グループ・ディスカッション(第3回)後の本間会長・田近主査の記者会見録
日時:平成18年11月21日(火)16時42分~
場所:中央合同庁舎4号館・共用220会議室
〇司会
ただ今から、税制調査会第3回グループ・ディスカッションの記者会見を行います。
まず初めに、田近主査から本日の概要説明がございますので、主査、よろしくお願いいたします。
〇田近主査
今日は、テーマとしては「経済全体の活性化」ということで、グループ・ディスカッションの3回目をしました。
最初に国税の法人税一般の話と、特に来年度の改正に向けて焦点の一つになっている減価償却制度について議論をし、そして、同じテーマで地方についても取り上げました。その他、これまでのディスカッションを含めて包括的な議論をしたということです。
あとはご質問にお答えしていったほうがいいと思いますけれども、この記者会見は初めてなので、どこまで最初にお話しするのかわかりませんが、私の司会で進行させていただいて、大きくまとめれば、減価償却については国際的な標準と比べて日本は償却が不十分ではないか。10%の残存価値の問題、それから償却限度可能額が95%。それは見直してもいいのではないかということは概ね意見の合意があったと思います。
それから今日、議論は非常に盛り上がったというか、さまざまな視点から議論があったのは、国の法人税における減価償却制度の見直しというのが、地方の法人税--法人住民税は国の法人税割ですから、もろに影響を受ける。そしてまた、所得割の法人税でも影響を受ける。それはそうですけれども、議論がいろいろ出てきた一つは、固定資産税の減価償却、固定資産税評価と言ったほうがいいと思いますけれども、それをどうするか。それが国の税制改革と平仄を合わせるか合わせないか、という問題が出てきたと思います。
以上、焦点のところはそんな意見が交わされたと思います。私からの最初の説明は以上です。
〇司会
質問のある方は挙手をお願いいたします。
〇質問
固定資産税のところですけれども、個人の人間から見れば、ここでよく議論されている減価償却と同様に、仮に評価を早めに落としていけば固定資産税は減る。簡単にはそういうことになると思いますけれども、この間の会見で、会長は、固定資産税とこれは違うのだということを私の質問に対しておっしゃる一方で、今日の会合では、本当に地方自治体はやれるのかという不安も若干ある、みたいなことをおっしゃられていました。
まず、固定資産税はやはり今までどおりの方針を維持するという考えに変わりがないのか。その場合、なぜ固定資産税はそのままなのに、減価償却のほうは変えるという話が出てくるのか。まさに個人の固定資産を持っている方に対して、会長はどういうふうに説明されるのかということをぜひお聞きしたいと思います。ぜひ、お二人にお聞きしたいと思います。会長もお願いします。
〇田近主査
今日、問題となっているのは償却資産の話ですから、住宅とか土地とか、そういう問題ではない。今日の税調の資料をあとでご覧になっていただくと、償却資産で、国によっては制度をかけている国、かけていない国があるでしょうけれども、わかりやすく言うと、私がこういう仕事をしていて思うのは、ダムなんていうのは実は償却資産です。最初、建てたときはいっぱい税収が入ってくるけれども、何十年もたつと税収が入ってこなくなってしまう。それは償却が進むから。そういう意味で償却資産に関しての固定資産課税を議論したと。
地方の議論としては、使っているだろうと。使っている限り価値はあるのだから、資産の額に見合って税を取るのだと。むしろ面白い議論もあって、古くなればなるほどいろいろご迷惑をおかけする。例えば煙が出たりするかもしれないから、それは税を取っていいのではないかという意見が一つです。したがって一般に住宅とか土地の問題、土地の固定資産税ではないということです。
もし食い違っていたら、またご質問をいただければと思います。
〇本間会長
基本的に今日の議論は、私は最後に申し上げたのですけれども、今回の減価償却制度の見直しの問題は、グローバル化する経済環境の中でスタンダードをやはり平仄を合わせていきましょうという考え方の中で減価償却の議論が出てきたわけです。これについては、今、田近主査が総括されたように、基本としては償却をきちんとグローバルなスタンダードに合わせていく方向性でやろうということは合意が成立できたと思いますが、問題は、償却資産で固定資産税の評価の問題とかかわってくる。
もう一方で、法人税割を地方の側はしておりますから、そこにもこの償却の見直しというのは影響してくるし、もう一つは、現在価値という評価の中でこれを援用している部分がございますから、固定資産税の税収にもはね返ってくる。ここの関係をどういう具合にしていくのですか、というのが今日の議論であったと理解しています。一方で国の側の法人税を算定する部分のところが残り、一方で固定資産のところで独立する方向性というのが、実務面における複雑さも含めて果たして大丈夫なのかどうかということが、今日の議論の焦点であった。こういう具合に私は理解しています。
