありましたけれども、17年度以降は評価額の5%を加算する方法に改めておりますので、均衡化のスピードが速まっております。

9ページは、商業地等の宅地と住宅用地の課税の仕組みを図示したものでございます。

一番左側にあります商業地等の宅地につきましては、前のページで御説明したとおりでございます。右側の小規模住宅用地、一般住宅用地について、それぞれ6分の1、3分の1の特例を乗じた上で、負担水準が100~80%の間に収斂する仕組みがとられております。

最後の10ページ目、これは商業地等の税負担の変化について、平成19年度の見込みと約10年前の平成9年度のものを絵にしたものでございます。

ここで述べておりますのは、負担調整措置の導入によって税負担の均衡化が進んでいる様子が読みとっていただけるかと思います。10年前には負担の公平化のために税負担を引き上げる自治体が全体の7割に達していたのに対して、平成19年度にはその割合が13%にまで減少しております。特に大都市では1割を切るようになっております。したがって、かなりの土地で均衡化が進んできたと言えるかと思います。

逆に、税負担が引下げになる土地が増えておりますけれども、これは一旦、60~70%のゾーンに達した後、地価の下落のために負担水準が70%を超えることになって税額を引き下げることになったというものでございます。

以上、固定資産税関係の説明でございました。

田近主査

ありがとうございました。時間が気になりますけれども「企画18-2」の「地方の資産課税論点メモ」に移らせていただきます。併せて、今、大橋固定資産税課長が説明した資料の「企画18-4」の8ページを開いておいていただきたいと思います。負担水準の均衡化の絵です。

固定資産税というのは、私も税調に加わらせていただいていますけれども、いつも足早に行ってしまう感じで、地方にとっては非常に重要な税だということは先ほどの数字からも明らかだと思います。

それで「企画18-2」の論点メモで、この税がそもそも、なぜ重要なのか。そして、今の説明を踏まえて、負担は適正か。それから、抜本ということで償却資産に対する固定資産税というのはどう考えるかというようなところの論点を出したいと思っています。

固定資産税が、なぜ地方自治体にとって重要な税なのかということです。これは調査分析部会でも議論があったと思いますけれども、まず、この固定資産税というのは土地や家屋を利用している人が負担する税なんだ。

それで、いろんな税は、結局、最終的に東京都のホテル税というもので大分議論になりましたけれども、東京都でホテル税を取ったときにだれが払うんだ。それは東京都の人がホテルに泊まるわけではないだろうとかいろんなことがありましたけれども、そういうことを考えると、土地というのは非常にユニークに言うと、その地方の根源的な税だ。土地をはがして持っていくことはできないという意味で、この税をだれかに負担を押し付ける、「輸出」することができない税だ。それから、現状、いろいろな判断はあるでしょうけれども、やはり居住地の価値、それはさまざまな公的サービスがあるとか、環境がいいとか、そういうことは基本的には地価に反映しているだろう。そして、景気にも比較的影響されない税だ。

そういう幾つかの本質的な理由だと私は思いますけれども、そういうことから地方に最もふさわしい税源の一つだ。個人住民税に匹敵する重要な税だということが言われています。私もそう思います。

そういう意味で、どういうコンテクストで、今、我々が議論すべきかと言えば、やはり地方分権化時代の中で、この税を大切にしなければならないということだと思います。それを反映しているんだと思いますけれども、1.4%が標準税率ですけれども、その標準税率に対する制限税率も、2004年度に撤廃されているということで、地方は自由にこの税を決めていいということです。

続いて「2.負担は適正か」です。いろいろ考えがあると思うんですけれども、今、説明いただいてもなかなか私もすぐに理解できなかったところがあるんですけれども、1994年に市町村間でばらばらであった固定資産税の評価額を公示地価の7割にそろえましょう。これでイコールフッティングの議論ができるようになりました。

ただ、地価が下がったこと等があって、それから、先ほどの「企画18-4」の8ページなんですけれども、そちらを見ていただければよりわかりがいいかもしれません。

土地の公示地価100に対して、7割が固定資産税評価額になっているわけです。これに1.4%をかけるというわけではないわけです。それに更に7割をかけたのが、現在、地価下落に応じ税負担の引下げということで、7割と7割をかけた、だから、公示地価に49%をかけたものが法定された課税標準額。ここまでは税をきっちりかけましょうということで、更に70%をかけた後の次の70%を、60~70%がストライクゾーンみたいなことで、ここまでの範囲で課税標準額が上がっていればいいでしょう。そういう議論をしているわけです。それに対して、まだ適正化されていないところが十何%あるという議論です。

個人の場合は、この図の最初の公示価格に7割をかけたところが固定資産税評価額ですけれども、小規模の場合、その6分の1が課税標準額になっている。それから、一般住宅は3分の1になっている。

新築住宅に関しては、更に一般住宅の場合、3年間は固定資産税が半額。3階建て以上で耐火構造の住宅、これは昭和39年に決まった税法らしいんですけれども、このころは3階建て以上の住宅というのは高層住宅だったと思います。今、普通のマンションは3階建て以上だと思いますけれども、早い話、マンションは新築で買えば5年間は2分の1減額ということになっています。

そういうわけで、分権化時代、地方にふさわしい税ということで固定資産税を考えていったときに、この負担のあり方が適切かという論点はあるのではないかということで提出させていただきました。

償却資産の問題は大きい問題で、抜本改革ということであえて出させていただきましたけれども、償却資産は大体、基本的には企業が負担するものだ。企業の活動というのは、そもそも償却資産をかけるべきかかけないべきかという議論はありますけれども、かけるとして、企業の活動というのは恐らく市町村に限定されるわけではなくて、幅広く全国ネットで、あるいは県ベースで動いているんだろう。

そういうときに税の帰属というものを、一部、大きな発電所とかはそういう考えなんでしょうけれども、県にも固定資産税が行っていますけれども、それでは、一般的にも会社の償却資産に対する固定資産税が、一体、どこに帰属するのかという議論は分権化に併せて論点としてあるのではないかということで出させていただきました。

済みません、あとは御自由に、どの税ということもなく御指摘いただいて議論していきたいと思います。御意見のある方はどんどん挙手をお願いします。

それでは、猪瀬委員お願いします。

猪瀬委員

私は昔のことを思い出しているんですけれども、1994年に固定資産税評価額が適正化されたということだったんですけれども、当時、各市町村でばらばらでやっていて、これはある意味では自主的にやっていたということになるのかどうかということなんです。

覚えているんですけれども、鳥取県の片山前知事が、このころ、当時の自治省の固定資産税課長だったんです。それで、ばらばらでやっていて不公平が生じているのではないかということを尋ねたら、それは不公平が生じないようにするためにやるんだみたいなことを言っていたという記憶があるんです。

今になってみれば、地方分権の考え方からすれば、例えば三重県の亀山市のシャープの場合は、亀山市が固定資産税相当額の大部分を交付することで実質的に減免しているわけです。

そういうことを考えた場合に、これは適正化して非常に正しかったという気もするんですが、今になってみると各市町村の自由裁量に任せる方が正しいのかなと思うんですが、そういう辺りはどう見たらいいのかということなんです。

田近主査

適正化を私が答えるというのはどうかと思うので、それでは、大橋固定資産税課長、手短にお願いします。

大橋固定資産税課長

御指摘のように、以前、問題意識として、そもそも負担水準の均衡化を図るということを意図した措置でありますから、その措置の目的といいますのは共通した物差しを持つということが主眼でありました。

それで、今、御指摘のような点、つまり、各自治体によっていろいろな工夫というものが表れ出てきていますのも、逆に言いますと、そういう共通の物差しを持ち得ているからだと考えておりますので、そういう点で、この物差しによる、その種の均衡化の措置ということは実効を上げておりますし、その上に立ったいろいろな工夫ということが今日の課題になってきておると考えております。

田近主査

もしあれば、まだ続けるとして、どんどん手を挙げていただいて論点を詰めていきたいんですけれども、それでは、続けて松田委員と、ほかに、上月委員、井上委員と続けてお願いします。

松田委員

今の件ですけれども、たしか、これは適正化したときは法律を改正しないで実質的な負担を当時の自治省から一片の通達で倍ぐらいにしたといって問題になった一件だったような気がします。それはそれで問題だったんですが、済んだ話だから今更言ってもしようがありません。

それで、この適正化したというのは、今、総務省から御説明があったように、いいことで、減免するなり何なりはやはりそれぞれの自治体が条例で、税率でもってやるべきものなんだと思います。だから、この課税評価は全国的に統一的なもので評価するのが当然ですし、いまだに有力議員のいる土地は評価が低いなどといううわさもかなり耳にしますので、この辺は更に適正化に努めていただきたいと思います。

以上です。

田近主査

続けて、上月委員お願いします。

上月特別委員

2点ありまして、事業承継税制の話なんですけれども、今朝の『日本経済新聞』にも大々的に出ていましたけれども、必ずしもそれは前提ではないと田近委員がおっしゃいましたので、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

実際、中小企業というのは、今、本当に事業承継で悩んでいます。それはいろんな理由があると思いますけれども、現実のところは零細企業というのは本当に後を継ぐが人がいないという問題があります。少し大きくなりますと、これはいろいろ対策をしていかないと、まともに税金を払ったのでは今の規模をそのまま承継するというのは非常に難しい。

だから、事業承継を円滑にするためにというのは、我々の立場で言いますと、相続税対策を打っていかないと、企業は利益が出ていても資金がないと回りませんので、そういうところでかなり対策というのは必要になってきて、今、やっているところとやっていないところに対して、むしろ不公平が起こっているのではないか。そういう意味では、やはりこれは大幅な減税措置が必要ではないかと思います。

先ほどの資料「企画18-3」の最後の39ページですが、外国の例が出ていますけれども、そこを見ましても、それなりに評価減というものが列記してありまして、日本だけが見劣りするのではないかという気がいたします。

