企画会合(第17回)議事録
日時:平成19年10月12日(金)13時30分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇香西会長
ただいまから「税制調査会第17回企画会合」を開催したいと思います。
皆様におかれましては、お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議事についてでございますけれども、本日は公益法人課税、国際課税の2つの議題を予定しております。
公益法人課税につきましては、水野委員に、また国際課税につきましては、中里委員にそれぞれ問題提起、議事進行をお願いいたします。
大まかな時間割りでございますけれども、本日は全体で2時間半を予定しております。最初の1時間半を公益法人課税で、次に国際課税を1時間程度と一応は考えておりますが、これは皆様の御議論の発展によって、多少流動的になると思います。
それでは、水野委員からよろしくお願いいたします。
〇水野主査
それでは、ただいま香西会長から御指名いただきまして、私が公益法人課税につきまして、進行係を務めさせていただきます。
最初に一言申し上げますと、公益法人制度改革は、後で御説明があります。また私のレジュメにも書いてございますが、大分前から進んでまいりました、平成18年に公益法人三法ができ上がりまして、平成20年12月1日から新しい公益法人制度が始まることになっております。
それに合わせまして、平成20年度税制改正に公益法人に対する課税を検討していただくというのが、1つの課題となっているわけでございます。それでこういう形で時間をとっていただいております。
まず公益法人制度がどういうものに新しくなるかということにつきまして、内閣官房の行政改革推進本部事務局の原山審議官からお話をいただいて、その後で事務局から公益法人に係る税制の諸制度、論点といったものについて御説明をいただき、最後に私が論点を幾つか挙げさせていただくという手順で進めさせていただきたいと思っております。
行政改革推進本部事務局の原山審議官、早速お願いいたします。
〇原山審議官
それでは、お手元にございます「公益法人制度改革の概要」という横長の冊子を使って御説明させていただきます。
1ページをご覧いただきまして、現在、存在しております社団、財団、いわゆる公益法人は、明治29年につくられました民法の規定、そこにございます民法34条の学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する法人については、主務官庁の許可を得て、法人とするという条文に基づきまして、それぞれの主務官庁、国にあってはそれぞれの大臣の裁量権に基づく許可があって、初めて法人格を持てるという仕組みになってございます。
2ページは、それぞれの裁量権をどう改めるか。これが各省庁の箸の上げ下ろしまで介入する根っこになっているのではないかということでございまして、これを改正しようという主眼でございます。
現状そこの円グラフにございますとおり、約2万5,000の公益法人がございます。うち1万8,000強が都道府県知事の許可したもの。7,000弱が国が許可したものでございまして、おおむね財団と社団が半々でございます。
下に「公益法人の具体例」を書かさせていただいておりますが、経済団体から始まって学術団体、芸術団体等、森羅万象に及んでいるところでございます。
3ページは、今、水野先生から経緯の概要がございましたので、途中は端折らさせていただきますが、平成15年6月に抜本改革をしようという閣議決定がございまして、その後、有識者会議という形で民間の方々によるオープンな議論を1年間かけて、26回開催していただき、その報告書をとりまとめたのが平成16年11月です。
その後、再度、閣議決定を12月に行いまして、その中で法制化に向けて具体的な検討を行おう。税制上の措置について、専門的な検討を進め、平成18年の通常国会に法案を提出しようということになりました。
これを受けて、当税調のWGにおいて検討していただき、そこにございますような「新たな非営利法人に関する課税及び寄付金税制についての基本的考え方」という報告書をまとめていただいたところでございます。後ほど内容の紹介があると思います。
これが出たことを受けて、再度、平成17年12月に閣議決定をして、平成18年の通常国会に法案を提出すること。それから、新制度の施行までの間に、税制上の措置を講ずることを決めていただいたところでございます。
4ページですが、昨年5月に法案が可決・成立をみました。
後の資料で御説明させていただきますが、この制度を仕切る「公益認定等委員会」というものが衆参両院の同意を得て4月に発足し、政令・府令についての検討を合計11回重ねていただきまして、政令・府令の決定に至ったのは、つい先般の9月でございます。
途中省略させていただきまして、6ページをご覧ください。新制度は3本の法律からなっております。我々が通称「一階法」と呼ばさせていただいているものは、登記のみで法人格を取得できる制度の創設でございます。登記のみといいましても、後ほど9ページで御説明させていただきますが、法人のガバナンスについての規定はそれなりに厳しく記載されております。いずれにしても、それらを満たして登記をすれば、一般社団あるいは一般財団として法人格を持つことができるものでございます。
我々が「二階法」と呼んでおりますのは、そのうち法令にのっとって公益性があると認定を受けたものが公益社団、公益財団になれるというものでございます。
また「整備法」と呼んでおりますのは、既存の2万5,000の公益法人が新たな制度へ移行するための手続を定めたものでございます。
下の円グラフをご覧いただきますと、従前のそれぞれの主務官庁が裁量権を発揮するということではなくて、法令にのっとって、かつ国にあっては、そこに7名のお名前が書いてございますが、公益認定等委員がルールの整備あるいは認定、更には監督について責任を持つ仕組みになっております。都道府県にあっても、同様の合議制の機関をおつくりいただいて、そこで御審査いただく仕組みになっております。
ちなみに、今、司会をお務めいただいている水野先生も公益認定等委員でありますし、またこの中に参加されておられる出口委員もこの委員会の委員であられます。
7ページをご覧いただきまして、既存公益法人の移行手続について、概要を定めさせていただいております。
一番上の現行の公益法人は2万5,000でございます。これは来年12月1日に施行されることになりましたが、名称は「特例民法法人」といって、現在の主務官庁の監督下の法人のままでございます。
これが左にございますように、5年の間に新しい制度に移行していただく。移行できない場合は、右下にございますとおり「解散」になって、全財産を供出していただくことになります。
移行の中で、公益社団、公益財団に移行するためには、認定を受けていただく必要がありますが、さまざまな認定要件がございます。一番中核になりますのが、そこの四角の中に書いてございます費用ではかって100分の50以上公益目的事業をやっていることというのが、認定要件の中核になります。
また、一般社団、一般財団に移行するときも、認可が必要でございまして、特に認可の中で重要になりますのは、純資産額を計算していただいて、その純資産額について、一般法人にいった以降も、引き続き、公益的にその財産額を消費するという計画です。これを我々は公益目的支出計画と法令上呼んでおりますが、この計画を策定していただいて、その計画が適切であることを認めていただいて、認可が得られるという仕組みになってございます。
8ページは、今、申し上げたとおり、公益法人になるためには、100分の50以上公益目的事業を行っていなければならないということでございます。ということは、すなわち、事業の一本一本の公益性について、審査を経ていただくことになります。
左の「公益目的事業」として、1つの法人が「調査研究」「人材育成」「資格認定」「表彰」といったさまざまな事業をやっていると思います。それぞれの事業についての公益性を審査させていただくとともに、原則、公益事業であるからには、そこに「実費弁償」と書かさせていただいていますが、収入が適切な費用を超えないことという要件が法律上ございます。かつ、仮に収益が出たとしても、新しいコンセプトでございますが、公益目的事業財産という形で、公益にしか消費できない財産にしなさいということになっております。
また、下の方に「収益事業」あるいは「共益事業」とございますが、法律上は収益事業等という言葉で呼んでおります。ここから得られた収益についても、2分の1以上は公益目的事業財産にしなさいということになっております。毎年度、公益目的事業財産の使い残した分を計算していただきます。これを公益目的財産取得残額と呼びますが、公益目的財産取得残額については、公益認定を返上したりあるいは認定を取り消されたときは、他の公益的機関に贈与しなければならないということで、最後まで公益的に消費されることになっております。なお、右上に書かさせていただいておりますが、今日まで公益あるいは共益ということが、あいまいであった面が否めないわけでございますが、今度の法律においては、公益とは不特定かつ多数の者の利益の増進ということで、従来、相当な法人において行われていた共益的なことについて、この法律においては、公益とはならないとなっているところでございます。
最後の9ページは、冒頭ガバナンスについて言わせていただきましたが、一例として、ガバナンスの強化は公益法人も一般法人も一緒でございます。
例えば現在存在している公益法人においては、理事会等が当然開かれているわけでございますけれども、よくあることは多くが代理の方であるとか、あるいは委任状でもって代わるということもあろうかと思いますが、新制度におきましては、半数以上、理事御本人が出ないと理事会が成立しないとか、あるいは理事や監事の選出の仕組みもきちっと法律上決められております。また、定款変更等のためには、総会が必要になるわけでございますが、総会も総社員の半数以上が出席した総会でなければならない。
このようにガバナンスに関する規定が相当強化されております。
また、監督でございますが、これまで主務官庁の担当課が行っていたような立入検査等も、国の法人にあっては、先ほどの公益認定等委員会が一括して行うということでございますし、仮に認定を取り消された場合には、繰り返しになりますが、公益目的財産取得残額について贈与しなければならないという仕組みになっているところでございます。
以上が概要でございます。
〇富山企画官
それでは、続きまして、財務省でございます。お手元に「企画17-3」の資料をお願いいたします。私からは、公益法人課税と寄附金税制につきまして、主に現行制度の概要の中で、国税関係のところを御説明させていただきたいと思います。
資料の6ページをお開きいただきたいと思います。「新たな非営利法人に関する課税及び寄付金税制についての基本的考え方(概要)」ということで、平成17年6月に本税調に基礎問題小委員会と非営利法人課税WGの合同会議を設けていただきまして、関連の税制についての基本的考え方をとりまとめていただいているところでございますが、その概要でございます。
真ん中の四角「非営利法人に対する課税のあり方」を見ていただきたいと思います。
まず1つ目は「〇事務局『公益性を有する非営利法人』に対する課税」ということで、こちらの方が今ほど内閣官房の説明にあった、いわゆる公益認定を受けた法人が対象になっている部分かと存じます。
1つ目のところで「『第三者機関』による適切な公益性判断や事後チェックの仕組みを前提に、『公益性を有する非営利法人』について、『第三者機関』による公益性の判断をもって法人税法上の公益法人等として取り扱う方向で検討」。
次のところでございますが「その課税上の取扱いは収益事業課税(営利法人と競合関係にある事業のみに課税)とする方向で検討」。
注ですが「(注)学校法人、社会福祉法人、宗教法人、NPO法人等の課税上の取扱いは、当面現行どおりとする」。
「公益性判断が取り消された場合、税制優遇措置により蓄積された財産に対する課税等を検討」となっております。
2つ目は「〇事務局『公益性を有する非営利法人』以外の非営利法人に対する課税」ということで、これが新しくできる一般の社団、財団法人を念頭に置いた部分かと存じます。
1つ目「『専ら会員のための共益的活動を行う非営利法人』(例:同窓会)の場合、会員からの会費について非課税とする方向で検討」。
「『公益性を有する非営利法人』でも『専ら会員のための共益的活動を行う非営利法人』でもない非営利法人は営利法人と同等の課税とする方向で検討」。
3つ目として「相続税等の租税回避に濫用されるおそれがあることから、適切な措置を検討することが必要」とされております。
3つ目は「〇事務局公益法人等に共通する課税上の諸論点」ということで、公益法人等の課税対象所得の範囲、いわゆる収益事業課税方式がとられている範囲等についての検討。
軽減税率あるいはみなし寄附金制度が設けられていることについての検討。
利子・配当等の金融資産収益に対する課税についての検討といった諸論点も、併せてとりまとめをいただいているところでございます。
一番下の四角でございますが、寄附金税制の関係につきましては、1つ目ですが「〇事務局寄附金優遇の対象法人の範囲等」ということで「『第三者機関』の判断により『公益性を有する非営利法人』とされれば、税制上、基本的に寄附金優遇の対象法人として取り扱う方向で検討」とされているところでございます。
それ以外は「〇事務局寄付金控除等の拡充等(所得税、法人税、相続税)」あるいは「〇事務局地方公共団体の判断で寄附金控除を拡充できる仕組みの検討(個人住民税)」といったようなことについても、論点として掲げられたところでございます。
