第17回法人課税小委員会 議事録
平成13年10月9日開催
〇委員
ただいまから、税制調査会第17回法人課税小委員会を開催させていただきます。
前回、夏休みをかけて事務局で案を練っていただいたものを配付させていただきまして、連結納税制度の骨子、創設しようとしている連結納税の仕組みについて御議論いただいて、大まかな点では御了解をいただいたと思っております。
本日は、前回配付いたしました「基本的考え方」と、さらに引当金、減価償却といった個別的な論点も加えまして、総会に報告する基本的な取りまとめ、そういった形で事務局に作成していただきましたので、これをまず事務局で読み上げていただいて、皆様からの最終的な御意見、御質問をいただいて、小委員会としての取りまとめを行いたいと考えております。
併せて、前回の小委員会で減収の見込み8,000億円ということが出ました。それに対応して、課税ベースの拡大など増収策を考えなければいけません。そこできょうは、残された時間を使いまして、課税ベースの見直しについても資料を使った御説明をいただいて、取りまとめと課税ベースの拡大の論点について議論をいただきたいと思っております。
それでは、「会議終了後ご返却願います」となっております「連結納税制度の基本的考え方(案)」、これを読み上げていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
〔事務局読み上げ〕
「連結納税制度の基本的考え方(案)
一 基本的な考え方
1.連結納税制度の意義
1) 連結納税制度は、企業グループの一体性に着目し、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して所得を計算するなど、企業グループをあたかも一つの法人であるかのように捉えて法人税を課税する仕組みである。
2) このような連結納税制度の意義は、企業の事業部門が100%子会社として分社化された企業グループやいわゆる純粋持株会社に所有される企業グループのように、一体性をもって経営され実質的に一つの法人とみることができる実態を持つ企業グループについては、個々の法人を納税単位として課税するよりも、グループ全体を一つの納税単位として課税するほうが、その実態に即した適正な課税が実現されることにある。
また、近年、企業グループの一体的経営の急速な進展や企業組織の柔軟な再編成を可能とするための独占禁止法や商法の改正が行われる中にあって、連結納税制度の創設は、結果として、企業の組織再編成を促進し、わが国企業の国際競争力の維持、強化と経済の構造改革に資することになるものと考えられる。
3) 他方、連結納税制度の創設は、法人格を有する個々の法人を納税単位としているわが国の法人税の課税体系の中に、企業グループを一つの納税単位とする新たな課税体系を創設するものであり、この二つの課税体系の間の整合性を確保しつつ適正、公平な課税を実現することが重要である。
4) 諸外国の連結納税制度は、グループ各社の所得と欠損を通算して得られた所得に対して課税を行うこと、グループ内の法人間の一定の取引から生じる損益の計上の繰延べを行うこと等の点で共通性が見られるが、実際の仕組みを見ると、基礎となっている単体法人に対する課税制度の違いや連結納税制度が採用された歴史的経緯等からそれぞれ異なったものとなっており、連結財務諸表制度のような統一性は見られない。わが国においても、わが国の単体法人に対する課税制度と整合性があり、かつ、わが国の企業・経済の実態等に合致した連結納税制度を構築する必要がある。(P1)
5) なお、連結財務諸表制度も連結納税制度も、個々の会社という法的主体を超えて、資本等の関連性を有する企業グループを、その一体性に着目して一つの単位として認識することが合理的であり実態に即しているとする点では共通している。しかし、連結財務諸表制度は、企業グループの財政状態や経営成績を投資家や債権者に開示することを目的とするのに対し、連結納税制度は企業グループの税負担能力を測定し、適正、公平な課税を実現することを目的としている。したがって、連結納税制度の対象範囲、適用要件、連結所得の計算などその仕組みは、連結財務諸表制度とは異なる別個の制度として構築する必要がある。
2.連結納税制度の基本構造
1) 連結納税制度の対象となる企業グループとは、その実質において単一の法人とみなしうる一体性を持ったもの、すなわち、経営が一の法人に支配されるとともに利益がその一の法人に帰属する完全に一体と認められる企業グループとすべきであり、親会社とその親会社に発行済株式の全部を直接又は間接に保有される子会社(100%子会社)をその対象範囲とすることが適当である。また、子会社の少数株主が子会社の欠損金の繰越控除のメリットを享受できないという問題や制度が過度に複雑化するという問題が生ずることを避けるためにも、対象子会社の範囲を100%子会社とすることが適当である。
さらに、このように企業グループの一体性に着目して制度を構築する以上、100%子会社はすべて連結納税制度の対象とすべきであり、また、一旦連結納税制度を選択した場合には、継続して適用することを基本とすべきである。100%子会社の中から連結対象を任意に選択したり、連結納税制度の取止めが自由にできるような仕組みは、恣意的な租税回避につながるおそれがあり、適当でない。
2) しかしながら、このように一体性を持つ企業グループといっても、組織的に統合された単一の法人とは異なり、法的には独立した権利義務の主体である個々の法人が株式保有関係を通じて親会社の支配下に統合されたものに過ぎず、株式の取得・譲渡等を通じて企業グループへの加入や企業グループからの離脱が行われる流動的な存在である。
したがって、連結納税制度において企業グループをあたかも一つの法人のように課税するとしても、一方で企業グループを構成する個々の法人が独立した法人格を持ち、納税単位となる企業グループの構成メンバーについて加入・離脱が生じるといった流動性、不安定性を十分考慮に入れて、適正、公平な課税が実現されるような仕組みを構築する必要がある。(P2)
このためには、連結納税制度の開始や取止め、連結グループへの加入、連結グループからの離脱が生じた場合には、単体で事業活動を行って稼得した所得に対しては単体法人を納税単位として課税を完結し、グループで事業活動を行って稼得した所得に対してはそのグループを納税単位として課税を完結することを基本として制度を構築する必要がある。
3) 一般に、税制は簡素を旨とすべきであり、この点については連結納税制度も例外ではないが、納税者にとって透明性の高い制度とすることにより、税負担に関する予見可能性と法的安定性を保証するため明確な規定を設ける必要があり、ある程度複雑になることはやむを得ないと考えられる。
また、諸外国における経験を踏まえ、企業行動が国際化し複雑化する中で租税回避行為を防止するとともに、適正かつ円滑な税務執行を確保できる連結納税制度を構築する必要がある。特に、租税回避行為の防止については、連結グループ内の各法人において適正な所得金額や税額の計算を行うための仕組みとともに、包括的な租税回避行為の防止規定を設ける必要がある。
3.税収減への対応
連結納税制度は企業グループ各社の所得と欠損の通算等を行うことから、その創設により税収の減少が生じる。しかしながら、税制本来の役割は公共サービスの恒久的な財源を確保することであるから、新たな制度の創設にあたっては、財政に与える影響を十分踏まえて行われなければならない。わが国の現下の厳しい財政事情を考慮すれば、連結納税制度の創設により生じる税収の減少に対してはこれを補填するための増収措置を講ずる必要がある。(P3)
二 基本的な仕組み
1. 適用法人
1) 連結納税制度の適用法人は、内国法人である親会社と、その親会社に発行済株式の全部を直接又は間接に保有されるすべての内国法人(100%子会社)とすることが適当である。
なお、ストックオプションにより取得した株式及び従業員持株会の株式のうち、一定のものについては、上記の持分割合の判定から除外すべきである。
2) 親会社又は子会社となる法人は、その全ての所得が課税対象となり、常に納税義務者となる法人とすることが適当であると考えられることから、親会社となる法人は普通法人と協同組合等に、その子会社となる法人は普通法人に限るべきである。
2. 適用方法
1) 連結納税制度の適用を受けようとするときは、税務当局の承認を受けることとすることが適当である。
2) 連結納税制度の適用の取止めは、やむを得ない事由がある場合に限るものとし、税務当局の承認を受けることとすることが適当である。
3. 納税主体
1) 親会社が連結所得に対する法人税の申告及び納付を行うことが適当である。
2) 各子会社は、親会社の連結所得に対する法人税について連帯納付責任があるものとすることが適当である。
3) 各子会社は、連結所得の個別帰属額等を記載した書類を税務署に提出することが適当である。
4. 事業年度
適用法人の事業年度は、親会社の事業年度に統一する必要がある。
5. 連結所得金額及び連結税額の計算
1) 連結所得金額及び連結税額の計算の基本的な仕組み
[1] 連結所得金額は、連結グループ内の各法人の所得金額を基礎とし、これに連結調整を加えた上で、連結グループを一体として計算する必要がある。
