調査分析部会(第9回)終了後の香西会長・田近部会長記者会見録
日時:平成19年7月13日(金)16時20分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
それでは、第9回調査分析部会の記者会見を行います。
〇質問
今日の後半の法人税と投資のところで一つお尋ねしますが、今日のプレゼンテーションは従来のプレゼンテーションとやや印象が異なるのではないかと思ったのは、当面そんなに急いで実効税率を下げていく必要はないというふうにも読める内容で、それに対して、企業経営者の委員の方からかなり反発の声も聞かれました。今日の議論を、会長と部会長それぞれどのようにお聞きになったのか、どんなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただけないでしょうか。
〇香西会長
既に今日の議論については、田近部会長から総括もあったわけです。これまでの議論と毛色が違っているというお話でしたけれども、必ずしもそうではなくて、例えば法人税の帰属の議論をしたときも、法人税はどこへ帰属しているか。つまり、法人税を下げたら賃金が上がるのか、配当が上がるのか、投資が増えるのか、わからないという結論に近かったわけです。本日は、そういうことで今のアカデミックな研究のご紹介というか、それを踏まえたご議論があって、それに対して、それが日本と現実とは違っているのではないかという議論があったわけで、こういう議論をすることこそ調査分析部会の仕事なのです。例えばそういう学説などを無視して、勝手にやれ、やれと言っている税制調査会でなくてよかったというか、そういうふうに思っています。今日のところは部会長の司会が非常にうまかったからでもあるのですけれども、非常に私の理想とする税調の議論が行われたということです。
ただ、この問題は最後はどこかへ落とさなければいけないわけです。そういう点ではなおいろいろな議論、例えばアジアの状況をどう見るか、日本の国際競争力はどういうふうに評価するのか。今、1人当たり所得で言うと第2位でもないし、購買力平価で言うとGDPももう第2位ではないわけです。1人当たりで言えばアイルランドやイギリスの下ですから、そんな大国でもないわけですが、今の日本の産業の力、あるいは、これからの将来の力をどう見るかというところが大きく違っていたわけです。そうは言っても今のアメリカの研究だというご議論もありましたけれども、しかし、やはりアメリカの経済学はそれなりに実証的にすばらしいところがあって、新しいものが起きたらすぐ飛びついて、新しい研究を次々に出して、お互い打ち消し合っておさまるところへおさまっていくというその過程ですから、これは敬意をもって我々もフォローしていかなければならないのではないか。
今日は、そういう意味ではアカデミックの議論とビジネスの議論とが非常にうまく対立していただいて、そのことによって税調らしい議論が行われた。これにどういうふうに結論をつけていくかということが、日本の政策決定にとって大事な問題だと考えておりまして、非常に満足している、こういうことであります。
〇田近部会長
私も今日聞いていて、調査分析部会というのはそれぞれ3つの班に分かれて、打ち合せもしていますけれども、基本的にはそれぞれの専門委員、あるいは報告する人の個人の発言ということで、それをもとに税調の委員・特別委員がかみついたというか、議論の応酬をして、そういう意味では非常によかったと思います。
内容的には私の聞いていた範囲では、設備投資に影響を与えるという意味では、限界的な税率、つまり、もう1円投資したときにどれだけ税金がかかるか。ただ、お金が外国や日本を行ったり来たりするときには平均的な税率が重要だと。それに対してアメリカのケースがあったわけですけれども、香西会長がおっしゃったように、それでは日本のどこが問題になっていくのかというのは、短い時間で議論できなかったわけで、その辺がこれから詰めていくところかなと。そういう議論の中で、今、日本の状況がどの辺に置かれていて、我々の軸足をどう考えていくのか。そういう意味では、私は司会をしていて、面白かったと言うのはおかしいですけれども、よかった、よかったなと思いました。
〇質問
