企画会合(第2回)議事録
日時:平成18年11月29日(水)10時00分~
場所:中央合同庁舎4号館第一特別会議室
〇委員
それでは、時間がまいりましたので、第2回の企画会合を始めさせていただきたいと思います。
今日は、実は起草委員に直に執筆していただきました「答申(案)」をまず読んで、皆さんのご意見を最初お伺いする機会とさせていただきたいと思います。当初1時間を予定しておりましたけれども、しっかりと議論をすべしということで、1時間延長させていただきまして、2時間でやらせていただきたいと思います。
また、お手元にあります「答申(案)」は、会議終了後返却とさせていただきます。これは途中で外に出ますと、大変な騒ぎになりますので、ぜひこの文章はしっかり管理していただきたいと今後とも考えております。
それから、もう一つ、「審議において出されたその他の主な意見」ということで、これはご意見をいただきながら、答申に盛り込めなかった主要なポイントについてまとめさせていただいております。これにつきましても、ご意見があれば、ご指摘いただければと思います。
それでは、「答申(案)」について、ご議論いただきたいと思います。この「答申(案)」、先ほど申し上げましたとおり、数回にわたり起草チームの方々にご尽力をいただきましてまとめたものでございますので、事務局に読み上げてもらい、その後、ご議論をいただきたいと思います。
〇事務局
答申(案)読み上げ
平成19年度の税制改正に関する答申
I 税制調査会の使命-総合的な税制改革に向けての視点と審議の進め方
II 総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正
1.経済全体の活性化に向けた速やかな対応
(1)減価償却制度
(2)同族会社の留保金課税・エンジェル税制
(3)事業承継関連税制
(4)国際課税
(5)外形標準課税
(6)政策税制の集中・重点化
2.新しい経済法制等に対する税制上の対応
(1)三角合併の解禁への対応
(2)信託制度の抜本見直しへの対応
(3)リース会計見直しへの対応
3.国民生活に関連する税制
(1)金融所得課税
[1] 金融所得課税の一体化
[2] 上場株式等の配当や譲波益の軽減税率
(2)円滑・適正な納税のための環境整備
(3)個人住民税
(4)道路特定財源
(5)地球温暖化問題への対応
I 税制調査会の使命-総合的な税制改革に向けての視点と審議の進め方
(1)当調査会は、本年11月に安倍内閣総理大臣から以下の諮問を受けた。
「歳出・歳入の一体改革を進めていくにあたっては、「成長なくして財政再建なし」の理念の下、イノベーションの力とオープンな姿勢により日本経済に新たな活力を取り入れ、経済成長を維持していくことが重要である。こうした取組みの下、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減を徹底する必要がある。
税制については、我が国の21世紀における社会経済構造の変化に対応して、各税目が果たすべき役割を見据えた税体系全体の在り方について検討を行い、中長期的視点からの総合的な税制改革を推進していくことが求められている。
こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、それでも対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対する安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにしなければならない。また、子育て支援策等の充実、地方分権の推進といった政策目的にも応えなければならない。
こうした税制改革の検討にあたっては、税制が経済や財政にどのように関わるかというマクロ的な視点、税制が企業や家計にどのように関わるかというミクロ的な視点に立った分析が必要である。
以上の基本的な考え方の下、あるべき税制の在り方について審議を求める。」
(2)経済成長は財政健全化の牽引力になるという認識の下、少子高齢化、グローバル化が更に進む21世紀半ばの我が国経済社会を見据えつつ、「成長力強化」、「財政健全化」、「健全で安心できる社会の実現」という相互に関連する目標の実現に向けた改革が、一体的に取り組まれるべきである。また、改革にあたっては、真に手を差し伸べるべき人々への配慮や格差を固定させない取組も必要である。
一方、極めて厳しい財政状況の中で、将来世代への負担の先送りを行わないよう、財政健全化にも正面から取り組まなければならない。こうした取組は、資金の流れを官から民へとシフトさせ、経済活性化につながるものである。このため、政府の掲げる歳出・歳入一体の改革をしっかりと実行していかなければならない。平成19年度予算においては、今後5年間の歳出改革の初年度として、聖域を設けることなく徹底した歳出削減を行うべきである。
税制については、社会経済構造の変化に対応した各税目の在り方を検討し、中長期的な視点から総合的な税制改革を推進していく。その中で、経済の活性化、社会保障等の安定的な財源の確保、子育て支援策等の充実、地方分権の推進といった政策課題にも応えていかなければならない。
(3)当調査会は、まず経済活性化と税制について議論を行った。
経済活性化に向けた税制の検討にあたっては、財政健全化との両立という視点や公平・中立・簡素の租税原則とともに、国際的なイコールフッティングの確保、イノベーションの加速、オープンな姿勢が重要である。
このような観点からの今後の検討課題の一つとして、法人実効税率の問題が提起された。その検討にあたっては、税だけでなく社会保険料を含む企業の種々の負担の国際比較、課税ベースも合わせた実質的な企業の税負担の国際比較、さらに企業部門の活性化がその付加価値の分配を通じて雇用や所得環境に波及する効果等についての調査・分析を深める必要がある。
イノベーションの加速という点からは、研究開発税制をはじめとする政策税制の評価を行うとともに、我が国の将来の基幹産業を生み育てるため、単なるマネーゲームではないリスクマネーの有効な活用方策の検討が課題である。また、企業の成長のための多様な資金調達の手段に税制がどのように影響を及ぼすのか、今後しっかりと検討していく。
オープンな姿勢という点からは、海外との経済交流を促進することが重要であり、投資や技術の受け入れ国における課税を相互に軽減する租税条約ネットワークの更なる拡充等に取り組むべきである。
(4)今後の審議にあたっては、各委員の専門分野の研究蓄積も生かし、ミクロ・マクロの両面から、税制と経済、財政、企業、家計との関わりを調査・分析するとともに、個別税目だけではなく、税制全体、更には社会保障制度をはじめとする諸制度とも関係付けた有機的な議論を行うことが重要である。そうした調査・分析、議論を基礎に、総合的な税制改革のグランドデザインを国民に分かりやすく示していく。また、政策論議の透明性を高め、国民に対する説明責任を果たす観点から、広報広聴の果たす役割を重視し、情報発信の強化と合わせて広く国民各層・各分野の声を聴いていきたい。
II 総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正
平成19年度税制改正については、今後議論を深めていく総合的な税制改革の全体像との整合性を考慮しながら、早急な見直しを必要とする以下の主要な事項について検討を行った。
(1)経済の活性化の観点からの減価償却制度や留保金課税制度の在り方
(2)制度の自由度を高め、経済主体の選択肢を拡大する方向での会社法や信託法といった経済法制の制度整備に対する税制面の対応
(3)国民に身近で関心の高い税制上の措置である金融所得課税の在り方や、納税者利便の向上や適正納税を確保するための施策
1.経済の活性化に向けた速やかな対応
(1)減価償却制度
減価償却制度は、償却資産の使用期間にわたって費用と収益を対応させるものであるが、国際的なイコールフッティングを確保し、競争上のハンディキャップをなくすことが重要である。このため、主要国では設けられておらず、合理的な説明が困難な償却可能限度額(95%)については、これを撤廃すべきである。
また、設備投資を促進し、生産手段の新陳代謝を加速する観点から、新規取得資産について法定耐用年数内に取得価額全額を償却できるよう制度を見直し、残存価額(10%)を廃止するとともに、償却率についても国際的に遜色のない水準に設定すべきである。
法定耐用年数・設備区分については、使用実態を十分把握した上で、見直していく必要がある。こうした中で特に技術革新のスピードが早く、実態としても使用年数の短いものについては、早急に法定耐用年数を短縮すべきである。
なお、固定資産税における償却資産については、資産課税として、課税対象の資産価値を評価するために減価を行っているものであり、法人税の減価償却とは趣旨が異なる。今後、その評価方法については、税の性格を踏まえ、検討していく必要がある。
(2)同族会社の留保金課税・エンジェル税制
同族会社には、税制上特別の措置が講じられている。これは、少数の株主の支配の下で、家族への報酬・給与の支払い等による所得分割や恣意的な配当の繰延べ等により、税負担の回避が行われるおそれがあることを考慮した仕組みである。留保金課税制度もこうした一環として位置付けられる。
平成18年度改正においては、それまでに行われた法人税率と所得税率の改正や企業の実態を踏まえて留保金課税制度の抜本的見直しが行われた。しかしながら、依然として、同制度に対しては企業の財務基盤の強化を阻害する面が残っているとの指摘がある。一方で、経済活性化の観点から、資金調達面での制約を受ける中小企業の資本蓄積を促進していくことが重要になっており、さらに、ベンチャー等の技術革新を支援し、競争力強化を図るといった政策的要請がある。以上を踏まえ、留保金課税制度の更なる見直しを検討すべきである。
いわゆるエンジェル税制については、ベンチャー企業への資金供給を促進するためにも、より使いやすくする方策を検討する必要がある。
(3)事業承継関連税制
中小事業者の事業承継に関する相続税の特例持置については、拡充すべきとの意見がある一方で、経済活力の維持への有効性といった観点から再検計する必要があるとの指摘もある。また、相続税の負担が低下している中で格差の拡大を招くおそれがあるとの指摘もある。
こうした議論を受け、今後、中小事業者における事業承継の実態を把握し、課税の公平性に留意して、経済活力の維持を図るとの観点も踏まえ、事業活動の継続に対する支援の基本的な在り方についてさらに検討していく。また、当面講ずべき措置については適切に対応する。
(4)国際課税
海外との経済交流を促進するためのインフラとして、各国の税制の間を橋渡しする租税条約ネットワークの果たす役割は大きく、引き続きその拡充に努めるべきである。
移転価格税制は、国際的な取引が関連者間で行われる際に我が国の適切な課税を確保するための制度である。近年、企業活動の国際化の進展を背景に、課税件数・金額が増加しており、国際的な二重課税による企業負担の問題が指摘されている。本税制については、グローバルに活動する企業の予測可能性を一層高める環境を整備するため、適用基準の明確化を引き続き推進するとともに、手続の改善や相互協議体制の強化を進めて事前確認制度の迅速化を図るべきである。さらに、二国間の課税権を協議を通じて調整するという移転価格税制の特質にかんがみ、協議で合意が得られるまでの間、二重課税に伴う負担を軽減するため、納税を猶予する制度を導入すべきである。
また、常に変化するグローバルな経済環境の中での企業の活動実態を踏まえ、公平な経済活動の環境を提供する必要がある。このため、租税回避防止措置である外国子会社合算税制について、合算対象子会社の範囲を見直すなどの適切な対応を講ずべきである。
(5)外形標準課税
法人事業税の外形標準課税は、税負担の公平性の確保、応益課税としての税の性格の明確化、地方分権を支える基幹税の安定化、経済の活性化等の観点から、平成15年度税制改正において薄入されたところである。しかし、資本金を減少することで、外形標準課税の対象外となる事例が生じている。今後、減資の状況等を踏まえつつ、税負担の公平性を確保する観点から、対象法人の見直しが課題となる。
外形標準課税は、多数の法人が法人事業税を負担していないという状況の是正を図るとともに、法人所得に対する税負担を軽減する一方、付価値等に対して課税するものであり、今後、応益性の観点から、その定着に努めていくべきである。
(6)政策税制の集中・重点化
