企画会合(第5回)終了後の香西会長記者会見録

日時:平成19年2月20日(火)16時24分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、第5回企画会合後の記者会見を行います。

香西会長

私のほうからは特に申し上げることはございませんが、今日の会議についてご質問があれば、どなたでもおっしゃっていただければと思います。

質問

今日の議論で決まったことの確認ですけれども、最初に示された会長メモの中で、「調査分析部会」を設置して、その中でさらに3つの領域を検討すると。最後、ちょっとほかの方の反応がなかったので、どういうふうにまとまったのかよくわからなかったのですが、会長にしても、これは皆さんの了解を得て、正式に企画会合としてはこのメモに沿ったやり方でやっていくことになった、というとらえ方でいいのでしょうか。

香西会長

私はそう理解しております。最後にいろいろあったのは、いろいろな議論があったけれども、この3つの枠内で大体こなしていきたいというこちらの考え方をご説明したというか、会長代理からそういう発言をしてもらったということです。今日出たいろいろな議論についても、調査分析部会に関する議題となるようなものについてはこの部会の中でやっていきたいということです。

ただ、実際問題としては、委員の指名は、専門委員を選んで実際に任命していただくのは内閣総理大臣からということですので、そういった手続き等もやらなければいけないということが残っています。それから、この3つの分野をリードしていただく主査の方をお願いして、実際に委員になった方との間で具体的に、どういう調査分析を、どんな戦略で、どういうテーマを深くやるか。ある問題については、既にある程度蓄積があるからそれを使おうとか、そういう分析上の作戦を練っていただくことが必要な段階だと思っております。

質問

そうしますと、部会の下に3つ領域がありますけれども、これはそれぞれ下に何か作業グループのような名称のものができて、それぞれの主査が、Aさん、Bさん、Cさんというふうになって、そのA・B・Cさんのそれぞれのグループが別途スケジュールを組んで、それぞれの作業に応じて会合をやっていく。それからその内容・進捗を、月2回メドに開く調査分析部会のほうに報告する、そういう流れなのですか。その辺のイメージがちょっと見えないので、教えていただけますか。

香西会長

実はその点については、いろいろなケースがあり得ると思います。つまり、部会の下にさらに小委員会とか何とかというふうにかっちりした組織をつくるのか、むしろ、例えば主査になった方あるいは部会長は、委員との間で話をして、こういうことをやってもらいたいというふうに個人的に折衝して、それには専門委員も加えてとか。それから、仕事は別にここでやらなければいけないという規定もおそらくないわけで、大学で勉強していただいても構わない。結論を持ってきていただければいいというふうになるのか、その辺は今のところ、主査になられる方のやり方がどういうことになるか。それから、どういう問題については一人の先生が担当してそれでいいのか、それとも何人かで共同作業をしなければいけないのかとか、そういったことがまだはっきりしていないので、組織をつくるとしたらどういう組織をつくるかということはまだ十分には考えておりません。

組織をつくるといっても、ここで政策問題を決定的に決めることが必ずしも本意ではないわけですから、どちらかといえば作業ミーティングといいますか、その場で関係のある人が集まって議論して次のステップへ移っていく、そういうようなことを考えております。秋以降の準備をするわけですから、それまでの期間、こういう形で秋以降の役に立つ論点の基礎になる問題をなるべく片づけていってほしい、そういう気持ちでおります。そういう点では、全員一致で必ずこういうふうな組織をつくろうという体制にはまだなっておりませんので、これから部会長なり主査なりが、こういう問題をやってもらいたいと思う委員といろいろ話し合ってそのやり方を決めていって、なるべく実際に調査分析される方がやりやすい方法でやっていくのが一番いいのではないか、こういうふうに思っているわけです。

質問

会長、そのテーマとなる[1]、[2]、[3]に、それぞれ部会長を指名されるということですけれども……。

香西会長

いえ、部会長は1人です。部会長の下に主査を指名するということです。

質問

部会長と、あと専門委員というのは、特別委員以外の外部の方かと思いますけれども、意中の方というのはもういらっしゃるのでしょうか。

香西会長

今、候補者を集めてリストアップしています。厳格な制限があるかどうかは別として、バランスですね。委員と専門委員の数がどのくらいがいいかとか、そういう見栄えもあるでしょうし、これは新しく辞令を出してもらうわけですから、そういったことでバランスをとって、最終的にどういう人にお願いするかということを相談し始めた段階であります。候補の名前は幾つか挙がってきていますけれども、最終的にこうなるということは、現時点では確定していません。一応ある程度の絵ができつつあるところだと思います。

質問

そうしますと、次回会合で専門委員も含めてメンバーを確定すると考えていいですか。

香西会長

専門委員については、任命を私どもがやるわけではありませんで、内閣総理大臣という名前が必要ですから、いつになるということは簡単には予言できません。しかし、時間もないわけですから、専門委員がそろわなくても、部会自体を立ち上げることは、立ち上げられるところからどんどん作業は始めたいということが私たちの希望です。研究者、学者の方が調査分析部会の委員になられるように指名するのは私ですから、大体考えており、それぞれどういうテーマをやっていただければいいかということをこれから話し合っていきたい、こういう段階です。それは私だけでやるのではなくて、若干手分けしてやっていっていただきたいと思っています。

