調査分析部会(第8回)終了後の香西会長及び田近部会長会見録

日時:平成19年6月22日(金)16時26分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

それでは、第8回調査分析部会の記者会見を行います。

質問

香西会長にお伺いします。今日、租税原則のお話があったのですけれども、会長はかねてから「成長」「活性化」の方向を、原則の見直しも含めて重視されてきたかと思うのですが、今日の議論を踏まえて、改めてお考えを聞かせていただきたいのですけれども。

香西会長

今日私が申しましたのは、4月の経済財政諮問会議で、経済産業省のほうから変えてほしいというお話があった時に答えたことを、それはもう報告もしてあったのですけれども、もう一度念を押したということです。

私が答えたのは、目標としては「成長」というのが非常に大事だということはよくわかっているのだけれども、今のメンバーの税制調査会は、すでに19年度税制改正の答申において、3つの原則というのを維持している。文章の中に書いてあるわけです。別に1ページ目の第1行目に書いてあるわけではありませんが、文章の中にそれも出ている。それを変えるからには、もう一度しっかり議論しなければ変えられないのではないかと思っているという形で、とりあえずその場はそれで収めていただいた。したがって、変えるとしたら議論をしてからということで、今日はある意味でその第一次の議論だったのですが、たまたま私が言い訳的に使った「原則と目標」というのは、原則は原則としてすでに言ってしまっているし、しかし、目標は非常に大事だということが、ある種の一つの流れではあった。ただ、議論がまだ収斂はしていない。最終的には答申にどう書くかということでありますから、その時にもう一度議論があることはあるのですが、今の段階ではそういう言い方で、これも一つの可能性として残っているということです。つまり、19年度答申と同じやり方をする。19年度答申は、答申の本の1ページの一番下に大きく「経済活性化を目指して」などと書いてありますし、同時にその中の文章では、「中立」という原則を、別に「成長」と関係してということではなかったと思いますが、3つの原則を並べて、この原則を税調としては守っているということを言っていますので、そういう収め方もまだ残っているということだと思います。

個人的な意見は別として、税制調査会というのを一つの組織として考えた時に、19年度の答申を出した時から4月までというその4ヵ月の間に変えてしまうということは、ちょっと私、組織的な意味づけからいって、やや問題があるのではないかと。会長が変わったということだけで、ほかにも理由があればまた別ですが、あまり軽々しく変えると、原則なるものの、あるいは税調なるものの一つのコンティニュイティーといいますか、コンシステンシーというのですか、私以外はメンバーは変わっていないわけですから、問題があるかと思って、私としてはその時にそういう答え方をしました、ということを皆さんにももう一度ご説明したという経緯だと思います。

質問

今の点について確認というか、お尋ねしますけれども、今日の議論を聞いていますと、ほとんど大半の方が、原則としては「中立」ということでいいというような意見を持っている方が多かったように聞こえました。前半の議論のまとめの時に、採決はもちろんしていないわけですけれども、田近先生も、「租税原則としての中立、目標としての成長という議論をしました」というようなことをまとめていらっしゃいました。今日の段階で、当面、今年の答申で「中立」という言葉を「成長」に変えることはせずに、今のまま行くということを確認したという理解なのか、そうではなくて、まだそれは方向性の話であって、結論めいたものはこれからなのか、今日の意見を聞いていた全体的な印象としては、大筋としてそういうことで大方のコンセンサスができているのかなという感じがしたものですから、その辺はどのように捉えているのでしょうか。

香西会長

部会長からもご意見があるかもしれませんが、私の印象は、今日の議論はそういう形でかなりの方がその流れに乗っているという印象は受けましたけれども、別に今すぐ原則と目標で分けますということを決めてしまう必要もないわけですよね。まだ答申の議論ではないのですから。そういう点では、答申を書く時に、例えば今日欠席された委員から再度議論が出る可能性もあるわけですし、それはその段階で考えればいいけれども、今日の段階でいえば、議論を一度した今日としては、大体そういう雰囲気が強かった、ということは私もそう思っているということです。

田近部会長

これから長い議論がまだあるのでしょうから、もちろん、ここで結論的なことは言えないと思いますけれども、考え方として、あの場で私が言いましたように、原則としての「中立」、政策目標としての「成長」ということなのかなと。

アメリカの例の大統領の諮問委員会の報告書が、「シンプル・フェア・プログロース」と書いてありますけれども、これはある意味で表題なわけですよね。これは原則を書いたわけではなくて、大統領の諮問委員会のこういう報告書をつくりましたよと。「プロポーザル・トゥ・フィックス・アメリカズ・タックスシステム(Proposal to Fix America's Tax System)」、だからアメリカの税制を改善するための提言。それはシンプル、フェア、グロースを目指してということなので、政策の目標としては「グロース」という言葉を使っている。それと原則とがどうのこうのというのは、ここでそんなに意識というか、これが原則なのだという形で使っているのではないようには思いますけれども、議論がどう収束するかは、もう少し時間を経てだと思います。

