企画会合(第5回)議事録
日時:平成19年2月20日(火)14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇香西会長
ただいまから第5回の企画会合を開催いたしたいと存じます。
お忙しい中をご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、前回の企画会合に引き続きまして、調査分析の進め方やその内容についてご議論をいただきたいと思っております。
これにつきましては、前回の企画部会でも調査分析の領域等について若干の話をさせていただいたわけでありますけれども、本日、これにつきまして、私のほうから「メモ」を一応用意してお配りしてあると存じます。それについて、最初に私から説明をさせていただきたいと思います。
一枚紙でありますけれども、「今後の審議の進め方について(会長メモ)」というのがありますので、ちょっとお目通しいただきたいと思います。これは、税制のあり方を審議するまでの前提としまして、基礎的な調査分析の蓄積を行うために、調査分析部会――以下、部会と省略しますが,これを設置するということをまずご了解いただきたいということであります。
調査分析部会を置くことについては、本間会長時代からすでにその予定があったようでありますけれども、やはり税制のあり方そのものを本格的に審議するのは秋以降という了解になっておりますけれども、その際の前提となる基礎的な調査分析を今から始めたいというつもりでおりますので、部会をまず設置いたしたいということであります。
なお、本間会長時代から、広報広聴部会というのも予定されていたわけでありますけれども、現在のところ、どのようにこの部会を運営したらいいかについてまだ考えがまとまっておりませんので、夏以降ぐらいに考えておくということ、とりあえずそういうことで、片方の調査分析部会のほうを先に、先行的に発足させたいという趣旨であります。本日、その方針が決まりますれば、いろいろな手続を済ませまして、できれば次回の会合で最終的にご承認いただくというふうにしたいと思っております。
部会を設けるためには委員を指名しなければならないわけでありますけれども、部会委員は会長が指名するということに規定されているようでありまして、私の考えとしては、まず、調査分析ということですので、学者、研究者の正委員、あるいは特別委員の方をお願いしようと考えております。ただし、その他の委員の方も、今後とも、この部会、調査分析部会であっても、その会合への参加はご自由としたいと思っておりまして、ご案内もいたしますし、ご発言等があれば、喜んでその席で発言していただきたいと思っております。
それから部会の審議に資するために、委員に加えて、専門分野の研究蓄積等をお持ちの方を専門委員として任命することにしたいと思います。この専門委員は部会のメンバーになるというわけであります。ただし、専門委員は、任命される場合には内閣総理大臣の任命ということになりますので、内閣との間で、私どもから推薦をして、その方をなるべく任命していただくように努力していきたいと考えております。
部会の会合は大体月2回ぐらいを予定しております。部会長も選ばなければなりませんが、これは規定によりまして、部会の運営を総括する部会長は互選ということになっておりますので、調査分析部会ができることが決まった第1回目の、できれば次回の会合の際に調査分析部会を開いて、その席で部会長を互選していただくということになります。
次のことについては、前回も多少申し上げたわけですけれども、部会で取り上げる領域を次の3つに整理しておきたいと。経済社会の構造変化とそれが税制に与える影響を検証するというのが一つのテーマでありまして、例えば少子化・高齢化の問題、あるいはグローバル化の問題、多面的な格差の認識であるとか、そういったことをテーマの例として挙げてもいいのではないかと思います。
また2つ目は、税制が経済や社会構造ないしは経済主体の諸行動に与える影響の検証。一方の方は、構造変化があってどういう影響が税制に及んでどういう問題になっているかということでありますし、次の方は、税制を変えることによって経済主体の行動がどのぐらい変わるか、社会構造、経済構造にもどういう影響が及ぶかといったようなこともあらかじめ多少考えていきたいということであります。
それから3番目は、いろいろな税目があるわけですけれども、それを貫いて、今日的な意味における租税の原則というものを再度ここで検討してみたい。
こういう3つの領域に分けて、調査審議に役立つような分析結果等を整理していきたいと思っております。
各々の領域につきまして、これは部会長の指名によって、その分野ごとの総括責任の主査を置いて、それに当たっていただきたい、このように考えております。したがって、これは次回といいますか、第1回目の調査分析部会が開かれた際に、互選された部会長から主査をそれぞれお願いするということを考えております。
部会のメンバーになられた研究者、学者の方々には、この部会会合での審議にもちろん参加していただきますと同時に、必要に応じて部会での発表をするとか、あるいは調査分析の作業を実際に担当していただくというような形で、調査分析作業へ主体的に貢献をお願いすることになるだろうと。
こういうのが見通しでありまして、こういう形で、できれば次回から調査分析部会を開催するように図ってまいりたいというのが私の希望であります。
この問題について、いろいろご議論もあろうかと思いますが、できれば、本日のもう一つの議題である内容ですね。前回にも、いろいろな経済社会変動の実像等についてご報告をいただいたと同じように、本日も、厚生労働省と内閣府から、少子化・高齢化の現状と対応について、それから格差をめぐる現状認識等についてご報告がありますので、そのご報告及びそれについてのご議論を先行させていただいて、その後、もう一度、審議の進め方についてご意見等あれば承って、本日の結論としたいと、このように考えております。
それから、少子化・高齢化の現状と対応、格差をめぐる現状認識等についてのご報告が終わった後、自由討議になりますが、その前に、自由討議の一番バッターという形で、この問題についてご発言もありましたし、それから少子化問題については、特に政府に別にできた組織で実際にも小委員長か何かをご兼務になっている吉川委員から最初にコメントをいただいて、その後自由な討議に、皆さんからのご発言を行っていただきたい。最後にまた今後の審議の進め方に戻って、ご意見があればご意見を承りたい、このように考えておりますので、よろしくご協力をお願いしたいと思います。
本日は、厚生労働省、それから内閣府からそれぞれご説明のためにご参加いただいて、ご発言をお願いしたいと思います。
まず最初に、「少子化・高齢化の現状と対応」についてでございますけれども、日本の将来推計人口や少子化などに関しましては厚生労働省の城企画官、雇用均等・児童家庭局、香取総務課長からお話を承ることにしたいと思います。また、高齢化や、先日発足された「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議に関しましては、内閣府の共生社会政策担当の濱田参事官、山田企画官からそれぞれご説明をお願いしたいと思います。
それでは、以上のような順序で、厚生労働省の城企画官、香取総務課長、内閣府の濱田参事官、内閣府の山田企画官、4人の方にお願いします。それでは、よろしくお願いいたします。
〇厚生労働省(城企画官)
厚生労働省の政策企画官の城でございます。よろしくお願いいたします。
まず私のほうからは、人口推計の関係でご説明させていただきます。資料につきましては、企画5-2という資料がございますので、ご覧ください。あわせて、企画5-3という資料で将来推計人口のデータそのものをおつけいたしております。それから企画5-4という資料で、私どものほうの人口構造の特別部会の議論の整理でありますとかその関係の資料についても提出しておりますので、あわせてご覧いただければと思います。
それでは、企画5-2の資料をご覧ください。まず1枚めくっていただきまして、2ページ目でございます。「将来推計人口の概要」でございます。これは昨年12月に私どものほうで公表したものでございます。これは5年に1回、国勢調査のデータに基づきまして人口推計しているものでございます。
左のほうを見ていただきますと、「合計特殊出生率の仮定」とございますが、これは推計の前提値となります合計特殊出生率について記載しております。2005年の現状で1.26でありますけれども、この推計におきましては、2055年、50年後について、高位、中位、低位と出生率を3つ置きまして、これについては高位が1.55、中位が1.26、低位が1.06ということでございます。基本的には中位を使っております。この出生率の出し方につきましては、これまでのトレンドをそのまま将来に伸ばすというやり方で出しております。
それから平均寿命につきましては、その下にございますが、2005年で、男、78.53歳、女、85.49歳というものが、2055年で、男、83.67歳、女、90.34歳という前提を置いております。結果といたしまして、簡単に右のほうにまとめてございます。
「将来推計人口の結果」というところでありますが、総人口については、2055年段階で8,993万人。9,000万人を割るというところでございます。それから老年人口、65歳以上でございますが、現在、20.2%の比率、2,576万人であるところが、2055年には40.5%。40%超えるであろうということであります。生産年齢人口につきましては、現在、66.1%、8,442万人というものが、2055年には4,595万人、51.1%ということでございます。年少人口につきましては、現在、13.8%、大体7人に1人子どもということでありますが、これが8.4%、752万人、12人に1人くらいの子どもがいるという状況であります。出生数についても、見ていただけばわかりますように、相当落ちると。毎年50万人という形になります。
参考までに、下のほうに前回の推計の結果を記載しております。これに比べても相当人口減少が進むという状況でございます。
それから次の3ページにつきましては、合計特殊出生率について、実績と、それから将来見通しの仮定を図にしたものでございます。これは平成17年、1.26のものが今後どのように伸びていく、もしくはどのように回復していく、落ちていくという形で示しております。
それからその次の4ページにつきましては、これは先ほど申し上げた姿をグラフにしてお示ししたものでございますが、ちょっとお時間もございませんので省略させていただいて、5ページをご覧ください。
これは人口ピラミッドで今のものを見たものでございます。左側が2005年(実績)でありまして、上のほうのとがった部分が団塊であります。下のほうが団塊ジュニアであります。団塊の上の凹んでいるところが戦争によって人口の少ないところでありまして、団塊ジュニアの手前で凹んでいるところは丙午でございます。この団塊と団塊ジュニア、人数でいきますと大体同じぐらいでございますが、これが2030年になりますと、真ん中のグラフでありますが、団塊世代が高齢者に突っ込んでいきます。団塊ジュニアの世代はまだ現役におりますので、現役と高齢者、支え手、支えられ手の比率につきましては、まだそんなに悪化はしないということでございます。
ただ、2055年になりますと、団塊はもう卒業いたしまして、団塊ジュニアも高齢者に入っていくという状況でございます。その下の団塊ジュニアのジュニアの世代というのが、さらにもう一つ下に山があればいいのですが、そこは山になっておりません。人口減少が続いております。その関係で、2055年には支え手と支えられ手の比率が相当厳しくなるということでございます。
ただ、これは下に矢印で、2007年~生まれと書いてございますが、この線より下の世代というのは、これから生まれる世代が成長してきてこの年齢になっているということでございます。したがいまして、今後の出生数の動向いかんによりまして、ここはまだ改善の余地はあるのではないかという動きでございます。
現状のままの将来投影でございますが、下を見ていただきますと、支え手と支えられ手側、20歳以上で切っておりますが、現状、3.0人で1人の高齢者を支えるという姿が、2055年には、このままいくと1.2人で1人を支える姿になるという形になってございます。
次の6ページをご覧ください。これはちょっと図がずれたりしておりますが、基本的には労働力人口がどうなるかというところを見やすくするために用意したものです。ただ、人口推計と労働力の関係というのは大きな相関がございますので、まだきちんと出ておりません。したがいまして、これは平成14年の前回推計に基づくものだということでございます。
