企画会合(第6回)・調査分析部会(第1回)終了後の香西会長・田近部会長記者会見録

日時:平成19年3月9日(金)16時24分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、ただ今から記者会見を行います。

まず初めに、本日就任されました田近部会長からご挨拶がありますので、よろしくお願いいたします。

田近部会長

一橋の田近です。よろしくお願いします。

今日、調査分析部会長に選ばれましたけれども、部会で申し上げたように、私からお願いしたいというか、この会の意義、運営の仕方ですが、税調として年度末の答申のときに答えを出すだけではなくて、当然、それに至る過程できちんとした調査分析は必要だと。それから、あの場でも言いましたけれども、税調というのは3年任期で、3年の終わりのときに宿題のように「中期答申」というのを出しています。ご覧になっていただくとおわかりになるのですけれども、特に昔のは大変な仕事をしたものがそろっています。そういうことで、現香西会長のときもそのような中期答申に至ればいいなと思っています。それが第一です。

それから、部会を進める上で新しい専門委員にも加わっていただきました。しかし、既にいらっしゃる委員も遠慮なく加わっていただいて議論していきたい。

その2点が、私が引き受けた上での考えと進め方に関して、いま現在思っているものです。

以上です。

司会

ありがとうございました。

それでは、ご質問のある方はどうぞ。

質問

今日の会合の中でアジアへの出張というお話もあったと思いますけれども、具体的にどういった国を想定されていらっしゃるのか、イメージがあれば教えていただきたいと思います。

田近部会長

これは記者会見とはちょっとはずれるのですけれども、実は私は3月4日から昨日まで北京に行っていました。今年の全人代は、企業課税改革、実は国内と国外の資本の課税の統一化というのが大問題で、物権法と企業課税改革が2大イッシューでやっているのですけれども、申し上げたいのは、我々も関心はあるけれども彼らも関心がある。戦々恐々としていて、どういう形で変えていくかと。私自身はこういう仕事をしているので、シンガポールもタイもベトナムも全部行っていますけれども、税調としてもぜひ、我々のほうから、日本の企業がどう進出しているのかというのは当然で、その進出の仕方もどのように発展しているか。それと同時に、ぜひ見てきてもらいたいのは、向こうも戦々恐々としているので、それについても取り組んでもらいたい。どの国かというのはまだこれから--というか、私がどこへ行けと言うわけにはいきませんから、そういうことで詰めていきたいということで、両方の視点が重要かなと思います。

司会

どうぞ。

質問

今日の議論の中で、消費税について、これまでもいろいろな学術的な蓄積があるので、この件についても調査分析してはいかがかという話があったかと思いますが、これは行われることになるのか。もし行う場合は、3つの分類の中のどちらになるかということを教えていただけますか。

田近部会長

この3つの分類で、先ほど香西会長とも話していて、議論がそこに集中し過ぎたかなという感じがして、早い話、例えば格差の問題はおそらく吉川先生のところで議論するのでしょうけれども、そこを議論するときも、じゃ課税ベースはどうしたらいいんですかとか、先ほど税額控除の話とかありました。そこと関連するので、どこでというのは、正直言ってまだやってみなければわからない。ただ、それぞれの人が属しているところはありますから、そこで議論は持ち上げるのかなと。

個人所得税、法人税、そして消費税、いずれも国税ですから、当然議論しますが、消費税も全体的な改革の中で問題を挙げていくということで、正直言って、どの部会で誰がというのは詰まっていない。ただ、当然これも議論の対象にはなると思います。

質問

香西会長にお伺いしたいのですが、経済財政諮問会議との関係です。「骨太の方針」が6月にまとまる。それに税調の議論も反映させたいという意向のようで、税調の議論を4月に報告してほしいという要請があったと思いますけれども、今後のスケジュールを見てそういうことが可能なのか、あるいは、どこまで報告できるというふうにお考えなのかをお聞かせください。