政策税制については、PDCA(計画・実施・評価・改善)サイクルの確立が不可欠であり、経済の活性化等にとって真に有効な分野への集中・重点化を一層徹底する必要がある。このような観点から、平成15年度に導入された研究開発税制は高く評価できる。一方で、役割を終えた既存の租税特別措置等については、引き続き整理合理化を進めることが重要である。
事業税における社会保険診療報酬の実質的非課税措置については、累次の答申でも指摘してきたところであり、税負担の公平を図る観点から、速やかに撤廃すべきである。また、自由診療に係る医療法人の所得に対する軽減税率についても、確実に見直しを行うべきである。
2.新しい経済法制等に対する税制上の対応
(1)三角合併の解禁への対応
グローバル化が進み、経済環境の変化に迅速かつ柔軟に対応した企業経営を行うことが経済活性化の観点から必要との考え方の下、会社法の施行により来年5月から三角合併が可能となり企業組織再編のための選択肢が拡大される。これに伴い、税制においても、適切な対応が求められている。
我が国の組織再編税制は、企業グループ内の組織再編成や、共同事業を営むための組織再編成の場合に、同一の当事者が事業を継続する実態があると見て、譲渡損益の課税を繰り延べる考え方を取ってきており、三角合併についても、同様の考え方で対応すべきである。また、三角合併により新たにクロスボーダーの組織再編が可能となるが、これについては内外無差別を原則とすべきである。あわせて、クロスボーダーの組織再編については、国際的な租税回避を防止するという観点からの検討も必要である。具体的には、事業譲渡類似等の我が国で課税できる非居住者・外国法人株主の得る譲渡益について、課税を繰り延べる結果、我が国の課税権が及ばなくなってしまう問題や、タックス・へイブンにある実体の無い会社を利用した三角合併により、租税回避を容易にする組織形態を作り出せるという問題への対応を検討すべきである。
(2)信託制度の抜本見直しへの対応
社会・経済活動の多様化に対応し、経済主体の選択肢を拡大する観点から、信託制度の抜本見直しを内容とする信託法の改正が行われる。これにより、信託に対する様々なニーズに対応して新たな信託が認められるなど、信託の利用形態が大幅に多様化することとなる。
例えば、事業を行うための1つのツールとしても信託を活用することが可能になることにより、我が国経済における事業形態の多様化が更に進み、経済の活性化にも資すると期待される。
この他にも、新たな信託法の下で、今後、様々な信託の利用ニーズが登場してくるものと考えられる。例えば、公益的な性格を持つ目的信託等については、今後、公益信託制度の見直しが予定されていることも踏まえ、こうした信託の利用実態に対応した税制上の検討を進めていくべきものと考えられる。
信託制度が多様なニーズに応えて発展し、適正な規律の下で有効に活用されることが重要である。一方で、新たな制度を利用した租税回避の懸念が指摘されていることも事実である。こうしたことを踏まえれば、まずは、現行税制の考え方を基本とした上で、租税回避防止の観点から必要な場合に信託段階課税を行うなど、課税の中立・公平を確保するための対応を行う。
(3)リース会計見直しへの対応
リース会計については、取引の経済的実態をより反映させる観点から会計基準の変更が予定されている。リースの税制上の取扱いについては、納税者の事務負担軽減にも配慮し、会計基準の変更を踏まえ、取引の経済的実態を反映させた取扱いとすべきである。
3.国民生活に関連する税制
(1)金融所得課税
[1] 金融所得課税の一体化
少子・高齢化の進展を背景として貯蓄率が低下する中、個人の金融資産の効率的な活用が、今後の経済活性化のための鍵となる。このため、近年、「貯蓄から投資へ」の政策的要請を受け、個人の金融商品選択における課税の中立性を確保し、簡素でわかりやすい税制となるよう、分離課税制度を基本として、金融所得課税の一体化に向けた様々な措置が講じられてきた。株式等の配当や譲渡益は、このような考え方から原則20%の税率による実質分離課税とされている。
今後とも、金融所得間の課税方式の均衡化、損益通算の範囲の拡大を柱とする金融所得課税の一体化を進めていくべきである。
[2] 上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率
上場株式等の配当や譲渡益の軽減税率(10%)は、平成15年度税制改正において、当時の株式市場の低迷や金融機関の不良債権問題に対応するため、5年間の時限措置として導入されたものである。
現在の経済状況は、株式市場が活性化し、不良債権間題も正常化するなど、優遇措置導入当時と比べて大幅に改善している。また、金融技術の発達により金融商品からのキャッシュフローを様々な所得分類に加工することが可能となっている中で、課税の中立性確保のため、金融所得間の課税方式の均衡化が要請されている。さらに、高所得者層・富裕層ほど株式等の保有割合が高く、公平性の観点にも留意する必要がある。
これらを踏まえ、平成19年(度)末に期限切れとなる上場株式等の配当や譲渡益の優遇措置については、金融所得課税の一体化の方向に沿って、期限到来とともに廃止し、簡素でわかりやすい制度とすべきである。
なお、上場株式等の配当や護渡益に係る時限的な優遇措置の見直しによって金融所得間の税率を揃えるとともに、今後、金融所得課税の一体化を進めていくにあたって、次の点に留意すべきである。
第一に、「貯蓄から投資へ」の流れを確かなものとするべく、資金の流れに引き続き十分注意を払い続ける必要がある。またこの優遇措置の廃止に伴う投資家の行動が株式市場の無用の変動要因とならないよう工夫する必要がある。
第二に、個人投資家の投資リスクを軽減し、リスク資産への投資促進を図るため、金融所得の損益通算の範囲を本格的に拡大していくべきである。その具体的な範囲や仕組みについて、今後、早急に検討を進める。
第三に、配当所得については、事業参加性のある所得としての性格を有することから、総合課税を選択した場合には法人税との調整措置が適用されているが、今後、法人段階と個人段階での課税の調整の在り方についてさらに議論を進めていく。
(2)円滑・適正な納税のための環境整備
税制に対する国民の信頼を確保するためには、制度の公平・公正性、中立性、簡素性、さらには予測可能性が重要であり、税務執行面についても、納税者の利便性の向上、負担の軽減の観点から、その在り方を適時見直し、改善すべきである。同時に、脱税や税制の隙間を狙った租税回避を防止するため、必要に応じ、適切な資料の提出を求めるなど適正な納税を確保するための措置を講ずる必要がある。
前述の金融所得課税の一体化にあたっては、源泉徴収制度、資料情報制度、金融番号制度等、適正な執行と納税者利便の向上を図るための納税環境の整備について議論を深めるとともに、すでに多数の投資家が利用している特定ロ座を活用した損益通算の在り方についても検討すべきである。
納税者全体の利便性の向上の観点から、国税におけるコンビニ納付を可能とすべきである。また、電子申告について、手続の簡素化等、その普及のための方策を検討すべきである。税務当局が差し押さえた動産等を売却する公売については、売却手続の円滑化の観点から見直しを行うべきである。
適正な納税のための環境整備として、源泉徴収、支払調書の提出の対象となる報酬の範囲を見直すとともに、投資ファンドから分配される損益に関する資料情報制度を改善すべきである。
納税者番号制度は、各種資料の名寄せ・突合を効率化することにより、税務行政の効率化・高度化、ひいては適正・公平な課税に資するものである。今後、住民票コードや基礎年金番号、いわゆる「社会保障番号」の活用可能性を検討しつつ、従来以上に積極的な取組が必要である。
また、公的年金受給者の納税の利便性を向上させるとともに、市町村における徴収事務の効率化を図る観点から、所得税や介護保険料と同様に個人住民税についても、公的年金からの特別徴収(天引き)を速やかに実施すべきである。
なお、国・地方の三位一体改革の一環として、平成19年に所得税から個人住民税へ税源が移譲される。所得税と個人住民税の課税・徴収方式の違いから、多くの納税者は、平成19年1月から所得税が減り、同年6月から減少相当分だけ個人住民税が増えることになるが、1年間の所得に対する所得税と個人住民税を合わせた税負担額は基本的に変わらない。したがって、税源移譲による所得税及び個人住民税の変動について負担増と誤解されないよう、国民の十分な理解を得るために国・地方が一体となって積極的な周知を図るべきである。
(3)個人住民税
個人住民税は、「地域社会の会費」として住民がその能力に応じ広く負担を分かちあうという性格を有している。3兆円の税源移譲の実現に伴い所得割が10%比例税率化され、応益性がより明確になることを踏まえ、その在り方を考えていく必要がある。
現行の均等割の税率は、1人当たりの国民所得等の伸び等を勘案するとなお低い水準にとどまっている。個人の税負担の動向にも十分考慮を払いつつ、税率の引上げを検討すべきである。
また、所得割の諸控除については、「地域社会の会費」としての個人住民税の性格を踏まえて整理合理化を図り、課税べ一スの拡大に努めていく必要がある。こうした観点から、特に政策誘導的な控除については、所得割が比例税率化されること等も勘案し、控除額の水準等その在り方について速やかに見直すべきである。
(4)道路特定財源
揮発油税、自動車重量税等の道路特定財源については、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年5月26日法律第47号)において、その見直しの基本方針が定められているところであリ、この方針に沿って、現行の税率水準を維持し、納税者の理解を得つつ、一般財源化を図るべきである。
(5)地球温暖化問題への対応
いわゆる環境税については、国・地方の温暖化対策全体の中での環境税の具体的な位置付け、その効果、国民経済や国際競争力に与える影響、諸外国における取組状況、既存エネルギー関係諸税との関係等を十分に踏まえ、総合的に検討していく。
以上、安倍内閣総理大臣からの諮問を踏まえ、「成長なくして財政再建なし」との理念の下、短い時間ではあるが、経済活性化と税制について活発な審議を行い、平成19年度税制改正に関する答申を取りまとめた。当調査会は、今後とも、国民に分かりやすい論議を進めていくこととする。政府においては、平成19年度税制改正にあたって、この答申に盛り込んだ意見を指針として確実に実施することを期待する。
〇委員
どうもありがとうございました。
それでは、「答申(案)」を項目ごとに4つに区切って、皆様の自由なご意見をいただきたいと思います。しかし、途中退席しなければならない委員の方もいらっしゃると思いますが、その場合には、どうぞ、いずれのタイミングでも結構でございますので、発言をしていただければと思います。
なお、本日ご欠席の委員から意見書が出されておりますので、審議にあたりましては、こちらもご参照いただきたいと思います。
それでは、まず最初から、「総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正」まで、ご意見をお願いいたします。
〇委員
早々に退席しなければいけないこともありまして、早めに発言させていただきます。
エンジェル税制につきまして、丁寧に書いていただきまして、ありがとうございました。しかし、もう一歩お願いしたいのですが、エンジェル税制というのはすでにその名前は存在しているわけで、今回、もう一歩本当に意味のあるものにしましょうという意見を申し上げて、お願いを申し上げているのですが、特に対象となっている企業が非常に厳しいのです。その絡みを緩めてくださいということと、ベンチャーへの投資はほとんど損をするわけで、その損の扱いをきっちり手当てしてくださいと。利益に対しては、儲かったところが税金を払うのはいいわけで、当然のことでありまして、それよりも、損をちゃんと見ますよという対策をぜひお願いしたい。
税率を下げるという議論も多いのですが、そうではなくて、これによって、本来ならば民間にお金が余っているわけですけれども、その余っているお金をもっと動かしましょうよという意味の税制としてぜひ……。
先進国だけではなくて、世界レベルで開業率・廃業率が最悪の国でありますので、これを何とか改善することによって、イノベーションの片肺飛行を改善したい。今、大企業が中心になって開発をやっているイノベーションはあるのですが、大学とベンチャーが外国と対応できない。だから、「失われた十数年」ということを作り出したと思っていますので、そこをぜひお願いしたい。よろしくお願いします。
〇委員
ありがとうございました。