7ページ「主な法人制度(私法上)の概要」でございますけれども、この表の左側の2つの欄が今回新しくできる、公益社団、財団法人または一般の社団、財団法人の、いわゆる法人制度としては非常に骨格的なところを掲げさせていただいてございます。
「公益社団法人、公益財団法人」については、目的として公益目的事業を行う。
設立等については、法律に基づく認定がされる。
利益等の分配ルールにつきましては、社員等に対する利益の分配はできないことになっております。また残余財産の帰属につきましても、国・地方公共団体等に限定されている。役員の同族規制については、一定の規制がございます。
監督等についても、あるということでございます。
一方「一般社団法人、一般財団法人」につきましては、目的について定めがなく、事業制限が特にない。
設立等につきましては、いわゆる登記による準則主義。
社員等に対する利益の分配はできませんが、残余財産の帰属については、解散時等に社員、設立者に帰属することもできる制度になっております。
役員の同族規制は特になく、また監督等も特にないというつくりでございます。
右の方に目を向けていただきますと、基本的に新しくできる公益社団、財団法人は、先ほどの内閣官房の説明にありましたように、認定基準の内容等が非常に厳格で厳しくなっておりますが、現行の公益法人の骨格あるいは学校法人、社会福祉法人、宗教法人、NPO法人といったものを見ていただきますと、利益等の分配ルールあるいは同族規制、監督といったところについては、比較的類似性がある。
一方、新しくできる一般社団、財団法人につきましては、一番右に目を向けていただきますと、利益等の分配ルールあるいは同族規制、監督といった面で見ますと、現行の中間法人あるいは株式会社にも類似した法人制度になっているところでございます。
8ページでございます。公益法人などの主な課税の取扱いについて、現行のものを簡単にまとめたものでございますが、一番左の「公益法人等(社団法人、財団法人、学校法人、社会福祉法人等)」の欄を見ていただきますと、課税方式につきましては、収益事業により生じた所得に対して課税となっております。
みなし寄附金制度がございます。
損金算入の限度額としては、所得金額の20%となっているところでございます。
また、法人税率につきましては、いわゆる軽減税率ということで22%になっております。金融資産収益については、法人税につきましては、収益事業により生じた所得に係るもののみ課税となっておりまして、所得税、源泉徴収についてはないという課税の取扱いとなっております。
右の方は「NPO法人」あるいは「人格のない社団等」がございます。また「中間法人」「普通法人」と並んでおりますが、現行の取扱いとしましては、課税対象のところを見ていただきますと、NPO法人あるいは人格のない社団等というものは、収益事業課税方式をとっておりますが、中間法人あるいは普通法人については、全所得課税という方式で、それに準じた形で法人税率あるいは金融資産収益といったものの取扱いが、現行このように定められているところでございます。
恐縮ですが、1枚飛ばさせていただきまして、10ページをお開きいただきたいと思います。現行の収益事業の範囲でございますが、33業種ということで、現行、個別の各業について、このように定められてございます。
下には過去の追加事業ということで、改正の経緯も載せさせていただいておりますが、1点付言させていただきます。上の表の30の業がいわゆる技芸教授業と呼ばれている業でございますが、見ていただくとわかりますように、30のところは、冒頭のところで洋裁その他、限定列挙された上で技芸教授となっておりまして、下の追加事業の欄を見ていただきましても、例えば昭和56年には着物の着付け、船舶の操縦といったものが追加されたり、あるいは昭和59年には、絵画、書道その他のものが個別に追加されるということで、こういったところについての現状の公益法人の事業の展開と収益事業の範囲が1つの論点となっているところでございます。
11ページをお開きいただきたいと思います。みなし寄附金制度の概要でございます。
この制度の趣旨としましては、公益法人が公益活動の財源に充てるために収益活動を行っているという実態に配慮した制度ということで、制度の概要としましては、真ん中のポンチ絵を見ていただきたいと思います。
収益事業から生じる利益を収益事業以外の事業に支出した場合には、それを寄附金とみなしまして、寄附金の損金算入限度額、公益法人の場合には所得金額の20%でございますが、その範囲内で損金算入が認められているところでございます。
一番下は「実質税負担率(現行)」を掲げさせていただいておりますが、左の「公益法人」は、先ほど申しました軽減税率の22%となっておりますが、みなし寄附金制度の限度額であります20%全体を使った場合には、真ん中の欄でございますけれども、実質の税負担率は17.6%に軽減されているという現状でございます。
12ページをお開きいただきたいと思います。「利子・配当等の金融資産収益に係る課税関係(現行)」の取扱いですが、上が「公益法人等の場合」でございます。収益事業から生じた所得の運用収益といったものについては、課税となっておりますけれども、括弧にございますように、所得税の源泉徴収はないという取扱い。また、その他の運用収益については、非課税となっております。
下は参考で掲げさせていただいておりますが、例えば「人格のない社団等の場合」には、収益事業から生じた所得の運用収益につきましては、課税となっております。ただ、所得税の源泉徴収分は税額控除を実施するという形の取扱い。また、その他の運用収益については課税となっておりますが、所得税の源泉徴収のみで課税関係は終了といった取扱いになっているところでございます。
13ページをお開きいただきたいと思います。冒頭に御説明いたしましたWGでも、租税回避の防止について検討となっておりましたが、真ん中のポンチ絵を見ていただきますと、現行の相続税等の取扱いとしまして、被相続人あるいは贈与者が上の法人に遺贈あるいは贈与した場合には、相続税あるいは贈与税は非課税となっておりまして、法人税を課税する形になっております。
一方、下の矢印ですが、個人に対して相続、遺贈、贈与をした場合には、相続税、贈与税が課税されるという仕組みになっているわけですが、この法人の中で網かけになっております「公益を目的とする事業を行う法人」といったくくりの中で、いわゆる受贈益が法人税の益金に算入されないような場合に、真ん中の雲のようになったところですが、被相続人・贈与者の関係者の相続税・贈与税の負担が不当に減少する場合、個人とみなして相続税・贈与税を課税するという取扱いになっておりまして、いわゆる現行の公益法人に対して租税回避の防止措置がとられている関係で、今回新しくできます、特に一般の社団、財団といった法人制度ができることとの関係で、租税回避の防止措置をどのように考えていくかというところが、1つの論点でございます。
次は「III 寄附金税制」の関係でございますが、14ページをお開きいただきたいと思います。
「寄附金に関する税制(国税)の概要(現行)」でございますが、関連するものとして、この表の右から2つ目の欄を見ていただきたいと思います。「特定公益増進法人に対する寄附金」ということで、黒ポツが幾つかございますが、独立行政法人から始まりまして4つ目のところに「公益法人のうち科学技術の試験研究や学生に対する学資の支給を行うもの」がございます。
この関連で寄附をした者の税制上の取扱いとして、まず所得税につきましては、寄付金控除です。これは総所得の40%相当額を限度ということで、平成19年度に30%から40%に引き上げをしたものでございますが、そこからいわゆる足切りとしての5,000円を除いたものが所得から控除される。また、法人税の取扱いとしましては、一般の寄附金とは別に、ここにございます資本金等の額と所得金額による計算式で出てきた金額を限度として、損金算入ができる仕組みになっております。
17ページをお開きいただきたいと思います。今ほど御説明した「特定公益増進法人制度の概要(現行)」ということで、特に右側の欄を見ていただきたいと思いますが、[4]のところで民法上の社団法人、財団法人で(イ)または(ロ)と書かれているものの要件を満たすものが、現行の民法の社団、財団法人のうち、特増として取り扱われる法人となっているわけでございます。このこととの関係で、今回新しくできます、特に公益認定を受ける社団、財団法人との関係をどのように考えていくかということが1つの論点でございます。
最後でございますが、21ページをお開きいただきたいと思います。「国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置」ということで、租税特別措置法の40条にある制度との関係でございます。
1つ目の〇でございますが、個人が国または地方公共団体に対して財産の寄附をした場合には、その譲渡所得等に係る所得税は非課税となっております。一方、注でございますけれども、個人が法人に対して財産の寄附をした場合には、そのときの価額、いわゆる時価によって譲渡があったものとして、その譲渡益に対して所得税が課税されるという取扱いでございます。
2つ目の〇でございますが、個人が民法34条法人その他の公益を目的とする法人に対して財産の寄附をした場合において、一定の要件を満たし国税庁長官の承認を受けたときは、その譲渡所得等に係る所得税は非課税になっておりまして、「承認要件」としましては、こちらにございます3つの承認要件があるところでございます。
今回、新しい法人制度として、社団、財団法人ができることとの関係で、特に2つ目の〇の民法34条法人の課税上の取扱いについて、どのように整理していくかというところが1つの論点となっているところでございます。
私からは以上でございます。
〇水野主査
ありがとうございました。
それでは、自治税務局お願いいたします。
〇米田都道府県税課長
それでは、引き続いて地方税関係ですが、今ほどの資料の「企画17-3」の9ページをご覧いただきたいと存じます。まず、法人関係の方でございます。
9ページに「公益法人などの主な課税の取扱い(地方税)」というものがございますけれども、それをご覧いただきますと、地方の法人関係の税のうち、下の2つ、法人住民税(法人税割)と法人事業税につきましては、国の法人税と同じ仕組みになってございまして、基本的に収益事業により生じた所得のみ課税をするというのが公益法人等の取扱いでございます。
一方で、国の法人税にございません一番上の法人住民税(均等割)でございますけれども、ここのところは、収益事業を行わない場合は最低税率を、収益事業を行う場合は通常の課税を行う。こういう形で行っているわけでございます。
〇原田市町村税課長
それでは、資料の「企画17-3」の15ページを見ていただきたいと思います。寄附金税制に関する地方税の個人住民税の関係でございますが、個人住民税につきましては、地域社会の会費という負担分任の性格などを踏まえまして、先ほど財務省の方から御説明がありました所得税の制度とは大きく異なっておりまして、15ページと16ページ両方ご覧いただければよろしいかと思いますけれども、その対象、下限額、限度額につきまして大きく異なっております。特に15ページで、今、3つの類型が対象となっておりますけれども、そもそも創設されましたのが平成2年度からということでございます。16ページにまた少し丁寧なものを付けております。
資料の前の方に戻っていただきまして、6ページでございます。平成17年6月の政府税制調査会のワーキンググループの方で、一番下の四角「寄附金税制のあり方」の3つ目の●でございますけれども、地方税の個人住民税に関しまして、国が一律にその対象を定めることについては税の性格、地方分権という観点から慎重であるべきであろうとされながら、一方で地域に密着した非営利法人等については、地方税においても寄附金控除が可能となるよう見直していくべきであるという考え方が示されておりまして、特にこの地方公共団体の判断という部分は、基本的に条例などにより独自に構築されるべきであるとされております。その際、当該地域の受益との関係、自主性、事務負担といったようなものにも留意することが必要であるというふうに指摘されているところでございます。
以上でございます。
〇水野主査
ありがとうございました。ただいま、内閣官房、それから、事務局の方から公益法人制度の新しい形と、現行の公益法人等に係る税制の仕組みを御説明いただきました。どちらもかなり複雑なものでございますので、いろいろ御質問もあろうかと思いますが、併せて後でお願いしたいと思います。
そこで「企画17-1」をご覧いただきたいのですが、ここで私の方で公益法人制度改革を前提とした税制改正、先ほどお話ししましたことですけれども、平成20年12月1日から新しい公益法人制度が動き出して公益認定が行われるようになるわけですが、それに先立って税制の方も整えなければいけないということで、平成20年度税制改正が予想されるところでございます。
まず「II 基本的視点」を見ていただきたいんですが、どういう考え方で公益法人の税制を考えるかですけれども、まず「(1)『民間の公益活動を通じた公益の増進』に対応した税制の構築」。よく言われますように、民による公共ということが公益法人を中心に言われておりますけれども、そういった民間の非営利活動、公益的な活動をどういうふうに促進していくかというのも税制の課題であるということでございます。
他方で、その上になりますけれども、もともと、この公益法人制度改革が進められた背景には、私も忘れてしまいましたのですが、最近では緑資源機構とかそういったようなものに言わば役所から天下りをした職員が大半であって、そこを通して何かよくないことをしていたとかそういうような面がございまして、公益法人に絡んだ主務官庁との癒着というような問題がありました。それが、いわゆる従来の主務官庁制度を廃止して公益認定等委員会で判断するというように仕組みが変えられた背景でございます。
