企画会合(第16回)議事録
日時:平成19年10月2日(火)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇香西会長
それでは、ただいまから「税制調査会第16回企画会合」を開催いたします。皆様におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議事でございますが、前回から税目ごとの審議を開始したところでありますけれども、本日は法人課税を議題として審議を行いたいと思います。
法人課税につきましては、井堀委員に主査をお願いしておりますので、審議は井堀委員の司会進行の下で行っていただきたいと思います。
最初に井堀委員から主要な論点を提示していただき、その後事務局の説明を聴取し、その上で議論を行うという流れで進めてまいりたいと思います。
それでは、井堀委員、よろしくお願いいたします。
〇井堀主査
井堀です。ただいま会長より御指名いただきましたので、議事に入らせていただきます。
最初に私の方から約15分程度、「法人課税に関する論点メモ」というのが皆様のお手元にあると思いますけれども、2枚のレジュメですけれども、それについて説明します。
その後、前回の所得課税と同じように事務局の方から付属資料について説明をいただいた後で、皆さんの自由討議の方に入りたいと思いますので、そういう段取りでよろしくお願いします。
私の論点メモに沿って簡単に「法人課税」に関する論点整理したものを御紹介させていただきます。
まず、法人課税については、現状と課題ということで、法人課税の税率と税収の推移をどういう具合に考えるのか。このところ景気回復に伴いまして、法人税収は増えていますけれども、逆に言えば景気とともにかなり不安定な税収です。
もう一つは、これから当然議論になると思いますけれども、グローバル化の中で法人課税というのは日本だけの財政的な理由のみで説明しにくい。そういう国際的なプレッシャーの中で税率を考えざるを得ないという項目だろうと思います。いわゆる課税ベースと言いますと、逃げ足の早い税ですけれども、そこをどう考えるかということです。
「税率に対する今後のスタンス」としては、当然、現状で維持するというのが1つのスタートラインになりますし、これからも少子高齢化社会でのいろんな歳出需要の拡大を想定すると、むしろ税率は上げるべきだという議論は当然あり得ると思います。
もう一つは、法人課税というのは国際的な活性化、いろんな経済活動への負担等を考えて引き下げるべきだという議論がある。
基本的に今の税率のままで維持していくのか、引き上げるのか、引き下げるのかという税率に関する大きな問題があります。
中長期的には法人税率が今後どういう方向に行くのかというのは、来年の税制改正だけではなくて、ある程度日本の税制改正の方向の中で法人税率はどうなるのかという基本的なスタンスは、来年どうするかは別にしても、はっきり決める必要はあると思います。
そのときに当然法人税率とともに課税ベースをどうするのかという議論があると思いますので、これについても皆さんの御意見を伺えればと思います。
2番目の論点は「法人所得課税の負担」の問題ですけれども、これは去年の税調でも議論になりましたし、前回の所得課税のところでも委員の方から議論が多少出ましたが、個人所得税、あるいは消費税などと相対的に比較して、法人所得課税が、国民所得比で見て重過ぎるのではないかという議論もあります。
それから、実効税率の国際比較で見て日本の法人税負担は法人の実効税率で見て低下傾向にありますけれども、まだ、国際的に高いのではないかという議論がありますし、先進国の中ではほぼ標準的なところまで下がってきたのではないか。これについては後で事務局からの資料等を見ていただいて、また皆さんの方で議論していただければと思います。そのときに1つの論点は、実効税率で見るのが本当に法人所得課税の、あるいは企業税の面での負担を見るときに、実効税率というのは、御存じのように表面的な税率ですので、それが実際の税負担を表しているのかどうかという点に関しては、今までも税調でもいろんな議論が出てきたと思います。
今年IMFのキーンさんと合同のコンファレンスをやったときに、彼の方から強調されたのは平均税率、実効税率をきちんと区別して、特にグローバル化の観点では、実質的な平均税率と実質的な実効税率がどのくらい国際的に違うのかというのが大きな論点になり得る。それの資料も今日、事務局の方でもう一度お付けしてあります。
それから國枝専門委員の説明の中でも平均税率、実効税率の区別が重要だという議論がありました。
端的に言えば、平均税率というのは基本的に、どこの国に立地するかに関してはかなり重要な、要するに最初から税負担全体がどうなるかということが対象になりますので、どこで企業が経済活動をするのかということに関して、平均的な税率がききますし、追加的に設備投資を増やすかどうか。つまり、ある地点に立地している企業が経済活動をより活性化するときに、追加的にどのくらい税負担が増えるのかという意味では限界税率の方がきいてくる。
今までは国際的な観点では、日本の中でも経済活動をやる効果ということを考えると、限界税率の方がどちらかというと関心が高かったたんですけれども、国際的なグローバル化の観点からは、平均税率の相違というのも重要になり得る。
もう一つは、法人が負担している所得課税以外の、特に社会保険料の企業負担も含めた形で企業負担を議論すべきだという議論は、昔から税調でも何回か議論をして、これについて事務局の方で、これも含めた形での国際比較の調査が、委託ですけれども、出ていますので、それを後で説明していただいて、そういったものを踏まえて、法人課税の中で社会保険料を含める形の議論がどの程度重要かということについても議論していただければと思います。
特に日本の場合はアジアにおけるいろんなグローバル化の競争が結構激しくなっていますので、アジアの中で投資をしたときに、どの程度日本の法人税負担が重いのか。逆に言うと、法人税以外、企業負担以外のいろんなコスト、人件費とかいろんな公共的なサービスの利用負担。そうでなくても、土地の利用費、家賃とかですね。そういったものの違いの方が重要だという議論もありますので、その辺りのコスト比較に関しての資料も用意しておりますので、それも含めて特に東アジアの中で日本の企業がより伸びていく。逆に世界の中から日本に投資を呼び込むときに、アジアの中でも日本の相対的な地位を強くするにはどういう観点が必要かという点も議論していただければと思います。
もう一つ、専門委員の八塩さんから欠損法人に関する議論が出ていまして、御存じのように日本は約3分の2、7割弱の法人が欠損法人という形になっていて、これは経済合理性から見ておかしいのではないかという論点が、そもそも八塩専門委員のプレゼンテーションのスタートだと思います。この話をするときは、結果として、課税ベースが本当の企業の所得に対応しているのかどうかという議論が1つあると思いますが、もう一つは、法人所得がかなり不安定化していることの結果として欠損法人が出ているという議論もあり得るわけです。つまり、3年に1回黒字になって、3年に2回赤字になるとすれば、マクロで見ると、3分の2の法人は欠損法人として出てくるわけですけれども、3年に1回黒字でも、3年間ならしてみると、それなりの所得を稼いでいれば、法人としては維持可能なわけで、個人に比べると、それだけ法人がかなり所得が不安定であるということの反映かもしれません。この辺りは法人所得をどう考えるかということとも絡んでくると思います。
「諸外国の動向」ということで、ドイツ、イギリス、中国に関しては、最近法人税率の引き下げの動きがありましたので、簡単に資料をお付けして、これも紹介させていただきます。
「2.企業税制と経済活性化」ですが、これは去年、2007年度の答申です。ちょうど我々が去年、前会長の下で12月にまとめた答申は、副題が経済活性化で、去年の答申では大きな論点は減価償却制度の改正だったわけです、それが1年たってどのくらい効果があったのか。これは減価償却制度の国際標準に合わせようという動きですけれども、こういう方向をほかの企業課税、法人課税のところでより進めていく方向がいいのかどうかについても議論があればいいかと思います。
もう一つ、経済活性化の観点から、政策減税を最近幾つかやっております。具体的には研究開発税制、IT投資促進税制、情報基盤強化税制等で、規模で言いますと、数千億円から1兆円くらいの規模までの減税をやっておりますが、それがどのくらい効果があったのか。要するに、政策減税をやれば減収は当然出てくるわけですけれども、その裏側にはいろんな形で設備投資は増えたり、それが経済活動全体にとってプラスになるというメリットがありますので、政策減税の効果がどのくらいかというのは、将来仮に法人税率を引き下げるとしたときに、それがメリットとして経済活性化にどのくらい寄与するのか。デメリットとして、減収になったときに、それをほかの税でどういった形で補填するのかという話とも当然絡んでくる話ですので、最近の政策減税の効果について、取り上げればいいのではないかと思います。
これについては、事務局の方から若干の資料はあるんですが、直近の経済活動を定量的に検証して、このくらい効果があったというのは、なかなかはっきりとした形でお付けするのは難しいんですが、大体の感じとしては、政策減税をすればそれなりに設備投資の増加には効果があったと思います。それがどのくらいかということと、それを踏まえて、将来法人税率を仮に引き下げるとしたときに、それが政策減税とは違った形で税率の引き下げ自体が投資の増加、生産性の向上にどのくらい寄与するのか。それが税収源としてどうなのかという、ここも当然活性化の観点からは取り上げるべき論点かなと思います。
最後の「中小零細法人への配慮」ですけれども、ここは経済活性化の観点から、特に中小企業も経済的に強くならないと日本経済はもたないわけですけれども、それはどういった形でやるのか。これを余りやり過ぎると、結果として経済活性化ではなく、単に政策的な保護税制になってしまうという面がありますので、どういった形で中小企業を育てるための支援をして、そうではない中小企業と区別するというのはなかなか難しいわけですけれども、厳しい財政事情の中で保護だけに徹するわけにいきませんので、ここをどうするかという点も論点かと思います。
それから、経済活性化の観点から言いますと、当然企業だけが経済活性化によって税負担が減少して一時的に潤っても、日本経済全体へのメリット、特に家計への波及効果がなければ、国民全体にとっても説得力がないわけですし、しかも、企業減税による税収減でそれを仮に消費税の増税で補うとなりますと、政治的にはアピールしない。そこをどういう具合に考えたときに、要するに、企業税制を仮に将来減税して活性化できたとしたときに、それが家計への波及効果はどのくらいあるのかというのははかることができるのか。
逆に言うと、これは仮に企業への税負担を増やせば逆の形でのデメリットが家計部門にどのくらい波及するのかということにもよりますけれども、そういった広い意味での国民経済全体への波及効果をどう考えるのかということだと思います。
ここも企業減税、例えば政策減税の効果がどのくらいあったのかということを検証するのが難しいと思います。なかなか家計への波及効果を定量的に検証するのは難しくて、加藤専門委員のプレゼンテーションを最初の方にやりましたけれども、いろんなサーベイでマクロモデルを用いて、どのくらい企業減税をすると、要するに家計への波及効果というのは基本的にはGDPにどのくらいはね返るかということがマクロ的にとらえられるわけですけれども、それは定量的に検証するのは難しいんですけれども、後で紹介します資料等、雇用・賃金への効果等は、特に最近景気回復とともに増えていますので、企業が活性化して景気が回復すればそれなりの波及効果は家計にも出てくる。それをどう考えるのか。そもそも法人税の負担は最終的に誰が負担しているのかという点は、法人課税の家計への波及効果を考えるときの1つの大きな論点になります。これはいわゆる転嫁と帰着の話で、土居専門委員がかなり詳細にいろんなアカデミックな、特にアメリカの文献に関しては紹介がここでもありましたけれども、なかなか定量的にどのくらいが最終的に、要するに企業に増税すると最終的に家計にどのくらい転嫁されるのかというのがそこでの論点ですけれども、それを逆に言いますと、企業減税すると、それが最終的に家計の負担減になるのがどのくらいかという、そこはなかなか難しいんです。