前回の推計は今回よりもまだ厳しくないわけでございますが、それでも、2030年の段階で533万人の減。これは素直に、今のまま労働力率が推移いたしますと、下の点線で書いてあるほうでございまして、もっと悪いのですが、労働市場への参加がもっと現状より進んだ場合であっても、実線の上のほうにあるグラフで推移いたしますので、533万人の減で、ここまでは労働力率を上げていくことによって労働力人口は確保できるだろうということでありますが、2030年以降につきましては、労働力率をさらに上げるというのは、相当目いっぱい上がりますので、それ以上上げるということは難しかろうということでありまして、人口減少の影響がそのまま出てくるということでありまして、2030年から50年までの間に1,245万人の労働力人口の減ということでございます。
ただ、2030年までにつきましては、労働力人口に当たる世代というのがすでに生まれている世代でありまして、人口が確定しております。途中から増えたりいたしませんので、ここは労働力率を上げる形でしか改善いたしませんが、それ以降の2030年から2050年までというのは、出生動向次第で変わる得るというものでございます。
それから次の7ページ以降につきましては、こういったことを踏まえまして、人口構造の変化に関する特別部会というのを社会保障審議会に置きまして、そこでご議論をお願いしたわけですが、その議論の整理というのが1月26日にとりまとめられておりまして、そのポイントについてのご説明をしております。
次の8ページをご覧ください。これは人口構造の変化に関する特別部会の「議論の整理」をポイントとして示しております。あと、先ほどの企画5-4という資料に、本文、それからそのバックデータ等々を示しております。これは、先ほどご説明しましたように、出生率等は相当厳しいわけでありますが、さまざまな調査、それから国民の希望、こういったものを見ますと、必ずしも国民の希望がそのまま反映した形でそういった出生数の低下が推移しているわけではないと。後ほどご説明しますが、国民の希望が仮にかなった場合、出生率はどうなるかといいますと、大体1.75ぐらいになるはずというところがございまして、その希望と実態の乖離というのがどういう理由で起きているのか、それから仮に希望がかなった場合にどういう人口の姿になるのかということを分析するために推計及び検討をいたしてきたその結果でございます。
ここにございますように、「議論の整理」のポイントとしてまとめてございますが、「人口構造の変化の影響」というところでありますけれども、まず人口減少につきまして、普通の推計、先ほどの推計でありますけれども、単純な人口規模の縮小ではなく、労働力、世帯、地域との姿が大きく変化していくというところに注目すべき、そういうものであるということが指摘されております。
労働力人口につきましては、先ほどご説明しましたように、2030年までのもの。これは就労促進によって労働力人口の減少の緩和を図ると。2030年以降については少子化対策を図るということで解決しなければならない問題であるということが指摘されております。
それから世帯構成や地域の姿については、人口構造の変化によって大きく変わるということが指摘されております。2055年では、50歳代がおおむね4人に1人が未婚ということになります。したがいまして、世帯で見ますと、高齢者が属する世帯の約4割が単身で、1人きりの世帯になります。こういった世帯は社会的リスクに非常に弱いということ、それから可処分所得が減少した場合の影響も受けやすいということがございますので、要支援の世帯、社会的に支援しなければいけない世帯が増えたり、そういった負担能力も減少するということがございますので、大きな影響を及ぼす懸念がありますということでございます。
それから出生数は50万人弱に下がるということで、地域の姿、地域の支え手の姿も大きく変わっていくであろうと。こういったことに注目すべきであるということが指摘されております。
したがいまして、国・地方、経済界、労働界、地域社会全体での取り組み、機運の醸成というのも課題であるということでございます。
それからその下であります。出生に対する希望と実態の乖離。これにつきましては、出生に対する国民の希望――データを見ますと、希望そのものには大きな変化はここ30年起きておりません。ただし、出生率がどんどん低下している結果、現実と希望の乖離が起きているという状況にございます。
これは、下にありますように、社会経済が発展することに伴いまして、就労、社会参加、こういったものの希望は拡大していくと。それに対しまして、結婚、出産、子育て、こういったものと就労との両立ができるような社会的選択肢が拡大しないということの結果、二者択一が迫られて、希望の実現が犠牲になっているのではないかと分析されております。したがいまして、こうした希望が実現できる選択肢の拡大が必要だということでございます。
次の9ページをご覧ください。先ほど申しました、希望がかなった場合の人口試算、どういった形になるかというのを示したのがこの上のほうの部分でございます。2つ目のマルに書いてございますが、出生率目標といったものではなく、「子どもを産み育てやすい社会」の可視化を試みたものでございます。前提として、生涯未婚率が10%未満、夫婦完結出生児数2人以上というのが国民の希望値でございますので、これを計算いたしますと、合計特殊出生率1.75程度ということでございます。
これによりますと、人口はおおむね1億人、高齢化率は35%程度、出生数は90万人弱、生産年齢人口は、比率は同じぐらいでございますけれども、人数でいきますと800万人増になるだろうということでございます。
その下でございますが、では、どうしてそれがかなっていないのかということの分析をしております。1つ目のマルでございますけれども、これまでの女性の労働力率の上昇というのは、主に未婚率の上昇の影響で出ているものであると。未婚率を上昇させることで女性の労働力率が上がるという状況、この構造を残したままでは、出生に対する国民の希望、それから労働力の確保を同時に図ることはできないのではないかということでございます。したがいまして、有配偶女性が希望するように就労できる、そういった環境の整備が必要であるということが指摘されております。
次の10ページでございます。個別のステージに応じまして、どういった行動、どういった分野が出生行動や結婚に影響を及ぼしているかということを、各種のデータ、研究結果等から整理いたしております。
出生に影響を与えるものとして、まず結婚、それから第1子の出産、第2子の出産、第3子の出産というふうに分解いたしております。結婚に影響がありますものとしては、まず経済的基盤、雇用・キャリアの将来の見通し・安定性ということであります。これはデータとしては資料5-4のほうの45ページ以降につけてございますので、後ほどご覧いただければと思います。経済的基盤として、データとしては、収入が低く雇用が不安定な男性は結婚していないという相関性。それから非正規雇用の女性、育休が利用できない職場の女性、保育所の待機児童が多い地域の女性はやはり結婚していないという相関がございます。これはそれぞれ経済的基盤であるとか、出産後の継続就業の見通しとの関連であろうということでございます。
それから第1子の出産につきましては、子育てをしながら就業を継続できる見通しがあるかどうか、仕事と家庭との調和が図られているかどうかというところの相関がございます。出産後の継続就業の見通しというところで、育休が利用可能な職場では出産確率が高いというデータがございます。また長時間労働をしているところでは出産確率が低いというデータがございます。これについては、働き方、それから家事、育児を家庭内で分担しているということ、それから保育所が利用できるということがすべて組み合わされないと継続就業の効果が出ないというデータもございます。
それから第2子につきましては、ちょっとまた変わりまして、夫婦間の家事・育児の分担というところが影響が出ているということでございます。特に男性の家事・育児の分担度が高いところほど女性の出産意欲が高い。それから女性の継続就業割合も高いということが出ております。
ただ、男性の分担につきましては、夫の労働時間が長いというところで分担が少ないということがございますので、やはり男性も含めた労働時間の問題が影響が大きいだろうということでございます。
それからもう一つ、第2子に影響のあるものとして育児不安というのがございまして、育児不安の程度が高いと出産意欲が減少するというデータがございます。育児不安に影響のあるものとして、家庭内、地域からのサポートというのがございます。配偶者の育児分担への満足度が高い。配偶者が育児に協力しているというもの。それから保育所とか幼稚園からのサポートが高い、地域できちんとサポートされているというところにおいては育児不安が低いというデータも出ております。
それから第3子に影響のあるデータとしては、教育費の負担感というのが出ております。教育費の負担感は子ども3人目以降から割合が高いというデータがございます。ただ、今の若年世代といいますか、1970年代生まれ以降の世代におきましては、1人目、2人目についても負担感が高い。これは所得が少ないとかそういった関係かと思いますが、こういったデータも出てございます。こういったことから、きちんと対象分野等を絞り込めるのではないかということは考えてございます。
次の11ページでございます。上のほうにつきましては要素別に乖離の状況を見ておりまして、結婚についても、将来推計人口を前提としたデータと、それから国民の希望との間に乖離がございますので、ここは未婚については改善する余地はあるだろうと。
それから子どもの数につきましても、乖離の状況を見ますと増加する余地はあるだろうということがありますので、国民の希望をかなえるために、結婚したいという希望、それから子どもを持ちたいという希望、2子目が欲しいという希望に焦点を当てることが必要であるということでございます。
まとめとしまして、「速やかに取り組むべき施策分野」として、若者の経済的基盤の確立、継続就業環境の整備、家事・育児の分担、保育環境の整備といった働き方の分野、それから家族・地域の分野における施策の具体的な整理・検討を急ぐべきであると。
ただし、この希望というものも今後の施策や子育て環境の変化によりまして相当上下する可能性があるということでございますので、希望水準が低下して一層少子化になるという悪循環に陥らないように速やかな対応が必要であるということが指摘されております。
人口関係については以上でございます。
〇厚生労働省(香取総務課長)
では、引き続きまして、同じく5-2の資料3、「家族政策の国際比較」につきまして、簡単にご説明いたします。
13ページでございますが、これは戦後の先進諸国の合計特殊出生率の推移を示したグラフでございます。これは結構有名なグラフですので、お目にとまったこともあるかと思いますが、総じて、先進国いずれも、出生率、戦後は2~3という水準がございます。それが高度成長期にずうっと急速に下がってまいります。80年代ぐらいから引き続き継続して出生率が下がっている国と、出生率の反転回復ができた国と大きく2つのグループに分かれます。前者は日本ですとかドイツですとかイタリア。イギリス、フランス、あるいはスウェーデン、アメリカといったところは出生率が回復しているということになります。
ちなみに、点破線は韓国でございますが、韓国は最近急速に少子化が進んでおりまして、現在、出生率1.08ということで、日本を下回っております。
次のページに「主要国の家族政策の概況」。大きく休業時の所得保障である育児休業と、地域における保育のサービス、そして税制、児童手当、経済支援と分かれます。それについて整理したものでございますが、ちょっと細かくなりますので、お目通しいただければと思います。ポイントだけそれぞれ国別にご説明したいと思います。
15ページ、フランスでございますが、フランスは最近出生率が2を回復したということで新聞等でも紹介されておりますけれども、フランスは、ご案内の方もいらっしゃいますように、第一次大戦で非常に多くの戦死者を出しまして、男性の壮年層が減ったということで、特に隣国であるドイツとの関係で、人口を確保すると、あるいはドイツを上回る人口を維持するということで、人口政策について国民的な合意があり、一貫して、いわゆる家族政策、あるいは出生に対する支援ということについては積極的に行った国でございます。