2点目で「企画18-3」の14ページにありました相続税の課税方式の件なんです。今、我が国の課税方式というのは併用方式をとっておりますけれども、このままでいきますと、相続によって、ここにも書いてありますけれども、取得した財産の額が同額であっても、法定相続人の数によって税額が随分違うんです。

それも問題ですし、それから、今、個人の権利意識が昔のように皆さん仲よくというものではなくて、むしろ相続人間の利害対立が顕著になっていると、我々は見ていてそう思うんですけれども、相続人がお互いに協力して仮装分割をするというような時代ではないと思っています。むしろ、それよりも相続人同士が、相続が争う一族と言われるぐらいになっていると、現実、現場にいましてそう思います。

今の方式でいきますと、共同相続人のうちのだれかが過少申告をしたということになりますと、その分がほかの正しく申告した人もまたそれを訂正して、税金を追加して納めないといけない。それには過少申告加算税が付いてくるというような問題もあります。できれば、連帯納付義務というのは実は一つ問題があるんですけれども、詳しくは言いませんが、併せて抜本的な改正が必要なのではないかと思っております。

以上です。

田近主査

井上委員、続けてお願いします。

井上特別委員

今、上月委員からもお話が出ました事業承継税制は非常に大事な問題だと思います。今まで中小企業を本当に育成しようとしてこなかった政治または行政について、非常に問題があるのではないのかと思うほど大事な問題だと思っているわけです。ともかく、中小企業というものが事業をゴーイングコンサーンすることによって、やはり従業員の家庭の生活だとか、取引先、関連企業の事業の経営、更には地域社会にも大きく貢献できているんだということなわけでして、中小企業をつぶさないで、それを続けさせるためには事業承継税制というのは非常に大事な問題だろう。

ところが、そういうことがなかったために、この20年間、20年前には530万社あったものが既に100万社減っているということであり、先ほども「企画18-3」の30ページでも『2006年版 中小企業白書』の内容が出ておりますけれども、年間29万社減っておる。そして、今、7万社が後継者不在によるものでなくしている。雇用はどれだけ失われているかといったら、20~35万人の雇用が失われているわけです。そういうことを考えると、やはり非常に大事だと思います。

また、私も東京商工会議所の副会頭をやっておるものですから、東京都に対しても非常に関心を持っておりまして、10月5日、事業承継円滑化のための税制改正意見を全会一致で決議したということが報道されておりまして、これも本当にやっと理解がされたのかなと思っております。

そして、事業承継税制が確立することによって、やはりその技術革新というか、新しいものにもチャレンジができるわけでもあるし、そして、継承された資源を基にして第二創業というものに取り組むことができるわけです。そういった点からしても大事なものだと思っております。

ともかく、法人税の実効税率もイコールフッティングだという時代になっておるわけでして、事業承継税制も、やはり外国と相並んで、ひとつ実行していくべきだろう。ヨーロッパはそういう提言をされておりますし、また、アジアなどは相続税がないところがたくさんあるわけですから、そういった点を考えても、やはり日本もそういう方向性を一日も早く歩んでもらいたいと思うわけでして、ともかく、事業承継においては本来の事業用資産に関わる相続税を非課税とすべきであるわけですし、また、欧州と同様に後継者が相続後、一定期間、事業を継続することなどを条件に非上場株式等の事業用資産に対する相続税負担を8割以上減免する包括的な事業承継税制を確立すべきだと思いますので、よろしくお願いします。

田近主査

どうぞ。

香西会長

会長としての意見ではなくて、一委員としての私の感想も少し言わせていただきたいと思います。

事業承継というのは非常に大事なことだと思いますが、それを一家族の中でやろうとしなければならないのかどうかが問題です。つまり、一家族と言えば、これから経営者も、今、30歳としますと、過去30年、その1家族の中に子どもがいなければならなかったわけです。それがいないわけです。どんどん減って、一番減ったときですから、事業を続けるためには家族以外の人を新しく持ち込んでこないとできないと思うんです。本当にそれでなければ、新しく雇用機会をつくり出せないと思います。子どもがいないんですから。いる人は1人か2人で、それが東京へ行ってしまうと、それでおしまいになってしまうわけです。だから、この世襲制度というものに余りこだわることは私は事業承継の可能性をどんどん低めていくことになると思っております。

これは一委員の感想でございますから、皆さんの御意見は十分お伺いします。

田近主査

いろいろ盛り上がってきたと思いますけれども、それでは、井戸委員、田中委員、吉川委員で続けてお願いします。

井戸特別委員

相続税負担がバブルのときの地価の上昇に併せて軽減したんですけれども、それはそのときの理由があったと思いますが、今のように地価が落ち着いた時代に同じ制度をそのまま持続させているということでいいんだろうかということを、私はまず基本的に問わなければいけないのではないかと思います。余りにも納税者の数が減り過ぎていますし、相続税の国税全体に対する割合も減っていますし、それから、結局、よく言われます格差論を持ち出すわけではありませんが、立派な家に住んでいる方が相続税を余り払わないで、何で我々みたいに乏しいお金をたくさんため込んだと思ったら、がばっと全部、銀行に捕捉されて払わされるというような非常におかしい現象が、先ほどの例にもありましたが、出てきてしまっている。やはり、この辺を見直さなければいけない。

そのときに、田近先生もおっしゃいましたが、社会からの給付に対する精算という意味での生涯にわたった公平な負担と、もう一つ、私はやはり、これは前から言われていますけれども、フローの所得税の補完的な機能を果す相続税の役割というものも見直さなければいけない。となると、相続財産に対する課税に、今の納税者がたくさんいればというような意味での不均衡が生ずる仕掛けも少し見直す必要が基本的にあるのではないか。これは抜本的な問題です。

それから、今の事業承継について言いますと、香西会長の御意見も非常にごもっともな点がありまして、私どもも事業を引き受けてやってもいいというマッチング事業をやっているんですが、なかなか難しい。5人ぐらいしか出てこないというのか、5人は出てきているというのか、そういうこともやっているのでありますが、事業資産というものをどういうふうにうまい具合にとらえられるかということと併せて何らかの措置が、今、我々からすると商業者等を中心に、ほうっておくと事業がどんどんやめられてしまうので、そういう意味でのインセンティブを何か考えてやる必要がある。そういう意味からすると、事業承継税制もその一つとして位置づけられる余地があるのではないかと思っています。

それから、非上場株式の評価が非常に難しいところがあるんですが、今の10%のままでいいかどうかは御議論いただいた方がいいのではないかと思います。

それに関連して、農地の納税猶予制度があるんですが、これはその方がずっと農業を続けていなければいけないんですが、今、だんだん農業をやっている人が年をとってきまして、違う人にやってもらうとか、それから、今は特に農業生産法人などに委託をしたりすると、自分がやっていないという話になって、できなくなってしまうんです。ですから、これは農業の制度を是非見直していただきたい。

私は、そういう人たちに市民農園に提供しろと言っているんです。市民農園に提供したら、農家以外の人たちが農業をするようになる。そういう意味で相続税制度が阻害しておりますので、その点についても是非御配慮いただいたらありがたいと思っております。

それから、猪瀬委員の質問の固定資産税の評価の統一は、同じ時価と言っているのに、法律上A市の時価とB市の時価が違っていいものかというような素朴な、つまり同じ価値は同じ尺度ではかった方がいいのではないかというところの出発ではなかったか。税負担をどうするかは、今度は各自治体の判断というのがあってもいいのではないかというのが出発ではなかったかと思います。価格の方で操作をするというのはいかがかというのが出発ではなかったかと思います。それが余りにも矛盾が出たからではなかっただろうか。

それから、田近委員の償却資産に対する課税の問題は、諸外国でも課税していないところもあるものですから、企業の方からは過剰負担ではないかとよく言われたりしてきたんだと思いますが、企業活動が土地と家屋だけで推し量れない部分があるという面で償却資産が課税客体にされているのではないかと私は想像しています。

さて、そのときに、田近委員の問題提起のように、その部分は県の方が適しているのではないか。

そうすると、難しい問題ですが、私は、やはり固定資産税という整理の中で、企業活動をトータルに表わすために償却資産というのが、課税客体のメルクマールにとられていると考えた方がいいのではないか。ですから、現行を維持せざるを得ないのではないかと思っております。

以上です。

田近主査

田中委員、どうぞ。

田中特別委員

まず、相続税に関してなんですけれども、資料にございましたように、日本の現状の租税負担率0.4%、課税割合4.2%、これは国際的に大変適当な水準だと思うんですけれども、今のお話にもございましたように、基本的な控除額を見直したのは、ちょうどバブルの最盛期でございまして、地価が高騰した結果、大変相続税が上がったという見直しのために大幅に引き上げをした。そのままでございましたので、先ほどの資料にもございましたとおり、やはり異常な数字が出ているということでございます。

それと、冒頭に田近委員からございましたように、今の高齢化社会の中で相続税の持つ意味合いがいろいろ変わってきている。今まで生活してきた社会に対する社会還元というような意味合いからしますと、なるべく多くの人に少しずつ払ってもらうということが必要だと思いますので、その辺の基本的な控除額の見直しというのも、この際必要ではないかという気がいたします。

2つ目が、先程もお話が出ました、地方税における償却資産に対する固定資産税の評価でございます。

今年度の税制改正において減価償却制度で40年ぶりぐらいに、非常に抜本的な改革として見直されました。高く評価されているわけでございます。

一方では、この減価償却制度の見直しということが、地方税の固定資産税の償却資産の評価には結び付いていないというか、二本立ての評価になっているということでございますので、我々納税側からすると、かなり重い事務的な負担になっております。

やはり機械設備等の比較的耐用年数の短いものにつきましては、国税と同様に償却制度を見直しても、やはり買替えの効果というのは促進されると思いますので、是非この辺の評価の一本化ということを進めていただきたいということでございます。