そういうことでございますけれども、基本的な視点ですが、プラスマイナスの面があって新しい公益法人制度が考えられているわけですが、当然のことですが「(2)新たな法人制度に対する適切な税制の構築」。基本的には従来の公益法人を、今回は公益社団法人、それから、公益財団法人というものになりますが、それに対する従来の公益法人税制をどういうふうに考えていくかという問題がございます。
もう一つが[1]の逆の方ですが、今回の公益法人制度改革といたしまして、従来は主務官庁の許可がないと法人ができなかった。これに対して、準則主義と呼んでおりますけれども、法律の規定に従って書類を作成してまいりますと自ら登記をすることができる。これを一般社団法人及び一般財団法人と呼んでおります。
また、すぐ後に出てまいりますが、今回の公益法人制度改革に絡んだ税制改正というのは、この一般社団法人及び一般財団法人と公益社団法人及び公益財団法人、大きく分けて2つの種類の法人ですけれども、これに対する税制を考えていかなければならないということでございます。
「(3)現行の課税方式についての検証」。公益法人について言いますと収益事業課税ということになっておりますが、これについてどう考えるかということでございます。
そこで「III 公益社団・財団法人の制度設計にあたって留意すべき点」で、先ほど既に御紹介いただいておりますが、1つには収益事業課税、従来33業種についてのみ課税されてまいりまして、累次の税制調査会の答申の中で、この収益事業課税の対象を広げるべきであると書かれたこともかなりございましたが、公益法人制度が抜本的に変わるということで、この収益事業課税をどう考えるかということがあります。
それから、先ほど御説明いただきましたみなし寄附金制度ですけれども、収益の20%までは簡単に言いますと寄附金として落とすことができる。そういう形で公益法人を援助してきたわけですけれども、そのみなし寄附金制度をどう考えていくかということでございます。
具体的には[2]の方に書いてございますけれども、新しい公益法人、正式には公益社団法人・公益財団法人と言わなければいけないんですが、その場合に収益事業から生じた収益の50%は公益目的に使わなければいけない。こういう規定になっております。これを税制ではどういうふうに受け止めたらよろしいのかという問題が新たに出てきております。そのぐらいにして、2ページ目をおめくりいただきますと、これは一つの大きな課題と申しますか、従来、法人税法を始めとして「公益法人等」という言葉を使いまして、公益法人と、それとともに個別の法律によってつくられた法人、典型的には学校法人、宗教法人、それから社会福祉法人というものがございますが、こういった特別法によってつくられた法人の取扱いは今回の公益法人制度改革では扱っておりません。そういうことで、こちらの方は従来の税制が続くのではないか。これはまだわかりませんけれども、制度も変わらないけれども税制は変えるということはあり得ますが、他方でこういったものが残っているわけでございます。
それと、新しい公益社団法人・公益財団法人との整合性というものをどうやって取っていくかという問題がございます。
「IV 公益法人制度改革により区分される新たな法人の課税のあり方」。従来から、公益性が認められる法人とそれ以外の法人との取扱いということは議論されてまいりましたのですが、具体的に今回の方針では「(1)一般社団法人及び一般財団法人」と言われるものと「(2)公益社団法人及び公益財団法人」に分かれるわけですが、どちらも税制において非常に難しい問題がございます。
論点をここに挙げておりますけれども、1つに一般社団法人・一般財団法人というのは、先ほど会費制の法人の問題、いわゆる共益的な法人のお話が出ましたんですが、いわゆる営利法人に近い、営利法人というのは株式会社が典型ですが、非常にそれに近い法人から公益法人に近いものまでございまして、特に今回、公益認定というものによって非常に厳しく審査されますので、公益認定を受けられないけれども、実態としては公益活動を行っている法人も出てくるようになります。そういったさまざまな法人に対してどういうふうに税制上対応するかという問題が一つ大きくあります。
[2]ですけれども、これも細かい話になってまいりますが、従来からいわゆる任意団体と言われておりますが、人格がない社団・財団というものは民法の学説・判例が発展させてきた、いわゆる非常に団体の独立性が強い、構成員から独立した団体のことを呼んでおりますけれども、この「人格のない社団等」は収益事業課税、公益法人と同じように収益事業33業種のみに課税されている。ただ、税率は通常の法人税で言えば30%であるということですけれども、これを念頭に置いた場合に、一体、新しい一般社団法人・一般財団法人というものはどうあるべきなんだろうか。自然に筋が見えてくるような気はいたします。
[3]ですが、共益的な事業活動で、先ほど内閣官房の原山審議官の方から、従来ほど公益認定、いわゆる公益性の中に共益的な事業活動は含まれないというお話がございましたのですが、こういう共益的な事業活動を行っている法人というのは、従来、公益法人で非常にたくさん存在していたわけですけれども、これをどういうふうに考えていくのかが税制上の課題でございます。
「(2)公益社団法人及び公益財団法人」ですけれども、公益認定を受けた法人につきましては公益という名前が付きますけれども、従来の収益事業課税をどういうふうに見ていくかということです。先ほども申し上げましたんですが、学校法人や宗教法人といったものも従来のまま残っておりますけれども、それも収益事業課税がとられておりますけれども、そのバランスをどう見るのか。場合によって全部取り替えることが可能なのかどうか。論点としては大きな問題でございます。
[2]ですけれども、これは技術的な問題ですが、非常に新しい公益法人に関する法律では公益目的事業というものが重要になってまいります。先ほども御説明いただきましたんですが、従来は法人税法の上で収益事業という言葉しか存在しなかったわけですが、新しい公益法人制度の下では公益目的事業が中心に置かれまして、そこから生ずる収益についてまずどう考えるか。そういった問題が出ております。
[3]で、先ほどもお話ししましたが、収益事業の場合も、その収益の50%以上は、公益認定を受けた法人については公益目的事業に使わなければいけない。これを税制上どういうふうな取扱いをすべきなのか。技術的ではありますけれども、非常に大きな問題でございます。といいますのは、収益の50%以上は収益事業から生じた収益でも公益目的事業に使わなければいけない。仮にこれをみなし寄附金という形にしますと50%が損金として落ちますので、非常に税制上優遇する形になりますが、こういったものについてどういうふうに取り扱うのが適当であるかという問題が出ております。
「V 寄附金税制」。これは先ほど御説明いただいておりますけれども、既に税制調査会のワーキンググループの一つの考え方としまして、公益認定を受けた法人については、寄附者は基本的に寄附優遇を認める。言わば特定公益増進法人というものが税法上ございますけれども、それと同じ扱いをするという考え方がワーキンググループで強く出されておりましたけれども、この場合はむしろ寄附者の問題ですけれども、どういうふうに取り扱ったらよろしいのかということです。
(3)ですけれども、公益法人等に対するいわゆる寄附金の地方税における取扱いの仕方。従来は、国税では5,000円が足切りだったわけですが、住民税の場合には10万円というかなり高い足切りになっておりますので、これについてどう考えていくかという問題がございます。
最後の「VI その他」ですけれども、先ほど事務局から御説明いただきましたように、租税回避の問題、言わば公益法人を使うことによって、公益法人というのは自然人ではありませんので、相続税や贈与税がかからない。これを利用したような租税回避が行われてきたわけで、それに対する対抗措置も置かれてきたわけですけれども、新しい公益社団、財団法人や一般社団、財団法人についてはどう考えていくのかといったような問題がございます。
多少長くなって恐縮ですが、これで一通り説明の方は終わらせていただきますので、御自由に御質問あるいは御意見をいただければ幸いに存じます。
それでは、どなたからでもどうぞ。
林委員、お願いします。
〇林委員
中で3点質問がありますけれども、要するに公益法人は原則課税でいくのか、あるいは原則非課税でいくのかというところの合意は原則課税という具合に考えてよろしいんでしょうか。それによって、例えば収益事業を限定列挙するのか、あるいは非収益事業を限定列挙するのかということが、その辺りの考え方によって少し違ってくるのかなというような感じもいたします。前のワーキンググループでは原則課税という具合になっていたような記憶もあるんですけれども、そこの考え方が、要するに、今、収益事業を限定列挙されているということは、やはり原則非課税でこういうものが収益事業だということにつながっているのかどうかという確認をしたいというのが1点。
それから、税の公平性ということから考えますと、確かに公益法人制度の改正の中には財団・社団以外のものは入っておりませんけれども、同じサービスを提供するという点で普通法人、公益法人、NPO法人というものが同じサービスを提供していったときに、税制の取扱いというのは違ってはいけないと思いますので、税制を考えるときにはその辺りをやはり統一的に考えていかないと、いずれまたその辺りを検討しなければならないということが出てくるのではないか。
3点目は、これはやはり税の優遇をするということですから、しかも監視を委員会に委ね、それは要するに国民に委ねるということだろうと思うんですが、いわゆる情報開示というものが一体どうなっているのかが気になります。今、現実にどの程度の情報開示がなされているのか。たまたまホームページなどで見ますと、随分きちっと開示しているところとそうでないところがあるような感じを受けますので、その辺りもやはりきちっとしていかないといけないのではないか。そういう実態が一体どうなっているのか。これは質問でございます。
〇水野主査
ありがとうございました。そうしますと、今の質問というのは3番目に言われた情報開示の問題で、後の方は御意見であるということなんでしょうか。
〇林委員
1つ目は確認というか、議論するときの前提になるのではないかという気がします。
〇水野主査
この第1番目の原則課税か原則非課税かということについて私の方から御説明させていただきますが、先ほど御説明いただいた事務局の資料の「企画17-3」の6ページです。これが税制調査会のワーキンググループの主な内容ですけれども、ご覧いただきますとおわかりになると思いますが、原則非課税という言葉が全然使っていないんです。
これはなぜかと申しますと、そもそも収益事業課税が原則課税ということなのかどうかとか、その辺りから議論が混乱し始めまして、それでは何をもって原則課税なんだろうかということ自体が非常に、この物の考え方が先に進むのに役に立つときはよろしいんですけれども、どうもそれが議論を混乱させるということで、この言葉に換えて、一階法人、二階法人という言葉を一時期使いまして、当てはめますと、一般社団法人及び一般財団法人は一階であって、公益認定を受けると二階の公益社団法人及び公益財団法人になるという位置づけで、この平成17年のワーキンググループの考え方はそれに則っております。
ですから、あえて、この原則課税、原則非課税という考え方には触れなかった。むしろ、使うことによって議論が混乱するのを避ける趣旨であえて使わなかったということでございます。
それから、3番目の情報開示の点は、富山さんいかがでしょうか。
〇富山企画官
少なくとも、現行の民法に基づく社団法人・財団法人につきましては、法令上のいわゆる法人としてのガバナンスについては、制度が立ち上がっている時期もかなり古かったということもあろうかと思いますが、例えば現行にありますような株式会社、あるいは今回新しくできます社団・財団といったようなものと比較すれば、もともと法人としてのガバナンスには、現行はかなりの差があろうかと思います。
特に税当局からしますと、現行は収益事業課税という方式をとっておりますので、それに該当する事業内容などについては、当然、把握ができる部分もございますけれども、そもそも、その法人が全体としてどういう活動をしているかについては、まさにその法人の意思によって程度が違ってくるというのが現状ではないかと思っております。
〇水野主査
それでは、井戸委員どうぞ。
〇井戸特別委員
関連してのお話なんですが、問題は林委員の御提案されている原則課税かどうかということとの関連で、他の公益法人等とされている学校法人だとか、社会福祉法人とか、宗教法人とかの取扱いをどうするのか。他の法人は現状のままの収益事業課税でいくのか、それとも、他の法人も含めて、いわゆる公益的事業を行っている法人、十把一からげに同じ原則を当てはめることにするのか。この点を前提にどちらにするのかを考えて議論しないと、公益法人だけで議論しても他の法人との関連で、公益法人はこうしたけれども、他の法人は相変わらず収益事業課税だとすると、公益法人のバランスが失するのではないかと思います。
したがって、議論の前提として公益法人は今のバランスは考えなくてもいいんだという形で議論するのか、やはりバランスを考えて議論するのか。この点はやはり議論の進め方の大前提になるのではないかと思いますので、この点からまず議論していただいた方が望ましいのではないかと私は思います。
〇水野主査
ありがとうございます。
中里委員、お願いいたします。
〇中里特別委員
林先生の原則例外という話ですけれども、意味がない議論だと言うと言い過ぎなんですが、価値観を反映したレッテル貼りに使われているだけで、余り機能的でないような気がするんです。
