企画会合(第12回)議事録

日時:平成19年6月8日(金)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

香西会長

ただいまから、第12回「企画会合」を開催いたしたいと存じます。

お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

議事に入る前に、若干の連絡事項を申し上げます。既に御案内のことかと存じますけれども、政府としては地球温暖化防止の観点から、6~9月までの夏季期間中は、原則としてノーネクタイ、ノー上着の軽装で執務をするという方針を申し合わせておられまして、税調に出席する事務局職員の服装についても同様にさせていただきたいということであります。御了承ください。また、委員の皆様も、よろしければ軽装で御出席ください。

次に、本日の議事について申し上げますけれども、税調では年明け以降、調査分析部会を設置するなど、延べ9回にわたりまして、審議を行ってまいっております。この間には、欧州・アジアの海外調査も行われたところでございます。

今後、更に調査分析作業を進めていき、その成果も踏まえまして、秋以降の本格的な議論につなげたいと考えているわけでございますけれども、その調査分析作業も大分積み重ねてきた時期でもありますので、この機会に皆さんの御意見もいただきたいという意味で、本日、企画会合を開催させていただきました。

あり体に申しますと、調査分析は若い専門委員を中心に行われた点もありまして、肝心の本委員あるいは特別委員の方から余り意見を発言する時間がなかなか無かったということもございますので、この機会に皆様から直接いろいろ御意見を承りたいということで議題とさせていただきました。

当調査会におけるこれまでの審議の状況も踏まえまして、自由に御発言をいただきまして、今後の調査分析作業にも御示唆をいただきたいと思いますし、調査分析だけでなくて、今後は次第に政策論議をしていかなければならない段階に近づいておると思いますので、そういった今後の本格的な議論を進めるに当たっても、参考となるような御意見等をこの機会におっしゃっていただければ、大変ありがたいと考えております。

また、既に報道されておりますけれども、別途、経済財政諮問会議におきましては「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」というものを議論しておりまして、お手元に配られていると思いますが、基本方針2007というものが素案として6月4日に公表されたところであります。

その中に第3章の2としまして、税制改革の基本哲学という項目が盛り込まれております。フリーディスカッションが一巡した段階で、内閣府より状況報告をしていただき、皆さんの御参考としていただきたいと思います。

さて、フリーディスカッションに入る前に、前回の会合で委員の方からの御発言で、税源移譲に関して国民にわかりやすく説明すべきであるという御意見がございましたので、これについて政府による広報の取組みを事務局から簡単に説明していただきたいと存じます。

本日、自治税務局の林崎市町村税課長においでいただいておりますので、よろしく御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

林崎市町村税課長

総務省市町村税課長の林崎でございます。

税源移譲の広報につきまして、私の方から簡単に御説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

お手元に、企画12―1「税源移譲広報関係資料」ということで御用意させていただきました。ぼちぼち報道等もなされておりますけれども、御説明申し上げたいと思います。

1枚お開きいただきたいんですが、これはよく私どもの方で各方面に御説明するときに、一番まとまった形で説明しやすいということで使っている1枚紙でございます。

ごらんいただきますように、税源移譲の前、税源移譲の後ということで、所得税と住民税の税率構造についての変動をビジュアルに書いておるものでございまして、その間に個々の納税者の負担合計額は同じということを記しております。

下には、独身者の場合と夫婦子ども2人の場合の年額の所得税、住民税の税額をそれぞれ給与収入段階ごとに書いてございますけれども、いずれもごらんいただきますように、右側にありますような負担増減額というところではゼロになる。これは税源移譲によっては負担増減額は出てこないということを示しておるわけでありますが、一番下にも書いておりますけれども、ちょっと小さいですが「このほか、実際の負担増減額には、平成19年から定率減税が廃止される等の影響があることにご留意ください」といったようなことを書いてございます。

定率減税ですけれども、2ページ目でございます。これはよく御承知かと思いますが、平成11年度から始めているものでありますけれども、この2年で半減し、そして今年から全廃するというスタイルでございます。

所得税につきましては、これまで税額の20%相当を控除する。頭打ち25万。それを昨年はその半分、10%、頭が12.5万円。住民税の方は同じくその下に書いてございますが、所得割額の15%相当額を控除、4万円を限度といったものを半分、7.5%、2万円を限度ということにしておりまして、これがいよいよ所得税につきましては今年の1月分から、住民税につきましては6月分からなくなるということでございます。

3ページであります。給与所得者につきまして、これは年額ベースでありますけれども、その給与収入ごとに税額の変動を記載してございますが、夫婦子ども2人の世帯の場合でございます。

この表の右から3つ目の欄「定率減税廃止の影響額」、その隣の右から2つ目の欄が「税源移譲の影響額」ということでございまして、基本的に税源移譲の影響額につきましては、所得税、住民税でやり取りして、合計するとゼロになるといったような形になっているところでございます。

4ページ目は、同じものの独身版の表でございます。

以上のことをもう少しビジュアルにしたものが5ページであります。税源移譲前が矢印の左側でありますが、所得税につきましては、平成18年1月~12月までで、これは給与収入500万、夫婦子ども2人の場合でありますけれども、本来11万9,000円の所得税額。その下にかぎ付きで10万7,100円というのが書いてございますが、これは定率減税によって、実際にはここまで年額としては下がっていたということでございます。

その下は、住民税。これは課税サイクルが6月から今年の5月まででありますけれども、同様に7万6,000円、定率減税後で7万300円、合わせますと19万5,000円。一番下になりますが、定率減税後で17万7,400円という形になっておった。これが矢印の右側で税源移譲後ということですけれども、所得税がごらんのように5万9,500円、住民税が6月から来年5月までで13万5,500円ということで、合わせまして19万5,000円、左側と同じということでございます。

年額はこういうことで出しておるわけでございますけれども、6ページをお開きいただきますと、月額、つまり給与取得者の場合、月々の給料から幾ら引かれるかというのを示しているものであります。

ごらんいただきますように、これは給与収入500万の場合でございますが、申し上げた税源移譲、定率減税の廃止、この2つの影響がミックスされまして、この絵で見ますと、所得税は昨年で言えば月々5,050円ずつ毎月の給料から引かれておったのが、今年の1月からは2,800円になっておる。

一方で、住民税はといいますと、月々5,900円引かれてきたわけでありますが、この6月から1万1,300円になるということで、合わせて合成しますと一番上のような形になるということであります。

理由としては、1つは定率減税が廃止されていることによって、定率減税が廃止されなければ所得税はもう少し下に下がっておった。あるいは住民税もここまで上がらない。そういったものが乗っかってきているということ。

もう一つは、下がる方の所得税の方は、これは言わゆるボーナスからも天引きをしておるわけでありまして、その吹き出しに小さく書いてありますように、ボーナスから引く分というのはこの場合減るわけでありますけれども、月々に直すとそこが表れてこない。住民税の方はボーナスから引きませんので、まともに月々から引いておるということで、こういった形になるわけでございます。

7ページは、同じ場合の給与収入700万の場合でございます。

今ごらんいただいたようなものを表にしたのが8~9ページでございまして、月額ベースであります。

8ページの方は夫婦子ども2人の給与所得者の世帯。

9ページは、独身の場合ということでございますので、またお目通しいただきたいと思います。

こういった内容でございまして、なかなか複雑な部分もございますので、できるだけわかりやすくということで10ページをお開きいただきたいんですが、財務省さん、私ども、内閣府さん等々で広報を努めてきておりますけれども、大きく3つポイントがあると、かなり思い切って申し上げております。

1点目が目的。2点目としては、多数の人は1月から所得税が減って、6月から減少相当分だけ住民税が増えるということ。そして、所得税と住民税を合わせた税負担額は、税源移譲の前後では変わらない。ただし、別途、定率減税の廃止による負担増あり。こういった形でやってきておるわけでございます。

具体的にどのような形でどれだけ取り組んできたかというのを11~12ページ以降で記載をしておりますので、ごらんいただきたいと思います。政府広報という形でやっておりますテレビ等、新聞、雑誌、昨年の12月ぐらいから本格的に始めておりまして、昨年末には横に横断的に四角で書いておりますけれども、国税庁さんの方から所得税のリーフレット、わかりやすい説明のリーフレットといったものも企業経由で配付をお願いをしております。

年が明けてからテレビ、新聞、雑誌をやっておりますけれども、私ども総務省の方からは実際にいわば住民税について課税をしていただく市町村の方にできるだけ早く通知書の方を発出をして、各種の問い合わせがしばらく続くであろうから、そういったものに対応できるようにということ。

納税通知書を送る場合には、わかりやすいチラシを同封して、できるだけそれで御理解いただけるように進めてほしいということで要請をしてきております。

また、各種関係業界がございますので、各府省さんにも総務省、財務省で周知のお願いをしたり、あるいは年金生活の方の場合は、年金振込通知書といったものが届きますので、そういった中でしっかりと周知をいただくよう、社会保険庁からやっていただいたりといったようなことを進めてきておるわけでございます。

12ページ、2月以降でありますけれども、この2月の頭の段階で、特別世論調査というのを実施をいたしまして、その段階では何らかの形でこの税源移譲、1月6月といったようなことを知っているとお答えいただいたのが6割程度でございました。

その後もごらんのような形で、そのときはわりあい周知状況が低かった若者向きには、フリーペーパーといったようなものを使ったりといったようなことでやってきておりますので、かなり認識度は上がってきているのではないと考えているところでございます。

同じようにその右側には、地方団体の方でも当然、一番現場が大変でございますので、一所懸命広報をしてきておりまして、さまざまな広報媒体あるいは住民説明会、先日は地方六団体で電車の中吊り広告等を行ったという状況でございます。

13ページ。今後の広報予定でございますけれども、新聞につきまして、広告あるいは折込広告といったようなことも予定しております。雑誌もテレビもそうでございます。

実際にいよいよ各地方団体、市町村の方から納税通知書というものが送られてまいりますので、先ほど申し上げましたような、早期発出、そして、併せてチラシを同封してほしいといったようなことで進めてきておるわけでございます。

14ページ。住民税の場合ということで説明紙を付けておりますが、上の普通徴収の場合と書いてございますけれども、いわゆる年金の方とか、あるいは事業を行っておられるような方の場合は、その個々人に納税通知書というのが各市町村から届きます。これが納付期限6月30日の10日前まで、6月の半ばぐらいまでに届いていくということになるわけでありまして、まさに今ぐらいになるわけでありますが、その際にチラシを同封をして、ぱっと見て増えているではないかと思ったときに、その理由はこうですというのがわかるようにしておると。ほとんどの市区町村がこれを実施してございます。

