第16回法人課税小委員会 議事録

平成13年9月25日開催

委員

それでは、定刻になりましたので、第16回法人課税小委員会、始めさせていただきます。まだ出席予定の方も若干いらっしゃいますが、開催させていただくことにいたします。

前回7月ですが、連結納税制度に関する主要検討項目ということで何度かにわたって検討していただいたわけです。中には方向が見えているもの、それからまだ議論の途中にあるようなものがございましたが、夏の間に事務局のほうで骨子をつくっていただくと。それをもとにまた議論するというようにお願いしておきましたが、きょうはその骨子に基づいてお話、検討いただくということにしたいと思います。

それから、これは大事なことですが、それに先立ちまして、新聞でごらんになった方もおられると思いますが、事務局のほうで、今まで大手の上場企業を中心に、連結納税制度を創設した場合の減収の見込み額が、大体どのぐらいということをめどをつけるために調査していただいたわけですが、初めに、その連結納税制度を創設した場合の減収の見込み額についてちょっとお話をいただきたいと思います。

事務局、お願いいたします。

事務局

それでは、説明をさせていただきます。お手元に法小16-1という横長の説明資料がございます。それをお開きいただきたいと思います。

今、小委員長からお話がありましたように、この夏1カ月半ほどかけまして、連結納税制度の創設による減収額試算ということで、私どものほうでアンケート調査を実施いたしまして、試算させていただきました。その概要についてご報告申し上げます。

この小委員会では、連結納税の対象を100%子会社ということで話が進んできておりましたので、それを前提にアンケート調査をいたしました。最初の1.「アンケート調査の概要」というところをごらんいただきたいと思いますが、対象法人は上場会社と店頭登録会社全社、その他、中堅企業を含め主要企業ということで、全部で4,765社にアンケート調査をお願いいたしました。

アンケートでお答えいただいた内容は(2)でございますが、平成12年度以前5事業年度の親会社及び100%子会社の所得・欠損金額等ということで、申告書に基づいてこのデータをいただきました。

回答いただいたのが3,111社ということで、対象のうちの65.3%からお答えをいただいております。この3,111社というのは親会社の数でございまして、そこに連なる100%子会社数にいたしますと1万7,720社ということで、1グループ当たり平均すると6社ほど、100%子会社を持っておられるという方から回答いただいたということでございます。

これに基づいて2.の「試算方法」でございますが、納税額が減少する企業グループは連結納税を採用する等の一定の仮定をおいて機械的に試算したということで、ご承知のように、グループの中に黒字法人と赤字法人がございますと、その損益の通算ということで減収が立つわけでございますが、そういうグループは連結納税を採用されるという前提で、以下の計算をしてございます。

どういう計算をいたしましたかと申しますと、(1)で、アンケート調査に係る課税所得の減少額を計算ということで、まず(1)の括弧の中でございますが、「アンケート調査回答法人による課税所得の減少額」というのを出しました。これは下の※印に「課税所得の減少のパターン」という絵をつけてございますが、左のほうを見ていただきますと、親会社が利益法人で、子会社をぶら下げておりまして、子会社に欠損があるというときに課税所得の減少が生じるわけでございますが、アンケート調査をつぶさに見てまいりますと、親会社の利益が100%子会社の欠損よりも相当大きいものですから、この親会社が利益法人である場合の課税所得の減少というのは、100%子会社の欠損の大きさで規定されるということがわかりました。

同じように、右のほうでございますが、親会社が欠損法人である場合の課税所得の減少というのは、やはり子会社の利益の規模で規定されるということがわかりましたので、この課税所得の減少のパターンを用いまして試算をいたしてございます。

それに(1)の括弧の後ろのほうでございますが、「100%子会社化による課税所得の減少額を加算」ということで、これは100%子会社になりますと損益通算が認められるわけですので、100%未満の子会社を100%子会社化する企業行動があり得るだろうということで、それを経済産業省からいただいたデータに基づいて加味してございます。

それから(2)でございますが、このアンケート調査に係る課税所得の減少額を、国税庁の統計をもとにいたしまして全国ベースの課税所得の減少額に広げて推計いたしました。

それに、(3)でございますが、法人税率を乗じて法人税の減収額を試算するというプロセスをとってございます。

その結果が、1枚おめくりいただいて2枚目の数字でございますが、複雑で大変恐縮ですけれども、一番上の行が親会社が利益法人である場合でございます。それから2番目の行の数字が親会社が欠損法人である場合ということで、一番左の列から見ていただきますと、アンケート対象法人の課税所得の減少額6,843億円で、2行目が2,092億円とございますが、これがアンケートで回答いただいた、親が利益法人、親が欠損法人それぞれの場合の減少額でございます。2つ目の列が100%子会社化による課税所得の減少額ということで、先ほどの加味した分がそれぞれ2,705億円、438億円となっております。

これを国税庁の統計データで伸ばしたのが次の括弧の列でございまして、先ほど申し上げましたように、親会社が利益法人の場合には、子会社の欠損金額で減少額が規定されるということでございましたので、全国ベースに伸ばすときに、欠損金額で伸ばしてございます。

それから親会社が欠損法人である場合の2行目の数字は、子会社の利益額で減少額が規定されるということでございましたので、これは所得金額、利益金額のほうで全国ベースに伸ばしてございまして、それぞれ2兆3,000億円、それから3,706億円という一番右の数字になってございます。

これに、3行目の式でございますが、30%の法人税率をかけまして、法人税の減少額が約8,000億円という試算をさせていただいております。

それからそのページの下のほうでございますが、「減少額の変動要因等」ということで書かせていただいております。この減少額は平成12年度の法人の所得欠損金額に基づく機械的な試算を行っておりますので、実際の減少額は[1]「連結納税制度創設時の法人の実際の所得・欠損の状況」、それから[2]「連結納税制度を選択する企業グループの数」等さまざまな要因に左右されますために、厳密に幾らということを見積もることはそもそも困難であろうと思います。

ただ、私どもといたしましては、(2)の[1]に書いてございますが、「今後の経済状況の変化が法人の所得・欠損に与える影響」。12年度というのは比較的法人税収がちゃんと入ってきた年でございまして、今後、景況が悪くなりまして赤字が増加いたします場合には、課税所得の減少ということが今以上に起こるのではないかと危惧しております。

それから[2]が「欠損子会社の持株割合を100%に引き上げて連結グループに組み入れる等の企業行動」。先ほど2列目で少し加味いたしましたけれども、このようなタックスプランニングによってどのぐらいの減収がもたらされるかといったことが考えられます。

それから[3]で「業界再編による企業グループの大規模化」。今そもそも企業の再編が進んでおります。こういったことを加味いたしますと、実際の減収額は機械的な試算を上回る可能性があるのではないかと思っておるところでございます。

それから、これに関連いたしまして、次のページでございますが、先週、9月21日に経済財政諮問会議のほうで「改革工程表」というのが決められましたが、連結納税制度については、ここに書いてございますように、「国際的に遜色のない、21世紀のわが国法人税制としてふさわしい制度を構築すべく、平成14年度予算の『国債発行30兆円以下』との方針の下、所要の財源措置を講じたうえで、平成14年度創設を目指し、検討を進める」という表現になっております。

先ほどの8,000億円という試算をどう考えるかということになろうかと思いますが、ご承知のように、14年度、これから予算編成が進んでまいりますが、税収動向が不透明な中で、30兆円というこの目標を達成するには、税制改正全体として減税がなかなかできない状況にあろうかと思います。

さらに、この30兆円の国債発行枠の方針は、「骨太の方針」の中でも、今後の財政構造改革、プライマリーバランスの回復を進めるプロセスの第一歩という位置づけになっておりまして、私どもとして連結納税制度を導入する場合には、ここに書いてございますように、所要の増収措置についての検討が不可欠であるということで、この小委員会でもそういう方向でご審議をいただけるとありがたいなと思っているところでございます。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。ただいま、連結納税制度を創設した場合の減収見込み額のお話をいただきましたが、これに対する質問もございましょうが、本委員会としてどういう取りまとめを行ってこの問題に触れるかという問題もありますので、続けて、今まで検討してまいりました論点を整理した骨子につきまして朗読をしていただいて、あわせてご質問、意見など伺いたいと思っております。

また事務局のほうにお願いいたしますが、資料といたしまして、「会議終了後ご返却願います」となっているこれが骨子でございますので、これを読み上げていただきたいと思います。それからあわせて、簡単な「討議用メモ」というものが出ておりますが、「会議終了後ご返却願います」というこの取りまとめ案そのものはまた後で回収させていただきます。

では、よろしくお願いいたします。

事務局

それでは、読み上げさせていただきます。

(「連結納税制度の基本的考え方(案)」朗読)

「連結納税制度の基本的考え方(案)

一 基本的な考え方

1.連結納税制度の意義

1) 連結納税制度は、企業グループの一体性に着目し、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して所得を計算するなど、企業グループをあたかも一つの法人であるかのように捉えて法人税を課税する仕組みである。

