企画会合(第4回)終了後の香西会長記者会見録
日時:平成19年2月9日(金)16時24分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
それでは、税制調査会第4回企画会合後の記者会見を行います。
〇香西会長
本日は皆さんにも聞いていただいたと思いますので、こちらから特にご説明するようなこともないかとは思っているのですが、私個人の印象としては、各委員から非常に積極的というか、生産的な意見がたくさん出ました。この調子でやっていただければ、かなり幅広い視点から国民の期待、納得感も含めていい税制審議ができるのではないかという希望を持ったというのが全体の感想であります。
いろいろなほかの政策との関連とか、そういったこともいろいろ出ておりまして、こういうことも実際の政策を作っていく段階になったら、非常に調整なり交渉なりが必要になるのだろうなと、覚悟させられたということももう一つ言えるかと思っております。
ということで、むしろ皆様から質問なりご意見なりがあれば、あるいはアドバイスいただければ非常にありがたいと思っておりますので、どうぞご自由にご発言ください。
〇司会
ご質問のある方は、挙手をお願い致します。
〇質問
会長から、今日ご覧になっていて特に重要だったなと思うような議論だとか、今後参考になるような議論というのは、どの辺に会長は注目されて見ていらっしゃったのでしょうか。
〇香西会長
とりあえずのところは、議論の仕方みたいなことがどうなるかと思っていたのですけれども、皆さんからは非常に具体的な問題も含めて、しかもかなり大きな視野からの解決といいますか、税制改正のやり方を考えているということを理解できたので、その点では非常にやりがいのある調査会が運営できるのではないかと考えたということで、特にどれということはないといえばないわけです。
ただ、すでに所得税については、その意味づけについて深くご意見が具体的に出てきましたし、それから、単にお金だけの話でないと、特に高齢化社会では健康というのが非常に大事だというようなお話もありましたけれども、ああいった問題をどういう形でこの調査会で生かしていくかというのは、ちょっとまだ私にはよくわからないというか、どうしたらいいかなという問題を突きつけられたという気がいたします。しかし、やはり非常に重要なことであるということは変わりません。
それから、国家のあるべき姿という形で問題を出されて、これは確かにそのとおりだと言わざるを得ないのですが、私のようなシンプル・マインデッド・エコノミストにとっては、なかなか荷が重いなと、実際にいえばそういう感想もありましたけれども、できるだけそういう方々のご意見も踏まえてやっていきたいと思っています。
それから、例えば年金をもらっていない人がいるという話がありましたけれども、私、全く個人的な感想ですけれども、多少税のことなど考えさせられるようになって感じることは、例えば税金を払っていない人というのはどういう人なのだろうということですね。どういうふうに分布しているのだろうと。例えばそのうちのどのくらいを生活保護でみているとか、いろいろなことがあるのだろうと。つまり、納税者の中身をしっかり知るということだけではなくて、今、税金を払っていない人というのはどういう人たちなのだろうということも、やはり知っていないといけない。というのは、よく行われる減税政策というのは、税金を払っている人には得なのですけれども、そうでない人には及ばないわけですよね。そういったことをどう考えるのかなということ、これは今日の議論とは直接関係ありませんけれども、無年金の話が出たので、ふっとそういうことも考えた、というぐらいのところかと思います。
そのほか、国と地方の問題もありましたし、いろいろありましたから、そういうことで、議論としては、後半かなり政策に沿った、どういう税制にするかという具体的な問題が控えていますので、調査分析だけれども、それに焦点を合わせて、とにかく結論を前提としないで調査していって、しかし、その調査によって、次の結論を選ぶ時には、それが大きくものを言う、役に立つ、そういう調査をぜひやってほしいということで、私の感じでは、これは事務局にも頼みますし、部外の方からも協力を得たいと思っていますが、やはり責任のある税調委員になった方については、より積極的に、それぞれの領域で結構なのですけれども、調査を着実にやっていただきたい。そういう形で運用していくのがいいのではないかと思っております。