そうは言っても、中長期的に考えますと、企業負担減が企業だけにとどまらず、家計にいろんな形で波及していくということは、定性的にはもっともらしいわけですから、それが定量的にどのくらいかということと、時間がどのくらいかかるのか。これはなかなか難しいんですけれども、そこも含めて国民全体に活性化のメリットが及ぶような形の企業税制の改革の方向を考える必要があるかと思います。
「4.法人課税と地方税制」との絡みです。法人課税は国税だけではなくて、地方税でも御存じのように地方住民税、事業税、いわゆる地方法人二税と言われているものがありますけれども、それの税収と税率の推移について、後で事務局の方から簡単に説明していただきたいと思います。
論点としては、1つは外形標準課税が進んでいますけれども、これをどう考えるか。外形標準課税というのは、今はかなり対象が限定されていまして、中小の法人はここの外に出ていますけれども、これを応益課税、あるいは応能課税の観点からどういう具合に考えるか。
それとの絡みで言いますと、地方税における法人課税、要するに地方税として法人課税を入れるということがどの程度税体系として筋が通るのか。1つの議論というのは、法人は地域で逃げやすいので、国税としての法人税はあるけれども、地方税としての法人税はなかなか正当化しにくいという議論はあります。国際的には地方の中で法人税を入れている国と入れていない国がありますので、そこをどう考えるのか。
もう一つ、より直近の問題は、税収の地域間偏在、これは資料を後で説明していただきますが、都道府県別で見ると、事業税、住民税、特に事業税ですが、法人関係はほかの地方税と比較して地域間の偏在が多い。それをどう考えるかということなんですけれども、いろんな改革の方向はあると思います。そもそも税収の地域間の偏在を是正するのがいいのかどうかという議論も当然あると思いますが、仮に是正するのが望ましいとしても、どういう形でやるのかに関してはなかなか難しいところで、特に法人課税自体を考えますと、例えば法人事業税を国税に持ってきても、納める企業から見ると、納める先が変わるだけで、税負担はないですから、その限りでは活性化には差し当たってはニュートラルなわけです。そもそも活性化の観点からこういった法人事業税なり住民税の改革を考えるのか。あるいは、それをしようとしておいて、単に税収の配分の偏在だけを是正することを考えるのかというのも1つのポイントになります。
税収の偏在を考えるというのは、パイの分け方なんですけれども、これは確かにある時点で日本全体の税収をしようとすればパイを分けるというのは、より公平に分ける方が望ましいわけですけれども、その分け方次第ではパイの大きさ自体が変わり得ることがありますので、なかなか難しい話ですが、例えば法人事業税を国税にもってくる話とか、あるいは法人事業税を地方税のままで配分方法を変えるとか、いろんな方法はあると思いますけれども、そこをどう考えるか。
最後に「地域経済の活性化」というのは、地方税での法人課税の問題というのは、グローバル的な視点で考えますと、国際課税の中での法人税の扱いとかなり似たところがあるわけです。
要するに、地域間で企業を誘致するために税制を使うインセンティブが地方自治体には当然あり得るわけです。ほかの自治体よりも税制で優遇すれば企業は来るわけです。国際的な課税競争というのはそれと似たところがあって、ほかの国よりも税金を安くすることによって企業をもってくるということですから、国際的なグローバルなプレッシャーが非常に強いとすれば、当然国内の中でも、それよりもはるかに国内の中では移動しやすいわけですから、狭い意味での租税競争を超えたいろんな形の企業の誘致政策というのは当然あって、日本でもいろいろな形で行われているわけですけれども、それがどのくらい効果があったのか。
日本国内を考えますと、すべての自治体が同じことをやってしまうと、結果として効果は相殺されるわけですが、いろんな形で創意工夫してやるということはあり得るわけです。最後の事務局からお付けしてあるのは、三重県の亀山市の例がシャープを呼び込んだ。これはかなり大胆な税収減を伴うような政策を取っていますけれども、それが結果として活性化にきいたようにも見えなくもないというところです。その辺りをどう考えるか。
こういった点が法人課税に関する論点メモとして私が整理させていただいたところです。それでは、続いて事務局から関連する制度や概要について、まず財務省、総務省、それぞれ説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
〇吉田税制第三課長
それでは、まず財務省の方から資料の御説明を差し上げたいと思います。
お手元にございます資料「企画16-2」の1ページ目から御説明差し上げます。
法人税の場合は法人所得課税でございますので、その基礎的な性格についてでございます。1ページ目が「法人税収の推移」でございますけれども、当然景気の影響を大きく受けるということでございまして、棒グラフで税収を示しておりますが、平成元年ごろのバブル期をピークにしまして、その後低下し、直近では平成16年以降徐々に景気回復面と合わせて税収が伸びてきておって、平成19年度の予算ベースでは16.4兆円でございます。
後ほどまた御説明を差し上げたいと存じますけれども、御注目いただきたいのは、平成15年の上のところで「研究開発・設備投資減税等」と大規模な政策減税を行っております。そのとき1.4兆円規模の減税を行っております。
2ページ目、先ほども主査から説明がございましたように、基本的に所得課税ということで、欠損法人がある場合は、当然所得が出てこないわけでございます。特に2ページ目でお示ししたいと思っておりますのは、昔バランスシート不況と言われまして、欠損がずっとたまってきた状況、水面下にある下のところが翌期の繰越しになっている欠損の残高でございまして、上が所得額、それから繰越控除を差し引いたものが最終的な所得金額になりますが、それが一番真ん中の黒いところで示してあるということでございます。現在も若干の繰越欠損がたまっているという姿がごらんいただけると思います。
3ページ目、欠損法人割合はどのようになっているかということでございますが、先ほど委員からもお話がございましたように、一番右のところ、全法人で合わせますと、67.1という数字がごらんいただけるかと思いますが、これはいわゆる7割欠損であるというゆえんでございます。
4ページ目、では、その欠損法人についてどう考えるかというのが、調査分析部会の中で御議論がございまして、その中で八塩専門委員からのプレゼンテーションで、日本は特に中小を中心としてオーナー経営者の方が多いといった中で、どうしても欠損が出がちであるという分析が行われているところでございます。
5ページ以降は税率の話でございますけれども、昭和59年、昭和62年のころは減税に対する財源措置として法人税を引き上げた例がございますが、その後一貫して引き下げになってきておりまして、これは国税ベースでございますけれども、平成11年以降、表面税率30%という姿になっております。
6ページ、これが法人所得税の国税部分の税率の各国の動きをずっとプロットしたものでございまして、さかのぼっていきますと、日本が低いところにあったのが、徐々に各国が引き下げに移ってきているという姿がごらんいただけるかと思います。
7ページが2007年7月現在でございますけれども、この中でタイムスライスで見たときにどういう状況になっているのか。「日本(東京都)」が一番左端でございまして、これは国税と地方税の表面税率を若干の損金算入のところを調整をいたしまして、合わせました。国・地方を通じた表面税率と考えていただければと思います。後ほど出てくる概念でいくと平均税率ということになろうかと思いますけれども、一番左に日本がございまして、アメリカ、ドイツがほぼ同じような水準で、フランス、イギリス、中国という姿になってきております。
点線でお示しておりますのが、現時点ではないんですが、今後引き下げが予想されているドイツ、イギリス、中国についてどのような姿になってくるかということを示したものでございます。
8ページ目、ここで今申し上げましたイギリス、ドイツ、中国についての動向をざっとでございますが、どういったことが検討されているということをお示ししたものでございます。
まずイギリスでございますけれども、3月に当時のブラウン財務大臣の予算演説の中で明らかになったものでございますが、法人税率を引き下げて、同時に財源措置といたしまして、減価償却制度の見直しであるとか、中小の法人軽減税率がありましたものを引き上げるとか、そういったものを合わせまして、ほぼ歳入中立という形でつくるということを考えているようでございます。
ドイツにつきましても、来年の1月を予定しておりまして、法人実効税率の引き下げが予定されております。それと同時に課税ベースの拡大ということが予定されておりまして、総減収の6分の5を増収措置で補填するということでございます。
もう一つありますのは、それに先立つ1年前、本年の1月から付加価値税率の引き上げでありますとか、所得税の最高税率の引き上げということで、別途の財源措置は既に図っているということでございます。
中国は、これまで内外の企業についての差別的な扱いをしておったのが、8年の1月から統一して、内外無差別ということでやろうということで、外資企業への優遇措置を廃止していくということの中で法人税率を一本化して、内資企業にとっては引き下げになるということを考えているということでございます。
9ページでございますが、その関連で当税調におきまして、海外出張をいただきました中で、ドイツの法人税の引き下げの背景でございますが、そういった御説明がございました。中ほどの〇をごらんいただくと、特に資本調達費用として、所得を外国に移し、ドイツでの課税所得を小さくしている多国籍企業が多いことへの対応が重要な目的であるということが指摘されておりまして、いわゆるインカム・シフティングという現象がここに認識されているということでございます。
10ページ、当税調でIMFとの意見交換が行われましたときに法人税についても取り上げられまして、そのときも今申し上げたインカム・シフティングということが指摘されておりました。
そのとき、先ほども主査からの御説明があった中で、平均税率と限界税率という概念が出てきておりまして、2つ目の〇の下から3つ目の黒ポツにありますが、平均実効税率というのは、いわゆる法定税率ということで、これは直接投資を中心として、どこの国に投資を行うのかということに影響を与え得る。
もう一つが限界税率で、その下にございますが、これは法定税率だけではなく、減価償却であるとか、さまざまな租税特別措置であるとかも加味した税率を考えます。
それについては、どの程度の投資を行うのかという意思決定に関わってくるというような分析がなされております。
11ページ、同様の分析でございますけれども、これも調査分析部会の中で國枝専門委員からのプレゼンテーションがございまして、一番最初のところでございますが、限界税率と平均税率で比較したときに投資促進策としては、限界税率の引き下げが効果的とされてきたというような分析がございます。
同様に下の方でございますけれども、下の〇の2つ目の黒ポツでございますが、「対外直接投資は」云々のところで、対外直接投資については、平均税率、いわゆる表面法定税率でございますが、影響を与える可能性があります。
更に一番下の黒ポツのところで、利益移転に関しても平均税率が問題となりということで、先ほど申し上げた、いわゆるインカム・シフティングの論点についてはここで紹介をされているということでございます。
これまでのところが法人所得課税についての構造的、性格の問題と、理論的な分析でございましたが、12ページ以降、当税調で御指摘された宿題となっておりますようなことについての御回答ということで、資料の調製をさせていただきました。
