調査分析部会(第7回)終了後の香西会長・田近部会長記者会見録

日時:平成19年6月15日(金)16時22分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室

司会

ただいまから、第7回調査分析部会の記者会見を行います。

質問

今日の議論について会長と部会長それぞれに、ご感想で結構なのでお伺いしたいのですけれども、まず金融税制のあり方のところで、今日プレゼンをされた國枝先生のお考えとして、「一般的な株式への税制優遇措置を恒久的に設けることは、経済格差拡大につながるおそれがある」と書いてあります。要は、今やっている10%の優遇税率は望ましくないとお考えなのかなと読めるのですけれども、このプレゼンをどう聞いたかということとの兼ね合いで、どのようにお考えでしょうか。

田近部会長

國枝さんは國枝さんのお考えでおっしゃったのでしょうけれども、彼の説明のポイントは、日本は高齢者のほうが有価証券とかを持っている。若い人がそれを持つようにすることはできるのか。アメリカの場合には企業の確定拠出年金等が意味があったのではないか。ついては投資家教育までの話になったというふうに私は聞きましたけれども、この7ページに「高所得者ほど」云々と。もちろん、株式等を保有している人はどこの国でもこういうことになっているわけです。

それ自身はそうですけれども、ここからは私の考え方ですが、金融所得課税一体化できちんとどう取るのか。一方、金融所得に関しては、国際化の中で、外国に出るだけではなくていろいろな形をとって租税回避されるわけですから、だからこそ、きちんとどう現実的に税金をかけるのかという話につながるのだと私は思いました。だから一般的な株式優遇措置というのは、國枝さんが言っているのはどういうことかわかりませんけれども、私が聞いたのをまとめると、日本において高齢者と若い人たちのポートフォリオ、彼的に言えばpuzzle的なものをどう考えるか。

第2点は、記者さんのおっしゃった、高所得者ほど有価証券の保有は高い、こういう中で優遇税制を恒久的に設けることは云々というのは、私自身の考え方は、だからこそ金融所得課税の一体化のようなものに近づけるべきではないのかと、そういうふうに読みました。

香西会長

私自身は、金融所得課税一体化の議論というのは、どこかの業種を優遇するとか、こういう証券を国民にお勧めするとか、そういうことではないわけです。結果的にそうなるではないかというご議論は十分あり得ることですけれども、金融商品そのものが同じようなものになっているわけであって、それを中立的にといいますか、平等に扱っていくことが、金融市場、資本市場を円滑なものにする。今日も最初に出てきた分散化(diversification)ということも、そういう均質な資本市場、金融市場が生まれることによって発達するのであって、国民にもっと株を買えとか、いわんや証券業界が少し安くしたほうがいいではないかとか、そういうことでやっているものではないのではないか。その辺の議論のされ方がやや不幸せだなあと、そういう印象があります。

質問

関連でよろしいでしょうか。一体課税の議論というのはずっとされてきていて、去年の与党税調の大綱でも、損益通算範囲の拡大の検討をしてというようなことは書いてあって、それは実際問題の課題として出てくるわけです。今日の國枝先生のプレゼンテーションの中で、時間的な中立性が確保できない場合には損益通算の範囲で何らかの制限を課す必要がある、ということを理論的におっしゃっていたかと思いますけれども、この辺についてはどのようなご感想でしょうか。

田近部会長

今日の議論は、金融所得課税のことを全部、「可能性」と「問題」と詰めていったらきりがないし、読み切れない問題があります。そもそも金融所得課税の一体化自身、二元的所得課税から派生するものですけれども、それ自身が特に完璧だから望ましいとかそういうのではなくて、あくまでも現実、今ある制度との兼ね合いなわけです。真っさらなものと真っさらなものを比べ合ってもしようがないわけです。だから一体化するときにも、そういう時間の問題もあるし、配当二重課税の問題もあるし、むしろ國枝さんが指摘したかったと私が思うのは、キャピタルロスをどこまで通算していいかという問題。しかも、二元的所得課税をやっているすべての国がそうではないし、私の知っている限り、ノルウェーではキャピタルロスは全部引いてくれて一律28%、スウェーデンはそうではない。国によっても事情があるし、ちょうど方言のように違うわけです。

だから、今日の話を私は聞いていて、金融所得課税というのはいろいろなことを考えなければいけないなと。キャピタルゲイン課税については、実質的に発生ベースでかける仕組みもあるかもしれないけれども、彼が言ったように、それを現実化するのも難しい。そういう中で、今をどう改善していくかということで考えていく。ただ、彼が指摘したような問題もいろいろある。そういうことを考えながら議論を詰めていくのかなと、そう思いました。指摘させていただいたように、これから何か完全なものができて、その完全なもののディフェクトがどこにあるのか、という議論をしているわけでは決してないと私は思います。

質問

今日の議論とはちょっと違いますけれども、猪瀬直樹さんが東京都の副知事に就任されるということで、そのあたりは何か聞かれていらっしゃるのか。それから今後、メンバー変更の可能性がおありなのかどうか。いかがでしょうか。