2) このような連結納税制度の意義は、企業の事業部門が100%子会社として分社化された企業グループやいわゆる純粋持株会社に所有される企業グループのように、一体性をもって経営され実質的に一つの法人とみることができる実態を持つ企業グループについては、個々の法人を納税単位として課税するよりも、グループ全体を一つの納税単位として課税するほうが、その実態に即した適正な課税が実現されることにある。

また、近年、企業グループの一体的経営の急速な進展や企業組織の柔軟な再編成を可能とするための独占禁止法や商法の改正が行われる中にあって、連結納税制度の創設は、結果として、企業の組織再編成を促進し、わが国企業の国際競争力の維持、強化と経済の構造改革に資することになるものと考えられる。

3) 他方、連結納税制度の創設は、法人格を有する個々の法人を納税単位としているわが国の法人税の課税体系の中に、企業グループを一つの納税単位とする新たな課税体系を創設するものであり、この二つの課税体系の間の整合性を確保しつつ適正、公平な課税を実現することが重要である。

4) 諸外国の連結納税制度は、グループ各社の所得と欠損を通算して得られた所得に対して課税を行うこと、グループ内の法人間の一定の取引から生じる損益の計上の繰延べを行うこと等の点で共通性が見られるが、実際の仕組みを見ると、基礎となっている単体法人に対する課税制度の違いや連結納税制度が採用された歴史的経緯等からそれぞれ異なったものとなっており、連結財務諸表制度のような統一性は見られない。わが国においても、わが国の単体法人に対する課税制度と整合性があり、かつ、わが国の企業・経済の実態等に合致した連結納税制度を構築する必要がある。(P1)

5) なお、連結財務諸表制度も連結納税制度も、個々の会社という法的主体を超えて、資本等の関連性を有する企業グループを、その一体性に着目して一つの単位として認識することが合理的であり実態に即しているとする点では共通している。しかし、連結財務諸表制度は、企業グループの財政状態や経営成績を投資家や債権者に開示することを目的とするのに対し、連結納税制度は企業グループの税負担能力を測定し、適正、公平な課税を実現することを目的としている。したがって、連結納税制度の対象範囲、適用要件、連結所得の計算などその仕組みは、連結財務諸表制度とは異なる別個の制度として構築する必要がある。

2.連結納税制度の基本構造

1) 連結納税制度の対象となる企業グループとは、その実質において単一の法人とみなしうる一体性を持ったもの、すなわち、経営が一の法人に支配されるとともに利益がその一の法人に帰属する完全に一体と認められる企業グループとすべきであり、親会社とその親会社に発行済株式の全部を直接又は間接に保有される子会社(100%子会社)をその対象範囲とすることが適当である。また、子会社の少数株主が子会社の欠損金の繰越控除のメリットを享受できないという問題や制度が過度に複雑化するという問題が生ずることを避けるためにも、対象子会社の範囲を100%子会社とすることが適当である。

さらに、このように企業グループの一体性に着目して制度を構築する以上、100%子会社はすべて連結納税制度の対象とすべきであり、また、一旦連結納税制度を選択した場合には、継続して適用することを基本とすべきである。100%子会社の中から連結対象を任意に選択したり、連結納税制度の取止めが自由にできるような仕組みは、恣意的な租税回避につながるおそれがあり、適当でない。

2) しかしながら、このように一体性を持つ企業グループといっても、組織的に統合された単一の法人とは異なり、法的には独立した権利義務の主体である個々の法人が株式保有関係を通じて親会社の支配下に統合されたものに過ぎず、株式の取得・譲渡等を通じて企業グループへの加入や企業グループからの離脱が行われる流動的な存在である。

したがって、連結納税制度において企業グループをあたかも一つの法人のように課税するとしても、一方で企業グループを構成する個々の法人が独立した法人格を持ち、納税単位となる企業グループの構成メンバーについて加入・離脱が生じるといった流動性、不安定性を十分考慮に入れて、適正、公平な課税が実現されるような仕組みを構築する必要がある。(P2)

このためには、連結納税制度の開始や取止め、連結グループへの加入、連結グループからの離脱が生じた場合には、単体で事業活動を行って稼得した所得に対しては単体法人を納税単位として課税を完結し、グループで事業活動を行って稼得した所得に対してはそのグループを納税単位として課税を完結することを基本として制度を構築する必要がある。

3) 一般に、税制は簡素を旨とすべきであり、この点については連結納税制度も例外ではないが、納税者にとって透明性の高い制度とすることにより、税負担に関する予見可能性と法的安定性を保証するため明確な規定を設ける必要があり、ある程度複雑になることはやむを得ないと考えられる。

また、諸外国における経験を踏まえ、企業行動が国際化し複雑化する中で租税回避行為を防止するとともに、適正かつ円滑な税務執行を確保できる連結納税制度を構築する必要がある。特に、租税回避行為の防止については、連結グループ内の各法人において適正な所得金額や税額の計算を行うための仕組みとともに、包括的な租税回避行為の防止規定を設ける必要がある。

3.税収減への対応

連結納税制度は企業グループ各社の所得と欠損の通算等を行うことから、その創設により税収の減少が生じる。しかしながら、税制本来の役割は公共サービスの恒久的な財源を確保することであるから、新たな制度の創設にあたっては、財政に与える影響を十分踏まえて行われなければならない。わが国の現下の厳しい財政事情を考慮すれば、連結納税制度の創設により生じる税収の減少に対してはこれを補填するための増収措置を講ずる必要がある。(P3)

二 基本的な仕組み

1. 適用法人

1) 連結納税制度の適用法人は、内国法人である親会社と、その親会社に発行済株式の全部を直接又は間接に保有されるすべての内国法人(100%子会社)とすることが適当である。

なお、ストックオプションにより取得した株式及び従業員持株会の株式のうち一定のものについては、上記の持分割合の判定から除外すべきである。

2) 親会社又は子会社となる法人は、その全ての所得が課税対象となり、常に納税義務者となる法人とすることが適当であると考えられることから、親会社となる法人は普通法人と協同組合等に、その子会社となる法人は普通法人に限るべきである。

2. 適用方法

1) 連結納税制度の適用を受けようとするときは、税務当局の承認を受けることとすることが適当である。

2) 連結納税制度の適用の取止めは、やむを得ない事由がある場合に限るものとし、税務当局の承認を受けることとすることが適当である。

3. 納税主体

1) 親会社が連結所得に対する法人税の申告及び納付を行うことが適当である。

2) 各子会社は、親会社の連結所得に対する法人税について連帯納付責任があるものとすることが適当である。

3) 各子会社は、連結所得の個別帰属額等を記載した書類を税務署に提出することが適当である。

4. 事業年度

適用法人の事業年度は、親会社の事業年度に統一する必要がある。

5. 連結所得金額及び連結税額の計算

1) 連結所得金額及び連結税額の計算の基本的な仕組み

[1] 連結所得金額は、連結グループ内の各法人の所得金額を基礎とし、これに連結調整を加えた上で、連結グループを一体として計算する必要がある。

[2] 連結税額は、連結所得金額に税率を乗じた金額から各種の税額控除を行って計算することが適当である。(P4)

[3] 連結所得金額及び連結税額の計算の過程においては、連結調整金額等を連結グループ内の各法人に合理的な基準により配分する必要がある。

[4] 連結税額については、連結グループ内の各法人の納付税額又は還付税額として計算される金額を基にして配分することが適当である。

2) 連結グループ内の法人間の取引

[1] 連結グループ内の法人間の資産等の取引についても、時価により行うものとする。

[2] 連結グループ内の法人間で、相当程度の譲渡損益の計上が想定される資産(固定資産、土地等、金銭債権、有価証券及び繰延資産とし、その帳簿価額が一定額に満たないものを除く。)についてその移転を行ったことにより生ずる譲渡損益は、その資産の連結グループ外への移転、連結グループ内での費用化等の時まで資産の移転を行った法人において計上を繰り延べることが適当である。なお、減価償却資産、有価証券及び繰延資産に係る繰り延べられた譲渡損益については、簡便法により計上を行うことができるものとすることが適当である。

[3] 適正な課税を確保し租税回避行為を防止するために、連結グループ内の法人間の寄附金は、その全額を損金不算入とすることが必要である。

3) 利益・損失の二重計上の防止

子会社の株式の譲渡が行われた場合には、その子会社の所得や欠損について重複した課税や控除が行われることのないように、その譲渡の時において、その子会社の株式の帳簿価額の修正又は譲渡損益の額の修正を行うべきである。

4) 連結欠損金額

[1] 連結欠損金額は、5年間で繰越控除することが適当である。

[2] 連結グループで事業活動を行って稼得した所得から過去に単体で事業活動を行って生じた欠損金額を繰越控除することは適当でないと考えられることなどから、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前に生じた欠損金額をその連結グループで繰越控除することは適当でないが、その法人が親会社や長期にわたって100%子会社となっている法人である場合や適格合併により被合併法人の子会社等が加入した場合など一定の場合については、連結納税制度の下でその法人に帰属することとなる所得金額を限度として繰越控除することが考えられる。(P5)