修文あるいは追加的な表現については、もう一度見ていただく機会がございますので、その時またご意見をいただきたいと思います。
ほかにどうぞ。
〇委員
2ページの(3)のちょうど真ん中ぐらいのところですけれども、法人実効税率の問題のところの、「企業部門の活性化がその付加価値の分配を通じて雇用や所得環境」というところですけれども、ここの所得環境の前に、修文的なことを言って申しわけないのですが、「家計部門の」と入れていただけないでしょうか。前に「企業部門の」とあるので。
〇委員
はい、そのほうが明確になりますね。わかりました。
その他、いかがでございますか。
〇委員
2ページの(3)の、パラグラフでいくと3つ目の「イノベーションの加速という点からは」というところの3行目で、「単なるマネーゲームではないリスクマネーの有効な活用方策の検討」とあるのですが、この「マネーゲームではない」というのをあえてここに入れておられる趣旨というか、そういうことが悪だというような感じにも取れるのですが、この辺はどういう意図でこれが入ったのでしょうか。
〇委員
それほど深い意味があると私は思いませんが、庶民感覚として、マネーゲーム的な形での行為に対する少し批判がありますので、それをプリベンティブな形でここで入れ込んでいるということぐらいの意味しかないと思いますけれども。
〇委員
ちょっと文化的に違法なマネーゲームというのが目立ちすぎた風潮がありますので、それを発言した記憶があります。
〇委員
この表現でよろしいですか。
〇委員
違法なといいましょうか、マネーゲームそのものが純粋に悪いとは思わないのですけれども、どうも違法性を……。
〇委員
私が懸念するのは、マネーゲームという形で、何か全体を色をつけてしまうような感じがちょっと気になったものですから。
〇委員
そうですね。ここはいかがですか。どうぞ。
〇委員
大した論点とは思いませんけれども、「単なるマネーゲームではない」というのは、若干情緒的な表現で、税制調査会の答申としては、単に「リスクマネーの有効な活用方策」というだけでよろしいのではないかなという気がしますけれども。
〇委員
今のご提案いかがですか。よろしいですか。では、そこは削除ということで。どうぞ。
〇委員
いや、そういうメッセージは大事ですよ。やはり国民が、単なるマネーゲームであるようなことについて、やはりすごく不満を持っていますよ。
〇委員
両論が出てきましたが、どうしますか。どうぞ。
〇委員
逆に、「将来のイノベーションにつながるようなリスクテーキングを促す有効な活用方策」とか、私たちが本当に言いたいことをただ書き込めばいかがでしょうか。
〇委員
そこのところは、具体的にどういうぐあいに表現しますか。
〇委員
「我が国の将来の基幹産業を生み育てるため、イノベーションにつながるリスクテーキングを促す方策」でいかがでしょうか。
〇委員
庶民感覚的な部分のところは、どういうぐあいに表現しますか。ここで一緒に書くのか、あるいは別にちょっとそういう点について、風潮も含めて警告を鳴らすのがいいのか、ここの扱い。投機とかいうのをどういうぐあいに表現するか、なかなか経済学的にも難しい部分があって。
それでは、ここのところは、起草委員会でもう一度整理して、次回表現ぶりについてまたご相談申し上げます。
ほかはいかがでございますか。
〇委員
一つよろしゅうございますか。ご質問ですけれども、先ほどもちょっと話に出ました法人実効税率の問題でございますが、今までの議論では、かなり中心的なトピックスとして議論されたと思うのですけれども、今回、最終的になったのは、かなりトーンダウンしたような印象を受けるのですけれども、もし差し支えなければ、その辺、どういう議論がされたかというのを、ちょっとお話しいただけるとありがたいと思います。
〇委員
この問題は、来年度の税制改正ということではなく、中長期的な検討課題として真摯に議論しようということで、ここでは特に社会保険料を含むいわゆる労働コスト的な部分のところも入れ込んで、全体を検証して、その上でというニュアンスの中で、幾分控えめな表現ぶりになっているのですが。
どうぞ。
〇委員
今の法人税率あるいは法人税のことと関係するのですが、法人税の実効税率については、今、会長がおっしゃったように、特に年が明けてから、来年、中長期的な本格的な税制改革論議の中でするべきだということで、ここに書かれているわけですね。
〇委員
そうです。
〇委員
それであれば、私は所得税や消費税も中長期的な課題として議論するという、名前が出てもおかしくないと思うのです。今、1ページ目の安部総理からの諮問の文章をもう一度読ませていただいたのですが、本格的な税制改正の議論をするということは、もとより法人税のことも議論すべきだと思いますが、来年、本格的に議論するというのであれば、それは税制全体の中で議論するというのは、ある意味では当たり前のことであって、法人税という一つの税の名前が出るのであれば、私はほかのメジャーな税として、所得税とか消費税とか、そういうものを考える中で法人税の問題もしかるべく考えるというのが、総論的には書かれていてもおかしくないと思いますが。
〇委員
委員のおっしゃることも理解できるのです。2ページの第一パラグラフ、「税制については、社会経済構造の変化に対応した各税目の在り方を検討し、中長期的な視点からの総合的な税制改革を推進していく。その中で」という形で項目を挙げているわけですけれども、我々の万感の思いは総合的な税制改革ということの中に、今ご指摘のような文言も検討項目にしようと。
そして、(3)のところは、「活性化」という限定的なヘディングをつけておりますので、しかも、総会等で議論がなされましたので、ここに実は入れ込んでいると、こういう区分で起草メンバーはここでこのような整理をしたということなのですが。
〇委員
私、この答申の文章まで、先ほど申し上げたことを書くべきだとまでは申し上げませんが、会長として様々な機会にご発言になると思いますが、1つの意見として、こういう意見も出たということで、念頭に置いていただければよろしいかと思うのです。
繰り返しになりますが、私は、この安倍総理の諮問文を読ませていただいて、政府の税制調査会として答申するという時に、中長期的な課題として、税制全体を見直さなければいけない。そうした時には、法人税のことももちろん1つの課題だと思いますが、確かに今の政権は、成長力とか経済活性化ということを非常に重視しているということから、先ほどの(3)で、法人税の問題がとりわけ名前として出た。それなりに理解できますが、しかし、税全体を考えるというのであれば、税の名前として法人税だけというのは、むしろ奇妙な話であって、当然、所得税とか消費税とか、様々な税全体の中で法人税の問題もしかるべく考える。これは当たり前のことで。
〇委員
ご指摘はよく理解できます。この答申が11月7日にスタートして、ガーッと年度答申のところに入ってきていますので、総合的な部分のところについての議論も不十分ですし、この答申自体が、10ページの最後のところでも正直に告白しているのですけれども、「短い時間であるが、経済活性化と税制について活発な審議を行い」と、こういうことで限定的に書いております。1月以降、これまた12月1日の総会の中でも、今後どういう形で議論するかということを、私のメモあたりを作りながら、またご相談させていただきますので、十分その点については、来春以降きっちりやるということで、この答申の中でこの辺の表現ぶりでということで、お願いをしたいと思いますけれども。どうぞ。
〇委員
今の法人実効税率のところなのですが、今、何人かの委員からもお話が出ましたように、かなりここのところについては、議論は確かに時間を割いてやったのだろうと思います。そのわりに、このところについては、調査・分析を深める必要があるということに終わっているわけですが、考え方として、それでは一体、調査・分析をした結果がどうなるかについては、全くここでは触れられていないわけですね。ある程度こういう方向性が出るよ、あるいは、こういう方向性で今後検討していくのだと、そういうようなことが何かないと、じゃあ、このことについては一体今回どういう議論をしたのかということすら、全くここに出てこないということになってしまうので、そういうニュアンスは出しておいていただいたほうがよろしいのではないか。方向性についてですね。今後の検討の方向について、ある程度表現していただいたほうがいいかなと思います。
〇委員
はい、わかりました。どうぞ。
〇委員
今の減価償却制度が書いてあるところの3段落目の……
〇委員
何ページですか。
〇委員
3ページ、今のお話にちょっと絡んできますが、減価償却制度の3段目の「法定耐用年数・設備区分については、使用実態を十分把握した上で、見直していく必要がある」。これは方向性をはっきり出したほうがいいと思うのは、「法定耐用年数・設備区分については、使用実態を十分把握した上で、大幅な簡素化を急ぐ必要がある」と、これはやはりここの審議で出てきたことで、方向性が出てくるのではないでしょうか。つまり、388項目もあるような、減価償却資産の耐用年数に関する省令というのがあるけれども、それを見ていくと、ものすごく細かくて、ポジリストをどんどん重ねていって、温泉旅館みたいになっているわけですね。そこのところは、やはり今言った大幅な簡素化を急ぐ。その結果は、結局、耐用年数の短縮につながるわけですから、「大幅な簡素化を急ぐ必要がある」と強く打ち出すと、今のおっしゃられたことと関係してくるのだと思いますけれども。
〇委員
今の表現ぶり、いかがですか。よろしゅうございますか。では、委員の提案を踏まえて修文をすると。
先ほどの委員のご意見も、ニュアンスを起草委員と相談をして、また改めてお諮りいたします。どうぞ。
〇委員
この2ページの法人実効税率のところですが、よく税を議論する際に、いわゆるテクニカルな問題、あるいは税の項目で非常に少額なものと、特にここの法人税というのは非常にウエイトが高いわけですから、必ずここを議論する時には、今、委員の言ったとおり、ほかの税目とのバランスというか、ここだけで議論できない分野なんですね。この文章はこの文章でいいのでしょうけれども、結局、これだけ単独で切り離して議論ではなくて、その他の基幹税との全体の税収入という、こういうところをより――ここだけ切り離されると、前のほうに書いていますので、全体というよりいいのですけれども、そこがないものだから、そういうふうに見えるのかなという感じがします。
〇委員
わかりました。ご指摘を踏まえて、総合的な税制改革、法人税じゃないというような部分の、もう少し明確な工夫があり得るかどうか、ちょっとこれはまた起草委員と相談をさせていただいて、ご提案させていただきます。
どうぞ。
〇委員
ちょっと質問になるかもわかりませんが、1ページ目の(2)の最初の文章です。ここに「21世紀半ば」という時代が出てくるのですが、これまでは2011年のプライマリーバランスの黒字化というのが、非常に重要だったのですけれども、ここで21世紀半ばというのは、他の諮問会議等との影響が何かあるのかどうか。逆に言うと、「成長なくして財政再建なし」ということは、財政再建の規律は追い求めるということの選択肢の1つとして、成長というものをとろうということだと思うのです。別にどの税目がどうということではなくて。その点の観点からすると、何か2011年から21世紀半ばというこの時間差が、ちょっと引き伸ばしたような印象を与えないかなというところが気になるのですが、ここの意図はどういうことなのでしょうか。
〇委員
政府の議論の中でも、例えば、経済財政諮問会議の21世紀ビジョン懇の議論などは、これから30年以後ぐらいのイメージの中で想定をしていまして、その1つの目標として「健全で安心できる社会の実現」などが組み込まれていて、少子化なんかももっと長いスパンの問題ですから、(2)の1行目の少子高齢化というような文言の中で、少しスパンを長く描いていると。
財政的な問題でいえば、委員がおっしゃるとおり、2011年と、それから2010年代半ばというのがあるわけですけれども、我々は、当面の議論として2011年ぐらいを視野に据えて、しかし、議論のグローバル化とか、あるいは少子化とか、そういうような問題については、やはり成熟化の中核になる21世紀半ばというようなイメージで、政策論とは少し切り離した形でここの文言は書かれているというぐあいにご理解いただければと思いますが。どうぞ。
〇委員
私も総論の中で財政再建化に向けた姿勢面、ちょっと弱いかなという感じがしたのですが、具体的には消費税という言葉が出てくるのはいつ。ただ、先ほどの会長の発言で、年明けからしっかりやると。それから、会長があらゆる機会を捉えて、そういう姿勢をにじませるという発言があったので、これはこれでよいと思います。