〇質問
地方の法人事業税とか地方系の法人税については、減価償却は、たしかに今日の議論が起きるまであまりスポットが当たってこなかったと思いますけれども、地方の理解は十分得られると。国際的な基準に合わせるということで、地方税、地方の法人にも及んでくることについて、地方側の賛同も十分得られるというふうにお考えだということですか。
〇本間会長
これは、今日ちょっと申し上げた部分にも関係するのですけれども、もともと償却を現実のグローバルスタンダードに合わせると、資本が古いものから新しいものに転換されるという、資本コストの軽減を通じてそういう効果があらわれてくるわけです。したがって地方の活性化という観点の見直しの点で言えば、地方は歓迎すべきことであって、古い残存資本にすがりついて税収だけを取りたいという後ろ向きの発想は、我々の目的からすると、本来はちょっと違うのではないかというのが一方に存在するわけです。
したがって、そこを短期的な税収のロスと考えるのか、将来の税収を生み出す契機とするのか、ここはしっかりと地方が、戦略的に首長さんあたりがどのように考えるか。ここは私は、将来への布石にもかかわってくるのではないかと思っています。これは私ですけれども、主査はまた違った考えかもわかりません。
〇質問
お二人にお聞きしたいのですけれども、今日の議論を踏まえて、まず、減価償却の残存価値のところについてはほぼ合意が得られたというお話だったと思いますが、それは答申にそういうふうに書き込むと理解していいのか。
それと、先ほどから出ている地方の部分の固定資産税の扱いを、残存価値を撤廃すれば、100%の組入れにすれば、当然、来年から固定資産税の課税の仕方の問題が出てくるわけですから、そこの部分はどういう答申の姿になるのでしょうか。そこも手当を、ある程度言及しなければいけないのではないかと思うのですが、その点をお聞かせください。
〇田近主査
ご質問は2つですね。減価償却部分についてどう書き込むのかということと固定資産税。減価償却と固定資産税にかかわる部分で、ご説明しているように減価償却自身のあり方については、減価償却可能限度額、残存価値の議論も含めてそれは見直していこうというのは、方向性としてこれだけ議論したのですから、これから起草委員会でいろいろ出るのだろうなと。
固定資産税については、私も不首尾で、今日こんなに盛り上がるとは思わなかったので、そこは、今、会長がお話しされたような視点もあるし、また、地方のほうは当事者ですから、当然、現状を改革しないでくれという意見もあるので、これはもう少し議論が要るのかなというのが私の感じです。これから全体の議論になりますけれども。
〇本間会長
今、主査が発言されたように、我々、これはもう少し詰めなければいけないと思っております。暫定的に起草メンバーが文章化をして、それを受けてまたご議論いただきながら最終的にまとめていく、こういうやり方になると思います。
〇質問
減価償却については、今日は、残存価値の償却可能限度額のあたりしか議論が出なかったように思うのですが、一部、法定耐用年数の区分の問題もちらっと出ていました。今いろいろ言われているのは、法定耐用年数の短縮化という視点もわりと強く出ていると思います。それと区分の問題ですね。それをどの辺まで……。
〇田近主査
それは、今ちょうど調査しているところだという情報を私も入れてもらっていますから、その暫定的な調査結果、数字は忘れましたけれども、総数の3分の1かそれぐらいの回答があったということで。ただ、それはそれまで、それだけの会社のいろいろな資産の平均利用年数と耐用年数が長い短いということは多少議論があったので、耐用年数をどうするかというのも含めてこれからの議論だと思います。「これから」というのは、この12月に耐用年数の話がまとまるとは現実的には私は思えませんけれども。
〇本間会長
今、田近主査の言ったとおり、償却制度全体の問題は来年以降にも残ると私自身は思っていますし、その余韻を残すような書きぶりにしたい、こう考えております。
〇質問
法人実効税率の見直しについて、会長はテレビなどでいろいろご自身のお考えを話されていますけれども、今日はほとんど議論されなかったという状況だと思うんですね。これを19年度の答申にどういう形で取り扱うかということについて教えてください。
〇本間会長
これは私からお答えします。第1回目のグループ・ディスカッションでも、法人実効税率の問題というのは、かなり皆さんが国際標準との関係の中で議論をしました。今日も最後のところで、法人実効税率の問題について、消費税と結びつけろというようなご議論もありましたけれども、皆さんがこの実効税率の問題についてかなり関心を持っていらっしゃるということでございます。中長期的な目標としての実効税率の問題は、実行は来年以降の問題になるとは思いますけれども、そこの今の皆さんの意見をどのような表現ぶりにしていくかというのは、これから少し詰めてみたいと思っております。この点について、反対のご議論もないということでございますので、やはり触れなければならないテーマだという具合に思っております。