12ページ目が当調査会における答申の法人税のところ、特に税率に焦点を当てました抜き刷りでございますけれども、下線の引いてあるところで、幾つかの論点がございましたが、1つが、実質的な企業の税負担というのが一体どうなっているんだろうかということ。2つ目が企業部門の経済の活性化がどのようなプロセスで行われているのかということ。それから、その経済活性化が雇用・家計、個人の利益にどのようにつながっていくのかという論点が指摘されておりました。
13ページ目、まず企業の負担というところをマクロ的な分析で、これは通常お出ししている資料でございますが、日本が一番左になっておりまして、法人所得課税の負担が7%。諸外国よりは大きな数字になっている姿がうかがえると思います。
14ページ、今度はちょっとミクロに見た実態で分析をしたいと思って、これについは昨年来からずっと御指摘があったんですけれども、私どもで専門的な知識が足りないものですから、委託調査という形で行われましたものが、この14ページでございます。
どういう考え方でやったかと申しますと、企業がそれぞれの国に立地をした場合に、租税特別措置も含めてどの程度の税負担、社会保険料負担が生じてくるのかという分析を委託したものでございます。
手法としまして、ここに4業種ございますが、業種ごとに代表的な企業、売上高のランキングによりまして抽出しましたが、モデル企業をつくって、そこの財務諸表を作成して、それがそれぞれの国に立地した場合にどの程度の負担が生じてくるのかというものを分析したものでございます。
ざっとごらんいただきますと、自動車製造業、エレクトロニクス業、情報サービス業、金融業とございますが、一番左が日本でございまして、傾向といたしましては、アメリカ、イギリスが真ん中のところで低くなって、ドイツ、フランスが右に行くに従って徐々に高くなっている。特に白抜きのところで社会保険料負担を示しておりますが、フランスなどの場合は非常にそこが高く出ているという姿がごらんいただけるかと思います。当然これはそれぞれの所得、租税特別措置等の影響を強く受けていると考えております。
15ページ、これも企業が立地する際にどのようなことを考えるかという中で、例えば賃金コストであるとかいうものが日々指摘されておりますが、特にアジアとの関係で、コスト面でどういった違いがあるのかというものをお示ししたものでございます。日本が一番左「横浜(日本)」がございますけれども、特に上3つ、「賃金」「地価・事務所賃料」「通信費」を比較していただきますと、ほかと比べますと桁が違っておったりとか、相当程度そこで大きな差異が見られるということがご覧いただけるかと思います。
16ページ、17ページは、今のものを棒グラフでイメージ的にわかりやすく示したものでございますので、これについては割愛をさせていただきます。
18ページ、まさに経済活性化ということで、それがどういったチャンネルで影響を及ぼすのだろうかという分析が調査分析部会の中で加藤専門委員からの分析がございました。最初の〇の2つ目の黒ポツでございますけれども、その中で幾つかの影響経路として、プラスの面がまず最初に出てきますけれども、設備投資の拡大とマクロ経済の押し上げ、外国企業における対内投資の促進、キャッシュ・フロー増加による賃金・配当の増加、財・サービス価格の低下等のプラス効果。
マイナスの効果として、税収減に伴う財政赤字の拡大や利子率の押し上げによるマイナス効果ということで、分析の中でも2つ目の〇の中ほどになりますけれども、ポジティブな見方とネガティブな見方に分かれているということで、最終的な論点でございますが、一番下の「要点」の一番最後では、マクロ経済に与える影響については、多角的な分析が必要という御指摘をちょうだいしております。
19ページ、これも昨年の当税調の中で経済活性化についての議論のときに、どういったチャンネル、経路があるんであろうかというのを概念的にお示したものがございまして、1つが資本コスト低下による設備投資、キャッシュ・フローが改善することによって、設備投資が増加していというチャンネルがあって、それが需要面で行くと需要創出効果があり、生産面では供給増効果があって、最終的には実質GDPの増加で経済活性化につながっていくという概念で整理しております。
20ページ、今申し上げたキャッシュ・フローとの関係で過去ずっとプロットしておりますと、特に現在の景気回復局面の中ではキャッシュ・フローが右上がりになっていくのと同時に、設備投資もそれにつれて上がってきているという姿がごらんいただけると思います。
21ページは、法人企業統計で設備投資額の推移についてプロットしたものでございますけれども、棒グラフでございますが、やはり景気回復局面と歩調を合わせるような形で設備投資についても、ここにきて伸びているという姿でございます。
22ページは、先ほど平成15年に大規模な政策減税を行ったと申しましたが、先ほど1.4兆円規模と申しましたが、ほかのものも合わせてでございますが、「平成15年税制改正において、大規模なIT投資促進税制、研究開発税制を実施」ということで、IT投資、これが当時の減収規模で5,200億程度、研究開発税制で当時の減収額が6,000億程度の非常に大規模な減税を行っております。
それが平成18年度の税制改正を見まして、基本的にはその2つを、若干の重点化を図りながらも投資をしていっているという姿でございます。
23ページは今申し上げました研究開発税制の基本的な概念図でございまして、24ページはIT減税の概念図、これについては省略をさせていただきます。
25ページ、それとは別でございますけれども、中小企業投資促進税制というものを別途行っておりまして、これについても税額控除、特別償却という政策減税を行っているところでございます。
26ページは、どういうふうに投資に影響してきたか。1対1の関係をきれいに定量的に示すことはできないんですが、イメージとしてどうかということでございますが、左が研究開発投資の動向で、右が製造業に特に焦点を当てたものでございますけれども、平成15年以降、大規模な政策減税を行って以降、右上がりに回復してきているという姿がごらんいただけると思います。
27ページ目、今申し上げた研究開発減税、IT税制、情報基盤強化税制と上の箱の真ん中に書いてあるのがIT減税でございますが、これを19年度ベースで示したものでございます。ですから、減税規模が今の中小も合わせますと、企業関係特別措置1.1兆円のうちの大半を占めるものでございますけれども、それが平成15年のIT、研究開発導入前、これは平成14年ベースに下に小さなハコで書いておりますが、それと一体どれだけの差があったかというのを定量的に示したものでございます。下が全体の減税規模で4,300億円でございましたので、7,000億程度の積み上げがこの時点で行われているということでございます。
28ページ、それでは、政策減税について全体がどのようになっているのかということでございますが、左に項目数をお示ししておりますけれども、集中重点化を図るという観点からピーク時には八十数項目ございましたけれども、徐々に減らしてきて、現在、平成19年度では64項目になっております。そういった中で特に大規模なものに集中重点化を図ってきたということがご覧いただけるかと思います。
29ページ、これは減価償却制度の見直しということで、平成19年度改正で行ってきたものでございまして、私どもは抜本的な改正と考えておりますけれども、考え方は実効税率の引き下げの話とか、政策減税、特に個別に焦点を当てた政策減税ということではなくて、活性化の観点から通常であれば期間損益に企業が計上する際に、その費用化を前倒ししてキャッシュ・フローを前の方に厚くするということによって設備投資を促すということでございます。
29ページ、何をしたかというと、まず最初の2.で償却可能限度額を1円まで均等償却できるようにするということでございまして、従来あった残存価格、あるいは償却可能限度額というものを廃止しております。
それから、1.の償却カーブを見直すということでございますが、これは30ページをご覧いただいた方がよろしいかと思いますけれども、特に耐用年数10年で見た場合に、これは償却率をどのようなカーブで10年間の耐用資産を償却していくかという高さが損金算入されている部分でございますけれども、日本はカーブがきつく、改正前が右の方に流れているちょっと太い線でございますが、改正後が左側の太い線でございまして、改正後は非常にスピードが速くなっている姿がご覧いただけるかと思います。
31ページ、数字的な効果でどうかということなんですが、これも耐用年数10年で毎年の定率償却した場合の償却率がどうなるかというものを示しておりますけれども、日本の一番上ですが、改正後では25%の償却率にしております。改正前は10年の減価償却資産であると、20.6%でございましたので、毎年5%相当分の割増償却が可能になっているということでございまして、従来租税特別措置でありました割増償却が、まさにいろんな業界横断的にここで可能になってきているという姿がご覧いただけるかと思います。
32ページ以降は雇用・家計、個人への波及効果でございます。
32ページが労働分配率ということでお示しをしておりますけれども、左が全規模で長いタームで取ったものでございまして、右が平成13年以降今日までの動きでございます。真ん中の全規模で見ますと、まだ右下がりになっている状況でございますが、中小企業を言いますと、下げ止まって、若干一進一退という姿が見られるということで、大企業については、若干下げ止まりという感じはありますが、若干下の方を向いているという姿がご覧いただけるかと思います。
33ページ、人件費の全体の推移としてどうなっているかということで、これは法人企業統計から取りました数字でございますけれども、全産業、全規模で人件費については着実な増加が見られるということでございます。
34ページ、同じ法人企業統計で企業の利益処分の推移がどうなっているかということでございまして、特に「配当金」「内部留保」が伸びているということでございます。真ん中にあるグレーの「役員賞与」がなくなっておりますが、実は会社法の改正で役員賞与部分が会計上は費用項目となってしまったものですから、利益処分という数字からは実は落ちておりまして、ほかに代替的な数字がないか探してみたんですけれども、現時点では見つからなかったものですから、こういう形を示しておりますけれども、「内部留保」「配当金」が増えているという姿でございます。
35ページでは、雇用者数がどうなっているかということでございますが、一般労働者の下の左の方の姿をごらんいただきますと、パートタイム労働者が増えている中で、一般労働者が減っているという姿がございましたけれども、2005年以降、両者とも増えてきているという姿がそこでご覧をいただけると思います。
36ページは先ほども主査から御説明がありましたが、最終的に法人がどこに転嫁されて帰着していくのかというプレゼンテーションを土居専門委員にしていただきました。
一番最初の〇でございますが、従業員、株主、債権者、顧客などのステークホルダーが負担しているんだということでございまして、そこも法人税の転嫁が需要や供給の価格弾力性に決まるとか、現時点だけではなくて、将来に及ぶ活性化もあるという精緻な分析をしていくと、なかなか定量的にこうだという姿が出てこないというところがあろうかと思います。
一番下で「法人税と消費税の比較の視点」と書いてございますけれども、このときの御議論の中では、法人税だけ取り出すということではなくて、すべての税目の中で負担のあり方を考えていくべきではないかというお話があったかと思います。
37ページは、参考までにこれまでの主な法人税制改正の動きについてお付けをしてございます。
もう一つ、薄い方の資料でございますが、これは国・地方を通じたものでございますが、「企画16-4」資料「近年の答申における法人課税に関する主な指摘事項」ということで、過去、政府税調で御議論いただきまして、答申の中に盛り込まれた内容について参考までにまとめさせていただきましたので、お付けをさせていただきます。
私からは以上でございます。
〇米田都道府県税課長