以上です。

田近主査

吉川さん、どうぞ。

吉川委員

2点ございます。1点目は田近先生から高齢化社会で社会保障の財源として相続税の役割を考えてもいいのではないかという問題提起があったかと思うんですが、私も賛成です。

具体的には、要するに、今、亡くなった方が100人で被相続人4人くらいの人、100分の4が相続税を払っているということなんでしょうが、もう少し広く薄く、多くの人が相続税を払ってもいいんではないかと私は考えています。ただ、その場合には、相続税に対する考え方がやはり問題になってくるんではないかと思います。

これは、いただいた資料の14ページで、先ほども御説明がありましたが、アメリカ、イギリス、アングロサクソン系は、どちらかと言えば、亡くなった人が払っていくという、ここで言う被相続人がポストヒューマス、死後に払うという考え方。

それに対して独仏は相続する子どもの方がウィンドフォールのインカムに対して支払う、こういう考え方だと説明してあるわけです。

小口の相続財産に課税する場合には、独仏の立場からすると、非常に小さい財産に対して、恐らくは相続する方の人たちも所得水準が、もし親の富に正の相関があれば、どちらかと言えば、所得水準が低い人が小口の財産を相続すると考えれば、そうした人にまで課税するのかということが問題になるかと思いますが、アングロサクソン流に亡くなった方に対する課税、こういうような考え方からすれば、田近委員がおっしゃったように、ポストヒューマスに、そうした方々の老後というのも社会保障によって支えられたわけですから、そこに対して一定の課税をするというのは、私は大義名分として十分あると思うんです。

ちなみにジョン・スチュアート・ミルという経済学者がいますが、相続を論じて、亡くなった方が、ここで言う被相続人が遺産を残す、ビクエスト、この権利と、それから残された方が相続する、インヘリタンス、これを峻別しまして、前者は私有財産、これの処分の自由ということから正当性を認める。

しかし、後世代がインヘリットする権利というのは、ほとんどミルは否定する。こういうことがあったんですが、そうしたことが、ここのアングロサクソンの考え方に反映されているのかもしれません。

日本の場合には、いずれにしてもハイブリッドということで、別にどちらかに決め打つ必要はないと思うんですが、田近委員が指摘されたように、高齢化社会の中で、すべての人が社会保障の世話になる。それは財産が小さい人、所得水準が低かった人も当然で、むしろそうした人の方が世話になったということもあるかもしれませんから、そうした人がポストヒューマスに財産が課税される。私は十分正当性があると。具体論としては相続税の課税ベースを広げる、もう少し広くみんなで負担するということです。

もう一点は、承継の点なんですが、これは一言、私は香西会長が言われたようなコメントに賛成いたします。ある一つのビジネスを行うゴーイングコンサーンとしての企業の将来性と財産の承継に関わる相続のところが、一体どのように関係するのか。いろんな議論があるようですが、細かいことを別にすれば、両者独立というようなことが会長が言われたことだろうと思いますが、私の目にもそういうふうに見えるということでございます。

田近主査

もう少し続けさせていただいて、飯塚さんには、勿論機会をお与えするということで、横山委員、それから井上委員、お願いします。

横山委員

個人的な意見は、田近委員、吉川委員と同意見でございます。そのときに、やはり家族の機能を、社会保障の制度の構築においても、これから日本社会はどういうふうに期待していくのか。

一つの方向性としては家族機能の復活というんでしょうか、その強化という方向があろうかと思うんです。

もう一つは、強化することの大変さというんでしょうか、今、かなり個人が中心の社会になってきている。特に高齢者の人々の意識も、子どもの世話になるよりも自分のことは自分で、お金を貯めて老人ホームに入って、社会的に世話になっていくという意識が高まっていると私は認識しておりますが、もしそうだとすると、戦前のような長子相続あるいは戦後の均等相続というときの考え方の中に、私たち国民の意識が家族に対する期待、いわゆる老後の期待というものが、大分変わってきているんではないか。

そういうようなことを前提にして考えた場合に、やはり田近委員がおっしゃられたこと、それから吉川委員がおっしゃられたことが、かなり合理性を持ってくるんではないかと思っています。

そして、事業継承のことにつきましても、やはり家族にそのまま血族というんでしょうか、血縁関係の意識が大分薄れてきているんではないか。そうすると、中小企業の事業継承がそのまま血縁関係をベースにした相続につながるのかどうか、ここは今後検討が必要だろうと思います。

ただ、そうは言っても中小企業の方々が事業用資産を調達するために、デッドファイナンスするときに、個人の資産をある意味担保にして事業をやらなければならない。この辺の配慮は必要だろうと思うんですが、今後、やはり国民一人ひとりの意識の中に、事業継承も子どもに継がすというよりも、違う意識で進展していくのではないか。これは、香西会長が言われたことと同じだと思います。

以上です。

田近主査

そもそも私たちの説明が長過ぎたのがいけないんですけれども、時間が押していますので、井上委員にお答えいただく、それから中里委員も加わっていただく、それからもう一回上月委員ということで、手際よくお願いします。

井上特別委員

会長のお話にあった事業承継の場合の家族へという問題、少子化で非常に難しくなっているんではないか。確かにそうなのかもしれないですけれども、やはり先程もお話が少し出ていましたけれども、中小企業の場合には、個人の持っている財産というものがすべて担保として会社に提供されているというケースは非常に多いわけです。それは過少資本というエクイティーが少ないということからそういうことになっておるわけですけれども、そういうことによって企業が継続されている。では、その担保をなくせばいいではないかと言うけれども、それは非常に金利が高くなって、非常に問題が派生するということにもなるわけで、すべての財産は、企業と一緒にあるというケースが非常に多いということです。

そういうようなことから、やはり事業継承というものがどうしても家族にされるというケースがあると思うんですが、そのときに、結局、株というのは本当に紙ぺらなわけです。要するに担保に取られない。これは死んだときも相続の担保に取れるかといったら、取ってくれないわけですから。勿論取りますよ、売るものがなくなったときに初めて取るということであって、そういうことからして株式は紙ぺらということで、やはりそういう問題があるために、どうしても事業というものは血族にということになるんだと思います。

また、逆にそれがいなければM&Aで売ればいい。売ったときには、そこで売却所得ということになるんだと思うので、そういう点も考えていただかなければいかぬと思います。

田近主査

中里委員、どうぞ。

中里特別委員

ストックに課税し、フローに課税すれば、二重課税になるわけです。事業資産に対して固定資産税を課税し、かつ所得税を課税すれば、これは二重課税になります。

相続税でも同じでございまして、事業資産について相続税を課税し、かつ株でもよろしいんですが、将来それがもたらすフローに対して所得税なりを課税すれば二重課税になるわけですから、その点は、井上委員や上月委員のおっしゃっているところは一理あるんではないかと思います。

ただ、相続税というのを、もう少し薄く広く課税していくという方向性は、やはり考えていかないと、これから社会がもちませんので、基礎控除等を圧縮しながら、中小企業の保護について、事業承継という言葉でそれを説明するかどうかわかりませんけれども、先ほどの二重課税の問題とかも考えながら、もう少し中小企業の保護等を何らかの形で考えていくという形がよろしいんではないかと思っております。

田近主査

その議論をするならば、サラリーマンでも自分の給料には税金がかかっていたということで、その給料から残った貯蓄に相続税をかけるんだから二重課税だ、そこはイコールフッティングではないですか。

中里特別委員

イコールではないんではないですか。貯蓄は事業のあれでもありますし、それに事業資産については、相続税、固定資産税、将来ビジネスインカムに対する課税とトリプルパンチで来るわけですね。その点、多少は考えないと、多少ですよ。

田近主査

上月委員、どうぞ。

上月特別委員

中里先生がおっしゃっていただいたので、私も言うところはないですが、家計財産と、事業用財産というのは全く違うということを、まず御理解いただきたいと思うんです。家計なら自分が使ってしまえばいいんですけれども、事業者というのはそういうわけにいきませんし、事業をやっている限りは幾らお金があっても足りないというのが実情なんです。

そういうところで、家族がやらない場合は確かにあるかもわかりませんけれども、実際に家族がそれを継いでいくというよりも、家族でないと継いでくれないというところも、中小企業というのは現実にあるんです。こんな汚い、しんどいことは他人さんはやってくれないという側面も一つあるわけですから、是非その辺、家計資産と事業資産を全く同じレベルに置いて議論されると、少しつらいなと思います。

田近主査

よくわかります。まさに所得税の本質的なところだと思いますけれども、時間が限られていますので、ここで一応区切りにして、固定資産税のところは、もう少し議論してもらいたかったと思います。

まとめるほどの時間もありませんけれども、ただ全体として見て、事務局から説明があったように、そういういろんな負担を考えて基礎控除、5,000万プラス1,000万かける相続人。あと、事業用資産の宅地の8割軽減とか、それも全体的になされてきたということで、そういう全体の中で、今、中里委員、井上委員、上月委員も指摘された問題を当てはめていくのかなと思います。

続けて、もう一つ私がやらせていただいて、辻山委員にバトンタッチですけれども、資料「企画18-6 」の「金融所得課税 論点メモ」、それから横長の資料「企画18-7」の「資料(金融所得課税)」。これは、昨年も議論をしているので、足早にというか、簡単にやらせていただきたいと思います。先ほどの相続税と同じように、横長の方も同時に開いてください。

論点メモの方からですけれども、どんなことが論点であるのかなということで、まず、ごく切実にという意味で課せられた問題としては、配当や株式等の譲渡益に関する軽減税率をどう考えるか。それが突き付けられたテーマだと思います。

あと抜本ということでは、金融所得に関して税調としてどう考えていくのかということですけれども、この議論は分析部会も含めて、あるいはIMFのマイケル・キーンさんも来られて議論しました。ヒト・モノ・カネと言いますけれども、お金というのが、言うまでもなく飛び交っている世界を、そういうところで仮に総合課税して、最高税率を50%かけるようなことは現実的ではない。