司会

ほかにございますか。

質問

互選で選ばれる部会長ですが、確認がありまして、現在の政府税調のもう既に指名されている委員の方から会長が出されるのですか。

香西会長

部会が成立するためには部会委員が必要なわけです。それは私が指名することになっていますが、当然、その中に含まれている。つまり、現在の委員の中から何人かが部会の委員になるわけで、その中の1人が互選されるであろう、こういうことになります。それから、おっしゃったように専門委員は現在の委員の方ではない方から選ぶということです。

質問

もう1点、この中に「月2回開催をメドとする」とありますけれども、この会合はちゃんとプレス向けに公開されるご予定でしょうか。

香西会長

今の企画会合と同じで、大臣とか総理とか、諮問される方がずらっと並ぶのは総会という形で理解しています。副大臣などもお見えになっていらっしゃいますけれども、主として委員だけで集まるというか、委員が中心になってやるのが企画会合と部会会合であるというふうに概念したらわかりやすいのではないかと思っております。そのほかに、寄り寄りこの問題についてみんなで研究しようとかいった場合の打合せのようなことは、随時行われるようになるのではないかということです。

だけど、なるべく部会に議論を集約して、そこをオープンにして皆さんにも聞いていただくというのが、委員の連絡のためにも、全体のトランスペアレンシーといいますか、そういうものを維持するためにも、そのほうがいいではないかというふうに私は思っております。

質問

今日の議論の中で格差問題についての意見が多く出されたかと思いますけれども、今、格差問題は政権の中でも非常に大きな議論になっていて、どちらかというと政権の議論では、格差是正のために何をするかという議論だと思います。今日の議論自体では、まず現状をどう認識するかというところで非常に意見が出されたと思うのですけれども、会長は今の問題というのをどういうふうに認識されていて、どういうふうな調査分析を期待されますか。

香西会長

格差問題は、今日は、統計的なグラフとか表とかジニ係数とかそういう話が多かったわけです。しかし、今の格差問題というのは、ある数字を見れば、今日もいろいろあったように、大したことはないようにも見えるわけで、私も初めはちょっと騒ぎ過ぎているのではないかという気がないでもなかったのですけれども、いろいろな数字を見ているといろいろな格差があって、それについてはやはりかなり注意していったほうがいいというふうに、だんだん考え方が変わってきております。そういう点で、健康格差とか、どの層でどういう格差があるかということを正確にとらえて、それについて次は税制で何かができるかどうか、ということですね。

一方では社会保障制度というのも、例えば健康格差というのであれば、健康保険がそれをある程度ならしているわけですから、そちらと非常に関連するわけですけれども、私は所得再分配が必要な場合もおそらく出てくるのではないかと思います。まだ具体的に考えているわけではありませんけれども、やはり格差に対して何らかの配慮というか、手を打つ。格差が固定化したり、拡大し続けたりすることがないように努力はするということが、今年中に税制改正をある程度議論するのであれば、それは逸することはできない問題であるというふうに位置づけたほうがいいと思います。ただ、それについての知恵が今すぐあるわけではありませんので、いろいろな点でこれから知恵を出していきたいということです。

質問

今日の会長メモの中で、3つの領域ということで[1]、[2]、[3]と示されています。この[3]の「今日的意味における租税原則」という部分ですが、私の勘違いでなければ、前回の会合のときには「租税原則の見直し」のような言いぶりであったかと思います。これが「今日的意味における」というふうに変わっているように読めるのですが、前回の会合のときに会長が示された認識に何か変化があったものなのかどうか、この辺はどういう事情があったのでしょうか。

香西会長

特に変化があったということよりも、租税原則という言葉がいいかどうかというのはかなり迷っているところがありまして、租税原則というと、ワーグナーの原則とかアダム・スミスの原則とか、いろいろなことが過去に言われているわけです。今回、それと同じような意味の租税原則というのもたしかにあるだろうと思います。例えば簡素、公平、公正--公平と公正が違うのかどうかわかりません。それから、成長という人もいるし、中立という人もいるしということですね。

しかし、中立ということが要らないという人はそういないわけであって、中立だって成長にも役立つはずだと。つまり、市場メカニズムをまともに受けて、下手なディストーションといいますか、税による取引のゆがみを持たさないことが資源配分にプラスになるだろうというわけですから、必ずしも対立しているものばかりではないわけです。その中でどういうふうにやっていくか。それから、例えば徴税費が高い安いというような原則ももちろんある。アダム・スミスか何かにはそれが入っているわけです。だから、今ある原則が全部要らないというわけではないという「原則」も一方ではあると思います。しかし、今日的にということについて言えば、そういった原則があって、世界各国の税制改正を見ていると、成長ということがどこの国でも重視されるようになってきつつあるということは、ある程度言えることだろうと私は考えています。