[3] 連結欠損金額についても連結納税制度においてのみ繰越控除するのが適当であると考えられるが、連結納税制度の適用を取り止める場合又は連結グループから離脱する場合には、連結欠損金額を適用法人又は離脱する子会社に引き継ぐことが考えられる。[4] なお、連結納税制度の創設に伴う税収減への対応を図るときには、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前の欠損金額について繰越控除をしないことが考えられる。

5) 税率

連結所得金額に対する税率は、普通法人の税率と同様とすることが適当である。なお、連結納税制度の創設に伴う税収減への対応を図る場合には、付加的に一定の税率を上乗せすることが考えられる。

6. 申告納付期限

1) 連結税額の申告納付は、連結事業年度終了の日の翌日から2月以内に行うことが適当である。

2) 連結申告書作成の負担を考慮し、2月の申告期限延長の特例制度を設けることが必要である。

7. 連結グループへの加入・連結グループからの離脱

1) 加入

[1] 連結グループに加入する法人(以下「加入法人」という。)について、連結グループへの加入前後でみなし事業年度を設け、加入前の期間については単体納税制度又は他の連結グループの連結納税制度の下で申告納付を行い、加入後の期間については連結納税制度の下で申告納付を行う必要がある。

[2] 加入法人の決算日及びその加入の日が親会社の決算日と近接している場合には、加入法人について、みなし事業年度の特例を設けることが適当である。

[3] 単体で事業活動を行って稼得した所得に対しては単体法人を納税単位として課税を行い、グループで事業活動を行って稼得した所得に対してはそのグループを納税単位として課税を行うのが適当であると考えられることから、連結グループへの加入に際しては、加入法人の資産の評価益・評価損の計上を行う必要がある。評価益・評価損の計上を行う資産は、固定資産、土地等、金銭債権、有価証券及び繰延資産とし、その帳簿価額が一定額以上のものに限ることが適当である。(P6)

[4] ただし、連結グループへの加入があったとしても、適格合併の場合など恣意的な操作の余地なく法人のすべての株式を取得する場合があること、法人に過大な事務負担を生じさせること等から、適格合併により被合併法人の子会社等が加入した場合など一定の場合については、資産の評価益・評価損の計上を行わないこととすることが適当である。

[5] なお、連結納税制度の適用開始に際しても、適用法人の資産の評価益・評価損の取扱いについては、親会社及び長期にわたって100%子会社となっている法人を対象から除くほか、基本的には、連結グループへの加入の場合の取扱いと同様とする必要がある。

2) 離脱

[1] 連結グループから離脱する子会社(以下「離脱子会社」という。)について、その離脱前後でみなし事業年度を設け、離脱前の期間については連結納税制度の下でその離脱の日から2月以内に申告納付を行い、離脱後の期間については単体納税制度又は他の連結グループの連結納税制度の下で申告納付を行う必要がある。

[2] 離脱子会社の決算日及びその離脱の日が親会社の決算日と近接している場合には、離脱子会社について、みなし事業年度の特例を設けることが適当である。

三 各個別制度における取扱い

受取配当、減価償却、寄附金、圧縮記帳、貸倒引当金、交際費、外国税額控除、特別税額控除等の各個別制度については、連結グループを一体として要件の判定や計算等を行うことを基本としつつ、制度の趣旨や技術的な問題点の検討も踏まえて、適切な仕組みとすることが適当である。

四 租税回避行為の防止

1. 連結グループに加入する法人の加入前に生じた欠損金、含み損益を利用した租税回避行為等を防止するための措置を講ずる必要がある。

2. 連結納税制度に関しては、多様な租税回避行為が想定されることから、包括的な租税回避行為を防止するための規定を創設すべきである。

五 税収減への対応

連結納税制度の創設に伴う税収減への対応として、連結所得に対する法人税率の付加的な上乗せ、連結納税制度の適用開始前に生じた欠損金額及び連結グループ加入前に生じた欠損金額の繰越控除の否認等の措置を講じることが考えられるとともに、租税特別措置をはじめとして法人税制全般について見直しを行う必要がある。(P7)

六 その他

質問検査権、罰則、徴収の所轄庁等について所要の整備を行う必要がある。

七 地方税

法人事業税及び法人住民税については、地域における受益と負担との関係等に配慮し、単体法人を納税単位とするとともに、納税者及び課税庁双方の事務負担も十分考慮に入れ、基本的には、法人税の連結所得金額及び連結税額の計算過程において連結グループ内の各法人に配分される所得金額又は税額を基にして課税標準を算定する仕組みとすることが適当である。(P8)」

委員

ありがとうございました。ただいま、「連結納税制度の基本的考え方(案)」を出していただきましたが、事務局の補足をお願いいたします。

事務局

今朗読した骨子なるものにつきまして若干補足させていただきますと、5ページの(2)「連結グループ内の法人間の取引」の[2]でございますが、ここの表現は、裏から読んでいただきますと、棚卸資産については繰延処理をしない前提の表現にいたしてございます。

それから(4)の「連結欠損金額」の[2]の部分の文章は、アメリカのいわゆるSRLY原則と同じものを日本で導入してはどうかという記述でございます。

それから[4]の記述は、[2]や[3]と記述の面でやや両立しないことが書いてございますが、「税収減への対応を図るときには」ということで、そもそも連結グループ加入前の欠損金額についてはグループの中に持ち込まないという考え方があり得るかどうかという記述でございます。

それから(5)の「税率」のところのなお書きにも、「付加的に一定の税率を上乗せすることが考えられる」。これも「税収減への対応を図る場合には」という表現になってございますが、アメリカ型の付加税の導入についてご検討いただきたいと思い、こういう記述をさせていただいております。

それから7ページにいっていただきまして、加入・離脱の(2)の「離脱」のほうでございますが、前に読んでいただきましたように、加入の場合には、資産の評価益・評価損の計上を行うのが原則だと書いてございますが、この「離脱」のところにはその表現がございません。本来的には、おそらく離脱の場合にも加入のときとパラレルに、考え方からしますと時価評価すべきということになろうかと思いますが、ここはこれまでの事務的な議論を踏まえまして、含み損益を単体に持ち出して租税回避するといったことは必ずしも想定しなくてもいいのではないかという観点から、離脱の場合について、資産の評価益・評価損の計上という記述にはいたしてございません。

それから同じページの三「各個別制度における取扱い」、ここにつきましては7月の時点でご議論いただいたものでございますけれども、現在、事務的にも詳細を整理してございますので、次回の小委員会で細部について提示させていただければということで、ここはまとめてこういう表現にさせていただいております。

以上でございます。

委員

ありがとうございました。それではこれから、先ほどの連結納税制度を創設した場合の税収の減少の見込み額、それからただいまの基本的考え方の案ですが、これについて自由にご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

委員

まず連結付加税から申し上げたいと思います。歳入の欠損については考慮しなければいけないということについては否定するものではないですが、連結付加税についてはちょっと問題があるのではないかなと思います。

まず、連結納税制度を選択しようとする法人というのは、いろいろな企業によっていろいろな目的があると思うのですね。現在、事業部として経営している法人を分社することによって活力ある企業グループとして経営しようとするというのが、まず第1あると思うのですね。それから第2として、すべてのグループの法人は黒字だけれども、つまり、損益通算による節税を必ずしも目的としないけれども、組織再編を目的として、グループ課税を選択するというような法人が当然あると思います。1番、2番のほうがどちらかというと、この連結納税制度の本来の目的に合致するのかなという感じはしております。

そして3番目に節税目的の法人が当然あると思います。現在、グループに黒字法人と赤字法人とがありまして、これらを通算して節税しようというグループであります。3番目は当然歳入減ということになるかと思うのですけれども、本来的にこの制度を導入すると私思うわけですが、1番と2番のような場合に連結付加税を導入するということは、選択しない、できないということになるかと思います。税の負担が純粋に増えるだけということになります。3番目の損益通算による節税を目的とする法人のみが、多少の連結付加税ですと通算したほうがいいということで、選択するということで、本来の制度と全く逆の結果を生んでしまうことになると思います。

したがいまして、この3番目の損益通算による節税を排除するという目的があるとするならば、ここの資料にありますような、これは加入・離脱を非常に厳しく制限しております。これがベストな方法とは私は思わないわけですが、そのような加入・離脱について一定の制限をするということで十分でありまして、連結付加税を導入するということは、本来の連結納税制度の趣旨に反するものではないのかなと私は思います。

委員

その点について、私、2点、再開するときにも申し上げたように思うのですけれども、連結付加税が不必要というののもう一つ前に、そもそも連結によって税収が減るかどうかという問題が1つあるわけですね。これは委員がこの委員会に参加された初めの日に発言されまして、連結をやっても縦の通算が横の通算になるだけで、本来、税収減は生じないということを第1回でおっしゃいまして、そうではないのではないかということを言って、たしか第2回目の会合で、委員が、やはりこの前言ったことは少し訂正すると言ってご訂正をされたように思いますが、まず税収減が生ずるということは、今回もこの計数が出ておりまして、はっきりしているわけですね。

