企画会合(第16回)終了後の香西会長・井堀主査記者会見録
日時:平成19年10月2日(火)16時25分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
ただ今から第16回企画会合終了後の記者会見を行います。
まず始めに、井堀委員が主査として本会見に出席させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
〇質問
両先生にそれぞれお尋ねしたいのですけれども、今日の法人課税をめぐる議論では、大きく分けて、その実効税率の引下げを優先するべきだという議論と、R&D減税などを中心とする政策減税を重視すべきだという考え方と、どちらもかなりたくさんの意見があって、どっちが多いという感じでもなかったかと思います。こういう議論についての感想と、それから、こういう対立軸、2つの考え方があるわけですけれども、どちらの考え方にご自身は近いのか、その2つについてお伺いできればと思います。
〇香西会長
大変活発な議論が出たので、喜んでおります。個人の意見は、今すぐ発表するということにすると、かえってまとまるものがまとまらない可能性がありますから、今日の議論をもう少し皆さんそれぞれで頭を冷やして考えていただく。その上で、全員が賛成でなくても、こういう方向で行きたいということで、それはそれでしょうがないやという程度には話し合いがつけられるように、これから努力していくということになるだろうと思います。
〇井堀主査
私は会長よりは一委員ですから、気楽に。私の個人的な考えですけれども、税率の引下げは一旦引き下げるとそう簡単にもとに戻せない。将来へコミットするという効果がありますので、これをやるとすると、短期ではなくて中長期的な視点からしっかりとそういった方向でやると。その場合は当然、減収が短期ではなくて中長期的に出ますので、その手当をどうするかも含めて検討する必要があるわけです。ところが、政策減税のほうは、ある意味で1年ごとに、あるいは短期で見直しは可能ですので、税率を引き下げるのに比べると短期的に政策としてはやりやすい、そういうメリットがあるかと思います。
したがって政治的ないろいろなハードルを考えると、差し当たっては政策減税を中心に短期的な手当てを考えて、中長期的には、本気で法人税率を引き下げる方向を目指すかどうかをもう少し議論する。時間軸を分けるというのが、一つの現実的な考え方かなという気がします。
〇質問
今の補足で井堀先生にお伺いしますが、短期的には政策減税重視というお話でありました。年末の税制改正に向けた議論ということでお尋ねしますけれども、経済界や経済産業省の要望では、さらに今ある政策減税を拡充してほしいという要望が出ています。先生は、拡充まで踏み込む必要があるとお考えなのか、それとも、とりあえず現状の水準を維持していくのか。といいますのは、上乗せ分などで来年春に期限が切れる部分があるかと思うので、その扱いとの絡みでお尋ねしているのですけれども、どちらのお考えに近いでしょうか。
〇井堀主査
どのくらい政策減税の効果があったのか、あるいは今後続けることによってあるのかに関しては、今日の議論でも出てきましたように、定性的にはあったとしても、定量的にきちんと出すというのはなかなか難しい。ある程度定量的なところが出てくれば、それを踏まえてさらにもう少し拡充するのかどうか、あるいは整理統合して基本税率の引下げのほうにより早い段階で行くのかどうかに関して、議論が煮詰まってくると思います。今の段階ではなかなか難しいのですが、私としては基本的な方向は、法人課税はなるべく軽減したほうが経済活性化に役立つと思います。政策減税で行くというのはあくまでも短期の話でして、本来のあるべき姿は、基本税率をなるべく引き下げる方向に、いろいろな意味で環境が整うことを優先すべきだと思っています。
〇質問
今の井堀先生のお話にちょっとかかわってくると思いますけれども、法人減税をするための環境というのが、一つは財源の問題といいますか、それを裏打ちする財源の問題になってくると思うのです。今日は猪瀬委員も、消費税の話が出てこないので議論があれかなという話もちらっとされていましたけれども、法人減税をお話しする場合に財源の問題というのはどこまでクローズアップされるべきものなのか、ここら辺についてはどのようなご認識でいらっしゃいますでしょうか。もしよろしければ、香西先生にもお話しいただければ幸いです。
〇井堀主査
財源の問題は非常に重要な問題で、短期の、その年その年の年度改正でどのくらい財源を手当てするかということと、中長期でどうするかということと、2通りあり得ると思います。中長期で考えますと、経済が活性化すれば、それなりに税収が自然に増えるという側面も織り込んで、短期的には財政赤字が出ても、ある程度減税--要するに、財源は短期的に多少目をつぶってでも、政策減税の拡充なり基本税率の引下げで経済活性化をやるんだというオプションもあり得ると思うのです。ただ、日本の厳しい財政状況を考えると、やはり短期的にもきちんと手当てをするのが筋だと思います。
