グループ・ディスカッション(第1回)議事録
日時:平成18年11月14日(火) 14時00分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇本間会長
それでは、時間がまいりましたので、ただ今からグループ・ディスカッションを開催いたします。お忙しい中をご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
最初に、本会議の公開について皆様にご報告いたしたいと思います。先日の会合で、本日開催のグループ・ディスカッションについては非公開といたしておりましたが、税制調査会の広報・広聴機能を高める観点から、従来の税制調査会での取扱いよりも、より透明性を高めることとし、総会と同様に公開することといたしました。したがいまして、早速本日から記者の方々に傍聴していただきたいと思っておりますので、ご了承をお願いいたしたいと思います。
税調の公開に関しましては、お手元に資料を配付しておりますので、ご参照くださいますようお願いいたします。
さて、本日から19年度の税制改正の個別テーマの審議に入ります。議論を充実させるための工夫として、議論に入る前に少し頭の整理を行いたいと考えております。
一つは、先週、総会及び企画会合でご議論等いただきましたが、これは答申をまとめていく際の蓄積として活用したいと考えております。議論の内容は、答申をイメージした場合、答申全体の基本的な考え方を述べる、いわば総論部分にあたるものが多いのではないかと考えておりますが、個別論の議論をする際にも頭においておくことが有用であると考えております。事務局にまとめさせましたので、まずこれを報告させたいと思います。おさらいを兼ねてお聞きください。
もう一つは、議論に際して、税制を含む財政全体について、これまでの状況と今後の政府内での方針がどうなっているかを、個別論を議論する際のベースとして皆様と共有することが重要であると考えております。これは私からあとで報告させていただきたいと思います。
それでは、これまでの議論のまとめについて、事務局より報告させていただきます。内閣府・別府企画調整課長からお願いいたします。
〇別府内閣府企画調整課長
お手元の「税制調査会 第1回総会及び企画会合の概要(未定稿)」としてあります資料をご覧ください。
大きく、議論の中で1点目といたしまして、税制調査会の運営についてのご議論がございました。その中で第1点は、透明性の向上、国民にわかりやすい説明に関するものでございます。税制改正プロセスの透明性を高め、客観的な調査・分析を踏まえ、国民にわかりやすい説明を行うことが重要というご意見。税制論議にあたっては広報広聴機能の充実が重要というご意見。
2点目としまして、調査・分析機能の強化に関するご意見がございました。税制と経済・財政の関係、例えば企業の収益向上が個人にどう帰着するかなど、マクロ・ミクロ両面にわたる分析が必要というご意見。研究の蓄積、ミクロの分析も活かし、データに基づいた論理的議論をする必要があるというご意見。経済活性化によって、高齢者や現役世代など各層にどのような影響があるかなどについての分析が必要というご意見がございました。
あと、広範な議論が必要というご意見がございました。税制調査会は、社会保障制度をはじめ、関係する諸制度についても広範な議論を行うべきというご意見。個別の税目の議論だけではなく、経済社会の変化に応じ、有機的かつ大胆に税制全般の見直しを行うことが必要というご意見がございました。
大きく2番目として、議論にあたっての視点。その中で、基本的な考え方に関するご意見がいろいろございました。一つは、「成長なくして財政再建なし」との理念のもと、経済を活性化し、成長を持続させていくことが重要というご意見。ページをめくりまして、財政規律の維持は重要。経済成長は財政再建の必要条件であり、財政再建についても正面から議論すべきというご意見。税制は国家としての方向性を示すものであり、目指すべき目標を明確にし、しっかりとした課税哲学を持って議論を行うことが必要というご意見。税制の議論では、効率と公平の価値基準をいかに融合させるかが重要。また、部分だけを見るのではなく、税体系全体を見る必要というご意見。税制の議論をするにあたっては、歳出削減を徹底するとともに、その取組みを国民にわかりやすく示す必要。
また、個別の意見といたしましては、グローバル化、少子高齢化、さまざまな資源の制約といった与件の下で税制をバランスよく議論する必要。資源、環境といった制約の下で、長期的な持続可能性を維持できる税制を考える必要。できるだけ国民に近いところで政策決定がなされるよう、歳出や税制のあり方を検討すべき。少子化問題への対応や、生活現場が元気になるような税制が重要。子育て支援として、税と児童手当では効果が違う。少子化対策として税で何をするのかを考える必要。
また、大きく3つ目といたしまして、経済活性化に向けた税制上の取組みに関するご意見がございました。その中で経済成長と税制につきましては、国内の企業業績は決して楽観視できず、中小企業も含めた企業の活力を向上させ、イノベーションを促進させる税制のあり方について検討が必要。
税収との関係では、経済成長に伴う税収増を財政再建やさらなる経済成長にどのようにフィードバックしていくかを議論すべき。景気変動、制度改正などによるこれまでの税収の変化の要因を分析するとともに、税収動向も踏まえて議論すべき。
法人課税が個人に与える影響につきましては、経済が活性化することによって現役世代や高齢者など、国民各層にどのようなメリットがあるのかを示すことが必要。経済の停滞は低所得者ほど大きなしわ寄せがあり、国際競争力の強化は低所得者のためにも必要。法人税の税制上の位置づけや存在意義を踏まえて議論することが必要。経済成長重視により格差が拡大しないようにすることが必要。労働分配率や付加価値配分の状況、パートや派遣の拡大などの影響も分析することが必要。国民に景気回復の実感がない中で、法人税に優遇措置を行う一方で、選挙後に消費税を上げるとすると、国民の納得が得られるのか。また、総人口の変化だけでなく、団塊の世代の退職など人口構成の変化が消費や企業経営に与える影響も考慮することが必要。
法人所得課税の実効税率等につきましては、法人課税の国際比較にあたっては、実効税率だけでなく、国民所得比、社会保険料負担、実際に企業が払う税額などさまざまな角度からの分析が必要。地方法人課税や固定資産税(償却資産)については、受益と負担の関係等、地方税としての性格を踏まえた検討が必要。国際比較にあたっては、欧米だけでなく、競争相手となっているアジア諸国との比較について、その是非も含め検討が必要--というようにまとめさせていただきました。
以上でございます。
〇本間会長
どうもありがとうございます。これをお手元に置いていただきながら、今後の議論の中でさらに活用していただきたい。これを拡充するような形で方針のほうに活用させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、今、政府全体の中でどのような議論が進行しているのか、それとのかかわりの中で税制改革をどのように位置づけていくかという点を、簡単に私から説明させていただきたいと思います。
お手元に4枚ものの資料を配らせていただいていると思います。「成長力・競争力強化」、「財政健全化」、そして「成長なくして日本の将来なし」という3枚ものと、「国・地方の財政状況」ということで絵をつけた資料をお手元に置いていただきながら話を聞いていただければと思います。
まず、絵のほうを見ていただきたいと思います。2001年、小泉構造改革がスタートいたしましてから現在までの歳出・歳入及び基礎的財政収支が上の図の左側に描かれています。我々がこれから税制改革を議論する際には2011年のプライマリーバランスの黒字化を踏まえながら税制を議論する、こういう構図になっております。
その前提条件でございますけれども、歳出・歳入の動き、基礎的財政収支の動きというのは、今後、成長力、成長率がいかに推移するかということが一つ大きなポイントでございまして、とりわけ、歳入に対して成長率の推移が大きく影響を及ぼすだろう。昨今の経済の回復局面の中で、税収、特に法人税の動きが堅い動きを示しているわけですが、これを想定しながら2011年までにどのくらい歳入が伸びていくかどうか。さらには歳出、これは高齢化等の要素もございまして、自然体で放置すれば歳出は拡大するわけでありますが、そこからどれだけ歳出を削減することができるかどうか、こういうことが問題になります。
ご承知のとおり、「基本方針2006」をまとめる際に党の側のご努力、ご協力によりまして、それに対する一つの案が出てきております。一つの案と申しますのが、実はお手元に「財政健全化-歳出・歳入一体改革」という2枚目に掲げられているものでございます。この財政健全化第II期のフェーズが2006年から2011年でございますけれども、自然体で伸びていった段階から、ふた通り、つまり最大限で14兆3,000億円、最低限で11兆4,000億円の削減をする。こういう歳出・歳入一体改革の内容が7月7日の「基本方針」の中に盛り込まれたということであります。人件費、公共投資、社会保障、その他の分野、こういうことで中身が精査され、そして幅を持って削減額が描かれたということであります。
これを前提にしますと、最後の基礎的財政収支の動きが、プライマリーバランスの黒字化という点でどれだけ歳出削減に埋め合わせることができるかということが、第II期における下の図の矢印の幅を持って描かれているところであります。
したがって、ゼロに持っていく、黒字化をすることと歳出削減幅と成長率の想定をどのようにするか、このような3点セットで今後の議論をしなければいけない、こういうことであります。我々としては、しっかりと歳出削減をしてほしいということと、成長力、競争力というものを税制改正の中でどのように活用していくのか。こういう問題と、それから制度的な形で増減税をどのように組み合わせていくのか、こういうことが問題になってまいります。
なお、絵の真ん中ぐらいに、2002年から2006年度の基礎的財政収支の改善内容について整理をいたしております。プライマリーバランスの改善で15兆3,000億円の効果を示しているわけですが、その中で6兆3,000億円が歳出削減によるものである。そして歳入は9兆円の貢献をしている。そのうち制度増収について1兆4,000億円である。非常に細かい注で恐縮ですけれども、それぞれの項目については注のところで描いているということであります。
参考に経済成長率を掲げてあります。ご承知のとおり2006年のクロスする状況は、名目成長率と実質成長率が逆転することを政策目標の一つの目指すところとしているわけでありますが、今後、名目成長率が実質成長率を上回る形で推移していくことを目指しながら、名目成長率をどのような形で3から4%のレンジぐらいの中で議論をするか。このような枠組みになっていることをご理解いただきたいと思っております。
3枚目の「成長なくして日本の将来なし」、あるいは「創造と成長」のための7大重点改革分野というのは経済財政諮問会議で議論されたところであります。このような重点改革の分野の中で4番目に、エースということでしょうか、4番バッターで税制改革というものが入っております。この点でしっかり議論をしなければならないと考えております。
以上が、私からの報告でございます。
なお、税収の制度減税等の問題、税制改正がどのように2001年から2006年の間で変化してきたかという影響額については事務局から後ほど、より詳細に説明をさせたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
さて、これから井堀委員の議事進行でご議論いただきますが、答申策定に向け限られた時間で充実した議論とするため、まず、来年度期限を迎える大きな問題として金融証券税制について、集中的に議論をお願いしたいと考えております。
なお、本日のテーマである「国民生活関連」ということで見ると、金融証券税制以外にもさまざまな項目があります。これらについての主な項目は事務方より簡単に紹介してもらうことにしておりますので、その際、ご意見があればご自由にご発言をいただきたいと思います。