税制との関係で言いますと、いわゆるN分N乗という方式がございますが、これは戦後直後、1945年にすでにこの制度が導入されているということでございます。フランスも80年代ぐらいから出生率が下がっているわけでございますが、この時代に、上にありますように、家族問題については全国会議といったものをつくりまして、国だけではなくて、さまざまな主体、労働組合でありますとか企業、経営者団体、自治体等々で、かなり国民的なコンセンサスをつくりながら少子化対策をしていくという体制をつくっております。
それからいわゆる保育のサービスの拡充をするということで、1980年代から各自治体が、保育所、保育サービスの整備ということに積極的に取り組むと同時に、個別の乳幼児を持つ家庭に対する経済的な支援というものを行っております。そこに乳児手当と養育手当と2つ書いてございますが、この乳児手当というのは日本でいう児童手当に相当するものですし、養育手当、この段階では3子目以降をもって休業された方に対する所得保障ということで、日本でいう育児休業給付に相当するものを創設しております。
2000年に入って出生率が大幅な回復傾向を示しているわけでございますが、近時の傾向について言いますと、その上に2つございますが、いわゆる出産・育児と就労の選択、両立支援をさらに一歩進めて、さまざまな選択、働くことと子育てをすることについての選択を可能にするということで、そこにありますように、かなり手厚い育児休業給付、休業した場合の賃金補助を導入すると。あるいは、3人以上子どもがいますと休業期間が長くなり、復職が困難になるということで、復職を支援するというような観点から、休業期間を短くして手当を厚くするといったような形で施策を講じています。さらに、日本でいう保育ママといいますか、施設ではない、在宅でお子様をお預かりするような多様な形での保育サービスを導入するということで、各種施策を動員することによって出生率の回復を達成したということでございます。
16ページ、スウェーデンでございますが、スウェーデンは、北欧諸国すべてそうですが、70年代以降の急速な高度成長の時期に恒常的な労働力不足になりまして、この段階に、女性が相当急速に働き出したということで、労働力率が急速に上がりまして、そういった女性たちが職場に出ると。それに伴って、日本もそのように、出生年齢が上がる、あるいは出生率が下がるということが起こるということで、70年代からかなりはっきりした出産と家族外での就業、いわゆる家庭外就労、普通の就労との両立を志向する施策というのを積極的に導入してきております。
80年代に入ってそういった施策が功を奏しまして、出生率の急速な回復ということがございまして、90年代に一時期、2を超えるという水準になります。そこにございますように、働きながら子どもを産む、働いている人が子どもが産むということについて、かなりそれを優遇する施策を講ずることによって、働く女性が子どもを産む、あるいは1子目と2子目の出産間隔を短くすると優遇されるという形で2子目の出生を奨励するということで、非常に出生率が上がったと。
90年代に1度出生率は下がるのですが、これはその逆の裏返しということで、非常に経済情勢が悪くなったので各種施策についての見直しが進んだということ。それから経済情勢が悪くなりましたので、女性が就労できないと。そうすると、就労期間中の出生が非常に優遇されますので、産み控える、あるいは先送りをするということで出生が下がる。近時、経済の回復に伴って再び出生率が回復しているということでございます。
3つ目、ドイツでございますが、後ほどフランスとドイツの比較の表をお示しいたしますが、ドイツの場合には、ほかのヨーロッパ諸国同様、70年代から80年代にかけて女性の就労率が上がりまして、出生率が下がってくるということがございます。この時期に、ドイツもほかの国と同様に、さまざまな手当をつくったり、あるいは育児休業給付をつくったりみたいなことをしてきたわけでございますが、後でお話ししますように、ドイツの場合には、乳幼時期の子どもはやはり家庭で親が見るという規範意識が非常に強い国ですので、フランスなんかと比べると、各種サービスの多様性、あるいは量的な充実というものが必ずしも十分ではないと。そういった中で、90年代に入って東ドイツの統一ということが行われまして、経済的にも非常に厳しい時期がありました。東ドイツ地域は出生率が1を下回るという時期がしばらくありまして、出生率はなかなか回復していないということでございます。90年代後半ぐらいから、さまざまな手当の拡充ですとか、さまざまな保育、育児の休業給付の充実等々行いまして、若干回復傾向にあるということでございます。
18ページ、19ページで、ドイツとフランスの比較を簡単にしてみました。フランスは、申し上げたように、非常に出生対策といいますか、人口政策、あるいは家族支援に対する施策についての国民的なコンセンサスはかなりはっきりあるということで、出産、子育て、就労についてのさまざまなポジショニング、選択というものができる環境が整備されていると。家族給付なんかについても非常にきめ細かい制度がございまして、日本でいう児童手当なんかについては20歳まで支給している。所得制限がない。あるいは低所得者に対する補足手当とか、一人家庭に対する支援とか、さまざまな手当が存在する。
それから保育サービスですが、いわゆる集団保育所以外にさまざまなパーソナルな、日本でいう保育ママに相当するようなサービスもかなりあるということで、大体3歳児未満の半数以上はこういったサービスを利用しているということ。それと、ちょっとページが後先になりますが、フランスの保育園というのはほとんど全日制でございまして、夕方までちゃんと預かってくれるということでございます。
対してドイツの場合には、各種さまざまな制度はそろっておりますが、やはり小さい子ども中心に家族で見るという規範がかなりまだ強いということで、さまざまな施策も、家族が、あるいは親が、母親が家で見るということを前提に、その負担をさまざまな形で軽減するというか、調整するといったような形で、明確に両立支援、あるいは選択といったところにまで必ずしも施策はいっていなかった。この点は、先ほど申し上げたように、最近急速にそういった施策の方向性が出ております。したがって、児童手当といった現金給付なんかについてはわりと手厚いものがありますけれども、保育サービス、あるいは家庭的な保育といった意味での多様な保育サービスは必ずしも充実はしていないということでございます。
次のページの保育サービスのところもそうですが、保育園がお昼まで、あるいは学校も大体お昼までということで、午後の時間、日本でいう学童クラブに相当するような時間についてのサービスが必ずしも十分でないといったことがございます。
一番下に、「子育て世代の働き方」というのがございますが、フランスの場合には、男女とも、平均すると週35時間、これは実労働時間ベースで35時間ということになります。半数以上は大体18時、男性も19時ぐらいには帰宅するということで、働きながら子育てするということがかなり可能なので、丸々全日の育児休業を長い間とるという人はむしろ少なくて、働くということを前提に、短縮、あるいはフルタイムでの復職ということで、保育サービスを部分的に利用するという方が多い。
ドイツの場合には大体週40時間労働ということになっておりまして、育児休業を長めにとる人が結構多いということで、働きながら育児を続けるという意味では、フルタイムで復帰する人が相対的には少ないということでございます。
最後に20ページで、これはマクロ的な意味でどのぐらい少子化対策にお金を使っているかという話で、これは、2月9日に重点戦略会議があったわけでございますが、そこで尾身大臣がお示しになった、ご参考に配られた資料をそのまま使わせていただいておりますけれども、いわゆる社会支出、社会保障給付の家族関係給付の比率ということで、ドイツ、フランス、スウェーデン、イギリス、GDP比でいくと2~3%ということですが、日本は、最近非常に増えましたけれども、0.75%ということで、額的にも少ない。高齢者給付との相対的な比較で見ても日本は非常に小さいということで、家族給付の割合は全体として額的には少ないということになります。
それを別の形で見たものが21ページでございます。これはOECD基準で今言ったものをちょっと調べたものですけれども、左側のグラフは、家族分野への社会支出のGDP比ということで、先ほどの数字と同じような形になっております。
右側は、社会保障給付を社会支出全体の中で、高齢者、障害者、あるいは子どもといったようなことでバランスを見たときの子どもに向けられている比率の割合ということで、これも日本は4%程度ということで少ない。もちろん、日本は今もスウェーデンを抜いて最も高齢化率の高い国になりましたので、高齢者への給付率が高いといったこともございますけれども、全体として少ないということが指摘されているということでございます。
最後のページは、いわゆる現金給付、経済的支援という観点で、児童手当と税制の関係を整理したものでございます。簡単に申し上げますと、イギリスは児童手当と税制を、いったん税制を廃止して手当に一元化しましたが、最近また税額控除をつくりまして併存させているという形。スウェーデンは、税制面での手当をしないで、手当で一元化している。ドイツは両方制度がありまして、選択するという形になりますので、低所得者は手当、所得の高い方は税制ということになります。フランスはちょっと特殊でございまして、いわゆるN分N乗という方式をとっておりますので、その意味では併存ということになります。アメリカは、こういった現金給付というのはございませんので、基本的には税制面での手当だけで対応している。日本はそれぞれ両方の制度があると。ただし、児童手当については額的には諸外国に比べると規模が小さいということになります。
それから最後に23ページでございますが、先ほど、現金給付、経済的支援と地域の保育サービスと、あとさまざまな働き方の面でのいろんなライフワークバランスということで申し上げましたが、それぞれの指標と出生率との相関をとったものでございます。ご覧になっていただくとわかりますように、保育サービス、あるいは働き方というものが相関度が高いということで、これはOECDのデータからとったものでございます。
概要は以上でございます。
〇内閣府(濱田参事官)
それでは、「高齢化の現状」につきまして、引き続き、資料5-5でご説明させていただきます。
まず1ページ目は高齢化の推移ということで、皆様方、ご案内のことと思いますが、現在2割の高齢化率が50年後には4割になる。さらに下のほうに書いてあるのが75歳以上の後期高齢者の割合でございまして、それが50年後には25%になる。5人に4人が65歳以上の高齢者で、4人に1人が75歳以上の後期高齢者になるというのが50年後の姿であるというのが今回の新しい人口推計から見える高齢化ということでございます。
1ページめくっていただきまして、その一つの要因は、当然のことながら、平均寿命の伸長ということでございまして、現在、男性、78.53、女性、85.59が、先ほど人口推計の中でお話ございましたけれども、50年後には両方ともが5歳ずつぐらい長くなることが予想されております。
さらに1ページめくっていただきますと、その中でも、先ほど人口推計の中でも話がございましたが、一人暮らしの高齢者が増えていくことが問題ではないかということで、過去にどのぐらい伸びてきたかということで、昭和55年には約1割だったものが、今ほぼ2割に達しようとしている。まだ今回の推計についての数値は出てないのですが、前回の推計で言うと、50年後に約680万世帯が高齢者の一人暮らし世帯になることが予想されております。
せんだって、私どもで世帯形態別の意識調査というのを行ったのですが、その中で、一人暮らしの高齢者でも、特に男性が社会生活なんかで地域との関係が紡げない、近所づき合いができない、友人がいないということで、いわゆる地域での孤立ということに陥っているという事実が垣間見られたところでございます。
それから1ページめくっていただきまして、高齢者の所得でございます。これについては、よく言われているように、昔に比べれば、年金制度の成熟等で、高齢者についてもかなり豊かになったということで、世帯当たりで見れば全世帯の半分程度でございますが、世帯人員1人当たりで見直してみると、平均とそれほど差は見られない。ただ、所得の7割程度が年金であるということがこの統計からわかってございます。