香西会長

初めて聞きましたので、何ともお答えしようがありません。今日の税調はお休みだということは聞いていましたけれども。

質問

メンバー的な変更の可能性というのはいかがでしょうか。

香西会長

兵庫県知事も委員ですからね。どうなのでしょうか、私に任命権があるわけでもございませんので。もちろん、ご本人からいろいろとあるかもしれませんから、お話があれば考えることにいたします。

副知事ということはもう決まったのですか。

質問

今日、石原知事が発表されたようです。

香西会長

決まったのですか。どうもありがとうございました。

質問

今日の議論と直接関係ないのですけれども、先日、「骨太の方針」の原案がまとまって、近く閣議決定がされると思います。その中で税についても章が割かれていまして、金融所得課税とか、地方の格差是正とか、具体的に触れられていましたけれども、政府税調として、秋以降の議論であの辺に沿って進められるということになるのでしょうか。

香西会長

沿ってということになるのかどうか、私はよくわかりませんけれども、閣議決定されたものについては、当然、考慮をはらうのは常識的なことだろうと思います。基本的には諮問があるわけで、その諮問にどう答えるかというのが一番基本的な課題であるというふうに思います。

金融所得課税の一体化は、昨年末に税調としては答申もしていますし、大きな流れとしては一体化を進めていくことが正しいのだろうというふうに私は考えていますが、もちろん、再度それは議論いたします。

地方の話についても、地方分権も考えて税制を考えるということは諮問にも入っていることでありまして、それについては私どもも十分対応して議論していかなければいけないと思います。それについて、私どもとして税の議論はここでなければ一切してはいけないなどとは思っていませんので、いろいろなところでご議論がある。そういうことを参考にしながら、しかし、税体系といった点ではまとめていくのは我々の仕事だろう、こういうふうに考えています。

質問

もう一つのプレゼンテーション、「法人税の転嫁と帰着」の議論についてご感想をお伺いしたいのですけれども、私の個人的な感じでは、経済学的に純粋モデルで言うと、いつか生身の人間が最終的に負担するというのは当たり前といえば当たり前の話で、とはいってもそれにタイムラグがあったり、個人の所得が捕捉できなかったり、いろいろな問題があるので、いろいろな税を組み合わせるのが現実的な政策論なのではないかと思います。今日の議論は、理論的に詰めて、それは法人が負担しているのではなくて人間が負担しているのだというふうに読むと、それだったら法人税はゼロ%でもいいのかみたいな議論にもなりかねないという感じもしたのです。

それは私の感想ですけれども、こういう概念的な話を今後の政策論にどのように生かしていくのか、正直見えないな、という感じがしたものですから、この読み方も含めてどのような感想を持たれているのか、お二人にお伺いしたいのですが。

田近部会長

今日の話は「法人税の転嫁と帰着」という題からして、ガチャンという、非常にかたい感じであれですけれども、法人税は最終的に誰が払っているのか。我々のコンテクストの中で「どういう意味があるのか」というのは、法人税をこれからどうしていくかというときに、この税はどういう税なのかということだと思います。それで、こんな議論をされてはかなわないなというのが本音のご質問だったかどうか知りません、プレゼンテーションの仕方とかいろいろあるかと思いますけれども、土居さんにはかなりこなれた形でお話をいただいたと思います。

答え方が足りなければまた質問をいただくとして、土居さんはこんなことを言いたかったと思うのです。誰が払うのかというときに、よく考えてくださいと。建物として、あるいは登記された組織としての法人が払うわけではなくて、皆さんに申し上げる必要もないかもしれませんけれども、基本的にはそれは労働の提供者であったり資本の提供者であったり、そういう人たちなのです。それが国内と国外と両方いるわけです。そういう中で法人税を誰が払うのですかという話をして、一つの考え方によれば、労働と資本と半分ずつかもしれない、あるいは国際的に資本が移動する中では、結局、資本は海外に行ってしまうかもしれない。その時点で労働者が負担するというプロセスが一時的にはあるかもしれませんけれども、長い目で見れば日本の資本ストックが減ってくるわけですから、そこで技術の力も落ちていくであろうし、賃金が下がっていく。そういうことで法人税の負担は消費者にも行くだろう。そういう意味で長期、短期というか、現実的にすぐ起きるようなことと、気がついたら起きるようなことと2つありますということ。

それから、これは土居さんの説明でしたけれども、もしそれが労働者にも転嫁しているのならば、法人税を下げたときにはその一部は労働者にも帰着する、そういう議論だったと思います。司会をしていた者としては、そんなふうに聞いてもらえればいいかなと思います。最終的に法人税というのは建物や登記された法人が払うのではなくて、労働や資本の持ち主が払うので、それは短期、長期と分かれて、短期については折半かもしれないし、7対3かもしれないけれども、やや長期的に見れば、最終的にはそれは法人税をかけた国の労働者に帰着する可能性もあるのではないかということです。そのとき法人側で逃げてしまうわけです。

司会

ほかにございますか。

質問

法人税の議論ですけれども、ここでは自国の法人税の負担が上昇するという前提で議論されています。これは、自国の法人税の負担は変わらないけれども、他国で法人税の税率が下がった場合でも全く同じ結論になるのですか。