それでは、井堀委員、よろしくお願いいたします。
〇井堀主査
それでは、本間会長からご指名をいただきましたので、これから私のほうで議事進行をさせていただきます。
本日の議題ですけれども、お手元の議事予定にありますとおり、「国民生活関連」ということを中心に、特に金融証券税制を中心に議論したいと思います。議論の状況によっては、若干の時間の延長もあり得ますことをご承知おきください。
最初に、ただ今会長からもお話がありましたが、本日の議論に入る前に、前回の会合で委員から幾つかの質問がございましたので、事務局から簡単に説明していただきたいと思います。
〇永長主税局総務課長
お手元の「補足説明資料」という横の冊子がございます。これをお開きいただきたいと思います。
表紙をめくっていただきまして1ページ目でございます。対前年度増減収額の要因分析ということでございまして、前回のご指摘を踏まえてつくったものです。平成2年度の税収のピークから始まりまして、平成3年度以降、税収の実績でございます。例えば2年~3年度にかけてどれくらい減ったり増えたりしたか、この実績の年度ごとの増減、それが全体の棒の長さでございます。それを2つに分けておりまして、制度改正要因が白抜きの棒でございます。それ以外、いわゆる経済情勢の推移等によるもの、それが黒塗りになっている棒でございます。それをネットアウトしたものが菱形の白、この数字を折線グラフでつないでございます。
ざっとご覧いただきますと、大きな減税をしました。例えば平成6年度、平成9年度には消費税の税率が上がりました。平成11年度は例の定率減税等を行った。こういう制度改正要因が大きく見えます。
しかし、やはり目立ちますのは黒いバーでございまして、いわゆるバブル税収がはがれたり、その後の資産デフレがあったりということで、この黒いバーが上に行ったり下に行ったりしている。幸いなことに足元は、制度改正要因を除いたその他の要因、いわゆる経済動向に基づく増収が結構出ている、こういうことでございます。
次のページでございますが、ただ今ご覧いただきました制度改正部分、税制改正部分とそれ以外の要素、これを各税目ごとに分けたものでございます。特に整理の関係上、バブル税収があらかたはがれ落ちまして、さらに消費税率の引上げがあった、この平成9年を基準に細かに分析しております。
平成2年度の決算、一番左の棒でございますが、60.1兆円、これがピークの税収でございます。その後7年たちまして9年度決算、これがトータルで53.9兆円ということで、その差額が6.2兆円ございます。下に細かな字で恐縮でございますが、税制改正を行った結果、ネット増の0.4兆円、その他の事情、これで6.6兆円。これを差し引きまして、四角に囲ってございます、6.2兆円という減収が2年から9年にわたって行われたわけでございます。
問題はそのあとでございます。平成9年から実績が出ております17年度決算、この数字との比較でございます。実は17年度までに1.1兆円分の税源移譲、これは国の税収ではなくて所得譲与税ということで地方に行く、そういったものがございますので、先に9年度決算から1.1兆円を差し引いて、9年度を税源移譲と仮定して置いた数字が参考というところでございまして、税源移譲後の姿で所得税、法人税それぞれどのように動いているかということを示しております。ちなみに18年度においてあと1.9兆円の税源移譲を行っていまして、トータルで3兆円になっているわけでございます。
右の文字のところをご覧いただきますと、増減収(合計)ということで、二重括弧で囲ってあるところでございます。3.8兆円、9年度予算から実力ベースで減収になっているということでございます。中身を分析いたしますと、税制改正によるものが5.1兆円。いわゆる5兆円の減税がこの間行われたということでございます。その他の要因はプラス1.3兆円、このようになってございます。
その下、所得税について、同じように税制改正部分で17年度ベースでは1.9兆円の減税が残っておりまして、その他の要素、これは資産デフレの影響等でございます。0.6兆円を足して所得税は2.5兆円の減収でございます。
法人税。税制改正、税率の引下げ等がございまして3.4兆円の減税。経済動向が戻ってきたということで3.2兆円のプラスということで、ネットにいたしますと、2,000億円の△、このようになっております。
消費税は、この間、税制改正で中小特例の見直し等を行っております。それによりまして1.4兆円のプラス。その他・経済動向等ということですが、若干の△になっております。これは足元の税収でもご説明しますが、例えば輸出が伸びる、設備投資が伸びる。これは仕入れ税額控除という形で、消費税の税収としては下がる方向に働くという要素がございます。
繰り返しになりますが、トータルで申しまして、9年の税源移譲後を想定した数字との比較で申しますと、3.8兆円の税収が現在は足りていない。その分、税制改正は5.1兆円、こういうことでございます。
次のページでございますが、制度改正要因を除きまして経済動向等による増減収、先ほど来出ておりますが、これを、若干やや長めに主要三税目ごとに示したものです。左上が所得税、その隣が法人税、消費税が下にあるわけでございます。
昭和50年からプロットしておりますが、所得税は大体は自然増収が出る構造になっております。これは当然、累進課税が行われているということですが、平成元年、2年あたりは株、土地のバブルで自然増収がかなり上がった。その後、それが急速にはげ落ちるということでございます。これまでの間、ずっと棒が下のほうに向いておりますが、これは全体の総収額、給与所得が名目時で伸び悩む、片方で資産デフレが続くということで自然減収が続く。実は、このように自然減収が続くことは今までわが国は経験しておりませんでした。足元、給与が持ち直す。さらにはここに配当収入というのが入ってまいりまして、足元は上のほうに突き出ている、こういう状況でございます。
次の法人税でございますが、これはある種、行ったり来たりということでございます。そのときどきの景気の良し悪しによりまして、どっと増えることもあれば下がることもある。そういう意味では往復しているということでございます。足元、15、16、17と、2兆円近い自然増収が3カ年続いております。
左下の消費税でございます。これはご覧いただきますように、基本的には大きな伸びもなければ大きなヘコみもないということで、上の2つの税に比べますと歳入構造としては極めて安定している、こういうことでございます。
以上が、17年度までの実績についてのご説明でございますが、次の4ページ、5ページは18年度、19年度についての状況でございます。
19年度の予算を今つくっているわけですが、その税収を見積もるためにもまずは18年度、いわゆる進行年度の税収をちゃんと見通さなければいけない、こうなるわけでございます。18年度の税収見積もり、これを我々は「土台」と呼んでおりますが、まずこれを固めた上で、来年度に向けてはこの12月に政府経済見通しが発表されます。そこの中で、例えば鉱工業生産とか、最終民間消費とか、そういう指数が発表されますので、その数字を掛け合わせて19年度を見積もる。土台をまず固めた上であとは経済消費を使う、このようになっているわけでございます。
そこで土台の18年度でございますが、この9月末税収、これが現在わかっております実績値でございます。4、5、6、7、8、9ということで半年分立っているわけですが、それぞれ、所得税、法人税、消費税、その他となっております。
所得税で申しますと、5兆5,000億円。目標である予算額に対する進捗割合が43.2%。対前年度の同期、同じ時点での比較ですが、87.9%。何だこれは減っている、ということですが、これは税源移譲を増やしておりますのでそのマイナスが効いてございます。その税源移譲によるものを除きますと、とんとんというところでございます。
次に法人税でございます。ふたが開いておりますのは真ん中の欄、11%でございます。法人税の見通しを、少なくとも進行年度についてどうするのかというのが大変見極めがたいところでございます。なぜかと申しますと、ふたが開いているのがまだ1割であるということです。あと9割の税収がどのようになるのかというのは、現時点ではまだ見通し、予想の範囲を出ないわけでございます。
対前年度比で120%と、いい数字が出ておりますが、今まで入っております税収は、その大宗は予定納税、すなわち去年納めた税金の半額を払う、こういう税金でございます。この120%というのはむしろ去年が一昨年よりも伸びた数字でございます。足元の勢いを指し示すものでは必ずしもございません。足元の勢いを示すのは、例えば我々は大法人に対していろいろ聞き取り調査をしたり、現在、3月期決算法人の中間決算が次々発表されています。今週末あたりがピークでございます。実際の中間決算の様子、こういったものを見ながらあと残り9割の予想を立てる作業をしているわけでございます。
消費税。ふたが開いておりますのは23.5%。対前年度比で96.8%と若干前年度よりも低い税収になっております。これは先ほど申しましたように輸出、設備投資が調子がいいものですから、税金の計算上は輸出、設備投資はマイナスに立つ、こういうことでございます。
繰り返しになりますが、特に法人税の見積もりがなかなか難しい。先ほど申しました実績もあるわけでございますが、下期に入ってくる税収をどう予想するか、こういう作業を現在しております。
次のページでございます。一般会計税収の予算額と決算額の推移でございます。一番左側の当初、これは当初予算における税収の見積もり。補正を出す場合には補正額。ここは、その進行年度でどれぐらい税金が入ってくるかというのを年末において見積もる作業をしたものでございます。その結果が補正後ですが、最後、年明けの夏に決まります決算額、これが実績。それが[3]の欄でございます。17年度でご覧いただきますと、44.0ということで当初予算を見積もっておりました。それに対して、17年度は補正を組みましたので3.0、足して47.0。こういう具合に見積もりを年末の段階でしたわけですが、ふたを開けたときにあと2兆円出ておりまして、49兆円余の税収が決算として出てきたわけでございます。
実際、18年度見積もりをする際に基礎となる17年度の税収の見積もり、これが47兆円でございました。それをベースに、ここにございます45.9という18年度の当初予算を見込みました。その後、17年度はあと2兆円足される。我々、土台増と呼んでおりますが、18年度当初予算を見積もる際には勘案できなかったプラスが2兆円あるということです。そういうことで、今、18年度の実績見積もりをやっていると先ほど申しました。その際にはこの2兆円が含まれる。18年度の当初予算では勘案しきれなかった要素、2兆円が入ってきます、こういうことでございます。それがこの注1でございます。
それから注の2でございますが、繰り返しになります、18年度の足元の土台をまず固めて、それに経済指標を掛け合わせる、こういう作業をするわけですが、それに加えまして、平成19年度におきましては定率減税の半減から廃止と、あと2分の1が残っています。そういったものがさらにオンされるということで、プラス1.2兆円が19年度の当初予算には含まれる。これが注2で書いてあるわけでございます。
次の6ページでございます。年度で出た自然増収を補正予算でどのように使っているのかというご下問がございました。それに対するものでございます。16年、17年と補正予算のフレームを掲げさせていただいております。補正予算の財源は、16年でご覧いただきますと、税収2.3兆円、16年度予算では補正増をいたしました。これが大きな補正予算の財源の一つでございます。さらに、その下の4ポツで、前年度からの剰余金、余り金ですが、これも財源になります。
さらに、歳出の欄に出てくるのでわかりにくいのですが、歳出の左側の下のほう、既定経費を節減するということで1兆円、こういったものが補正予算の財源になります。16年度におきましては約4.8兆円の財源が出ております。そこから地方に税収の一部、それから決算剰余金の一部、地方に回る分が歳出の欄の5ポツのところですが、約1.2兆円出ております。
