調査分析部会(第10回)終了後の香西会長・田近部会長記者会見録
日時:平成19年7月31日(火)16時25分~
場所:中央合同庁舎第4号館共用第一特別会議室
〇司会
それでは、第10回調査分析部会の記者会見を行います。
〇質問
香西会長に今日の議論のことでちょっとお尋ねしますが、前半、少子化対策についてのプレゼンテーションがありまして、その中で、政府の別の検討会議の検討内容の報告と、それと永瀬委員のほうから幾つか具体的な提案も含むプレゼンテーションがあったのですが、その全体的なそちらの中身を含めてどのように受けとめられたか、お考えをお聞かせください。
〇香西会長
少子化対策というのは非常に大事だという認識は閣内で非常に強い意見になっていると思います。歳出はできるだけ削減して財政健全化を図るのだけれども、諮問の文章でいえば、たしか国民の負担率を最低にする覚悟で財政を、歳出を、無駄なものは切っていくということなんだけれども、そうやってもなおかつどうしようもない、それでも必要な、少子化対策及び社会保障等については安定的な財源を求めると。逆にいえば、先送りはしない。つまり、国債発行ではやらないと、賄うことはしないというふうに一応諮問にも書かれているわけです。
その点が、私、その前段を含めてぜひやっていただきたいと考えておりまして、例えば、先ほど10兆円という数字、GDPの2%ですね。そういう話もございましたけれども、それは少子化対策でそれだけ要るかどうかというのをまずいろいろなところで議論してもらいたい。これは税調の仕事ではないわけですけれども、当然、予算に出てくるということであれば、主計局もちゃんと精査するでしょうし、その他、財政制度等審議会とか、いろいろなところでもまた議論があり得るのかもしれない。つまり、その内容はまだ詰めてもらいたいということがぜひ、それがないと困ると思っていますし、第2に、少子化のところで10兆円要るということが仮に、認められて、そうしようということになったとしたら、なったとする前にと言うべきですかね。ほかでもっと節約できるものはないのかということですね。
スクラップアンドビルドという言葉がありましたけれども、10兆円もあるかと言われれば困る問題ですけれども、つまり、そういう形で、少子化の中身についても、これは政府全体でいろいろご議論させていただかなければならないことでしょうし、さらに、それがすなわち歳出を増加、純増になるのかということを言えば、できるだけそれは抑えていただく。つまり、国民負担を増やさないつもりですから、最小にしてほしいというところまで財政は削減するのだというお話になっているわけですから、そういうところの精査も必要だということになっておりまして、それらを全部含めて、本当にやむを得ずといいますか、どうしてもしなければならない、これはもう国策としてそうするんだという合意ができるということが前提で、安定財源を検討するというか、考えると。時間的にいえばどういう現状なのかわかりませんが、ロジカルに言えば、そういう過程をぜひ踏んでいただきたいと私は考えております。
これまでの経済財政改革の基本方針というのが6月19日に出ていますけれども、これでも42ページ。有効な少子化対策の実施のためには、一定規模の効果的な財政投入の検討も必要であると考えられ、この場合、次世代育成支援の財源については、税制改革や社会保障改革の中で総合的に検討を進める必要があると。また、次世代の負担によって費用を賄うことのないよう現時点で手当てしなければならない、というようなことが書いてあります。
それで、個別施策の実効性や現物給付、現金給付のバランスに配慮しつつ、諸外国の企業拠出を含めた財源措置も参考にしながら、実効ある、持続可能な家族政策のための財源規模や負担のあり方について、税制改革の論議と並行して国民的論議をお願いする、というのが6月19日の、これは閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」に出ているところです。
それからもう少し、さっき私が言ったものの趣旨は、骨太の23ページ、今の書類の一般論のところ、23ページにあるんですけれども、改革のポイントというところで、23ページの初めですが、3.「進路と戦略」というのが出ておりますが、予算編成の原則に沿って、その予算編成の原則が5つかなんか並んでおりましたけれども、新たに必要な歳出を行う際は、原則として他の経費の削減で対応する。税の自然増収は安易な歳出増に振り向けず、将来の国民負担の軽減に向ける等、規律ある財政運営を行うと。こういうふうに、今ご紹介した6月19日の閣議決定にも書かれておりますし、その前に、6月6日に行われました財政制度等審議会でも、今と同じで、歳出改革の、今後の予算編成に当たっては、税の自然増収は安易な歳出に振り向けないで、将来の国民負担の軽減に向け、新たに必要な歳出等を行う際は、原則として他の経費の削減で対応する等の考え方が、これは基本方針2006、1年前のときから既にそういう方針が閣議決定されていて、今回のこの美しい国へのシナリオにおいてもその点は引き継がれたと理解しております。