〇質問
会長が会議の中で、これからの調査分析の中の3つの視点というのをおっしゃられたかと思うのですけれども、その中で1つ目と2つ目の視点で、1つ目のほうは、今の経済社会の変化に対応しきれていない部分を税制でどう対応するか。2番目は、ある意味、政策税制というようなものをイメージしたのですけれども、改めて1番目と2番目を説明していただけますか。
〇香西会長
実はああいう地図を描くというのはなかなか難しくて、どこをどういうふうに分類してみても、ぴったりと分離はできないですね。私の感じはむしろ、そういうグループというか、大きなエリアをとりあえず設定するけれども、それは同じようなテーマを2つのエリアでそれぞれやっていただいたあとでぶつける。議論が違っていたら、2つの研究をぶつけていくという形もあり得ると思っております。
つまり、役所の機構でも、あまりきれいに分けて絶対権限が重複しないというふうになると、実はそれは管理者にとっては非常に困ったことで、係長が全部仕切っちゃう、あるいは課長が全部仕切って、なかなか上へ情報が上がってこないわけですね。そうではなくて、審議会は一つの大きな委員会ですから、全員の議論というのが必要なので、ある程度重複して調査が行われても、むしろそのほうで意見が対立すれば、それをどうみんなで考えるかというふうになっていく点もありますので、あまり厳密にそこを考えているわけではないのです。
ただ、大体おっしゃったようなことで、今、どういう構造変化が起きているか、そのためにはどういうことが問題になってくるだろうかということも重要ですし、それから、税でどうするかということになると、本当にそれは実効性があるのかということですね。やる気でこういうつもりでやったけれども、本当にそうなるのか。例えば設備投資をたくさんしたくて、こういう税制改正をしたけど、それは効果があるのかとか、そういった可能性自体をチェックしておく必要があるので、それでないと、ある種の政策的な対応をしても、どれぐらいそれに期待できるのかとか、どういう条件ならそれは非常に期待できるのかとか、そういったこともあらかじめいろいろ詰めておく必要があるのではないかなと思っているわけです。
だから、あの枠組みというのは、一応の作業の入り口の整理として考えたもので、秋以降の出口になれば、今度は政策目的に合わせた出口ができてくるだろうと、そういうふうに期待しているということです。
〇質問
3番目の租税原則の見直しということなのですが、会長は今の原則というものは何だとお考えになっていて、ある意味、どこが不十分であるとか、あるいはどこを議論する余地があるというようにお考えですか。
〇香西会長
私は実は租税学者ではないものですから、なかなかそこは難しいといえば難しいことなのですけれども、「公平・簡素・中立」というのがよく使われることです。例えばブッシュ大統領がパネルを作っていますが、そこでは、「よりシンプルに、よりフェアに、そして成長を引き出すように」、“Conducive to Growth” そういう3つを一応掲げております。それはいろいろあって、例えば従来でいえば、所得税で総合課税をして、累進性をするというのが一つの原理とまで言えるのかどうかわかりませんが、一つのかなり大きな柱として考えられていた時期もあったと思いますが、例えば金融所得については、それでは税収もみんな逃げてしまうとか、いろいろな問題があって、いわゆる総合課税主義というのも少し揺らいでいることは確かでしょうね。そういう中でどういうバランスをとるかということを考えていくということで、この点はこの3月にも、特にヨーロッパではいくつかの税制改革が行われつつありますから、そういったところでの発想法といったようなものも十分調べてきて、今日そういう海外のことも調べろというご注文もあったわけですが、それはそういうことをするつもりで予定をしております。
いろいろなところでいろいろな改革が行われているようで、私自身はあまりそういう情報を今まで注意してこなかったので、よくわかりませんけれども、例えばドイツでは、一応、付加価値税を引き上げるということになったのですか、何かそういう話をチラッと聞いた程度で、詳しくはまだちゃんと勉強していませんが。それから、所得税の最高税率を引き上げるというのと、付加価値税も引き上げる。しかし、法人税については引き下げるというような、いろいろな動きがあるようですね。私は情報をはっきり知りませんから、間違っているかもしれませんが、今、いろいろな情報が入ってきつつある段階だと思います。