その下、特別徴収の場合というのは、いわゆる勤め人の場合、給与所得者の場合でありますが、これは通知が個々人の自宅に行くのではなくて、会社の方に特別徴収税額通知書というのがまいります。そして、会社の方を通じて、それぞれの社員さん、納税義務者に渡っていくということで、そこにも同じようにチラシが渡るようにということでお願いをしようとしているところでございます。

具体的にチラシチラシと申しましたけれども、その後ろに付けておりますが、一番上にありますのは国税庁さんの方で昨年末にお配りをされたようなチラシでございます。

新聞で広告を打ったというのは、その次にありますような形。雑誌に載せたもの。あるいは中吊り広告といったようなものを参考にお付けをしてございます。

最後には具体的に個々の市町村等で、それぞれの住民に対して広報誌あるいは広告のために折り込みといったようなことを行っておりますけれども、具体的にはお手元にあるようなものなどが行われているということで御紹介申し上げます。

私の方からは、以上でございます。

香西会長

どうもありがとうございました。御質問あるいは御意見等がございましたら、手を挙げていただけますでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、今の問題につきましては、以上で一応説明を終わらせていただきます。冒頭で申し上げましたけれども、本日の主たるテーマはフリーディスカッションをしていただくということでありますが、これまでの審議の状況も御説明をした上で、自由に御意見をいただきたいと考えております。

お手元には議論の一つの参考といいますか、枠になるという意味もありまして、総理大臣からこの税調に対する諮問文、何度もお配りしておりますけれども、それが1つ入っております。

また、参考資料として、経済財政諮問会議に私から提出した資料や税制調査会のこれまでの審議状況の一覧をお配りしております。

この審議状況の一覧では、調査分析部会での審議状況について、テーマ、だれがプレゼンをしたかというプレゼンテーター、または、その内容を記載したものでございます。

かなりの量の報告があったわけでございますので、一つの考え方ということになるかと思いますが、調査分析部会を指導していただきました、田近部会長から全体を読んでの感想といいますか、お感じになったところをお話いただきたいと思います。

田近委員

お手元の企画12―2というところに「税制調査会 審議状況(平成19年)」。これで少し振り返りたいんですけれども、今日の時間は皆様のフリーディスカッションいうことなので、できるだけ簡潔にこれまで調査分析部会で何を議論してきたかというようなことを紹介させていただきたいと思います。多少、フリーディスカッションのテーマのトピックになればと思いますけれども、簡潔にやらせていただきます。

4月13日に、これはドイツ、オランダ、フランスの報告。これは企画会合ですけれども、中里さんと私と事務局の方でやらせていただきました。

調査分析部会の第1のバッターは、中里さんから「税制改革の背景」。テーマはここに書かれたとおりです。

その次の回に、千葉大の広井さんに来ていただいて「これからの社会保障と『持続可能な福祉社会』」。

加藤専門委員に企業課税のサイドで「企業負担と経済活性化の関係について」。

次の回に、大竹専門委員に来ていただいて「日本の所得・消費格差と再分配構造」。そのときには井堀さんと永瀬さんがいらっしゃったと思いますけれども、これは企画会合でシンガポール、韓国の調査報告。

5月17日は、場所を変えて、IMFの財政担当の部局のマイケル・キーンさん。何人かアジア局の方もいらっしゃいましたけれども、報告はマイケル・キーンさんから「グローバル化する経済の中での税制の課題」という報告をいただきました。

直近では、土居委員から「社会保障をめぐる税財源と保険料財源」。

吉村委員から「租税原則としての『公平』と『公正』」。

公益法人制度改革の現状を、これは内閣府の方から企画会合で説明がありました。

私がこれを司会させていただいて、ざっと報告いただいたこと、あるいは議論を反芻してみたんですけれども、それなりにというか、いろいろな視点はあったけれども、議論したことはこんなふうだったのかなと思います。

中里さんのところとマイケル・キーンさんのところ、最後の吉村さんの公平・公正ですけれども、これはいろいろ論点はありましたけれども、やはり経済をめぐる状況が非常に国際的になってきたと。資本が非常に国際的にも移動する中で、どう税金をかけるんだ。その問題自身は昔からあったし、今もあるわけですけれども、その資本がいろいろ自由に移転していく中で、所得課税にいろんなひずみが起きてきたと。

中里さんは今日ここにいらっしゃいますけれども、そういうところで税をきっちりと取ることが政府ではなくて国家の目的なんだということを皮切りにおっしゃって、その中で租税裁定だから、税格差を利用した取引が余りできないような制度がいいんだと。

くしくもそれがマイケル・キーン氏のお話でもあって、包括的所得税、支出税、デュアル・インカム・タックス、フラット・タックスといろいろ紹介されましたけれども、その中で課税ベースが安定的にかけられる税がいいんだと。

印象的だったのは、日本は島国ではないかと。そして、付加価値税があるではないかと。きっちり消費税をかけたらどうだというような話が最後の締めくくりだったという。これはさっき彼の報告を読み直して、そう思いました。

そして、吉村さんの公平・公正は、観念的な話ではなくて、そういうふうに執行の面が非常に今、所得税では重要なんだと。その意味で公正というのはそういう執行が正しくできる税が公正なんだというお話だったと思います。

あと広井さんと土居さんが、お立場というか視点は違うかもしれませんけれども、広井さんの方もまた社会保障の本当の我が国を代表する専門家でいらっしゃいますけれども、我々にとっても印象的な話をしていただきました。社会保障をめぐる環境が少し変わってきたのではないかと。

つまり人生全般の社会保障ということで、若い人の方にも教育などを通じて格差が起きてきた。それから、フローではなくてストック面の平等も重要だと。そういう中で、今後どういうふうに社会保障を持続可能なものにしていくのかというところで、必ずしも保険原理だけではやっていけないと。それを補完するものとして税財源、特に消費税が必要だと。御自身の御主張では、最終的にはヨーロッパ並みの水準は避けられないとおっしゃっていましたけれども、これは広井先生の御意見です。

土居さんは違う観点からなんですけれども、社会保障は保険でできることは保険でやるべきだと。そのできないところは税が必要だろう。その税という観点からでは、消費税が望ましい。なぜ望ましいのかといったら、それは社会保障の給付というのは、多くは高齢者が受けている。そして、その負担というのは広くみんなで分かち合うという観点からは、消費税を社会保障の税で取る部分の財源とすることが望ましいのではないかということで、活発な議論がありました。

大竹先生の議論は、彼は日本の所得再分配に関して第一人者ですけれども、第一人者ということだけではなくて、香西先生もできたてほやほやのとおっしゃっていましたけれども、全国消費実態調査のできたてほやほやの結果を持ってこられて、格差自身は進んでいるけれども、ここで重要なことは、アメリカと違って日本ではその所得の上の方の集中ではなくて、下の方の格差も広がっているんですよということをおっしゃっていました。

そういう意味で、彼は消費ではかったときには、その負担の格差はそれほど進んでいないと。むしろ給付まで含んだ形で分配は考えなければいけないということで、公的年金の受給者が増えているということで、受給も併せて負担を考えなければいけないというようなことをおっしゃっていました。大変な御研究を報告していただいて、我々一同、非常に感謝した次第です。

加藤さんの御報告は法人税で、出席された方は同感だと思いますけれども、この分野のいろいろな仕事を非常に丹念に展望されて、法人税というのはいろんな面がありますねと。勿論それで少し税率を下げて、企業のキャッシュフローが増えて、投資が増えて、マクロ経済上いいことも起きますね。ただ、それによって一般均衡的にその利子率が上がるかもしれない。また減税をいっぱいすると財政赤字になって、更に利子率が上がるかもしれないというようなこと。

総じて、法人税を下げると、その税収をどうしても上回るようなうまい話というのは、必ずしも見つからなかったというようなことをおっしゃっていたと思います。

時間が限られていますので、以上です。

香西会長

どうもありがとうございました。

以上が一応、部会長からの要約的なまとめでございます。あとは皆さんからどうぞ、特にこの話題でということではありませんので、以上を参考にされて、何でも御感想等あるいは御意見等を承りたいと思います。手を挙げていただけるでしょうか。どうぞお願いします。

長谷川委員

これまで私にはちょっと難しい議論がたくさん続いておりまして、今日は企画会合ということで私のようなものにも発言する機会ができるかなと思って、そういうことにしていただきまして、ありがとうございました。

そこで確認しておきたいんですが、前回難しい議論が続いた後で香西会長の方から、租税原則について、これを変えるのは難しいというのは全員一致の理解にあると。それを骨太の方針の中で成長という言葉を入れるのは可能であるというような、私はメモを取っておらないので、正確ないい振りはわからないんですが、というような御発言があった。

それが最後の時間を過ぎた後で出てきたので、私もそのままやり過ごしてしまったんですが、租税原則を変えるということが、今、問題の諮問会議の議事録を読んでみると、3つの原則を変えるということは、運営上非常に難しいという御発言を会長はされているわけですが、これはどういう趣旨なのか。ちょっと確認させていただきたい。

というのは、租税原則について、この税調では真正面から議論するようにアジェンダの中に挙がっているわけなので、それは変えないということを前提に、これからこの議論を進めていこうというお考えなのかどうか。それについて、ちょっと会長の真意をお尋ねしたいんです。

香西会長

今お話のあった点について私が考えていたことというのは、かなり違ったことであったということをまずお断りしたいと思います。

経緯的に申しますと、経済財政諮問会議で経済産業大臣から、租税原則の中立のところを成長と変えたい、是非変えてくれという御注文があったわけであります。それに対して私が申しましたのは、さっき成長は大事だとおっしゃったんですけれども、次の税制改革において成長が大事だということは諮問の中にも書いてあることですから、それは当然、我々も意識しています。

ただ、私がもう一つ考えておりますのは、この税制調査会は19年度の税制改革答申において、この19年度の答申は18年の末に出たわけですけれども、租税原則は3つあると。簡素で公正で中立であるということで、その19年度の答申をまとめておられるわけです。

ただし、その19年度の改革の主題は経済活性化だというので、それを副題にしておられるわけです。そうすると去年の12月にそうであったものを、今すぐそれを変えろと経産大臣からの御示唆がありましたけれども、それはできません。それは我々の中でもう少し議論してからでないと、少なくとも19年度税制改正の答申については、私を除く37人の委員はこれに御賛成になったと。それを含めて御賛成になったものである。会長が変わったらすぐに結論が変わるようなやわな審議会ではないはずだと私は思いますので、それはできませんと。

しかし、それと同時にこの調査分析部会におきましても、主として中里先生を中心に租税原則の在り方について議論が行われているわけですから、それが行われた結果として、理由を付けて、変えるのであれば変える機会があると思っております。

したがって、現在は変えるとも変えないともフリーハンドを残した。そういうためにそういうことを申し上げてきたということでありますので、どちらかに決めたわけではない。変えないという自由もありますし、変える自由もまだ残っているわけです。