それから1ページめくっていただきまして、高齢者にも働いていただかなければいけない、労働力率を上げていかなければいけないというのが先ほどの推計の中でも出てきましたけれども、じゃ現在どうかということで、50代後半から60代後半までどの程度働いておられるのか。上のほうの不就業者という欄がございますけれども、その中でも、上と下の段で、下の段は、就業したいのに就業できない方がどのぐらいいるかということで、50代後半で、男性7.7、女性が14.1、60代前半で、男性16.1、女性19.7、60代後半で、男性21.0、女性18.3。こういった、働きたいのに働けない方々については何とか働けるような施策を講じていくのが今後の課題ではないかということでございます。
それから1ページめくっていただきまして、健康面の不安ということで、65歳以上で、病気などで日常生活に影響のある方はどのぐらいおられるかということで、ご案内のとおり、加齢に従ってその割合が高くなるということでございまして、実際にその人口に占める要介護、要支援者の割合なんかを見ても、60代前半から70代前半までの前期高齢者あたりであれば5%程度あるのが、後期高齢者になるとほぼ3割近くにまでその割合がはね上がるということで、やはり加齢に従う健康不安というものも大きいものがあるということでございます。
それから最後の1枚は、いわゆる社会参加が今後の高齢者の一つの課題ではないかということでございますが、昔に比べればいろんなレクリエーションや社会活動に参加されておるのでございますが、いまだに参加していないという、各欄の一番右側の欄でございますけれども、こういう方がまだ半分ぐらいいらっしゃると。この辺がまだまだ課題ではないかと、こんなことで考えてございます。
非常に簡単でございますが、「高齢化の現状」ということでございます。
〇内閣府(山田企画官)
引き続きまして、資料5-6をご覧いただきたいと思います。「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の動きについて、ご説明申し上げます。
まず、この重点戦略を策定する背景となりましたのは、先ほど厚生労働省からもご説明ありましたように、新人口推計ができてきたというようなこと、あるいは希望反映型の仮定試算といったものを踏まえまして、この1枚目の下の箱にございますけれども、重点戦略を策定することになったと。
この基本的な考え方でございますが、「すべての子ども、すべての家族を大切に」という考え方でございまして、2030年以降の若年人口の大幅な減少を視野に入れて、少子化に対抗するために、制度・政策・意識改革など、あらゆる観点からの効果的な対策の再構築・実行を図るということでございます。
2枚目をご覧いただきたいと思います。検討の体制ですけれども、現行で少子化社会対策会議というのがございます。これは少子化対策基本法に基づきまして設置されておりまして、会長が総理、全閣僚で構成されております。今回の重点戦略検討会議ですけれども、この対策会議のもとに設けられておりまして、議長が官房長官、関係閣僚9名と有識者7名で構成されております。
さらにその下に4つの分科会を設けることになっておりまして、1つ目が基本戦略分科会。経済支援のあり方ですとか働き方の改革を踏まえた所得保障のあり方、あるいは子育て支援策の財源、制度的枠組みの再構築、こういったことをご議論いただくと。
2つ目が働き方の改革分科会ということで、ワークライフバランス、あるいは多様で柔軟な働き方の実現、あるいは若者の社会的・経済的自立を支援といったことですとか、企業の取り組みの促進、意識改革といったことをご議論いただく。
3つ目が地域・家族の再生分科会ということで、子育て家庭を支える地域づくり、あるいは子育て支援サービスの見直し、そのほか児童虐待対策、母子家庭、要援護児童支援などといったことをご議論いただく。
それから最後の4つ目ですけれども、これは点検・評価分科会ということで、これまでの「子ども・子育て応援プラン」等のフォローアップ、あるいは運用改善といったこと、あるいはこれまでの行動計画の数値目標の見直しに向けた検討といったことをご議論いただくことになっております。
スケジュールですけれども、3枚目をご覧いただければと思いますが、先日2月9日にいわゆる親会議、第1回の検討会議が行われまして、4分科会につきましても、先日、メンバーを決めまして、今後議論していただくと。2月から5月にかけまして、各分科会それぞれ3~4回程度開催いたしまして、5月中に分科会の議論の整理。6月ごろに親会議の第2回を開催いたしまして基本的な考え方をとりまとめるということで、経済財政諮問会議等にも報告しまして、骨太2007にも反映していきたいと考えております。
その後、具体的施策についての検討を進めまして、税制改正等の議論も見極めながら、本年末を目途に重点戦略の全体像を提示できればと、このようなスケジュールで考えております。
4枚目以降は親会議と分科会のメンバー表ということですので、また後ほどご覧いただければと思いますが、吉川先生には、親会議にも入っていただいておりますし、基本戦略分科会の主査ということでお願いしてございます。
以上でございます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、格差をめぐる現状認識などについて、内閣府から説明をお願いしたいと思います。内閣府の経済財政分析担当、井上参事官によろしくお願いいたします。
〇内閣府(井上参事官)
それでは、お配りしました資料、5-7に基づきまして、格差の現状認識についてご説明させていただきたいと思います。
まず最初のページ、ジニ係数で見ました格差の現実を書いてありますけれども、最初に報告の冒頭に全体の結論を先に申し上げさせていただきます。今回、格差について議論が高まる中で、昨年、経済白書でも、我々のほうで格差の現状について分析したところであります。格差につきましては、各種指標で計測する限りは、長期的な日本経済における格差の指標というものが拡大傾向にあるということは確認されております。
ただ、今回特に焦点を絞りました所得面から見た格差の拡大傾向につきましては、要因を分解していきますと、かなりの部分が高齢化要因ということで説明できまして、そういった結論が一般的な結論と考えております。ただ、まだデータ上はっきりあらわれてこない部分がありまして、これが後からご説明しますニート、フリーター等の若年層の格差についての現象でありまして、この点、将来的には潜在的な格差の拡大になるということで我々懸念しており、政策的な対応が必要だと考えております。
これが一般的な結論でありまして、その内容につきまして簡単に図表を用いてご説明させていただきたいと思います。
最初に1ページ目のグラフですけれども、これは一般的な格差の指標として用いられているジニ係数を各種の所得統計を用いて計算したものです。図1にありますように、いろいろ統計あり、統計の特性によりまして、ジニ係数の水準自体に若干違いがあるのですけれども、傾向としましては、長期的には拡大傾向、格差が拡大しているということが確認されております。
最近話題になっておりますニート、フリーター等についてはどうなのか、特に単身世帯についてどうなのかということで関心が集まっています。左側の図1は、基本的に2人以上の世帯で計測しておりますので、全世帯、総世帯で見た格差についてがあまり把握できてないということがありまして、全国消費実態調査を用いて、単身世帯と2人以上世帯、両方を合わせた総世帯についてのジニ係数を計算したものが図2であります。
単身世帯につきましては、最近非常に格差が拡大しているという実感としていろいろ語られているところがありますけれども、全消ベースで見た場合は、むしろ99年から2004年にかけては単身世帯のみで見た格差は縮小しておりまして、単身、2人以上世帯合わせた全世帯で見た格差につきましては、むしろ99から2004年にかけてはほとんど横ばっているという状態が確認されております。
次のページをおめくりいただきたいと思いますが、2ページ目には所得格差の拡大要因ということで、高齢化、世帯規模の縮小ということで要因を紹介しております。先に世帯規模の縮小ですけれども、これは核家族化という原因もありまして、世帯人員が縮小傾向にあります。これは図4に示されておりますけれども、小規模の世帯が出てくることによりまして、所得が少ない世帯が出現するということにより、格差が見た目上押し上げられるという原因がありまして、この部分について注意が必要ということであります。
もう一つは高齢化要因でありまして、図3で見たところ、94から2004年にかけての各年齢別の格差というものは、ジニ係数で計測した場合、あまり変化がありません。しかし、先ほどご覧いただきましたように、図1で示されておりますように、長期的な格差というものは傾向的に拡大しています。これは何が起こっているかといいますと、結局、高齢者世帯、これは所得に関しまして長い間を通じてかなりばらつきが増えてきておりますので、そういった高齢者の比重が社会的に高まるということを原因としまして、マクロで見たジニ係数というものは拡大することがあると考えられております。
実際に格差の指標を各種の要因で分解したものが次のページのグラフです。3ページ目の図5をご覧いただきたいのですけれども、これは図2で最初お示ししました全国消費実態調査での各5年ごとの格差水準が変化した部分もどのように分解できるかということを試みたものです。人口動態効果というところが高齢化要因によるものでありまして、そのほか、世代内格差、世代間格差――世代内というものは例えば10代の中での格差の動向、20代の中での格差の動向でありまして、世代間というのは、例えば10代対50代、20代対40代、世代をまたがる格差ですけれども、長期的に見ますと、必ず押し上げている部分が人口動態効果であります。これは結局、人口構造が高齢化するに従いまして、高齢者世帯のジニ係数が押し上げに寄与するということであります。むしろ99から2004年にかけましては、世代内格差、世代間格差が縮小することで、ほぼ横ばっているという状態になっているわけであります。
ただ、格差が拡大していない、もしくは横張っているということ自体であまり積極的に評価できない部分もありまして、これが図6にありますように、99年から2004年にかけて何が起こったのかということを所得の分布図で示しております。これを見ますと、総世帯をご覧いただきますと、99年から2004年にかけては、所得の分布が確かに見た目でもある程度まとまってきている感じがあるのですけれども、むしろ平均所得が下がっています。多分、デフレもありまして、所得が低い層へ集約されることで、ジニ係数自体が横ばってしまっていると。格差は拡大していないのですけれども、むしろ所得水準が平均的に下がったということがこの図からは示されております。
続きまして格差の国際比較でありますが、最近、OECDのレポート等で、日本が非常に格差が大きい国である、特に相対的貧困率という指標で見まして日本が世界で第3位という報道がされております。実際、一般的なジニ係数で見ますと、図7にありますように、日本はそのOECD諸国の中では上位グループの一番下位グループにつけておりまして、ほぼOECDの平均値に近い状態にあると言われております。
ただ、相対的貧困率という概念で見ますと、図8にありますように、大分順位が上がってきまして、相対的貧困率という概念は、社会全体の中位数を設定しまして、そこから所得が50%以下にある人たちの割合ということになります。これでいくと、相対的貧困率でいきますと日本はかなり高い水準になります。また貧困ギャップですけれども、これは中位数から、さらに低い人の所得のずれを加重平均するような形でギャップを見ています。これでみましてもかなり高い順位になります。OECDはこの2つの指標を掛け合わせた総合的な相対的貧困指標というのを出しておりまして、これでみますと、日本が非常に高い順位になってしまうという結果になっております。
ただ、こういった国際比較は注意が必要でありまして、次のページをご覧いただきたいのですが、OECD、彼らの試算で用いている指標は、最初の図1でもお示ししましたが、国民生活基礎調査という統計データに基づきましてOECDは試算しておりまして、これが図9におきますOECDの試算値にほぼ近いものになっております。試みに全国消費実態調査で計算してみますと、10%ぐらいまで数値が落ちてしまいまして、こうなると、相対的貧困率で見ても、OECD試算の中ではほぼ平均値になってしまうということがあります。特に格差の国際比較につきましては、いろいろな統計の特性等も見ながら幅をもって見る必要があると考えております。