〇委員
ありがとうございます。
ほかはいかがでございますか、総論のところ。どうぞ。
〇委員
1ページ目の(2)の5行目のところですが、「改革にあたっては、真に手を差し伸べるべき人々への配慮や格差を固定させない取組も必要である」ということで、志はとても賛同できるのですけれども、表現ぶりでややひっかかるのです。例えば、「格差を固定させない取組が必要であり、また、助け合う豊かな社会を形成するためにも」というほうが、「手を差し伸べるべき人々への配慮」というこの姿勢が、やや感ずるところがあります。ちょっとその辺ご配慮いただければいいかなと思います。
〇委員
わかりました。ここは我々、幾分活性化の議論が中心になっていますが、ディフェンスになって、格差論議あたりも踏まえて、まさにこういう書き方をしたのですが、今の前向きな表現に少し修正させていただいて、またご相談させていただきたいと思います。
ほかはいかがでございますか、総論的な部分のところ。なければ、あとでまた気がついた点を言っていただければと思います。
それでは、IIの「総合的な税制改革の流れの中での平成19年度税制改正」、この辺の部分のところについて、お願いをいたします。どうぞ。
〇委員
全般的には特に違和感はなくて、大変よく書かれていると思うのですが、逆によく書かれすぎて、ここまで議論したのかなというところがなくもないんですね。その点について、1つ、2つ質問という形でさせていただきたいのですが、1つは、順不同ですが、9ページの個人住民税のところで、均等割の税率の引上げを検討すべきであるというふうに表現されているのですが、ここまで強い意見が、あるいは私がいなかった時にそういう意見があったのかもしれませんが、あまりそれについて議論したという記憶が私自身にはないのですけれども、どうでしょうか。
それから、もとに戻って4ページの(3)の事業承継関連税制の一番最後に、「当面講ずべき措置については適切に対応する」とあるのですが、これはちょっと私に知識がないせいか、何を言っているのかよくわからない。ちょっと説明が要るか、どうなのかという感じがします。
もう一つ、極めてマイナーな話ですが、8ページの(2)の「円滑・適正な納税のための環境整備」の上から4行目に、「脱税や税制の隙間を狙った租税回避を防止するため」という表現があるのですが、脱税はもちろんいけないのですけれども、税制の隙間を狙った租税回避というのは、これは気持ちは、そんなことがあってはいけないというのはよくわかるのですが、これは違法なのかどうか。ですから、こういう表現が適切なのかどうかということについて、若干疑問があります。
〇委員
最後の部分のところは、ご指摘のとおりだろうと思いますので、あまり制度がもたらしているビヘイビアに対するある種誘いのインセンティブ的な部分等、それが全くなくなると、新しいビジネスモデルも新しい製品も開発できないという部分がございますから、幾分ここは書きすぎだということで、少し修文をさせていただきます。租税回避的なものをどうするかという形で整理させていただきます。
それから、一番最初にご指摘いただいた均等割の部分、これは委員の皆さんが全面的にということではなく、一部の委員からの指摘の中で、ここが位置づけられていると思うのですが。どうぞ。
〇委員
従前の税調でもお話し申し上げましたけれども、バランスが非常に崩れている。3,000円という、町内会費より安いと。それで、実際のウエイトがもうここ数十年間であまりにも崩れすぎているということで、果たしてこれでいいのかという議論は、ずっと前からしておりまして、これについては、我々としては、論理的にもこの3,000円はあまりにも低いのではないかと、そういうことであります。
〇委員
どうぞ。
〇委員
おっしゃるとおりだと思います。ものすごく低いと思いますね。ただ、地方の市町村の自治体のお金の使い方のひどさ、これがやはり妨げていますね。ですから、これは3倍ぐらいにしてもいいと思いますよ。だけど、やはりそれについての文言がきちんと入らないと。
〇委員
そうですね。政府全体に対して、我々は歳出削減という部分のところについては、注文をつけているのですが、地方に対してはあまり言っていないという、そういうところはおそらくありますし、庶民感覚からいろいろ問題が顕在化していますので、どうですか、そこら辺のところに対する税調としての注文はいかがですか。
〇委員
基本的にひどい使い方というのは、いろいろ新聞紙上を賑わすような、これは実際ないわけではないということで、ただ、全体としての財政規律の問題、あるいは財政の圧縮というのは、実は国以上に進んでいるというのは計数的には確かです。いずれ、交付税が30数%減っておりますし、そういう中でかなりの政策的なものを事実上詰めてきている。実際私どもから言わせると、我々としては、どうしても義務的な形で出さざる得ない医療福祉関係が、かなりのウエイトを占めてきておりまして、小さな町・村になりますと、このままでいくと、5、6年でそれだけ、それ以外はなしという。ただ、事務的ないろいろな無駄遣いとか、いろいろな問題があるのですけれども、国も地方も全体の問題として、これは厳しくやっていかなければならないということではないでしょうか。
〇委員
その表現ぶり、あるいは場所等については、少し起草委員と相談させていただきたいと思います。
〇委員
地方だけという、そういうことは誤解で。
〇委員
それは委員の少数意見で、ほかの委員はみんなもっとちゃんとやれという、地方に対して個別に注文するというのが、私の察するところの大勢だと思いますけれども、違いますかね。
〇委員
この点について、今、両論が出ました。どうぞ。その点ですか。
〇委員
はい。個人住民税の均等割につきましては、前の税調の時からずっと議論になっていまして、これはやはりほかの物価の水準から見ても、少し低いのではないかというのはずっと議論されてきましたので、地方の税金の無駄遣いの話とは別に、均等割についてはこの文章でいいのではないかと思います。ただ、もう少し書き込みが必要なのかもしれませんけれども。
それから、9ページに道路特定財源の話がありますが、これ、新聞紙上等では、すでに政治のほうではこういう動きがあるようですけれども、税調でこれを議論されたのでしょうか。私が休んでいたのかもわかりませんけれども、その辺をお伺いしたいと思います。
それから、もとに戻って申しわけありませんが、先ほど出ていました2ページの3行目のところで、「社会経済構造の変化に対応した各税目」とさらっとおっしゃっているのですが、先ほどご意見が出ましたところから考えますと、例えば、「所得・資産・消費に対応する税目」とかいうふうに、少し加えられたほうがいいのではないかというのが1点あります。
それから、4ページの事業承継関連税制の最後ですけれども、「当面構ずべき措置については適切に対応する」というのでは、少し方向性がわかりませんので、どういう方向で対応されようとするのかというのは、やはりここで必要なのではないかと思いますが。
〇委員
ありがとうございます。
特定財源のところについては、いろいろ地方の側からもご意見をいただきましたけれども、一般財源化についてはご意見が強うございまして、こういう書きぶりにしたということでございますし、一部で道路特定財源の部分のところについては、自重税に限定するような議論があるということも我々十分承知をしておりまして、その点で揮発油税等についても言及していると。この問題については、税調でもずっと議論が継続的に行われてまいりましたし、その場のところにおいても議論されましたので、この際はこういう書きぶりにしようということであります。
それから、先ほどの個別項目の部分のところ、具体的に入れるかどうか、ちょっとまた相談をさせていただきたいと思います。
それから、4ページの先ほどのご質問、確かにここは、「また、当面構ずべき措置について」がわかるのは、かなり限定的な方だろうと思いますので、ここについて、もう少し次回どういう表現ぶりにするか提案させていただきます。今の段階で議論しますと、またいろいろ出てくると思いますので。
どうぞ。
〇委員
大変よく書けていまして、起草委員のご苦労がしのばれます。どうもご苦労さまでございました。これからもいろいろ山ほど注文が出ているので、大変だと思うのですけれども。
1点質問です。8ページの(2)のところの下から8行目ぐらいに、「投資ファンドから分配される損益に関する資料情報制度を改善すべき」というのがあって、福井さんみたいな方の所属が、要するにああいうファンドが誰にいくら出したかという情報提供を投資ファンドにさせるべしと、そういう趣旨なのでしょうか。それなら私は大賛成でございます。
〇委員
そういう趣旨だと思いますが。
〇委員
今はこれはどうなっているんですか。
〇事務局
お手元に本がございますが、そこの資料のGD1-7の6ページでございますが、口頭で申し上げますと、現状を申し上げますと、ファンドを組成できるような事業形態というのはいくつもございまして、投資事業有限責任組合とか有限責任事業組合、民法組合、匿名組合。匿名組合も10人以上のものと10人未満のものに分かれています。そのうち全部取れるようになっていませんで、法制上、これまでの手当てがばらばらになっております。これを手当てをさせていただければということでございます。
〇委員
表現ぶりはこれでよろしゅうございますか。
〇委員
いや、もう言うことないです。
〇委員
ありがとうございます。ほかにどうぞ。
〇委員
先に質問だけさせていただきたいのですけれども、3ページの上の(2)のところで、「経済法制」という言葉が出ています。私、この辺素人なのでよくわからないのですが、会社法は経済法制ですけれども、信託法も経済法制という考え方でよろしいのでしょうか。特に必要ないように思うのですけれども、「会社法や信託法といった新しい法制の制度整備」ということで済むのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
〇委員
会社法も信託法も法務省所管の法律ですから、どちらも経済法制ではないですよね。しかし、現実にはどうかわかりませんけれども。
〇委員
現実にはというか、事実上、民事信託が入るということが大きなポイントになっているところで、政府の答申でこういうのが入っているのは、ちょっとまずいと思うのですけれども。
〇委員
では、今のご指摘を踏まえて、表現を修正させていただきます。また提案させていただきます。
〇委員
その関連でよろしいでしょうか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
6ページでございますけれども、ここはなかなか難しい点があるのですが、租税回避防止というのが今般話題になっておりますので、そちらからやっていこうということで、この(2)の下から3行目に、「まずは」というふうに書いてありますけれども、これはある段階でもう一遍、私法上の規律がどの程度効くのかとか、そういった観点を見ながら、もう少し考え直す可能性も含んでいるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
〇委員
そういう意味合いも含めて、ここは苦労して表現したつもりなのですが。
〇委員
わかりました。
それから、同じように、その上のパラグラフですけれども、これは私のペーパーのところを入れ込んでいただいたのかなと理解しております。それで、ここにも「例えば」というふうな表現がありますし、私の発言の趣旨も、あくまで一例として目的信託を挙げまして、そのほかにも、ちょっと私も予想がつかないのですけれども、事業信託とか自己信託、今日の新聞にもかなり詳しい解説が出ておりまして、そういった点からしますと、「今後、公益信託制度の見直しが予定されていることも踏まえ、こうした信託の」というふうになりますと、何か目的信託のところにかかりそうなので、「信託のこうした利用実態」ということで、やや信託法全体をウォッチし続けるのだと、それは決して朝令暮改ということではなくて、これだけの大改正だから、相やむを得ないといいますか、ステップ・バイ・ステップでいかざるを得ないというふうにしたほうが、よりいいのではないかなと思うのですが。
〇委員
いいですね。それで構わないと思います。「こうした信託の利用実態に対応した」という形で修正をすると。
〇委員
くどいようですが、この点に関しては、とりわけ新しい制度なので、ニーズがどの程度、どういうふうに出てくるかわからないので、ぜひ広聴機能を強化していただきたい。