田近部会長

それは私が言ったわけで、記者会見の前に土居さんとも、資本移動の話あるいは長期的な話をちょうど話してきたのですけれども、相手が下げる下げないよりも、日本より高い国はないわけですから、そういうところに資本が移動していく。そうすると、日本で誰が払う払わないということよりも、企業の資本自身が向こうへ行ってしまうわけですから、そうでないときに比べれば日本での資本ストックが少なくなる。それに伴って生産性が下がりますから、日本の賃金が小さくなる。そういうことも十分あり得ます、ということです。お答えになったかどうかあれですけれども。

質問

今日の議論と関係のない話で恐縮ですけれども、先週の税調のときとその後の会見で、非公式に執行体制について勉強してみるというお話があったと思います。もうそれはやられたと思うのですが、どんなことを勉強されて、今後どんなことをやっていきたいとお考えなのか、ご説明いただけないでしょうか。

香西会長

企画会合のときにそういう問題についてご発言になった委員を中心に、一度顔合わせをして、どんな問題があるだろうかということを議論し合って、今すぐ走り出すというわけでもないし、特にオフィシャルな部会とか小委員会をつくったわけではないのですけれども、どういう問題がありそうかということでいろいろ考えを持ち寄る。7月いっぱいでどのくらいできるかわかりませんが、2、3回ですか、適当に議論する機会をつくりたいということで散会になったと私は理解しております。

質問

どんな話をされたのでしょうか。

香西会長

いろいろありました。一つは、納税者番号のことがいろいろ議論にもなっているようですけれども、こういったことは具体的にならないと、本当にどういうことが必要で、どういうものがいいのかということはなかなか結論が出ないわけで、すぐ飛びつくというような問題ではない。しかし、それにもかかわらず一応いろいろ考えておきたいという議論がありました。

ほかには、納税の意味をもっとみんなが――国民と言っては具合悪いのですけれども、納税意識とか負担感とか、そういったものをもう少し深く理解できることが必要なのではないか、そういう議論もあったと思います。

ただ、これは私の意見ですけれども、税金は好きか嫌いかということで世論調査をするのだったら、税調は要らないわけです。どういうところが根源になって、そういう税に対する見方が出てくるのかということは、何か考えられのではないかというようなことを私個人は感じました。

質問

今、ちょっとお話のあった納税者番号のお考えで一点お伺いしたいのですが、今日の議論の中でも何人か触れていらっしゃる方がいましたけれども、今、社会保険庁の年金の問題が非常に問題になっていて、納番との関係を議論すべきだという意見もありました。昨日、安倍総理が、社会保障番号について早急に検討するというようなことをおっしゃっていて、行政が行っているそういう基本的なお金にかかわる仕組みで、番号を国民につけるという議論が本格的になっていくと、納税者番号の制度につながっていくことも考えられるのかなと思います。こういう議論が出てきた状況について、会長としてはどのような感想を持っていらっしゃいますか。

香西会長

納税者番号については、税調はかねてから何回か答申を出して、答申の中で触れているわけです。そのときにも、例えば住基番号とか社会保障番号とか、そういったようなものと併せてやるという考え方もあるし、金融所得課税に関連して特にやる考え方もないことはないとか、そういう可能性は幾つか挙げていたと思います。

しかし、実際にこういうふうになってきて、本当に社会保障番号ができてくるとなったら、それはやはり中身をよく見て、私たちが使えるものなのかどうか、番号を維持するとかきちんとつくることはなかなか難しいということは、今の混乱を見てもわかるとおりです。うまくいけば、例えば名寄せができて、金融資産の動きがつかまりやすくなるといいだろうということはもちろんありますけれども、下手をしたら大混乱のもとになるわけです。

そういう問題は、結局、どういうものがつくられていくかということと、税でやる場合にはどういうシステムが必要なのかという、ある意味では実務的というか、技術的な準備とチェックを十分やっていないと、大銀行ですら合併したときにはえらい騒ぎになったわけです。現在も社会保険庁はだいぶ信頼を落としたわけで、国税庁はそれに比べればまだまだ信頼は高く持っていると思っていますが、それを壊してしまって二つともつぶれてしまったら、日本国家、政府は何だということになるわけですね。もちろん、いいものをつくってよくするという目標は正しいわけで、そういうふうに総理もおっしゃっているわけで、そういう方向へ行くことを期待しているわけですけれども、それだからこそ実際の対応については、慎重に、かつ本当によく考えて、テストもやってとか、そういうことが非常に大事になってくるのではないか。逆に緊張しているというのが私の印象です。

質問

土居先生のプレゼンで、増税のときも減税のときも同じような対応をするのかとかいろいろな問題が出されましたけれども、この辺について、調査分析部会で再度取り上げて深堀りしていくということはあるのでしょうか。

田近部会長

法人税の議論はまた深まっていくと思いますけれども、今日、土居さんの報告と、それに対するコメントもいろいろいただいたので、どう答えていいかわかりませんが、それは再検討することも十分あり得ると思います。

司会

ほかにございますか。よろしいですか。

それでは、これで記者会見を終了させていただきます。(了)

調査分析部会