例えば、所得税法で譲渡所得の課税について定めています。所得税法本法で定めていますから、これが原則なんです。ところが、その原則の適用を受ける場合というのはほとんどなくて、土地については措置法で土地の譲渡益課税、特別なあれがありますし、株式についてはどうこうとか、例外の方はよくわかりませんけれども、99%なのに、本法は原則だといったところで、定量的に分析できるならよろしいんですけれども、あとは程度の問題になってしまいますから、レッテル張りとして原則課税なのか、原則非課税なのかという抽象論のレベルで足の引っ張り合いをしていてもしようがなくて、個別具体的に見ていくということが唯一、実益のある議論ではないかと思うんです。
原則はどちらでやっても余り、そのこと自体に意味を持たせることが一定のイデオロギーなのではないかと思います。
〇水野主査
よろしいですか。どうぞ。
〇林委員
ネガティブリストでいくのか、ポジティブリストでいくのかを考えるときに、やはり法人であるから収益に対して原則課税だというところから出発するのか、あるいは公益をやっているんだから、これは原則非課税だというところから出発するのかでは、随分、制度が変わってくるのではないかと直感的に思うんですが、そうではないんでしょうか。
〇水野主査
それでは、関連で、出口委員どうぞ。
〇出口特別委員
実は、今の林委員の御指摘と井戸委員の御指摘というのはつながっておりまして、収益事業に限って言えば基本的にはポジティブリストでやろうということで、今、このテーブルに上がっているんだと思います。
そのことはどうしてかというと、今度の公益法人改革は時間が限られているものでございますので、まずそこをしっかり、今回の制度は、聞いていただいてわかると思うんですけれども、大変複雑であります。その中で公益目的事業財産という、これまでに法人税になかった考え方が出てきている。これをどう考えるのか。
更にこの公益目的事業というのは、収入が費用を上回らないということが実は認定の要件なわけですね。認定の要件でありますし、取消しの事由にもなる。そこで何かあったら、全部貯めた公益目的取得財産残額というのを全部取り上げる。世界でも例を見ない、非常に厳しい制度になっている。その中で税をどう考えるか。
この税調として、もう一つ大事なのは、これだけではなくて、今の歳入と歳出の一体改革の中で巨大財政赤字があるわけですから、この中で民間が担う公益をどこまで我々が期待していくのか。この部分を単に一法人類型のあり方だけで議論するような話ではない。少なくとも前回の基本的考え方の冒頭の文章は、議論の途上でそういうふうに変わったわけですね。そのことはやはり押さえて議論をした方がいいと思います。
〇水野主査
ありがとうございました。先ほどの井戸委員の意見は、事務局から何かということはよろしいでしょうか。
〇井戸特別委員
私は基本的には全部変えるべきだと思っているんです。こういう収益事業を挙げていくという方式ではなくて、全部について公益事業を挙げていく。公益性の部分を挙げていくというふうに変えるべきだと思っているんですが、学校法人とか宗教法人などの改革までは手を入れないんだとすると、今の基本的な収益事業課税という形の中で議論を進めていかざるを得ないのではないかと考えるから、その点を明確にしておく必要があるのではないかという意味で申し上げたんです。
〇水野主査
ありがとうございました。事務局はよろしいでしょうか。
〇富山企画官
事務局としましては、先ほど御説明したところと若干繰り返しになるところもありますが、御説明した資料の6ページでございます。当時のワーキンググループの基本的考え方のまとめとしましては、中ほどの黒ポツの2つ目のところの注にございますけれども「学校法人、社会福祉法人、宗教法人、NPO法人等の課税上の取扱いは、当面現行どおりとする」と、2年前のところでは、とりまとめさせていただいています。
〇水野主査
現状の認識と今後のあり方ということで、御意見をいただきました。
ほかにいかがでしょうか。出口委員、どうぞ。
〇出口特別委員
余り私ばかりがしゃべるのはよくないかと思うんですが、事務局の資料で1つ2つ気になるところがあるんです。
「17-3」という資料の15ページに、私は本日これが出てくるとは思ってもいなかったんですが、「ふるさと納税」との関係もありますが、今度の改革は民間が担う公益、これは寄附がないと法人が立ち行かないような状況になっておりますので、寄附を積極的にやっていかないといかぬということになるわけですが、「ふるさと納税」のこともありますけれども、この制度ができ上がって特定の都道府県、具体名まで出すのはあれですが、例えば東京だけが得をするような制度になってはいけないと思うんです。
例えば格差といったときに、なかなか歳出でも歳入でも対応できない過疎地の格差、あるいは高齢化も地域社会から広がっていくわけでありまして、そういった点で15ページの個人住民税の寄附だけが出ているというのは、大変おかしなことであって、これは法人が寄附した場合は、法人税割はどうなるんですか。法人が公益でも何でもないところに寄附した場合は、これはどういうふうになるんでしょうか。総務省に答えていただきたいんです。
〇水野主査
お願いします。
〇米田都道府県税課長
9ページにお戻りいただきますと、先ほど飛ばしまして恐縮でございましたけれども、ここで法人関係の税が出ております。真ん中に法人税割、一番下に法人事業税が出ておりますけれども、そこに書いてございますとおり、真ん中の法人税割でございますと、法人税額が課税標準でございます。今、公益法人に対して寄附をして、法人税の方で損金算入をされますと、自動的にこの法人税額に反映をいたしますので、法人住民税の方においても自動的にそれが引かれたような格好になる。
一方、法人事業税においても所得計算におきまして、同じような所得計算を行いますので、これは法人の場合には、控除をされた格好で寄附は反映されるというものでございます。
〇水野主査
出口委員、どうぞ。
〇出口特別委員
これほど個人と企業の税制に差があるものがあれば、次回までに出していただきたいんです。これは全体で民間が担う公益をやっていくときに、その企業ばかりに寄附の依頼が集中するようなことがあってはいけないわけです。
日本の個人の寄附額というのは、アメリカの1,000分の1ぐらいなわけであって、やはり制度的な問題がどこにあるのかというのもよく考えながら、「ふるさと納税」の議論もありますので、私はここまで話をしたくなかったんですが、考えていただけないかなというのが1点。
財務省の資料の21ページですけれども、租特40条で、これも何かすごい大きな譲渡所得税が非課税になって、見るとすごく非課税が特典みたいですが、これはみなし譲渡所得税のみなしというのも入っていないということは、一体どういう目的なのかというのが1点。
ここにおいては、認定法上は株式を50%以上持つというのは、これもまた認定要件になるわけですね。ということは、ある特定の企業の株式50%以上を現在持っているところは、売却しないといけない。これは認定法上のものでそういう要望、要求があって、売却したら寄附して、国税庁長官の非課税承認をとっていた寄附者にさかのぼって税金がかかるのがみなし譲渡所得税なんですけれども、その辺のところを少しわかりやすいようにしていただけたらというのがあります。
いろいろと書いていただいて、水野委員のところにある分については、基本的に新しいことがたくさんありますので、1ページのIIIの(1)は、税法上の収益事業課税であっても、公益目的事業というものであれば先ほど申し上げた理由でこれは課税の根拠は全く出てきませんから、税金をかけるのはいかがなものかと思いますし、[2]の50%以上が公益目的事業に用いなければならないというのは、これは従来のみなし寄附の考え方と逆なわけです。
ですから、ある意味で、この公益目的事業というところに入れ込んでしまって、そこでがっちりと固めるわけですから、これはこの部分もやはり同様の考え方をしないと当然いけないのかなと思います。
更に次のページの金融収益については、同じ考え方です。
IVの(1)[2]ですけれども、収益事業課税とされる人格なき社団と不利に扱うのは不合理ではないかというのは御指摘のとおりで、当然同じにしないといけないのかなともろもろ思っております。
長くなりましたが、よろしくお願いいたします。
〇水野主査
ありがとうございました。
〇出口特別委員
もう一点、今、申し上げた公益目的事業財産と移行法人は財産額というのが出てきまして、これもかつての課税上に考えられなかったような財産がありますので、各税目、例えば固定資産税その他をどう考えたらいいのか。こういったものも是非、いろいろと検討していかざるを得ないのかなと思っているところです。
〇水野主査
いろいろと御意見をいただきましたが、まず住民税について、市町村税課長、いかがですか。
〇原田市町村税課長
今の法人と個人、これはもう法人住民税の方で何を課税標準にするか、個人住民税で何を課税標準にするかというところに拠って立つところでございますけれども、先ほどの御説明の中でもお話をさせていただきましたように、個人住民税負担分任の性格というものをこれまでの政府税制調査会の中でも繰り返し提起をいただいておるところでございますが、いずれにしましても、新たな非営利法人に関する課税につきましては、ワーキンググループの中でも御提言をいただいておりますので、そういう中でどのように考えていくのかを今後検討していく必要があるかなと思っております。
以上でございます。
〇水野主査
資料21ページの租税特別措置法40条による、いわゆる国に寄附した場合の譲渡所得の問題ですが、お願いします。
〇富山企画官
ここでは先ほど御説明しましたように、2つ目の〇の民法34条法人がこのような取扱いになっているということでお示しをしましたが、出口委員の御指摘も踏まえて、更にそういった点も含めて、検討させていただきたいと思います。
〇水野主査
ありがとうございました。どうぞ。
〇中里特別委員
今の21ページの図です。昔からわからないことなんですけれども、例えば1,000万円で買った土地が今1億円しているといたします。1,000万円で買った土地が1億円していて、これを国に寄附する。そうすると9,000万円の値上がり分については、譲渡所得税は非課税になるとする。
ただ、そのときにとれる寄附金控除の額は、恐らく取得価額の1,000万円ではないかと思いますけれども、それを1億円で国に売却すると1億円キャッシュが入ってきて、譲渡所得税を例えば3,000万円払うとすると7,000万円のキャッシュが残りますね。その7,000万円のキャッシュを寄附すると寄附金控除は7,000万円とれるということに現行はなっていて、アンバランスがあるような記憶があるんですけれども、それは何か合理的な理由があるんでしょうか。それとも私の記憶が間違っているんでしょうか。
〇富山企画官
申し訳ありません。今、具体的に御回答できませんので、別途、委員の方にお答えさせていただきたいと思います。
〇水野主査
それでよろしいでしょうか。
〇中里特別委員
はい。
〇水野主査
井戸委員、どうぞ。
〇井戸特別委員
収益事業から生ずる収益の50%以上は公益目的事業に用いなければならないということと、収支相償原則との関係がどうなっているのかというのが、これも後の取扱いを決めるときに重要な前提虎符になりますので、お尋ねしたいんです。
〇水野主査
その点は、内閣官房の原山審議官、お願いします。
〇原山審議官
先ほど収支相償と御説明申し上げましたのは、公益目的事業であると認定を受ける事業に関してであります。法律上は収入が適切な費用を超えてはならないというような法律上の文言になっております。
50%以上というのは、制度がそもそも公益認定を受ける法人については、PL上も費用ではかって、50%以上公益目的事業と認められることをやっていなければいけないとなっているんですが、逆に言いますと50%以内であれば収益事業を行っていいということであります。
そこに言う収益事業、これも実は結果として、1本1本区分経理されることになると思いますが、その収益事業から、何が収入で、何が支出で、幾ら収益が残ったか。その残った収益について、2分の1以上を公益目的事業財産にしなさいということが決められているところでございます。
結果として、その当該年あるいは翌年度以降かわかりませんが、その財産についてはいずれ公益的にしか使われないと縛られているということでございまして、これによって将来的に更に公益事業を拡充して使っていただく。そういう意味で民の公益の拡大につながると考えているところでございます。
〇水野主査
よろしいでしょうか。
〇井戸特別委員
そういうことを前提に考えてみますと、私は出口委員がおっしゃられましたように、公益目的事業とされているものは、全体として非課税という取扱いがいいのではないか。仮に公益目的事業の中で収益事業に当たるような活動がされていたとしても、全体が公益事業なんですから、公益事業として取り扱ってしまっていいのではないかと思います。
それから、収益事業等から生ずる収益の50%は、必ず公益目的財産にされてしまうわけですので、それは今の20%のみなし寄附と同様に、50%を控除してしまっていいのではないかと思いますし、公益目的財産に関わる金融収益については、基本的な考え方と同じで非課税にしておけばいいと思います。
今はずっと公益法人について申し上げたんですが、一般社団と一般財団については、他の制度を残すならば、やはりバランスをとる必要はあると思いますので、とりあえず収益事業課税にするか、それとも準則主義というのがどれだけ限定的な準則主義なのか。