〇質問
関連ですけれども、単純に少子化対策に、新たな歳出があるので、それの財源の手当てが必要だという議論もあると思いますし、もう一つ、もっと大きな少子化対策全体のツールとして、例えば控除の見直しとか、あるいは所得税のような給付と結びつけた考え方とか、いろいろそういう少子化対策全体、税制の関係を考えていかなくてはいけない場面が今後出てくるかと思うのですが、なかなか税調だけで議論できる話でもないのかなという感じもするのですが、この辺について今後どのように、他の会議と何か連携するとか、どのようなイメージを持っていらっしゃるんでしょう。
〇香西会長
まだ具体的にそこまで詰めていない段階で、秋から秋からとばかり申し上げておりますけれども、例えば今日の議論なんかは、そういう点でいえば、私自身は非常に興味深かったし、インプリケーションとしていえばいろんな案があったと思いますね。そういう意味で、私たちのほうも、税では何ができるか、それから資金を使うならどういう方法がいいかとか、そういったことについては、当然、1つは、税調だけではなくて、政府の省庁間でもいろいろお話があると思うのですけれども、それはそれだけではなくて、例えば諮問会議もあるし、それから社会保障全体の中での位置付けということであれば、社会保障審議会もあると思っておりますので、具体的にまだ動き出すというところまではいっていませんけれども、それに向かっての体制準備は潜在的には少しずつ始まっていると私は理解しております。
〇質問
先日の参院選で、消費税率の据え置きを訴えた民主党が勝ち、与党が大敗したわけですけれども、それに対する会長のご感想をお伺いしたいのと、それから、こういった結果が出たことによる今後の税調の議論の、どういった影響を受けそうかというその見通しをお伺いさせてください。
〇香西会長
税調の議論は、税調委員の皆さんがこの結果をどういうふうに受けとめたかによって発言が違ってくるわけですから、今日はまだそういう議論はしておりません。したがって、今後の、全体として従来からお約束している秋以降具体論に入っていくという中でいろんな意見がそれは出てくる可能性があるだろうと思っております。
しかし、私個人としては、1つ言えば、参議院の過半数をとったわけですから、参議院で党の主張に反することは簡単には通らないということは覚悟しなければならない。しかし、その前に、これは私がやるということでは決してありません。そういう立場ではないわけですけれども、議員同士といいますか、政党同士といいますか、その間では当然いろんな議論が交わされてくるだろうと。その間にしかるべき落としどころも出てくる可能性もあるだろう。それは今後やってみなければわからない。昨日だか、官房長官もそういうことをちょっとおっしゃっていたように思うのですけれども、そういう中で今後だんだん政党も模索されていくということだろうと思います。
消費税の問題については、私どもはまだ上げるとも下げるとも言ってないといつもしかられていたのですけれども、それはそのとおりで、まだこれからの議論だと思っておりますし、それから民主党も将来永劫に消費税を上げることは絶対ないというふうにまでお考えになっているのかどうか、そうではないような発言も開票速報などのときにはあったようにも思うわけで、そういったところで、いろんな形で議論をいろいろ深めていけば、落ちつくべきところへ落ちつくのではないか。それは、民主党のご主張のとおり、今の選挙公約のとおりに落ちつくかもしれませんし。結果的にですね。
税法というのは、税は、何度も申し上げていますけれども、憲法上、これは法律によるとなっているから、国会の専管事項になるわけでありまして、その過程はそういう政治過程に入らざるを得ませんけれども、我々としてはいろんな議論を深めて、どういう立場に対しても、こういう問題がある、こういうことはどう考えるかといったような形での論理の整理というのは我々としてはやっておかなければいけないのではないか、こう思っております。
〇質問
すみません。ちょっと今の補足でお尋ねしますけれども、特段、ではこれまでイメージしていた政府税調としての、消費税も含めた各税目の検討の進め方は、今回の選挙を受けて何か変化はないということなのでしょうか。
〇香西会長
変化はあるかもしれませんが、まだ、選挙が終わって、これからどういう展開になるかがわからないわけでありまして、今のところ、変える材料というのはないわけですね。そして一方で、与えられた使命、課題というのは一応まだ与えられたままになっているわけですから、そして、他の意見をいろいろ考えるにしても、今考えている各税について、それぞれの役割を詰めて、税体系を考えるという点については、どういう場合になってもそれは必要な作業ですから、したがって、作業としては従来の方針で粛々とやっていくしかほかにやりようがないと。今のような流動的な情勢の中ではですね。そういうふうに私は考えます。