それでは、引き続き地方税関係をやらしていただきます。
右肩資料「企画16-3」をごらんいただきたいと存じます。
1ページ目、地方の法人課税は2税目ございまして、合わせて法人二税と通称されておりますけれども、それの概要を1ページ目、2ページ目で付けさせていただいております。1ページ目は法人住民税でございますが、これは個人の住民税と似た構造になっておりまして、都道府県、市町村がおのおの均等割、法人税割という2つの割を課税をするということになっております。
2ページ、もう一つの法人二税の税目は法人事業税でございます。これの性格は上の四角の枠の中にございますけれども、応益課税という性格が非常に強いものでございまして、注にございますとおり、その負担額は法人所得計算におきまして、損金算入がされているわけでございます。法人事業税は事務所等を有する法人、その事務所等が所在する都道府県が課税するという格好になっております。
具体的な課税の方式は、下にございますとおり、法人によりまして主に3つの方法になっております。いずれもメインは課税ベースを所得に取っているわけでございますが、一番上の資本金1億円超の普通法人でご覧いただくとわかりますとおり、近年外形標準課税がここに導入されたということになっております。
それを3ページでご覧いただきたいと存じます。
下の絵をご覧いただくとわかりますとおり、対象は資本金1億円を超える普通法人。平成16年4月1日以降適用されておりまして、その4分の1を付加価値割と資本割という外形標準によりまして課税をする。残りの4分の3は従来どおりの所得ベースの課税をするという設計でございます。
これが導入の初年度どうなったかという実績を4ページに付けさせていただいております。
対象の法人数が左側に出ておりますが、外形対象法人は約3万社でございまして、全法人の1.2%、それ以外の法人は外形対象外ということになっております。
その税額がどうなっているかということですが、所得基準によりますものが73%程度、外形基準が27%程度ということで、先ほどご覧いただきましたが、ほぼ設計どおりの税額になっているものと考えております。
5ページ以下が税収の推移をお示ししたものでございます。法人二税の税収ですけれども、これは国税と似ておりまして、平成元年にピークでございます。10.8兆円ございました。それが近年では税率の引き下げ、景気の影響等がございまして、平成14年が最小になっておりまして、6.1兆円ということで、大体40%ほど下がった水準になりました。近年景気の持ち直しということで、徐々に持ち直してきているという状況でございます。
なお、地方税収入に占める割合というのを下の方に書いてございますけれども、ピークの平成元年は34.1%、およそ3分の1ございました。一番少なくなっております平成14年をごらんいただきますと、18.2%という水準でございました。非常に不安定な税収というのが法人関係の悩みでございます。
6ページが、地方の法人二税の実効税率を示したものでございます。上の二重線をごらんいただきますと、一番高かったときが、昭和59年から数年間、17.40%でございましたけれども、ほぼ3分の2になりまして、現在は11.56%ということになっております。
7ページは国際比較でございます。これは先ほど国税の方の資料でもございましたので、詳細な説明は省略させていただきます。
8ページ、地方財政がどのようなサービスを果たしているのかということを分野別に見たものでございます。身近なサービスというのをかなり地方が担っているという姿がこれで見て取れるのではないかと思います。全体としては、およそ6割が地方でサービスを担っているということでございます。
9ページ、ここからが地方税特有の地域間の税収偏在の問題でございます。これは人口1人当たりの税収額を指数化したものでございます。一番左が地方税収をすべて集めまして、都道府県別に見たものでございますが、一番大きいのが東京都181という格好になっております。
真ん中に法人二税がございます。これでごらんいただきますと、東京都が263、一番少ないのが長崎でございますが、42.8ということになっておりまして、最大と最小が6.1倍ということになっております。
その右の地方消費税をごらんいただきますと、最大と最小というところが1.9倍になっておりますので、それぞれの課税ベースの違いが反映した結果かと存じます。
10ページ、ここからは少し技術的でございますけれども、分割基準ということを御説明させていただきます。
先ほどごらんいただきましたとおり、法人二税はいずれも事務所等が所在する地方団体が課税をするということになっております。したがいまして、事務所等が1か所であります場合には、非常に簡単でございまして、そこの地方団体が課税をするということになりますけれども、事務所が2以上の地方団体にある場合には、それぞれが課税権を有しますので、課税権の調整が必要になってまいります。その調整をいたしますのが、ここで言う分割基準というものでございます。
では、どういうふうに分割するかということを下に例で付けてございます。これは道府県民税法人税割における分割基準のイメージでございまして、まず下の絵の方をごらんいただきますと、X県に本社があり従業者数100人である。Y県に工場がありまして、従業者数400人という例でございます。合わせまして従業者の数が500人あるという企業を例に取ります。
この場合、法人税割の場合、法人税額でございます。これは日本国内一本で10億円あったといたしますと、分割基準は従業者数ということになっておりますので、左の方をご覧いただきますと、X県では先ほどの課税標準の10億円に分割基準、従業者総数の500人分の本社の従業者数100人をかけまして、X県には2億円が課税標準としていくということでございます。これに税率がかかっていくということです。
一方Y県の方は、500分の400がかけられまして、8億円の課税標準になるという計算でございます。
11ページ、先ほどの10ページの例は法人住民税の例でございましたけれども、こちらの方は法人事業税の例でございます、ベースは従業者の数ということになっておりますが、こちらの方は業種によりまして、やや詳しい分割基準を定めております。一番上の非製造業をご覧いただきますと、右の方に平成17年度以降でこのように変わりましたということでございます。
半分の2分の1は事務所の数、その都道府県内に事務所の数が幾らあるか。これを全体の事務所の数で割るということになります。先ほどのX県、Y県ということになりますと、X県に1つ、Y県に1つということでございますので、2分の1の課税標準を1+1の2の2分の1ずつで分け合うということになります。
もう半分を従業者の数ということで、先ほどの10ページと同じような形で分け合うという形になっております。
12ページは、井堀主査から御紹介いただきましたとおり、最も有名な三重県亀山市の企業立地策の一部を掲げたものでございます。地方はインフラの整備という以外に最近はこのような立地優遇制度を非常に拡大をしているという実情でございますが、それの一部の例をここに載せさせていただいております。
左側の三重県の下のハコのところをご覧いただきますと、一部の業種に限った促進補助制度でございますが、補助上限額という括弧の中にありますとおり、一部は法人事業税ですとか、法人県民税の納税額の8割相当額を限度として交付をするという制度もつくられているようでございます。県・市ともこのような奨励金をつくっているという状況でございます。
13ページ、このような奨励金がどこまでダイレクトに効いたかということはわかりませんけれども、いずれにしましても、大きな企業が立地をしたということでございまして、人口、工業品出荷額、雇用、税収、いずれもかなり顕著な改善を示しているということが見て取れるわけでございます。
14ページ、15ページには、調査分析部会で佐藤専門委員、小西専門委員が地方税の問題につきまして、御報告をいただきました。特に地方法人課税についてレポートをいただきましたので、参考までに付けさせていただいております。
以上でございます。
〇井堀主査
若干私と事務局の説明が予定より長引きましたが、これから自由討議に入りたいと思います。
その前に本日御欠席の山田委員より法人税制に関する意見書が提出されております。お手元に配布しておりますので、これも御参考にしていただければと思います。
それでは、これから自由討議に入りたいと思いますので、御意見、御質問のある方はどなたでもお願いします。どの論点でも結構です。事務局の資料への質問等でも結構ですし、法人課税に関する御意見でも構いませんので、どなたでも御自由にどうぞ。
〇増渕委員
法人税についての論点というか、関心事項はかなりこれまでも議論してきた中ではっきりしてきていると思います。改めてそれを申し上げるような話になるんですが、まず法人税の国際比較という観点がどうしても出てこざるを得ないと思うんですが、単純に国際比較を法人税だけ取り出してするということで、議論を進めていいのかということはまず反省する必要があるんじゃないかと思います。
勿論、社会保険料というものも併せて考えなければいけないというのは当然なんですが、それと同時に税収全体、あるいは給付と負担という脈絡の中で考える必要がある。つまり、国民負担率はどうなんだ。あるいは税が負担すべき給付の方はどうなんだ。そういう全体構造の中で法人税についても考える必要がある。単純に国際比較して日本は実効税率が高いとかいう議論だけで法人税率をどうすべきだというのを考えるべきではないということが、まず言われなければいけない点だと思います。
その上でなんですけれども、これからの日本経済を考えたときにさまざまな問題があるわけですが、私ども企業経済の中で仕事をしている者から見て、日本の経済の将来ということを考えたときに、一番問題だと思うのは、日本に対する直接投資の少なさという点だと思います。
日本が他の先進国と比べても、勿論、途上国と比べても受け入れる直接投資が非常に少ないということで、これから先人口減少を迎える日本経済がグローバル経済の中である地位を保ち続けられるだろうかということは大変不安に思います。
したがって、法人税というものが対内直接投資を受け入れるという観点から、他の国との比較においてどういう問題を持ち得るかということを考えていかなければいけない。そういうグローバル経済の中での日本の法人税率、対内直接投資と関係づけた法人実効税率というものを考える。
一方で税収全体、あるいは国民負担全体、あるいは税と歳出との関係の中で法人税を考える。その両面をよくバランスを取った議論が必要ではないかと思います。
以上です。
〇井堀主査
どうもありがとうございました。今の点への補足でも結構ですし、あるいは別の論点でも構いませんから、ほかの委員の方どうでしょうか。
国民負担率との関係で今、増渕委員が指摘された点は、資料の13、これは前回横山委員が申した点ですけれども、若干は触れていますけれども、これだけでは勿論、受益との関係が出て来ませんし、1つの資料にはなりますけれども、これだけでは足りないとかですね。
対日直接投資に関しては、今日の資料ですと、アジア主要国の投資管理コストということで税率以外のいろんな資料が出ておりますが、税率を下げるだけで対日直接投資が増えるかどうかというのはなかなか難しい。政策的な対応で言いますと、規制面でのいろんな改革も必要だろうと思いますし、その中でも勿論、税制面でこれから改善すべき点は大いにやる必要はあると思います。
〇飯塚特別委員
三十数年くらいの長期にわたって大企業と中小企業、あるいはベンチャーで生息してきたんですけれども、特にこの90年以降、東西冷戦が終わったころからすごく企業の環境が大きく変わってきて、グローバル化と言われたり、メガコンペティションとか言われる時代に突入して、私は非常に企業の体力と、それから家計とか人々のキャリアとか個人の経済的なレベルと非常に直結しているのを見てきて、もう昔の企業感、経営感と随分違ってしまって、炭鉱節の時代とはもう違うよねと。必死になっていい人材をいい処遇で集めないと勝てない。それをグローバルなコンペティションの中で行うという時代に突入したんだなと。家計と企業の収益というのは非常につながっていると実感しています。小さな企業であっても、大きな企業の中にいてもですね。