[2] 連結税額は、連結所得金額に税率を乗じた金額から各種の税額控除を行って計算することが適当である。(P4)
[3] 連結所得金額及び連結税額の計算の過程においては、連結調整金額等を連結グループ内の各法人に合理的な基準により配分する必要がある。
[4] 連結税額については、連結グループ内の各法人の納付税額又は還付税額として計算される金額を基にして配分することが適当である。
2) 連結グループ内の法人間の取引
[1] 連結グループ内の法人間の資産等の取引についても、時価により行うものとする。
[2] 連結グループ内の法人間で、相当程度の譲渡損益の計上が想定される資産(固定資産、土地等、金銭債権、有価証券及び繰延資産とし、その帳簿価額が一定額に満たないものを除く。)についてその移転を行ったことにより生ずる譲渡損益は、その資産の連結グループ外への移転、連結グループ内での費用化等の時まで資産の移転を行った法人において計上を繰り延べることが適当である。なお、減価償却資産、有価証券及び繰延資産に係る繰り延べられた譲渡損益については、簡便法により計上を行うことができるものとすることが適当である。
[3] 適正な課税を確保し租税回避行為を防止するために、連結グループ内の法人間の寄附金は、その全額を損金不算入とすることが必要である。
3) 利益・損失の二重計上の防止
子会社の株式の譲渡が行われた場合には、その子会社の所得や欠損について重複した課税や控除が行われることのないように、その譲渡の時において、その子会社の株式の帳簿価額の修正又は譲渡損益の額の修正を行うべきである。
4) 連結欠損金額
[1] 連結欠損金額は、5年間で繰越控除することが適当である。
[2] 連結グループで事業活動を行って稼得した所得から過去に単体で事業活動を行って生じた欠損金額を繰越控除することは適当でないと考えられることなどから、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前に生じた欠損金額をその連結グループで繰越控除することは適当でないが、その法人が親会社や長期にわたって100%子会社となっている法人である場合や適格合併により被合併法人の子会社等が加入した場合など一定の場合については、連結納税制度の下でその法人に帰属することとなる所得金額を限度として繰越控除することが考えられる。なお、この繰越控除を行う場合に、親会社については、この限度を設けないことが考えられる。(P5)
[3] 連結欠損金額についても連結納税制度においてのみ繰越控除するのが適当であると考えられるが、連結納税制度の適用を取り止める場合又は連結グループから離脱する場合には、連結欠損金額を適用法人又は離脱する子会社に引き継ぐことが考えられる。
[4] なお、連結納税制度の創設に伴う税収減への対応を図るときには、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前の欠損金額について繰越控除をしないことが考えられる。
5) 税率
連結所得金額に対する税率は、普通法人の税率と同様とすることが適当である。
なお、連結納税制度の創設に伴う税収減への対応を図る場合には、付加的に一定の税率を上乗せすることが考えられる。
6. 申告納付期限
1) 連結税額の申告納付は、連結事業年度終了の日の翌日から2月以内に行うことが適当である。
2) 連結申告書作成の負担を考慮し、2月の申告期限延長の特例制度を設けることが必要である。
7. 連結グループへの加入・連結グループからの離脱
1) 加入
[1] 連結グループに加入する法人(以下「加入法人」という。)について、連結グループへの加入前後でみなし事業年度を設け、加入前の期間については単体納税制度又は他の連結グループの連結納税制度の下で申告納付を行い、加入後の期間については連結納税制度の下で申告納付を行う必要がある。
[2] 加入法人の決算日及びその加入の日が親会社の決算日と近接している場合には、加入法人について、みなし事業年度の特例を設けることが適当である。
[3] 単体で事業活動を行って稼得した所得に対しては単体法人を納税単位として課税を行い、グループで事業活動を行って稼得した所得に対してはそのグループを納税単位として課税を行うのが適当であると考えられることから、連結グループへの加入に際しては、加入法人の資産の評価益・評価損の計上を行う必要がある。評価益・評価損の計上を行う資産は、固定資産、土地等、金銭債権、有価証券及び繰延資産とし、その帳簿価額が一定額以上のものに限ることが適当である。(P6)
[4] ただし、連結グループへの加入があったとしても、適格合併の場合など恣意的な操作の余地なく法人のすべての株式を取得する場合があること、法人に過大な事務負担を生じさせること等から、適格合併により被合併法人の子会社等が加入した場合など一定の場合については、資産の評価益・評価損の計上を行わないこととすることが適当である。
[5] なお、連結納税制度の適用開始に際しても、適用法人の資産の評価益・評価損の取扱いについては、親会社及び長期にわたって100%子会社となっている法人を対象から除くほか、基本的には、連結グループへの加入の場合の取扱いと同様とする必要がある。
2) 離脱
[1] 連結グループから離脱する子会社(以下「離脱子会社」という。)について、その離脱前後でみなし事業年度を設け、離脱前の期間については連結納税制度の下でその離脱の日から2月以内に申告納付を行い、離脱後の期間については単体納税制度又は他の連結グループの連結納税制度の下で申告納付を行う必要がある。
[2] 離脱子会社の決算日及びその離脱の日が親会社の決算日と近接している場合には、離脱子会社について、みなし事業年度の特例を設けることが適当である。
三 各個別制度における取扱い
受取配当、減価償却、寄附金、圧縮記帳、貸倒引当金、交際費、外国税額控除、特別税額控除等の各個別制度については、連結グループを一体として要件の判定や計算等を行うことを基本としつつ、制度の趣旨や技術的な問題点の検討も踏まえて、適切な仕組みとすることが適当である。
四 租税回避行為の防止
1. 連結グループに加入する法人の加入前に生じた欠損金、含み損益を利用した租税回避行為等を防止するための措置を講ずる必要がある。
2. 連結納税制度に関しては、多様な租税回避行為が想定されることから、包括的な租税回避行為を防止するための規定を創設すべきである。
五 税収減への対応
連結納税制度の創設に伴う税収減への対応として、連結所得に対する法人税率の付加的な上乗せ、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前に生じた欠損金額の繰越控除の否認等の措置を講じることが考えられるとともに、租税特別措置をはじめとして法人税制全般について見直しを行う必要がある。(P7)
六 その他
質問検査権、罰則、徴収の所轄庁等について所要の整備を行う必要がある。
七 地方税
法人事業税及び法人住民税については、地域における受益と負担との関係等に配慮し、単体法人を納税単位とするとともに、納税者及び課税庁双方の事務負担も十分考慮に入れ、基本的には、法人税の連結所得金額及び連結税額の計算過程において連結グループ内の各法人に配分される所得金額又は税額を基にして課税標準を算定する仕組みとすることが適当である。(P8)
(別紙)
1. 受取配当
1) 連結グループ内の法人からの受取配当については、負債利子を控除せず、その全額を益金不算入とする。
2) 連結法人の有する連結グループ外の法人の株式が特定株式に該当するか否かについては、連結グループ全体の保有株数等により判定する。
3) 連結グループ外の法人からの受取配当に係る負債利子の控除額は、連結グループ全体で計算する。
2. 減価償却
減価償却費については、確定した決算において損金経理により計上することが前提となっていること等から、連結グループ内の各法人の個別計算による。
3. 寄附金
1) 寄附金の損金不算入額は、連結グループを一体として計算する。
2) 寄附金の損金算入限度額の計算の基礎となる所得金額及び資本等の金額は、連結所得金額及び親会社の資本等の金額とする。
3) 適正な課税を確保し租税回避行為を防止するために、連結グループ内の法人間の寄附金については、その全額を損金不算入とする。
4. 圧縮記帳
1) 交換により取得した資産や特定資産の買換え特例の圧縮記帳については、確定した決算において損金経理により圧縮損の計上を行うことが前提となっていること等から、連結グループ内の各法人ごとに適用する。
2) 連結グループ内の法人に対して資産の譲渡が行われた場合で、譲渡資産の譲渡益の繰延べと取得資産の圧縮記帳とが重複するときは、納税者の事務負担にも配慮し、まず圧縮記帳を適用し、その残額について譲渡益の繰延べを適用する。
5. 貸倒引当金
1) 貸倒引当金については、確定した決算において損金経理により計上することが前提となっていること等から、連結グループ内の各法人の個別計算による。
2) 連結グループ内の法人間の金銭債権は、貸倒引当金の繰入限度額の計算の対象となる金銭債権から除くとともに、一括評価金銭債権に係る貸倒実績率の計算からも除く。(P9)
6. 交際費
交際費の損金不算入額は、親会社の資本金額を基に連結グループを一体として計算する。
7. 外国税額控除