香西会長

この問題は前会長のときから話が起こっていたわけでして、当初は諮問会議のほうから出てきて話してくれと言われたというふうに理解しています。それについて本間前会長も、どこまでできるのかなあという気持ちで、とにかくスタートしてやってみて、やれるところまでやってその上で考えたらいいのだろう、というふうに感想を漏らしておられたと私は聞いておりまして、今度のことについてもそういうことになるだろうと思います。あとわずかしかありませんけれども、あと2回ぐらいは会合が開かれるわけで、間に合うのではないかと思いますから、その間に出てきた議論で、多少とも方向性が出てきたことについて、まず第一は、今どういうことをしているかということのご紹介があるわけです。その中で、秋以降の本格的・具体的議論について、それにつながりやすい論点としてどういうことがあるかということを紹介することではないかと私は思っております。

政策、例えば消費税を上げるとか上げないとか、そういう話はしなくてもいい段階であるというふうに理解しているわけです。つまり本格的・具体的な議論は秋以降になっているわけですから、その範囲で、しかし、秋以降やることも一方で明らかになっているわけでして、そこに至る過程で、今まで税調として議論している範囲で言えばこういう問題が秋以降の議論にも尾を引くだろう、ということをご報告することではないかと思っております。まあ、やってみないとわかりませんけれども、ない袖は振れないということで、突然何かいい案が出てくるということでもないわけです。

ただ、今日の議論を聞いていましても、皆さん非常に積極的ですから、いろいろな議論が出てくることは間違いないので、それの一端をご紹介するということになるのではないかと思います。

質問

先ほど、アジアへの調査の件で企業の話をされていましたけれども、アジアは、ご存じのとおり証券市場の税制が非常にコンペティティブでありまして、キャピタルゲインの課税等がない。IPOなどでも香港市場がニューヨーク市場を抜いてしまう、そういう状況があって、東京もかなり遅れている状況だと思いますが、そういった証券税制の調査みたいなものも入ってくるのでしょうか。

田近部会長

これから相談なので、この段階で入る、入らないの議論はあまり生産的でないですけれども、それも含めて議論する。私、実はベトナムの税制改革のプロポーザルを書いたり、一緒にやったりして、そういう問題も考えているのですけれども、日本がちょうど戦後、シャウプ勧告の後に有価証券の売却を非課税にしましたね。それから総合課税、いろいろなプロセスで変わってきたということで、経済発展のプロセスの中で税制を考えていく視点は重要だと思います。

ただ、私が今思うのは、グローバル化していますから、新しい視点に立てば、時間のシークエンスで税制を立てていくというのもふさわしくないのかもしれない。そういう意味でキャピタル・インカムタックスに関しても、アジアから刺激を我々は受けることがあるかもしれないので、イッシューとしてはオープンですけれども、問題を見ながら考えていくということだと思います。

質問

調査分析部会のスケジュールというか、進め方ですが、今、部会長は中期答申を一つのメドみたいな形でお話しされました。それよりも前に来るものとして、今年の秋以降に向けて役立つ論点をということで、調査分析をするというお話もあったと思いますけれども、例えば秋までに報告書みたいなものを出すのかとか、そういう今後の進め方について教えてください。

田近部会長

最初に、税調での調査分析部会というのはどうあるべきなのかということで全体的な話をしましたけれども、今、足元の集まりは、基本的には来年度答申に向けてのいろいろなアイデアを募るということで、時間は、やってみないとわかりませんけれども、秋ぐらいをメドに考える。とりまとめの仕方も、香西会長と考えていきますけれども、この段階では明確にこうだと、そこまでスペシフィックに考えていない。したがって、秋に始まるぐらいを一つのメドに、いろいろ承った意見を整理したいというようなところです。

司会

ほかにございますか。

質問

ちょっとお尋ねしますが、今日、専門委員の方10人が発令されたわけですけれども、代表的なもので--10人が10人だとちょっと長くなってしまうので結構ですが、それぞれ、どういう分野に対する専門的な知識を期待されて新たにこういった方を招いたのか、ご説明いただけないでしょうか。といいますのは、これまでも十分たくさんの専門家がいらっしゃったので、さらにこれだけの方を呼ぶというのは多分特別な狙いがあってのことかと思うので、その辺をお聞かせください。