また、そういう後ろ向きなことよりも、多くの社会的な給付があって、それに対する対価としてこういう税がふさわしいか。あと、格差の問題に関しても勿論あると思いますけれども、格差是正で金融所得に、えいやとかけてしまえという議論もなかなか成り立たないだろうということが議論されてきたと思います。

そういう中で、できるだけ効率的に、簡潔に、できれば一律に、そしてどこの範囲というのは難しいですけれども、まずは金融資産間の損益通算をできるだけしやすくして一律でかけたらどうかという議論に収まってきたのかなと思います。今日、また議論はいただきますけれども、そう思います。

そういうことを踏まえて復習みたいですけれども、資料を見ていただきたいと思います。まず、軽減税率を導入した平成14年、2002年辺りと、今日の経済状況を比べてみましょう。

それから、金融資産がどうもつかというのは、これは一言で済ませていただいて、今、言った論点をごく簡単に言いたいと思います。

早速資料の2ページから、あのときと今を比べるということです。名目成長率は決してよくなったわけではないでしょうけれども、今、2%のゾーンにいる。14年のときはご覧になってください。

3ページが日経平均ですけれども、あのときに日経平均1万円を割って、ここに書いてありますけれども、8,000円を割ったというときと、恐らくさっき議題を整理しているときにみんなでしゃべっていたんですけれども、株価はわかりませんけれども、今日は日経平均が1万7,000円を超えているだろうという状況では、昔と今かなと思います。そのようなことが4ページ辺りで不良債権も整理されてきたし、そういうことでしょう。

7ページは法人税のところで議論しましたけれども、企業の方のキャッシュフロー、ここでキャッシュフローというのは経常利益、ざくっと言って税金が半分、その残りと減価償却というところで、これもあのときと今とを比べてはどうですかということ。

8ページは、配当の方もあのときと今を比べたらどうですかということで、状況的な証拠としては、これからどういう金融所得税制に、大きな意味でそれは使い勝手のいいものにしていくんだろう。そのときに、10と20を判断する経済状況は今のとおりですということです。

10ページは、課税状況がどうなっているのかということで、上がったり下がったり、利子がばかっと上がっているのは、これは郵貯の定額か何かが下りてきたときだと思いますけれども、ご覧になっていただくとおり、今、言った経済状況を反映して改善されてきているということです。

12ページは、事務局からもらって、私がしゃべっているとおかしいですけれども、気持ちとしてはこういうことも議論したいのかなと思いまして、日本の金融資産の保有というのもそんなに見劣りのするものではないし、むしろ我々としてはこれを更に続けさせたいということです。

あと、いろいろありますけれども、14ページが、これが預貯金の一番低い階層と高い階層、資産分布がこうなっています。

それで、この種の議論でどう考えていいかという点なんですけれども、16ページをご覧になっていただきたいと思います。

余りあの人が得して、この人が払っていないじゃないかというような議論は、全体的な議論でもすべきではないと思うんですけれども、16ページは、申告所得税のデータから所得階層別の平均税率を見たものです。

そうすると、平成17年で5,000万超の人たちのところで少し下がっている。これは何だということなんですけれども、15ページに戻っていただくと、申告所得階級で、株式等の譲渡所得のあるものの、所得に関する分布を見たものですけれども、5,000万超の人たちのところで、ばかっと譲渡所得が上がっているわけですね。

この人たちは、恐らく全部特定口座でやっているわけではなくて、申告分離している。申告分離のところで10%で効いているわけですね。これが、もし20になったらということで御想像いただければ、このへこみはそういう要因も大きかったのではないかと読んでいるわけです。

あと、18ページは金融所得の制度の復習ですけれども、配当、譲渡益、利子、それで配当と譲渡益のところが10%になっています。少し言いたいことはありますけれども、そういうことです。

一体化等は、事務局の方で必要があれば補足していただくとして、あとはずっとめくっていただくと、配当キャピタル・ゲインの10というのがアンバランスですねというようなことです。

あと数分で終えないといけないと思っているので、むしろ論点メモの方を見ていただくと「4.金融所得課税の一元化を巡るこれまでの議論」ということで、非常に差し迫った問題としては軽減税率をどうするか。

もう少し問題を客観的に見たらということですけれども、先ほど最初に申し上げたように、経済の国際化の中で資本所得課税というのをどう考えるべきかだと思います。

そういう中で税調も議論してきて、金融所得というのは一体化して損益通算も濫用されないようにして可能な限り一定にして取ろうということ。

ここで、配当の二重課税の調整、本来、税調としても最終的な報告書としては二重課税のあり方というのをきちんと議論すべきだと思いますけれども、今回はそこまで準備できていません。

「40+0.2 ×60=52%」と書いてありますけれども、これはどう読むかというと、法人が所得を上げたら40とられる、残り60が配当されたとして20税金がかかったとすると、そもそも法人のビフォータックスでかかった所得に52%税がかかった。

個人所得税率の最高税率がくしくも50ですから、20は悪くないんではないかという数合わせでありますけれども、逆の立場に立つ人がいれば、いろんなこともあり得る。

そういうわけで、御反対の方もいらっしゃると思いますけれども、流れとしては大方皆さんも、私の言っている方向で来ているのではないかと思います。

あと、二元的所得税とかもやりたいですけれども、タイムアップということではしょらせていただいて、星野税制第一課長の方から補足すべきことがあればしてください。

星野税制第一課長

それでは、私の方からは制度の関係で、最近諸外国において金融・証券税制で分離課税の動きがあるという話をピックアップして御説明させていただきたいと思います。

資料の34ページ、35ページの辺りでございます。

既に当調査会の海外調査報告でドイツの件については御報告がありましたけれども、ドイツにつきましては、2009年1月から利子、配当、譲渡益について一律所得税が25%、それに連帯付加税がかかるということで、26.375%の源泉分離課税ということで2009年1月から制度が変わるということでございます。

これまでは利子、配当については総合課税でしたし、譲渡益については原則非課税ということだったわけですけれども、大きく制度を転換したということでございます。

その中で、配当所得については、従来一部、ドイツの場合は50%ですけれども、控除するという方式をとっていたんですけれども、これを廃止して、法人税との調整は行わないということになっているわけでございます。

それから、その隣りに書いてありますフランスでございますけれども、フランスの配当課税についても、今、議論をされているところでございます。2008年の予算法案が国会で議論されているところでございまして、具体的には2008年の1月から配当所得に対する課税方式が、それまでの総合課税一本から、源泉分離課税と総合課税の選択制に改定されるということでございます。

配当所得を一部、フランスの場合は4割でございますが、4割は控除する調整措置がとられているわけでございますけれども、従来とられている措置については、総合課税の場合のみ認めて、源泉分離課税を選択した場合は、それは認めないということになっておりまして、こういった分離課税とか、法人税との調整の見直しの動きが海外で起きているということでございます。

私から、付け加えさせていただきました。

田近主査

通算のところをお願いします。

星野税制第一課長

損益通算でございますけれども、損益通算については42ページ以降に書かせていただいております。

少し見ていただきますと、上場株式等の譲渡損失につきましては、15年1月以降、3年の繰越しが可能となっているわけでございますけれども、その上で、損益通算がどうなっているかというのは、43ページでございます。

現時点では税制上、利子、配当から株式の譲渡所得は、それぞれここに書かれておりますとおり、異なる所得分類に属していて、損益通算を制限されているわけでございますけれども、現時点では、真ん中に〇が書いてございますとおり、上場株式の譲渡益と公募株投の譲渡益について損益の通算が認められているわけでございます。

いずれも金融商品から生ずる利益や損失でございますので、個人投資家のリスク資産への投資促進の観点から、損益通算の範囲を広げるかどうかということが議論になるわけでございますけれども、他方で、納税者の任意で行われる譲渡によって実現する譲渡益課税と、利子、配当といったような経常所得についてどこまで損益通算を認めるか。

他方、同じ株というリスク資産から生じた損益であれば、関連性が強いということで政策的に認めることもあり得るのではないかといったような観点から、今後、検討をしていく必要があるのではないかと考えております。

以上でございます。

田近主査

ありがとうございました。もう早速御意見を、どういう角度からでもお願いします。もう十分議論を、上月委員はいかがですか。

上月特別委員

やはり今は高所得者にとってすごく有利な税制になっていると思うんです。余り言いたくありませんがね。

田近主査

失礼しました。時間が気になっていたので急ぎ過ぎました。あと、金融所得課税の中で地方分を原田市町村税課長、お願いします。

原田市町村税課長

あえて特段付け加えることはございませんが、地方分につきましても、個人住民税の中に配当割、株式譲渡所得割等々で課税しておりますので、所得税の方と同じような検討課題があるということでございます。それだけを付け加えさせていただきます。

田近主査

どうも済みませんでした。ほかにございますか。

井戸委員、どうぞ。

井戸特別委員

やはり少し優遇し過ぎてしまっている。一番最初に田近委員が経済成長率と株価の推移や企業のキャッシュフローへインプライされたように、非常に景気が落ち込んだときに、何とか起業させなければいけないという施策でとられた特別の措置が、状況が全然変わってきたにもかかわらず、生き残っているというのが一番の典型的な問題点ではないかと、このように私自身は思います。

これが去年1年延びたんですけれども、何か株価に影響があったから延びたんだとか、すぐそういうふうに言われるんですけれども、株の変動はこんなことでは余り変動しませんで、別の変動要因の方がよっぽど大きいので、税制度の変化は非常に大きいと思いますけれども、だけれども、それだけで説明するような議論ではないのではないかと思うのが1つです。

それから、配当の二重課税の調整の問題は、非常に古くて新しい問題ですが、何らかの調整は必要なのかもしれませんけれども、どうしても限度があるので、調整し過ぎるのは問題だと思います。

