グループ・ディスカッション(第1回)後の本間会長・井堀主査記者会見録
日時:平成18年11月14日(火)16時34分~
場所:合同庁舎4号館共用第一特別会議室
〇司会
それでは、税制調査会第1回グループ・ディスカッション終了後の記者会見を行いたいと思います。
まず最初に、井堀主査から説明をお願いいたします。
〇井堀主査
今日の会合は公開されていたので、詳細な内容については省略いたしますけれども、皆さんお聞きになっていたように、証券税制の優遇措置に関しては、10%の優遇措置を期限とともに廃止して本則の20%に戻すべきであるという意見が多かったと思います。ですからそれを受けて、今後の答申もそれを反映した形になると思います。
その理由づけについてはいろいろな議論があったと思いますけれども、それを整理して、それから、単に本則に戻すということではなくて、金融所得課税一体化の議論と併せて、今後の金融所得に対してどういった形で税を取るのか、貯蓄から投資への資金の流れを加速させる、あるいは成長戦略という基本的な方針との整合性も含めてこれから議論していくことになると思います。
それ以外の論点で特に今回話題になったのが、住民税の見直し、課税ベースの拡大、あるいは均等割の充実等の話、住民税が地方税の基幹税としてきちんと位置づけるべきであるという議論が多かったと思います。その他、細かい点はあると思いますけれども、大きな点はその2つかなと思います。
こちらからは以上ですけれども、何か質問等があればお答えしたいと思います。
〇司会
それでは、質問のある方は挙手にてお願いいたします。それから、井堀主査ですけれども、この後の日程の都合上、17時頃には退席する必要がございますので、あらかじめご了承をお願いしたいと思います。ですから、できるだけ井堀主査への質問を前倒しで行っていただければと思います。
〇質問
会長に3点ほど質問があります。まず、会合の冒頭で会長がおっしゃっていた情報公開のところ、今回見直した狙いが何なのかということがまず1点。
2点目は、今、井堀さんの説明にもありましたけれども、今日の証券税制の議論では、ほとんどの意見として本則に戻すべきだという意見だったように思います。先ほどの報告にもありましたけれども、政府税調の答申でこれは廃止ということを答申することになると理解していいのか、その確認です。
3点目ですが、法人税の実効税率の問題で、昨日、経団連の御手洗会長が今年度にもその道筋をつけてほしいと。30%という税率のメドも示して、今年度にも少し盛り込んでほしいという話をされていますけれども、これまでの例えば大田大臣ですとか、本間会長のお話だと、今年については拙速にやらずに来年以降議論したいというお話でしたが、その考えに変わりはないか。
この3点をお願いします。
〇本間会長
情報公開については、私どもは前の税調に比べて情報公開を後ろ向きにしたというイメージはなかったのですが、会合の言葉遣いが変化したわけです。企画会合でありますとか、グループ・ディスカッションとか。グループ・ディスカッションは全員が出席するという形にはなっておりませんので、小委員会的な扱いのイメージの中で、我々はあまり深く考えもせずに、最初の会合のときにプレスの方々がたくさん入っているとびっくりするかなという感じもありましたので、私は、正直言えば深く考えずに前回はプレスの皆様に遠慮していただいたと。
しかし、その後、オガタさんも含めてご指摘がございましたし、そう言われてみると、新しい税調が情報公開という点で後退したというイメージはふさわしくないということで事務方と私が相談をして、改めるに遅きはいけませんので、素早く対応した。こういう具合に理解していただければと思います。
2番目の証券税制の問題はたしかにいろいろ議論がございましたが、方向性としては金融一体課税という流れが強かったと思います。ただ、それを断定的に書くかどうかという問題はこれからまた調整しなければいけない局面が出てくると思いますので、今日は、今、井堀主査が説明しましたとおり、方向性としてその方向が強く打ち出されたと。今後、タイミングも含めて議論すべき部分のところをきちんと整理した上で、答申の中にどのように表現するかということは、今後、我々は起草チームなどもつくってやりますので、その辺を踏まえた上で全体会議の中にかけたいと思っております。
それから、最後の部分はまだグループ・ディスカッションもしておりません。各委員がどういう意見を持っているのかということがございますので、この議論を踏まえた上で考えたいと思います。私自身の考え方は、今の段階でさらに表明するというのは適当ではないと思いますので、グループ・ディスカッションのゆくえを見ながらきちんとした合理的な答申に結びつけたい、こういうように思っています。
〇質問