1) 外国税額の控除限度額は、連結グループを一体として計算し、控除額は各法人ごとに控除限度超過額又は控除余裕額の調整を行った後の合計額とする。
2) 間接外国税額控除制度の対象となる外国子会社又は外国孫会社に該当するか否かについては、連結グループ全体の保有株数等により判定する。
8. 特別税額控除
1) 増加試験研究費の税額控除については、連結グループを一体として適用する。
2) 設備投資に係る税額控除については、特定の業種など個々の法人の属性に着目して講じられていること等から、各法人ごとに計算することとし、連結税額の一定額を限度とする。(P10)」
〇委員
ありがとうございました。
いまのは「連結納税制度の基本的考え方」ですが、事務局からつけ加える点はございますか。
〇事務局
いま読ませていただきました資料の5ページをお開きいただきたいと思います。「(4)連結欠損金額」の[2]でございます。ここは、いわゆるSRLYルールを記述した箇所でございますが、一番下の行、なお書きでございます。「なお、この繰越控除を行う場合に、親会社については、この限度を設けないことが考えられる」。これは、前回ご覧いただいたところからこの1行を加えてございます。アメリカの規定の例も参考にしながら、親会社の連結前の欠損金額についてはSRLYルールを適用しないという考え方もあるのではないか、という御意見が前回の会合後に寄せられましたので、それを書かせていただいております。
それから、7ページの「三 各個別制度における取扱い(別紙)」という形で、9ページ以降2枚、それぞれにつきまして、これまでの御議論を踏まえた整理を書かせていただいております。ここに書き切れていない個別の制度がなおあろうかと思いますが、それにつきましては、7ページの三に書いてございますように、「連結グループを一体として要件の判定や計算等を行うことを基本としつつ、制度の趣旨や技術的な問題点の検討も踏まえて適切な仕組みとする」ということで、各種の租税特別措置等につきましてはこの考え方で、それぞれの措置について今後検証して、制度の適用を決めてまいりたいと思っております。現段階までのところでは、(別紙)で整理をした形で御議論をいただければと思います。よろしくお願いします。
〇委員
ありがとうございました。
これについての御質問は、まとめてさせていただきたいと思います。
続きまして、課税ベースの拡大、「法小17-2」の資料、こちらについて御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
〇事務局
それでは、お手元の「法小17-2」、横長の資料をお開きいただきたいと思います。前回、課税ベースについて残された課題があるのではないかという御指摘をいただきまして、その関係の資料を準備させていただきました。
目次が2枚ほどついておりますが、おめくりいただいて、1ページという4枚目の紙でございます。「『法人課税小委員会報告』(平成8年11月における)検討項目」というのがまず掲げられております。御承知のように、税制調査会法人課税小委員会で、昭和40年の法人税法の全文改正以来の課税ベースについての全般的な見直しということで、そこに掲げてございます延べ38項目にわたって個別に検討していただいて、費用・収益の計上基準、資産の評価、減価償却、引当金、法人の経費、福利厚生費、交際費、寄附金、租税特別措置等、国際課税、事業税の外形標準課税といったところまで御議論いただいて、この大半は平成10年度の改正で実現させていただきました。
それが2ページでございますが、平成10年度改正ということで、一方で法人税率につきまして引下げを行っております。このとき、基本税率が37.5%から34.5%に3%引き下げられまして、それと併せて課税ベースの適正化が行われました。これらの課税ベースの適正化につきましては、3の「実施時期」の「注」に書いてございますように、6年間の経過措置が講じられて、6年をかけて改革後の姿をつくっていくということが、財源対策との関係もございまして、行われております。
このときに行われた主な課税ベースの見直しが、次の3ページに整理されております。まず、引当金関係では、貸倒引当金につきまして法定繰入率の廃止、賞与引当金・製品保証等引当金は廃止されました。退職給与引当金について累積限度額が当時の40%から20%まで引き下げられております。特別修繕引当金につきましても、積立割合を縮減して租税特別措置に改組いたしまして、現在、準備金という形で残されております。
減価償却につきましても、会計処理についてなるべく選択的なことを抑制するという考え方から、新規取得建物については定額法のみという扱いになり、併せて建物の耐用年数の短縮が行われました。
上場有価証券の評価につきましても、過度に保守的な会計処理を抑制するといった観点から、切放し低価法を廃止いたしまして、低価法については洗い替え方式だけにさせていただいております。その後、平成12年度の改正で、金融商品につきましては時価評価の導入が行われたことは御承知のとおりでございます。
収益費用の計上基準ということで、長期の大規模工事につきましては、工事進行基準に統一されました。カッコの中に書いてあるものを除いて、割賦基準による収益計上のやり方が廃止されたといったことがございました。
そのほか、交際費や租税特別措置につきましても所要の改正を行わせていただいております。
平成10年度はこのような形で改正いたしましたが、4ページをご覧いただいて、平成11年度に税率の引下げだけが行われておりまして、基本税率が34.5%から30%に引き下げられております。このときの税率の引下げは、「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律」という特別立法によりまして税率の特例という形で実施されております。景気情勢に配慮して、法人税改革の考え方でございます課税ベースの見直しを、とりあえず棚上げした形で税率の大幅な引下げが行われたということで、地方税についてもこのときは税率が下がっております。参考2にございますように、国・地方税合わせて2.5兆円、国税だけで1.7兆円の減税が11年度に行われたということでございます。
これについて、5ページ、「平成11年度の税制改正に関する答申」におきまして、アンダーラインを引いたところでございますが、「法人課税の実効税率の国際水準並みへの引下げは、将来の税制の抜本的改革を一部先取りしたものであり、将来の抜本的改革へのいわば"架け橋"としていかなければならない」という評価が政府税調から出されております。
その後、6ページでございますが、昨年の「中期答申」の段階で、アンダーラインの真ん中あたりでございますが、「平成10年度税制改正において、法人税の課税ベースの大幅な見直しと法人税の基本税率の引下げが併せて行われましたが、平成11年度税制改正においては、景気情勢に配慮し、課税ベースの見直しは行われないまま税率の引下げが行われました」という整理をしていただいた上で、一番下の2行でございますが、「課税ベースの問題については、平成11年度税制改正の経緯にも十分留意しつつ、公平・中立で透明性の高い税制を構築する観点から、今後、残された課題について、その一層の適正化に向けて取り組んでいくことが重要です」というふうにしていただきました。この「残された課題」ということでございますが、それを私どものほうで適宜7ページ以降にピックアップをさせていただきました。
まず、7ページでございますが、「受取配当の益金不算入制度の概要」、これにつきましては8ページに、法人課税小委員会として当時御指摘をいただいております。
一つは、真ん中あたりの(イ)というところでございますが、受取配当の益金不算入額を計算する際の負債利子控除制度についてでございます。「長期借入金や社債発行により調達した資金は、通常、株式の取得・保有のためには使用されないとの考え方から、これらの利子は負債利子控除の対象から除外されている。しかしながら、近年の企業の資金調達手段が多様化していることにかんがみると、負債の利子については、原則としてそのすべてを控除対象とすることが適当である」との指摘がございます。
もう一つは、(ウ)でございますが、「法人間配当の取扱いに関しては、最近、一部の企業に持合い解消の動きが見られるように、我が国における企業の株式保有には次第に変化が見られてきている。法人間配当は、そのすべてを全額益金不算入に戻すべきであるとの意見がある一方、我が国企業の株式保有の実態を見ると現行の益金不算入割合はさらに引き下げる余地があるとの意見があった」ということで、1枚お戻りいただいて、7ページの図でございますが、この受取配当は企業会計上は当然収益になるわけですけれども、法人税法上は配当に対する二重課税の調整措置ということで、こういった制度がございます。
これにつきまして、受取配当の益金不算入額を計算いたします場合に、そこにございますように、特定株式、いわゆる企業支配株式につきましては、負債利子を控除した上で益金不算入。企業支配株式以外の[2]でございますが、これについては、負債利子を控除した後の8割を益金不算入ということになっているわけでございます。先ほどの指摘は、負債利子のうち、(2)の原則法のコメ印に書いてありますが、特定利子を負債利子から外した上で控除をするということで、社債の利子や長期借入金の利子等は株式等の取得と関係のない負債の利子だということで、負債利子の控除から外されているわけですが、これをどう考えるかという問題点。