ただ、それにはやはり一つの組織として、あのときに言ったことを、ほとんどの方が同じメンバーであるのに、変えるというからには、何かやはり説明が必要なのではないかと。

実は私は委員になる前には、成長の方がいいということを個人的にはいろんな場所で発言してきているわけなんですけれども、自分が会長になってみると、それは私個人の判断で、会長が変わったから変えてくれということは申し上げないと。ここの議論に従おうということで、こういう趣旨のことを申し上げたというつもりでおります。

長谷川委員

了解いたしました。

香西会長

では、ほかにいかがでしょうか。今日は過去の研究経過について、いろいろ御感想等もいただきたいわけでありますけれども、これからはだんだん調査分析だけではなくて答申を書く。つまり政策論に踏み込んでいくということになりますので、これまでの調査分析についての御感想をいただくと同時に、例えば総理からの諮問が出ている。これに対しては、自分はこういうところはこういうふうに考えているとか、そういう議論でも結構でありますので、どうぞ自由に御発言をお願いしたい。

先ほど長谷川委員もおっしゃったんですが、若い方の議論も非常に楽しかったと喜んでいるんですけれども、これは税調で是非やりたい議論がたくさんあったと思うんですが、同時に政策になってくると、やはり国民全体の理解が進むような形にまとめていかなければならないと思いますから、そういった点も含めて、本委員、特別委員の方々からこの機会にこの辺りで一度議論をしておいていただきたいという趣旨の会合でございますので、どなたからでも結構なんですが、よろしくお願いしたいと思います。

横山先生、何かありましたら、一言いかがでしょうか。

横山委員

いろいろな御意見があろうかと思うんですけれども、政府税調の議論としては、やはり筋論で議論していくんだろうと思います。

ただ「ふるさと納税」にしても、いろいろな御意見がこの政府税調の外で議論が既に行われているわけですね。いろいろな形でそれぞれの財政審もそうですけれども、税制は国民一人ひとりが非常に関心を寄せている制度でございますので、それぞれの審議会あるいはお立場から、さまざまな御議論があるんだろうと思うんですが、恐らくここにお集まりの委員あるいは特別委員の方々は、そうしたことについても御発言を少ししたいのではないかと。

だから、私の個人の意見は、また後ほど申し述べさせていただく機会もあろうかと思いますが、それぞれの立場から、今、御議論されている事柄について、何か御意見があれば、御発言願うということではいかがでしょうか。

香西会長

司会者がお話しすべきことを代弁していただいたわけでありまして、是非そうしていただきたい。そのための会合を今日開いているということでございますので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。どうぞお願いします。

北村委員

昨年の報告書を出した時点におきましては、法人税というか企業課税の方に非常に重点が置かれまして、私はなぜ所得の方、個人の方をもうちょっと考えたものを入れないのかと発言したことがあるんですね。

今年は非常に時間がありますので、そういうようなものも含んでやっていくということになるんでしょうけれども、会議に出ていて、いつもちょっと、これはどういうふうに進んでいくのかなと。つまりこれからどのような形の議論をどこで行っていくのか。

だから、もうちょっと端的に言いますと、タイムスケジュールが余り明確ではないのではないかと思っているんですね。多分、会長のお気持ちの中では非常に明確にあるんでしょうけれども、私ぐらいになってくると、なかなかそれが読めないというような状況でして、例えば月に何回で、この何月には大体この辺のところを議論していきましょうと。

今日のフリーディスカッションは、その議論する内容をどうすればいいのかということを詰めましょうというようなお考えなのかなと思っているんですが、私は余り偏ることのないように、所得課税、消費課税、資産課税で大体どのような税制を考えていくのかという、そこのところをまず明らかにしてから個別問題に入っていくのがいいのかなというふうに思っています。

香西会長

私がそれほどはっきりとしたスケジュール感を持っているわけではありませんで、政界は一寸先は闇ですから、何が起こるかはだれにも予測が付かないわけですが、そこはあえて、我々は一応政府の税調であるということで、できる限りは粛々と進むしかないだろうと。何が起こるかはわかりません。

ただ、これまでやってきた調査分析の方も、残る問題があれば当然その後も続けるとしましても、7月いっぱいぐらいで一応活動としては一線を引いて、後は何をするかと言えば、本日も配られておりますけれども、内閣総理大臣からの諮問があるわけで、この諮問にどう答えるかということになるだろうと思います。

そういう意味では、調査分析部会は勿論、組織としては残すわけですけれども、議論もこのいわば答申型というか、答申に何を盛り込めばいいかということを中心としたものになるだろうと。

そして、今お話がありましたけれども、その諮問の中では、例えば税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体の在り方について検討せよと書いてありまして、まさにおっしゃるように1つだけということではなくて、全体としての税体系というのが今、問われているということは諮問の文章でも明らかですから、そこになるわけですが、それと同時にどういう形になるかわかりませんが、部会というのか、あるいは委員会という形になるのかわかりませんが、税目ごとにも議論をしながら全体をまとめていくような形の組織を夏以降立ち上げていって、年内に何とかまとめていきたい。これぐらいのことは全体として予想させていただきたい。

それについては、8月ごろにもう一度、どういう組織に組み換えた上で議論を進めるか、どういうことを中心に議論を進めるかということについて、改めて提案もさせていただきたいと考えているところです。

今日はフリーといいますのは、余り枠を決めて今日中に結論を出そうということではありませんので、是非参考になる意見をこの際、幾つでもインプットできれば、それが一番ありがたいということでありますので、どうぞ御自由に御議論をしていただきたいということであります。

田中委員、どうぞ。

田中特別委員

それでは、産業界からの要望というようなことで発言をさせていただきます。

今の諮問の文書にございましたように、成長なくして財政再建なしという理念があるわけですから、この理念に基づきまして、この税制議論というのが進められるべきだと思います。

現在、少子高齢化ですとか人口減少、あるいはグローバル化という状況の中で経済成長を持続させていくためには、やはり個別の企業部門の活性化なしには実現できないのではないかと考えます。

企業部門の活性化の効果というのは、当然その企業部門だけにとどまるわけではございませんで、雇用とかあるいは賃金というものとしての家計部門、地方経済の活性化とか、あるいは配当を通しての家計への波及とか税収あるいは企業負担分の社会保障費の財源の確保というようなことを考えますと、波及効果は非常に大きいのではないかという気がいたします。

そういう意味からいたしますと、やはりこの企業部門が活性化するような税制上の対応というのがこのときには非常に大きく求められているのではないかという気がいたします。

したがって具体的に言いますと、議論になりますこの法人税率の引下げというのが一つの例ではないかと思います。

先ほどの御紹介にもございましたように、ヨーロッパを中心にして、今、法人税率の見直しというのが盛んに行われているわけでございますので、そういう中で日本がそういう国と十分に競争力を維持するためには、やはり国際的なイコールフッティングというような水準まで法人税の見直しというのは必要ではないかなという気がいたします。

法人税の引下げ自身がその企業収益を引き上げて、それが再投資に結び付いて税収を増やすという事例というのは、必ずしも多くないかもしれませんけれども、資本の国外の流出を防ぐとか、あるいは国外からの資本の流入の阻害要因にならないという目的からすると、この法人税の引き下げというのは大変大きな意義があるのではないかと考えます。

香西会長

どうもありがとうございました。吉川先生、どうぞお願いします。

吉川委員

今、田中委員からお話があった法人税についても、中長期的な日本経済の在り方の観点から法人税について考える必要があるというお話だったと思うんですが、それはそのとおりとして、中長期的なことということであれば、先ほど北村先生から御指摘のあった所得税などについても当然考えなければいけない。

これも全くそのとおりだと思うんですが、先ほどから我々の税調に対する総理からの諮問ということが指摘されているわけですけれども、もう一つ、今日、参考として配っていただいている、もうじき閣議決定される骨太の方針ですね。いわゆる基本方針。

これの税のところでは、一番初めに「21世紀の我が国にふさわしい税制を構築するため、所得税、消費税、法人税など税制全般について」以下云々というふうにはっきり書かれているわけですから、税調への諮問の方では各税目が果たすべき役割という形になっていますけれども、今年の骨太ではもう少しはっきりと、具体的に所得税、消費税、法人税を全方位できっちり考えて、中長期的にあるべき税制について考えていきますということなんだろうと思うんです。

ですから、先ほど北村先生がおっしゃったような問題についても、当然、税調としてもしっかり考えていくということになっているんだろうと理解しています。

香西会長

たしか施政方針演説でも消費税をはじめ幾つか税が上がっていましたので、全体を見るということは政府の方の方針には既になっているということだと理解しております。

どうぞお願いします。

秋山特別委員

今後、残りの時間を使っての議論をどういうふうに進めていただきたいかということについて、お話しさせていただきたいんです。

例えば今、骨太の方針で、所得税、消費税、法人税という具体的な税項目が挙がっておりますけれども、どちらかというと今までそれぞれの税項目についての議論というのはかなりあったと思うんですけれども、組み合わせて、どういうバランスで考えるのがいいのかというような議論。あるいはその議論の基になるようなシミュレーションのようなものですね。

こういったものがあると、先ほど御指摘のあったような全体の体系が見える、あるいは議論をする皆さんの前提の認識として、何か大きな一つの同じ絵を見ながら議論が交わせるのではないかというようなことを常々感じておりました。そういうことができるので、是非お願いをしたいというのが1点です。

同じような観点になるんですけれども、例えば骨太の方針の中で、社会保障との関係において、税と社会保障の一体的設計によるということなんですけれども、あるいは別のところで省庁間の縦割りの壁を越えてというような表現もどこかで出ていると思いますけれども、これは具体的に一体的な設計というのは、どういうふうに実現できるのかということのイメージがまず持てない中で、非常に意見をしにくいということを感じております。

あと、骨太あるいは首相の諮問の中で、私なりに非常に大きなミスをしたと思っている、成長というキーワード。これは先ほど御指摘がありましたけれども、なかなか税ということと成長というこの2つの言葉は、今まで非常に相関関係があるものとして語られるということは、実は余りなかったのかなと。そういう意味では新しい切り口だと思うんですね。

ですから、成長というキーワードが非常に優先順位が高いものとして挙げられていることと、今、実際に我々がやっている議論が成長にどのくらい影響を与えるのかというようなところを、もう少しめり張りがあるような話ができるにはどうしたらいいのかな。済みません。そのためにいい案というのは、私自身は持っていないんですけれども、そこが気になっております。

今度はまた別の形で、骨太の基本哲学の6番目のところに、納税者の信頼確保ということで、徴税体制の話が出ているんですけれども、どんな税制を新しく提案したところで、理屈として、もしくは仕組みとして、それが良い悪い、あるいは好き嫌いの議論があったとしても、国民がそれをやはり受け入れるという部分においては、徴税体制に対する信頼というのは非常に大切だと思っております。この点について、もう少し時間をかけて議論してもいいのではないかと思います。