その場合、一つのオプションは、今日も出てきましたけれども、例えば基本税率を下げるのであれば課税ベースをもう少し拡充して、政策減税を整理する代わりに基本税率を下げるとか、あるいは、政策減税を拡充するのだったら対象を絞って拡充するとか、企業減税の中で税収中立でそれなりの対応をするというのがその一つとしてあるわけです。もう一つは、企業減税の中で税収中立を考えないで、ほかの税との組み合わせ、例えば消費税を増税して、そのうちの一部の財源を企業減税の財源に充てるというオプションも当然ある。前者の、企業減税の中での税収中立でどうするかということに関しては、今日も若干議論が出ていたと思いますけれども、それはそれで有力な選択肢として、どちらで行くかは別にしても、あり得ると思うのです。
問題は、消費税が絡んだ話というのは税調では全く議論していないので、これは全く個人的な意見ですけれども、私個人としては、消費税を上げる形での企業減税、企業活性化のための減税というのは選択肢から外すべきではなくて、それは一つの有力なオプションだと思います。例えばシンガポールは、消費税率を上げて法人税を下げるということを今年やっています。その場合には、税収をすべて法人税の減税に回すのではなくて、消費税を上げたことによって、社会的弱者の人にそれなりの手当てをするということはもちろんあるわけで、それと同時に、法人税の減税にも消費税の増税を一部回すというのは、中長期的な視点で考えると、日本経済全体にとってはプラスになるのではないかと思います。
ただ、今日も若干出ましたけれども、法人税の減税や消費税の増税というのは、一見、企業減税・家計増税という形になって、これは政治的に非常に難しいのですが、ただ、企業と家計の関係は必ずしも対立的ではない。企業が結果として活性化することによって、その地域経済や、雇用の面でも、所得の面でも、配当の面でも、全体でプラスになる効果というのは結構出ていると思います。そういう意味であまり対立的に考えないで、トータルで税制改革が結果として日本経済のプラスになるような形であれば、ミクロ的にいろいろな配慮をする中で、消費税の増税と法人税の減税というのはオプションとしては結構あり得る。それをどこまで税調で出すかは別にしても、有力だとは思います。
〇質問
香西先生、お願いできますでしょうか。
〇香西会長
いろいろな選択肢がまだ残っているわけですね。私は今日はせっかく沈黙していたので、フリーハンドをもう少し温存しておきたい、こう考えております。
〇質問
今日は地方法人二税の話がほとんど議論が深まらなかったのですけれども、その税収格差の問題を、現時点で会長はどういうふうにお考えかというのをお聞きしたい。それから、その税収格差が今年の焦点になろうかと思いますけれども、今後、税調ではどういう形で議論していくお考えか、お聞かせください。
〇香西会長
地方税の問題は、時間が経つごとに段々重要な問題として意識されるようになってきていることは事実だと思います。それの一つが、地方法人二税のギャップの話ですね。地域差があまりにも大きくなり過ぎているのではないかということだと思います。しかし、この問題はただ地方法人二税だけの話ではなくて、全体のとりまとめの中で、地方分権とかそういう大きな流れの中で最終的には決着がつく問題だろうと思っております。いずれにしても、ふるさと納税も既に議論がどんどん進んでいるように聞いております。そういったことも含めて、それが問題になってきたときには当然受けて立つことになるだろう、こういうふうに考えております。あまり積極的でなくて、申し訳ありませんが。
〇質問
法人課税のあり方の議論の今後の展開ですけれども、今日は本当にいろいろな意見が出て、方向性としてどうあるべきなのかというのは、聞いていても見えなかったのですが、これは少なくともあと1回はやるということなのでしょうか。それはどういう形で、いつ頃やろうというイメージでお考えなのか。
〇香西会長
1回というふうになるのか、あるいは、もう少しほかの問題も含めた総合的な議論の中で法人課税の問題を取り扱う形になるのかということは、今から予測しているわけではありません。今日のような議論は非常に勉強になったわけですけれども、あの立場でお互いに言い合っても、それはまた同じことになるというわけですから、やはりもう少しそれぞれが深堀りをして、議論の筋を整理してやらないと効果が上がらないのではないかというふうに思います。そういう意味では、1回になるとかそういう形式的なことまでは、私はこうしたいということは言えないと思います。