また、相対的貧困率と違った概念で絶対的な貧困という概念もあります。絶対的貧困という概念自体もいろいろな取り方があるのですけれども、ここは世界的に世論調査をしている機関の調査を援用しておりますけれども、医療、食料、被服といった分野で、非常に困窮したかどうかと、そういう状態にあるかどうかということを聞き取り調査をやりまして、こういった調査でいきますと、当然日本の場合はかなり順位が低くなるという結論が出ています。
続きまして所得以外の格差ですけれども、図11は消費で見た格差であります。所得はある一時点での所得で大きくばらつきが出る傾向がありまして、消費で見た場合、逆にいろんな人の人生設計の中でかなりならして消費水準というのは決定されるものでありまして、そういった意味でばらつきがある程度、水準からしますと、所得に比較して小さくなるという傾向があります。ただ、消費で見た場合には、94年から99年にかけての格差の拡大が目立つということになっております。
ほかの指標で見ますと、図12が資産で見た格差でありますけれども、ここでは、家計資産、金融資産と実物資産を一緒に入れたものでありまして、これは地価の動向にもかなり影響されるところがありますけれども、少なくとも家計資産に関しましては、99から2004年にかけてそれほど大きなギャップということにはなっておりません。
続きまして若年層の問題ですけれども、7ページをご覧いただきたいのですが、若年層につきましては、特に賃金、所得で見た最近の動向を見ますと、図13にありますように、97年から2002年にかけて、ジニ係数で見たばらつきが若年層で大分拡大しているという傾向が確認されております。こういった若年層がどういう地位にあるかということで見ていきますと、正規、非正規という観点からいきますと、非正規化している人たちが多いと見ておりまして、特に非正規になった場合の正規への移行が非常に困難ということが言われております。
その一つの事例としまして、私どもで行ったアンケートでありますけれども、図14にありますように、会社において人材育成でどういった分野のどういった種類の社員に対して期待が置かれているかということを見たものでありますけれども、これでいきますと、やはり現場の非正規社員に対する期待が非常に低い結果になっておりまして、なかなか社内でも相互受益等の恩恵が得られず、非常に苦しい状態に置かれていると考えられます。
続きましてその次のページをご覧いただきたいのですけれども、図のタイトルが逆になって大変申しわけないですが、図16、「年齢別非正規比率の推移」が左のグラフでありまして、若年層において非正規比率が大きく高まっているというグラフであります。20代から30代にかけまして、特に97年から2002年にかけて、若年層の非正規比率が高まっているということが確認されております。
右側が図15になりまして、これが「夫の年齢別・所得階層別の妻の有業率」ということになります。こちらは、我々、今回、統計データで検証できる範囲で格差の問題を確認しているわけですけれども、何といっても世帯別で見るとどうしてもこういった若年非正規の動きというものがなかなかデータであらわれてこないところがあります。また、最近よく議論されているワーキングプアの問題などでも、200万円以下の勤労所得ということで分類されることもありますが、実際には、生活水準というものはかなり世帯単位で決まるものですから、世帯所得全体の中に埋没してしまうと、現在のこういった非正規化の流れというのがなかなか統計上は拾い出せないということがあります。
この図15、「夫の年齢別・所得階層別の妻の有業率」というところを見ましても、夫の所得が低いほど配偶者が働いているという傾向が強くなっておりまして、低い水準の賃金を得ている人たちも実際にはその世帯の中で合算してしまうものですから、そういった意味で、現在発生している非正規化、もしくはニート、フリーターの問題がなかなか世帯単位での所得統計では把握できないという問題があります。これは逆に言いますと、こういったニート、フリーターがそのまま非正規にとどまってしまった場合には、実際に例えばその両親等が亡くなられた場合、正規に戻ることが非常に難しくなったままの状態で、その時点で本当の意味の格差というもので顕在化してくるという可能性が考えられるわけであります。
最後に9ページですけれども、「格差に関する国民意識」ということで、意識面のデータをまとめております。世論調査で確認する限りは、日本の場合、95年から、最新としては2006年までとってみましても、中流意識というものが非常に強固でして、実際に自分の状態について聞かれた場合、ほとんどの人が中の中ということで、安定した意識を持っているということがあります。
これは、新聞等でよく意識調査がなされまして、格差は拡大していますかという問いに対する答え。最近の傾向としまして、「格差が拡大していると感じていますか」という問いに対しましては、「そう思う」というちょっとあいまいなところまで拾っていきますと、大体7~8割ぐらいが格差拡大を意識しているというような結論が出ます。格差が拡大していると意識しつつ、自分の状態について問われた場合は、ほとんどの人が中流意識ということで安定している状態と言えるかと思います。
ここには現実と理想とのギャップというものもありまして、これは図18に示しておりますけれども、各設定された問いに対しまして、左のほうが理想です。どういうことが望ましいのか。例えば努力した人が高い報酬を得たほうが望ましいのか、実績をあげた人が高い報酬を得たほうが望ましいのかといったことで、左の側の数値ですけれども、右側は逆に、実際にどういう人が高い報酬を得ているのかということを示しております。
これでいきますと、日本人の場合、かなりの人が、「努力をした人」が高い報酬を得るべきだと考えているのですけれども、現実問題としては「実績をあげた人」が高い報酬を得ていると感じておりまして、多分、「実績をあげた人」というところ、ここがどれぐらい正当化できるのかというその感覚的な部分、要するにずれが生じている可能性があると考えています。
国際比較などをすると、アメリカと日本の場合、特に顕著な差が出るのが、努力した部分についてどのくらい評価するかということでありまして、アメリカの場合は、多分、能力があれば格差を是認するといった傾向が非常に強く出るのですけれども、日本の場合は能力だけではなくて、努力がなされた場合に初めてそういう所得格差が是認されるというようなアンケート調査も出ておりまして、その点が、意識の点、国際比較するときなどは注意しなければならない点かと考えてます。
私のほうからは以上です。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
それでは、先ほどご紹介しましたが、吉川委員からご発言をお願いします。
〇吉川委員
会長のご指名ですので、私のほうから簡単にコメントさせていただきます。時間も限られてますので、なるべく簡潔にするようにいたします。
論点は、高齢化、あるいはデモグラフィと格差という2つであります。
まず第一にデモクラフィ、人口動態ですが、これは昨年の12月に新しい推計が出たということで、先ほどご紹介ありました。少子高齢化が進んでいくということですね。高齢化社会がやってくると。どんどん進んでいくということなのですが、まず、それとの関係で、我々税調の仕事に関係するような幾つかの論点でコメントさせていただくと、まず第1番目は、高齢者の比率がどんどん上がっていくわけですけれども、これは政府等でも最近はよく言われることですが、すべての高齢者がいわゆる経済的弱者でないということ。これはそのとおりだと思います。経済学のほうではライフサイクルの理論というのがあるわけですが、そういうことを言わなくても、貯蓄行動というのは、各人が、現役時代に比べて、老後、そうミゼラブルにならないようにという自衛行為がそもそも貯蓄という行為なわけで、資産形成していくということですから、いわば老後になって突然生活水準がガクンと落ちるということがないようにということは各人が経済行動としてやっているわけであって、その意味でも、高齢者がすべて貧しいというわけではない。これは後ほどの格差とも関係するでしょうが、この場合の高齢者にとっての経済力のもとになるのは、これは言うまでもなく資産であります。
したがって、高齢化社会において経済力をはかるというときに、フローとしての労働所得だけに注目すると、これは年金等も含めて、年金は一応もらえるということで、それを加算したとしても、所得として労働所得を主として考えるというのでは、これはもう非常に限られているので、やはり資産所得というのがポイントになってくる。
ちなみに、それを象徴するような日本経済の変化としては、いわゆる海外との経常収支。どうも、多分一昨年からだろうと思いますが、日本は経常収支黒字ですが、ついに貿易収支の黒字を所得収支の黒字が抜いたと。モノをつくって外国に売るというところよりも、日本全体として、その資産から上がる収益、そちらのほうが年々歳々のフローですでに大きくなってきているということがあるわけで、とにかく資産というところがポイントになるということ。これは当たり前のことだろうと思います。
2番目は、たった今私は、すべての高齢者が経済的弱者ではないと申し上げたわけですが、それは正しいと思っているわけですが、にもかかわらず、高齢者においてはいろいろな意味でばらつきが大きいということも事実であります。もう一度繰り返しますと、例えば若年世代に比べて、高齢者のグループの内部で、いろんな意味でのばらつきが大きいと。
そのいろいろな意味というのは、1つは普通の意味での経済力。これは資産所得も入れてということですが、経済力の格差。それからもう一つはやはり健康のばらつき。これは税調の前回の会でも私申し上げたと思います。
したがって、実は高齢化社会における平等といったようなことを議論するときには、私は、いわゆる経済力、それは資産所得も含めて広い意味での所得と言っても、最後は消費に流れていって私たちのウェルフェアを支えてくれるわけですが、普通の意味での消費財、常識的な意味での消費財の消費の平等というのでは限界があると。プラス、実は健康のばらつき、あるいは健康の平等度といったような二本立てでいろいろ考えていく必要があると思っております。これは税調の守備範囲は超えるわけですが、医療保険の設計等、そうしたことでは、社会保障の関係では当然そこのところが問題になってくると考えております。
こうした意味での仮に平等というのをある程度確保することが望ましいとして、もちろん、すべて税とか社会保障で解決できるわけではございません。その意味では、今日は人口動態との関係で平均寿命の紹介があったわけですが、それと並んで健康寿命というものが、おそらく日本全体での我々国民のウェルフェアを考えるとき、一つの大きなポイントになると。これは常識的にも皆さんも納得されるのではないかと思います。
以上が2番目で、3番目は、これは税調の守備を少し超えていくことになるかもしれませんが、今日のご説明にもありました社会保障をどのように設計するかということがやはり人口動態との関係で避けれない。その負担ということで税が当然関係してくるわけですから、やはり社会保障の問題ということが非常に大きな問題になる。委員の皆様方はよくご存じのとおり、日本の財政というのを今後考えるときに、やや乱暴に言えば、社会保障の将来像をどのように描くかということとそこが切り離せないという問題があると思います。
その意味では、今日ご説明のあった人口動態では、これも従来から言われてきたわけですが、平均寿命が今後もどんどん延びて、2055年ですと、ついに女性では90の大台に乗るというのがたしか今度の推計だと思うのですが、そうなってくると、例えばですが、年金の給付開始年齢というものを、あるグループについてはそれを引き上げていくということが合理的かもしれない。そんなことも考えなくてはいけないかもしれない。いずれにしても、社会保障というのを、年金なら年金、医療保険なら医療保険だけではなくて、年金、それから医療保険、もちろん介護等もありますが、全部込みで、トータルの社会保障としてどのように設計するか。また、もちろんそれをどのように負担するかということを設計しなければいけない。