それから歳出でございます。補正予算における歳出。16年は災害対策費、これは新潟中越地震の影響がございまして通年より多くなっております。1兆3,600億円。それから義務的経費の追加が9,500億円、こういったものを足しまして約2.3兆円ということで、いわゆる裁量的経費というものがここでは計上されておりません。残額はすべて、過去の借金の償還の財源に充てるという形になっております。
同じように17年度の補正ですが、右のほうでございます。財源は税収の3兆円、前年度からの剰余金が1兆6,000億円、既定経費の節減1兆4,000億円ほど。締めまして6兆円の財源が補正予算ではございました。
そのうち地方に対して約1.4兆円を渡しまして、歳出といたしましては、災害対策、義務的経費ということで約1.8兆円。残りは過去の借金の返済財源とか、特に17年度におきましては新規に発行する公債、右の歳入の3ポツでございますが、公債金を0.9兆円(9,000億円)減らす。新たに発行する借金を減らす、こういった努力をしているわけでございます。
〇星野主税局調査課長
前回、経済指標の関係で、賃金に関しまして労働分配率や付加価値配分の状況を見るべきではないか。それから雇用の関係で、パートや派遣の拡大などの影響を見るべきではないかというご意見がございまして、取り急ぎ、その関係のデータをお持ちいたしました。
7ページが、人件費の付加価値に占める割合、労働分配率の推移を見たものでございます。若干長めに全規模でとっているのが左側、最近5年間について中小と大企業に分けて示しているのが右側の表でございます。
次に8ページ、9ページでございますが、これは、人件費と利益処分につきましてそれぞれ最近5年間の推移を示したものでございます。
最後、10ページでございますが、これにつきましては雇用者数の推移ということで、一般労働者とパートタイム労働者に分けて対前年比の寄与度を示したものでございます。
以上でございます。
〇滝本自治税務局企画課長
「補足説明資料(地方税関係)」の1ページをお願いいたします。これは、地方税につきまして、平成3年度以降の対前年度増減収額の推移とその要因を見たのでございます。制度改正による増減収が多い年度としては、平成6年度の個人住民税の特別減税、平成9年度の地方消費税の実施、平成11年度の個人住民税の定率減税、あるいは法人関係税の税率引下げなどがあります。国税と概ね同じような増減収の推移を示しているところでございます。
なお、注の一番下にも書いてございますが、三位一体改革の一環として平成16年度、17年度には所得譲与税が別途ございます。
2ページをお願いいたします。これは、1ページの増減収額を個人住民税、法人二税別に見たものでございます。
3ページをお願いいたします。地方税の主な税目につきまして、その税収のピーク時と平成17年度の決算見込みを比べまして、中期的な税収の増減とその要因を分析したものです。そこに記載されているとおりでございます。
4ページをお願いいたします。これは、本年9月末現在の都道府県税収の状況を見たものでございます。9月末の収入額累計は8兆6,256億円となっています。地方財政計画に対する進捗割合は55.9%となっています。対前年同月比107.9%となっています。
5ページをお願いいたします。これは、地方税収の地方財政計画額と決算額の乖離を見たもので、平成13年度以降を記しております。計画額との増減額、右側に出ておりますが、主には法人二税の影響が大きいものでございます。
以上でございます。
〇井堀主査
補足説明に関して追加の質問があるかもしれませんが、時間の制約もありますので、本題に入りまして、その中で関連するところに関しては追加の質問をしていただければと思います。
それでは、本日の「国民生活関連」というテーマで、金融証券税制、個人住民税、納税環境整備及び国民生活に関連したその他の事項について、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〇宮内主税局税制第一課長
それでは、金融証券税制につきまして、お手元の「G・D1-4 金融証券税制」で説明をさせていただきます。
1ページをお開きください。何を議論しているか。本日のテーマを確認する意味で法律の規定のイメージをお話ししたいと思います。本則規定では「株式等の配当及び譲渡益に係る税率は、20%とする」と規定してございます。これに対しまして、平成14年度末の株価の下落や危機的な金融情勢を踏まえまして時限的な特例規定が設けられています。上場株式について5年間だけ10%とする。譲渡益は19年末まで、配当は19年度末まででございます。10%というのは国税と地方税を合わせた税率ですが、異例な低税率と考えられます。こういう規定なので、現行の条文のままであれば期限の到来によりまして自然に10%が20%になるわけです。ところが、金融庁あるいは証券界からは、10%優遇特例の継続措置を講じてほしいという要望がございます。これについてどう考えるかがテーマでございます。
このご議論をしていただくためにも、まず、2ページから5ページで、近年どんな考え方で金融証券税制を改革してきたかについてお話を申し上げます。2ページですが、その考え方は金融所得課税一体化ということで、一昨年、税調の金融小委員会で考え方を整理していただいております。一般の個人にとって投資を行いやすい環境を整備するために、中ほどのゴシックでございますが、金融商品間の課税の中立性、あるいは簡素でわかりやすい税制にしていくこと、投資リスクの軽減の3つを図ることが必要であるとして、その下ですが、課税方式の均衡化をできるだけ図るとか、損益通算の範囲の拡大といったことが挙げられております。
これが金融所得課税一体化の考え方ですが、これについて税制論から見た位置づけを整理したものが次の3ページです。金融所得課税については、中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点から、比例税率による分離課税が導入されてきました。今般の金融所得課税の一体化で進めようとしている改革は、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築するという観点から、現行の分離課税制度を再構築するもの。こう位置づけられております。
ちょっと難しいですが、具体的な金融所得課税一体化に向けた取組みについて次のページでご紹介いたしますと、左上、考え方でございます。1,500兆円とも言われます家計金融資産の効率的活用がわが国経済活力維持の鍵ということでございまして、それでは一般個人の資産を活用することが大事。そのためには預貯金並みの手軽さで株式投資できる税制を目指していく--これが近年の証券税制改革のキーワードでございます。預貯金並みの手軽さで株式投資できる税制を目指す。
証券投資が進まない原因である手続の手間とか、仕組みのややこしさを除いていくということでございます。その際の留意点としては、公平・中立・簡素といった租税の原則、そして金融所得が大量かつ多様に発生いたしますので、執行可能性の確保も重要です。また、グローバル化の中での海外への資金シフトのおそれも踏まえなければなりません。
これらの留意点が、前のページの分離課税としてきたことにも通じているわけでございます。その上で、右側ですが、具体的には3つの点、課税方式の均衡化、簡素化・利便性、一般投資家の投資リスクへの配慮という改革を行ってまいりました。一番上、まず20%の定率課税にしていくということ。これは課税方式の均衡化という意味もありますが、わかりやすくて簡素な税制という意味もございます。
実は5年ほど前までは金融商品によって課税方式はさまざまでございました。別途、G・D1-5の参考資料にも出ていますけれども、例えば利子は20%の源泉分離とか、配当だったらば原則総合課税、キャピタルゲインを26%の申告分離など、ばらばらであったわけですが、上場株の譲渡益は20%、配当も原則総合課税から20%定率課税を導入する、公募株投についても20%に引き下げる、こういうふうにそろえてきたわけでございます。この20%について、5年間だけ10%とする本日の課題の特例があるわけです。10%とすることについては金融所得課税一体化とはちょっと異なる考え方によるものでございます。
なお、上場とか、配当は大口以外とか、そういったものに限っている理由は一般投資家をターゲットとしている政策だからでございます。
第2は、税務署への申告不要。つまり、利子のように源泉徴収だけで納税が完了する仕組みを実現して簡素化・利便性を達成する。手間を少なくするというものであります。上場株式の譲渡益につきましては、特定口座という制度をつくりまして源泉徴収だけで納税が完了する仕組みを14年に導入しました。15年には配当も同じように申告不要の仕組みを設けました。
第3は、繰越控除制度の創設等、一般投資家の投資リスクへの配慮でして、2つ目のポツですが、公募株投と株式譲渡損益との通算を可能にしてございます。次は損益通算の範囲に配当と譲渡損の間まで広げるかどうかということが課題となっておりますが、税率が20%にそろっていかないと議論は進まないような形になっております。
以上の改革の背後にある考え方は、国が補助金や減税で差別化を図っていくということではなくて、金融商品間で税率、手軽さなどなるべく土俵をそろえるようにする。そのことが証券市場を育て経済の活力にもつながる、そういう考え方でございます。
次のページをご覧ください。具体的に主な金融商品の税率ですが、先ほどお話ししたとおり、時限的特例を除きまして、近年、20%にほぼ一律にそろえてまいりました。棒グラフ左から利子、次の上場の配当は本則20%で特例が10%、その隣、非上場、それから上場株式の譲渡益も先ほどと同じ、非上場の譲渡益、先物、一時払い養老、注のほうにいきまして定期積金や抵当証券も20%でございます。要するに、上場株式の配当と譲渡益だけが特例期間だけ違う税率となっております。これを20%に均衡化しても株式に特別に不利な課税をするわけではなく、異例なものを他と同じにしていくということであります。
上の枠の中に、税率をそろえていく理由が出ています。これもまさに金融所得課税一体化の考え方ですけれども、税負担に左右されずに--税が高いからとか安いからとかいうことで金融商品を選択するのではなくて、均衡化、中立化していくことが大事である。それから、金融商品からのキャッシュフローを今はさまざまな所得分類に加工することが可能となっています。そういう状況を踏まえますと、課税方式を均衡化することが公正・中立・簡素の観点からも必要であるということです。
さまざまな分類に加工可能である例につきましては、G・D1の参考資料、5ページ、6ページあたりに簡単な例が出ています。
6ページをおめくりください。それでは、どうして10%の優遇税制などをつくったのかということでございますが、6ページの図で一目瞭然かと思います。配当などの10%の税率を導入したのは、中ほど下のマルで囲んだあたりです。当時、株がどんどん下落いたしまして、平成15年4月には7,607円まで落ちております。10%という税率は、危機的な状況の中で課税の公平・中立を一時的に犠牲して生まれた措置ではないかとも考えられます。現在の株価は、右の上、当時の約2倍、1万6千数百円になっています
7ページもご覧ください。もう一つ、10%を入れたときの経済の大問題は、金融機関の不良債権、BSの問題でございました。これ以上株価が落ちると、不良債権問題と相まって銀行経営が大変になると言われていた時期でございます。「りそな」に公的資金を注入したのも平成14年度決算期でございました。しかし、今では不良債権の額も当時の5分の1ぐらいになっています。
8ページをご覧いただきたいと思います。ちょっとフェーズは変わりますが、近年、経済活性化のために講じられた税制上の措置にはさまざまなものがあるわけです。その中身を見ますと、大きく2つに分類することができます。一つは、一過性の景気対策や市場対策として講じられた時限的措置。もう一つは、経済活力のインフラ整備としてつくってきた恒久的な税制措置の2つでございます。
上のほうの一過性の景気対策として講じられた措置につきましては、景気や株式市況の回復に応じて廃止をしてまいりました。代表的なものは定率減税の廃止です。納税者すべてを対象とした定率減税も、景気回復に伴って何の代償もなく廃止をしてきたわけであります。本日のテーマである配当などへの優遇税制も、同じように、景気や株価の状況を踏まえて期限が到来してきたのだからということで適切に判断していくべきものではないかとも考えられます。