それから、これで変わる税制の形についての広報機能ですね。間違ったメッセージを与えないようにぜひしていただきたい、ということを重ねて要望申し上げます。
〇委員
これは、広聴広報機能を我々は高めようということの一環の中でやらせていただくということで、お願いします。ほかにどうぞ。
〇委員
質問が1つと、それからコメントですけれども、質問のほうは、3ページの減価償却制度に対してです。大変申しわけないのですが、減価償却のことをお話ししたディスカッションを私欠席してしまったので、そういう意味で、その時のディスカッションをつぶさに知らないのですが、新聞報道で、機械設備だけではなくて、本社ビルなども対象になるというようなことを読んでいて、私自身は、今回は競争力ということを主眼にしているということだと理解していたので、若干違和感を持ったのですけれども、これはそういうことなのでしょうか。
というのは、海外の会社などと付き合っていても、本社ビルを欧米などは割合と古い建物を改修しながら使っているのに対して、日本は30年とか50年でどんどん建て替えていて、常々無駄だなと思っていたところがあるものですから、ちょっとそれを感じました。逆に、機械設備に投ずべきところを本社ビルを建てちゃうということで、競争力が損なわれるというのも、いかがなものかなと思いました。
それから、もう一つコメントで、6ページの今お話のあった信託のところですけれども、これが新しい制度なので、どういった租税回避的な濫用が起こるかわからないので、ステップ・バイ・ステップで進めるべきだというのは、私も全くそのとおりだと思うのですけれども、先だっての会合のあと、会長の記者会見とかで、一応、信託導管論を基本にということを実際におっしゃったということを考えた時に、最後のところに、まずはこうしながら、必要な場合に行うというのが、本当にいいのかなと個人的には思いまして、例えば、そこも租税回避を阻止するために、もっと何か適切な監視とかそういうこともあり得るのかなと思いましたので、「適切な措置を講じる」とか、もう少しニュートラルな言い方のほうが、逆にわかりやすいのではないかと思いました。
〇委員
今の点も我々大分迷った部分があるのですが、実態として、税法等の専門家からは、海外でこういう部分が、いわゆる租税回避的な形で使われるケースがあるよと。それに際して、事前的にどのぐらいの想定をとるかということはあるのだろうと思いますが、やはり目配りしているよということに関する叙述は必要であろうということで、この「必要な場合に」というぐあいに表現しているのは、そういう気持ちなのですが、もっと緩めろというご主張があれば、起草委員にちょっと答えてもらいますけれども、どうですか。
〇委員
あまり個別的なことに入るのもどうかと思うのですけれども、例えば、アメリカの話ですから、日本と関係ないですが、アメリカの事業信託というのは、相当、租税回避的なものとして利用されて、それに対して裁判所等を通じて様々な対立・抗争があって、今もそのあとを引いているというようなことがありますので、ある程度読めるところは、想像できるところはそれなりに押さえ、しかし信託法の改正の趣旨を損なってはいけませんから、それはきちんと生かし、しかし、あらかじめわかっていることは、それなりに対応し、そうでないものは今後対応していくという、何だかよくわからないですが、そういう感じです。
〇委員
大事なポイントなので、来年度税制改正なので、これはこういうことになろうかと思います。中長期的には、こういうのに対して、例えば法人税とか相続税とか、既存のそういうきちんとした租税理論に基づいた法律で対応していくのか、例えば租税回避的な行為に注目して、特別行為税みたいな形で、別の税体系で対応していくのかを含めて、ぜひ長期的な課題としていただけたらと思うのですけれども、何とぞよろしくお願いいたします。
〇委員
それでは、また起草委員と相談して、この表現ぶり、少し考えてみます。
それで、先ほどの委員のご質問に対応する部分ですが、3ページのところで、我々は幾分あいまいな形で償却のところを書いています。一つは、ご指摘のとおり、建物等の問題をどう考えるかという問題と、もう一つは、減価償却の適用の範囲をどういうぐあいに考えるか、新旧の問題の扱いですね。ここのところについて、少しルーズな書き方といえばルーズな書き方をしているので、この辺のところをご意見があれば、さらに修文をするということではやぶさかではございませんけれども。どうぞ。
〇委員
別に文章ということではないですけれども、先ほど委員がおっしゃったことは、どちらかというと、競争力という観点から、機械はいいけれども建物はだめと、そのようなトーンのお話だと伺ったのですけれども、それはやはりケース・バイ・ケースではないですか。変な言い方ですが、いい建物もあれば、悪い機械もあるわけで、それは経営者の判断であって、どれだけ競争力なりに資するかというのは、一概に、機械のほうはいいけれども建物はだめというのは、やや賛成しかねるなと思ったのですが。資本は資本、それがどれだけ効率的に蓄積されるか、投資がなされているかというのは、経営者の資質ということであって、機械か建物という区別ではないのではないかと思ったのですが。
〇委員
建物に関してああいうふうに申し上げたのは、常々、日本はかなり建物を欧米に比べて短期でどんどん建て替えているという話を、実際に旅行してみるとわかりますし、それから、建築関係の人などにもそういう話をずいぶん聞くので、もともと問題意識を持っていたというのが大きな背景です。
要するに、償却期間というのは、どれだけ使えるかということに対して決められるべきなので、例えば非常に技術革新が速い機械設備を、例えば半導体製造装置だとか、そういうものを非常に短期間で償却すべきだというのは、私もそのとおりだと思ったのですけれども、ある程度中身を少し入れ替えれば使える建物を、全部壊してしまうというのがすごく多いというふうに思ったので、それがさらに促進されてしまうのは、いかがなものかと思っただけです。
〇委員
確かに、イギリスに行った時に驚いたのですが、イギリスは建物を減価償却しないのだそうで、古い建物ほど価値があるので、増価になるのでしょうかね。そういう国もあるにはあるので、おっしゃるとおりだと思いますけれども、アメリカでも、建物は償却ベースは長めで、機械は短めですね。ここは償却の総額を100%にするかどうかの議論が3ページにあるので、それを100%償却にしたところ、建物を例えば100%償却にした場合であっても、年数自体は機械よりも長いと思うのです。償却の方法も、多分建物は比例的に落ちていくほうで、定額で、定率ではないですし、ですから、そういう目配りは効いていて、ただ、100%のところという話がここでは主で、それだけではないと思いますが、主だと思います。ですから、委員のおっしゃっている意味は入っていると思います。
〇委員
どうなんですか。ブロードワンの対応で新しいビルにするとか、あるいは環境対策で建て直したいとか、いろいろあり得るのだと思いますが、そこはどうですか。
〇委員
いろいろ議論があったので。ただ、大切なことは、どういうふうに建物とかのケアを、償却で使うべきかというのは、基本は個々の企業の選択の問題で、それを税でどっちかに引っ張っていくということではないと思うのです。ただ、今の状態で95%だと、いろいろな不都合があるとすれば、直すということだろうと思います。ただ、今のような意見は大事だと思います。償却の長さをどう考えるかということは、またいずれ議論があってもいいとは思いますけれども。
〇委員
先ほど手が挙がっていましたね。
〇委員
私も製造業にいるものですから、今のことについて一言だけ付言いたしますと、おっしゃるように、本社ビルとかそういう問題をイメージされると、そういうご批判が出ると思うのですけれども、現実にIT関連の仕事だとか、そういうことをしておりましても、建物というのがどうしても機械設備と関連しておりまして、機械設備が陳腐化してくる、あるいは老朽化してくる、あるいは技術的な要請によってどうしても新規にしなくてはいけない、その時に建屋そのものが、どうしてもこの建屋では無理になってくるケースが多いのです。ですから、どうしても建物も全体を機械設備と合わせて変えていかないと、新しい技術の発展につながらないということがあるものですから、その辺はぜひお許しをいただいたほうがよろしいのではないかという気がいたします。おっしゃるように、本社とかそんなことを考えますと、今のご指摘のとおりだとは思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
非常に生々しい話なのですけれども、もともと欧米と比べることが無理で、日本の地震だとか、建築基準法が全然違ったり……。ヨーロッパだと数百年の建物をうまく使っている。日本ではもともと物理的に無理だということ。実際我々、現場から見てみますと、大企業はそうではないのでしょうけれども、中小企業の方でも、耐震設計になっていないで、こちらからすると、危険物の建物に本社が入っているというのは、けっこうあるのです。我々としては、消防の関係だとかそちらのほうから、耐震構造に早くしてくださいと。そういうこともいっぱいありますので、なかなか社屋そのものをそう簡単に公平な目でスタンダードを作るというのは難しいのではないでしょうか。
〇委員
どうぞ。
〇委員
同じく減価償却のところで、(1)の最初のパラグラフは多分、償却可能限度額を95から100に拡大すると。2番目の「また」で始まるところは、同じ耐用年数だとしても、償却率、場合によれば加速償却ができるような形で、早めに損金に算入できるようなことが可能だということに対応しているのだと理解しています。
3段目のパラグラフは、結局、償却の年数を、場合によって法定のものを短くするということになっていると思うのですが、私、議論に全然参加していないので、質問というか、コメントみたいになってしまうのですが、特に3番目の耐用年数のところを、法定耐用年数ということで書き込むというのは、いずれにしても改正がどの程度の頻度で行われるかによって、今回だけは対応ができたとしても、将来的に保証がないというような感じがちょっとするのです。それで、むしろ活性化という観点からいえば、企業が会計方針として、法定耐用年数での償却とは別に、企業が置かれている環境において、その設備を使う状況下で、耐用年数をある程度柔軟に設定するというような形、つまり法定耐用年数は別に選択すれば短くなるというような形のものは考えられないのでしょうか。むしろそちらのほうが、それぞれの企業が置かれている環境に応じて、必要に応じて償却の年数を短くできる。だから、上の100%と償却の方法というのは、これはどうであってもいいのですけれども、年数をどうするかというのは、ある程度の自由度があってもいいような、課税の公平の面はあるのでしょうけれども、そういう視点というのはないのでしょうか。
〇委員
あり得る話でございますが、ここでは19年度税制改正で主に行うべき部分のところと、後段の部分のところへ、これから少し課題として挙げている。したがって、「使用実態を十分に把握した上で」というような部分のところが、今のご指摘と関連するような我々の気持ちだと、こういうぐあいに理解していただければ、この表現ぶりでお許し願えればありがたいと思っているのですけれども。
〇委員
了解しました。
〇委員
任意償却を前提として法定耐用年数を取っ払うと、落とせる時にはドンと落として、欠損金が切れそうな時には停止するという、まことに何とも言えない制度になってしまいますので、任意制度をとりあえず前提とした場合には、法定耐用年数にしないと、企業が落としたい時に落として、落としたくない時には落とさないという――任意償却までやめろとおっしゃっているのならおっしゃるとおりですけど。
〇委員
私が申し上げているのは、任意償却については、あれはやめるべきだという意見です。そうではなくて、企業が会計方針として、つまり経営者がこの設備は法定耐用年数が例えば10年なのだけれども、うちが使っている状況だと6年しかもたないと例えば思った時に、会計方針として、ですからこれを変えるというのは大変なことなのですけれども、そういう企業の経営者が宣言することによって、6年を採用できるというような形が必要であって、任意償却のように、勝手に今期はやめて、来期はやるとか、そういうようなことを言っているのではなくて、あくまでも経営者が自主的に自分で判断して、その判断した経済的な意思決定が税法の法定耐用年数と異なる場合があって、その時に法定耐用年数は法定耐用年数としてもちろん存在していればいいわけですけれども、それとは別に選択できるようなもう一つの、そのかわり一旦選択したものを変えるのは非常に難しいという、企業会計でも同じことがあるわけですけれども、そういうものとの連携を図ったような部分が、この減価償却のところで採用できないかというのが私の申し上げたい点です。