それから、アメリカではフラットタックスというのですか、同じような税率でやろうとか、税の計算がポストカード1枚でできるというような、そういう税制がいいのだとか、あるいはA4 1枚で収まるとか、そういう提案なども出ているわけですね。だから、いろいろな形で、おそらく一挙にガラッと変わるというより、いろいろな原理をどういうふうに按配していくかとか、そういうことが問題になってくるので、そういう中では、一つ一つの税目ごとの役割、期待される役割というのが少し変わってくるというようなことではないか、という程度しか認識しておりません。まだ不勉強でまことに申しわけありませんが、そういうことです。
〇質問
今日はまだ皆さんどういう視点から考えたほうがいいというようなことを述べられただけにとどまっていると思うのですけれども、今後の議論の進め方は、先ほど海外調査なども検討されているということをおっしゃっていたのですが、今後の進め方をもう少し聞きたいのですが。
〇香西会長
次回の会合自体は、今日議論したようなことを多少例示的に、具体的に、こういう勉強をしようというのをいくつか捉えて、とりあえずそれでスタートができるような態勢を作っておきたい。早く着手しませんと、議論だけやっていたら、あっという間に日が過ぎてしまいますから、調査、実証、あるいは推論をやられる方には、もう、ジョブですね、仕事をしてもらわなければいけないと思いますので、スタートできるところからどんどんスタートしていく。そのためには、スタートするところは、やや具体的な調査計画というか、調査の内容とかそういうのを詰めていきたい。あるいは、そういうものについていろいろ検討してみたいというふうに希望はしております。そのために、何人かの先生にもいろいろ相談して、それぞれこういうことをやってほしいなというような希望を私からお願いするといったことも考えております。
出張のほうは3月になると思います。私は行けないと思っているのですけれども、何人かの委員に行っていただいて、特にそういう点をずっとやってこられたような方に行っていただいて、海外の税制改革について正しい認識を持ってやっていきたいということです。
あとは、今後はそういうことで仕事が少しでも前進すれば、それをいくつかためておいて、調査分析部会を一応設ける形にして、ある程度調査がいくつか立ち上がって、これを増やしていけば全体の調査ができるというような形がある程度整った段階で部会を置いて、今度は部会でご報告をしてもらう。これはこちらの中だけではなくて、外部の専門家を呼んで話を聞くこともあるかもしれませんけれども、そういう形で、とにかく税調の中の調査というのを少しでも早くスタートさせて、充実させていきたいというのが私の今の希望です。うまくいくかどうかは、私が保証するわけにはいきませんが、そういうふうに持っていきたいと思ってやっております。
〇質問
今日の議論の中で、税だけでなくて、受益の部分のところの話がかなりあって、受益と税の関係をどう見るかというような意見がありました。その中で、先ほど会長のほうが、ほかの政策との議論のタイミングについては、ちょっとまだ早いようなおっしゃり方だったと思うのですが、例えばほかのそういった審議会がいろいろ政府の中にあると思いますけれども、そういったところとの議論はどういうふうに考えていらっしゃるのか。昨年の例でいくと、財政審と税調の共同部会というか、一部の委員同士での会合というのがたしか開かれたと思うのですけれども、そういったことがあるのか。
あともう一つ、本間さんの時代に、経済財政諮問会議との連携について、かなり言及されていたのですけれども、ここについてはどういうふうになっているのか、お願いします。
〇香西会長
実は本間先生もそうだったし、その前の石先生もそうだったかもしれませんが、財政審には税調会長が専門委員か何かで参加するという慣例ができているそうでして、実は私もそれに任命されまして、きのうは財政制度分科会というのが開かれて、そこで財政審のほうの議論を、発言はしませんでしたけれども、伺ってまいりました。今すぐということではありませんけれども、向こうは当然のこととして、来年度予算に向けてどういうふうに歳出を考えるか、あるいは中期的な財政再建の方途をどうするかということを、むしろ専門になっていろいろ議論されるだろうと思っております。