一方で下半分ですけれども、法人税や相続税の改革は経済活力のためのインフラ整備として講じてきた恒久的な措置であります。先ほどお話しした証券税制の改革、金融所得課税の一体化はこちらのカテゴリーに含まれると思います。税率を20%にしてしまうと証券市場の育成ができないとか、税制は投資の市場を見捨てるのかなどとおっしゃる方がいらっしゃいますけれども、税制としては一般個人が投資しやすい環境を整備する、そのことで経済活性化にも役立っていく、というのが我々の考え方でございます。
9ページをご覧いただきたいと思います。時限的優遇税率の継続を議論する場合の問題点を再度整理いたしますと、まず、金融商品間の課税の中立性を確保できないのではないかということ。次が、金融技術を駆使した租税回避の問題が生じはしないかということ。3番目が、景気対策として講じられた定率減税等は既に廃止済となっていることとのバランス。4番目が、優遇税率導入時に比して市場は活性化しているということ。最後に、理屈はさておきまして、公平感の問題として、金持ち優遇とか、不公平とか、格差助長という批判がこの税制にあることにも留意が必要ではないかと思います。
なお、株式の保有がどういう層にあるかという客観データは、参考資料の7ページ以下にこの関連で出しておりますので、適宜ご覧いただきたいと思います。
ちょっと視点の違う話を10ページでいたします。かつて、長期保有株式の優遇税制というのがありました。ところが、下から2行目です、平成13年から17年の制度としてつくられていたのですが、1年3カ月で廃止となりました。その理由は枠の中ですが、「複雑でわかりにくく、できる限り簡素化する方向で改善していく」という答申をいただいたということでございます。証券会社、納税者に保有期間管理の手間が生じる、あるいは、税務当局もその期間というのはチェックできるだけの資料の整備の体制などが必要になります。また、長期の保有を優遇すると、株の売却がロックされて市場の活性化に反するといった問題もあったわけでございます。
11ページをご覧ください。金融所得課税一体化のもう一つの話で、損益通算についての考え方でございます。課税方式が20%に均衡化しないとなかなか進まない話ですけれども、損益通算というのは投資リスクを軽減して一般個人投資家の投資促進に資するという意味があります。ただ、この話にはそう簡単でない事柄もあります。中ほどのアンダーラインのところですが、主要諸外国におきましても、譲渡所得と配当のような経常所得との全く性格の違うものの間で損益通算を認めていない国が多いわけです。認めているアメリカでも年間3,000ドル以下に制限されております。それから、税収も大きく落ちる可能性がありますので、この点も考慮する必要がございます。
そうはいっても金融小委の結論は、その下の段ですが、「株式譲渡損失との損益通算を認める範囲を、できる限り広げていくことが適当である」と。このページではありませんが、特に株式から生ずるということで、共通性のある譲渡損と配当については一定の制限のもとに認めることが適当である、というご意見をいただいております。
その際、一番下の行ですが、「把握のための資料情報制度など執行体制の整備が必要である」ということが重要であります。具体的にそれをどうするかということが次のページの提案でございました。同じ報告書の中であります。損益通算を行うための申告が行われた場合には税務当局はチェックをしなければいけない。それは、どういう収益が上がったかという支払調書の内容と申告書の内容を、税務当局は限られた人員と時間でマッチングをしなければいけない。そうだとすると何らかの番号制度が必要になる。ただ、その場合、皆に番号をつけていくことは必ずしも直ちに理解が得られないので、損益通算の適用を受けようとする人は番号を利用して、そうでない人は番号を利用しなくてもいいという選択制とすることが考えられます。
こういう金融小委のご提案だったわけです。しかし、金融庁などのリアクションはわりとネガティブなものでございました。そこで金融庁は今年の税制改正要望で、次の13ページですけれども、特定口座を利用して配当等譲渡益の損益通算をすることを要望してまいりました。その場合には、一定の資料情報制度さえあれば、本人確認とか突合といった執行上の厄介な問題をクリアできるという面があります。あとは金融庁が、こういうアイデアの段階ではなくて、具体的な制度として、こういうものをうまく仕組んでいくことができるかどうかというのがポイントになっているわけでございます。
次に、「G・D1-6 国民生活に関連したその他の事項」の1ページをおめくりください。議論されているその他の事項についてご紹介します。ここに掲げられている項目の資料は2ページ以降につけてございますが、このページで簡単に見てまいりますと、金融証券関係では、エンジェル税制。ベンチャー企業の資金調達を応援する税制でございます。それから生命保険料控除。8割以上の方が既に生命保険に加入している。ということは、インセンティブ税制としての役割は終わって、見直しが必要なのではないかという議論がございます。以下、住宅・土地関係、右のほうへ行って少子化・家族関係、その他というふうに並んでおります。
先ほど、前回ご議論があったと伺いました少子化関係についてちょっとご紹介しますと、16ページをご覧いただきたいのですが、「税制における子育て支援のあり方」というページです。ここに書いてありますとおり、一番左側ですが、子育て支援は税制でやるか、予算でやるかという話があるわけです。税制で行う場合は所得控除と税額控除とがございます。現行は所得控除です。これは扶養者の担税力の減殺に配慮したもので、留意点として、所得水準によって負担軽減効果が異なるわけでございます。所得税が累進構造をとっておりますので、高所得者ほど負担軽減効果が大きくなるということがあります。
これに対して税額控除ですが、子育て世帯への財政支援の意味合いが強くなっているということはあると思います。基本的に負担軽減効果は所得水準が異なっても同等です。ただ、税額控除の場合でありましても、非納税者には負担軽減効果が及ばないという点は税の限界であります。
こうした控除の考え方を整理していくことも考えられます。税額控除についての議論はここのところずっとございます。第1に、国民の負担構造を大幅に変える改革になるということ。第2に、そもそも控除のあり方は所得税の仕組みの根幹にかかわる大きな問題ですので、こういった問題は抜本改革時の検討課題となるのではないかと考えております。
それから、「G・D1-7 納税環境整備(国税関係)」という資料をご覧いただきたいと思います。1ページをご覧ください。税制の改革に取り組んでいくにあたりましては、税制とか税務行政が納税者の信頼を確保していくことが大変重要であります。このため、1ページの図にありますように、納税者が円滑に申告納税できるような環境を積極的に整備するとともに、適正・公平な課税を実現できるような税務執行体制を整備していく必要がございます。源泉徴収あるいは記帳義務の話、資料情報、徴収の手続、罰則、納税者番号、租税教育、こういったものはみんな重要な納税環境の整備であると思います。
3ページ以下で、19年度に向けて検討している納税環境整備に関する事項をさっとご紹介させていただきたいと思います。
まず3ページですが、国税庁では申告納税制度を円滑に運ぶため、国税電子申告納税システム(e-Tax )を推進して納税者の負担の軽減に努めているところでございます。常に改善をしているのですが、今年の改善のポイントとして、添付書類の取扱いをどのようにするか、電子署名の省略ができないか、その他、インセンティブ措置をつけられないかといったことが課題でございます。
4ページですが、納付手段の多様化ということで、納税者利便向上の観点から、新たな納付手段としてコンビニでの納付を可能とすることができないかを検討しております。
5ページですが、公売手続の円滑化ということです。公売というのは滞納者から差し押さえた財産を売却する手続ですが、より高く売却するためには公売参加者の増加を図ることが必要です。現在、インターネット公売の実施に向けて取組み中でございまして、その場合には、公売の流れに手を加えなければいけないところがあります。それは公売保証金の納付ですけれども、この点を、例えば一定のサイト業者などの保証による納付を担保という仕組みにできないかということがございます。それとは関係ございませんが、買受代金の納付期限についても、取扱いの弾力化ができないかを検討しております。
6ページをご覧ください。最近、いわゆる投資事業組合を通じて投資事業を行うケースが増加して、マスコミに出てくる事件でも、いろいろな投資組合が登場してきたことは記憶に新しいかと思います。しかし、投資組合というものにはさまざまな形態がございます。そんな中で、資料情報制度、すなわち取引の内容を記載した資料を税務当局に提出していただくという制度が、整備されているものといないものとあります。整備されていないものには整備が必要ではないか、という問題があるわけでございます。
7ページをご覧ください。似たような話ですが、国際化の進展に伴いまして、今、通訳のニーズが高まっています。しかし、通訳料は源泉徴収あるいは支払調書制度の対象となっておりません。下の枠の中にあるような各業種は対象になっているのですが、翻訳料などと並びで通訳料も制度の対象とすべきではないかという議論がございます。
次の8ページですが、土地区画整理事業などの一定の事業を行う場合には、譲渡所得に2,000万円特別控除という優遇措置がございます。土地区画整理事業の場合は、複数年にわたって切り売りをした場合、この2,000万円特別控除は1回しか適用できないというふうに複数年適用の排除が規定されています。一番上の枠の流れですが、その一方で、それ以外の事業で複数年にわたる切り売りが想定されてこなかったものには、この複数年適用排除の規定がございません。ところが、最近、切り売りをして特別控除を何回も使っている例が見られる。やや不公平なので、それへの対応を検討しているところでございます。
〇川嶋企画官(資産課税担当)
それでは、9ページ、10ページ、これは両方とも相続税関係のケースでございまして、ひと言で申しますと、相続課税の今の仕組みにアンバランスがある、それを是正すべきではないかという問題意識でございます。
まず、9ページの仮装隠蔽財産に係る相続税の配偶者控除について申し上げます。配偶者が仮装隠蔽していた財産が後に判明した場合には、相続財産全体が増加しますので、相続税の総額も増加することになります。したがいまして配偶者・子の各相続人の税額も増加いたします。
このうち、仮装隠蔽財産に伴い増加します配偶者の納付税額についてですが、下に書いてあります、配偶者が仮装隠蔽財産を取得する場合と子が仮装隠蔽財産を取得する場合とで取扱いが異なっておりまして、左側のほう、配偶者が取得する場合は、配偶者控除が適用されないように措置がされております。したがいまして、仮装隠蔽財産に伴い増加した配偶者の税額は配偶者は納付しなければならないことになっておりますけれども、子が仮装隠蔽財産を取得する場合、現行法では配偶者控除が適用されることになっています。配偶者自身が仮装隠蔽した財産、その財産に伴って増加した税額というのはありますけれども、配偶者控除の適用によって配偶者の納付税額はゼロのままである。こういうアンバランスがあるということでございます。
次の10ページでございますけれども、みなし相続財産に対する相続税の課税ということで、左と右とよく似た図がありますが、左側は、日本の保険業法の免許を受けた生命保険会社と相続人を受取人とします生命保険契約が結ばれているケースです。右側が、日本の保険業法の免許を受けていない外国の保険業者と同様の生命保険契約を結んでいる場合でございます。
契約者が亡くなって相続人が生命保険金を受け取るケースですけれども、この左側の、免許を受けた生命保険会社の場合ですと、この保険金はみなし相続財産ということで相続税が課税されることになります。右側の免許を受けていない外国の保険業者のケースですと、ここで払われる生命保険金につきましては、一時所得ということで所得税の課税がされている。こういう制度上のちぐはぐがあるということで、是正すべきではないかという問題意識でございます。