〇委員
その点について、また議論を深めるということで。
〇委員
私も言いたいこともあったのですが、ただ今、委員のおっしゃるのは、そのとおりだと私も思います。
私のほうは、1ページ目の2番目のところですが、財政の健全化云々、これは非常に大きなテーマでありますが、これができた将来のビジョンの話を、これは前回の調査会の時にも話しましたけれども、先進国の中で、あらゆる税目のすべてが最も低い税率の国にする、そっちへ持っていくのだというような方向づけ。でも消費税の問題もありますので、とにかく、法人税、所得税に関しては、先進国の中で一番低い国にするのだと。同時にこれは歳出を効率化、財政規律をしっかりと守っていくということを前提としてというような明記をしながら、こういう国家目標ではないですけれども、多くの人々や全日本人にアピールするというか、みんなが税金は安いほうがいいと思っているのは確実ですから、そっちの方向に持っていけるようにするのだということを、中長期の方針として書くのはいいと思います。これは前回お話ししたことです。
〇委員
相手があることなので、電気屋さんなんかもそういうのがあるのですけれども、今の話ですと、法人税が、他の国が次のアクションを起こした時にもずっと対応していくというご主張なのでしょうか。
〇委員
それであっていいと思いますよ。ヨーロッパなんかでも、すべての国が税金を引き下げていくような状況であれば、同時に日本もそれなりのことを考える必要があるでしょうけれども、ある一定のところでこれは落ち着きますけれどもね。
〇委員
この問題は、非常に国際的なグローバル化が進む時に、タックスコンペティション的な形で、みんな切り下げて、法人税の部分のところを小さくするような部分が危険性としてはあり得るわけですけれども、租税協約の問題もございますし、法人段階でどのような形で税を負担を求めるかというのは、わりとディープな問題もございますので、これ、ご意見はご意見として、その他の意見の中で記載させていただいて、今後議論を深めるという形で対応させていただければありがたいと思います。
ただ、安倍内閣としては、成長を資するような税制改革をまずやろうと。そして、それで収入というものをできるだけ多く早期な形で効果が上がるようにしようと。そして、最大限歳出カットというものをこの5年間で対応しようと。そして、その残差としての税負担の増大については最小にしようと、こういう考え方で構図が成り立っておりますから、委員の問題提起とそれほど私は違わないのだと思います。
ただ、問題は、先ほどから委員がずっとおっしゃっているとおり、2011年以降どうするのだとか、あるいは先ほどの2050年ぐらいの高齢化のピークの時にどうするのだというような問題がありますから、その書きぶりにおいては、我々としては、ここでは税制改革の1つの目標である成長力の部分のところに今年はターゲットをわりと当てる。そして、それ以降の問題については、新年早々から皆さんのプレゼンテーションも含めてやっていただいて、しっかりとした議論を構築していく。こういうことだろうと思いますので、ここの段階で少し表現ぶりが難しいのかなというのが実は私の個人的なあれですが、お許しいただければ、そのような取扱いをさせていただきたいと思いますけれども。
〇委員
わかりました。
もう一つは各論のほうでして、2ページの3項目の「マネーゲームではないリスクマネーの有効な」というところです。ここはそれでいいと思います。
4ページの一番上の「いわゆるエンジェル税制については、ベンチャー企業への資金供給を促進するため」と、これはもう少し具体的に書くと、減価償却等々の減税に、実効税率を下げるいろいろな効果があるのですが、これも前回と少し前の会合の時に指摘しましたように、我々などが3年とか4年とか5年とか7年とか、ずっと赤字、赤字、赤字でお金をずっと使いっぱなしのベンチャー企業に資金を供給すると、減損会計とか時価会計の考え方に基づく公認会計士の事務所から、減損せよというふうに言われまして、どうしても中長期の深い技術を開発するベンチャーに投資することができなくなってきています。こういった分野に対する何らかの措置、これは具体的提案を来年以降してもよろしいですけれども、我が国はするのだと。アメリカにはこれはもうないですから、1年とか2年ぐらいの、すぐに資金が回収できるようなサービス業のベンチャーしかこれから育っていかないような状況です。ですから、ネットベンチャーとか、インターネットを使ったサービス産業ばかりがベンチャービジネスとして存在しまして、テクノロジーの分野の投資は急激に減っている。
そして、また大企業においても、この減損会計、時価会計等々がありますから、やはり1,000億円、2,000億円、今年、来年で投資したとしても、これは3年から4年、5年ぐらいで、何らかの形で短期的に中期的に回収できるほうがベターな目標だという方向づけが、ずいぶんとアメリカの中に出てきていまして、日本にもそういうことが入ってきているかと思いますけれども、これはみんな株価を気にしないと、経営者がクビになるという世界的な、これは正しいことではありませんが、実際そういう国になっておりますので、それに立ち向かうような新しい仕組みを作ることが重要だと思っています。
〇委員
私は、そういうことに税で対応しようとするのは大嫌いでして、やはりベンチャーは、うんと大儲けしたいと思う人が投資すればいいものであって、税金をまけてやるから投資するというのは、根本的に間違っていると実は思っています。大勢がエンジェルを大切にすると言っているので、はむかいませんけれども。
一つ予言しておきますけれども、今回、エンジェル税制が拡充されて、かなり広い範囲に広まったとすると、3年後には必ずエンジェル詐欺というのが出てきて、泣きをみるお年寄りが続出すると思います。本来、ビル・ゲイツさんみたいな大金持ちが投資して育てるのが本筋なのではないでしょうか。
〇委員
1つの論点としてあれですが、先ほどの委員もご指摘がございます。それで柱立てとして、同族会社の留保金課税とエンジェル税制を中黒でつないでいるのに、エンジェル税制が2行というのも少しバランスが悪いという感じもいたします。その点で今ご指摘の開発コストの問題であるとか、いわゆる「死の谷」の問題でありますとか、あるいは先ほど対象とする企業というようなご指摘もございますので、この書きぶりについて、一度起草委員の方々と相談させていただきます。
ただ、留意事項としてのただ今の委員のご指摘というのは、確かに庶民感覚としてもおそらくそういう懸念が出てくるきらいがありますので。ただ、そこまで我々の現状のエンジェル税制が優遇しているかというと、私はちょっとまだ十分ではないのかなという感じもいたしますので、その辺のバランス感覚を少し起草委員と相談をさせていただきたいと思います。
どうですか。今のエンジェルは、いいですか。
先ほどから手が挙っていますね。どうぞ。
〇委員
今回のこの答申は、何よりも国民に理解を得られるということが大前提だと思うのです。そういう意味で、私、国民生活の分野のところの議論をお休みしたので、よくわからなかったのですけれども、今回、8ページを拝見して、納税環境整備ということが非常に詳しく書かれてあります。これは大変重要なことだと思います。やはり税の徴収率をもっと速やかに上げていくということは非常に重要で、そういう意味では、国民に対してもっとメッセージが届くような表現ぶりにさらに配慮をしていただきたい。
1つは、今回の文言の中で、やや性悪説に立った書き方がちょっと見られるのです。それは何かというと、「租税回避」というようなことが8ヵ所ぐらい出てくるわけですので、もちろん、それは技術的に十分わかるのですけれども、しかしながら、オープンで、イノベーションで、ポジティブな戦略を今回訴えるわけですので、やはり国民に公的部門、公共を支える税なのだということを、改めてここでメッセージとして強く、1、2ページあたりでもいいですので、そこを入れていただいて、納税環境のアクセスビリティーを高めるということも、2ページあたりに書いていただくといいかなと思いました。
もう一つ、先ほど来、2ページで、研究開発税制の「マネーゲームではないリスクマネー」のここの文言が議論の対象になっているのですけれども、私も企業で研究開発をやっていた立場から言いますと、極めて研究開発促進税制を使って、愚直に製造業等、インフラ企業等はやり始めているわけです。そういう観点から立つと、やはりこの表現は非常に重要なメッセージだと思いますので、私はこのままでいいかなと思います。
〇委員
どうぞ。
〇委員
今のところなのですけど、私も「単なるマネーゲーム」がさっきからずっと気になっておりまして、両論出たのですけれども、もしこれを生かすのであれば、「単なるマネーゲームにとどまらない」とか、「単なる」を削って、「マネーゲームに終わらないリスクマネー」と。つまり、「ではない」というと、マネーゲームが駄目だという印象がすごく強く出てきて、必ずしも悪いわけでもないので、ただ、マネーゲームにとどまってしまうようなことでは困るよと、もっと前向きなリスクマネーにしてもらいたいのだよというのが趣旨だろうと思いますので、「マネーゲームにとどまらない」か、あるいは「マネーゲームに終わらない」か。
〇委員
今のアイデアはどうですか。私はいいと思いますけれども。では、「とどまらない」という形でやらせていただきます。どうぞ。
〇委員
先ほど会長がちょっと触れられて、そのままになってしまったのですが、この減価償却制度のところは、結局、新規設備ということ、新規の取得の資産ということは出ておりますが、既存の設備、旧のほう、これについては、何か少しここで表現を変えることを工夫しましょうということを会長はおっしゃったわけでしょうか。
〇委員
ここのところはまだ具体に議論をしておりませんので、どこまでカバーするか。もしご意見があればということで申し上げたのですけれども。
〇委員
そうですか。なるほど。そうすると、既存設備についてはどういうふうに適用するかということは、まだ議論していないから、今回は触れないというのが今のご方針ですか。
〇委員
この部分のところでは、「新規取得資産に」というぐあいに書いておりますが、それでよろしいでしょうか、ということを申し上げています。
〇委員
確かに議論をしていないので、既存の設備まで今踏み込んで、方向性をきちっと出すということは、なかなか難しいと思うのですけれども。それと、ここまで来ると、旧まで含めますと、今度の軽減するほうの負担が大きくなりますので、とは思うのですけれども、そうすると、今の確認なのですが、要するに、新旧ということについては触れずに、新規のことだけをとにかく今回は書いておこうではないかと、そういうふうに理解してよろしいですか。
〇委員
舞台裏を申し上げますと、文言の最初の表現のところで、「また、新設備投資を促進し」という書き方をしていたので、設備投資というのは大体新なのだと、フローの概念だと、これは書き方がおかしいということで、私が事務方と相談をいたしまして、それで後ろの部分のところで、取得資産のストック分のイメージの中に新というものを入れて、ここで皆さんにお諮りをしているということなのです。
〇委員
わかりました。
〇委員
これは事務局は何か発言すべき材料を持っていますか。タッチーな部分もあるとは思うけれども。
〇事務局
この辺は、具体的にどうしていくか、これからいろいろ関係者とも詰めるべき部分も残っておりますので。それから、この場で特段そこについて、今まで詰めた細かい制度設計にわたる部分についてまで、ご議論いただいてもいないと思いますので、こういう趣旨で我々も受けとめさせていただいて、細かいところは、またこれからさらに具体論として、議論をしかるべき場でさせていただくことにさせていただければと思いますけれども。
それから、1点ちょっと補足させていただきます。先ほどの耐用年数のところについて、実は今回私どもからも事務的なご説明をさせていただきました。その趣旨は、要するに、経済産業省なり関係方面からは、まず基本的に今の耐用年数全体について、実態に合っているのかどうか、全面的な見直しをきちんと調査をした上でしてほしいと。それから、区分自体も、先ほどのお話にございますように、非常に複雑になっているので、より簡素なものとすべきではないかというご要望が強くあるわけです。