〇質問
今日のメインの議論とはちょっと別の部分で、冒頭のところで、例の証券税制について、不必要な攪乱にならないように今から検討を深めてほしい等、会長からご指示を出されていました。これは、先日の議論以降、株価が下がっておりますが、何かそこら辺に配慮してのものなのでしょうか。その辺についてお考えを。
〇本間会長
今日の日経新聞でしたか、編集委員の方が、議論をし始めて税調が見直していく方向を打ち出したそれ以降、中長期的な投資がピタッと止まったというような書きぶりがございましたけれども、そういう懸念も一部には存在するのだろうなと。そのことが直接的な契機かどうかということはわかりませんけれども、この見直しに際しては、できる限り我々が攪乱要因になることは避けるべきだろうと思っています。
私は今日改めて申し上げた部分は、一つは、今の段階というのが、来期の企業収益の見直しをしていないということもあって、かなり控えめな状況が株式市場に対して悪い材料になっているとか、あるいは、月例の報告の中で景気の表現ぶりが少しトーンダウンするのではないかと、こういうような議論がございます。その上で我々がこれに追い打ちをかけるようなことはできるだけ避けたいと思っておりまして、方向性としての筋の問題と、そして、移行期における混乱という部分についての配慮をどのように両立させるかということだろうと思います。
その点でいわゆる実務のレベル、証券会社等も含めて、そういう人々が市場あるいは投資家に対して、スムーズなソフトランディングができる手法というものがあり得るかどうか、あるとすればどんなものかということを検討してくれと、こういうことで申し上げたということであります。
〇質問
会長にお聞きしたいのですが、今の確認で、この前の会見の際には証券税制のところで、中里さんでしたか、基本的にみんな撤廃すべきだという意見だったので、答申にもそういう方向でやるという話があって、会長もそれとほぼ同じことをおっしゃったわけですけれども、今日の発言ぶりを聞いていると、少し修正されるのかなという気もしたのですが、それはその方向性自体を修正するのか。それとも、大まかな方向として撤廃というところは変わらないけれども、その撤廃と言ったときに何らかの軽減措置みたいなことを入れるべきだと、そういうふうに思っているのか、そのどっちなのでしょうか。
〇本間会長
明らかに後者であります。どういうソフトランディングができるような知恵があるかどうかということ、実務上の対応の部分のところについて、今しっかりと検討しておこう、こういうことであります。
〇質問
例えばどんなことを想定されているのでしょうか。
〇本間会長
今、「知恵を出せ」ということを申し上げているのも、これからの議論の中で、事務方も含めて提案するということではないかと思っておりますし、もう一つ、「貯蓄から投資へ」の部分をどういう具合に評価するかということ。今日は、「経済財政白書」、皆さんお聞きのとおり内閣府も紹介したというようなこともございますので、その辺のところについて、今の段階の中では思い切ってエイヤッということではなくて、しっかりと検討を深めていこう、こういうことであります。
〇質問
もう1点、法人の実効税率の部分ですけれども、みんなそういう議論を持っていて反対もないので、触れないといけないテーマだと思っていると。方向性をある程度示したいということかなというふうに思うのですが、どんなイメージを考えていらっしゃるのでしょうか。
〇本間会長
いえ、まだ特段ペーパーにもまとめていませんし、今日のお話を伺いながら、中長期にどういう具合につなげるのか、来年以降の議論にどうつなげるのかということが頭をよぎっていると。こういうことで、まだ具体的には何も詰めておりません。
〇質問
その場合に、今日も議論で出ていましたけれども、消費税とかそういうところ--例えば法人実効税率が欧州並みなら消費税も欧州並みとしたほうが、議論としてしっかりするのではないかという委員からの指摘もありましたけれども、そういうことも考えるのか。それとも経済活性化というほうに絞るのか、どちらでしょうか。
〇本間会長
今日の幸田委員のご指摘はそのポイントだったと思いますが、今の段階で、消費税と、あるいはほかの税目との総合的な整理ということは、全くこれまで議論してこなかったわけで、私は、幸田委員の発言は、来年以降しっかりそういうことをやるべきだと、こういう具合に理解をしました。今年の段階では、成長とイノベーションという観点の中で、法人税の部分についての中長期的な課題みたいなものをどのように答申の中に表現するか、ということをこれから田近主査等とも相談しながらやっていきたい、こういうことであります。