以上です。
〇林市町村税課長
引き続きまして、お手元の資料の「G・D1-8 個人住民税関係」という資料で私からご説明させていただきたいと思います。ただ今ご紹介のありました金融所得課税については、地方税、個人住民税も関係がございますし、そのほか幾つかの課題等につきましてご説明させていただきたいと思います。
まず1ページ、個人住民税の概要ということで載せております。これはご承知かと思いますけれども、個人住民税は広く住民が地域社会の費用を分担するということで、「地域社会の会費」ということをよく言われているものでございます。個人住民税というふうに申しますけれども、内容としては法的に市町村民税と都道府県民税というのがございまして、納税義務者は市区町村あるいは都道府県に住所を有する個人でございます。
その個人住民税の中ですけれども、課税の基準によりまして均等割と所得割がございます。均等割につきましては一定以上所得がある方については、それ以降、所得の多寡にかかわらず、1年間で市町村民税、都道府県民税あわせて4,000円の定額のご負担をいただいているものであります。所得割につきましては、納税義務者の所得金額に応じた税額の負担を求めるものでございまして、10%比例税率と書いてございますけれども、これは、来年(平成19年度)から3兆円の税源移譲に伴ってこのように改められるものであります。ここに書いてございます税収につきましても17年度決算見込みベースということで、税源移譲前の数字でございます。
2ページをお開きいただきたいと思いますが、ただ今の個人に対して課します住民税のほかに、住民税といたしまして金融証券税制関係がございます。枠の中に書いてございますけれども、利子割、配当割、株式等譲渡所得割というのがございまして、都道府県民税という位置づけでございます。そのうち一定割合を市町村に交付するということでございまして、3ページをお開きいただきますと、先ほどの国税のお話の中にも、預貯金等それぞれ、本則で20%となっておりますけれども、軽減税率で上場株式等の配当あるいは譲渡益について10%になっているというお話がございました。その10%のうちの3%が住民税でございます。本則20%の場合は住民税が5%になる、こういうことでございます。
以上、金融関係をご紹介申し上げましたが、4ページ、別の課題でございまして、ここからは均等割についてでございます。昨年11月の政府税調の18年度改正の年度答申の抜粋ですけれども、均等割につきましては、「これまでの1人当たり国民所得等の伸びを勘案するとなお低い水準にとどまっており、その税率を引き上げる必要がある。その際、基礎自治体である市町村を重視することを検討すべきである」という形で、「主要な課題」という位置づけをいただいております。
5ページが、これまでの推移でございます。市町村の人口の大きさ、人口段階別に税率区分がございましたけれども、近いところでは平成16年にこれを廃止いたしまして、3,000円に一本化したという改正を行っております。一番下の欄に、住民税に占める均等割のウエートといったようなものを書いてございますけれども、多いときには10%以上あったものでありますが、近年は2%前後で安定しているという姿でございます。
6ページ、比較のために資料をつけさせていただきました。身近な行政サービスは市町村が担っているわけですけれども、その中でも特に基礎的な仕事と思われますような、清掃費、警察費、消防費といったものとの比較で書かせていただいてございます。
それから7ページ、ここからは生命保険料控除にまつわる話でございます。昨年6月の政府税調の基礎問題小委員会で、論点整理としてこのような形でいただいておりますけれども、所得割の諸控除につきましては、個人住民税の性格、地域社会の会費といったような性格も踏まえまして、簡素化・集約化などの見直しを図り、課税ベースの拡大に努めるべきである。特に、税源移譲に伴いまして、応益的な性格が強まる--所得税につきましては所得再分配機能が強まるといったことが言われておりますけれども、応益的な性格が強まることから、こういった控除、特に政策誘導的な控除につきましては、速やかに整理すべきであるといったようなことでございます。
8ページ、生命保険料控除等の概要を載せております。生命保険料または個人年金保険料、それぞれ35,000円まで所得控除できるというのが現状です。先ほどの国税のご紹介にもありましたけれども、既に適用割合としては8割、かなり定着しているものかと思います。
9ページ、関係するものといたしまして、実は今年の改正で損害保険料控除というものを見直した経緯がございまして、対象を損害保険から地震保険という形で絞りまして、一定程度、その措置を厚くする形で対応したわけでございます。減収額等もここに書いておりますように、地域社会の会費であるということで、あまり減収額が多くなっては困るといったようなこともありますけれども、損害保険料控除から地震保険料控除に至る形でご覧のような数字になっているわけでございます。
10ページ、今申し上げた点についてもう1枚、資料をつけさせていただいております。控除限度額という部分、右側にございますが、これが2万5,000円ということで最終的にはセットされたわけでございます。これにつきまして、「18年度改正の考え方」というところに書いてございますけれども、今後、税源移譲によりまして、最低のところの限界税率が住民税の場合は5%から10%に上がるということがあります。それによって、控除額が同じでもその部分の影響額が倍になってしまうといったこともある中で、ご覧のような形で対応したところでございます。
それから11ページは、また別の話題でございますけれども、実は公的年金からの特別徴収、いわゆる天引きが住民税の場合はできていないという事情がございます。
12ページをご覧ください。公的年金からの天引きにつきましては、所得税、介護保険料が既に行われております。今後、20年度に国民健康保険料が行われる予定で進んでおりますけれども、個人住民税につきましてはこれまで調整がついておらずに、まだ天引きできていないということでございます。年金受給者の方は納税のために別途出向かなければならないといったようなこともありますし、市町村のほうでも徴収事務がかかるといったことで、これについての天引きか特別徴収かを関係省庁と調整中でございます。
13ページ、14ページをお開きいただきたいのですけれども、先ほど来何度か出てまいりました税源移譲の話でございます。いわゆる三位一体改革の中で4兆円ほど国庫補助負担金を整理していき、そして、3兆円を国税の所得税から住民税のほうに移譲するという形になっているわけで、これが個々の納税者から見た場合にどうなるかという点につきまして簡単にご説明申し上げたいと思います。
14ページにありますように、左の上ですけれども、税率、所得税、住民税、それぞれ現状ございますが、税源移譲後は右側のように住民税は10%で比例税率化されてしまう。所得税はやや細かい税率等もできて6段階になる。こういったことでございますけれども、税源移譲に伴う影響によって一人一人の納税者の税負担は増えない形で調整措置を講じてございます。それが、独身者の場合と夫婦+子供2人の場合の年額をお示ししてあるわけですけれども、いずれも、右側をご覧いただきますように負担増減額は0円という姿になっているわけでございます。
しかしながら、15ページをお開きいただきますと、課税の期間が所得税と住民税で違ってくるということがございまして、タイムラグが生じます。15ページは、給与収入700万円の夫婦子供2人の世帯の場合ですけれども、1月から、毎月毎月の給与から天引きされている額をお示ししているわけですけれども、所得税が、定率減税が廃止されること、それと税源移譲の影響によりまして、12,880円から7,160円に下がる。住民税は6月に、定率減税の影響と税源移譲の影響をあわせて9,400円ほど上がって24,500円になる。こういった状況になってくるわけでございます。
上がり下がりにつきましては、定率減税の影響があること、それから所得税の場合はボーナス徴収をしておりますので、月割りに直しますと、影響額が住民税に比べて下がるほうがやや薄まる。そういった影響もあって税源移譲の前後で税負担額が変わっているように見えるわけですが、税源移譲そのものに伴う年の税額負担は変わらないようにセットされているわけであります。
16ページは、同じく500万円の場合でございます。
ということで、最後になりますけれども、今のような形で月々の負担額が変動していく中で、負担増と誤解されないようにしっかりと国民の理解を得ていく必要があるということで、17ページにありますように、政府あるいは地方団体を挙げてその理解を求めるべく努めていく。こういうことでさまざまな取組みを行っているところでございます。特に、個々の納税者に直接その内容が行き渡る形をとるように努力しているところでございます。
引き続きまして、「G・D1-9 国民生活に関連したその他の事項(地方税)」をご覧いただきたいと思います。基本的には、所得の計算に関連して所得税と同じような課題ということでございます。
1ページをお開きいただきたいのですが、ご覧のような形でございます。
1点だけ、9ページをお開きいただきたいのですけれども、子育て支援の関係です。先ほどご紹介あったように、税制においては所得控除、税額控除あるわけですけれども、住民税につきましては来年度から10%の比例税率化がされますので、所得水準にかかわらず、基本的に負担軽減効果は変わらないというところが所得税と違うところでございます。
以下、説明は省略させていただきます。
最後に、納税環境整備でございます。「G・D1-10」という資料です。1ページ、これまでの取組みということで、地方税関係、平成元年以降の主な取組み状況を概観しております。軽油引取税の脱税に係る罰則の引上げなど、脱税防止対策を累次にわたって強化しておりますし、また平成15年からは、納税者の便宜を図るためにコンビニエンスストアでの地方税収納ができるように手当をしております。17年からは地方税の電子申告の運用が開始されています。
2ページをお開きください。地方税におきましても電子申告を推進しておりまして、平成15年8月に、都道府県と政令指定都市が中心となって協議会を設立して、現在、47都道府県と13政令市で、そこにございますように、法人関係の法人住民税、法人事業税、固定資産の償却資産にかかわります部分につきまして電子申告の運用が開始されております。今後、全国市町村へ拡大することなどが課題となってございます。
最後、3ページでございますけれども、税務執行体制の強化に向けた取組みとしては、徴収対策に資する地方税制の見直しのほか、各団体におきましても、滞納処分の共同処理あるいはインターネット公売など、さまざまな取組みがなされているところでございます。
以上でございます。
〇井堀主査
どうもありがとうございました。
それでは、今までの説明を踏まえて、議論に入りたいと思います。
まずは、金融証券税制に関して議論していただきたいと思いますが、途中で退席される方は、それ以外の点も含めて発言されて結構です。どなたからでも結構です。金融証券税制を中心に事務局から、20%に戻すべきであるというトーンで説明が行われたと思いますけれども、それに対しての賛成意見、反対意見等で結構ですので、よろしくお願いします。
どうぞ、井戸委員。
〇井戸特別委員
まず、「第1回総会及び企画会合の概要」の中で、私が指摘した点があまり書かれていないのではないかと思うのです。
一つは、「法人課税の国際比較にあたっては、実効税率だけでなく、国民所得比、社会保険料負担」と書いてあるのかとも思いますけれども、賃金税とかその他の企業負担全体をトータルに見なければいけないということを言いたかったので、社会保険料負担だけでは不十分な表現になっているのではないか、というところを指摘しておきます。
それからもう一つ、非常に重要な点は、地方税における政策減税の仕組みが地方の自主性が全く考えられないような仕組みになってしまっている。法律で決まったらそれに準拠するだけ。条例で一定の枠の中で選択ができる、そういう仕組みを考えるべきだという発言をさせていただいておりますが、それがどこにも書かれていない。こういう問題がありますので、この点、ご留意いただきたいと思います。