というのは、法人のビヘービアは、本当に株主の利益を代弁して法人企業が企業活動を行っているのかというと、そうではないのではないか。そうではないにもかかわらず、株主利益の優先で企業が買収されたり何かされたりしているような制度、あるいはファンドの自由を許しているような制度を持っている方が問題なので、もっと企業は企業としての社会的責任も、従業員に対する責任も、それから生産活動に対する責任も果たしながらゴーイングコンサーンとしてどういうふうな活動を展開していくのがいいのか。そのときに配当に回すのはどの程度が適当なのかという基本的な原点に返った議論をした方がいいのではないかと思います。

田近主査

増渕委員、飯塚委員とかビジネスサイドからもお願いします。

増渕委員

今、去年の答申を読み直してみたんですが、基本的には同じ状況があると思います。私は、税率をそろえるという話自体に反対ということではありませんが、一方で現に課税されている税率を変えるということの影響は、例えば定率減税を廃止したときに、個人の負担感が所得税についてどうなったかということは、現実の問題としてあるわけですから、そのことも考える必要は1つあると思います。

それから、金融所得の一体課税という、ずっと言い続けてきたことについて、必要なインフラという問題もあると思いますが、どういう問題かというのは言わなくても皆さんおわかりだと思いますが、そういうことも進める中で、譲渡益と配当についての税率の問題も考える必要があるんではないかと思います。

もう一つは、さっきの配当の二重課税の調整の算数のところは、揚げ足とりかもしれませんが、それでいうところの0.20のところに入ってくる数字は0.10よりはもう少し上の数字の方がよりぴったりきますねということもあります。ですから、これは当たり前ですが、こういうところからは答えは出てこないので、もう一度去年の答申を見ながら考える必要があるんではないかというのが、今の時点で私が感じていることであります。

田近主査

ありがとうございます。飯塚委員、どうぞ。

飯塚特別委員

企業を運営していく上で資金調達というのは非常に重要なわけですけれども、2つの方法があると思うんですが、借入れするというのと、エクイティーで手に入れる。

日本の制度は、借入れに対しては非常にフェーバーで、ちゃんと損金が認められて、利息もいろんな事情で利息が異常に低い状態が続いていたりもするんですけれども、企業にとって利用しやすいのは、やはりエクイティーがいいわけで、エクイティーをもっと利用できる国の制度になってほしいというのを非常に強く感じております。

そういう中で、やはり株式市場の活性化というのは、まだ不十分のような気がしますし、個人の資産は巨大なものを持っていながら、企業を支える直接投資のようなところには、まだまだ不十分ではないかと思っています。

ですので、二重課税になっているというところも、借入れ、間接金融等非常にバランスが悪いんではないかというのを、日ごろ非常に強く感じています。これは個々の産業を強くするためにも是非早急に改善することが必要ではないかと感じます。

田近主査

では、北村委員、どうぞ。

北村委員

この問題につきましては、理論で言うと、やはりほかのものと、20%なら20%という形でそろえていくというのが理論的には正しいんだろうなと思うんです。だけれども、やはり証券市場への影響というものを考えざるを得ないんではないか。

去年10%のままでいってしまったのも、そういう影響を考えての上だろうと思うんです。

ですから、一概に全部そろえるという方向でいくのか、去年はその方向で私も一応賛成したんですけれども、よくよく考えてみますと、やはりちょっと影響が大き過ぎて、また、乗っとりとか買収とか、そういうようなターゲットになるというのも、やはり避けなければならないのかなと思います。

でも、これは税の問題だけではないと言われてしまうと、そうかもしれませんが、実際に考えてみて、やはり10%、20%というと、売買をしている人にとってはすごい大きな問題ではないかと思っています。

それから、5,000万超でしたか、その人たちの所得の捕捉ができていないのではないかと思うんです。ですから、新聞か何かで証券市場で何億儲けた人が税金を払っていなかったという問題も出ていましたから、やはり次の捕捉をどういうふうにするのかということをきちんとやっておく必要があるのではないかと思っております。

田近主査

では、大橋委員で一応区切りにさせてください。

大橋特別委員

この証券税制の問題は、昨年もこれだけ議論をされて、1つの結論が出ているので、それの方向性を大きく変えるということではないんですが、やはりものの考え方として、最近、短期保有、長期保有の株について、ここのところはやはり持っている方の目的といいますか、そういうものも違っているんではないか。

つまり、キャピタル・ゲインをスペキュレーションで取っていくという考え方と、やはり貯蓄よりは長期的な投資、それで投資によって特定の企業の成長なり発展を支援していくということにつながっているものもありますので、そういう意味では、考えるとすれば、どこで線を引くかというのは非常に難しいんですけれども、長期保有と短期保有ということで、税率を変えていくということは、やはりまだ議論の余地があるんではないかと考えております。

もう一つ、先ほど井戸委員からお話しいただいたことは、ある特定の企業といいますか、企業にそういうイメージを持っておいでになるとすると、大変悲しい話なんですけれども、これはある流れの中で株主を非常に尊重しなければいけない、株主第一主義だということで、一時バブルが崩壊してからの日本の企業は、そういう方向に流れていたのは事実だと思います。

しかし、基本的に日本の企業というのは、皆さんも御承知のように、欧米の企業に比べますと、はるかにトータルとしてのステークホルダーに対しての配慮といいますか、そういうものを強く考えておりまして、従業員は勿論でございますし、それから周辺の地域社会に対してもいろんなことを考えておりますし、そういう意味で、決して株主に対する配当だけを金科玉条に考えているわけではないということを、ちょっとよけいでございますけれども、弁解をしておきます。

田近主査

ありがとうございました。一応、次の納税環境ということでバトンタッチしなければいけないんですけれども、余り差し出がましいことも控えなければいけないんでしょうけれども、議論は2つ分かれるのかなと思います。

1つは、軽減税率10をどう考えるかということで、経済状況等から見て、ひとまずそれを20にしても問題が決して解けたわけではなくて、飯塚委員からおっしゃられたように、エクイティー・ファイナンスと借入れをどうするんだということ。あるいは受け取る方では長期短期もある。だからこそ譲渡益課税というのは余り上げられないということですね。

そういうことで、税調としても、やはり配当というか、二重課税問題というのはもう少し正面からやらないといけない。そのコンテクストである意味で、えいやという形の姿が二元的な所得税でもあるんだし、時間がもうありませんからあれですけれども、二重課税というと、非常に専門的で狭いような話に響きますけれども、まさに資本所得にどうかけるかという本質的な問題で、飯塚さんの話に一言つなげさせていただくと、たまたまこの間資料を見ていても、ベルギーで自分の資本、純資産に利子率をかけたのを、ある意味でノーショナルな利子負担だということで、その部分は引かせてあげるということもたった1つですけれども、アイデアとして出ている。そうすれば、エクイティーを持っていても借り入れても同じでしょうという考え方があります。

これは司会をしている私の個人的な意見にもなると思うんですけれども、税調としてもきちんと考えて、結果的にはあるところで、えいやっとやらなければいけないんでしょうけれども、そういう部分はどうするか。

そこに行くにも、この際、一つ軽減税率の話はある意味で決着して、その次のステップに行ったらいいのかなと思います。というのは、とりまとめというよりも、今日司会をさせていただいている私の考えです。

よけいなことを言ったかもしれませんけれども、以上です。少し時間を食い込みましたけれども、辻山先生、お願いします。

辻山主査

それでは、引き続き、納税環境整備の議論に入らせていただきます。私の方からは、お手元の資料の「企画18-9」「企画18-10」に基づきまして、納税環境整備についての懇談会の概況、それから、納税環境整備に関する論点について御説明させていただきます。

まず「企画18-9」をご覧いただきたいと思いますけれども、納税環境整備につきましては、これまで自由討議の中でも複数の委員から意見が出されておりました。この企画会合でも、各税目の中で、確か水野委員が座長を務められた個人所得税のところでも、この納税環境整備の問題が喫緊の課題であるという指摘があったと思います。

以前、香西会長からもお話があったと思いますけれども、6月以降、この「企画18-9」のペーパーにありますように、非公式の懇談会を4回開きました。ここにありますように、納税環境整備というのは、言うまでもなく納税者の利便性の向上、徴税事務の効率化、そして納税者の信頼確保に向けた基盤整備ということでございますけれども、懇談会では、ここにあるような具体的な施策について、ここに書かれているような事項について、事務局からの御説明を受け、実は本日の議論に向けて論点を少し整理させていただいたわけでございます。

それに基づいて作成いたしましたのが、次の「企画18-10」のペーパーでございます。ここには、5つほど問題を列挙させていただきました。

まずIIの「(1)納税者利便の向上・課税の適正化」という論点、これは勿論大前提でございますので、この問題があろうかと思います。

懇談会におきましては、この問題というのは、だれも反対する人がおりませんで、前向きな取組みを求めるという意見で一致しておりました。

この中にあります「[1]最近の納税者の信頼確保に向けた主な施策」ということで、この点につきましては、後ほど事務局の方から詳しい説明があると思います。

「[2]電子申告・電子納税」で、納税者利便の向上、徴税事務の効率化、いずれについても、この[2]の問題というのは非常に重要な意味があります。この問題、導入されてから3年が経過しているわけでございますけれども、まだまだ利用が十分ではないということで、これから利用者の数を増やしていくことが必要なんですけれども、一つのネックは添付書類の問題があったと思いますけれども、これも最近省略されておりまして、後から出しておりますいろいろな電子化による送付というのも一つの方法かなと思われます。

次に「(2)納税環境を取り巻く最近の状況変化」でございますけれども、これは「(3)納税者番号制度」とも関係を持っておりますが、一応別の問題として最近の納税環境に関する議論として、ここに列挙されておりますいろいろな動きがあることは委員御承知のとおりだと思います。

[1]の社会保障番号につきましては、昨年の経済財政諮問会議からその導入について議論されまして、既に本年の7月に平成23年度中を目途に社会保障カードを導入することが決定されているようでございます。

この社会保障番号にせよ、社会保障カードにせよ、社会保障分野でのサービス向上等を目的として導入されるわけですけれども、さてこの番号としてどれを使用すべきかということは、これからの議論、検討に委ねられることになっております。