それから、今日のご説明にありましたが、子どもとか家族を応援するという視点も大事だというご説明があったわけで、これは資料の、5-2の20ページだったと思いますが、尾身大臣が戦略検討会議の第1回に提出されたという資料ですね。それで、この家族関係というのが比較的若年世帯を応援する。それから高齢関係の社会支出、これはもちろん高齢者ということで、第1行と第3行があるわけですけれども、ともに対GDP比ですが、ちょっと目の子算で、後者が前者の何倍になっているかと。どこの国でも高齢者への応援のほうが大きいことは大きいのですが、先ほどちょっと私が目の子算で割り算したところでは、日本は高齢者のほうが若年世帯、家族応援の11倍ぐらいでしょうか。アメリカは8倍ぐらい、イギリスは3倍以下、ドイツが4倍、フランスが3倍、スウェーデンが3倍ぐらいということですから、こういう国際比較を通して見ると、日本の場合には極端に高齢者応援シフト、社会保障の中でシフトがしかれているわけで、したがって、少子化の中で少し若年世帯を応援するほうにリソースを回してもいいのではないかと、こういう議論もあり得るのではないかというのが政府の考えていることではないかと私は理解しております。
以上、人口動態の関係ということで。
格差のほうのコメントは、先ほどもすでに申し上げました。高齢化社会における格差を論じるときには、いわゆるフローとしての所得、とりわけ労働所得だけでは極めて不十分であって、資産をどのように考えるか。これが大きなポイントになるということです。
事務局にお願いしたいのは、この格差に関する実態をさらに詳しくいろいろ調べていただくと。これは事務局からも、いろんな問題あるということはすでにご発言あったのですが、高齢者で難しいのは、同居なんかもあるわけですね。つまり、自分の子どもとの。そこでバイアスがあるわけです。こうした統計は世帯主で年齢等とっているわけですから、よく言われることは、同居老人というのは、独立している人に比べて弱い人が同居する傾向があると。逆に、独立している人は2つの層に両極端に分かれていると。身寄りのないお年寄りと、それから子どもはいるのだけれども、かなり経済的に強い高齢者の方、こうした方が独立の高齢世帯になっている。その真ん中の中で比較的弱い部分は子どもと同居する傾向があるということで、子どもと同居しますと、世帯主が子どもの年齢になっていることがあるわけで、そういう意味で、高齢者の経済力の実態を調べるというのが、そこで1つ難しい問題が出てくるわけですけれども、そんなことも含めてさらに検討していただくと。
それからもう一つは、これも事務局からすでにお話がありましたが、こうした実態、ジニ係数等を見ると、20代のところで非常に不平等度が高まっていると。ジニ係数も高まっていると。一つのデータですと、非正規率が87年から2002年にかけて15%から32%くらいまで上がっているということで、おそらくこうしたジニ係数の上昇と非正規化が独立だとは考えられない。つまり、やはり非正規化ということが、20代なら20代のジニ係数の上昇と相当関係を持っているだろうと。こういうことがあるわけで、この問題がシリアスなのは、いろんな側面があると思います。これは事務局も言われたと思いますが、言葉は大変悪いのですが、高齢者の方々というのは、人生の言ってみれば終わりのほうに近い方なわけですが、若年者の人というのは始まりですから、初めのところでの格差というのが将来までずっと引きずっていくという可能性がある。これが問題ではないか。
またもう一つは、人口は減っていくと。今日もご紹介があったとおり。労働力人口も減っていく。そうした中で質を高めなくてはいけない。人的資本を形成しなくてはいけない。日本中でそう言っているわけですね。人的資本はいつ形成するか。もちろん主として若年のときだと。ところが、その若年のときに、非正規、しかもいろんな意味での経済格差が広がっているというと、これは人口減少下で人的資本、言ってみれば量より質で頑張るというシナリオとは真っ向から矛盾する状況になっているという意味で、ここのところを我々がどのようにサポートできるのか、税でどのようなことができるのかまだよくわかりませんが、税も含めてそうしたことを議論しなければいけないのだろうと。こういうことだと思います。
以上です。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
それでは、皆さんからご自由にご発言をお願いしたいと思います。どうぞ挙手をしていただいて発言いただきたいと思います。どなたからでも、いかがでしょうか。
どうぞ、お願いします。
〇猪瀬委員
意見というほどではないのですが、先ほど吉川さんが言われたページで、20ページの尾身大臣の提出資料のところですけれども、これは高齢化率が2000年のデータ使ってますけれども、つまり、65歳以上の人口比というのは2000年のものですが、国勢調査が2005年にやっているわけですから、何でこういう数字を使うのかということは気になってしようがないのですけれどもね。
「政府税制調査会企画会合説明資料」のジニ係数のページもそうですけれども、ジニ係数のページの4ページの下の(備考)のところを見ると、統計に使った年度がばらばらで、よくあることではあるのですが、その中にあまりにも古いものが多過ぎるのですね。4ページの左下の(備考)も右下の(備考)もそうなのですが。
それから5ページ目のところをめくって、相対的貧困率と絶対的貧困率のところでも、(備考)の一番下の5のところで、OECD試算は2000年で、全国消費実態調査は1999年だと。こういうのは、めくっているとすごい気になってしようがないのですね。どうしてこんな古いのを使うのかよくわからんですけれども、もうちょっとこういう資料は最新の資料を使うとかデータを出してもらってやっていただきたいなという要望でもあるのですが、これ、おやりになった方、ちょっと説明してください。
〇香西会長
どうぞ。井上さん、何かありますか。
〇内閣府(井上参事官)
先ほどご指摘いただいた国際比較なのですけれども、これは、先ほど私からも、非常に難しいということを申し上げたのですけれども、国際比較につきましては、各種の統計の整合性をとらなくてはいけないということで、我々としては、OECDの一番新しいレポートから引用する形をとっております。ただ、OECDのこのレポート出たのが、実際2005年に出ているのですけれども、でも、そのときに彼らが入手できた一番新しいデータ、これは各国政府から要請して彼らからとっているデータですけれども、これがかなり年次でばらついてしまっているという問題がありまして、これについて、我々も同じ問題意識で、なるべく新しいデータに基づいて分析したいと思っているのですけれども、残念ながら、今のところはデータ的な制約でそういった古いデータが混在しているような国際比較しか入手できていないという状況にあります。
先ほどご指摘いただいた5ページのOECD試算、全国消費実態調査で、古いではないかというご指摘ですけれども、これもOECD試算のほうが2000年のデータに基づいた彼らの計算をしておりますが、そこを我々として再現してそれと比較したいということで、あえて99年の全消との比較ということでデータをお示しした次第であります。
〇香西会長
よろしいでしょうか。
〇猪瀬委員
今の流れで、8ページは、これはデータは国内でしょう。これは何で2002年でとまっているのですか。
〇内閣府(井上参事官)
これは就業構造基本調査の一番新しいデータに基づいて分析していると思います。
〇猪瀬委員
今、2007年でしょう。2002年で、5年も前ですよ。それが一番新しいデータですか。
〇香西会長
統計が5年に1回しか行われない調査です。
〇猪瀬委員
だったら、先ほど尾身大臣のところで出した65歳以上の人口比というのは、2005年の国勢調査があるわけですから、当然反映しなければいけないのではないですか。
〇厚生労働省(香取総務課長)
恐縮ですが、これは私どもがつくった資料ではないのでご説明しかねますが、おそらく理由は同じ理由で、横に並べて一番新しいのがこの年次ということではないかと思います。ご指摘のように、日本の数字は、2005年出ておりますが、日本の高齢化はたしか18.9という数字が出ておりますので、ちょっとご説明でも申し上げましたが、本日ただいま現在ですと、日本はスウェーデンを抜いて世界で一番高齢化している国ということになります。
〇香西会長
よろしいでしょうか。――それではほかにもご意見があろうと思います。
どうぞ、長谷川さん。
〇長谷川委員
今のジニ係数のところで、私もこれを見ていて、要するに格差は拡大しているのか拡大してないのか、ちょっとよくわからなくなってしまったのですが、1ページ目の図2の下の「総世帯のジニ係数」、これは全国消費実態調査によると、99年から2004年にかけてわずかながら低下していると、こう書いてあるわけですよね。ところが、7ページの図13、年齢別の労働所得で見ると、すべての年齢層では格差は拡大していると。要するに、これは統計が違うからこういうことになるんだよということなのだろうけれども、素人としては、どっちをとって、格差拡大しているのかいないのかというふうに考えればいいのかなというのがちょっと戸惑ってしまったということが1点。
それから2点目は、この7ページの今言った労働所得で見たジニ係数が97年から2002年のところで拡大していますよという話になっていて、87年のやつもありますけれども、97年から2002年、ここのところはちょうど山一証券なんかがあってデフレが急に加速したところですよね。それからその次の8ページも、図15、非正規率が高まっているところも、97、2002、やはりこれもデフレが急に、不良債権問題その他で高まったところだったよねと。
それで私の疑問は、つまり、成長とジニ係数というのがどういう関係にあるのかなということなのです。デフレが加速したりするとジニ係数というのは拡大するのですかと。その辺のマクロの経済成長の低下の話と格差の話、これをどのように考えたらいいかということをどなたかにちょっとお聞きしたいなと。
〇香西会長
どうぞ、吉川さん、お願いします。
〇吉川委員
事務局もお答えになるかもしれませんが、私から答えられる範囲であれですが、1点目のご質問ですけれども、これはパズルではなくて、7ページ目は、見ていただけばわかるとおり、図13ですね。年齢別の労働所得。要は、基本的には現役世代を見ているわけですね。ですから、年齢区分も50代までが入っている、要は現役世代の労働所得の中のジニ係数。これが図13であるわけです。それに対して、例えば1ページとか2ページ目のジニ係数というのは経済全体で、とりわけ2ページ目がいいかなと思うのですが、この全国消費実態調査なんかで見ているのは、65歳以上まで入っているというのがすぐわかりますね。つまりは高齢者も含むと。
このジニ係数論争でどういうことが言われてきたかというと、要するにジニ係数、経済全体で見ますと、上がってきているわけですね。緩やかに。それで格差が広がったという議論があったわけですが、大阪大学の大竹文雄氏、その他が指摘した重要な事実というのは、確かに経済全体のジニ係数は上がってきているのだけれども、それは実は高齢化が進んできていること、それを反映した面が大きいということを指摘したわけです。
つまり、この2ページ目の左の図を見ていただくとわかるとおり、右上がりになっているわけで、若年層に比べて高齢者のグループの中でのジニ係数というのは高いわけですよ。ですから、経済全体の中で右側のジニ係数が高いグループのシェアが高まれば経済全体でジニ係数が上がるという、こういう理屈になるわけです。日本で起きてきたことは、一番大きなこととしてはそういうことですということがまず1つある。
それから第2番目は、それでは同じグループ内でいわゆる不平等度が高まっているというようなことが全く起きてないのか。それは年齢層を分けてみて調べてみればいいではないかというので、それをやってみると、それがこの同じ左側の図にあるわけで、これを見ていただくと、大体25以上から60代前半ぐらいまではそんなにはそれぞれのグループ内でのジニ係数というのは変わっていない。ところが、一番左側の最若年層を見ると、確かにジニ係数がそのグループの中で上がっているわけですね。ですから、経済全体のジニ係数が上がっているということとは別に、最若年層では、確かにそのグループ内で格差が広がっているということが言えるのではないか。
それで、先ほどの事務局が用意した資料の中にも、じゃその理由は何かというと、これは非正規化が進んでいるというようなこととやはり関係があると見るべきではないかと、こんなことだろうと思うのですね。
ちなみに高齢者はどうかというと、これはややパラドキシカルというか、あれなのですが、直近ではむしろ不平等度がそのグループ内では低まっているというのが2004年の消費実態調査。