その程度によるんですけれども、もしそれがかなり自由に認められる準則主義だとすると、中間法人みたいな取扱いでもいいのではないかと思いますし、その準則の内容によって、一般社団とか一般財団が単に法人格をとりやすくなるということだけで一般社団、一般財団という形で区分されるならば、それはもう収益事業課税ということではなくて、中間法人だとか通常の法人と同じような課税方式をとったらいいのではないか。このように思っています。
〇水野主査
ありがとうございます。内閣官房の原山審議官、基本的な認識として、この準則主義の程度ですけれども、これについて御説明を補足していただけますか。
〇原山審議官
先ほど私の方から御説明させていただきましたのは「企画17-2」という資料でございます。ほんの一例で、準則というか違う言い方でガバナンスということで、一番最後の9ページに御説明をさせていただいております。
そこにございますとおり、これはもう本当の一例でございまして、法務省令で100条ほどの省令ベースでもかなり詳細な規定ができ上がっております。これは比較すれば、間違いなくこの辺の規制につきましては、NPO制度その他の非営利法人よりも相当厳格に書かれているものと理解をしております。
繰り返しになりますけれども、例えば今までの公益法人あるいは他の法人の意見のような形で、代理出席のような形で理事会等を運営することができない。もっと詳細を申し上げますと、例えば出席した全員の理事の署名がなければ、理事会の議事録に効果を得ないとか、そういったのが詳細に書かれているものでございます。
例えば財団であれば、理事の選任等は評議員会において行うんですが、今度は評議員の選任のための仕組みというのも記載されていて、理事の選任等もかなり厳格に行われるとか、あるいは社団であれば、当然最終的には責任を負っているのは社員でございますので、一番下のところに書いてございますとおり、定款変更等の社員総会については決議は総社員の2分の1以上の参画が必要であるとか、相当そういう意味でのガバナンスについては、社員によって厳格に管理される。問題があれば、社員が裁判所に訴えるというような方式になっております。
なお、私が言及することではないと思いますけれども、先ほど来、何人かの委員からお話がありましたとおり、現在の人格のない社団等というものについての税制がどうなっているのかというのも念頭に置いて御審議いただきたいと思います。
〇水野主査
ありがとうございました。あとはいかがでしょうか。
井堀委員、どうぞ。
〇井堀委員
先ほどの出口委員の寄附金税制に関する質問なんですけれども、住民税の取扱いで個人と企業の扱いが違って、個人の場合は所得控除で企業は損金算入で、それが例えば日本とアメリカと比較して、日本では個人は寄附金をなかなか出していない一つの理由なのかという点です。
今まで明示的には説明されていませんけれども、「企画17-4」の参考資料の後ろのところで、日本とアメリカの寄附の差とかが出ていますが、18ページのところで寄附金総額、個人は日本が2,000億円で、アメリカが22兆円で、確かに出口委員が指摘されるように1,000対1の差があるというんですが、16ページを見ると、これは国税の方だと思うんですけれども、アメリカも寄附金に関しては、個人は所得控除で法人税は損金算入で、これは日本もほぼ同じ扱いです。
要するに税制上の違いで、この16ページの資料を見る限りは、アメリカが日本に比べて極端に個人の寄附金税制を優遇しているとは思えないんですけれども、それにもかかわらず、1,000対1の差があるとすると、要するに税制以外の点が効いているのか。あるいは本当は税制の実体面で個人の寄附金税制を、これは18ページのところは国税だけだと思いますけれども、地方税も含めたところで、本当に相当アメリカが日本と比べて優遇しているのかどうか。
そこがはっきりしないと、確かに個人の寄附金控除を積極的に活用して、民間のいろんな多様性のあるお金の使い道の発展をさせるというのはいいと思うんですけれども、要するに寄附金税制を変えても、それが本当に効くのかどうかというのは、また別の問題だと思うんです。
これは16ページを見る限りでは、それほど日本とアメリカは差がないように思うんですが、これはむしろ出口委員への質問かもしれません。
〇水野主査
出口委員、どうぞ。
〇出口特別委員
私がお答えをするのもあれですが、事務局がおつくりなった資料「企画17-3」の15ページ。少なくともアメリカとの比較をするのはともかくとして、企業と個人がいかに違うかということを見ていただくと、この3つしかないんです。国に対しての寄附も地方税に関しては、個人は控除がありません。それから、ここに書いてあるとおり、納税義務者の住所地におけるところに限って、しかも10万円の足切りがあるわけです。
今、何が起こるかというと、民間が担う公益だというので、一斉にこの寄附金に対して大キャンペーンをやっていかないと、これはエコノミストにはわかっていただけると思うんですが、ある水準を超えないとエフィシェントにならないわけです。
そのときに企業は一般損金算入額で、これは公益でも何でもないところに寄附をしても、法人税割で税金が安くなる。個人の場合は、公益法人は勿論、国、国立大学に対して寄附をするというときに、翌年にそれに対する住民税がかかってくる。
このことに関して、個別具体的に非常に悲惨な状況に遭っている、徳のある日本人の方がいらっしゃるという現実もやはり考えていかないと、下手にこれは大学で多額の寄附をもらって、寄附金控除ができますなどと言ったら、えらい目に遭うというところが実はこの15ページの表の意味するところなんでございます。
〇水野主査
どうぞ。
〇原特別委員
議論がなかなか難しいので、私はアメリカに住んでおりまして、もう実際に経験をしております。学校やオペラや動物園とか、こういう公益法人のいろんな経営を実際にやっている経験から言いますと、ものすごく簡単でありまして、501 c3というコーポレーションで私どもがつくっています。
最近の例ですと、発展途上国の日本のODAに当たるようなことを民間でやろうということで、後発発展途上国の文盲率だとか、医療に関することを支援する公益法人をアメリカでつくって経営をしております。
これは501 c3という認定をとりまして、米国の連邦法人税は全く免除。カリフォルニアにつくっておりますから、カリフォルニアの州税も全く免除。税金は一切かかりません。その公益のための目的に行う事業は、駐車場をやろうが、あらゆる収益事業をやろうが、すべて無税になります。
ただし、これで得たお金は、株式会社と一番違うのは、この法人には株主がいませんから、株主配当とか金に対する配当という分配は一切できません。こういう1つが大きな原則です。
また会社でしたら、取締役とか社長とかは給料をとれますけれども、我々のこういった経営しているものは、理事以上の者は無給とするとして、任期が非常に限定されていまして、日本の財団法人や社団法人の役員も私はやっていますが、理事は評議員が選び、評議員は理事が選び、実際は理事長が全部やっているというのが事実上の実態でしょうから、幾ら形式上のガバナンスをつくっても、何も変わらない可能性も高いと思いますので、もうちょっと簡単な仕組みをつくることができれば、わかりやすいと思います。寄附に関しましては、先ほど出口さんや井戸さん、いろいろな方がおっしゃられましたように、もっと個人の寄附が行いやすいような仕組みをつくり上げる。
例えば日本のODAの資金は一兆数千億円ぐらい使われていると思いますが、これに該当するものを寄附をするということになれば、これは所得控除ではなくて税額控除ぐらいにして、ODA資金も国のお金は一切使わないで済む。全部個人寄附でやれるような対象ぐらいにすると、もっといろんな人たちが寄附にお金を回していくでしょう。
ですから、何らかのインパクトのあるような、みんながあっと思って、なおかつ国の財政の歳出の削減にもつながるようなことに寄附税制をうまく使っていくと、これは面白い仕組みができ上がると思います。
〇水野主査
アメリカの寄附税制など、経験に基づいてお話をいただきまして、どうもありがとうございます。
では、申し訳ございませんが、最後ということでお願いいたします。
〇井戸特別委員
寄附金が余り使われていない理由の1つは、特定公益増進法人の認定を受けないと寄附金控除が使えないんです。
したがって、税務当局が公益だと判断しない限り、特定公益増進法人にならなかったという、その過去の積み重ねの中で今回の税制度を議論するときには、公益法人という第三者機関が認定をさせた二階法人であるからこそ、特定公益増進法人というふうに認定の手続を外して、そちらに委ねようということを前提にして、寄附金控除は議論するべきだと思うんです。ですから、範囲がかなり広がる。そうすると、もっと使われるようになっていくのではないかと、私は期待をいたしております。
住民税の寄附金控除の取扱いをどうするかというのは、これは住民税特有の論理もありますので、所得税に何でもならえばいいというだけで議論を進めていいのかどうか。私は疑問に思っています。
出口委員のおっしゃるように、住民税がこうなっているから寄附金控除が個人的に使われていないんだというよりは、特定公益増進法人の取扱いで範囲をぎゅっと締めてしまっている方がよほど大きいとは思っております。
したがいまして、寄附金については特定公益増進法人と同様の取扱いを新しい公益法人については行うべきであると思います。
〇水野主査
ありがとうございました。
では、井上委員で最後とさせていただきます。
〇井上特別委員
公益法人というのは、ともかく基金を元にして、その運用でもって運営されていく。または寄附というものによって運営されていくことであろうと思うんです。
ところが、今、お話が少し出ていましたけれども、寄附金に対しても地方の場合には、10万円の足切りと、これは何であるのか。私は、逆に言えば、それは満額を所得から控除すべきであって、そうすると、金額が少なくてもみんなが寄附できるわけです。10万円しなければ控除はないのかということは、そもそもおかしいんではないのか。やはり、もっと寄附を皆がしやすいようにするには、そういう足切りをなくすということが、まず必要だろうと思いますので、ひとつその点を御検討いただきたいと思います。
以上です。
〇水野主査
今の意見は、また重ねて承ることにさせていただきます。
誠に申し訳ないんですが、いろいろ御意見、御質問をいただきましたが、あと国際課税の問題がございますので、公益法人につきましては、こちらで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
〇香西会長
いろいろ御議論がありましたけれども、とりあえず、本日の討議としては、以上で終わりにいたします。ただ、これはどうされますか、いずれはもう一度何らかの形で議論しなければならない。20年度税制改正に関連して、議論は再度行っておく必要があるということだろうと思います。
それでは、中里委員の方にお譲りして、国際課税を議論していただきたいと思います。
〇中里主査
では、残りの時間、国際課税の方に入っていきたいと思います。国際課税は何分非常に複雑かつ専門的なものですから、まず、国際課税について考える際のごく基本的な考え方について1分ほど私が触れた後に、その後で事務局の方から国際課税上のさまざまな制度について概要を説明していただいて、その上で、お配りしました私の論点メモの御説明をさせていただき、議論に入るということで、途中で制度説明を事務局に入れていただくということで行きたいと思います。
まず、最初に私の方でごく簡単に国際課税について考えていく際の基本的な考え方について手短に申しますと、国際課税について考える際には、常に2つの視点が必要であって、1つは適正な課税の確保ということでございまして、国際的な租税回避を防止しつつ、日本の課税権を確保していく。この視点がどうしても1つの論点として重要になってきます。2つ目は、そういうふうに日本の課税権を確保しながら、かつ経済活動に対する一定の配慮、例えば日本企業の国際競争力の配慮とか、経済交流の促進とか、こういうことを考える必要があって、適正な課税の確保と経済活動に対する配慮という2つの視点をバランスさせていくということが重要でございまして、どちらか一方だけというわけにはいかないというところに難しいところがあるのではないかと思います。
それでは、具体的な制度について、事務局の方から説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
〇田中参事官
ありがとうございます。お手元には、事務局より「企画17-7 資料(国際課税関係)」、更に「企画17-8 参考資料(近年の答申における国際課税に関する主な指摘事項)」を配付させていただいており、中里先生論点メモと併せてご覧いただければと存じます。まず、これまでの税調の御指摘の事項としまして、「企画17-8」、薄い方の参考資料でございますが、近年の答申の指摘事項の1ページ目の一番上でございますけれども「グローバル化、情報化・電子化の進展や国際的な事業・投資活動の複雑化・多様化を背景に、国境を越える活動についてわが国の課税権を確保していくため、内外の経済活動に対する課税の中立性・公平性を確保する観点も踏まえ、国際課税制度の見直しを進めるべき」とされております。
国際課税の問題は、複数の国家間における課税権の調整として把握されるべきであり、究極的には、国家間における税源の配分を確定していくことが目的であると考えているところでございます。
お戻りいただきまして、「企画17-7」、分厚い資料の方の1ページ「国際課税の役割」でございます。
ただいま中里先生が二本柱で御説明されました適切な課税権の確保あるいは経済活動に対する配慮というところでございますが、最初の方の適切な課税権の確保を、この事務局ペーパーでは、更に「・国際的二重課税の調整」と「・国際的租税回避への対応」というように2つに分けておりますこと、中里委員論点メモの「(2)経済活動に対する配慮」という項目が事務局ペーパー3つ目の「・投資交流の促進」に対応しているということ、を付言させていただきます。