今日の議論とちょっと離れますけれども、このところ、総理がテレビに出演されて消費税の問題をいろいろ聞かれる中で、最初は、消費税を上げるとはひと言も言っていないと言っていたわけですが、その翌日から、上げない可能性が十分あると言って、またさらに、できるだけ上げたくないという話をされてきていて、「上げない」という方向に力点が若干移っています。会長として、この秋に消費税を上げるということをしないで税制の抜本改革ができるとお考えかどうか、その辺をお聞かせ願えないでしょうか。
〇香西会長
私の理解では、総理がおっしゃっているのは、1月の末にあった施政方針演説、それから、11月に私どもにいただいた諮問――私はそのときは委員ではなかったわけですけれども、これと全く同じことを言っておられるのだろう、こういうふうにしか思えないわけです。
私たちは、その諮問と、総理が国会での施政方針で言われたスケジュールに従って仕事を進めています。そして基礎的な調査分析についても、諮問の中で、ミクロ・マクロの調査をしっかりやれという珍しい諮問の内容になっているわけですから、それに従事してやってきたわけで、秋以降になって具体的な議論が始まるものというふうに考えていて、議論をすればいろいろな人がいろいろな意見を言うに違いない。それをどうまとめていくかということになる。その議論に決着をつけるために、さらにみんなで議論をし、調査もし、調査の追加もし、そういう形でおさまるところへおさまるであろうというふうに考えている、としか言いようがありません。
〇質問
今、施政方針演説のことをおっしゃいましたけれども、総理の施政方針演説では「秋以降に消費税を含めた税財源の抜本的な改革を実現すべく努力する」ということが書いてあって、今、総理が言っている、上げない可能性は十分あるとか、できれば上げたくないということは、全く言っていないわけです。その点はいかがですか。
〇香西会長
私は、上げろとも下げろとも何とも、私のほうから申したこともありませんし、総理から個別にそういうことについて相談を受けたこともありませんし、意見を交換したこともありませんし、指示されたこともありませんから、それは何とも言えません。総理のお気持ちを言えば、総理は成長促進派なんですね。成長促進派にとって言えば、増税というのはやりたくないという心情は心情としてあるだろう、そういうふうに思います。成長というのを非常に短絡的に考えて、景気をよくすると言えば、増税したら具合が悪いということはあるわけです。成長派であるけれども、財政再建派でもあるわけです。財政規律も守ろうとしているわけです。
そういうことがありますから、総理は総理の中でいろいろお考えになっているし、我々は、スケジュール通りにこの秋以降いろいろな観点をあわせて議論して、私どもとして考えられる案がまとまりましたら、総理にご報告することになるだろう、こういうことであります。
〇質問
そうすると、秋以降に消費税上げを含めた議論をする方向に変わりはないと。
〇香西会長
上げるとは決まっていません。消費税を含めた議論をいたします。上げるとは決まっていません。
〇質問
それは、上げないという選択肢もあるのでしょうか。
〇香西会長
もちろん、誰だって上げたくないといえば上げたくないわけでしょうから、それはいろいろ考えますよ。そういう可能性があるというのだったら、もちろん、そういうことも考えるということでしょうね。これは、いろいろな議論が出てくるのを待っているところです。
〇質問
会長個人としてはどんな気持ちでいらっしゃいますか。
〇香西会長
個人としては、もう個人の意見は言いたくないという気持ちです。それはなぜかというと、委員としては、私は私の意見を通したいです。しかし、会長というのは委員だけではないですね。一委員としてはいろいろ発言できますけれども、私が何か言うと、それは会長だから個人の意見を求められているので、そうすると、やはり税制調査会の方向を聞かれているということになる。それについては先ほどから繰り返し言っていますけれども、個別の税目のあり方についてはまだ何も議論していないし、それを議論するのは秋以降になるということで、今日に至るまで、いろいろな議論や基礎的な調査分析をやってきたということです。例えば、これからいろいろな問題点が出てくるわけですから、その点を踏み込んでいかない限りは、会長個人としての意見を固めるのは秋からの議論を踏まえた上でのことであります。それでないと、今の組織と、もう既に国民の審判がいろいろな点で下ろうとしているときに、私がさらにそこで政治的な問題について個人的に発言するということは考えていません。