それから、もう一つの意味で租税原則というのは、例えば「薄く広く」という形の言い方もあります。簡単に言えば、仮に従来の租税というのが、所得税というのがあって、これが累進税であるというのが中核的だというふうに考えられていた。そういうことが過去の歴史として一つあったと思いますけれども、それに対して、例えば金融所得は別扱いにしたほうがいいのではないかという議論とか、それから、日本では消費税ですけれども、ヨーロッパで言えば付加価値税というものが、大きなウエートを持つようになってきている。これは、さっき言った公平という原則に照らしてそうなったという面もありますし、税収を確保するためにそうなったという面もあるでしょうし、いろいろなものがあります。新しい租税の考え方という点で言えば、世界的にはどちらかといえば、アメリカは全然実現しておりませんけれども、アメリカの中の議論でも、フラットタックスとかああいうのを見ていると、どちらかといえば付加価値税、それも投資と貯蓄は除いて消費が結果的に負う形になる傾向があることは事実です。そういったものに対して、どういうふうに我々が日本として向かうのか。今日も、グローバリゼーションに対してどこまでつき合うのかという話がありましたけれども、そういうことも含まれていると思います。

ちょっと曖昧といえば曖昧なんですけれども、いろいろな意味で租税に対する現時点における考え方を整理したいというのがこの項目の意味で、原則とかそういう整理をするのはなぜかというと、それでご理解いただくためには、なるべく簡明な、この税制改革はこういう趣旨で行いますということがあったほうがいいだろうと。まだできていないのですけれども、こういう原則でやったということで、それが説明しやすいというか、簡素というか、訴えやすいという意味の原則というものをどこへ設定するか。例えば、これまでの我が国の税制改正の流れもそうですし、租税体系に関する諸外国の潮流というのもそうですし、それから、公平といいながら課税ベース、脱漏、つまり脱税、税逃避ですね、そういったことがグローバリゼーションになってどんどん広がってくることに対してどう考えたらいいのか。そのバランスで、逃げ足の速い金はやはり税金はかけられないとしたほうがかえって公正なのかとか、そういったこともいろいろ議論になるだろうと思うので、あまり細かい意味で、3つのうちのどれか1つを取りかえてというようなことは必ずしも考えていない。

新しい今度の税制改革をするとすれば、それはこういう考え方ですということを打ち出すには、どういう考慮をはらってどういうふうに打ち出せばいいかということを、こういった客観的な過去の流れとか、諸外国の潮流とか、現に起きている問題について、そこから抜き出してみたい。そういうのがここのテーマの趣旨であります。どうも、まだできていないものを説明しているので、うまくいくかどうかわかりませんが、そういうつもりでおります。

質問

今日の議論の中で、税の使い途についても突っ込んで検討していくべきだという意見がありました。それと関連して、先日、自民党の税調の津島会長が、消費税を社会保障目的税化する考えには賛成だというふうにおっしゃったのですけれども、この点について会長ご自身はどういうお考えをお持ちでしょうか。

香西会長

国民の納得を得るためのあり方として、そういう考え方があるということなんでしょうね。私は、今でも、目的税化はしていないけれども、消費税は、大体福祉に見合ってというか、福祉に向けられていると言ってもいいような形で運用されていると理解しています。つまり、消費税の収入と、こっち側には社会福祉に対する支出が絶えず対比される形で公表されている、そういうことは既にあるわけです。

目的税というのがどういうものか。つまり、道路財源のように非常に固まってしまって、既得権益のようになって、余ったらそれを分けていいんだというふうになるということまでいくのかどうか。それから、いわば目的税というのが聖域になってしまって、そこへ一旦入ったものはこれ以外には絶対使えないようにしてしまうのか、何年かおきに見直しをしてやっていくというふうにするのか。それとも社会保障制度で新しい給付をするなら、消費税を上げてくれと言われても、消費税のほうは税法で決まっているわけですから簡単にはいかないのですけれども、一つの極端な考え方で言えば、国民投票でもしろという議論だってないことはないと思いますね。

したがって、どれが一番いいかということはわからないわけですけれども、計算の問題として考えても、仮に消費税が--仮にといっても、そういうことを言うとあれなんですけれども、日本は幸い、社会保障問題以外にそれほど大きな財政需要がないわけで、そこがとりあえず一番大事なことであることは間違いないところです。そういう議論があって、それが道路財源のような硬直性を持たない形なら、十分検討する価値のあることでしょう。私自身は、今すぐそれに賛成だとか反対だとか言うのは、私自身の考えも熟しておりませんから、控えたいと思いますけれども、そういうご意見はあちこちで聞くわけですから、十分考えさせてほしいということにとどめておきたい、こう思っております。

司会

よろしいですか。

それでは、記者会見を終了させていただきます。

香西会長

今日は、どうも遅くまでご苦労さまでした。司会がなかなかうまくなくて、皆さんの議論が集約できなかったので時間がかかりました。申し訳なかったと思っています。(了)