それから、(1)の[2]にございます、80%の益金不算入割合を圧縮しているのですが、この80%という割合をどう考えるかといったことが、平成8年の法人課税小委員会の議論としてなお残されている点でございます。
9ページにお進みいただいて、寄附金の損金不算入制度の概要でございます。これにつきましてはまず現状から御説明いたしますが、寄附金はいま三つに分かれておりまして、国・地方公共団体に対する寄附金や指定寄附金は全額が損金算入でございます。特定公益増進法人に対する寄附金については、一定の損金算入限度額が設けられておりまして、さらに一般寄附金についても損金算入限度額がございます。
左の箱の下のほうにございますが、資本等の金額の1,000分の2.5 と所得金額の100の2.5 を足して、これを半分にしたものが一般寄附金の損金算入限度額ということで、特定公益増進法人に対する寄附金については、それと別枠で同じ額まで損金算入が認められるというのが現状でございますが、この中で、一般寄附金についての損金算入制度が主として法人課税小委員会では議論の対象になりました。
1枚おめくりいただいて10ページをごらんいただきますと、諸外国の寄附金の扱いと比較いたしますと、日本の場合に特徴的なのは、一般寄附金について主要国で損金算入が認められていない中で、日本については一般寄附金についての損金算入枠があるという点でございます。
こういった事情を踏まえまして、11ページにお進みいただいて、法人課税小委員会の中では次のような御指摘をいただきました。アンダーラインのところを中心に拾い読みをさせていただきます。(イ)でございますが、「寄附金は本来経費性がないことから、原則としてこれを損金の額に算入せず、公益的な活動を支援するとの政策的な観点から、特定の寄附金についてのみ損金の額に算入するよう改めるべきではないか」。それから、(ウ)の一つ上ですけれども、「一般の寄附金を損金算入とする現行の取扱いは全廃すべきであるとの意見があった」。(ウ)でございますが、「公益の増進に貢献する団体等に対する寄附金の損金算入についてさらに拡充する必要があるのではないか」ということで、このときの法人課税小委員会の御議論は、一般寄附金について損金算入を圧縮する方向で検討し、一方で、公益に資するような寄附金については拡充する方向で検討すべきではないかというのが、当時の御議論であったように整理されております。
12ページにお進みいただいて、ここでは、引当金のうち退職給与引当金の制度について書かせていただいております。先ほどご覧いただいたように、引当金については、課税ベース拡大の観点からかなり措置をされております。退職給与引当金についても、10年度の改正で累積限度額が40%から20%に引き下げられまして、なお現在、経過措置の期間中ではございますけれども、さらに課税ベースの見直しという観点から検討対象となり得るものとしては退職金の引当金ぐらいかなということで、ここでは資料を出させていただいております。
御承知のように退職金の引当金は、そこに書いてございますが、「退職給与規程を定めている法人が、その使用人の退職により支給する退職給与に充てるため、各事業年度において損金経理により退職金の引当金勘定へ繰り入れた金額のうち、繰入限度額に達するまでの金額は、その事業年度の損金の額に算入する」ということで、当期発生額基準と累積限度額基準のうち少ないほうを選択して引当金への繰入れを認めるという制度でございます。
これについて、14ページをお開きいただいて、当時の法人課税小委員会での議論は、「(イ)このような観点から見ると」という表現がありますが、そのあと、「退職金は条件付の債務であって、しかも実際の支払いが平均的に見て相当長期間経過後になされるものであることから、法人税においては、本来、その引当てを容認することには慎重であるべきであろう」、こうされた上で、(ウ)で三つの論点が書かれております。
まず、「イ」でございますが、「企業が相当長期間にわたって自己資本のごとく自由に利用できる将来債務を課税上あたかも外部に支払った費用であるかのように取り扱うものである。退職金支給の相対的なウエイトが高い企業と低い企業との間、あるいは退職給与引当金を利用している企業と利用していない企業との間で、税負担のアンバランスが生じている。退職給与引当金の残高は、既に巨額に上っており、このアンバランスは是正する必要があるのではないか」。
一番新しい11年度の統計で見ますと、退職給与引当金の残高が12兆円ほどございまして、全法人のうちで退職給与引当金を利用している法人が4%弱と比較的限られております。さらに、資本金100億円以上の法人で、この12兆円のうちの3分の2ぐらいを積んでいるといったことで、使用の実態にかなりばらつきがあることは事実でございます。
それから15ページでございますが、二つ目の論点としまして、「退職給与引当金が、企業の給与の支給形態に影響を与えているのではないか」ということで、ちょっと飛ばしていただいて、「その結果」というところですが、「従業員は給与支給を先送りされることになり、他企業への転職が不利になるといった形で、労働の流動性を抑制している可能性があるのではないか」。
三つ目が「ハ」で、「労働者の受給権を保全する観点からは、退職給与引当金より外部拠出の年金制度のほうが望ましいのではないか」、こういった論点が当時出されております。この「ハ」の観点から、13ページをお開きいただきますと、「退職金制度から企業年金制度への移行」ということで1枚資料をつけさせていただいております。受給権保護等の観点から、右側にございますように、平成13年、今年の10月1日から確定拠出型年金が施行されております。さらに来年4月から、右下にございますが、確定給付企業年金が施行される予定でございます。こうした動きを踏まえて、現在の退職給与引当金をどう考えるかというのは、今日的な論点としてもあり得るのかなというふうに考えております。
なお、法人税では退職給与引当金は退職一時金のみを対象として制度がございまして、こうした外部積立である拠出金については、その支払い時にそのつど損金算入をする仕組みになっております。
これとの関連で16ページにお進みいただいて、法人課税小委員会では福利厚生費についても議論がございました。先ほどの企業年金への企業側の拠出は、法定福利費ということで当然損金算入になるわけですが、ここで書いてございますのは、「(イ)企業の法定外福利厚生費の支出状況を見ると、社宅から保養施設、食事の支給とさまざまな形態を採っており、また企業間の格差も大きい」。
この法定外福利厚生費の扱いが当時の法人課税小委員会では議論になりまして、次にございますが、「従業員に対する利益の供与は、本来その者に対する所得税課税で対応すべきである。ただ、こうした所得税課税が行われない形での法人の経費支出を放置すると、税負担の公平を損なうことにもなりかねない」という整理がされた上で、アンダーラインの一番下、「過度な法定外の福利厚生費支出については、これを損金の額に算入しないこととすることにより適切な税負担を求める余地があるのではないか」。
当時は、50万円超の法定外福利厚生費について損金算入を否認するという案を一度お出ししたことがありますが、最終的にはこれは採用されておりません。おそらくいま読ませていただいたように、基本的には個人所得課税の問題で、法人のほうで利益処分扱いとするのは税の取り組み方としてはセカンドベストだといったような議論とか、法定外福利厚生費の範囲をどこまでとするかといった点が実務的にもなかなか乗り越えられずに、これについては残された課題として現在に残っております。
それから17ページでございますが、ここには、非営利法人、公益法人等から特定非営利活動法人(NPO法人)、人格のない社団、中間法人、普通法人と、それぞれの性格や課税の状況について簡単に表を整理させていただいております。これについても残された課題になっておりまして、収益事業の問題とか、金融資産収益に対する課税等、公益法人制度の抜本的改革が現在検討されておりますし、中間法人制度が創設されたといった動きを踏まえまして、今後、幅広い検討が必要なテーマであろうかというふうに考えております。ここにつきましては、18、19、20ページ、それぞれ政府税調でも問題点を御指摘いただいておりますが、拾い読みは省略させていただきます。
さらに、やや中長期的な課題にもなろうかと思いますけれども、21ページ、「多様な事業体に対する課税のあり方」ということで、金融システムの改革が進められる中で、資産の流動化や金融商品の多様化を図る観点から、特定目的会社(SPC)や投資法人といった法人が創設されてきております。真ん中あたりに「このように」というところがございますが、「金融商品の組成に関する横断的な集団投資スキームの法制度の整備が行われる中で、それぞれの事業体の実質的な事業内容などを踏まえた税制上の措置が講じられてきていますが、これらの取扱いは、民法、商法、その他の私法において規定される『法人』を、法人税の課税対象とするというこれまでの取扱いとは異なるものとなっています。さらに、近年、外国で設立されるパートナーシップやリミテッド・ライアビリティー・カンパニーといったわが国には制度のない外国の事業体が、わが国で事業活動を行ったり、逆に、わが国企業がこうした外国の事業体に投資する例も増加してきています」。