ここ数年間体で感じるのは、いろんなリアルビジネスが海外に移転しているわけです。それが経営の基本的な大事な手法だという認識があります。猛烈な勢いで海外に動いている。雇用と企業の利益も、先ほどの亀山の例はよくいった例ですけれども、私、半導体の世界で生きてきて三十数年なんですが、巨大な投資が海外に行われるようになってきているんです。税が全てではないんですけれども、行われている状況があります。
それから、もっと足の早いもの、それは要するに投資です。増渕さんの方からお話がありましたけれども、個人の投資も含めて非常な勢いで海外で利益を出すことが知恵のある人の動きだということで、海外へシフトしていて、対内投資、多分日本は米国、中国の12分の1、ヨーロッパに比べて28分の1というデータもあります。こんな状況の中で、少子高齢化でどうやっても生きていけない恐ろしい、次の世代の人たちの苦労が見える気がします。
それと、格差の問題もいろいろあるんですが、ワーキンクプアという言葉もありますけれども、一説によると、米国でも日本でも起こっている共通のマターで、製造業が中間層を支えるはしごが非常に弱体化してしまったということが原因だという話もあって非常に説得力があるかなと私は感じていまして、製造業だけではないんですが、そういったものを強化していかないと、ワーキングプアはますます増えていってしまうという思いがします。
申し上げたいのは、非常にデータがわかりにくいんですけれども、したがって、国民がわかりにくい状態になっているんですが、何とかもう少しわかりやすく企業の収益が国民の格差とか家計に直結しているということをわかりやすい広報がないものかなと思います。米国に比べても既に負担率が10%ポイントとか、8%ポイントとか日本の方が高いわけですから、そういう状況をちゃんと国民全体に知らしていくことが必要なんじゃないかと思っています。
法人地方二税などありますけれども、そういうものから格差を改善するという手もあるでしょうけれども、まずは体力を付ける。そのためには、長期的にはそういう方向性を議論したいなと思っているんですけれども、当面はとにかく政策減税みたいな実質1~2%ポイントでしかないような効果なんでしょうけれども、そういうものから手をつけていくのが現実的なのかという思いがしております。
〇井堀主査
続いて、田中委員どうぞ。
〇田中特別委員
先ほど御説明ございましたとおり、研究開発税制の政策減税の効果なんですけれども、我々産業界からその重要性について発言をしたいなと思っております。
現在、財政的に日本の置かれている状況というものを考えますと、長期的に安定的な持続可能な税制構築が求められているわけでございまして、そのためには継続的に成長エンジンを加速し続けることが必要だと思います。したがって、成長を促進するような税制が不可欠だと考えます。
日本はよく資源の乏しい国だと言われておりますので、今後ともこの持続的な成長を続けていくためには、広い意味でのイノベーションの創出が不可欠でございます。
科学技術立国を目指す我が国にとりましては、このイノベーションというのは、避けては通れない。それをキーにしながら国際競争力に打ち勝っていくためには、国を挙げてイノベーションを促進する政策を総動員していく必要があるのではないかと思います。
そういう意味からこの研究開発税制に対する政策減税というのは、このイノベーションを加速するためのインセンティブというような位置づけで考えていきたいなと思っています。
先ほど来、この効果がどのようにという実証的な証明はなかなか難しいと思いますけれども、しかしながら、この減税が研究開発費を増加させて、それがGDPの増加に結び付くということは大いに考えられます。過去の試算からそういうこともうたわれておりますので、この減税分が将来の回収の効率としても非常によろしいんじゃないかということで、是非そういう観点から研究開発費の政策減税における限度額の引上げ、それから繰越期間の延長。その辺を是非御検討いただきたいという要望でございます。
以上です。
〇井堀主査
今、飯塚委員、田中委員から政策減税についての話が出ましたが、確かに研究開発税制を拡充することによって、日本経済が活性化して、それがいろんな形で企業だけではなくて、家計も含めて日本全体に波及するということが出てきて、それがなるべくわかりやすい形でもっともらしく提示できればそれがいいと思いますけれども、データでそれをやるのはなかなか難しいところですけれども、それらを含めて今後の検討課題だと思います。
そのほか高木委員と井上委員ですね。まず高木委員、それから井上委員でお願いします。
〇高木特別委員
今日はいろんなデータをいただいて、諸外国の実効税率がどうだというデータなんですが、いろいろそういう税率を下げたことと、実際にそういう制度を変えたことによって税収がどうなったかというデータが今日はないように思うんです。
私どもが仄聞するところでは、実効税率は下げたけれども、税収はそう落ちていない。そういう意味では課税ベースの問題とも関わっているんではないか。
それから、どこか外へ外注されてつくっていただいたもの等、それ以外にも企業が海外で仕事をしますときに、その国々のいろんな社会のありよう、文化の伝統的なこと等に伴ういろんなコストの問題等もいろいろおありになり、時々そんな高いなら外国に行くよとおっしゃる企業もおありになるんだけれども、では、本当に出ていくんですかと、どうぞとまでは言いませんが、そんな議論をしていて、企業というのは、そこで働く生身の人間も含めて、どこで仕事をするかという選択をしているんだろうと思いますが、そういったものについて、どこの国で、どういう地域で仕事をすれば、同じビジネス・モデルで結構ですから、どういう企業の負担があるのかというのをもうちょっと詳しく調べられないものかなと。これは去年もお願いをしたと思います。
まずはそういう意味では税率は下がったけれども、税収は減らなかったということをデータで少し下ろしていただけないかなというのが最初のお願いでございます。
今、政策減税と言いますか、租税特別措置等を含めての議論もございました。研究開発投資も6,000億円ですか。これがもしその措置が取られてなかったら、別途歳入に組み込まれていた可能性が非常に高いというお金の動きだろうと思うんです。
総額の幾らは増でいいんですが、どういうところがこの制度を使って、どれほどの節税効果、減税効果を享受したのか。固有名詞を出せなかったらABCDでもいいですから、そういうのを一遍検証してみる必要があるんじゃないか。意外と使っておられるところは、産業別、企業別に偏りがあるんじゃないかという印象を巷の話としていろんな方々とお話すると、そんな話を聞くこともあります。
その原点によく大きな政府、小さな政府と。政策投資減税を求められる方々は、総じて小さな政府という表現が大好きな方が多いんです。一方でばらまきはだめだという議論もなされますけれども、実際こういうのは一種のばらまき要求に近い側面を本質的に持っているんだろうと私は思います。
そういう観点から、過去のこういう政策減税、例えば人材投資をされたらそれを減税しますという制度をつくります。もしそのお金が使われてなかったら、これだけの税収がありましたと。そういう意味を持つそのお金がどういう人材投資の内容のところに、どの程度の配分比率で使われているのか。そんなこともきちんと検証していただかないと、こういう効果があるからといって、抽象的にいろいろおっしゃられても、いかがなものかなと、そんな受け止め方を最近はする普通の労働者も多い。
そういう意味ではこの租税特別措置、政策減税なるものもいろいろ吟味をしていただかないと、いけないんじゃないかと。ちょっとうがった見方かもしれませんが、そんなことを申し上げておきたい。
それから、地方法人二税の話がございましたが、この地方法人二税につきまして、税の観点からだけではなくて、いわゆる地方交付税のあり方との関わりを一緒に議論していかなかったらいけないんじゃないかという思いを非常に強く持っております。そういった観点からも是非御検討、基本財政需要の問題とかいろんな議論がありますけれども、勿論、法人事業税等は景気の上がり下がりの影響を非常に強く受ける本質がありますので、一方で下がったときにどうするのという議論もあるわけですから、もっと安定的なものにしていくという意味では、基本的な交付税に対する考え方、その辺もセットで議論していかないと、経済の状況が変わると、また違う議論を始めなければならないということになるんではないかと。
今日は井堀委員のお話にも全然出てまいりませんでしたが、去年いろいろ議論して、法律も通りましたから、その延長線上でいいのかどうか知りませんが、公益法人関係の税制を来年国会では処理をしておかなければいけないのではないかと思いますが、その辺のこともまた機会があったら教えていただきたいと思います。
以上です。
〇井堀主査
それでは、井上委員どうぞ。
〇井上特別委員
法人課税の問題ですけれども、このグローバルの時代を迎えている以上は、日本だけが高い。現在は実質的にはアメリカと同じぐらいということですけれども、負担の実効税率としては、逆に日本はまだまだ高い。租税特別措置によって、アメリカの場合には非常にそういうものが取られていて、実質的には31.4%という数字が出ておるわけでして、まだ高いわけです。
そういう面から見ても、こういうグローバルの時代である以上は、もっと引き下げていくべきであろうと。引き下げることによってその企業はキャッシュ・フローが生まれてくる。それが実質的には給料に回り、そして、設備投資に回るだろうし、配当に回る。
よく言われていますが、その儲かったキャッシュ・フローは全部配当に行っているよ。給料には回っていないよということが言われていますが、実際的なデータからいくとそうでもないようです。02年~04年の数字と04年~06年の数字を見ますと、そのキャッシュ・フローでは5兆円だったものが21兆円になった。そのうち給料に回っているのは2.1兆円に増えている。マイナス0.5兆だったのが2.1兆円に増えている。配当は0.4兆円だったのが2.4兆というのとほとんど変わりないわけです。
そして、設備投資は8.7兆というように、その数字をチェックしてみると、実質的に引き下げた効果というのはいろんなところに出ていっているということだと思います。
今、高木委員からもちょっとお話が出ましたけれども、租税特別措置というものがどうなんだというお話が出ていますが、これも日本は政策税制というもので引かれているのは1.1兆円しかないわけです。アメリカの場合には11.3兆円ある。イギリスは1.2兆円だということから比べると、日本というのはそういう点においてもまだまだ低い。もっともっと研究開発投資にかけられるように政策減税をするとか、いろいろとそういうことを考えていって、企業が活性化し、より活力を得ることによって、世の中がよくなってくるということになるんだと思います。
また、中小企業にも恩恵が戻ってくる。まだ中小企業まで行っていないわけですね。特に中小企業は非常に厳しい状態にまだまだあるということでして、中小企業に波及効果を上げていくためには、そういうことも是非とも実行していくべきだろうと思います。
この4ページにも書いてあるんですが、どうも中小企業というのは、租税回避という面で欠損法人が非常に多いということが必ず書かれるんですが、私は理解できない面がある。前にも申し上げましたけれども、それは中小企業というものの、小規模企業と中小・中堅企業を分けていないからそういうことになっているんじゃないかと思います。
中小・中堅企業というのは、ともかく55万社あって、それが1,800万人の雇用を抱え、198兆円の売上げを上げているわけです。大手の企業は190兆円ということから比べると、その中小・中堅というのはそれだけのものを受け持っているということに対する、そうちょっとそこを引き上げるための税制というものも考えなければいけないだろうと思いますので、それは租税特別措置ということで考えていくべきではないかと思います。
以上です。
〇井堀主査
今、高木委員からの御意見の中で、事務局の方で資料に関しての要望等あったようですが、事務局の方で今答えられる点があればこの機会にどうぞ。