香西会長

私から申し上げます。私としては、とにかく調査分析部会は働く部隊であるというふうに期待しているわけで、汗をかいて仕事をしてもらうことが一番大事なことで、非常に大きな組織というわけではない、むしろ機動的にいろいろ動いてほしい、こういうことを考えておりました。したがって、今日、部会長から指名していただいた主査の方は、こういうことを言ってはいけないのですけれども、調査分析部会をつくると考えたときから何人かの人に相談をしていて、その人たちが大体主査になったり部会長になったりしていただいているわけです。専門委員は、そういった責任を持ってくださる主査、会長代理、部会長になられる人が、こういう人と一緒にやりたいということで申し出があって、そういう形で選ばれた方が全員と言ってもいいというぐらいなっているということであります。

したがって、責任を持たれるリーダーである3人の主査なり部会長なり、あるいは会長代理の神野先生が、こういう人を入れて一緒にやりたいという人、中には事情がつかなくて辞退された方もありましたけれども、スタートとしてはそういうことでまず決まった。これは内閣総理大臣の任命ですから、内閣でもいろいろご検討いただいたことと思います。私の感じではもっと時間がかかるのではないかと思っていたのですが、そういう選考のいきさつもご説明して、比較的早く、今日もう既に辞令が出ていて、かなりスピーディにそこは運んでいただいた。それは、早く調査体制を動かしたいという気持ちからそういうことを努力してきた、その結果だったというふうに考えています。個別の委員の紹介等については、部会長からお話しいただいたほうが適切だと思います。

田近部会長

個人的なことなのでどこまでお話ししていいかわかりませんけれども、香西会長の説明のように、一緒に実働部隊で働いてくれる人、そして、既にそれぞれの分野で業績のある人ということでお願いしました。個人的にどこまで説明が必要かあれですけれども、ご質問があればお答えいたします。

質問

もし可能であれば、それぞれの方にどういう役割を期待されるのか、教えていただけますか。

田近部会長

役割は、まさに仕事をしてもらいたい、汗かいてもらいたいということですけれども、プロフィールを私の知っている限りで申し上げます。分野が違うのであまり存じあげない方もいらっしゃいますけれども、経済サイドで申し上げれば、大竹さんは経済の実証分析、特に格差の問題等の第一人者でいらっしゃるし、加藤さんは世代間の問題もやっておられる。國枝さんは税制について非常に深い知識がおありだし、皆さんそうですが、小西さんは特に地方財政、佐藤主光さんはエコノミストで地方財政、土居さんも同じように幅広く知識がおありですし、沼尾さんは地方財政です。濃淡があってすみません。それから、藤谷さん、吉村さんというのは法律の方で、いずれも気鋭の法律学者だと聞いています。八塩さんは、ここに財務総研と書いてありますけれども、任期付で、いわゆるポスドク、オーバードクターの後に一時的に勤めていて、この4月から私立大学に赴任するということで、彼は所得税等について実際仕事をしている。そんなイメージです。

司会

ほかに質問は……、どうぞ。

質問

今日欠席されている高木委員から意見書の提出があったと思います。これについて議論がなかったのですが、租税原則の見直しをしないで欲しいという要望だと思いますけれども、これについてのご見解を教えてください。

田近部会長

高木さんのご意見は、「経済活性化の視点を盛り込むことを念頭に置いているようにも伺えます。~経済の活性化は重要ですが、この課題と租税原則の変更とは区別して議論すべきである」、そういうことで租税原則は変えないでほしいと。そういうご意見で、もちろんご意見として承りますけれども、基本的に「公平・中立・簡素」という原則の中で経済活性化ということも目配りしていく。当然、課題としてやっていく。中立性の中には、結果的に経済を活性化することは十分入っているわけで、私自身、ここでこの言葉を入れたからコンテンツが変わるとかではなくて、十分、中立性を通じて経済が活性化していく、そういうことを考えていくのだなということで、前々から議論に加わっていましたけれども、原則維持と経済活性化ということは決して対立するものでもないということで、高木さんの議論も十分わかると思います。

質問

香西会長に伺いたいのですけれども、今日の議論と直接関係ないかもしれないのですが、1週間前に石原都知事が、東京都の低所得者の都民税を2008年度から免税するという話を発表されました。地方からはちょっと反発も出ているようですけれども、今後、この議論が、政府税調、秋以降議論を進めていく上での影響ということでちょっと伺いたいのですが。