証券税制の今の軽減税率を撤廃すべきだという点については、撤廃すべきという方向で行くというふうに理解していいのでしょうか。先ほど、一体課税のほうをおっしゃっていました。まあ、表裏一体の部分ですけれども。
〇本間会長
これは、今、井堀主査が説明しましたとおり、全体のトーンとしては委員の皆様はその方向性が妥当だと。しかし、それに向けての説明ぶりであるとか、あるいは今後の取り組まなければならない課題というものはきちんと書いて、例えば二重課税の問題をどう考えるのかとか、いろいろなことを技術的にも来年以降の税制改革論議の中でも深堀りをしていく、こういうことだろうと思っています。
〇質問
もう1点、実効税率のところで、本間会長はいろいろなインタビューとかの席で、これまでは個人の考えとしながら、今回についてはまだ議論はしていないけれども、拙速にやるべきではないのではないかというお話。前回の会見でもされていたと思いますけれども、その考えに変わりがないのか。それとも、少し様子を見る必要があるというふうに考えがちょっと変わってきていらっしゃるのか、それはどっちでしょうか。
〇本間会長
基本的には変わっておりませんで、法人実効税率というのは国際的なスタンダードに合わせていくという方向性は変わらないと思っています。いずれにしてもこれは、グループ・ディスカッションで皆さんがどういう意見を述べられるのか、今日の議論を聞いておりましても、皆さん、かなりレベルの高いご議論をされておりますので、その辺のところについては私は安心いたしておりますけれども。
〇質問
議論の時期についての個人的なお考えは変わりないと。
〇本間会長
これは、1カ月ですぐに結論を出すことは、私個人としては無理だろうという具合に思っておりまして、来年以降の本格的な課題の中できちんとした議論をしたい、こういう具合に思っています。ただ、委員の大方が、法人実効税率を今年やれというような議論が出てくれば、そのときにはいろいろ判断をしなければいけない要素になるのではないかと思っています。
〇司会
ほかにございますでしょうか。
〇質問
今日の議論の中で、いわゆる金融の一体課税の議論もさまざまな意見が出ていたかと思います。例えば、どういうものとどういうものを相殺できるようにするとか、あるいは時期とか、その辺のイメージがいまひとつ明確になっていないような気がするのですけれども、その辺のところも同時にメッセージとして打ち出すべきだという意見もあったかと思います。このあたりのお考えを井堀さんと本間さんにお願いします。
〇井堀委員
今日の議論は、多くの方が、金融一体課税でどの所得をどういう範囲で相殺するかに関して一致した意見があったわけではないのは確かです。ただ、「貯蓄から投資へ」の流れの中で本則に戻すときの一つの説明として、金融所得一体課税の中で、配当や譲渡益とその他の利子等の所得を相殺できるようにすることで、よりリスク資産のヘッジを、税制上、今よりも行えるようにする、そういう方向性で議論された方も何人かおられたと思いますし、それについては、特にそうではなくて、相殺の範囲を限定して要するに20%にするだけで終わりという意見はあまりなかったと思います。20%にする以上は、それが政策的に、特に株式市場あるいは証券市場に与える効果を考慮してきちんと考えるべきだという意見が多かったと思います。
具体的にその範囲とか時期については、それほど多くの方がどうすべきだということを述べられておられなかったので、それも含めて、起草段階、あるいはその前にグループ会合を踏まえたあとで、もう一度、委員全体の議論もありますので、そのあたりで詰めていければいいなと思っております。
〇本間会長
今日は、何人かの委員からわりと理論的な整理がこの問題について出されたわけですけれども、ご承知のとおり、金融性所得を勤労性所得と区分すべきだという考え方は二重課税論を出発にしているわけです。原始的なオリジナルな稼得のときに所得税を課税され、それが貯蓄されて収益を生み出したところでこれまた金融課税という形で課税される。したがって、金融課税の部分のところは二重課税を排除しておくことが必要で、そのことを二元的所得税論の一つの根拠にしているわけです。
その上で、金融性所得の中で資産の構成をどうするか、こういう問題が出てくるわけですけれども、利子でありますとか、配当でありますとか、その他のキャピタルゲインの問題等が出てきたときに、その中で一体どのような課税をしていくかということが、今、井堀主査から話が出ましたけれども、リスクの程度を一体どういう具合に考えるんだと。貯蓄から投資という考え方の背景には、リスクをなかなかとらない--日本人の特性なんていう言われ方をしますけれども、銀行に預けるパーセンテージが圧倒的に高いという現状の中で、投資的なところに振り向ける形での意図が一つあると同時に、リスクのとり方の問題として、金融性所得全体の中における扱いをどうするかと。