2通りの意見には限らないんですけれども、例えば2つのペーパーを用意して、それを足掛かりとして議論するとか、何か仕掛けを考えて、より充実して、そろそろ時間もないからというふうに結論が出てくれば、そういう形が一番いいのではないかと個人的には考えています。2派あると思っても、中がそれぞればらばらのようですから、そういう形でうまく行くのかどうかということもちょっと今の段階では想定できないということです。
ただ、論点を少し絞った形でもう一度議論をお願いすることになる。それをしないと、結論がまだ出ていないわけですから、そういう形をいつかはやるだろう、いつかはやらなければならないだろうと。10月中ということを言っていますから、その間にそれを一度こなさなければならないだろう、という程度には考えております。
〇質問
もう一つ、香西会長に別な話をお尋ねします。前回の会合のあと、福田新総理の組閣があって、政府税調の今後の役割にも絡む話で、福田総理が新たに諮問を出したということではないかもしれませんが、総理大臣が代わったことを受けて、政府税調に課せられた使命といいますか、期待される役割に何らかの変更があり得るのかどうか。この点について会長はどのようにお考えでしょうか。
〇香西会長
それは私の判断ではなくて、総理がどういう判断をされるかということで、私のほうは特に指示をされたとか、こういうふうにしたいというご希望の方向を示されたとか、そういうことは一切ありません。所信表明演説の税制について書かれた文章は諮問の文章とほとんど同じで、もう秋だからということだと思いますが、「秋以降」という言葉がないことを除いては、ほとんど同じ形で成っております。
私どもとしては、従来の路線といいますか、もちろん、総理が新しいアイデアというか、こういう方針ということをお示しになるようなことがあれば、総理大臣の諮問に答えるというのが我々の使命ですから、考慮させていただきますけれども、今すぐそういうことになったとか、なるであろうとか、そういう情報は私はまだ持っておりません。
〇質問
会長は、近々総理にお会いになりたいというお考えはお持ちでしょうか。
〇香西会長
総理は今はとてもお忙しいわけですね。ですから、いつがいいかということについては、いつか言われるかもしれませんし、できれば、税調としてこういう点についてご意見も伺いたいという問題を煮詰めた上でないと、あの忙しい総理をつかまえるというのはかえって難しいということもあると思います。その辺は、今後の我々の進行と、一方では総理のお考えというのが、どこかでは出会えるのではないかというふうに考えています。
〇質問
民主党の税制調査会のメンバーもほぼ固まりまして、選挙でもそういった主張があったのですが、改めて藤井会長から、消費税率の据え置き、証券税制の廃止、所得控除の見直しというような話が幾つか出ています。今後の税制議論にも影響を与えるかと思うのですけれども、この辺の民主党の意見に対する香西会長のご意見を頂戴したいのですが。
〇香西会長
藤井さんは、省庁は違いますけれども、私も尊敬している先輩の方で、ご活躍だなあというふうには感じております。しかし、私どもとして、ある種の政治活動、政治家としてやっていらっしゃる仕事と税調の仕事とが、どういう形で交わるのがいいかというのはなかなか難しい問題があります。ですから、自民党にも会わないと言っている方に、私どものほうから会いに行くとか、意見を言うとかいうことは、何かバランスがとれないなあというふうに思いますし、私の希望としては、自民党あるいは与党と民主党とが話し合って審議を進めていただくことは日本の政治のためにもいいことだろうと思っている、ということ以上はちょっとコメントする立場にはないと思います。
〇質問
先ほど、香西会長は法人二税の話のところで、段々重要性が増してきているとおっしゃっていたのですけれども、政府内でも、今、総務省は消費税と法人二税の交換の話であったり、財務省は分割基準の見直しであったり、意見が割れているところではあると思います。短期的にやるとすると時間が相当ないところだと思うのですが、先程分権改革ということもおっしゃったのは、もう少し中長期的に考えていくお考えということでしょうか。
〇香西会長
全体のスケジュールが、いろいろな問題について特に内閣も活動を始めたわけですから、その時間軸がどうなるかというのは、むしろどんどん詰まってくる可能性というのはあると思います。そうなったときにはそうなったときで、これは時間との競争で、間に合わせないといけないということも十分考えられると思います。その時はその時のように処理するしかない、こういうことではないでしょうか。たしかに総務省と財務省との間のお話し合いも、いろいろ議論があることは間接的にはお伺いしております。
〇司会
よろしいですか。それでは、記者会見を終了させていただきます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。(了)