ちなみに、この全消というのも5年に1回しかない調査ですけれども、5年に1回やる調査で、一番新しい2004年の消費実態調査を見ると、高齢者グループの中では、65歳以上という意味ですが、むしろジニ係数が下がっているという結果も出ていると。ここいら辺をどう考えるかということ。
それから2番目のより大きな問題として、景気のアップダウンといいますか、成長率という表現をされたと思いますが、いいときとそのジニ係数の関係はどうかというその質問。実は一筋縄でいかないところがあると思うのですね。つまり、経済的に弱いグループをとれば、多くの研究で、やはり不況というのは逆進的なものだと言っていいと思います。つまりは、不況のときにジニ係数は高まるし、逆なときは逆と。
ところが、マクロで見ると一筋縄でなくなるのが、これは労働所得に比べて資本所得のほうが景気のアップダウンで大きく動くわけです。わかりやすく言えば、配当所得とか株価のアップダウンというのは労働所得に比べてはるかに暴れ馬なわけですね。ところで、配当所得とか株を持っている人というのは高所得層が多いですから、したがって、そうした高所得層も確かに、景気のアップダウンで、相対的に見るとかなり大きな所得の影響を受ける。その影響が出ると、マクロのジニ係数が景気の動きとどういうふうに関係するのかというのが少し見えなくなるところがあるのですが、しかし、経済的な比較的弱者に限って見れば、例えばブルーカラーと仮にここで言うとすれば、そうした層がどのような相対的な影響を受けるかといえば、やはり景気が悪いときには不平等度が高まるという形での影響を受ける。つまりは不況は逆進的だと、そういう言い方をしていいのだろうと思っております。
〇香西会長
どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
〇横山委員
格差の問題ではなくて、少子高齢化という点でちょっと整理をしていただきたいと思っていることがございます。それは、前の本間会長のときの会合のときも申し上げたのでございますが、これまでの税制調査会がやってきたことをどこまで引き継ぐのかということについてお尋ねしたことがございました。この少子高齢化とかグローバル化というのは、今手元にある資料を、税制調査会の過去の資料、答申を全部ぱらぱらっと見ただけなのでございますが、すべて、石会長の時代も加藤会長の時代も、経済社会の構造変化ということで、少子高齢化と人口減少とか、国際化、情報化とか、全部言われてきていることなのですね。それぞれその問題意識が、今日の香西会長のほうでお示しいただきました調査分析部会の大きなテーマである社会の構造変化にどのように税制が対応するのかということについては、少なくとも歴代の会長時代に答申を出してきていると。それに伴って、今度、党税調との関係の中で、現実の税制として、政府税調の答申を生かすような形で税制改正をそれぞれの政治的な諸力のバランスを考えながら、現実に改正として出てきていると。その後追いを少ししていただきたいと思うのですね。
少子高齢化対策として税制改正にどのように反映されてきているのか。その結果、今解決すべき課題と過去の課題は違うのかどうか。確かに、これまではあまり、高齢化という問題の中で、あるいは少子化という問題の中で格差の問題については明確に検討されてきてなかったということは事実だろうと思います。
ただ、私がお尋ねしたいことは、なぜ税制改革なのかというと、やはり同じことを言われているのですね。平成14年のときでも、少子高齢化やグローバル化の予想以上の進行など加速しつつある経済社会の構造変化に税制は十分に対応し切れてないと。今後10年、あるいは20年を視野に入れた税制の再構築が求められている、というような文言がやはり常に言われている。そうすると、今までやってきたことがどうなっているのだということについて、やはり私は総括しておく必要があるのではないかと申し上げたいと思います。
〇香西会長
どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
どうぞ、出口委員。
〇出口特別委員
出生率につきましては、1.26という現実があって、仮に1.75になったとして、これが人口置換水準はやはり下回っているわけですよね。それで、これが下回り出した今から30年ぐらい前は、ローマクラブが「成長の限界」を出した直後でありまして、どちらかというと、人口爆発というものが、もう地球はサステイナブルでないという話になっていたわけで、1.26という数字の何が、どこが問題で、仮に、例えばそれを1.75という希望するところまで持っていったとしたら、それがどう改善されて、それに改善するに当たってはどういうリソースをどのように供出する値打ちがあるのかどうか。そういったことについて、人口の場合は非常に長期間のことがありますので、十分に検討していくべきではないかなと思っているのが1点です。これは別に質問ではありません。
それからもう一つ、私いつも気になりますのは、先ほどの数字でも出てますが、大きな人口転換の流れで、国民所得が増加するに従って出生率が低下するという、これは大きなトレンドがある中で、こういう先進国の中で出生率が低下して、そこに何か手当てをしなくてはいけないということになっているわけですね。一方で、例えばフランスの政策とかアメリカの政策でいろいろ出てますが、人々のダイバーシティといいますか、民族間のダイバーシティとか、移民の政策とか、あるいは養子縁組の政策とか、極めて多様な影響が出生率の中に反映している中で、幾つかの相関性を取り上げて議論していくことの難しさというか、あるいは、やはり議論はしていくべきだろうと思うのですが、その辺のところについても、ここ30年ぐらいの人口の見方をもう一度検証していったらいいのではないかなと。
例えば昨年だったと思いますけれども、厚生労働省の方が来られたときには、昨年の前の将来人口推計の出生率の変化が多少下がっているけれども、それは下がってない要素もあるのだというような説明をこの税調の場でもされたと思うのですが、ここ30年間、基本的には2025年ぐらいで安定人口になるのだと。それがならなかったのは、晩婚化とかそういったことで、出生率そのものに対する十分な調査が足りてなかったのではないかなという思いを非常に強く持ってます。ぜひこれはちょっと30年ぐらい振り返っていただきたいなと。
〇香西会長
ほかにいかがでしょう。
伊藤さん、お願いします。
〇伊藤委員
いわゆる経済格差について、どこまでできるかということだろうと思うのです。私も、10年以上前に読んだ文献の記憶で申しているので後で調べてみたいと思うのですけれども、ジニ係数というのは万能でないと思うのですね。我々の世界で、ミンプルザービングスプレッドというのですか、平均を一定にしてどれだけ分散が広がるかという指標で随分多くの文献があって、おそらく税の問題を考えるときにかなり重要な話で、やはりいろんな形で、いわゆる格差と呼ばれているものについては評価する必要があるのかなと。一部、ここで例えば絶対的貧困度とか相対的貧困度というようなことが取り上げられていて、それは1つ大事だと思うのですけれども、もうちょっと、これはなかなかないものねだりで難しいのですけれども、税の問題を考えるという上で非常に意味のある、かぎ括弧つきの格差のデータというか、あるいは現状把握ということが多分必要なのかなと思いました。
ジニ係数だけで見ると、もうデータ見ればわかるように、非常に小さなところでの数字の変化ですから、そういう統計的な取り方そのものが大きな影響を及ぼす結果で、ただ、我々はどうしても、結果として格差が広がっているか広がってないかというゼロイチの判断にいきやすいと思うので、ここら辺のところ、非常に慎重に、しかし、いろんな多面的な見方が必要なのかなと。ちょっと印象ですが。
〇香西会長
いかがでしょう。どんどんお願いします。
〇井上特別委員
出生率の問題ですけれども、私、学者でもないし、本当に素人判断ですけれども、ともかく日本というのは島国であって、1民族、大和民族としてずうっときているわけですよね。それが、戦後になってから憲法も変わりすべて変わってきて、例えば相続の問題にしても均等相続であると。そうすると、家族を崩壊させるような方向にずうっときておると。要するに、親の面倒にしても、子供は均等相続であるから、親の面倒を見る必要ないじゃないということになって、ぐるぐる回しで今きて、家族が崩壊しているケースだって随分あるわけですよね。
そういった点でも1つあるでしょうし、また資産というものは分割される。それによって大きな家にあったものはすべて小さくなってしまっている。今の都市における住宅事情、これも一つの家族における住宅というのは非常に小さな住宅しかないわけですよね。要するに1DKとか、まあ2DKになるとまだ大きいほうなのかもしれませんけれども、そのような小さな家で生活をしてどうして子供がたくさん産めるのかということになるのではないのかなと。
それと同時に、教育にしても非常に金がかかる。教育は、じゃ公立学校がどうなのかというと、その教え方は中途半端だと。やはり塾に通わせなければいかん。すべてが、小学校でも何十万という金をかけなければいけないというような状況、これを許してきているわけですよね。
そういう点でも、もっと、どういうふうにすればこの少子化が解決できるのか、もとにさかのぼって考え直す必要があるのではないのかなと。今、単なる、助成をすればいい、何をすればいいという金だけの問題なのかどうなのかと。フランスや何かの場合には、多種民族であり、いろんな国が来ている。だから、金を与えれば、それは子供産もうという気になるのかもしれないけれども、やはりその点がもうちょっと違うのではないのかなというような感じがしておりますので、ちょっと意見として述べさせていただきました。
〇香西会長
どうもありがとうございました。どうぞ。
〇増渕委員
意見というほどのまとまったものではなくて、感想めいた話なのですが、税制というものに引きつけて考えたときに、今日出てきた人口動態の話と格差の話の中で、少子化に対する対応というのは、どこまで効果があるかは別として、比較的イメージを描きやすい分野だと思いますが、格差というのについては、私自身、一体どういうことが、税制としてですが、考えられるのかと。一体何ができるのかということについて非常にイメージを持ちにくいなという感じがいたしました。ですから、これはこれから考えていく上で知恵が出てくる、知恵を出さなければいけない話であろうかなと思いますけれども。
それから高齢化という問題についてですけれども、いろんな表を見ていて、だれもが素朴に考えることではないかなと思ったのですが、高齢者の定義というのが、おそらく今の65歳以上というのでは、少なくとも日本はもたなくなるだろうなと。いきなり後期高齢者のところまではいかないにしてもですね。ということは、吉川先生が言われた社会保障制度の設計に直接かかわってくることであろうと思いますので、税制調査会としての守備範囲を超えることは超える話ですけれども、まさに表と裏の話として、そこの問題が避けて通れない、税制を考えるときにはということを感じました。
これは意見というよりは感想めいた話ですけれども、そういうふうに感じたことを申し上げたいと思います。
〇香西会長
いかがでしょうか。ほかにもどうぞ。
〇佐竹特別委員
今の少子高齢化の問題、格差の問題、ちょっと離れてよろしいでしょうか。この後、いわゆる部会で3つの部会といいますか、こういうタイトルで掘り下げていくという。実は、実際に私、行政、市長になって6年目ですけれども、税は入るほうですけれども、出るほうの問題について、これは非常に難しい局面です。今、歳出削減という形で言われる際に、例えば公共事業削減だとか無駄使いだとか、そういう観点で多く言われるのですけれども、今やっている行政行為が、果たしてこれが税で賄うものかどうかという基本的なところがどうも、私自身も、幾つかの海外の事例等いろいろ見たり聞いたりしますと、日本が非常に特殊な社会になっているような感じがしないでもない。少子化の問題でも、それゆえ、非常に大事なところに集中的に財政出動ができない。
今、行政サービス、市民サービスと言われる点で、果たしてこれが税で賄われるべきものかどうかという基本的な疑問を最近感じることが多いのですね。例えば、変な話、ごみの収集なんていうのは、大体の諸外国で受益者負担で、やるのは役所でやるのだけれども、そこの人件費も含めて、これは全部税では賄われていないとか。先ほどの高齢者に対する問題に対しても、非常にこれは言いにくいのです。実はここの場だから言いやすいのですけれども、例えば公民館というのはすべて無料です。前提でできている。ほとんど使うのは高齢者の方々。現役世代はほとんど使わない。しかし、それがいいのかどうか。これはすべて、変な話、厚生労働省の方いるので申しわけないのですけれども、老人憩いの家だって、風呂がなければだめだと言う。これは地方分権で我々やればいいのですけれども、そういうルールが全部そうだと。そもそもそういうきっちりした受益者負担の原則というものが非常に、ここが貫かれていないがために、本当に手を差し伸べなければならない所得層に対して意外と中途半端だと。