こういうことで議論が進んできておりますので、一つのやり方として、今、井堀主査が説明しましたとおり、損失相殺を一体どうするんだとか、長期保有と短期の問題をどうするんだとか、あるいは、これまでやってきた配当及びキャピタルゲイン課税の部分の軽減が、一体わが国のポートフォリオ、資産選択に対してどのような効果があったかとか、そういう問題はおそらくこれからの表現ぶり等々のご議論の中においても、考慮しなければならないテーマだと思っています。
ただ、方向性としてまず二元的所得税の考え方というものをはっきりして、中立的な税制を構想するという考え方がかなり明確に委員の方々から出たという具合に理解しておりますので、それを踏まえた上で理屈と現実の動きとを関係づけたい、こういう具合に思っています。
〇司会
ほかにいかがですか。
〇質問
委員の方から、前の税調から何を引き継ぐべきか、その方向性を示すべきであるという指摘がございましたけれども、本間会長はその辺をどう明確にしていかれるのかというのが1点。
それと証券優遇税制ですが、自民党の津島税制会長が「継続も視野にして慎重に判断すべきである」という発言をされております。この点につきまして、おふた方の今の考えをお聞かせください。
〇本間会長
前半の部分をまず私のほうから答えさせていただきたいと思いますが、わが国の税制改革というのは、シャウプ勧告以来、ご承知のとおり包括的所得税、総合課税論という形でずっと進んでまいりました。ところが、現実には貯蓄をしっかりプロモートして、そして投資に振り向けなければならないというようなこともありまして、早くから分離課税的な考え方が出てきたわけです。それは、10分類ぐらいにしてそれぞれの所得の中で控除を設けて、そして控除されたあとを合算する。いわばコンプロマイズ(妥協)された総合課税的な発想の中でやってきたわけです。
それは、現実の政策課題とのいわば妥協の産物であったわけですが、先ほど申し上げましたとおり、90年代から世界的に貯蓄が過小になって、投資の原資が少なくなってきていると、こういう考え方の中で、より明確に先ほどの二重課税論なども含めて貯蓄性所得について分けていく。そして、貯蓄を呼び込むような政策を世界的な潮流の中ではやってきました。
それを受けて税調の中でも、金融課税小委員会、これは私が小委員長を仰せつかってやりましたし、そのあとで金融小委員会は、奥野東大教授が小委員長になってまとめた部分はかなり二元的所得税に近い考え方を打ち出した。したがって、おそらくこれからも議論しなければいけないテーマになるのだと思いますが、理屈の上では我々はより明確な形で金融性所得というものを二元的な扱いの中で考えていくと。こういう方向性を現在の金融一体課税の中で示していくということに、理屈の上ではなってくるという具合に考えております。
2番目の問題、先ほどの津島党税調会長の話は、井堀主査から。
〇井堀主査
私は党税調と直接対応する立場ではないので、全く個人的な見解ということですけれども、最初の政府税調の総会で尾身財務大臣が党税調の立場を反映されたと思いますが、有権者の理解を得ないと税制改革というのは進まないという話をされて、特に選挙を意識された話をされたと思います。たしかに党のレベルだと有権者の理解というのは非常に重要なポイントになると思いますけれども、そのときに今回の金融税制の見直しという点からすると、今日、高木委員等がご指摘された格差論の観点から、配当あるいはキャピタルゲインの本則に戻すというのは、高額資産家にとっては負担が増えるけれども、一般庶民はそうではないと。格差論の観点からそれなりに有権者にアピールできるという点があると思います。
もう一つは、株式市場に与えるマイナスの効果というのが懸念される点としては大きいと思います。それがどのくらいあるのか。つまり株式市場で、10%を20%に戻すことによって配当やキャピタルゲインへの増税が、結果として、ようやく株価がある程度のところで安定化してきたものを冷やすおそれがあるのではないか。そこが一番心配されている点で、それが株式市場を越えて日本経済の景気回復のマイナスになるかもしれないと。そこが政治的には大きな論点だと思います。
これに関して本間会長も今日の会合で指摘されたように、実際にどの程度、例えば今までの軽減税率で、株価が下支え、あるいは上向きの方向に行った効果があるのかどうかをきちんと検証することが重要だと思います。それがどの程度あるのかどうかというのは、逆に言うと、本則に戻すことによってどの程度の効果が出てくるのかというのがデータとしてわかれば、それなりにマイナスの効果について議論ができる。