〇質問
従来どおりの方針でやっていかれるということですけれども、ただ、おっしゃったように、民主党が勝ったわけで、民主党のマニフェストを見ますと、消費税据え置きもあるんですけれども、一方で所得税の控除などを見直して、2.7兆円ですか、財源をつくるということもうたってまして、民主党が勝ったことで、こうした所得税の控除の問題、これを深く議論してみようと、そういうお考えはございますか。
〇香西会長
私は、所得税については、控除の問題はぜひ見直したいと前々から思っておりました。私どもは、諮問によれば、社会経済構造の変化に対応ということが必要だということが書いてあって、その中に安定財源も必要だと書いてあるわけですが、その安定財源のほうは、いわばマクロ的に政府がこの社会経済の構造変化に対して、政府のほうへ一度お金を集めて、それで対応しようというのに対して、リチャレンジングといいますか、安倍総理の再チャレンジということとか、そういうのは個人のレベルでもいろいろ対応すべきものでもあるし、その個人のレベル、家計のレベルでやったほうがいいものもあるし、それからまた、そういうことによって税の構造が変わることがまた全体の税収等にも影響するわけですから、その点については、私はぜひとも、控除の問題というのは、やはり新しい社会に備える、個人が備えていくときの助けになるという意味で、単に政府が全体として財政規模をどうするか、どういうふうに資金を出すかということと並んで非常に重要な、政府自身のマクロ的政策、あるいはミクロ的政策、政府施策ではないけれども、やはり国民が対応するときに、それぞれの国民が選択しながらその対応をスムーズにやっていただけるようにしていくということがあるわけで、いわば何かの施策を行って、そのための安定財源を用意するということだけがそういうマクロ的な、マクロ的というのはよくないのですが、いわば政府が関与してやっていく方法のほかに、自発的な対応を助けるというやり方ももちろんあるだろうと考えておりましたので、そういう点では、これはある意味で所得税というものの再発見といいますか、再度位置付けるという一つの手がかりにもなる可能性がありますから、そこはぜひやりたいということだと思います。やりたいと私も思っていましたので、やっていただくつもりでおります。自分でもいろいろ働きかけてやりたいと思っています。
そんなこと言っていいのかどうか、専門家の部会長のほうに聞いてください。
〇質問
関連で1つ。民主党なんですけれども、2.7兆円と言いながら、具体的にどれとどれとどれを使って、控除は挙げていましたけれども、全体像がはっきりしない部分がありまして、例えばこの政府税調の場に民主党を呼んでヒアリングするとか、そういうお考えはございませんか。
〇香西会長
それはどうなのでしょうか。今のところ、どういう関係になるのか、ちょっと想像がつかないでおります。それからまた、2.7兆円ということについても、私自身はまだ十分に、どうするのかということを、どういうことでそういう積み上げ計算があるとしたら、どうしてそうなったかということは実はよく承知しておりませんが、そういうことは政党間で話し合う中で当然政府与党のほうも聞くでしょうし、それに対しては責任あるお答えが将来あるのではないかと。私どもだけで究明するということになるのかどうかはちょっと、私どもが先頭に立ってやるかどうかということはわかりません。
ただし、民主党のあのご発言については、やっぱりそれは有力な参議院の第一党ですから、その影響が大きくなると。影響というか、それに対する、私どもが例えば自分の主張を通すためにも、民主党の動向とか考え方をよく理解して、将来必要な場合に議論する。できるような議論を内々備えていくと、我々の中で準備していくということが、それは必要だろうと思っております。
〇質問
所得税の控除はぜひ見直したいというご発言がありましたけれども、どういうイメージで見直しをお考えなのか、ちょっと確認のためにお伺いしますけれども、民主党は、マニフェストなどで、扶養控除とか、あるいは配偶者控除は簡素化・縮小みたいなことをうたっていて、あと政府の骨太の方針も、そこまではっきりは書いていませんけれども、個人のライフスタイルに中立的に、歪めないような形でというような趣旨で、やっぱり同様にそういう人的な控除の縮小・簡素化という方向性が読めるような表現になっていると思います。香西会長の問題意識はこういった考え方に近いものなのでしょうか。
〇香西会長
まだそれほど、今後議論をいろいろさせていただきたいということで、今すぐ私がこういう構想を持っているというわけではありません。一つの流れとしては、それはやっぱり課税ベース、つまり、課税のもとになる所得であるから、所得はなるべく広くとって、そのかわり税率は低くするというのが個人の自由を高めるためにはいいことだろうというのはごく一般論としてはそう考えておりますけれども、それに対して具体的にどこをどうするかということについては、まだ十分考えているわけではありません。