幾つかになりましたけれども、以上です。

香西会長

すべて非常に大事なポイントを挙げていただいたと思います。例えば最後に言われた徴税環境といいますか、納税環境といいますか、納税者の在り方といいますか。そういった問題については、かねて当初は、広聴広報部会を設けるという形で考えていたわけですが、広聴広報というと上から情報を流したり、あるいは下から吸い上げるというような感じもしますので、もう少し納税環境自体について勉強しておく必要があるのではないか。

これは時間があれば、部会をつくるということが一つですし、あるいはもう後半になって、それなりの組織の中の一つの委員会か何かにすることも考えているんですが、実は何人かの委員の方にお願いして、とりあえず勉強会のような形でそういった問題を、例えば国税庁の担当者といった人たちとも議論をしたいと考えております。

それで何人かの方にその点を御相談して、非公式ですけれども、来週からでもそれを始めてみようかという形を考えておりまして、もしそういった問題に御関心がある方があれば、是非名乗りを上げていただければ、私の方は大変ありがたいと考えております。

成長と税の関係については、確かに従来的には成長すれば税が入ってくるというのはよくわかっていたんですけれども、自然増収ですね。税でどうして成長ができるかということについては、なかなか判定も難しい。

例えばある人はレーガン税制によって、非常にアメリカは活性化したではないかというふうに言いますし、ある人は、あの効果は実はそれほどではなかったんだという結果もありまして、研究もいろんな研究があるといってもいい状態ではないかと思いますが、それにしても、おっしゃるように大きな絵を描く際には、そこのところのリンケージというのが非常に大事な、絵の成功か不成功を決める大きなポイントになるだろうと。成長と税の関係をどういうふうに整理するかというふうに考えておりまして、これは勿論、私は責任を取らなければなりませんが、皆様方からも大きな絵のスケッチでもいいから、出していただければ大変参考になると思いますので、どうぞ御列席の皆様からも是非御意見をいただきたいと思います。

社会保障と税の関係についても、私も非常に問題があると思います。ただ、率直に言って、これは簡単ではないということはもう明らかでありまして、実行をどうするかというのは非常に議論があると思いますが、そういう点で先ほどお話もありましたが、どうも税調は黙っていて、余り人に意見を言っていないということで、何か意気阻喪されていると、困るんだという話もあるかもしれませんが、私はむしろこの点について言えば、諮問会議を仲間に引き込むということが一つの作戦になると判断して、彼らの意見を通したというか、特にコメントをそれ以上はしなかったということでやっていますので、少しでもお墨つきをもらわないと、こういう税と社会保障の両方に関わることを税調だけでやるといっても、なかなか難しい面があるので、むしろこちらに巻き込んで、そういう問題にも挑戦したいというのが私の判断ということです。

骨太の方針について幾つか議論が出ましたが、内閣府の経済社会システム担当の藤田参事官がお見えになってくださっていますので、これのとりまとめの方向なり現状なりにつきまして、御説明いただければありがたいと思います。お願いしてよろしいでしょうか。よろしくお願いします。

藤田参事官

内閣府の藤田でございます。よろしくお願いいたします。

企画12―3という資料をお配りしております。「基本方針2007(素案)―税制改革関連抜粋―」でございます。

それと別に、税制改革だけではなくて、分厚い基本方針2007(素案)という50ページ以上になる資料でございますけれども、それも机上に配付しておりますので、併せてごらんいただきたいと思います。

税制改革関連抜粋というのをごらんいただきたいと思います。この資料は6月4日の経済財政諮問会議に大田大臣から素案として提出されたものでございまして、まだ素案ということでございますので、今後数回議論を経まして、6月中下旬にはまとめるということで今、調整をしておるところでございます。

内容を紹介させていただきます。これは4月、5月の諮問会議で、税制について議論がありました。それを踏まえてつくったものでございます。

「2.税制改革の基本哲学」といたしまして、最初のところでございます。

「21世紀の我が国にふさわしい税制を構築するため、所得税、消費税、法人税など税制全般について、「納税者の立場に立つ」「経済社会の変化に対応する」「省庁の縦割りを超え、受益と負担の両面から総合的に検討する」という3つの視点で点検し、税体系の抜本的改革を実現するとしております。

その後ろの6行は、従来からスケジュールとして政府部内で言っておるところでございまして、19年秋以降、本格的議論を行うこと。19年度を目途に社会保障少子化対策に関する費用の見通しなどを踏まえつつ、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現すべく取り組むということをもう一回書いております。

その後ろに「実現すべき6つの柱」ということで、6つの大きな柱とその内容を少し紹介したいと思います。

まずは「(1)イノベーションとオープンな経済システムによる経済成長の加速」ということで、成長力強化、生産性向上に向けての税制を含めた取り組み。

生産活動、就労への意欲を阻害しないよう、広く薄くの観点に立った課税の在り方の検討。あるいは金融所得課税等の在り方について触れております。

「(2)多様なライフスタイルや経済活動の確保」では、就業、結婚、出産など各人の選択に対してゆがみをもたらさないような税制の在り方の検討。

投資等の経済活動に絡みまして、ゆがみですとか不公平、資源のロスが生じないような制度の検討。寄付金税制等の在り方について触れております。

「(3)世代間・世代内の公平の確保」。

ここでは受益と負担の双方を含めた制度全体の検討を通じ、真に必要な人に必要な対応がなされるようにするとともに、世代を超えた格差の固定化を防ぐと書いております。

先ほどから議論が出ております「(4)税と社会保障の一体的設計による持続可能で安心できる仕組みの構築」。

ここでも社会保障、少子化対策に絡みまして、国民の受益と負担の水準について、複数の選択肢など、幅広い観点から検討を進めると書かれております。

また、歳出改革によっても、対応し切れない社会保障、少子化などに伴う負担増に対しては安定財源を確保して、将来世代への負担の先送りを行われないようにするとしております。

地方分権の関係でございまして「(5)真の地方分権の確立」ということです。

国、地方の財政状況を踏まえつつ、補助金、交付税、税源移譲を含めた税源配分の見直しの一体的改革に向けて、地方債を含めて検討するとともに、税源の偏在など、地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえまして、地方税の在り方、国と地方の間の税目・税源配分の見直しなど、地方間の税源の偏在を是正する方策について検討し、その格差の縮小を目指すとしております。

この地方分権のところにつきましては、税制改革のところだけではなくて、分厚い方の資料をごらんいただきたいと思います。恐縮ですが、38ページをお開きいただきたいと存じます。

38~39ページに地方分権改革についてまとまった記述をしておりまして、国と地方の役割分担を踏まえて、3年以内に分権改革の一括法案を提出する。あるいは地方税財政改革の推進を行う。

ここでまた税源の偏在の問題とかに触れておりますけれども、更に39ページでございますが、目立たないところに書いてあるんですけれども、39ページの上から5行目、また、ふるさとに対する納税者の貢献や関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け検討する。いわゆる「ふるさと納税」に関係する記述をこの39ページに載せております。

2枚紙の方に戻っていただきまして、(5)の地方分権の下に、これも先ほどから議論が出ております「(6)納税者の信頼確保と公平・効率的な徴収体制の構築」ということで、納税者番号の導入に向けて、社会保障番号との関係の整理等を含め、具体的な検討をすること。あるいは税制を簡素化するとともに、電子申告を促進し、徴収方法を効率化するということを書いておりまして、以上、6つの実現すべき柱ということを「2.税制改革の基本哲学」のところに記述しておるわけでございます。

簡単でございますが、以上でございます。

香西会長

どうもありがとうございました。若干私から追加的に御報告等をしておいた方がいいかと思いますので、少し発言をさせていただきます。

諮問会議と税調との関係でございますけれども、これは4月25日に行われました諮問会議に私が呼ばれまして、そこで税調は今までどういうふうに審議してきているのか、これからどうなるのかという御質問がありました。

それについては、今日もお配りしてありますけれども、一応、私が提出した資料というのが入っておりまして、これについては、こういう資料を出しましたということを、5月11日の第9回の税制調査会で私から皆さんに報告をいたしました。

ただし、実際の問題を議論したのは、このときは20分かそこらぐらいの時間しかなかったと思うわけでありますが、一応、私のペーパーについて説明をさせていただいたわけですが、同時にそのときに諮問会議の民間議員から提案があった「税制改革の基本哲学について」というメモも、4月25日に配られまして、これも5月11日の第9回の企画部会及び調査分析部会で配付いたしました。

4月25日の諮問会議では時間がなかったわけですが、伊藤隆敏議員がこれを読み上げて説明されたということで、実現すべき6つの柱、先ほどありました、現在の案とほとんど内容的には同じものでございます。

これについては、11日の税調で、説明をとりあえず、一応地方分権だとか、税と社会保障を一体的にとか箇条書き的に私が読み上げる形で、内容はこういうものでしたということを申し上げたというわけであります。

その後で、私から、説明は以上のとおりであるけれども、例えば基本哲学、諮問会議の民間議員の意見書、その他についての御意見もあろうかと思いますが、実はこのときは5月15日に、次にもう一回諮問会議で議論するということになっていましたので、もし何かありましたら、時間がありませんけれども、メールでも結構ですから、私の方に、御意見をいただきたい。私の方に、これについてはこういう感想がある、あるいは意見がある、香西の報告についても、ここはよくなかったのではないかということを是非御指摘いただきたいという発言をいたしております。残念ながら私のメールには入ってはいなかったということでございまして、私は一応諮問会議については、彼らの意見は内容的にいって検討するということであって、目標としてこうしろということは書いてありますけれども、具体的に制約されるものではない。むしろうまく行けば、我々の援軍になってもらえるように使うことも可能だろうというふうに判断して、一応、それを受け止めてきたということでございます。

そういう点では、その説明をするときには既に時間がなかったわけでありまして、非常に時間がなくて、多少詰めたように思いますけれども、そういった形で進めたいということで、私はやってきたということです。

どうぞ、お願いします。

山田委員

山田でございます。今の骨太の第3章の説明とも少し絡むんですが、それから諮問文の中の2枚目にあります、我が国経済の国際競争力を強化し、これに関連して意見というか感想を述べさせていただきたいんですけれども、1つは今の第3章の2というのを読みまして、国際競争力といいますか、グローバル化ということに対応する考え方というのは、余り基本哲学の中に強くは出ていないのかなと思います。むしろ、これは法人税の中の一部ということなので、全体の基本哲学の中では、余り入れる余地がないのかなということかもしれないんですが、例えば実現すべき6つの柱の1つのイノベーションとオープンな経済システム云々という中に、1つは国際競争力の部分という何かが入ってもいいように思いますし、それから3番目の黒い丸の金融所得課税の在り方というのは、ある意味では香西会長が諮問会議に御説明されたものの2ページのIII の活性化の視点というところの一番最初にグローバル化の中の企業課税、金融所得課税の現代化、私はこれは非常に重要だと思っていまして、この視点というのは、余り骨太の中に出ていなくて、むしろ海に囲まれた島国の国内だけを見ているような印象を受けまして、その辺に力点を置かれたらどうかなという感じがしました。