〇吉川委員
先ほど高木委員からの政策減税、とりわけ研究開発減税などについて効果をきちっと検証すべきだというお話もあったと思うんですが、その点、私も全くそのとおりだと思います。
経産省の方でその効果を検証した資料というのを、何回かつくっているんだと思うんですが、一番新しいバージョンもできたてのがあるんだろうと思うんです。ですから、事務局を通してその点については、我々委員全員に経産省のその資料を配付していただいて、その情報を共有する。すべて満足かどうかというのはまた別の問題ですが、少なくとも情報として税調の我々委員がそれを共有すればいいんではないかと思います。
〇井堀主査
今の質問に関して、事務局の方で今の段階でありますか。
〇吉田税制第三課長
経産省の資料につきましては、そういったアンケート調査のようなものが経産省の責任を持ってまとめたというのがあるようです。私もつまびらかに承知しておりませんが、それを税調の場で出すのかどうかという御判断は一つあるんだろうと思いますけれども、参考資料としてお配りすることは可能だと思います。
それから、高木委員から御指摘をいただいた国際比較の中で社会保険料以外のところも含めて、それぞれの競争の中でどういったものが発生しているか。どういった項目を選ぶとか、それは多分技術的に更に詰めていかなければいけない点もあるかと思いますが、すぐにできるということでも必ずしもないと思いますので、そこは引き続き勉強の課題にさせていただきたいと思います。
政策減税の効果であるとか、現時点で今、私どもの方からこうでありますということをお示しできるものはございません。結局それについても、どういう前提にマクロ的に数字を示すということになりますと、若干技術的、あるいは専門的な御協力を仰がなければいけないかなと思っておりますので、その辺も含めまして、ちょっと検討させていただきたいと思います。
〇井堀主査
それでは、手を挙げていただいた長谷川委員と田近委員と松田委員と翁委員と若林委員。その5名の委員に今の順番で発言をお願いします。
〇長谷川委員
政策減税の話が盛り上がっていましたけれども、私はこれは基本的にはちょっと疑問がある。つまり、何年か前にも政策減税ということで、IT、環境、バイオ、ナノみたいな4業種とか、最近はITとか言われるんですが、まずどういう産業が本当に経済成長に結び付くのか、それは政府にわからないんじゃないのかという話が1つ。
そういう財源があるなら、本則というか、法人税全体の引き下げの原資にして充てた方がいいんじゃないのかということ。
それを申し上げた上で、それなりにできないよ、やはり政策税制の数千億くらいしか原資がないという話であるならば、これまでの数年の政策減税を見ていますと、声の大きいところに行ってしまう。あるいは製造業にどうしても偏ってきているような感じがいたします。
問題は、サービスの生産性をどうやって上げるのかというのが大事だということは、皆さんの意見の一致するところだろうと思うので、サービス産業、これの生産性を上げていくために必要な政策減税という視野も必要なんじゃないか。基本的には反対だと言った上で、もしやるなら製造業に特化することのないようにということが言いたい。そのことが1点です。
2番目は、先ほども御指摘があった欠損法人、7割近いところが赤字だと。これはよくのみ込めない数字なんです。
昨今は格差の話があったりして、不公平感に対する感度がとても高まっているわけなので、仮に法人税を引き下げるという話になってきた場合は、それ原資は消費税を上げるという井堀委員のお話がありましたけれども、そういうことではなくて、課税ベースを広げるという方向で考えるべきだと。そうでないと、普通の国民はなかなかのみ込めないのじゃないかと思います。
以上です。
〇田近委員
今、長谷川委員も指摘されたことと重要なところで重なるんですけれども、多少繰り返しになりますけれども、意見を提出させてください。
まず、いろんな議論をされているんですけれども、日本の法人税が高いか低いかと。少しページをめくっていただくと、先ほど財務省の資料「企画16-2」の1ページの「法人税収の推移」ですけれども、直近平成19年で予測ですけれども、16.4兆円と。このときの法人税、現在は30%ですね。平成2年が37.5とすると、もし税率が上がってもそのまま単純計算で払うとすると、平成19年の税収37.5%までになると、19兆円くらいになって、実はもう税収ベースでいくと、日本の企業がそれだけ税を払ってくれているのはどうしてかよくわかりませんけれども、払っていただいている。
いろんな議論をしても、仮に法人税収のGDP比、税率もいろんな国で違うところで、乱暴ですけれども、GDP比を見ても、やはり日本は高いだろう。
ビジネスの方がいるから特に面白いのは、恐らく1%の法人税収に対してGDP比を見ると、日本は恐らく、欠損法人のこととかありますけれども、全体で見ると高いというのは、いろいろビジネスの方が議論されている一方、よく税金も国際的には払っているのかというパラドックスはありますけれども、それはともかく。
私が申し上げたいのは、足元を見ても、空前の法人税収だし、GDP比で法人税収を見ても、実態的に日本は法人税収は高いだろう。
この国際化の中で、今日は出ていないですが、対内直投の話をさっき増渕さんも出されましたけれども、このデータを見ても、これ国際比較になるならないの話ではなくて、来ない。勿論、税率たけではないですけれども、来る投資に関しては決定的に税率というのが重要な要素です。
やはり置かれた現実として、勿論、国際的な潮流もあって法人税は見直さなければいけない。私はそこが前提だと思うんです。
そこまで申し上げて、長谷川委員の議論と重なるんですけれども、そのときに、では税率を議論するのか、課税ベースと言うか、R&Dも含めて、税負担を調整するのに課税ベースを小さくするかという議論は残ると思うんです。
そのときにビジネスの方もその議論をどう提示するかというのはある。外から来てもらいたいとすれば、日本に来るときにR&Dを目当てに来ないだろう。やはりそういう議論をされるなら低い税率というのが重要だと。
1コンマ何兆円かにのR&D減税を差し出して、その部分で税収エクイバレントで、国民に対して法人税から税収は失いませんよと。その代わり税率を下げるとこうなります。それで効果はすぐに明らかではないでしょうけれども、外国から来てくださいと。
もう一つ、足元で見て企業のキャッシュ・フローの方が設備投資より多いわけです。金余りみたいになっている。そういうわけですから、そのキャッシュ・フローの中からR&Dも一部ファイナンスができるだろう。
それから長谷川委員のおっしゃったように、より本質的な問題では、製造業なのかサービス産業なのかという議論もあって、日本の法人税はおおざっぱな議論ですけれども、国際的に見ても高い。外国からも来ない。そういう中で法人税を本気が我々は議論して直していきたいわけですけれども、そろそろ税率の議論をするのか、あるいはタックスベースで議論をするのかというのは、イシューとしてあるだろう。
税率はそんなことを言っても結局下げられないから、下げるのは政策として出すのは困難だから、キャッシュ・フローもあるけれども、政策減税というか、課税ベースを下げることで税負担を下げるという選択をするのか。ここは税調でももう少し議論に値するだろうなと思います。
そういう意味でいろんな議論の軸はあると思いますけれども、私が思うのは、大きな事実のつかまえ方としては、そういう点を議論を踏まえてやってもらいたいと思います。
以上です。
〇井堀主査
それでは松田委員お願いします。
〇松田委員
今日の議論の大きな流れから外れてしまいそうな話なんで、ちょっと恐縮です。
私が言いたいのは、中小企業の定義の話なんです。こういう政治状況になってくると、中小企業を優遇する制度というのが恐らくいろんなところで出てくると思うわけです。大体今、日本の税制上は中小企業を資本金1億円のところで定義しているということが多いわけです。定型的に言えば法人事業税の外形標準適用のところが資本金1億で切っていて、これは去年総務省の方から資料が出ましたけれども、恐らくそれを逃れるがために資本金1億以下にした企業がかなりの数あるというわけです。
今、資本金というのは、どうにでもいじれるものになっている。金融技術が発達していますし、ファンドというものがいろいろ出てきていて、本来資本金になるべきものを特別な契約の付いた融資という格好に振り替えることも可能なわけです。
ということで、1億円以下を中小企業と定義して各種優遇税制をやると、競争条件を著しく歪めることになると思います。
私、国税で一番心配しているのは消費税なんですけれども、たしか消費税は2年前の売上高がベースになっていて、新規設立1億円以下の企業は、たしか払わなくていいんじゃなかったかと思うんです。納税義務者にならなかったような気がするんです。そういうことを利用して、脱税する人もいるわけです。
これを直すのは実に簡単なことで、中小企業の定義を資本金だけではなくて、資本金1億以下、もう一つ売上高に相当する基準を設ける。外形標準課税で言えば付加価値割額というのが私は一番いい企業規模を示すメルクマールだと思います。
国税の方では何を使うのがいいかと言うと、恐らく消費税の課税売上高を使うのが一番いいと思うんですけれども、これは非課税になっているものがあったりして、技術的にちょっと調整が要るかもしれませんけれども、そういう売上高を示すような基準と、資本金と2つ組み合わせて、両方達成した企業のみ中小企業と言う定義にするということは、今の時代において緊急に必要じゃないかなと思います。
以上です。
〇井堀主査
それでは、次に若林委員どうぞ。
〇若林委員
私も長谷川委員と重なるんですけれども、本日の資料にもありますけれども、我が国では欠損法人が多過ぎるという気がします。7割というのは、残り3割で法人税を払っているということですから、どう考えてもおかしな気がします。
既に決着済みかもしれませんけれども、よその国ではその割合というのはどれくらいあるのか。もし報告いただければ是非報告していただきたいと思います。
実効税率に関する議論も大切ですけれども、税の公平性の観点からいって、やはり欠損法人の問題に構造的なメスを加えないといけないんじゃないかと私は思います。
もう一点、外国と比べまして、さっきから出ている法人所得課税の税率が高いのは事実かもしれませんけれども、税率を下げたら本当に国内投資が増えるのかどうか疑問に思います。
今日の資料にも出ましたけれども、投資活動というのは、法人税率だけでなくて、労働や立地、輸送費、社会保障にかかる企業負担など、いろんな原因によって決まるものだと思っています。税制の簡素化とは逆行しますけれども、先ほど吉川委員からも出ましたけれども、この政策減税の効果が確認されるようだったら、こちらの方でも大いに議論すべきだと。実効税率そのものも議論すべきだろうけれども、こちらの方でも議論して、もし効果が確認されれば、継続してもいいんじゃないかという意見を私は持っています。
以上です。
〇井堀主査
それでは、翁委員どうぞ。
〇翁委員
たしか6月くらいの日経新聞にある企業の方がインタビューを受けていまして、製造業のCEOの方で、今後ROEの引き上げを図るためには、会社としても実効税率の引き下げを実現していかなければならない。そのためには、海外で稼いだものは、その海外の利益の比率を上げて、その地域で資金を活用する仕組みをつくって、全体の税率を下げて、ROEの向上を図りたいというインタビューがあったんですけれども、これはまさにIMFの方が言っていたような、課税ベースの可動性の増大というのが、日本でも、さっき田近委員はしっかり払っているじゃないかとおっしゃっておられましたけれども、日本企業もグローバル化していこうと。その競争の中で何とか利益を上げていこうということを考えていく上では、どういう仕組みで稼いだ利益を投資していくかということを考えていかなければならないというところになってきていると思います。