〇質問
そうすると秋からの議論については、スケジュール観には全然狂いはない、今まで通り消費税を含めた抜本的な税制改正の議論をするつもりだ、それで結論を得ると、そういう形でよろしいのですか。
〇香西会長
はい。今のところ、まだ結論について何も固めていません。これまでの調査分析部会等の議論を集約していくことも必要ですが、そのほかにも、それぞれの具体的税目のあり方についての議論を集約しながら考えていくということで、それは予定通りの行動です。
〇質問
何度もすみません。9月以降のスケジュール観は、最終的に答申としてまとめられるのは、いつ頃から本格的に議論を始めて、いつ頃成案を得るという、ざっくりとしたスケジュール観でいいのですけれども。
〇香西会長
私だけで決まるわけでもないですが、秋と言うからには9月頃から始まるのだろうと考えているわけですけれども、来年度税制にかかわる部分について言えば、やはり10月、11月がヤマ場だろうということです。しかし、これについても具体的な日程はまだ全く考えておりませんし、どこまで税調が個別の問題に逆に踏み込むかということは、いろいろ問題があると思いますし、例えば喫緊の課題として諮問で言われている少子化対策とか、地方分権のあり方ということについては、別途いろいろ議論の進んでいるところもあるわけです。そういったものについて、私どもの作業ペースと合うかどうかということももちろん問題になりますでしょうし、来年度のマクロ的な経済運営についても、別途の議論が政府内では当然行われているわけです。
ですから、よその動きを待っているだけでもいけないでしょうし、一人で先に走り出すわけにもいかない。勝手に先に決めてしまうわけにもいかないですから、そのスケジュールというのは、走りながらだんだんおさまるところへおさまっていくだろう、としか言いようがないぐらい入り込んだ問題になっていくだろうと思っています。
〇質問
基本的には、今まで通り年内に結論を得るという方向でいいのですか。
〇香西会長
これは、なかなかすべての問題についてかけられるかどうかわかりませんが、少なくとも来年度の法律をつくってしまわなければいけない。来年度税制改正については当然のことですね。やはり年末までに決まっていないと来年度税制改正ということはできないわけですが、税調としては、従来は3年に1回くらい中長期の展望もしていたわけです。それをどういうふうに今度の作業の中で組み合わせることになるかというのは、作業をやってみないとちょっと自信がないです。わかりませんということです。
〇質問
調査分析部会のシリーズもだいぶ終盤だと思いますので、改めて会長にお尋ねしたいのですけれども、これまでのかなり長い時間にわたるいろいろなプレゼンテーションやその後の議論を聞いていますと、例えば何度か議論された中では、消費税率は社会保障財源として重要であるということも指摘されて、引上げの方向なのかなと。あるいは法人実効税率にしても、今日みたいに、そんなに急ぐ必要もないのではないかという意見はありながら、中長期的には国際競争やいろいろな状況を考えてみると、下げていくのが方向なのかなと。聞いていると、そういう方向性が示されているのではないかという印象はあるのですけれども、今後の秋から始まる個別具体的な政策論議の中で、調査分析のこれまでのプレゼンテーションとか委員の方から出された意見というのは、これに沿ったものになるということでしょうか。それとも、それはあくまでもアカデミックないわば勉強であって、政策論はまた別ということなのか。どちらのイメージなのでしょうか。
〇香西会長