それから、同じポイントの中で、基本方針の素案の方の15ページ、16ページでグローバル化改革というものが出ていて、その中の16ページの(2)の金融・資本市場競争力強化プランという中に、例えば取引所の競争力の強化とかが出ていて、その中に取引所における幅広い品ぞろえを可能とするための具体策等を検討、としかなっていないんですが、例えばこの中に税制という問題なんかが、どういうふうに関わるのか。つまり、言われて久しいことですけれども、日本の税制のために、アジアのいろんな違う取引所などに資本が移行するというような議論もあるわけですけれども、何かそういうグローバル化と税制という観点を、特に私は税制が経済活動の障害になってはいけないと思っているんですけれども、そういうようなことを、もう少しどこかに触れられてはどうかなというのが非常に強く思うことです。

ちょっと長くなりましたが、最後に、前にも申し上げたんですが、私が会計基準の国際的な統合という仕事をやっている中で、会計と税というのが完全に分離した形で国際的な議論が進んでいて、日本の企業が将来、国際競争の中で財務諸表の信頼性を確保する意味で会計基準を国際的なものに合わせていくと、それと税との関係というのが、従来の在り方と少し変わってきて、何か私の感じでは、税が会計基準の国際化の最後の障害になるような、特に法人税がなるような感じがしておりまして、そういう意味でのグローバル化という視点がもう少しどこかに入ったらいいのではないかと思います。

少し長くなりましたが、以上です。

香西会長

どうもありがとうございました。1つ、言い訳するわけではないんですけれども、基本方針の素案は、全体としては私も6月4日までは知りませんでした。私が見ていたのは、税制の哲学に関する2~3ページ、あるいは最後の1ページになったものだけということで、御指摘になったグローバル化のことについて、例えばアジア・ゲートウェイ構想とか、そういったことがいろいろ書かれていることについては、うわさには聞いておりましたけれども、中身のことはよく存じませんでした。

ただ、イノベーションとオープン、オープンというのもグローバル化に関連することでありますし、もう少し言えば、そちらの方を担当されたのは、伊藤隆敏教授だろうと想像しているわけでして、彼はIMFにもいまして、日本でも国際経済学者とし超一流の方ですから、それをかなり信頼していたということは確かにあると思いますが、結果的には税の哲学以外の部分についての基本方針については、我々は6月4日に初めて見たということであります。

高木委員、どうぞ。

高木特別委員

骨太の方針の読み方について、ちょっと質問をしたい。内閣府の方ですか、藤田参事官に先ほど御説明をいただきましたが、今、7月22日かどうかわかりませんが、参議院選挙が行われようとしているけれども、選挙で税の話をしない選挙というのは、私は個人的にはおかしいと思っています。税というのは、政治にとって最大の課題だろうと思いますが、その税のことを先送りにしたまま選挙をやろうという安倍政権のやり方もどうかなと思うし、与党がそうですから、野党の方も余り税のことに触れないで、税のことが選択肢に余り入らない選挙が、今、我々の前に近づこうとしている。

そういう中で、骨太の方針の税に関する部分というのは、こういう時期でも、どういうふうに読むのかによっていろんな受け止め方になるんだろうと思ってこのペーパーを拝見いたしておるところでございます。

前書きの全部で9行ですか、これの読み方あるいはその後の6つの柱、こういうのを俯瞰的に見てみましたときに、何となく読み取れるのは、法人税はもう少し引き下げるんでしょうかと。それから資産所得等の優遇措置はどうもそう切り込めませんねと。あるいは広く薄くだとか、就労への意欲を阻害しない、こんな表現があるということになると、最高税率のところは余りお変えになる気があるませんねとか、読むスコープが若干斜めを向いているのかもしれませんけれども、そんなふうに読まれてもしようがないんではないかと思います。

所得再配分機能が劣化しているとか、いろんなことが言われている中で、法人税も高ければいいんだなんていうことは言いませんが、というのは、企業が払う法人税の原資をかせぐのは、社員も一緒になってかせいでいるわけです。そうべらぼうに上げてくれとは言いませんけれども、今は、税のバランスという意味で企業、産業回りよりは生活回りの方のニーズが高いような、そういう背景の方が強い時期ではないかというような印象を持っておりますが、そういう中でこのペーパーの読み方、消費税は上げなければいけないと書いてありますね。ですから、こういうペーパーについて、こんなふうに読まれますよと言われたときに、どう御説明なさるのか、その辺のお考えについて、ちょっとお聞かせいただきたい。

もう一点、税源移譲の関係のお話を聞きまして、税源移譲については、まさにこういうことかもしれませんが、今、専らみんながいろんなことを感じておりますのは、例えば12-1のペーパーの一番最後に小さな字で書いてあることなんです。「実際の負担増減額には、19年から定率減税が廃止される等の影響があることに御留意ください」ということ。

もっと表現が酷いと思って拝見したのは、給与所得者の、これはビラなのか、リーフレットなのか知りませんが、グラフの上の段の「景気回復のための定率減税措置が取られなくなることや」というところです。定率減税と一緒に実施した1999年の税制改正で行われた措置について法人税の税率は引き下げたまま、最高税率も引き下げたまま、利子配当課税は軽減税率というか、税を下げたまま、それで定率減税のところだけやめたという措置、このことについて、今、家計が可処分所得を減らし続けている実態等を含めて、みんなどんな感覚で家計の実態を受け止めているのか、そういう国民感情からすると、こういう表現は非常に逆なでする表現だと言われてもしようがないんではないかと思います。

説明しなければいけないと、特に自民党の人がやかましく言っておられますから、それを一生懸命説明なさるという努力は否定をいたしませんが、まだ、これからもいろいろおやりになるようでございますが、その辺の中身、サブスタンスによっては、またいろんな国民の受け止め方を引き起こすということを十分お考えになってやられる必要があるんではないかと、このことをあえて申し上げておきたいと思います。

香西会長

事務局の方で、何か御発言がありましたらどうぞ。

松山審議官

内閣府の官房審議官の松山でございます。

山田委員と高木委員から、ただいま御意見をちょうだいした点につきまして、御説明をさせていただきますが、山田委員の御指摘、すなわちグローバル化ということをもう少し明確に出した方がいいんではないかという御指摘。

それから、高木委員の前段の方の御指摘でございますけれども、税について特定の税制改革の方向性を示唆しているのではないかという御指摘。実は方向としては、ちょうど反対のことを御指摘いただいたんではないかというふうに思うわけですが、第3章の2のタイトルが表わしているように、これは基本哲学ということで、基本的な考え方を、この時点において整理をするという考え方でございます。

すなわち、その数行下に、第2パラグラフですけれども、19年秋以降、税制改革の本格的な議論を行い、19年度を目途に云々ということで、委員の皆さん御承知のとおり、本年の秋以降、本格的な検討をしていくという方針でございますので、この時点で、具体的な税制の方向性について非常に明示的に書くという趣旨ではないということを、まず御説明させていただきたいと思います。

したがいまして、山田委員から御指摘をいただきましたグローバル化が重要であるということは、基本方針全体としては、分厚い方で後ほどごらんいただきますと、総理自身が再重視していることが、イノベーションとオープンということでございますので、グローバル化について非常に重視していることは間違いないわけですけれども、そのことで税制を具体的にどうこうするというニュアンスはなるべく避けるということでございます。

それから、高木委員の御指摘の、例えばこの記述というのが、法人税の引き下げを意味しているのか、また所得税の方の最高税率をどのように考えているのかという御指摘でございましたけれども、これにつきましては、実現すべき6つの柱というのは、実は相対する概念である部分もございます。

例えば(1)は経済成長の加速ということを目指さねばならないと言っておりますけれども、(3)で世代間・世代内の公平の確保ということも重要な柱となっております。

したがいまして、例えば最高税率の問題でございますとか、それから法人税の問題、いずれにしましても、およそ大半の税制に関しまして、こういう幾つかの課題、幾つかの目標と非常に関わり合いを持っておりますので、そういった多様な視点から総合的に秋以降、更に税制調査会でも御審議いただいた上で、政府としての議論も進んでいく。そういうことになるのではないかと考えております。

以上です。

香西会長

高木委員、どうぞ。

高木特別委員

そうすると、どうなるかわからぬけれども、こんなことが論点になりますという論点だけ整理してくれたのが骨太の方針ですか。

松山審議官員

税制改革につきましての、現時点での制度としての整理は申し上げたような整理になっているということでございます。

佐竹特別委員

1つ目は、これまでの専門委員の先生方、大変専門的な見地からいろいろ調査研究を踏まえた御発表もあったわけでありまして、大変勉強になったところもあります。

それで、これは感想ですけれども、よく総理大臣からの諮問を見ますと、これは全部書いているんですね。要は、すべての税目あるいは視点が全部ここに載っている。

それで、どちかというと、個別の税の議論をして深めて、それぞれの個別の税のさまざまな議論をしてきたわけですけれども、やはり税というのは全体があるわけでありまして、多分二次元ではなくて、三次元のマトリックスになって相関関係があるんではないかと思います。

その税全体で当面、今、全体の税のボリュームというものは片方にあって、もう一つはその目標として経済活力の向上。それで、多分少子高齢社会における国民生活の安定。ここら辺のそういういろんな要素をやったときの税目間の、それぞれの主目的もあるでしょうけれども、そのバランスあるいは相関関係でどういうふうになるのか、あるいはどういうふうなものが、最善はないでしょうけれども、日本の国の今の現状を考えた場合、どういうふうな組み合わせが考えられるか。こういうところを学問的というか、先生方に議論していただき、総論として一方にあって、それから個別の税目に入っていくと、非常にわかりやすいような感じがするんです。例えば答申を書く場合もね。

どうも、個別にやりますと、全体像が見えない。やはり全体像としてどうあるべきか。そこで消費税というのが出てくるかもしれませんけれども、やはりそこのところは、我々はよくわからないわけで、税を専門とする先生方、そこだけわかりやすく構築するような、簡単に三次元のマトリックスになるのかわかりませんけれども、そういうことができるものかどうかが1つです。

あとは今の現状です。私が一番課税、徴税する側の近いところにいるんですけれども、今、高木委員が言ったパンフレットの問題です。納税通知書が発行されましたので、盛んに私ども市役所のところにも、問い合わせがばんばん来ています。それなりに、かなり去年の暮れからずっとPR、広報、テレビなんかでやっていますけれども、税源移譲のところは説明すればわかります。