司会

ほかにございますか。

質問

別件で後半の議論のことでちょっとお尋ねしますけれども、国際的な企業会計の基準が見直されていく中で、会計上の利益と税務上の課税所得のギャップが広がっていく方向にあって、今日のプレゼンテーションは、それを正す方向で検討しなければいけないということが課題としてあるということだと思うのです。こういう大きな問題を今日は話し合ったわけですけれども、この問題はどれぐらいのスパンで取り組んでいくべきものと捉えていらっしゃるのか。つまり、今年の年末に向けた政策の議論の中で、日程の何か具体的なものを出さなければいけないような性質のものと考えているのか、それとも、もう少し2~3年、中期的な中で考えていくべきものなのか、どのようなイメージを持っていらっしゃいますか。

田近部会長

これは明らかに、今日、何でこの分析部会をやっているかということだと思うのですけれども、今年の年度末改正で正直言ってこんな議論は到底できないし、今日そういう意味ではいい議論をできたと思うのですけれども、確定決算主義、企業会計上の利益に基づいて税を払うのだと言いつつ、企業会計上の利益と税務会計上の所得が入り乱れている。それ自身がいいか悪いかは何十年の論争があるわけですけれども、ただ、税制として重要なのは、一体具体的にどこで乖離が生じていて、その乖離が大きくなっているのか、小さくなっているのかということだと思います。

辻山さんがおっしゃったのは、引当金の98年の改正で、税のほうで課税ベースを広げるために思い切って小さくしすぎたのではないか、発生ベースで考えれば、個別な項目は賞与引当金とかすでに発生しているのだから、半年前なら半年前に発生するのだから、引いてもいいのではないかという議論だったと思うのですけれども、その辺も含めて、私自身は、これはまだ部会に上がったわけではないですから、個人として言ったほうがいいかもしれませんが、企業会計上の利益と税務会計上の所得の乖離が日本でどう起きているのか、最近それがどのようになっているのかというのは、押さえなければならない重要なテーマで、引き続き企業課税改革を考える時に、根っこの問題の一つとして取り上げるべき問題だと思っています。そういうことでは、時間的には今年の年度末にこの数字が出てくる準備はまだないかなと。引き続いてのテーマとしては十分あり得るし、やっていったらどうかと私は思っています。

質問

国会の会期が1週間延長されまして、それに伴って参議院選挙もまた時期が1週間ずれるという形になっていますけれども、本格的な税制改正についての議論は秋以降という話は、選挙の日程というのもある程度頭にあったかと思うのですが、「たかが1週間、されど1週間」で、1週間ずれたことについて、議論への影響というのは何かありますか。

香西会長

これは国会がお決めになることでありまして、国家の最高の決定機関である国会が延長を決められる。そして選挙日はそのあとで一定の期日を置いて行われる。こういう形になっているわけですから、私どもがそれがいいとか悪いとかということではない問題だと基本的には思っています。

もちろん、後半で議論しますと言っていた日程が、1週間は1週間であっても、詰まってしまうということは、確かに忙しくなってしんどいというか、あるいは十分な議論を尽くす時間がない、ある程度審議を急ぐ形になるということは、一つ問題にはなりますけれども、しかし、それまでに我々としては、例えば少子化対策は何をやるのかとか、あそこでは社会保障や少子化対策など、やむを得ない、つまり歳出削減は諮問流にいえば「国民負担率最小を目指してやる」と、こういうふうに書いていただいているのですけれども、それでもなおかつやむを得ないものには、例えば安定的な財源を用意してほしいという形になっているわけですね。そうなると、まずそれが出てくるのがいつかとか、そっちのほうにどういう影響を与えるかによって、結果は非常に違ってくる。そのほか、医療費の見通しとか、決算もいろいろ出てくるわけです。そういったようなところで影響がどれぐらい出てくるのか。

また、大臣も急に忙しくなって、選挙運動をしなければいけないわけですから、どういう形でそれぞれ数字が出てくるか。また、それをいろいろ練り上げるいろいろな意見が出てくる。「そんなにたくさんはいくら何でも税金だけではできませんよ」というような議論だってあり得るかもしれないわけです。そういったことをやる時間が、政務が非常に忙しくなる形で遅れていくということで、影響があり得るということはありますけれども、我々の立場としては、決まってしまった以上は、とにかくそれまでに何とか結論を一応出して、短い時間で最善の結論を出して、それでご了解いただくということしかやりようがないだろうと、そういうふうに達観しております。

司会

ほかにございますか。よろしいですか。

それでは、これで記者会見を終了させていただきます。(了)

調査分析部会