そしてそれを付加税で回復するかどうかというのは、いろいろの考え方があろうかと思いますが、アメリカの連結納税が1917年から入れられて、強制連結の時代がずっとあったのですが、1937年に強制連結が廃止されまして、1942年に任意連結になったときに、この連結付加税2%が課されたわけですね。そしてその連結付加税が1942年から1964年まで22年間行われて廃止になったわけですけれども、やはり税収減が生ずるということははっきりしておりまして、そのためには、ほかの人からその分の税収減になるものを、一般の法人から徴収するというのはやはり適当ではないと思いますので、対象にあるこういう人から付加税の格好なりで――ただ、私も、永久に課税しろとまでは申しません。アメリカは22年間ですけれども、ある程度完熟して、そのことが問題にならなくなる年数は生ずると思いますが、やはり税収減が生ずる以上、それを連結する人たちから回収するという必要はどうしてもあるのではないか。

こういう意味で、委員とはちょっと違った意見だということをはっきり言っておいたほうがいいように思います。

委員

まず、連結納税制度をなぜ入れるのかということは、これは皆さん、私が言うまでもなく、日本の経済構造を競争力あるものにしていくための一つのインフラ整備としてやろうということについてはご議論ないと思うのですね。それからまた、きょうは減収額が出てきたわけですが、日本の、これは逆に財政構造改革ということから、減収が起こるのは大問題であって、これを何とか減収が起こらないようにいろいろな施策を講じなければいかんということについても、おそらく皆さん異論がないのだと思うのですね。

問題は、税収減対策をどういう手段でやるかということだろうと思うのですが、私は委員の今の議論は相当おかしいのではないかと思っておりまして、我々はこういう連結納税制度というものをなぜ入れなければいけないのか、そのためにどうしてこういう制度を入れなければいけないのかというのは、まさに4年前にやった法人課税の課税ベースを適正にしようということでありましてね。そういう適正な課税を実現するということの一環として、この連結納税制度というものを検討し入れてきたはずだったのですよね。

ですから、それで節税というか、メリットがあるから、その人たちの中だけで完結して、そして付加税をかけろという議論には、私はならないと。最後の最後、なかなか減収対策ができなくてどうするかという議論は、それは僕はあってもいいと思いますけれども、基本的にはその課税ベースの適正化の一環としてやっているわけですね。そして減収が生じるということもはっきりしたということだと思うのですね。

したがって、これの税収減対策については、我々が今まで課税ベースの適正化を4年前から検討して一つの成案を得ているわけですが、あのときになお検討しなければいかん課題というのは随分あったように私は思っておりまして、むしろ従来の論理の一貫性の中で、課税ベースをいかに適正化するかと。さらに踏み込んで、ここに法人税全般についての見直しというのが書いてありましたけれども、そういう努力をあらゆることについてもう一度、課税ベースの残された課題について適正化に向けて検討すると。それも思い切って検討するということにするのが筋だと。

その上で、これはわからないわけですが、どの程度の増収が図られるのかということを押さえた上で、残念だけれども、連結納税というものについても一定の付加税をかけるかどうかという議論をするという手順であって、受益する人たちがおるから、その中で払えばいいではないかなどという議論は、私は全く成り立たない議論だと思います。

委員

ちょっとこの問題に関連しまして質問したいのですが、税率でございますけれども、普通法人の税率と同様というふうになっているのですね。そうなりますと軽減税率も当然入ってくるのですが、例えば親会社が資本金1億円以下であるといったようなときに、その連結所得に対して軽減税率が働くかどうか、ちょっと確認したいのですが。

事務局

その点も、今、関係者と事務的な調整を進めさせていただいておりますが、基本的には、親が中小法人である場合には、連結グループ全体として800万円のところまでは軽減税率を効かせるという案で、今事務的な調整を各方面とやらせていただいております。

委員

今、委員のおっしゃいましたことに2点ほどやはり気になりまして、1つは、確かに連結によって減税を求められたわけではなくて、適正な所得計算ができるようにしようということだったわけで、だから、連結が減税にならないからといって、しかも税収が減って、その税金をだれへ持っていくかという話になったときに、委員のおっしゃったように、一般的な所得計算の是正でやる部分と、それから連結をやった結果、減る人たちからとる分と、2つのことをお話しになったように思いますが、私はどちらかといえば、より利益を受けるほうからとったほうがいいのではないかということを言ったように思うのですね。それが1つです。

もう一つの問題は、連結をやった結果の、減収にはなるけれども、その減収というのをどう考えるかという問題と絡んでおりますけれども、私はやはりどうしても、減収になるということ、そしてその減収の原因から欠損金の通算が一番大きくて、そのほか経費の連結会社間での、引かれなくなる。引かれなくなると言ったら逆ですか。所得減少との関係ですけれども、一般的な計算で、前にやっていたのはまだいいのですが、今連結をやるときに一般所得を増やすというとかえって受け入れにくいのではないかという気がしまして、それでも十分、それも考えて受け入れるということであればそれは考えようもありますけれども、その辺を危惧するわけでございます。

委員

ありがとうございます。連結付加税の問題が今問題になっておりますが、ほかにいかがでしょうか。これはかなり大きい論点になりますが。

委員にちょっと伺いますが、先ほど言われたように、グループ企業が全部黒字だった場合、それでも連結納税を選択するという何かメリットはあるのですか。

委員

当然、ここの資料にあるように、連結納税制度は企業グループ内の一体経営がなされて、実質的に一つの法人と見ることができる企業グループについて、一つの納税単位として課税するということなわけですね。つまり、企業の経営として必ずしも損益通算ということだけを目的とするのではなくて、分社をして、それぞれ独立した会社として活力ある経営をするということを選択する。そして納税としてはそれを一体として納税すると。

たまたまそれが赤字が出た、例えば1年度、2年度目で赤字が出るようなものを、連結納税がない場合には事業部として今まで行っていたと思うのですね。それを分社して、最初赤字でも、全体を通算することによって、結果的には、今まで事業部として行っていたのと同じ法人税の負担になるということにメリットがあると考えます。

ですから、ついでですから申し上げますと、先ほど委員が言われた、前私が言ったことといいますのは、本来、歳入の減少ということは、当然赤字法人に通算するからにはあるということについては否定しないわけですけれども、それを企業から見たときに、少なくとも5年間で解消するということを前提とした場合には、繰越欠損を縦の形で通算できるのを横で通算できますから、実際に節税と、純粋な節税ということがあったとしても、その間の利息だけということになるかと思うのですね。

そのことを申し上げたわけで、さらにその会社が活力ある会社ならば、清算しなければいけない子会社が出たときには、清算したときには清算損になって、親会社の損金になりますので、そういう意味でも、全く切り捨てになってしまうということは、少なくとも活力ある会社については比較的考えにくいのではないのかなというようなメリットがあると考えております。

委員

委員はこういうふうにはお考えになりませんか。今、横の通算、縦の通算、縦は5年間なのですね。ずっと赤字だったら、今の税制であれば引き切れない。赤字は5年たっても引き切れないですね、ずっと赤字だったら。子会社の中には、そういうふうに5年以上ずっと赤字を続けるようなのがあると、委員のおっしゃるような、縦の通算が横の通算になって、欠損金、マイナスされるものは同額だという考え方は、むだになる欠損といいますか、引き切れない欠損もあるので、そこの分の問題というのもやはり考えないといけないように思うのですが、どうですか。みんな引き切れるように言うのはちょっと問題があるように思うのですが。

委員

現実問題として、若干、私も友人の会計士とか経営者に聞いてみて、ずうっと赤字の子会社、確かにあるという話です。したがって、切り捨てになるというのがあります。直ちにその会社を清算するかといったら、それもなかなかしにくいよという話です。したがって、その部分については純粋に節税として残る場合がある。ここまでは否定しません。

ただ、ずうっと赤字であるような子会社、つまり、端的にいってそういう面では存在意義のない会社の場合には、遅かれ早かれ清算するか、あるいは、通達で認められた子会社支援という形で、親会社の損金として補助するかという形になることも十分考えられると思うのですね。ですから、完璧に節税が、その縦が横になるものが理論的に完璧かというと、委員のおっしゃるものもあることは否定はしませんけれども、清算ということまで考えるときに、将来的に、それが非常に長いか短いかということはあるかと思いますが、それまで考えるときには少なくとも理論的には利息の問題かなと考えております。

委員

要するに問題は、日本の法人は半分が赤字ですよね。アメリカやフランスの場合とそこがまず根本的に違って、引き切れないものはあるだろうけれども大したことないだろうというお考えのようですけれども、日本の法人の半分が赤字だという、ほかの国と違った状況というのを僕は……しかも赤字で、別にそこでそれを解散するとか何とかしないまま今の状況は続いてきているのですね。その実情からいいますと、そう簡単に楽観できないように思うのですが。これだけちょっと加えておきます。