結局、今、高木会長が言ったように、定率減税の方を大きく書けよと、それを先に書けばわかるんだと、それを小さく書くから何となく腹立たしいと、大体こんな感じがクレームの大半であります。これは意見とかではなくて、そういう感じなんです。高くする場合は、そのところを早く書けよと、小さく書くなというのが大体国民の一般的な意見だと思います。

それと、今、この中に税と社会保障の問題が出ています。実は、この中では例えば国保税というのは税なのかというのは、純粋には税ではないわけですけれども、あれも国保税という名前なんです。そして、これは税ではありませんが、介護保険、税がちょっとやそっと動く以上に、国保税と介護保険が異常な高さで上がっていっているわけです。そうすると、年金生活者の高齢者は、負担の大半がここなんです。ですから、そこをどうするかということです。

それがこの格差との問題に関連するんですけれども、これは完全に、私の方の市はまだ何とか持ちこたえているんですけれども、小さな村、町になりますと、農業からは税金は上がらないんです。固定資産税も上がらないし、農業所得からそもそも税金は上がらないんです。固定資産税も上がらない。そうしますと、小さな町、村へ行きますと、税金を払うのは役場の職員と農協の職員になります。固定資産税に至っては、大体東京の1平米が、あのぐらいの固定資産税は大体そういうところへ行くと、10ヘクタールぐらいなんです。その状況の中で、ここでも交付税がかなりの額で減少した。ということは、そういう小さい村、町では、とても国保税あるいは介護保険料というのは、これは一定のルールで一般財源から入れるルールはその中でしかできませんけれども、それすらできなくなっている。これがやはり格差の議論の原点なんです。

そういうことからしますと、今の格差論議の、最近、マスコミの論調あるいは先生方の論調でも、やはり交付税制度というのはいい制度だなとなったら、今の現実の世界に合わせて制度設計もし直さなければならないけれども、交付税制度が変な形で圧縮され過ぎて、これが格差の一番の問題の原点になっています。

問題は、今度は都市との税源の移動ですけれども、これはこれからの問題で、また戻りますけれども、諮問に対してで答申を書くときには、やはり税の全体論を我々税調として議論して、経済財政諮問会議はこれはこれですから、税調としてどうあるべきかということを論理的にきっちりやりながら個別税目に触れる、そういう王道を進むのも必要かなと思います。

経済財政諮問会議に対しては、最近大分、これは必要なのかどうかという話も出ているんです。税調は必要ですけれども、経済財政諮問会議はなくてもいいんですとか、そんなところが大体の地方の声です。

香西会長

とても革新的な御提言といいますか、ご発言でした。どうぞ。

江川委員

私は、税調は今回初めてなんですけれども、一番最初の会合に出席したときに、前からやっておられる方が、税の論議はとにかくどうやって国民に納得してもらえるかというのが非常に重要ですということを何人かの方がおっしゃっておられたのが、非常に印象的でした。

その観点から考えたときに、今年の答申というのは、いろんな意味でハードルが高いなと思っておりまして、今、年金問題で、国民の信頼も低下しておりますし、それから何人かの方がおっしゃったように、参院選の後に本格的なディスカッションを先送りしたというようなこととか、去年の暮れぐらいに法人税の引き下げの話ばかりがクローズアップされたとか、そういったようなことで、割合本質的なことを逃げているというか、やはり何となく不信感みたいなものが国民の間にあるのではないかと思うので、そういったことは非常に注意して、いろいろ考えながら議論していくことが必要だと思います。

どうやって納得感が高められるかということを考えたときに、2つあるかなというふうに思っていまして、1つは徴収体制とか、そういった透明感、あるいは執行をきちんとするということが当然だと思うんですが、もう一つは、やはり受益と負担の関係をわかりやすくする。今は、個々人でどういうふうに使われているのかわかりにくいというのが非常に不満の大きな源泉かなと感じています。

その中で、やはり地方分権というのが重要だと思っていまして、なぜかというと、ある程度地方で税金を取って、それが地方で使われるということになると、やはり中央政府でやっているよりはもう少し目が行き届くというところがあるので、そういう観点からも私は地方分権というのはすごく重要だと思います。

今、地方分権というのは、各地域が競争して、それがいい方向になるんだというような観点からも論じられていて、それもすごく重要だと思いますけれども、今、佐竹委員がおっしゃったような再配分ということもきちんと考えて、その仕組みをつくっていくということは重要なのではないかと思います。

今、本社のあるところで、例えば企業の法人税を取るとか、そういうようなことで、どうしてもアンバランスが生じる構造になっているので、これをどういうふうにある程度継続可能な、きちんとバランスの取れたものをつくっていくかということで、本質的なことを考えるべきではないかと思います。

それに絡めて「ふるさと納税」というのは、私は新聞で拝見しているだけなので、素人感覚かもしれませんけれども、ちょっと疑問に思うのは、観点として地方への再配分をすべきだというのは、私はそうすべきだと思うんですけれども「ふるさと納税」のような形で個人が恣意的にやるというやり方でやるのが長期的にいいのかという疑問を持ちました。というのは、個人の裁量によって、割合と税源が簡単に移譲してしまったりということで恣意性が入ったり、あるいは不安定になってしまったりといったことが、本当に長期的にサステイナブルなのかということもありますし、それから、例えばたくさん税金を納める人には、うちの方でやってくださいというようなことを、みんなが一生懸命お願いをするというような、ある意味で全体として税収は変わらないのに、それをどこにやるかということを取り合いをするために、いろんな人がエネルギーを使うというのも、何か無駄のような気がしたので、その2点から再配分もきちんと考えた上で、再配分の観点と、それから受益と負担の関係がきちんと見えるという、その両方をきちんと考えた上で、地方との税源移譲の観点をと考えていくべきだと思います。

香西会長

どうもありがとうございました。ほかにございますか。

井上委員、どうぞ。

井上特別委員

先ほど佐竹さんからお話がありました全体像としてということと、地方で農業の中心のところは税収がないという話もあるんですけれども、どうも我々企業家からすると、地方の努力が足りないんではないのかというような感じも受けるわけです。企業誘致だとか、そういうものを本当にどこまでやっているのか。農業は補助金がもらえ、ともかく我々中小企業なんていうのは補助金もほとんどない。そういう状況で食うや食わずで一所懸命努力をしてやってきているというようなことを考えると、もともとそういう点では単なる交付金をもらうようなことを考えず、地方は地方でもっと努力すべきことがたくさんあるのではないかという感じを持っています。

ただ、全体像をということは非常に賛成なことであるわけです。そこから細かく検討していくべきだろうと思います。要するに税の基になっている簡素公平というんですけれども、簡素ということについても今の複雑な税目、大変な数がありますね。これで何が簡素なのかなというような感じも、素人からすればするわけです。ですから、そういうものだって、もっともっと検討し直す必要があるのではないかと思います。

それと、やはり企業の成長というのは非常に大事であって、それによって税収というのが上がるというのは、当然我々も考えられるわけですけれども、ただ、企業を成長させるための税法というのを、やはりもっと真剣に考えていただきたい。大企業の場合は、それなりに、今、非常に成果が出ています。4期連続最高益を上げているというように非常にいい結果が出ていることは事実なわけですけれども、片や中小企業を見たらどうなのか。3,800万人の雇用を抱えている中小企業が、まだまだ厳しい状況にあるというのは何でなのかということが1つあります。

これは、税制でも留保金課税、これがずっと押さえてきた。これを田近先生に言うと、とんでもないということを言われるかもしれませんけれども、とんでもない税を継続してきた。これがやっと解消をしてもらえた。

次には、事業承継税制。要するに資産というものから、すべて相続時に税として巻き上げていくという仕組み、これはやはり企業を継続させない、その企業を大きくさせることをさせない仕組みであると、私ははっきり言えると思うんです。それがために、倒産、閉鎖が27万社ある。そのうちの9万社というのは後の事業承継ができなくて、もう廃業するんだという経営者がいっぱい増えているということがあります。

そういうことから、やはり事業承継税制というのは、もっと真剣に考えて、どうやって中小企業を継続、発展させるかということを考えていかなければならないことだろうと思うので、是非ともそういうものは真剣に取り上げてもらいたい。世の中の状況が随分変わってきました。昔と今とは違います。時代の変遷とともに、そういうものを是非とも検討していくべきであろうと思います。

それから、今日は猪瀬委員がおられないので、特別会計の問題、これについても、要するに直接歳入というのは八十何兆ということですけれども、特別会計は大変な金額。では、あれは一体どうなっているのか。聞くところによれば、10兆円も無駄遣いがされているんではないかということも聞きますし、また、使い道がなくて、1年に二兆何千億円が繰越しだとか、そういうようなことが行われておるということについては、やはりそれなりに税調としても突っ込んで研究をする必要があるのではないのかと思います。

ともかく、企業が発展しないと、それなりに雇用を確保し、給料を上げることができないわけでして、下の格差ということはよく言われますが、企業がよくなれば、給料も上げられる。上げれば格差もだんだんと縮まっていくということになるんではないかと思うので、その点も御考慮して検討をお願いしたいと思います。

佐竹特別委員

一言だけ、井上委員、私自身は、昔、商工関係の仕事をずっとしていまして、商工業振興派なんです。ただ、今、お話ししたのは、地方の、中都市よりも更にまた村に行きますと、60歳以上の人しかいない、企業誘致だってできそうもない、こういうところが結構残されているんです。やや社会保障に近いんですけれども、我々地方は地方で頑張らなければならないんですけれども、最も末端のところが、最近かなり増えてきている。これはどうしようもない。65歳以上だけれども、集落の人にどうにかしろといったって無理ですし、そこではもう農業もできなくなっている。こういうところがどんどん増えているんです。限界集落みたいなものです。

やはり、こういうところは見捨てるべきではないだろう。ただ、これは社会保障になるのかどうかわかりませんけれども、やはりそこら辺がどうしても地方財政の疲弊の中でどうしても手当が行き届かなくなってきていることはたしかです。ただ、それぞれ地方が頑張らなければならないということは当然です。そこだけ誤解のないようにお願いします。

香西会長

ちょっと順番が狂うかもしれませんが、上月委員、江上委員、林委員が手を挙げておられますが、ほかにまだいらっしゃいますか、辻山委員、御船委員ですね。では、今、名前を言った順序でお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

上月特別委員

骨太の方針の中に、納税者の立場に立つというのがありますけれども、実際に納税者の立場から見ますと、予測可能性といいますか、これから税制は一体どうなるんだろうかということが非常に重大な関心事だと思うんです。

そういう意味では、私もここへ出させていただいていますけれども、まだ、なかなか税調としてのスタンスというか、例えば財政再建は入るのか、入らないのか、あるいは大きな政府で行くのか、小さな政府で行くのか、いろいろ基本的なスタンスというのが必要だと思うんです。