この実務的な議論の整理という段階では、社会保障番号というのは、例えば基礎年金番号、住基コードの拡張、新たな番号の創設、あるいはそれらの組み合わせとか、いろいろな案が考えられているわけでございますけれども、それぞれいろいろ解決すべき課題も多く、導入に当たっては国民的なコンセンサスが必要だということが、懇談会における指摘でございました。

特にもう一つの動きとして、IT戦略本部の重点計画というのがございまして、そこでももう少し住基ネットの活用、先ほどの電子申告・電子納税の部分もございましたけれども、もう少し活用を考えてみたらどうかという議論もございました。

「(3)納税者番号制度」の問題、これが税調でも何度も議論されてきたと思います。納税者番号というのは、本日のタイトルの納税環境整備の中で最も重要な検討課題でありまして、経済財政諮問会議でもこれまで以上の具体的な検討が税調に求められているということです。

お手元の参考資料に、これまでの税調における納税者番号に関する議論がまとめられておりますけれども、いろいろ一般的に、反対側からも賛成側からもイメージが非常に抽象度が高い議論が多くて、なかなか先に進まないということですから、懇談会においては少し今回の税調ではこの納税者番号の仕組みとか、一体これを導入すると何ができて、何ができないのか。過度の期待もできないわけですけれども、できるところは何かということをきちっと整理して、具体的な施策について、今回の答申に書き込んだらどうかということで、議論が進んでおりました。これは後ほどまた事務局から御説明があると思います。

4番目は、納税環境整備と罰則ということで唐突かもしれませんけれども、これは是非必要だということで、タックス・コンプライアンスというのが確保されていないと、納税の信頼を確保できないということで、これが出てまいりました。

脱税犯の懲役刑というのは、後で資料にも出てまいりますけれども、昭和56年に現在の5年に引き上げておりますけれども、その後大口、悪質な脱税事件が多発しておりまして、そのほかの経済的な罰則がどんどん引き上げられている中で、これがまだこの段階ですから、この段階ではやはり一般予防効果が十分に期待できる水準に上げる必要があるのではないかという指摘がございました。

最後の部分は、租税教育と広報の問題です。これは、何回もこの税調の早い段階で、委員の中から御指摘がありまして、非常に納税というもの、税金で社会が支えられているということの周知徹底、税の役割、税の使途、これらについて、若い方から理解してもらう。更に現状についても、既に納税者の方々にも十分広報活動が推進されるべきであるという御指摘であったと思います。

ざっと大ざっぱでございますけれども、この懇談会での論点を5つほどピックアップさせていただきました。

あとは事務局から御説明いただきまして、少し時間が食い込んでおりますけれども、25~30分近く議論ができると思います。

それでは、先に事務局から御説明をお願いします。

星野税制第一課長

それでは、私から「企画18-11」の資料に基づきまして、主な資料をピックアップしながら、簡単に御説明をしたいと思います。

まず、1ページにつきましては、納税環境整備の議論に当たって、この図にあるとおり、9つほどの要素があるわけでございまして、こういった要素がいろいろ組み合わさって納税環境整備の議論が行われるということでございます。

2ページ、3ページ、これはこれまでの施策の概要でございますけれども、昭和56年、59年当時は、各種適正化措置を行ったわけでございますけれども、最近、平成18年、あと次のページで19年度におきましては、納税者利便に資するような施策を中心として、納税者の信頼確保に向けたさまざまな施策を行ってきたわけでございます。

4ページ以降、19年度に行った主な施策の内容について資料をお付けしておりますけれども、今後の検討課題として、7ページをご覧いただきますと、[1]のところで第三者作成書類の添付省略範囲というのが載っているわけでございますけれども、今後これを更に拡大して、電子申告を行いやすくするということが、1つの検討課題でございます。

10ページ、電子納税の関係でございますが、これを更に普及するために、現在、納税者が使用しておりますインターネットバンキングを使用しないで済む簡便な電子納税の方法の検討が考えられるのではないかといった論点が出ております。

12ページ以降「納税環境を取り巻く最近の状況変化」ということでございますけれども、先ほど辻山委員から、いろいろ御説明のあったとおり、社会保障番号、社会保障カードにつきまして、議論が既に行われているところでございます。

12ページが、経済財政諮問会議に提出された資料でございます。これを受けて、13ページに本年7月、政府・与党合意により新たな年金記録管理システムの構築のために、平成23年度中を目途に社会保障カードを導入することが決定されておりまして、15ページに書かれておりますけれども、先月末から有識者による具体的な検討が開始されているということでございます。

今後、社会保障番号の付番方法として、基礎年金番号、住民票コード等、どんな番号を付けていくかといったようなことについて議論が行われると考えておりますけれども、この関係につきまして、省庁関係の連絡会議が行われておりまして、16ページ、17ページに、その関係資料を付けさせていただいているところでございます。

18ページ以降が、住基ネット、「住民基本台帳ネットワークシステム」についての資料を付けさせていただいております。

18ページをごらんいただきますと、これは住民の利益の増進、国・地方公共団体の行政の合理化に資するために、住民基本台帳をネットワーク化しまして、全国共通の本人確認ができるシステムができているわけでございまして、電子政府・電子自治体の基盤として、今後不可欠だとされているわけでございます。

18ページの右下を見ていただきますと、現在、例えば旅券の発給申請ですとか、各種年金の支給とか、あと試験などの検定の際に、本人確認を行うことで、このシステムが利用されておりまして、次の19ページにも、その利用状況が広がっているということで書かれております。

先ほど辻山委員からも御案内がありましたとおり、20ページにIT戦略本部の重点計画でも、政府の方針として住基ネットの利用・活用の推進が掲げられているところでございます。

納番につきましては、23ページ以下、36ページまで資料が付いております。ちょっと制度を御説明いたしますと、25ページをご覧いただきたいと思います。納税者番号制度ですけれども、納税者に広く番号を付与して、その上で取引に際して取引相手にその番号を告知する。そして、納税者と取引の相手方が、それぞれ納税者ですと税務当局に納税申告書を出す。それに自分の番号を書く。取引相手方は、その関連の情報を申告書に書いて、番号を付けて提出する。

その上で、この2つの情報を税務当局が番号をキーとして、集中的に整理、名寄せをしてマッチングするというのが納税者番号制度の仕組みでございます。住所、氏名ではなくて、番号で資料、情報が整理されるということで、効率化が図られるということでございますけれども、この制度を導入するに当たって、どういう点が論点になるかということが、25ページの下の点線の中に書かれております。

どういう番号を付するかという付番制度の問題と、もう一つは番号記載の対象となる取引の範囲、この2点が最も重要な点でございまして、納税者番号制度はその2つの論点が融合したものだと言えようかと思います。

26~29ページまでが、各国の納番の制度の概要ですとか、税調における納番の議論の推移といったものを付けさせていておりますけれども、今、申し上げた付番制度の問題については、30ページをご覧いただきたいと思います。

個人所得課税の論点整理で、この付番制度の問題について整理をされておりますけれども、下の枠組みに書かれておりますように、この付番制度についての基礎的な条件として、法律上の根拠を持つことと、全国一律の番号によって大多数の国民を二重付番なく生涯にわたってカバーしていることとか、番号を付与した後の住所、氏名の異動を管理できる体制となっていること等々、こういった条件を満たす番号である必要があるという整理がなされているわけでございます。

この関連で、31ページ、これは以前から議論されていることですけれども、基礎年金番号とか住民票コード、先ほど申し上げました最近検討が開始された社会保障番号の今後の議論の動向に留意しながら、今、申し上げた条件に照らして、その活用可能性について総合的に検討を行っていく必要があると考えているわけでございます。

もう一つの論点として、資料情報制度の論点がございます。

32ページをご覧いただきますと、我が国の法定資料について、どういうものが出されているかということでございます。所得捕捉を高めるために、どういったような資料を収集すべきかということでございますけれども、この関連で33ページに、諸外国、日本も含めてどういった資料が提出されているかというのをまとめております。これを見ていただきますと、給与所得関係とか金融所得関係、フローの関係ではおおむね支払調書などの提出が義務づけられているわけでございますけれども、他方、事業所得関係では、記録保存義務とか記帳義務などは課されているけれども、取引に関する資料提出は義務づけられていないということが言えようかと思います。

他方、資金のフローとか、財産のストックの把握という面で見てみますと、間接的な所得捕捉の観点から、例えばアメリカの場合は、一定の国内送金、海外送金、あと預金の出入金等について資料の提出がありますし、あとフランス、オーストラリアでは、預金口座の開設について資料情報制度が設けられているということでございまして、今後こうした諸外国の例も参考にしながら、より充実させる方向で検討していくということが、1つの論点になろうかと思います。

いずれにしても、今、申し上げたとおり、納税者番号は、その番号制度の論点と資料情報制度の論点をどのように進めていくかということで、この2つの論点を整理しながら、国民に納得できる議論を進めていくということでございます。

ただ、35ページのロ)のところを見ていただきたいんですけれども、仮に納税者番号制度が導入されたとしても、例えば自営業者などのすべての取引を把握するということは、実際上不可能でございまして、所得把握ということに関して一定の限界があるということについては、留意する必要があるのではないかといった議論が懇談会でも出ておりました。

次に罰則関係でございます。これが37ページ以下でございます。辻山委員からも御指摘がありましたとおり、今、脱税犯の懲役刑については、昭和56年に現在の5年に引上げられたわけですけれども、その後引上げが行われておりません。

42ページ、直近1年間の脱税事件を見ても、大口・悪質な脱税事件が多数発生しているということでございます。

最近の環境変化として、43ページをごらんいただきますと、経済犯罪について懲役刑が、例えば証券取引法の関係ですとか、軒並み5年から10年に引上げられていて、経済犯罪に対する重罰化が進んでいるといったようなことがございます。