あるいは一番なのは、すべて税でそれをとって、それを分配するという行為が、いわゆる役所、官僚の、非常に規模が膨らんでくる、あるいはそこへの既得権が、全部そういう仕組みなのですね。私、行政やっている者でこんなこと言うのは非常に心苦しいのですけれども、諸外国の例とあまりにも違い過ぎる。例えばヨーロッパ、アメリカへ行きますと、役人の数ははるかに日本より多いのですけれども、税金で賄われている方はほんの一握り。公民館だって独立会計です。例えば市立病院みたいなところ、今もかなり税が入ってますけれども、建てるのは税金でつくるけれども、管理は全部受益者負担。
そういうことで、出るところを、どこで議論するのでしょうと。出るところを議論するところがないのですね。単に無駄使いだとか公共事業の縮減だとか、今ある制度を肯定しておいて、その中のやりとりではなくて、一つ一つのある程度大きなくくりでも、果たしてこういうものを議論すると、これで相当違ってくるのかなという感じがするのですね。高齢者の関係なんか、まさしくそうです。
例えば任意の非常にいろんな支出が我々出てますけれども、事実上、これはこういうことで慣例化してしまった。それを議論する場がないものですから、私なんか、去年も、予算を切ったら、直ちに議会で大分たたかれたりしましてね。いずれ少しそういうものも、ここのどこかの部会で、基本的に大きなものだけでも、少し実情をつまびらかにすることによって、将来の方向としては、やはり官の縮小ということにつながりますので、そこら辺をやらないと、いつも出るのは当然だという議論だと、必ず税は増税増税しかないわけですね。ですから、そこら辺が、私から言うのも何ですけれども、少し会長も、そこの出るところを。どこもこれは実は日本の機構でやるところがないのです。
〇香西会長
どうも大変ありがとうございました。先ほどからいろいろなご意見を承っていて、いろんな視角があるというか、見方があるというか、重要な問題があるということを私も感じました。おそらく財政制度審議会か何かが本来はご担当になるべきところかとも思いますけれども、しかし、確かに税の審議会というのは、社会保障が決まったらそれにあわせて出せという、常に揺すられているようなところがあるわけですから、そういったことについては確かに、何か考えられないのかなあというのは日ごろ漠然とは思っておりましたけれども、非常に参考にさせていただきましたし、家族の問題なんかについての見方もやはりいろいろあるものだなあと感心しながら聞いておりました。
どうぞ。
〇翁委員
少子化対策という場合に2つあって、少子化を食いとめるという対策と、それから少子高齢化社会に適応していくという、その2つがあると思うのですけれども、おそらく前者のほうは、団塊ジュニアのちょうど鼓舞もあるし、相当急いでやらなければいけない問題だと思っているのですが、後者のほうも、人口動態、人口ピラミッドの中長期的な動きというのを本当によくにらんで、どういう経済社会になっていくのかということをにらみながら、視野を本当に長くとって、やはり相当構えてきちんとやっていかなければならない問題だろうなと思います。
特に、相対的な、いわゆる生産人口と従属人口の割合というのがものすごく大きく変化していて、2055年の段階で5:5ぐらいになるわけですよね。もちろんその定義を変えていくというのが、定義だけでなく、実態としても、高齢者の方でも働きたい人は働けるような社会にしていくというようなことを考えていかなければいけませんし、そのあたりをどのように税とかで考えていくのかとか、おそらくこれは社会保障の関連する話だと思うのですが、あと同時に、後期高齢者の方がそういった時点で多くなって、そこについては社会保障のところでもあまりきちんとした見通しができていなくて、おそらく介護の問題なんかは相当深刻になって、介護費用というのは人件費に相当しますから、需給がかなり変わってきて、もしかしたら介護の費用というのはもう少し大きく出てくるかもしれない。
そんなことを考えますと、この少子高齢化の人口動態の大きな変化というのは相当長く続いていくものだと覚悟をして、どのように税制を考えていくかということを考えていかなければならないと思っています。
〇香西会長
どうもありがとうございました。どうぞ。
〇大橋特別委員
今日の事務局の説明を伺って、一人一人、我々の委員の中でも、このデータをどのように解釈するかというのは難しいと思うのですね。ですから、ある意味ではこれからさらにこれを深掘りをしていただいて、その上でもう少し議論していかないとと思っております。しかし、いずれにしろ、アメリカ型のような単なる弱肉強食ではない社会を日本がこれから構築していくと。そういう意味では、格差が少なければ少ないほどいいと。これはほぼ皆さん一致しているところだろうとは思うのですね。
結局、将来的にも、日本の国民がさらに一層生活水準を豊かにできるような形に税制が手伝っていければいいと。こういうことだろうとは思うのですが、香西会長が最初にこのメモでもお示しいただいたように、一方で、好むと好まざるにかかわらず、世界全体がグローバル化していく。特に経済の世界はそうだと。そういうことを我々が事実関係として踏まえた場合に、今の我々が考えているような目的を本当にどうやったら果たすことができるかというのは大変難しい問題でありまして、このグローバル化の波の中に我々が巻き込まれていけばいくほど、その中でしかし日本が生きていかなければならないとすれば、格差の問題については、必ずしも我々が望んでいるような十分な答えが出てこない可能性があると思うのですね。
ですから、そこのところを我々が本当に知恵を使って、この税制をうまく構築していくことが一番大事だと思うので、そういう観点からやはり、これからのいろんな部会の中でも、必要な資料の蓄積と、それからそれを使った議論をしていただければと思っております。
〇香西会長
どうもありがとうございました。
〇神野会長代理
特にございませんけれども、先ほどおっしゃったような意味で、何を公共部門が担い、何を公共部門が担うにしても、料金でやるのか租税でやるのかという問題は非常に大きな問題で、私の理解では、日本は本来、市場でやるべき領域に政府が足を踏み入れ過ぎていて、逆に租税でやらなければならないところが少な過ぎると。ここが多分、日本人は、サービスというのは、ただでもらうものではなくて、何らかの負担をしなければならないと。最近、何でも保険とか何とかを使うようなことに通じてくるのではないかと思いますので、こうした問題や、それから全体の枠組みに関するようなものについては、格差、それから人口問題なんか含めて、いろんな意見がというか、今、会長がおっしゃったように、いろんな視角があると思いますから、出していただくということではないかと思います。
それで、ただ、今日の議論を聞かせていただくと、いろんな見方の相違はあったとしても、会長メモでお出しになっているこの3つの枠組みはそう大きく変えずに、ほぼどこかの問題として入り、ここで議論を深めていけばいい問題ではないかと思いますので、できれば今日の議論をもって、会長のメモのような形で、3つの領域を今日の議論を踏まえて進めていくと。もちろん、この部会に関心のある方はそれぞれご出席いただくという案ですので、ここでの議論を総会のほうにフィードバックして、視点が、専門家だと、特に全く違った視点から議論が抜ける場合もありますので、フィードバックしながら進めていくということで、ほぼ、今日いろんなご意見をいただきましたけれども、大きな枠組みは変えずにいいかなというのが私の印象でございます。
〇香西会長
どうもありがとうございます。どうぞ。
〇井上特別委員
先ほど佐竹委員からお話がございました歳出の問題ですよね。これはやはり一番日本にとっても大きな、我々国民から見ると大きな問題なのです。要するに入ってきた税というものの使途というのが本当にどうなっているのかと。例えば特別会計にしたってしかりですけれども、今年度、16年度ですか、43兆円も余った。その他の歳出として2.4兆円は翌年度に送るということだって、こんなものは一般会計に入れたらいいのではないかというような感じもするわけでして、やはりいろんな予算というものがどうも我々から考えて非常に問題があるのではないかと。農業予算にしてもしかりだと。2兆何千億もつぎ込んでいて、一体どうなのかと。その中の公共投資は1兆1,000億も19年度あるわけですよね。本当に必要なのかというようなことにしても、やはりもう少し突っ込んでここで検討していただくことをぜひともお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〇香西会長
大体時間も過ぎてまいりましたが、今日はいろいろな観点からご批判、ご提言等がありまして、非常にありがたかったと思っております。私の最初に出しましたメモに沿って、まず調査分析部会を立ち上げると。その中で今日出たような議論についても十分勉強させていただくというふうに、新しい部会にぜひそれを頼みたいと思っておりますので、次回、もしできましたら、それまでに準備を整えて、新しく部会を立てて、3つの分野に分かれておりますけれども、その中でもいろんなこと、例えば従来の税制改正の流れをもう一度把握し直すとか、一応テーマ例にも挙がっておりますけれども、それぞれ検討させていただきたいと思っております。
それからほかの、つまり、出るほうの話というのは、最初に猪瀬委員からもお話がありまして、これは非常に大事なことだなあと私も思っておりますが、税調から言い出すということになると、先ほどおっしゃったような、税は何に使うものなのかということあたりから攻めていくのがやはり一つの方法かなあと。そういう点で非常に励まされた思いがいたします。しかし、これはやってみないとなかなかわからないところでありますけれども、私なりに考えさせていただきたいと思っております。
実は広報広聴部会というのをどのようにやったらいいかということも、その点とも非常に関連しておりまして、それについてもぜひいろんな方からご意見をいつかお伺いしたいなと思っておりますが、とりあえず、まず調査分析部会を発足させるということについて一応ご了解いただいたということで、次回開催させていただければありがたいと思います。
それからお手元に上月委員からのご意見が配られていると思います。一応このように、各委員から私あてという形でいろんな提言を出していただいておりまして、こういったものも皆様方にも目を通していただきたいと思っておりますので、どうぞ、これ以外にも、今日言い残された方についてもご提言等をぜひお寄せいただければありがたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まだ尽きないようでもありますけれども、時間でありますので、本日の企画会合はこれで終了ということにさせていただきたいと思います。
なお、日程でありますけれども、3月9日、金曜日でありますが、午後2時から4時まで、時間は今と同じであります。この第4号館において次回の会合、これは企画会合、つまり、全委員が集合する会合を開催しまして、そこで調査分析部会が発足することを再度確認していただいた上で、そこから調査分析部会の第1回目を続けて行うという形にしてまいりたいと思っております。
それから3月中旬には、一部の委員による海外出張を予定しております。特に、最近、税制改革を行いましたドイツその他を中心に、これは付加価値税を上げたり法人税を下げたり、いろんな形で興味がある改革だと思いますが、それについて調査していただくことにしております。
そこで、3月9日の次は4月13日の午後2時から4時ということを考えておりますので、皆さんの手帳にお書きとめいただきたい。その他、次々とメール等でご連絡をさせていただくことがあるいはあろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、日程につきまして、特になるべく早く言ってくれというお話がいろんなところから聞かされておりますので、その点を注意してご連絡していくようにしたいと思っております。
それでは、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。