委員

ありがとうございました。委員が初めに、事業部を分社化した場合にも変わらないということを言われましたが、これはやはり事業部が赤字の場合のことを念頭に置いてのご説明ではないのですか。

委員

おっしゃるとおりです。一つの法人のグループとしての選択として、赤字の事業部があった場合には、当然分社しないで、今の連結納税がない状態でしたら、分社しないで、そのまま事業部のまま置いておくほうが法人税の節税になると考えると思うのですね。連結納税が導入されると、それを分社して、赤字の法人でも分社しようという判断が出てくると思うのですね。そうすると、そういう意味では連結納税を導入した後と前とでは結果的に同じ税収になると考えるわけです。

委員

私がちょっと意味を明らかにするために伺いましたのは、いわゆる全部の関連会社、グループ企業が黒字であるのになぜそれでも連結納税を選ぶことに利点があるのかと、そのことなのですけれども、そういう会社に連結付加税というものをかけることは非常に不公平だということを言われたので、じゃ全部が黒字のグループ会社の場合には連結納税をする利点はどこにあるのですかと、私はそういうふうに委員に伺ったのですが、その点はいかがですか。

委員

目的を3つに分けるときに、最初は1番目と3番目だけを考えたわけですが、理論的には2番目もあるだろうということがまずそうですけれども、そうやって考えたときに、グループ経営というものは、今黒字だとしても将来的に一時的に赤字になる場合もあるし、それから全く節税だけのためにこの連結納税制度をやるというよりも、やはりグループ経営として、その全体としてまとめて納税するということを選択する会社もあるのかなと思ったわけです。

委員

今の委員のご質問ですけれども、税制上メリットがあるということは、全部黒字の場合はないわけですね。連結納税を採用して節税が図れるということではありませんから。これはですから税の話とは全く関係なく、とにかくできるだけ子会社化して分社化して、そしてそこで経営の責任、権限を完結させると。そして厳しくその会社を鍛えていくという、そういうことで経営組織としてそういうほうを選択したほうがいいという判断からやるということだと思います。

委員

いかがでしょうか。今ちょっと委員のおっしゃった、子会社化して責任の意識を持たせて鍛えていくと、そういうようなお話でしたが、そうなりますと、ますますグループとして一緒に扱うという根拠が薄くなるような気がするのですけれども、そこはいかがなのでしょう。

委員

事業部でやっている場合と、一つの会社として分離してやった場合と、経営の立場からですよ、これは税の話ではありませんが、どちらが本当に経営活性が図れるのだろうかという議論ですね。どうしても同じ会社の中におれば甘えのようなものが出てくるわけですが、別の法人格にしていると、そこに緊張感が出るということなのですね。

しかし一方、委員がおっしゃるように、じゃなぜ、どんどん独立してやればいいではないかということになるわけですけれども、この場合、100%の子会社という形は外したくないということなのですね。ですから事業部にするのか分社にするのかという議論であって、全然別に上場して、そして稼ぎなさいということとは違うわけですね。

委員

ありがとうございました。いかがでしょうか。

委員

グループ内の全部の法人が黒字の場合であっても、申告の手続等が一本化されれば、例えばその関係の職員の方とか、本社限りで済むというような、何かメリットは確かにあるだろうと思いますね。

それとあと、国税通則法がどのように変わるかちょっとわかりませんけれども、もしかすると連結のほうが末端の連結対象の子会社に対する調査が例えばしにくくなるなんていうことが仮にあったとしたら、それもメリットになる。メリットというのか、かもしれませんけれども、それはちょっとあれですが、でも、連結納税制度自体考えたら、経済界の方がこれだけおっしゃるからには、やはりそれはメリットがあるのだろうと常識的に考えればいいわけで、その場合に、この厳しい財政事情の中で、理屈の問題として、そういう制度を入れるのであれば、そういう連結納税制度を利用するところと利用しないところとのバランスとかいろんなこともあるでしょうから、多少なりとも  付加的な負担があるということ自体は、原則としては別におかしいことは何もないと思うのですね。

ただ、今後の経済状況の中でそれはとてももたんというのであれば、特別措置的にまた例外ということはあるかもしれませんが、原則はやはり、どれだけ多額のメリットかわかりませんが、10兆ぐらいのうちの8,000億円というのはなかなか法人税の中でも大きいわけでして、それを特定のところが集中してメリットを得るということであれば、社会正義というのか、そういう見地からもある程度は何かあったほうが導入も円滑に進みますし、原則論としてはそのほうがよろしいのではないかと思いますけれども。

委員

先ほど、棚卸資産は相殺しないということでしたが、ほかの資産については相殺の関係が生じますから、その点だけ考えても少しは課税所得は減るという、同じ黒字でもですよ、という効果はあるように思います。

委員

私は、課税ベースの適正化の一環だということで、適正化したら税金がかかるというのは本末転倒ではないかということを申し上げたわけですけれども、今、委員がおっしゃるように、これは百歩譲っての話ですけれども、メリットがあるのだからそこにかければいいということを仮に、という立場に立って考えてみて一体どうなるのかということも1つあるわけでありまして、本当に受益したところが例えば半分返すとか3割返すとか、そういうことがある特定してできれば、私は、連結納税制度を入れるということに、その趣旨に全く反しない形での一つのあり方というものがあるのではないのかなと。

こういうことで、いろいろ専門家の人たちや何かに検討してもらって、そういうメリットを得たところが合理的な範囲で幾らか負担していくという仕組みが、これは私は研究してもらったほうがいいと思いますけれども、やはりなかなかできなくて、これはさしさわりがあるかもしれませんが、例えば〇〇〇が、じゃそういうふうに付加税かけたときに本当に連結納税入れますかと。みんな立派な子会社ばかりで。そういう会社だってあるわけですね。

さっき先生が言われたように、立派な会社はみんなやらなくて、しかし、本当はそういうところも入れて経済構造を活性化する必要があるわけですよね。それで、もう落第坊主ばかりで(笑)、金払っても節税になるわというようなところしか入らないというようなことなら、これはいかがなものかということでありまして、本当に合理的にそういう――いや、申し上げたいことは、私はそんな議論をするより先にやるべきことがあると思っておるのですけれども、本当にやるとすれば、恐らくそういうことで、だれが見ても、受益したやつが幾らか返すのだなと。これは8,000億円全部埋まりませんよね、その場合は。そういう方法があるのかなという議論は、私はあってもおかしくないのではないかと思っております。

委員

ありがとうございました。

委員

蛇足になるかもしれませんけれども、今委員が言われたことではたと思ったわけですけれども、本来この連結納税制度というのは日本の企業が活性化するため、国際競争力を増すためという、非常にいい制度だということで、この経済情勢、財政情勢、非常に厳しいときでも入れようということで、我々、議論したような気がするわけですね。今の話ですと、何か単なる節税のためというような議論にすごく偏ってしまっているような、そんな感じがいたします。本来、日本の経済を活性化し、国際競争力をつけて、この不況を脱却しようということの、税制としてやろうとしていると、その辺に立ち戻って議論したほうがいいように考えます。

委員

いかがでしょうか。

委員

おっしゃることは全く同感ですけれども、ただ、この付加税というものが出てきたからちょっと議論がおかしくなったと思うのですよね。理念としては非常にいいと思うのですけどね。だから、付加税が出てきたからこういう議論が出てきたと思うのですよね。したがって、企業のメリットというのは、これは選択ですから、選択しなくてもいいということであれば、メリットがないから入らないとか、あるいはメリットがあるから入るとか、こうなると思うのですよね。そうすると、税というものについて、税負担ということについても一つのやはりメリット、デメリットがあると思うのですね。

したがって、例えば付加税を一律にとるということについては、かなり黒字でたくさんの税金を払っているところがまた余計負担しなければいけないと。それからグループ内で欠損出たときには、税金の負担が少なくなるというような結果も出るのではないかと思うのですよね。したがって、選択して、メリットのあるところが税負担が軽くなると。付加税がね。そういうことも一応考えではないかと思うのですよね。したがって、その点について検討はしてもらってもいいのではないかなと思いますね。

委員

今までの議論の流れで、どうも理解できないのは、やはり8,000億円という見込みの減少は生ずると。それはなぜかというと、やはり連結をとったからそういうことになるわけですね。そういう状況をどう考えるかというときに、黒字の法人ばかり議論してみても全くこれは論理的につながらない話であるということが1つ。

それからもう一つは、経済の活性化というのは連結納税をするから活性化するというのではなくて、いわゆる企業を再編成して、その結果として、再編成した企業にちょうどぴったりするような納税の仕組みがあることが望ましいということですね。ですから、持株会社にするなり分社化するなりしてグループ企業が大きくなってくる、それに対応した税制があることが望ましい。これは黒ばかりだったらどっちでも同じことなのですよ。欠損があるからそれを消してくれると。ここに活性化、税制でいうメリットが出てくるわけで、「討議用メモ」を見ていただきますと、一番最初にはっきり書いてあるのですね、そこは。「連結納税制度は、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して法人税を課税する仕組みである」と、こうなっておりますが、これを無視して、そうでない何かメリットがあるようなことを言うのはやはりちょっと拙速ではないかと、私は、申し上げたいのですが。