それからもう一つは、私が最後のほうでちょっと指摘した点ですけれども、暫定税率5年間と決まっていたわけですから、20%に戻すということをどの程度株式市場がコミットメントとして受け取っているのかどうかということだと思うのです。既に受け取っているとすれば、20%に戻したとしてもそれは既に株価には織り込み済みですから、それほどマイナスの影響はないと思います。ただ、まだ10%がずっと続くという具合に多くの投資家の方が思っていて、それを受けて与党のほうでコミットされているとすれば、それの予想が引っ繰り返ったときには多少のマイナスの効果が一時的に出る可能性はあります。それがどの程度パーマネントに続くかというのは、今までも軽減税率がどのくらい効いたのかと同じレベルで、これは検証の材料だと思います。
その意味で量的な話というのは、もう少しいろいろなデータ等を含めて議論すべきだと思いますけれども、流れとしては、単に増税するだけではなくて、金融一体化課税の方向に一歩進むということは、広い意味では投資家にとってはキャピタルゲインとロスが相殺できるわけですから、結果としてそんなに不利になることではないので、そういった長期的な金融所得税の改正の動きがきちんと投資家の方にアピールできれば、それほど大きなマイナスのショックはないのではないか。そういったところがうまくアピールできれば、時期はともかくとして、政府税調と党税調というのは、それなりに歩調を合わせる形でこれから政策的にはできるのではないかという期待はしております。
〇本間会長
今、井堀主査からもお答えしましたけれども、私、新聞報道を見る限り、今日の議論と本質的にバッティングするとは理解しておりません。方向性として、これを本則の20%にするということを津島党税調会長が否定しているという具合に私は感じておりません。
ただ、それをどのようなやり方で調整していくのかというところに、政治家としてのご判断があるのだろうと思います。我々、政府の税制調査会の委員としては皆さんのご意見を大事にしたいと思いますし、その上で、先ほど申しましたとおり留保条件というものを理屈の上できちんと整理した上でやるということでございますから、この点で大きな意見の乖離はないのではないか、こういう具合に考えています。
〇質問
そのマイナスの効果があるかもわからないということが、今後どのタイミングでわかり、もしわかった場合には逆の結論を答申に盛り込むということもあるわけですか。
〇本間会長
マイナスの効果というのが市場を攪乱するという意味でございますか。これは井堀主査がおっしゃったとおり、合理的な期待形成というわけですけれども、こういう特例、租税特別措置を設けたときに、それが継続するか否かということに関して、投資家がどのように先に織り込みながら投資行動をとっているか、こういう部分にかかわるわけですが、日本の場合には租特はほとんど継続されるという期待形成があり得る話であるわけです。多くの租特は廃止されずに継続されてきたという過去の部分がありますから、おそらく期待を込めてそういう具合に思っていらっしゃる方もいることは十分予想されますし、我々のように租税理論に立つ側からすると、特例措置は特例なんだから時限が来たらやめるべきだという割り切りをする、そういうタイプが委員に有識者という形で入っておりますから、そこの判断の部分をどのように考えていくかということになっていくのだろうと思います。
ただ、地合いの部分のところの懸念が、おそらく津島党税制会長の意識の背景にあるのではないかと私は見ておりますけれども、先ほど申し上げましたとおり、この点についてあと何回か議論する可能性がありますから、その表現ぶりについてはしっかりと議論を深めたいと思っています。
〇質問
一つは、一体課税を導入するときの条件です。これは井堀先生のほうが適任かと思いますが、たしか2、3年前に、中間整理で金融税制について税調がまとめられたときに「金融番号」という話があったと思うのです。納番の話もありますので、納番と金融番号の整理を現段階ではどのように考えていらっしゃるのか。まず、それが1点。
2点目は、二元的所得税論とおっしゃいますけれども、それを突き詰めると、結局、所得区分についてもこれから抜本的に見直していくことになるのでしょうか。去年だったか、サラリーマン増税のときに、実は隠れた所得区分の見直しというのもたしかやられたと思いますけれども、その流れで、今多様化している所得区分の整理・再編、これもやるおつもりなのでしょうか。
3点目ですけれども、二重課税論についてです。二重課税論を突き詰めていくと、じゃキャピタルゲイン非課税かということに最終的にはなり得ると思うのですけれども、そこの点についてのご見解。
以上、3点お願いします。
〇井堀委員