これに対して私どもは、今、全面的に各企業にもお願いして、調査をしておりまして、調査結果を見て、その抜本的な見直しはすべきものだろうと思っておるわけです。したがって、その際は当然、法人税法なり所得税法の本法の基本的な改正につながる可能性があるわけでございます。その際、機械装置だけですとか、建物だけですとか、そういう区分をあらかじめつけるのではなくて、今の全体の耐用年数自体が、実態に合っているか、いないかというまず実態把握をした上で、そういう本法改正を基本的に考えたい。
ただ、その中でも、後段に特に書いてございますように、特に活性化という観点から今、あまりにも耐用年数と実態がかけ離れている一部の施設が、あるいは装置があるのだというご指摘がございますので、それについては、もちろん抜本的な調査結果を見る前に、早急に直すべきものは直す必要があるのではないかという理解でお諮りをしたというつもりでございます。
〇委員
起草委員としてもそういう理解でここは書き込んでおるつもりなのですが、方向性について、先ほどの大幅な簡素化とかいうようなご指摘がございましたので、今後の検討の課題としては、その点について、少し起草委員と相談をさせていただくことにします。どうぞ。
〇委員
償却制度のお話が出ましたので、今回の答申については、もうこれで基本的には結構なのですが、今、長期的な話も出ましたので、いわゆる実態にもう少し合わせようというのはもとよりなのですが、我々の目から見ると、償却のイメージというのは、もともと物理的な償却という形で考えられている。しかしながら、もちろん、競争力とか企業の経営ということからすれば、エコノミック・リプリセーションというのが意味がある概念であるわけですね。しかしながら、それをあまり言っていると、システムとしての税という観点からすると、実効性がなくなってしまうということで、どこでバランスをとるかということだろうと思うのですが、長期的には、この税調でこの償却制度の問題も少し抜本的に考えてみるという課題としては、そのエコノミック・リプリセーションと税法上のリプリセーションというのを、どういうふうに折り合いをつけるのがいいのかという問題がある、という問題提起をさせていただけたら思います。
〇委員
固定資産税の考え方等でも、そこのところが微妙にずれが生じているような部分がありますので、ここは我々がACRS的な形で加速的な費用回収の制度を導入するというようなところまではいっていないわけで、実態と経済的な償却を経営者の方々が考えていく際に、現状というものをどのような改革をしながら、それに向けて使いやすいものにしていくかと、こういう話だろうと思いますので、ぜひその辺のところについても、我々、本質的な問題ですから、これは来春以降きちんと議論をする、こういう形でやらせていただきたいと思います。
今の事務局のご指摘も、基礎的な作業としては非常に重要なポイントでございますから、しっかりやっていただきたいと考えます。
どうぞ。
〇委員
先ほども委員からお話がありましたけれども、租税回避という言葉が多いということもあるのですけれども、まず、3ページの同族会社の問題、これも留保金課税という任務というか、そういうものはもう終わったのではないのかと。要するに30%、10%の差があるから、それで回避するというような問題ではなくて、もう留保金課税を、ここに「更なる見直しを」ということなのですが、すでに廃止すべきであるというふうに私なんかは考えておるものですから、租税回避のこの辺の欄をなくしてもいいのではないのかなと思います。
それから、先ほどの委員からお話がありました事業承継税制の問題、「当面構ずべき措置については」ということですけれども、これについては、我々中小企業にとって、今一番問題になっているのは、非上場株式の問題ですので、そういうものが含まれているというふうにとらせていただいていいのでしょうか、という確認をさせていただきます。
それから、上場株式の配当、譲渡益の問題ですけれども、「金融所得課税の一体化の方向に沿って、期限到来とともに廃止し」という、廃止するということで決めつけておられるようなのですが、証券業界等からのいろいろな情報を聞いてみても、一般株主がやっと10%程度までになってきたというようなこともあるし、アメリカに対してやっと日本が10%までいった。アメリカが26%、ドイツにしても16%ぐらい。それがやっと日本も10%程度まで来て、やっとここまで来たところであって、これを本当に早期に廃止していいのだろうか。アンケートをとってみても、30何%は、上がるのだったらやめたいというようなデータが出ておるようですので、その点を検討する必要があるのではないかなと思いますので、この辺、廃止ということをはっきりとうたわれていいかどうか。
それから、道路特定財源の問題も、タイミングの問題が、将来的には廃止することは必要だと思うのですけれども、私も申し上げました、幹線道路やなにかまだ必要なところができていないという部分をどうするのか、ということもあるわけですので、「一般財源化を検討すべきである」というような程度にしておいていただくべきではないか。むしろいろいろな特定財源がたくさんあって、一般財源よりも何倍もあるというようなことに、もっとメスを入れなければいけないのではないかと思うのでして、その辺を本文のほうにお入れいただけるのかどうか。どうですかね。
〇委員
幹線道路ができていないって、気分で言っちゃだめなんですよ。個別に言わないと。どこどこの道路ができていないんですか。そういうふうな言い方はだめなんです。
〇委員
どうぞ。
〇委員
別件です。明日出られないものですから。
全体の今回の文章については、基本的によくできていると思うのですけれども、今後は、この委員会として、我々は税についてどう考えるかというメッセージ、つまりこの文章をどう読むかということがすごく大事だと思います。
それから、おそらく来年以降の議論にもかかわってくることで、ぜひ一言だけ、1ページの2あたりに書いてあることについて、意見を申し上げさせていただきたいと思います。
すごく大事なメッセージとして入っていることがいくつかあって、1つは、税を税の世界だけで考えるという時代ではないと。社会保障等のほかのものとの関係も重要だし、それから、さらにいえば経済は生きたものであるということで、成長とかそういうこととも関係して書かなければいけない。これはおそらく我々にかなり課された課題だろうと思うのです。
さっきちょっと話題になったのですけれども、「21世紀の半ばの我が国経済社会を見据えつつ」というのは、かなり重要な論点で、実際21世紀、2050年というかどうか別として、経済学者的な議論で申しわけないのですけれども、経済成長ってどこで見るのかという時に、2年後、3年後、あるいは2011年のプライマリーバランスをうまく達成するために、切り抜けるための手段として見るのではなくて、実は20年後、30年後、日本は本格的にいわば高齢化社会になった時に、日本がどういう社会になっているのかと。
あとで電卓でたたいていただくとわかるのですけど、仮に1%で30年成長すると、その時の日本の経済の規模は今の1.35倍ぐらいだと思うのです。3%で成長レベルかどうかわかりませんけれども、仮に3%で成長すると、30年後には大体2.5倍になっているのです。つまり、日本がこれから高齢化していった時に、本当に我々がきちっと社会を、今我々が期待しているような生活を期待できるかどうかということが大事で、考えてみたら、その時に税金をどう集めるかとか、支出をどうするかといったら、そのパイの中でどういうふうにやるかという、どちらかというと、副次的というとちょっと失礼なのですけれども、言い方だろうと。そういうメッセージを込めるというのですか、その上で、税というのはすごく大事だと思うのです。だからといって、別に全部減税して、成長路線をとれということを申し上げたつもりではないのですけれども、実はここで言う21世紀半ばというのはかなり重要な意味を込めているのであって、そういうことが、ここに文章になっていなくてもいいのですけれども、ぜひ会長にもいろいろなところで発信をしていただければと思います。
〇委員
わかりました。ありがとうございます。どうぞ。
〇委員
今の委員の意見はもっともなのですが、僕は、やはり当面2011年のプライマリーバランスの黒字化が課題なわけで、それがクリアできなくて30年後もあり得ないわけですから、そこで、さっきの道路特定財源の一般財源化でも、7,000億円余っているということなのですが、ただ、それで問題は、きのうも安部総理が、特定財源の見直しをちゃんとやってくれと官房長官に言って、官房長官は、自動車重量税だけではないよ、揮発油税ですよというふうにきちっと言ったので、そこは非常に重要な点なのですが、そこで問題は、去年の税収見積もりが45兆円で、最終的に50兆円税収があったと。今年は46兆円で、最終的に52~53兆円いきそうだと。5兆、6兆というすごい金なんですよね。その5兆、6兆、7兆という金が見積もりより余計来ているわけで、それについてどうするのかということがないと、道路特定財源の7,000億円余ったって、すごくかすんで見えるわけです。それで、補正でまた災害対策に使うのですかということは、そういうメッセージがきちんと出ない限りは虚しいんですよね。気をつけないと、この議論全部ね。そこで、これは税調のマターかどうかという問題、歳出・歳入一体改革ということで、どこまでが税調のマターなのか、非常に難しいですよ。
でも、今回安倍さんが所信表明演説で、9月に言った道路特定財源の一般財源化をきのうあえて口にして、これで火中の栗を拾うわけですね。その時のリーダーシップがどういう形で支えられるかといえば、歳出・歳入一体改革がきちっと保証されて、国債発行が25兆であるとか、そういう強いメッセージとともに出てこない限りは、結局、参議院選を睨んだばらまきみたいな、後ろのほうから補正でどんどん手を入れられていって、余った税収がそうやって使われていったら、何のためにこれをやっているのかとなっちゃうわけですね。極めて根本的な問題ですよね。だからその場合にどうするか。どういうふうに言うか。それは、会長の言いぶりでどういうふうに言うかということはある部分あるので、だから、税調の書きぶりと会長の言いぶりのあれですよね。
〇委員
アドバイスしていただいて、ありがとうございます。
〇委員
勝手なことを言っているようだけど、これは一番重要な問題ですから。
〇委員
いえいえ、非常に重要なポイントだと思います。
実は、最後の道路財源の問題については、我々は従来より踏み込んで書くということを基本的なスタンスとして示したい、というのがこの表現ぶりになっておりまして、前には、道路特定財源について、揮発油税、自動車重量税というのは言及していなかったのです。我々の起案の段階では。したがって、この問題について、背景的なことを少し触れるのがいいかどうかわかりませんけれども、自重税だけに限定しようとか、いろいろな姑息な議論がございまして、それはだめだよということを税調としても応援するという書きぶりにしている。こういうぐあいに理解をいただきたいと思っております。
「図るべき」という部分のところも、ずっと同じような文言をやってきたのを、もう一段踏み込んだとご理解いただければと思います。それに先ほどの委員のようなご意見があるということも十分承知をしておりますが、やはり時代の方向性としてのご議論は、一般財源化をするということで議論が進んできたと思っておりますので、ぜひここは、答申の中ではこのような表現ぶりでご了解いただければと思います。どうぞ。
〇委員
租税回避というお言葉、お嫌いだと思うのですが、私たちそれで仕事していますから。僕が租税回避しているわけじゃないですけど。
この答申の全体的な流れが経済活力の維持ということですよね。租税回避は別に経済活力の維持とはあまり関係ない話ですから、やはり制度を仕組む以上、内容があって、極端な場合には抑えるというのは、租税法律を作る際には、これは立法論ですから、常に目配りをきかせておくということで、あまり耳障りになってはいけませんから、そこは考えなければいけませんが、それはご理解いただかないとというふうに思います。
それと、それに関連するのですけれども、例えばエンジェル税制のところですけれども、ここも要は、どこまで踏み込むかということ、いろいろそれはあると思うのですが、少なくとも、例えば手続的に面倒くさいとか、あるいは範囲が狭すぎるとか、そういうことについては、当然、19年度で、当然かどうかわかりませんけれども、19年度で組み込むということは考えられると思うのですけれども、あまり抜本的な、効果も見なければいけませんので、そこを考えながらということになると思います。