それから、諮問会議ですけれども、こちらのほうはマクロ経済も含めて、経済全体の動き、あるべき日本経済の姿というか、社会の姿というか、そういったことを総理以下ご出席になってご議論するところでありますから、ある意味で大枠を決めていく役割を担っておられると思いますので、タイミングよくこちらからも連絡もとりたいと思っているし、向こうからもお話があるだろうということを期待しております。これは内閣府の中にありますので、十分意思疎通をしていきたいと思っています。
社会保障の問題がやはり非常に重要な問題であって、あるいは社会保障といわず福祉というのですか、それは非常に大事な問題で、これからお金が要るのはそちらだというのは、今日の発言もありましたけれども、社会保障制度がどういうふうになるのかということで、そっちが先に固まってしまっていて、税金だけ取ってこいと言われても、それはなかなか難しいということもあると思いますので、タイミングよくこちらの事情もご連絡していかなければいけないだろうと思っております。
現在、年金については、この間、平成16年の改正でマクロ調整条項がついた形で、それが守られているとすれば、一応、年金税制は安定しているはずなのですけれども、そういったことが具体的にはどうなるかという問題も全くないわけではないかと思います。社会保障制度についても、政府の方針は別として、もっと再検討しろという議論がないわけではないので、そういったことも頭に置いてやっていきたい。
それから、子育て、少子化対策のほうは、まだ政策が大きな形ではついていないわけですから、それと税制の関係、これは何か支出するための財源が欲しいという場合と、税制を変えてもらってそれを優遇する場合と、両方あるわけだと思うのですが、それぞれ考えていくことが大事であろうと。
総理からの諮問の中にも、喫緊の課題として少子化と地方分権、これに対応するということも言われておりますので、そういった問題はタイミングよく、乗り遅れないように、慌てすぎて飛び乗らないようにということで、タイミングを狙いながら、かつ、その間にお互いに協力していけるような形ができていけばいいなと思っております。
〇質問
先ほどもチラッと話が出たのですけれども、国際的に法人税を引き下げる動きが出ている。日本でもそれに乗り遅れるなという議論もありますが、香西会長は、課税ダンピングとか課税競争というものについて、どのような認識をお持ちなのでしょうか。
〇香西会長
非常に難しい問題ですが、金融の課税と同じように、非常に国際競争が激しくて、特にEUの中では地域的な移動が非常に激しくなってきているわけですね。ですから、その中で法人税というのは、税率のほうは高くするということは難しい。むしろ低くしないと、おそらく海外直接投資として外へ流れ出してしまう。タックスヘイブンはみんなで抑えるというふうに一応の約束ができているわけですけれども、どこへ投資するか、どこへ工場を造るかということになると、タックスヘイブンとは限らないわけですから、いけないとばかりは言えない。そうなると、やはり法人税率のほうを下げていこうという動きがあることは事実だろうなと、私はよくわかりませんけれども、そう想像はしております。
しかし、これはある意味でいえば、グローバリゼーションになって、世界的にいえば、一番いいところに投資をするというのが当然であって、それによって企業だけが儲かるのではなくて、世界的資源配分の中でそれが最適だということになってくる可能性があるわけですね。そういうふうになっていきますから、ある程度、国際競争力ということを考えざるを得ないというのは当然で、それが悪いことばかりでもないということだと思います。
ただ、その場合、法人税率を仮に下げるとすると、どういう形でタックスベースのほう、要するに薄く広くが一番いいと言われているわけですけれども、税率を下げるのなら、どこから代わりと言ってはおかしいのですけれども、それで税収が減ってしまったのでは、国として困るということでしょうから、そういう場合に、完全に賄うかどうかは別として、やはりタックスベースをどうするのか。タックスレートのほうは、EUのように、域内で現在M&Aも盛んですし、相互乗り入れの海外直接投資が非常に活発だと言われておりますから、そういう中で税率のほうは考えなければいけないし、だからといって、財政が非常に赤字になっても当然困るわけで、それをどうするかというのがおそらく各国の財政政策というか、そういうものとして非常に知恵を絞っているのではないかなと思います。