〇質問
その点で会話の最後でも会長はおっしゃっていましたけれども、内閣の方向と違わないように、齟齬が出ないようにしたいということをおっしゃっていましたが、この点についての官邸の意向というか、安倍総理の意向というのはどうなっているのでしょうか。
〇本間会長
まだ総理と接触を持ち得ておりません。ただ、審議の過程で、最終局面に至るまで一度、官邸のご意向というようなものをお聞きした上で、我々が筋としてどのような税制改革の答申を今年度まとめるか、こういうことになろうかと思います。
〇質問
重ねて恐縮ですけれども、固定資産税の問題です。国税の場合は費用負担の問題で、地方税となると応益負担の問題だと。ちょっと性格が違うのではないかということを総務省などは主張していると思うのですが、今日の会合で、基本的に国税と地方税が違う位置づけだという点では認識は一致したのですか。それとも、それも含めてまだ詰める必要があるということなのでしょうか。
〇田近主査
個人的にどこまで集約していいかわかりませんけれども、それを含めて議論すべきではないか。というのは、今回の減価償却の改正が、租税特別措置法的な特別償却とかではなくて、本則にかかわる改正なわけです。したがって、法人二税のほうは伴って当然変わるわけでしょうけれども、それに対して固定資産税、つまり償却資産の資産評価額をどうするかというのは別個の問題であり得るのか、あるいは減価償却と関係づけられるのか。たまたま今の制度があたかも法人税法と関係づけられているから議論されているのですけれども、一つの考え方としては、本則が変わるのだからそれはあり得るではないかと。もう一つは、そうではないと。地方については本間会長からその考え方についてコメントがあったわけですけれども、私は、考え方自身としては2つあるのだろうなと思います。だからそこは、この段階ではどちらになるということは言いかねると思います。
〇質問
今の関連で固定資産のところ、繰り返しの質問になるのですが、会合の中で聞いていると、わりと経済界の代表なども、ある程度固定資産税を払うのは構わないというようなニュアンスも強かったかのように受けとめました。その会合を聞いていると、税理論としてどう分けるかという疑問は残っていても、地方の側の固定資産の税収を減らすところまでやらないほうがいいようなニュアンスが強かったように受けたのですけれども、その辺の受けとめはお二人はどうだったのでしょうか。
〇田近主査
私はそうは受けなかったですね。最後に大橋委員がその点について釘を刺していましたね。だからビジネスのほうで、おそらくまだそこの考えは整っていないというか、合わせていないような気はしました。この問題は重要な問題だということは私も認識し、会長も認識しましたけれども、今日、ここでこれ以上議論してもこれ以上深めることはできないと思います。
〇本間会長
私は、償却もそうですけれども、土地や家屋等も含めて評価という問題があって、これで国税と地方税全部ゴーイング・マイ・ウェーで独立して行くのかと。皆さん、例えばバブルのときに「一物四価」とかいろいろな形で議論がなったわけですね。しかも、地域間の格差というのは非常に大きくて、実効税率というのが固定資産税で今でもかなりばらつきがあるわけです。だから、それを助長するような方向でずっと行くのかねというのが実は私の頭の中にあるわけで、そこは本当に今年だけで、議論を詰めずにいいのかなというのが私の発言につながったという具合にご理解いただきたいと思います。
〇質問
今日、大田大臣が、次の諮問会議に税調会長を臨時議員としてお招きしたいという趣旨のことをおっしゃったのですけれども、2002年の秋以来になると思いますが、税調会長が諮問会議に出席することの意義について、改めてお伺いしたいのですが。
〇本間会長
安倍政権の中で両方とも諮問機関として位置づけられているわけですね。その両者があまりにも自立性を保ちながら議論するのは、私は生産的ではないという具合に思っております。今回、臨時議員として来いということでございますので、お伺いして、今の審議の状況について私から説明させていだだきたいと思っております。
それに対してまた民間議員からペーパーが出てくるだろうと予想いたしておりまして、その考え方等についても議論のやり取りがあるだろうと思いますが、私は実は、大臣あるいは4民間議員の考え方というのは、それほど今の税調のメンバーと乖離しているとも思っておりませんので、しっかりとした意見交換をしながら、我々が言うべきことについては今後もしっかり言いたいという具合に思っております。
〇司会
よろしいでしょうか。
それでは、これで記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。
〇本間会長
どうもありがとうございました。(了)