この連結付加税の問題、必ずしもこの委員会だけでといいますか、この委員会で結論を出す問題というより、とにかくいろいろ議論いただいたということが大事でありますので、そのほかいかがでしょうか。この「基本的考え方」全体を眺めまして。

委員

またこれはお尋ねで申しわけないのでありますが、連結グループへ加入するときの新しい制度でございますが、私の認識違いかもしれませんので、もし認識違いでしたら結構でございますが、現在、企業組織再編税制が進捗しております。それで多くの企業がかなり積極的に取り組んでおるのですが、ご承知のとおり、特例、すなわち適正な企業組織再編をやったときには、帳簿価額による移転、すなわち帳簿価額による引き継ぎと、それから帳簿価額による譲渡といったことが認められているわけでございます。

そうなりますと、この14年の3月31日までに適格組織再編をやった企業がグループを形成して、この連結納税のほうに入ってくる、適用するといったときに、今言った、いわゆる帳簿価額による引き継ぎ並びに譲渡をやったところが再び時価評価されるといったことになるのかということについて、ちょっと私が認識違いかもしれませんが、その辺をちょっと確認したいのですが。

委員

いかがでしょうか。事務局のほうで。

事務局

お答えさせていただきます。

基本的に、まず組織再編成と連結納税がどういう仕組みになっているかということを確認させていただいた上でお話しさせていただきたいと思いますけれども、組織再編成の場合は資産が移転するわけですよね。ですから、基本的にはここは原則は譲渡損益を計上すると。その上で、特例として簿価引き継ぎを認めるという構造になっているわけですね。

連結納税制度の場合には、加入や離脱では資産は移転しません。会社の株が移転するだけで、資産は移転しません。ですから、ここ では譲渡損益という問題は出てきません。ここでキャピタルゲインを計上する方法としては、評価益・評価損を上げるという方法しかないわけですね。ですから、原則として加入・離脱の場合には評価益・評価損を計上すると。その上で、特例として評価益・評価損を計上しない場合があるでしょうと。こういう基本的な整理になっているわけですね。

その上で、今回ここでは加入と離脱という形でテーマを挙げさせていただいているわけですけれども、これは過去の論点整理の仕方がもともと加入と離脱という形でずっと挙げられてきた事情がありまして、加入と離脱ということについてここで記載させていただいているわけですけれども、口頭での当方からの説明にもありましたように、開始の場合も、当然加入と同じような現象が生ずるわけですね。時系列的には当然開始の場面というのは先に来るわけです。

加入した場合というのは時価評価が原則になり、開始の場合はそうでなくていいという話になりますと、例えば3月31日に100%子会社化した会社はそのまま時価評価なしでいいと。4月1日に100%子会社化した場合には時価評価と、こういう非常にバランスを欠いた制度になるわけです。ですから、当然、開始の場面につきましても、直近の一定のものについては時価評価をしなければいかんという制度にしないと、加入とのバランスを欠くことになります。それが1点。

そしてもう一つは、今、適格組織再編成の場合のお話がありましたけれども、適格組織再編成の場合には、移転資産のいわゆる法人への持ち込みについて、これが時価評価すべきものか簿価引き継ぎすべきものかということを見ているわけですね。例えば親会社が被合併法人を吸収合併したときには被合併法人の資産が合併法人に移転するわけですね。そこの場面について問題がないかという問題意識で制度を考えているわけです。

連結の場合は、被合併法人の下に100%子会社があり、その子会社というのが連結グループの中に入ってくるという場面でございます。ですから、組織再編成の場面と連結の場面とでは見る場所が違います。

例えば典型的なケースで申しますと、分割型分割、あるいは分社型分割でも結構ですけれども、例えば分割でもって株式が親会社に移転するという場面があります。これについては、例えば共同事業ということであれば簿価で移転することが認められるわけですけれども、移転する株式については、例えば赤字会社だけ集めて移転することもできるわけですね。あるいは黒字会社だけ集めて移転することもできるわけです。組織再編成の場面では、事業を移転して共同事業を営むということであれば簿価引き継ぎ可というふうにしておりまして、その対象法人が赤字法人ばかりだった場合にはだめというところまで適格組織再編成の場面では踏み込んで判定はしないわけです。

ところが、連結納税制度の下での連結グループへの加入の場合を考えてみますと、例えば共同事業をやり、分割で親会社が承継法人になりますという場面であったとして、親会社が黒字であれば、赤字会社の管理事業だけをこちらのほうに移転しましたという話で問題ないのかというように、少し場面が違いますので、問題の出方が少し違ってくるということがございます。

ですから、適格合併のように、資産が移転してすべての法人が加入するという場合には恣意的な操作というのはまずないと考えられますけれども、適格組織再編成であっても、今申しましたような分割だとか現物出資だとか、そういう場合については必ずしも、連結納税の観点から見た場合には問題なしとしない部分がございます。ですから、適格組織再編成だからといって、常に簿価引き継ぎというふうにするという話には必ずしもならないのではないかと考えております。

委員

ありがとうございました。よろしいでしょうか、今のお話。7月にも事務局から補足いただきましたけれども、企業組織再編成の場合は資産が動くけれども、連結の場合は、株の、あくまで資産が動くものではないというところで。にもかかわらず、この今回の加入・離脱のところでは企業組織の再編成、それを損ねることがないようにという形で、組織再編成の規定と同様のものがつくられるということなのでしょうか。

委員

ちょっと僕のほうの聞き方が悪いのかもしれませんが、14年の3月31日までにもうすでに適格組織再編を行っている企業が14年の4月1日以降に連結納税を開始したと。このときに果たして簿価による移転がどうなるか、簿価による移転したもの自体がまた資産として評価損益を出さなくてはいけないのかということをお尋ねしているのですが、この辺はいかがでしょう。

事務局

現在、私どものほうもアンケート調査で企業の方々と大分やりとりする機会もございましたが、100%であれば来年から連結の対象になるということをほとんどの方が当然承知していらっしゃるわけですね。早いところだと、もうすでに去年やりましたというところもあるようです。連結納税制度の仕組みがこういうふうになるということがわかりかけてきたことから、当然それに対する対応はもうすでに始められているという、現実にそういう実態がございます。

ですから、制度としては来年4月1日以降に施行ということになったとしても、当然、企業行動としては、法案もすでに出るわけですから、そういったものも念頭に置いて対応なされるということでございますので、当然、一定のものにつきましては加入の場合と同じような措置が必要であると考えております。

委員

ありがとうございました。あといかがでしょうか。

委員

税収減の対応の話はともかくとして、制度全体の骨格については、私は、今ご議論ありましたように、加入時の問題も含めてかなりよくまとめていただいたのではないかと思っております。したがって、来年度4月からの導入に向けたさらなる成案化をぜひやっていただきたいと思っておるのですが、1つだけ確認しておきたいことがございまして、それは寄附金のことであります。

これは寄附金を親会社の資本金に基づいて計算をして、その枠の使い方については、グループ外は認めるけれども、グループ内は全く認めないという案になっておるわけであります。親会社の資本金を除いて算出されるということになりますから、これは従来の各子社の枠の総額に対してはかなり減るということになると思いますけれども、外には使えて中には認めないという理由をちょっとわかりやすく説明していただきたいなという質問であります。

事務局

わかりやすく説明できるかどうかあれですけれども、「基本的考え方」の案の5ページの(2)の[3]のところだろうと思いますが、「適正な課税を確保し租税回避行為を防止するために」ということで表現上は理由を書かせていただいております。ご承知のように、連結グループ内の各法人の損益を通算するというのが連結納税制度の基本的な要素なわけでございますが、その適正ないわば計算なり課税を確保するために、別なところで見ていただきましたように、繰越欠損金についてSRLYルールを設定いたしましたり、ここに細かには書いてございませんが、租税特別措置等で税額控除いたします場合には、個別法人ごとに限度額の管理をするといったような仕組みになろうかと思います。

そういう連結納税制度に特有ないわば仕組みを適切に執行いたします場合に、任意の所得移転がグループの中でできるということになりますと、そうした連結納税制度のいわば課税計算の仕組みを結果的に形骸化することにもなりかねませんので、グループ内のほうが外とよりも所得なり損益の振り替えが容易に起こるかどうかというのは、経済行動として議論はあろうかと思いますけれども、そうした連結納税制度の課税計算の仕組みの適切さを確保するという観点から、私どもとしては、グループ内の寄附金については損金不算入という扱いにさせていただきたいなと思っているところでございます。