私も4時には失礼しますので、関連する課題について言わせていただきたいと思いますが、まず、10%の軽減税率は二重に軽減しているんですね。つまり、本来だったら総合課税で配当所得とか株の譲渡所得の利益を受ける人たちは、先ほどの参考資料にもありましたようにお金持ちが多いのです。そのお金持ちの累進税率をあえて下げて景気対策をすることによって、いろいろ美名を並べましたけれども、分離課税制度を採用している。その分離課税制度を採用している上にさらに軽減税率の10%を取った。これはもう緊急措置なんですね。そういう意味からすれば、当然、戻すべきだというのが私の基本的な考え方です。
それから、納税環境の整備で若干の話をさせていただきたいと思います。一つは、ご説明がなかったのですけれども、事業税の外形標準課税につきまして、資本金1億円超の企業ということになっていますが、私どもの県の実態を見ましても、50~60の企業が、例えば350億円の資本金の企業が1億円に減資してしまいまして、外形標準課税を免れる措置というのを講じてきているのです。これらは絶対に許されない措置なので、納税環境整備をきちんと講ずる必要があるのではないか。これはぜひご検討いただきたいと思っております。
それから、公的年金の特別徴収、天引きの関係は、去年の税調でも申し上げたのですけれども、なぜ住民税だけ取り残されているのか全く理解できない。ですから、これもぜひお願いしたいと思います。
もう一つ、税源移譲後の税負担の移動についての国民の理解をどう得るか、という問題は非常に大変な問題です。特に徴収時期が、所得税と住民税とで、課税所得資料の把握の問題で現年課税ができていないということですけれども、そこのところをどうカバーするかということを考えましたときに、住民税の普通徴収の方というのは実を言うと確定申告をする方なのです。確定申告をする方というのは基本的には自分で計算をされる方ですから、確定申告をする方には、確定申告の手引きの中にこういう税源移譲分があるんだぞということを明確に書いておいていただいたら、計算の途中でよくわかる。ですから、みずから確認ができる。
ところが、問題はサラリーマンの特別徴収の方なのです。5月末までに特別徴収税額の通知というのが、各企業に勤めておられる社員の皆さんには給与の支払い当局から来るのです。ペラペラとした細長いものですが、それしか来ないわけです。所得税がどれだけ減ったかなどというのはわからないわけです。ですから、これは税務当局に工夫していただきたいと思うのですが、少なくとも増減額プラスマイナス・ゼロなんだぞというようなメッセージがその特別税額通知書にあるようにしてもらわないと、ものすごい誤解を受けるおそれがあります。
こんなことを言うのは変ですが、ちょうど参議院選挙の前に来ますので、そういうことも含めてきちんとした対応をしないといけないです。私もこれは去年から非常に心配になっていまして、すでにだいぶキャンペーンを張っていますけれども、やはり税のキャンペーンというのは払うときでないと効かないのです。その辺で、ぜひ確定申告の場合と特別徴収の税額通知書の場合にご配慮願いたい。
それともう一つ、住民税はボーナスから取らないという仕掛けになっているのです。それは、所得税の場合は源泉徴収をやりまして、最後に年末調整と、まとめて税額再計算をする制度があるから、ボーナスから取る取らないにかかわりなく、最後に調整できるからいいやという制度になっています。住民税の場合は、税務当局が計算して取る額を通知して、そして毎月から取っていただくので、ボーナスのないところがあったり、ボーナスが出せないところがあったらどうするんだと、こういう話になるものですから、今のところ12回徴収になっているのですけれども、私はボーナス徴収も入れていただいたらどうかと。そして、ボーナスからも1万円を取るという場合に、例えばボーナスが出なかったということがあったとしても、それは普通徴収に回す。つまり、特別徴収の分から普通徴収に回すという措置を講ずれば十分対応できるはずなのです。技術的に対応できる部分は、納税環境の整備も、シャウプ税制以来初めての大規模な税源移譲の措置なのですから、ぜひそのような措置もあわせて検討していただくとありがたい。このように考えますので、提案させていただきます。すみません、少し長くなりました。
〇井堀主査
税源移譲に関する実務上の問題はたしかにあるかと思いますが、事務局のほうで、その点は今何か対応されているのですか。これから検討するということですか。
〇岡崎審議官
今お話がありました、納税通知書を5月に送る場合のぺらぺらという薄いやつとあわせて、納税者に対して、チラシ的なものですけれども、今お話があったような趣旨をきちんと書いたものを同封できるようにしたいということで、今、地方団体と準備をいたしております。それから、それは増えるときでして、1月に減る前後につきましても、国税ご当局のお力もお借りしまして、今は減るけれども、これは後で増えてくるよと、いうことがわかるようなことを周知したいというふうに考えております。
その他の点、ボーナス徴収、普通徴収を組み合わせてそういうことができないかという点については、いろいろとまた勉強させてもらいたいと思いますけれども、今はまだお答えするに至りません。
〇井堀主査
わかりました。
それでは、ほかの委員の方、どうぞ。高木委員。
〇高木特別委員
まず、金融所得の優遇税制については延長する必要なしと。さらに1年、来年4月から前倒しでも元に戻すべきではないか、というぐらいのイメージでみんな受けとめているのではないかと思います。本則に上げるにあたって、ヨーロッパ等では所有期間の長い短いで若干の仕分けをされたり、いろいろな仕組みもあるようです。そういう議論をする部分はあって私はいいと思いますけれども、先ほど井戸さんもおっしゃられたように、所得税にかかわります税率構造に与える、特に高額所得者の株式譲渡益等を得ることによる税率構造等、総合課税化が行われていない、そういう弊害もいろいろな意味で目立ってきているのではないか。そんなことでございまして、今の仕組みはやはりおかしいと思いますので、特に本則には来年春からでも戻すべきではないかと思っております。
それから、最近、二重所得税といいますか、二元税といいますか、そういう議論もありますが、そういう発想も私は日本でも検討すべきではないかと。総合課税化に直線的に進めるならそれはそれでいいのでしょうけれども、それにもいろいろなご議論があるとしたら、とりあえず中間的な形態という意味もあるのだろうと思っておりますが、30%の比例税率にするかどうか、税率問題なども含めて検討したらいいのではないか、そんなふうにかねてより思っております。いずれにしても、今のまま放っておかないでという意見を強く申し上げておきたいと思います。
〇井堀主査
では、佐竹委員。
〇佐竹特別委員
手短に2点だけ。
金融証券税制の関係ですけれども、定率減税のときも同じ議論だったですね。ある一定の状況になって、それを打開するために一定の状況になるまでこういう形にすると。そうしますと、その一定の状況というのが改善したかどうかという見きわめは大切であろうと思いますけれども、一たんやってしまったものをずるずるやりますと、制度が増えるだけで、やはりここは一たん区切るべきではないのか。そして、全体としてまた別の議論で金融証券と税の関係を議論しないと、個別だけ切って、そこだけでずるずると、要望があるからというだけでは非常に規律が乱れる。私などは定率減税のときもそういう議論をしたら、直ちに議会では責められましたけれども、それはそれとして、こういうものをきっちり一たん区切って、やはり元に戻す。しかも、今、格差の問題が出ているときに、これについては国民的な理解が得られるのではないか。
もう一つは、今すぐではないですけれども、先ほどの地方住民税の均等割、あれを、増税というのではなくて均等割と所得割でセットになっていますけれども、均等割のところが市町村で3,000円です。秋田で町内会費が年に4,000円ぐらいです。そうしますと、均等割というのは、名目、もうなくなっているわけです。国税と地方税の応能負担、応益負担ということからしても、全体をそれによって上げるというのではなくて、全部の所得割も含めて均等割はいかようにあるべきという根本の議論を、ぜひこの後いつかの機会にやっていただきたい。この2点でございます。
〇井堀主査
ほかの委員の方。では、伊藤委員。
〇伊藤委員
金融の税金についてひと言だけ。基本的には本則に戻すというのは、皆さんの意見があったので、そのとおりだろうと思います。その上で、今回というよりも、これは非常に大事な問題だと思うのは、本来の金融資産に対する税制の根源に何があるかというと、ここに書いてある簡素、中立ということ。それからもう一つ、単にバブルが崩壊したからどうのこうのとかそういう話ではなくて、長期的に日本にとって重要なのは、フローとしての労働所得に対してどういうふうに経済を活性化するかだけではなくて、日本がこれから高齢化する中で持っている長期的な金融資産を、どういうふうに有効に経済に活性化させるか。もっと直接的な言い方をすれば、リスクマネーをどういうふうにしっかり投資に回していくかということを、いずれは考えていかなければいけないだろうと。
そうすると、20%に戻すということは私もそのとおりだと思うし、全く同意なのですけれども、やはり幾つか残されている問題があると思うのです。例えば配当については、企業のところで税金が取られて、それからもう一回、個人に戻ったときに取られるというのに対して、利子は扱いが違う。そこをどうするかとか、あるいは、リスクマネーと考えたときに、個人の投資家あるいは普通の投資家がそれをやるときに、利益が上がったときには税金を取られるけれども、損失を被ったときには損失控除はできないというのは、ある意味で言うと税制そのものがリスクを大きくするケースがあり得る。それは一部は特定口座でやるのですけれども、いずれはそれを真剣に考えると。そうすると、先ほど事務局から議論があったように、当然、納税者番号という問題に踏み込まざるを得ないと思います。
ただ、問題は、単にこういう問題を一時的なバブルの崩壊に対する対応というだけにおさめないで、いずれここで、1月以降になるかもしれませんけれども、将来的にこの資産課税をどう考えるかということは、しっかり考えておかなければいけない重要な問題であるということはやはり確認しておく必要があると思います。
〇井堀主査
原委員、どうぞ。
〇原特別委員
金融所得課税について一つ。今、富裕層とか、超富裕層は、投資信託、特に投機的ヘッジファンドですとか、金が金を生むというタイプのものに対する運用が非常に増えてきています。これは、全世界的な金余り現象からこういうふうになってきているわけですけれども、ここに関しては増税をしてもいいぐらい、というふうに私は思います。今の伊藤さんと同じことかもしれませんが、このお金の中でも、金融資産に対して資金を運用するものではなしに、将来の我々の実業を興していくようなテクノロジーですとか、新しい産業をつくっていくもとになるタイプのベンチャー。要するに1年や2年ぐらいで、このエンジェル税制で書かれているようなタイプの、小金持ちをどんどんつくっていくタイプのエンジェル税制ではなしに、本当に5年、10年を見据えた、将来の産業をつくっていけるタイプの科学技術、ここに資金が入ってきたものに対しては、アメリカにありますような損益通算よりもさらに緩めた通算をすることによって、そこに資金がどんどん投入されていくような税制をつくり上げる。これは、世界中から日本に資金が入ってくるという導入の大きなきっかけになるような気がいたします。
現在、私はアメリカのサンフランシスコに住んでおりまして、昨日、日本に帰ってまいりましたけれども、米国の行き詰まりを打開するようなタイプのものを、アメリカは今つくれないでいますので、これを先に日本がやっていくことは大変意味があると私は思います。
以上です。
〇井堀主査
横山委員。
〇横山委員