それについては、海外ではいろいろな議論が行われていることは承知していますが、私は、それが日本にどう当てはまるかということについてまでは、よく事情を承知していないのですけれども、ドイツはドイツなりに、アメリカもプレジデンシャルパネルでも一つのやり方を提示しているのですけれども、そういったものが日本でどうなるかなんていうことも、いろいろこれから勉強してみたいと思っているところです。
〇質問
ただ、日本の場合は、6割の企業が法人税を納めていません。効果があるのですか。
〇香西会長
その問題は主として外形標準をどうするか。地方の法人住民税の問題として外形標準によって課税をする。これはタックスベースを広げる一つの有力な手段ですね。特に地方の場合は、ベネフィット、つまり共通の利益としてそこに存在している法人という住民がいるというわけですから、そういう意味では、赤字だろうと、黒字だろうと、恩恵は受けているということで、説得しやすいということがあるだろうと思いますね。だからそれはタックスベースを広げる一つの有力な手段ですね。
〇質問
今のタックスベースの議論でいうと、ドイツでいえば、確かに税率は下げるわけですけれども、その財源は法人税の中でかなり賄う。6分の5とか、ほとんどとか言われていますけれども、それはタックスベース、つまり課税対象の拡大で賄うわけですよね。そういった考え方もあるということなのでしょうか。タックスベースというのはそういう意味だと捉えればいいのでしょうか。
〇香西会長
何をタックスベースにするかということで、例えばよく日本で行われてきたのは、政策的な減税をしているものを少しずつ整理して、役に立っている租税特例措置は残すけれども、別のものは租税特例措置を認めないというというやり方でやっていく。日本的にはそういうのが従来は多かったのだろうと思います。歴史的にいえばですね。だけど、これからもそういう形だけでいいのか。そうすると、租税特例措置というのがどれだけ効果があるかという議論から始まるわけで、それをやめたらどれぐらい税収になるかとか、そういったことはじっくり勉強させていただいて、実態をよく知らなければなかなか言えないことですので、ある意味ではタックスベースを広げることがタックスレートを下げる、したがって税の確保のほうの目的にも大きなダメージにならないということが言えれば、反対論に対しても多少の言い訳ができやすいわけですよね。私がどうするということではないのですけれども、そういう道があるかどうかということ、これは提案する方のほうからも、ぜひこういうふうにしたらいいというお知恵をかりたいし、反対の方からも、国際競争のためにそれが必要だという、必要でないという議論ももちろんあるわけですけれども、どういうタックスベースがあるべきかということについての提案もいろいろ出てくるということになって、議論が具体化してくる。それは今すぐということではないというわけですけれども、その準備段階的な議論は、仮定の問題としてやっている限りは、できないわけではないでしょうね。
〇質問
今日の議論を伺っていて、結局、何について調査分析をするのかというのが、ちょっと自分の中でイマイチはっきりしなかったので、繰り返しになってしまったら恐縮なのですけれども、そこを改めて教えていただきたいというのが1点と、海外への派遣というお話をされていましたが、どういった国に、何人ぐらいの方を派遣して、どういう項目について調査をするのかということを教えていただけますか。
〇香西会長
はっきりしているのは、3月末まで、今年度中に行っていただくことになろうという方は、ヨーロッパを考えておりまして、例えばドイツなどが連立内閣になって、いろいろな税制改革をした。あるいはしつつあるわけですから、その時の議論といったようなものをよく聞いておきたいということだと思います。