環境整備の点ですよね。これをどういった形で、実際に二元的所得税の方向に行くときにきちんと捕捉して--相殺するためにはいろいろな所得を捕捉する必要があるわけですけれども、それを納番の形でやるのか、あるいは、金融庁の今日の資料でもありましたけれども、特定口座の形でやるのかというのは今後の検討課題だろうと思います。番号制を付与するのも、強制的にやる場合と自発的にやる場合がもちろんありますし、既に証券に関しては特定口座がありますから、それを充実させる方向でやるとか、いろいろな方法があると思いますので、もしもこの方向で行くとすれば、それはこれから具体的に議論する形になると思います。
〇質問
そうすると、金融番号については必ずしも必要ないということですか。
〇井堀委員
いえ、必ずしも金融番号がなくてもやれる可能性はあり得る。これは特定口座の形でいけばやり得ると思います。それも含めて今後の検討課題だと思いますね、番号をどこまで入れるかどうも含めて。
それから、二元的所得税の所得区分も、今のままでいいのかどうかというのは、ご存じのように前回の税調でも所得の区分に関していろいろ議論しましたので、その延長線上かどうかはともかくとして、これも当然、来年1月以降の議論の中で取り上げる課題になると思います。ただ、どこまで行くかどうかわかりませんけどね。
それから配当の、要するに個人段階でするか法人段階でするか、二重課税の調整の問題ですけれども、これも非常に大きな問題ですが、理論的にここを詰めると、実際の二元的所得税とうまくかみ合わせるのはなかなか大変なところで、どういう理屈でここをどこまで割り切るかというのは今後の検討課題ということだと思います。
〇本間会長
今、井堀主査からお答えしましたけれども、この問題は、今の二元的所得税の問題と法人税と所得税の問題にもかかわってくる問題でございます。これをどのように理論的に整合化をしながら現実の税制を構想するかということは、来年に入ってからしっかりと、先ほどの所得区分の問題も含めて議論を整理して、現実の税制とのつなぎをどのように具体化していくかということも抜本的な税制改革論議の中でまとめる、こういう形で私個人はやりたいと思っております。
〇質問
1点だけ追加で、証券税制の軽減税率が相場に与えた影響を分析するというようなお話がありましたけれども、具体的にそれが可能なのかどうか。ご存じのとおり相場は、アメリカの経済動向とかアメリカの市場とか、そのときのいろいろな政治経済的な要素に左右されるはずで、軽減税率がどれくらい寄与したかというのを切り出すのは非常に難しいのではないか。恣意的になるのではないかと思うのですが、その辺はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
〇本間会長
先ほど私、本会議のところで申し上げたのは、絶対レベルの問題というよりも、資産全体の中に占めるポートフォリオの中で株式が一体どのような変遷をしているのかと。それが増すような形で効果があったのかどうか。各国とも、例えばドイツの税制改革あたりでもそこの部分が問題になるわけで、したがってそこをちょっとチェックしろと、こういう具合に申し上げたというふうに理解していただければと思います。そこはおそらく私の直観では、かなりプラスの効果があったのだろうと思っておりますが、国際的に見るとまだ十分ではないという見方もあり得るだろう、という予測のもとで言っているという具合にご理解いただきたいと思います。
〇質問
すみません、ちょっと話が変わるのですが、今日の議論の中で、今年切れる、例えば居住用財産の譲渡損失の損益通算とか繰越控除について、打ち切る場合は明確な理論づけをしてほしいという意見も出ましたけれども、会長としてはこの措置打ち切りについてどういう意見をお持ちか。また、そういう委員の考え方についてはどう思われますか。
〇本間会長
先ほどもちょっと皮肉っぽく、日本の租特は一回設けられると、ここらあたり実務の方々は、誰々先生がここら辺にあってなかなか見直しが進まないという、慣性の法則が働く部分があるわけですけれども、政府の税調は、やはり租特と言うからには、英語では“preferential tax treatment”といって差別的な扱いをするわけですから、それが効果があったかどうかというのはこれは検証しなければならないテーマで、今回、我々は実は時間がないわけであります。その点で、結論が出せる部分、明確にこれはもう効果の面でこうだというようなことがはっきりする場合には、やめるべき部分についてはやめて、全体の見直しについて、基礎的な勉強で、来年になって租特の問題について私は相当深堀りする必要性があるだろうと思っております。その辺の勉強もしっかりしようと思っていますので、今ご指摘の部分のところは、皆さんの意見をまちながら、政府の税調としてきちんとした理屈づけが出せる状況であれば明確なスタンスを打ち出したい、こういう具合に思っています。
〇司会
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、会見を終わりたいと思います。
〇本間会長
どうもありがとうございました。(了)