若干つけ加えますと、ご承知のように、日本の法人税制は諸外国と異なりまして、法人間の一般寄附金につきましても損金算入を一部認める仕組みがとられているわけでございまして、グループ内の寄附金で損金算入を認めるということになりますと、先ほど申し上げましたように、単体法人間では生じないようないろいろな問題を惹起するおそれもございますものですから、できれば、一般寄附金について法人間でのグループ内でのやりとりについて損金算入枠は認めないということで整理させていただければと考えているところでございます。

委員

今のお話でよくわかったわけですが、1つ、どうしてこういうことにこだわるのかということを、若干長くなりますが、お話をして、経済の実態に即した対応をお願いしたいという趣旨なのですけれども、今、ご案内のとおり、これは皆さんよくご承知のとおりですが、親・子会社間の支援における現行の寄附金の取り扱いについては通達の9-4-1と9-4-2があるということでありまして、特に寄附金の実態的な使われ方というのをよく調べて勉強しますと、9-4-2のケースであるわけですが、損失負担の範囲というのは過剰支援になっていないかというメルクマールがありまして、いわゆる債務超過までしか支援ができないということに現実的にはなっていると。一部、法令等で定める許認可事業の場合にはその限りではないという議論はあるわけですが、経済実態からいいますと――寄附金のよしあしはちょっと別ですよ。別にして、我々として、債務超過までを支援するというようなことではとても、経済再建がうまくいかないと、累損まで消さないとなかなか営業上にも支障を来たすというケースが、これはままあるわけですね。

例えば具体的にいいますと、会社でも、購買、ものを買うわけですが、その会社が累損を抱えているようでは、これはとても買わないと、債務超過を消したぐらいではいかがなものかという判断をする。それは官公庁もそうですし、みんな一般企業もそういうことがどんどん浸透してきているわけですが、そういう効果的なタイミングで、債務超過の解消だけではなくて、累損解消までの規模で支援を行う必要があるという場合に、現行ではそれが合理的な経営判断に基づくものであっても、やむを得ず、寄附金損金枠を使っている実態があるということでありまして、私はこういった支援というのは租税回避の問題ではないと思いますが、寄附金の特有な使われ方そのもののよしあしはともかくとして、寄附金というものがある以上、そういうものをどう考えるのかということについては、9-4-2の解釈の拡大、あるいは見直しということになるのかどうかわかりませんが、別途ぜひご検討いただきたいということは申し上げておかなければいかんではないかと思っておるのです。

委員

先ほどの事務局の方の説明の中で、SRLYルール、それから当然それは加入・離脱に関して寄附金が付与されるというようなご説明だったかなと思います。ただ、連結納税制度を損益通算型というふうに位置づける以上、課税上の弊害がない限り、内部取引は完全に消去するというのが基本だと思うわけですね。もちろん、内部取引ではなくて損益を消去するという考えだと先般お伺いしましたけれども、ただ、寄附金のようなものについて、消去することによって、SRLYルールの潜脱、それから加入・離脱に関する潜脱行為というものは回避できるのではないかなと考えるわけですね。

つまり受益が、親から子へ給付すると子の受益が消去されますから、ゼロとされるわけですので、そういう面では全く悪用されるおそれはないと。問題はその管理の問題でありまして、その後いつ課税するのかという問題であります。非常に長期間にわたって管理しなくてはいけないという問題はあるわけですが、その場合には企業自身に立証責任を負わせるとか、そういうような工夫でもってできるわけでありまして、ぜひそのような形で考慮していただいたほうがいいのではないかなと。

これは、委員も言われましたように、グループ間では資金の移動とか取引価格の設定などにおいて非常に難しい判断を迫られるわけですね。個々に非常に多数の取引が親子間で行われるに当たって、常に時価ということを考えるときに、その立証の問題も含めて非常に難しい判断を迫られるわけです。事業部制のもとでは、グループ企業間の資金の移動とか内部取引価格の設定というものは当然自由に行われるわけでありまして、それを分社化して自由に活発化する、先ほどの議論ではありませんけれども、企業再編というものを自由に行おうとするときに、この寄附金課税というものが非常に大きな障害になって、その再編を阻害するということになりかねないのではないのかなと。したがいまして、万難を排して、こういうような非常に企業の再編を阻害するような制度というのは避けるべきではないのかなと、そのように考えます。

委員

ちょっと確認しておきたいと思いますが、組織再編成ですけれども、個別的な企業グループ間の中の取引、これについても、無償であっても有償であっても、どちらでも好きなように取引して、これに課税がかかわってこないと。組織再編成というのはそこまで広げた考え方だったのかどうかですが、いかがでしょう。ちょっと教えていただけますでしょうか。

事務局

お答えさせていただきます。

組織再編成の話と今の話は少し場面が違うかなという気がしておるのですが、委員の寄付金の実態のお話は、なるほどなと、そういう実態があるなというのはよく承知しております。ただ、今の委員の内部取引と寄付金のお話については若干コメントさせていただく必要があるかと思っております。前々回も同じことを申し上げて非常に恐縮ですけれども、グループの中で取引をどういうふうに行うかということと、それを消去するかどうかということは問題が全然別なのですね。

例えば100円のものを1円で売買すると、1円やりとりし、100円のものを200円で売買すると、200円やりとりするということになります。これは取引をどういうふうに行うかということですが、これと、その取引を消去するのかしないのかということは話が全然別なのですね。表示の問題と取引をどう行うかというのは別で、例えば100円のものを1円で売買し、それを表示することもできますし、消去することもできるのですね。100円で売買したものを消去しないこともできますし、消去することもできます。

連結財務諸表制度ではこれを消去しております。ただ、連結納税制度ではこれを消去しないという選択をしようというふうにしているわけですけれども、寄附金というのは、もともと100円でやりとりすべきものを1円で売買し、1円しかやったりとったりしないことに着目して、寄附であるか寄附でないかということを言っているわけです。ですから、それを消そうが消すまいが、100円のものを1円で売買したという事実を消すことはできないのですね。

そこをとらえて、100円払うべきものを100円払わなかったということをもって、これは寄附だというふうに話をしているわけで、それを消去するから問題が出るとか出ないとか、そういう話とは次元が違うのですね。ですから、そこを峻別してご議論していただく必要があると思います。

なお、組織再編成の場面は、今の内部でのやりとりの話とは少し場面が違うのではないかと思っております。

委員

確かに、いわゆるグループ内の取引を時価で行うかどうかという問題ですけれども、これは基本的に、先ほど委員が通達の9-4-2を挙げられましたけれども、法人税法22条ですとはっきりと、無償による取引、この場合も課税する形にとっているわけですね。どういう根拠でああいう通達ができたのか、私には理解できませんけれども、おそらく実際にあわせて、通達のほうで、はっきりいえば法律を曲げた解釈をしたのではないかという気がしているわけですが、今の事務局のご説明を伺いますと、何となく、確かにそうなのかなという気がしてまいりましたが、いかがでしょうか。ご意見として承りますけれども。

委員

制度設計の問題として、細部まで考え抜かれて案がつくられておりまして、何というのか、私はこのような複雑、かつ、エラボレートな連結納税制度、日本では短期間のうちには無理だろうと思っていたのですけれども、本当にそういう意味ですごい考え抜かれたものができて、大変よかったというふうに思います。

一番最後の紙、8ページの六「その他」というところに、「質問検査権、罰則、徴収の所轄庁等について所要の整備を行う必要がある」という、この辺のところもおそらく随分内部的に検討なさっていらっしゃるだろうと思いますけれども、租税手続法、租税徴収法、租税刑事法と本来の意味の法人税法とはちょっと異なる原則が支配するような分野と絡みますから、後々、かなりきれいに制度ができていたとしても、なかなか漏れがあるということが、そういうことがないことを祈りますが、起こり得るかもしれませんので、それは時間をかけて改正していくということが必要だろうと思います。そういう法律面の整備のことのほかに、執行の実態のようなものについて多少、例えば東京に本社が、親会社があって、子会社が沖縄にあって、その場合に事実上の問題としてどういうふうに調査をとか、制度上はきれいにできていたとしても、実際にはなかなか難しいこともあるのかなということが、もちろんそれは考えられ上でのことだと思いますけれども、多少心配になるということが1つあります。

それから、これも執行上のことですが、これはちょっと考え過ぎかもしれませんが、連結の対象となる子会社、普通法人ということですと有限会社とかも入るということなのですね。具体的なことは私にもよくわかりませんが、例えば有限会社というのは、アメリカ系の企業が日本に有限会社を子会社として置くと、これをチェック・ザ・ボックスで外されているのですかね。要するにパートナーシップ扱いなのでしょうか。