その上で、先ほど来、皆さんの御意見に出ていますけれども、税制をどうするのか、全体像をどうするのかというのが、やはり出てこないと、なかなか皆さんは参議院選挙が済めば、多分消費税が上がるんでしょうというようなことを勝手に言っていますけれども、では、今、税制のこの議論を聞いていて、国民の皆さんが、将来どうなるだろうかということが果たして読めるのかというと、なかなか読めない。今、政府税調の立場としては、なかなかそんなことを言えないのかもしれませんけれども、そういうことを考えながら、希望としては、できればこういう方向性なんだという方向だけでも示すことができれば、非常にありがたいと、私はそう思っています。

香西会長

税調は私も初めてなんですけれども、従来は中期答申というのがありまして、何年度の税制改革のほかに、中期的にはこうあるべきだということを3年に1回ずつぐらい、任期に1回はそれを卒業論文として残していくという形で中期と毎年の動きとを書き分けてきたという伝統があったのではないかと、私は想像しております。

今回は、中期と来年とがこんがらかっているかもわかりませんので、おっしゃるように、税制というのは、一つのインフラストラクチャーですから、それが大きく変わるというか、どっちに変わるかというのは、皆さんにとって非常に大きな問題である。予測ができるということが税制のいいところであって、行政指導では予測ができないわけですから、そういう点は十分注意してまいりたいと思います。

次に、江上さん、お願いします。

江上委員

江上でございます。今、会長が税制は1つのインフラだとおっしゃられました。私も鉄道産業と鉄道の完全民営化ということの活動、それから今、NHK、公共放送が本当に必要なのか、NHKがこれからどうあるべきかという、その事業評価の仕事をしております。そういう意味では、放送のインフラと鉄道のインフラと駅のインフラと、こういうところで税制というのは何なんだろうと考え合わせながら、今まで議論を拝聴してまいりました。

大変専門委員の方々の発表は勉強になったんですけれども、私は初めて税調に参加させていただいて、自分はどういう役割、観点から貢献できるんだろうかということを考えておりましたんですが、今回の税制改革の基本哲学、今、上月委員がおっしゃったことに並びますが、納税者の立場に立つということが、諮問にもはっきり出ております。

そういう意味では、経済社会の変化という部分では、たくさんの分析研究が発表されたかと思うんですけれども、もしかしたら、そういう研究調査はたくさんあるんだと思うんですけれども、私は素人ですから存じ上げないんですが、税制に関する国民の満足度とか意識とか、理解度とか、そういったものをあらゆる角度から定量的に、あるいは定性的に分析したものが、多分おありになるんだろうし、そういう研究をされている方もいっぱいいらっしゃると思うんですけれども、国民の満足度、理解度、納得度、これについては徹底した分析、議論というのが、この税調でもあってしかるべきなんではないかなと思います。

やはり、税が国の活力をこれから維持していくために、どうあるべきかということで言えば、国の活力というのは、取りも直さず、やはり国民の満足度を上げていくことでしか実現できないわけで、そういう意味では、国民というものの立場が、今、大きく過去の経済社会システムから変わってきているんだと思うんです。やはり15年ぐらいのおびただしい法制度の変革、消費者保護基本法も、やはり改正されて国民の自立という方向になりました。労働法制も自由化になって会社法も変わり、そういう意味では国民が自立するというような形で政府行政、民間企業との力関係が変わっていくんだと思います。

それで、どなたかグランドデザインというお話もございましたが、日本国内にあるリソースが大きく組み換わる中で、やはり税制がどうあるべきか。国民は本当に目先の政策税制ではなくて、中長期のそういった方向を一番知りたがっていると思います。そういう意味では、大橋委員がいつも国家感が大事だというふうにおっしゃっている政治的課題になってしまうわけですけれども、税調の専門的な立場の議論からも国家感の仕組みを変える上でも、やはり何がしかのシナリオというものを幾つか是非つくっていただきたいという感じがいたします。

それから、企業の法人税を引き下げるということが議論にたくさん出ているわけですけれども、勿論、私も産業界に密着しておりますので、企業の活性化をするために、その方策は必要だと思いますが、従来は、企業の活力イコール国民の活力につながっていたわけですけれども、やはり必ずしもこれからはそうではない。それから、企業に活力を与えるためには、今はサービス化というのはここまで進んでおりますから、やはり人間に活力を与えないと、企業も活力が出ない。産業、事業の正確が変わっておりますから、人間の知的資源を、いかに活力を与える方向に環境整備をしていくか。そういうことを考えますと、やはり法人税と所得税の在り方ということを大きく踏み込んでいかなければいけないかなと思っております。

それから、政策税制は極めて短期的な課題が明確なことについては、非常に効果があると思うんですけれども、国民的な「ふるさと納税」のようなものは、耳障りは確かにいいんですが、どうしてもポピュリズムの政治的なツールに傾きがちなところもあります。先ほど江川委員が言ったデメリットもありますし、こういうような政策税制を短期的に積み上げていくと、やはり税制がどんどん複雑になって、複雑な税制というのは、税制度そのものを脆弱化させるというような方向になると思います。そういう意味では、今まであるいろんな税制をここは大胆にスクラップ・アンド・ビルドをするということは、税調として提案の柱の1つにしてよろしいんではないかと思います。

香西会長

どうもありがとうございました。林委員からお願いします。

林委員

新しく税調ができ上がって、まだ間がないわけですが、これまでの税調の中で行われてきた議論をこの審議の中でどのように位置づけるかということが、非常に私はまだよくわからない部分があって、この基本方針の中で盛り込まれているような哲学も、例えばあるべき税制では、もう既に言われていて、そして具体的にあるべき税制に基づいた形で所得税の論点整理までやったわけです。

そこでは、多様なライフスタイルに対して中立的であるべきだということを基準にして、では控除の在り方はどうするかということまで議論をしてまいりました。

ですから、この辺り、あるべき税制、そしてこれまでに議論されてきたことを御破算にして、またゼロからやるのか。あるいは当時から、例えば税制の哲学にしても、やはりもっと成長に力点を置こうじゃないかとか、あるいは当時から比べると格差が広がっているとか、そういったような社会的な状況の変化が起こっているのかどうか。あるいは起こっていないとするならば、その当時に出されたさまざまな税に関する議論あるいは提案、それをどのように受け止めていくのか、この辺りが、ちょっと私は、勿論経済に対して法人税がどのような影響を与えるかということは当然重要なことですが、一方で広く薄くといったようなことで、法人税制も議論されてまいりましたし、金融税制も具体的な損益通算をどこまでするかといったようなところまで議論が行われている。

こういうことをもう一度最初から議論するのか、あるいはその辺りで時代が変わったから、また変えようというふうに、もう一度そこをおさらいしていくのか、その辺りの整理も必要なのではないかという感じがしております。私はあるべき税制のときには議論に入っておりませんでしたが、その後の審議では、それは踏まえた形になっているので、その辺をどうするかということも一度意見の集約というのが必要なのかなという気がします。

香西会長

ほかに、まだ御発言のない方、では御船さん、お願いします。

御船委員

3点申し上げたくて手を挙げました。1点は環境税ということを税体系全体の中で、どういうふうに位置づけるかという議論が、まだちょっとないのかなというふうに思います。それは、先ほどから議論がある成長というもので、どういう成長にするのかということと非常に関係していて、環境税の素養は全然ないんですけれども、その点をいまや入れざるを得ないし、それはグローバル化ということの内容です。資本移動とか、そういうことだけではなくて、ヨーロッパなんかでもう導入されているようなことと、これからのアジアとの関係を考えるときに、日本がどういうふうに環境税を税体系の中で位置づけるかということ。これは是非必要ではないかということが1つ。

2つ目なんですけれども、先ほどから法人税がどういうふうに帰着するかということと関わると思うんですけれども、法人税で法人の活力が高まると、それが最終的には家計に何らかのメリットを得る。それは正しいとは思うんですが、それはマスの話であって、やはりどういう影響があるのかというのは、かなり違うので、それをこうだからこうというふうにしてダイレクトには議論できないので、やはり家計という形とか、あるいは個人という形にどういう影響を及ぼすかというのは、かなり今までの蓄積があるかと思いますので、その影響も踏まえたような形で考えていく必要があるのではないかということが第2番目。

3番目は、私は、江川委員がおっしゃっていた受益と負担というようなことは、家計の側では非常に重要で、私は家計分析を一応主たる専攻にしているんですけれども、家計の場合には、非消費支出というくくりをするわけです。これは税金と社会保険料、これがあって理論的には支払利子も含めるんですけれども、家計が自分の納得した形で配分するのではなくて、言わば取られるもの。

その家計の実収入から非消費支出を除いたものが可処分所得である。可処分所得をどういうふうにしようかというときに、貯蓄をしたり消費をする。消費税というのは消費の中に入ってしまっているということで、家計の負担感というのが、随分消費税と所得税など、あるいは所得税と社会保険料は同じようなレベルでとらえられる。

税調は、税を議論するので、家計にとっては違う種類のものを議論している。そのときに、ちょっと話がそれる印象があるかもしれませんが、以前に家計経済研究所というところでパネル調査をしたときに、女性に対する税金の控除の中で、配偶者控除というのがあるわけですけれども、その配偶者控除を続けるべきかどうかという話をしたときに、働いている女性も、それは廃止しない方がいいという意見が結構あったんです。

それで、どうしてなんだろうかということが私の問題関心で、これは女性が必ずしもずっと働くわけではないので、働けなくなったときに税の負担が少ない方が安定的だという家計の行動というのがあって、やはり先ほどどなたかが、やはり長期的に税金が安定的にどうなるかということが示されれば、家計はいろいろな工夫をして行動する。

ですので、長期的な展望でどういうふうになるかということがある程度示されるということが非常に必要かと思います。ただ単に高いとか低いとか取られるということではなくて、生涯を経営するので、そういう意味では長期的なものがあれば、多少高くても納得感があるし、その納得感を得るためには、そういう長期的なものの整備、そして定率減税の話がありましたけれども、余り景気によってぐらぐら変わるというようなことよりも、やはりそんなものはなくて、長期的にこうなるというようなものの方が家計にとってはわかりやすいし、また、今回のようなアナウンスをする必要もないわけで、ある程度安定的な税制がいいのかなと思っています。

以上です。済みません、長くなりました。

香西会長

いえ、とんでもありません。辻山さん、お願いしていいでしょうか。

辻山特別委員

手短に2点申し上げたいと思うんですが、これは今日の最初の議論にもあるんですが、租税原則のことについて、この税調でも話していくということなんですが、今、俎上に上っております中立と成長。これは果たして相互に入れ替えるべきものなのかどうか、そもそも中立とは何だったんだろうかと考えますと、もともと言われていたのは、国民の選択に対して中立的である。中立的でありながら成長を促していく、成長も妨げないという意味だったはずなんです。