石前会長のとき、その前の加藤元会長のときもそうなのですが、継続性というのでしょうか、税調の中で検討を加えてきて、そうした基本的な方針としてとりまとめられてきた、今日も資料として出していただいた金融税制に関するとりまとめとか、こういうふうな論点整理や考え方をどこまで引き継ぐのかということが結構大きい問題なのではないか。この税調に課せられている大きな課題というのは、課税哲学で言うところの「成長と活力」をまず第一優先順位にしましょう、と。ここはおそらく異論がなかったという理解を私はしています。その上で、公平であるとか、中立であるとか、簡素であるとか、収入十分性、これは歳出カットした上でも必要となる税収をやはり確保していく。将来展望として税制としてどうやって両立させていくのかといったときに、今回のこの金融証券税制についても、成長、活力という観点からどういうふうに理解したらいいのかということを議論しておく必要があるのではないか。
そのときに、逃げ足の速い課税ベースということがよく言われます。これは本間会長の最適課税論で言うと、対応行動がとれないようなところに税をかけるのが、超過負担とか、デッド・ウェイト・ロスと言われているような資源配分を歪めないことが望ましいと。そうするとそれは差別課税になるわけですね。
ところが、政府税調がこれまでずっと積み上げてきた「中立」というのは、本間会長をはじめ学界が言っている最適課税論の論調での中立課税ではなくて、人々の選択行動を歪めないということまでであって、対応行動をどこまでとれるかということよりも、資産選択であるとか、さまざまな労働とか、そういうふうなもののポートフォリオ・セレクションであるとか、そういうものについて中立であるべきだということがある意味、成長・活力につながるのだということであるとすれば、私は、皆さんのご意見のように、こうした優遇税制というのでしょうか、経過措置はやめてもいいのではないかと思っています。
ただ、そのときに、これは伊藤委員も言われていることですが、将来として、資産課税あるいは非労働所得と、二元的所得税の考え方もあるのですが、何をもって私たちはどういうふうに考えたらいいのかといったときに、パーフェクトなものはないので、やはり今一番重要な成長・活力をメインにした上で不公平がなるべくないようにする。あるいは、なるべく中立的な課税にしていくということで議論していくべきではないか、個人的にはそう思っています。
〇井堀主査
井伊委員、どうぞ。
〇井伊特別委員
先ほどから指摘がありますけれども、日本の家計が所有する金融資産が高所得者に偏っているということですが、もう一つの視点として、高齢者にも偏りがあるという点も大切な視点ではないかと思います。ライフサイクルを通じた合理的な資産選択という観点からも、優遇税制というのは疑問に思っております。
もう1点は、金融所得課税の一体化についてです。個人段階のみで金融所得課税の一体化について論じているわけですが、やはり法人と個人を含めての一元化という視点が必要なのではないでしょうか。法人段階での法人税の負担を調整する二重課税調整が必要だというのは、財政学の教科書に出ていたように思いますので、ぜひそのあたりは、特に財政の専門の先生方のご意見も伺いたいと思います。
〇井堀主査
それでは、ご指名の財政の専門家、林委員、どうぞ。
〇林委員
それに対するお答えではないのですが、ただ、個人と法人含めた税負担をどうするかという議論は、法人税のあるべき姿ということも踏まえて考えていかなければならないことで、いわゆる証券税制に関しては、前回の税制調査会の「貯蓄から投資へ」という考え方、これは継続して持っているのだろうという具合に思います。もちろん、効率なのか公平なのかという原則感のトレードオフの問題というのはありますけれども、そこの部分はやはり外せないのではないか。
そういう具合に考えたときに、いわゆる優遇税制をやっていると。これは緊急措置ですね。これを外さなければならないということに関しては私はそのとおりだと思います。ただ、税率を引き上げたときに、株式市場が一体どういうふうになるのだろうかというところも一つ懸念材料としてあるわけで、そこの部分をどのように考えるのか。少しでも懸念があったら、やはりこれは引き上げるのは難しいよという話にどうしてもなってしまいがちで、私自身は、今の株価の上昇というのはそれ以外にもっといろいろな要因があって、10%に軽減しているから上がっていると。確率として全然ないというわけではないでしょうけれども、その部分をきちんと踏まえないと難しいだろうという具合に思うわけです。
もう一つは、特定の金融商品にインセンティブを与えるということではなくて、やはり一律に金融商品間の差別をなくすことが基本で、それによって「貯蓄から投資へ」ということを進めようと。そうすると、前回、金融小委員会で出たのが16年の6月なのです。もう2年以上前で、こういう一体課税を進めることによって「貯蓄から投資へ」ということを促進するのだということが、一方できちんとメッセージとして発信されないとだめだと思うのです。その場合に、将来的な課題ということなのでしょうけれども、いつまでもこのままでいいのかという話になると、やはりそうではないと思います。今、実現に向かってどの程度議論がなされているのか、どうもそのあたりも見えないし、というようなこともセットで出していかないと、ただ単に株式市場が戻ったから元に戻そうということだけではなかなか難しいのではないかという気も一方ではしております。
〇井堀主査
では、井上委員。
〇井上特別委員
今、林委員からご指摘があった、「貯蓄から投資へ」ということでこの特別減税がされたというふうに私も思っております。ですから、将来的にそういう環境が整備された段階で元へ戻すということならわかるのですが、まだまだ環境は完備できていないのではないかと思います。401Kにしてもまだ始まったばかりですし、国民がどこまでそういうものに対して関心を持っているか。最近、徐々にネット投資とかそういうものが出てきたから、少しずつは関心が深まりつつあるけれども、まだまだだというふうに思っているわけです。
と同時に、これだけ企業の経常益がこの半期にして16%も上がっていても、株価は上がっていない。本当の投資というものは、まだまだ日本人はわかっていないのではないのかなというふうに思うわけです。単なる目先の利益だけを追いかけているという現状であって、そういうものをもっともっと理解させていくべきであり、環境が整備されるまでは、10%の特別減税というのは持続させるか、さもなくば、少し上げていくというか、調整をするという程度にとどめるべきで、元へ戻すというのは私としては絶対に反対です。できれば金融商品を今の20%からもっと下げるべきなのかもしれない、ということも考えるべきなのかもしれないなというふうに思います。
それから、株式配当に対する税はやはり二重課税ではないのか。法人で払って、なおかつまた個人で払う。これは非常に大きな問題だと思いますので、その点は今後考慮すべきだというふうに思います。
〇田近委員
金融課税のことです。幾つか出た議論の一部繰り返しですけれども、日頃考えていることを何点か申し上げたいのですが、来年度(2007年度)改正の問題と、税調の方向性を持った議論と2つあるわけですよね。特に新しい体制になって、林さんがおっしゃるように、今までの議論をどう扱うのかというところがある。ただ、この1、2週間の間に19年度の改正について何か書かなければいけないわけです。
そこをどう処理するかということがあるでしょうけれども、そこを踏まえて、金融証券税制、配当と金融性資産からの譲渡益課税の優遇税制をどうするかということですが、私は、方向性を持って、税調としては、あるいは日本の税制としては、金融所得の一元課税に向かうのだ、そのプロセスの中で10から20をただすのだというメッセージが重要なのかなと。でないと、一方で、景気がよくなったから戻せ、それは望ましくないと。片一方の投資家のサイドでは、ここで20がまたどうなっていってしまうかわからないというのでは困るので、20はどこまで固定かという議論はある程度あるのでしょうけれども、基本的には「貯蓄から投資へ」、金融所得の一元化課税という中で、私は、10から20に現状でそろえるべきだろうと。
それにはいろいろな理由があると思いますけれども、現実的には今、なけなしの利子所得ですが、20%はかかっているわけです。それはもう年収がほとんどゼロの人から億万長者まで20%かかっている。一方、利子的な所得をキャピタルゲインに変えることはいとも簡単にできますから、片一方の非常に大きな投資をしている人たちは、利子所得ではなくてほかの所得として10%になっているということを考えても、私は基本的には10から20にするべきだと。
それから、指摘したいのは、方向性をなぜ出さなければいけないかというのは、一課長の宮内さんにご説明いただいた、恐縮ですけれども、「G・D1-4」の最後のページ、金融庁の「要望」です。その方向性がなぜ大切かということは私はこう思うのですけれども、金融所得の一元化課税をやるときも分離の申告納税でやることが本則になっています。それを特定口座という形で、申告しなくてもいい、特定口座を持てばその中で調整しますから、ということでやっているわけです。この13ページの金融庁の要望は、特定口座の中に今度配当課税も入れよう、その中で一元化していこうと。
そうすると、我々に投げつけられる議論は難しい議論ですけれども、方向性を持って議論するときに、日本としては配当所得だけではないよ、利子所得もある程度含めるよと。原さんのおっしゃるとおり、まさに広い意味で損益通算も認めて投資がしやすいようにしていくというプロセスの中で、やはり方向性がいかに重要かということは、今度10から20にしてかわいそうだから、特定口座の中に配当所得まで入れてあげようというようなことを言ってしまうと、それが一つの流れになって隘路になるかもしれない。ならないかもしれませんけれども。だから方向性というのは、19年度の答申であるけれども、重要である。
最後に、二重課税の問題というのがあります。これは法人課税との問題でしょうけれども、二重課税のことも含めて配当で一律20で割り切ったというところが、アバウトな言い方ですけれども、前の税調の考え方だったのかなと。この問題は永遠の課題ですから蒸し返さなければいけませんけれども、ただ、法人実効税率を下げることに熱心なビジネス界のほうから、ダブルタックスゼーション、二重課税を直せという議論はなぜか出てこないというのが、私は不思議だと思っています。
以上です。
〇井堀主査
秋山委員、お願いします。
〇秋山特別委員
申し上げようと思っていたことはほとんど田近先生がおっしゃっていただいたので、すみません、ちょっと繰り返しになるのですけれども、私自身は、各論として論点を語ったときには、結論としては元に戻すというのがリーズナブルな結論であるというふうに思います。ただし、そのことで政府としても掲げている「貯蓄から投資へ」というメッセージが打ち消されるのは、非常にまずいなというふうに危惧しております。
それに加えて、今回、年度改正の個別論点ではありますけれども、新しい税制調査会の最初のアウトプットといいますか、社会に対するメッセージにもなりますので、そういった意味で方向性がまずメッセージとしてあって、その上で、この論点をどういう位置づけでどういう結論を出すのかというような答申を、ぜひ出したいなというふうに思っております。
〇井堀主査
辻山委員、お願いします。
〇辻山特別委員
私もちょっと重複して、委員の方々がおっしゃったことですが、資料の1-4の5ページ、これは横に拝見しますと、全部20%でそろっているということですけれども、結論的には本則に戻すことについては異論はございません。しかし、この表でキャピタルゲインとインカムゲインを一括して20%でそろえるということと、金融所得の一体課税というのが本当に同じことなのかなという感じがあります。
というのは、何人かの委員がご指摘のように、配当課税というのは、現在、法人税のほうでは受取配当金の益金不算入制度もありますし、そういったこととの整合性を、特に配当課税についてはどういうふうに説明が可能なのかということに関して若干疑問を持っております。できれば、その辺についてご説明をお聞きしたいということでございます。
〇井堀主査
どうもありがとうございました。