ですから、立地の選択もそうなんですけれども、それをどういうふうに仕組みとして収益を上げて、投資をしていくかというところで、法人税、または税制というのは非常に大きな意味を持ってくると思いますので、その意味で我が国の中長期的な経済成長の確保ということを考えますと、やはり日本の法人税率について、しっかりとしたシグナルを出していくということも非常に重要なんではないかと思います。
たしか加藤専門委員の御指摘にもあったと思うんですけれども、勿論、設備投資にどういう効果があるかということを比べれば、一般的な設備投資減税の方が効果があると思うんですけれども、恐らく法人税率全体の議論と比較すると、かなり国としての覚悟の示し方というか、どういう成長に対してスタンスを取るのかというところが見えてくるという面があるのではないかなと思います。
法人税の問題というのは、国の問題だけでなく、地方法人二税のあり方に深く関わる問題だと思うので、地方税の議論と整合的に進めていく必要があるんではないかと思っています。
さまざまな特別な措置はありますけれども、勿論、簡素中立にしていくべきだと思うんですけれども、やはりR&Dとかいった重点的に成長に促進するというエビデンスが取れると考えられるものについては、成長を促進するという意味から引き続きやっていく必要があるのではないかと思っています。
〇井堀主査
法人税の議論のところで、政策減税についていろんな立場からいろんな議論が出ましたので、ここは基本税率をどうするかということと、政策減税をどう見直すかというのは非常に大きな論点だと思いますので、ここは今後議論できればと思います。
先ほどから横山委員、出口委員、辻山委員と、まだ発言されていない方から手が挙がっていますので、まずその3人の方に御発言いただいて、その後、高木委員お願いします。まず横山委員からどうぞ。
〇横山委員
法人税はそもそもなぜ必要なのかということで、シャウプ勧告の第6章で、法人は擬人だから、大抵の場合、他の種類の納税者ほど強い政治的な主張を唱える能力もない。それから、株主も法人税の負担を直接的に知覚できない。
経済的根拠からではなくて、政治的に利用されやすく、多額の税収を確保できるから、多くの国で法人に対する課税が重くなっている。これはシャウプ勧告の74ページで、シャウプ勧告の中で言われている文言です。
そのことからすると、なぜ法人税の課税は必要なのかというと、大体3点課税根拠はあると思うんです。
1つは、シャウブ勧告で言われているように包括的所得税の体系の中で、源泉徴収的な手段として位置づけられるということです。これが大体今までの法人所得課税の根拠になっている。
もう一つは、法人が持っている有限責任の便益、これが赤字法人も受益を受けているんじゃないかという根拠になる、有限責任の便益が法人にあるというのが2点目だろうと思うんです。
3点目は、これはキャッシュ・フロー法人税等で言われていますように、純利潤に対する中立課税で、どれだけ重くかけても、それについて経済的な攪乱をほとんどもたらさないいい税だというような観点です。
そうしますと、抜本的な税制改革と言ったときに、法人課税をどのような位置づけで考えていくのかということもどこかで議論しなくちゃいけないんだろうと。
二元的所得税という考え方の中では、やはり労働所得税と比べると、労働所得税は累進所得税率体系を持ち、法人所得、あるいは資本所得は労働所得の最低税率に合わせているわけです。これはスウェーデン、ノルウェーもそうだろうと思います。
それは中立課税の考え方から来ているという、いわゆる足の早いということでグローバル化の中で法人がインカム・シフティングしてしまうということの話だろうと思うんです。こういうふうに考えていきますと、シャウプ勧告が言われていることがそのまま当てはまっているのは、我が国が今一番当てはまっているんだろうと。シャウプ勧告当時は日本がなぜこんなに法人課税が低いのかということをシャウプ勧告では嘆いていたわけです。そういう点で考えますと、戦後60年弱で、我が国は法人課税に甘んじて、おんぶにだっこでずっとやってきたんじゃないかというのが私の考えです。
そういう点で言うと、法人は実際に税を支払えるのかというと、私個人の考え方は、自然人しか税の負担能力はないとすれば、めぐりめぐって、納税者である国民が払うんだろうと。そうしたときに、法人の段階で課税をする根拠づけをもう一回、私は抜本的税制改革を考えるときには考慮しておく必要があるんじゃないかということを申し上げたい。どうしようということではなくて、そういうことを申し上げたいと思います。
以上です。
〇井堀主査
それでは、出口委員どうぞ。
〇出口特別委員
私はエコノミストではございませんので、多少混乱しております。2点混乱していると申し上げたいと思います。
1つは、井堀委員の資料の1.のマル1で、井堀委員さんの説明では3つのオプションがあって、法人税率を上げる、そのまま下げると言ったときに、景気回復、成長による増収効果というときに、ここで言うのは、法人税率を下げて、景気を回復し、法人税収としてそれが景気回復によって、法人税の税収そのものが逆に上がるんだというような表現なのか。その下の3.にある「家計への波及効果」というものまで含めて、トータルで日本の景気回復によって財政の問題にプラスに働くのかということについてが、よくわからないということが1点。今答えていただかなくていいです。
もう一つは、国内の話と国外の話が混在しておりまして、例えば法人税率が高いという話のときに、他国と比べて高いというのはよくわかるんですが、これが相対的に高いのかどうかという高さなんです。
つまり、他の国の政策までこちらでコントロールできませんから、仮に下げた場合に、他国がどのような動きをするのかということについて、どの程度税調として考えていくのか。
例えばEUの場合は、ハンガリーがまず法人税率を相当下げましたので、その影響もあるでしょうし、そういった観点からグローバル化の中の議論をするときに、法人税率が高いという意味が、絶対的な高さなのか、相対的な高さなのか、この辺が私のような経済の専門家でない者にとっては多少わかりにくいところがありまして、大変注目される税でございますので、ある程度見通しを立てて議論していいただければと、これは今すぐではなくて結構なんですけれども、お願いいたします。
〇井堀主査
続いて辻山委員お願いします。
〇辻山特別委員
私は議論が大分出ましたので、重複の部分をカットいたしまして、質問なんですが、今日の資料の「企画16-2」の7ページ、今日の議論で法人税を考える場合に税率の側面と政策減税の側面という大きな2つの柱があると思います。
その中でドイツが非常に象徴的にと言うか大胆に税率を引き下げるという説明をいただきまして、その次のページを見ますと、税率引き下げについて、特に減収額の6分の5を増収措置で補填ということで、税収してはできるだけ増減税をフラットにするような措置とここに出ているんですけれども、特にここを読んでみますと、減価償却制度の見直しだけしか増収要因というのが読み取れないんです。
これから税率の問題と政策減税の問題が2本大きな問題として論点が集約されていく中で、特にメッセージ性と言いますか、わかりやすさという面では税率の方に集約していくのかと思うんですけれども、一方でドイツのようなメッセージを強く発信している国は、実は法人税の税収自体が少なくならないような措置を講じている。これは具体的にどういうことなのかということを教えていただきたい。
〇井堀主査
今の点は、実際にドイツに行かれた田近委員にお願いします。
〇田近委員
私もさっきもう少ししゃべろうかなと思ってやめたので、補足も兼ねてです。
ドイツの場合、まず償却のところが結構大きかった。定率法から定額法にするんですね。それから、移転価格税制の執行を強化する。
もう一つ鳴り物入りで支払利子の控除の枠を多少狭めるということですけれども、鳴り物入りでやった割には額としてはそんなに出ていない。
いずれにしても、償却が圧倒的に大きいけれども、相当思い切ったことはやっている。それと一言だけですけれども、さっき中途半端な説明をしたのでよくなかったなと思うんですか、税率と税収というのは必ずしも一定するわけではなくて、ヨーロッパで言われているのは、税率は下げているけれども対GDP比で法人税収を見ると、むしろ上がっている。重要なのは経済が成長して、課税ベースの広い法人税にして、経済が成長して、企業の分け前も増えるけれども、国の分け前も増える。
反対なのはアメリカで、こんなに高い法人税率なんですけれども、GDP比に占める法人税の割合というのは低い。むしろまた下がっている。というのは、さまざまな租税回避、具体的には法人形態からその他の事業形態に移ることで変わる。
したがって、税率が高いから税が取れるというわけではない。そういう意味では日本は税率が高くて、税が取れているという国であるということです。
〇井堀主査
若干時間も押していますので、高木委員から手が挙がっていますが、まだ御発言されていない方を優先したいと思います。
順番に井伊委員、猪瀬委員、江上委員。こちら側で大橋委員と北村委員。その5名の方に今の順番でお願いします。
〇井伊特別委員
私は地方法人二税について、質問というか、事務局へのお願いになると思うんですが、いただいた地方法人課税関係の9ページ目ですが、これはよく見る表なんですけれども、法人二税で、この表からだとはっきりわからないんですが、確か東京に地方法人二税が偏在するということで、多分4分の1、25%以上東京に偏在していると思うのですが、これは東京に人口や経済活動が集中していますから仕方がないというか当たり前のことだと思うんですが、多分、都道府県別の総生産、付加価値の合計ですけれども、東京が全国に占めるシェアというのは多分17%~18%ではないかと思っております。
どうしてこういうような都道府県別の総生産のシェアと地方法人税のシェアの乖離が出てくるのかというのをもう少し分析をお願いできないかと思っております。多分、全国展開しているファミリーレストランとかコンビニとかは、全国各地にオーナーがいるわけですけれども、粗利のうちの半分、中には6割、7割が本社の方にロイヤルティーとして納められますので、実際はそこの地域で出た利益というものが本社に行ってしまうという偏在性も問題であると思いますので、もう少しデータに基づいて分析をした結果をお知らせいただければと思います。
〇井堀主査
それでは、猪瀬委員お願いします。
〇猪瀬委員
極めて一般論で申し上げますが、この間選挙の争点でも格差格差と言われて、あらゆるものがすべて格差で説明されているようなところがあった。それは国と地方であったり、高齢者、ワーキングプアとか、あらゆるものが格差で言われたんですけれども、格差という言説がこの国を覆い尽くしたんです。ただ、その中で議論が必要なものもあるんですが、持続可能な日本の今後を考える場合に、今のワーキングプアの問題というのはどう解決するのか。法人税との関係でどう説明するのか私にはわかりませんけれども、新規採用が、空前の法人税収下で、大学3年生ぐらいから内定している。
一方、そういうものが、どんどん人材が足りなくて内定して、青田買いでどんどんやっているにもかかわらず、ワーキングプアの、先ほどちょっと飯塚委員が言ったように、製造業が収益をあげて雇用を創出してもワーキングプアの問題というのがなぜ解決しないのかよくわからない。
今、国民は漠然とした格差と思っているのは、要するに漠然とした不安なんです。持続可能な部分がおかしくなっているんじゃないかと。製造業の中心で技術の担い手とならずにワーキングプアが発生して、それが一向に解決する兆しが見えないように見える。企業の負担率の高さが雇用に影響しているのであれば何か解決の方法があるのかどうかを知りたいなということ。
それと、地方の税源を語る場合にやはり消費税の問題が、今日は見事に真ん中から抜け落ちていてこの議論をしていますから、非常にわかりにくくなっているということだと思います。
〇井堀主査
それでは、江上委員お願いします。
〇江上委員
先ほど来、政策税制と法人税率を下げるかという議論がずっとありまして、企業サイドの発言が少し少ないようなので、自分自身が研究開発税制を活用したという経験から申し上げますと、非常にこれは有効で効果があったと思います。ただ、高木委員がちょっと疑問を呈したように、やはり事務コストも非常にかかる。大企業、かなりの余裕のある企業、そういったところが主に活用したんではないかと考えられます。