いずれにしましても、こうした機能を果たすために、事務局ペーパーの右側でございますが、国内法を中心に対応しつつ、租税条約においても補完的に手当をしているという構図になっております。
2ページ「国際課税に係る基本的考え方の推移」というところでございますが、国際課税については、アメリカが基点となりまして、更にOECDが考え方をなるべく国際標準化し、我が国もこうした考え方に沿って国内法の整備、租税条約の締結を図っているという流れをお示ししているところでございます。
5ページ「国内法に定める国際課税」というところでございますが、先ほど国内法を中心に租税条約が補完的に機能していると申し上げましたが、その国内法は大きく分けて5項目ございます。制度の概要を一つひとつ御紹介する前に、6ページ、この5項目についての最近の5年間の主な改正項目を掲げさせていただいております。変化の早い国際経済実態に応じまして、政府税調でも鋭意議論していただいた結果、近時の改正項目は、以前に増して多岐にわたっております。
ただし、この中では、外国税額控除制度の改正は、この5年間では、ご覧のとおり行われていないところでございます。
7ページ「我が国の課税権の範囲(明治32年~)」でございます。
課税権を論じる場合、対象所得の源泉がどの国なのかという所得の源泉地に着目するか、これはこの図で行きますと、横のラインでございます。また、所得を得た人が居住者か非居住者かという人の属性に着目するか、これは縦のラインでございますが、この2つの考えで分けますと、ご覧のとおりのマトリックスができるわけでございます。このマトリックスから読めることは以下の3つだと思います。
第1に、[1]の部分でございますが、居住者が日本国内で得る国内源泉所得は、我が国のみで課税されるということでございます。第2に、[4]のところでございますが、その裏側でございまして、非居住者が外国で所得を得る、国外源泉所得の場合は、我が国の課税権が及ばないということでございます。第3に、[2]と[3]の部分でございますが、居住者が国外源泉所得を得た場合あるいは非居住者が我が国国内源泉所得を得た場合、これは相手国と我が国の二重課税が発生する可能性がある部分でございます。
こうした二重課税の発生に対応するのが、外国税額控除制度や租税条約ということでございます。
8ページ「移転価格税制(昭和61年~)」でございます。
この制度は、昭和61年に導入されたものでございまして、一番上の文章でございますが、我が国と海外の関連企業との間の取引において、その取引価格を通常の価格とは異なる額、これを移転価格といいますが、こうした移転価格を設定すれば、一方の利益を他方に移転することが可能となり、結果として利益操作をしたのと同じ状態となります。
このため、矢印のところでございますが、移転価格税制は海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、通常の取引価格、これを独立企業間価格といいますけれども、この独立企業間価格を用いて所得を計算し、課税する制度でございます。近時、移転価格税制の課税も増加しておりまして、この独立企業間価格をどのように算定するかというのが、〇のところでございますが、大きな議論になっております。
9ページ、昨年の平成19年度改正で政府税調でも議論をいただきましたけれども、移転価格税制の相互協議に係る納税猶予制度を創設したところでございます。
囲みのところでございますが、移転価格税制については、相互協議が終了するまでは最終的な税額が確定しないという特質に鑑みまして、租税条約の相手国との相互協議で合意が得られるまでの間、二重課税に伴う企業の負担を軽減するため、納税を猶予する制度を創設いたしました。
10ページ、昭和53年に導入しました外国子会社合算税制、いわゆるタックス・ヘイブン税制でございます。
一番上の文章でございますが、我が国企業の国外源泉所得について、海外に子会社を設立し、そこに利益を留保するということになりますと、我が国での課税を免れることが可能となります。
そこで矢印のところですが、外国子会社合算税制は、このような実体のない海外子会社を利用しました租税回避行為に対処するため、税負担の著しく低い海外における子会社に留保された所得を、その持分に応じて、我が国親会社の所得に合算して課税するということにより、課税の繰延べを防止する制度でございます。
11ページ、平成4年に導入された過少資本税制に移らせていただきます。
文章でございますが、我が国企業が海外の関連企業から資金を調達する際に、出資を受けることに代えて貸付けを受けることを多くしますと、税負担の軽減が可能となります。つまり、同じ利益が出ても、極端な例でございますけれども、全額出資の場合、その当期利益から法人税がかかりまして、その後、配当を支払うということになります。仮に一方で、ほとんど全額貸付けを受けるというケースを想定しますと、支払利子は費用として損金算入できますので、当期利益そのものが出資の場合に比べて少なくなるという形になります。
矢印のところでございますが、過少資本税制は、海外関連企業から過大な貸付けを受けることによる我が国企業の租税回避を防止するため、出資と貸付の割合が原則3倍を超える部分の支払利子につきまして、損金算入を認めないこととする制度でございます。この制度は幾ら税額が出るかというよりも、歯止め的な制度と御理解をいただければと存じます。
12ページ「外国税額控除制度(昭和28年~)」でございます。
一番上の文章ですが、居住者・内国法人は全世界所得に課税されるため、国外源泉所得に対して源泉地国で課税される部分は、二重課税が発生することになります。
矢印のところです。外国税額控除制度は、国際的な二重課税を排除するため、外国で納付した外国税額を我が国で納付する税額から控除することを認める基本的な制度ということでございます。
OECDでは、二重課税の排除のために、外国税額控除制度と国外所得免除方式と言いまして、海外源泉の所得を国内の益金に不算入とするという方式も認められておりますが、我が国は、アメリカ、イギリス同様、外国税額控除制度を採用しております。額としましては、約4,000億から今のところ5,000億半ばというのが、外国税額控除制度の利用実態でございます。
13ページにおきまして、外国税額控除制度の仕組みを支店形態と子会社形態に分けて説明いたしております。
左側の部分を見ていただきます。支店形態の控除を直接外国税額控除と言います。全世界所得が100ありまして、そのうち国内源泉所得が60、支店における所得、つまり国外源泉所得が40ある企業を想定いたします。
また、この図では、法人税率は日本、海外とも30%としております。支店では外国税額を40かける30%で12払います。日本における法人税額は100かける30%ということで30でございますが、既に海外で12払っておりますので、その分を控除いたしまして、我が国に納めるネットの税額は18ということになります。
右側でございます。子会社形態の控除を間接外国税額控除と言います。間接外国税額控除とは、別人格を有する外国子会社が納付した外国税額のうち、一定額を自分が納付したと、つまり、自国の企業、親会社が納付したものとみなして控除するものでございます。
具体的には、その外国子会社の所得に対して課される外国税額のうち、その課税済みの配当可能所得から親会社に対して支払われる配当額に対応する部分の金額が親会社において納付した外国税額とされます。この説明図の場合におきますと、課税済みの配当可能所得は、40から12を引いた28でございます。親会社への配当金額はそのまま28というふうになっておりますので、課税済みの配当可能所得の100%を配当したという形に、この場合はなっております。外国子会社が納付した外国税額12の全額が内国法人が納付した外国税額とみなされまして、いずれにしてもネットの納税額は支店の場合と同じ18となるということでございます。
14ページ「外国税額控除における『控除枠』の流用(一括限度額方式)」を御説明いたします。
2か国、A国とB国の企業2つがあるということを想定しておりまして、税率はA国が50%、B国は10%ということを想定しております。全世界所得はそれぞれの国で生じた100でございまして、計200でございますが、日本の法人税率は30%といたします。
この場合、A国における税額は100かける50%で50となりまして、日本の税額30から外国税額控除をしようとしても、20はこの限りでは控除できないわけでございます。
しかし、B国の方を見ていただきますと、B国の税額は10でございまして、外国税額控除をしても、なお30引く10で20の外国税額控除ができる余裕枠があるということになるため、A国で超過した分、20をB国の枠で流用できるというのが、この図でお示ししたものでございます。
A国、B国を区分して控除する方式、A国とB国を遮断する方式、これを国別限度額方式と言いますが、国別に限度額を管理しないで一括して管理するという意味で、この表全体を一括限度額方式と呼んでおりまして、我が国は本方式を採用しているところでございます。
更に、国別のほかに、所得別で管理する場合もございますが、我が国は所得別で管理することもしておりませんし、こうした余裕額あるいは超過額の繰越しを3年間認める制度となっておりますほか、外国で非課税の所得でも3分の1は国内の控除限度額の算定に入れるということを可能とするなど、比較的緩やかな制度となっていると承知しております。
足早で恐縮ですが、15ページは、最近の外国税額控除に関する改正の経緯、更に16ページにつきましては主要国における外国税額控除の概要、比較対照表を掲げております。
17ページ、外国税額控除方式の見直し等を検討する際に、我が国企業の国外所得の現状を把握しておく必要があると考えまして、経済産業省作成資料から添付させていただいた資料でございます。
3つグラフ等がございますが、左の図でございますけれども、我が国企業の海外生産比率は約3割強に上昇しているということでございます。
真ん中のグラフを見ていただくと、海外現地法人全体の利益も増加傾向にあるということが見てとれると存じます。
また、一番右の図を見ていただきますと、我が国企業は海外利益の多くを国内に資金還流せずに海外に留保する、いわゆる海外留保金額、これが急増している姿が見てとれるところでございます。
こうした傾向と外国税額控除制度がどのような関係にあるかというところが制度見直しの1つの視点かと存じます。
以上が国内法に定める国際課税の概要でございます。
18ページ以降が「租税条約」についてでございますが、ここは簡単に触れることにとどめさせていただきたいと思います。
租税条約の内容は、国際課税の役割そのものでございまして、先ほど申し上げた「〇二重課税の調整」「○租税回避への対応」「○投資交流の促進」という三本柱がこのまま当てはまると考えております。
無論、二重課税の調整や租税回避への対応は重要でございますが、中里主査がおっしゃったように、近年では、「投資交流」の促進という視点もより一層重要視されてきておりまして、交渉相手国の選定、これは一番下の点線の囲みでございますけれども、こういった選定に当たりましても、我が国との経済交流の実態というものを見極めて決めることとしております。
19ページ、その観点から我が国の対外・対内直接投資の水準を見ながら、租税条約の改定・締結を鋭意進めているところでございます。
本年パキスタン、この夏にオーストラリアとの基本合意に達したところでございます。
20ページでは、我が国の租税条約ネットワークの現状をお示ししておりますが、既存の条約を改定してほしい、あるいは新規に条約を結ぼうという御要望が多くの国から寄せられておりまして、私どもも全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
以下、租税条約に関する資料を御参考までにお付けしております。
最後に、27ページ、28ページでございますが、国内法と租税条約上との差異を利用しました租税回避に対応するべきものとして、2年前に、平成17年11月8日でございますが、今後の検討課題として提出させていただいた資料でございますが、外国法人が発行する社債の利子の課税に関するものを盛り込んでおります。こうしたものへの対応も応用問題としては必要なのではないかと考えております。
以上、駆け足でございますが、国際課税関係の事務局説明とさせていただきます。
〇中里主査
概要を御説明いただきましてありがとうございました。非常に複雑でなかなかつらいんですけれども、これについて、私の資料「企画17-5」と「企画17-6」の参考資料ですが、この2つを用いて簡単に手短に御説明させていただきます。
今の御説明にあったように、国際課税というのは、国内法と租税条約と一体となって仕組みが構成されているということになっております。
このうち、そこにあるように、国内法の制度としては、課税権の調整のための外国税額控除及び移転価格税制。
それから、租税回避対応のための移転価格税制。移転価格税制はこちらにも入るわけですが、それからタックス・ヘイブン税制、過少資本税制といろいろあります。
国内法の対応につきましては、外国税額控除については、また後で、さっきもお話があったように、最近改正がなされていないものですから、後で詳しくやるとして、移転価格等について、これは他国との調整とかも必要になってきますので、国際標準に向けた努力というのが必要になってくるというところを指摘しておきたいと思います。
それから、租税回避への対応ですが、これは次から次へといろいろな取引が出てくるものですから、先ほど資料の一番最後にございましたダブルSPCなんて、今は余り使わないと思うんですが、一時は大はやりで、どこもやっていたというところもありますし、実態に合わせて、適宜その都度改正していくという努力が必要になってくると思います。