引上げを示唆しているとか、引き上げる方向であるとかいうお話がありましたけれども、調査分析部会はそういう方向を話すためにやっているのではなくて、あの席上で報告される方のご意見を聞いているだけです。そこでの議論がいろいろあったということは事実ですけれども、何か方向を打ち出そうとしてやったわけではなくて、そういうふうな方向にお感じになったというのは新聞記者の方のご判断である。そのご判断について、私たちが意図してこっちの方向へ持っていこうとしているのならば、いや違いますよと言うでしょうけれども、全くそういう意図は持っておりません。特に調査分析部会というのは、政策問題をやらないわけではないですけれども、やはり学問的な背景に立って問題を議論しておく必要がある、チェックしておく必要があるということでやっているわけです。
これからは、31日ということで、まだ積み残したレポート、力作がずいぶん残っております。調査分析部会そのものを解散するということは考えておりませんで、必要があれば、具体的な問題の中でこういうことは特にもう一度理論的に検討してほしいというようなことがあれば……、それから、専門委員も解任するわけではなくて待機していただいて、新しい調査もする。それと同時にだんだん税制改革の中身に話の重点が移っていく、こういうことを想定しております。その点については、暑いですけれども、少しじっくりと、私個人としても少しは腹を決めていろいろ考えて秋を迎えたいと思っております。
〇質問
8月は会合をやるのでしょうか。つまり7月末で調査分析はまだ終わらずに、引き続き8月もやるという見通しでしょうか。
〇香西会長
全くやらないということではありません。夏休みをとってよろしければ別なんですけれども、どうしましょうか。少なくとも7月31日の後も若干まだ考えております。企画会合も、今後は企画会合が主役になるわけですから、それについても助走活動は8月中にあってもいいだろうと思っていますが、具体的にはまだ考えておりません。
〇質問
何度か前の記者会見で、調査分析部会がひと区切りした段階で、会長として、今後の政策論議に向けた論点整理というのか、そのようなものをまとめて出されたいというお話がありましたけれども、これはいつ頃のイメージになるのでしょうか。
〇香西会長
だいぶ張り切って言ったかもしれませんけれども、いろいろ議論もたくさん出てきていますし、問題も出てきています。私がやらなければいけないことは、秋以降何を議論するかというその論点を浮かび上がらせる。例えば今の法人税については、国際的な観点で考えるのか、あそこに書いてあったように、ある種の一国の中での企業行動の問題として考えるのかとか、日本の特徴をどこに織り込むかとか、いろいろな論点があると思います。それをつぶしていくことによって全体の枠組みがだんだん出てくる。そういうふうな意味で論点の整理というのが最初にあって、それがある程度整えば、具体的な議論に突き進むことができるのではないか。
ただ、これは非常に難しい。私が考えるとしても、当然、企画会合等で、論点はこれでいいのか、この順序でいいのかということも議論していただかなければいけないわけです。誰かが案をつくらなければいけないので、私ということになるのだろうとは思いますけれども、これは私が全部やるということではなくて、いろいろお手伝いもお願いしなければ簡単にはできないし、何人かの議論も聞きながら、また正式な会合でも、部外者の方の意見も聞きながらやっていきたいと思っています。それを秋までに何とかつくりたいですねと、こう思っているということであります。
〇質問
今日のプレゼンテーションの中にありました、法人税の平均税率を下げる場合、事前にアナウンスをしておいて、しばらく時間をおいたほうが政府の負担が少ないというくだりがありました。この考え方をどう評価されるのかという点と、これを踏まえて、今後、税調として答申なりをまとめていく際にどういった書きぶりになっていくことが想定されるのか。この点につきまして、会長と部会長にお伺いしたいと思います。
〇田近部会長
これは國枝さんの意見で、彼は最後のマラソンの話を例にしたり、あるいは「囚人のジレンマ」みたいな税の競争を書いて、大国日本が自分から動けば罠にはまってしまう、したがって相手の動きをじっくり見ましょう、というのが彼の意見だったわけです。それに対して、今日は議論が百出したわけです。ここで私が税調に代わって答えるわけにはそもそもいきませんし、部会長としても、それをどう取りまとめるのかと言われても、それは彼の考えでしかないわけで、それこそさっきの話ではないですけれども、秋にかけて議論したい。それしか、今日この段階では答えられないということです。