もう一つ、上場企業の経営課題のいろいろなところの調査結果などを見ますと、大体2000年くらいから経営戦略をみんなシフトして、そこから研究開発とかビジネス・モデルの革新とか、そういう付加価値を付ける戦略に切り替え始めましたので、先ほどの設備投資や研究開発費が増えてきたというのは、必ずしもこのインセンティブだけのせいではないということです。全体的にそういうふうな傾向に企業が出てきたということだと思います。今後のR&Dの優遇税制を継続するか云々ということについては、私は今、上場企業でこれだけキャッシュ・フローがあって、内部留保も11.9%で、今多くの企業の経営者もこういった研究開発に経営戦略の中心に据えておりますので、そう長く継続する必要性については余り私は考えておりません。
むしろ今まで法人税を引き下げるという議論で、皆さん国際競争力という観点での議論が多いんですけれども、私はそれに加えてもう一つ、これから小さな政府、それからミニマムな行政サービスという形になったとき、国民の自律的な活動と企業の存在というのが大きく転換してきていると思うんです。
今まで企業が利益を上げて雇用を生み出して商品を提供するという役割だけではなくて、企業の社会的役割というのは非常に大きくなってきております。
それは例えば環境の問題でもそうでし、雇用の問題でも高齢者の雇用、あるいは少子化対策としてのファミリーフレンドリーとかワーク・ライフ・バランスとか、教育への協力とか、いろんな観点で企業の社会的役割というのは増大してきております。
そういう意味では、私は企業がもう少し自由度を持ってそういうことに対応できる諸条件を整備するということも重要だと思います。
また、日本の場合には法人税率が高くなったときは賃金・雇用で調整するという土居専門委員の御報告もございましたので、そういう意見では法人税率がすぐ従業員に何かメリットがあるというようなことでもないわけで、いろんなステークホルダーに帰着しているわけでございます。
そういう意味では、特に法人税率を考えるときに、企業のこれからの役割というのは何なのか。その議論も一つ加えていただければと思います。
それから、先ほど租税特別措置が改正後も今61項目残っているということなんですが、これからサステーナブルな国家の行方を考えると、税制を簡素化していくということが必須条件になるかと思います。
こういう方向で是非議論を深めていただきたいと思います。
〇井堀主査
それでは、大橋委員お願いします。
〇大橋特別委員
ありがとうございます。
皆様の御意見が相当出尽くしておりますので、重複しないところだけ申し上げたいと思います。
いずれにしても、皆様の御意見の中で日本経済の成長・発展、これはどうしても必要だと。日本経済としての成長・発展がなければ国民の所得は増加いたしませんし、次世代の国民の生活が更によくなることはない。では、日本経済の発展のために一体どういう税制がいいかということになるかと思うんです。
結局今の一般国民の皆さんの中でやや気になる認識というのは、企業と家計というのが相対立しているような概念の中でいろんな議論が行われている。これが一番危険なんだろうと思うんです。
井堀委員が冒頭にもおっしゃったように、企業が利益を出すことによって、それがどの程度、どういう形で家計に及んでいくのかということを立証するのは非常に難しい。これは確かにそうなんですけれども、それが税調の仕事かどうかは別にして、クリアーに越えていかないと、どうしても法人税の問題というのは解決はしないのではないかと考えます。実際に、では日本の企業に限らず、最初に増渕委員もおっしゃったように、海外から企業が入ってくる場合にも、一番大きな要素として考えてしまうのは、税金の問題ですから、ここのところを何らかの形で海外企業が日本に入ってきて、対内投資が容易になるような形、これは必要だろうと思います。
前にも私は申し上げましたけれども、それは日本の社会の中では日本の企業としての競争条件は厳しくなるだろうと思います。しかし、日本経済全体の成長・発展のためにそういうことが必要であれば、やはり海外から企業がもっと入ってきて、我々もその競争に挑んでいくという体制が必要なんだろうと思います。
ですから、日本の企業、あるいは海外から入ってくる企業がさらなる投資を増やさないで、成長しないで、そのままで、ただ家計だけが潤っていくということは100%ありません。まず日本経済が成長するためには、日本に存在している企業がとにかく成長する必要があると思います。
そのためには何をしなくちゃいけないかということになると、法人税なら法人税というものを、ある1つの大きなターゲットにして、それをより効果あらしめるとによって家計に及んでいく方法をしっかりと我々が道筋を付けるということによって、この議論というのは多分解決していくんだろうと思います。これが1つです。
もう一つの、政策減税のお話が出ましたが、1つだけ簡単に皆さんの御認識のために申し上げたいんですが、研究開発費というのは、ほとんどが人件費です。実際には製造業だろうとなかろうと、8割から9割くらいは人件費なんです。あとの1割から2割が研究設備投資なんです。
要するに、研究開発を促進すればそれだけ雇用は必ず増えます。そこのところを是非御理解いただいて、先ほど田中委員もおっしゃいましたけれども、技術立国として進んでいかざる得ない場合に、研究開発投資、そのための税制、そういうものがいかに必要であり、かつ日本の経済の活性化にも役に立つかということを御理解いただきたいと思います。
ありがとうございました。
〇井堀主査
それでは、北村委員お願いします。
〇北村委員
今頃こういうことを言うというのは、ちょっと問題なのかというふうにも思いますが、経済の持続的な成長と言ったときに、抽象的にはわかるんですけれども、どういう形になったのが、本当に成長しているのか。よくマニフェストと言いますから、何かきっと数値で表せるものがあるんじゃないかなというふうに思うんです。ここの議論ではそれが出てきてないのかなというふうな感じがするわけなんです。
そうでないと、その成長をどこまで追求していくか。人によってはものすごい成長を考えているし、また、持続的だから少しずつ成長していけばいいと考えている人もいるでしょう。ですから、そこのところをもうちょっと明確にしていただけると、ありがたいなと思います。
そのときに、では、持続的に成長していくときに、海外に出ていった日本企業が戻ってくるようなことを考えるのが必要なのか。あるいは他の国の企業が日本に入ってくる、そういう仕組みを考えていく必要があるのか。先ほどからの議論を聞いていますと、その両方があるよう感じがするんですが、経済的な成長というのは、その両方でいけるものなのかどうなのかというのも、私は経済学の専門家ではありませんので、よくわからないんです。
入ってくるとか、戻ってくるとかいったときに、法人税率を下げるとか、あるいは政策減税をするか、どちらがいいかというようなことを聞かれましても、どちらがよく有用に活用するのかということについても、それもよくわかりません。
ただ、政策減税ということになると、特別のものについてだけ減税していくわけですから、これが余り数が多いというのはどうなのか。先ほど江上委員のお話にもありましたけれども、ある程度整理していく必要があるのかと思うんです。
だから、この税調の審議を国民はいろいろと見ていると思いますので、その辺もうちょっと、経済の専門家、財政の専門家の方がわかりやすく、ここで出てきたのかもしれませんけれども、もうちょっとわかりやすくこれからやっていただけるとありがたいなというふうに思っています。
〇井堀主査
どうもありがとうございました。一応ひととおり委員の皆さんから御発言いただいたんですが、吉川委員から自分の意見はいいですか。経産省の紹介だけでいいですか。
〇吉川委員
もう既に何人かの方がおっしゃったことと重なりますから、税率でいくのか課税ベースか、非常に大きな論点だと。田近委員が先ほどおっしゃったこと、この税調で今後そこのところを詰めていくということだろうと思います。それ以上今日の段階でございません。
〇井堀主査
それでは、第2ラウンドで、田近委員から手が挙がっていますので、どうぞ。
〇田近委員
地方の税収偏在のことが今日は余り議論が出ていないので、質問とかじゃなくて、資料のお願いということです。
井伊委員が指摘されたことは、私は非常に重要だと思っていて、よくされる議論は、1人当たりの税収が法人二税だと、さっきの説明だとたしか長崎県と東京を比べると、東京は6倍だと。東京は取り過ぎだからおかしいねと。それはそうでしょうけれども、これは個人所得税と同じで、所得に対して比例的に税金がかかって、所得が高い人は税金をいっぱい納めている。それなら別に不平等でも何でもないと思うんですけれども、要するに、だれが税金をいっぱい払っているんだと。税金を払っていないというのは余りにも乱暴な議論で、では、個人の所得と対応するものというのは難しいでしょうけれども、仮に県内総生産というのを取って、県内総生産と比例的に、この場合法人二税が取られているのかと。ある県が県内総生産の全国の10%を取っているけれども、法人二税は5%とか8%だと。そうすると、そこに著しい乖離があるとすれば一体何なのか。
井伊委員は大切なことをおっしゃったと思うんですけれども、時間を通じて変わっているのか。変わっているとすると、さっき言ったフランチャイズみたいなことがあるかもしれない。
そうすると、我々の言葉で言うと、法人二税の水平的な調整が必要なのかしれないという議論で、ここの資料はもう少し検討して、かつできるだけ長い間の時間を取ってその変化を見ると、この議論の出発点の1つになると思います。
〇井堀主査
今の点は井伊委員からも御指摘がありましたので、事務局の方で対応していただければと思います。
それから、高木委員から最初手が挙がっていたので、どうぞ。
〇高木特別委員
もう時間がありませんので、いろいろ申し上げたかったんですが、結構ですが、1つだけ、先ほど田近先生がGDP比で見た負担でも、日本は高いんじゃないかという御発言がありましたが、今手元にデータがありませんが、私の記憶では、GDP比で見た負担率は日本は低いと記憶しておりますので、ミスリードになってもいけませんから、後をちゃんとフォローしていただきたいと思います。
〇井堀主査
その点も事務局の方でチェックしていただいて、次回に報告ください。
それでは、時間が若干超過しましたが、まだ御意見もあると思いますけれども、「法人課税」についての今日の会合はこの辺りで終わりにしたいと思います。政策減税、それから基本税率に関して、議論はありましたが、どちらにしても、引き上げるべきだという議論はなかったと思いますので、経済活性化のために法人課税をいかに改革、特に軽減する方向で改革するかということについて、これからまた議論を詰めていければと思います。それでは、会長の方に議事をお返ししします。
〇香西会長
大変活発な御議論をいただいてありがとうございました。私も少しはしゃべりたかったんですけれども、こんなに面白い話を会長談話で締めくくっては申しわけないと思って我慢しておりました。
今日の議論を深めて、同じことをもう一回やっても仕方がないんですが、もう一度これ深めた上で、次の議論をして、結論へだんだん近づくことが一番いいんじゃないかと思います。
今後のスケジュールは各税目、公益法人その他も入ってくるんですけれども、とにかく10月中には審議が一巡してしまわないと間に合わないだろうとうことで考えておりまして、原則は火曜日と金曜日の2時~4時ということを前提としたいと思います。
次回、次々回の開催予定は今のところ10月12日の金曜日、10月16日火曜日の2回を予定しておりますが、残念ながらまだ最終調整が終わっておりませんので、テーマの方が未定になっております。
いずれにしましても、日程が決定次第、御案内を申し上げますので、よろしくお願います。
本日はどうも大変ありがとうございました。大変充実した議論ができてよかったと思います。これで終わります。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。