44ページ、なかなか調査の困難性が増している中で、脱税に対する刑罰について一般予防効果が十分に得られる水準とする必要が生じてきているのではないかといった議論があろうかと思います。

45ページ、最近の傾向として、複雑な金融商品の登場ですとか、電子商取引の普及によって、秘匿性の高い取引の増加を背景にして無申告の脱税事件が増加しておりまして、納税道義の著しい低下もうかがわれるところでございまして、こういった無申告の取扱いみたいなことも論点としては上がってこようかと思います。

いずれにいたしましても、罰則全体、例えば罰金刑につきましても、見直しが行われておりませんので、罰金刑も含めて、罰則の全般的な見直しを検討する必要があるのではないかということでございます。

51ページ以降が、租税教育、広報・広聴の関係でございます。簡単に御紹介いたしますと、租税教育につきましては、51ページの(1)のところに書かれておりますけれども、教育関係者、あと国税・地方税の租税教育推進協議会などを、全国各地に設けて、租税教育の開催などを行っているわけですけれども、今後の課題として一番重要だと考えておりますのは、次の52ページでございますけれども、やはり学校教育における租税教育を一層充実していくということだと考えております。改正教育基本法を踏まえて、学習指導要領の記述を充実してもらうといったようなこととか、あと鍵となる教育現場の先生方の理解を得るための取組みを進めることが課題だと考えております。

広報・広聴につきましても、この52ページに書かれているとおりの取組みをしてきているところでございます。

最後に53ページ、納税者サービスの一環として「事前照会に対する文書回答手続」というのを以前からやっているわけでございますけれども、経済界などからは、極めて有効な制度であるけれども、対象が確実に実施される取引に限定されているとか。関係者名が公表されるなど、活用が躊躇される面があるということが指摘されておりまして、こういった納税の多様なニーズに対応するために、対象取引の緩和などの改善を今後検討することが考えられるのではないかと考えております。

私からは以上でございます。

辻山主査

ありがとうございました。

引き続き、総務省の方からお願いします。

滝本企画課長

引き続きまして、納税環境整備、地方税関係の説明をいたします。資料は「企画18‐12」でございます。

1ページ「納税者の信頼確保に向けた主な施策(地方税関係)」といたしまして、これまで講じてまいりました制度改正を一覧で掲げております。特に納税者の利便性向上につきましては、3ページ「地方税の申告手続等の電子化について」でございます。資料の真ん中辺りの「2.地方税電子化の進捗状況」のところを見ていただきますと、都道府県、政令指定都市が中心になりまして、社団法人地方税電子化協議会というものを設立いたしまして、法人事業税、法人住民税、償却資産に係る固定資産税につきまして電子申請が可能となっております。

今後、個人住民税の給与支払報告書の電子化など、対象税目、手続を拡大していくことになってございます。

5ページ、本年度の税制改正で電子署名、電子証明書の手続が簡略されたことによりまして、地方税におきましても、見ていただきますと、今年の4月以降、利用届出件数あるいは申告件数が急速に伸びております。今後、政令市以外の一般市区町村の参加拡大を図ることが喫緊の課題であると認識しているところでございます。

6ページ「地方団体における徴収体制の強化」でございますが、各団体では限られた人員、予算の中で、いろんな工夫を凝らして徴収体制の強化に努めております。非常勤職員などを活用いたしました人員組織体制の強化でありますとか、滞納処分の都道府県、市町村を通じた事務の共同化・広域化。一斉差押えやインターネット公売など、滞納処分の強化。また、滞納者への自主的納付の呼びかけなど、徴収に関するノウハウを有する民間事業者の活用などでございます。

7ページ、民間委託の一例といたしまして、制度改正によりまして、平成15年度から可能となりましたコンビニ収納の資料でございますが、次第に活用する団体が増えているところでございます。

8ページ、クレジットカードを利用した地方税納付でございます。これまでに、藤沢市、三重県玉城町、宮崎県の3団体でその運用が始まっているところであります。

10ページ、公的年金からの個人住民税の特別徴収であります。これは今後の課題ということでございますが、昨年12月の当政府税調の答申でも、納税の利便性、徴収事務の効率化の観点から所得税や介護保険料と同様に、個人住民税についても公的年金からの特別徴収、天引きを速やかに実施すべきであると触れていただいているところでございます。

11ページ「公的年金受給者に係る税・社会保障料の徴収方法の比較」であります。所得税、介護保険料は既にやられておりますし、国民健康保険料につきましても、平成20年度から天引きが導入されることになっているところであります。

以下、12~14ページは、罰則・脱税関係でございますが、主として油を混和することによります軽油関係の脱税事案が多いわけでございますので、軽油引取税を中心にいたしまして、罰則の強化などにこれまで努めてきているところでございます。

地方税関係は以上でございます。

辻山主査

それでは、ただいまの説明を基に、御意見をお出しいただきたいと思います。

まず、中里委員、井戸委員、大橋委員、水野委員の順番でお願いいたします。

中里特別委員

納税環境整備についてのこの懇談会での議論が、問題の集約に本当に役に立ってよかったと思いますけれども、国税と地方税におけるeTAXの問題について、これは単純に納税環境整備にとどまらない行政改革等に資する非常に大きな意味のある、将来性のあるプロジェクトだと思います。ただ、残念なことにまだ一般国民に対しては、必ずしも多くは知られてないのではないかと思いますので、啓蒙活動を更に活発に国税・地方税当局の方で行っていただきたいというふうに、専門家として思います。

特に小学校の公民の教科書とかを見ると、環境とかのことはやたらと記述が多いんですが、だからどうという話ではないんですけれども、eTAXの1つや2つ、今、中間試験のシーズンですが、がんがん出すぐらいの方法になってもいいのではないかと。そのぐらい重要な問題ではないかと思っております。

以上です。

辻山主査

井戸委員、どうぞ。

井戸特別委員

納税者番号制度のベースに何を利用するかというときに、2年前だったと思うんですけれども、ここの税調で基礎年金番号と住民基本台帳番号とが比較されて議論されたんですが、私はそのときも申し上げたんですけれども、我々、住民基本台帳番号制度を導入したのは、実をいうといろんな番号を利用した利用形態がこれからのIT社会において不可欠になってくる。そうした場合の社会基盤として、本人特定のインフラを用意しなければいけない。そういう住民基本台帳番号制度を導入したはずなんです。

実を言うと、私もその答申を出した委員会の事務局の1人だったわけですが、そのように考えてみますと、何で基礎年金番号があんなに5,000万件も宙に浮いているかというと、もうはっきりしているんです。住民基本台帳番号制度とのドッキングを全然していなかったからなんです。だから、そういう意味では基礎インフラである住民基本台帳番号制度をどうしても使わざるを得ないというところをベースに御議論をいただく必要があるのではないか。どこにいても一生変わらない番号、ダブル付番がない、セキュリティーシステムがきっちりしている。

ただ、制度をつくるときにいろんなことを言われてしまったものですから、プライバシーの点で、いろいろ法律上の制限がありますから、そんなものは利用の必要性に応じて法律改正をしていけばいいということだと思うんです。ですから、この点を十分御議論いただきたいと思います。

この社会保障カード構想なるもの。見てください、全く私が持っている住民基本台帳カードと同じなんです。このICチップにどれだけのものを入れ込むかという。

辻山主査

14ページですね。

井戸特別委員

はい。違いは、このICチップにどれだけの情報を入れ込むかということだけなんです。それをなぜか知らないけれども、違うカード、違う番号という議論になるんです。

ですから、私は別にこの番号を使わなくてもいいんですが、必ず本人確定の基礎基盤として、この番号をベースにして構築を考えないと、非常に社会的に無駄な作業をダブルですることになってしまうということを強調したいと思います。

ただ、1つだけ問題点がありまして、外国人登録ができていない。外国人登録がこの住民基本台帳カードではできていない。ですから、これは外国人登録についても同じようなことをやれば、そんなに苦労は要りませんし、外国人登録の窓口も市町村ですから、市町村にそのシステムを導入すれば動いていけるということを強調させていただきたいと思います。

それから、公的年金が住民税の控除をしていないというのは、嫌がらせとしか言えませんね。なぜそういうことが行われるのか、去年の答申にも書いていただいたんですが、いまだに自分のところの国保は20年度からやるけれども、住民税は21年とか22年というのは、どういう役所間の話になっているのか全く理解できないようなことが現実には政府において行われているいい例ではないでしょうか。

以上です。

辻山主査

ありがとうございます。それでは、大橋委員、どうぞ。

大橋特別委員

私が発言すると、企業の立場からというふうに皆さん思われるんですが、同じ企業でも中小企業あるいは零細企業の立場からちょっとお話しをしたいと思います。

と申し上げますのは、皆さん御存じないかもしれませんが、実は全国組織で法人会という組織がありまして、これは今、全国で110万社が加入している組織です。東京だけで20万社が加盟しております。

たまたま私が全国の法人会連合会の副会長をやっているものですから、その実態を知っているんですが、御承知のように110万社とか、東京でも20万社ということは、ほとんど中小・零細企業の集まりでございます。

そこで何をやっているかというと、基本的には会員が集まりまして、健全な経営を今後営んでいって、更に自分たちが発展するためにはどうしたらいいんだということをみんなで議論しています。

もう一つは、そういう健全な経営を前提とした上で、健全な納税をしようではないかということを目的とした組織でございます。

そういう意味では、今の環境整備という意味では、非常に涙ぐましい努力をしている組織なんですが、これは財務省あるいは国税庁の皆様方はよく御理解をいただいていると思うんですが、いずれにしろ、納税というのは日本の社会に自分たちは生を受けて、もろもろな公益を実際に享受している者として、納税するのは義務ではないか。これは同時に一種の社会貢献だということを、非常に強く意識しながらやっている活動です。

今、お話が出ました租税の教育につきましても、この法人会という団体は自らパンフレットもつくりまして、それで学校に行ってそういうパンフレットを配ることもいたしますし、場合によっては社会科の教育の中で法人会の代表者の人たちが子どもたちに教えているんです。