〇香西会長
全く同感であります。
〇質問
たびたびすみません。消費税ですけれども、朝日新聞の世論調査では、70%を超える人が今回の参院選の争点にすべきであると言っていて、今朝出ていた読売新聞さんの調査でも、年金に次いで争点にすべきだという声を集めているわけです。政府税調というのは、もともと、国民的な立場で税についてあるべき姿を議論するのがミッションだと思います。こういう有権者の声、税についてかなり関心が高まっているわけですけれども、この参院選での争点化について、会長ご自身、どういうふうに思われるでしょうか。
〇香西会長
私は最近の税議論が非常に高まってきたことについては、責任というか、責任と言うほどの責任があるのかというと、偉そうに言うなと言われるかもしれませんが、やはり責任も感じておりますし、非常に重大な仕事に従事しているのだという自覚は日に日に強まっております。
ただ、税の問題というのは、憲法によって国民の義務であるということもあり、国会で最終決定を見るということになっているわけです。憲法の条項にそう書いてあるわけです。法律で税は決めるということになっています。したがって、これはもともと政治的な問題であって、それについての政府の態度というのは、先ほどから繰り返し言っていますように、だからこそ総理も、数行ですけれども、施政方針の中に割いて、どういう考えで、いつ、「秋以降に」ということまでつけ加えて問題を提出されたわけですから、その時点で国民に投げられているというふうに考えております。それが参議院選挙に影響するだろうということは、私が別に何も言わなくても、そういう重大な問題だというふうに国民が意識していただいているのですから、その点については与党、野党のそれぞれの主張を聞いて、それでご判断になる。もう既に裁判が始まっている、こういうふうに考えております。
それについては私は、一国民としては投票に行きたいと思っていますし、税調会長としては、最初から秋以降にやるというスケジュールで、諮問に答える案を何とか考えたいということでやってきているという点では全く変わりません。最近の総理大臣も、財務大臣も、官房長官もそれぞれお答えになっていましたけれども、その話自体はもう国民の前に既に開かれているというふうに考えております。
〇質問
政府・与党が決めるというのはもちろんそうですけれども、諮問機関がなぜ存在するかというと、そういうことから離れて意見を言う、あるべき姿を言うというところに意義があるのだと思いますが、そういう意味で会長として、今の国民の声なり関心に対してどう答えるのか。前に石会長などはよく、ご自分の持論みたいなものを持論と断った上でおっしゃったりもしていたので、争点にすべきかどうかについて、会長のお考えを。もちろん、仕組みはわかっていますけれども、政府税調という離れた立場でどうお考えになるか、それを聞かせていただきたいのですが。
〇香西会長
現時点では既に政治的な問題になっているわけですから、それについて影響を与えることはむしろ控えたいと思っています。私たちの成果は、秋以降の議論をまとめた答申でご批判をいただきたい、こういうことでございます。
〇質問
ということは、香西会長のおっしゃりようを聞いていると、来る参議院選挙の結果というのは、秋以降の税制論議に影響を与えるとお考えでしょうか。
〇香西会長
それは税調の議論にということであれば、委員がどう考えるかということですから、私から予測することはできませんが、はっきり言って、政治がどういうふうに動くかということについては、私は全く見通しも立ちません。ただ、それでも私たちとしては既に与えられた使命があるわけですから、その使命を静かにやっていくしか対応の仕方がないだろう、こう考えているわけです。
今のお話は、参議院選挙の結果によって誰が影響を受けるわけですか。税調の議論が変わるかどうかということですか。
〇質問
そうです。具体的に言えば、特定の税目について筆が鈍ったりするのか、そういった影響は受け得るのでしょうか。
〇香西会長
私どもとしては議論をする際には、あまり政治とは関係なしに、もっぱら経済なり、いわば中立的な立場に立って、どういう税制がいいかということを中心にやるつもりですけれども、しかし、選挙の結果を一番に受けとめられるのは政治家の方々だろうと想定はしております。想定というか、そうなるだろうと思っていることは思っております。