こういった状況を踏まえまして、一番下のアンダーラインでございますが、「投資や事業体の事業の主体が多様化していくことが予想される中で、法人税の課税対象となる事業体が、法人格の有無により決定されるというこれまでの取扱いについては再検討する必要がある」ということで、いわゆる法人税におけるエンティティーの問題が次の課題としてございます。
さらに、これと深く関係いたしますが、23ページ、国際課税の分野でも同じような問題がございます。「外国法人の所得に対する課税については、企業が国境を越えた経済活動を行う際の事業形態の多様化が進んできていることなどから、法人課税の対象となる者の範囲についてどう考えるのか、あるいは外国法人の支店等の拠点に対する課税のあり方についてどう考えるか」。これは、おそらく移転価格税制やタックス・ヘイブン税制の再検討ということにもなろうかと思いますが、国際課税の分野でもなお検討課題が残されているという状況でございます。
大変雑駁でありますが、法人課税の残された課題について整理をさせていただきました。
〇委員
どうもありがとうございました。
それでは、1時間弱、時間がございますので、「連結納税制度の基本的考え方」、これについて検討していただくのは二度目ですが、きょうで何とか取りまとめさせていただきたいと思っております。
もう一つ、いま事務局からお話のありました課税ベースの拡大の話、こちらも自由に御議論いただきたいと存じます。何度も資料を御紹介いただきましたが、前の法人課税小委員会、会長が小委員長をされておられたときの段階で一度報告書ができております。それなどを参考にして御説明いただいたのですが、こちらのほうは、特に小委員会としてまとめるといったことはきょうだけでできるものではございませんので、自由に御意見などを伺わせていただければと思っております。
では、よろしくお願いいたします。
〇委員
連結納税制度の骨格のほうですけれども、私は、企業の組織再編を促進する税制という観点を踏まえて、ぎりぎりの線までまとめていただいたのではないかと理解しております。そういう意味では当局の御努力を評価したいと思っております。
ただ、経済界でいろいろ議論をしているわけですが、議論の紹介も兼ねて申し上げますと、加入前の繰越欠損金の使用を認めないということについては、ゴーイング・コンサーンとしての企業の性格からしてきわめて厳しいものと受けとめざるを得ないというのが感覚でございます。特にこれは、税の問題はもとより、いわゆる税効果会計で繰越欠損金というのを繰延資産のほうに持っていっているわけです。例の回復可能性の問題はもちろんあるわけですけれども、これを否認せざるを得なくなることから、企業の連結資本勘定がさらに痛むことになるのではないかというようなことも含めて、相当厳しい制度になるなと、こういう受けとめ方であります。企業再編というのはずっと進めてきておりまして、すでに再編を行った企業もあるわけですけれども、いままでやったところについても、連結納税の対象会社の繰越欠損金を放棄してこいと。かなり異論も多いということであります。
先ほど事務局から説明がありましたが、今後の企業組織再編を促進するに当たって、少なくとも親会社の欠損金はその法人の所得金額を限度としない。つまり連結欠損金として取り扱うということは、私どもはエッセンシャルだというふうに考えておるということでございます。ぜひ、そういうことで原案としていただきたい、こういうふうに思っております。
〇委員
いまの点は、伺ったということでよろしいですか。それとも何か。
〇委員
結構です。
〇委員
では、ちょっと気づいた点をこちらからもお話しさせていただきますと、4ページの一番最後の連結所得金額、連結税額の計算のところですが、[1]に「連結調整」という言葉が出てまいります。それから5ページですけれども、[3]の後ろのほうに「連結調整金額」と出ております。これに対する定義の説明が抜けているのですけれども、これは何か補足しなくてよろしいのでしょうか。いきなり連結調整金額といった言葉が出てくるのですが、いかがでしょうか。
〇事務局
5ページの(2)以下に書いてございます、「連結グループ内の法人間取引」について、課税繰延べをいたしますとか、連結欠損金額をどう配賦するかとか、(2)以下に書いてある計算なり要件の適用がすべて連結調整ということになるものですから、そこはなかなか表現が難しいのですが、ちょっと考えさせていただきます。
〇委員
「連結調整金額」となっているといかにも法律用語みたいですが、もう少し一般の言葉に直せば問題ないと思います。ちょっと気がつきましたので、失礼いたしました。
いかがでしょうか。
〇委員
寄附金の関係、この前も問題になりましたが、今回、提案自体は9ページで、「連結グループ内の法人間の寄附金は全額損金不算入」ということが書いてあります。そもそも寄附金とは何かということと絡んで、(法人税基本通達)9-4-1、9-4-2の、倒産とか無利子貸付の問題と絡んで、一般的には寄附金というのは、収入になる反対給付もないし、すなわち事業に関係のない支出というふうに解されておりますけれども、9-4-1、9-4-2を見ますと、子会社支援費用とか、後者のための損失負担をしなければ今後より大きな損失になるようなことが社会通念上明らかな場合とか、倒産の防止のための再建計画による無利子貸付等が、寄附金の通達の頭のところで、寄附金として扱わないで損金として扱うということが書いてあるわけです。
寄附金の範囲について、そういう点から言うと、いま、9-4-1、9-4-2で例示してありますけれども、例示に漏れますと寄附金になってしまう。これは、いまのものよりももう少し考え直す必要があるのではないか。むしろ広くしろと。寄附金の範囲を広くするのではなくて、寄附金でないものの範囲を広くしたほうがいいのではなかろうか。現在、一般寄附金の損金算入額は、所得の100分 の2.5 とか、資本等の1000分の2.5 とかあるものですから、そこにもっていけば損金算入になるということがあるわけですけれども、それがあるために寄附金というものの事実認定が少し曖昧なままされているのではなかろうかという気がするわけです。通達自体は国税庁の通達で、国税庁も寄附金の考え方を連結の際に一緒に考え直して、連結グループ内の寄附金が損金不算入になるということであると、寄附金の範囲の事実認定、国税庁の通達の執行上、いよいよ問題になると思うのです。
それを避けるためにも、もう少し基準をはっきりして、「寄附金ではないもの」を、子会社援助費とかいうような感じのことを明らかにするように検討を行っていいのではないかと思います。これは、事務局ではなくて国税庁の関係ですので、むしろ国税庁の方に、この際検討してほしいということを言っておきたいというつもりで言っているわけでございます。
〇委員
いまの関連でございますけれども、今回の連結納税制度の基本的仕組みの3の(3)でございますけれども、(2)とともに、連結子会社については連帯納付責任があるわけです。そうなりますと、あるグループ会社が納税できなかったとき、他の会社が納付いたします、納付義務が生じますから。これは求償権が出るのでございますが、その求償権が行使できなかったとき、同じく寄附金というようなことが出てくるかどうかということが心配だったもので、この辺を申し上げたかったわけでございます。いまの件は、同じグループ会社の中の寄附金であっても、意図的に資産・負債を片寄せると、こういったもの以外のものについて、このようにある程度事情のあるものについては特定列挙するといったことが必要ではないかなと思います。
〇委員
私のほうでつけ加えさせていただきますと、この間も寄附金のお話が出てきましたが、一つ議論が落ちているのは、損金算入のことで、親会社が子会社を支援したときのお金を親会社の損金で落とすと。当然、子会社のほうはそれだけの経済的利益は受けますから、子会社の収益に立つわけですが、単体課税をやっていますと、どうせ赤字ですから、そのぐらいの収益が上乗せになっても何の意味もない。結局、親会社が損金を落とせるだけの問題になるわけです。
ところが、これを連結でやるとどうなるかというと、収益と損失で相殺するときの損失額のほうがその分少なくなりますから、結局、親会社で落として、子会社でその赤字分が減りますから、何もなかったのと同じ状態になるのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。単体で課税するから、赤字の子会社に支援したときの寄附金が意味を持つのであって、これを連結でやりますと、収益と損失を相殺しますから、損失が減った分相殺する金額が減りますから、何の意味も持たないということではないかと思うのです。
〇委員
現在はどうなっているかというと、あの通達にうまく当てはまって落ちているものはそういうことにもなりますけれども、あれで寄附金になるものが残っているんですね。「子会社等」というような例示で、そしたら曾孫会社はどうかとか、あれで読めないものがありまして、それはいまでも損金になっていないのです。というのは、寄附金になっているんです。それについてはやはり問題が生ずるのではないかというふうに思います。
〇委員
子会社、孫会社、連結に入ってまいりませんか。
〇委員
入る場合もありますけれども。
〇委員
100%でなければ入らない?