ですから、むしろ中立と成長あるいは活力というか、活性化というのは、コンパティブルなものなんではないかという考えです。

したがいまして、そういう視点から見ますと、成長とか活力というのは、総論が3つの公平・中立・簡素だとすると、その中の各論のレベル。ですから、各論のレベルを租税原則と入れ替えるということについては慎重であるべきだというのが1点目です。

2点目につきましては、今、何人かの委員がおっしゃったように、これから納税の満足度というのを考えていくときに、どういうことが満足度につながるのかということは、徴税の透明性であるとか、ディスクロージャー、これは当然なんですけれども、やはりそれがいずれどういうふうに給付につながるのか、あるいは受益につながるのか、そことセットで情報公開されないと満足度につながらないのかなと思います。

以上2点です。

香西会長

翁さんと横山委員どうぞ。

翁委員

私の方から2点申し上げたいと思うんですけれども、皆さんがおっしゃっていたように、やはり納税者の立場に立って議論していくということが非常に重要で、その点では、やはりある程度中期的な予測可能性というか、税制が今後どういうふうに変化していくのかということがある程度見えるような、そういった議論もしていかなければいけないし、プレゼンテーションもしていかなければいけないということだと思います。

やはり漠然と社会保障財源に対する中長期的な不安というのは、国民全体が持っているものですし、それに対してどういう財源で対応していくのか、そういったときに、税体系全体として、例えば所得税などを、どういうふうに位置づけて、例えば若年層とか子育て世代とか、そういったところに対してどういう対応をしていくのかというような目配りの利いた議論をしていくことが極めて重要ではないかと思っているのが1つです。

もう一つは、成長という観点では、法人税減税の議論で、これもきちんとこれからしていく必要があると思っているんですけれども、同時に骨太の中でも触れられているんですけれども、例えば確定拠出型年金とか、こういったこともかなりいろいろな議論があるんですけれども、相当インパクトを与えるというふうに言われておりまして、やはり日本経済において日本の企業の価値をどんどん向上させていくインフラとして、資本市場とか投資家をきちんと強くしていくということを考えていきますと、こういった面から成長を支援するインフラとして、それをどういうふうに税制で考えていくかということについても議論が必要ではないかと思っております。

香西会長

もう時間がありませんが、どうぞお願いします。

横山委員

私、最初にお話ししたんですけれども、やはり税制は政府税調だけが議論するものではなくて、広くいろいろな納税者あるいは関係する機関が議論していっていいんだろうと思います。

そういう中で、例えば「ふるさと納税」については、筋悪論がいろいろ言われておって、今日も御意見があったわけですけれども、そういういろんな御意見の中で、どういうふうにすれば、論理的あるいは整合性を持つのかということもやはり検討していくのが、この政府税調の在り方なんではないか。いろんな御意見が出てきた中で、そこでやはり首尾一貫して成長それから公平、そういうものに照らしてどうなのかということだろうと思うんです。

例えば「ふるさと納税」について言うならば、1つは、今の地方政府間の税源のやりとりみたいな形だからおかしくなるので、所得税の一部を納税者主権に基づいて自分の大切にしている、あるいは自分が考えている地方に振り替えて、あとは交付税で調整するとか、工夫のしようで活力が上がってくる可能性も考えられるんではないか。そういうことで、いろいろなことをこれから考えていかなければいけないんだろうと思います。

ただ、成長ということが、やはり私は非常に重要な観点だと思います。どなたかおっしゃったように、専門委員のプレゼンテーションでも中立と成長が同じものなのかどうかという御議論もあって、それは違うということがあったので、そこはやはり詰めておく必要があるんではないかと思います。それから、成長の中で地方の活力というようなものと、成長をどうやって考えるのかということですが、私は今までグローバル化といったときに、国際競争力の観点で、どちらかというと、大手の企業の成長ということを考えていますが、そうではなくて、井上委員が言われたように、中小企業等の成長、セクターごとの成長というんでしょうか、そういうようなものも、やはり今後必要になってくるのかなと思いました。

以上です。

香西会長

高木委員、お願いします。

高木特別委員

1点は、後ほどちゃんとクラリファイしていただいたらいいと思います。納税者というのはだれのことを言うのかということをお互いによく吟味して議論しないと、こういう何となくわかって、きれいな言葉というのは、すぐだまされる。その歴史を嫌というほど味わってきたということがございますので、納税者という言葉は大切にしたいと思いますが、よく吟味をして、場所場所できちんと使わないとだめではないかと思います。

それから、そもそも政府税調のミッションとは何だということで、2日ほど前ですか、財政制度等審議会で概算要求等に向けての来年度予算編成に関する建議書がまとめられまして、その中でも、例えば社会保障と、とりわけ基礎年金の財源問題等の上で、要は税調にちゃんと財源を用意してこいよということが書いてあるわけです。香西先生も大分怒っておられましたが、ああいうことが一方でいろんなところで言われたり、書かれたりする中で、この骨太の方針の中にも与党税制改正大綱を踏まえることとするなんて書いてあるし、そんなことも含めて、ここで我々が果たさなければいけない最小限のミッションは何なんだと、そういうふうにとらえられないようなものは議論したって余り意味がないんじゃないかなという感じもしないでもありません。

そういう意味では、田近先生は、財制審でも税調でも大変重要なお役割を担っておられますし、そんなことも含めて、ああいうものとの兼ね合いを我々がどう考えていくのかというのも一応頭に置いて今後議論していく必要があるんではないか。

香西先生が頑張られたのはよく存じておりますが、そんな感じがありますので、あえて申し上げさせていただきました。

香西会長

本日は、フリーディスカッションということで、どういうことになるかは全く予測がつかなかったわけですが、やってみて非常に有益な御意見がたくさん出てきたと思っております。できれば、こういう機会はこれからも失いたくないし、皆さんもたくさん御意見があるので、できれば会議がなくても、メモでも何でもいいですから、私の方に是非出していただいて、コミュニケーションをもう少し密にさせていただければ大変ありがたいというのが私の感想であります。

それから、先ほどもちょっと申しましたが、納税者というのは軽々しく使ってはいけないんですけれども、執行体制とか、いわゆる納税者に関わる問題について、少し勉強したいということを考えておりまして、何人かの委員の方に参加をお約束していただいているんですけれども、今日、その議論がかなり出ましたから、今からでも参加希望があれば、私の方にでも御連絡いただければと思います。来週から非公式の勉強会を始めるつもりでおりますので、よろしくお願いします。

それから、今日の中では、やはり秋山委員から始まって、グレートデザインというか、グラウンドスケジュールというか、そういうものが絶対に必要だという御議論がありまして、それは財政学者に期待されているということになるかと思うので、それは我が税調の有する優秀極まりない財政学者が、まず、いろいろ知恵を出してくれるんではないかということを私としては期待をしたいということでございます。

ただ、率直に言って、小さい政府がいいか、大きな政府がいいかというような議論になると、これは決闘でもするしかしようがないということになるわけでして、マックス・ウェーバー流に言えば、神と神との永劫の闘争であるということになり兼ねないんです。

税調というのは、先ほどからいろいろ議論が出ていますが、税の議論というのは、そもそも国会でやるのが本筋のものであって、政党と政党の間でやるのが本筋であって、我々はその中で、ここがおれたちの縄張りだから入ってくるななんて言えるものではない、そういうものだということを初めから覚悟していかなければいけない。

その中で、何で特色を発揮するかと言えば、若干人々の意見は違うけれども、いろいろ議論した結果、とりあえず、こういうことで考えたらどうかということを提示することが基本的な役割だと私は理解しておりますので、どうも税に関することを独占するということは考えない方がいいと私は思っております。

党税調だって、これは党の生命がかかっているわけですから、彼らの選挙のための行動を軽々しく、どちらの党に対しても議論するということは、私ども税調の仕事ではないと思っているということであります。

税というのは、憲法によって、法律によって取るものということですから、国会が最大の責任を持っていることは間違いのないことだと考えております。

ただ、税の内容について、こういうまとめ方はどうかという案を示して、受け入れられてもいいし、受けられなくてもいいということでいいのではないかと思っております。できるだけ受け入れられるように努力をしたいということであります。

本日は、大変私にとっても勉強になりました。さて、今後の予定ですが、現在、予定されておりますのは、6月15日金曜日、2時から4時でございますけれども、これは一応、調査分析部会として会合を予定しております。

次に、6月22日金曜日、7月13日金曜日、いずれも調査分析部会を開催するという形で、従来と同じように、残っている調査テーマについてのプレゼンテーションがあり、議論があります。

7月に入ってきますと、先ほどから申しておりますように、だんだん諮問に対する答申を準備するスタイルに、会議のやり方も変えていかなければならないだろうと思いますが、それは7月か8月かわかりませんけれども、夏のうちに、その体制を準備するという形になるのではないかと考えております。

本日の会合は、こういう形で一応終わらせていただきたいと思いますが、本当に有意義な御意見をたくさんいただきました。 そう言えば、会長代理の神野先生からの御意見をまだ全然聞いていないので、一言聞いて解散しようと思いますが、いかがでしょうか。

神野会長代理

今日は多くの意見を出していただいたのは、部分ではなく全体をという、非常に重要な問題提起をしていただいたと思います。私のやっている財政学では、税体系論というのは非常に難しくて、100年前の税体系と今の税体系と全く違うわけです。まさに、それは社会構造の変化に伴って変わっているので、私たちが、今、まさに検討しているテーマが税体系論、つまり社会構造の変化に対応して、次にどういう税体系をつくるのかということを踏まえながら、個々の税目を議論していかなければいけないんだろうと思うんです。あと、重要な点は、我々財政学者の立場からいうと、先ほど松山審議官が御指摘になったように、6つの哲学というのは、それぞれ衝突する場合がある。これは我々の議論でいくと、課税目的の衝突と言っているんですが、課税目的というのは、それぞれ衝突するんです。ですから、それをいかに組み合わせるかということで、だれにも未来はわからないので、ここで知恵を絞るしかないかなと思います。

かつ、その上で、一面でいうと、税制というのは安定的であるというのが盛んに指摘されましたが、フランスのカナールという有名な財政学者が言っている言葉で、旧税は良税なり、古い税金はいい税金なんだと、ですから変えるなという主張まであるんです。しかし、私たちは社会構造が大きく変わるときには変えていかざるを得ないだろう。ただ、安定的に据えていかないと、国民の経済行動は混乱するだろうということを踏まえてやらざるを得ないかなというのが感想でございます。

香西会長

どうもありがとうございました。ちょうどいい締めくくりの言葉をいただいたと思いますので、本日は、これで解散とします。

どうも御協力ありがとうございました。

〔閉会〕

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため、速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。