ちょっと時間の関係もあって、次に移りたいと思いますけれども、今までの議論を聞いておりますと、証券税制については20%に戻すという意見が大勢でしたが、その理屈づけに関してはいろいろな意見がある。それから、将来に向けての方向性をきちんと議論し、その中で、特に配当の二重課税の問題をどう考えるかというのは一つの論点だと思います。この点は、1月以降、もう少しきちんと議論できる場があるのではないかと思います。
〇宮内税制第一課長
井堀先生、もしよろしければ、配当課税を国際比較してどういうふうになっているか、今、辻山先生のお話もあったので。
〇井堀主査
では、簡単にお願いいたします。
〇宮内税制第一課長
はい。「G・D1-5参考資料」の19ページをご覧いただきたいのですが、配当課税の国際比較でございます。国際的に比較してどんなふうになっているかということをご覧いただきたいと思います。
諸外国の配当課税でございますが、日本以外はすべて総合課税でございます。日本も平成15年までは総合課税だけでした。そしてどの国の総合課税にも、法人課税との調整の観点から、配当控除であるとか、軽減とか、そういう措置をつけているわけです。これらは、配当所得が事業参加性の所得であることを踏まえた課税方式だと思われます。実は配当所得には二面性があるというのが前回の金融小委での整理ですけれども、一つは、今申し上げた古くからの事業参加性所得の面、もう一つは金融商品としての金融所得の面でございます。
わが国では平成15年の改正で、一般投資家、言いかえると上場の株主、かつ大口以外の人についての配当は、事業参加性の所得という面よりも、他の金融商品からの収益と同じように、金融所得という面に着目して20%の実質分離課税を選ぶ道を開いたわけです。その際、従来どおり総合課税を選んで、例えば配当税額控除を受ける仕組みも選択できるようにしたわけであります。どちらでもいけるようにしているということです。つまり、総合課税プラス何らかの調整という限りでは、日本は諸外国に比して特に甘くも厳しくもない制度です。それに加えて、一般投資家に限っては分離課税も選べるという改正をしたわけでありまして、納税者にとっては大変優遇した形になっています。なのに、その上、分離課税にも何か軽減措置をつけてほしいということをおっしゃる方がいらっしゃいますが、要するに調整を受けたければ総合課税を選択すればいいわけでありますし、そもそも分離課税を選ぶ人は、そっちのほうが有利、あるいは便利だと思うからそちらを選んでおられるのではないかというふうに思います。
なお、最近入ってきた情報では、ドイツについては、今、総合課税で配当所得控除を入れていますけれども、11月2日にドイツの財務省がプレスリリースした感じでは、配当所得については25%、源泉分離課税に変えていく。そのときに配当控除はやめてしまう、という方向で作業部会で合意がなされたというふうに聞いております。
以上でございます。
〇本間会長
皆さんのご意見を承っておりまして、これからとりまとめていくときに、2つばかりポイントを私のほうからリマークさせていただきたいと思います。
1つは、指摘の中にもございましたけれども、「貯蓄から投資へ」ということがこの軽減税率が実施されてからどのような効果を伴っているのか、これを少し資料を出していただけませんか。その上で国際的な比較というものをつけていただけると、日本のポートフォリオにおける構成とその変化というもの、その効果が、今後続けるべきか否か、こういう判断材料の中でおそらく生かされていくと思いますので、ぜひお願いいたしたいと思います。
とりまとめのもう一つのポイントは、この段階で軽減税率を標準税率にしていくことの株式市場への影響をどのように考えるのか。この辺のところについても、予断を許さない部分がございますけれども、何かそれについての傍証的なものでもあれば資料を整理していただければと考えております。
理屈づけの問題は、横山委員から私に名指しでありましたけれども、私とか井堀委員は最適課税論者でありまして、その理屈づけをきちんと説明しろといったら説明いたしますけれども、今後、この辺の問題については本格的に議論を来春以降やればいいのではないか。今回はこの問題については、今の皆さんのご指摘のとおりの位置づけの中でいいのではないかと思っております。
その2点について、材料がありましたら、まだ2回ばかりありますし、そのあとを受けてまた議論の場もございますので、ぜひそこを準備していただきたいと思います。
〇猪瀬委員
いずれ、法人実効税率の話になりますね。最初に井戸委員がたくさんいろいろなことをおっしゃられたのですが、外形標準課税のことで、その実態が今、300億円の会社が資本金が1億円以下で逃げているとか、そういうところを含めてその姿をもう一回確認しておかないと、実効税率を下げるという話のときに、これはずるいではないかということになりますので、その辺を明らかにしてもらえるような報告をお願いしたいと思います。
〇井堀主査
今の本間会長の2つの論点のうち、2番目の株価への影響の話ですけれども、林委員も指摘されている点、これは非常に重要だと思います。ただ、株式市場は、合理的であれば、すでに税制の変化を織り込んで株価が形成されているはずですので、20%になるだろうという予想が支配的であれば、実際にはそれが起きても変化しないはず。織り込み済みということだと思います。もちろん、それが予想外のショックであれば当然反応するということですから、これから政治的にどうなるかということだと思います。
すでに4時になっておりますが、金融証券税制以外の点について、まだ発言していない方で発言されたいという方は、多少時間を延長したいと思いますので、お願いします。
では、原委員。
〇原特別委員
先ほどの相続税のところ、事務局から説明がありました、公平性は厳格にしていく必要があると思います。ただし、相続による非上場株式会社の未実現益等、そういったものはすべて実現すれば課税するというところを、これは何も相続税に限らず、いろいろなベンチャー等々でもこういったケースは山ほどありますけれども、実現したら課税するという原則等も含めばいいかと思います。
〇井戸委員
制度の矛盾みたいな話が納税環境の整備の中でいろいろ出てきました。もちろん相続税もそうですし、特別控除の運用の話もそうですし、これは大体、制度をつくるときに誤ったのではないかと私自身は思いますので、そういうのはすぐに直していただいたらいいのではないかというのが第一です。
もう一つは、貯蓄組合とか事業組合とか、ああいう新しいグループで投資をして収益を上げたらパッとやめてしまうという形態があるのですが、私は、そういう形態は形態でいいのですけれども、どうして法人みなし課税ができないのだろうかと。法人にみなして法人税はしっかり取って、そして、個人に配当した分は支払調書をきちんとつけさせる。そういう仕掛けにすればよほど簡単なのに、法人扱いにしないで個人の段階で捕捉しようとするから非常に難しい話になっているというふうに日頃から考えておりますので、提案だけしておきます。
〇田近委員
ひと言だけ。これも19年度とより本格的な議論と重なるのでしょうけれども、何回か前の税調でも指摘させていただいたのですが、国の所得税のときに生命保険料をどうしようかとか、そういう議論が、望ましいかどうかわからないけれども、あり得るだろうと。ただ、住民税のときに、今度抜本改革したことを契機に課税ベースをもっと本格的に考え直していいのではないか。
つまり、国のいろいろな控除の何掛か何かにして住民税の課税ベースを計算するのではなくて、税率自身も10%にフラットになった。同じように課税ベースも、さっき佐竹さんが例の均等割の話をされました。そういう自治体の首長さんの背中を押すことになるのか引っ張るのかよくわかりませんけれども、僕は押しているつもりでしゃべっているのですが、税率も10%になったというところで、象徴的にというか、具体的な例で申し上げているのですが、住民税における生命保険料控除が必要かどうかというのは、多くの方に聞けば、要らないだろう、それより課税ベースを広げてきっちりしたほうがいいと。手当する人がいれば、そこは何らかの形で手当をするべきだということで、今回、そういう意味では生命保険料控除の議論あたりでは個別具体的に議論できるのかもしれませんけれども、背後の問題は比較的重要なことだろうと思います。
〇井堀主査
上月委員。
〇上月特別委員
今は19年度税制改正ですよね。ですから、あまり深い議論というのはできないと思いますけれども、先ほどどなたかがおっしゃったように、今回、税調も変わったわけですから、その方向性を示すメッセージが絶対に必要だと思うのです。そういう意味で、今、特例がいろいろ切れるのがありますね。証券税制だけではなくて、居住用だとか、特定事業用資産の買換制度とか、いろいろあります。こういうあたりについて議論をする時間もありませんけれども、そういうあたりもはっきり、どうするのかという理論づけとともに、国民の皆さんにわかりやすい形で表明していただきたいと思います。
〇井堀主査
それでは、江川委員。
〇江川委員
個人住民税のことで、今日、税収との比較ですとか、実際に1人当たりかかっている金額との比較を見てすごくびっくりしたのですけれども、何人かの方がおっしゃったように、課税ベースを広げていくという大きな方向性は賛成ですし、場合によってはそういうことが一つの考え方だというのを打ち出していくべきだと思います。これは高齢化社会に向けて、そういうことをきちっと考えて構造的な変革に取り組んでいくというメッセージにもなると思います。
その中で、例えば住民税を見直すときに、とりあえずこういうふうにしましょうというだけではなくて、非常にざっくりした形でも、実際にかかっている支出額とか税収の中の割合とか、そういうものを常時見直していくというようなことも入れて、こういうものだけが取り残されないような配慮も必要だと思います。
〇井堀主査
それでは、長谷川委員。
〇長谷川委員
住民税と所得税の来年1月に1回下がって6月に上がるという話、これはやるときにPRという話でしたけれども、メディアは、これから年末に向けて新年の紙面とか雑誌とかをつくっていくのです。12月中にみんな販売になってしまうんですね。この話は私の知る限り、私もこの間説明を聞いて、ああそうかと思ったのですけれども、ほとんど知られていないです。マーケットの人と話しても知られていないし、勘違いしている。この1月と6月がごっちゃになっている人も結構いました。年末から新年にかけて、いろいろメディアが、この税金どうなるの? という話をワアッとやるのはこれからですから、払うときなどと言わずに、明日からでもこの紙をいろいろなところにばらまいたらいいのではないかと思いますが。
〇井堀主査
それでは時間も過ぎましたので、本日の議論はこの辺で終わりにしたいと思います。
なお、本日の議論の概略につきましては、この後の記者会見で私からお話しさせていただきたいと思います。
それでは、本間会長に議事をお渡しいたします。
〇本間会長
今後の予定についてお知らせいたしたいと思います。既にご案内のとおり、信託税制・三角合併・国際課税等に関するグループ・ディスカッションを、11月15日(水曜日)午前10時から12時まで、中央合同庁舎第4号館で行います。
また、減価償却制度等に関するグループ・ディスカッションを11月21日(火曜日)午後2時から4時まで、中央合同庁舎第4号館で開催いたします。
15日は中里特別委員、21日は田近委員の下で議事の進行をしていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、これ以降の日程でございますけれども、11月22日午後2時から5時まで、総理官邸において総会を開催し、3回のグループ・ディスカッションの報告を行いますので、ご出席をお願いいたしたいと思います。
それでは、本日のグループ・ディスカッションはこれで終了いたします。
お忙しいところをご出席いただきまして、どうもありがとうございました。
〔閉会〕
(注)
本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため速記録から、内閣府大臣官房企画調整課、財務省主税局及び総務省自治税務局の文責において作成した資料です。
内容には正確を期していますが、税制調査会議事規則に基づき、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。