〇委員
はい。
〇委員
そういった場合はあり得ますね。しかし、9-4-1、法人税の通達から議論を始めるというのは、私はどうも本末転倒だと思うのです。ただ実態の都合に合わせたのが通達の規定ではないかと思いますので、ここははっきりと、むしろ法律、施行令、施行規則の段階できちんとしていただいたほうがよろしいのではないでしょうか。
〇委員
いずれにせよ、いま委員が言われたことも重要でして、いろいろな性格のものを寄附金に流し込んでしまわざるを得ないと。これは、執行の現状から言ってやむを得ないところはあるのだろうと思いますが、種々雑多なものが寄附金の中に入り込んでしまって、そこは整理し切れないようなところもございます。ここで、こういうふうに寄附金について厳しい扱いをグループ内でする以上、全体について寄附金の中身について明確にしていくことについては、やっておきませんと、この場合の寄附金とあちらの場合の寄附金とで概念が違うというようなこともまずいでしょうし、そこが批判になって、この制度はだめだとか言われてしまうのも何ですから、合わせられるものは合わせていったほうが……。いま委員がおっしゃったことはそのとおりだと思いますし、影響もいろいろな点でありますから、明確にする努力はこの際別途しておかれたほうがいいかもしれないですね。
〇委員
いまのことに関連ですけれども、グループ内、特に100%子会社のグループ内で行われる金銭の授受について、本当の意味の恣意的な寄附、つまり連結の子会社について、これは繰越欠損金が切捨てになるとほとんど意味を持たなくなるのですけれども、加入・離脱に関連して利益調整をするという、利益調整に使う意味の寄附金と。
もう一つは、先ほど、寄附金というのは反対給付のない支出であるという定義をされました。そういう定義は実務的には非常に難しいことになってまいりまして、親子会社、グループ間である限り、何らかの事業上の目的を持つものでございます。その切り分けが非常に難しくなってまいります。恣意的なものはもちろん排除しなければいけないわけでございますが、そうではない、一定の事業目的を持つものが何であるかということは、現行の法律上は非常に曖昧であるのが事実ではないかと思います。
したがって、グループ間で寄附金を全額損金不算入するという厳しい取扱いをする以上、一定の法律上、もちろん政令でも構わないわけですけれども、きちっとした線引きをしないと、実務上非常に使いづらいものになってくるかと思いますので、ぜひそれはお願いしたいというふうに思っています。
〇委員
私はいま、別に引けるものを引かないでいるということを申し上げたのではなくて、例えば実質的には出資に当たるような、本来引くこともする必要はないし、加算することもないような実質出資のようなものとか、貸付けのようなものとか、そういうようなものが寄附金の中にもぐり込んでいる場合もないわけではない。アメリカではそういうのはみなし出資とかやっていますよね。ああいうのがあまりないものですから、寄附金ということになる。そうすると、いかにも本来引けるものを否定しているように受け取られがちであるので……。本来引けるものを否定している部分も多少あるのでしょうけれども、本来引いていないものを引いていないだけのことなのに、寄附金の範囲が広すぎるということで文句を言われるのだったら馬鹿馬鹿しいですから、整理したほうがいいということに主眼がございます。
〇委員
私が先ほど言ったのは、何でも寄附金という範囲のものを広げたりする意味ではなくて、限りなく出資に近い、資本等取引に近いようなものは特定しなくてはいけないのではないかということを言ったわけです。
その根拠としましては、私、法人課税小委員会の前のときの古い資料しかありませんのですが、平成10年の寄附金のデータによりますと、一般寄附金の利用度が平成10年で68%ぐらいなのです。ということは、まだ十分余裕がある。余裕があるということは、今回の連結を利用してさらに一般寄附金の限度を乱用することも考えなくてはいけない、ということがあるのではないかと思うのです。
ただ言えることは、どうしても仲間の会社が税金を払えなくて、立て替えてやったけれども、求償権の行使がなかなかできないと。こんなものまでも寄附金の中に入れてもらっては困る、こういった意味でございますので、ネガとポジを入れかえないようにして意見をまとめていただきたいと思います。
〇委員
私、どうも理解できませんのは、損金のところだけですけれども、損金に対応した収益のほうが、通達ではおそらく見ないということでしょうけれども、法律の法人税法22条になるのか、それだけの経済的利益を受けたほうはプラスに立てざるを得ない。ですから、連結で100%である、一体であるといった場合には、寄附金の範囲がどうのこうのという問題をやっても、結論としては何もなかった状態になるわけで、厳密に定義しないと使い勝手が悪いとか、そういう問題すら出てこないと思うのですが、いかがですか。
個別の企業だととらえるから、片方が落ちて、片方は赤字会社、ですから収益がその分上乗せされてもマイナスで何の意味もないけれども、連結でやりますと、全部の収益と損失が相殺されるから、子会社が赤字が減った分は当然連結でカウントされることになるわけですから、何にも起きない状態ではないかと思うのですよ。
〇事務局
寄附金の定義というか、寄附金の範囲の問題はあろうかと思いますが、そこの寄附金の損金算入ないし不算入制度による計算は、いまは、寄附金の損金算入枠の中で寄附金が行われれば、寄附金を支出した側は損金に落ちます。もらったほうはそれだけの経済的利得を得るわけですから、受贈益が立つというのがいまの状態です。連結の場合でやりとりを行います場合には、この案では全額を損金不算入ということですので、支援をした側は損金から落ちませんで、もらったほうだけが受贈益が立つということで、合算いたしますと、その受贈益分だけが連結の所得金額をふくらます形になるということでございます。
〇委員
関連かどうかわかりませんけれども、ちょっと疑問に思ったり、あるいは私の読み違いかもしれませんけれども、教えていただきたことを兼ねまして意見を言わせてもらいます。
5ページの(2)の[2]でございますけれども、一定の資産の譲渡損益については繰延べということが書いてあります。私が取り上げたいのは、例えば連結企業グループ間において収益、費用になるようなものがございます。金利の問題、賃貸借料の問題、リース料の問題、一方の会社が収益に上げて一方の会社が損に落とす。こんなようなものにつきましてはここに書かれていないような気がしますし、また、個別の項目に出てくるのかなと思ったのですが、出てこない。個別の項目はこのほかにも付加されるようでございますけれども、この辺は、連結でもって消去されるものであるという位置づけでいいのでしょうかという質問と同時に、当然これは消去されるのかなというのが私の意見でございます。
〇事務局
お答えさせていただきます。先般から若干御説明させていただいているところでありますが、連結財務諸表制度においては費用と収益については相殺して消去します。しかし、連結納税制度においては費用、収益は消去しません。連結納税制度においては資産の移転に伴う譲渡損益の繰延べだけをすることになりまして、費用、収益を相殺することはしません。連結財務諸表制度におきましては、グループの適正な費用、収益、あるいは資産、負債の状況を株主に情報提供することが目的ですので、費用と収益を両方のせますと、全体として非常に水ぶくれした状態になるわけです。グループが取引が多ければ多いほど大きな形で表示されますので、そこはネットの正しい金額に置きかえるという点で非常に意味があると思います。
ただ、費用と収益につきましては、両方のせましても利益には影響はないわけです。いま御指摘がありましたように、収入と費用、両方立てても利益の額には影響ありません。当然、所得にも影響はないわけで、アメリカにおいても、連結納税制度では収益と費用は相殺消去しません。基本的には、両方のせても、のせなくても所得には影響はないという事情があるからということでございます。簡便性の観点ということです。