香西会長

税調の今の議論では、具体的にそういう問題を直接取り上げているわけではありませんから、特に何か意見があるということではないですけれども、格差問題自体はかなり重視して、それについて考えていこうと思っております。例えば今日の議論で言えば、所得控除か税額控除かという議論があったわけですけれども、所得控除をしていると、むしろお金持ちのほうが得をするということがはっきりしてきていますので、税額控除--ブレアがやったとか、いろいろ世界的にもオランダもやったというようなことで、問題が出てきているわけですね。

ただ、これは減税もそうですけれども、税金を納めていない人は減税されてもしようがないというところがあるわけです。そういう意味で格差問題の一つとして、税を納めていない人たちはどういう人たちで、どういう問題を抱えているか、そういうことは多少勉強してみてもいいのではないかと私は密かに思っています。最近で言えば、最低賃金と生活保護の関係とか、そういうのも問題になっていますし、今日も、社会保障との関係で負担というのをどう考えるかという議論もありました。それから累進性の問題にしても、社会保障を入れてどの程度累進的になっているかということもあるわけです。そういった意味で、一つの問題提起としては非常に面白い問題を提起されているのではないかという程度しかなくて、今すぐ税調がそれでどうにかなるという形には、今のところはまだ議論は進んでいないということではないかと思います。

質問

補足で教えていただきたいのですが、ドイツやオランダなどに今度調査に行かれるわけですけれども、これまでもそういう紙ベースの情報というのはかなりたくさん収集されていると思います。今回、現地に行かれてどういうところを見たり、あるいは、どんな方に話を聞いたり議論したりということをされるご予定なのか。もう少し具体的にご説明いただけないでしょうか。

田近部会長

今、接触していてアポイントメントを取っているという段階で、訪問する前にこの人に会うんだと言うのも順序としてふさわしくないかなと思います。

なぜドイツなのかということですけれども、実は私もドイツは何回か行っています。この段階でというのはまさに結果的にもタイムリーになったのですが、2007年1月1日から付加価値税を上げた。それから、企業課税が、間もなく閣議決定される予定というところで、ぜひそこの議論を、同時代的にというか、議論の空気まで感じていきたいと思います。

オランダについては、税調のときに申し上げたように私の強いお願いでもあったのですけれども、北欧がいわゆる二元的な所得税を入れた。人口規模も小さいし、いわゆるスモールカントリーと経済で言われるところで資本移動が激しい。そういうところで二元的な所得税を入れて、オランダもオランダなりのバージョンで税を変えてきたというところで、北欧諸国だけでなくてオランダの事例も、我々あるいは税調には参考になるのではないか、そういう趣旨です。

質問

あちらの当局の方に会われるのか、学者の方に会われるのか、その辺はどんなイメージをされているのでしょうか。

田近部会長

当局も学者の方も、個人的に存じあげている方も含めて、今、アポイントメントを取ろうとしています。

質問

関連です。この海外調査は4月13日に報告をするというお話がありましたけれども、この3つの調査分析のものと関連して何か報告書をまとめるとか、そういったことは考えられているのでしょうか。

田近部会長

具体的に言うと?

質問

今のところ、ひとまず4月13日の口頭での報告ということだけを考えていらっしゃいますか。

田近部会長

間違いがなければ、私も1回か2回、税調で出張させていただきましたけれども、口頭の報告の後に、税調のホームページをご覧になれば、出張報告のきちんとしたものは載っていると思います。だから、今回も4月13日は速報みたいな形で、その後は当然、国のミッションで行くわけですから、どこへ行った、何を議論したというようなことも含めて公開されると思います。

質問

調査分析部会がまとめるかまとめないかは別として、それと併せて何か報告をつくるということですか。一応別ものと考えていいのですか。

田近部会長

まだわかりません。これはこれでたまたま私と中里さんになりましたけれども、今言ったような形で皆さんも関心があるだろうということで、速報と。あとは、最初にこれをやって、ほかの準備する方にも少し時間を差し上げたいなと。いきなり4月何日から報告だと駆り立てるのも何なので、我々が最初に少し汗をかくという感じです。冷や汗かもしれないけれども。

司会

よろしいでしょうか。

では、これで会見を終了いたします。(了)