いろいろな噂では、向こうでは必ずしも政府の委員会だけではなくて、学者の提言というのがけっこう有力になる場合もあって、そういう意味では、向こうの指導的な学者の方の意見を――日本ではシャウプ勧告というのが出て、それがドッジラインのあった1949年です。それが日本で消費税を導入するまでの税の体系の根幹にあったわけですね。そういう形で、向こうでも税制改革が行われる時には、一応ちゃんと租税原則に立ち上って、いろいろな議論をしているはずですから、そういったことについて調査して、日本においてそれがどのように適用できるか、できないか、日本ではできないのか、できるのか、といったようなことを議論する素材にしてもらいたいと思っています。
という程度なのですけど、具体的に何を調査するかという問題については、確かに今日のような議論は非常に私参考になって、勉強になって、心構えを決める上では勉強になりましたけれども、それだけでは調査が始まらないわけですね。具体的な調査項目については、例示的だけれどもこういうのはどうだろうかとか、そういうことを少し先生方と相談して、こういう形でスタートしたいということが決まったものは、どんどんそれでスタートしていっていただきたいということで、できれば次回には、こういう方向でこういうテーマが第一歩として、何先生にこういうことをやっていただくというような形のことを言えればいいなと。まだ先生方がうんと言ってくれるかどうかわかりませんから、そういう期待というか希望、私としてはそういう希望を持っております。
〇質問
先ほど外形課税の話がちょっと出ました。そうしますと、将来、法人税の引き下げを議論する時には、外形課税の部分の拡大・拡充というものも同時に俎上に上り得るということなのでしょうか。
〇香西会長
それはまだちょっと、わかりません。議論というか理論、それは調査してやってみなければわかりませんので、そうすべきかどうかということもわからないわけで、こういう政策をとりたいからこういう調査をするというふうにとられると、そこの段階で、ある意味でこれはだめというふうな結論を出されやすいのです。租税というのは好き嫌いがありますから、これはこういう税に決まっているというようなことが言われちゃうわけで、例えば今日も田近先生が、所得税の再分配効果が減ったというけど、それは当然だというような議論をされたのですけれども、ああいうことは普通の人にはぴんと来ないわけで、再分配効果が少なくなっているといったら、誰でもちょっとおかしいのではないかと思うわけです。だけど実態は田近先生のおっしゃることもかなり真実だっただろうと思いますね。消費税を入れたのはそういうことですから。だから、そういう議論にならないように、冷静に議論するということをまず前半では心がけたい。でないと、すぐこうやるんですかと、こういう質問になっちゃうと、ニュースにはいいかもしれないけど、こちらとしては、あそこはああやっているというだけでつぶされる危険が多いわけで、案というのは、一応全部出てから、どれを選びますかという段階になってつぶされるのはちっとも構わないのですけれども、それを言う前に、あれはだめだと、再分配機能が落ちているというふうに決められちゃうと、もう調査や実証や検証をするという意味がなくなっちゃうんですよ。ですから、秋以降はある程度複数案が出てきて、その中の議論にだんだん近づいていくと思いますので、今の段階からそういうふうに、税を取るための作戦として調査しているというふうには取られたくないですね。どうもすみませんが、ぜひそういうふうにご理解いただければ大変ありがたいと思います。
〇質問
先ほどの追加でヨーロッパの派遣の話なのですが、ドイツ以外の国には行かれるのかということと……
〇香西会長
計画を最終的には聞いておりませんが、ドイツが一つの目標であることは間違いありませんということですね。
〇質問
先ほどお話を伺って、ドイツで税制改正の議論をどういうふうにやっていたかということが主な調査になるのか……
〇香西会長
新しい税制としてどういうことになっているかとか。
〇質問
税制そのものの内容も……
〇香西会長
それも含めてですね。
ドイツの例は一番典型的な例ですけれども、例えばフランスの場合などは、財政で出生率を上げているという理解もあるわけです。それから、例えば日本では個人が税金を納めるということになっていまして、奥様は働いていたら扶養家族の限度があって、奥さんが就職されて何かされると、何万円以上になると急にぱっと上がるとか、そういう扶養控除の形で処理しているわけですが、フランスはそうではなくて、合算分割方式をとっているわけですね。そういうことも前々から議論されていることですけれども、この際、必要かもしれないと思います。それは出発される方にいろいろ案を作ってもらいますが、最終的な案は私存じません。まだ来ていませんのですが、そういったようないろいろな調査すべきことがあると思います。