次に、寄附金の話で、出すほうともらうほうが、片方が費用になって、片方は利益になるのだから、もともと寄附金自体の範囲を問題にすることさえ必要ないのでないかという御指摘です。これにつきましては、仕組みのところで従前説明させていただきましたように、例えば税額控除、これは租特にはたくさんあるわけです。外税控除のように全体で税額控除するものも一部ありますけれども、認可を受けているとか、特定の業種とかいうことで、ほとんどが個別法人ごとに計算することになります。
例えばA子会社とB子会社の二つがあるとします。A子会社において単体ベースで租特の税額控除を適用するということになりますと、A子会社の税額の範囲内でしか控除できないわけです。トータルで見ると、たしかに寄附金につきましては費用と収益で損益が相殺されて、所得は全体としては増えませんけれども、このように税額控除とか、単体で所得控除する仕組みもたくさんあるわけですけれども、こういう単体ベースで計算するものにつきまして、例えば、A子会社で税額控除の控除可能額が100
あるが税額が出ないということであれば、B子会社の所得をA子会社に移すことで税額控除の枠を広げることが可能なわけです。寄附金については費用と収益でちゃらになりますけれども、単体ベースで計算する税額控除とか所得控除とか、こういったものには大きく影響が生ずることになります。
そのほか、例えば株を売って離脱させようとするような法人が仮にあったとします。そこが単体ベースで欠損金を持っていたということになりますと、欠損金は連結グループの中に残しておいたほうが、他の法人の所得と相殺できますのではるかに有利なのです。つまり、離脱させようとする法人についてはその欠損金をもって行かせるのではなくて、連結グループの中に残したほうがはるかに有利になります。そういった場合に、離脱する法人に対して残る法人から寄附金を支出すれば、事実上、欠損金を残る法人に付けかえすることが可能になるわけです。
これらはごく一例ですが、こういうふうにトータルでは所得には影響ありませんけれども、仕組みの中には個別計算するものがたくさんありますので、そういったものについては大きな影響が出てくることがあるということです。先ほどSRLYの話もございましたが、SRLYを残すということではなおさらそういう問題が生ずるということでございます。
〇委員
事務局から大変有益な御指摘がございましたが、いまおっしゃったようなさまざまなストラクチャーを使って真ん中に損だけ残すということは誰でも考える話で、これに対する対応というのは、否認規定という形でもちろん入っている。先ほどの寄附金の問題の場合もそうですが、いずれの場合にあっても、5ページの「連結グループ内の法人間の資産等の取引についても、時価により行う」というところですが、ある程度操作は可能ですよね。これを使って時価でどうしようとか、場合によってはそうではなくしようとかいう話がきっとあり得ることだと思いますので、ただ時価と書いても……。「時価とは何か」と聞かれてもなかなかよくわからない場合がございます。もう少し明確にしておかないと、それは法律が必要という話ではないのかもしれませんけれども、いろいろな財産が出てきていますし、最近では特に知的財産関係でどうやっても評価しにくいようなものがあって、そんな研究会もほかの役所でやっているみたいです。
そうなりますと、課税のほうで一定程度明確にしておかないと、時価と書いたはいいけれども、逆に操作に使われてしまう、あるいは、そもそも執行がもたないというようなことが起こってくると思います。ここは単なるコメントですが、今後、きちっとやっていかなければいけないなという気がいたします。
〇委員
あとはいかがでしょうか。
〇委員
ちょっと話題を変えさせていただきます。疑問に思っているところは、事務局から御説明いただいたほうの資料で、前の法人課税小委員会で、課税ベースを広げつつ増収策を図ったところで、1.1兆円とか1.2兆円が出てきたわけです。その残されたものという形で、きょう、かなり細かく候補を出していただいたわけですね。これ、どのぐらいの金額になるか、計算は難しいとは思いますけれども、頭の中にやはり減収額8,000億円というのがあるわけでしょう。前にやったときも、含みのある、幅のある数字しか出なかったのだけれども、残ったところで、どれだけやるとどのくらい出てくるかというのは、我々、腰だめでもいいから数字が必要ではないかという気がするわけです。それが可能かということと、それから、まだ6年間の経過措置の中に入っていますよね。それとの関係を今後どういうふうにするのですか。以上、二点です。
〇事務局
きょうごらんいただいた残された課題のそれぞれを、どうすればどのくらいのお金になるかというのは、私ども、実際はまだ計算のような作業はしていないのですけれども、一点、12ページに資料がございますが、退職給与引当金を40%から20%にまで引き下げるということで、いま、その途上にございます。11年末で12兆円という残高がございまして、これが20%まで引き下がると、12兆円をベースに試算をすると7兆円ぐらいになる。7兆円から先が、仮に縮減等の見直しをすれば、その部分が財源になるということだろうと思います。退職給与引当金はかなりの財源が出てくる可能性はありますが、ほかの項目はそんなに大きな財源にはならないような気がしております。
〇委員
いかがでしょうか。課税ベースの拡大の問題ですね。
〇委員
連結付加税について、今回のでもまだかなり積極的な記載があるわけですけれども、どうしてもこれについて言っておかなければいけないと思います。前回も、黒字と黒字で連結をやるという例を出されて、そんなことはあり得ないだろうと委員のほうからもおっしゃられたのですけれども、こういうこともあり得るわけですね。連結グループを組成することによって、さっき知的所有権の話も出ましたけれども、一定の財産を活用するために特定の子会社、親会社に集中することによって、非常に効率的な組織再編、そのグループとしての財産を生かすことができることはやはり産業界で考えておられるようなのです。もちろん、知的所有権に限らず、一定の資産を特定のところに移して有効活用するということはかなりあると思います。
さらに連結付加税ということになると、そういうような企業はまずやらない、やれないだろう。低税率でもこれは選択しないだろうと。さらに、現在事業部制でやっているところで赤字事業部がある。赤字事業でも市場にぶち込んで将来黒字にもっていこうという事業部があったとしても、こういうものについては選択できないだろう。現在のまま事業部でやるという選択しかないだろうということを考えると、付加税をやることによる、そういう企業における組織再編--広い意味ということになるのでしょうけれども、それがかなり阻害される危惧は非常に持っております。
もちろん、歳入欠損というものを無視することは申し上げないつもりでありますが、それによりまして、本来連結納税の目指している組織活性化がかなり阻害されるのではないかということはどう考えても危惧いたしますので、一応述べさせていただきます。
〇委員
あとは、いかがでしょうか。先ほどの事務局の説明で、別紙の部類になりますけれども、例えば個別の法人について計算せざるを得ないようなものがあったとすると、10ページに「設備投資に係る税額控除については各法人ごとに計算する」と。こういう場合は、たくさん分割していっぱいつくったほうが金額が増えるのでしょうか、どうなるのかな。
〇事務局
取引高が全体で変わらなければ、基本的には増えないということになると思います。数が増えることで、一つだった場合と全く同じかというと、金額的には全く同じということはないでしょうけれども、基本的には増えるということはないはずです。
〇委員
また仕組みの話で申し訳ないのですが、ちょっと確認させていただきたいのです。5ページの連結欠損金額の適用除外というのでしょうか、下から3行目、「一定の場合」というのがございます。それから7ページの上から4行目、これは例の時価評価のほうでございますけれども、これも一定の場合の適用除外があります。両方とも適用除外に該当するケースというのは、同じ会社なら会社、同じ組織再編なら組織再編ということで、同じような内容でもってこれが区分されるかということを一つ確認したいわけでございます。
もう一つは、いまもお話がありましたけれども、個別事項の中で、同族会社の特別税率、すなわち留保金課税が出ていないのですが、これについてはどのような方向が出るか、これも伺いたいと思います。
〇委員