事業承継税制のところも、経済活力の維持というのを、上の段落にも下の段落にも入れたので、それに関連する限りで、例えば種類株式の評価を、あまりにも不明確だから何とかするとか、精算課税方式をもうちょっと利用しやすくするとか、そういうことは当然のことだと思うのですが、非上場株式だから相続税をどうこうしろとかいうのは、それは経済活力の維持とすぐ関係するかどうかわかりませんし、相続税を否定するというようなところもあるもので、そう簡単には、もうちょっと議論しなければいけないのではないかということで、できる範囲の当面構ずべき措置と、それから、ゆっくりとまた議論しながらというようなところが、何となくあるという感じではないかと、個人的に思っているわけですけれども。ご不満かもしれませんが。
〇委員
どうぞ。
〇委員
個別のことではありません。1つ、ある意味では、前回の税調から舵を別のほうに切って、経済成長による財政の建て直しという、全体としては、大分苦労されて書かれたということで、評価をいたしたいと思います。今の個別の自治体との関連のところは、これ以上言いません。いろいろ別のフィールドでの問題もございますので。
ただ、非常に大事なのは、どうやって国民にメッセージを送るか。我々、選挙民に一番近いところから言いますと、例えば、こういう税制をとった場合に、それじゃあ、経済はどうなるのかというシミュレーション、あるいは個別のこういう税の問題を議論していって、ある一定のシミュレーションをした場合に、それが税全体としての、数値的にどういう形になるのかという、ここら辺がこれから非常に求められるのではないかと思うのです。ですから、当然、事務スタッフも強化されたようですけれども、やはり最終的には数字を少しずつ出していかないと、それがそのとおりになるかどうかは別にいたしまして、一定の条件のもとでシミュレーションをやらないと、何か経済成長路線だけれども、さっぱり経済は成長しないのではないかとか、そこら辺が非常にこれから大事なところではないかと思います。
もう一つ、言葉でかなり片仮名が出ていますけれども、大半ここにいらっしゃる方はわかるのですけれども、一つだけ気になるのは「イコールフッティング」という、これは前にIT戦略の時に、5~6年前に使ったのですけれども、我々のところに一番クレームがつきました。何を言っているかわからない、日本語にしろと。これは一般からするとそういうふうに感じられて、実際我々使ってみて、非常に不評だった言葉です。
〇委員
わかりました。ありがとうございます。
今の委員のお話、あるいは先ほどの委員のお話、これは本格的に我々がマクロ経済と税との関係とか財政との関係をしっかりと分析しなければなりませんし、家計や企業に対してどのようなミクロ的なインパクトをもたらすか、これは諮問でも要請されておりますので、12月1日に部会あるいはチームの編成等について、またご相談させていただきたいと思いますが、来年は皆さんのお知恵をかりながら、しっかりと取り組んでいくということで、少しその辺のところをアナウンスとして書くかどうかということも含めて、検討してみたいと思います。どうぞ。
〇委員
今日、私はもうこれで最後の発言にさせていただきたいのですが、7ページの金融所得課税のところで、個人的には、「『貯蓄から投資へ』の政策的要請を受けて」と、ここにも文章がありますが、そういう形で証券市場のほうへ金融資産が流れていくという方向を今後進めていくのが、当然1つの流れだと思っておりますので、そういう意味では、今回、期限が到来したとはいいながら、これを廃止していくことについては、個人的には非常に残念だと思っています。しかし、これは皆さんはご意見がそういうことで方向が決まっているのならば、これはやむを得ないと思いますが。
この中で、下から15行目ぐらいのところに、公平性の観点ということで、「高所得者層・富裕層ほど株式等の保有割合が高く」と書いてございますけれども、この事実関係というのも、必ずしもいろいろな統計で、これが本当に正しいかどうかということもありますし、ある意味では、これが正しいとしても、中所得者層ぐらいまで、とにかく、これから投資のほうへさらに進んでいってもらわなければいけないと。それによって初めてそういう流れができていくわけですから、こういうことを書いてしまうと、株はやはり自分たちには縁がないものだなということを低所得者、あるいは中所得者層が思ってしまう。そうではなくて、実際にそのくらいの人たちでも、株をどんどんやっていくことによって、こういう市場が活性化していくのだということだとすれば、ここのところの表現というのは、むしろカットしていただいてもいいのではないかという感じがいたしますので、お願いいたします。
〇委員
わかりました。私のところにも、この問題、高額所得者から高齢者の方まで、いろいろご不満が届いておりますけれども、わりと庶民的な方、高齢者の方から、困るという部分がけっこうございます。その点で、少しこれは、意図がどこまで正確に伝わるかという誤解を招きかねない部分もありますので、ここは一体化の流れの中で淡々と書くということで、対応させていただきたいと思います。
それで、私も注意深く7ページのところで、第1、第2、第3というぐあいに入れて、委員が今おっしゃりたいような部分のところについても、配慮をしておるつもりなのです。これはしかし、原則的な部分のところで20%。今、ポートフォリオの手段が非常に進んでおりまして、全部所得を入れ替えるようなことすらできるわけでございまして、その際に、まさに租税回避的な部分が出てきかねない部分がございます。ですから、原則としては20%にしながら、例えば実効税率という観点で課税ベースをどうするかとか、長短の部分のところをどうするかとか、そういう問題については、しっかり検討しましょうよというのが、7から8にかけての第1、第2、第3という形でのコリフィケーションをつけたと。これでご勘弁いただければ、私は非常にありがたいです。ここは非常に議論が分かれたところでございますので。いかがでございますか。
〇委員
それは結構でございます。
〇委員
気勢を制したようでございまして、すみません。
〇委員
先ほどの委員の発言から来て、どうも我々中小企業、私は税制の問題でも、中小企業にどう顔を向けるのかという問題でして、70%の雇用を確保、2,800万人からの雇用を支えているのではないのか。53%の付加価値を支えているのは中小企業なんだろうと。その中小企業がただ生きていくだけではなくて、それをどうやって発展させるかというのに、もっと考えていくべきではないのかなと。要するに、租税回避をするから、ごまかすから、というような考え方が先に立っているように見えてしようがないわけです。すべてがそうだと。そうではなくて、そんなことをやっていたら――でもそれを回避しても、その金はまた使われるから、世の中は循環されていくということも言えば言えるのですけれども、しかし、もっと活力を与える税制というのは、この際にぜひとも検討をしていただきたいと思うのです。ひとつその辺はよろしくお願いします。
〇委員
わかりました。確かに、委員から7ヵ所あるということで、私も数えていなかったので、そんなに使っていたかと。こういう対応をとっていく、改正をしていく時に、租税回避的な部分のところについても留意する必要があるというのは、総論的なところで書いて、できるだけ各論のところでは、少し淡々と書くというような形で、ちょっとこれも起草委員会のメンバーと相談させていただきます。どうぞ。
〇委員
9ページの上から4行目あたりですが、国民生活に関連する税制ということで、ここはずいぶん親切に書いてあるのですけれども、納税者の側から見ますと、むしろ税負担は変わらないといっても、定率減税が18年度で2分の1に削減され、19年度で全廃されますね。そうすると、負担増と誤解されないようとか、負担は変わらないということをあまり強調されますと、納税者にとってはむしろ混乱すると思うのです。定率減税分だけは所得税が高くなるわけですから。だから、ここまで親切に書くのであれば、もう少し書き込まないといけないし、いっそのこと、そこまで書かないのか。この辺はちょっと検討していただいたほうがいいのではないかと思います。
〇委員
わかりました。その点のところは、どういう修文にするか、ちょっと相談してみます。
ほかはいかがでございますか。
〇委員
事業継承について委員のおっしゃられる点というのは、非常によく理解できます。ですから、前ご提案を申し上げましたのは、非上場株式とか土地とか、引き継いだ場合には、売却したり、また配当金を取ったりするような実現益が出てくるまでは、課税を繰り延べるというようなやり方によって優遇するようなやり方をとれば、課税はかけるけど、実際のキャッシュフローの部分では助かるということが実現できると思います。
〇委員
その点は少し相談します。どうぞ。
〇委員
この答申の中身や文言ではなくて、少し離れた議論をちょっとだけさせていただきたいと思うのですが、この答申は総理に対する答申ですので、文言等や、あるいはテクニカル・タームが入っても、全く問題がないと思っています。ただ、国民にわかりやすく示していくということが、この税調の1つの新しい主張だとすれば、答申とは別に、税の専門用語については、何らかの形で国民にわかりやすくインターネット上で、これがもし確定して、それで公開した時に、そこをクリックすればその説明があるようなこと、そして、例えば「リスクマネー」であるとか、「エンジェル税制」であるとか、「外形標準課税」も、国民がそれを見ればすぐわかるような工夫をぜひしていただきたいということです。
〇委員
それは非常に重要なこと。どうぞ。
〇委員
外形標準課税のところですけれども、「対象法人の見直しが課題となる」というところはいいとしても、その下に、「多数の法人が法人事業税を負担していないという状況の是正を図る」ということは、中小企業からも外形標準課税を取るんだよというように受け取れるのですが、そういうお考え方なのでしょうか。
〇委員
この部分は、資本金を操作するとか、そういう流れの中で、言葉がまた繰り返しあれですが、租税回避的なことになっているので、そこはしっかり対応しましょうというのがここでの……
〇委員
そのことだけですね。
〇委員
はい、そうです。
〇委員
それだけわかればいいです。
〇委員
非常に活発なご議論をいただきまして、ありがとうございます。起草委員とこれからまた今のご議論を受けて、修文の中に収め込んでいくということをやらせていただきたいと思いますので、また明日、改めてお諮りさせていただきます。その時に最後の思いを言っていただいて、そこでどこまで答申の中に書き込めるか、あるいは、その答申に盛り込めなかった重要な論点として掲げさせていただくか、このところを最終的に明日決定させていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
それでは、どうもありがとうございました。積極的にご発言いただきまして、いい議論ができたと思います。
それでは、今後の予定でございます。先ほど申し上げました、明日10時よりまた企画会合を開催させていただきます。その上で、12月1日の総会でとりまとめて、総理に答申を手交したいと考えております。
改めて、申しわけございませんけれども、会議終了後、この文書を置いて帰っていただけましたらありがたいと思います。
それから、最後にご報告をさせていただきますが、24日に私、経済財政諮問会議に出席をいたしまして、今の審議の状況を報告させていただきました。それに対して民間議員が税調に望むポイントをペーパーとしてお示しをしていただきまして、今後これをどのように諮問会議と税調が対応していくかということは、新春明けてからの重要な課題になっております。
私はその場で、基本論をきちんと議論したい、分析したいということで、あまり前倒しをされると困るなというニュアンスは申し上げましたが、いろいろこれからの経済政策を議論していく際に、来年、皆さんもご承知のとおり、「骨太の方針」というものがございまして、それをどうするのかというような具体的な問題がございます。これまたきちんとその内容についても紹介をさせていただきたいと思いますし、おそらく、これは独断で事務局判断を超えて申し上げますけれども、12月1日に大田経済財政担当相にお越しいただいて、皆さんの中で、経済財政諮問会議の考え方について説明をしていただいて、意見交換をさせていただきたいということで、今、少し調整をしておりますので、その辺のところもよろしくお願いをいたしたいと思います。
それでは、今日は企画会合をこれで終わらせていただきたいと思いますので、ご苦労さまでございました。ありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。