このような国内法は日本の努力で、一国の努力でユニラテラルに動かしていけるんですが、租税条約の場合には、基本的にはバイラテラル、二国間条約ということになりますので、相手国との調整が必要になってまいります。そこで課税権の調整と、租税回避の対応というのが主要な目的ということになりますが、ここではネットワークの拡充ということが一番必要になってくるのではないかと思います。
以上の国内法と租税条約の最近の動きの中で、ここ数年いろいろな改正がなされたわけですが、比較的その改正がなされていないのが外国税額控除でございますので、これについて3ということでお話しさせていただきたいと思います。
先ほどの御説明にもございましたけれども、国際的な二重課税の排除の方法には、外国税額控除方式と国外所得免税方式の2つが国際的に認められているわけでして、いずれの方式を採用するかというのは、各国の判断ということになります。
事務局作成の資料の16ページに主要国の制度比較がありますので、それをご覧になりながらお聞きいただきたいと思うんですが、外国税額控除を採用しているのは、アメリカ、イギリス、日本等でございまして、この制度の下では、日本の企業がどんな税率の国に進出していっても、外国で払った税金を税額控除するということで、どこの国に進出しても、税負担が日本において変わらないということで、いわゆる資本輸出中立性が保たれるということで、資本輸出国の論理が外国税額控除に表われていると思います。
これに対しまして、国外所得免除方式、これは主にヨーロッパで採用されておりますけれども、こちらは自国法人の国外所得を免税とする方式ですので、例えばフランスならフランスで活動する法人は、フランス法人もフランス国内源泉所得にしか課税されませんし、フランスに進出してきている外国の企業もフランスの税率でしか課税されませんから、どの国の企業もフランスで活動する限りは、同じ税率で課税されるということで、資本輸入中立性ということで、資本輸入国の論理のようになっているところがございます。
ただ、それは一般的な説明で、最近では国外所得免除方式というのが結構注目されておりまして、「企画17-6」の参考資料を見ていただきたいんですが、アメリカの大統領諮問委員会の方で、国外所得免除方式について提案がなされているということですので、御紹介させていただきます。
この報告書では、まず、外国子会社の所得がアメリカの親会社に配当されるまで課税されないために、課税繰延べとなっている点を指摘していて、子会社形態で海外進出している場合には、外国税額控除の制度をとったとしても、資本輸出中立性というのは達成されないということになります。
このために企業には配当せずに、海外に所得を留保するインセンティブを与えてしまっているのではないか。これが事業や投資判断をゆがめているのではないかという意識があるわけでございます。
外国税額控除制度の問題点についても触れておりまして、アメリカの現在の外国税額控除制度の問題点として、先ほど、事務局の説明にもございましたけれども、軽課税国でできた控除余裕枠でもって、比較的税率の高い国で払った外国税額を吸収するという限度額の流用の問題というのが厳しい問題として指摘されております。
しかも外国税額控除の制度は非常に複雑でございますから、事実上、大企業のみが実効税率を自力で引き下げる結果になっているという点も指摘されているわけでございます。このような指摘は日本の制度について考える上でも参考になるのではないかと思います。
そういう問題について、問題認識をした上で、大統領諮問委員会の報告書は解決策として、国外所得免除方式というのもあくまでも1つの選択肢としているわけでございます。ただ、注意していただきたいのは、この場合にも投資所得については全世界所得プラス外国税額控除方式を維持すべきであるとしております。
ちなみに、フランスも事業所得については、国外所得は免税ですが、投資所得については全世界所得プラス外国税額控除なので、ヨーロッパの国で外国税額控除がないというのは、全くの誤りということになります。事業所得についてのみの話でございます。
他方、これは平成12年の政府税調答申にあるように、国外所得免除方式をとりますと、企業の海外移転が進んでしまうという問題点が残ると思いますけれども、この点について、この報告書、アメリカの大統領諮問委員会の報告書は具体的な提案は行われておらず、移転価格税制の執行の強化などが必要であるという点を簡単に指摘するにとどめているところでございます。
以上が、最近、アメリカにおいて国外所得免除方式が提案されたということの御説明ですが、ここで日本の外国税額控除制度の問題点について、これもすべて細かく御説明しても国際租税法の授業のようになってしまいまして、聞く方はこれほど迷惑な話はないと思いますので、大まかに雰囲気をつかんでいただければよろしいかと思います。
まず、限度額管理というのがありまして、日本よりも税率の低い国で控除限度額をつくり出して、日本よりも税率の高い国で払った、あるいは外国税額を吸収するということで、諸外国を一体として見てしまうところがあるわけですが、日本は一括管理をしておりますので、世界的に見ると一括限度額方式を、これだけ大胆に採用している国というのは日本だけ、日本の外国税額控除は世界で一番緩い。別に定量的に分析したわけではないですが、専門家としてはそういう感想を持っております。
二分割の管理ということで、アクティブなインカムとパッシブなインカムとに分けて、それぞれに限度額をとるという方式もありますし、所得別とか、国別とか、いろいろ限度額の管理があるんですが、限度額の管理を幾つかに分けてやれば分けてやるほど外国税額控除は使いにくくなる。限度額の管理を一括でやると、非常に企業にとって有利になって、最も有利な制度を日本は採用していると言っていいのではないかと思います。だからいけないと言っているわけではなくて、お陰で企業の海外進出等も促進されたという面もあるんだろうということです。
超過額と余裕枠の繰越しでございますけれども、控除限度額の超過額や控除限度に満たない余裕枠、細かいことは気にしないでください。これはそれぞれ3年の繰越しが認められているわけですけれども、繰越期間を更に延長すべきだという要望も企業からは行われているところでございます。ただ、一括限度額方式という緩い制度の下で、どこまで延長を認めるかというのは、政策論としていろいろ議論しなければいけないところもあるのではないか。つまり、限度額を超えて外税が控除されてしまうリスクが高まってしまうんではないかという指摘も他方であるわけです。
最高裁まで行った事件がございまして、日本の外国税額控除の控除限度額が極めて緩いものですから、名板貸しを行って、ニュージーランド法人の払うべき税金を日本企業が払ったように契約をつくって、日本の外国税額控除をとって、その外国税額控除でもうかったお金をニュージーランド法人と日本法人で分けた。これが最高裁によって否定されたという事件もあるわけで、なかなか深刻な問題になっております。
対象となる外国法人税の範囲でございますけれども、これもいろいろ細かな議論がございまして、非課税所得では、相手国で課税されない所得については、そもそも二重課税というのはないわけです。だから、外国税額控除の対象とする必要はないわけですが、それでも3分の1は使えるということで、この点も二重課税がないのに二重課税を排除するというのが、果たしていいのか悪いのか、いろんな考え方があると思いますが、そういう点が指摘されます。
日本の法人税を超える外国の税金についても、一定の適正化を図らないと、日本の税収、日本の税率までの課税を守れないという問題もございます。
更に複雑になりますが、先ほど説明のあった間接外国税額控除でございますけれども、そこはいろいろ議論があるんですが、例えば対象子会社の範囲の問題で、現行では内国法人の受取配当益金不算入の基準と同じ基準でございまして、25%以上保有の子会社からの配当について間接外国税額控除が認められていますが、この保有比率の引き下げが要望されているわけです。それなりに理由のあることかもしれません。
「企業のグローバルな組織形態選択への影響」ということで、現行では一定の孫会社までが間接外国税額控除の対象ですけれども、例えば地域統括会社を設立したりといった多様な組織形態選択の要請がございまして、ひ孫会社まで拡大するべきだという要望もございます。企業の活動実態に合わせて、こういうものをどう考えていくかという問題が起こってくるということです。
更にもう一つ、こちらの参考資料を見ていただきたいんですが、中里参考資料の2枚目で英国財務省の海外子会社からの配当免除の提案というのがありまして、これも最近我々の世界で注目しているものでございますが、海外子会社の負担する外国税の調整について、より根本的に海外子会社の得る所得を国外所得として免税する方式に対する要望というのがあるわけですが、これに関して厳格な外国税額控除制度を日本と同じように採用しているイギリスで、同様の提案がなされているということです。
この報告書では、外国税額控除制度の問題点としまして、海外子会社からの配当に関しては、イギリスに配当されるまではイギリスで課税されない。そうすると、外国税額控除の理論的な支えであるところの資本輸出の中立性というのは達成されないことになってしまいます。
先ほどの控除枠の流用が行われるということもありまして、なかなか難しい。課税逃れというべきかどうかわかりませんが、そういう問題も起こっているということです。日本でも同じような問題が、外国税額控除についてあるわけで、それだったらいっそのことということで、イギリスの財務省が提案したのがこの解決策で、イギリス財務省は海外子会社の得る所得について、国外所得免除方式をとって、要するに海外子会社からの受取配当も益金不算入にしようということを提案しているわけです。これはかなり大胆なものですが、かなりプラグマティックでもあります。
これはアメリカの提案のように、全面的に国外所得免除方式に移行するものではなくて、海外子会社に限定して国外所得免除方式を採用するものでございまして、一挙に制度をドラスティックに変えるということではなくて、イギリス流のステップ・バイ・ステップというコモンセンスが生きているような方法のような気がするわけです。
先ほどのまとめにもございましたけれども、制度改正を考えていく際には、適切な二重課税の排除がどうしても必要でございまして、二重課税排除のための外国税額控除という基本的な視点に戻って、どういうふうに制度を確立していくかということが、まず必要でございまして、二重課税排除の目的を超えてどうこうということはふさがなければいけませんし、二重課税が排除されていなければその分は補充していかなければいけませんしというバランスの問題が出てきます。
国際課税の制度は、今ごく簡単に御説明しても、聞いていて、数値例、実例、いろいろ考えると、私もこれを専門にしているわけですが、それでも授業の途中でうっと詰まってしまうことも結構ございますので、非常に複雑ですから、もうちょっと簡素化してもいいんではないかというのは、常に必要な考え方ではないかと思います。制度が複雑になればなるほど、租税回避の可能性というのも増してくるわけですから、シンプルで効率的な制度ということが必要かもしれません。
それから、何といっても経済の活性化ということは、日本企業にとって非常に重要ですから、企業の国際競争力に与える影響というものを十分に考えた上で国際課税の制度を、ただ厳しくすればいいというものではございませんので、バランスの上で考えるということが必要になってくるんではないかと思います。
なかなか駆け足でわかりにくかったと思いますが、以上が私の論点の紹介でございます。これにつきまして、コメント、御質問、その他ございましたら、お願いいたします。
〇林委員
これは、どういう形の御質問をすればいいか悩んでいるんですけれども、中里委員がおっしゃった、適切な課税の確保ということと、経済活動に対する配慮のバランスが重要だというのは、非常によくわかります。例えば経済活動に対する中立性といいますか、国内外の投資に対する中立性、これは資本輸出の中立性といっていいのかもしれませんが、その場合には、例えば外国税額控除だったら完全に税額控除することによって、国内投資、国外投資に対し、理論的に中立的になりますね。
ところが、それをやると還付しなければいけないという話が出てきて、そこまではどうも問題だということの中で、バランスをとっていかなければいけないという、非常に難しい問題があるわけです。
そこで、バランスを考えるときに、これは価値判断の問題なのか、つまり今次の税制調査会は、やはり経済の活性化だということを考えたときに、可能な限り中立的で、海外に投資することによって出てくる不利さをなくしていく。そして、先ほどお話がありましたように、海外の所得が国内に帰って来ないという話が、こういう国際課税の影響なのかどうかというのは検証の余地はありますけれども、そのことによって外国にとどまってしまうというような意見もあるわけです。
そこでバランスを考えるといったときに、やや中立的な税、つまり完全税額控除に行くまでにどこでストップをかければいいのかというところが非常に難しいわけで、それは例えば間接外国税額控除制度の場合に、日本の持株比率が25%で、海外の先進国はもう少し低いという場合に、そこは海外の持株比率が一つの基準に成り得るのか。あるいは何を物差しにしてバランスを考えればいいのかというところが、今、非常に大きな問題になっているので、そこがこの税調としてどういうバランスのとり方をすればいいのか。これについて、中里委員の御意見といいますか、お考えをお聞かせいただけると、私もどうすればいいのか全然わからないものですから、どのようにお考えなのかお教えいただければと思います。
〇中里主査