そういうことをやっている組織もありますので、日本の租税教育も捨てたもんじゃないと思っているんですが、是非そういう動きについても皆様に御理解をいただいて、今、110万社とか、東京で20万社というのは、50%を切るぐらいの法人が加入しているんです。しかし、半分しか入ってないということで、我々の活動はこの会員をもっと増やして行きたいということを考えているんですが、バブルがはじけましてからは、どちらかというとそういうことに対する関心が非常に下がっておりまして、現在やや漸減しているという感じなんです。

ですから、そういう意味で租税教育というのはやはり草の根でしっかりやっていく必要があるのではないかと考えております。

以上、御紹介をいたしました。

辻山主査

ありがとうございました。それでは、水野委員、お願いします。

水野特別委員

この納税環境整備ですけれども、手短にまとめていただいたと思いますが、説明を伺っていますと、納税環境整備の問題というのは何度も出ていますけれども、一つには税制に対する信頼があって、なおかつ納税者にとって何らかの利便を与えるもの、こういうことが前提になっているわけです。

今日お話の中心にありました納税者番号制度、かつて、先程も出ましたけれども、どんなものを持ってくるか。例えば北欧型の住民登録のようなものですと、全員把握できる代わりにどこにメリットがあるかわからないようなところがありまして、他方でアメリカの社会保障番号は、いわゆる社会保障、定年後の年金を受け取れるから喜んでみんな賛成するんではないか。

こういう比較がいろいろありましたが、さて、今度具体的に納税者番号というものを考えていく場合に、どういう利便性があるんだろうかということはひとつ、問題意識というか、私の頭の中にございます。

以前、住民基本台帳のネットワークを導入するときには、他方でプライバシーの問題があるのでできるだけ情報は入れないように、基本四情報だけを入れたカードにしたいということで出発したわけですが、そうするともらった納税者は何の利益もなくて、単に自分が番号を付けられただけのような印象しか受けないんです。

では、逆に便利なようにしていきましょうというと、今度はいろんな情報が漏れてしまう心配があるんです。そういう問題。

もう一つ、星野課長が最後におっしゃいましたように、いわゆる事前照会に対する文書による回答、これは今、既に国税庁のホームページなどでも、非常に詳しく個別の事案の紹介などが出ているわけです。特に移転価格税制に至っては、事務運営指針というものの中に事例集という形で80ページぐらい図式で、非常に細かく詳細に情報が提供されているんですが、この納税者番号というのも、情報を集める一つの重要な手段でありますけれども、逆に納税者にどんな便宜が供与できるのか、こういう観点からも考えていく必要があるのではないかと思いますが、よろしくお願いいたします。

辻山主査

ありがとうございます。松田委員、どうぞ。

松田委員

本人確認に住民基本台帳番号を使うという案ですけれども、これは法改正が必要になるはずなんですけれども、是非とも早期にやるべきだと思います。これは使う個人もメリットがあるし、市町村なり国税なりも事務の簡素化につながる話です。

ただ、これは黙ってこれだけ出すと、住基番号を納税者番号に使う第一歩なんていうふうに誤解されやすい話ですので、その辺はそうではなくて、今回早期にやるのは本人確認のところだけなんだということを、ちゃんと言いながらやっていかないと、ためにする議論につぶされるおそれがありますので、慎重に、なおかつ早くやるべきだと思います。

以上です。

辻山主査

ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。永瀬委員、どうぞ。

永瀬特別委員

今、非正規化が大変進んでいまして、非正規の人については、実は社会保険の加入、あるいは納税の両方について情報が余り取れてない部分があると思います。そして、その人たちが実際に、例えば雇用保険に関しても年金保険に関しても、今まで正社員でしたらば、企業に雇われた段階で社会保険に入って、徴収もされるし給付されることになったわけですけれども、非正規社員が今後も増えていって、いろいろな仕事を一時的に持ったりする人たちが増えていく中での所得データをどう取り、かつ社会保障の中の負担も給付も受けられるという形を、どういうふうに整えていくかということが非常に大事なんではないかと思います。

そういう観点から考えますと、日本では給付面で社会保障等も随分税金が一体的に入っていますので、つまり貧しいところだけに入っているわけではなくて、例えば半額とか、非常に一体的な形で給付の方は運営されていますので、納付の方についても、私はかなり一体的に考えて、その情報をいろいろに利用することが大事であり、かつ自分が入った場合にメリットがあると、例えば非正規社員の人が考えられるような形で情報を取らないと、細切れになった労働等の情報は取れないし、またその人たちがそういう社会の安全ネットの中に入ることが難しくなるので、そういう形での番号を考えた方がよろしいのではないかと思います。

辻山主査

ありがとうございました。いかがでしょうか。

それでは、最後に井上委員と秋山委員、どうぞ。

井上特別委員

この納税者番号というものを新たにつくるとか、どうのこうのという問題はおかしなことであって、もう既にある住民基本台帳とか、そういうものを利用するというのが、経費の節減という面からもしなければならない。

先ほど井戸委員からもお話がありましたように、やはり住民基本台帳を使うのが一番いいのではないかと思います。

2点目としては、税の教育の問題ですけれども、小学校から徹底的に教育をする必要があるだろう。それをどうして文科省として取り入れないのかということが、私としては非常におかしく従来から思っていました。やはり学校の先生によって取り入れたり、取り入れなかったり、先ほど大橋委員からもお話がありましたけれども、法人会でいろいろとやっておることも聞いておりますけれども、税を知る週間でいろんな作文集を出してもらったりということをやっておるようですけれども、もう小学校のときに徹底的に仕込んでおくというのは当たり前のことだと思うので、それは是非とも実行させるように文科省の方に申し入れをしていただきたいと思います。

辻山主査

それでは、恐縮ですけれども、最後に秋山委員、御発言をお願いします。

秋山特別委員

今回、私もこの懇談会に参加をさせていただきましたので、コメントをさせていただきたいと思います。税調の議論に加わるようになって、例えば答申が出たりするたびに、それに対して国民という言い方もなかなか難しいんですけれども、どういう受け取られ方をして、どういう反応があるかというのを経験してくる中で、なかなか理解を得たりコンセンサスを得たりすることが、非常にハードルが高いという実感といいますか、問題意識を持っている中で、今回こういう形で懇談会で取り上げていただいて、論点が整理できたことは大変いいことだと思っていますし、これを是非答申の方にも生かしていきたいと思っております。

もともとこの納税環境整備について議論しようというところのキーワードが、納税者の立場に立ったときにどうなんだというような部分で、論点は今日、辻山委員の方から御紹介いただきましたけれども、特に税制がいかにすばらしい理念の下、破綻のない理論からつくられたものであったとしても、納税者の立場から見たときに、執行の部分で何か問題があったときには、やはり非常に信頼感が損なわれるというような部分があろうかと思います。

そういった中におきましては、今日コメントをさせていただきたいのは2点でございまして、1点目は、本日の議論の中でも委員の方から御発言がありましたように、例えば高額所得者の所得は捕捉されていないのではないかというような、所得捕捉に対しての不信感、どうなんだろうかという疑問のような部分、これにつきましては、完全にカバーはできないかもしれないけれども、以前からずっと議論されている納税者番号を本格的に取り組むことで、第一歩は進めていけるのではないかと。

この納税者番号をこれから考えるに当たりましては、先ほど永瀬委員からお話がありましたように、私も税と社会保障は今後抜本改革の中でも、負担と給付、これを一体として見ていくことが非常に大切だという観点から、今、検討されている新しいものにつきましては、まだ内容はわかりませんけれども、そういうものに資するものとして納税者番号を、なるべく早く進めていけるといいと考えます。

もう一つは、タックス・コンプライアンスの問題ですけれども、例えば脱税等の経済犯罪につきましては、一般の犯罪と動機に少し特殊な傾向があると思いますので、むしろ罰則の強化の中でも罰金刑をもう少し重くすることによって抑止効果を上げる。そういう中で、今の取締りの体制の中でも、ある程度のタックス・コンプライアンスのレベルを確保していくということも検討に値する時期に来ているのではないかと考えます。

辻山主査

ありがとうございました。時間も限られておりますので、以上でセッションの討議を終わらせていただきますけれども、最後に罰則の問題の御意見がないなと思っていましたら、今、秋山委員から御指摘いただきまして、5点についてそれぞれ有意義な意見を出していただいてありがとうございます。

一言、私の感想なんですけれども、やはり納税者番号と言われてきたものは、そろそろ少し具体化する時期に来ているのではないか、社会のインフラとしてですね。

そのときに、やはり番号を振るということが、国民にとってどういう利益があるのかということを明確に示していく。水野委員からも御指摘がありましたけれども、番号を振ることによってより有利になるんだというところを、どういうふうに打ち出していけるのかということが、答申の中でも触れられたらいいと思います。

それでは、香西会長、よろしくお願いいたします。

香西会長

どうも活発に長時間御議論をいただきまして、ありがとうございました。最後になりますが、今後のスケジュールについて申し上げておきたいと思います。

まず次回の日程でございますけれども、10月26日、金曜日、午後1時30分~3時30分までを予定しております。議題としましては、個人所得課税についてということを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

次回以降の予定につきまして、時間帯等が最終調整中でありますけれども、10月30日、火曜日の午後、議題としては、経済・財政総論について、日本経済全体の状況とか歳出・歳入を含めた財政全体の状況とそれに対する税のあり方といったことについて御議論をお願いしたいと思っております。

更にその次は、月が変わりますが11月2日、金曜日の午後を予定しておりまして、議題としては消費課税を予定しております。

日程等は確定次第、事務局から御案内を差し上げますので、是非御参加いただくようにお願いしたいと思います。

本日は「企画会合」をこれで終わりますが、お忙しいところを大変有益な御議論をしていただきまして、ありがとうございました。以上で散会といたします。

どうもありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。