ただ、今日の少子化の話なんかでも、例えば若い世代になってくると、家庭に対するイメージが変わってきているのだと。つまり、従来のように、だんなさん一人の月給で食べていくという、意識がそういうふうになってないというようなご指摘もあったわけで、そういう例えば家族生活が変わっていくとしたら、それをどう受けとめるか。それがいいということになるのか、もっと違う考えの方もいらっしゃるだろうと思いますけれども、そういったようなことで、この社会構造、経済構造が変化しているのだから、やはりここで、少なくとも見直しの議論はいろんなものについてやったほうがいいのではないかと、こう考えているわけです。
〇質問
ちょっと1点確認で、先ほどの消費税のところの質問で、現在のところは従来の方針で粛々と議論を進めていくしかないでしょうということだったのですが、確認なんですが、そうしますと、秋以降議論を進めて、今年中に結論を得るという、そこの方針というのは今のところお考えは変わってないということですか。
〇香西会長
変わりようがないというのが現状だと思いますね。
〇質問
今のところ、きちんと結論まで結びつけたいということでよろしいですか。
〇香西会長
私どもは、まだ個別税目についての議論を具体的には十分にしておらないわけですから、その間に、方針というのがどういうものかわかりませんが、その議論を経て方針が決まっていくということであって、今、方針があって、それを推し進めるとか、そういうことではないんです。今後議論を進める中でそういう方針が議論の中から生まれてくることを期待して調査会を開きたいと、会合を開きたいと。今後のですね。そういうふうに考えてます。
〇質問
また参院選の話で、会長にご感想をお伺いしたいのですけれども、前回会合の後の記者会見で、会長は、憲法上、税は国会で最終決定されるものだ、あるいは、税は重大な問題だと国民が意識していて、与野党の主張を聞いて国民が判断すべきというご発言がありましたけれども、今回の選挙戦を通して税制をめぐる論議が深まったのかどうかということについてご感想をお伺いしたいのと、もう一つ、それを受けた今回の結果から、どのような民意を読み取ったのか。この2点についてお聞かせください。
〇香西会長
これはかなり難しい問題であって、例えば政治学者なんかでそういうことを専門にやっている選挙の専門家がいらっしゃる。新聞社にもいらっしゃると思うんですけれども、かなり細かくやらないと、簡単には、印象論としてはそれほど片づけられない問題だろうと思います。しかし、議論が深まったかと言われると、政党間でそれほど税制について激しい対立論があったか、ディスカッションが行われたのかどうか、私はあまりフォローしてなかったかもしれませんが、いろんな要因がどうも複雑に絡んでいるということであって、税の問題について、それではどちらかの党がまいったといったような状況でもなかったように私は考えております。
〇質問
今日の部会の終了間際に、委員の方から問題提起ございましたね。今後、税調として、秋以降の税制改革論議、これをどう進めていくのかということを確認したほうがいいのではないかと。その会長のお答えがちょっと聞き取りづらかったのですけれども、これは次回の会合ですか、企画会合と部会ですか、その場である程度、会長を含めて委員の方がそういった方向性を共有されるという理解でよろしいのでしょうか。
〇香西会長
実はそこまで考えていなくて、次回は若干、20~30分ぐらい、できればフリーディスカッションという形で、何でもいいから、もう一度税調の秋に備える体制についてご意見を聞くことにしたらどうかと思っておりましたので、そのことを申し上げた。特に選挙に絡んでということにも必ずしもなかったわけですし、それは委員の方はぜひ自由に発言してほしいわけですから、また選挙のことについていろんな議論が出れば出たでそれは仕方がないというか、受けて立つというか。これはただ、私が相手になってもしようがない可能性もあるわけですから、それはオープンに何でも議論して、税調の中ではいろんな議論があって、それについても議論があったという形でいいのではないかと私は思っております。
〇司会
よろしいですか。それでは、記者会見を終了させていただきます。
〇香西会長
今日の総合的な感想ですけれども、例えば今日の後のタックスイベージョンという話ですけれども、ああいう話、とてもおもしろいと私なんか思っていて、ああいうことをきちっと議論していくということが実は税調の醍醐味みたいなところかもしれないと。つまり、法人税と所得税というのはどういう関係に立つべきかということですね。いろんな角度から議論していくのは非常におもしろい問題だと思いましたというのが私の感想で、前回は実務家と学界との間で法人税率について議論がありましたけれども、だんだんそういう意味で税調の議論はおもしろくなってきていると私は自画自賛しているわけです。
どうもありがとうございました。(了)