今、林委員御指摘のように、例えば日本の税率が30%だとして、外国の税率が50%だとして、外国で払った50%の税金について全部外国税額控除を認めてしまえば、日本の税収がその分減ってしまうわけですから、それは幾ら二重課税の調整といっても、日本の税収をからにしてまで二重課税を調整するわけにはいかない。日本でとるべき税収を外国に寄附しているようなものですから、国が国として成り立つためには、最低限自国の税率による課税というところは、なかなか譲れない線ではないかと思います。
それでは、具体的にどういう場合にということに関しては、個別に企業が困っていることがあったら、それをどんどんおっしゃっていただいて、それについて中身を検討していくということと、それから個別に国税の方で執行上困っている。要するに不都合が生じている。こんな課税逃れが生じているというのがあるんだったら、それも税調等に出していただいてということで、両サイドから現行制度で困っている点について、事例等も含めて出していただいて、アドホックにふさいでいくしかないのではないかと。理念をきれいに、白紙に絵を描くようにというわけにはなかなかいかないことです。
ただ、1つだけ言えるのは、国際課税の制度は、できるだけ外国と制度を合わせていく、できる限りですけれども、それと外国と協力していくということですから、余り日本だけが特殊な制度にならないように気を付けつつ、今の企業がお困りの点、国税の方で執行がうまくできないと悩んでいらっしゃる点を考えながら、個別具体的に問題が生ずるたびに見直していくという日々の努力以外に、どうも方法はなさそうですね。日本だけ頑張って、日本だけの努力で全部できてしまうというわけにはいかないものですからね。
〇大橋特別委員
今の林委員の意見を補足するようなことなんでございますが、いずれにしろ、今、中里委員の方から、アメリカとイギリスでも今の外国税の控除制度についての問題点というのがあって、それの解決策としていろんなことを考えているというのが非常に参考になるわけですが、いずれにしろ、日本の産業あるいは企業から見まして、やはり下手に日本に持ち帰ることによって、場合によってまた配当その他に二重で税金がかかるのはつまらないということで、どうしても海外にそのまま留保しておくという傾向が強いと思うんです。その結果、今、恐らく2兆3,000億とか2兆4,000億とか、そういう巨額のお金が多分海外で留保されていると思うんです。これは、日本全体のキャッシュフローで考えますと、極めてもったいないことでありまして、これが多分大きな企業側から見て二重の負担がかからないような形で日本に送金が可能になりますれば、これが場合によって、勿論従業員の待遇の改善につながるとか、新しい投資に向かうとか、その投資も生産力の投資だけではなくて、研究開発の投資にもつながるということがありまして、これはやはり何としてでも海外に留保しておくよりは、制度として企業がなるべく日本に持ち帰って来れるようにする。こういう制度にすることは、日本全体の国益にとって非常に大きなことではないかと思うんです。
ですから、私も専門的なところはよくわからないんですけれども、それについては今回の政府税調のいろんな御検討の中で、アメリカあるいはイギリスなどで考えている。今、たまたま日本とアメリカとイギリスが外国税額控除制度は、ほぼ同じようなことをやっているということなんですが、そういう修正を日本も是非加えていただいて、これが日本の経済の活性化につながるようなことを、政府税調で少しでも、一歩、二歩進めていただけたら、これは大変すばらしいことだと思いまして、ちょっと発言いたしました。ありがとうございました。
〇中里主査
ありがとうございました。
江川委員、お願いします。
〇江川委員
今、大橋委員がおっしゃったような、海外に資金を滞留させているというのは、私、以前に金融の仕事をしていたときに、やはり事業会社でそういうものを見ておりましたので、そういう御意見には賛成です。
私自身も今日のプレゼンテーションなどをお聞きして思いましたのは、税の仕組みを考えていくときに海外との調和ということもあるので、今の外国税額控除の仕組みをある程度見直して、国外所得免除方式を変えていく。あるいはそれを一部導入するということも検討していくということは意味があるのではないかと思いました。
ただ、この資料の16ページの表をずっと見ていったときに、先ほど中里委員の御指摘にもあったんですけれども、限度額の管理の仕方が、全部どんぶりになっているとか、幾つか海外と比べてかなりバランスを欠いているところも見られるようですし、さっきの名板貸しのお話というのは、私、初めて聞いてびっくりしたんですけれども、やはりある程度海外との調和という観点から考えると、その辺のバランスも見直していくべきだと思います。
ただ、当然のことながら、企業の競争力ということとうまくバランスさせながら考えて、なおかつ海外のいろんな国と、極端に緩やかな税制になってしまって、変なことが生じないようにということを、うまく考えていくことが重要ではないかと思います。
ちょっと申し訳ないんですけれども、早目に失礼しなければいけないので発言させていただきました。
〇中里主査
ありがとうございます。あと飯塚委員、吉川委員の順番でお願いいたします。
〇飯塚特別委員
大橋委員がおっしゃられたことと重なるんですけれども、私、前回でしたか前々回でしたか申し上げたことと似たような話をしますけれども、投資と実業は海外展開がキーワードなんです。だから、いかにして海外で事業を行うか、投資を行うかというのは、とうにそういうふうにシフトしている。
そういう中で、この17ページの経済産業省さんのつくられたデータは、まさに実感と一致していまして、ちょうど失われた10年を過ぎた辺りから、明らかにこういう印象を持っています。海外でかなりのアクティビティーが発生している。まさに製造業の3割が海外生産になっているし、特にアジアが多くなっていますけれども、何よりもこの2002~2003年ぐらいの間に内部留保が20倍ぐらいになっているんです。非常に大きなトレンドが起こっているんだなと、改めてデータで感心しましたけれども、同時に雇用も動いているわけです。ですから、これを急いで防がなければいけない。
やはり控除制度があっても限度額等があって、結局二重課税になっているんではないかと思うんです。これを急いで防がないと、国内にキャッシュが入ってこない。外国人も今、投資が減っているわけですし、対内投資が少ないわけですから、是非これを専門家の方々の技量で改善して、国内がにぎわうようにお願いしたいと思います。
〇中里主査
どうぞ。
〇吉川委員
先ほどの大橋委員のお話を伺っていまして、国内に配当がなかなか来なくて、日本企業の海外子会社の内部留保として蓄積される傾向があるというお話があったんですが、その場合にはどうなんでしょう。その会社の株価がその分上がるといいますか、いずれにしても日本企業が海外で活動していて、要は国内だろうが海外だろうが内部留保があれば、その分は株式市場が正確にそれを評価していれば株価が上がるということで、それを仮に日本人が持っていたとしたら、キャピタルゲインをどこでリアライズするかという問題はあるにしても、保有している株のキャピタルゲインで、そこに課税されるという形で税収が入ってくるという面があるのかなと思ったんですが、この辺りはどうなのかということ。中里先生のお話を伺っていて、日本企業が海外でいろいろ活動する。いろんなことがあって、しかし、日本としては、とにかく税収はある程度確保する必要がある。これはよくわかるんですが、国益とかそういう話になってくると、いろんな複雑な面があるような気がいたします。
つまり日本企業といっても、そもそも株式会社の株式を日本人が必ずしも持っているわけではないわけで、GDPとGNPのような話になると思うんですが、国益というのは日本の国土の上での、例えば雇用の創出、それは労働所得に対応するわけですが、そういうことであればひとつはっきりしますけれども、日本企業は海外でいろんな活動をするわけですが、どういう形で国益なり日本企業の利益というのを図るというとあれですが、結局、税との関係ではディストーションが小さければいいというのであれば、それはそれで明快なんですが、結局はそれに尽きるということでいいのか、そんな辺り、感想のようなものですが、1点目は株価に反映されるということで、必ずしも配当に回らなくても大丈夫なのかという気が少しするということです。
〇中里主査
ありがとうございました。会長、どうぞ。
〇香西会長
会長としての意見ではありませんで、素人としての感想ですが、今の吉川先生の話とかなり同じようなことを感じて、日本のようなゼロ金利の国に金を持って来るばかはいないのではないかと、はっきり言えばそういうことであって、どこへ置いているからいい悪いという話ではないのではないかと思います。
もう一つは、これもやはり吉川先生のと非常に似ているんですけれども、今の税額控除してくれるというのは、一社一社をとって中立的だという話ですね。それと国益とが同じなのかどうかというのを、例えば産業としてみたらどうかとか、いろいろあって、かなり複雑だと。国益を本当に調べてみろといったら複雑なことになるんではないかという印象を持ちました。決して、会長として、だからどうしろと言っているわけではありませんので、その点だけよろしくお願いします。
〇中里主査
どうぞ。
〇増渕委員
会長にそう言われた後、非常に発言しにくい感じがあるんですが、先ほど来、大橋委員の御発言の後に続いている話との関連であれですが、海外現地法人の内部留保が非常にたまっているということは、常識的に考えて税の問題だけではないだろうという感じはいたします。とはいえ、税の要因がゼロではないということがある。
それから、株価に反映すれば結果が同じではないかというのは、理屈はそうかもしれませんが、企業の現実のキャッシュフローとして反映されることによっての違いというのは、やはり私はあるんではないかという気がいたします。
もう一つ、中里委員のお話の中で、非常に私の耳に残った言葉は、資本輸入中立型と資本輸出中立型という言葉でして、日本はゼロ金利という問題はあるかもしれませんが、これからは外から資本が入って来る国になっていかなければ、将来の経済成長を確保していくことは難しいと思いますので、こういう税制だけでそれが可能になるとか、そういう話ではないと思いますが、しかし、そういう配慮をこの点でも考えるというのは意味があることだと思います。
もう一つ言えば、これも中里委員のお話の中にありましたけれども、欧・米・英といったような国と税制がそれほど大きく変わらないという姿を、こういう分野では目指すことも必要ではないか。そういうことを考えるべきではないかという気はいたします。
〇中里主査
どうぞ。
〇井戸特別委員
外国税額控除を二重課税防止といってみても、自ずと限度があるので、国内課税所得をゼロにしてしまうような、つまり国内で課税所得が出ているのに、外国の税額を調整するために、国内の当然とっていい課税所得を全部ゼロにしてしまうような二重課税排除の方式というのは、いささか制度としておかしいのではないか。つまり二重課税を排除するにしても、一定の枠組み、限度額、例えば2分の1とか、国内所得にかかる税額の2分の1とか、そういうことがないと、それを全部ゼロにしてしまって、3年繰越というのははき出しまで認めるということですから、そういう仕掛けを置いておくというのは、行き過ぎな二重課税排除になっているんではないかという気がいたします。非常に素人的なんですが、いかがでしょうか。
〇中里主査
ありがとうございます。非常にテクニカルなところで、コメントも出ないのではないかと心配していたんですけれども、本当にありがとうございました。ほかに何かございますか。
〇出口特別委員
1つだけ、ちょっと今までの流れと違うんですけれども、事務局の「企画17-7」の8、9ページの移転価格税制に関わる19年度改正があったわけですが、8ページの方を見ますと、申告漏れ件数、金額も相当多くなっていまして、これはよくわからないんですが、意図的な申告漏れなのか、それとも解釈の違いによるものなのかというところで、この辺は非常に複雑になっておりまして、こういったところに関して今後19年度改正の内容を見ながらだと思うんですけれども、方向としてはどういう方向に行くのかということだけ聞かせていただければと思います。
〇中里主査
先のことはわかりませんけれども、国際課税の制度は過渡期にあるんではないかと思いまして、執行の方の努力と企業の方の努力の間で、当然意見の相違というのは出てきますから、裁判等を通じてだんだん方向が明らかになっていくのをしばらく待つ。しかし、その間に変えるべき制度の不都合な点は変えていくということですね。裁判になったことは裁判の方で解決していただくしかないと思います。
まだ御意見もあろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、この辺で終わりにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、会長、よろしくお願いいたします。
〇香西会長
それでは、長時間にわたりまして、活発に御議論をいただきまして、本当にありがとうございました。最後に、今後のスケジュールについて御報告をいたします。次回は、既にお知らせしておりますけれども、来週10月16日の火曜日、2時~4時30分までの2時間30分を予定しておりまして、テーマは資産課税、納税環境整備を議題としたいと考えております。それ以降の日程につきましても、決定次第御連絡することにしておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の「企画会合」は、以上で終了したいと思います。どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。