〇質問
そのドイツの例ですけれども、調査する場合には、どのように国民に対して周知をしていったり、理解を求めていったかというところも調査はされるのでしょうか。
〇香西会長
私、具体的に調査の計画書というのをまだ読んでおりませんので、ちょっとお答えしにくいわけですが、そういう形ができれば、それは結構なことだと思います。どういうふうに説得したか、どういうふうに世論を引きつけたか。それは実は、さっきも言いましたが、広報広聴というと、何となく上意下達と言っては悪いけれども、政府が宣伝するというような感じになるので、そうではなくて、説明責任とか納得感というのを、本当にどういう形をとればいいかということが、私まだイメージができなくて、広報広聴部会を作るという、その方針は変えていないつもりなのですけれども、まだ踏み込んでいない。それより先に調査分析部会のほうから立ち上げようとしているのは、アイデアをもう少し練りたいなと思っているところなのです。そういう点からいえば、調べてきていただく分には大変いいことで、今回の出張日程等もあるから、どのくらいできるかわかりませんが、そういう期待があることは出張者にもお伝えしたいと思います。やってくれるかどうかはまだわかりませんけれども。
〇質問
ドイツでは総選挙で税が問われて、そこでかなり理解が進んで、結局、連立与党になったわけですけれども、それによって増税が行われたという過程があって、そこが最大の周知の過程だったと思うのですけれども、それに対して日本は、参院選まで議論をしないと言っているわけですから、大きく違うわけですよね。その点については、税調会長として改めてどう思われますか。今年末には大きい税制改正が決まりそうにもかかわらず、今の段階では選挙までは議論しないのだというのが、議会の原則からもかなり外れているようにも思うのですが。
〇香西会長
それは、秋以降に実態の議論を譲るということについては、国会でもうすでにその方針を政府として公表しておられるわけでして、私はそこは政治問題として処理されていることだろうと考えております。もちろん、広報広聴というか、そういう説得、納得が必要だということは確かなことですね。
ドイツの場合は、結局、足して2で割るというやり方ではなくて、2つともやるというやり方になりつつあります。つまり、社民党と福祉党、民主党、それぞれ、我々はこれを増税する、我々はこれを増税する、じゃあ2つともというのが連立内閣になっているように、うわさというか、私の聞いた話ではそうなっているということのようです。あるいは、そうでない税目もあるようですけれども、かなり大きな税目については、双方の主張を両方とも実現するというやり方になっていたようですね。
もう一つは、ドイツは例のマーストリヒト条約の財政規定を違反しているわけで、罰金をかけられても仕方がない状態ですから、そういう点では、増税を政府としてやって、いやしくもEUの中の大国がマーストリヒト条約の財政規律を守っていないというのは、どこかで払拭したいという気持ちはドイツという社会にはあっただろうと。でないとユーロ圏の中の指導力の問題もかかってくる、メンツの問題ももちろんありますし、ということがあったのではないかと思います。
〇質問
そうすると、改めてですが、秋以降という話がありましたけれども、4月ぐらいには経済財政諮問会議のほうに基本方針というようなものを示すように言われている政府税調なわけで、その中では、例えば消費税をどうしたほうがいいとか、そういうことには触れない形でいくのでしょうか。
〇香西会長
それについては、私はまだそこまで考えを詰めておりません。たしか総理は「基本哲学」と言われたんですね。哲学というのはどういう範囲なのかというのは、そこまでの調査分析の実現度によって、税調はおそらくそれまでに何回か、企画会合か総会かわかりませんが開かれますから、そこでの議論を見ないと、今の段階でこういうつもりですという腹案はまだ持っておりません。
具体的に言われていること、事務的、連絡的にいえば、諮問会議は前会長も、審議している中間報告だなというふうに判断しておられたと引き継いでいますので、それが最低限、求められたらやらざるを得ないことでしょうね。それ以上に踏み込めるかどうかというのは、今のところは全く白紙であります。