詳しいことはよく覚えてないですが、いろいろ課税逃れに利用されているということがあるのかもしれませんし、外資系の子会社である内国法人がその子会社であるいろいろなのを使ってというようなことの場合に、有限会社とか人的会社が連結対象に含まれていることに意味があるのか、そういうリスクがどこまであるのかわかりませんけれども、この連結納税制度が念頭に置いているのは株式会社だけでもいいのではないかなんていう気も、そうするといろいろ問題もあるのでしょうけれども、場合によってはするということと、それからもう一つは、内国法人である子会社を連結の対象としているわけですが、内国法人といっても、例えばペーパーカンパニーの内国法人を東京都内につくって、その支店をケイマンにつくって、所得がほとんどケイマンに上げていてなんていうこともあり得るわけで、これは形式的な基準でどこまでいけるか。もちろん否認規定を整備すればいい話なのですが、何か千差万別の場合が出てきますから、つくった後のフォローというのが多分大変だろうと思うのですが、それはすべて執行の問題であるというふうにもどうもいかないような厳しさがあるのかなという気がいたしております。

余計なことをすみませんでした。

委員

ありがとうございました。

委員

今ちょうど最後のページにいきましたので、そこを見ておりましたら、例の地方税の問題、前に聞いた感じがしますけれども、結局、法人事業税も法人住民税、実際上は事業税は所得で、法人住民税は法人税額が課税標準になっていて、ここの書き方では、単体課税だけれども、連結所得や連結税額をもとにしてというふうに書いてありますが、これは事業税と住民税ではそれぞれその所得と税額という違いが出てきて、この書いてある2つの、「所得金額又は税額」とか「連結所得金額又は連結税額」というところは、その事業税と住民税でそういうふうに区分けして読みなさいという意味でしょうか。

事務局

今のページですが、実は法人税の仕組みが大分できてきまして、4ページの5.に「連結所得金額及び連結税額の計算」というのがありますけれども、[1]にあるように、連結所得金額についても、各法人の所得金額を基礎として、連結調整を加えた上で、一体として計算するというような中で、次のページの[3]で、連結調整金額等も、各法人に合理的な基準により配分するというふうな内容になっております。それから連結税額につきましても、[4]で、各法人の納付税額又は還付税額として配分するというような内容になっております。

私どものほうとして、仮に単体課税を選ぶ際に、こういう仕組みになりますと、法人税と全く切り離して、地方税のための所得なり税額を計算するのかということになりますと、やはりちょっと、納税事務あるいは課税事務双方にとりまして負担が大きいのかなと。こういう仕組みになりましたので、[3]で行われるような、あるいは所得金額の配分された金額、あるいは[4]の配分された税額をもとにしまして、今委員がおっしゃったように、事業税のほうは配分された所得を基礎にして計算をする、住民税のほうは、税額が課税標準ですので、配分された法人税額を基礎として計算するような仕組みにしたらどうかということを今考えております。

委員

ということは、地方税では損益通算後考えるということでしょうか、その前で考えるということでしょうか。

事務局

地方税の場合には、やはり地域における応益関係等が基礎にありますので、基本的に単体課税を維持すると。したがいまして、損益通算は基本的にしないということであります。ただし、計算の過程においてはこういう連結の計算の過程において出てくる数字なりを基礎にして簡略な仕組みをできるだけ考えようということでございます。

委員

すごく不安に思うのですね。実務家としてはですね。簡略化というふうにおっしゃっていただきました。努力していただけるのだとは思いますが、いずれにしても二重の課税標準であるには違いないと思うのですね。二重の課税標準というからには、そこで途中で出てくるものというのは、寄附金、交際費、税額控除などなどですね。それらを個別法人から一たん消去して、そして連結のグループとしての課税を行い税額を算出するというプロセスをたどるはずなのですが、そのうちのどこで切るのか、あるいはどういうものを入れるのか、どういうものを入れないのか。

基本的にはそういうものが途中計算を省略してできる計算に多分、国税だけだとなるのかなと思うのですが、それを地方税で二重の課税標準のために全く二重計算をする形になるのと、それからさらには投資調整とか、もちろんそれに関連して離脱の場合の有価証券売却損益ということまで、それからもちろん繰越欠損ということまで全く別なものをそれぞれすべて管理しなくてはいけないということで、ちょっと細かいものまで頭回らないのですね。実際にはね。細かいところを検討し、またご指摘できないのですけれども、非常に不安に思うのですが、それはどの程度までお考えか教えていただけますでしょうか。

事務局

今の質問は、基本的に全部、例えば連結調整等、全く否認しまして、それで地方税独自の所得計算をするということの前提のように伺ったのですが、これは財務省のご説明でいいのかもしれませんが、4ページの3.の(3)のところに「各子会社は、連結所得の個別帰属額等を記載した書類を税務署に提出する」というような仕組みがございまして、したがって、連結の所得計算をする過程で、各会社別のいわゆる一定の調整をしますけれども、それもすべて、調整要素も各法人に配分した上で会社別のいわゆる所得金額というものが出てくるわけでございます。そこを利用して、どうしても地方で独自の調整をする項目があればそれはいたしますが、基本的にこれを使うということですので、手間としては私は非常に二重の手間になるということにはならないような仕組みでできるのではないかと考えております。

委員

個別帰属額を記載した書類というものは、実務的な常識からいうと直接納税額とかに絡まないものですから、一般的にはそれほど神経使わないということが前提になるかと思うのですね。それが地方税という具体的な税額ということになると、これは非常に神経使わざるを得ないと。当たり前と言われればそれまでですけれども、その点もぜひ考慮していただいて、できる限り簡素な仕組み。

本来ならば、私は、所得を課税標準とする法人住民税でありますので、それは国税と同じであるということが大前提かなとは思います。歳入とかのいろいろな都合でそのようにされることまでも我々判断できるかどうかわかりませんけれども、できるならばそういう形にしていただき、また、もしそうやって分けると、別々のものにするということでしたら、それらの事務負担も考えて、可能な限り簡素な形にしていただきたいというふうにお願いであります。

事務局

可能な限り簡素化するというのは我々も考えておりますが、ここの所得の個別帰属額等は、グループ内の契約なり、自分勝手にできるものではなくて、法律できちんとこの配賦方法を規定するように聞いておりますので、そういう意味ではあまりまちがいがないのかと思っております。

それから所得を確かに課税標準にしているものでありますけれども、事業税の場合、むしろ、だから国税と本来同じべきだというのではなくて、政府税制調査会等の議論では、別ものだからということでずっと外形標準課税の議論がなされてきているわけでして、ここで、同じだから本来一緒にすべきでないかというのはちょっと私どもの認識とは違うのではないかなという気がいたしておりますが、いずれにしても、今ご指摘のあったように、非常にわかりづらい制度、あるいは法人の取り扱いによって違いが生ずるような仕組みにはしたくありませんので、きちんとして、かつ簡素な仕組みにするように検討してまいりたいと思っております。

委員

ありがとうございました。いかがでしょうか。大体きょうと次回ご議論いただいてまとめたいと思っております。

委員

すみません。私ばかりしゃべって。6ページの前から続いている、上のほうの[4]ですね。税収減への対応を図るときには、繰越控除だめだよと、しないというふうなことが書かれております。これもやはり高度な政治的な判断ということになるのかもしれませんけれども、万が一これが必要な場面ということになった場合でも、これはやはり法人税本法とはちょっと論理的に入れないものではないのかなと、理屈の面ではちょっと無理が生じるのかなと思いますので、もしこれを最悪入れる場合でも、租特法で時限立法という形が、やはり法人税法というのは、本法というのは理論的にきちっと通ったほうがいいと思いますので、そのようなことをご検討いただけたらと思います。

委員

あといかがでしょうか。かなり議論が何カ所かに集中いたしましたけれども、よろしいでしょうか。

それでは、大変いろいろご議論いただきましてありがとうございました。幾つか、寄附金、それから内部取引、大きな問題は残っておりますが、それ以外の点につきましてはおおむねこの原案で対応させていただきたいと思っております。実際問題といたしまして、これからの話、連結納税制度を創設するに当たりまして、現在の単体をもとにした法人税法、それにどういうふうに整合する形でこの連結納税が法制化できるのかどうか、非常に困難な作業をしていただくことになるのではないかと思います。ただ、できるだけ早くその骨格を示していただきたいということもございます。

そこで、この連結納税制度の基本的な考え方につきまして、こちらから、本日も午後の税制調査会総会で経過報告はいたしますが、できるだけ早くこの基本的な考え方の文案をつくりまして総会のほうに報告したいと思っているわけでございます。そういうことでございますので、きょうの午後、議論の中身については私のほうですが、減収の見込み額のほうについては事務局のほうからご説明いただくことになります。次回のときにできればこの基本的な考え方、またご議論いただいて、さらに、ここには本日は出ておりませんが、減価償却ですとか引当金、その他、細かい技術的な規定についてもあわせてご議論いただいて、できるだけ早めにまとめて総会に報告したいと考えております。

次回の小委員会は10月9日火曜日の午後2時ということで予定しております。

それでは、本日はどうもお忙しい中、また活発なご議論ありがとうございました。これにて終了させていただきます。

〔閉会〕

(注)

本議事録は毎回の審議後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、財務省主税局及び総務省自治 税務局の文責において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。

法人課税小委員会