そして税制の改正というのは、私どもの答申だけではなくて、いろいろな政治的なプロシージャーを経て税法というものになっていくということですから、その過程では、当然、選挙の結果というものは大きな影響を持つだろう。これは組織というか、そういう法律上の仕組みからそうなるだろうというふうに考えているわけです。ただ、それによって私どもが考えを急に変えるかどうかということは、今のところは考えておりません。
〇質問
先日、06年度の税収が出ました。補正後の予算に比べて1.4兆円少ないという税収の結果だったのですが、これが秋以降の消費税を含めた議論にどういう影響を与えるのか。あるいは中長期的な税制改革にどういう影響を与えるのか、お考えをお聞かせください。
〇香西会長
財政収支自体をとれば、私も説明を聞いただけで自分で計算したわけではありませんけれども、当初予算から比べれば当然増えたわけですが、思ったほどではなかった、予想どおりではなかったということは事実でありますが、財政じりとして考えると、歳出のほうも同じように余ってきているという状態です。
それから、あとのことはこれからの景気動向によって変わってくるだろうということでありまして、今の段階で、例えば来年の成長率がどうなるだろうとかいうことは、議論する上において、もちろん重要な参考事実ですけれども、それだけで中期的な見込み、あるいは来年の見込みがガラッと変わってしまうことになるのかどうかというと、それはもう少し様子を見た上で、としか言いようがないのではないかと思います。
一つずつその情報にあまり反応しているとかえってブレが大きくなってしまいますから、そういうことは事実として、慎重にこれからの展開を見守らせていただきたい。せっかく秋以降とまで言っていただいているのですから、今すぐというふうに言われてそこで答えると、かえって不十分な答えしかできない可能性が高いと思いますので、もう少し様子を見守っていきたい。先へ行ったら十分予測ができるのかと言われてもまた困るのですけれども、しかし、情報は増えたほうが多少とも考え方が整理しやすい、こういうことだと思います。
〇質問
今の質問の補足です。ただ、財務省がずっと見てきていた、補正で掲げていた見積もりよりも下ブレしたのは間違いないわけで、それも1.4兆という額で、4年ぶりの下ブレになるわけです。これは、新年度予算53.5兆の税収を見込んでいますけれども、その土台減にもなるわけですね。この土台減というのはずっと効いていくわけで、ガラッと変わるようなことはない、様子を見てみたいというお話でしたけれども、これはかなり重要なファクターになるのではないかと思います。思ったほど税収が伸びてきていないというのは、秋以降の税を考える意味では非常に重要なファクターではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
〇香西会長
もちろん、重要な一つのファクターです。
〇質問
それはやはり影響を与え得るということですか。
〇香西会長
当然、頭の中に入れて今後のことを考えていくと思います。
〇質問
会長ご自身として、税収が下ブレしたことについてどうお感じですか。財務省見積もりの際に、上場企業を中心に見ていたら、非上場が開いてみたら利益率の伸びがわりと低かったという実態もあるようです。その辺は成長率とか企業の景気を見極めていく上で重要なファクターだと思いますが、現状、その辺はどうご覧になっていますか。
〇香西会長
これも個人の意見ということになるわけですけれども、個人の意見は個人で言わせていただきたいので、会長個人の意見というのをそういうことについて問われても、私は先ほどから言っていますように、税制調査会の委員の皆さんの議論をまとめることが会長の使命ですから、そういう立場の人間として、一つひとつの問題について個人的な意見を表明するのは現時点ではお控えしたい、こういうふうに考えています。
〇司会
よろしいですか。それでは、記者会見を終了させていただきます。
〇香西会長
いろいろ税の問題が重視されておりまして、私共も、身を引き締めてこれから秋を迎えていきたいと思っています。どうもありがとうございました。
(了)