〇質問
しつこくて申しわけないです。ヨーロッパ訪問の話ですけれども、もし先生が今の段階で把握していないのであれば、事務方のほうでも結構なので、もうちょっと具体的に、日程とか、何人ぐらいが行くのか、どの国に行くのかというのを教えていただきたいのですけれども。
〇事務方
今日も企画会合で出ていましたけれども、希望を出してくださいという話で、その希望者の中から会長が選ばれて、それでその人たちのご意向もあるでしょうし、本当にこれから決まっていく話なので、例えば次回ご報告できるような話があればご報告するとか、そういう段階であります。
〇質問
行くことだけは決まっているということですか。
〇事務方
ええ、やはり海外調査は必要だろうというのがあります。
〇香西会長
海外調査へ行ってもらうつもりですというふうには今日の会議で一応お話しして、ご希望があれば言ってきてくださいと言っているわけです。
〇質問
行くのは大体3月という理解でいいのですか。
〇香西会長
まあ、今年度予算で行くとしたら、そういうことになると思います。
〇質問
今のところはその方向ですか。
〇香西会長
ええ。
〇質問
そうすると、報告は戻ってきてすぐ、4月にまとめるとか、5月にまとめるとか、1か月ぐらいでまとめられたりするのか、それとも口頭で総会でやるのか、どんな感じにされるのでしょうか。
〇香西会長
それはまだ出張者と打ち合わせておりませんから、誰に行ってもらうかということも最終的には確認していないので、行くと決まったら、どれだけできるかということですね。また、向こうへ行ってみたら、そういう情報はうまく取れなかったということだってあるわけですので、それは行って帰ってきていただくまで、ちょっと待っていただかないと、具体的には……。
〇質問
これからいろいろの日程、4月に経済財政諮問会議もありますし、「骨太の方針」もあるわけですから、会長の希望として、いつぐらいまでには全体像を知りたいというのがあるのではないかと思うのですが、そこはいかがですか。
〇香西会長
出張についてですか。
〇質問
ドイツ出張報告について。
〇香西会長
それは年度内に向こうへ行って帰ってこられるというふうに期待していますから、その時に当然いろいろなことを調べてきて、ご報告していただけるものと期待しているわけです。そんな長い期間向こうへ滞在するということでもないはずです。先生方も行くとしたら、授業は4月から始まるわけですから、その間を縫って行くということになると思います。
〇質問
その結果というのは、当然、総会の場なりで、我々にも公開される形で出てくると理解してよろしいですか。
〇香西会長
ほかの調査でたくさん話題があるかもしれませんけれども、やはり重要な問題ですから、今日もそういうご指摘もありましたので、なるべくそういう機会を設けたいと思っております。
〇質問
大体イメージとすると、4月とかそれぐらいには出てくるというふうに……。
〇香西会長
まあそうでしょうね。それぐらいは私としては期待しておりますけれども、実行できるかどうかは、実際に当たってみないとわからない。今のところはまだ約束するというわけにはいきませんという状態だと思います。
〇質問
基本的には、今のところドイツ調査と考えればいいのですね、ヨーロッパというよりも。
〇香西会長
しかし、ヨーロッパへ行ったら、やはりついでにちょっと回るということにもなるのではないですか。ドイツだけで資料をもらうというか、全部が全部その場で終わるわけではなくて、いろいろな資料をもらってきて、こっちへ帰ってからも勉強するということもあるでしょう。ついでにイギリスでちょっと見ておこうかとか、そういうことだってあると思います。それは委員の方の自主性を私としては尊重してやっていただきたいと思っています。ご興味のあることを勉強しないと、なかなか、無理やり命令していい報告が書けるものではありませんから、そこは立派な研究者が委員になっていただいているので、先生方のご興味は、任せて調整しないという意味ではありませんけれども、そこはその方の興味なり関心なりということを満たした上でいろいろなことができるのだろうと思っておりますから、なるべくその人の学問的な関心で、いろいろなことを聞いてきていただきたいと思っています。
〇司会
よろしいですか。
それでは、会見を終了させていただきます。
〇香西会長
どうもありがとうございました。またよろしくお願いいたします。(了)