いまの二点、事務局、いかがですか。
〇事務局
お答えさせていただきます。
ここについては、いろいろな業界等からお話を聞きながら詰めていかなければいけないということで、細かな点については詰まっていません。連結欠損金額と含み損益の話は考え方においては基本的には共通するものです。単体時代の含み損というのは、それを連結グループの中に持ち込んで実現させれば、単体のときの事業の成果-欠損ですけれども-それを連結の所得から減算することはできるということになるわけです。
欠損金についても同じような効果があります。繰越欠損金というのは単体の時代に生じた損金で、それがまだ単体の時代に損金とされていないという性格のものです。それを連結グループの中に持ち込んで控除するということになりますと、ちょうど含み損と同じような関係になりますので、考え方としては共通する考え方で整理しなければいけないだろうということで、こういうふうに同じような考え方で書かせていただいているわけです。詳細につきましては、時価評価というのがどの程度できるのかという話もあるようでございますので、実務的な話をお聞きしながら進めさせていただきたいと思っております。この「一定の場合」というのは、そういう事情がございますので、基本的には考え方は同じですけれども、細かな点については少し違ってくることになろうかと思います。
次の留保金課税の話です。これについては別紙の項目の中には挙げてございませんが、これについても重要な検討項目であることについては当方も十分認識しております。考え方としましては、グループが一つだという考え方で連結納税制度をつくるわけでございますので、留保金課税の部分について、個別に考えるということは基本的にはまずないだろうと思います。
第一義的には、グループは一つ、これが一体だという制度でございますので、これを一つとして留保金課税をするということでまず考える必要があるだろうと思いますけれども、利益積立金基準の話とか、資本等の金額をどの金額とするのかとか、かなり技術的な要素もありますので、この辺は、御意見をお聞きしながら詰めていきたいと思っているところでございます。
〇委員
そうすると、例えば同族会社の留保金課税で留保控除額、子会社ごとに幾つもできているとか、そういうのも含めてこれからまた御検討いただくということですね。
あとはよろしいでしょうか。
〇委員
先ほどの報告書の件で、財務諸表上の利益と連結納税制度上の利益とは基本的に食い違うことがあり得るということですね。その辺のところは、エコノミストから見ると複雑でして、企業は実際どういうふうに選ぶかという話があるのです。普通日本の大企業というのは、本体は無理して利益を出すわけです。そして子会社にロスと。それは常識的にはよくあることですね。今度この制度をとったときにどうするかということですが、どうするかというのは、もし連結納税にすれば全体として財務諸表と同じようなことになりますが、やはり本体は本体として利益を保持して、「私の会社は利益があります」と。日本的企業はそうなる可能性が高いのですが、最近は日本も大変だから、経済界もなかなかそう簡単ではないのですが、やはりそこのところで不確定性は相当たくさんあって、私は、企業が一体何を選択するかというのはかなり不確定な部分があるのではないかという気がします。
したがって、先ほど言われたように、税収の見積もりでどういうふうになりそうかとか、そういうことは、制度が変わって実際の企業がどういうふうに行動するかというのは相当読みにくい話ではないか。これは私のやや無責任な発言ですが、そこのところは結構複雑ではないかというふうに思いまして、正直なところ、税収の見積もりなどはつくるのは大変ではないかという感想を持ちます。これは意見ですが、ちょっと申し上げておきます。
〇委員
昔はそういうことがあったと思いますが、いまは、親会社にできるだけ利益を残して子会社に損をつけかえるということは一切ないと思います。むしろ最近起こっていることは、今度の仕組みで我々も勉強したのですが、欠損金というのは親会社のほうに圧倒的に起こっていて、子会社はほとんどない。だから、あまり影響がないのではないかという議論もかなりあるということであります。
〇委員
事務局のほうで調査の過程で何かあったとか、よろしいでしょうか。課税ベースの問題もありますし、いかがでしょうか。
まとめるに当たって、こちらからちょっと質問させていただきたいと思いますが、法人間の受取配当です。別紙の9ページで御説明いただいたところでは、益金は不算入とする、負債利子は控除しないということですね。例えばの話ですが、これは全く一つの架空といいますか、いわゆる純粋持株会社が親会社になっておりまして、その下の各個別の会社が事業活動をやっている。そうなった場合に、さて、純粋持株会社という親会社はどういう収益が生ずるのか。いままでの感覚でいきますと、子会社から吸い上げた配当がその持株会社の所得ではないか。これは課税上、益金不算入でのってこない。ただ、持株会社ですから、そこで多くの従業員が働いている。少なくとも給与という損金は多額に生ずる。そうした結果、赤字の持株会社、親会社が赤字になった状態で、そこに黒字の子会社がぶら下がっているという奇妙な事態というのは出てくるのでしょうか。
〇委員
親会社を持株会社にしていろいろ分社する、こういうことになりますね。いまの商法で言うと、その分社した会社に繰越欠損金を持っていくことはできないわけです。そうすると、上にたまらざるを得ないのです。これをどうやって消すのですか、と。収入は基本的には受取配当金があるわけで、これは益金不算入になるわけですね。ですから、欠損金がずっと上に残った形になる。実態としてそういうことになるのではないか。脱け殻方式とかいろいろあるわけですけれども、典型的なやり方で言うと、やはり上に残るのです。法律から言うと残らざるを得ない。そういうことが生じるのです。ですから、そういうことに対する救済措置はぜひ考えていただきたいということを申し上げているわけです。
〇委員
会社計算上は受け取る配当を利益に足すわけですね。会社計算上はうまくいくわけです。税務計算上だけ……。
〇委員
税務上のことです。おっしゃるとおりです。
〇委員
いまでもこの受取配当の益金不算入という制度があるために、例えば大きな鉄道会社の事業持株会社がいつも法人税を払わないという世間からの批判があったりとか、そういう持株会社というのは出てくる可能性はあるのでしょうね、現象としては。
〇委員
あると思います。
〇委員
こちらから御質問させていただきまして、失礼しました。課税ベースの拡大の問題、よろしいでしょうか。
それでは、きょう、「連結納税制度の基本的考え方(案)」として読ませていただいた方向で取りまとめをさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。ここはどうしても直したいとか、直してほしいとか、意見をつけ加えたいとか、そういった点など、きょうの議論も踏まえまして私のほうに御一任いただければ、修文など事務局の方にお願いして、これを総会に御報告する、こういう手だてをとりたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
〔「異議なし」という声あり〕
〇委員
では、10月16日に総会がございますので、「連結納税制度の基本的考え方(案)」、ほぼこの案に従いまして御報告させていただきたいと思っております。
なお、16日の総会で報告した段階でこの連結納税制度の骨子について公にするということで、まことに恐縮ですが、本日はこの「基本的考え方」は回収させていただきまして、後日、修文した最終的なものを皆様のほうに配らせていただく、このようにさせていただきたいと存じます。
連結納税制度の議論につきましては、本日でひと区切りとさせていただきまして、この小委員会、今後のことなどどうするか、また会長にも御相談した上で、後日、御連絡させていただきたいと存じます。
17回という非常に長い回数にわたりまして、いろいろ御意見を賜りまして、ありがとうございました。
時間は少し早めでございますが、最終回ということで、これで終わらせていただきたいと思います。どうもいろいろありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。